180 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 20:58:04.91 ID:WaXKxU2F0
★登場人物

〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
19歳 中尉
使用可能アルファベット:J
現在地:シア城

●('A`) ドクオ=オルルッド
19歳 シャッフル城戦・ブーン中尉配下部隊長
使用可能アルファベット:G
現在地:プリムラ砦

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
29歳 大将
使用可能アルファベット:U
現在地:プリムラ砦

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
24歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:リン城

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
27歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:リン城
185 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 20:59:44.91 ID:WaXKxU2F0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
25歳 大尉
使用可能アルファベット:M
現在地:シア城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
22歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:エヴァ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
28歳 少尉
使用可能アルファベット:P
現在地:シア城

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
44歳 中将
使用可能アルファベット:Q
現在地:シア城

●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
26歳 シャッフル城戦・ブーン中尉配下部隊長
使用可能アルファベット:I
現在地:シア城
189 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:00:59.44 ID:WaXKxU2F0
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
34歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ヴィップ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
35歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
38歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ヴィップ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
31歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
194 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:02:18.72 ID:WaXKxU2F0
★階級表

〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:ブーン
少尉:ビロード/イヨウ


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
201 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:03:58.60 ID:WaXKxU2F0
★使用アルファベット一覧

A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:ドクオ
H:
I:フィレンクト
J:ブーン
K:
L:
M:プギャー
N:ヒッキー
O:
P:イヨウ
Q:モナー
R:モララー
S:ジョルジュ/アルタイム(ラウンジ)
T:ミルナ(オオカミ)
U:ショボン
V:
W:
X:
Y:
Z:
203 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:05:10.46 ID:WaXKxU2F0
★この世界の単位

一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

 

208 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:08:03.00 ID:WaXKxU2F0
【第28話 : Vacillate】


――プリムラ砦――

 流れる閃光。
 迸り、消える。
 そして、再び動き出す。

 音が爆ぜる。
 そう感じるほど、強烈な衝撃があった。

 目の前にいる敵は、ショボン=ルージアル。
 ヴィップ国軍の、大将だ。

 先日、使用アルファベットがTに上がり、追いついたと思っていたが、ショボンもUに上がっていた。
 残念だったが、それでこそ我が宿敵だ、と嬉しくもあった。

 槌部分でショボンの横っ面を目掛ける。
 しかし、刃。ショボンはUであっさりと防いだ。
 反撃を受けぬよう、Tを引く。リーチが長いアルファベットは、カウンターを受ける危険性が高いからだ。

 ショボンのUは、およそ七尺だ。それに引き換え、こちらのTは十尺を超えている。
 リーチでは圧倒的に有利だ。距離を取れば普通は手出しされない。
 しかし、あくまで普通は、だった。

 ショボンが身を乗り出してUを振るった。
 首を引っ込めても、躱せない。Tで防いだ。
 やはり、ショボンならリーチの差をいとも容易く埋めてくる。
 だからこそ、興奮するのだ。思わず口元がにやけた。
211 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:11:20.98 ID:WaXKxU2F0
( ゚д゚)「全く……いつからヴィップは夜襲しか能がなくなったんだ?」

 風の裂ける音を奏でながら、Tを横に振るう。
 またもショボンは受け止める。眉一つ動かさず、冷静にだ。

(´・ω・`)「アンタが手強いからさ。まともに戦ってちゃ弱小ヴィップは勝てない」

 突き出されるU。
 瞬時に反応して躱す。Tの柄で弾いた。

( ゚д゚)「弱小とはよく言ったもんだな。あれだけの人材を抱えといて」

(´・ω・`)「隣の芝は青く見えるものさ」

( ゚д゚)「まぁ、俺に見る目がないのは確かかも知れんな」

 再び、金属音が蘇る。
 これが既に五合目だ。

 ショボンが本気を出せば、不利なのは当然こちらだ。
 しかし、周りを気にしてか、力を出しきれないでいる。
 それなら、首を取れるチャンスはあるはずだ。

 討ちとってしまいたい。
 ショボンがこれほどまでに無防備なのは、そうそうあることではない。

 兵糧を攻められたのは予想外だった。徹底的に秘匿してきた情報だったが、漏洩していたのだ。
 だが、保険として自分が警護の指揮を執った。もし攻められても、追い払えるように。
 おかげで、偶然にも好機を得た。ショボンを討ちとる機だ。
213 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:14:10.72 ID:WaXKxU2F0
 ショボンの近衛騎兵隊は、さすがの機動力だった。
 広範囲に警戒網を張っていたにも関わらず、掻い潜られている。
 静かに、尚且つ迅速に移動しなければ、為し得ない芸当だ。

