9 名前:登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:20:12.64 ID:BnCj+2uZ0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
23歳 大尉
使用可能アルファベット:O
現在地:マリミテ城

●('A`) ドクオ=オルルッド
23歳 中尉
使用可能アルファベット:L
現在地:マリミテ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
33歳 大将
使用可能アルファベット:V
現在地:マリミテ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
28歳 中将
使用可能アルファベット:U
現在地:マリミテ城

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
31歳 少将
使用可能アルファベット:Q
現在地:マリミテ城
16 名前:登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:21:48.14 ID:BnCj+2uZ0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
29歳 少将
使用可能アルファベット:P
現在地:シャッフル城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
26歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:マリミテ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
32歳 中尉
使用可能アルファベット:R
現在地:マリミテ城

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
48歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:パニポニ城

●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
22歳 少尉
使用可能アルファベット:K
現在地:マリミテ城
23 名前:登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:23:03.73 ID:BnCj+2uZ0
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
38歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:マリミテ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
39歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
42歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:ヴィップ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
35歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヒグラシ城
27 名前:登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:24:04.94 ID:BnCj+2uZ0

●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
37歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城

●(´<_` ) オトジャ=サスガ
37歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
33 名前:階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:25:02.54 ID:BnCj+2uZ0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ/プギャー

大尉:ブーン/シラネーヨ
中尉:ビロード/イヨウ/ドクオ
少尉:ベルベット


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
40 名前:使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:26:06.56 ID:BnCj+2uZ0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:ベルベット
L:ドクオ
M:
N:
O:ブーン/ヒッキー
P:プギャー
Q:モナー/ギコ
R:イヨウ
S:
T:ジョルジュ/ミルナ(オオカミ)/アルタイム(ラウンジ)
U:モララー
V:ショボン
W:
X:
Y:
Z:
47 名前:この世界の単位 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:27:20.55 ID:BnCj+2uZ0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

62 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:29:08.25 ID:BnCj+2uZ0
【第41話 : Blow】


――519年・秋――

――マリミテ城――

 晴れた日にはオリンシス城の片影が見える。
 川を渡れば、交戦できるほどの距離だ。
 戦争継続も必然的だった。

 夏に、オオカミはマリミテ城の放棄を決断した。
 正確には、決断させた。ショボンが講和策を出したのだ。

 マリミテ城から全兵を無傷で脱出させる代わりに、城を譲らせる、というもの。
 オオカミはその条件をすぐに飲んだ。もう少し躊躇うかと思っていたが、よほど切羽詰まっていたのだろう。
 ヴィップとしても、城を攻めることなく戦いを終わらせられたのは助かる結果だった。

 それでも当初は全物資の脱出もオオカミは求めてきた。
 ショボンは強気に突っぱね、城を攻めることさえちらつかせた結果、兵の脱出のみとなった。
 しかし、元より物資に苦しんでいたオオカミは、マリミテ城にほとんど物資を残していなかった。

 得たものは城だけだが、それでも大きな収穫であることに変わりはない。
 何十年も前からの悲願であったキョーアニ川以東を治めることができたのだ。

( ^ω^)(シャッフル城の統治も楽になるはずだお)

 出っ張る形で治められていたシャッフル城も、南西の危険が薄まり、プギャーを楽にできたはずだ。
 オリンシス城を陸路で攻める場合はシャッフル城から出陣することになるが、マリミテ城に比べるといかにも遠い。
 やはり水軍を使わなければならないだろう。
69 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:31:32.94 ID:BnCj+2uZ0
 しかし、水軍に限れば他の二国とは比較にならないほどの精鋭を有するオオカミ。
 オリンシス城戦は、かなり苦戦することになりそうだ。

 一応オオカミとの戦は継続されているが、実際に戦うのはまだ先になりそうだ。
 何よりオオカミは、ヴィップとの戦より、ラウンジとの戦を優先せざるを得ないだろう。
 北のフェイト城から、ラウンジが出兵する構えを見せているのだ。

