6 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 22:39:15.45 ID:rfSIrrVJ0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
20歳 中尉
使用可能アルファベット:L
現在地:帰らずの森付近

●('A`) ドクオ=オルルッド
20歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
30歳 大将
使用可能アルファベット:U
現在地:ヴィップ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
25歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:エヴァ城

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
28歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
12 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 22:40:48.12 ID:rfSIrrVJ0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
26歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:シャッフル城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
23歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
29歳 中尉
使用可能アルファベット:Q
現在地:エヴァ城

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
45歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:パニポニ城

●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
27歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城
14 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 22:42:32.11 ID:rfSIrrVJ0
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
35歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
36歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
39歳 大尉
使用可能アルファベット:O
現在地:ヴィップ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
32歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
18 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 22:43:56.24 ID:rfSIrrVJ0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:ブーン/ビロード/イヨウ
少尉:ドクオ/フィレンクト


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
21 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 22:45:28.87 ID:rfSIrrVJ0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:ドクオ/フィレンクト
J:
K:
L:ブーン
M:
N:プギャー
O:ヒッキー
P:
Q:モナー/イヨウ
R:モララー
S:アルタイム(ラウンジ)
T:ジョルジュ/ミルナ(オオカミ)
U:ショボン
V:
W:
X:
Y:
Z:
23 :この世界の単位 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 22:46:58.72 ID:rfSIrrVJ0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

25 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 22:48:16.87 ID:rfSIrrVJ0
【第34話 : False】


――帰らずの森付近――

 瞬時に右腕が背中に伸びる。
 アルファベットL。あまりに遠い。

 柄を握り、引き抜こうとした。
 だが、ベルベットのIは、既に眼前にあった。

 そして、空気が裂けた。
 髪が浮きあがる。耳に風を感じる。

 血が噴き出した。

(;^ω^)「お、お、お……!?」

 後頭部にかかる温血。
 振り返った。全身を黒くした男が赤く染まっている。
 いったい、誰だ。ベルベットは、何をしたのだ。

( <●><●>)「ブーン中尉には警戒が足りないと、分かっていました」

 ベルベットのアルファベットIが、ゆっくりと戻っていく。
 刃の先から血を滴らせたまま。

(;^ω^)「ど、どういうことだお……?」

( <●><●>)「周りを見て下されば分かります」
33 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 22:51:44.97 ID:rfSIrrVJ0
 そこで、やっと気づいた。
 黒ずくめの男たちが周りを囲んでいる。三十人はいるだろう。
 これほどの人数が殺気を放っていたにも関わらず、何故いままで分からなかったのか。

(;^ω^)「暗殺部隊かお!?」

( <●><●>)「オオカミからの刺客だと思っています」

 ベルベットと背中を合わせた。
 帰らずの森を警護している兵は遠い。城からも遠い。
 絶妙な位置で襲われている。

( <●><●>)「全員、アルファベットIです。打ち破れます」

(;^ω^)「ベルベットは大丈夫なのかお?」

( <●><●>)「ご心配には及びません。いきます」

 ベルベットが動きだした。
 一瞬で敵前に迫り、アルファベットIで首筋を斬り裂く。
 両横から攻めてくる暗殺者二人を蹴りでいなして、素早く一撃。

 抜群のアルファベットセンス。
 入軍して一年とは思えないほどだ。

( ^ω^)「ベルベット、ありがとうだお!」

 アルファベットLを構え、振るった。
 敵を引きつける。際どいところで、振りまわす。
 そうすることで、一度に三つ以上首を飛ばせる。
40 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 22:54:49.08 ID:rfSIrrVJ0
 突き、振り下ろし、薙ぐ。
 暗殺者たちは怯むことなく襲いかかってくる。しかし、アルファベットに長けているとは言い難かった。
 アルファベットIを弾いて躱せば難なく討ちとれる。

 同時に複数が襲いかかってきても苦にならない。
 さすがに三十人が一斉では厳しかったかも知れないが、ベルベットがいる。
 二十人ほどなら、一人でも相手にできる数だ。

 渾身の力でLを振り上げ、胴を斜めに裂いて、その片割れを蹴飛ばした。
 後ろにいる敵がそれを躱した隙にLの先端で喉を突く。
 瞬時に引いて、最小限の動きで首を刎ねる。

 息が乱れるころには、全てが無残な姿に変わり果てていた。

(;^ω^)「ベルベット! 大丈夫かお!?」

( <●><●>)「はい」

 全身が血に塗れている。
 恐らくはほとんどが返り血だろう。

 自分はアルファベットで上回っていたが、ベルベットは敵と同じIだった。
 それでも、十人ほどを全て討ち取っている。

 ドクオでも同じことができたかどうか、分からない。
 それほどに実力が図抜けているのだ。

( ^ω^)「ホントにありがとうだお、ベルベット」

( <●><●>)「もっと気を配ってください」
50 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 22:58:28.15 ID:rfSIrrVJ0
(;^ω^)「ごめんだお……ちょっと気が抜けてたみたいだお……」

