4 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 22:58:32.56 ID:bfL8LogM0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
27歳 大尉
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●('A`) ドクオ=オルルッド
27歳 中尉
使用可能アルファベット:P
現在地:マリミテ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
37歳 大将
使用可能アルファベット:W
現在地:オリンシス城付近

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
32歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:オリンシス城付近

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
35歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近
9 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 22:59:15.18 ID:bfL8LogM0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
33歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
30歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:オリンシス城付近

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
36歳 中尉
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
52歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:オリンシス城付近

●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
26歳 少尉
使用可能アルファベット:P
現在地:オリンシス城付近
17 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:00:23.93 ID:bfL8LogM0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ/プギャー

大尉:ブーン/シラネーヨ
中尉:ビロード/イヨウ/ドクオ
少尉:ベルベット


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
21 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:01:22.58 ID:bfL8LogM0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:
M:
N:
O:ヒッキー
P:ドクオ/ベルベット/アニジャ/オトジャ
Q:モナー
R:ブーン/ギコ/イヨウ/プギャー
S:ニダー
T:アルタイム
U:ジョルジュ/ミルナ
V:モララー
W:ショボン
X:
Y:
Z:
27 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:02:04.96 ID:bfL8LogM0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・ヴィップ 対 オオカミ
(マリミテ城〜オリンシス城)

・ヴィップ 対 ラウンジ
(パニポニ城〜ギフト城)
 
35 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:03:09.13 ID:bfL8LogM0
【第50話 : Old】


――マリミテ城付近――

 要塞と呼ぶに相応しい城だ。
 そう認識を改めた。

 徹底的に防衛面を強化し、オオカミ軍を迎え撃っている。
 僅か五千の兵を巧みに操り、五万の兵を翻弄している。

 これが、ドクオ=オルルッドの力か。

( ゚д゚)(あまり時間をかけてはいられんな……)

 既に、四ヶ月半が経過していた。
 三ヶ月で落とすつもりで来た。それから更に一ヶ月半かかっている。
 しかも、すぐに落とせる目途が立っているわけでもない。

 焦りは禁物だ。
 しかし、兵糧的に苦しくなっているという現状が、焦燥感を覚えさせる。
 どんなに長くとも、あと二ヶ月ほどで落とさなければ、撤退を余儀なくされる。

 それに、オリンシス城の情勢も不安定だった。
 限界まで篭れと伝えてあったが、どうやら城外に出たようなのだ。
 モナーの策謀により、兵糧や水に深刻なダメージを受けてしまったという。

 こちらがマリミテ城を落とすまで、耐えきれるか。
 かなり際どい状況だった。
48 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:05:41.26 ID:bfL8LogM0
( ゚д゚)「とにかくD隊でFを射続ける。城壁の上からは身動きさせない。
    要は城壁を駆け上がれればいいんだ」

〔´_y`〕「しかし……D隊に射続けさせるとなると、こちらも動きが取りにくくなります」

| `゚ -゚|「半里からでは飛距離的にもかなり厳しい。四半里まで近づかなければなりません」

( ゚д゚)「そうだな……しかし、そこまで近づくのも容易ではない」

| `゚ -゚|「地面の修復は、四半里まで終わっています」

( ゚д゚)「だが、城壁の上からD隊に狙われる。迂闊に近づくことはできない」

 考えれば考えるほど、作戦が消えていく。
 どれも城を落とすに確実性があるとは言い難い。
 幕舎の中で、大将と二人の中将が、ただ唸りつづけているという、情けない状態だった。

( ゚д゚)「……フィル、四半里からなら城内にのみFを射ることは可能か?」

| `゚ -゚|「可能です。半里からでは難しいことですが、四半里にまで迫れば」

( ゚д゚)「ならば、G隊とD隊をセットにして迫ろう。一人のD兵を、一人のG兵が守る形でだ。
    それならばD隊が潰される心配はない。四半里にまで迫り、城内にのみFを射込む。
    手数で圧倒してやればヴィップは身動きできまい」

〔´_y`〕「そこからは、攻城兵器を接近させていくわけですね?」

( ゚д゚)「そうだ」

| `゚ -゚|「しかし、問題は城壁の穴ではないでしょうか? あそこからならヴィップは自由に攻撃できます」
56 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:08:31.82 ID:bfL8LogM0
( ゚д゚)「いや、それについては考えがある。俺に任せておいてくれ。
    二人は接近準備を整えてくれればいい」

