7 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:14:33.09 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
★登場人物

〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
19歳 中尉
使用可能アルファベット:K
現在地:ヴィップ城

●('A`) ドクオ=オルルッド
19歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
29歳 大将
使用可能アルファベット:U
現在地:ヴィップ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
24歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:エヴァ城

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
27歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
9 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:15:53.60 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
●( ^Д^) プギャー=アリスト
25歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:シャッフル城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
22歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
28歳 中尉
使用可能アルファベット:P
現在地:エヴァ城

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
44歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:パニポニ城

●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
26歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城
12 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:17:22.41 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
34歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ヴィップ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
35歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
38歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ヴィップ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
31歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
16 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:18:40.53 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
★階級表

〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:ブーン/ビロード/イヨウ
少尉:ドクオ/フィレンクト


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)

17 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:20:10.15 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
★使用アルファベット一覧

A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:ドクオ/フィレンクト
J:
K:ブーン
L:
M:
N:プギャー/ヒッキー
O:
P:イヨウ
Q:モナー
R:モララー
S:ジョルジュ/アルタイム(ラウンジ)
T:ミルナ(オオカミ)
U:ショボン
V:
W:
X:
Y:
Z:

18 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:21:18.13 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
★この世界の単位

一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

24 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:23:17.45 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
【第32話 : Succeed】


――ヴィップ城――

 底抜けに広い青空を通り越し、中秋の名月を肴にして酒を飲む。
 茶畑から送られてきた一番茶を啜りながら陽気な昼下がりを窓辺で過ごす。

 いつの間にか、入軍してから一年が過ぎていた。
 シャッフル城戦から既に半年近い。実に長閑な日々だった。

( ^ω^)(平和なもんだお……)

 いつ戦が起きるか分からない状況下でも、そう思える日常だった。


 兵糧を得られる秋になった。
 各地で収穫が行われ、税として城に送られてくる。
 また、商人と取引して得る分もある。

 兵糧はありすぎて困ることはない。
 特に保存の利くものなら尚更だ。

 保存のために塩を仕入れるのが、最近の仕事だった。
 本当は文官のやる仕事だが、武官がさほど仕事を抱えていないので、回されてきたのだ。
 商人を相手に取引するのは得手ではないが、聞くところによると、文官がやるより安値で仕入れられるのだという。
 アルファベットの脅威を感じるからだろう、とショボンは笑っていた。

 塩の用途は幅広く、塩自体も腐敗はしないため、大量に貯蓄しておく必要があった。
28 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:26:55.33 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
 物資は貯まりつつあるが、戦の予定は東塔にも西塔にもなかった。
 今は各国とも力を蓄えている状態だ。睨み合いにすら至っていない。
 唯一、北西でラウンジとオオカミが不穏さを見せているが、ヴィップに飛び火する気配は全くなかった。

( ^ω^)(……明日の準備ができてるか、確認に行くかお)

 自室から出て、第七訓練室に向かった。
 そこに、明日のための準備が整えられているはずだ。

( ^ω^)「どんな感じですかお?」

(兵1∀1)「ブーン中尉、ちょうどいいところに」

( ^ω^)「どうかしましたかお?」

(兵1∀1)「準備完了の報告に、これから参ろうと思っていたのです」

( ^ω^)「そうなんですかお。ありがとうございますお」

 明日は、入軍テストがある。
 既に一ヶ月前から告知していたため、受験希望者数は八千を超えていた。

( ^ω^)「公園に張る幕舎は?」

(兵1∀1)「あちらに」

( ^ω^)「了解ですお」

 部屋の隅に置かれた荷物の一部を確認した。
 不備は何もなさそうだ。
32 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:30:03.37 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
( ^ω^)「じゃあ、今日は上がってくださいお。お疲れ様でしたお」

(兵1∀1)「失礼します」

 準備にあたっていた数十人の兵が部屋から退出した。
 それを見届けてから、改めて準備が完璧かを確かめる。
 アルファベットを置く台、アルファベットA、幕舎、机、椅子。
 すべて問題なさそうだ。

( ^ω^)(明日は早起きして荷物を運ばなきゃだお)

