5 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:09:02.31 ID:bcuUQHDk0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
27歳 大尉
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●('A`) ドクオ=オルルッド
27歳 中尉
使用可能アルファベット:P
現在地:マリミテ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
37歳 大将
使用可能アルファベット:W
現在地:オリンシス城付近

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
32歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:オリンシス城付近

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
35歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近
9 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:10:11.77 ID:bcuUQHDk0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
33歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
30歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:オリンシス城付近

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
36歳 中尉
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
52歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:オリンシス城付近

●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
26歳 少尉
使用可能アルファベット:P
現在地:オリンシス城付近
16 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:11:27.73 ID:bcuUQHDk0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ/プギャー

大尉:ブーン/シラネーヨ
中尉:ビロード/イヨウ/ドクオ
少尉:ベルベット


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
19 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:12:13.58 ID:bcuUQHDk0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:
M:
N:
O:ヒッキー
P:ドクオ/ベルベット/アニジャ/オトジャ
Q:モナー
R:ブーン/ギコ/イヨウ/プギャー
S:ニダー
T:アルタイム
U:ジョルジュ/ミルナ
V:モララー
W:ショボン
X:
Y:
Z:
22 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:13:08.66 ID:bcuUQHDk0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・ヴィップ 対 オオカミ
(マリミテ城〜オリンシス城)

・ヴィップ 対 ラウンジ
(パニポニ城〜ギフト城)

25 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:14:09.39 ID:bcuUQHDk0
【第49話 : Hole】


――オリンシス城付近(オリンシス城まで六十里地点)――

 春の色が風景を彩りはじめていた。
 草木が穏やかに芽吹き、微風に揺れている。
 心地よかった。

( ^ω^)「ショボン大将、オオカミ軍はオリンシス城から出てきますかお?」

(´・ω・`)「引きずり出してやるさ。長々と籠城させるわけにはいかない」

 進軍しながら、ショボンと轡を並べていた。
 馬蹄が地面を叩く音が、等間隔で聞こえる。

( ^ω^)「ドクオは城から出てくるだろうって言ってましたお」

(´・ω・`)「俺もそう思うが、ミルナが釘を刺している可能性もある。
      いや、恐らくそうしているだろう。ドラルとリレントが利口なら、城に籠もってくる」

( ^ω^)「その場合は……」

(´・ω・`)「言っただろう。何が何でも引きずり出す。野戦で兵を潰す必要があるからな。
      ドクオは籠城してきた場合のことも想定した策を出してくれたし、俺にも考えはある。
      それに、こういうことはモナー中将が得意だ」

( ^ω^)「そうなんですかお?」

(´・ω・`)「細かい部分で貢献してくれることと思う。期待していよう」
34 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:16:54.66 ID:bcuUQHDk0
 このペースなら、あと数日でオリンシス城のすぐ側に迫れる。
 残された時間はおよそ四ヶ月。
 それが兵糧的にも瀬戸際のラインだ。

(´・ω・`)「今年は、暑いな」

 不意にショボンが呟いた。
 確かに、春先とは思えない陽気だ。
 しかし、今年はと言うほどでもない。

(´・ω・`)「正確には、暑くなるらしい。動物たちの動きで分かるんだそうだ」

( ^ω^)「暑くなると、滞陣するときにもいろいろ注意が必要ですお」

(´・ω・`)「その通りだ。衛生面など、気をつけなければならない。
      戦が長期にわたる際は、多くの情報を得ておく必要がある」

( ^ω^)「……その点、マリミテ城を攻めているオオカミはどうなんですかお?」

(´・ω・`)「分からんが、ミルナは頭がいい。物事をよく考える武将だ。
      攻城戦を行うにあたって、多くの情報を集めたことと思うがな」

( ^ω^)「……きっとドクオが守り抜いてくれるって、信じますお」

(´・ω・`)「あぁ。そう信じて、俺たちはオリンシス城を落とすだけだ」

 ショボンのアルファベットが、一瞬眩い光を放った。
 アルファベットV。ショボンはWまで扱うことができるが、近接戦闘のためにVも持ち歩いている。
 Wの威力は抜群だが、一撃を放つごとに時間がかかるため、敵が近づいてきたときに使うことはできないのだ。
45 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:19:54.94 ID:bcuUQHDk0
 自分はまだ、Sの壁を越えられていない。
 過去、名だたる武将たちでさえ、もがき苦しんだ壁。
 自分に突破できる保証もない。

