- 4
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:19:59.03 ID:Mzp0BZJH0
- 〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
24歳 大尉
使用可能アルファベット:O
現在地:マリミテ城
●('A`) ドクオ=オルルッド
24歳 中尉
使用可能アルファベット:L
現在地:マリミテ城
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
34歳 大将
使用可能アルファベット:V
現在地:マリミテ城
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
29歳 中将
使用可能アルファベット:U
現在地:マリミテ城
●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
32歳 少将
使用可能アルファベット:Q
現在地:マリミテ城
- 8
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:21:21.05 ID:Mzp0BZJH0
- ●( ^Д^) プギャー=アリスト
30歳 少将
使用可能アルファベット:P
現在地:シャッフル城
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
27歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:マリミテ城
●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
33歳 中尉
使用可能アルファベット:R
現在地:マリミテ城
●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
49歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:パニポニ城
●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
23歳 少尉
使用可能アルファベット:L
現在地:マリミテ城
- 10
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:22:34.60 ID:Mzp0BZJH0
- 〜西塔の兵〜
●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
39歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:マリミテ城
●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
40歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城
●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
43歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:ヴィップ城
●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
36歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヒグラシ城
- 16
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:23:55.73 ID:Mzp0BZJH0
- ●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
38歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
●(´<_` ) オトジャ=サスガ
38歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
- 19
名前:階級表
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:25:44.32 ID:Mzp0BZJH0
- 〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ/プギャー
大尉:ブーン/シラネーヨ
中尉:ビロード/イヨウ/ドクオ
少尉:ベルベット
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー
大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ビコーズ
少尉:
(佐官級は存在しません)
- 21
名前:使用アルファベット一覧
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:27:23.30 ID:Mzp0BZJH0
- A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:ドクオ/ベルベット
M:
N:
O:ブーン/ヒッキー
P:プギャー
Q:モナー/ギコ
R:イヨウ
S:
T:ジョルジュ/ミルナ/アルタイム
U:モララー
V:ショボン
W:
X:
Y:
Z:
- 25
名前:この世界の単位&現在の対立表
