3 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:17:41.28 ID:mL3atVJR0
★登場人物

〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
19歳 中尉
使用可能アルファベット:J
現在地:シャッフル城周辺

●('A`) ドクオ=オルルッド
19歳 シャッフル城戦・ブーン中尉配下部隊長
使用可能アルファベット:G
現在地:シア城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
29歳 大将
使用可能アルファベット:U
現在地:シャッフル城周辺

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
24歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:シャッフル城周辺

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
27歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:シャッフル城周辺
6 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:19:55.01 ID:mL3atVJR0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
25歳 大尉
使用可能アルファベット:M
現在地:シャッフル城周辺

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
22歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:エヴァ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
28歳 少尉
使用可能アルファベット:P
現在地:シャッフル城周辺

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
44歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:シャッフル城周辺

●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
26歳 シャッフル城戦・ブーン中尉配下部隊長
使用可能アルファベット:I
現在地:リン城
11 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:22:23.13 ID:mL3atVJR0
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
34歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ヴィップ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
35歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
38歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ヴィップ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
31歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
15 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:24:05.62 ID:mL3atVJR0
〜オオカミの兵〜

●( ゚д゚) ミルナ=クォッチ
35歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:シャッフル城周辺

●《 ´_‥`》 ドラル=オクボーン
33歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:シャッフル城周辺

●| `゚ -゚| フィル=ブラウニー
30歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:シャッフル城周辺

●(ゝ○_○) リレント=ターフル
29歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:シア城周辺

●〔´_y`〕 ガシュー=ハンクトピア
34歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:シャッフル城周辺
17 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:25:54.29 ID:mL3atVJR0
★階級表

〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:ブーン
少尉:ビロード/イヨウ


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
19 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:27:37.08 ID:mL3atVJR0
★使用アルファベット一覧

A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:ドクオ
H:
I:フィレンクト
J:ブーン
K:
L:
M:プギャー
N:ヒッキー
O:
P:イヨウ
Q:モナー
R:モララー
S:ジョルジュ/アルタイム(ラウンジ)
T:ミルナ(オオカミ)
U:ショボン
V:
W:
X:
Y:
Z:
23 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:29:34.67 ID:mL3atVJR0
★この世界の単位

一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)
 
 
30 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:31:26.31 ID:mL3atVJR0
【第30話 : Rush】


――シャッフル城周辺(シャッフル城まで五里)――

 情報が錯綜していた。
 はっきりと情勢が掴めないでいる。

(;^ω^)「属城はまだ無事なんですかお!?」

(伝;・_・)「今は持ち堪えているようですが、時間の問題かと……」

 率いている三千のG隊はいったん下げた。敵とは半里ほどの距離を取っている。
 偃月の中央はまだ敵と当たっているが、徐々に後退を始めていた。

 次の伝令は、モララーとシラネーヨが属城の救援に向かった、という内容だった。
 モララーはI隊騎兵三千、シラネーヨはG隊騎兵三千を率いている。
 一刻でも早く救援に向かうべきときに歩兵隊は使っていられない、ということだろう。

 しかし、騎兵隊を二つ欠くということは、こちらの戦況が一気に苦しくなるということだ。

(;^ω^)「うっ……」

 敵が素早く陣を立て直していく。
 守りに適した方円や鶴翼ではない。魚鱗だ。完全に攻めの体勢だった。

 城外に布陣していたオオカミ軍は、四万。
 しかしオオカミの全軍は五万だった。残りの一万は城に残してあるのだろう、と誰もが思った。
 だが、ミルナはシャッフル城を空にしてまで属城を奪る作戦に出た。
38 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:34:26.85 ID:mL3atVJR0
 守勢ではなかった。
 オオカミは、完全な攻勢に出ていたのだ。

 こちらが本陣への攻めに躍起になっている間に、リレントが属城めがけて進軍する。
 そして属城を落としたあとは挟撃する算段だろう。
 大軍なのはオオカミ側だ。ヴィップの倍近い兵を擁している。挟撃されればひとたまりもない。

 敵軍が迫ってきた。
 距離が詰まる。敵軍は恐らく、三千ほど減っているはずだ。
 だがこちらも一千は失っている。概算で、三万七千と一万八千の戦いだ。
 兵力は半分以下。かなり苦しい戦いになる。