 だが、それさえも信じるしかないのだ。
 きっと自分は越えられるのだと。
 そう信じられないようなら、越えることなど到底叶わないのだろう。

(´・ω・`)「やはり暑いな」

 ショボンがまた同じように呟いて、少し馬の歩みを速めだした。



――マリミテ城付近(マリミテ城まで一里地点)――

 たった一里。
 それが、あまりに遠すぎるものと思えた。

( ゚д゚)「地面の修復を急げ」

 そう何度も命令した。
 あまりに状態が酷く、攻城兵器を接近させられないためだ。

 しかし、地面の修復作業はまったく進んでいなかった。
 マリミテ城まで一里。つまりそれは、城壁の上から狙うD隊の、射程内に入る距離。
 修復している途中で、D隊に狙われてしまうのだ。
56 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:23:03.37 ID:bcuUQHDk0
 強引に攻城兵器を接近させたとしても、安定を得られない。
 それに、まともに陣を構えられない状態では、攻城兵器を守ることもできないのだ。
 やはり地面を修復していく必要があった。

 G隊を前に出して守らせ、少しずつ修復していく手段を取った。
 行動が制限されるため遅々とした作業になるが、確実だ。
 既にマリミテ城の側に陣を構えてから三ヶ月になる。そろそろ痛打を与えたいところだ。

 敵のD隊が城壁に姿を現せば、こちらもD隊を使ってFを射させた。
 数の優位さは大きい。十倍の兵を擁しているのだから、攻めながら守るということも可能なのだ。
 この兵数差にも関わらず互角の戦いを見せてきているドクオには驚くが、長くはもたないだろう。

 しかし、十倍の兵を相手に、このまま戦うつもりなのか。
 ときどき、そう考えた。

 北のシャッフル城には三万のヴィップ兵がいる。
 このうち二万ほどが南下してきた場合は、かなり苦しい戦いになるだろう。
 挟撃を受け、撤退せざるを得なくなるかも知れない。

 だが、もしシャッフル城から大軍が発つようなら、こちらにも考えがある。
 シャッフル城の西に位置するフェイト城には、三万の兵を置いてあるのだ。
 これはシャッフル城や、オリンシス城を攻めるヴィップ軍への備えとなる。

 シャッフル城が手薄になるなら即座にフェイト城から軍を出す。
 そうすれば、オリンシス城を攻めているヴィップ軍は孤立してしまうだろう。
 つまり、シャッフル城の三万は動かせない。

 同じように、もしフェイト城からショボン率いる本隊を攻めようとすれば、フェイト城が危うくなる。
 ヴィップだけでなくラウンジにも狙われている城だ。手薄にはできない。
 北の情勢は完全に膠着していた。
66 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:25:58.23 ID:bcuUQHDk0
 様々な面から勘案すると、やはりヴィップは五千のままでマリミテ城を守るのだとしか思えない。
 西塔から援軍でも来れば別だろうが、今のヴィップにそれがあり得るわけはなかった。
 安心して五万の兵で、マリミテ城を攻めることができる。

 やがて、半里にまで迫った。

( ゚д゚)「攻城塔からD隊による射撃。投石器も存分に力を発揮しろ。
    影から雲梯や梯子も機を伺うんだ。敵が怯んだら即座に近づいて城壁を駆けあがれ。
    投石器やD隊は城壁に備えつけられた丸太を潰すことも考えてくれ」

 次々に下知を下し、準備を整えさせた。
 城壁の上には巨大な弩があったが、それはD隊による攻撃で潰せているはずだ。
 例え潰せていなかったとしても、使えるような位置には置けていないだろう。

