- 3 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日)
14:56:28.88 ID:oL87YbRB0
- 〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
26歳 大尉
使用可能アルファベット:R
現在地:マリミテ城
●('A`) ドクオ=オルルッド
26歳 中尉
使用可能アルファベット:O
現在地:エヴァ城
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
36歳 大将
使用可能アルファベット:V
現在地:マリミテ城
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
31歳 中将
使用可能アルファベット:U
現在地:マリミテ城
●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
34歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:マリミテ城
- 7 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日)
14:57:35.53 ID:oL87YbRB0
- ●( ^Д^) プギャー=アリスト
32歳 少将
使用可能アルファベット:Q
現在地:シャッフル城
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
29歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:マリミテ城
●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
35歳 中尉
使用可能アルファベット:R
現在地:マリミテ城
●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
51歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:パニポニ城
●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
25歳 少尉
使用可能アルファベット:O
現在地:マリミテ城
- 12 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 14:58:35.02 ID:oL87YbRB0
- 〜西塔の兵〜
●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
41歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヒグラシ城
●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
42歳 中将
使用可能アルファベット:S
現在地:カノン城
●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
45歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:ヒグラシ城
●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
38歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヒグラシ城
- 18 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 14:59:43.41 ID:oL87YbRB0
- ●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
40歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:パニポニ城
●(´<_` ) オトジャ=サスガ
40歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:パニポニ城
- 21 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:01:12.53 ID:oL87YbRB0
- 〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ/プギャー
大尉:ブーン/シラネーヨ
中尉:ビロード/イヨウ/ドクオ
少尉:ベルベット
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー
大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ビコーズ
少尉:
(佐官級は存在しません)
- 25 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE
:2007/06/24(日) 15:02:11.80 ID:oL87YbRB0
- A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:
M:
N:
O:ドクオ/ベルベット/ヒッキー
P:アニジャ/オトジャ
Q:プギャー/モナー
R:ブーン/ギコ/イヨウ
S:ニダー
T:ジョルジュ/アルタイム
U:モララー/ミルナ
V:ショボン
W:
X:
Y:
Z:
- 28 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE
:2007/06/24(日) 15:03:25.80 ID:oL87YbRB0
- 一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml
(現実で現在使われているものとは異なります)
---------------------------------------------------
・ヴィップ 対 オオカミ
(マリミテ城〜オリンシス城)
- 32 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:04:13.66 ID:oL87YbRB0
- 【第47話 : Endure】
――世界歴・522年――
――マリミテ城・第三訓練室――
はるかな高みの先に見えるものは何か。
答えは、出るのか。
Sの壁。
破壊すればいいのか、乗り越えればいいのかも分からない。
ただ、その向こうへ行くしかないのだ。
(;^ω^)「ふぅ……」
大きな丸太を何本も立てた。
振るい、倒す。斬り刻む。
行きと帰りで同等の威力を出せるのがこのアルファベットの特徴だった。
アルファベットR。
壁と言われるSに挑戦するアルファベットだ。
過去、アルファベットの才があると言われた兵の何人もが、ここで挫かれたという。
現代アルファベットの歴史上、この壁を越えることができたのは僅か九人。
ベル、ハンナバル、ショボン、ジョルジュ、ミルナ、アルタイム、モララー、ニダー、ドラル。
いずれもアルファベットに秀でていると称された、錚々たる顔ぶれだった。
- 40 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:06:54.43 ID:oL87YbRB0
- ここに、十人目として加わりたい。
現在、同様に壁に挑んでいるギコ、イヨウよりも先に越えたい気持ちが強かった。
焦るべきではないと分かっていながら、自然と訓練の時間が増えていった。
訓練に時間を充てていられるのは、やるべきことがさほど多くないからだ。
いつも通りの調練を済ます程度で将校としての仕事は終わる。
今後何をすべきかを、現在ドクオが考え抜いている最中だからだ。
( ^ω^)(でも、ドクオは……)
そのドクオは、何故かエヴァ城にいた。
突然、五千の兵を率いて、エヴァ城に向かったのだ。
もう半年も前からずっとマリミテ城には戻っていない。
ドクオの手紙の件から、既に一年が経過していた。
この一年間、オオカミは特に動きを見せていない。
ヴィップも日々同じ調練をこなすだけで、前進しているとは言い難かった。
現在、西塔がラウンジと睨みあっている。
およそ七万の兵をヒグラシ城に入れ、ギフト城を狙っているのだ。
ラウンジも意地を見せると言わんばかりに、十万もの大軍をギフト城周辺に展開させていた。
西塔が開戦間近なこともあり、物資が潤沢なヴィップも、さすがに余裕はなくなってきていた。
国軍のほとんどが遠征に出ているためだ。
この無理が通るのもヴィップならではだが、悠長に構えてはいられない。
一方、オオカミはラウンジ方面が安定していることもあり、軍の力をヴィップに傾注している。
ラウンジに備えてはいるが、今のラウンジはヴィップに対するので精一杯だろう。
オオカミを狙うことは考えにくかった。
- 47 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:09:35.97 ID:oL87YbRB0
- つまり、オオカミは兵糧にも不安はなく、全力を出せる状態だ。
かなり難しい戦になるのは間違いなかった。
( ^ω^)(ドクオはいったい、何をしてるんだお……?)
