- 5
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:16:36.36 ID:47HKm2se0
- 〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
24歳 大尉
使用可能アルファベット:Q
現在地:マリミテ城
●('A`) ドクオ=オルルッド
24歳 中尉
使用可能アルファベット:N
現在地:マリミテ城
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
34歳 大将
使用可能アルファベット:V
現在地:マリミテ城
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
29歳 中将
使用可能アルファベット:U
現在地:マリミテ城
●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
32歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:マリミテ城
- 13
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:17:55.18 ID:47HKm2se0
- ●( ^Д^) プギャー=アリスト
30歳 少将
使用可能アルファベット:P
現在地:シャッフル城
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
27歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:マリミテ城
●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
33歳 中尉
使用可能アルファベット:R
現在地:マリミテ城
●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
49歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:パニポニ城
●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
23歳 少尉
使用可能アルファベット:M
現在地:マリミテ城
- 20
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:18:57.24 ID:47HKm2se0
- 〜西塔の兵〜
●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
39歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:マリミテ城
●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
40歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城
●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
43歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:ヴィップ城
●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
36歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヒグラシ城
- 24
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:19:51.11 ID:47HKm2se0
- ●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
38歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
●(´<_` ) オトジャ=サスガ
38歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
- 28
名前:階級表
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:20:48.17 ID:47HKm2se0
- 〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ/プギャー
大尉:ブーン/シラネーヨ
中尉:ビロード/イヨウ/ドクオ
少尉:ベルベット
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー
大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ビコーズ
少尉:
(佐官級は存在しません)
- 34
名前:使用アルファベット一覧
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:21:32.38 ID:47HKm2se0
- A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:
M:ベルベット
N:ドクオ
O:ヒッキー
P:プギャー
Q:ブーン/モナー
R:ギコ/イヨウ
S:
T:ジョルジュ/ミルナ/アルタイム
U:モララー
V:ショボン
W:
X:
Y:
Z:
- 40
名前:この世界の単位&現在の対立表
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:22:35.85 ID:47HKm2se0
- 一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml
(現実で現在使われているものとは異なります)
---------------------------------------------------
・ヴィップ 対 オオカミ
(マリミテ城〜オリンシス城)
- 47
名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:24:00.23 ID:47HKm2se0
- 【第45話 : Three】
――マリミテ城――
今日は忙しくなる予定だった。
午前は調練に参加し、午後からはアルファベットの訓練。
夜は新年を祝う宴の準備。
今年は苦々しい敗戦があったが、年初めに気分を改め、再び軍内の士気を高めたかった。
武勇国家ヴィップに停滞は許されない。破竹の勢いで勝ち進むしかない、と思っていた。
兵への調練は厳しく、自分の訓練も激しく行い、次は勝つべく精進を続けてきた。
一年が終わる日。
荒々しく扉が開き、全ては瓦解した。
(´・ω・`)「部屋に居たか、ドクオ」
(;'A`)「ショボン大将?」
常に威圧感を持しているショボン。
だが、今日はいつもと毛色が違った。
例えるなら、強烈な張り手でも喰らったかのような、弾けそうなほどの凄味があったのだ。
(´・ω・`)「残念で仕方がない。せめて、大人しくしていてくれ」
(;'A`)「え……?」
(´・ω・`)「今から、お前の首を刎ねる」
- 58
名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:27:10.82 ID:47HKm2se0
- 何の冗談ですか、と言う余裕もなかった。
アルファベットV。禍々しい光を放って見える。
ショボンが、右手にしっかりと掴んでいる。
全身を、恐怖が駆け抜けた。
本気だ。ショボンは、本気でアルファベットを振るうつもりだ。
足が竦む。手が震える。
(((((;゚A゚))))「うああああああああああああ!!!!!!」
思わず逃げ出していた。
机にぶつかり、転げ、呼吸が荒ぶる。
歯が音を立てている。寒気が身を包む。
(;゚A゚)「ハァ……ハァ……」
いつの間にか、ショボンの動きは止まっていた。
いや、止められていた。ブーンが、後ろから抱え込むようにして抑えていた。
(;^ω^)「待ってくださいお!
