289 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 18:47:29.96 ID:Yw9h8muB0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
19歳 少尉
使用可能アルファベット:J
現在地:シア城

●('A`) ドクオ=オルルッド
19歳 シャッフル城戦・ブーン少尉配下部隊長
使用可能アルファベット:G
現在地:シア城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
29歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:シア城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
24歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:シア城

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
27歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:シア城
291 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 18:49:04.94 ID:Yw9h8muB0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
25歳 大尉
使用可能アルファベット:L
現在地:シア城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
22歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:エヴァ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
28歳 中尉
使用可能アルファベット:P
現在地:シア城

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
44歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:パニポニ城

●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
26歳 シャッフル城戦・ブーン少尉配下部隊長
使用可能アルファベット:I
現在地:シア城
294 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 18:50:36.41 ID:Yw9h8muB0
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
34歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ヴィップ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
35歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
38歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ヴィップ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
31歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
297 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 18:51:47.73 ID:Yw9h8muB0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:イヨウ
少尉:ブーン/ビロード


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:
301 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 18:53:26.11 ID:Yw9h8muB0
使用アルファベット一覧

A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:ドクオ
H:
I:フィレンクト
J:ブーン
K:
L:プギャー
M:
N:ヒッキー
O:
P:イヨウ
Q:
R:モララー
S:ジョルジュ
T:ショボン
U:
V:
W:
X:
Y:
Z:
304 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 18:55:13.46 ID:Yw9h8muB0
この世界の単位

一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

306 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 18:57:31.31 ID:Yw9h8muB0
【第22話 : Hello】


――シア城――

 ギコ、プギャー、シラネーヨ、モララー、そしてショボン。
 東塔の将校が、続々シア城に到着した。

 シア城を奪ってから、七日が経っていた。
 傷は塞がりつつある。体も軽くなっていた。

 イヨウは、城塔から景色を眺めていた。

(=゚ω゚)ノ(……シャッフル城は、遠くないな……)

 純白の城壁に、漆黒の城塔。
 それがシャッフル城の特徴だ。
 さほど大きな城ではない。立地条件が悪いのだ。
 周辺には数える程度しか町もなく、発展の見込みは薄い地域だった。

(=゚ω゚)ノ(……俺にはもう、すべてが関係のないことだな……)

 シア城は、奪った。
 後で話を聞いた。オオカミ軍になりすまして入城し、敵兵を殲滅したのだという。
 立案はブーン配下、初陣のドクオ=オルルッドだった。
 本当に初戦争か、と問いたくなるほど、思いきった策だ。
310 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:00:25.81 ID:Yw9h8muB0
 自分の初陣はアルファベットを振るった記憶すらない。怯えてばかりだった。
 肝の据わった新鋭が現れた、と率直に感じた。
 それを補佐したフィレンクト=ミッドガルドも、いずれ将校になるだろう。

 新しい力が、頭角を現しはじめている。
 自分が軍から去っても、この国は問題なく動いていくはずだ。

(=゚ω゚)ノ(二刻後に……ショボン大将の部屋で話し合いか……)

 ショボンから伝令が来たのは、ついさっきのことだ。
 今回の戦の、敗戦による処分を、言い渡す。そう言われた。

(=゚ω゚)ノ(死罪は免れんな……)

 当然だった。
 軍令に背いて、伏兵を受けて半分の兵を失ったのだ。
 死をもって償うべきだ。そうでなければ困る。

 こんな惨めな負け方をして、生き延びるなど、耐えられないのだ。
 誰かが嘲笑するだろう。誰かが虐げるだろう。
 そんな恐怖を抱きながら生きていたくはない。

 自分の身勝手な独断で死んでいった兵にも、申し訳が立たない。
 失った兵は千五百に及ぶ。全員、アルファベットIだ。
 貴重なI隊を、多く失った。ただでさえ最近、兵が減っているのにだ。
 最終的に勝利はしたが、あまりに罪深い、と自分で思った。

(=゚ω゚)ノ(……行くか)
313 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:03:17.68 ID:Yw9h8muB0
 景色に背を向ける前に、一度だけ、視線を上に向けた。

 これが、最後の空だ。
 あまりに青く、あまりに深い。
 広々としていて、なのに伸ばせば届きそうな蒼穹。
 こうありたかった、とふと思った。


――シア城・軍議室――

 部屋の中には、ショボンしかいなかった。
 地図や書類が多数積み上げられている。シャッフル城戦について考えていたのだろう。
 自分以上の体格のショボンが座っていると、机も小さく見えた。

