3 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:32:50.39 ID:WhPVeQ0A0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
27歳 大尉
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●('A`) ドクオ=オルルッド
27歳 中尉
使用可能アルファベット:P
現在地:マリミテ城付近

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
37歳 大将
使用可能アルファベット:W
現在地:オリンシス城付近

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
32歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:オリンシス城付近

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
35歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

4 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:33:32.36 ID:WhPVeQ0A0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
33歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
30歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャッフル城

●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
26歳 少尉
使用可能アルファベット:P
現在地:オリンシス城付近
7 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:34:14.51 ID:WhPVeQ0A0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー
少将:ギコ/プギャー

大尉:ブーン
中尉:ビロード/ドクオ
少尉:ベルベット


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
11 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:35:05.61 ID:WhPVeQ0A0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:
M:
N:
O:ヒッキー
P:ドクオ/ベルベット/アニジャ/オトジャ
Q:
R:ブーン/ギコ/プギャー
S:ニダー/ドラル
T:アルタイム
U:ジョルジュ/ミルナ
V:モララー
W:ショボン
X:
Y:
Z:
15 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:36:00.20 ID:WhPVeQ0A0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・ヴィップ 対 オオカミ
(マリミテ城〜オリンシス城)

・ヴィップ 対 ラウンジ
(パニポニ城〜ギフト城)

18 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:37:03.30 ID:WhPVeQ0A0
【第55話 : Wall】


――マリミテ城付近――

 張ったままの幕舎。
 置き去りにされた攻城兵器。

 回収する暇はなかっただろう。
 オオカミ軍は、乱しに乱した。
 はっきりと混乱が見てとれるほどに。

('A`)「あまり深く攻め込むな! 脱出できなくなるぞ!」

 オオカミが捨てていった馬を拾えたことは大きかった。
 穴から出るときは徒歩だった兵が、騎馬となって戦えている。
 おかげでオオカミ軍を撹乱できている。

 オオカミは既に五千以上の損害を受けたはずだ。
 しかし、こちらも一千は失っている。
 ただし、想定していたよりははるかに少ない犠牲だ。

 皆がこの作戦に納得してくれた。
 命をかけてくれた。

 自分は、指揮官として、皆の思いに応えなければならなかった。

('A`)(ミルナは……多分、あのへんにいるんだろうな……)
23 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:40:22.68 ID:WhPVeQ0A0
 大将自らしんがりとなった。
 オオカミ軍を無事撤退させるために。

 そのため、オオカミには追撃を上手く凌がれている。
 やはり、手強い相手だった。
 ミルナ=クォッチ。今回は上回ることができたが、優れた将であることに変わりはない。

 そのミルナを、討ち取りたかった。
 オオカミの枢軸であり、絶対に欠かせない存在であるミルナを。
 ここで討ち取れれば、今後のオオカミ戦が一気に楽になる。

 そして、この戦も完全勝利と呼べるものになる。

 しかし、ミルナは遠い。
 向かおうと思えば、向かえる距離ではある。
 一騎打ちも、できなくはない。

 だが、指揮官として、今は撤退するオオカミに打撃を与えなければならなかった。
 ミルナは数万の兵に値する武将だが、当然、討ち取れる可能性は高くない。
 先ほど実際にアルファベットを交えてみたが、やはり差は大きかった。

 それでも、武人として。
 再び相見えたい気持ちはあった。

 何とか一騎打ちに持ち込めないか。
 オオカミ軍を鞭のような動きで何度も攻めながら、考えた。

 ミルナは無事撤退を第一に考えている。
 自分も、オオカミに被害を与えることを第一に考えている。
28 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:43:20.77 ID:WhPVeQ0A0
('A`)(……くそっ……)

 難しい。
 ミルナと一騎打ちをしている余裕は、ない。

 先頭は既に船に乗り込んだという。
 これからもオオカミ軍は続々とキョーアニ川を渡っていくはずだ。
 追撃戦は、そこまでになる。

 ヴィップ軍の船は、とても動かせる状態ではない。
 相手の水夫の多くを討ち取ったものの、やはりオオカミの水軍には敵わないだろう。
 立ち向かわれても困る。

 空が白みはじめていた。
 遠くの山が影となっている。
 視界も次第に明るくなってきた。

 オオカミ軍は、川の近くでヴィップ軍を迎え撃つ態勢になっていた。
 真正面からのぶつかり合いでは分が悪い。数が違い過ぎる。
 すぐに停止の命令を下した。

 ミルナが、じっとこちらを見ていた。
 睨んでいた。

 少しだけ前に出て、ミルナと目を合わせた。
 流れる静寂。ただ視線を合わせるだけの状態が続く。

 やがて、ミルナは背を向けた。
 そして首だけをこちらに向けながら、言う。
38 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:46:15.27 ID:WhPVeQ0A0
( ゚д゚)「次こそ俺が勝つ。待っていろ。
    必ず、お前を討ち取ってみせる」