試したいことがある、と言って五千の兵を引き連れていった。
何故五千なのか、何故エヴァ城なのか。
間者対策のためか、何も言わずに出立していった。
俺はあいつを信じてみる。
522年の年明けを祝う宴で、ショボンはそう言った。
信じるしかないのは分かっているが、もどかしさがあった。
何かしてやりたいが、何もできない。
どうすればいいのか分からない。
( ^ω^)(……調練しかないお)
結局は、自分と軍を鍛えることしかできない。
恐らくドクオは近いうちに戻ってくるはずだ。
そのときまでは、とにかく鍛えることに注力しなければならないのだ。
訓練室から出て、昼食を取りに向かった。
長い廊下の一番奥に階段があり、降りてすぐのところに食堂は構えられている。
マリミテ城は近くにキョーアニ川があるため、新鮮な魚を食することができた。
( ^ω^)(今日の魚は何かお〜♪)
- 54 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:12:08.04 ID:oL87YbRB0
- 日々変わる魚が、最近の楽しみだった。
以前は牛や豚の肉が好きだったが、キョーアニ川で獲れる魚の美味しさを知って以来、すっかり虜になってしまっている。
朝から晩まで魚でも構わない、というくらいだった。
( ^ω^)「……お?」
窓の外を、何かが駆け抜けた。
細い線。決して近くもない。
しかし、はっきりと認識できた。
もう一度、閃光が迸る。
今度は何か分かった。あれは、Fだ。
誰かが、Fを射ている。
( ^ω^)(でも、あの速度と威力は……)
DやMによるものではない。
あの輝きには、強烈な印象が残っている。
ショボンと相対したアルファベット。
視線を左にやった。
遠くからでもはっきり分かる、ショボンの巨体。
その巨体とほぼ同程度の大きさを持つ、W。
すぐに城から飛び出して、ショボンの許へと駆けた。
驚いた顔でショボンがこちらを見る。
(´・ω・`)「どうした?」
- 62 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:14:45.28 ID:oL87YbRB0
- (*^ω^)「Wになったんですかお!?」
(´・ω・`)「ん? あぁ、そうだ。ついさっき、ツンさんからアルファベットが届いた」
(*^ω^)「おめでとうございますお!」
(´・ω・`)「触れるときは少し、怖かったがな。熱がなくて安心した。
これでようやく、ベルに追い付いた」
アルファベットの第一人者であるベルが最後に使ったアルファベットが、W。
そこに、ショボンは到達した。
これで史上最高位に並んだことになる。
ここから先は、未知の領域だ。
(´・ω・`)「アルファベットを両手で持つ場合、その双方を合計したほどのアルファベットが使えなければならない。
だから、Wを触れられたとしても、WとFを同時に触れるのは無理かも知れないと思ったんだ。
しかし、さすがにFは下位すぎるな。WとFを合計しても、Wと大差ないようだ」
( ^ω^)「そうなんですかお……凄いですお!」
(´・ω・`)「ありがとう。それにしても、アルファベットWの威力は、DやMとは比較にならないな」
ショボンが矢立てからFを取り出した。
右手に構え、Wの弦を引き絞る。
弦が軋む音を立てながら伸びていく。
伸び切った弦が一瞬静止したあと、Fを放った。
風を裂く音。視界から一瞬で消えるF。
およそ一里ほど先にある岩を、粉々に砕いた。
- 71 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:18:20.78 ID:oL87YbRB0
- 自分だけでなく、その光景を見ていた多くの兵卒たちからも、拍手が沸き起こった。
(´・ω・`)「不思議なものだ。普通に放てば、自然と自分の視点にFが向かっていく」
( ^ω^)「アルファベットの力ですかお?」
(´・ω・`)「恐らくな。DやMにもそういった部分はあったが、Wでははっきりとそれを感じる。
しかし、飛距離は自分の力によるところが大きい。俺ではまだ一里が限界だ。
ベルのように二里先の相手を狙うことはできない」
( ^ω^)「きっと、ショボン大将はベルを越えられますお」
