- 333 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:14:35.85 ID:FU/F07f00
- ★登場人物
〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
19歳 中尉
使用可能アルファベット:J
現在地:ヴィップ城
●('A`) ドクオ=オルルッド
19歳 少尉
使用可能アルファベット:G
現在地:ヴィップ城
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
29歳 大将
使用可能アルファベット:U
現在地:ヴィップ城
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
24歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:エヴァ城
●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
27歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
- 344 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:17:13.86 ID:FU/F07f00
- ●( ^Д^) プギャー=アリスト
25歳 大尉
使用可能アルファベット:M
現在地:シャッフル城
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
22歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
28歳 中尉
使用可能アルファベット:P
現在地:エヴァ城
●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
44歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:パニポニ城
●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
26歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城
- 350 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:18:33.12 ID:FU/F07f00
- 〜西塔の兵〜
●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
34歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ヴィップ城
●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
35歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城
●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
38歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ヴィップ城
●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
31歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
- 352 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:19:53.33 ID:FU/F07f00
- ★階級表
〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ
大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:ブーン/ビロード/イヨウ
少尉:ドクオ/フィレンクト
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ
大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:
(佐官級は存在しません
- 354 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:21:06.57 ID:FU/F07f00
- ★使用アルファベット一覧
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:ドクオ
H:
I:フィレンクト
J:ブーン
K:
L:
M:プギャー
N:ヒッキー
O:
P:イヨウ
Q:モナー
R:モララー
S:ジョルジュ/アルタイム(ラウンジ)
T:ミルナ(オオカミ)
U:ショボン
V:
W:
X:
Y:
Z:
- 359 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:22:25.75 ID:FU/F07f00
- ★この世界の単位
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml
(現実で現在使われているものとは異なります)
- 367 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:24:33.53 ID:FU/F07f00
- 【第31話 : Excess】
――オオカミ城――
――大将室――
戦後処理に忙殺された。
それが勝利ではなく敗北だったから、仕事に苛立ちを感じたのだろう。
( ゚д゚)(……こんなもの、文官で処理しろよ……俺にまで回すな……)
自室でアルファベット補充についての具申書に目を通していた。
足りなくなったアルファベットは、補充する。当たり前だ。いちいち大将に聞くことではない。
早くしろ、と殴り書きでサイン欄に記し、書類を箱に入れた。
( ゚д゚)(文官まで無能ばかりか、オオカミは……)
