7 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 00:38:13.38 ID:VvzoPney0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
22歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:エヴァ城

●('A`) ドクオ=オルルッド
22歳 少尉
使用可能アルファベット:J
現在地:ヴィップ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
32歳 大将
使用可能アルファベット:V
現在地:ヴィップ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
27歳 中将
使用可能アルファベット:T
現在地:エヴァ城

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
30歳 少将
使用可能アルファベット:Q
現在地:エヴァ城
13 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 00:40:06.23 ID:VvzoPney0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
28歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:シャッフル城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
25歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:エヴァ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
31歳 中尉
使用可能アルファベット:Q
現在地:エヴァ城

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
47歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:パニポニ城

●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
29歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城

●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
21歳 マリミテ城戦・ブーン大尉配下部隊長
使用可能アルファベット:I
現在地:エヴァ城
16 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 00:41:25.97 ID:VvzoPney0
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
37歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
38歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
41歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:ヴィップ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
34歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヒグラシ城
22 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 00:43:12.19 ID:VvzoPney0
●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
36歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城

●(´<_` ) オトジャ=サスガ
36歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
24 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 00:44:14.27 ID:VvzoPney0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ/プギャー

大尉:ブーン/シラネーヨ
中尉:ビロード/イヨウ
少尉:ドクオ/フィレンクト


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
27 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 00:45:42.17 ID:VvzoPney0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:フィレンクト
J:ドクオ
K:
L:
M:
N:ブーン
O:プギャー/ヒッキー
P:
Q:モナー/イヨウ/ギコ
R:
S:アルタイム(ラウンジ)
T:ジョルジュ/モララー/ミルナ(オオカミ)
U:
V:ショボン
W:
X:
Y:
Z:
31 :この世界の単位 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 00:46:41.03 ID:VvzoPney0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

37 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 00:49:18.30 ID:VvzoPney0
【第38話 : Uneasiness】


――ヴィップ城・第一軍議室――

(´・ω・`)「全く……将校が噂で浮足立つとはどういうことだ?」

 ヴィップ城の朝を駆け抜けた、マリミテ城戦ジョルジュ同行の報せ。
 将校も皆、動揺を隠せなかった。

(;^ω^)(あんな話が出たら当然だお……)

 昼近くになって、ショボンから軍議の召集がかかった。
 第一軍議室に慌てて駆け込み、着座する。

 ドクオなど、Jの壁突破を皆に知らせようとしていた矢先のことだったらしい。
 嬉しさも吹き飛んでしまっただろう。

 用意された椅子が埋まった。

 ヴィップ城にいる東塔の将校は、全員が出席。
 そして、西塔からはジョルジュのみが出席している。

(,,゚Д゚)「ですが、事実なわけですよね? ここにジョルジュ大将がいらっしゃるということは」

 ギコの声は低かった。
 ジョルジュが嫌いだと常日頃から公言しているギコだ。嘘であってくれ、と願っていただろう。
 ジョルジュの姿を見た途端、不機嫌さを隠そうともしなくなった。
42 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 00:52:25.08 ID:VvzoPney0
(´・ω・`)「正確には、マリミテ城戦に同行するわけじゃない。しばらく東塔が拠点として使う城に滞在する、というだけなんだ」

(,,゚Д゚)「……どういうことですか? 何の意味が?」

(´・ω・`)「ジョルジュ大将は、先の戦で病を得てしまったんだ」

 皆が一斉にジョルジュの顔を見た。
 確かにやつれたようにも見える。しかし、表情は普段通りだ。
 本当か、と疑ったのは一人や二人ではないだろう。

(´・ω・`)「さほど重くはないが、大将が病にかかるというのは重大事だ。皆も他二国の例で分かっていると思う。
      何が起きるか分からん乱世だからこそ、一刻も早い快癒が求められる。だからこそ、エヴァ城で療養してもらうことになった」