(´・ω・`)「だといいがな。あのときのベルを越えるのは、難しいような気もしている。
まぁ、ベルの一撃が城壁からの射ち下ろしだったことも考えると、単純比較はできんが」
( ^ω^)「確かにあのときのベルは、まさに死力を尽くした、って感じでしたお……」
(´・ω・`)「死に際の力……だろうな。あのときの威力は、格別だった」
今の状態で越えるのは不可能だろう、とショボンは考えているようだった。
二里先の相手を、討ち取れるほどの威力が込められていたベルの一撃。
あの力は、どうやっても自分には出せない、と思っているようだ。
しかし、今のままでも充分、驚異的だ。
ひとつのアルファベットでできることは多くないが、Wほどの威力があれば用途は広い。
岸辺から水上の船を沈めることだってできるかも知れない。
いずれにせよショボン一人では限界があるが、絶対的不利なオリンシス城戦に向けて、ひとつ明るい要素が出てきていた。
- 84 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:21:00.52 ID:oL87YbRB0
- (´・ω・`)「飯は食ったか?」
( ^ω^)「まだですお」
(´・ω・`)「じゃあ一緒に行くか」
ショボンがWを背中に負った。
この巨躯でなければアルファベットが不格好にはみ出すだろう。
だからこそ、ショボンには似合っているのだと思った。
――マリミテ城・大食堂――
(´・ω・`)「Rの手ごたえはどうだ?」
(;^ω^)「うーん……それなりですお」
(´・ω・`)「まぁ、焦らずにじっくりやれ。壁は逃げたりしない」
(;^ω^)「むしろ迫ってくる感じですお」
(´・ω・`)「はは、その気持ちは分かる」
兵が大勢居て賑わっている食堂が、一瞬静かになる。
将校が、特にショボンが姿を現すと、みな黙って道を空ける。
兵卒と将校との間の格差を、時には見せつけておくことも大切なのだ、とショボンは言っていた。
いつかあんな風になってみたい、という向上心が生まれる。
将校への尊敬も高まり、統率力も上がるという。
- 93 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:23:40.62 ID:oL87YbRB0
- 昼食を給仕から受け取って、席についた。
遠くのほうに、ビロードとベルベットが一緒になって昼食を取っている姿が見える。
珍しい光景だった。
( ^ω^)「ショボン大将……ドクオは何をしてるんですかお?」
(´・ω・`)「……分からん」
ショボンが魚を頭から齧り始めた。
冷静な顔で、一匹を骨ごと口の中に収めていく。
(´・ω・`)「ずっと考えこんでいたと思ったら、突然、五千の兵とエヴァ城を貸してください……ときた。
しかも連絡さえほとんど寄越さん。何がしているのかなど、分かるはずもない」
( ^ω^)「……何で五千なのか……全く分かんないですお」
(´・ω・`)「そうだな……わざわざエヴァ城に行く理由も不可解だ」
(,,゚Д゚)「ドクオの話ですか?」
ギコが同じように昼食を抱えて、同じ机についた。
昼食時であるため、知り合いと遭遇する可能性は高い。
特にショボンの図体は、何千という兵の中からでも容易に見つけ出せるはずだ。
(,,゚Д゚)「任せっきりですが、大丈夫なのでしょうか?」
(´・ω・`)「信じるしかないな。残された期限はあと二年間。523年の終わりまでだ」
- 101 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:26:20.46 ID:oL87YbRB0
- (,,゚Д゚)「時間は有限です。ドクオに託してからのこの一年が、もし無駄なものだったらと考えると」
(´・ω・`)「無駄なんてないさ。ドクオにとっては全てが有益なはずだ」
(,,゚Д゚)「そうかも知れませんが……」
(´・ω・`)「まぁ、明日まで待とう。実はもうこっちに向かっているという報せを受けていてな。
五千の兵とともに、明日の昼過ぎには到着するらしい」
( ^ω^)「そうなんですかお? wktkですお」
(´・ω・`)「あぁ。一度詳しく話を聞く必要があるだろうな」
いつの間にかショボンは全ての皿を平らげていた。