 しかし、たかが五百。
 ショボンの近衛騎兵隊とは何度も戦った。実力は知っている。
 捩じ伏せられる、という確信があった。

 ショボンが手綱を引いた。
 呼応して、馳せ違う。六合目。やはり、金属の衝撃が生じるのみだ。
 手に僅かな痺れが走った。心地よいとさえ思える痺れだった。

 一つ、大きく息を吐いた。
 生死の狭間に立っている。それは、愉悦に満ちた空間だ。
 生涯で最高のライバルと決めた相手との一騎打ちだ。楽しくないわけがない。

 ショボンの首を取れば、快楽は更に深まるだろう。
 Tを再び出した。今度は、縦。槌部分を頭蓋に向かって振り下ろす。

 そして、再び走った痺れ。
 痛烈な一撃で、Tは弾かれていた。

( ゚д゚)(埒が明かんな……)

 実力が拮抗している。
 何より、純粋な一騎打ちではないため、力が入りきっていないのだ。
 ショボンがそうだと思った。しかし、実際には、自分も同様だった。
 守るべき兵糧があるせいで、気が漫ろになってしまっている。
216 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:17:10.07 ID:WaXKxU2F0
 ここでショボンを討ちとれば、兵糧ごときを気にする必要はなくなる。
 分かっていても、今ひとつ集中しきれないのだ。

 三千の騎兵がいる。兵糧を囲むように展開させている。
 絶対に大丈夫だ。しかし、気にかけてしまう。

(´・ω・`)「お互い、兵糧が気になるところだな」

 ショボンは不敵に笑っていた。
 Tを打ち込む。ショボンはやはり、容易くそれを弾く。
 アルファベットに関しては、全土でも随一だろう。
 自分でさえ、攻めきれないでいる。

(´・ω・`)「兵糧を赤く染められる前に、退いたほうがいいんじゃないのか?」

( ゚д゚)「有利なこちらが退く理由など、どこにもない」

(´・ω・`)「そうやって頑なになるところが、アンタの唯一とも言える欠点だ」

( ゚д゚)「何だと……」

(´・ω・`)「決めつけで行動するのは良くない、ってことさ」

 その瞬間、ショボンのUが、視界から消えた。

 咄嗟だった。
 空気の動きを感じ、咄嗟に重心を右に傾けた。
 それでも、噴き出す鮮血。
220 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:20:30.34 ID:WaXKxU2F0
 突き出されたUが、左腕を掠った。
 まともに捉えられていたら、腕はなくなっていただろう。

(#゚д゚)「くおぉっ!!」

 僅かな隙が、ショボンには生じていた。
 Tの刃を向ける。ショボンの体勢は、崩れていた。

 切り裂いた。
 空と、虚無を。

(;´・ω・)「ッ……!」

 寸でのところで躱された。
 すぐに体勢を整える。お互いに、だ。

 軽く息が切れていた。
 間合いは充分。それゆえにか、先ほどまでより手が出しにくくなっている。
 総身に血が巡るのを感じる。熱に満ちている。

 ショボンの顔もほのかに赤くなっていた。
 激しい動きを繰り返したせいだろう。

(´・ω・`)「……よし」

 ショボンが再びUを振るってくる。
 しかし、届かせる気がまるでない。威嚇にしかなっていない。

( ゚д゚)(……威嚇?)
224 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:23:39.90 ID:WaXKxU2F0
 馬の嘶きが響いた。
 棹立ちになったかと思うと、馬首を南に向けて、一気に駆け出す。
 ショボンの馬だ。

