2 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:26:33.12 ID:IwUa+gA80
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
21歳 大尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヴィップ城

●('A`) ドクオ=オルルッド
21歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
31歳 大将
使用可能アルファベット:U
現在地:ヴィップ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
26歳 中将
使用可能アルファベット:S
現在地:エヴァ城

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
29歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
11 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:28:53.32 ID:IwUa+gA80
●( ^Д^) プギャー=アリスト
27歳 少将
使用可能アルファベット:N
現在地:シャッフル城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
24歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
30歳 中尉
使用可能アルファベット:Q
現在地:エヴァ城

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
46歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:パニポニ城

●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
28歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城
14 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:30:35.10 ID:IwUa+gA80
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
36歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ハルヒ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
37歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
40歳 大尉
使用可能アルファベット:O
現在地:ハルヒ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
33歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城
16 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:31:34.13 ID:IwUa+gA80
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ/プギャー

大尉:ブーン/シラネーヨ
中尉:ビロード/イヨウ
少尉:ドクオ/フィレンクト


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
18 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:32:38.91 ID:IwUa+gA80
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:ドクオ/フィレンクト
J:
K:
L:ブーン
M:
N:プギャー
O:ヒッキー
P:
Q:モナー/イヨウ
R:
S:モララー/アルタイム(ラウンジ)
T:ジョルジュ/ミルナ(オオカミ)
U:ショボン
V:
W:
X:
Y:
Z:
20 :この世界の単位 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:33:32.63 ID:IwUa+gA80
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

24 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:36:00.76 ID:IwUa+gA80
【第35話 : True】


――ヴィップ城――

 作戦だ。
 ヴィップを裏切ると見せかけて、ラウンジに打撃を与える謀略。
 モナーが、予てから計画していた作戦が、実行されたのだ。

 それはすぐに分かったが、問題は、東塔の対応だった。

(´・ω・`)「とにかくすぐにパニポニ城に向かうんだ。事実を確かめる必要がある」

(,,;゚Д゚)「もし本当に裏切っていたら……」

(´・ω・`)「……いずれ戦うことになる……パニポニ城の奪還は難しいだろうが……」

 軍議室は慌ただしかった。
 皆が焦燥の色を浮かべている。予想外なのは、当然だった。
 建国当初から軍を支えてきた武将の裏切りなど、予測するほうが無理だ。

(;^ω^)(でも、どうすればいいんだお?)

 自分だけが真実を知っている。
 恐らくモナーは、こういった事態のときのために、自分だけに打ち明けてくれたのだ。
 何とかしなければならない。

(´・ω・`)「軽騎兵を用意する。何とか五千を出す。俺とギコですぐに」

(;^ω^)「ま、待ってくださいお!」
31 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:39:04.72 ID:IwUa+gA80
 そうだ、他の武将を行かせてはならない。
 自分だ。自分が行かなければならないのだ。

(;^ω^)「ブーンに行かせてくださいお! モナー中将にはいっぱいお世話になって、気心も知れてますお!」

(´・ω・`)「……いざというときのために、俺は本城を離れないほうがいいとは思うが、しかし……」

(;^ω^)「息子同然に扱ってくれたブーンには、モナー中将の心も揺らぐはずですお!」

 完全に嘘八百だった。
 しかし、今はどんな嘘をついてでも、自分がパニポニ城に向かわなければならない。

(´・ω・`)「俺の近衛騎兵隊を出そうと思ったが、足並みを揃えたほうがいいかも知れんな……」

(;^ω^)「ブーンとギコ少将で行かせてくださいお!」

(,,゚Д゚)「私もそのほうがいいと思います。ショボン大将には本城に残ってもらい、現在最適な武将二人で行くべきかと」

(´・ω・`)「……よし、すぐに準備にとりかかってくれ。今晩には出発、夜通し駆けていくんだ」

(,,゚Д゚)「馬が潰れないよう、適度に休憩を挟んで駆けます」

(´・ω・`)「お前になら任せられる。頼んだぞ」

 すぐに軍議室から飛び出した。
 ギコと二人で着々と準備を進めていく。既に太陽は傾き始めている時間だ。
 とにかく素早くパニポニ城へ向かう必要があるだろう。

(;^ω^)(ギコ少将には、真実を伝えたほうがいいのかお……?)
38 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:42:08.45 ID:IwUa+gA80
 難しいところだ。
 モナーは自分にだけ打ち明けてくれたことを考えると、余計な真似はしないほうが良いと思える。
 だが、言ってしまったほうが好都合かも知れない。