 陣形の中央から、鉦が打ち鳴らされた。
 ニ回鳴り、間を置いて三回。
 これは、後退を意味する鳴らし方だ。

 まともにぶつかれば敗戦は必至。
 ショボンは体勢が整うまで、少しでも時間を稼ぐつもりだろう。
 属城を襲っているリレント軍を潰走させればモララーとシラネーヨが戻ってくる。
 それまでの我慢だ。

 だが、迫り来る敵軍の攻撃を、防ぎきれるか。
 最大の難関は、そこにあった。
42 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:37:33.65 ID:mL3atVJR0
――二刻前――

――シア城――

 シア城に迫るオオカミ軍。
 間違いなく、一万に達している。

(;'A`)(くそっ……)

 圧倒的な大軍だった。
 シア城を守っている兵はわずかに二千。
 どうあがいても、立ち向かえる数ではない。

 これほどの大軍に攻め寄せられるのは、完全に想定外だった。
 せいぜい数千の別動隊が動くくらいならありえると思っていた。ショボンも実際、そう言っていた。
 その場合は打ち破る策も考えていたのだ。しかし、一万を相手にしたときの策は全く想定していない。

(;'A`)(くそっ……もう三里もねぇ……!)

 砂塵を背後に、一万の大軍が押し寄せてくる。
 本陣へ救援依頼を出すか。いや、駄目だ。本陣の戦いが苦しくなる。
 この二千だけで防ぎきる必要がある。

(;'A`)(……いや、フィレンクトさんのことだ……きっともう本陣に伝令を出してる……)

 リン城とは距離があるが、間に数人の兵を配することによって迅速な伝達を可能にさせていた。
 シア城に向かってくる敵軍を確認すれば、フィレンクトはすぐに伝令を出すだろう。
 それは間違った判断ではないが、最善とも言い切れない部分があった。
44 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:40:44.67 ID:mL3atVJR0
('A`)(迷ってる時間はないぞ……答えを出せ、ドクオ……!)

 自分に言い聞かせた。

 戦には、勝たなければならない。
 度重なる労苦を経て、ようやくここまで辿り着いた戦だ。
 この決戦で負けるようなことがあれば、損害は計り知れない。

 戦に勝つために、何が必要か。

 やはり、本陣からの援軍なしで、一万の敵勢を打ち破ることだ。

('A`)「伝令」

 短く言った。
 すぐに一人の兵卒が駆け寄ってくる。不安と緊張が表情に浮かんでいた。

('A`)「恐らく本陣からの援軍がこっちに向かって来ると思います。その援軍に、すぐ本陣に引き返すよう伝えて下さい。
   こちらには対策があるから大丈夫だ、と。はっきりと強い口調で、お願いします」

 伝令が内容を復唱しかけたが、すぐに行ってくれと途中で遮った。
 時間がないのだ。

 援軍には頼れない。戦全体を考えれば、やはりそうなる。
 自分で決断したことだ。分かっている。しかし、小刻みな震えは止まらない。

 頬を二度叩く。
 一万を追い払う策を、すぐに考え始めた。
 もうオオカミ軍は二里半にまで迫っている。何か仕掛けるなら、今しかない。
48 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:43:55.55 ID:mL3atVJR0
('A`)(……よし、やってみよう)

 ショボンに言い渡されたことがある。
 もし敵に攻められたら、"これ"を使ってみろと。

 本当は三千程度の敵を想定して用意したものだが、やってみるしかない。
 とにかく思いつくことは全て試してみるべきだ、と思った。

('A`)(ただ使うだけじゃダメだ、一万には通用しない……一万にも効果を与えるなら……)

 すぐに下知を下した。
 恐らく、オオカミ軍は城を囲んでくる。それまでに、一度敵を揺さぶっておく必要があるだろう。

(;'A`)(怖いのはみんな一緒だ……指揮官である俺がびびってどうする……!)

 何度も何度も頬を叩いた。
 兵をまとめ、編成をすぐに決めて、駆け出す。

 城から、打って出た。
 G隊一千。一万を目の前に、堂々と陣を構えた。

 敵の進軍が、止まった。
 先頭を駆けているのは一千の騎兵。I隊だ。後ろから九千の歩兵が随従している。
 眼前にしてみると、改めて粟が生じるような恐ろしさが、ひしひしと伝わってくる。

(#'A`)(……やってやる……!)