自然と笑みがこぼれた。
自嘲的だった。
シャッフル城を、失った。
最初から最後までヴィップのペースで戦が展開され、大敗するという無惨なものだった。
向こう一年の無給を、自分と四中将に科した。
降格はデメリットが多い。他の将や兵に納得してもらう処罰は、これくらいしか思いつかなかった。
- 377 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:27:34.03 ID:FU/F07f00
- 昨年の冬、そして今年の春。
わずか半年ほどの間に、立て続けに二つの城を失った。
エヴァ城は奪還された形だが、シャッフル城はずっと守り抜いてきた城だったのだ。
国内の衝撃もさすがに大きかった。
失った兵は一万に及ぶ。
あまりに手痛い損害だ。馬やアルファベットも多く失った。
兵糧もかなり苦しい。秋までは大人しくしているほかない。
来年には間違いなくラウンジと戦になる。
北のトナグラ城に兵糧が運び込まれているという情報があり、俄かに不穏さを増している。
こちらもアリア城に兵糧を少しずつ蓄えさせているが、あまりに量は少ない。
アリア城は500年にラウンジと戦って奪った城だった。
あのとき、自分はまだ成人したばかりだった。既に少尉だったが、かなり未熟だったと今にすれば思う。
当時、オオカミの大将はアテナット=クインスだった。大将としては、それなりの力があったと記憶している。
しかし、もし今の自分がその当時いたとすれば、大将だったのは恐らく自分だろう。
ベル=リミナリー相手に互角に渡り合い、野戦では光に集る虫のように複数で突く攻めを見せ、勝利した。
完全にベルを上回ったと言えるのは、あれ一度きりだ。
事実、507年には報復と言えるフェイト城攻めを受け、敗北している。
( ゚д゚)(……無能は、俺のほうか……)
大将になったのは、506年のことだ。
アテナットが病死し、他に適役が居らず、まだ若かった自分が抜擢された。
就任してすぐに起きたフェイト城戦ではベルの猛攻を防ぎきれず、敗戦を喫している。
512年にはヴィップのエヴァ城を奪ったが、わずか二年で奪い返された。
そして翌春にはシャッフル城を失い、国土は目に見えて減っている状態だった。
- 382 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:30:23.82 ID:FU/F07f00
- 今のオオカミは、もはやラウンジに次ぐ存在ではないだろう。
将がいない。兵も多くない。兵糧も満足いく量ではない。
ヴィップに、それも東塔だけに劣っていると言われても、仕方がない状況だ。
今回のシャッフル城戦は、北のラウンジの動きさえなければ、八万を投入する予定だった。
いまさら何を言っても虚しいが、八万の兵がいたならばヴィップには勝っていただろう。
だが、隙あらばアリア城を奪おうとするラウンジのことを考えると、五万が限界だった。
全ての責任は、結局のところ大将に行き着く。
それは当然だった。大将を務めるにあたって、覚悟していたことではあったのだ。
しかし、配下がもう少しまともなら、と悔やまざるをえなかった。
配下の将を上手く育てられていないのも、やはり大将の責任だ。
分かってはいるが、難しい。どうすれば有能な将が育つのか、ショボンに聞きたいくらいだった。
( ゚д゚)(……俺が頑張るしかないんだ)
大将に就任してから、それはずっと思っていることだった。
だが、信頼できる部下が、せめて一人いれば。
そういった武将を、一人育てられていれば。
この国はもっと違った顔を見せていただろう。
四中将がそうであってくれれば一番だった。
それぞれに足りない部分を、それぞれが補う。
そんな関係であってくれれば、シャッフル城も失わずに済んだだろう。
( ゚д゚)(……疑うしか、ないのか……?)
- 387 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:33:19.26 ID:FU/F07f00
- リレントが、単独で属城を攻めた。
無論、自分は知っていた。しかし、他の三人の中将には知らせなかった。
結果的に属城攻めは失敗したが、ヴィップは事前に情報を得てはいないようだった。
プリムラ砦から兵糧を輸送するときは、ヴィップにすべて発覚していた。
しかし、今回は隠し通せていた。
リレント、フィル、ガシュー、ドラル。
状況から考えれば怪しいのはガシューとドラルだが、フィルやリレントもカムフラージュに出た可能性がある。
特定はできそうもない。
監視をつけるような真似をしても、大して意味はなさそうだ。
中将ともなれば常に周りからの視線がある。それを掻い潜って、情報を漏らしているのだ。
監視の対策などとうにしているに違いなかった。
( ゚д゚)(……それでも、やるだけはやってみたほうがいいのか……)
もし本当に、四中将の中に裏切り者がいるとすれば。
国軍は甚大な損害を被ることとなる。
しかし、それは、ヴィップも同じか。
そう思うと、また笑みがこぼれた。
手紙を懐から取り出して、机に置いた。
お前さえ帰ってくれば、何も問題はない。四中将など気にする必要はなくなる。
お互い辛い状況だが、頑張ろう。オオカミの天下のために。
心の中で語りかけて、再び懐に収めた。
- 399 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:36:20.84 ID:FU/F07f00
- ( ゚д゚)(お前だけが頼りなんだ、ジョルジュ)
懐かしき親友の顔を思い浮かべながら、再び執務に戻った。
――ヴィップ城――
東塔の兵は今日、何もするなと言われた。
無論、ショボンからだ。ゆっくり体を休めろ、ということらしい。
昨日は祝宴で散々飲み食いして、騒いで、楽しんだ。
疲れているのはそのせいかも知れない、と思った。
朝の光が強くなってきた頃に起きて、ふらふらと城内を散歩していた。
( ^ω^)(いい天気だお)
城外では西塔の兵が調練を行っているが、それすら長閑なものに思える。
平時はやはり、心が休まっているのだ、と実感する。
廊下ですれ違う兵に頭を下げられる。
多くは自分より年配の兵だ。
将校になったばかりの頃は見下した態度を取られたりしたが、今はそれもほとんどない。
( ^ω^)(やっぱり、アルファベットのおかげかお?)