(,,゚Д゚)「信じたくねぇな……モナー中将が、裏切りなんて……」

 ギコが沈んだ表情で、馬の選別を行っていた。

 多くの武将に、そう思わせることこそが狙いなのかも知れない。
 だからこそ、自分にだけは打ち明けたのだとも思える。

 情報はどこから漏れるか分からないのだ。
 この謀反、虚偽だと発覚すればモナーの命はない。
 ならばやはり、誰にも真実を話すわけにはいかないのだろう。

(,,゚Д゚)「……よし、完璧だ」

 全ての準備が整った。
 ギコが号令をかけて、すぐに騎馬五千が動きだす。
 ヴィップ城からあっという間に離れていく。

(,,゚Д゚)「早く、早く行かなきゃな……」

( ^ω^)「ですお……」

(,,゚Д゚)「西塔との連携はどうするか……」

 いま西塔は、ヒグラシ城を睨むことで精一杯だ。
 ハルヒ城からパニポニ城まで駆けるのは難しい。必ず背後を衝かれる。
40 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:45:16.54 ID:IwUa+gA80
 この五千だけでどうにかしなければならない状況、ということだ。
 もしモナーの裏切りが本当なら、絶体絶命の危機だった。

(;^ω^)(……え?)

 いま、胸騒ぎがした。

 もし、裏切りが本当だったら。
 重要拠点のパニポニ城を失い、ラウンジは圧倒的優位に立つ。
 国の命運すら、左右されることになる。

 胸騒ぎに似た悪寒が、全身に広がっていく。
 何故、いまこんなことを考えてしまったのか。
 モナーの裏切りが、本意かも知れないなどと。

 謀略に決まっている。
 ラウンジに痛打を与えるための謀略。
 上手く決まれば、ラウンジ戦の勝利がぐっと近づく。

 そうだ、間違いない。

( ^ω^)「一刻も早く、駆けつけなきゃですお」

(,,゚Д゚)「あぁ」

 手綱を引いて、更に速度を上げた。
42 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:48:24.76 ID:IwUa+gA80
 次の朝になって、一旦ローゼン城に拠った。
 馬を替えて再び駆け出す。この調子ならあと一日で着くはずだ。
 さすがに軽騎兵は速かった。

 遠景にイチジョー山が見えてきた。
 薄らとパニポニ城の影も確認できる。
 何も変わりない。ただひとつ、掲げられた国旗以外は。

 風を受けてはためく、ラウンジの国旗。
 堂々と城塔の上で舞っている。

(,,#゚Д゚)「やっぱり裏切りはマジかゴルァ……」

(;^ω^)「…………」

 山の麓にあるレベッカ城に近づいた。
 陣を構えた兵がいる。およそ一万。
 先頭に立っているのは、ラウンジ軍少将、ガダン=ベオグラード。

 そして、モナー=パグリアーロ。

(;^ω^)「ッ……!?」

 顔つきが、いつもと違う。
 絶えず浮かべている笑みは変わらない。しかし、明らかに不敵さが加わっている。
 不気味だとすら思える。

 あれが、本当にモナーか。
 違う人なのではないか、と疑ってしまうほどに。

43 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:51:25.36 ID:IwUa+gA80
(,,゚Д゚)「……モナー中将」

( ´∀`)「アホ二人が、のこのことやってきたモナ」

 異質だったモナーの雰囲気は、発言によって、更に高まった。
 喋り方がまるで違う。そして、本来なら違和感を覚えるはずが、何故か自然に感じるのだ。
 この喋り方が、本当のモナーなのではないか、と。