口まわりを袖で拭って、大きな杯に入った水を僅かな時間で飲み干す。
(´・ω・`)「明日の夕方は軍議だ。また連絡する」
食器を下げて、ショボンは足早に立ち去った。
ゆっくり昼食を消化していく。
ギコと二人で、落ち着いた時間を過ごしていた。
(,,゚Д゚)「ブーン、お前だったらどうする?」
( ^ω^)「何がですお?」
(,,゚Д゚)「どうやってオリンシス城を奪うか、さ」
- 111 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:29:04.44 ID:oL87YbRB0
- 食堂の人は徐々に減ってきていた。
それに伴いざわめきも収まって、ギコの声も先ほどよりはっきり聞こえるようになっている。
( ^ω^)「水軍でぶつかるのは危険だけど……水軍を打ち破らないと、オリンシス城に到達できませんお」
(,,゚Д゚)「あぁ。だからこそ、この戦は難しい」
( ^ω^)「ブーンなら、やっぱり水軍の錬度を上げて、例え勝てなくても何とか野戦に持ち込めるようにしますお」
(,,゚Д゚)「そうだな、俺も似たような考えだ。一度水軍で戦い、敵の機能を潰して攻め込む。
もしくは、わざと負けてマリミテ城を攻めさせ、防衛戦で疲弊させる」
( ^ω^)「後者は難しそうですお……ミルナは今回、かなり慎重に戦を展開してくると思いますお」
(,,゚Д゚)「そこが問題だ。わざと負けるっつったって、マリミテ城を攻めさせるほどの負けは犠牲が大きい。
となると、やはり水軍で勝つしかなくなる」
( ^ω^)「……でも、ドクオは水軍の訓練をしてるわけじゃなさそうですお」
エヴァ城の周りに川はない。
船もエヴァ城には置いておらず、水軍の訓練ができるはずはなかった。
(,,゚Д゚)「……信じるしかねぇ、か……何をしようとしてるのか分からんが……」
ギコが物憂げな表情を浮かべて嘆息を吐いた。
ショボンが、信じている。だから、信じなければならない。
分かっていても、不安は拭いきれないのだ。自分もギコと同じだった。
- 115 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:31:42.31 ID:oL87YbRB0
- それでもまだ、自分は幼いころからドクオと一緒に過ごしてきた。
おかげで、必ずやってくれる、と信じられる部分もある。
だが、他の将校たちはどうか。
ドクオがもし、突拍子もないような策を提案した場合、反発さえ起きるのではないか。
そういった不安のほうが、どちらかと言えば大きかった。
――翌日――
――マリミテ城・軍議室――
(´・ω・`)「早速だが、話してもらおうか」
('A`)「はい」
城外に置いた兵を指揮するためシラネーヨはいないが、他全員が揃っていた。
それぞれの前に置かれた緑茶は、まだ誰も口にしていない。
視線はただドクオにのみ注がれている。
(´・ω・`)「半年もエヴァ城に滞在していた理由も気になるが、俺はもっと大きな部分を知りたい。
ドクオ、お前はどうやってオリンシス城を奪う気だ?」
('A`)「……奪取する方法を説明するために、滞在していた理由をお話します」
(´・ω・`)「……ほう」
初めてショボンが、緑茶の入った杯に口をつけた。
しかしやはり、視線は全く逸れない。
- 129 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:34:31.49 ID:oL87YbRB0
- ('A`)「この半年間、僕がやっていたのは試しごとです。五千の兵で、守りきれるかどうかを試していました」
(´・ω・`)「守りきれるか……だと?」
('A`)「はい」
(;^ω^)(…………?)
('A`)「……相手が五万ほどの兵で攻めてきた場合……五千の兵で、城を守りきれるかどうか、です」
モララーが一瞬、反応を示したのが分かった。
何かを理解したかのように。
しかし、口は開かない。
('A`)「オオカミに勝つために、僕はやはり陸路で攻めるべきだと思います」
(´・ω・`)「それが確実だ。しかし、問題は水軍を無視できないところだ」
('A`)「できます。マリミテ城を見捨てれば、水軍は無視して構いません」
(,,゚Д゚)「ドクオ、お前は何を言っているんだ?