アルファベットJは将校らしい威厳が込められている、と思っていた。
さすがにJ以上を扱っている兵は少ない。尊敬の眼差しを送られることもある。
入軍してまだ一年も経っていないのだから、尚更かも知れない。
- 414 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:39:58.52 ID:FU/F07f00
- ( ^ω^)(この調子でどんどん上に行きたいお)
また今度、ツンの許へ行こうと思っていた。
Kはまだ無理かも知れないが、試してみたいという気持ちはある。
本音を言えば、何か理由付けしてでもツンに会いたい、というのが率直なところだった。
アルファベット職人でありながら、見目の美しさも抜群。
端麗な容姿や均整のとれた体つき、どれを取っても素晴らしかった。
一度、プギャーが部屋にため込んでいる女を見せてもらったことがあるが、どれもツンには敵わないと思ったものだ。
( ^ω^)(……そういえば……)
前にプギャーから、ジョルジュがツンの小屋を頻繁に訪っているという話を聞いた。
いったい、理由はなんだろうか。今も続いているのだろうか。
今度行ったときに、確かめてみよう、と決めた。
一通り回って、将校の部屋が並ぶ五階に戻ってきた。
さすがに静かなものだ。東塔の将は休養日のため、尚更だろう。
( ^ω^)(部屋で本でも読むかお)
そう思って、自室に戻ろうとしたときだった。
( ^ω^)(……お?)
誰かが、遠くの部屋から顔を覗かせた。
将校ではない。女だ。
見たことがない顔だった。
- 430 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:42:56.18 ID:FU/F07f00
- (*゚ー゚)「…………」
可愛い、という言葉がまず浮かんだ。
幼い顔立ちだが、豊麗な美しさを持っている。
楚々とした表情には暫し呆然としてしまったほどだ。
(ー゚*≡*゚ー) キョロキョロ
扉|彡 サッ
(;^ω^)(……?)
辺りを窺ったあと、部屋の中に入って行った。
あそこは、ギコが使っている部屋のはずだ。
( ^ω^)(……あ、分かったお)
恐らく、ギコの嫁だろう。
以前、一度話してくれたことがある。給仕をやっていたという娘だ。
美しいと評判だったと言っていた。その言葉に違わぬ、といったところだろう。
( ^ω^)(……ん?)
部屋から、声が聞こえた。
可愛らしい声。さっきの女だろう。
- 443 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:45:51.92 ID:FU/F07f00
- 素早く部屋の前まで移動してみた。
(;^ω^)(……お、部屋の扉が薄ら開いてるお)
中に、ギコとさっきの女がいた。
(*゚ー゚)「誰もいなかったよー♪」
(,,゚Д゚)「そ、そうか……」
(*゚ー゚)「じゃあ、いいよね? 早くしよーよ♪」
(,,;゚Д゚)「し、仕方ねぇなぁ……」
これは、見ているのはまずいかも知れない。
そう思ったが、足は全く動こうとしなかった。
(*゚ー゚)「じゃあ、ギコくんからね! どーぞー!」
ギコが顔を真っ赤にした。
何が始まるのか。思わず高揚してしまっている。
鼓動の高鳴りがはっきり耳に響く。
そして、ギコの口から放たれる言葉。
- 456 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:48:57.46 ID:FU/F07f00
(,,゚Д゚)「世の中!狂ってんだよ!狂ってんだよ!」
(*゚ー゚)「店長!それ以上やったら死んじゃう!」
(,,゚Д゚)「ガッシ!ボカ!」
( ω ) ゚ ゚
- 477 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:51:38.40 ID:FU/F07f00
- (*゚ー゚)「キャー、やめて!」
(,,゚Д゚)「あっ……はい」
いったい、これは、何なのだろうか。
ただ茫然とその光景を眺めていた自分に、ギコの視線が向いた。
(,,;゚Д゚)「ブ、ブーン!?」
(*゚ー゚)「お客さん?」