こんなのおかしいですお!」
(´・ω・`)「黙れ。こいつはもう国軍将校じゃない。罪人だ」
(;^ω^)「話を聞いてからでも遅くありませんお!
とにかく落ち着いてくださいお!」
ショボンの巨体を力いっぱい引っ張るブーン。
震える体で後退りしてしまうも、その光景が遠ざかることはない。
視界を覆うような恐怖。
(´・ω・`)「……感情的になりすぎた。すまない」
- 68
名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:30:07.60 ID:47HKm2se0
- ショボンがアルファベットを下ろした。
それでもまだ体は静止しない。
小刻みに揺れ続けている。
(´・ω・`)「全将校を集めるんだ。詳しく話を聞こう。処罰はその後に下す」
何がなんだか、分からなかった。
ただ言われるままに、軍議室へと向かった。
ふらつく体を支えられながら。
――軍議室――
東塔の全将校、そしてジョルジュ。
皆が静かに着座している。
視線を向けてくる者もいれば、考えこむように下を向く者もいる。
共通しているのは、沈痛な面持ちだった。
(´・ω・`)「順序立てて聞いていこう。まず、お前がヴィップに翻意を抱いているのか、どうか」
(;'A`)「どういうことですか……?」
(´・ω・`)「答えるんだ。お前は、腹の内ではオオカミに忠誠を誓っているのではないか?」
(;'A`)「違います。断じてそんなことはありません。何故、そのようなことを」
(´・ω・`)「じゃあ、この手紙はなんだ?」
- 78
名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:32:27.30 ID:47HKm2se0
- ショボンが、一枚の紙切れを掲げた。
薄汚れている。
そして、見覚えがある。
(;'A`)「それは……妹に宛てた手紙?」
オオカミの孤児院で暮らしている妹に宛てた手紙。
国軍に入る前から、国軍に入ってからもずっと、送り続けてきた。
商人だった親が妹を連れてオオカミに行ったとき、親は二人とも流行り病で没した。
それ以来、妹はずっとオオカミで暮らしているのだ。
院の規則で、国内に身よりがいない場合は孤児院から出れないためだった。
だからいずれ、ヴィップがオオカミの領土を併せ、再び妹とヴィップで暮らすことを願った。
そのために、国軍兵士として今日まで奮戦してきた。
家族と一緒に暮らす日を夢見ながら、手紙を送り続けてきたのだ。
(´・ω・`)「……と、装えば言い逃れできると思ったのか?」
(;'A`)「ちょ、ちょっと待ってください。意味が、よく」
(´・ω・`)「あまりに決定的すぎる証拠だ、これは」
ショボンが静かにその手紙を置いた。
皆が覗きこむ。
あれは確か、オオカミと水軍で戦う前に書いた手紙だ。
(´・ω・`)「全体的には、他愛もない手紙だ。妹を想う気持ちがよく表れている」
- 90
名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:35:19.49 ID:47HKm2se0
- 妹のために書いた手紙だから、当然だ。
それを何故、ここで皆の目に晒しているのか。
そもそも、どうしてショボンが妹に宛てた手紙を持っているのか。
(´・ω・`)「だが……この二行は、一体どういうつもりだ?」
ショボンが指差した。
手紙に何を書いたかは、大体覚えている。
その二行は、自分では、何も思わずに記していた。
気付きもしなかった。
(´・ω・`)「オオカミの裏をかくために中型船で攻めること……そのために船を大量に造っていること。
こんな重要機密を手紙に書くとは……裏切り以外の何事でもない」
ジョルジュ以外の全員が、身を乗り出していた。