('A`)「……それは、医療大国オオカミに近いから、ですか?」

(´・ω・`)「まぁ、そうだな。エヴァ城の付近にも薬草がたくさんあるし、オオカミ領内から採取して運ぶのも容易になる」

(,,゚Д゚)「理由は、それだけですか?」

(´・ω・`)「……いや、できれば戦に加わってもらいたいと思っている。
      無論、実際に戦場に立つのではなく、展開や構想について意見を出してもらればと」

 期待できそうもない、と皆が思っただろう。
 あれほどショボンを嫌っているジョルジュが協力など、ありえそうもない。

( ゚∀゚)「ま、そんなに長く邪魔する気はねぇさ。ちょっとの間、よろしく頼む」

 疎らに将校が頭を下げた。
 ギコは思った通り、そっぽを向いている。
 やり方や考え方に同意できない、と以前言っていたが、相当なもののようだ。
50 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 00:55:30.84 ID:VvzoPney0
(´・ω・`)「向こうでの軍議には加わってもらうし、城内は自由に動いてもらう。
      東と西という違いがあるとはいえ、同じヴィップ国の兵士だ。それが当然だと思う」

 ショボンは、かなり危険な賭けに出ている。
 もしジョルジュがオオカミと内通でもしていたら、情報は筒抜けだ。
 見張りはつけるのだろうが、ジョルジュがそれを掻い潜ることも考えられる。

 裏切るかも知れないなどと、考えたくはなかった。
 とーちゃんを殺した相手でも、信じたかった。
 だが、この状況はあまりに不自然ではないか。


 軍議が終わってすぐ、ショボンの許に駆け寄った。
 やはり、と言った表情で見つめられる。

(;^ω^)「お聞きしたいのは一つだけですお」

(´・ω・`)「まぁ、何を聞きたいのかは分かるが」

(;^ω^)「ジョルジュ大将がエヴァ城で治療することは、どっちの要望ですかお?」

 ショボンが一瞬、周りに目を配った。
 瞳が一周するのにかかった時間は、本当に一瞬だ。
 誰もいないことを確かめたようだ。口を開く。

(´・ω・`)「ジョルジュ大将が、そう申し出てきた。オオカミ方面の城に滞在させてくれ、と」

(;^ω^)「……それを、受け入れたってことですかお?」

(´・ω・`)「当然だろう。断る理由がない」
61 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 00:58:46.13 ID:VvzoPney0
 もしショボンが逆の立場なら。
 ジョルジュは、理由付けして断ったのではないか、と思った。
 しかし、口には出さなかった。

(´・ω・`)「いい機会だと思っている。東塔と西塔の垣根が消えるかも知れん」

 確かに、そうだ。
 望みは限りなく薄いとしても。

(-_-)「……ショボン大将」

 気配を絶って、ヒッキーが現れた。
 ショボンの巨体に隠れていたこともあって、最初はどこから声が聞こえたのか分からなかった。

(´・ω・`)「ヒッキー少将、どうしました?」

(-_-)「……ジョルジュ大将のことですが……くれぐれも、目を離したりしないように……」

(´・ω・`)「……分かっています」

 やはり、見張りはつけるようだ。
 しかし、それをヒッキーが言ってきたのが意外だった。
 ジョルジュに付き従っており、側近中の側近といってもいいヒッキーが。

(´・ω・`)「やはりヒッキー少将は、中立なのですね」

(-_-)「……塔間の争いなど、下らないことです……」

(´・ω・`)「全くもって、そう思います。ご迷惑をおかけして、申し訳ない限りです」
74 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:01:39.26 ID:VvzoPney0
(-_-)「……何か力になれることがあれば……いつでも、申しつけてください……」

 無気力さを全面に出したまま喋り、その様子を変えることなく、立ち去った。
 消極性だけがネックだ、と言われているヒッキー。つまり、他の部分は武将として申し分ない。
 誰もが感情的になりやすい塔間の争いさえ冷静に見ている。

(´・ω・`)「あの人は、不思議な人だな」

( ^ω^)「でも、凄い人ですお」

(´・ω・`)「あぁ。あんな人もいるもんだ」

 ショボンは軽く笑って、背に負った真新しいアルファベットVをこちらに向け、歩いて行った。
 相変わらず、大きな背中だった。



――二十日後――

――エヴァ城――

 本城から東塔の兵が続々到着していた。

( ・∀・)「おう、久しぶりだな」

( ^ω^)「お久しぶりですお」

 行軍を終えてすぐモララーに挨拶に行った。
 アルファベットはTに上がっている。逞しさが増して見えた。
82 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:04:56.67 ID:VvzoPney0
( ・∀・)「早速だがアスカ城に行ってくれ。騎馬隊を率いてな」

( ^ω^)「騎馬隊はアスカ城で待機ですかお?」

( ・∀・)「あぁ。あの辺のほうが草が多いからな」

 エヴァ城には以前、オオカミから奪取する際、大規模な火計を仕掛けた。
 木造建築物が美しい城だったと聞くが今や見る影もない。
 しかし、復旧はほぼ完璧に終わったようだ。