 打ち破ってやる。
 この一万を、潰走させてやる。
51 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:47:04.57 ID:mL3atVJR0
(#'A`)「いくぞおおおおおおおおおおお!!!!」

 気勢を上げた。

 敵軍の動揺が手に取るように分かった。
 一千の敵が、突っ込んでこようというのだ。何を考えているのか、分からなくて当然だろう。
 一万の敵を、困惑させている。それが何とも滑稽なものに思えた。

 無論、一万の敵に突撃するような真似はしなかった。

(#'A`)「全力で逃げろぉぉぉぉ!!」

 すぐに城に引き返した。

 しばらく呆然とするオオカミ軍。その光景もやはり、滑稽だった。
 しかしすぐに追撃を始めた。憤懣やる方ない、というような勢いだ。
 あっという間に真後ろまで迫られた。

 城門、間近。
 慌てて駆けこんだ。しかし、閉まらぬうちに入り込もうとするオオカミの騎兵。

 思わず、口がにやけた。

(#'A`)「引けぇぇぇぇぇ!!!」

 城門近くの大掛かりな仕掛けに、オオカミの騎馬隊は、気付いたようだった。

 だが、もう遅い。
 馬は、止まりきれない。
54 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:50:17.28 ID:mL3atVJR0
 城壁の上から、縄を引かせた。
 何人もの力で引っ張ると、地面から馬止めの柵が飛び出す。
 先端を尖らせ、槍を備えつけ、攻撃的にしたものだ。

 騎馬隊が無残に崩れていった。
 すかさず城壁からD隊に射させる。
 崩れた状態では、Fを躱すことなど到底できない。

 城門の前に、オオカミ兵と馬が転がっていた。
 半分以上、討ち取ったかも知れない。壊滅的と言える打撃を受けたはずだ。

 だが、オオカミもやられっぱなしではない。
 当然だった。

 城門前の騎馬隊を相手している間に、他の三方を歩兵によって囲まれた。
 いや、囲むだけではない。城壁をよじ登ろうとしてくる。
 オオカミは簡易型の雲梯まで用意していた。シア城の壁が低いことを見越しての判断だろう。

 それこそ、ショボンの用意してくれたものが役立つというものだった。

 城壁に身を潜めさせていた兵に、上から岩や大木を落とさせた。
 雲梯は破壊し、よじ登ろうとした兵は真っ逆さまに落下していく。

 先ほどの伏兵器はモナーが作ってくれたもので、この岩や大木はショボンが用意してくれたものだ。
 量はあまり多くないが、敵が昇り切ろうかという瀬戸際で使えば、無駄遣いせずに持ち堪えられる。

 そして、読みが正しければ、もうすぐ来るはずだった。

('A`)「よし、もう一回打って出るぞ!」
57 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:53:36.42 ID:mL3atVJR0
 今度は、一千九百を使う。
 これで決めてしまいたい。とどめを刺したい。

 城門を開いて飛び出した。
 岩や大木に苦しんでいたオオカミ兵を、攻め立てる。
 勢いがあるのはこちらだ。敵の抵抗も脆く感じる。

 そして、新たに二千弱の兵。
 リン城からフィレンクトが駆けつけてきてくれた。予想通りのタイミングだ。
 念のために前夜、どれほどの時間で属城間を駆けられるか計測しておいて良かった。

(;‘_L’)「ご無事ですか!?」

('A`)「大丈夫です! ありがとうございます!」

 フィレンクトと連携して、敵軍に当たった。

 オオカミ軍は、八千ほどにまで減っている。
 こちらは四千弱。敵軍はまだ倍の兵数だが、士気が違った。
 容易く押していける。勝てる。一瞬、確信した。

 その瞬間、真横を通り過ぎた光。

 頬に、赤い道を残して。

(メ;'A`)「ッ……」
59 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:56:32.17 ID:mL3atVJR0
 鬼のような形相でこちらを睨む敵将がいた。
 リレント=ターフル。四中将の一人だ。

