3 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 15:37:19.19 ID:T46EWQ6V0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
27歳 大尉
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●('A`) ドクオ=オルルッド
27歳 中尉
使用可能アルファベット:P
現在地:マリミテ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
37歳 大将
使用可能アルファベット:W
現在地:オリンシス城付近

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
32歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:オリンシス城付近

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
35歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

4 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 15:38:04.09 ID:T46EWQ6V0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
33歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
30歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:
シャッフル城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
36歳 中尉
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
52歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:オリンシス城付近

●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
26歳 少尉
使用可能アルファベット:P
現在地:オリンシス城付近
9 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 15:39:28.25 ID:T46EWQ6V0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ/プギャー

大尉:ブーン/シラネーヨ
中尉:ビロード/イヨウ/ドクオ
少尉:ベルベット


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
12 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 15:40:09.96 ID:T46EWQ6V0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:
M:
N:
O:ヒッキー
P:ドクオ/ベルベット/アニジャ/オトジャ
Q:モナー
R:ブーン/ギコ/イヨウ/プギャー
S:ニダー
T:アルタイム
U:ジョルジュ/ミルナ
V:モララー
W:ショボン
X:
Y:
Z:
18 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 15:42:02.47 ID:T46EWQ6V0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・ヴィップ 対 オオカミ
(マリミテ城〜オリンシス城)

・ヴィップ 対 ラウンジ
(パニポニ城〜ギフト城)

 

21 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 15:43:38.47 ID:T46EWQ6V0
【第52話 : Collision】


――マリミテ城付近――

 乾坤一擲の策だった。
 このために全てを費やしてきた。

 ミルナを、討ち取る。
 ただそのためだけに。

(#'A`)「絶対に停止するな! 突き進め!!」

 騎馬隊の先頭に立って、敵兵を蹂躙した。
 アルファベットPで幾つもの首を飛ばしていく。

 総兵数、僅かに五千。
 対するオオカミ軍、五万。

 圧倒的な兵数差。
 それを埋めるのは、決して容易ではなかった。

(#'A`)「オオオオオオオォォォォォッッ!!」

 アルファベットを振りまわす。
 敵兵の胴を二つに割り、道を切り開いた。
 オオカミは統率を失っているらしく、為す術もなく崩れていく。
31 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 15:46:30.66 ID:T46EWQ6V0
 敵の守りが薄い部分を徹底して攻めた。
 オオカミはヴィップの策を受けてから慌てて明かりを灯したが、かえって好都合だ。
 こちらからは敵兵の少ない部分がよく分かる。

 狙いはミルナ。
 それは最初から決めていたことだ。

 兵数差がある相手に勝利を収めるには、大将を討ち取るしかない。
 頭を失った獣は死ぬ。だから防衛戦であろうと、ミルナを狙うことは決めていた。
 でなければマリミテ城を守りきったことにならない、と思ったのだ。

 自分の過失を取り戻したことにならない、と思ったのだ。

[#`◎´]「止まりやがれ! ドクオ=オルルッド!」

 カッタランス少尉がKを構えていた。
 ハルバード状のアルファベットで柄は長い。
 リーチではPよりも四尺ほど優る。

 だが、所詮は下位アルファベット。
 Pの一撃で敵を怯ませ、追撃。
 アルファベットを粉々に砕いてから、首を刎ねた。

 確実にオオカミを圧倒していた。
 作戦の準備が充分整っておらず、北方面は穴から出るペースが予定より遅くなった。
 しかし、それさえ奏功し、他の三方面と足並みを揃えることができたのだ。

 今のところ、何もかもが上手くいっている。
 運さえも味方してくれている。
 この勢いのままミルナを討ち取ってしまいたい。
39 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 15:49:43.22 ID:T46EWQ6V0
 だが、易々とそれを許してくれるはずはなかった。