( ・∀・)「いい城になった」

 考えていたことを見透かしたように、モララーが言った。
 恐らくは、何も考えずに発した言葉だろう。

( ^ω^)「そう思いますお」

( ・∀・)「こりゃビロードのおかげだ」

( ^ω^)「え、そうなんですかお?」

( ・∀・)「シャッフル城戦の間に、城の細部まで徹底的に見直したらしくてな。
     おかげでかなり堅い城になった。もちろん、見た目もだいぶ改善されたしな」

( ^ω^)「燃やしたあととは思えないですお」

( ・∀・)「ま、そのへんは俺も頑張ったしな。
     ところで、ショボン大将はいつ来る?」

( ^ω^)「五日後に到着予定ですお」
94 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:08:02.76 ID:VvzoPney0
( ・∀・)「……ドクオ=オルルッドは?」

(;^ω^)「ドクオ? ドクオは明日にでも到着すると思いますお」

( ・∀・)「……そうか……」

 ショボンの到着予定を聞くのは分かる。
 だが、そのあとに何故ドクオなのか。
 気にかかった。

(;^ω^)「あの……」

( ・∀・)「今回の戦、俺はドクオ=オルルッドに期待している。多分、ショボン大将も同じだろうが……。
     何でかっていうと、あいつは秀才タイプだからだ。言っちまえば、ジョルジュ大将に近い。
     今までの東塔にはいなかったタイプの武将で、戦の幅を広げてくれるんじゃねーかと思ってる」

 あのモララーが、ここまで期待しているとは思わなかった。
 秀才。天才と呼ばれているショボンやモララーとは、似ているようで毛色が違う。

( ・∀・)「ま、東塔で言えばモナー中将に近いっちゃ近いが、あの人は中立だしな。
     ドクオ、それにフィレンクト。この二人の少尉には、期待してるんだ、が……」

 いつもと変わらぬ表情のまま、ひとつ息を吐いた。
 あまり感情を露わにしないモララーだが、今は不安げに見える。

( ・∀・)「ちょっと心配もあってな。ま、これはエヴァ城戦のときのお前にも抱えた不安なんだが」

(;^ω^)「不安……ですかお?」
104 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:10:54.24 ID:VvzoPney0
( ・∀・)「功を焦って周りが見えなくなったり、ひとつのことを考えすぎて見落としがちになったり……。
     よくあることだ。特に若くて経験のないうちはな。お前もそうだったから分かるだろ?」

( ^ω^)「エヴァ城戦のときは……確かにそうでしたお」

( ・∀・)「俺も将校になったばかりのころは、思考がまともじゃなかった。みんな得てしてそんなもんだ。
     そこで失敗することはある。今後に繋がる失敗だ。決して無駄じゃない。
     だが、その失敗が致命的だと、マズイことになる」

(;^ω^)「…………」

( ・∀・)「お前も失敗を犯したが、致命的じゃーなかった。運が良かったと言ってもいい。
     だが、いつもそうとは限らん。敗戦に至るようなミスを犯す可能性だってあるんだ」

( ^ω^)「……カバーしますお」

( ・∀・)「それすらできねーときもある。可能な限りカバーするのは当然だが」

 だが、それはいつだって起こり得ることではないのか。
 何故、今回に限って、しかもドクオとフィレンクトに限って、こんなことを言うのか。

( ・∀・)「なーんとなく、不安でな。何も起きなきゃいいんだが」

 またこちらの考えを見透かしたようなことを言って、モララーはふらりと歩き出した。
122 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:13:38.50 ID:VvzoPney0
――518年・秋――

――オオカミ城――

 季節が変わるたびに体調を崩す、ということを繰り返していた。
 あまりに、不甲斐ない。

( ゚д゚)(これほどの長期離脱……大将失格かも知れんな……)

 寝床で気だるさと戦いながら起き上がった。

 マリミテ城防衛戦が始まっていた。
 まだ直接的なぶつかりには至っていないが、ヴィップは徐々に軍を進めている。
 マリミテ城の近くに、いくつか砦を築くつもりのようだ。

 今回の戦、ヴィップは五万の兵を出してきた。
 シャッフル城戦でオオカミ兵を降伏させ取り入れたことや、領土の拡大により、兵力が増している。
 対する我がオオカミは、相次ぐ敗戦、疫病の影響などにより、四万の兵が限界だった。

