2 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 22:51:01.32 ID:kPuNHJI50
★登場人物

〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
19歳 中尉
使用可能アルファベット:J
現在地:シア城

●('A`) ドクオ=オルルッド
19歳 シャッフル城戦・ブーン中尉配下部隊長
使用可能アルファベット:G
現在地:シア城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
29歳 大将
使用可能アルファベット:U
現在地:シア城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
24歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:シア城

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
27歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:シア城
7 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 22:52:42.44 ID:kPuNHJI50
●( ^Д^) プギャー=アリスト
25歳 大尉
使用可能アルファベット:M
現在地:シア城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
22歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:エヴァ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
28歳 少尉
使用可能アルファベット:P
現在地:シア城

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
44歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:シア城

●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
26歳 シャッフル城戦・ブーン中尉配下部隊長
使用可能アルファベット:I
現在地:シア城
11 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 22:54:17.11 ID:kPuNHJI50
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
34歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ヴィップ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
35歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
38歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ヴィップ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
31歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
15 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 22:56:09.49 ID:kPuNHJI50
〜オオカミの兵〜

●( ゚д゚) ミルナ=クォッチ
35歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:シャッフル城

●《 ´_‥`》 ドラル=オクボーン
33歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:シャッフル城

●| `゚ -゚| フィル=ブラウニー
30歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:シャッフル城

●(ゝ○_○) リレント=ターフル
29歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:シャッフル城

●〔´_y`〕 ガシュー=ハンクトピア
34歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:シャッフル城

16 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 22:56:53.39 ID:kPuNHJI50
★階級表

〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:ブーン
少尉:ビロード/イヨウ


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)

17 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 22:57:59.17 ID:kPuNHJI50
★使用アルファベット一覧

A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:ドクオ
H:
I:フィレンクト
J:ブーン
K:
L:
M:プギャー
N:ヒッキー
O:
P:イヨウ
Q:モナー
R:モララー
S:ジョルジュ/アルタイム(ラウンジ)
T:ミルナ(オオカミ)
U:ショボン
V:
W:
X:
Y:
Z:

18 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 22:59:07.77 ID:kPuNHJI50
★この世界の単位

一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

24 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:02:23.53 ID:kPuNHJI50
【第29話 : Rear】


――シア城・軍議室――

(´・ω・`)「オオカミが城外に布陣しはじめた。遂に野戦だ」

 シラネーヨ以外の全将校がシア城に集まり、軍議を行っていた。
 さすがに軽い空気はない。遂にここまで来た、という感慨もない。
 これからが本番だ、という意識だけが皆にあった。

 ブーンは隣を一瞥した。
 今日の軍議に部隊長は参加していない。右隣に座っているのはドクオではなく、イヨウだった。

 いずれ常に隣に座るようになるだろう、と思いながら、再び前を向いた。

(´・ω・`)「兵の割り当ては以前伝えた通りだ。布陣はこれから説明する。
      その前に、ひとつ俺から提案がある。恐らく、みな納得してくれると思うが」

( ・∀・)「いったい、どのようなものですか?」

(´・ω・`)「ブーン、ドクオとフィレンクトを呼んできてくれ」

(;^ω^)「ほぇ!?」

 両隣にいないのを少し寂しく感じていた、矢先だった。
28 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:05:29.41 ID:kPuNHJI50
(´・ω・`)「実は二人を外で待機させてあるんだ。もう話もしてある」

(;^ω^)「???」

(´・ω・`)「いいから、早く。俺が呼んでいると伝えてきてくれ」

(;^ω^)「は、はいですお」

 慌てて立ち上がり、軍議室の扉を開けた。
 廊下の端に、確かにドクオとフィレンクトがいる。
 二人で何やら不安げに話をしていた。

(;‘_L’)「あ、ブーン中尉……」

(;^ω^)「ショボン大将が呼んでますお。軍議室に入ってくださいだお」

(;'A`)「は、はい」

 そそくさと走り寄ってくる二人。
 二人を先に軍議室に入れてから、後について室内に戻った。

(´・ω・`)「さて、この二人なんだが……知っての通り、このシア城奪取時に勲功を挙げた者たちだ」

( ´∀`)「ドクオさんは過日の兵糧急襲作戦を立案したそうですね」

( ・∀・)「そうです。危険な作戦でしたが、見事に完遂してくれました」

(´・ω・`)「俺はこの二人に、属城の守りを任せようと思う」

 一瞬、軍議室が静謐に満ちた。

29 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:08:32.64 ID:kPuNHJI50
 そしてすぐ、ざわめきが広がった。

