4 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:16:37.80 ID:2jN0xCyz0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
20歳 中尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヴィップ城

●('A`) ドクオ=オルルッド
20歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
30歳 大将
使用可能アルファベット:U
現在地:ヴィップ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
25歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:エヴァ城

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
28歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
7 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:17:52.73 ID:2jN0xCyz0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
26歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:シャッフル城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
23歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
29歳 中尉
使用可能アルファベット:Q
現在地:エヴァ城

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
45歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:パニポニ城

●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
27歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城

8 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:19:39.34 ID:2jN0xCyz0
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
35歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
36歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
39歳 大尉
使用可能アルファベット:O
現在地:ヴィップ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
32歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
12 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:21:08.93 ID:2jN0xCyz0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:ブーン/ビロード/イヨウ
少尉:ドクオ/フィレンクト


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
15 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:22:56.38 ID:2jN0xCyz0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:ドクオ/フィレンクト
J:
K:
L:ブーン
M:
N:プギャー
O:ヒッキー
P:
Q:モナー/イヨウ
R:モララー
S:アルタイム(ラウンジ)
T:ジョルジュ/ミルナ(オオカミ)
U:ショボン
V:
W:
X:
Y:
Z:
17 :この世界の単位 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:24:07.96 ID:2jN0xCyz0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

18 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:26:16.18 ID:2jN0xCyz0
【第33話 : Assassin】


――アリア城とトナグラ城の中間地点――

 全身が汗で重い。
 夏の陽射しを遮るものもない原野で、指揮を取っているのだから、尚更だった。

(;’ t ’ )「ガシュー=ハンクトピアは数で潰してください。正攻法で充分です」

[;`|≡|´]「フィル=ブラウニーが猛攻をかけてきているぞ」

(;’ t ’ )「まともに当たったあと、他の隊が横から崩してください。フィルなら崩せるはずです」

 戦が始まっていた。
 敵軍は五万を出してきている。こちらは、八万。
 数では圧倒的有利。だが、油断してはならない。

(;`・ι・´)「カルリナ、俺はリレントを潰してくる。お前はどうする?」

(;’ t ’ )「お待ちください。アルタイム大将はドラル=オクボーンをお願いします」

(;`・ι・´)「何故だ?」

(;’ t ’ )「ドラルのほうが野戦では手強い相手です。アルタイム大将のほうが確実性があります」

(;`・ι・´)「……分かった、ドラルには俺が当たろう。リレントを頼むぞ」

(;’ t ’ )「了解です」
21 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:29:39.74 ID:2jN0xCyz0
 アルタイムが、全権を預けてくれたのはありがたかった。
 指揮権を与えられた戦で、上に指示を仰がなければならないのは面倒だ。
 アルタイムすら自分の考えに従ってくれるのなら、戦を思い通りに進められる。

 絶対の自信があるわけではなかった。
 言葉ひとつ発するごとに、言葉にしがたい不安に包まれる。
 これで正しいのか。間違っていたら、負けてしまうのではないのか。

(;’ t ’ )(……それが戦だ)

 ベルだってきっと、常に不安を抱えていたに違いない。
 誰だってそうだ。間違いなく勝てる戦などどこにもない。
 常に最善を尽くしていくしかないのだ。

 情勢はこちらに傾いている。
 ミルナがいないのはやはり大きい。四中将の動きがまとまっていないのだ。
 各個撃破で充分押していける状態だった。

 額の汗を拭って、アルファベットLを前に突きだした。

( ’ t ’ )「行くぞ」

 H隊一万を率いて、駈け出した。
25 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:32:53.33 ID:2jN0xCyz0
――516年・秋――

――ヴィップ城――

 新兵が入ってきてからのヴィップ城は慌ただしかった。
 この一年は戦もなく進んできたため、調練に専念できたが、倦怠感がないわけでもない。

(´・ω・`)(新兵が入ってきてから、もう一年か……)

 戦がないときはやはり月日の流れが早い。
 入軍テストを行ったのもついこの間な気がするが、もう一年が経っている。
 顔ぶれもおおよそだが掴めてきた。

(´・ω・`)(次の入軍テストは年明けで良さそうだな)