 ショボンが、逃げだした。
 一瞬の出来事だった。

 まさに脱兎のごとく。Uが目の前を横断した意味は、すぐに分かった。
 赤い光。兵の悲鳴。慌ただしい移動。
 プリムラ砦の前にあった兵糧が、燃えているのだ。

(;゚д゚)「どういうことだっ……!!」

 すぐに消火しろ、と叫んだ。
 全て燃えてしまっては、籠城が難しくなる。

(;゚д゚)「くそっ!!」

 こちらに背を向けて、隙だらけで逃げるショボン。
 しかし、追えない。馬はあちらのほうが速い。
 それに、兵糧を守ることも大切だった。

 完全に、してやられた。
 相手のほうが、一枚も二枚も、上手だったのだ。

 ショボンの後について、近衛騎兵隊も逃げだす。
 追撃しようとしたオオカミ騎兵三千に、大声で指示を出し、その場に留まらせた。
 あの五百相手に追撃戦ができる部隊など、存在しないのだ。
229 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:26:38.24 ID:WaXKxU2F0
 火が次々と燃え移っていく。
 輜重ひとつひとつは、僅かだが距離を取っていた。それを埋めるほどに、火勢が盛んなのだ。
 満足に水もないこの状況では、消火は難しかった。

 兵糧を失った。
 今までに運んだ分で、雨季まで持ちこたえられるか。
 文官に計算させる必要性が出てきた。



――プリムラ砦から南に十里地点――

(´・ω・`)「よくやってくれた。見事な働きだったぞ」

 目的を完璧に果たした。
 ドクオは、まだ体を小刻みに震えさせていた。
 恐怖によるものでは決してなく。

(´・ω・`)「これで奴らは野戦に応じるしかなくなる。満足な量はないはずだからな。
      さぁ、このシャッフル城戦も、もうひと踏ん張りだ。野戦でも存分に力を発揮するぞ!」

 呼応の声が森に谺した。

 あの状況から兵糧を燃やすのは、ショボンの近衛騎馬隊ではなければ為し得なかっただろう、とドクオは思った。
 三千を相手にしていて、その上で兵糧に火をつけるのだ。
 間近で見ていた自分さえ、信じられない光景だった。

 前面に押し出した四百だけで、三千の相手をした。
 当然、押し返された。しかし、持ちこたえた。
 その僅かな時間さえあれば、充分だったのだ。
233 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:29:52.70 ID:WaXKxU2F0
 その間に、後ろの百が存分に火矢を射た。
 連射だ。どうやったらあんなに早く火をつけて射れるのか、分からない。
 一生できそうもない、と思った。

 ミルナは、近衛騎兵隊の力を侮っていたのだ。
 この日のために、ひたすら兵糧を燃やす訓練を積んできた。
 近距離、中距離、遠距離。いずれでも火を点けられるように。

 自分も、同じ訓練を受けてきた。
 実際、後ろに百に混じって火矢を射たが、周りの半分も射れていない。
 もどかしかった。情けなさすらあった。

 その時、すっと、ショボンが隣に馬を並べてきた。
 何か言われる前に、こちらが口を開いた。

('A`)「何もできませんでした……すみません……せっかく伴っていただいたのに……」

(´・ω・`)「お前はよくやったよ。最後まで戦った。充分、立派だ」

('A`)「軍人なら、それは当然のことです」

(´・ω・`)「あぁ、そうだ。こんな危険な作戦じゃなければ、だけどな」

 軽く笑って、再びショボンは馬の歩幅を広げさせた。

 最後まで戦い抜いた。
 それは、今後大きな糧となり、自分を成長させてくれるだろう。
 収穫は多かった。
238 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:33:51.08 ID:WaXKxU2F0
 近衛騎兵隊は、おそらく二十は失っただろう。
 犠牲もあった。しかし、任務を完遂した。

 この戦は、ここからが正念場だ。
 夜空を一瞥して、馬の尻を叩いた。



――シャッフル城――

 ヴィップの動きは迅速だった。
 輸送隊がシャッフル城に入りきった瞬間、西への道を塞いだのだ。
 打ち破ろうと思えば、できなくはないが、あまり大きな意味はない。
 プリムラ砦にはまだ若干の兵糧が残っているが、ヴィップの兵と戦ってまで回収しにいく量ではないからだ。