( ゚д゚)「攻撃開始」

 アルファベットを前に突き出した。
 同時に、兵が一斉に動いていく。それぞれの役割を果たすために。
 攻城兵器、D隊、G隊。一体となって。

 投石器が空にアーチを架ける。
 放物線を描いて岩が放り込まれていった。
 アルファベットGなら簡単に防ぐだろうが、敵の動きを制限することはできる。

 ヴィップ軍の動きが、完全に止まっていた。
 城壁からD隊や投石器を使うことができないのだろう。
 圧倒的な兵力差。それだけで、敵を黙らせることができるのだ。

( ゚д゚)「城壁の丸太を潰せ! あれさえなければ雲梯や梯子を掛けられる!」
81 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:28:56.91 ID:bcuUQHDk0
 大声で叫んだ。
 あとは城壁を駆けあがるだけ。
 それだけで、マリミテ城を落とすことができる。

 やがて、城壁から丸太が消えた。

(;゚д゚)「……なんだと……?」

|;`゚ -゚|「これは……いったい……!」

 何故、丸太が消えたのだ。
 こちらが集中攻撃を加える前に。

 答えは分かっていた。
 信じ難かった。

 次々に投石器や攻城塔が潰されていく。
 それだけではなく、接近した雲梯も無残な姿に変わり果てていた。
 城壁から放たれた丸太によって。

 あの丸太は、雲梯や梯子を防ぐものではなかった。
 攻撃のために城壁に穴を開け、そこから丸太を放てるようにされていたのだ。

 城を守る城壁に、穴を開けてくるとは。
 まったく想像もしなかった。

(#゚д゚)「城壁に攻撃を加えろ! 穴のせいで脆くなっているはずだ!」

 夢中で叫んだが、城壁を攻撃できるものが、何もなかった。
95 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:31:59.66 ID:bcuUQHDk0
 城壁からは次々に尖った丸太が繰り出され、攻城兵器を潰していく。
 オオカミの投石器より、向こうの弩やD隊のほうが射程距離が長く、素早いせいで、攻撃を加えることができないのだ。

 進軍も困難なほどに、前に押し出した攻城兵器は破壊されていった。

 歯噛みしながら軍を退かせた。
 マリミテ城までは、再び一里。
 半里だとD隊による攻撃が威力を保って届いてしまい、陣を立て直せないためだ。

(#゚д゚)「くそっ!!」

 攻めきれなかった。
 ドクオに、上手くやられてしまった。

 城壁をD隊で攻撃させるべきだったか。
 そう思ったが、もし前に出したら今度は城壁の上から攻撃されてD隊が潰れる。
 いかに多くの穴が開けられているとはいえ、城壁は堅い。D隊ではどうしようもないだろう。

 投石器で攻撃させようとしたが、それも冷静に考えれば懸命ではない。
 城壁がそれほど簡単に崩壊することは考えられない。

 ドクオに、完全に上回られたのだ。
 十倍の兵を有するオオカミ軍が。

 攻めながら守れるはずだった。
 その攻めと守りを、同時に潰してくるとは考えもしなかった。

 城壁からの攻撃を潰すことはほぼ不可能だ。
 ヴィップは守りを気にせずに攻撃できる。このやり方は、考えもしなかった。
110 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:34:55.61 ID:bcuUQHDk0
 こんな大掛かりな仕掛け、本来なら間者が気付くはずだ。
 しかし、ここでは五千という兵数が有利に働いたのだろう。
 五千程度なら、情報を全く漏らさないように行動することも可能だ。

 完全に情報を秘匿し、様々な仕掛けを施してきた。
 あの五千の中に、オオカミの間者はいなかったのだろう。いたとしても、どうしようもない。
 ドクオの立てた作戦は、かなりのものだったと認めざるを得なかった。

| `゚ -゚|「……今後はどうしますか?」

( ゚д゚)「……とりあえず、攻城兵器を再び揃える。何もなければ攻められないからな。
    Fは相当数を用意してきたが、あまり使い過ぎると尽きかねん。控えるように指示しろ。
    負傷した兵にはすぐ手当てを。破壊された攻城兵器は、修復できるようならしてくれ。
    物見櫓から常に城内の動きを監視。城壁の穴は、とりあえず放置だ」

| `゚ -゚|「分かりました」

( ゚д゚)「ガシュー、攻城兵器については引き続きお前が担当しろ」

〔´_y`〕「はい」

 どれだけ喋っても、内容を聞き返さない頭の良さをフィルは持っている。
 ガシューも馬鹿ではない。二人とも、やるべきことはやってくれる。
 しかし、期待以上のことまでやってくれたりはしない。