 ミルナがいない穴を、やはりラウンジも突いてきた。
 それも、奪ったばかりのアリア城を使うのではなく、楔的存在であるフェイト城から攻めるというのだ。
 相当強気な姿勢を見せている。

 フェイト城からミーナ城を落とせば、オオカミ城さえ狙える。
 北から一城ずつ潰すのが堅実だが、力を大きく落としているオオカミなら、ミーナ城を奪えると判断したようだ。
 やはりオオカミは苦しい戦いになる。

( ^ω^)(……現状じゃ……)

 ミルナを欠いており、四中将もまとまっていない今、ミーナ城を守り抜くのは難しいだろう。
 せいぜい数年粘るくらいしか抵抗手段はない。始まる前から既に、時間の問題だ。
 ヴィップも手は抜かない。ジョルジュが療養中である以上、ラウンジを攻めることもない。

( ^ω^)(……ジョルジュ大将は……)

 どうするつもりなのだろうか。

 フィレンクトへの謝罪。
 それがどういった意味を持つのか。
 分かるようで、考えだすと、分からなくなる。
80 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:34:19.43 ID:BnCj+2uZ0
 何も知りたくない。
 時には嫌気が差してそう思うこともあった。
 ただヴィップのため戦い続けたいだけなのに、何故こんなにも、障害が多いのか。

 それでもいずれ、分かるときは来るのだろう。
 そのとき、訪れるものは、いったい何か。
 知りたくもあり、知りたくなくもあった。



――フェイト城・執務室――

 軍を入れるのにも一苦労だった。
 北東にあるダカーポ城が最寄だが、トーエー川を挟んでおり、距離もある。
 領内とはいえ、行軍には気を配らざるを得なかった。

( ’ t ’ )「ふぅ……」

 椅子の背凭れに体重を預け、やっと一息つけた。
 人や物資が整ったからだ。
 兵站も整備された。戦ができる状態だ。

 今回狙うのは、南西にあるミーナ城。
 オオカミの牙城であるオオカミ城に、最も近い城だ。
 奪取できればオオカミは相当苦しくなる。

( ’ t ’ )(……ミルナが戦に出れない今が好機、か……)
84 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:36:51.31 ID:BnCj+2uZ0
 ミーナ城攻めを決断したのは、他ならぬアルタイムだった。
 珍しく意見が対立した。北西にあるヒダマリ城から徐々に追い込むべきだ、という自分と、アルタイム。
 ミルナが居らず、地盤が緩い今だからこそ、着実に攻めるべきだと思ったのだ。

 だが、アルタイムの言うことも理解できる。
 一気にオオカミを潰す、またとない機会なのも分かる。
 しかし、フェイト城からの攻めは、ヴィップが近すぎるのだ。

 兵力では他の二国に劣るヴィップが、二正面の攻めを展開してくるとは思えない。
 それでも、可能性はあるのだ。ミーナ城を攻めている状態なら、シャッフル城からは面白いように背後が突けるだろう。
 オオカミと共謀して追い込んでくることも考えられた。

 大軍の利を活かして、ダカーポ城からシャッフル城に牽制の構えを見せているが、充分ではない。
 今回、フェイト城戦に伴った兵は八万。オオカミがミーナ城を守らせている数は、わずかに二万。
 これだけの兵力差があれば、ヴィップの動向に気を配りつつ、ミーナ城を攻めることも可能ではあった。

 しかし、何をやってくるのか分からないのがオオカミの怖いところだ。
 ある意味、一城ずつ確実に狙ってくるヴィップのほうが戦いやすいと言える。
 統率が取れているのは間違いなくヴィップのほうだが、仲違いしている四中将の存在も、不気味ではあった。

( ’ t ’ )(とにかく……多くのことに気を配る必要があるな……)

 微細な穴も塞がなければならない。
 もう、一昨年のヴィップに舐めさせられたような辛酸はたくさんだ。
 あのときの教訓を生かし、悔しさを発条にして、オオカミに打ち勝たなければならない。

( ’ t ’ )(……よし)