 二人が同時に頷き、幕舎から出た。
 それに続こうと立ち上がったが、何となく出る気になれず、再び椅子に腰かける。
 ここに来たばかりのころは幕舎の中でも寒かったが、今は陽気さを感じるまでになった。

 本当は、暖かさを感じる前にマリミテ城を奪わなければならなかったのだ。
 オリンシス城の兵糧も満足と言える状況ではなかった。一日でも早く終わらせるべきだった戦なのだ。
 ドクオと五千の兵に対し、多少の侮りがあったと認めざるを得なかった。

 オリンシス城の二万は、城外に布陣している。
 これは由々しき事態だ。城を背後にしているが、有利とは言えない。
 相手はヴィップの本隊、四万なのだ。

 ドラルとリレントで勝てるかどうか、分からない。
 少将以下の将校も何人か残してきたが、ヴィップの前では紙屑同然だろう。
 それでも何とかこちらがマリミテ城を落とすまで耐えてくれるのを願うしかなかった。

( ゚д゚)(……頼みの綱は、裏切り者か……)

 ヴィップでの処遇に不満を持っている将がいる、という。
 リレントからその名を聞いたが、なるほどと納得させられた。
 確かにあの将は、厚遇されているとは言い難い。

 しかし、それに頼り過ぎるのは危険だった。
 もし情報が虚偽なら、深刻な被害を受けることになる。
66 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:11:01.15 ID:bfL8LogM0
 数年前、モナーがラウンジに裏切るふりをして将校を討ち取る、ということがあった。
 あのときと、状況は似ているのだ。
 しかも今の東塔にはモナーが合流している。危険度は更に増していた。

 リレントには念を押しておいた。
 それだけを頼りに戦を展開するな、と。
 当然です、と笑っていたが、果たしてどこまで分かっているのか。

 自分がいない場所の戦のことを、心配してもしょうがない。
 とにかくこちらがマリミテ城を落とせばいいのだ。
 マリミテ城さえ奪えれば、ヴィップは撤退せざるを得ない。

 まだヴィップが何か策を持っている可能性は当然ある。
 だが、それに怯えていては先に進めない。

 今はとにかく、攻め込むことだ。


――マリミテ城・城内――

 オオカミは着実に前進している。
 さすがに、五万が相手ではずっと遠ざけておくことはできなかった。

('A`)(兵糧は……やっぱ厳しいな……)

 防衛戦が始まってから既に五ヶ月近い。
 毎日少量ずつしか兵糧を取っていないが、それでも残りは僅かだった。
 あと一ヶ月と少しを耐えるには、物足りない量だ。
75 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:13:38.67 ID:bfL8LogM0
 空腹による乱れが発生しているとは思えない。
 皆、よく我慢してくれている。しかし、それが続く保証はなかった。
 士気の維持には気をつけているが、難しいことだ。

 まだ手札を切らしていないうちは、何とかなる。
 だが、尽きたときはどうなるか。考えたくもなかった。

('A`)「スメア……城内の雰囲気はどうだ?」

( V-V)「悪くありません。皆が勝てると信じ切ってくれています」

('A`)「そうか……それは嬉しいことだ」

( V-V)「もちろん、私も同じように、ドクオ中尉を信じております」

('A`)「ありがとう」

 スメアと共に、兵糧を取りにいっていた。
 兵糧庫は火計などから守るために地下にある。
 利便性を考えればもう少し近いところに置きたいが、仕方なかった。

( V-V)「……ドクオ中尉、何か落としましたよ」

('A`)「ん?」

 振り向くと、薄汚れた冊子が落ちていた。
 確かにあれは自分のものだ。
86 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:16:27.24 ID:bfL8LogM0
('A`)「おぉ、すまんな」