(;'A`)「ッ!!」

 あの時と同じように。
 闇の中でも、的確に自分を狙ってきた。

(-_- .)「…………」

 イッチロー=マリナーズ。
 弓の名手として名高い将。

 どうやら一騎打ちを望んでいるようだった。
 こちらは静止できない。流れのままぶつかることになる。
 それでもいいなら、やってやる。速度を上げた。

 イッチローがMを誰かに渡して、Oを構えた。
 自分のPとは一つしか違わないうえに、防御系アルファベット。
 互角の戦いになる。

 だが、将校は討ち取れるだけ討ち取っておきたい。
 特にOを扱えるほどの将なら、尚更だ。

(#'A`)「うおおおおっ!!」

 イッチローと、ぶつかった。
 素早くアルファベットを左右に振る。押していく。
 時間はかけられない。早くしないとオオカミは体勢を立て直してしまう。
48 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 15:52:30.27 ID:T46EWQ6V0
 立て直させないためにも、将校を討ち取る必要がある。
 とにかく早く討ち取ることが大事なのだ。

(-_- .)「無謀すぎる。こんな作戦、上手くいくものか」

 イッチローが冷静な声を出した。
 とても一騎打ちの最中とは思えないようなものだった。

(#'A`)「押されてんだろうがよ!」

(-_- .)「いずれ押し返す。兵数差を考えるべきだ」

(#'A`)「考えたからこその作戦だ!!」

 何度もOで防いでくるイッチロー。
 ひたすら守勢。どうやら時間を稼ぐことが目的のようだ。

 こんなところで立ち止まっているわけにはいかない。
 目的はミルナを討ち取ること。戦に勝つことなのだ。

(#'A`)「みんなの信頼に応えるためにも!! 勝たなきゃいけねぇんだ!!」

(-_-;.)「くっ!!」

(#'A`)「おおおおおぉぉぉっ!!!」

 アルファベットを、弾き飛ばした。
 イッチローは完全に無防備になる。
57 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 15:56:00.84 ID:T46EWQ6V0
 立ち止まるわけにはいかない。
 このまま、突き進むしかないのだ。

(#'A`)「絶対に勝ってやる!!」

 イッチローの胴を両断し、それが地に落ちる頃には既に遠く離れていた。
 目指すは、ミルナただひとり。

 近いのか遠いのかも分からない。
 もしかしたら、敵軍に紛れ込んだヴィップ兵が既に討ち取っているかも知れない。
 そんな期待も微かに抱きながら、疾駆した。

 勝負は、夜が明けるまでだ。



――マリミテ城付近――

(#゚д゚)「見失うな! 押し潰せ!」

 必死に怒号を飛ばした。

 闇に紛れて襲い来るヴィップ軍。
 兵数は僅かに五千だが、まるで同数を相手にしているような恐怖を覚える。
 十倍を擁するオオカミを相手に、巧みに攻め込んできた。

 ただの夜襲ならまだいい。
 問題は、オオカミ兵になりすましたヴィップ兵が軍内にいることだ。
69 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 15:59:45.86 ID:T46EWQ6V0
 いつどこで狙われるか分からない。
 常に周りに気を配り、その上でドクオを相手にしなければならないのだ。
 相手を五千と侮れば敗戦は必至だった。

(#;゚д゚)「イッチローが討ち取られたか……」

 悲痛な面持ちの伝令が、そう伝えてくれた。

 情報の伝達は素早かった。
 イッチローがそれほど遠くにいなかったためでもある。

 ドクオはすぐ近くにまで迫っているようだった。
 戦いの波が押し寄せてくる感覚はあるが、なにぶん闇の中のため、思ったようには掴めない。

 北方面にはドクオが来ている。
 それは間違いない。
 ではあとの三方面はどうか。

 東にはフィルが、西にはガシューがいる。
 手薄なのは南だが、逆に言えば中将以上が討ち取られる心配はない。
 問題は南以外ということになる。

 フィルは大丈夫だろう。
 野戦では信頼が置ける武将だ。冷静さもある。
 放っておいても問題ないだろう。

 しかしガシューはどうか。
 特別アルファベットに優れているわけではない。
 戦も決して上手くはない。
77 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:02:53.08 ID:T46EWQ6V0
 もしJの壁を突破しているような兵が他にいれば、危ういかも知れない。
 いや、恐らくは何人か壁の突破者を連れてきているだろう。
 兵が少数なら精鋭であるべきというセオリーは守っているはずだ。