 構えたMで、的確に自分を狙っていた。

(メ'A`)「……やっぱり、簡単に勝たしてくれる相手じゃない、か……」

 浮足立っていたオオカミ軍を、手早くまとめた。
 陣形と呼べるほどのものではないが、敵と相対できる形にはなっている。

 情勢は、互角になった。
 ここからが正念場だ。どうやって敵を潰走させるか。
 慎重に、かつ大胆に行動していく必要がある。



――シャッフル城周辺(シャッフル城まで六里地点)――

(#^ω^)「おおおぉぉぉッ!!」

 鉦が打たれて、全軍、反撃に出た。
 こちらの不利は変わっていない。だが、下がりつづけるだけでは好転も見込めない。

 モララーとシラネーヨがいないのはいかにも痛い。
 機動力のある騎馬隊なら敵軍を掻き乱す方法もあるが、歩兵ではそれも難しいのだ。
 とにかくモララーとシラネーヨが戻ってくるまで、崩されないように踏ん張るしかなかった。
63 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 16:59:32.51 ID:mL3atVJR0
 後退していたヴィップ軍が反撃に出たことで、オオカミは僅かに攻勢を緩めた。
 さすがにショボンは上手い。後退しつつも、陣形を乱すようなことはしない。
 反撃のタイミングも的確だった。その場での判断力が並ではないのだ。
 だからこそ、ショボンの決断には皆が絶対の信頼を寄せる。

 H隊に向かって斬りこんだ。深入りはしない。あくまで乱すだけだ。
 前衛の兵を討ち取ったあとは素早く距離を取る。あまり後退しすぎても、反撃が難しくなるのだ。

(;^ω^)「……お?」

 すぐそばでE隊歩兵三千を率いていたイヨウが、単騎で前に出た。

 誰かを睨んでいる。大勢の中の一人だと、何故か分かった。

 その視線に呼応して、敵将が一人、前に出てきた。
 顔には見覚えがある。似顔絵を以前、見せてもらった。

 フィル=ブラウニー。
 四中将の一人であり、野戦で絶大な力を発揮するという。

 その右腕に携えているアルファベットは、P。

(;^ω^)(一騎打ち!?)

 すぐさま、二人がぶつかった。

 ここまではっきりと届いた金属音。一合目は、互角の押し合い。
 刃を弾いて、もう一撃。速いのは、イヨウだ。
 だがフィルも上手く反応した。二合目も、先ほどと同じ形になっている。
67 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:02:34.38 ID:mL3atVJR0
 呆然と見ているわけにはいかなかった。
 イヨウが時間を稼いでくれているのだ。イヨウのE隊の部隊長に腕で合図を送り、移動させた。
 機動力を高めるために、全体の陣形を小さくするのだ。
 あくまで自己判断だが、いま必要なことを考えると、それしかないと思った。

 モララーとシラネーヨが帰ってくるまで粘るには、とにかく敵軍に乱されないことが大事だ。
 陣の形を維持しつつ小さくかたまって、敵の攻撃を防ぎやすくする。
 無論、包囲されないように最大限、注意しながらだ。

 イヨウとフィルは、まだ打ち合っていた。
 もう何合目だろうか。互いに攻撃は素早い。少し視線を送った間に、三合は打ち合うのだ。
 猛将と謳われる両者。一騎打ちも、並のレベルではない。

 しかし突然、両者が離れた。
 両軍から鉦が鳴らされたためだ。オオカミは、攻撃に転じる鉦だろう。
 そしてヴィップは、再び後退する意味を表す鉦だった。

(;^ω^)「イヨウさん、大丈夫ですかお?」

(=゚ω゚)ノ「何ともない。できれば討ち取りたかったがな、さすがに強い」

( ^ω^)「でも、凄かったですお。さすがですお」

(=゚ω゚)ノ「いや、それよりも、俺の意思を汲んでくれて助かった。ここは小さくかたまって動くべきだろうからな」

( ^ω^)「助かったのはこっちも一緒ですお」

 徐々に後退しはじめた。
 敵軍の攻撃はまだ届かない。しかし、時間の問題だ。
 数では圧倒されている。そう何度も防げるものではない。
71 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:05:38.48 ID:mL3atVJR0
 もうそろそろ二人が帰ってくるはずだ。
 あと少しだ、踏ん張れ。自分に向かって、そして配下の兵に向かって、言い聞かせた。