( <●><●>)「あなたが死ねば東塔の戦力は大幅ダウンです。自覚してください」

(;^ω^)「ホントにごめんだお……ちゃんと気をつけるお」

 ショボンから、暗殺には気をつけろと言われていた。
 その矢先の出来事だ。将校としてあるまじきことだった。

( ^ω^)「……でも、不思議だお……こんなにたくさんいたのに、全然気付かなかったお……」

( <●><●>)「暗殺者は気配を絶つ術を知っています。三十人くらいまでならほぼ完璧に気配を消せるのだと思います」

(;^ω^)「そうなのかお……でも、真後ろにまで迫られてたのに気付かなかったのは、本当に気が抜けてたお……」

( <●><●>)「今後は注意してください」

 淡々と物を喋る男だった。
 感情が全く込められていない。必要なことだけを伝える、といった感じだ。
 モララーに近いかも知れない、と思った。

( ^ω^)「ベルベット、アルファベットの訓練はどんな感じなんだお?」

( <●><●>)「皆と同じ訓練を受けてます」

( ^ω^)「自主訓練とか……」

( <●><●>)「アルファベットよりも戦に関しての勉強に注力しています」

(;^ω^)「それなのにここまで成長できたのかお? 凄いお……」
55 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 23:01:24.50 ID:rfSIrrVJ0
( <●><●>)「私は何も特別なことはしません。他の兵と違う部分があるとすれば、
        ヴィップの天下に貢献したいという気持ちが強いことだと思います」

 内に秘めた、志の強さ。
 生まれ育った祖国を、天下に導きたいと願っている。
 至極当然のことでありながら、ここまで自信を持って言える兵は稀だった。

 最初は不気味にも見えたベルベットの目が、あまりに力強く見える。
 奥に映る一等星の輝きが眩しかった。

( <●><●>)「今日は読みが当たったので助けることができましたが、今後もそうとは限りません。くれぐれも」

(;^ω^)「ホントにごめんだお。しっかり気をつけるお」

 恐らく、自分の考えを素直に吐き出すタイプなのだろう。
 やはりモララーに似ている。天才肌だ。

 ヴィップはまだまだ強くなりそうだ。
 大きく聳えるヴィップ城を見上げながら、そう思った。



――世界歴・517年――

――ヴィップ城――

 年が明けるとすぐに新年を祝う宴が開かれる。
 アラマキ皇帝が音頭を取り、二大将が軽く演説をして皆が飲み食いする場だ。
 だが、今年は飲み食いの前に昇格について発表があった。
63 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 23:04:06.79 ID:rfSIrrVJ0
(;^ω^)(もう大尉なんて……)

 特に戦功を挙げたわけでもないが、次の戦に備えて昇格させるというものだった。
 下が詰まってくることも考慮されているのだろう。

 大尉に昇格した。
 まだ二十一。プギャーが二十四のとき、早い昇格だと言われていたが、それより三年も早い。
 ショボンの期待が込められているのは分かったが、重圧がないわけでもなかった。

 プギャーも少将に昇格し、東塔の将官は五人になった。
 西塔の三人に比べるといかにも多い。

(´・ω・`)「昇格おめでとう」

 皆が騒ぎ出したころに、ショボンが声をかけてくれた。
 大瓶を片手に持っているが、やはり酒には酔わないらしい。
 表情や口調はいつも通りだった。

( ^ω^)「ありがとうございますお!」

(´・ω・`)「二十一で大尉か。大したもんだ」

( ^ω^)「まだまだ未熟ですお……」

(´・ω・`)「時期尚早だとは思っていない。お前ならすぐ地位に相応しい活躍ができるさ」

( ^ω^)「頑張りますお!」
68 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 23:07:00.38 ID:rfSIrrVJ0
 同じく昇格を果たしたプギャーはシャッフル城の守将となっているため、この場にはいない。
 本来なら自分と同じように周りから祝福を受けるはずだが、それがないというのは悲しいものだった。

 今度会ったときに、酒でも飲みながら喜びを分かち合いたい、と思った。

(´・ω・`)「大尉にもなったことだし、暗殺されたりしないように注意してくれよ」

(;^ω^)「気をつけますお」

(´・ω・`)「今度あんなことがあったら昇格に響くと思ってくれ」

 年末に暗殺者に襲われたことは、素直に報告した。
 当然、叱責を受けたものの、完璧に撃退したことは評価された。
 何よりも、ベルベットが想像以上の力を持っていることが嬉しかったのだろう。