見捨てるだと?」
('A`)「見捨てます。オオカミに、大軍で攻めさせます」
( ・∀・)「大軍で攻めさせて、五千の兵で守りきるってわけか?」
('A`)「……そうです」
( ・∀・)「物事を軽く見る癖は直ってねーみてーだな」
- 141 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:37:45.08 ID:oL87YbRB0
- はっきりと、険悪さが増していた。
苛立ったギコとモララー。肌がひりつくような痛さを感じる。
ショボンも平静ではないようだった。
( ・∀・)「十倍の兵なら力押しでも城を落とせる。そんくらいの常識は分かってるはずだろ?」
('A`)「マリミテ城は防衛面ではそれほど悪くない城です。耐えられます」
( ・∀・)「お前の献策内容は分かる。要するにマリミテ城の主力をいったんシャッフル城にやって、
そっから南下してオリンシス城を落とそうってことだろ?」
('A`)「はい」
( ・∀・)「どんだけ攻撃をうまくやっても、三ヶ月はかかるぞ。お前、それを耐えるってのか?」
('A`)「半年。半年なら確実に耐えられます」
モララーが眉をひそめた。
半年。モララーが言った三ヶ月の、倍だ。
堪りかねたような声をギコが発した。
(,,#゚Д゚)「お前、東塔を崩壊させるつもりか?
半年なんて、耐えられるわけねぇだろ」
('A`)「やってみせます。でなければ、自分の失態を取り返したことになりません」
怒気を含んだ声を、冷静かつ力強い態度で、押し返したドクオ。
ギコが怯んだようにも見えた。
- 152 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:40:29.85 ID:oL87YbRB0
- ('A`)「僕のせいで前回のオリンシス城攻めは失敗しました。フィレンクトさんも軍を去ることになりました。
だからこそ、やらなければならないと思っています。無茶だと非難されるようなことでも。
一度だけでいいんです。僕を信じてください。必ず半年、マリミテ城を守り抜いてみせます」
軍議室内が静まりかえっていた。
思わず気圧されるほどの意気が、ドクオの言葉には込められていたのだ。
(´・ω・`)「……本当に半年耐え忍べるなら、俺はオリンシス城を落とせる自信がある」
ショボンの声は、室内の静けさを取りこんでいた。
信頼が交じっているのも分かった。
(´・ω・`)「お前がマリミテ城を守っている間に、必ずオリンシス城を落とす。
俺はお前を信じよう。半年、オオカミの攻撃を凌いでくれると」
('A`)「ありがとうございます」
頭を下げたため、ドクオの表情は分からなかった。
しかし、わざわざ確認せずとも、嬉しさを表に出しているのは窺い知れた。
( ・∀・)「ショボン大将がそう言うなら、ドクオの策に乗るっきゃないですね」
(´・ω・`)「ドクオ、攻め方ももう考えてあるのか?」
('A`)「はい」
ドクオが地図に手を置いた。
期間、経路を細かく書きいれ、将校たちの役割を伝えていく。
言われていた通り、かなり詳細に決めてあった。
- 160 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:43:09.45 ID:oL87YbRB0
- ( ・∀・)「シャッフル城の東の山は迂回したほうがいいだろ」
('A`)「そこは少し悩みました。迂回するとキョーアニ川の上流に近づきすぎてしまいます。
何といっても、上流にはオオカミの水軍がいますから」
( ・∀・)「水軍も水から上げちまえばただのショボイ陸軍だ。問題ねーさ」
('A`)「そうですね……では迂回で」
ドクオの原案に他者が意見し、作戦が精錬されていく。
四刻ほど議論を交わし、オリンシス城を半年で奪取する作戦が完成した。
決して不可能な策ではない、と思った。
('A`)「僕が一人でマリミテ城を守りきる。それさえできれば、あとは問題ないと思います」
(´・ω・`)「ドクオ、孤独な防衛戦は辛いぞ。忍べるか?」
('A`)「心に刃を乗せたつもりで、頑張ります」
ショボンが頷いた。
議題は局所的な部分から、大まかな部分へと移って行った。
まず、戦を始めるのはいつからだ、という点。
('A`)「ショボン大将は三年の期間を与えてくださりましたが、来年の今頃に開戦するのがベストだと思います」
(´・ω・`)「ふむ。つまり、トータルでは二年半で終わらせるということだな」
('A`)「はい。この一年は準備に費やし、万全な状態で攻めるのが最上かと」
- 170 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:45:59.55 ID:oL87YbRB0
- ( ・∀・)「ま、妥当なとこだろうな」
(´・ω・`)「しかしドクオ、本当に五千で大丈夫なのか?」
('A`)「半年、シミュレーションしてみました。その上で、やれると判断しました」
(´・ω・`)「……実はな、またモナー中将に、助太刀に来て下さるよう頼もうと思っているんだ」
('A`)「そうなんですか?」
( ・∀・)「パニポニ城に、西塔が入っているためですね?」
(´・ω・`)「そうだ。パニポニ城を守る必要がなくなったため、こちらの戦に加われる。
ドクオ、モナー中将がいれば守るときも心強いだろう。一人じゃなく、二人でマリミテ城を」
('A`)「ありがたい話ですが、攻め手の充実が第一だと思います。
モナー中将が攻撃に加わって下されば、ぐっと厚みが増します」
( ・∀・)「ま、確かにそうだ」
(;^ω^)「でもドクオ、二人寄れば文殊の知恵とも言うお」
(;'A`)「三人の間違いじゃないですか?