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:28:37.50 ID:Mzp0BZJH0
- 一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml
(現実で現在使われているものとは異なります)
---------------------------------------------------
・ヴィップ 対 オオカミ
(マリミテ城〜オリンシス城)
-
-
- 28
名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:30:04.50 ID:Mzp0BZJH0
- 【第43話 : Peach】
――世界歴・520年――
――マリミテ城――
新年を祝う宴は小規模ながら行われた。
戦時であるため、例年のような振る舞いはできなかったのだ。
(´・ω・`)「今年中にオリンシス城を奪るぞ、皆」
ショボンは静かに、短くそう言った。
いつもと変わらぬ調子が、逆に心に響いた。
オリンシス城を、奪取しなければならないと思った。
( ^ω^)(でも、もっかいぶつかるのは、春か……夏ごろかお?)
いまは全土が混乱に満ちていた。
特に年末はあまりに多くの情報が入ってきて、実際に戦ったりもして、忙しすぎた。
オオカミとラウンジの戦が、意外な形で終わったことが原因だ。
ミーナ城を攻め寄せたラウンジは、絶対的に優位だった。
多すぎるほどの兵を率いていき、盤石の体勢を取っていたのだ。
しかし、負けた。信じられないほどの惨敗だった。
フィルとガシューがミーナ城を守り、ラウンジはアルタイムとファルロが主となって攻めていた。
ラウンジの戦い方は堅実そのもので、何もなければ犠牲を最小限に抑えて勝てるはずだった。
それを全て打ち崩したのが、ミルナ=クォッチだった。
- 35
名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:33:07.68 ID:Mzp0BZJH0
- オオカミ城から二万の軽騎兵を率いて急襲し、そのままフェイト城まで奪った。
ラウンジはフェイト城とミーナ城の間で孤立し、散々な被害を受けながら後退。
四万以上の兵を失って、何とかコードギアス城まで退却した。
オオカミはフェイト城を守っていた一万と、ヴィップ方面に割いていた一万を加えた。
城を奪還するだけでなく、最大限、敵兵を降伏させて自軍に組み入れる。
しかもすぐにラウンジの軍を解体して、そのあとの戦で使ったというのだ。
さすがミルナとしか言いようがない戦の運びだった。
そのミルナが戦に出てきたのは、実はオオカミの四中将さえ予想していなかったことだという。
ミルナは病を装っていたわけではなく、本当にまだ充分に動ける状態ではなかったのだ。
しかし、国家の危機とあって居ても立ってもいられず、城を飛び出したらしい。
戦をやっているうちに病など吹き飛んでしまった、と笑い飛ばしたという。
つまり、ミルナは完全に復活した。
次のオリンシス城戦には、間違いなく出てくる。
昨今、兵力不足にも喘いでいたが、新たに二万の兵を加えた。
フェイト城を奪ったことで実質的にトーエー川を支配した。国力も増すはずだ。
オオカミはこの短期間でかなり手強くなった。
( ^ω^)(……オリンシス城を奪えなかったのが痛かったお……)
オオカミとラウンジが戦っていたとき、オリンシス城から、一万の兵が発った。
オリンシス城にいた兵はおよそ三万。そのうちの一万がいなくなったのだ。
城を奪う絶好機だった。
- 40
名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:35:50.56 ID:Mzp0BZJH0
- そのときヴィップに入っていた情報は、オオカミが圧倒的に不利であり、ミーナ城は陥落寸前、というものだった。
だからこそオリンシス城が手薄になったときは躊躇なく攻め込んだ。
実際には、そのとき既にオオカミは形勢を逆転していたのだ。
ヴィップがオリンシス城を攻めたことによって、オオカミはラウンジ追撃の手を緩めた。
それが結果的に、ラウンジのアルタイムやカルリナの命を救うことになったのだ。
あの混乱の中では正確な情報が掴みにくかったとはいえ、情報の精度が落ちていたことを悔やむしかなかった。
ただ、それならせめてオリンシス城を落としてしまいたかった。
二万の守兵。こちらは倍以上の兵を有している。
充分、勝てる見込みはあった。
しかし、水軍に乱された。
上流を取っているのはオオカミ側だ。素早く南下してきて、的確にヴィップの船を潰された。
丸太を尖らせたようなものを船の尖端につけて、直接船にぶつかるのだ。
幾隻もの船が沈められ、救助している間にオオカミは臨戦態勢を整えた。
川を渡らせないように対岸からFを射てきたり、船を接触させて乗り込んできたりした。
やはり、水上ではオオカミ軍にはそうそう敵わない。
そうやって手間取っている間に、ミルナはオリンシス城救援を決めて、援軍を向けてきた。
ヴィップは引き下がらざるを得なかった。
マリミテ城をオオカミに放棄させた際、物資はすべて置いていかせた。
つまりオオカミの船も一部手に入れることができたのだ。
それは大きな収穫だったが、問題は水夫だった。ヴィップには優秀な水夫が少ない。
ショボンやモララーがいま憂えているのは、水上の戦におけるヴィップの圧倒的不利だった。
- 45
名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:38:52.59 ID:Mzp0BZJH0