ショボンの指先を、見つめている。
全身が、汗にまみれていた。
(,,;゚Д゚)「……これは……」
( ・∀・)「……なるほど」
(;'A`)「そ……それは……」
言われてみれば、確かにそうだ。
しかし、何故。
- 103 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:38:10.33 ID:47HKm2se0
- (;'A`)「この手紙は妹に宛てたものです。何が書いてあろうとも、関係ないはずで」
( ・∀・)「バカかお前は」
呆れかえったようなモララーの声。
苛立ちも、込められている。
( ・∀・)「妹への手紙は配達屋に渡したんだろ?」
(;'A`)「は、はい」
( ・∀・)「何年も前から配達屋が襲撃される事件が起きてる。
賊って噂だが、オオカミがやってる可能性だってあるだろーが」
(;'A`)「ッ……!」
(´・ω・`)「何故、この程度のことを考えられなかったんだ。
状況的には、お前が裏切っていると見るほうが自然だ」
違う。
ヴィップを裏切ってなんかいない。
しかし、それを示すものが、何もない。
(´・ω・`)「この手紙は、俺の抱えている間者がオリンシス城から苦労して盗み出してくれたものだ。
オオカミの手に渡っていたんだ。お前が妹宛に出した手紙は」
手紙の内容を思い出す。
この手紙だけではなく、今までのも全て。
- 114 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:40:51.96 ID:47HKm2se0
- フィレンクトの伏兵が発覚したときの戦。
あのときも、戦前に手紙を書いていた。
伏兵を使って戦うと、書いてしまっていた。
確かに妹からの返事はなかった。
ヴィップ城にいたときは返事が来ていたが、マリミテ城には届かなかったのだ。
きっと城が変わったせいだろう、と思っていた。
全て、オオカミに渡っていたのか。
そのせいで、そのせいで――――。
(;'A`)「じゃあ……俺のせいで……フィレンクトさんは……」
(´・ω・`)「……フィレンクトの伏兵のことも漏らしていたなら……そうなる」
声が、出ない。
体が動かない。
叫びたいのに、のた打ち回りたいのに。
自分のせいで、フィレンクトが。
そして、水軍での負けが。
何もかも、自分のせいで。
(´・ω・`)「お前の罪はあまりに重い。俺は、いかなる理由があろうと斬るしかないと思っている」
- 130 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:43:22.12 ID:47HKm2se0
- ( ・∀・)「……そうですね……オオカミに裏切ってたわけじゃなさそうですが……これは酷い」
(,,゚Д゚)「残念ですが……処断もやむを得ないと思います」
何も言えなかった。
三人の言う通りだ。あまりに軽率だった。
自分でも昔、配達屋が襲撃される事件が起きているとブーンに言っていたのに。
何故、その程度のことを考えられなかったのだ。
配達屋がオオカミの軍に襲撃され、手紙が敵国に渡ってしまうかも知れない、と。
どうして、どうして。
(´・ω・`)「……残念で仕方がない。ドクオ=オルルッド、今からお前を―――――」
(;^ω^)「ちょ、待ってくださいお!」
(;><)「待ってあげてほしいんです!」
(=;゚ω゚)ノ「お待ちください、ショボン大将」
( <●><●>)「少しだけ待ってもらえませんか、将官方」
四人の声が重なった。
そのせいか、元からか、頭が混乱しはじめていた。
(=;゚ω゚)ノ「確かにドクオの過失は許されることではないと思います。
ですが、死罪はいささか重すぎるように感じます」
(;><)「死んじゃったら全てが終わりなんです!