(´・ω・`)「ブーンから話は聞いた」

 ショボンが筆を置いて、こちらを見据えた。
 机の上にあるのは一枚の紙だ。内容は読み取れない。
 だが、何となく見覚えがある気がした。

(´・ω・`)「俺は、残念に思う」

 口から洩れたのは、嘆息だった。
 威圧感のあるショボンの顔が、沈んだ表情を浮かべている。

(´・ω・`)「お前の武勇は誰もが認めるところだ。何度も敵将を討ち取り、俺を助けてくれた」

(=゚ω゚)ノ「……ご期待に添えず、申し訳ない限りです」
317 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:06:01.57 ID:Yw9h8muB0
(´・ω・`)「少将から中尉への降格処分も、お前に奮起してもらいたかったからなんだ。
      近頃のお前は、昔のような直向きさを失っていた。酒を飲んで失敗などしてな。
      少将になったあたりから、自尊心ばかりが先行して、向上心を失っていたように思う」

 こんな話を、今更したくはなかった。
 感傷に浸りたい気分ではないのだ。

(´・ω・`)「今回の戦は、最終的には勝てた。ドクオという部隊長が頑張ってくれたからな。
      しかし、お前の敗戦は、やはり看過できない」

(=゚ω゚)ノ「すべて、覚悟できております」

(´・ω・`)「そうか」

 ショボンの声は、冷静さに満ちていた。
 冷徹ではない。冷静だ。それは間違いなかった。

 ショボンが、机の上にあった紙を手に取った。
 薄茶色のそれは、細かい字に埋められている。

 手渡された。
 そしてそこに書いてあった文字に、どんな反応を示せばいいのか、分からなかった。

(=;゚ω゚)ノ「……どういうことですか?」

(´・ω・`)「……ん? どういうことですか、とは何だ? 不服か?」

(=;゚ω゚)ノ「不服です。納得できません」
322 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:08:54.97 ID:Yw9h8muB0
 降格処分。
 イヨウ=クライスラー中尉を、一階級降格する。
 冒頭に書かれていたのが、その二行だ。

(=;゚ω゚)ノ「何故、死罪ではないのですか? 私のしたことは、降格処分などで収まらないはずです」

(´・ω・`)「おい、何を言っているんだ? 死罪だと? どこまで思い詰めるつもりだ?」

(=;゚ω゚)ノ「思い詰めてなどいません。死罪が妥当だと、私自身が思っているのです。この処分は、甘すぎます」

(´・ω・`)「甘くはないさ。確かにお前は夜襲で千五百を失ったが、降格処分すら悩んだほどだ。
      一度、少尉にまで落ちれば今度こそ危機感を持つだろうと思った結果なんだが」

(=;゚ω゚)ノ「ただの敗戦ではありません。軍令に背いての夜襲で、失った千五百です。
     ブーン少尉のおかげで此度の戦は勝てましたが、本来なら大敗していたはずです」

(´・ω・`)「……俺には、お前の言葉の意味が分からん。軍令に背いた、とはどういうことだ?」

 話が、噛み合わない。
 どういうことだ。何故、認識が食い違っている。

 はっと、気が付いた。ブーンだ。
 ブーンが、自分を庇うために嘘をついたのだ。

(=;゚ω゚)ノ「ショボン大将、ブーン少尉の言ったことは嘘です」

(´・ω・`)「……何だと?」
325 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:11:46.71 ID:Yw9h8muB0
(=;゚ω゚)ノ「ブーン少尉は恐らく、イヨウの攻めは計画されたものだと言ったのでしょうが……違います。
     私が無断で攻め込みました。独断で、夜襲をかけました。ブーン少尉はそれを救援してくれたのです」

(´・ω・`)「……何故、そんな嘘をつくんだ、イヨウ。そんなに死罪が望みか? 戦が嫌になったのか?」

(=;゚ω゚)ノ「私の言っていることが真実です。ブーン少尉は私を庇っているだけです」

 ショボンが背凭れを軋ませた。
 同時に息を吐いて、目を伏せる。
 机に両肘をついて、手を前で組んだ。

(´・ω・`)「実はな、お前の部隊長にも話を聞いてあるんだ。ニッカという部隊長がいただろう?」

(=;゚ω゚)ノ「え? あ、はい……」

(´・ω・`)「ニッカには突然話を聞きに行った。嘘でごまかす余裕はなかったと思う。
      ニッカは今回の戦について、『イヨウ中尉の夜襲は、ブーン少尉と話しあって決めたもの』と教えてくれたぞ」