(,,#゚Д゚)「何で裏切った……!!」

( ´∀`)「うんざりしてたモナよ。自分より十歳以上も若い奴に命令されて……。
     ハンナバル総大将が死ぬまではヴィップへの忠誠心は人一倍だったモナ。
     だけど、ショボンやジョルジュみたいな若造の下で、不満を抱かないわけがないモナ」

(,,#゚Д゚)「自ら中将に降格したのはアンタだろうが!!」

( ´∀`)「ジョルジュに脅されたモナ。大将の座を譲れ、と。
     今まで通りの待遇を用意するから、地位だけ寄越せと言ってきたモナ」

 そういう理由を作る、とモナーは言っていた。
 だが、恐ろしいほどに実感が込められているのは何故だ。

( ´∀`)「でもやっぱり、自尊心に嘘はつけなかったモナよ……それに、ラウンジは戦績を評価してくれたモナ。
     待遇だってヴィップとは比べ物にならないモナ。寝返らない理由がなかったモナ」

[`|≡|´]「まぁ、かなり悩んではいたみたいだがな……ヴィップでの処遇に我慢できなかったってこった」
45 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:54:06.41 ID:IwUa+gA80
 嘘ではなかったのか。
 相手を信じ込ませるために、そういった嘘をつくだけではなかったのか。

 そのはずだ。しかし、信じようとしても、今のモナーを見ていると、とてもそんな気になれない。
 ラウンジ色に、染まりすぎている。

( ´∀`)「ブーン=トロッソ。お前にはこの理由、前に話したモナ?」

(;^ω^)「ッ……!」

( ´∀`)「お前に話しておいて良かったモナ。この裏切りを虚偽だと信じさせて、ここまで来させられたモナ。
     ブーンとギコを討ちとれば、ヴィップの戦力は大幅に低下するモナ。ラウンジの天下は近いモナ」

[`|≡|´]「そういうこったな。まったく、最高のタイミングで寝返ってくれたもんだぜ」

( ´∀`)「まだまだヴィップには有能な武将がいるモナ。でも、ここでこの二人を討ちとっておけるのは大きいモナ」

 モナーのQが陽光を反射した。
 素早くLを構える。ギコもPを前に出した。
 モナーから溢れ出る、殺気。本気だ。モナーは、本気でアルファベットを振るおうとしている。

( ´∀`)「さぁ、いくモナ」

 敵軍、一万。
 こちらは装備の薄い五千。

 不利は、明白だった。

(,,゚Д゚)「ブーン」
48 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 21:57:21.57 ID:IwUa+gA80
 敵の進軍に目をやったまま、ギコが冷静な声を出した。
 さすがに落ち着いている。この絶体絶命の状況下で。

 そう、思った。

(,,゚Д゚)「俺が敵を引きつける。お前は全力でヴィップ城に帰るんだ」

(;^ω^)「えっ!?」

(,,゚Д゚)「しぃを、よろしく頼む」

 ギコが単騎で、駈け出した。
 何十かの騎兵が追従していく。一万の大軍に向かって。

(;^ω^)「ま、待ってくださいお! ギコさん、ギコさん!!」

 土煙りを巻き上げて、駆けていくギコ。
 それが蟻のように見えるほどの、あまりに多くの敵軍。

 ギコの名を、何度も叫んだ。
 追いつけない背中に向かって。


 やがて、天高く舞い上がった、首。


 血飛沫をあげ、あまりに無残な姿となって、空を翔ける。

 赤い閃光が、戦場を照らした。
61 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 22:00:44.34 ID:IwUa+gA80
(;^ω^)「……えっ……!?」

 何故、首が飛んだのだ。
 ギコが呆然とその様を見ている。
 自分も、何が起きたのか、分からなくなった。

 空に浮かびあがり、そして落ちた、ガダン=ベオグラードの首。

 赤く染まった、モナーのQ。

( ´∀`)「謀略、成功です」

 モナーが率いていた五千が、瞬時に横を向き、ラウンジ軍に襲いかかった。
 ガダンという指揮官を失った五千のラウンジ軍が、為す術もなく崩れていく。
 即座に、ヴィップ城から率いてきた五千に攻撃命令を下した。