 幕舎に戻って、マリミテ城の構造図を広げた。
 城壁に穴を開けて攻撃に使うというのは、確かにやれなくはない。
 だが、かなりの博打だ。
120 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:37:50.35 ID:bcuUQHDk0
 城壁は、脆くなっている。
 それは間違いない。攻めのために守りを捨てたのだ。
 強引に攻めれば城そのものを崩壊させることも可能かも知れない。

 だが、攻めきれない。
 十倍の兵がいるというのに、翻弄されてしまっている。
 ありとあらゆる手段で城を守ってくるヴィップ軍に。

 地面も、まだ半里ほどは酷い状態だ。
 いずれ修復する必要がある。
 強引な攻めでは損害が大きい。今日のような大敗を受ける可能性もある。

 まずは地面を安定させ、腰を据えてじっくり戦う。
 慌てなくていい。まだ時間はある。
 焦って無理攻めを繰り返すのだけは避けなければならない。

( ゚д゚)(……落ち着いて攻めよう)

 攻め方はたくさんある。
 ひとつひとつ熟考して、繰り出していけばいい。

 焦らずにいこう、と自分に言い聞かせた。



――マリミテ城内――

 やはり、休まるときはなかった。
 寸暇も惜しんで働かなければならない。
134 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:40:44.81 ID:bcuUQHDk0
 城壁の穴から攻撃する手は、上手くいった。
 しかし、急ピッチで仕上げたもののため、城壁を補修しきれていない。
 これも早めに仕上げなければ、敵の攻撃で城壁が崩壊する恐れがある。

('A`)「スメア、D隊は出せそうか?」

( V-V)「可能です」

('A`)「ちょっとだけ攻撃するよう指示してくれ。今はオオカミを近づけたくない」

( V-V)「威嚇ですね。分かりました」

('A`)「ローダは"あの作戦"の準備を頼む。できる限り、早めに」

( ゛ロ゛)「分かりましたが……もう実行するおつもりですか?」

('A`)「いや、準備だけは万端にしておいたほうがいいと思ってな」

( ゛ロ゛)「しかし、予定より早いのではないかと」

('A`)「早めているのは確かだ。思ったよりオオカミの攻めに隙がない。
   本当はもう少し余裕を持てるはずだったんだが、さすがにミルナだ。
   作戦も、若干早めて実行することになると思う」

( ゛ロ゛)「分かりました。その方向で準備を整えます」

('A`)「二人とも、よろしく頼む」
153 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:44:17.38 ID:bcuUQHDk0
 すぐにその場から離れた。
 次に向かったのは、物見櫓だ。
 オオカミの陣がそこからよく見える。

 気が狂いそうになるほどの大軍。
 少しの隙もなく、城を囲んでいる。
 この大軍を相手に、自分は戦っているのだ。

 三ヶ月を耐えた。
 まだ半分。同じような苦しみを、同じような期間、耐えなければならない。
 兵糧的には問題ないが、これからは疲労との戦いになるだろう。

 適度に休みを取らせるよう配慮しているが、充分でない可能性もある。
 それに、精神的な苦痛が襲ってくることも考えられた。
 オオカミを翻弄できている今は士気も上がっているが、一度失敗するだけでも、どうなるか分からない状態だ。

 籠城戦の経験がある兵は辛抱強く戦ってくれることと思うが、初めての兵は不安に駆られるだろう。
 経験者で多くを固めたのは正しかったはずだ。しかしやはり、どうなるかは分からない。

 まだ手札は残っている。
 城壁からの攻撃もある。
 だが、それが尽きたとき、もしくは失敗したときが怖い。

 それでも、やるしかない。
 特に、ローダに準備を整えさせている作戦は、成功すればかなり大きい。
 オオカミを潰走させることだって可能かも知れない。

 五千の兵、全員に作戦は話してある。
 だが情報が漏れないよう、全員の行動を制限してきた。
 オオカミに作戦が漏れている可能性はまずない。
164 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:47:10.55 ID:bcuUQHDk0
 しかし、この作戦に抱いている不安は、そんなことではないのだ。
 成功すればかなり大きい。同時に、失敗しても大きい。
 戦の帰趨を占う作戦だ。