 思い出した。
 確かに、騎兵三千を納得させるために、そんな嘘をついた。
 これでは、辻褄が合ってしまう。

(=;゚ω゚)ノ「それは私が嘘を」

(´・ω・`)「もういい。お前の処分は決めたことだ。覆すつもりはない。
      お前は貴重な人材だ。仮に軍令違反が真実だとしても、死罪には至らん。
      死罪など望まれては困るんだ。戦死と病死以外は、認めんぞ」
328 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:14:30.57 ID:Yw9h8muB0
(=;゚ω゚)ノ「ショボン大将」

(´・ω・`)「今後に期待している、イヨウ少尉」

 ショボンが書類の山を崩して、目を通し始めた。
 この状態になったショボンは、何を言っても聞かない。
 頑固な一面を顕わにしている状態だ。

(=;゚ω゚)ノ「……失礼します」

 ショボンはこちらに目を向けることもなく、黙々と書類を見続けている。
 頭を下げて、軍議室を退出した。


――シア城・屋上――

 ブーンは屋上にいると聞いて、駆け上がった。
 納得できるわけがない。してはならない。
 すべて問い質してやる。そんな強い思いを抱きながら。

(=゚ω゚)ノ「ブーン少尉!」

 景色を呆然と眺めていたブーンが、驚いた表情をしていた。
 そして、苦笑いに変わった。こちらが何を言いたいのか、分かったようだ。

(;^ω^)「な、なんですかお?」

(=゚ω゚)ノ「……とぼけるな。何故、嘘をついた?」
333 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:17:15.87 ID:Yw9h8muB0
(;^ω^)「えーっと……何のことか分かんないですお」

(=#゚ω゚)ノ「ふざけるな!」

 歩み寄った。
 ブーンが後退する。しかし、さらに詰め寄る。
 壁際まで、追い詰めた。

(=゚ω゚)ノ「俺は惨敗した。ブーン少尉の作戦を無視して夜襲をかけた上でだ。
    少尉のおかげで勝てたが、本来負けていたはずの戦だ。俺のせいだ。
    武将としての誇りは地に塗れているんだ。俺に生き恥を晒せというのか?」

( ^ω^)「……そんなんじゃないですお」

(=゚ω゚)ノ「ブーン少尉の意図は関係ない。俺はこのまま生きることには、耐えられんのだ。
     俺のせいで死んだ兵にも申し訳が立たん」

( ^ω^)「それですお」

(=゚ω゚)ノ「何だと?」

( ^ω^)「死んだ兵のために、生きるべきなんですお」

 一陣の風が屋上を通り過ぎた。
 肌を撫で、声を耳に残して。

334 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:20:00.52 ID:Yw9h8muB0
( ^ω^)「誰だって生き残りたいんですお。生きて、志を果たしたいんですお。
     イヨウ少尉のせいで死んだ兵は、確かにいますお。
     でもそれは、最後まで生きたいと思いながら、志のために死んだ兵ですお。
     イヨウ少尉は生きられるんですお。なのに死のうなんて……それこそ、死んだ兵に失礼ですお」

(=;゚ω゚)ノ「ッ……」

( ^ω^)「イヨウ少尉は確かに間違ってたと思いますお。軍令違反は許されませんお。
     でも結果的には勝てたし、イヨウ少尉は生き残れましたお。
     だから、これからも生きて、これからも戦って、ヴィップの天下に貢献する……。
     統率する立場である将校は、死んだ兵のために、そうすべきなんですお」

(=゚ω゚)ノ「……俺に説教か……ブーン少尉……」

(;^ω^)「実はもう少尉じゃないんですお。今回の戦勝と、先日ジョルジュ大将の命を救ったことが評価されて、中尉になりましたお」

(=゚ω゚)ノ「……そうか……それは妥当な昇格だ」

( ^ω^)「イヨウ少尉への処分だって、妥当ですお。これからも、兵を率いて戦うべきなんですお」

 空は尚も澄み切っている。
 深い青。手を伸ばせば届きそうで、永劫届くことはない。
 しかし、向かって駆けることはできる。
 いや、そうしなければならないのだ。

(=゚ω゚)ノ「……俺は臆病者だ、中尉」

( ^ω^)「ブーンも、同じですお」
337 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:22:53.62 ID:Yw9h8muB0
(=゚ω゚)ノ「本当は、死だって怖いんだ。戦になれば恐れることはないが、冷静に考えると怖くなる。
    ……俺のせいで死んでしまった兵も、そうだったかも知れない……だからこそ、俺が死にたいなどと言えば、恨まれるだろうな」

