3 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:05:30.98 ID:Ldz+roI90
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
27歳 大尉
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●('A`) ドクオ=オルルッド
27歳 中尉
使用可能アルファベット:P
現在地:マリミテ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
37歳 大将
使用可能アルファベット:W
現在地:オリンシス城付近

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
32歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:オリンシス城付近

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
35歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近
7 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:06:11.49 ID:Ldz+roI90
●( ^Д^) プギャー=アリスト
33歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
30歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャッフル城

●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
26歳 少尉
使用可能アルファベット:P
現在地:オリンシス城付近
13 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:07:08.65 ID:Ldz+roI90
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー
少将:ギコ/プギャー

大尉:ブーン
中尉:ビロード/ドクオ
少尉:ベルベット


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
15 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:07:50.23 ID:Ldz+roI90
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:
M:
N:
O:ヒッキー
P:ドクオ/ベルベット/アニジャ/オトジャ
Q:
R:ブーン/ギコ/プギャー
S:ニダー
T:アルタイム
U:ジョルジュ/ミルナ
V:モララー
W:ショボン
X:
Y:
Z:
19 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:08:34.39 ID:Ldz+roI90
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・ヴィップ 対 オオカミ
(マリミテ城〜オリンシス城)

・ヴィップ 対 ラウンジ
(パニポニ城〜ギフト城)

 

21 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:09:16.25 ID:Ldz+roI90
【第54話 : Ignorance】


――マリミテ城付近――

 もっと疑問に思うべきだった。
 四方の穴から出てきた、ということを。

(;゚д゚)「……くそっ!!」

 ヴィップにとって重要なのは、北だった。
 大将がいる。川に近い。戦力が集中している。
 それなら当然、北に大きく戦力を割いてくるはずなのだ。

 しかし、そうではなかった。
 実際には、手薄な南にも同数の兵を当ててきたのだ。

 何故か。

 それは、狙いがキョーアニ川の船にあったからだ。

(;゚д゚)「……かなりの数が潰されたか……」

 やっと伝令から報告が来た。
 キョーアニ川の近くに滞陣させていた兵の多くが、討ち取られたという。
 特に、水夫を重点的に潰されたらしかった。

 船が潰されたわけではない。
 その船を操る水夫が壊滅状態なのだ。
 船に残っている水夫もいるはずだが、多くはないだろう。
26 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:12:09.98 ID:Ldz+roI90
 船を動かすのは水夫の仕事だ。
 アルファベットとは関係がない。ただ船を操ることだけに特化した人材。
 その水夫がいなければ、船をまともに動かすことはできない。

 逃げ帰るくらいはできるかも知れない。
 しかし、もし後ろから船で追撃を受ければ為す術なく崩れてしまうだろう。

 いや、ヴィップに船で背後を突ける余裕はない。
 これは、狙っているのだ。オオカミが逃げ出すことを。
 退路を脅かして、逃げ帰ることを。

(;゚д゚)(ぐっ……)

 なら逃げなければいい。
 ここに留まって戦い続ければ済む話。
 マリミテ城さえ奪ってしまえば退路など関係ない。

 だが、ここで効いてきたのが、オオカミ軍の中に紛れ込んだヴィップ兵だった。
 そのヴィップ兵たちは、恐らくこう言ったのだろう。
 「水夫がやられた、このままじゃ退路を断たれて全滅してしまう」と。

 不安事は迅雷の如き早さで伝わるものだ。
 いや、そうあるべきなのだ。退路が脅かされているとあれば。
 素早い情報伝達が行われるべきなのだ。

 それを、利用された。
 オオカミ軍は浮足立ち、自然と退路へ足が向かった。
 ヴィップ軍に立ち向かうこともせずに。
35 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:15:08.20 ID:Ldz+roI90
 腑抜けが、と責めることもできなかった。
 散々ドクオに上回られ、翻弄されたのは、他でもない自分なのだ。
 大将がドクオを封じていられれば、こんな事態に陥ることもなかったのだ。