 頭の中で予定を組み立てて、整理した。

 新しく入ってきた兵の中で、際立っていた兵が一人いる。
 東塔に入った、ベルベット=ワカッテマスという兵だ。

 入軍と同時にCを握り、この一年でIまで成長した。
 一年でIまで行くのはかなり限られている。一昨年の新兵では、ブーンとドクオしか成せなかったことだ。
 さすがに一年でKまで到達したブーンとは比較にならないが、今後が楽しみな兵だった。

(´・ω・`)(次の戦までに、だな)
29 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:35:36.94 ID:2jN0xCyz0
 東塔にはまだ戦の予定はない。
 本当はオオカミが弱っている今のうちに攻めたかったが、西塔がラウンジを攻める話が固まっている。
 来年の春か夏には戦になるだろう。

 それまでに、皇帝位についてジョルジュと話す必要がある。

(´・ω・`)(果たして、オオカミ戦に協力してくれるかどうか……)

 普通に考えれば、協力すると言うだろう。
 その普通が通じないのが、ジョルジュ=ラダビノードだ。
 何を言ってくるか分からない部分があった。

(´・ω・`)(ラウンジ戦に俺を伴ってくれるといいんだが……)

 自分がいれば、敵大将のアルタイムを討ち取れる可能性もある。
 そう思っているが、ジョルジュが伴ってくれることはあまり期待していなかった。
 あの人は、そういう人だ。

(´・ω・`)(……よし……)

 従者を呼び寄せて、ジョルジュに明晩話がしたいと伝えるように言った。
 意を決したら、鈍る前に行動しておくべきだ。いつ何が起きるか分からない乱世だからこそ。

(´・ω・`)(さて、そろそろ昇格についても考えるべきか)

 西塔の将校が最近増えた。
 今まで兵卒だった者が、時期的なことを考慮して三人少尉になっている。
 戦で武勲を得たからというわけではなく、今後に備えての昇格。ジョルジュらしい理由付けだ。

30 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:40:10.35 ID:2jN0xCyz0
 だがそれは、同じ理由を東塔も通せるということだ。
 位を上げておけば、いざというときに降格処分で済ませられる。
 今のヴィップには将校の地位が上がっても問題ない経済的な余裕もあった。

(´・ω・`)(ブーンを大尉に……それから、プギャーを少将に上げてもいいな)

 認可はアラマキによるものだが、難色を示されるのは兵卒を少尉に上げるときくらいだ。
 それも稀で、今までアラマキが首を捻ったのはブーンのときだけだった。

(´・ω・`)(まぁ、渋るのも分かる)

 思わず苦笑いがこぼれた。
 ラウンジのファットマンを討ち取ったのは大きな戦功だったが、その直後に少尉というのは無理があった。
 何とか頼み込んで許可を得たが、二度は通じないだろう。

 ブーンは予想外のスピードで成長している。
 これほどとはとても思っていなかった。少し戸惑ってしまったほどだ。
 だが、それはアルファベットだけではなく、指揮官としての才もだった。

 ブーンがこのまま着実な成長を遂げられるよう、支援しなければならない。

(´・ω・`)(あいつは必ず、俺を支えてくれる存在になる)

 その期待は、ブーンが入軍した当初からあった。
33 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:42:56.62 ID:2jN0xCyz0
――明晩――

――第一軍議室――

(´・ω・`)「わざわざすみません」

( ゚∀゚)「……心にもないことを言うなよ」

 ジョルジュが扉を閉めた。
 百人が座れるこの軍議室に、わずか二人。
 二人きりでの、話し合いだ。

( ゚∀゚)「お前から呼び出されるのは、嫌な予感しかしねーんだがな」

(´・ω・`)「まずは、アルファベットがTに上がったことをお祝い申し上げます」

( ゚∀゚)「心にもないことを言うな、とさっき言ったばっかりだ」

(´・ω・`)「本心です」

( ゚∀゚)「皮肉にしか聞こえねーよ」

 やはり、気難しい。
 今までの経緯を考えれば、当然とも言える態度だが、話しづらい相手だ。

( ゚∀゚)「さっさと本題に入ってくれ。来年の戦の準備で忙しいんだ、こっちは」

(´・ω・`)「そうですね。では、手短にお伝えしましょう。
      皇帝位を私は放棄します。もしアラマキ皇帝がそう言ってきても、固辞するつもりです」
38 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:45:55.28 ID:2jN0xCyz0
 ジョルジュの細い眉が、動いた。
 明らかに怪訝そうな顔をしている。