(,,;゚Д゚)「部隊長ですよ? 大丈夫ですか?」

(;^Д^)「将校を置くべきでは?」

(´・ω・`)「いや、将校をすべて攻めに使いたいんだ。でなければオオカミには勝てない。
      大丈夫だ。この二人ならきっと、シア城をリン城を守り抜いてくれるはずさ」

( ・∀・)「ショボン大将、博打が好きになりましたね」

(´・ω・`)「果敢だと言ってくれよ」

 ショボンとモララーが笑った。
 その表情は、入口で固まっている二人のものとは、正反対だった。

(´・ω・`)「リン城にフィレンクト=ミッドガルド。シア城にドクオ=オルルッド。
      ブーン、お前は別の部隊長を新たに選べ。必要ないならそのままでも構わんが」

(;^ω^)「りょ、了解ですお」

(´・ω・`)「二人からは既に了承を得ている。あとは将校から反対がなければ、守将に据えようと思うが……」

 ショボンが一座を見回したが、誰からも反対意見は出なかった。
 よし、と小さく言って、ショボンは二人を見据える。
31 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:11:11.46 ID:kPuNHJI50
(´・ω・`)「属城が落とされたら攻めは中断せざるを得なくなる。守り抜いて当然の属城なんだ。
      二人には多少なり重圧のかかる任務だが、力を存分に発揮してほしい。以上だ。下がってくれ」

(;'A`)「はい」

(;‘_L’)「失礼します」

 すぐに扉を開けて、退出していった。

 ドクオとフィレンクトに不安があるのは、一目見ただけで分かった。
 守り抜いて当然の、属城だ。もし落ちれば、などと考えただけで、寒気が走る。

 ショボンは全く表情を変えないまま、再び喋りだした。

(´・ω・`)「こちらの兵力はおおまかに見て二万五千。対してオオカミは四万を出してくると思う」

( ´∀`)「少々、兵力差がありますね」

(´・ω・`)「元より、ヴィップは寡兵で挑むことが多い国です」

( ´∀`)「それは昔から変わっていませんね。人口の少ない国ですから、致し方ありません」

(´・ω・`)「犠牲を最小限に抑える努力も必要ですね」

( ´∀`)「それよりも、勝つことだけを考えなければ」

(´・ω・`)「もちろんです。ここまで散々苦労してきたのですから、無駄にはできません」

 ショボンが筆を取った。
 武将の配置を書きこんでいく。あくまで初期配置だ。
49 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:14:14.30 ID:kPuNHJI50
(´・ω・`)「相手の陣形を見てから臨機応変に組み替えるつもりだが、いま考えているのはこの形だ」

( ・∀・)「偃月ですか?」

 偃月とは、鶴翼を逆にした陣形だ。
 大将を前に押し出し、後から両翼がついていく。
 当然、大将の危険度は高い。

(´・ω・`)「いま一番、攻撃力が発揮できる陣形だと思う」

(,,゚Д゚)「オオカミは恐らく、鶴翼を構えてくると思いますが」

(´・ω・`)「だからこそさ。全面的にぶつかっていくんだ。囲まれると辛いからな」

 確かに偃月でぶつかれば、中央にあたっている間に押し包むという鶴翼の利を減らせる。
 ただし、こちらには厚みがない。数で押し込まれると不利だ。

(´・ω・`)「まぁ、実際相手の陣を見るまでは分からんがな。偃月を基本にして組み立てていくぞ」

 そのあとも軍議は続いたが、ほとんどがショボン、モナー、モララーの話し合いだった。
 会話の次元が高くて、とても間に割り込めないのだ。
 城に帰ったら、もっと勉強しなければならない、とブーンは思った。