- ('A`)「ブーン、ちょっと調練に付き合ってくれよ」
( ^ω^)「お? オッケーだお」
寝癖のついた髪を手で直しながらドクオが声をかけてきた。
兵と兵をぶつからせる調練ではなく、アルファベットの手合いだ。
ドクオはLを右手で引きずっている。
訓練室に入って、向かいあった。
他の兵卒が何十人か同じように手合いしていたが、皆が動きを止めている。
将校同士の手合いは、普段そうそう見れるものではないからだ。
('A`)「いくぜ」
ドクオの声に呼応して、アルファベットOを構えた。
ドクオがLを両手で掲げ、一息に振り下ろす。
真正面から受け止めた。
激しい金属音が部屋中に響いたあと、素早くドクオがLを振り上げる。
二撃目、振り上げなのに先ほどより速度が増している。
Oを下げて防いだ。
間合いが若干詰められ、尖端を突き出された。
Oの刃部分でそれを弾く。
しかし、それはドクオの狙い通りだった。
Oが大きく動いたことで隙ができた。
横に払われるL。鋭敏な動き。
普通なら、胴体が二つに裂かれているところだ。
- 52
名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:41:30.43 ID:Mzp0BZJH0
- だが、ドクオの狙いは予測できていた。
素早く身を引いて躱し、リーチの長いLを満足に振るえないほどの距離にまで迫る。
右手でドクオの手首を掴んで、Oで首を切る素振りを見せ、軽く笑った。
( ^ω^)「ブーンの勝ちだお」
(;'A`)「くぁー……やっぱ強ぇな……」
互いにアルファベットを下げた。
息を呑んでいた周りの兵卒たちが、小さく声を交わし合っている。
感嘆しているようだ。
( ^ω^)「あからさまに隙ばっか狙っちゃダメだお。もっと強引にいってもいいお」
('A`)「だよなぁ……分かっちゃいるんだが、俺はあんまり力がないからか、小手先の細工に頼っちまうんだ……」
( ^ω^)「思い切って振るえば相手も怯むお。自分の隙を極力なくしておけば、力がなくても強烈な一撃を浴びせられるお」
ドクオは何かを確かめるようにLを左右に軽く振るっていた。
努力家であり、研究熱心だ。アルファベットの上達も、才能には頼っていない。
秀才タイプだ、とモララーも言っていた通りだ。
その後は、教えを乞う兵卒たちの相手をした。
構えが体から遠すぎる兵や、振るい方に隙がありすぎる兵。
ひとりひとりに癖がある。
アルファベットに関しては、他の二国とは比較にならない、と言われているヴィップ。
それを保つためにも、こうして個々人の力量を少しずつ上げていくことが大切なのだ。
兵力で劣るヴィップは、兵を精鋭にすることが求められる。
- 66
名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:46:11.04 ID:Mzp0BZJH0
- (兵*¨-¨)「ありがとうございました」
( ^ω^)「こちらこそですお」
自分より年上の兵に手解きし、満足そうな顔で頭を下げられた。
こちらまで、嬉しくなる。
昼が近づき、そろそろ終わりにしようか、と思っていたときだった。
訓練室の扉が開き、部屋に緊張が走った。
(´・ω・`)「ん? ブーンとドクオか……何をしているんだ?」
ショボンだった。
右手に携えるアルファベットは、V。
ベルのアルファベットとして皆の印象に深い。
( ^ω^)「こんにちはですお。ちょっと訓練を……」
(´・ω・`)「そうか、奇遇だな。俺も訓練をしようと思って来たんだが……」
周りの視線が、二人に注がれていた。
明らかなほどの、期待交じりで。
ドクオさえ一歩離れ、興奮を示すように顔を紅潮させていた。
(´・ω・`)「……ふむ」
ショボンがVを左右に振るった。
そして下端部が、自分の喉元に向く。
- 74
名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:48:01.68 ID:Mzp0BZJH0
- (´・ω・`)「どうやら期待されているようだな。やってみるか」
( ^ω^)「……お願いしますお」
同じように、アルファベットOを構えた。
ショボンと、初めての手合い。掌に汗を感じる。
強く握りしめ、踏み出した。
先手はショボン。下端部を突きだしてきた。
往なしてOを横に払う。ショボンはそれを片手で受け止めた。
すぐに間合いを取って再び構える。隙を作ってはならない。
今度はショボンが間合いを詰めてきた。
視界の端で鮮明だったVが、姿を消す。
はっとしてすぐにOを横にずらした。
全身に隈なく届くような衝撃、痺れ。
目にも止まらぬ速度で振るわれたVを、辛うじて受け止められた。
ただの手合いとはいえ、ショボンの気迫は常人なら竦みあがるほどのものだ。
弾いて、全身を守るようにしてOを前に出し、突進した。
Vの一撃で止められるも、勢いを全て殺がれたわけではない。
上から重量に任せて落とす。
ショボンは躱さずに、アルファベットで受け止めた。
火花が、散って見える。その視界は大きく揺らいだ。
渾身の力を込める。ショボンのVは、動かない。
- 84
名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:50:35.36 ID:Mzp0BZJH0
- やがて弾かれた。
ショボンが素早く身を捻り、勢いをつけてVを振るう。
Oで、防ぐ。脳まで揺れるような衝撃があった。
押し返して、一気に懐まで潜りこんだ。
俊敏に動けた自信がある。
ショボンの内肘を掴んだ。これで、アルファベットは使えない。
そして、不意に眼前に現れた、Vの刃。
全身が冷や汗を掻き、自然と体の動きは止まっていた。