――シア城周辺――

 智将として知られるリレント=ターフル。
 その力はやはり、自分のような部隊長とは、比べものにならない。

(;'A`)「くっ……」

 巧みに兵を動かしてくる。
 相手は倍の兵だ。囲まれて押し潰されると、敗戦は必至。
 当然、リレントはそれを狙ってくる。

 多少苦しくはなった。
 しかし、まだ充分勝てる戦いだ、という確たる思いがある。
 敵は強大だが、怯むことなく挑めば、きっと力は通じるはずだ。

('A`)「フィレンクトさん、まず自分が行きます」

(‘_L’)「……分かりました」

('A`)「よろしくお願いします」

 さすがに、フィレンクトは一言で分かってくれたようだった。
75 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:08:39.12 ID:mL3atVJR0
 兵を小さくまとめて、突撃した。
 敵軍の端をかすめるような攻撃。左翼に当たった。
 当然、中央から覆いかぶさるような攻撃が来る。だが、それにフィレンクトが当たって潰す。

 再び一つになって、左翼を押し潰した。
 中央を乱したことで、左翼だけに当たれている。敵と戦う部分を限定させていけば、兵力差を埋められるはずだ。

(#'A`)「はぁっ!!」

 攻撃を防いですぐ、敵兵の右腕を斬り裂いた。
 陣を乱されたことにより、敵は満足に力を発揮できていない。勢いだけで押していけた。

 オオカミ軍と離れて、もう一度同じことを繰り返した。
 二度目は通じる。少し動きを変えるだけで、敵は更に乱れていく。

 戦いの主導権を握っていた。
 敵陣の中央からはリレントの怒号が聞こえる。寡兵に圧倒されているのだから、苛立ちも当然だろう。
 そのままでいい。指揮官が動揺を見せれば、配下の兵は不安を覚える。
 そして更に力は鈍っていく。

 敵の兵力を、二百か三百は削ったはずだ。
 こちらの損害は多くない。だが、決して少なくもない。
 主導権はこちらにあるが、このままでは時が経つにつれ不利になっていくのは明白だった。

 もっと、敵に決定的な痛打を与えるような一撃がほしい。

('A`)(……敵軍を、断ち割る……)
80 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:11:35.73 ID:mL3atVJR0
 真っ二つに割って、散り散りにさせる。
 その半分が潰走するような事態になれば、リレントも属城を諦めるはずだ。
 リレントは明らかに焦っている。オオカミ兵が逃げ出してもおかしくはない状況だ。

 多少危険だが、勝負に出るしかない。

(;‘_L’)「ドクオ部隊長!!!!」

 その声で、視界を明確にさせたとき。
 既に、Fは自分の心臓めがけて飛来していた。

 世界が一瞬静止した。
 考え込んでいた自分に向けて放たれたF。
 あまりに、的確な一撃。

 躱せない。
 アルファベットGも、間に合わない。

 視界に入ったのは、勝ち誇った笑みを浮かべた、リレント=ターフルだった。


 何かの、音が響いた。
 視界を、白ませるような音。

 光だっただろうか。

 この世界を、白く、染めあげたのは。
86 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:16:54.85 ID:mL3atVJR0
(;'A`)「……えっ……?」

 Fの残骸が、地面に落ちた。
 砕け散ったF。無残な姿へと変わり果てている

 誰の手によって。
 すぐに分かったが、何故、という言葉しか浮かばなかった。

( ・∀・)「よくやってくれた。大したもんだ、お前たち」

 モララー中将。
 引き返すよう伝令を送った。なのに何故。

( ・∀・)「一千だけで大丈夫かとも思ったが、好判断だったみてーだな。
     これなら、何とかなりそうだ」

 モララーの視線が、こちらに向いた。
 強い戦意を秘めた瞳だ。思わず、奮い立たされるような。

( ・∀・)「ドクオ、フィレンクト。もうひと踏ん張りだ」

 そして、モララーはリレントを見据えた。
 大粒の汗を浮かべたリレントを。

(;ゝ○_○)「……まさかモララーが来るとは……北の戦いは捨てた、ということか?」

( ・∀・)「バカ言うなよ。速攻でお前を討ちとって北に戻るんだよ。
     まぁ、俺がいなくても、五千は戻したから盛り返すはずだけどな」
94 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:20:10.19 ID:mL3atVJR0
(ゝ○_○)「言ってくれるな、モララー。まだ多く兵を有しているのはこちらだ」