( V-V)「それはいったい、なんですか?」

('A`)「これはな、モナー中将からお預かりしたものだ」

 埃を払って、腰と衣服の間にねじ込んだ。
 折り目がいくつもついて草臥れているように見えるが、受け取ったときには既にそうなっていたのだ。

('A`)「自身の戦理論などを書きためたものらしい。謀略のやり方などが多いな」

( V-V)「それは、価値の高そうなものですね……」

('A`)「そうだな。何といっても、謀略で右に出るものなしと言われたモナー中将だ」

( V-V)「しかし、何故それをドクオ中尉に?」

('A`)「自分はもう一字一句違わずに思い出せるから必要ない、と言ってな。
   今後はまた別の紙に書いていくらしい。だから差し上げます、と言ってくれたんだ」

( V-V)「今度、私にも見せていただけませんか?」

('A`)「おぉ、いいぞ。目から鱗が涙のように溢れること必至だ」

 この冊子は、貰ったその日に読破し、全て頭に叩き込んだ。
 それが今回の防衛戦にも活かされている形だ。
 軍内の士気維持などはこの冊子の方法をそのまま実践しているだけだが、確かに効果があったのだ。

 他の誰かではなく自分にくれた理由は分からないが、幸運だった。
 自分自身、士気が高まるのを感じたのだ。
100 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:19:16.04 ID:bfL8LogM0
('A`)「よいしょ……っと」

 配分する兵糧を箱に入れて、担いだ。
 全兵が常に動いているため、落ち着いて食事を取ることもできない。
 椅子に座って食べるなど、防衛戦が始まってから一度もなかった。

 オオカミは常に攻め込む形を見せてくる。
 夜でも警戒を怠れない。疲労は少しずつだが確実に、蓄積されていた。
 自分だけではなく、五千全員がそうだ。

 これだけ時間が経つと、兵糧は保存の利くものしか残っていない。
 腐らずにいられるのは味気のないものばかりだ。それでも、空腹は満たされる。
 すぐに兵糧を取り終え、作戦の準備に向かった。

('A`)(この作戦が成功すれば……オオカミに、勝てるはずだ……)

 一応、準備は戦が始まる前に整えた。
 だが充分ではなかったため、それをいま完全にしているところだ。
 手間がかかる。人手が要る。しかし、城外の動きに対して警戒を緩めることもできない。

 あのオオカミを相手にして、一筋縄でいけるとは思っていなかった。
 作戦には自信を持っているが、オオカミに防がれる可能性も、なくはない。
 ミルナ=クォッチという大将は、それほど易い相手ではないはずだ。

('A`)「……ローダ、ちゃんと寝てるか?」

( ゛ロ゛)「はい」

('A`)「ならいいんだ」
112 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:21:50.76 ID:bfL8LogM0
 満足に眠れていないことなど分かっているが、明朗に答えてくれた。
 まだそれだけの元気はある、ということだろう。

 作業中も、なるべく兵に声をかけるようにした。
 そうすることで、士気が維持できると思ったからだ。
 効果は決して薄くない、と感じた。

('A`)(……ここは、もう少し大きく……だな)

 作業をひたすら進めた。
 他の兵と一緒になって動いた。

 この調子なら、あと数日で準備が完全に整う。
 長くかかったが、ようやくだ。

 頼むから、それまで静かにしていてくれ。
 そう願った。


 虚しさが願いを散らせ、オオカミの軍が攻め込んできたのは、それから四日後のことだった。
 せめてあと一日待っていてくれたら、と思っても、どうしようもないことだった。



――オリンシス城付近――

 ショボンの作戦通り、戦が進められた。
 まずは、敵に徐々に迫る。
 その後に撤退し、オオカミ軍を城から引き剥がすというものだ。
123 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:25:03.98 ID:bfL8LogM0
 オオカミは見極めるようにして、陣を動かさず待っていた。
 恐らく城壁の上にはD隊が配備されているだろう。
 その餌食になることだけは避けなければならない。

( ^ω^)(慎重に進んで、好機を待つお)

 焦ってはならない。
 じっくり着実に迫り、主導権を握る必要がある。

 半里にまで迫った。
 もうそろそろ、城壁のD隊の射程内に入る。
 動いてくるか。それとも、呼び込まれるか。

 少しずつ全軍が進んでいく。
 いつでも交戦できる距離。心臓の鼓動が、早まる。
 ショボンはいったい、どんな決断を下すのか。

 不意に、鉦が鳴った。

 ヴィップ側から。しかし、すぐにオオカミからも。
 瞬間、視界がFの嵐で塞がれた。
 大丈夫だ、届かない。こちらにまでは届かない。

 城外に布陣しているオオカミ軍が、D隊を前に押し出してきた。
 城壁の上と連動してFが放たれる。
 ヴィップ側から再び鉦が鳴り、徐々に後退していく。

 ショボンは、軍を崩壊させはじめた。
 自らの軍をだ。一見すれば、隙だらけ。
 だが、あえてそうしている。
135 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:27:50.80 ID:bfL8LogM0
 オオカミが誘われてくれるか。
 まだ際どい。これだけでは、動いてくれないのか。
 ヴィップ軍は敵のFに怯え、いったん退くといった構えを見せているのに。

 更に軍を崩していく。
 オオカミが攻めたくなるほどに。

 そして、打ち鳴らされるオオカミの鉦。
 オオカミ軍が、迫ってくる。

( ^ω^)(やっと来たお!)