 地図を広げた。
90 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:39:28.87 ID:BnCj+2uZ0
 進軍ルートや留意すべき地点などについて、考える。
 目を閉じれば地図が浮かぶようになるまで見尽くせ、とはベルの教えだった。

 まだ、ベルの教えは半分も実行できていない。
 未熟さだけが際立っている状態だ。
 ラウンジという大国を担うべき存在だと自覚して、成長しなければならない。

 アルファベットNを握り締めて、立ち上がって、調練に向かった。



――二十日後――

――フェイト城・西(フェイト城より二百里地点)

 ミーナ城の属城であるエスカルティン城は、抗うこともなく降伏した。
 守兵、わずか一千。六万の兵が相手では、当然の選択だった。

(`・ι・´)「この属城に六万の兵を入れるのは無理だな……」

( ’ t ’ )「一万が精々ですね……」

(`・ι・´)「致し方ない。後ろ盾となってくれれば充分だ」

 拠り所としては心許ないが、何もないよりはまだ良い。
 フェイト城までの兵站を繋ぐ役割も果たせるだろう。

 属城を攻められても、オオカミはやはり動きを見せなかった。
 自ら動ける状態ではない、ということだろう。
98 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:41:50.31 ID:BnCj+2uZ0
(`・ι・´)「ミーナ城にいるのは、フィル=ブラウニーとガシュー=ハンクトピアか……」

( ’ t ’ )「リレントとドラルはオリンシス城に残してきましたね」

(`・ι・´)「ヴィップ方面も、手を抜けば危うい状況だからな」

( ’ t ’ )「やはり、オオカミは苦しい状況ですね」

(`・ι・´)「ミルナに頼り切ってきたツケが回ってきたのだろうな」

 ラウンジは、それを辛くも逃れた。
 ベル一人に頼り切ってきたが、国が傾くほどの影響は受けなかった。
 アルタイムが思ったよりしっかりしていたからだ、というのが周りの評価だ。

 モナーの策略でガダンを失ったのは手痛かったが、何とか持ち直している。
 多くの将校が、上を目指して努力している。
 無論、自分もだ。

( ̄⊥ ̄)「カルリナ大尉、オオカミが城外に布陣しはじめたとの情報が入りました」

( ’ t ’ )「やはり出てきたか」

 ファルロのアルファベットNの刃が、背中から溢れていた。
 最初はアルファベットにも差があったが、いつの間にか追いつかれてしまっている。
 顔立ちや性格は全く似ていないが、やはりベルの子なのだ、と思う。

(`・ι・´)「一度抵抗してから籠城する算段か」

( ’ t ’ )「フィルらしい作戦です。やはり野戦で一度打ち破るべき、と考えたのでしょう」
104 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:44:18.30 ID:BnCj+2uZ0
(`・ι・´)「しかし、無謀としか言いようがない」

( ’ t ’ )「いえ、フィルは野戦では抜群の力を発揮する将です。それをガシューが補佐するとなれば、決して侮れません」

(`・ι・´)「しかし、こちらは野戦で五万は使える。倍以上の敵を相手に、どう戦うつもりだ」

( ’ t ’ )「分かりませんが……策を弄してくる武将でもないでしょう。兵の質によほど自信を持っているとしか」

(`・ι・´)「手並みを拝見させてもらうか」

 その後、エスカルティン城で軍議が行われた。
 攻める将と守る将。議題として挙がったのは、おおまかにはその程度だった。
 そこで先鋒に名乗り出たのが、ファルロだった。

(`・ι・´)「いいかも知れんな。ではファルロ中尉に、先鋒の役を任ずる」

( ̄⊥ ̄)「ありがとうございます」

 ファルロが軽く頭を下げた。
 いつも通り茫洋としているが、恐らく内心は気合に満ちているだろう。
 まだ主だった戦功を挙げていないことが、それを盛り立てているはずだ。