でも生きてれば挽回できるんです!」
- 149 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:46:22.03 ID:47HKm2se0
- ( <●><●>)「ドクオ中尉が翻意を抱いていないのは、マリミテ城戦での活躍からも明らかです。
死罪に処して将校を一人失うのは軍に影響が大きすぎると分かっているはずです」
尉官たちが次々と反対の言葉を述べてくれている。
嬉しいが、心の中では、既に死ぬ覚悟ができていた。
諦めではない。それが当然だと思っていた。
(;^ω^)「モララーさんだって、マリミテ城戦の前に言ってましたお。
将校としての初陣だから、周りが見えなくなるかも知れない、って。
ドクオはまだ経験の浅い武将ですお。失敗だって犯しますお」
( ・∀・)「確かに言ったが、さすがにこれはな。フィレンクトの腕と、水軍での大敗。二つの罪はデカイ」
(;^ω^)「許されることじゃないのは分かってますお……ブーンだって、ドクオには凄くムカついてますお。
でも、ドクオは才のある武将ですお。二つの失敗を取り返すような活躍だってできるはずですお!」
(,,゚Д゚)「……それは、そうかも知れんが……しかし、兵への示しがつかんぞ」
(;^ω^)「一度だけチャンスをくださいお。その間、兵にはこのことを黙っておいてほしいんですお。
もし挽回のチャンスでも失敗したら……そのときは、もう……」
( ・∀・)「……ま……お前の考えは分かるが……どうします、ショボン大将」
(´・ω・`)「……ふむ……」
軍議室が静謐に満ちる。
静けさはただ、重みを生み出すだけだ。
そのまま押し潰されたいとさえ思った。
- 160 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:48:56.56 ID:47HKm2se0
- (´・ω・`)「このまま処断するというのも……あまりに無慈悲か」
(;^ω^)「そう思いますお」
(´・ω・`)「一度だけだ。ドクオ、お前に挽回のチャンスを与える。
期限は三年間。523年の暮れまでに、オリンシス城を奪取するんだ。
もしできなければ、お前の首を即座に刎ねる」
オリンシス城。
精強なオオカミ水軍に守られた堅城。
信じられないほどの大敗を見舞われたのは記憶に新しい。
それも、自分のせいだった。
今さら、愚かさが分かった。遅すぎた。
(´・ω・`)「容易でないことは、先の戦で分かっていると思う。オオカミの水軍はそれほどに強力だ。
今年、ラウンジがヴィップを攻めてくるという話がある。それに、東塔はまだ敗戦を引きずっている。
二つのことを考えれば、三年という期間は長くないぞ。やれるか?」
('A`)「……やれます」
強く答えた。
ブーンや、イヨウ、ビロード、ベルベットが作ってくれた挽回の機。
あまりに無責任な行動を取った自分を、庇ってくれた。
応えなければ、武人として死ねない。
(´・ω・`)「お前に任せるのは、作戦の立案だ。単純に攻め方だけを考えてくれればいい。
ただし、綿密にだ。俺たち将校は、ただそれに従えばいい、というレベルにまで仕上げてくれ。
でなければ、挽回とは言えん」
- 174 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:51:37.38 ID:47HKm2se0
- ('A`)「分かっています。そのつもりです」
(´・ω・`)「まぁ、一人では限界がある部分もあるだろう。周りの協力を仰ぐなとは言わん。
要するに、お前が戦を主導するんだ。その上で城を奪えれば、今回の罪は帳消しにできる」
('A`)「本当に……ありがとうございます」
二度、頭を下げた。
チャンスをくれた。
あまりに浅はかで、あまりに愚かな自分に。
そんな自分を、庇ってくれた将もいる。
将校となって初めての戦で、まともでなかった部分が多々あった。
手紙に機密を何とも思わず書いてしまったのも、それが要因だろう。
自分を擁護するわけではない。ただ、愚劣さを忘れないために。
皆の気持ちに、応えるために。
必ず、オリンシス城を奪取してやる。