 オオカミが攻めに転じた。
 涎を垂らして迫り来る。獲物に向かって。
 そこには罠が待ち受けているとも知らずに。

 ひたすら下がっていく。
 オオカミの追撃は、激しい。防ぐのがやっとだ。
 反撃に出るのはかなり難しいだろう。

 こちらの陣容が乱れていることもあって、決して思い通りとは言えない状況だった。
 しかし、オオカミをオリンシス城から離すことには成功している。
 オオカミは乗ってきた。誘いに、乗ってきたのだ。

(´・ω・`)「このまま下がって砦まで逃げ込むぞ! それから反撃に出る!」

 ショボンが虚偽の指示を下す。
 本当は、砦まで逃げる気はない。それまでに反攻に出る。
 時機を見計らうのが難しいが、モララーは自信があるようだった。
148 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:30:24.13 ID:bfL8LogM0
(;^ω^)「うっ……」

 敵の勢いに、ヴィップ軍が押され始めた。
 そういったふりをしている、というわけではない。本当に、押されているのだ。
 オオカミの攻撃が想像以上に激しい。激しすぎる。

 ドラル=オクボーンだ。
 フィル=ブラウニー並の、いや、それ以上の猛攻を見せている。
 騎兵と歩兵を巧みに操り、ヴィップ軍の後ろを突いている。

(´・ω・`)「……まずいな」

 軍が本格的に崩れだしていた。
 このままでは、反撃に出ることができない。
 散り散りになりはじめ、統率を失いつつあった。

(;^ω^)「ショボン大将、ブーンが後ろに」

( ´∀`)「私が最後尾に参ります」

 突然、モナーが割り込んできた。
 そして、ショボンの了承も得ないまま駆け出してく。

 いま後方には、ギコとプギャーがいるはずだ。
 だが、モナーは最後尾に行くと言った。
 しんがりだ。

 敵の攻撃を上手く防げれば、反撃に出やすくなる。
 しかし、最も危険な場所でもある。
161 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:33:23.70 ID:bfL8LogM0
(´・ω・`)「……任せるしかない。こっちは反撃の機を伺うしか」

 ショボンの声は、消え入りそうなほど小さかった。



――ヴィップ軍・最後尾――

 最初から、決めていたことだった。

( ´∀`)「騎兵は横に回って下さい。G隊を前に」

 最後尾に回って、指示を下した。
 右に、そして左に。
 続いて後方に。ひとつずつだ。

 昔は一度に三つも四つも物を考えられた。
 今は二つが精々だ。

 軍人としてやっていくには、いささか年を取り過ぎていた。

 ギコとプギャーは遠ざけた。
 あの二人を側に置くわけにはいかない。
 これからもまだ戦ってもらわなければならない二人なのだ。

 決してオオカミの反撃が予想以上だったからではない。
 作戦が決まった時点で、こうすることは決めていた。
 最初からだ。

 こう考えるようになったのも、やはり、年を取ったせいだろうか。
189 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:36:15.08 ID:bfL8LogM0
 アルファベットに特に秀でていたわけでもない。小細工を積み重ねて敵を欺くしか能がなかった。
 戦という魔物を相手にするには、あまりに非力すぎたのだ。

( ´∀`)「I隊は少し下がってください。H隊も同じように」

 それでも、五十二になるまで戦ってきた。
 十四のときに兵になり、既に四十年近く戦い続けている。
 恐らく、全土を探してもこれほど戦っている兵は他にいないだろう。

 それは、誇りだった。
 しかし同時に、重荷でもあった。

( ´∀`)(敵の先頭は、I隊と……二人ばかり尉官クラスがいるようですね)

