2 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:05:29.67 ID:FAuK2KzK0
登場人物

〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
19歳 中尉
使用可能アルファベット:J
現在地:シャッフル城周辺

●('A`) ドクオ=オルルッド
19歳 シャッフル城戦・ブーン中尉配下部隊長
使用可能アルファベット:G
現在地:シャッフル城周辺

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
29歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:シャッフル城周辺

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
24歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:シャッフル城周辺

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
27歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:シャッフル城周辺
10 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:07:39.94 ID:FAuK2KzK0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
25歳 大尉
使用可能アルファベット:L
現在地:シャッフル城周辺

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
22歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:エヴァ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
28歳 少尉
使用可能アルファベット:P
現在地:シャッフル城周辺

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
44歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:パニポニ城

●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
26歳 シャッフル城戦・ブーン中尉配下部隊長
使用可能アルファベット:I
現在地:シャッフル城周辺
13 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:09:01.06 ID:FAuK2KzK0
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
34歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ヴィップ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
35歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
38歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ヴィップ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
31歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
18 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:10:36.72 ID:FAuK2KzK0
★階級表

〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:ブーン
少尉:ビロード/イヨウ


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
20 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:12:01.34 ID:FAuK2KzK0
★使用アルファベット一覧

A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:ドクオ
H:
I:フィレンクト
J:ブーン
K:
L:
M:プギャー
N:ヒッキー
O:
P:イヨウ
Q:
R:モララー
S:ジョルジュ
T:ショボン
U:
V:
W:
X:
Y:
Z:
22 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:13:11.65 ID:FAuK2KzK0
★この世界の単位

一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

24 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:14:14.20 ID:FAuK2KzK0
【第23話 : Prop】


――シャッフル城周辺――

 春風が新緑の葉を巻き上げる。
 冬に身を打たれた病葉は影もない。
 ひとたび雨が降ればたちまち不安定になる地形も、今は固まっている。
 芽吹いた草木がその場で陽光を浴びて背伸びしていた。

 この戦とは真逆な、長閑な光景がすぐ側にはあった。

 ブーンはこの状況の中で、行動どころか思考すらできずにただ、立ち尽くしていた。

(=;゚ω゚)ノ「ショボン大将!」

 イヨウが飛び出した。
 ショボンの前に立ち、ベルとの間を防ぐ。
 しかし、ショボンは右手でイヨウの肩を掴んだ。

(´・ω・`)「イヨウ、すまない」

 ショボンが、イヨウの前に出た。

 アルファベットTを持ち、構えるショボン。
 視線はただ、ベルにのみ向いている。
29 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:17:35.47 ID:FAuK2KzK0
(;^Д^)「ショボン大将!? まさか……!」

(´・ω・`)「ベルが、俺と一対一で戦いたがっているようだ」

 左に一度、右に一度。
 アルファベットTが、左右に振られる。
 そして、正面に。

(´・ω・`)「稀代の英傑、ベル=リミナリーは、最後の相手に俺を選んでくれた。
      俺は武人として、その気持ちに応えたい」

 Tの刃は、陽の光を照り返している。
 恐らく、ベルにもその光が届いているだろう。

(;^Д^)「……いくらアルファベットWとはいえ、二里離れた相手をあそこまで正確に狙うなんて……」

(,,;゚Д゚)「アルファベットの第一人者であるベルだからこそだ……弓で右に出る者なしと言われていたからな……」

(;^ω^)「でもショボン大将、最後の相手って……?」

 自分のことを、最後の相手と言った。
 まるで、ベルが死ぬ間際のように。

(;^Д^)「それは分かんねぇ、けど……ベルの病死情報はかなり信頼できるものだった……。
     重い病だったのは間違いないと思う。そして、医療大国であるオオカミにいる……」

(,,゚Д゚)「……オオカミで生き永らえ、僅かながら戦う力を取り戻した……多分、そういうことだろう……」
33 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:20:53.01 ID:FAuK2KzK0
 ただ、ショボンを討ち取るためだけに。
 敵国であるオオカミに行き、アルファベットWを握っている。

 これが、古今東西に比肩する者なしと評された、ベル=リミナリー。

 唯一無二の存在だ、と率直に思った。

(´・ω・`)「誰も邪魔はするな。俺を庇ったりしたら、命はないと思え。
      男と男の戦いに、水を差すなよ」

 ショボンが前に歩いていく。
 誰も咄嗟には飛び出せない距離にまで、離れていく。

 そして、再びアルファベットを構えた。

(´・ω・`)「さぁ、来い」

 二里離れた二人を繋いでいるのは、言葉にはしがたい矜持だった。


――シャッフル城・城壁――

(`∠´)(それでこそ、ヴィップ国が誇る英雄、ショボン=ルージアルだ)