 考え事をしながら、訓練室を出た。

 そこで、ショボンに出会った。

(´・ω・`)「ブーンか。ここは、入軍テストの荷物置きにしてあったか?」

( ^ω^)「そうですお。確認してましたお」

(´・ω・`)「そうか。しかし、今回は八千人に止まったか……一万は欲しかったところだがな」

( ^ω^)「入軍テストは、だいたいこれくらいなんですかお?」

(´・ω・`)「まぁ、頻度にもよるがな。一年の空きがあったのだから、一万は超えてくると予想していたんだが」

( ^ω^)「ブーンのときは千人だったから、今回はすごく多い気がしてましたお……」

(´・ω・`)「あのときは急だったからな。ジョルジュ大将が突然、入軍テストをやろうと言い出したんだ」
35 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:33:44.17 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
( ^ω^)「そうだったんですかお……ラウンジ戦が近かったからですかお?」

(´・ω・`)「いや、それにしても募集期間が短すぎた。やけに急いでいた感はあったな。別におかしくはないんだが」

( ^ω^)「やっぱり、少しでも兵が欲しかった、ってとこですかお」

(´・ω・`)「そうだな。一兵でも多く欲しいのはいつだって同じだ」

 近くを兵卒が頭を下げながら通って行った。
 アルファベットはEだった。恐らく、去年の入軍テストで入った兵だろう。
 あれからもう一年。およそ四つの戦を経験した。中尉にもなった。
 思い返すと、やけに長く感じる。

(´・ω・`)「そろそろ、ジョルジュ大将とも腹を割って話す時期か」

(;^ω^)「……え?」

 また、突然話を変えた。
 何気ない会話をしていたのに、急に雰囲気を変えることがショボンはよくある。
 しかもそれは大抵、重要な話だったりするのだ。

(´・ω・`)「今のヴィップには勢いがある。シャッフル城を奪って領土を拡大したからな。
      東塔と西塔が結託すれば、それは確固たるものになる。皆が分かっていることだ」

(;^ω^)「…………」

(´・ω・`)「お互い、しがらみを取り除いて、協力しあいたい」

(;^ω^)「……具体的には、どうするんですかお?」

36 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:37:02.54 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
(´・ω・`)「これは、お前だから話すことなんだが」

 ショボンの声が、低さを増した。
 それは重みとなって耳に響く。

(´・ω・`)「ジョルジュ大将は、俺が皇帝位を狙ってると思っているらしいんだ」

(;^ω^)「!?」

 皇帝位。
 アラマキ皇帝が国を統治しているこの国で、皇帝位を得れば、国を意のままに操れる。
 それを、ショボンが狙っている。いや、正確には、ジョルジュがそう思いこんでいるらしい。

 だが、ショボンは意外な言葉を続けた。

(´・ω・`)「だが、それはあながち間違いとも言えないんだ。
      これがどういう意味か、分かるか?」

(;^ω^)「……全く分かりませんお……どういうことですかお?」

(´・ω・`)「アラマキ皇帝には妻子がいないんだ。本来、皇帝位は嫡男が継ぐものだが、それがいない。
      あの方も既に七十に近い。あと何十年も生きられるわけじゃない。となると、後継問題が出てくる」

 そんな問題を抱えていたとは、知らなかった。
 東塔と西塔の争いの種は、まだ他にもあったのか。

(´・ω・`)「アラマキ皇帝は、俺かジョルジュ大将のどちらかに皇帝位を禅譲しようと思っているらしい。
      俺は、アラマキ皇帝に安心してもらえるように、皇帝を譲ると言われても問題ないよう精進を重ねると決意した」
40 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:40:03.10 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
 そして、ショボンは苦々しげに笑った。

(´・ω・`)「だが、どうもジョルジュ大将はそれを快く思わなかったようでな……。
      ジョルジュ大将は自尊心の強い人だ。俺が皇帝になったら、必然的にあの人は配下扱いになる。
      無論、そんな気はないが……俺がそうやってジョルジュ大将を抑えつけるために、皇帝を狙っていると考えたのだと思う。
      元々、考え方の相違で相容れなかった俺達だ。後継問題で溝は更に深まってしまった」

(;^ω^)「ショボン大将は……」

(´・ω・`)「皇帝位を欲しているのか、か? 要らんとは言わんが、躍起になって欲するほどでもないな。
      ジョルジュ大将に譲るとアラマキ皇帝が決断したなら、それが正しいのだと思う」