 ラウンジがフェイト城から出撃してくれればありがたいが、さすがに今はヴィップと関わりたくないようだ。

( ゚д゚)(……厳しいか……)

 文官からの報告書に目を通した。
 かなり切り詰めても、雨季まで持ち堪えられる量は、ない。
 唇を噛んだ。

 プリムラ砦からの補給路は塞がれている。
 籠城するつもりだったため、本城からの兵站も途切れた状態だ。
 新たな兵糧は、どこからも入ってこない。

 四中将を呼んで、軍議を開いた。
 リレント以外は、いつも通りの表情を浮かべている。
 今回も期待できそうにないな、と心の中で思った。
246 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:37:17.88 ID:WaXKxU2F0
(;ゝ○_○)「まさか攻め込まれるとは……予想外でした」

( ゚д゚)「俺もだ。隠し通せる自信はあったんだがな」

(ゝ○_○)「えぇ、作戦自体は完璧だったと思います」

 相変わらず、自分の考えは間違っていないと思っているらしい。
 確かに作戦自体は問題なかった。しかし、リレントの言い方は、自分やフィルの神経を逆撫でするだけだ。
 率直に言って、保身ばかりを図るその様は、不快だった。

( ゚д゚)「一日に集中して輸送するほうが得策だと思ったが……失敗だったな……俺のミスだ」

 ヴィップの裏をかき、安全性を高めるということで、一日の大量輸送を決断した。
 しかし、その日を探られ、輸送路まで完璧に発覚していては、どうしようもなかった。

 念のため、自分が警護に赴いた。
 それで穴を塞いだつもりだったが、ショボンの近衛騎兵隊は想像以上の力を発揮した。
 三千を相手にしながら兵糧に火を点けるなど、並大抵のことではない。

 あの五百を侮った自分の失策だった。
 兵糧を多く失い、逼迫した状況を迎えてしまった。

| `゚ -゚|「私は、野戦で相手を潰すべきだと思います」

 フィルが澄んだ声で言った。
 分かりきっていた発言だ。
251 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:40:55.25 ID:WaXKxU2F0
〔´_y`〕「私も同意見です。雨季まで籠城できないとあれば、正面から打ち破るほかないかと」

《 ´_‥`》「僕も、同じです」

(ゝ○_○)「……兵糧のあては他にありません……早めに野戦を行うべきだと思います」

( ゚д゚)「そうだな……やはり、それしかない」

 他の策が出てこないことは分かっていたが、落胆してしまった。
 兵糧は戦において、欠かせず、守りとおさなければならないものだ。
 充分な量が確保されていてはじめて、まともな戦ができる。
 失えば、思い通りに戦を展開させられないのは当然だった。

( ゚д゚)「野戦の準備を進めよう。大軍なのはこちらだ。充分、勝てる」

(ゝ○_○)「えぇ、勝算はあります。打ち破りましょう」

| `゚ -゚|「それよりも私は、ひとつ、気になっていることがあります」

 散会、と言いかけたときだった。
 フィルの表情は、やはりいつも通りだが、声が少し低い。
 あのフィルが、野戦に関して話したあと、それよりもと言うのは普通ではなかった。

( ゚д゚)「……何だ?」

| `゚ -゚|「今回、兵糧を失ったことに関してです」
255 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:44:24.64 ID:WaXKxU2F0
( ゚д゚)「責任は私にある。戦が終わり次第、然るべき処分を受けよう」

| `゚ -゚|「いえ、ミルナ大将の責任ではありません。情報さえ漏れなければ、成功していたのですから」

( ゚д゚)「それら全て含めて、私の責任だろう」

| `゚ -゚|「違います。情報の漏洩こそが敗因なのです」

( ゚д゚)「何が言いたいんだ、フィル」

| `゚ -゚|「いつ兵糧を運ぶか、どうやって運ぶかは、ミルナ大将と私たち四中将しか当日まで知りませんでした。
     しかし、ショボンは明らかにそれより前から準備を整えていました。でなければ、あんな芸当は不可能です」