 ショボンは一人、前に出た。
 自分と戦うことを、受け入れた。
37 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:24:19.55 ID:FAuK2KzK0
 他の兵を前に並べれば、いくらでも回避はできるのだ。
 しかし、自分との戦いを望んで前に出てきている。ありがたかった。

 この状態なら、二里の距離があっても、一対一の戦いができる。

(`∠´)(私の全てを、お前にぶつけよう)

 Wの弦をさらに引き絞った。
 はち切れんばかりにまで。

 限界まで強く、強く、右手に力を込める。
 二の腕に、思いを込める。


 アルタイム以外の誰にも話さずに、棺に入った状態でオオカミまで来た。
 山中に隠れ住み、既に現役を退いた名医の許へ行った。

 どれほど寿命が縮まってもいい。もう一度だけ、戦場に立つ力をくれ。
 そう言うと、名医と呼ばれた老人は、無表情のまま薬を与えてくれた。

 激甚の痛みを伴った。
 息を吸うたびに体中が悲鳴を上げる。四肢を動かすたびに呻きが漏れそうになる。
 それでも耐えた。ひたすら耐えた。

 三ヶ月が過ぎてようやく、体はまともに動くようになった。
 同時に、命の果ては近いとも教えられた。
39 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:27:43.60 ID:FAuK2KzK0
 戦場にさえ立てれば、何でもよかった。
 痛みも、寿命も、何もかも。
 この日のために、全てを投げ出せた。

 もう二度と戦場には立てないと思っていたのだ。
 この日、この瞬間が、限りなく嬉しかった。
 戦場に立てた。戦場で死ねる。
 武人として、死ねる。
 最強の相手と、戦って。

(`∠´)(俺のすべてをこめたこの一撃……受けてみろ、ショボン=ルージアル!)

 右手をさらに引き、そして、Fを放した。

 一本の線となって、二里を一瞬で埋める。
 光の線。全身全霊をこめた一撃。
 ショボンに向かって、駆けている。

 ショボンの前を、不意に何かが横切った。
 鋭い輝きを放つ、光だ。

 ショボンの右手が、静止した。
 アルファベットTの姿が鮮明になる。

 Tの槌で、Fは弾かれていた。
 力なく地面に落ちる。ショボンの眼は、こちらに向いていた。

(`∠´)(……さすがだ)
44 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:31:17.18 ID:FAuK2KzK0
 容易く弾かれた。
 寿命と引き換えに力を得たおかげで、全盛期と同じか、それ以上の力が今はある。
 その一撃を、ショボンは弾いた。

 通常の一撃では、駄目だ。
 もっと力を、もっと変化を。
 でなければ、ショボンを討ち取ることはできない。

 また、視界が眩んだ。
 体が傾く。足から力が抜けていく。

(;゚д゚)「ベル殿!」

 オオカミの大将、ミルナ=クォッチが、体を支えようとした。
 それを、手で制する。
 ミルナが動きを止めた。

(`∠´)「気持ちは嬉しいが、ミルナ大将」

 足を必死で踏ん張らせた。

(`∠´)「このベル=リミナリーを、一人で戦場にも立てぬ男と貶めてくれるな」

 はっとした表情で、ミルナが後ろに下がった。
48 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:34:41.69 ID:FAuK2KzK0
 ずっと一人で生きてきたのだ。
 誰の支えもなく、戦場に立ってきたのだ。
 最後まで、そうありたい。

 武人として。

(`∠´)(……これが、最後の一撃かも知れんな……)

 力は漲っている。だからこそ、もう永くないことが分かる。
 果ててもいい。この一撃でショボンさえ討ちとれれば、それでいい。

 Fを手に取った。
 鏃を弦にかけ、ゆっくり、引いていく。

 皆が息を呑んでいた。
 その視線はただ、アルファベットWに注がれている。


 体が動くようになって、ツンに一番近いと言われるオオカミ随一の職人にWを作らせてみたところ、あっさり握れた。
 Vばかり握っていて、いつの間にかWを握れるほどに腕が上がっていたのか。
 それとも、自分の決死の覚悟にα成分が応えてくれたのかは分からなかったが、どちらでもありがたいことだった。

 オオカミ軍の寛容さには、ひたすら感謝するばかりだった。
 敵将であり、何度もオオカミ軍を苦しめてきた自分を、受け入れてくれた。
 反発は無論あったそうだが、大将のミルナ=クォッチが押し切ってくれたらしい。
 ショボン=ルージアルを討ち取ってくれるならありがたいことだ、と周りを納得させて。
54 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:38:01.54 ID:FAuK2KzK0
 ミルナと一晩語ったとき、本当は貴方に戦場を用意してあげたかっただけなのだ、と言ってくれた。
 ラウンジはいまヴィップと交戦していない。オオカミしか場所はなかったのだ。
 武人として生きてきた男が、戦場を墓場にしたがる気持ちを、ミルナは理解してくれた。