((((,,;゚Д゚)))「お、お、おま、おまえ……な、なな……」
(;゚ω゚)「…………」
体を震わせるギコ。
どうすることもできずに立ち尽くす自分。
とにかく入れ、と言われ、室内に足を入れた。
- 495 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:54:47.49 ID:FU/F07f00
- ――ギコの部屋――
(,,#;゚Д゚)「絶対誰にも言うんじゃねぇぞゴルァ……」
(;^ω^)「も、もちろんですお……」
(,,;゚Д゚)「ああぁー……まさか、見られちまうとは……」
ギコが両手で頭を抱え込んだ。
見てはいけないものを見てしまったらしく、何だかばつが悪い。
ギコにも申し訳なかった。
(;^ω^)「本当にすみませんお……部屋の扉が空いてたので、つい……」
(,,;゚Д゚)「まぁ、ちゃんと閉めなかったこっちが悪いんだ……気にしないでくれ……」
(;^ω^)「でも、あの……いったい、何をしてたんですかお……?」
質問していいのか、分からなかった。
ギコに不快そうな顔をされるかも知れない。不安ではあった。
しかし、ギコは息を吐いて語りだしてくれた。
(,,゚Д゚)「可愛いだろ、俺の嫁」
( ^ω^)「凄く可愛いですお」
(,,゚Д゚)「だろだろ? みんなそう言うよ」
(*^ω^)「あれだけ可愛かったら当然ですお」
- 505 : ニート(三重県):2007/04/21(土) 23:57:59.96 ID:FU/F07f00
- (,,゚Д゚)「そうなんだ。給仕をやってた頃から、みんな可愛いって言ってた。
でも、誰も娶ろうとしなかったんだ。何故か分かるか?」
話に、重みが出てきた。
ギコの言葉も、自然とトーンダウンしている。
( ^ω^)「みんな、結婚を拒否された……とか……」
(,,゚Д゚)「違うんだ。俺の嫁は、しぃは……先天性の脳障害を持ってたんだ」
しぃの、無邪気な笑顔が頭を過った。
(,,゚Д゚)「そのせいで親に捨てられて、孤児になってたらしくてな……。
孤児院でみんなの飯を作ってるうちに、料理だけは抜群に上手くなった。
だから孤児院の院長の推薦で、給仕として城で働いてたんだ」
しぃはこの場にいない。
自分が入ったと同時に、奥へと消えてしまった。
ギコ以外に、心を許していないということなのだろうか。
(*゚ー゚)「お客さん! お茶どーぞ!」
予想は、全く見当違いだった。
しぃはやはり無邪気な笑顔を振りまいている。
(;^ω^)「わざわざすみませんお」
(*゚ー゚)「なんか食べるー?」
- 517 : 留学生(三重県):2007/04/22(日) 00:00:59.92 ID:dR8Zm1vo0
- (,,゚Д゚)「もうすぐ昼飯どきか。作ってきてくれ、しぃ」
(*゚ー゚)「うん!」
またすぐに奥へと走り去って行った。
それを見届けてから、ギコが再び口を開く。
(,,゚Д゚)「仕事中は、無口な娘だった。何も喋らないほうがいいって言われてたみたいだ。
でもやがて、障害を持ってることがみんなに広まって……。
しぃを狙ってた男はみんな諦めたよ。バカばっかりだった」
湯呑を傾けるギコ。
国軍随一の容姿を持った男は、それさえも様になっている。
(,,゚Д゚)「俺は、それを知る前からしぃに接してた。飯を渡してくれるときに見せる笑顔が、可愛くてな……。
それを知ってからも、俺の気持ちは全く変わらなかった。どうしようもないくらい、愛していたから」
( ^ω^)「……素敵ですお」
(,,゚Д゚)「いや、当たり前のことなんだ。俺はしぃという女を好きになったんだから。
障害って言ったって、幼児みたいな言動を取るだけだ。生活にはほとんど問題ない。
まぁ、さっきみたいな"Deep Loveごっこ"をさせられるのはちょっと恥ずかしいが……」
(;^ω^)「そういうことだったんですかお……」
(,,゚Д゚)「すぐ拗ねるもんでな……それに、寂しがり屋だ。
侍女曰く、戦で城にいないときは毎晩泣いてるらしい」
- 529 : 留学生(三重県):2007/04/22(日) 00:04:13.52 ID:dR8Zm1vo0
- ( ^ω^)「でも、それが嬉しいんですかお?」
(,,*゚Д゚)「ま、まぁな」
部屋の奥から、香ばしい匂いが漂ってきた。