(´・ω・`)「俺に勝つのは、まだ早い」
周りから拍手が湧き起こった。
熱戦を心の底から称えるように、大きな音がいくつも響く。
(;^ω^)「ありがとうございましたお」
(´・ω・`)「お前が腕を上げているのは、嬉しい限りだ」
内肘を、掴んだ。
ショボンはアルファベットを自由に使えなくなったはずだった。
しかしショボンは強引に手首を返して、Vを眼前に持ってきた。
あの一瞬で、ここまで素早い反応を見せられては、どうしようもない。
日々の積み重ね。それが恐らく、異常なほどの反応速度を生み出したのだろう。
また、Vの形状もショボンは利用した。
例えばUなら手首を返しても眼前には届かない。
だが刃が折れたような形状のVなら、それが可能となったのだ。
- 93
名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:55:08.77 ID:Mzp0BZJH0
- やはりまだまだ遠い。
しかし、鍛練を重ねて精進していけば、いつか追いつけるはずだ。
次は勝ちたい、と思った。
(´・ω・`)「さぁ、昼飯を食って午後の調練に備えるぞ。ブーン、ドクオ」
( ^ω^)「はいですお」
('A`)「了解です」
三人で訓練室を出て、食堂に向かった。
マリミテ城も奪取してから半年ほど経つ。
城内の環境も整ってきていた。
給仕から昼食を受け取り、椅子に腰掛けた。
まだ昼食には少し早い時間のため、兵は少ない。
マリミテ城はさほど大きい城ではないため、混雑時には見渡す限り人で埋まるくらいだ。
(´・ω・`)「プギャーから連絡があった」
大きめのパンを一口で頬張り、すぐに飲み込んで、ショボンが言った。
普通の人なら頬が膨れるはずだが、ショボンは僅かな咀嚼で喉を通してしまった。
(´・ω・`)「ラウンジから迎えが来て、ファルロを引き渡したようだ」
( ^ω^)「配下の兵は何人くらいいたんですかお?」
(´・ω・`)「三千ほどを連れていたらしい。全員、手当てを施して送り出したそうだ」
- 104 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
02:58:06.08 ID:Mzp0BZJH0
- ('A`)「それにしても、驚きでしたよね……まさかファルロ=リミナリーがシャッフル城に来るなんて……」
年末のヴィップを驚かせたのは、ラウンジ大敗の報。
そしてそのラウンジ軍の中尉であるファルロが、シャッフル城に逃げ込んできたことだった。
満身創痍、命からがらシャッフル城まで辿り着いたファルロは、助けてくれと懇願した。
ただし、自分の命ではなく、配下の兵たちをだ。
自分の首を差し出す。代わりに、配下の兵を助けてくれ、とプギャーに願った。
プギャーはとりあえず全員を属城であるリン城に入れて、手当てを行った。
そこで一度マリミテ城に伝令を送り、ファルロをどうするか、と聞いてきた。
無論、即座に軍議が開かれた。
( ・∀・)「新鋭のファルロを消しておくのはヴィップにとって有益でしょうが……
ラウンジが報復に来る可能性は高いと思います。
もしジョルジュ大将が戦に出れない今、攻め込まれると……最悪ですね」
(´・ω・`)「そうだな……むしろ恩を売っておいて、北の安全を確保しておくほうがいいかも知れん」
そしてすぐに伝令をシャッフル城に送り返した。
ファルロと全ての兵を治療し、ラウンジに連絡しろ、という内容の手紙を持たせて。
ラウンジはヴィップの厚情に、並ではない感謝の気持ちを示し、すぐに迎えを出したという。
それがシャッフル城に到着してすぐ、ファルロと三千を引き渡した、というのが今回の話の始終だった。
(´・ω・`)「しかし、驚いたな。まさか敵国の将が逃げ込んでくるとは……」
( ^ω^)「珍しいですお」
(´・ω・`)「そうそうあることじゃないな。まぁ、ヴィップは一切損なしで利を得られたわけだが」
- 110 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:00:55.59 ID:Mzp0BZJH0
- ('A`)「でも、危険でしたよね。もしラウンジの策だったら、プギャー少将の身が……」
(´・ω・`)「まぁ、さすがにプギャーは不用意に近づかなかっただろう。手当ては兵卒に任せたはずだ。
それに、いくらなんでも兵たちの傷が本物かどうかくらいは分かるだろうしな」
('A`)「なるほど……それもそうですね」
( ^ω^)「プギャーさんはお優しいですお」
(´・ω・`)「まぁ、シャッフル城の近くに兵が来て、プギャーは焦っただろうが……。
殲滅せずに助けてくれて良かった、というところだな。あいつの優しさが奏功したか」
野菜を煮込んだスープをショボンが啜った。
途中で器を口から離すことはなく、一気に全てを飲み込む。
ショボンの前にある食器はみな空になった。
(´・ω・`)「シャッフル城のことは片付いた。次の戦に向けて、集中せねばならんな」
( ^ω^)「問題はやっぱり水軍ですかお?」
(´・ω・`)「そうだ。やはりオオカミの水軍は精鋭だからな」
('A`)「こちらも水軍を強化させますか?」
(´・ω・`)「悩ましいところだな。相手の得意分野で戦うのはあまり賢くない」
('A`)「陸戦に引き込めるなら、それが最善だとは思いますが……」
(´・ω・`)「難しいな。オオカミが陸に上がってくる理由がない」
- 113 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:03:47.80 ID:Mzp0BZJH0
- ( ^ω^)「わざと隙を作ってみるのはどうですかお?」
(´・ω・`)「マリミテ城奪還を狙わせるわけか?