( ・∀・)「そうやって余裕ぶっこいて、こいつらに追い詰められたんだろ?
     お前は一万を率いてたはずだが、それにしちゃー数が少ないな」

 リレントが青筋を立てていた。
 完全に冷静さを欠いている。モララーの罵倒は、的確だった。

( ・∀・)「四中将っつっても所詮は半人前の集まりだからな」

(#ゝ○_○)「私を他の三人と一緒にするな」

( ・∀・)「俺にとっちゃお前みたいなやつが一番戦いやすい。
     自尊心だけが一人前、常に誰かを見下して自分は高み気取り。
     まだドラル=オクボーンのほうが怖かった。お前だから俺は一千で来たんだ」

(#ゝ○_○)「黙れ」

( ・∀・)「やーだね」

 リレントがMを構えたと同時に、Fが放たれる。

 それが地面へと向かうのも、一瞬だった。
 先ほどと同じように、モララーはRで斬り砕く。
 リレントなど、歯牙にもかけていない。それを見せつけるかのように。
99 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:23:15.54 ID:mL3atVJR0
( ・∀・)「さぁ、ドクオ、フィレンクト、いくぞ。こいつらを打ち破れば、ヴィップの勝利は目前だ」

 すぐにモララーは駆けだした。
 追従する。敵軍にぶつかる。

 そこからは、あっという間だった。

 モララーがリレントのアルファベットを破壊して、追い立てて、敵軍を乱す。
 そこに歩兵で追撃を加えると、すぐに敵軍は算を乱して潰走した。
 散り散りになって四方八方に逃げていく。リレントもどこかに消えてしまった。

 新たに敵を七百ほど討ち取り、オオカミ軍はおよそ三千を失っての敗走となった。

 勝利を得た。一万の敵軍を、打ち破れた。
 まだ早いと分かっていながらも、感慨を抑えきれない。
 体がふわつくような感覚だった。

( ・∀・)「フィレンクト、リン城はどうした?」

(‘_L’)「信頼できる者に百をつけて門を閉ざさせています。こちらに向かってくる敵軍がいなかったもので」

( ・∀・)「斥候と櫓で確かめたってわけか。最善だ。
     フィレンクトはリン城に戻って敵の襲撃に備えろ。今すぐだ。
     ドクオもシア城に入って何らかのアクションを待つんだ。負傷者にはすぐ手当てを施せ。
     北での戦いが終わったらすぐに伝令を出す。それまで城で待機するんだ」
101 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:26:22.54 ID:mL3atVJR0
('A`)「リレントが再び攻め寄せてきた場合は、いかがしますか?」

( ・∀・)「絶対とは言い切れねーが、ないな。リレントは全く機転の利かない武将だ。
     負けた後に出直せるほど器用じゃない。戦が終わるまでどっかに隠れて、夜になったら戻るつもりだろうな。
     もっとも、そんときには戻る場所がヴィップの手に落ちてるはずだが」

 モララーが馬に跨った。
 手勢の騎馬隊はほとんど失っていないようだ。歩兵は、五百ほど失ったか。
 敵の討ち取った数を考えれば、大勝利だった。

( ・∀・)「籠城しなかった理由はなんだ? ドクオ」

('A`)「……一応考えましたが、急襲の一万が相手では守りきれなかったと思います。
   仮にフィレンクトさんが救援に来てくれても兵数と士気で劣り、危険です。
   先手を打って敵陣を乱し、そのうえで野戦を行って潰走させるべきだと考えました」

( ・∀・)「あぁ、いい判断だ。援軍をすべて引き返させようとしたのだけが問題だが、よくやった。
     お前らが頑張ってくれたおかげで、戦況が一気にひっくり返った。
     嬉しい誤算だ。シャッフル城は必ず奪る。報告を待っていてくれ」

(;'A`)「あ、あの」

( ・∀・)「ん? 何だ?」

(*'A`)「……助けていただいて、本当にありがとうございました」

 言うと、モララーが少しだけ笑った。

( ・∀・)「ま、助けられたのはむしろこっちなんだけどな。一万の敵勢に気づかなかったんだから。
     お互い様ってことだな。何にせよ、今回のシャッフル城戦は、お前たちに始まってお前たちに終わる戦のようだ」
108 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:29:50.57 ID:mL3atVJR0
 そう言って、モララーは騎馬隊を率い、再び北に向かっていった。