 首を前に戻し、ミルナは船に乗り込んだ。
 アルファベットUを朝の光で輝かせながら。

('A`)「……あぁ、次の戦いを楽しみにしてるさ」

 ミルナに届くはずもない小さな声でそう言い、同じように背を向けた。

 朝陽が、少しだけ眩しい。
 山間から照らされる光。
 遠いのに、今は手を伸ばせば掴めそうな気さえする。

('A`)「勝ったんだ……」

 やっと、実感が湧いてきた。
 マリミテ城を守り抜いた。
 十倍の兵を相手に、ミルナを相手に。

 不可能だと言われた。
 為し得るわけがない、と。

 しかし、やり遂げたのだ。
 守り抜くことが、できたのだ。

 半年耐えた。
 そして、凌ぎきった。

('A`)(こっちの戦は……勝った……勝ったぞ、ブーン……)
43 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:49:17.41 ID:WhPVeQ0A0
 あとは、オリンシス城戦だ。
 半年で奪うとショボンは言ってくれた。
 それを信じてここまでやってきた。

 情報は得ていないが、きっと奪取してくれるはずだ。
 あるいは、奪取できているはずだ。

 吉報を信じて待つだけだった。

('A`)「マリミテ城に帰還する」

 静かに言って、駆け出した。
 朝の光を全身に浴びながら。
 皆で、笑い合いながら。



――オリンシス城付近――

 全身に衝撃が走るような打ち込み。
 受け止めるだけで体が砕けそうになる。

 ドラル=オクボーン。
 オオカミ軍、二人目の壁突破者。

 並外れた力で、強烈な一撃を浴びせてくる。
 振りも鋭く、躱すことさえ難しい。

 一騎打ち。
 ここでドラルを討ち取れば、戦に勝てる。
51 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:52:27.37 ID:WhPVeQ0A0
 討ち取らなければならない。

(#^ω^)「おおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 Rを振り上げた。
 ドラルはすかさず防御体制に入り、Sで防ぐ。
 歪曲した刃。それを操るのは容易ではないはずだ。

 RとSに、リーチの差はさほどない。
 互いにかなり接近した状態で戦うことになる。

 しかし、ドラルとの間にあるもの。
 接近しているのに、確実に二人を隔てているもの。

 それは、壁。

《#´_‥`》「ふんぬっ!!」

 打ち込み。
 Rの刃を開いて受け止める。

 短い柄を引けば刃が開く。
 この機能は、相手の攻撃を受けるときに効果的だった。
 他の部位では受け止めにくいからだ。

 押し返して、刃を開いたまま突き出した。
 ドラルの首を、Rの刃が覆う。
 短い柄から、手を離した。
60 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:55:40.48 ID:WhPVeQ0A0
 刃が交差するほどの位置まで戻る。
 何もなければ、相手の首がねじ切れるほどの位置まで。

 しかしドラルは、首を引いて躱していた。

(;^ω^)「くっ!!」

 腕を目いっぱい伸ばした状態。
 隙が、できている。

 縦に振るわれたドラルのS。
 腕を、掠めた。

(;^ω^)「ッ……」

 戦うのに支障はない程度の傷だ。
 危なかった。
 もう少し反応が遅れていれば、右腕はなくなっていただろう。

 そこからは素早い打ち合いになった。
 衝突が重なる、音が重なる。
 常に全感覚を研ぎ澄ませた戦い。

《 ´_‥`》「……戦いづらい」

(;^ω^)「……お!?」

 不意に、ドラルが馬上から降りた。
 リーチが短いための判断か。
 それなら、望むところだ。
69 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 14:58:57.51 ID:WhPVeQ0A0
 同じように馬から素早く降りて、アルファベットを構えた。
 ドラルは若干肥えているが身長は小さい。自分と同じくらいだ。
 しかし、どこか圧する空気を持っている。

 これが、壁の突破者か。
 そう思ってしまうほどに。

 ドラルが軽い跳躍と共に、激しく打ちこんできた。
 しかし身のこなしなら負けない。素早く横に跳んで躱す。
 そして、Rを横に払った。

 ドラルはそれを腕一本で受け止めた。
 こちらの攻撃を、ものともしない。
 Rが押し返され、弾かれる。

 ドラルの反撃。
 身を沈めて回避し、Rを振りあげる。
 ドラルはやはりそれを受け止める。

(;^ω^)「ハァ、ハァ……」

 いったん距離を取った。
 決定打に欠ける。決め手がない。
 このままでは、ドラルに勝てない。

《 ´_‥`》「……知っているか?」

 突然、ドラルが低い声で話しかけてきた。
 体力回復の時間を稼ぐつもりか。
 いや、そんな意図を持ったものとも思えない。
76 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 15:02:04.93 ID:WhPVeQ0A0
(;^ω^)「……何がだお?」