 ガシューはアルファベットOを操るが、不意打ちに反応できるほど敏感ではない。
 もし一人でも中将を失うようなら大損害だ。軍内の動揺は避けられない。
 守りつつも確実に攻めていく必要がある。

 五千の兵。
 城にも兵を残しているだろうが、限りなく五千に近い数を出してきているはずだ。
 それでも少数であることに変わりはない。

 自陣深くまで誘いこめば逃げ場を失う。
 普通はそうだ。しかし、今回は状況が違う。
 その自陣に敵兵がいる。

 たかが一兵卒に何ができる、とも思うが、油断してはならない。
 いつどこで目を光らせているか、牙を研ぎ澄ませているか、分からないのだ。

 いつ背後から襲われるか、分からないのだ。

( ゚д゚)「よく迫ったと言っておこうか」

 アルファベットUを背後に回した。
 片手で受け止め、弾く。
 Iの刃は砕け散っていた。

 背後からの一撃。
 アルファベットは、Iだ。
85 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:06:27.54 ID:T46EWQ6V0
( ゚д゚)「俺の背後を取るとは大したものだ。あとは壁さえ突破していれば良かったかも知れんな」

 背後に迫っていたヴィップ兵。
 鋭い一撃を見舞ってきたが、所詮はIだ。
 壁を突破したアルファベットとは質が違う。

 粉々になったアルファベットを握りしめるヴィップ兵。
 刃はない。それでも、棒だけで打ちかかってくる。

( ゚д゚)「お前のような兵は嫌いじゃないさ」

 最後の一瞬まで戦い抜こうとする兵。
 こんな男が、果たしてオオカミに何人いるだろうか。
 両手さえあれば足りそうだった。

 Uを振りまわしてヴィップ兵を討ち取った。
 やはり、近くにまで迫ってくる兵はいる。
 闇に紛れていることと、混戦状態になっていることが大きいようだ。

 一瞬たりとも気が抜けない。
 相手をドクオのみと侮るな。五千と侮るな。
 格上と戦っているつもりでなければ勝てない。

(#゚д゚)「隙なく守り抜け! ヴィップ軍を自由に動き回らせるな!」

 今は確実に命令を下していくことだ。
 その積み重ねがあれば、ドクオを打ち破れるはずだ。

 自分も動き出した。
 同じ場所に留まっていては格好の的になってしまう。
92 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:09:30.21 ID:T46EWQ6V0
 それに、ドクオを自らの手で討ち取りたい気持ちが強かった。
 恨みではない。純粋に、指揮官同士で決着をつけたいのだ。
 また、ドクオもそれを望んでいるはずだった。

 干戈の声はうるさいほどに響き続けている。
 ドクオの部隊は、決して遠くない。

 そこに向かって駆けた。
 ドクオ以上のアルファベット使いはこの場にいないはずだ。
 自分を討ち取りに来るとしたら、ドクオ以外はありえない。

 既に多くの兵が討ち取られたという。
 犠牲は数千に及んでいるだろう。
 それに見合う損害をヴィップに与えられているとは思えない。

 いずれは数の差で圧倒できる、と思う。
 しかしヴィップがまだ策を持っている可能性もある。
 確実に勝つためには、ドクオを討ち取る必要があるのだ。

 徐々に擾乱が広がってきた。
 いや、自分が近づいたためにそう思うだけかも知れない。
 ただ、いずれにせよ、戦いの場は近づいている。

( ゚д゚)(ッ……!!)