(;^ω^)「……でも、ジョルジュ大将は元々、オオカミの人間ですお」

 ショボンが眉を動かした。
 眼力が少し、強まる。

(´・ω・`)「だが、今はヴィップの人間だ」

(;^ω^)「それは、もちろんですお……でも、もし……もしもジョルジュ大将が」

(´・ω・`)「やめろ。ジョルジュ大将はこれまでヴィップのために尽力してきた人だ。
      叛意を抱いているなど、考えられん。疑義を抱くなど失礼な話だ、と前にも言っただろう」

 入軍して九年を経ているショボン。
 対して、自分はまだ一年しか軍に務めていない。

 その八年の差が、ジョルジュへの信頼を違わせているのだろうか。
50 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:44:01.28 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
(´・ω・`)「話を戻そうか。二人の溝を埋めるために、何をするのかということだ。
      俺は、皇帝位を禅譲するとアラマキ皇帝に言われても、固辞するつもりでいる」

(;^ω^)「えっ……!?」

(´・ω・`)「そうなると皇帝位はジョルジュ大将に渡ることになるが、もちろん対策はしておく。
      俺達の仲が改善されなかった場合、東塔だけが不当な扱いを受ける可能性もあるからな。
      皆には個人的なことで迷惑をかけてすまない。何とかジョルジュ大将の態度が軟化してくれるといいんだが」

 ショボンが視線を床に落とした。
 不安げな表情を浮かべている。

(´・ω・`)「近いうちにその話をするつもりだ。どうなるかは正直、分からん。
      これで東塔と西塔の垣根が取り除かれて、協力しあえる関係になれると嬉しいんだがな」

( ^ω^)「そうすれば、きっと……オオカミやラウンジを圧倒できますお」

(´・ω・`)「あぁ、間違いない。そうなってくれるよう、祈るばかりだ」

 しかし、後継問題は厄介だった。
 こうもあっさり決めてしまっていいのか、自分には分からない。
 ショボンが浅慮で決めたとも思えないが、その決断に至る過程は気になった。

 やはり、信頼なのか。
 ショボンはジョルジュを信頼している。それは、相当なものだ。
 ショボンがそう言うと自分までジョルジュを信じてみたくなるが、まだそのレベルにまでは至らなかった。

(´・ω・`)「明日は頼むぞ」

 そして、ショボンは背を向けた。
55 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:48:12.24 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
 ショボンの取ろうとしている行動は、かなりの博打だ。
 ジョルジュが公平な人物には思えない。二つの塔に格差をつける可能性はある。

 皇帝位を手中にすれば、東塔を上手くやりくるめることなど容易い。
 それを考慮して尚、ショボンは固辞しようとしているのか。
 対策とは、いったい何なのか。

(;^ω^)(……皇帝……)

 アラマキ皇帝と、話がしたい。
 二人についてどう思っているのか、率直に聞いてみたい。

 皇帝に謁見などしたことがない。方法も分からない。
 それでも、直接話してみたい衝動が高まっていた。

/ ,' 3「ちょっとよろしいでしょうか、ブーン中尉」

( ^ω^)「あ、はいです……お……」


(;゚ω゚)「おっ!?」


 僅かに腰の曲がった老人。
 見た目はごく普通だが、言葉にしがたい高貴感を有している。

 アラマキ皇帝が一人で、真後ろに立っていた。
60 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:52:23.87 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
(;^ω^)「な、なんで一人で出歩いてるんですかお!? 危険ですお!」

/ ,' 3「いえいえ、そんな大げさな……散歩くらい、一人でできますよ」

(;^ω^)「そうじゃなくて……」

/ ,' 3「大丈夫です。それよりも、私はショボン大将をお探ししているのですが……」

( ^ω^)「あ、ショボン大将ならさっき向こうに行きましたお」

/ ,' 3「そうですか、ありがとうございます」

( ^ω^)「あっ……アラマキ皇帝、ちょっとだけお話を……よろしいですかお?」

/ ,' 3「はい、よろしいですよ」

 柔和な笑みを浮かべていた。
 気持ちを暖かくさせられるような笑顔だ。
 言葉が、自然に出てくる。臆することなく。

( ^ω^)「後継の話について……お聞きしたいんですお」

/ ,' 3「……なるほど、そうきましたか」

 笑った。
 含みがあるようには見えなかった。
64 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:55:17.87 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
/ ,' 3「皆が聞きにくいことなのに、ストレートですね」