( ゚∀゚)「バカ言うなよ、お前が皇帝位を諦めるわけねーだろ。そのために戦ってきたんだろうが」

(´・ω・`)「いえ、私はヴィップのために戦ってきました。皇帝位など、さしたる問題ではありません。
      私が望むのは、ヴィップの天下のために、東塔と西塔が力を合わせて敵に当たることです」

( ゚∀゚)「……そのために、皇帝位を投げだす、ってか?」

(´・ω・`)「はい。国が一つにまとまるなら、易いものだと思います」

 そして、しばらく沈黙が続いた。
 ジョルジュが考え込む素振りを見せている。腕を組んで、背凭れに体重をかけていた。

 一刻ほど経ったのではないか、と思えるころにようやく、ジョルジュは口を開いた。

( ゚∀゚)「お前に譲られて皇帝になるくらいなら、俺は兵卒のほうがマシだ」

 はっきりと、そう言い放った。
 気落ちせずにはいられなかった。やはりジョルジュは、拒んできた。
 予想はしていたが、最終手段として持ち出した後継問題でもどうにもならないとなると、八方塞がりだ。

 だが、簡単に諦めるわけにはいかなかった。

(´・ω・`)「東塔に協力してほしい、と言っているわけではないのです。ただ私は」

( ゚∀゚)「何も言うな。聞きたくねーよ」
43 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:48:53.51 ID:2jN0xCyz0
(´・ω・`)「お待ちください。せめて、ラウンジ戦に協力させてほしいのです。
      最大国ラウンジの大将、アルタイム=フェイクファー。それを討ちとってみせます」

( ゚∀゚)「お前に借りは作らん。お前の協力は要らん。今まで通り、二つの塔は切磋琢磨して成長していけばいい」

(´・ω・`)「ですが、力を合わせればヴィップに敵はありません」

( ゚∀゚)「今のままでもヴィップは強い。二大将制が上手く機能しているからな」

(´・ω・`)「その二大将制も、協力しあえばより高みへと到達できます」

( ゚∀゚)「俺は俺のやりたいようにやる。お前に干渉されたくはない」

 そして、ジョルジュが席を立った。
 呼びとめる言葉は思い浮かばない。

 しかし、目を伏せて嘆息を漏らしかけたそのとき、ジョルジュが突然振り返った。
 表情は平静に見える。そうでないようにも見える。

( ゚∀゚)「……あぁ、そうだ。お前に一つだけ、警告しといてやるよ」

(´・ω・`)「……警告……?」

( ゚∀゚)「将校の暗殺には気をつけろ。いつ誰が誰に狙われるか、分かんねー状況だからな」

 扉の開閉の音が、軍議室内に大きく響き渡った。
 広壮とした軍議室に一人残り、様々な思いに耽った。

(´・ω・`)(……ダメだったか……)
47 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:51:47.07 ID:2jN0xCyz0
 後継問題が決着すれば、東塔と西塔のしがらみはほぼ消える。
 互いが互いに協力する関係になりえる。

 それを、ジョルジュは拒んだ。

(´・ω・`)(……オオカミとの戦に、協力したくない……ということなのか……?)

 いや、そんなはずはない。
 ジョルジュが叛意を抱いているなど、ありえるわけがない。

 そう信じながら、やっていくしかない。

(´・ω・`)(……しかし、最後の警告はどういう意味だ?)

 誰かが狙われているのか。
 確かに、将校たちはいつ狙われてもおかしくない立場にある。
 だが、それは今に始まったことでもない。

 ジョルジュは何か情報を掴んでいるのだろうか。
 それとも、気まぐれで言っただけなのだろうか。

(´・ω・`)(まぁ、考えても分からんな……一応、注意しろと皆に言っておくか……)

 大きく息を吐いて、椅子から立ち上がった。
50 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:54:41.93 ID:2jN0xCyz0
――516年・冬――