 そして、自分は守りの総指揮官とされた。

( ’ t ’ )「守り、ですか……」

(`・ι・´)「というよりは、後詰だな。いつでも攻めに参加できるようにして、基本的には守りの体勢でいてくれ」

( ’ t ’ )「了解致しました」
109 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:46:53.70 ID:BnCj+2uZ0
 アルタイムは、ベルがいなくなってからようやく、才気を発揮し始めたと言ってもいい。
 あのベルの後を継いで大将になったことが、上手く奏功したようだ。
 他の二国には劣ると言われていたが、今や近いところまで追い上げているだろう。

 編成も固まった。
 あとは、攻め込むだけだ。

 軍議室から真っ先に退出したあと暫く、後に退出してくる将校の顔を見ていた。
 若い顔ぶれが増えてきた。ベルの死後、成長を見せた将が多い。
 ベルという存在は、生存中はもちろん、死後も多大な影響を与えているのだ。

( ̄⊥ ̄)「どうかしましたか?」

 最後に出てきたファルロが、抑揚のない声で話しかけてきた。
 やはりどう見ても、父親には似ていない。
 最近では、そんなファルロを見ているのを楽しく感じるときもあった。

( ’ t ’ )「何でもない」

( ̄⊥ ̄)「もしや、気負いなどがあるのでは」

( ’ t ’ )「それはこっちが言いたい。先鋒を願い出たりして、焦っているんじゃないか、と」

( ̄⊥ ̄)「いえ、あまり戦う機会がなかったもので、戦いたい一心で」

 ファルロが気持ちをごまかすとも思えなかった。
 恐らくは、本心だろう。
116 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:49:28.27 ID:BnCj+2uZ0
( ’ t ’ )「それなら、いいんだ」

( ̄⊥ ̄)「はい」

( ’ t ’ )「……きれいな夕焼けだな」

 窓の外で姿を消しつつある太陽が、赤い光を放っている。
 涼秋に冷えた心を、暖めてくれるような輝き。
 明日には色を変えて、再び昇る。

 戦が始まる当日の朝は、少し早起きして、朝日を見てみよう、と思った。



――五日後――

 オオカミが城外に布陣させたのは一万五千。
 アルタイムが率いて行ったのは五万。
 圧倒的な兵力差があった。

 戦況の報告は小刻みに入ってきた。
 一刻で三人は伝令が来る。詳細な情報が入るのは、ありがたかった。

 思った通り、ラウンジが圧倒的優位に立っている。
 アルタイムは大軍を有しているにも関わらず、落ち着いた攻めを見せていた。
 ファルロを前面に押し出して、徐々に敵軍を崩壊させていっているという。

 ミーナ城に篭られた場合、それほど難しい攻城戦にはならないだろうが、やはり手間がかかる。
 オオカミ軍を徐々にミーナ城から離しつつ、確実に打ち勝つ。
 事前の構想から寸分違わぬ戦を展開しようとする、アルタイムらしい戦い方だった。
123 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:52:08.25 ID:BnCj+2uZ0
( ’ t ’ )(このままなら、明日までには勝負が決しそうだが……)

 攻めては引き、攻めては引き、を繰り返しているため、時間はかかっている。
 今晩は一度攻めをやめて、また明朝から再開するつもりだろう。

 今日も夕陽が沈み、夜になって、互いに陣を整えはじめたとの報せが入った。
 オオカミは相当に崩れているはずだ。朝までに立て直すのは困難だろう。
 逆にラウンジは万全の状態となって再戦できる。

 少しだけ眠り、まだ暗い頃に起きて、報告を受けた。
 戦況に変化はなし。朝まで待つ必要がありそうだ。

 歩哨の誰何する声を聞きながら、払暁を迎えた。
 既に戦は始まっているという。

 東から昇った陽が姿を明確にした頃、一万の兵をそちらに戻す、という報告が入った。
 数が多すぎても意味はない。その一万は不要だと判断したのだろう。
 守りがさらに厚くなる。まさに盤石の体勢だった。

( ’ t ’ )(戦勝は間違いないな……)