 ミルナとは何度か戦ったことがあった。
 腑抜けが多いオオカミの中で、図抜けて才気に満ちた武将だ。
 507年のフェイト城戦も、最後まで気の抜けない戦だった。
 結果的には勝ったが、かなり犠牲が多く、最大限の抵抗を受けての戦勝になった。
 あそこまで戦い抜けるのは、並大抵の武将ではない。

 ラウンジの覇道を阻む者だ。
 だが今は、伸び代の多いショボンを討ちとっておきたい。
 ショボンがいなくなれば、ラウンジの天下はぐっと近づく。
 ジョルジュを討ち取るのには失敗したようだが、ショボンさえいなくなればジョルジュを封じるのも容易いはずだ。
 この一撃が、天下の帰趣を左右すると言っても、過言ではないのだ。


 Wの弦を、徐々に引き絞っていく。
 弦が音を立てる。右腕を、限界まで後ろに引いた。

 機を待った。一呼吸、二呼吸、間を置いて。
 場は水を打ったような静けさに包まれている。
 誰も、身動き一つ取らない。
57 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:41:20.08 ID:FAuK2KzK0
 必ず機は来るはずだ。焦るな。この一撃に、すべてを込めろ。
 最後の一撃だ。何も悔いは残すな。
 四十九年の最後を飾るに、相応しい一撃を、見舞ってやれ。

 ひたすら、自分に言い聞かせた。

 不意に、声が聞こえた。
 遂に、聞こえた。

 眼を見開き、そして、瞬時に右手からFを離した。
 残像しか残らぬ速さで、ショボンに向かっていく。
 わずか数秒。誰もが呼吸を忘れた数秒。

 Fは、わずかに逸れていた。
 ショボンはTを構えているが、動きは見せない。
 それでいい、と呟いた。

 風が吹いた。
 Fが煽られて、軌道を修正する。
 ショボンの焦りが、はっきりと見えた。

 咄嗟に振られたT。
 体勢、不十分。ショボンの動きが間に合うかどうかは、誰にも分からなかった。

 光が、弾けた。
63 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:45:14.36 ID:FAuK2KzK0
 砕かれたショボンのT。破片がショボンの目の前で舞っている。
 しかし、ショボンは生きている。
 寸でのところでTが間に合い、ショボンの代わりに砕け散っていた。

 足の力が、抜けた。
 そして腕も。全身に、力が入らない。
 ここまでなのか。これが、限界なのか。

 そんなはずは、ない。

(;゚д゚)「ベル殿!!」

 ショボンはアルファベットを失ったのだ。
 あと一撃で、確実に討ちとれるのだ。

 壁にしがみつきながら、Fを握りしめた。
 震える腕。力を入れれば入れるほど、激しさは増していく。
 全身を死の痛みが蝕む。声にならない声が漏れる。

 まだ倒れるな。互いにとっての、最後の一撃が、まだ残っている。
 今までずっと、一人でやってきたのだ。最後まで、一人でやれる。
 やらなければならない。

 弦を、思い切り引いた。

(#`∠´)「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

 右腕が、軽くなった。
81 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:48:52.03 ID:FAuK2KzK0
(;゚д゚)「ッ……!!」

 そして視界に移ったのは、城壁を滑り落ちていく、WとF。
 無残、そして、無情。

 長き四十九年が、終わった。

(;`∠´)「……無念……」

 ゆっくりと手を引かれるようにして、後ろへと、重心が傾いていく。
 もう、どこにも力が入らない。
 これが死の力なのか、と感じた。

 誰の支えもなくやってきた、この人生。
 悪いものではなかった。よくやった、と自分に言ってやりたかった。
 しかし、もはや口にすら力が入らない。

 青空が光っていた。
 今から、行ってやる。今度こそ、行ってやる。
 待っていろ。

 やはり、声にはならない。
96 : 高校中退(三重県):2007/03/18(日) 18:51:57.57 ID:FAuK2KzK0
 後ろへと倒れこむ自分の体を、誰かが支えてくれた。


 涙が、溢れた。空も滲むほどに。

 しかし、体に感じたのは、石床の冷たさだった。


 視界は一度暗くなり、そして、真っ白になった。

 最後の言葉を言おうとしたが、やはりどうしても、声にはならなかった。














 第23話 終わり

     〜to be continued

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