 南から出てきたヴィップ兵は、オオカミを攻めることなく川へ向かった。
 そして水夫を討ち取った。
 南が手薄だったことを利用しての行動だった。

 北から出た兵が水夫を狙うのが一番の近道だ。
 しかし、オオカミの戦力が充実していたため、北から水夫を狙うのは不可能と判断したのだろう。
 遠回りになっても、南からこっそりと狙ったほうが確実性があったということだ。

 戦を見通す力。
 それを実行する力。
 その両方に長けていたドクオだからこそ、為し得た作戦なのだ。

 悔しいが、これはもう、完全な負け戦だった。

(;゚д゚)「……退却だ」

 すぐに退却の鉦を鳴らさせた。
 兵が逃げたがっている。この状況で戦うのは、不可能だ。
 一刻も早く船に向かうしかない。

 まだ水夫は若干数が残っているという。
 今なら急げば犠牲も少なく逃げられるだろう。

 そこまで考えて、ようやくヴィップがわざと水夫を残したのだと気付いた。
 オオカミに逃げる決断をさせるために、あえて。
 何もかも、ドクオの計算通りに動かされていたのだ。
45 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:18:07.61 ID:Ldz+roI90
 噛み切った唇から血が滲み出た。
 悔しさを何かにぶつけなければ収まらない。
 ドクオ一人相手に、大将である自分がここまで翻弄されたのが、悔しくて仕方なかった。

 しかし、今は悔しさなど噛み締めている場合ではなかった。
 逃げること。すぐにでもオリンシス城に到達すること。
 それだけを考えなければならない。

 だが、当然ヴィップがそれを易々と許してくれるはずはなかった。

(;゚д゚)「くっ……」

 慌てて退却を始めたオオカミを、乱してくる。
 決して厳しくない。手緩くもない。
 逃げさせつつも確実に犠牲を与える追撃だ。

 ここはしんがりが重要になる。
 フィルとガシューが合流した状態だが、できれば先頭を走らせたい。
 野戦が得意と言ってもフィルに撤退戦は任せられない。ガシューは尚更だ。

 やはり、自分が行くしかなくなる。

( ゚д゚)(最初からこちらが狙いだったということか……)

 自分を討ち取るために、この状況に持ってきたのか。
 いや、ドクオの中で一番大きかったのは、当然だが戦に勝つことだっただろう。
 実際、自分が撤退を決めた時点で、戦には勝利しているのだ。
52 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:21:06.37 ID:Ldz+roI90
 先ほどの一騎打ちは、あくまで時間稼ぎ。
 そして、自分の意識を、全体の戦いではなく個人の戦いに向ける意図もあった。
 つまり、計算通りだったのだ。

 だが、計算尽くしだけに終わらないのが、ドクオという武将の怖さだった。

( ゚д゚)「ッ……!!」

 小刻みな突きのように。
 何度もぶつかっては引いていく、ヴィップ軍。
 ドクオの部隊だ。

 こちらは、オオカミ軍を無事に撤退させなければならない。
 ドクオも、オオカミ軍に犠牲を与えていく必要がある。

 お互い、全体を見ながら。
 それでも、再び一騎打ちに臨まんとする気概はある。

 戦には、負けた。
 マリミテ城は、守り抜かれてしまった。

 しかし、ドクオを討ち取ることは、決して不可能ではない。

 大将として、武人として。
 意地と誇りを持ってして。

 ドクオを、討ち取りたい。

( ゚д゚)「……こっちへ来い、ドクオ」
62 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:24:11.25 ID:Ldz+roI90
 誰にも邪魔はさせない。
 二度目の一騎打ち。

 互いが望んでいるのなら、やらない道理はない。
 そう思うが、実現できるかどうかは、難しいところだ。

 それでも、願った。



――オリンシス城付近――

(ゝ○_○)「正攻法で充分ですよ。スピードさえあればヴィップ軍はどうとでもできるでしょう」

( ´ー`)「しかし、ショボンやモララーの実力は侮れません。
     ですが逆に言えば、ショボンとモララーさえ封じてしまえば後は怖くないかと」

(ゝ○_○)「ふむ、なるほど。ではそう致しましょうか」

 リレントが颯爽と駆け出していく。
 頼もしく、心強い背中だ。

 野戦は不得手、奇策しか能がない、などとヴィップでは言われていた。
 リレント=ターフル。オオカミ軍の中将だ。

 しかし、この人は想像以上の力を持っていた。
 今回の策など、特にそうだ。

 最初に、ヴィップに猛攻を仕掛けた。
 それがモナーの死を誘発することになり、一武将を撃破。
67 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:27:16.74 ID:Ldz+roI90
 そこからオオカミは押されたが、自分が寝返るまで辛抱強く耐えていた。
 恐らくあれは、リレントの策だったのだろう。
 絶好のタイミングで自分を裏切らせるための。