(;^ω^)「す、すみませんお」

/ ,' 3「いえ、そのほうがこちらも話しやすいのですよ」

 アラマキ皇帝が少しだけ背筋を伸ばした。
 視線が合う。引き込まれるような瞳が、目の前にあった。

/ ,' 3「まず、私は現時点でどちらを後継とするか、というのは決めておりません。五分です。
   ですが、どちらも素晴らしい武将であり、皇帝たる資質を備えていると思っております。
   嬉しい悩みと言うのは少し違うかも知れませんが」

( ^ω^)「……決め手は、何になりそうですかお?」

/ ,' 3「……難しいですねぇ……人間性や思想など、様々な面を勘案するつもりですが……。
   やはり、最後は戦績になるかと思います。それくらいしか、お二人には差がありませんので」

( ^ω^)「ラウンジ戦の調子が良ければジョルジュ大将、オオカミ戦が好調ならショボン大将、ということに……」

/ ,' 3「もちろん、私が元気なうちにヴィップの統一が果たされるのが一番です」

(;^ω^)「も、もちろんですお! みんなそのために頑張ってますお!」

 礼を失した発言にようやく気付いた。
 目の前にいる人の死後の話など、本来するべきではない。
 体中に汗を感じた。どう繕っていいのか分からない。

 慌てふためく自分の姿を見て、アラマキ皇帝はまた柔らかに笑った。
67 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 22:59:40.67 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
/ ,' 3「皆さんがとても頑張って下さっているのは、私が一番分かっています。
   特に最近のオオカミ戦は連戦連勝で、嬉しい限りですよ。
   入軍して一年ほどのブーン中尉が頑張ってくださったおかげですね」

(;^ω^)「とんでもないですお! まだまだ未熟な部分ばかりで……」

/ ,' 3「ですが、高い次元にいます。だから私は楽しみなのです。
   ショボン大将と同じように、あと八年を経たあと、どうなっているのか。
   期待しておりますよ、ブーン中尉」

(*^ω^)「頑張りますお!」

/ ,' 3「それと……最後に一つだけ」

 優しい瞳が、一瞬だけ外に向いた。
 外光が地を照らし、穏やかな風が吹く窓の外に。

/ ,' 3「二人の大将は素晴らしい武将、というのは先ほど申し上げましたが……不安がないわけではないのです。
   ジョルジュ大将は唯我独尊、他を寄せ付けぬ存在であり、兵卒からは疎遠に見えるでしょう。
   逆に、ショボン大将は――――人を信じすぎるところがあります」

(;^ω^)「…………」

/ ,' 3「他者を信頼し、力を引き出す。そういった方針です。美徳でもあり、不安要素でもあるのです。
   ショボン大将なら、持ち前の機転で何とかして下さるとは思っておりますが……」

( ^ω^)「……きっと大丈夫ですお、下につく者が支えれば」

/ ,' 3「そうですね。とにかく、私は皆さんの頑張りを影から支えるのみです。
   では、失礼致します」
73 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 23:03:23.61 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
 深く深く頭を下げ、アラマキ皇帝の背を見送った。
 そのとき、頭には大将室の引き出しのことが去来していたが、すぐに振り払って自分もその場を去った。



――翌日――

――ヴィップ城下町・国立公園――

 暑い日だった。
 ちょうど、自分が入軍テストを受けたときと同じように。

( ^ω^)「これから試験の説明をしますお」

 さすがに八千人もいると、全てに声は行き届かない。
 時間を分けて、二千人ずつ試験することにした。
 一日中かかるが、兵が多く入ってくるというのは嬉しいものだ。

 アルファベットAを握ることができれば合格、できなければ不合格。
 握れないというのは、アルファベットを握れる力がなく、アルファベットが発熱するためだ、と伝えた。
 自分のときは何の説明もなかったが、事前に説明したほうが混乱を招きにくいだろう。