 潰走するラウンジ軍。
 一千から二千ほどを討ち取り、追撃戦は行わずに軍をまとめた。
 まだ状況がはっきりと掴めていなかったからだ。

 ギコと同じように、唖然としたままモナーの言葉を待っていた。

( ´∀`)「お二方、ありがとうございました。完璧な演技でしたよ」

(,,;゚Д゚)「……演技……?」

( ´∀`)「はい。まるで私が裏切ったと、本気で思っているみたいでした」

 柔らかな、それでいて爽やかな笑みを浮かべるモナー。
 これだけの策をやってのけた後だというのに、至って平静だった。
81 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 22:03:42.78 ID:IwUa+gA80
( ´∀`)「とりあえず、パニポニ城からラウンジの兵を追いだしましょう。
     まだ一千ほど居ますが、私が行けば騙せるでしょう。一箇所に集めて、壊滅させてきます」

 すぐにモナーはパニポニ城へと向かっていった。
 モナーしか戻ってこないことを怪しむかも知れないが、どうとでも繕える場面だ。
 一千を全て討ち取るのもさほど難しくないだろう。


 夜になって、モナーから迎えが来た。
 城内のラウンジ軍を殲滅したという報せと共にだ。
 馬をレベッカ城に預け、兵をすべてパニポニ城に入れることに決めた。



――パニポニ城――

――軍議室――

( ´∀`)「お疲れ様でした」

 並べられたお茶と菓子。
 手を伸ばす気に、何となくなれなかった。

(,,゚Д゚)「本当に驚きました……まるでモナー中将じゃないみたいで……」

(;´∀`)「お恥ずかしい……本性を現した、という形にしたかったのです。そのほうがラウンジから信用を得れましたので」

(;^ω^)「ラウンジに寝返っちゃったのかと思って、怖かったですお……」

( ´∀`)「事前にお伝えした通りのことをしただけですよ。私の演技も捨てたものじゃなかったようですね」
90 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 22:06:49.93 ID:IwUa+gA80
(,,゚Д゚)「しかし、まさかそんな謀略を仕掛けていたとは……」

( ´∀`)「本当は、もっとラウンジから情報を引き出してからにしようと思っていたんですが……。
     想像以上に情報が掴めなくて、仕方なくこのタイミングで虚偽の裏切りを決行することにしました。
     ガダンを討ち取れたので良しとしましょう」

(,,゚Д゚)「大きいですね、ガダンは」

( ´∀`)「そうですね、あれでも少将でしたから。ただ、色んな場面で使えるということでベルに重宝されていましたが、
     いわゆる器用貧乏で、中途半端に智勇を併せ持っていただけの武将ですからね。あぁいう男が、一番騙しやすいんです。
     ちょっと下手に出るだけで、すぐ客観的に物を見れなくなる。カルリナならこの謀略には引っかかっていないでしょうね」

( ^ω^)「この謀略に適していた武将だった、ってことですかお?」

( ´∀`)「はい。ずっと前から狙っていた武将です。討ち取れたのは本当に大きい。
     これでヒグラシ城戦は一気に楽になることでしょう」

 国軍の主力を欠いたラウンジ。
 兵力も多少ではあるが落ちている。そして何より、士気の低下は免れないだろう。
 モナーの功績は大きい。

(;´∀`)「ショボン大将に謝っておいてください。何も言わずに申し訳ありませんでした、と。
     それと、お二方も……アホ呼ばわりしてしまい、申し訳ない限りです」

(,,゚Д゚)「いえ、それでこそ完璧な謀略だったと思います。特に、ブーン以外に知らせなかったのは最上だったと」

( ´∀`)「そうですね、どこに間者がいるか分かりませんから。
     パニポニ城の五千にも、謀略のことを教えたのは直前でした。難しい謀略ではありました」

( ^ω^)「でも、大成功ですお。さすがですお」
99 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 22:09:28.43 ID:IwUa+gA80
 犠牲もなく、敵将を討ち取る。
 戦場ではまずあり得ないことだが、謀略ではそれが可能になる。
 戦略上でも、戦術上でも、欠かせない要素なのだ。