――帰らずの森・小屋――

( ^ω^)「ラウンジが勝ちましたお。アリア城はラウンジ領になりましたお」

ξ゚听)ξ「そう……オオカミは凋落の一途を辿ってるのね」

( ^ω^)「やっぱり大将を欠いてるのが大きいですお……」

 燃え盛る暖炉の火が、小さく音を立てる。
 小屋全体を暖かな赤に染める光を放っている。

 アルファベットが上にいったわけでもないのに、こうやってツンの小屋を訪れることが、しばしばあった。

( ^ω^)「ラウンジはカルリナ=ラーラスっていう若い武将が頑張ったみたいですお」

ξ゚听)ξ「聞いたことあるわ。ベルの後継って期待されてる人ね」

( ^ω^)「ですお。開戦から終戦まで、オオカミに一度も主導権を渡さずに完勝しましたお」

ξ゚听)ξ「ラウンジはやっぱり強いのね……」

( ^ω^)「手強い相手ですお……兵力では圧倒的、武将も悪くない……」

ξ゚听)ξ「逆に、オオカミがかなり辛い状況ね……四中将はどうしてるの?」

( ^ω^)「相変わらず反目してるみたいですお……ミルナがいないとそれが酷くなるみたいで……」

ξ゚听)ξ「不遇の将、といったところね、ミルナは……」
55 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 14:57:34.14 ID:2jN0xCyz0
 四中将は無能だと騒がれてはいるが、それでも国軍の中将だ。
 それぞれに力はある。ただ、互いが反目しあうことによって打ち消されているのだ。
 ミルナは頭を抱えていることだろう。

ξ゚听)ξ「去年入った新兵はどう? いい兵はいた?」

( ^ω^)「いましたお。ベルベット=ワカッテマスっていう兵が」

ξ゚听)ξ「へぇ……初めて聞く名前ね」

( ^ω^)「あれ、言ったことなかったですかお?」

ξ゚听)ξ「うん。アルファベットはどう?」

( ^ω^)「一年でIまで来てますお。ツンさんのお世話になる日も近いかも知れませんお」

ξ゚听)ξ「ドクオくんは?」

( ^ω^)「まだJの壁を突破できてませんお……今まで順調に来てたのに、壁で一年かかってるから、ちょっと挫折気味ですお……」

ξ゚听)ξ「そんなものよ。むしろ一年で突破すれば早いほう。ブーンくんやモララーくんが早すぎるだけ」

( ^ω^)「モララーさんはどれくらいで突破したんですかお?」

ξ゚听)ξ「あの人は三ヶ月ね。半年ですら異例の早さなのに、その半分……ホント、驚いたわ」

(;^ω^)「凄過ぎですお……」
62 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 15:00:51.23 ID:2jN0xCyz0
ξ゚听)ξ「でも、Sの壁はもう二年以上かかってるわね。さすがのモララーくんでも難しいみたい」

( ^ω^)「Sの壁は、やっぱそれだけ特別ってことですかお?」

ξ゚听)ξ「そうね。モナー様も突破できなかった壁だし……アルファベットの才がある、と言われる人の中でも、ほんの一握りだもの」

( ^ω^)「ブーンに突破できるかどうか、ちょっと不安ですお……」

ξ゚听)ξ「ブーンくんなら大丈夫だと思うわ。今のところ、ショボン様と同じペースだし」

( ^ω^)「頑張りますお!」

 隣に座っているツンの手を、優しく握っていた。
 ツンは頬を紅潮させながらも、握り返してくる。
 小屋に来るときは、それが当たり前の状態だった。

ξ゚听)ξ「アルファベットLはどう?」

( ^ω^)「強いアルファベットだと思いますお。扱いやすくて、リーチがあって……」

ξ゚听)ξ「そうね、IからLまではみんな扱いやすいわ。ただ、次からが難しくなる」

( ^ω^)「Mですかお……」

ξ゚听)ξ「えぇ。弓状アルファベットのMは、Fと併用しなきゃいけないからね」

( ^ω^)「MとFを合計したら、Nに限りなく近いんじゃないですかお?」

ξ゚听)ξ「そうね。だからMからNにはすぐ上がれるわ。そこから先はまた長いと思うけど」
64 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 15:03:48.75 ID:2jN0xCyz0
( ^ω^)「国軍の将校は、N以上の人が多いみたいですお」