 兵力に差がありすぎた。
 それを埋めるのは、やはり四中将では無理だ。
 ミルナでさえ、この戦を勝利に導くことはできなかっただろう。

 ミーナ城を奪取したあとは、オオカミ城を睨む。
 かなり突出した形になるが、本城が脅かされるとあっては、西のヒトヒラ城も身動きが取れないはずだ。
 オオカミ城からヒトヒラ城に兵や物資が動くようなら、即座に攻撃を加えてやればいい。
130 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:54:44.70 ID:BnCj+2uZ0
 東のオリンシス城はいかにも遠く、しかもヴィップに狙われている状態だ。
 オオカミは今まさに絶体絶命の危機を迎えていた。

( ’ t ’ )「……来たか」

 攻撃軍から、一万の兵が帰ってきた。
 騎兵だ。思ったより早かった。
 地響きで体が微かに揺れる。

( ’ t ’ )(この一万はフェイト城に戻したほうがいいかも知れないな……)

 フェイト城はいま、一万の兵で守られている。
 攻撃に五万、属城周辺の守りに一万。ヴィップの備えに一万を費やした。
 フェイト城がやや手薄になっているのだ。

 守将には老練のシッティム=エクスタイン中将を据えてあるが、あまり安心できる状態ではなかった。
 シッティムは近頃、衰えが顕著で、引退も近いと言われている。
 ベルよりも高齢の将であったため中将に置かれているが、地位に見合う実力はもはやなかった。

 そんなことを、考えていたとき。
 ふと、違和感に気付いた。

( ’ t ’ )(……ん……?)

 兵が、多い。
 一万どころではない。その倍はいる。
 何故、二万もの兵をアルタイムは戻したのか。

 そして――――騎兵の装備が、異常に薄いことに気付いた。
 でなければ、あれほどの速度は出ない。
141 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 00:57:37.32 ID:BnCj+2uZ0
 体の揺れは、地響きによるものではなかった。
 それが分かったときには、何もかもが遅かった。

(#゚д゚)「オオカミを甘く見るな、カルリナ=ラーラス」

 ミルナ=クォッチ。
 療養中のはずの大将が、何故。

(#゚д゚)「ハァァァァッ!!!!」

 浮足立ったラウンジ軍を一息で貫き、過ぎ去った。
 たった一度の攻撃。それが、あまりに鋭すぎた。
 陣を立て直すのに、数刻はかかるほど乱されている。

(;’ t ’ )「しまった……!! くそっ!!」

 あの軽騎兵の速度なら、どんな軍も、どんな兵も、追いつけない。
 フェイト城の周辺は長くオオカミが統治していた地だ。
 最短距離でフェイト城まで駆けるのも難しくない。

 フェイト城を守っているのは、たった一万。
 そして何より、オオカミに攻められるとは全く想定していない状況。
 シッティムが守り抜いてくれる可能性は、ほぼないに等しい。

 たった一撃で、形勢を逆転された。

(;’ t ’ )「アルタイム大将に伝令! ミーナ城を諦めて至急引き返すように!」
159 名前:第41話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/29(火) 01:01:00.86 ID:BnCj+2uZ0
 オオカミは最初からこれを狙っていたのだ。
 ミーナ城に篭る準備は既に整っているだろう。
 そこでもしアルタイムが城を囲みでもしたら、ラウンジは逃げ場がなくなる。

 とにかく今は、一刻でも早く自国領に逃げ帰ることだ。
 でなければ、ラウンジ軍は壊滅的な打撃を受けかねない。

 フェイト城は恐らく落とされる。
 ミーナ城と、フェイト城。いずれ二つの敵城の間で、挟まれることになるのだ。

 最後まで勝ちを疑え。
 それも、ベルの教えだった。
 途中で勝ちを、信じてしまった。それこそが、敗因だったのだ。

(;’ t ’ )「クソォ!!」

 戦勝間近だったのを、ひっくり返された。
 ラウンジ軍は、どれほど生き残れるか。将は、何人生き延びられるか。
 もはや思考はそちらに移り始めていた。








 第41話 終わり

     〜to be continued

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