ブーン大尉……。
一人でやれるという自信がありますので、大丈夫です」
(´・ω・`)「……そうだな……お前を信じると言ったばかりなのに、余計なことだったな。すまない」
('A`)「いえ、嬉しく思います。ありがとうございます」
現時点で話し合うべきことが全て終わり、皆が席を立った。
- 178 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:48:43.23 ID:oL87YbRB0
- ドクオが最後まで残っているのを見て、部屋を出ずに留まった。
引きつった笑いを浮かべている。緊張から解放された、と表情が語っていた。
(;'A`)「怖くねーっつったら嘘になるよ……」
(;^ω^)「そりゃそうだお……」
('A`)「五千で守り切るのは、計算上は可能だ。でも、何が起きるか分からないのが戦だからな……」
( ^ω^)「……ドクオ、ブーンたちは必ずオリンシス城を落とすお。待っててほしいお」
('A`)「あぁ、頼む。実際、オリンシス城が危機に陥った場合、マリミテ城を攻めている兵は引き返すと思うが」
( ^ω^)「そんときが、今回の戦いの佳境だと思うお」
('A`)「可能なら後ろから攻める。難しいだろうが、やれることは全部やってやる」
( ^ω^)「……必ず成功させるお。絶対にドクオを死なせはしないお」
('A`)「……元はと言えば俺が失態を犯したせいだ……すまん、ありがとう。
でも、この作戦が成功すれば、オオカミ戦の新たな道が切り開ける。
精強な水軍を使える機会がほとんどなくなるからな、オオカミは」
( ^ω^)「オリンシス城からはオオカミ城も臨めるお。この作戦は重大だお」
('A`)「奪えるかどうかが問題になってたオリンシス城だ。
俺の生死はともかく、奪取さえできればそれでいいんだ」
(;^ω^)「ともかくじゃないお。ドクオがいなくなったら東塔には大打撃だお」
- 184 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:51:36.03 ID:oL87YbRB0
- ドクオには言えないが、この作戦が失敗したら、ショボンも処罰を受けると言っているのだ。
処罰内容は分からないが、決して軽いものではないだろう。
色んな要素が絡んでいる作戦なのだ。何がなんでも成功させなければならない。
('A`)「もちろん、まだ死ぬわけにはいかない。そのためにも頑張るさ」
ヴィップの天下に貢献したい気持ちと、妹と再び暮らしたい気持ち。
ドクオの志は、その二つが同じ比率で重なっている。
どちらも、死ねない理由としては充分すぎるほどだ。
('A`)「大事なのは開戦までの一年間だ。しっかり準備しなきゃな」
( ^ω^)「確かにだお。ブーンも頑張るお」
('A`)「頼む。じゃあ、またな」
一足先にドクオが軍議室から退出した。
まだ一口も飲んでいなかった緑茶を飲み干してから、同じように部屋から出る。
冷めきった茶が少し胃に残る感覚があった。
――522年・夏――
――オリンシス城――
来年の年明けにはヴィップが攻めてくるという情報だった。
半年ほど前から、準備が着々と進められているという。
( ゚д゚)(諦めずに挑んでくるか……)
- 193 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:54:15.41 ID:oL87YbRB0
- オリンシス城を諦めるとは、到底思えなかった。
ヴィップの立場になって考えると、やはりオリンシス城を落とさないことには進めない。
シャッフル城からフェイト城を狙うのでは不安が多すぎるだろう。
しかし、どうやらヴィップの準備の仕方は、野戦を考えているものに見えるらしい。
( ゚д゚)(カムフラージュかも知れんが……分からんな……)
あえて野戦用の準備を進めて、戦になったら水軍で攻めてくるということも考えられる。
今のヴィップは正攻法から奇策まで、何でも使ってくる恐れがあった。
とにかく、様々な面から考える必要がある。
水軍で攻めてきた場合は、不安もほとんどない。