(´・ω・`)「もう一度、お前を信じてみる。頼んだぞ、ドクオ」
ショボンの声に、優しさが戻っていた。
それがただ純粋に、嬉しかった。
( ゚∀゚)「……ちょっといいか?」
軍議が、終わりかけたときだった。
ずっと黙っていたジョルジュの声。
場が、静まりかえる。
- 193 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:54:49.20 ID:47HKm2se0
- ( ゚∀゚)「このタイミングで言うのも何だがな……ひとつ、報告だ」
(´・ω・`)「……なんですか?」
( ゚∀゚)「俺の病は、どうやら完治したみてーだ。おかげさんでな。
十日後にはここを出ていく。世話になったな」
(´・ω・`)「そうですか、分かりました」
( ゚∀゚)「ま……こっちはこっちで頑張ってくらぁ」
言い終わってすぐに立ちあがるジョルジュ。
ドアを開け放ったまま、部屋から退出していった。
――マリミテ城・屋上――
雪がちらついていた。
あまりに淡い、粉のような雪だ。
体に触れた瞬間、熱で溶けていく。
( ^ω^)「ドクオ」
('A`)「……すまん……ホントに、なんて言えばいいか……」
( ^ω^)「ドクオ、ブーンは凄く怒ってるお」
軍議室から出てすぐ、ブーンに屋上まで引っ張られた。
不思議と、寒さは感じない。
- 214 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
00:57:54.36 ID:47HKm2se0
- 視界を塞ぐ雪が煌いて見える。
( ^ω^)「ドクオは将校としてマリミテ城戦で初めて指揮を執って、そのまま戦が続いてるお。
今だって、実質初陣みたいなもんだお」
('A`)「……初めて指揮執った戦だからって……許される過ちじゃない」
( ^ω^)「確かにそうだお……でも、ドクオに比べたら程度が軽かったとは言え、ブーンだって失敗を犯したお。
モララーさんは、自分だってショボン大将だって、初めて指揮した戦は冷静じゃなかったって言ってたお」
('A`)「俺のは……酷過ぎる……なんで、こんなことが分からなかったのか……それさえ、分からない……」
( ^ω^)「ブーンがイライラしたってしょうがないのは分かってるお……でも、イライラしちゃうんだお」
('A`)「すまん……でも、ありがとう……お前が庇ってくれたおかげで、挽回のチャンスを貰えた。
俺は必ずオリンシス城を奪う。それが達成できたら、あとは処断されてもいいと思ってる」
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待つお。達成したのに死ぬって、それじゃ意味ないお」
('A`)「償いたいだけなんだ……俺のせいで、何千という兵の命が無用に奪われた……。
フィレンクトさんの腕だって……もう、かえってはこない。
贖罪のために戦う、というのもおかしいかも知れんが……償えさえすれば、それでいいんだ……」
偽りなき本心だ。
自分の犯した罪はあまりに重い。
例えオリンシス城を奪ったとしても、許されるものではない。
オリンシス城は必ず奪取する。
しかし、そのあとで皆が処断を望むなら、受け入れようと思っていた。
状況によっては、自分から願い出るかも知れない。
- 228 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
01:01:12.98 ID:47HKm2se0
- ('A`)「とにかく、戦には勝つ。そのあとのことは、そのあと考える」
(;^ω^)「了解だお……」
('A`)「俺みたいなバカの下で戦ってくれた兵のためにも……俺を庇ってくれたみんなのためにも。
必ず、必ずだ。必ず勝つ」
強い意志を、雪中に残した。
握りしめた拳に溶けていく雪。
はるか大空から舞い落ちてきている。
しかし、最後は脆く消えゆく。
自分の手に触れなければ、まだ舞うことができたのに。
あまりに儚いものに思えた。
('A`)「新年祝いは欠席する。ブーン、悪ぃけどあとでキョーアニ川の図を持ってきてくれねぇか?