四中将が相手なら上手くいくかも知れんが……。
今のオリンシス城にはミルナが居る。多分、好餌を見せびらかせても食い付かんだろうな」
ミルナはラウンジ戦が落ち着いてすぐ、オリンシス城に入っていた。
同時に、ラウンジ戦にあたっていたフィルとガシューも戻ってきている。
オオカミは久々に主力が勢揃いしていた。
( ^ω^)「じゃあ、いっそのこと北のシャッフル城から攻めてみるとか……」
(´・ω・`)「いや、警戒されている。キョーアニ川の上流にはオオカミの水軍もいるしな。
まぁ、実際にシャッフル城まで兵を移動させたら、それこそマリミテ城が落とされるだろうな」
シャッフル城は遠すぎるのだ。
マリミテ城を狙わせるための隙としては、大きすぎる。
オオカミに急襲された場合、シャッフル城からでは軍を急派させても間に合わない。
マリミテ城の守将に籠城させる手もあるが、ヴィップの援軍が近づけばオオカミは軍を引いてしまうだろう。
ミルナが相手なら、それは間違いなかった。
四中将とは違って、冷静で視野が広い武将だ。
(´・ω・`)「ミルナが居るのと居ないのでは大違いだ……マリミテ城戦は楽な戦だった、と思い知ったな」
( ^ω^)「ホントですお……それに、新たに二万の兵を率いて来たのも大きいですお」
(´・ω・`)「あぁ、それも痛い。これで兵数は互いに五万ずつだ」
('A`)「オオカミはフェイト城に蓄えられていた膨大な兵糧を得たことも大きいのでしょうね」
- 119 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:06:27.65 ID:Mzp0BZJH0
- (´・ω・`)「だな。無理なく戦ができる。まったく、ラウンジが負けてしまったことがヴィップにまで響いてくるとはな……」
( ^ω^)「やっぱりミルナは凄いですお……」
絶対絶命の危機を、自ら救ったミルナ。
やはりオオカミの中では図抜けた存在だ。
ミルナがいる限り、これからもヴィップは楽ではない戦が続く。
('A`)「ラウンジに支援を要求してみてはどうですか?」
(´・ω・`)「物資支援か?」
('A`)「いえ、オオカミを再び攻め込むようにと」
(´・ω・`)「無理だろう。ラウンジは先の戦で四万もの被害を受けてフェイト城を失ったばかりだ。
将校も多く討ち取られたと聞く。戦などできるわけがない」
('A`)「構えだけでも、無理でしょうか?
フェイト城を奪還するぞ、という」
(´・ω・`)「そこまでする義理はないさ。いくら将を助けてやったとはいえ、しょせん中尉だしな。
ファルロではなくアルタイムかカルリナだったら、また話は違ったかも知れんが。
下手に過剰な要求をすると、ラウンジの機嫌を損ねかねんしな」
('A`)「そうですか……それもそうですね……」
ドクオがしょげた顔を俯かせた。
二人で何とか打開策を見出そうとしているが、上手くいかない。
特にドクオは、マリミテ城戦での武勲が認められ中尉に昇格したこともあり、やけに張り切っているようだった。
( ・∀・)「こんなところで軍議ですか?」
- 125 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:09:11.12 ID:Mzp0BZJH0
- 三人で勝ち方を考え唸っていたとき、昼食を受け取ったモララーが近づいてきた。
背にはアルファベットU。ショボンよりもはるかに早いペースでTから上がっていた。
(´・ω・`)「モララーか。まぁ、そんなところだな」
( ・∀・)「オリンシス城を攻めるのは、難しいですね」
モララーが空いた椅子を引いて、座った。
平たいパンに、割って焼いた鶏卵と野菜を挟んだものを、モララーが無造作に掴む。
サンドイッチと俗に呼ばれていた。
( ・∀・)「ま、何にせよ水上の戦は避けられないでしょう。水軍の強化が第一ですね」
(´・ω・`)「そうだな。いずれ陸戦に引き込むとしても、まずは水軍でぶつからねばならん」
( ・∀・)「ただ、昨年末にぶつかった限りじゃ、とても埋まりそうな差には思えませんでしたね」
( ^ω^)「一年くらい調練しても無理そうですかお?」
( ・∀・)「何年やったって無駄さ。こっちが調練してる間に、あっちだってレベルを上げる」
(´・ω・`)「そうだな。限界というものはあるかも知れんが、何十年も先の話になる」
( ・∀・)「勝てる見込みがあるのは陸戦ですが、ミルナが指揮執るなら陸には来ないでしょうね」
(´・ω・`)「八方塞がりとはこのことだな」
モララーは表情を変えずに淡々と昼食を胃袋に収めていた。
この人が美味しそうに食事している姿は見たことがない。
しかし、不味そうにしているところも、同じく記憶になかった。
- 135 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:12:19.15 ID:Mzp0BZJH0
- ( ・∀・)「ま、そんなに焦る必要もないでしょう。どうせまだ暫く戦えませんし」