どんな攻め方をされようと、上回る自信はある。
不遜ではない。何年も調練を重ねてきたうえでの、確信だ。
ヴィップが望む展開は、やはり陸戦だろう。
シャッフル城を経由しての攻め。
ただし、これもヴィップは相当な博打に出ることになる。
何しろ、シャッフル城からオリンシス城を落とそうと思えば、数万の兵を要する。
今のシャッフル城にそこまでの兵数はない。マリミテ城から移動させる必要がある。
マリミテ城から大軍が動くようなら、こちらは悠々とマリミテ城を落とすだけだ。
( ゚д゚)(こちらがマリミテ城を落とすまでに、オリンシス城を落とす作戦に出るかも知れんが……)
問題はない。圧倒的に優位なのはオオカミだ。
ヴィップが守備と攻撃の割合をどうするかにもよるが、オオカミがマリミテ城を落とすほうが確実に早い。
いま互いに七万の兵を抱えている。同数だというのが大きかった。
- 197 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:57:01.67 ID:oL87YbRB0
- ( ゚д゚)(寡兵だったら苦しい戦かも知れんが、同数なら勝てる)
冷静に、様々な場面を想定した。
今回は基本的に有利な戦だ。落ち着いて戦えば勝てる。
ただし、ヴィップという国家は、自分の思考のはるか上を平然と歩いていくときがある。
だからこそ、何事にも動じない冷静さが必要なのだ。
(ゝ○_○)「おはようございます、ミルナ大将」
振りむきたくなかった。
相変わらず、朝の清々しい気分を一瞬で掻き消すような声だ。
できれば、軍内でこんな思いをしたくはない。
( ゚д゚)「……なんだ、リレント」
(ゝ○_○)「兵糧に関してなのですが」
リレントの提案に期待はしていない。
一応聞くが、大抵は否定するはめになるのだ。
(ゝ○_○)「今回は、水軍への割り当てを減らしたほうが良いのではと思いまして」
( ゚д゚)「……目に見えて減らすと、その穴をヴィップは狙ってくるぞ」
(ゝ○_○)「それなら好都合でしょう。水軍で挑んでくるなら、打ち破れます」
珍しく、まともな意見だった。
思わず唸ってしまったほどだ。
- 206 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 15:59:50.62 ID:oL87YbRB0
- ( ゚д゚)「……なるほど……分かった。兵数も少し、減らしたほうが良さそうだな」
(ゝ○_○)「はい。そのぶん、陸軍に充てるべきだと思います」
( ゚д゚)「リレント、お前はやはりヴィップが陸路で攻めてくると思っているのか?」
(ゝ○_○)「間違いないでしょう。前回あれほどの敗戦を喫したのですから」
( ゚д゚)「だからこそ、あえて水軍ということも考えられる」
(ゝ○_○)「えぇ、その可能性も当然あります。しかし、オオカミとしてはあくまで野戦を考えていればいいと思います。
水戦なら、多少こちらが不充分な体勢だったとしても、打ち勝てるほどの優位さがあるのですから」
こんなに真っ当なリレントは久しぶりだった。
何か奇策でも言わないのか、と思ってしまう。
寂しさすら感じる。
四中将が皆、こうやって少しずつ改善されていけば、オオカミは今よりはるかに強くなれる。
それは、昔から考えていることだ。
(ゝ○_○)「ところでミルナ大将、ひとつ献策をしたいのですが」
しかし、やはりリレントだった。
何か奇策を出さなければ気が済まないのだろう。
安心に近い思いすら感じてしまった。
だが、今回はリレントの策も、さほど的外れなものではないようだった。
- 222 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 16:03:12.35 ID:oL87YbRB0
- (ゝ○_○)「戦というのはやはり、有利な要素を一つでも多く持つことが大切だと思います」
( ゚д゚)「それは、もちろんそうだ」
(ゝ○_○)「実は、東塔での処遇に不満を持っている将がいるとの情報を得ているのです」
英才揃いの、ヴィップ軍東塔。
他所なら主力となりえる武将でも、あそこでは霞んでしまう。