 自分が裏切るという保証はなかった。
 仮に裏切ったとしても、それが本心である証左は容易く得られるものではない。
 しかし、リレントは戦局を操ることで、自分の裏切りを確固たるものにしたのだ。

 押したことも、押されたことも、全て思惑通りだった。
 今回の戦は、リレントの掌の上で展開されていたのだ。

( ´ー`)(リレントを無能だなんて言ったのは誰だーよ……)

 確かに近年、リレントは戦功を得ていなかった。
 自分と重ねて見てしまったほどだ。

 だからこそ、今回の戦には絶対勝つという、並々ならぬ気迫があった。
 自ら手紙を渡してくれた。自らの眼でイヨウへの攻撃を確かめてくれた。

 ここまでできる人が、無能なはずがない。
 噂ではミルナに疎んじられているというが、節穴としか思えなかった。
 あるいは、私怨絡みでリレントを軽薄に扱っているのではないか、とも考えられた。

 境遇が似ている。
 だからこそ、リレントは自分を引き抜こうとしてくれたのだろうか。

( ´ー`)(……気持ちに応えなきゃいけねーよ)

 アルファベットを握り直した。
 軍を率いて、駆け出す。
70 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:30:12.17 ID:Ldz+roI90
 目指すは敵軍。
 モララーのいる部分だ。

 将官を討ち取ってしまいたい。
 自分のためにも、リレントのためにも。
 今の自分なら、きっとできるはずだ。

 オオカミ軍少将、シラネーヨ=ネーロ。
 その名を、戦場にて轟かせる。

 そんな些細な夢が、いま、叶おうとしていた。

(#´ー`)「存分に暴れるんだーよ!」

 敵軍はいまだ倍の兵数を擁している。
 しかし、統率は乱れ、陣も崩壊寸前。
 何も怖くはない。

 次々に首を刎ねた。
 アルファベットP。リーチと威力は抜群だ。
 普通に戦わせてくれれば、これくらいの活躍はできるのだ。

 個人的な感情に任せるなら、狙いたいのはショボンだった。
 しかし、ここは現実的になる必要がある。
 まずはモララーだ。

 不意をついた攻撃で撹乱すれば、流れに乗って討ち取ることも可能だろう。

( ´ー`)(……ん?)
82 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:33:15.98 ID:Ldz+roI90
 敵軍が、急に固くなった。
 しっかりと統率された部隊に当たったようだ。

 その部隊を率いている将が、意外だった。

( ´ー`)「ベルベット……」

 黒目がちの大きな瞳を持った男だ。
 いつも冷静で、感情を全く表に出さない。
 機械のような無気味さを持った少尉だ。

 なるほど、悪くない。
 ベルベット=ワカッテマスはまだ若いが、いずれは国軍の中枢を担うことを期待されている武将だ。
 アルファベットに秀でており、指揮官としての能力にも優れている。

 こいつを討ち取れば、ヴィップは再び大きな打撃を受ける。
 アルファベットは同じPだが、こちらは経験で優っているのだ。
 勝てる可能性は高い。

( ´ー`)「討ち取ってやるんだーよ」

 手綱を引っ張り、加速した。
 敵陣に斬りこんでいく。

 ベルベットは、自分を見据えていた。
 他のオオカミ兵を相手にしながら、こちらを見ているのだ。
 黒目がちなため、そんな気がするだけだろうか。いや、違う。

 自分を討ち取ろうと、心の中が熱くなっているのだ。
94 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:36:12.68 ID:Ldz+roI90
( ´ー`)(あいつが冷静さを欠いてるなんて、意外だーよ)