(´・ω・`)「新しい城を奪ってすぐ戦うのは危険だからな」
( ^ω^)「統治は大変ですお……」
('A`)「文官は毎日忙しく働いてますね」
( ・∀・)「安定するのに、最短でも夏まではかかるでしょうね」
(´・ω・`)「そうだな。とにかく戦までに、少しでも水軍を鍛える必要がある」
( ・∀・)「あとは船ですね。幸い、造船所が無傷で残っていますし」
(´・ω・`)「とっくに稼働させているが、オオカミに忠実だった職人が逃げだしてしまったのは痛かった。
人員は補強したが、技術を身につけるのには時間がかかる」
('A`)「しかし、木の質ならヴィップのほうが上のはずですよね」
(´・ω・`)「まぁ、そうだな。オオカミの木は質が悪くて、船を作るのにも苦労したと造船所の職人が言っていた。
マリミテ城の付近の木はダメだが、ヴィップ城南西の森から運んでくればいい船が作れそうだ」
( ・∀・)「少しずつでも確実に、力を蓄えていくしかなさそうですね」
いつの間にかモララーは昼食を平らげていた。
水を一杯飲み干し、すぐに席を立つ。
( ・∀・)「それじゃまた」
食器を下げて、立ち去って行った。
- 139 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:15:00.10 ID:Mzp0BZJH0
- 徐々に人が増え始めた食堂だが、モララーが行くと皆が道を空ける。
気にする素振りもなく歩いて行き、やがて背中は見えなくなった。
( ^ω^)「相変わらず自由な人ですお……」
(´・ω・`)「まぁ、あいつらしいな。アルファベットの伸びが早いのも、あの性格が奏功している気がする」
('A`)「訓練に割いている時間は人より多いんですか?」
(´・ω・`)「あまりあいつと一緒に居ることがないから分からんが、それほどでもないと思うがな」
( ^ω^)「でもあの歳でUは凄いですお……」
(´・ω・`)「驚いたのは、TからUに上がった早さだな。俺より倍以上早かった。
Sの壁で三年も躓いたのが不思議なくらいだ。一年くらいで突破すると思っていたんだがな」
('A`)「ショボン大将はどれくらいかかったんですか?」
(´・ω・`)「俺は二年……いや、一年半くらいだったかな。確か、その間だったと思う。
モララーはJの壁突破が俺の半分の期間だった。だからSの壁も同じだろうと予想してたんだがな」
( ^ω^)「Sの壁に挑戦してたときは忙しかった、とか……」
(´・ω・`)「まぁ、それもあるだろうな。あいつが有能すぎるが故に、色々と押し付けてしまった」
('A`)「でも、それは軍人の務めです」
(´・ω・`)「その通りだが、アルファベットだけに専念していたらどうだっただろう、と思ってな。
軍人である以上、なかなかアルファベットの訓練ばかりしているわけにもいかんが」
- 143 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:18:02.27 ID:Mzp0BZJH0
- ( ^ω^)「アルファベットに才がある人は将校になりやすいから、仕方ないですお……」
(´・ω・`)「アルファベットのランクが高ければ高いほど、兵卒は尊敬の眼差しを送る。
すると統率力が高まる。命令を素直に受け入れるようになる。
やはりアルファベットの才は必要だ。中にはフィレンクトのような特殊なやつもいるが」
('A`)「やはり、アルファベットにさほど才がないのなら、戦功でアピールする必要があるわけですね」
(´・ω・`)「そういうことだ。しかし、アルファベットに才がないと将校に目をつけられにくい。
ベルベット=ワカッテマスもアルファベットに秀でていたから部隊長に、そして少尉になったわけだ」
('A`)「……そういえば、昇格で思い出したのですが……
ギコ少将ってずっと少将のままですよね?」
(´・ω・`)「ん? あぁ、そういえばそうだな。
ギコはほとんど失敗のない武将だし、戦功からいえば中将でもいいんだが……。
中将が三人は少し多い気がしてな。とりあえず少将のままに留めてある。
待遇はほとんど中将に近いがな」
( ^ω^)「じゃあ、プギャーさんもしばらく少将ですかお?」
(´・ω・`)「そうなるだろうな。いま昇格の可能性があるのは、ブーンとイヨウだけだ。
何もなければそのうち一つずつ昇格させるつもりでいる」
( ^ω^)「ありがとうございますお」
(´・ω・`)「まぁ、オリンシス城戦で勲功を得てくれればこっちとしても推挙しやすい。
頑張ってくれよ。ドクオも、大尉を目指して奮戦してくれ」
二人で同時に頷いた。
- 147 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:21:05.09 ID:Mzp0BZJH0
- ショボンが席を立ったのに続いて席を立つ。
人が多くなってきた食堂から脱出するようにして、調練に向かった。
――コードギアス城・城外――