 試験が始まった。
 さすがにAで不合格になるのは稀だ。普通なら触れられる。
 齢が十八を超えていれば尚更だ。

 正午を超え、他の兵に試験官を変わってもらい、昼食を取った。
 しばらく休憩してから再び試験官となり、テストを見守る。
 何度か交替を繰り返して、夜になって、ようやく残り百人になった。
79 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 23:07:06.89 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
(;^ω^)(さすがに疲れてきたお……)

 今回、特に目についた受験者はいなかった。
 滅多にいないことは分かっているが、期待していた。Aのみならず、それ以上も触れられるような存在を。
 そのためにBとCを一応持ってきているのだが、触れさせてみたいと思えるような受験者がいない。

( ^ω^)(見る目があるとは思わないお……でも、上位アルファベットを使えるようになるような人は、雰囲気が違うんだお……)

 特に、ショボン、ジョルジュ、モララー。
 そのあたりの人たちは、他とは違う雰囲気を醸し出している。
 それは単純に位が高いというだけではない。

 簡単に言うならば、アルファベットを持つときの手が違う。
 握る、という感じではない。貼りつく、という感じなのだ。
 アルファベットに引き寄せられるように。アルファベットが引き寄せられるように。

 多くの受験者を見てきたが、今のところそういった触れ方をしたやつはいなかった。

( ^ω^)(……ん?)

 受験番号8012。
 最後から、四番目の受験者。

 始め、と言うと、真っ先にアルファベットに触れた。
 まるで、そのアルファベットが自分のものであるかのように。
 最初から、触れられることが分かっているかのように。

( ^ω^)(これは……)

 試験を終えて、立ち去ろうとしたその男を呼び止めた。
87 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 23:10:48.20 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
 不思議な眼をした青年が、首だけをこちらに向ける。
 不気味なようで、引きこまれそうな魅力を持っているようにも感じる。

( ^ω^)「君の名前は、なんていうんだお?」

( <●><●>)「ベルベット=ワカッテマス」

( ^ω^)「……期待してるお」

 BかCに触れさせてみたかったが、ベルベットはすぐに立ち去った。

 ショボンやモララーのようだ、とは言わない。
 しかし、明らかに他の受験者とは一線を画していた。

 多くの受験者がいたが、不合格者はなし。
 八千を超える兵が新たに入軍することになる。

 いずれまた、戦になる。
 そのときまでに、新兵は徹底的に鍛え上げなければならない。

 ヴィップの覇道を成し遂げるために。
99 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 23:14:18.48 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
――516年・春――

――ラウンジ国領・トナグラ城――

( ’ t ’ )(六万か……ヴィップとの戦に負けて一年足らずだが、この数を出してくるとは……さすがにオオカミか)

( ̄⊥ ̄)「カルリナ中尉、編成の伝達は完了致しました」

( ’ t ’ )「ありがとう、ファルロ少尉」

 トナグラ城の城塔から景色を眺めていたが、すぐにその場を離れた。
 海が遠景に見えるわけでもなく、広大な原野が広がっているわけでもない。
 あまり景色としては冴えない場所だ。

 西にあるオオカミ領のアリア城からは、壮大な海がすぐそばに広がっているという。
 どれだけ眼を凝らしても、海しか見えない。そんな風景だ。
 一度見てみたいと思っていた。

 アリア城は昔、ラウンジの支配下にあったが、オオカミとの戦に敗れて失っている。
 もう十六年も前の話だ。

 今回の戦では、前線指揮官に任ぜられた。
 まだ中尉の自分には重い役目だ。しかし、嬉しさのほうが大きい。
 重大な任務をこなせばこなすほど、力は上がっていくだろう。

( ’ t ’ )「ヴァイアラス城からの兵站は問題なさそうか?」

( ̄⊥ ̄)「今のところ、何もありません」
115 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 23:21:49.03 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
 今のところ、という話を聞いたわけではなかった。
 今後なにか問題が起きそうか、という点について考えてほしかったのだ。

 ファルロは物事に対して、頭が回りきらないときがある。
 深く見れず、自分が納得したらそこで終わってしまうのだ。
 あまり人のことを言える立場ではないが、仲間の欠点は指摘しあって成長していきたかった。