 オオカミの総兵力はいまおよそ十三万だが、そのうち四万しか出せないのはかなり苦しい。
 物資が足りていない、新兵が入ってこない。理由など探せばいくらでもある、というほどだ。

 ヴィップに対して寡兵で臨むのは、かなり危険だった。
 二万も上回っていたシャッフル城戦さえ敗れたのだ。大軍の利を活かされれば、敗戦は必至だろう。
 四中将が上手く遣り繰りしてくれることを願うしかなかった。

 しかしヴィップは早くも戦の主導権を握り始めている。
 少しずつ、確実に前進し、敵からの牽制を防ぎながら基盤を固めている、といった状況だ。
 マリミテ城には属城がないため、各所に防塁を築きながらオオカミに当たろうという姿勢だった。
137 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:16:41.91 ID:VvzoPney0
( ゚д゚)(……川を上手く使えれば……)

 マリミテ城は川を背にした城だ。
 今回、四万のうち三千は水軍に充てている。
 いざとなればいつでも川を使える。

 すぐそばにはオリンシス城があり、ここと連携が取れれば強いが、今回の戦では難しい。
 川を下ってエヴァ城に攻め込む手もあるが、さすがにヴィップは警戒しているようだ。
 現状、船の用途は物資の輸送程度しかない。

 川を上手く使えればオオカミは強いが、そもそも水軍の指揮は大将である自分が執るため、四中将では期待できなかった。
 水軍の兵をいつでも陸戦で使えるようにしろと言ってあるが、上手く対応してくれるかも分からない。

( ゚д゚)(……苦しすぎるな、この戦は……)

 自然と、頭の中には次の戦が浮かんでいた。
 マリミテ城とオリンシス城で戦うときのことだ。
 まだ早すぎる、とは思うが、考えておかなければならないだろう。

( ゚д゚)(マリミテ城を防衛できれば何も問題はないが……)

 希望は薄い。

 一縷、見出すとすれば、ジョルジュだろう。
 何故か今回、マリミテ城戦に帯同している。
 病を得たという話だが、本当かどうか分からなかった。

( ゚д゚)(何のつもりだ、ジョルジュ……)
154 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:19:48.36 ID:VvzoPney0
 手紙の一つくらい、遣してくれればいいものを。
 今は東塔の中にいるとは言え、監視の目を掻い潜って手紙を出すくらい可能なはずだ。
 万一のことを考え、それも控えている、ということだろうか。

 あるいは、ここ一番で情報を流すために、不審な行動は控えているのかも知れない。
 マリミテ城を奪われればオオカミはヴィップに三連敗。国内の士気は大きく落ちる。
 それを避けるために、ジョルジュは自ら東塔に潜入し、情報を得ようとしているのではないか。

( ゚д゚)(……いや……)

 現状で、オオカミが事前に情報を得ている、というような行動を取れば、真っ先にジョルジュが疑われる。
 元オオカミの将である以上、それは当然だ。
 ジョルジュなら無論、分かっているはずだ。浅はかな言動を行う男ではない。

 やはり、ジョルジュの意図ははっきりとは掴めない。
 連絡を取ってくれることを願うしかなかった。

( ゚д゚)(四中将だけが頼りか……)

 今度こそ、結託して戦ってほしい。
 例え戦に敗れたとしても、今後に繋がる負けであってほしい。

 神に祈るような気持ちだった。



――518年・冬――

 マリミテ城まで五十里に迫った。
 オオカミも軍を前に出してきている。
165 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:22:46.39 ID:VvzoPney0
 本格的な衝突になりそうだった。

(´・ω・`)「砦を攻め込まれないようにしろ。常に敵軍の動向には気を配るんだ」

 将校を集め、ショボンが言った。
 夏からおよそ半年かけ、着実に戦の基盤を固めた。
 慎重すぎると思ったほどだった。

( ^ω^)(でも、安心だお……)

 今までのような切羽詰まった戦ではない。
 余裕すらこちらにはある。

 だからといって油断は禁物だ。気を引き締めて臨まなければならない。
 穴がない、と思うこと自体が穴なのだ、とはショボンの言葉だった。

 今回の戦、基点となるのは各所に築いた砦だ。
 いざというときには拠り所として活用できるようにしてある。
 頑丈な造りではないが、敵の攻勢を緩めるくらいは可能なはずだった。