(´・ω・`)「次の戦ではベルベットを使ってみたいな。期待できる」

( ^ω^)「きっと活躍しますお」

(´・ω・`)「まずは部隊長。お前の下に置きたいが、問題ないか?」

( ^ω^)「ありませんお。ブーンとしても嬉しいですお」

(´・ω・`)「若い力が出てくるのは、ありがたい限りだ。オオカミの二の舞にはなりたくない」

( ^ω^)「……そういえば、ミルナ=クォッチはどうなったんですかお?」

(´・ω・`)「まだ療養中だそうだが、徐々に体を動かしているらしい」

( ^ω^)「次のオオカミ戦には間に合いそう、ってことですかお?」
71 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 23:09:58.69 ID:rfSIrrVJ0
(´・ω・`)「そうだな。マリミテ城を攻めるときには出てくるだろう」

( ^ω^)「そのマリミテ城戦はいつ頃になりそうですかお?」

(´・ω・`)「西塔の戦との兼ね合いがあるから分からんが、来年には、と思っている」

( ^ω^)「まだ一年以上あるんですかお……」

(´・ω・`)「お前は入軍してからの半年ほどで何度も戦を経験したから、物足りなく感じるとは思うが」

 ショボンの言う通りだった。

 戦が続くときは城でゆっくりしたい、と思っていても、いざその状態が続くと、戦が恋しくなる。
 思う存分、アルファベットを振るいたい。敵と相対したい。
 そんな感情が抑えきれなくなるのだ。

(´・ω・`)「まぁ、我慢してくれ。俺だって城でじっとしてるのは好きじゃないさ」

( ^ω^)「兵の命が失われないことは、いいことだとは思いますお……でも」

(´・ω・`)「その気持ちも、分かる。しかし、兵たちも戦いたいと思っているからな。
      特に、お前と一緒に入軍した兵たちは、やっと戦えるレベルに達したと思ったら戦がない状態だ。
      もどかしい気持ちが俺にまで伝わってくる」

( ^ω^)「ベルベットと一緒に入った兵も、そろそろ戦がしたいと思うようになるはずですお」

(´・ω・`)「戦がしたい、という気持ちだけで戦をするわけにはいかない。しっかりと情勢を見極める必要があるからな」
75 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 23:12:53.48 ID:rfSIrrVJ0
 国軍の兵、という職業は難しい。
 冷静さが無論、必要になる。しかし、感情の高ぶりというのも欠かせない要素なのだ。
 二つを上手く調和させることができれば、戦では抜群の力を発揮できる。

(´・ω・`)「とにかく、西塔の戦次第だな」

( ^ω^)「勝てそうなんですかお?」

(´・ω・`)「どうだろうな……ラウンジには勢いがあるし……五分といったところだろうな」

( ^ω^)「カルリナ=ラーラスって武将が凄いって聞きましたお」

(´・ω・`)「そうだな、ベルの後継として頑張っているらしい。今後のラウンジにとって、欠かせない存在になるだろう」

(*'∀`)「ブーン!! 昇格おめでとー!!」

 話を遮り、小走りでドクオが駆けよってきた。
 顔は真っ赤、足取りも不安定。
 完全に酔っぱらっているようだ。

(;‘_L’)「すみません、お話し中のところを」

 フィレンクトが慌てて後ろからドクオを引っ張った。
 まるで保護者のようだ。

(´・ω・`)「酒に弱すぎるな、ドクオは」

(;‘_L’)「外に連れていこうとしたのですが、ちょっと目を離した隙に……」
82 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 23:15:53.35 ID:rfSIrrVJ0
(´・ω・`)「放っておけ。そのうち酔い潰れる」

(;‘_L’)「はぁ……」

(´・ω・`)「お前たち二人には、これからも頑張ってもらわねばならん。
      お互い刺激しあって成長してくれよ」

 ドクオが一瞬、真面目な顔つきに戻った。
 フィレンクトは嬉しそうに頷いている。

(´・ω・`)「次の戦も、必ず勝つ」

 ショボンが酒を呷った。
 それに呼応して、同じように杯を傾けた。



――517年・夏――

 入道雲が堂々たる姿を空から見せつけている。
 両手を精一杯広げても収まりきらないスケールだ。

 城壁からの眺めは壮観だった。
 広大な原野、それを上回る青空。
 視界のすべてを壮大さが埋めている。

 大きく息を吸って、ため込んで、吐いた。
 不思議なくらいに、心地良い。
90 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 23:19:05.77 ID:rfSIrrVJ0
 そして、少し視線を落とせば、立ち並ぶ何万もの兵。
 西塔の兵が、北へと進発する日だった。

( ^ω^)(みんな、頑張ってだお)