(´・ω・`)「これからは毎日軍議を行う。気合を入れていくぞ」

 皆が一斉に頷いた。
53 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:16:49.42 ID:kPuNHJI50
 軍議が終わってからは調練に励んだ。
 率いるのはG隊歩兵三千。偃月では、最左翼だった。
 中央からの指令が最も届きにくい。自己判断が不可欠となる位置だ。

 調練では、モララーのI隊三千と模擬戦闘を行った。
 手には木製の槍。そして盾。どちらもIとGに見立ててある。

 正面からのまともなぶつかり合いだった。 
 敵陣を突き破るように小さく固まり、突撃する。攻撃は防いでいける。
 だが、相手はまるで道を開けるかのように少しずつ拡がっていった。

 やがて押し包まれ、完全に隊を崩された。

 隊を整え直してから、モララーに叱責を受けた。
 いつものように淡々とした口調だった。

( ・∀・)「愚直すぎるぞ。小さく固まって突撃するのはセオリーだが、相手の動きもちゃんと見ろ」

(;^ω^)「は、はいですお」

( ・∀・)「G隊は守りに長けてんだ。相手に合わせるくらいでちょうどいい。相手の攻撃を防ぎきれば反撃できるからな」

 モララーの言葉を必死で頭に入れた。
 少しでも戦が上手くなりたい、という一心だった。


 夜になってからは武具点検の報告書に目を通していたが、途中で疲れて屋上に昇った。
 夜風にあたってすっきりしたかったのだ。

( ^ω^)「……お?」
55 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:19:33.17 ID:kPuNHJI50
 夜の光が途切れている。
 薄い影を作りだしていた。

 ショボンとドクオが、二人で屋上に居た。

 二人で酒を呷っている。
 ほのかに酔っているような目で、ショボンに視線を向けられた。

(´・ω・`)「ブーンか。どうしたんだ?」

( ^ω^)「夜風に当ろうと思って……ショボン大将とドクオは、いったい何を?」

(´・ω・`)「先日の作戦成功祝いさ。シャッフル城を奪ってからにしようと思ったが、こうやって士気を上げるのも悪くない」

(*'∀`)「この酒うめー!!」

 ドクオは酩酊しているようだった。
 ショボンが呆れたような笑顔でそれを見ている。

(´・ω・`)「後でドクオを運んでやってくれ。まともに歩けんだろうからな」

(;^ω^)「はいですお」

(´・ω・`)「ドクオも伸びるな、きっと。喜ばしい限りだ。オオカミを倒せる日も遠くない」

 またショボンが酒瓶を傾けた。
 生ぬるい風がショボンの黒髪を揺らしている。

(´・ω・`)「ブーン、戦に向けて、自信の程は?」
59 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:22:06.96 ID:kPuNHJI50
(;^ω^)「それなりに……」

(´・ω・`)「それじゃ困る。嘘でもいいから、自信満々だと答えるもんだ」

(;^ω^)「満々ですお!」

(´・ω・`)「自分を鼓舞していくんだ。夢想の力も、いつか現実となるように」

 ショボンが言うからこそ、心を熱くさせられるセリフだった。
 自然と右手は握りしめられている。固く、力を込めて。

(´・ω・`)「人は永遠に、成長を求めなきゃならない。求めなくなったときが退化の始まりだからだ。
      武人なら尚更、常に高みを追い求めて、鍛練を重ね、精進していくべきだ、と俺は思う」

( ^ω^)「……はいですお!」

 あまりに大きなショボンの背中。
 いつ見ても、追いつけそうにないと思う。
 しかし、求め続ければ、いつか現実となるだろうか。
 掴める日が、来るのだろうか。

(´・ω・`)「さぁ、戦だ」

 立てた膝に手をついて、ショボンがゆっくりと立ち上がった。
63 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:25:05.66 ID:kPuNHJI50
――十五日後――