ξ゚听)ξ「一端の将校として誇れるアルファベット、って意識がみんなの中にあるからね。N以上は」

( ^ω^)「それに留まらず、さらに上を目指したいですお」

 帰らずの森はほとんど陽も差し込まず、外の明暗は分かりにくいが、次第に空気の冷えを肌に感じるようになる。
 暖炉の火が衰えたわけでもないと分かると、夜になっているのだと思う。

( ^ω^)「もう夜になっちゃったみたいですお……そろそろ御暇しますお」

ξ゚听)ξ「……帰るの……?」

( ^ω^)「今日もありがとうございましたお」

 握った手を、離そうとした。
 しかし、ツンからの力が強く、解けない。
 それも一瞬のことで、すぐに力は弱まったが、離れるまでに時間はかかった。

ξ゚听)ξ「……ばいばい」

( ^ω^)「……また来ますお」

ξ゚听)ξ「別に……寂しくなんか、ないんだからね……」

 消え入るような、ツンの声。

 本音なのか、強がりなのか。
 分かるかねることが多かった。
68 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 15:07:38.72 ID:2jN0xCyz0
 ツンと離れるのが、自分自身、寂しくないはずがない。
 だが、あくまで自分の話に過ぎず、ツンも同じことを思ってくれているかどうかは、分からないのだ。
 ツンの言葉が本音だとすれば、相手に迷惑をかけることになる。

 本音を隠したがるところがあるのは知っているが、だからと言って全て隠すわけでもない、というのが難しかった。

( ^ω^)「……あ……最後にもう一つだけ、お聞きしたいことがありますお」

ξ*゚听)ξ「聞きたいこと? なに?」

( ^ω^)「一年半くらい前の話で、ジョルジュ大将がこの小屋を頻繁に訪れてるとプギャー大尉から聞きましたお」

 一瞬、嬉しそうな表情を見せたツン。
 しかし、また瞬時に陰った。
 そして、流れるは沈黙。

(;^ω^)「……あの、それがいったい何だったのかを……」

ξ゚听)ξ「アルファベット職人には守秘義務があるの。依頼者のことは何も喋れないわ」

 いつも通りの表情。
 それに似合わぬ、捲くし立てるような早口。

 小屋の中の空気が、突き刺さる。
70 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 15:10:49.42 ID:2jN0xCyz0
ξ゚听)ξ「今日はもう遅いから帰ったほうがいいわ。またね、ブーンくん」

 ツンが椅子から立ち上がり、小屋の片隅へと体を向けた。
 出ていくべきだと分かっていながら、暫し呆然としてしまっていた。

 やがて小屋の外に出たとき、肌に感じた風は、思ったより冷たかった。



――帰らずの森付近――

(;^ω^)(……守秘義務……)

 なんでもないように、話してくれると思った。
 側室になってほしいと言われている。その程度のことだと考えていたからだ。

 だが、ツンは喋ることを拒んだ。
 守秘義務という理由。確かに、大事なことだ。
 しかし、本当にそれだけなのか。

 勘繰っても仕方のないことだ。
 そう思おうとしても、疑問は自然と浮かんでくる。
 沈めることもできない。

(;^ω^)(……でも、さっきの話はもうしないほうが良さそうだお……)

 あれほど明確に拒まれれば、さすがにもう一度という気にはなれなかった。

( ^ω^)「……お?」
78 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 15:14:08.12 ID:2jN0xCyz0
 一陣の風が、体を撫でていった。
 新月の夜。初更の風。
 自然を形成するすべてが、声色を変えている。

 極まるは、不穏。

( ^ω^)「……ベルベット?」

 前から、闇に体を紛れ込ませていた男。
 次第に、その姿を明瞭にしていく。
 こちらに近づくことによって。

( ^ω^)「どうしたんだお? 帰らずの森に何か用かお?」

( <●><●>)「……分かってます」

( ^ω^)「ほぇ?」


( <●><●>)「あなたが死ねば東塔に大打撃となるのは、分かってます」
83 :第33話 ◆azwd/t2EpE :2007/05/04(金) 15:17:26.58 ID:2jN0xCyz0
 ベルベットのアルファベットが、光を放った。

 その光が自分に向かって突き進んで来ることに、一瞬、反応が遅れていた。

















 第33話 終わり

     〜to be continued

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