ヴィップから使者が送られてきたとき、何事かと思った。
ファルロの無事が伝えられたとき、思わず椅子から立ち上がってしまった。
大敗した戦の中で、大将アルタイムを守り、行方不明になっていたファルロが、帰ってきた。
( ’ t ’ )「よく帰ってきてくれた、ファルロ」
固い握手を交わした。
戦前と変わらぬ、茫洋とした表情。
違う点を上げるとすれば、跡の残った幾つかの傷くらいだった。
( ̄⊥ ̄)「敵国に頼ることになってしまいましたが、何とか帰ってこれました」
(`・ι・´)「ヴィップに頼ったのは気にするな。生き延びてくれていて良かった」
アルタイムも城外まで出てきて、ファルロを出迎えていた。
数百の護衛を供にしたファルロが恭しく頭を下げる。
二人とも表情には出していないのに何故か、嬉しさが滲み出ているように見えた。
( ’ t ’ )「しかし、どうやってミルナから逃げ切ったんだ?」
( ̄⊥ ̄)「私もあまり覚えがないのです。無我夢中だったもので」
- 152 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:24:28.01 ID:Mzp0BZJH0
- (`・ι・´)「恐らく、ミルナのほうが引き下がったのだろう。狙いは私だったのだからな」
( ’ t ’ )「なるほど……ファルロが粘り強く戦い、攻めあぐね……遂にはファルロを諦めたわけですね」
(`・ι・´)「ファルロから離れて私を狙ったが、私は既に遠かった……多分、そんなところだろう」
( ̄⊥ ̄)「どんな状況だったか、全く覚えていないのです。気付けば配下の兵と一緒に、夜の中を駆けていました」
( ’ t ’ )「そこから何故シャッフル城に向かったんだ?」
( ̄⊥ ̄)「方角が全く分からなくなってしまって……彷徨っているうちに、シャッフル城に着いていました」
(`・ι・´)「シャッフル城はプギャーが守将だったか……どう出てくるか分からん武将だな」
( ̄⊥ ̄)「最初は陣を城外に構えていましたが、アルファベットを捨てて交渉に行ったら、手当てを施してくれました」
(`・ι・´)「ありがたいことだ……東塔ではなく西塔だったら、命はなかっただろうな」
( ’ t ’ )「運が良かったですね」
これでヴィップにはひとつ、借りができた。
アルタイムはそれを決して忘れないだろう。
いずれ返さなければならない恩だ。
- 158 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:27:22.52 ID:Mzp0BZJH0
- (`・ι・´)「とりあえず、しばらく休め。本城に帰るのは春になってからだ。
帰ったらお前を大尉に引き上げよう」
( ̄⊥ ̄)「いえ、敗戦した挙句に敵国に頼るなど、あってはならないことです。
むしろ降格が相応しいと思います」
強い口調で言い放った。
茫洋としているが、芯はしっかりしている。
少しだけ、父親を思い出す瞬間だった。
(`・ι・´)「……分かった。降格にはしないが、中尉に留め置こう。
とにかく休んでくれ。お前はよくやってくれた」
( ̄⊥ ̄)「はい」
三人で城内に戻るべく歩き出した。
コードギアス城は門が階段を昇ったところにあり、これが思ったより疲れる。
一段一段がやけに高いためだ。
疲労を感じながら昇りきった。
ファルロを先に城内に入れて、アルタイムと二人でゆっくり歩く。
廊下は静かなものだった。
(`・ι・´)「最終的には五人の将校を失ったが……ファルロは帰ってきてくれた。本当に良かった」
( ’ t ’ )「心から安心しました。ファルロまで失っていたら、ラウンジは……」
(`・ι・´)「四万の兵を失ったのも痛いが、将来有望な将を失うのはそれ以上に痛い……」
- 173 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:31:25.47 ID:Mzp0BZJH0
- ( ’ t ’ )「ファルロはSの壁突破を期待されていますからね……ヴィップに感謝しなければなりませんね」
(`・ι・´)「ショボンには謝辞を伝える使者を送るつもりだ。後は、形で示す必要があるだろうな」
( ’ t ’ )「例えば、共同歩調など、ですね」
(`・ι・´)「すぐには無理だがな……時間が経てば可能かも知れん。
あまりヴィップが有利になりすぎるのも困る。できれば物資支援くらいで済ませたいが」
( ’ t ’ )「多分、納得しないでしょう。ヴィップは物資に困っていませんし」
(`・ι・´)「軍事的な見返りを期待されるだろうな……まぁ、あっちから何か要請があるまで、静観でいいと思うが」
( ’ t ’ )「そうですね……」
いずれ、ショボンはファルロを助けた礼を暗に要求してくるはずだ。
いつになるかは分からないが、それまでラウンジ側から動く必要はないだろう。
( ’ t ’ )「ところで、新兵募集の件ですが」