――シャッフル城周辺(シャッフル城まで十里)――

 さすがにオオカミは上手い位置に陣取ってきた。
 シャッフル城から五里地点。攻めるのにも逃げるのにも適した位置だ。

 そして、敷いてきた陣形。
 ヴィップ軍の不意を突く形だった。

(´・ω・`)「方円か……これは予想外だったな」

 大将を中心とした一万の隊。
 それを円形で囲む三万の兵たち。

 完全に守りに入った陣形だった。

( ・∀・)「あのミルナがここまで守りに徹するとは……」

(´・ω・`)「何が何でもシャッフル城を守り抜くつもりだな」

(,,゚Д゚)「どうします? 予定通り偃月で行きますか?」

(´・ω・`)「多少、危険かも知れんな。偃月でもやれんことはないが……」

( ・∀・)「じゃあ、魚鱗ですかね」

(´・ω・`)「陣形云々よりも、方円を前にした場合は、相手を揺さぶることのほうが大事だ」

( ・∀・)「……そうですね、堅陣は動くと脆いもんですし」
74 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:27:59.37 ID:kPuNHJI50
(´・ω・`)「相手から動かざるを得ないような状況を作りたいところだ。さて……モナー中将」

( ´∀`)「はい。念のために準備してきて良かったですね」

(´・ω・`)「よろしくお願いします」

 モナーがブーンの隣を通り過ぎて行った。

 何をしようとしているのか、ブーンには分からなかった。
 モナーが馬止めの柵を用意しているのは知っている。だが、この状況で柵を使っても意味はないはずだ。

 モナーの行動を考えているうちに、再びショボンが喋りだした。

(´・ω・`)「さて、こっちはアレをどうするか、考える必要があるな」

( ・∀・)「ご丁寧に馬止めの柵まで……完璧な守勢ですね」

(´・ω・`)「柵の奥にはI隊か……取り除こうとすれば被害は甚大だろうな」

(,,゚Д゚)「矢防ぎの盾まで用意してますね。燃やすのも困難なようです」

(´・ω・`)「だな……徹底的な防衛だ。どうしたもんか……」

( ・∀・)「あれも、モナー中将にお願いしてみますか?」

(´・ω・`)「……やってみてもらおうか。プギャー、モナー中将に言ってきてくれ」

( ^Д^)「はい」

 プギャーが馬を走らせ、モナーの許へ駆けて行った。
76 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:30:45.20 ID:kPuNHJI50
 敵陣を揺さぶるだけではなく、馬止めの柵までどうにかできる、というのか。
 いったい、モナーは何を用意してきたのだろうか。

(´・ω・`)「よし、こっちはこっちで動くぞ。モナー中将の動きに気づかれないよう、攻め込むんだ」

( ・∀・)「D隊ですね」

(´・ω・`)「そうだ。最初は俺とモララーで攻め込む。敵にはぶつからずに下がって、D隊だ」

(,,゚Д゚)「歩兵は両横に展開させようと思いますが」

(´・ω・`)「そうしてくれ。結果的には偃月と同じ形になるな」

(,,゚Д゚)「では、予定通り偃月の形を取るように指揮します」

 慌ただしくなってきた。

 すぐに自分も動き出した。G隊歩兵三千。
 陣形の最左翼へと向かって駆けだす。

 ドクオとフィレンクトは、それぞれ二千の兵と共に属城に残っている。
 部隊長を新たに選ぶ気にはなれず、曹長のスメアとローダを部隊長扱いとした。
 三千の歩兵なら、際どいところではあるが、一人で指揮しきれる範囲だった。

 陣形の中央が、動きだした。
 I隊騎兵、七千五百。
 中核を成すのはもちろん、ショボンの近衛騎兵隊だ。
79 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:33:28.29 ID:kPuNHJI50
 ショボンとモララーが中心となって駆けていく。
 矢のような疾さ。敵軍の動揺がはっきりと分かる。
 馬止めの柵を出しているにも関わらず突進してくるのだ。困惑するのは当然だった。

 オオカミ軍のD隊が慌てて前に出てきた。
 柵の隙間から、Fを構える。

 しかし、ショボンとモララーは即座に騎馬隊を反転させ、D隊のFを躱した。
 そして後ろからヴィップのD隊が出てくる。Fを射るが、ほとんどは馬止めの柵に防がれた。
 柵の奥には再びI隊が出てくる。態勢が若干乱れていた。