( ^ω^)「そう思いますお」

(=゚ω゚)ノ「……俺が許されることのない咎を犯してしまった事実は変わらない。それは一生胸に抱き続ける。
    その事実を忘れずに、俺は必死に生き抜いて、戦い抜こうと思う」

 ブーンが笑顔で頷いた。
 人懐っこい笑顔だ。思わず、口元が綻んだ。


 部屋に戻って、酒瓶をすべて割った。
 もう二度と口にはしない。そう誓って。

 壁に立てかけられていたアルファベットPを握った。
 鍛練のために、調練室へと向かう。シャッフル城戦では、必ず活躍してやると強く思いながら。

 窓の外の空は、やはり広大だった。
340 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:25:01.18 ID:Yw9h8muB0
――十日後――

――シア城・軍議室――

(´・ω・`)「モララーが見事リン城を奪った。これで残すはシャッフル城のみだ」

 ギコとシラネーヨがリン城戦に追従したため、ここにいる将校はショボン、イヨウ、プギャー、そしてブーンになった。
 ブーンは新中尉になったが、まだ遠征中であるため、待遇は何も変わっていない。
 軍議でも優先権などはないし、昇格を実感するのはヴィップ城に戻ってからだろう。

 イヨウは少尉になったが、むしろ以前より逞しく見えた。
 酒を断って鍛練しているのだという。シャッフル城戦にかける思いは強いようだ。

( ^Д^)「さすがですね、モララー中将」

(´・ω・`)「お得意の挑発さ。レナッドに裏切られてアラストール城を奪われたときも、レナッドを挑発して誘き出したからな」

(;^ω^)「モララー中将の策って、それですかお?」

(´・ω・`)「あぁ。相手の素性を調べ上げて、罵詈雑言の嵐を浴びせる。あの言葉は癇に障るだろうな」

( ^Д^)「相手は怒り心頭で冷静に戦えないし、モララー中将得意の野戦に持ち込める。見事なもんだよ」

(;^ω^)「いったい、どんな言葉を……?」

(;^Д^)「そりゃー言えねー……ピーの音声がかぶっちまう……」
345 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:27:13.65 ID:Yw9h8muB0
(´・ω・`)「とにかく、ここまでは順調に来ているな。二つの属城を潰した今、情勢はヴィップに傾いている。
      五日後、シア城を進発してシャッフル城に向けて進軍する。一日で着く。
      シア城とリン城を拠点にすれば、いざというときに城に篭れるから戦は楽になるな」

(=゚ω゚)ノ「しかし、シャッフル城はどう奪う予定ですか?」

(´・ω・`)「オオカミは打って出てくると予想している。今回の戦にはミルナがいるからな。
      野戦でぶつかる。正面からそれを打ち破って、オオカミ軍を退却させる。
      オリンシス城への道は空けておこう。退却路があれば、逃げるという選択肢が浮かぶだろうからな」

( ^Д^)「オオカミは今、どうしていますか?」

(´・ω・`)「シャッフル城の外に布陣している。城外にいるのは、三万だな」

( ^Д^)「ヴィップ軍と同数ですね」

(´・ω・`)「いや、ヴィップ軍は二万七千にまで減っている。オオカミ軍はまだ城内に一万五千を残しているしな。
      シア城やリン城にも守りを置かなければならない。野戦に使えるのは、二万三千だ」

(=゚ω゚)ノ「……苦しい戦いですね」

(´・ω・`)「まぁ、アルファベットでは圧倒的にこちらのほうが有利だがな。勝負は、互角だと思う」

( ^Д^)「ミルナが何か策をしかけてくる可能性は?」

(´・ω・`)「もちろんある。が、低いと思う。あいつも野戦には自信を持っているからな。
      正々堂々、ヴィップ軍を打ち破るつもりだろう。まともなぶつかりあいになるな」
349 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:30:02.18 ID:Yw9h8muB0
 不意に、心がざわめいた。