 今回、本城からは四万の兵が出る。
 ハルヒ城にいるのが一万。合計五万だ。
 相対するラウンジは、七万を出してくるという。

 決して有利な戦いではないが、ジョルジュには自信があるという。
 今回こそヒグラシ城を奪る、と並々ならぬ意気を見せているそうだ。

 ジョルジュがとーちゃんを殺した相手であることは、忘れていない。
 元オオカミの武将であり、今も叛意を抱いているのではないか、と思うときがある。
 だが、ラウンジに立ち向かうときだけは純粋に応援できた。

 ラウンジはアルタイムとカルリナ、それからガダン=ベオグラードという少将も出てくるらしい。
 ギフト城の守将として長く活躍し、ベルにも重宝されていたらしい武将だ。
 智勇を兼ね備えている、万能型の将だという。

 西塔は将校を総動員しているが、数では圧倒的にラウンジのほうが有利だ。
 差をどこでどう埋めるか、が鍵になってくるだろう。

( ^ω^)(かなり上手くいかないと、勝てなさそうだお……)

 ショボンは五分だと言っていたが、様々な面を考慮すれば、やや分が悪い。
 ラウンジが物資に乏しい状態が続いているのがせめてもの救いだろう。
 もし存分に兵糧が用意できていたら、九万か十万を出してきたはずだからだ。
95 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 23:21:59.32 ID:rfSIrrVJ0
 ベルは武将不足に嘆いていたというが、それでもさすがに最大国ラウンジだ。
 アルタイムは他国の大将と比べれば見劣りするものの、相応の力は持っている。
 カルリナやファルロといった若い武将もいる。ガダンも出てくる。オオカミに比べればかなりましだろう。

 そのラウンジに、ジョルジュがいったいどう立ち向かうのか。
 一人の軍人として、興味があった。

(‘_L’)「行軍、始まりましたね」

 静かに後ろから現れたフィレンクト。
 軍内でも屈指の長身であり、目線を合わせるのにも一苦労だった。

( ^ω^)「頑張ってほしいところですお」

(‘_L’)「そうですね、ヒグラシ城はもう十年以上前から狙っている城ですし」

( ^ω^)「この前はあと一歩まで行きましたお」

(‘_L’)「今回はベルの策もないでしょうし、前回より優位に進められるとは思いますが」

 三年前のハルヒ城防衛戦を思い出した。
 あれが自分にとっては初陣だった。牢乎の森でファットマンを討ち取った戦だ。
 後で分かったことではあるが、あの戦ではラウンジがベルを欠いていた以上、防衛できて当然だった。

 そのあと、年を越してからベルが急逝したという虚報が流れて、ジョルジュはヒグラシ城を攻めた。
 敵の内応を信じたことによる攻めだったが、結局はラウンジに欺かれ、討ち取られる寸前まで追い詰められている。
 自分が援軍と戦ったことが、結果的にはジョルジュの命を助けた形になった。
102 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 23:25:19.19 ID:rfSIrrVJ0
 それから、二年が経った。
 今度こそ、という気持ちがジョルジュには強くあるのだろう。
 激しい調練を繰り返していたのは知っている。

 今年の初めにまた新しく兵が入ってきた。
 およそ一万。領土が拡大していることもあって、新兵の数も増えてきている。
 ヴィップは現在、全軍で十一万を超えていた。

 このヒグラシ城戦に勝利すれば、兵力は更に増大するだろう。

(‘_L’)「きっと勝てます」

( ^ω^)「そうなるよう、祈るばかりですお」

 東塔の中にはやはり、西塔の戦など関係ないと思っている人間が多くいる。
 将校でもギコやプギャーはそれを隠そうともしない。
 仕方ない部分があるとはいえ、やはり同じ国の戦は応援するべきだと思っていた。

 何より大将であるショボンが、協力しあって戦いたいと思っているのだ。
 難しい部分があるせいで実現していないが、やはり気持ちは大事だ。
 フィレンクトも同じように応援する気持ちを持っているのが、嬉しかった。

( ^ω^)「吉報を待ちたいですお」

 景色に背を向け、城壁から離れた。
 微かに感じる風。夏の匂いが漂う。
 空から照りつけられる日差しで汗ばむことさえ気持ち良い。

 行軍の音の余韻に浸りながら、吉報を受ける日を思い浮かべた。
107 :第34話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/06(日) 23:28:20.14 ID:rfSIrrVJ0
 そして、北から伝令が送られてくる日はすぐに来た。

 およそ二十日。一ヶ月も経たないうちのこと。


 パニポニ城のモナー中将、ラウンジに寝返り。
 息絶え絶えのまま、伝令兵は皆にそう伝えた。


















 第34話 終わり

     〜to be continued

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