 恐らく、不安を抱いたまま作戦を実行することになるだろう。
 拭えそうにはない。仕方がない。
 元より、十倍の兵を相手に戦う時点で、寸分の不安もないというほうがおかしいのだ。

 とにかく、勝てると信じて戦うしかないのだ。

 少しだけ仮眠を取るべく部屋に向かった。
 すぐに外に出られる位置に用意してある。
 危険がないわけではないが、いざというときに対応できないよりはいい。

 疲れが溜まって判断力や思考力が鈍るのは避けたかった。
 そのため、適度に休息を取るようにしている。
 あまり長く休んでいては軍に影響が出てしまう。一日に二刻から四刻程度だ。

 それでも、心だけは休まる気がしなかった。



――オリンシス城付近(オリンシス城まで一里半地点)――

 オオカミ軍は、全く動きを見せなかった。
 城を囲むことを、すんなり許したのだ。

 二万の兵をオオカミは有している。
 一度は迎撃し、それから籠ってくるのだと考えていた。
 最初から門を閉じてくるのは予想外だった。
179 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:50:09.97 ID:bcuUQHDk0
( ^ω^)(このままずっと、籠りっぱなしかお……?)

 二万という大軍で籠城するのは、大変なことだろう。
 兵糧は目に見えて減っていくはずだ。
 統率も取りにくい。内応者が出る可能性も低くない。

 それでも籠城策を取ってきた。
 先にマリミテ城を落とす絶対の自信があるのか。
 もしくは、何か他の策を抱えているのか。

 ヴィップ軍は、この城を囲んでからの一ヶ月間は、腰を据える準備に費やした。
 既に三ヶ月が経っている。マリミテ城が落ちたという報せはない。
 ドクオはよく耐えてくれているようだ。

 一日でも早く、オリンシス城を落とす必要がある。
 ドクオは必ず半年耐えてくれると信じているが、早いに越したことはないのだ。
 ヴィップ軍が一丸となって攻城戦の準備を進めていた。

 オリンシス城は、銀色の輝きを持する城だった。
 城壁や城塔など、至る箇所が銀で装飾されている。
 派手な彩色を施したものだ、とショボンが笑っていた。

 敵兵がこちらを伺っている様を見かける。
 これ以上接近してくるようなら攻撃を仕掛けるぞ、という意思の表れか。
 既に包囲して一ヶ月。オオカミは完全に守りの体勢に入っていた。

 そう思っていた。

 闇に乗じて奇襲をかけてきたのは、月のない夜のことだった。
196 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:53:07.63 ID:bcuUQHDk0
(´・ω・`)「落ち着いて迎撃しろ! 包囲は乱すな!」

( ・∀・)「可能なら門を塞げ! 逃げ帰れなくしてやれ!」

 闇で敵の攻めを把握しきれない。
 I隊を使ってきているのは分かった。こちらもI隊で応戦する。
 騎馬隊は使ってきていないようだ。

 オオカミはすぐに軍を退いた。
 あまり深く攻め込むと、城に帰れなくなる恐れがあるためだろう。
 ヴィップ軍が門を塞ぐことは叶わなかったようだ。

(,,゚Д゚)「いざというときには奇襲もある、ということですか……」

(´・ω・`)「だからといって臆するわけにはいかん。もう少し備える必要はありそうだが」

( ・∀・)「ま、リレントらしいやり方ですね。昔より多少合理性を身につけたようですが」

(´・ω・`)「ミルナの指示通りに戦っているだけだとは思うがな。まぁ、手強い相手だ」

(,,゚Д゚)「何とか揺さぶりをかけたいところですが……」

( ´∀`)「……とりあえず、やってみましょうか」

 将校が集まって会話するとき。
 大抵は、ショボンとモララー、ギコの三人で話が形成される。
 しかし、今回の戦にはモナーがいる。
214 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:56:06.99 ID:bcuUQHDk0
 既に五十をいくつか越えており、他国からは老将と呼ばれているようだ。
 しかし、その知力は衰えていない。
 ヴィップの建国当初から戦い続けてきたという経験もある。