 そして、その後方にドラルがいる。
 愚鈍な中将というイメージが強いが、思ったより力があった。
 いや、元より見た目ほど鈍くはない。ただ、あまりそれを発揮したのを見たことがなかったのだ。

 敵の攻撃を受け止めた。
 騎兵で強引に突っ込んでくるが、冷静に対処する。
 I兵とG兵を混合させれば歩兵でも立ち向かえる。

 だがやはり、オオカミの攻撃は厳しい。
 このままでは反撃の糸口を掴めない。

 それを作るのが、自分の役目だ。
 何としても。何があっても。

 ヴィップ軍と、離れた。
215 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:39:03.25 ID:bfL8LogM0
( ´∀`)(さぁ、ここからが正念場ですね)

 ヴィップ軍と離れたことにより、本隊は崩れた体勢を立て直せるはずだ。
 その時間を稼ぐ。こちらに引きつけて。

 覚悟など、十四のときに決めていた。

<@m@>「はっはぁー! モナー=パグリアーロ、無謀な賭けだな! 討ち取ってやるぜ!」

 バックマン中尉が迫ってきた。
 右手にアルファベットL。不格好な構えだ。
 いかに実戦経験が少ないかが分かる。

( ´∀`)「去りゆく老将に敗する。それもまた、運命でしょう」

 Lで攻撃してくるのを、いなした。
 慌ててバックマンが守りに入ろうとするも、鈍すぎる。

 Qの突部分を喉に突き刺した。
 一撃でバックマンを討ち取り、首を放る。
 戦功などもはやどうでもいい。この戦にさえ勝利できればそれでいい。

 オオカミ軍の攻撃を、受け止めることができていた。
 しかし、五千足らずの兵で、一万五千ほどのオオカミ軍を相手にしている。
 苦しい状況であることは間違いない。

 マリミテ城を守っているドクオは、十倍の兵を相手に戦っているのだ。
 経験豊富な自分が、三倍程度の相手に負けるわけにはいかない。
 ショボンが陣を立て直してくれるまで、何としても耐えきってみせる。
236 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:41:48.04 ID:bfL8LogM0
[`ι´ ]「アンタを討ちとれば、さぞ戦功は大きかろう」

 今度は、ロータス大尉だ。
 アルファベットにはそれなりの才覚があると言われる武将。
 その右手にNを握りしめている。

 打ち合った。
 一合、二合、三合四合。
 素早く振るい、ぶつかり合う。

 QはNにリーチで劣っているが、そのぶん相手には隙がある。
 力任せにアルファベットを弾いた。
 ロータスが怯む。

 昔なら、アルファベットが手から離れるほどの一撃を繰り出せたものだ。
 やはり、衰えには抗えないということだろう。
 そんなことを考えながら、ロータスの首を刎ね飛ばす。

 これで二人の将校を討ち取った。
 しかしまだ安心はできない。
 後ろに控えるのは、Sの壁を突破しているドラル=オクボーンだ。

( ´∀`)(なるべく早めにお願いしますよ、ショボン大将……)

 ショボンなら自分の意思を汲み取ってくれているはずだ。
 素早く陣をまとめあげ、反撃しようとしているだろう。

 思ったより、厳しい戦になった。
 しかし、戦を確実にするために最後尾に回ることは、最初から決めていた。
263 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:44:58.37 ID:bfL8LogM0
 五十二年という歳月は、決して短くはない。
 粉になるまで戦うと心に決めた。ハンナバルのぶんまで戦うと決めた。

 どうやら、その時が来たようだ。

《 ´_‥`》「御首、貰い受ける」

 ドラル=オクボーン。
 操るアルファベットは、S。

 生涯最後の相手としては、悪くない。

( ´∀`)「貴方を討ち取って、有終の美を飾ると致しましょうか」

 周りは囲まれている。
 逃げだすことは叶わないだろう。
 無論、そんなつもりもない。

 ドラルを討ち取り、武人を終える。
 それで充分、満足できそうだ、と思った。
284 :第50話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/14(土) 23:47:23.20 ID:bfL8LogM0
 アルファベットを、振るった。
 右腕に痺れが走る。ドラルのSとの、打ち合い。
 勝てる可能性は高くない。しかし、それもいい。

 最後ぐらい、楽しむことに重きを置いてもいいだろう。
 誰かに問うように呟いて、アルファベットを振り下ろした。


















 第50話 終わり

     〜to be continued

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