恐らく、肉を焼いているのだろう。音も微かに聞こえる。
(,,゚Д゚)「いやしかし、嬉しく思ってばかりもいられん……結婚するときに、必ず幸せにすると誓ったからな。
とはいえ、戦で城を空けるのは仕方ないことだ……二人で平和に暮らすために、戦は続けなきゃならんし……」
( ^ω^)「難しいところですお……」
(,,゚Д゚)「ある程度は、納得してくれている。絶対に寂しいとは言わんしな。
だが、あいつの本音はすぐに分かる……だからせめて、城にいる間はあいつのわがままを全部聞いてやるんだ。
それくらいしかできない。いずれ平和を手に入れて、落ち着いた生活を送れるようになるまではな」
この人は、外面だけではない。
内面まで、男らしさを持っている。
万能武将、ギコ=ロワードは、人間性も魅力的だった。
(*゚ー゚)「ご飯できたー!!」
嬉々として駆けてくる、しぃ。
ギコは自然と笑顔になっているようだった。
- 535 : 留学生(三重県):2007/04/22(日) 00:07:32.69 ID:dR8Zm1vo0
- (,,゚Д゚)「食ってけよ、旨いぞ」
(*^ω^)「いただきますお!」
(*゚ー゚)「三人でご飯だー!」
楽しく食卓を囲んだ。
こんな光景が、当たり前にある平和。
誰もが待ち望み、掴もうとしているもの。
祖国ヴィップの天下のために、これからも精進しなければならない。
ひとときの幸せを噛み締めている二人を見て、ブーンはそう思った。
――ヴィップ城――
――西塔・最上階――
陽は高く昇っている。
部屋に射し込む光も幅を狭くしていた。
軽く昼食を取りながら、書類に目を通していた。
ショボンから送られてきた、戦勝報告だ。
( ゚∀゚)(勝ちやがったか……)
- 551 : 留学生(三重県):2007/04/22(日) 00:11:10.71 ID:dR8Zm1vo0
- 書類を机に投げた。
淡々と事実のみを記した報告書。苛立ちを募らされる。
その裏に、勝ち誇ったあいつの顔が浮かぶようだった。
エヴァ城を奪還し、シャッフル城を奪取した。
わずか半年ほどで二城。破竹の勢いだった。
( ゚∀゚)(……やはり、野放しにはしておけんな……)
あいつの思い通りにさせるわけにはいかない。
阻害する必要がある。
ショボン自身を、どうにかする。
それができれば最善だが、不可能だろう。
今の状況では危険でもあった。
( ゚∀゚)(……あいつだ……あいつを消せば……)
東塔の快進撃を、支えている存在がいる。
ブーン=トロッソ。まだ入軍して一年も経っていないが、既に中尉として活躍。
アルファベットも常人離れしたペースで上に昇っていた。
ショボンが格別に目をかけている男だ。
事実、ブーンはすぐ将校に上がっている。ショボンが無理やり理由づけて昇格させたからだ。
ブーンをこのまま成長させると、"国"が危険なことになるかも知れない、という思いが拭えなかった。
- 568 : 留学生(三重県):2007/04/22(日) 00:14:57.31 ID:dR8Zm1vo0
- ラウンジ戦に伴ったときに、殺そうと思った。
しかし、それは上手くいかず生き延びている。ヒッキーの助けもあったようだ。
殺すとしたら、今だ。
今後は難しい。厳しくなる。
今が瀬戸際だ。
( ゚∀゚)(そうだ……暗殺だ)
無論、自分の手によってではない。
ミルナ=クォッチ。オオカミの大将。あいつなら。
( ゚∀゚)(ミルナに連絡を取って、暗殺させる……やるなら、今しかないな……)
しばらく思考を続けた。
陽が落ちかけ、色を変え、部屋の中を朱色に染めた。
夕風が窓を叩き、閑寂な室内の静けさを打ち消し、やがて静寂は蘇る。
月灯りにのみ部屋が照らされた。
ほのかに青白い光。机の上を、暗さの中の明るさが支配している。
- 579 : 留学生(三重県):2007/04/22(日) 00:17:47.63 ID:dR8Zm1vo0
- ひとつ、ふたつと、大きく息を吐き出した。
報告書の余白部分を破り取り、転がっていた筆を右手で握って、ゆっくりと文字を書き始めた。
第31話 終わり
〜to be continued
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