(`・ι・´)「早急に進めてくれ。オオカミ戦で失った四万はいかにも大きい」
( ’ t ’ )「はい。国内の主要地点すべてに急募の紙を貼り付けさせます」
(`・ι・´)「あとは、私への処罰だな」
アルタイムは平静だった。
ただ淡々と、必要なことを見ている。
やはり、この人は昔に比べると、大将らしさを身につけはじめたようだ。
- 179 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:34:46.55 ID:Mzp0BZJH0
- ( ’ t ’ )「……私にも処分が必要でしょう。でないと、示しがつきません」
(`・ι・´)「お前の責任ではないさ。北から着実に攻めよう、と提言していただろう。
俺が強引にミーナ城攻めを決めたせいで、ミルナに逆転の一打を放たれた。
オオカミ城に近い城の危険性を、理解できていなかったんだ」
( ’ t ’ )「それなら、仲違いしてでも私がずっと北からの攻めを提案しつづければ良かったんです。
しかし、賛成してミーナ城攻めの指揮を執った以上、責任があります。
自虐でもなんでもありません。兵卒たちは少なからずそう考えているはずです」
(`・ι・´)「……そうか……すまない」
( ’ t ’ )「大将が謝るなど、あってはならないことです」
(;`・ι・)「確かにそうだ、すまな……
……っと……また謝ってしまうところだった」
( ’ t ’ )「アルタイム大将のお気遣いは、忘れません。ありがとうございます」
その後、アルタイムに三年間の無給と、自分に向こう三年、昇格なしの処罰が下された。
兵卒たちからの不満は、出なかったようだ。妥当なところだ、という意見が届いていた。
敗戦により編成が大きく乱れ、それを整えるのに時間がかかった。
冬の寒さが厳しい間は城の中で編成作業に追われ、暖かくなりはじめてからは兵を動かすことが多くなった。
敗戦の衝撃が拭いきれていないため、動きは鈍い。徐々に戻していく必要があった。
春風が心地よく木々の葉を揺らしだした頃、コードギアス城を発った。
最初に目指すのはリリカル城。そのあとカレイドスコープ城を経て、ラウンジ城へと帰る。
長い行軍になるが、弛んだ兵の気を引き締めさせるにはちょうどいい。
- 186 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:37:49.91 ID:Mzp0BZJH0
- ( ’ t ’ )「これは、桃の木ですか」
(`・ι・´)「そうだな。キレイなものだ」
行軍の途中、林道を通った。
鮮やかな色の花が咲き乱れる、桃の木が立ち並ぶ道だ。
思わず見とれてしまっているのは自分だけではなく、多くの兵たちも同じだった。
( ̄⊥ ̄)「花は毎年同じように咲きますが」
( ’ t ’ )「ん?」
( ̄⊥ ̄)「その花を見る人は、毎年変わります。永劫同じ人が見続けることは叶いません」
ファルロが少し視線を上げ、ひたすら一点を見つめながら言った。
微風に揺れる枝と葉と花びら。
その動きを追うこともなく。
( ’ t ’ )「……そうだな」
この地ではいま、三国が競い合っている。
戦も、頻繁に起こっている。命を落とす兵は、少なくない。
次にこの林道を通るとき、必ずしもみな同じようにこの花を見れるとは限らないのだ。
自分も、いずれ何らかの形で消えゆくだろう。
それこそ、この花を見るのは最初で最後かも知れない。
( ’ t ’ )「しかし」
背の低い木の花びらに触れた。
- 190 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:40:51.27 ID:Mzp0BZJH0
- 目に近づくと、花の色が鮮明になる。
言葉では表現できない美しさがあった。
( ’ t ’ )「また次は、新たにこの花を見る人がいる。
何年先も、何十年先も、"ラウンジの民"はこの花を見続けるんだ」
( ̄⊥ ̄)「……そうですね」
ラウンジの天下が実現すれば、必ずそうなる。
そのために、自分たち将校は、戦わなければならないのだ。
来年は同じように見ることができないかも知れない。
だが、この美しい花を、より多くの人に心ゆくまで見てもらいたい。
そのために、平和を掴まなければならないのだ。
( ’ t ’ )「行きましょう」
行軍を再開させた。
ラウンジは、恐らく今年中に戦うことはないだろう。
まずは、夏に始まると言われている、ヴィップとオオカミの戦を見守る。
結果次第で、今後の動きを決める。
- 198 名前:第43話
◆azwd/t2EpE :2007/06/03(日)
03:43:44.07 ID:Mzp0BZJH0
- いずれにせよ、来年までは静観することになる。
もう一度この花を見ることができそうだ、と思うと、自然と笑みがこぼれた。
第43話 終わり
〜to be continued
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