確かお前が持ってたよな。すまんが、頼む。じゃあ、またあとでな」
ブーンの反応を確かめないままに、階段を下って行った。
一秒でも時間を無駄にしたくなかった。
期限は、三年。
- 233 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
01:03:58.76 ID:47HKm2se0
- ――世界歴・521年――
――ラウンジ城・執務室――
新年になってすぐ入ってきた報は、ジョルジュの西塔復帰だった。
マリミテ城戦が始まる前からずっと東塔に留まりつづけてきたが、遂に病が完治したという。
もちろん、すぐに出陣の命令を下した。
( ’ t ’ )(ジョルジュが帰ってくるまでが勝負だ)
西塔の主力は近いうちにヒグラシ城に集まるだろう。
だが、マリミテ城からヒグラシ城まで駆けなければならないジョルジュは、参戦が遅れる。
一ヶ月以上の差が出るだろう。
その一ヶ月の間に、ヒグラシ城を落とす。
大将を欠いているいまが好機だ。
(`・ι・´)「準備は、完全には整っていないが……何とかなりそうだな」
( ’ t ’ )「はい」
執務室に、アルタイムと二人きりだった。
最近、二人でこの部屋に篭って執務を行うことが多い。
ベルの後を継いだということは、民政も担当しなければならない、ということだからだ。
一人ではベルの代わりになれない。
二人でも苦しいが、何とかやっていけている状態だった。
( ’ t ’ )「城を空けている間はいつも不安ですね」
- 240 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
01:06:27.01 ID:47HKm2se0
- (`・ι・´)「文官に任せっきりだからな……仕方ない」
( ’ t ’ )「武官は、戦に勝つのが第一ですからね」
戦に勝たなければ何の意味もない。
直接アルファベットを交えるにしても、謀略により相手をねじ伏せるにしても。
どちらも戦であり、成功を収めなければ国の繁栄はないのだ。
ここ最近、連続して城を失っている。
国内の不満が高まっているのも事実だ。
ヒグラシ城は、何としても奪還する必要がある。
( ’ t ’ )「パニポニ城も警戒しておくべきですね」
(`・ι・´)「モナーは出てこんだろうが、ジョルジュが入る可能性はあるからな」
( ’ t ’ )「ヒグラシ城を攻めている間に背後を突かれるのは避けたいところです」
(`・ι・´)「それに、ジョルジュならギフト城をそのまま狙ってくることも考えられる」
( ’ t ’ )「一応、ダカーポ城にも兵を入れておいたほうが良さそうですね。一万ほど」
(`・ι・´)「仮にギフト城が落とされた場合はカウンターを狙うべきだ。
ダカーポ城よりギフト城に近い、リリカル城でもいい」
( ’ t ’ )「そうですね……リリカル城のほうが本城にも近いですしね」
(`・ι・´)「リリカル城に一万とファルロを残す。エウレカ城とカノン城にも、将を一人ずつつけるべきか」
- 248 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
01:09:08.40 ID:47HKm2se0
- ( ’ t ’ )「デラロサ少将がエウレカ城を、ドーンボス大尉がカノン城を守っています。
現状維持で問題ないかと」
(`・ι・´)「そうだな。それぞれに五千ずつでいいだろう。
俺たちも明日には進発だな。八万という数は、決して多くはないが」
( ’ t ’ )「ヴィップは領土拡大に伴い、かなり兵数を増やしています。
いま全軍で、十四万にまで膨れ上がっていますね。西塔も六万は出してくるはずです」
(`・ι・´)「易い戦いではないな。だからこそ、ジョルジュがいない間が勝負だ」
( ’ t ’ )「全力を尽くします」
窓から西日が射しこんでいた。
執務室に入ったのは昼食を取ったあとだったが、いつの間にか陽が落ちかけている。
兵たちが調練から引き上げてくる時間だ。
書類を抱え上げ、アルタイムの机に置いた。
( ’ t ’ )「年末の税収と戸籍の調査結果です。眼を通しておいてください。
それと商人からの許可証申請、豪族からの土地保持更新の認可もお願いします」
(;`・ι・´)「……夕食を取る時間がないな……」
( ’ t ’ )「軍事のほうは、明日までにできることはやっておきます」
(`・ι・´)「頼んだ」
頭を下げて、執務室を出た。
冬の風が廊下を駆け抜けていた。
- 265 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
01:11:52.74 ID:47HKm2se0
- ――二十日後――