 その砦群を一括して防衛するのが、ドクオだった。
 前回のシャッフル城戦で、属城を見事守り抜いたことが高く評価されたのだ。
 重大な任務だが、ドクオは喜んでいた。前回以上に活躍してやると意気込んでいたためだろう。

(´・ω・`)「四中将で最も警戒すべきなのはフィル。次いでドラルだ。
      ガシューはそれを補佐してくるだけだろう。リレントは何か奇策を繰り出すだろうな」

( ・∀・)「いつも通りですね。特にリレントは、バカの一つ覚えみたいに奇策しか出さない」

(´・ω・`)「奇抜な提案、といった点では悪くないが、リレントの場合は毎回それを実行しようとするのが問題だろうな」
174 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:26:45.55 ID:VvzoPney0
( ・∀・)「警戒するのは面倒ですけど、大体は大したことないから、リレントの相手は楽ですよね」

(´・ω・`)「油断はするなよ。ミルナが何か策を託している可能性もあるからな」

 いま皆が拠っているのは、名もなき城だった。
 属城よりもさらに小さく、どこに属しているというわけでもない。
 兵を置いてまで守る城ではないからだ。

 だが、この城がちょうどマリミテ城とエヴァ城の中間点にあり、将校が集まるのには最適だった。
 何より、ジョルジュをこの城に置いておけることが大きい、とショボンは言う。

 エヴァ城では遠すぎる。話し合うたびにいちいち帰還していられない。
 ジョルジュにも戦に対して口出ししてもらうためには、居住できる空間が必要だった。

 防衛力はほぼ皆無の城だが、砦と関所に囲まれており、突然攻められる心配はない。
 ジョルジュの安全は確保されていた。

 あんな奴のためにここまですることはない、とギコは愚痴っていたが、国軍の大将相手には当然の対応だった。

 それに、ジョルジュを守るためだけではなく、戦においても今の砦位置は効果的だった。
 砦間を抜ければすぐに分かるように配置してある。一つ一つ潰すような余裕はオオカミにはない。
 盤石の態勢を今回は整えていた。

 間道や隘路を使ってくると厄介だが、その対策も念のため講じてあった。
 複雑な地形を使うのはリスクが大きいが、今回の戦では使ってくることも考えられるためだ。

(´・ω・`)「ジョルジュ大将、何かご意見は」

 軍議室として使っている小部屋の片隅に、ジョルジュは座っていた。
 顔色はやはり、悪くないように見える。
183 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:29:38.48 ID:VvzoPney0
( ゚∀゚)「何もねーよ」

 素気なく言って、ジョルジュは眼を伏せた。

 軍議が終わって、調練に向かうべく歩き出した。
 今回の戦ではH隊歩兵を率いる。攻撃部隊だ。
 機動力ありきな騎馬隊よりも、確実に敵軍を潰すことが求められる。

(´・ω・`)「ブーン」

 ショボンに呼び止められた。
 今回、自分の部隊長となっているベルベットの許へ向かっていたときだった。

(´・ω・`)「フィレンクトの様子を知っているか?」

( ^ω^)「……フィレンクトさんですかお? 特に何も……」

(´・ω・`)「そうか……」

( ^ω^)「どうかしたんですかお?」

(´・ω・`)「どうもしてないさ。ただ、緊張しているようなら解してやろうと思ってな」

( ^ω^)「緊張? フィンレクトさんが?」

(´・ω・`)「あいつは将校になってからはこれが初めての戦だ。ヴィップ城のときから既に、気負いが見られた」

(;^ω^)「何度も戦を経験してるのに、ですかお?」

(´・ω・`)「そういうものさ。お前は異例の早さで将校になったから分からんかも知れんが」
190 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:32:35.80 ID:VvzoPney0
 モララーも、同じようなことを言っていた。
 やはり、将校という立場は特別なのだろうか。

(´・ω・`)「それにフィレンクトの場合、アルファベットがIだろう?
      入軍から十年経ってもJの壁を突破できないと、今後も望みが薄いと一般的に言われている。
      周りからの陰口が気になっているはずさ。将校なのに壁も突破できないのか、と」

(;^ω^)「そんなこと……」

(´・ω・`)「残念だが、そういうものだ。アルファベットは個人の力量を分かりやすく表す。
      お前やドクオは若かったから良かったが、フィレンクトはもう二十九だからな」