 怒涛の勢いで駆けている部隊があった。
 騎馬隊。オオカミの兵を蹂躙していく。
 間違いなく、ドクオの部隊だ。
103 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:12:34.71 ID:T46EWQ6V0
 為す術もなくオオカミ兵が討ち取られてく。
 瞬時に憤怒の情が高まった。
 討ち取ってやる、と自分でも気づかぬ間に声に出していた。

(#゚д゚)「ドクオ=オルルッド!!」

 止まらずにオオカミ兵を薙ぎ倒していくドクオに向かって、声を張り上げた。
 こちらを確認したかどうかは、分からない。

(#゚д゚)「ミルナ=クォッチはここにいるぞ!! 来い!! 俺の手で討ち取ってやる!!」

 やはりこちらを見たかは分からない。
 しかし、ドクオの部隊にははっきりと動きがあった。
 方向が逸れている。こちらへ、向かっている。

 そうだ、来い。
 決着をつけよう。

 俺はお前を討ち取りに行く。
 お前は俺を、討ち取りに来い。

 心の中で呼びかけて、アルファベットを構えた。
 闇からの襲撃者は、猛然と迫り来る。
 ただ自分の首だけを狙って。

 猛獣の牙が、闇の中でもはっきりと輝いていた。
 若き新鋭。ヴィップの未来を担う将。
 尚更、ここで討ち取っておくべき漢なのだ。
121 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:15:40.17 ID:T46EWQ6V0
(#'A`)「ミルナァァァァァ!!!」

(#゚д゚)「ここで果てろ、ドクオ=オルルッド」

 先頭に立っているドクオが、突っ込んできた。
 奮然とした構え、勢い。
 思わず気圧されそうなほどだ。

 しかし、負けるわけにはいかない。
 国軍の大将として。
 一人の武人として。

 勝たなければならないのだ。

(#゚д゚)「ハァァァァァッ!!!」

 打ち込んだ。
 ドクオのPとの衝突。
 激しい音が鳴り響く。

 この一騎打ちで勝利を掴んでやる。
 それが互いの思いだった。
 だからこその、一騎打ちだった。
134 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:19:16.10 ID:T46EWQ6V0
――オリンシス城付近――

 モナー=パグリアーロ、戦死。
 ヴィップ軍最古参の中将が、ドラル=オクボーンに討ち取られた。

 その報せは、瞬く間に両軍に知れ渡った。

( ・∀・)「分かってんだろ、ブーン」

 モララーに肩を掴まれた。
 その手が微かに震えているように感じたのは、果たして気のせいか。
 もしかしたら、自分が震えているせいかも知れない。

( ・∀・)「モナー中将は勝利を確実にするために自ら犠牲になった。
     俺たちはそれに応える必要がある。勝利のために最善を尽くす必要がある。
     ……でもな……」

 淡々とした語り口。
 悲愴感が、にじみ出ているように思えた。

( ・∀・)「仲間の仇も取りにいかねーようじゃ、武人とは言えねーよ」

 モララーの手が、握り拳に変わった。
 心臓のあたりを、軽く叩かれる。
 そこが熱くなるのを感じた。

( ・∀・)「ドラル=オクボーンを討ち取るんだ。他の誰でもない、お前がそれをやるんだ。
     次代を担う将としての雄姿を、モナー中将のところまで届くように、見せつけてやれ」

(  ω )「……はいですお」
159 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:23:30.39 ID:T46EWQ6V0
 力強く頷いて、駆け出した。

 モララーはきっと、自分がドラルを討ち取れるよう、全力で軍を指揮してくれる。
 ヴィップ軍が勝てるように。その上で、ドラルを討ち取れるように。
 その指揮ができるのは、ショボンとモララーしかいない。

 だからこそ。
 いや、それを抜きにしても、自分が仇を取るべきなのだ。
 モナーには何度も世話になった。多くのことを教えてもらった。

 恩義に報いるためにも。
 ドラル=オクボーンを、討ち取るしかなかった。

(;^ω^)「……!!」

 モナーの遺体が運ばれてきていた。
 敵将との一騎打ちを行ったというのに、不思議と表情は安らかだ。
 首が残っているのはドラルなりの敬意の表れか。

 側を通り過ぎていくのを、黙って見つめていた。
 心に期するものを感じながら。

 全軍の足並みは揃っていた。
 兵数はこちらが倍を擁している。
 慌てずに包みこめばオオカミを圧倒できる。

 しかし、オオカミはどう出るか。
 状況不利と判断して、オリンシス城まで下がる可能性もある。
 無論、ヴィップは全力で阻止するが、立ち向かってくれたほうがありがたかった。
167 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:26:57.44 ID:T46EWQ6V0
( ^Д^)「……オオカミは、迎撃体勢だな」