( ’ t ’ )「小さな穴もオオカミは突いてくる。何か問題が起きそうな部分はないか、徹底的に調べてくれ」

( ̄⊥ ̄)「はい」

 分かっているのかいないのか、いつもと同じ調子で言葉を返してきた。
 あの父親とは、似ても似つかないと思うこともあった。

 ベルが死んでから、一年が経とうとしていた。
 あまりに偉大な存在であり、ラウンジになくてはならない大将だった。
 しかし、病に侵され地に伏した。

 死の直前、ヴィップの二大将を討ち取る策を考え、実行した。
 結果的にどちらも失敗したが、あの状況で追い詰めるなど並はずれた力だ。
 他の誰にも真似できない。ベルだからこそできたことだ。

 最後はショボン=ルージアルと戦い、倒れた。
 国葬が行われ、国民みなが涙を流し、ベルに別れを告げた。

 入軍して間もないころから、ベルには目をかけてもらった。
 将校になってからは自ら従者としての働きを申し出た。少しでも多くを得るためだ。
 やがてベルは、自分のすべてを叩きこむ、とまで言ってくれた。
108 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 23:17:46.67 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
 厳しく当たられることばかりだったが、お前はラウンジを担う柱になれ、と言われ発奮した。
 アルファベットについてはもちろん、軍略、民政までも教え込まれた。
 毎日毎日、必死で勉強した。ベルを支えるために、ラウンジの天下のために。

 そして、ベルはいなくなった。
 最初は、どうしていいか分からなかった。目標が忽然といなくなってしまったのだ。
 ラウンジのため、ラウンジのため。そう思いつづけたが、ベルがいないと、何を目指していいのか分からなかった。

 そんなとき、クラウン=ジェスター国王に直接呼ばれ、話をされた。
 内容は簡潔で、ベルを超えろという、ただそれだけのものだった。
 そのためには、ラウンジの天下統一を果たすことだ。それを成し遂げれば、ベルを超えたことになる。

 国王の言葉でやっと、心に闘志が湧き上がった。
 以前と同じように。いや、それ以上に努力を重ねられた。
 アルタイムも信頼を置いてくれている。だから今回は、対オオカミで重要なポストを与えてくれた。

( ’ t ’ )(いずれ僕が、ラウンジを天下に導くんだ)

 ずっとそう言い聞かせてきた。
 祖国のために、国王のために、ベルのために。
 果たさなければならない。成さなければならない。

( ̄⊥ ̄)「今回の戦は、確実性が鍵になりそうですね」

( ’ t ’ )「……あぁ、そうだな」

 突然話しかけてきたので、驚いた。
 相変わらず茫洋とした人柄だ。父親にはあまり似ていない。
 母親も気立ての荒い人だったと聞くが、両方の血が上手く調和されたということなのだろうか。
135 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 23:30:57.54 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
( ’ t ’ )「ミルナがいないのは、いかにも大きい」

 オオカミの大将、ミルナ=クォッチが倒れたのは、今年が始まったばかりの頃だった。
 心労と過労が祟ったことによるものらしい。命には別状ないということだった。
 だが、今回の戦には参加していない。まだ体調が思わしくないのだろう。

 四中将が出陣してきているが、ミルナという頭を欠いている以上、決して手強い相手ではない。
 油断は禁物だが、確実にミスなく戦っていけば、今のオオカミはそれほど怖い敵ではなかった。

( ̄⊥ ̄)「必ずや、勝利しましょう」

 ファルロがアルファベットを掲げた。
 入軍して二年と少しだが、既にKを操っている。
 ファルロより三年早く軍に入った自分でもまだLだ。アルファベットの才は父親譲りだった。

 ファルロが立ち去り、一人になって、また少し景色を眺望した。
 東には町並み。ここからでも活気に満ちているのが分かる。
 この民たちの暮らしを守り、心に平穏をもたらすのが、国軍兵士の役目だ。
119 : 美容師(三重県):2007/04/29(日) 23:25:48.67 ID:MKUbJ5sr0 ?2BP(0)
( ’ t ’ )(見ていてください、ベル大将)

 必ず、ラウンジの天下を成し遂げてみせます。
 志半ばで倒れたあなたのためにも。

 あなたの意志を継ぐ者と、あなたの血を継ぐ者で。

















 第32話 終わり

     〜to be continued

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