 不穏。表現するなら、その言葉になるだろう。
 何かが起きる。そんな気がした。

 気のせいだ、と思いこんだ。

(´・ω・`)「各将校が率いる軍を伝える。リン城にもあとで通達するが、こんな感じだ」

 ショボンが一枚の紙を広げた。
 将校ごとに、何隊が何千と記されている。
 ショボンがI隊騎兵三千五百。モララーがI隊騎兵三千。ギコがH隊歩兵四千。
 プギャーがG隊歩兵四千。シラネーヨがG隊騎兵三千。イヨウがE隊歩兵三千。
 そしてブーンは、G隊歩兵三千だった。

(´・ω・`)「誰が誰にぶつかるか。それが野戦では鍵となる。
      総指揮は俺だが、指示が行き届かない場合もあると思う。
      各将校の、臨機応変な行動に期待する。以上だ」

 立ち上がり、続々軍議室から退出した。
 一抹の不安は、消えた。そう信じたかった。

 軍議室を出て上に向かっている途中、プギャーと二人になった。
 ヴィップ城でも最近はあまり会話していなかったが、何度も世話になった人だ。
 仲は良かった。

( ^ω^)「プギャーさん、お久しぶりですお」

350 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:32:11.90 ID:Yw9h8muB0
( ^Д^)「おう。新中尉さんはすっかり逞しくなったな」

(;^ω^)「からかわないで下さいお」

( ^Д^)「悪い悪い。それにしても、早い昇格だな。
     少尉になったのも早かったが、中尉もあっという間じゃねーか」

( ^ω^)「運が良かったんですお。イヨウさんが降格して、中尉が誰もいなくなったから……」

( ^Д^)「穴埋め的な要素もあった、ってわけか? それにしてもスゲーよお前は。
     まさかここまでとは思わなかったぜ……ショボン大将も予想外の成長だって言ってたしな」

(*^ω^)「ホントですかお? 嬉しいですお」

( ^Д^)「俺も負けてらんねーな。うかうかしてたら追い越されちまうぜ」

( ^ω^)「とんでもないです……お?」

( ^Д^)「……お、気づいたか? っていうか、気づいてなかったのか?
     ヴィップ城に出発する直前に完成したんだ。アルファベット、Mだぜ」

 プギャーが背のアルファベットMを手に取った。
 MはDの上位版にあたる、弓だ。下位のアルファベットなら遠距離からでも一撃で粉砕する。
 速射性にも優れるという。

( ^Д^)「まぁ、さすがに近距離じゃなかなか使ってられないんだけどな」

( ^ω^)「じゃあ、まだLも使うんですかお?」
355 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:35:03.57 ID:Yw9h8muB0
( ^Д^)「あぁ。なるべくMを使うようにするが、近距離の場合はLで戦うよ」

(;^ω^)「Nへの昇格は大変そうですお……」

( ^Д^)「いや、そうでもないらしい。ショボン大将は二ヶ月で通過したって言ってたよ」

( ^ω^)「ほぇー……そうなんですかお」

( ^Д^)「多分、辛いのはWだろうな。弓系では最上位アルファベットだが、弓だけでXにいくのは……」

( ^ω^)「でも、Wを使った人は現代アルファベットじゃ存在しないから……」

( ^Д^)「分からんってことだな。もしかしたらDやMと同じようにあっさり通過するかも知れんしな。
     Vまでいったベルが死んだのが残念だな。あの人ならZまでいくと思ってたんだが」

 ベルがいなくなった今、Zに最も近いのはショボンだ。
 まだ二十九。いずれZには到達するだろう。
 そのときが楽しみだった。

( ^Д^)「次のシャッフル城戦も、お互いに頑張ろうぜ。雨季までに落とさなきゃな」

( ^ω^)「頑張りましょうお!」

 握り拳を合わせた。
 力強いプギャーの拳、瞳。
 頼もしく思えた。
360 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:37:07.92 ID:Yw9h8muB0
 不安など抱く要素はどこにもない。
 全力を出せば、きっと勝てるはずだ。

 朗らかな気持ちで、自分の部屋に戻った。



――二日後――

――シャッフル城周辺(シャッフル城まで二里)――

 オオカミ軍は、シャッフル城の東と西に布陣していた。
 この辺りもやはり地面は悪く、山も多い。深い森を伴った山だ。
 トーエー川も近かった。さすがに此度の戦では使ってこないだろうが、オオカミの水軍は他の二国とは比較にならないほどの精鋭だ。
 もし水軍を使った戦になれば、敗戦の可能性は大幅に高まるだろう。