 プギャーが馬上から言った。
 撤退ではない。迎撃だ。
 オオカミは、ヴィップを迎え撃とうとしている。

 オオカミの総指揮官はリレント=ターフルだろう。
 奇策を好む将として有名だ。謀略も得意としている。
 何か策があると見て間違いなさそうだった。

(´・ω・`)「叩き潰してやるさ」

 ショボンの背のWが、翼のように見えた。
 大軍を統べる中枢。
 揺るぎない、国軍の大将。

 そのショボンの号令で、ヴィップ軍は動きだす。

(´・ω・`)「押し包め! オオカミ軍の力を削いでやるんだ!」

 騎馬隊を両翼に展開させ、羽根を広げるようにして三日月を描く。
 敵軍を包みこむときの基本的な陣形だ。

 ヴィップ軍の動きは素早い。
 オオカミは小さく固まることしかできないはずだ。

 しかし、突如としてオオカミは軍を散らばらせた。

(;^ω^)(これはっ……)
178 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:30:02.07 ID:T46EWQ6V0
 一見、大きな隙のように見える。
 だがオオカミはしっかりと軍を統率している。
 無駄のない動きで軍を四散させている。

 しかし、何のために。

( <●><●>)「ブーン大尉、部隊を左へ」

(;^ω^)「ベルベット?」

( <●><●>)「オオカミは撹乱作戦に出ています」

(;^ω^)「でもこっちの包囲は厚いお。突き破ろうとするのは無謀だお」

( <●><●>)「だからこその撹乱です。薄い部分を作ろうとしているのです」

 言われてみれば確かに、包囲に薄い部分ができつつある。
 一部に軍を集めることによって、そこに敵軍を集中させ、他を薄くしようということだ。
 だからベルベットは部隊を左へ、と言ったのだろう。

( <●><●>)「それに――――左へ向かえばドラル=オクボーンがいます」

 視線を向けた。
 人の群れで、誰が誰なのかなど分からない。
 ただし、それはあくまで兵卒の場合だ。

 天高く掲げられたアルファベットS。
 間違いなく、あそこにドラルがいる。
188 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:33:32.34 ID:T46EWQ6V0
( <●><●>)「ドラルとぶつかるのは容易ではありません。この状況では不可能です。
        今はとにかく敵軍を押さえこむことだけに専念したほうがいいと思います」

( ^ω^)「ベルベット、ありがとうだお!」

 礼を言って、軍を左に向けた。
 敵からの攻撃は少ないが、よく見れば他のオオカミ軍はいつでもこちらに向かえる体勢だ。
 ベルベットの考えは当たっていた。

 オオカミは包囲を乱したあと、突き破ってヴィップ軍を散り散りにさせるのが目的だろう。
 それを実現させられる統率力は持っている。
 リレントとドラル。一見合わなさそうな二人だが、意外と相性はいいようだ。

 ヴィップ軍のほうから鉦が鳴った。
 どうやら包囲の形を変えるつもりらしい。
 オオカミに上手く戦われてしまっているためだろう。

 円形の囲みを、菱形に変えるようだ。
 角に戦力が溜まり、他は若干薄くなってしまう形。
 状況から考えれば危ない気もするが、何か考えがあってのことだろう。

 全軍が素早く動いていく。
 今回のオオカミの統率は大したものだが、ヴィップが劣っているわけではない。
 むしろ統率力に関しては、ミルナを欠いているオオカミなど比較にならないほどだ。

 モナーのおかげで、軍を万全な形にできていたことも良かった。
 全体を動かすのも難しいことではない。
 包囲陣の変形はすぐに終わった。
200 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:36:33.78 ID:T46EWQ6V0
 オオカミはここぞとばかりに角以外を攻めてきた。
 確かにそこは兵が少ない。囲みとしては薄い。
 狙ってくるのは当然だろう。