そんな武将が、不満を持っているとしても、不思議ではなかった。
(ゝ○_○)「虚偽の情報かも知れません。しかし、やるだけやってみても、損はないと思います」
( ゚д゚)「裏切らせるわけか……」
(ゝ○_○)「少し違います。裏切りというのは、主義に合わない武将も多いようなので。
結果的には同じことですが、今回は引き抜きという形を取ろうと思います」
( ゚д゚)「言葉を弄して、言いくるめるつもりだな」
(ゝ○_○)「はい」
やはり、今日のリレントはいつもと違う。
元々、頭はいい男だ。使う方向がおかしかっただけで、真っ当な意見は出せるはずだった。
今頃になってようやく、いい武将になってきた、ということなのだろうか。
( ゚д゚)「名を、言ってみてくれ」
リレントの笑みも、さほど不愉快なものには感じなくなっていた。
- 245 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 16:06:12.74 ID:oL87YbRB0
- ――世界歴・523年――
――マリミテ城・城外――
三日月が夜空に佇んでいた。
冬の空は澄み切って、星々も月に負けじと輝いている。
戦の準備は万端だった。
一年を費やし、何の不備もない状態に仕上げることができた。
( ^ω^)(あとは、戦うだけだお……)
マリミテ城を、ドクオが守る。
他の将校は全て、シャッフル城を経由してオリンシス城を攻める。
それが、作戦の概要だ。
しかし、マリミテ城の守兵はわずかに五千。
攻めに六万五千を使えるのは大きいが、守りの不安も増大する。
オオカミは恐らく、マリミテ城への攻めに五万以上使ってくるだろう。
十倍の兵がいれば、城は力押しで落とせると言われている。
その攻めを、凌げるか。今回の戦で大事なのは、そこだった。
( ´∀`)「いい作戦だと思います」
兵の整列を待っていた。
呆然と眺めていたが、いつの間にかモナーが隣にいる。
今回の攻めに加わるため、四ヶ月ほど前に合流していた。
- 259 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 16:09:23.16 ID:oL87YbRB0
- ( ´∀`)「ドクオ中尉は守りに長けた武将だと聞いています。真価が問われるでしょう」
( ^ω^)「きっと、上手くやってくれますお」
( ´∀`)「私もいくつか提案をさせていただきました。城を守るときは、何でも武器になりますから」
城壁から、岩一つ落とすだけでも大きな被害を与えることができる。
D隊を使ってFを射ちおろせば、平地で使うよりも威力は高まる。
守りというのは、攻撃を忘れないことが大事だ、とモナーもドクオも考えているようだった。
( ´∀`)「もっとも確実性の高い作戦でしょうね、現時点では。
この作戦を思いつき、そして実行に至らせるあたりに、ドクオ中尉の力を感じます」
何度も頷いた。
ドクオには、東塔を支えられるだけの力がある。
だからこそ、絶対に死なせてはならない。
ドクオは綿密な作戦を立ててくれた。
後は、自分たちが確実に遂行するだけだ。
( ´∀`)「何が起きても、冷静に。臨機応変に動きましょう」
モナーの声には、さすがに冷静さがこもっていた。
現時点では、最高の布陣を揃えることができた。
必ず勝つ。勝ってみせる。
東塔のために、ドクオのために。
(´・ω・`)「進発」
- 271 :第47話 ◆azwd/t2EpE :2007/06/24(日) 16:11:58.15 ID:oL87YbRB0
- ショボンの声で、軍が一斉に動き始めた。
シャッフル城に到達するまで、オオカミは動きを見せないだろう。
しかし、そこからは一気に戦局が動くはずだ。
振り返って、マリミテ城の城壁を見た。
ドクオの姿が薄らと見える。
右手に握りしめたRを掲げた。
呼応するように、ドクオもPを掲げていた。
東塔の命運をかけた戦が、始まる。
第47話 終わり
〜to be continued
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