《 ´_‥`》「アルファベットIを持った兵が、Jを持った兵に勝てる確率は、一割にも満たないそうだ」

 ドラルは構えを崩していない。
 隙は、ない。

《 ´_‥`》「たった一つしか違わない。普通なら、それほどまでに極端な差が出るはずはない。
      しかし、IとJには大きな差がある。Jの壁という存在が」

(;^ω^)「……何が言いたいんだお」

《 ´_‥`》「この二人の間にも壁がある、というのは分かっているだろう」

 攻め込みたい。
 力任せにアルファベットを振るって、ドラルを黙らせたい。
 しかし、ドラルはどんな攻撃も受け止められる、といった体勢のままだ。

《 ´_‥`》「無謀な戦いだ」

( ^ω^)「……関係ないお」

《 ´_‥`》「そうか」

 ドラルが、少しだけ構えを変えた。
 アルファベットを下げている。
 攻めの体勢か。
81 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 15:05:05.04 ID:WhPVeQ0A0
《 ´_‥`》「見逃してやろうかとも思ったが、無粋だったな。
      お前の意気を感じ取るのを忘れていた」

( ^ω^)「ここでアンタを討ち取ることしかブーンは考えてないお!」

 大きく踏み込んで、Rを振り上げた。
 ドラルは初めて、受け止めずにそれを躱した。
 明らかに焦っていた。

 追撃。
 俊敏に動いて、何度も襲いかかる。
 ドラルは、防ぐので精一杯になっている。

 速さでは優っている。
 いける。押しきれる。
 このまま休ませなければ――――。

《#´_‥`》「ふんぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 強烈。
 ドラルの、たった一度の反撃。

(;^ω^)「ッ!!」

 すかさず距離を取った。
 一瞬怯んでしまい、押し返されそうになったからだ。

 力では圧倒的にドラルのほうが上だ。
 こちらはスピードを活かして戦っていくしかない。
 まともなぶつかり合いでは、負ける。
92 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 15:09:08.09 ID:WhPVeQ0A0
 馬上ならまだ良かったが、ここは安定した地面の上だ。
 ドラルは全力を出し切ってくるだろう。
 正面から攻撃を受け止めてはならない。

 一瞬で右に動いて、攻め込んだ。
 Rを突き出す。
 点の動作。受け止めにくいはずだ。

 しかし、ドラルの横からの一撃。
 弾かれる。

 懐が、空く。

《 ´_‥`》「終わりだ」

 躱せない。
 受け止めるしか、ない。

 瞬時にRの刃を開いた。
 それは、上手くいった。

 しかし、ドラルの峻烈な一撃。
 押し返せない、弾けない。
 全身が震えそうなほど力強い。

 鍔迫り合いが、続く。
 終わらせることができない。
 腕に力が入らなくなっていく。

(;^ω^)「うっ、くっ……」
98 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 15:12:32.74 ID:WhPVeQ0A0
《#´_‥`》「ふんっ!!」

 ドラルの力が、更に強まる。
 絶望感が身を包む。

 負けてしまうのか。
 いや、そんなはずはない。
 きっと勝てる。勝てるはずなのだ。

 壁がある。
 それは、紛れもない事実。

 しかし、決して越えれない壁ではないのだ。

(;^ω^)「うっ……ぐっ……!!」

《;´_‥`》「ぬっ……!?」

(;`ω´)「おっ、おっ……おおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!」

 少しずつ。
 でも確かに。

 押し込まれていたアルファベットが、動いていく。

《;´_‥`》「なっ……!!」

(#`ω´)「おおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
110 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 15:15:42.82 ID:WhPVeQ0A0
 離さない。
 力の限り、振るってやる。

 戦う前に、そう決めた。
 アルファベットに、全てを込めると。

(#`ω´)「越えてやるんだお!!!」

 一気に腕を押し上げた。
 ドラルの両腕も跳ね上がる。

 アルファベットSが、ドラルの手から、離れた。

 虚空に舞う。
 何度も回転しながら。

《;´_‥`》「くっ!!」

(#`ω´)「させないお!!」

 手を伸ばしたドラル。
 その体に向けて、Rを投げつけた。

 ドラルは当然、躱すしかない。
 そして、Sに再び手を伸ばしてくる。

 だが、自分の手のほうが、はるかに近い。
122 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 15:18:22.95 ID:WhPVeQ0A0
(#`ω´)「アンタを!! 壁を!!」