 それを見て、思わず口がにやけた。
 この陣の狙いに、気付けたからだ。

 薄い部分には、アルファベットに優れる部隊を置いてある。
 一見する限りでは角に人が多く攻めにくそうだが、錬度の低い兵が多いのだ。
 逆に、オオカミが攻めている薄い部分には精鋭が多い。

 オオカミは思い通りに攻められず、明らかに動揺していた。
 角に突っ込めば押し包まれる。薄いところも突破できない。
 八方塞がりの状態だ。

 そしてその先さえも、ショボンやモララーの思惑通りだった。

( ^ω^)「ッ!!」

 オオカミが、強引な攻めを展開してきたのだ。
 一点突破。精鋭を刃にして、槍のような形で攻め込んできた。

 それも、闇雲ではない。
 突破しようとしている箇所が僅かに薄いことも見抜いている。
 さすがに眼力は大したものだ。

 しかし、罠だということまでは気付けていないようだった。

( ^ω^)「後ろを固めるお! 前衛が突破されても後方で防ぐんだお!」
208 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:39:31.31 ID:T46EWQ6V0
 一点突破を試みている武将は、ドラル=オクボーン。
 そしてヴィップが"あえて"囲みを薄くした部分には、自分がいた。

 ドラルと自分がぶつかるように。
 ショボンとモララーが上手く全体を指揮してくれた。

 しかも、この戦はほぼ決着がついている。
 ドラルが一点突破に躍起になっている間に、ヴィップは包囲を崩し始めていた。
 ドラルを孤立させ、同時に敵軍の中核へと攻め込む作戦だ。

 元より下手をすれば隙だらけになる陣形だったオオカミ軍。
 ヴィップが冷静に攻め込めば、敵陣を崩すことは難しくなかった。

 数の利が活かされた形だった。
 寡兵で戦うことが多かったヴィップだが、大軍なら余裕を持って戦える。
 モナーが築いてくれた有利さもあった。戦勝は当然のように得るべきものだったのだ。

 あとは、ドラルを討ち取るだけだった。

( ^ω^)「シラネーヨさん! 側面を固めてくださいお! オオカミを弱らせるために!」

 近くにいたシラネーヨに向けて大声を出した。

 ドラルさえ押さえこめばヴィップの勝ちは確定する。
 シラネーヨが側面を固めてくれれば盤石だった。
 ドラル自身を孤立させ、討ち取ることが可能になる。

 シラネーヨがアルファベットPを振り回していた。
 こちらにまで音が響いてきそうなほど、鋭い振り。
224 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:42:37.44 ID:T46EWQ6V0
( ^ω^)「迅速にお願いしますお!」

 言って、ドラルのほうへ駆けだそうとした。
 空が曇りはじめ、いつの間にか雨まで降り出しそうな状況の中で。

 シラネーヨの声を、聞くまでは。

( ´ー`)「……知らねーよ」

 呟いたような、しかし、決意を顕わにしたような。
 そんな、低く重い声。

 シラネーヨが、駆けていく。
 周りには数百の兵。あれは、全体の動きの一部ではない。

 命令を、無視した行動。

(;^ω^)「シラネーヨ……さん……?」

 何を、しているのだ。
 錯乱した。混乱した。
 わけが分からなかった。

 シラネーヨは止まらない。
 アルファベットを低く構えたまま、接近していく。

 その先にいるのは、イヨウ=クライスラー。
 敵軍を押さえこむことに必死になっている、ヴィップ軍のイヨウだった。

(;゚ω゚)「イヨウさんッッ!!!!!!!!」
251 :第52話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/22(日) 16:46:04.61 ID:T46EWQ6V0
 決して声が届くはずはなく。
 いつしか降りだした雨に、無情なほど静かに溶け込んでいく。

 イヨウの体を駆け抜けたアルファベット。
 シラネーヨの不敵な笑み。


 雨のように降り注ぐ、イヨウの鮮血。


 世界が、動きを遅めた。
 馬から転がり落ちるイヨウの動きも、あまりに遅く。

 その情景が網膜に焼き付くまでに、充分すぎるほどの時間があった。













 第52話 終わり

     〜to be continued

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