 自分で好んでやろうとは思わないが、モナーのような武将がいてくれると、心強かった。

( ´∀`)「あとは、ジョルジュ大将にお任せしましょう」

 モナーが手を叩いて従者を呼び、酒を運ぶよう命じた。



――翌日――

――ヒグラシ城――

 国軍で長きにわたって活躍してきたガダンが、死んだ。
 モナーに謀られ、討ち取られたのだ。

 ヒグラシ城内はその話ばかりが飛び交い、将校は頭を悩ませていた。

(;’ t ’ )(くそっ……まさか、謀反が虚偽だったとは……)

 モナーが以前からヴィップに不満を抱いている、という情報を得ていた。
 アルタイムによれば、何年も前からそれを匂わせていたという。
 恐らく、パニポニ城に赴任してからずっと、綿密に謀略を進めてきたのだろう。

(;’ t ’ )(謀略で右に出る者なし、とまで言われていたモナーだ……もっと疑うべきだった……)
105 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 22:12:03.88 ID:IwUa+gA80
 モナーが活躍していた頃を、自分は知らない。
 だが、あのベルが手強い相手としてたびたび名前を挙げていたほどの武将だ。
 易々と寝返ってくれるはずがない、と思うべきだった。

 そう思うことすらさせないほど、モナーの謀略は時間をかけて完璧に仕立て上げられていたのだ。

(;’ t ’ )(……苦しくなった……)

 実質的に、アルタイムに次ぐ位置にいたガダンだ。
 智勇を兼ね備えていた。ベルにも重宝されていた。
 それを失った今、国軍はまともに機能しないと言っても過言ではない。

 自尊心の強い武将だった。
 浅慮で動くような男ではない。だが、相手より自分が上だと思うと、途端に周りが見えなくなる。
 相手を完璧に掌握した気になり、疑うことを忘れてしまうのだ。

 ガダンは、頭は良かった。
 並大抵の謀略なら突っ撥ねたはずだ。
 ただ、モナーが上回った。端的に言えば、それだけの話だ。

 しかし、あまりに手痛い。

(;`・ι・´)「参ったな……得たと思ったパニポニ城を失っただけでなく、ガダンまで……」

(;’ t ’ )「……失ったものは仕方ありません……早急に軍を立て直すべきです」

(; ̄⊥ ̄)「ヴィップ軍は明日にでも攻撃を仕掛けてくるとの話ですが」

(;’ t ’ )「だからこそすぐに立て直しを図るんだ、ファルロ。ガダン少将の穴は大きいからこそ」
111 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 22:15:08.10 ID:IwUa+gA80
(;`・ι・´)「誰か一人で補うのは無理だ。ガダン少将が率いるはずだった部隊は、三人ほどに率いさせよう」

 アルタイムの言うことは、いつもどこかに不安が残る。
 三人で率いさせるのは、数としては妥当かも知れないが、権限を平等に与えると衝突を生む可能性があるのだ。

(;’ t ’ )「一人、代役を立てましょう。それを五人ほどで補佐させたほうが部隊としてはしっかりします」

 アルタイムが少し考えこみ、やがて頷いた。
 頑固な大将ではない。だが、流されやすい面もあった。

(;`・ι・´)「ヴィップの攻撃はすぐに来る。易い戦いではないが、全力を尽くすぞ」

(;’ t ’ )「……はい」

 そうだ、全力を尽くすしかない。
 ジョルジュ=ラダビノードは、モナー以上に手強い相手だとベルが言っていた。
 半端な状態で立ち向かえば、瞬時に崩されてしまうだろう。

( ’ t ’ )(……危機は、好機でもあるんだ)

 ガダンを失い、流れはヴィップに傾きつつある。
 しかし、ここで存分に力を発揮してヴィップを打ち破れば、ヒグラシ城は当分安泰だ。

 何より、ジョルジュと真っ向からぶつかれる。
 やや優位だった状況が、五分にまで戻ったからだ。

 自分の力を試すのに、これほど相応しい場はない。
113 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 22:18:14.74 ID:IwUa+gA80
( ’ t ’ )「打ち破りましょう、ヴィップを。将校たちがしっかりしていれば、大丈夫です」