(;^ω^)「……焦りのせいで、気負っている、ということですかお?」

(´・ω・`)「多分な……それに、ドクオも多少不安だ。あいつは気負いというより、張り切りすぎている。
      二人に共通して言えるのは、普段とはどこか違う、ということだな」

(;^ω^)「……危険ですかお?」

(´・ω・`)「危険とまでは言わんが……一応、気を配っておいてくれ。いつでもカバーできるように」

 頷いた。
 モララーに言われたときは多少楽観視していたが、ショボンの言葉で緊張感が高まった。
 勝率の高い戦とも言い切れないようだ。
197 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:35:35.11 ID:VvzoPney0
 ショボンと別れてすぐ、フィレンクトの許へ向かった。
 調練中だった。G隊歩兵を率いている。

( ^ω^)「フィレンクトさん」

(‘_L’)「はい?」

 寒風が吹き荒ぶ原野で、指揮を執るフィレンクト。
 滅多に感情を表すことはないが、表したときは激しい。
 それゆえに、いまひとつ心中も推し量りにくい部分があった。

(;^ω^)「えーっと……調子はいかがですかお?」

(‘_L’)「平調ですが……突然ですね」

(;^ω^)「ちょっと気になったんですお。今回は将校になってから初めての戦で……」

(‘_L’)「そうですね、多少は緊張もあります。ですが、普段通りの自分を出していけるように、と思っております」

 特に気負いは見られない。
 隠しているようにも思えない。

 特段、気にするほどでもないのだろうか。

( ^ω^)「分かりましたお、ありがとうございますお」

(‘_L’)「いえ……ところでブーン大尉、よろしければ調練にお付き合いいただけませんか?
    一人で隊を動かすより、相手がいたほうが兵もより実戦的に動けると思いますので」
206 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:39:07.44 ID:VvzoPney0
( ^ω^)「了解ですお、ちょっとだけ待っててくださいお」

(‘_L’)「はい」

 すぐに駆けだした。
 フィレンクトは、大丈夫だろう。そう思うと、足が軽くなったような気分だ。
 ベルベットの許へ、そして配下の兵の許へと急いだ。

(‘_L’)「…………」



――二日後――

 五十里あった距離が次第に縮まり、二日かけて、三十里になった。
 互いに、騎馬隊の射程範囲内だ。

(´・ω・`)「いつでも出られるように構えろ」

 ショボンの声が魚鱗の陣に響く。
 敵が動きを見せた瞬間、全体を動かす、と決めてあった。

( ^ω^)「ベルベット、怯まずに戦うんだお」

( <●><●>)「分かっています」

 冷静な男だった。
 常に淡々としていて、自分のことさえ客観視しかしていないのではないか、と思える。

( <●><●>)「今回の戦、ヴィップが勝つことは分かっています」
216 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:42:57.72 ID:VvzoPney0
 やはり、淡々とした口調で。
 しかし判然と言い放った。

( ^ω^)「……油断はダメだお」

( <●><●>)「それも、分かっています。何が起きるか分からない、というのも」

 ドクオやフィレンクトとは、根本からタイプが違うようだ。
 初陣とは思えないほどに落ち着いている。

 いずれ国軍を支える存在となってもらうためにも、上官である自分がしっかり戦わなければならない、と思った。


 正午が過ぎ、太陽の方角が変わった。
 青空が果てしなく広がりを見せている日。そのぶん、歯が震えるほどに寒かった。
 戦が始まれば気にならなくなるが、動きを待っている間は辛い。

 冷たい風が体を突き刺していく。
 音のない戦場。風の声だけが甲高く響く。

(´・ω・`)「いくぞ」

 ショボンの声が、風の声を掻き消した。
 こちらから動くのか。そう思ったが、違った。
 オオカミが、微かに動き出したのだ。ショボンは、見逃さなかった。

 全体が進軍する。
 オオカミも呼応して陣を固める。

 遂に、本格的なぶつかり合いになった。
234 :第38話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/19(土) 01:46:21.91 ID:VvzoPney0
 一度の戦では決まらない。何度も敵を打ち破る。
 マリミテ城戦は、じっくり進めていくとショボンは何度も言っていた。


 ――――なーんとなく、不安でな。何も起きなきゃいいんだが――――


 思考に去来したモララーの言葉。
 振り払うように、全力で駆けだした。
















 第38話 終わり

     〜to be continued

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