 シャッフル城の南、二里の位置にまで迫った。
 オオカミ軍が何故、南に布陣していないのか。それに対しては、ショボンやモララーも首を捻っていた。

(´・ω・`)「城に近づけるのはありがたいんだが……分からんな」

( ・∀・)「敵の策に乗せられているようで、なーんとなく癪ですね。
     まぁ、城の近くなら、隙あらば城内に攻め込めますし、良しとしましょう」

 隊を整えた。
 整然としたヴィップ軍を、シャッフル城の城壁から眺めているオオカミ兵がいる。

 また、不安が胸に去来した。
362 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:38:53.51 ID:Yw9h8muB0
 胸騒ぎとなって総身に響く。視界が揺らぐほどに。
 もう春なのに、寒気がする。なんなのだ、これは。

 消えろ、消えろ。
 戦が始まるのだ。こんなわけの分からない胸騒ぎに乱されて、たまるか。
 頬を何度も叩いた。それでも、情景が薄暗く見える。

 何も気にするな。何度も自分に言い聞かせた。
 背筋を伸ばして、直立する。前をしっかり見据えた。
 全軍の前に立っているのは、ショボンとモララーだ。
 戦前の発破を、今回はモララーがやるのだという。

( ・∀・)「シャッフル城を奪えば、トーエー川の東端を手中に収めることができる」

 モララーが声を発し始めた。
 いつもより少し低い。全軍に届くよう大声を出しているため、そうなっているのだろう。

( ・∀・)「南のマリミテ城を攻めるときに、エヴァ城を奪われる心配することもなくなる。
    戦略的に、今後のヴィップにとって重要な城だ。ここを奪えばマリミテ城戦が楽になる。
    オオカミ軍は数を恃みにしているが、ヴィップにはアルファベットの強みがある」

 モララーがアルファベットを掲げた。
 光り輝くRの刃。相変わらず、綺麗なアルファベットだ。

( ・∀・)「迷うことなく振るえ! 惑うことなく戦え! この戦をっ……」


 ――――それは、まさに不意だった。
371 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:40:51.35 ID:Yw9h8muB0
 モララーの言葉が途切れた瞬間、時が止まったと思った。
 同時に、今まで感じていた不安や悪寒の原因が、分かった。

 モララーの頭上に降り注いだのは、金属片。

 砕け散った、Rの刃だった。

(;・∀・)「はっ……!?」

 地面に、何かが突き刺さった。
 呆然としていて、わけが分からなくて、突き刺さったものも最初は理解できなかった。
 そして正体が分かっても、何故そこに刺さっているのか、誰にも分からなかった。

 何故、ここにアルファベットFが刺さっているのか。
 何故、モララーのアルファベットRが砕けたのか。

 答えは一つしかない。
 だが、信じられなかった。

(;´・ω・)「そんな……バカな……!!」

 ヴィップ兵の視線すべてが、シャッフル城の城壁に注がれた。

 二里離れている。それでも、はっきりと分かる。
 映し出された、アルファベットのシルエット。

 間違いなく、Wだった。
380 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:43:02.84 ID:Yw9h8muB0
(;・∀・)「W……だと……!?」

(;´・ω・)「……そんな……まさか……!
      Wを……使える……のは……」

 誰も、いなかったはずだ。

 しかし、もしいるとしたら。いるとしたら――――


 ――――ベル=リミナリー。


 それ以外、ありえなかった。


(;´・ω・)「何故……ベルが……!?」

(;・∀・)「ベルが……生きていた……!?」

 白の混じった金髪、通った鼻筋、他を威圧するような瞳。
 ブーンが最初に戦った相手と、酷似している。
 しかし、今度は偽者ではない。

 紛れもなく、ベル=リミナリー本人だった。
386 : 恐竜(三重県):2007/03/12(月) 19:44:54.29 ID:Yw9h8muB0
 生きていること。オオカミ軍にいること。Wを操っていること。

 その全てが、分からなかった。





 第22話 終わり

     〜to be continued




――シャッフル城・城壁――

(`∠´)「モララーのRに防がれたか……」

 視界が一瞬、眩んだ。
 少しでも気を抜けば、体も言うことをきかなくなるだろう。

(`∠´)(……あと二発……もって、三発だな……)

 自分の、全てをかける。全てをかけて、ショボンを討ち取る。
 そのために、ここまで耐えてきたのだ。必ず、しとめてやる。
 アルファベットFを右手に持ち、Wの弦を引き絞った。
 狙いはショボン=ルージアル、ただ一人だ。

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