 他の将校に向けて言ったが、同時に、自分に対して発した言葉でもあった。



――ハルヒ城――

(-_-)(さすがは歴戦の将、モナー=パグリアーロ……)

 ジョルジュさえ嬉々とした表情を見せた。
 敵将、ガダン=ベオグラードを討ち取ったという報せによってだ。

 何年もかけて謀略を練り上げ、ヒグラシ城奪取を狙うこの時機に成功させてくれた。
 西塔にとって、これほどありがたいことはない。

 自分が入軍した十九年前、既にモナーは主力として軍の中核を成していた。
 確実な戦展開、それを支える数々の謀略。ハンナバルの右腕として、なくてはならない存在だった。
 アルファベットではSの壁を越えられなかったが、当時は抜きん出た実力を持っていたのだ。

 あのモナーが本当に裏切るとは思えなかった。
 故に半ば楽観視していた部分もあったが、ラウンジが謀反を信じ切っていたのは意外だった。
 モナーがよほど上手く騙したのだろう。

 何しろ、謀略に関しては随一のモナーが、何年もかけた謀略なのだ。
 無傷でラウンジの主力武将を討ち取った。あまりに大きすぎる功績だ。
 ここ数年、ほとんど目立った活躍をしていなかったことさえ、モナーは利用しただろう。

(-_-)(何にしろ、助かった……)
116 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 22:21:08.31 ID:IwUa+gA80
 ガダンを欠いたことが、ラウンジ国軍に波状の打撃を与えるはずだ。
 軍内は大きく揺らいでいることだろう。

 多少不利な状況だと考えられていたヒグラシ城戦は、今やほぼ五分になっている。
 これから更にヴィップの有利性は高まっていくかも知れない。

( ゚∀゚)「ヒッキー大尉、騎馬隊の部隊長選出を頼みたいんだが、構わねーか?」

 金髪を揺らしながらジョルジュが近づいてきた。
 ガダンを討ち取った報せが来てから、ジョルジュのモチベーションは上がっている。
 この大将は、波に乗れば乗るほど力を発揮するタイプだ。期待できる、と思っていた。

(-_-)「……はい……」

( ゚∀゚)「お前の目が一番信頼できるからな」

 何故か、ジョルジュは自分を信頼してくれていた。
 ニダーやフサギコより、近くに置かれることも多い。
 将官は自分から離れたところでも安心できる、という理由なら悲しいことだ。

(-_-)「……勝てそうですね……」

( ゚∀゚)「あぁ。モナー中将はよくやってくれた。あとは野戦で打ち破るだけだ」
122 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 22:24:13.87 ID:IwUa+gA80
(-_-)「……しかし、ラウンジはいま急成長を遂げているカルリナを出してきます……」

( ゚∀゚)「俺は楽しみだがな。どれくらいの力を持っているのか」

 ジョルジュが不敵な笑みを浮かべている。
 相手はまだ二十をいくらか越えたばかりの若い武将。経験は少ない。
 対するジョルジュは二十年以上前から戦を繰り返してきている。

( ゚∀゚)「まぁ、あんまり調子に乗せるのも面白くねぇな。ここらへんで、叩きのめしておくか」

(-_-)「……そうですね……」

( ゚∀゚)「カルリナ=ラーラス……ベルの後継者……か。
     ミルナを欠いたオオカミに勝ったくらいで、戦を知った気になってもらっちゃ困る」

 ジョルジュがアルファベットTを静かに構えた。
 図体の大きなショボンが持っている姿ばかり連想してしまうが、ジョルジュも不思議と様になっている。
129 :第35話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/08(火) 22:26:48.48 ID:IwUa+gA80
 アルファベットが、似合う。
 才がある男は皆そうだ、という気がしていた。
  _
( ゚∀゚)「俺がカルリナに戦を教えてやるよ」

 自信に充ち溢れたジョルジュの表情。
 それを見ていると、不思議と負ける気がしなかった。

















 第35話 終わり

     〜to be continued

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