 それから夜になるまで怪我人の手当てに追われていた。
 アルファベットは殺傷能力が高い。一撃で死に至ることも多々ある。
 だが、当たり所が良ければ今後に支障なく戦える。やはり迅速な救護が不可欠だった。

 日が落ちて六刻ほど経ってから、ようやく伝令が来た。

(*'A`)「……よし!」

 シャッフル城、奪取。
 野戦でオオカミを潰走させ、放棄に至らせたという。

 すぐにシア城内のヴィップ兵たちに伝えた。
 歓喜の声が夜空を突く。怪我人の表情まで明るくなっていた。


 戦の展開についても教えてもらった。

 シラネーヨと五千の騎兵が戻ったあと、ショボンは即座に反撃に出た。
 攻撃陣形である魚鱗を横から崩し、分断させて押し潰したのだという。
 自分がやろうとした攻め方に似ている、とドクオは思った。

 ショボンは緩急をつけて攻め込んだらしい。
 それまで動きを少し緩めておいて、反撃に出るときは抜群の機動力を活かす。
 そうすることで、敵軍の動揺を誘うのだ。
112 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:32:56.26 ID:mL3atVJR0
 モララーが帰ってきてからは、一方的な展開になったという。
 オオカミは魚鱗を崩して鋒矢状の陣形に組み替えたものの不利は変わらない。
 ミルナが前に出て積極的に戦ったようだが、ショボンは上手く二方面から攻め立てたらしい。
 鉦ひとつあれば大まかな指示は下せる。それにすぐ対応できるヴィップの将校たちはやはり優秀、ということだろう。

 ミルナの動きを封じ込めて、敵軍を押し包み、やがて潰走させた。
 シャッフル城に戻る道を塞ぎ、オオカミには南の道しか空けなかった。
 今はキョーアニ川に向かって退却しているらしい。

 シャッフル城からキョーアニ川に向かう途中にはリン城があるが、そこも先手を打って道を塞いでいる。
 リン城に向かうには間道を抜けなければならない。その入口を封鎖するだけでリン城を攻めるのは諦めざるを得なくなる。
 それに、オオカミにはもう戦を行う力は残っていないだろう。

 今回の戦では、完全にショボンがミルナの上をいき、常に先手を打った形となった。

 終わってみれば完勝だったが、不思議な点は残った。
 リレントの一万の急襲に、ショボンが気付かなかったことだ。

 クーがいるのだから、一万などという大軍で属城を攻めることが決まっていたなら、戦が始まる前に情報が入るはずだ。
 しかし、ショボンは全く気付かなかった。恐らく、クーがその情報を掴めなかったのだろう。
 兵糧の輸送日まで掴んだクーが、情報を得られなかった。何らかの理由はありそうだった。

('A`)(とにかく……勝ったんだ)

 長い戦だった。
 初陣でシア城を奪い、兵糧を襲撃し、急襲隊を迎撃した。
 その全てが、苦しい戦いだった。
116 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:36:20.94 ID:mL3atVJR0
 しかし勝った。
 シャッフル城を、奪い取った。

 早くこの喜びを、ブーンやフィレンクト、ショボンたちと分かち合いたい、という気持ちでいっぱいだった。



――六日後――

――シャッフル城――

 オオカミの四万ほどの兵は、オリンシス城を経由してオオカミ城に戻ったという。
 キョーアニ川の上流に、予め退却用の船は用意してあったらしい。
 万が一のことも考えて動くあたりは、さすがにミルナ=クォッチだった。

( ^ω^)(でも、ショボン大将のほうが凄いお)

 シャッフル城の外で野戦を行ったときは、まさに圧巻だった。
 怒涛の攻め。それでいて、不意に退いたりする。
 完全にオオカミのペースを乱して勝利を手中にした。

 ミルナが途中から数を恃みにした攻めを展開してきたが、ショボンは軽くあしらっていた。
 局所的にはモララーがドラルを押し込めたり、イヨウがガシューを掻き乱したりして力を封じた。
 先手先手で攻め続けた戦は、損害もさほど多くなく、結果的には大勝となった。