( ´∀`)「ショボン大将、投石器の用意をお願いします。一番大きなものを」

(´・ω・`)「分かりました」

 何に使うのか、とショボンは聞かなかった。
 モナーなら効果的な打撃を与えてくれる、と信じているのが分かった。

 すぐに準備が進められた。
 モナーが輜重から平然とした顔で木箱を運び出してくる。
 しかしそれを手伝う兵は、何故か顔を顰めている。

 素早く木箱がオリンシス城内に打ち込まれた。
 何を飛ばしているのかは分からない。
 しかし、投石器を操る兵が、嗚咽しながら箱を載せているのが見えた。

 モナーの側に寄って、話を聞いてみた。

( ^ω^)「モナー中将、あの木箱は?」

( ´∀`)「聞きますか? あまりいいものではありませんよ」

(;^ω^)「お?」
228 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 17:59:12.24 ID:bcuUQHDk0
( ´∀`)「あの中には、腐敗した動物の死骸が入っています」

 動物の、死骸。
 だから兵たちは嘔吐いていたのか。
 腐敗臭が箱から漏れていたのだろう。

( ´∀`)「今年は暑いですから、腐敗がよく進みます。衛生面で苦労するでしょう、オオカミは。
     上手くいけば伝染病を流行らせることや、兵糧を潰すこともできるかも知れません。
     進軍中に蓄えておいて良かったです。効果が出るかどうかはまだ分りませんが」

(;^ω^)「思いつきもしませんでしたお……」

( ´∀`)「士気を下げるくらいの効果は確実に表れることと思います。
     それと、箱の中に私がパニポニ城時代に蓄えた毒も入れておきましたので」

(;^ω^)「ど、毒ですかお? こっちに飛んできたりしないですかお?」

( ´∀`)「水に溶かしてありますから、大丈夫です。飛散したりはしません。
     卑怯な手段だとオオカミは憤るでしょうが、直接戦い合って血が流れるよりよほどマシです」

 それは、確かにそうだ。
 自国側の被害を抑えることが戦では大事になる。
 だいたい、戦では卑怯だの何だのと言っていられない。

 今回の戦は、一日でも早く勝つ必要がある。
 尚更だった。

 腐乱した死骸は手に入れば即座に放り込んだ。
 モナーは平気な顔でそれをやる。やはり経験の違いだろうか。
 何事にも動じない、といった冷静さや落ち着きを感じる。
252 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 18:02:21.15 ID:bcuUQHDk0
 ショボンは、包囲を少しずつ緩めることを決めた。
 敵を誘うためだ。
 オオカミは好機だと思うはずだ。

(´・ω・`)「俺やドクオもオオカミを城から出す方法は考えていたんだがな。
      モナー中将にあっさり持っていかれてしまった。しかも、手軽な方法で。
      まぁ、嬉しい誤算だ」

 やがて、オオカミが城から出て陣を構え出した。

 どうやら、病と毒にやられ、水が足りなくなったようだ。
 モナーの撒いた毒水が一部の貯水庫に染み出したことも原因らしい。

 城の包囲を解いて、一箇所に兵を集めた。
 オオカミは補給路を得たが、整備はされていない。再び籠城するのは不可能だろう。

 既にドクオがマリミテ城に籠りはじめてから、四ヶ月が過ぎた。
 しかし、オリンシス城から敵兵を引きずり出すことには成功した。

 これから、野戦でぶつかることになる。
 倍の兵を有しているヴィップ軍が、数の上では有利に見えるが、実際にはそうでもない。
 オオカミはいざとなれば城に逃げ込める。城壁の上から攻撃される恐れもある。

( ^ω^)「イヨウさん、どう思いますお?」

(=゚ω゚)ノ「簡単ではないな。こちらも城を奪うことを考えながら戦わねばならん。
     オリンシス城に逃げ込まれると厄介だ。攻城兵器を使う必要も出てくるだろうな」

( ^ω^)「攻城兵器に関しては、モナー中将が上手くやってくれそうですお」
280 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 18:06:24.36 ID:bcuUQHDk0
(=゚ω゚)ノ「あまりモナー中将に頼ってばかりもいられん。要は、私たちが野戦で敵軍を殲滅してしまえばいい」