 軍議室が、静まった。
 フィルが何を言いたいのか、みな分かったからだ。

 ガシューが薄ら汗を浮かべている。
 リレントは眉を顰めながらフィルを睨んだ。
 ドラルはやはり表情を変えずにいる。

 沈黙を、自らの声で破った。

( ゚д゚)「……この中に、裏切り者がいる、と。そう言いたいのか?」

 フィルが、頷いた。

 空気が張り詰めている。
 それぞれが、それぞれを見る。疑心に満ちた瞳で。
261 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:47:53.37 ID:WaXKxU2F0
| `゚ -゚|「うっかりこぼしてしまったのかも知れません。私たちが話しているのを誰かが聞いたのかも知れません。
     しかし、可能性としては、明確な裏切り者がいると考えても――――」

( ゚д゚)「やめろ。軍の頂点に立つ我々の中に、いるわけがないだろう」

| `゚ -゚|「私も、そう信じたいのです。しかし、疑わなければ、裏切り者は自由に動いてしまいます」

( ゚д゚)「やめろと、言ったはずだ。もし裏切り者がいたとしたら、この戦などとうに負けている」

| `゚ -゚|「情報を漏らす直前で裏切った可能性もあります。あるいは、更に情報を引き出そうとしている可能性も」

(#゚д゚)「もういい。これからヴィップと野戦を行うというときに、誰かを疑ってなどいられるか」

 机を叩いて、席を立った。
 誰かが呼び止める声を発したが、振り向きもせずに軍議室を後にした。


( ゚д゚)(……誰かが叛意を抱いているなど……ありえるわけがない……)

 四中将の仲の悪さは有名だ。
 いまのオオカミは人材に憂えており、将来を期待されている武将も少ない。

 自然と、裏切る理由が頭の中に浮かんでくる。
 拳を壁に叩きつけて、払拭した。ありえない。そんなはずはない。

( ゚д゚)(ヴィップより兵力や国力では上回っているんだ……弱小側に裏切る理由など、あるはずが……)

 仮に四中将の誰かが裏切った場合、オオカミの力は大きく低下することになる。
 影響力が大きい武将であればあるほど、低下は著しい。
267 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:51:14.36 ID:WaXKxU2F0
(#゚д゚)(くそっ!!)

 再び拳を振るう。
 手の痛みが体に伝わる。味の悪い痺れだ。
 心の底から、苛立っていた。

 ヴィップとの野戦は近い。
 この状況で、本当に勝てるのか。不安が膨らみ始めた。

(;ゝ○_○)「ミルナ大将」

 ゆっくり歩いていたせいで、リレントに追い付かれた。
 さすがにいつもの澄まし顔ではない。汗すら掻いているようだった。

( ゚д゚)「何だ」

(ゝ○_○)「フィルの言うことなど、真に受けませんよう。あいつはいつも思いつきで物を言うのです」

( ゚д゚)「疑ってなどおらんさ。俺は四中将を信じている」

(ゝ○_○)「えぇ、私はミルナ大将を全力で支えます」

 こいつが言うと、白々しく聞こえる。
 その思いを、ミルナは心の奥底に閉じ込めた。

(ゝ○_○)「野戦に勝ちましょう。私をお使いください。他の三人なしでも、打ち勝ってみせます」

( ゚д゚)「なにか策があるのか?」

(ゝ○_○)「えぇ、もちろん。詳しくはまた後で。ミルナ大将にだけお話します」
273 : 但馬牛(三重県):2007/04/14(土) 21:54:45.96 ID:WaXKxU2F0
( ゚д゚)「俺は他の三人も使うぞ、リレント。裏切り者などいないと信じているからだ」

(ゝ○_○)「……それも、ミルナ大将らしくて、よろしいと思います」

 やはり少し、リレントは表情を歪めた。
 他の三人を使わないことで安全性を高めたがっているのは分かるが、リスクのほうが大きい。
 ヴィップは手強い。手を抜いて勝てる相手ではないのだ。

( ゚д゚)「ヴィップに勝つんだ。何がなんでも。勝ちさえすれば、何も問題はないんだ」

 リレントに言ったわけではなかったが、リレントは小さく頷いた。














 第28話 終わり

     〜to be continued

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