 その勝利を支えたのが、ドクオとフィレンクトだった。
 属城を一万で攻め寄せたリレントを、潰走させたのだ。
 いくらモララーが率いていたとはいえ、救援はわずか一千。
 倍の兵を、しかも突然現れた敵を、打ち破ったのだ。
118 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:39:17.58 ID:mL3atVJR0
 もし属城が落ちた場合、挟撃を受けることになり、撤退せざるを得なくなっていたはずだ。
 ドクオとフィレンクトの働きは大きかった。

( ^ω^)「このシャッフル城は、誰が守将として残るんですかお?」

(´・ω・`)「プギャーに任せてみようと思っている。ビロードも考えたが、あいつは一度本城に戻す。
      エヴァ城には再びモララーを据える。やはり最前線にはモララーが必要だ」

( ^ω^)「ビロードさんを本城に戻す理由は?」

(´・ω・`)「あまり地方の守将ばかりでもな。次の戦では攻め手として使いたいんだ。
      そのために、俺がきっちり鍛えるつもりだ。あいつには成長してもらわないとな」

( ^ω^)「本城に来てくれるなら、嬉しい限りですお」

 ビロードとは長く会っていないが、エヴァ城戦以来の友人だった。
 純粋で人あたりの良い性格のビロードは、皆から好かれる存在だ。
 自分も、ビロードと一緒にいる時間は楽しかった。

(´・ω・`)「モナー中将はまたパニポニ城に戻ってもらう。それと、イヨウをモララーの下につけて残す。
      あとは全員が本城に帰還だ。これからまた忙しくなるぞ」

 シャッフル城を奪ってから、既に充分忙しかった。
 新しい城は把握に時間がかかるためだ。どこに何があるか。まずそこから始まる。
 シャッフル城で過ごして既に六日が経つが、まだ全体から見ればほとんど手つかずといったところだろう。

(´・ω・`)「文官をもっと送ってきてもらう必要がありそうだな。将校はプギャーだけで充分だろうが……」

 ショボンが独り言を呟きながら、階下へと歩いて行った。
122 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:42:56.12 ID:mL3atVJR0
 それから一週間ほど任務をこなしてから、シャッフル城を発った。
 あとはプギャーが文官と相談しながら城を整えていく。
 激務になるだろうが、それも将校の仕事だった。

 およそ二週間かけて本城に帰還した。
 途中、エヴァ城からはビロードと一緒だった。
 相変わらず明るい人だ。

(;><)「久々の本城は緊張するんです!」

(;^ω^)「何でですかお?」

(;><)「分かんないんです! でも緊張するんです!」

 そしてビロードの緊張は、本城に着いた途端、激しさを増した。

 城門の前で、多くの兵と、アラマキ皇帝が出迎えに来てくれていたのだ。

/ ,' 3「皆さん、本当にお疲れ様でした」

 将校ひとりひとりに手を差し出す。
 握り返した。やはり、不思議な温かみを持った手だ。

(´・ω・`)「此度も勝利を収めることができました」

/ ,' 3「本当によく頑張ってくれましたね。さぁ、疲れを癒してください。
   祝宴はまた明日に致しましょう。ショボン大将、何かお話はありますか?」
123 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:45:54.36 ID:mL3atVJR0
(´・ω・`)「はい。将校に関して、また後ほど、お話したいことがあります」

/ ,' 3「分かりました。それでは、また」

 それから兵をすべて城内に入れて、すぐ寮塔へと向かわせた。
 もう日が落ちかかっている時間帯だったため、多くの兵は眠りに落ちたようだ。
 寮塔は静かなものだった。

 久々にヴィップ城に戻ってきたが、やはり落ち着く。
 心が休まるのだ。戦時でない、ということだけではない、と思った。

 自室に行った。
 長く使っていなかったが、清掃員によって掃除されているため、中は綺麗なままだ。
 落ち着いて寝床に身を沈められた。
127 : 宅配バイト(三重県):2007/04/20(金) 17:47:42.41 ID:mL3atVJR0
 翌日、戦勝祝宴と同時に、昇格についての発表があった。

 エヴァ城を隙なく守り抜いたビロードを中尉に。
 野戦で奮闘し失敗を取り返したイヨウを同じく中尉に。

 そして、数々の武勲を挙げたドクオ、フィレンクトを新たに少尉とする、と発表された。

















 第30話 終わり

     〜to be continued

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