 そう見えるだけかも知れない。
 しかし、いつもと違うのは明らかだ。
 好都合だった。

 若い将を重用し、育てていたショボン。
 その若い将が討ち取られれば、どれほど落胆するだろう。
 考えただけで口角が釣り上がる。

 ベルベットとの距離が、詰まる。
 今はもう、はっきりとこちらを見ていた。

 アルファベットを、振り上げた。

 鳴り響く衝突音。
 受け止めたベルベット。

( ´ー`)「お前も討ち取ってやるんだーよ」

( <●><●>)「……無謀であることは分かってます」

 すぐに打ち合いになった。
 二合、三合、四合。
 積み重なっていく。

 ベルベットはさすがに上手い。
 力はさほどないが、腕や手首の使い方が巧みだ。
 自分より八つも下とは思えない。
100 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:39:46.54 ID:Ldz+roI90
 確かにベルベットのほうが才能はある。
 しかし、自分のほうが八年長くアルファベットに触れているのだ。
 その差は、必ず出る。

 八合、九合。
 素早い打ち合いが続いていく。

 十合目。
 力任せに振り下ろした。
 ベルベットのアルファベットが右に逸れる。

 すかさず横に払った。
 上手くいった、と思ったがベルベットは受け止めてきた。
 やはり腕の使い方が上手い。

( ´ー`)(キリがねーよ……)

 お互い、隙は見せていない。
 このまま十数合打ち合っても、ミスはしないだろう。
 それほどに実力が拮抗している。

( <●><●>)「……どうして裏切ったのですか」

 ベルベットの、低い声。
 背筋が凍りそうな、鋭い視線。

 落ち着け、と自分に言った。
 ベルベットも、アルファベット同士では埒が明かないと見て、声で揺さぶろうとしているのだ。
 それなら、逆に利用してやればいい。
115 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:42:49.67 ID:Ldz+roI90
( ´ー`)「簡単なことだーよ。処遇に不満を感じたんだーよ」

( <●><●>)「ヴィップ軍東塔の処遇は、極めて妥当なものでした」

( ´ー`)「お前には分かんねーよ。九年も大尉に留め置かれたやつの気持ちなんて」

 ベルベットの打ち込みを受け止めた。
 弾いて、斜めに振り下ろす。
 ベルベットも同じように受け止める。

( ´ー`)「ショボンやモララーに期待されて、いいとこに置かれて……不満なんて感じるわけねーよ」

( <●><●>)「個々の能力を勘案した上での配置だったと理解しています」

(#´ー`)「一生言ってろ。お前にゃ分かるわけねーよ」

( <●><●>)「そうやって他人に責任を押し付けているだけだと分かってます」

(#´ー`)「うるせーよ。どう考えてもショボンのやり方はおかしかったんだーよ」

( <●><●>)「そんなことはありません。ショボン大将は賢い人です」

(#´ー`)「てめぇより俺のほうが長く居たんだーよ。俺のほうがよく分かってんだーよ」

( <●><●>)「頭の悪い人間は、時間をかけても分からないものです」

(#´ー`)「……お前、心底うざいんだーよ。ここまでうざいやつだとは知らなかったーよ」
132 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:45:47.38 ID:Ldz+roI90
 鋭く横に振った。
 ベルベットは、身を引きながら受け止める。
 しかし、こちらは力で勝っている。

 押して、弾いた。
 ベルベットの懐には、隙。
 見逃さずに、小さな動作で隙を突いた。
 いや、突こうとした。

 ベルベットは、弾かれたアルファベットをそのまま振り下ろそうとしていた。
 気付いてからすぐに防御体勢へ移る。
 寸でのところで受け止めた。

(;´ー`)「ぐっ……」

( <●><●>)「貴方が何故重用されなかったか、よく分かりました」

(#´ー`)「黙れってんだーよ!!」

 押し返す。
 何度も力任せにアルファベットを振るった。
 この力の差は大きい。ベルベットは受け止めることしかできない。

( <●><●>)「……確かに、アルファベットではそれなりに才があったようですね」

(#´ー`)「あ?」

( <●><●>)「ですが、根本的な部分で頭が悪すぎます」

(#´ー`)「喋るんじゃねーよ。死ねよ」
147 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:49:27.10 ID:Ldz+roI90
 尚も強引に振り続けた。
 打ち合いは既に二十を超えている。

