3 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 15:56:30.86 ID:fMzL16nx0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
19歳 少尉
使用可能アルファベット:J
現在地:ヴィップ城

●('A`) ドクオ=オルルッド
19歳 シャッフル城戦・ブーン少尉配下部隊長
使用可能アルファベット:G
現在地:ヴィップ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
29歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
24歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:エヴァ城

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
27歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
5 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 15:58:11.28 ID:fMzL16nx0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
25歳 大尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヴィップ城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
22歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャナ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
28歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
44歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:パニポニ城

●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
26歳 シャッフル城戦・ブーン少尉配下部隊長
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城

6 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 15:59:19.50 ID:fMzL16nx0
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
34歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ヴィップ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
35歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
38歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ヴィップ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
31歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城

7 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:01:10.91 ID:fMzL16nx0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:イヨウ
少尉:ブーン/ビロード


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:

8 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:02:07.52 ID:fMzL16nx0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:ドクオ
H:
I:フィレンクト
J:ブーン
K:
L:プギャー
M:
N:ヒッキー
O:
P:
Q:
R:モララー
S:ジョルジュ
T:ショボン
U:
V:
W:
X:
Y:
Z:

11 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:05:11.02 ID:fMzL16nx0
【第19話 : Repulse】


――夜――

――帰らずの森・小屋――

ξ゚听)ξ「Jは私が一番得意なアルファベット。依頼が一番多いからね。仕上がりも早いってわけ」

 部屋の中心にある机に、長方形の箱が置かれていた。
 ツンが蓋を開ける。大きく反った刃を持するJが、姿を現した。

( ^ω^)「ありがとうございますお」

 柄を握った。
 城にあったJで、既に触れられることは分かっている。
 当然、熱はない。

ξ゚听)ξ「次の戦の前に壁を越えられて、良かったわね」

( ^ω^)「ホントですお。Iも好きだったけど、Jは威圧感があるっていうか……将校らしさがあって、いい感じですお」

ξ゚听)ξ「そうね……ただ、Iの扱いやすさに慣れてると苦労するかもしれないわ。訓練だけは怠らないでね」

( ^ω^)「もちろんですお。助言ありがとうございますお」

 机の上に置かれたツンの左手を、握った。
 軽く握りしめられていた拳を、包むような形で。

ξ*゚听)ξ「え、えっ……?」
14 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:09:09.43 ID:fMzL16nx0
(;^ω^)「いや、あの、握手しようと思って……」

ξ;゚听)ξ「……あ、うん……」

 ツンが左手を引っ込めた。
 机の下に隠れていた右手を、差し出される。

 思わず、首を傾げた。

(;^ω^)「あれ? なんで右手なんですかお?」

ξ )ξ「……私、左利きなの」

(;^ω^)「???」

 ならば尚更、左手でするものではないのだろうか。
 利き手を引っ込める理由が、分からなかった。

( ^ω^)「左利きなら、普通は左で……」

ξ )ξ「……鈍いのね、ブーンくん……」

(;^ω^)「鈍い??」

 ツンが顔を俯けた。
 同時に右手を再び机の下に隠す。
 微かに、震えた手を。
18 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:13:00.86 ID:fMzL16nx0
ξ )ξ「毎日、鉱物を触って、熱された窯に手を入れて……鉄槌を握って、振るって……。
   ……そんな日々を送る女の利き手が、綺麗だと思う?」

(;^ω^)「……!!」

 輝くような色を持ったツンの髪は、表情を隠している。
 確認せずとも分かる、その表情を。

ξ )ξ「右手だってボロボロだわ……それでも、左手に比べたらはるかにマシなの……」

(;^ω^)「ツンさん……」

ξ )ξ「……ゴメンね、下らない話をして」

 ツンが顔を上げた。
 柔らかな笑み。優美な顔立ちを、際立たせている。
 縦断する一筋の涙さえなければ。

ξ;゚听)ξ「……え?」

 立ち上がった。

 長椅子に座っていたツンの隣に、腰掛ける。
 机の下で固く握りしめられた左手を掴んだ。
 ツンは驚いて、更に手を固く閉じる。

 左手で手首を掴んで、右手でゆっくり、ツンの手を解していく。
 人差し指から一本ずつ、指を伸ばさせていく。
 細く柔な指。女性特有の温かみもある。
23 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:16:48.37 ID:fMzL16nx0
 開かれたツンの手を、右手で握りしめた。

( ^ω^)「……ツンさん、僕たち国軍将校は、ツンさんのおかげで戦えますお」

 ツンの顎から、涙が一滴流れ落ちた。
 ブーンの手に当たり、やがて床へと流れていく。

( ^ω^)「ツンさんがこの手で作り出したアルファベットのおかげで、生きていられますお……全部、ツンさんのおかげですお。
     ツンさんの手は、国を天下に導き、僕たちの命を守る……世界一、美しい手ですお」