 回転しながら落ちてくるS。
 必死で手を伸ばす。

 柄。
 そこに、手が、触れた。

(#`ω´)「越えるんだお!!!!!」

 掴んだ。

 アルファベット、S。


 壁を、越えた。


(#`ω´)「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」

《;´_‥`》「ぬああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
148 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 15:21:20.62 ID:WhPVeQ0A0
 何も持たないドラルへの一撃。
 素早く真横に振られたS。

 ドラルの首が、刎ね飛んだ。

 体が崩れ、倒れる。
 首が、転がる。

 ドラルを、討ち取った。

 Sの壁を越えた、ドラル=オクボーンを。

(;゚ω゚)「ハァ、ハァ……」

 心臓の高鳴りが治まらない。
 激しく上下する肩、胸。
 全身から噴き出る汗。

 周囲から上がる、歓声。

( ・∀・)「よくやった! よくやったぞ!」

 モララーが嬉しそうに駆け寄ってきた。
 何度も頭をはたかれ、髪をぐしゃぐしゃにされる。
 それさえ、心地良い。

 壁を越えたのだ。
 ドラルを、討ち取ったのだ。
168 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 15:24:12.68 ID:WhPVeQ0A0
 何故か、自然と涙が溢れて来た。
 視界が滲む。
 それでも、周りが喜んでくれているのははっきりと分かる。

( ;ω;)「やっ……たお……」

 勝った。
 壁を越えて、勝てた。

 長い戦だった。長い挑戦だった。
 それが、終わった。
 終わらせることができた。

 涙が溢れ出るのも、自然なことだと思えた。

( ・∀・)「オオカミが撤退するぞ」

 退却の鉦が鳴っていた。
 ヴィップからも同じく鉦が鳴る。

 むざむざ見逃す気はない。
 ショボンは、すぐに近衛騎兵隊を率いて駆け出して行った。

 オオカミ軍が、動きを止めた。
 抗戦の構え。しかし、あれはポーズだけだろう。
 戦う余力がないのは分かっている。

 だが、それはヴィップも同じだ。
 兵数で上回っているとはいえ、戦い続けた。
 疲労は誰も隠せない。
183 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 15:27:50.23 ID:WhPVeQ0A0
 ショボンは、リレントと交渉しているようだった。
 城を明け渡すように言っているのだろう。
 その代わりにオオカミ軍を見逃す、として。

 月が輝き出した頃、オオカミが再び動き出した。
 方角は、西。南ではない。
 オリンシス城の放棄を決定したようだ。

 しばらくしてから、報告が入った。
 オオカミはオリンシス城の物資も含め全てを明け渡すと約束。
 キョーアニ川の船もヴィップの手に渡ることとなった。

 そしてショボンは、マリミテ城を攻めているミルナを即座に引き上げさせることも要求した。
 リレントは交換条件として、引き上げてくる五万の兵には手出ししないことを約束させたようだ。
 どちらにしろヴィップにミルナと戦う力はない。ショボンはあっさり要求を呑んだという。

(´・ω・`)「半年にわたる長い戦いだったが、見事勝利を収めることができた」

 全軍をまとめて、ショボンが言った。
 夜の闇に包まれることなき輝き。
 月の光を受けながら。

(´・ω・`)「モナー中将、イヨウ中尉といった、歴戦の将を二人も失った。
      またシラネーヨという裏切りの将も出してしまった。
      これらは全て俺に責任がある」

( ・∀・)「ショボン大将、それは」

(´・ω・`)「いや、間違いないさ。責任は取る」
196 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 15:31:07.33 ID:WhPVeQ0A0
 兵は静まりかえっていた。
 風声だけが寂しく響き渡る。
 ショボンはじっと一点を見据えていた。

(´・ω・`)「二人の喪に服する意味でも祝勝会はしばらく避けよう。
      あの二人がそんなことを望むとは思えんが、俺たちの追悼の思いを表するためにも」

 涙ぐむ兵がいた。
 二人の将、いや、実質的に三人の将を失った。
 犠牲も少なくない戦だった。

 失ったものは大きい。
 それでも、勝利を得ることができた。

(´・ω・`)「しかし一度だけ、勝利の喜びを分かち合おう」

 ショボンが、アルファベットを掲げた。
 月に覆いかぶせるようにして。
 そのシルエットを、はっきりと映し出させながら。

(´・ω・`)「オリンシス城戦、勝利だ! 皆、勝ち鬨を上げろ!!」

 一気に喚声が沸き起こった。
 皆がアルファベットを掲げ、何度も何度も突き上げる。
 喜びを表現する。

 また、涙が溢れ出てきた。
 霞んだ視界が騒がしく動いている。
 ドラルを討ち取った直後と同じように。
214 :第55話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/01(水) 15:35:00.75 ID:WhPVeQ0A0
 この涙には、悲しみと、喜びの二つが混じっている。
 だからこそ瞼に留まらず、溢れ出るのだろう。

 何となく、そんな気がした。



















 第55話 終わり

     〜to be continued

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