(#´ー`)「てめぇの分析なんて知らねーよ。俺はオオカミの将として手柄を立てるだけなんだーよ!」

 打ち込み。
 強烈な音が響いた。

 ベルベットの体勢が、崩れた。

(#´ー`)「終わりだーよ」

 完全に隙だらけ。
 一撃で討ち取れる。
 アルファベットを、振り下ろした。

 それが、弾かれた。

(;´ー`)「なっ……!!」

 崩れた体勢は、フェイク。
 あえてそうすることで油断を誘ったのか。

 違う。
 この体勢からでは、ベルベットもどうすることもできない。 
 そんなことが目的ではない。

 ベルベットの後方が、空虚。
 兵が、一人としていないのだ。
 おかしい。何故だ。
162 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:52:12.46 ID:Ldz+roI90
 しかし、その理由に、気付いたとき。
 全身から汗が噴き出て、止まらなかった。

(´・ω・`)「お前が裏切った理由は分かるさ。処遇に不満を感じていたんだろう」

 ショボン=ルージアル。
 その右手に、F。
 その左手に、W。

 遠方で、静かにアルファベットを構えている。

 視界全ての動きが、遅い。
 自分の動きも、ショボンの動きも。
 ゆっくりと、Fが引かれていく。

(´・ω・`)「何故お前を重用しなかったか、最後に教えてやる。
      自信過剰で何も自分のことが分かっていない、大馬鹿野郎だったからさ」

 動け。
 この両手よ、動いてくれ。
 Wの攻撃を、防いでくれ。

 願いは、儚いほど容易く、雨の中に溶けていく。

(´・ω・`)「そのうえイヨウを斬って裏切るとは、どうあっても許せん」

 Fが、限界まで引き絞られたのが、分かった。
 ショボンの鬼のような形相も、はっきりと分かる。
183 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:55:11.17 ID:Ldz+roI90
 死の恐怖が。
 天から雨とともに、近づいていた。
 到達していた。

(;´ー`)「ショボン大将ッ!! 待っ――――!!」

(´・ω・`)「黙れ」

 雨の中を突き進む光。
 自分の視界を、真っ黒に染め上げる。

 何かが自分の中を通り抜けた。
 そこで、視界は完全な漆黒に染まった。



――オリンシス城付近――

 シラネーヨを討ち取ったという報せはすぐに届いた。
 ベルベットが隙を作って、ショボンがWでしとめたのだという。

 いつもと同じ調子でベルベットは駆けて行った。
 どうするのか、と思っていたが、討ち取るために的確な行動を取ったようだ。

 これで裏切り者は消えた。
 イヨウの魂も浮かばれてくれるはずだ。

(;^ω^)(あとは、ドラルだお……)
204 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 18:58:09.95 ID:Ldz+roI90
 雨が強くなっていた。
 既に夕刻に達しており、戦場も暗くなっている。
 このままでは、ドラルを討ち取るのが難しくなってしまう。

 ドラルはずっと動き続けている。
 リレントが大人しくしているのとは対照的だった。

(;^ω^)(ドラル……どこにいるんだお)

 動き続けているからこそ、所在が掴めなかった。
 ドラルは騎馬隊を率いて縦横無尽に駆けているのだ。
 例え掴めても、それと戦うのは難しい。

( ・∀・)「おい、一回しか言わねーからよく聞け」

 どうやって迫ろうか悩んでいたときだった。
 モララーに近づかれ、声をかけられた。
 その接近があまりにも静かだったため、少し驚いてしまった。

(;^ω^)「モララーさん」

( ・∀・)「今から俺がドラルの騎馬隊を追い立てる。
     お前は左方に移動しろ。こっから半里先までだ。
     必ずドラルの部隊をそこに向ける。必ずだ」

 降りしきる雨は音も伴い、さらに強さを増していく。
 視界は悪い。ドラルを追い立てるなど、並大抵のことではない。
 しかし、モララーが必ずと言ってくれた。
215 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 19:01:10.99 ID:Ldz+roI90
 それは、モララーにしかできないことだ。
 自分では到底不可能。
 だからこそ、やってくれるのだ。