 敵の斥侯が出てくると、攻勢に転じられる恐れがある。
 オオカミに守勢を取らせたまま、構えを崩す必要があるのだ、というのはブーンにも分かった。
 相手に不十分な体勢を取らせられれば、格段に戦いやすくなるからだ。

( ^ω^)(でも、モナー中将の動きが見えないお……)

 偃月の後ろに隠れて、何かをやっている。
 馬止めの柵をいじっているように見えるが、意図は理解できなかった。

 全軍を少しずつ前進させた。
 オオカミと、二里の距離にまで迫る。

 当然、オオカミは動きを見せない。
 方円は動くと脆い陣だ。我慢のしどころだろう。
 馬止めの柵まで用意して守りに入っているのだから、ミルナはこの戦いにすべてを賭けているということだ。

 柵を迂回すれば方円に突っ込むことはできるが、それこそオオカミの罠だろう。
 その瞬間に攻撃するくらいの用意はできているはずだった。
82 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:37:06.96 ID:kPuNHJI50
 やはり、敵陣を揺さぶるしかない。
 ショボンは動きを止めていた。次の行動を考えているのだろう。
 何か指令が下っているかも知れないが、最左翼であるこちらには届いていない。

 やがて、陣形の中央が再び動き出した。
 ショボンとモララーが突進していく。先ほどと同じ動きだ。
 馬止めの策からはまたD隊が顔を覗かせている。

 そしてショボンとモララーは、再び反転した。
 何がやりたいのか。オオカミはそう思っているはずだ。
 ブーン自身も、そうだった。

 反転した騎馬隊に隠れていた、兵器を見るまでは。

(;^ω^)「投石器!?」

 思わず声を上げてしまった。
 ずらりと並べられた投石器。すぐに巨大な岩が射込まれていく。
 その飛距離は様々だ。多くは馬止めの柵へ。一部は、敵陣へと射ち込まれる。

 普通の投石器よりは小さいが、何も問題はなさそうだ。
 馬止めの柵が次々と壊されていく。横に繋がっているため、ひとつでも当たると大きく崩れるのだ。
 間断なく射ち込まれ、やがて馬止めの柵は意味をなくした。

 そして、投石器全てが敵陣へと標的を変える。
 否応なく、方円は崩れていった。留まっていれば投石で甚大な被害を受けるからだ。

 ヴィップ軍の偃月が素早く動き始めた。
 柵の残骸を乗り越え、ショボンの近衛騎兵隊を先頭にして、突っ込んでいく。
86 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:40:35.45 ID:kPuNHJI50
 モナーのやっていたことが、ようやく分かった。
 こちらが用意していた馬止めの柵を、投石器に組み替えたのだ。

 恐らく柵の姿は仮初めで、もともと投石器として使うつもりだったのだろう。
 最初から投石器を用意していては敵に警戒される。だからその場で新しく組むという作戦に出たのだ。
 小さい作りだったが威力は遜色なかった。それもモナーが工夫したのだろう。

 さすがに歴戦の将だった。
 ヴィップを建国当初から支えてきたモナー。あまりに心強い存在だ。
 自然と、士気が高まった。

⊂二二二( `ω´)二⊃「うおおおおおおおおおお!!!」

 加速して敵陣へと斬り込む。
 方円は完全に崩れている。敵の指揮も乱れているようだ。

 アルファベットJを縦に横に振るった。
 必死でアルファベットを向けてくるオオカミ兵だが、陣がまともになっていないだけあって、脆い。
 力任せに首を取って、突き進んだ。

 当たっている敵はH兵だった。
 時には速度を落として敵の攻撃をやりすごし、再び勢いをつけて突撃する。
 緩急をつけて敵を更に乱した。

 浮足立ったオオカミ軍は為す術もなく崩れていく。
 四万の敵軍を、二万五千で圧倒していた。ほぼ大勢も決している。
 このままなら、ミルナや四中将すら討ちとれるかも知れない。無意識のうちにそう思っていた。
93 名前: すくつ(三重県) :2007/04/16(月) 23:43:13.96 ID:kPuNHJI50
 属城が、リレント率いる一万のオオカミ軍に襲われている。
 二刻後にその報せを受けるまでは、だった。


















 第29話 終わり

     〜to be continued

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