( ^ω^)「不可能ではないと思いますお。でもやっぱり、オリンシス城を背後にされると攻めにくいですお」

(=゚ω゚)ノ「敵を城から遠ざけるか、浅い断続的な攻撃を繰り返すかの、どちらかだろうな。
     今晩の軍議で、果たしてショボン大将はどんな策を取ってくるのか……」

 それから、イヨウと共に夜の分の兵糧を食して、軍議に向かった。
 大きめの幕舎の中に、簡易型の机と椅子が並べられている。
 その一番奥の椅子に、ショボンは座っていた。

(´・ω・`)「早速だが攻め方についてだ。俺は徐々に城から引き離す方向でいきたいと思っている」

 まだ全員が着座しきらないうちにショボンは話し始めた。
 少しでも早く軍議を済ませてしまいたい気持ちがあるのだろう。

(´・ω・`)「あえて隙を見せ、敵に攻めさせる。そして徐々に下がっていく。
      敵は勢いに乗って攻めを続けてくるだろう。やがて安全な場所まで下がった後、反撃に出る」

( ・∀・)「下がる理由ってのが要りそうですね。じゃないと疑われますから。
     なんか用意しときますか」

(´・ω・`)「簡易的な砦を作らせている。
      あたかも、そこまで下がれば反撃に出られる、だからヴィップは下がる、というような」

(,,゚Д゚)「しかし、オオカミはそこまでは攻めてこないでしょう? 途中で攻めを停止させるはずです」

(´・ω・`)「だから見極めは難しくなる。反撃に出る時機というものの見極めが」
299 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 18:09:30.68 ID:bcuUQHDk0
( ・∀・)「ま、何とかなるでしょう。それほど難しいことだとは思いませんし」

(´・ω・`)「まったく、お前はいつも頼もしいな」

 ショボンが軽く笑って立ち上がった。
 軍議散会。将校たちが次々に幕舎から立ち去っていく。
 同じように自分も外に出た。

( ・∀・)「ブーン、ちょっといいか?」

 アルファベットの点検作業に向かおうとしたところ、モララーに呼び止められた。
 篝火の側であり、空の色は漆黒だがモララーの顔はよく見える。

( ^ω^)「なんですかお?」

( ・∀・)「最近のお前に苦言を呈したくてな」

 心臓が、揺れた気がした。
 モララーの言葉がいつもと変わらない調子だからこそ、余計に。
 体の至るところに、汗を感じる。

( ・∀・)「お前、まさか現状で満足してるわけじゃねーだろ?」

(;^ω^)「……どういうことですかお?」

( ・∀・)「エヴァ城戦やシャッフル城戦じゃ戦功を立てたが、それ以降サッパリじゃねーか。
     マリミテ城戦も、オリンシス城戦も、目立った活躍がない。こんだけ期待されてるのにだ」
314 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 18:12:53.84 ID:bcuUQHDk0
 あまり気にしたことがなかった。
 一生懸命にやっているつもりだったし、特に失敗を犯したわけでもない。
 しかし、言われてみれば確かに、主だった戦功は近年ない。

( ・∀・)「お前ももう二十七だろ? 若い頃はあんだけスピード出世したのに最近は全然だ。
     そろそろ少将になれよ。失敗しないってだけじゃ勝てる武将にはなれねーぞ。
     いずれ自分がヴィップを支えるんだってくらいの気概が見たいんだよ俺は」

 言葉が、心に突き刺さる。
 気持ちはいつだってあった。支えてやるというような意気。
 しかし、行動に示せてはいなかった。

( ・∀・)「ブーン、お前は今回の戦で誰にも負けねー活躍を見せろ。
     もっとはっきり具体的に言うぞ。"四中将"を討ち取れ」

(;^ω^)「ッ……!!」

( ・∀・)「それくらい、お前ならできると俺は思ってる。期待してんぞ」

 表情も言葉も、いつも通り。
 だからこそ、心に重く響いた。

 四中将を、討ち取れ。
 モララーははっきりとそう言った。
329 :第49話 ◆azwd/t2EpE :2007/07/08(日) 18:15:39.78 ID:bcuUQHDk0
 恐らくは、今後しばらく頭から消えない一言だろう、と思った。
 例えば、夜が明けるまでの星のように。
 闇に染まるまでの太陽のように。




















 第49話 終わり

     〜to be continued

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