( ・∀・)「裏切ったバカはショボン大将が討ち取ってくれた。
     戦況は五分だ。あと手強いのはドラルの部隊だけ。
     ドラルさえ破れば戦に勝てる」

 モララーが右手で手綱を引いた。
 馬首を右に向ける。

( ・∀・)「準備を万端にしとけ。すぐに来るぞ」

 馬が前足を高く上げ、勢いをつけて駆け出して行った。
 モララーの背はすぐに見えなくなる。

 数千のI兵で構成された騎馬隊。
 あれなら、ドラルの精強な部隊とも互角に渡り合えるだろう。

 ただ、モララーは戦うわけではない。
 追い立てる、と言った。相手の部隊をコントロールするということだ。
 それは確実に相手を上回る必要がある。

 どうやって追い立てるのか。
 自分には方法が思い浮かばないが、モララーならやってくれるだろう。
 自信家ではあるが、シラネーヨのように身の程を知らない人ではない。

 シラネーヨとは何度か話したことがあった。
 いつも人を見下したような顔で、口癖のように知らねーよと言っていた。
 上手く隠しているつもりだったのだろうが、絶対的な自信も持っていた。
222 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 19:04:19.22 ID:Ldz+roI90
 それが過信だと、本人は気付いていなかった。
 だからこそ裏切り、そしてショボンに討ち取られたのだろう。

 報告を聞く限り、シラネーヨが立ち向かっていった位置はどう考えても無謀だった。
 ショボンやモララーに近い部分だったのだ。
 それでも勝てる、と思っていたのだろうか。周りが見えていなかったとしか思えなかった。

 シア城戦では共に戦った仲であるイヨウを、斬った。
 憤りで身が弾けそうな思いだったが、ベルベットとショボンが仇を討ってくれた。
 居なくなってしまったのは悲しいが、涙を流してもイヨウは帰ってこない。

 モナーが死に、イヨウが死んだ。
 戦場に立っている以上、誰だって死ぬ可能性があるのだ。
 それは仕方のないことだ。

 そして、生きている者にできること。
 それは死んだ者のぶんまで、戦うこと。

 精一杯、生き抜き、戦い抜くことだ。

( ^ω^)「ッ!!」

 来た。
 地響きと共に、蹴りあげる水飛沫と共に。

 ドラル=オクボーンだ。

 先頭に立ってこちらに向かっている。
 後方にはモララーがいるのだろうが、ここからでは確認できない。
 しかし、やってくれたようだ。
228 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 19:07:14.21 ID:Ldz+roI90
 アルファベットを、強く握った。
 絶対に離すまいと、力の限り振るわんと。

 この手で、ドラルを討ち取るために。

( `ω´)「ドラル=オクボーン!!」

 大声で叫んだ。
 ドラルは、自分に気付いているようだった。

( `ω´)「ヴィップ軍大尉、ブーン=トロッソ!! いざ参るお!!」

 手綱を思い切り引いた。
 一瞬の溜めのあと、馬が飛び出していく。

 雨粒を弾いて駆ける。
 あっという間に縮まっていく距離。

 ドラルが、アルファベットを構えていた。
 望むところだ、と言わんばかりに。

 やるしかない。
 ここでドラルを、討ち取るしかない。

 ドラルの顔が、はっきりと見える。
 その距離にまで、迫った。

(#`ω´)「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

《#´_‥`》「ぬああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
248 :第54話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/30(月) 19:10:23.43 ID:Ldz+roI90
 互いにアルファベットを振り上げた。

 馳せ違う。
 ドラルのSと、打ち合った。
 全身が震えるような衝撃。

 すぐに馬首を返して駆けた。
 ドラルも素早くこちらへ向かってくる。

 再び、両者のアルファベットが振り上がる。


 この戦のクライマックスを迎えていた。














 第54話 終わり

     〜to be continued

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