雪の積もる道を粛々と進軍していた。
昨日は豪雪が降りつづいていたが、今日は太陽が眩しいほどに晴れている。
しかし、寒さは相変わらずだ。今年は、厳冬だった。
他の二国に比べて北に位置するラウンジは、冬になると多くの地域が雪で閉ざされる。
物流が凍り、人も家の中で過ごす日が多くなるのだ。
その中であえて出陣している。ヴィップの不意は突けているはずだ。
雪道を進軍する訓練は積んであるため苦にならない。
むしろ、全土が寒波に襲われている今、雪に慣れていないヴィップのほうが進軍に苦しんでいるはずだ。
( ’ t ’ )(それにしても……いきなり晴れたな)
雪が溶けだし、汚れた水と混ざりあっていた。
それほどに、今日はよく晴れている。
昨日の大雪からは考えられないほどだ。
寒冷地であるラウンジはまだ雪が多く残っているが、元より温暖なヴィップは、それほどでもないかも知れない。
特に、山が少ないヴィップ城から北の方面は、いまラウンジ軍が進んでいる道よりははるかに雪が少ないはずだ。
昨日の調子で雪が降り続けてくれればありがたかったが、思うようにはいかない。
( ’ t ’ )「進軍停止」
ギフト城に到着した。
隊を整え、守将に挨拶に出向く。
既に外で待ってくれていたようだ。
- 276 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
01:14:51.18 ID:47HKm2se0
- おざなりの会話を済ませ、すぐに兵をギフト城内に入れた。
ヒグラシ城を攻めるときは、ここが基点になる。
決して近くはないが、道は平坦であり、進軍は容易だった。
三日後にはアルタイムも到着した。
着々と攻撃準備を整える。ヴィップも既に、ヒグラシ城に三万の兵を入れたという報せが入っていた。
ジョルジュはまだローゼン城にも到達していないという。時間的にはまだ余裕がある。
( ’ t ’ )「二日後に、五万を率いて進発します。敵に奇襲されることも考え、慎重にいきます」
(`・ι・´)「あまり隊を伸ばすなよ。小さく固めて進むんだ。
ヒグラシ城の北西は平地で見通しも良く、滞陣しやすいだろうが、油断するな」
( ’ t ’ )「はい。では、準備を整えてきます」
ヒグラシ城はまだ万全の状態ではない。
できる限り早く攻め込んで落としてしまいたいのだ。
早ければ早いほど有利になる。
焦って見落としがあると大変なことになる。
慎重に事を進めなければならない。
戦の経験も増えてきて、以前よりは多くのことを考えられるようになっていた。
そんな甘い考えを吹き飛ばしたのは、明くる日の夕方に飛び込んできた、伝令だった。
(;`・ι・´)「……何だと……?」
(;’ t ’ )「そんな……いったい……」
- 291 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
01:18:12.29 ID:47HKm2se0
- 何故だ。
その言葉しか、頭に思い浮かばなかった。
ヒグラシ城の北東にある、ラウンジ領カノン城。
ピエロ川の岸辺に建っている城だ。
昔から塩や魚といった物資を動かす基点となっている。
そのカノン城が、ヴィップ軍西塔中将のニダーの手によって、落とされたのだ。
(;’ t ’ )「ありえない……そんなまさか……!」
(;`・ι・´)「信じられん……いったいどんな手を使ったんだ……!?」
完全に、気が動転していた。
落ちるはずのない城が、落とされている。
ジョルジュを欠いたヴィップ軍に。
いや、そんなことよりも。
何故落ちたか、どうやって落とされたか、など、さしたる問題ではない。
問題は、カノン城の位置だ。
カノン城はピエロ川と接している。
船も数多く残してある。
その船を使って、ピエロ川を渡河した場合。
三百里にも満たない僅かな距離の先に、ひとつの城がある。
クラウン=ジェスター国王のいる、ラウンジ城だ。
- 306 名前:第45話
◆azwd/t2EpE :2007/06/14(木)
01:21:11.79 ID:47HKm2se0
- (;’ t ’ )「……本城に残してある兵数は……?」
(;`・ι・´)「……たったの、四万だ……しかも、錬度の低い新兵や老兵ばかり……」
カノン城とラウンジ城の間を遮るものは、何もない。
もしラウンジ城が落ちれば、ラウンジは、実質的に滅亡する。
脚の震えが止まらない。まさか、ラウンジ城を狙ってくるとは。
思いもしなかった。考えもしなかった。
もはや、ヒグラシ城を攻めている場合ではなくなっていた。
第45話 終わり
〜to be continued
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