ξ*;凵G)ξ「ブーンくん……」

 指を絡ませる。
 皮の捲れや火傷の痕、すべてが彩りとなっていた。

ξ*;凵G)ξ「……嬉しくなんか……嬉しくなんか……ないんだからね……」

 互いに、握る力を強めた。
 言葉もなく、ただ互いの熱を感じるだけの時間。
 充実という言葉では、足りないほどだった。

 朝になるまでずっと、手を繋いで、寄り添いあっていた。
25 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:21:12.39 ID:fMzL16nx0
――十日後――

――エヴァ城――

( ・∀・)「行軍お疲れさん」

( ^ω^)「お久しぶりですお。先日はありがとうございましたお」

( ・∀・)「何がだ?」

 この人らしい答えだ、と思った。とぼけているわけでも何でもなく、純粋に分からないのだろう。
 頭を横に振って、何でもないですお、と言った。

( ・∀・)「なんだそりゃ……まぁいいや。お前が率いてきたのは五千の歩兵だな。明日の朝、全部シンジ城に入れろ。
    イヨウ中尉の騎兵三千も一緒だ。明後日には再び行軍、一日三十里のペースでシャッフル城に向かってもらう。
    二人にはまず属城のシア城を落としてもらうんだが、そのシア城まで三十里の距離で行軍停止。
    滞陣して指示を待て。多分すぐに攻撃命令は下ると思うがな。とりあえず、そんなところだ」

( ^ω^)「了解ですお」

( ・∀・)「ところで、イヨウ中尉は?」

( ^ω^)「外で野営の準備を整えてますお」

( ・∀・)「お前の補佐をするらしいな。気をつけろよ」

( ^ω^)「???」
27 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:24:58.60 ID:fMzL16nx0
( ・∀・)「イヨウ中尉みたいな直情型の武将は、いつ何をするか分かんねーからな」

 窓の外は闇色に染まりかけている。
 まだ姿を明確にしていない月にかかる、薄雲。
 夜が深まれば、不穏な光が空に広がるだろう。


――翌日――

――シンジ城――

 五千の歩兵を率いてシンジ城に入った。
 イヨウ中尉率いる騎兵は既に到着している。
 行軍を共にすることはなかった。

 兵をシンジ城にすべて入れてから、ようやく休みが取れた。
 ドクオと二人で屋上に昇り、風景を眺める。遠方にエヴァ城の片影が見えた。
 暖かみを帯びた風が、二人の側を静かに通り抜ける。

('A`)「ヴィップ城にすっかり慣れちまったからかな……やたら小さく感じるぜ」

( ^ω^)「まぁ、実際シンジ城は小さいお」

('A`)「そうなのか……今度攻めるシア城はどうなんだろうな」

( ^ω^)「知らないけど、城の大きさは関係ないお。敵も城の外に滞陣してるらしいお」

('A`)「ん? なんで城外に出てるんだ? 寡兵なのはこっちだろ?
   打って出ずに篭城すれば戦を長期化させられるのに」
30 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:28:48.42 ID:fMzL16nx0
( ^ω^)「あっちも短期で終わらせたいんだお。慢性的に兵糧不足なオオカミは、戦が長引くと不利なんだお」

('A`)「あー、なるほどな……城外に陣を構えればぶつかるからな。オオカミはこっちを打ち破る自信があるってわけか」

( ^ω^)「数を恃みにしてるんだお。八千の攻めに対して、一万の兵で対抗するつもりらしいお」

('A`)「……まぁ、それだけじゃないんだろうけどな」

( ^ω^)「……ミルナ=クォッチかお?」

 オオカミ軍最強武将、ミルナ=クォッチ。
 大将としてアルファベットSを操る、オオカミの柱だ。
 まだ三十五で、これから円熟の域に入る手強い相手だった。

('A`)「モララー中将はミルナと戦ったことあるんだろ? なんか言ってたか?」

( ^ω^)「今ショボン大将と正面から戦えるのはミルナだけだ、って」

('A`)「一般的にも、ラウンジの新大将アルタイムよりは高い評価だよな」

( ^ω^)「だお。経験豊富なだけあって、戦も上手いらしいお。三年前のエヴァ城陥落もミルナの功績だお」

('A`)「ショボン大将を自陣ギリギリまで引き込み、一気に打通してほぼ空になってたエヴァ城を占拠……並の武将じゃ絶対無理だな」

(;^ω^)「あのショボン大将が後手後手に回らされたなんて、信じられないくらいだお」

('A`)「そのミルナが今回の戦に出てくる、か……まぁ、シア城戦にはさすがに出てこないだろうが、シャッフル城まで行けばな……」

( ^ω^)「エヴァ城を奪ってから、ヴィップの士気は高いままだお。
     勢いを衰えさせずにシャッフル城を奪いたいところだお」
35 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:32:17.61 ID:fMzL16nx0
('A`)「だな。とにかく、シア城の奪取。そっからだ。
   ところで、リン城はどうするんだ? 二つの属城はどっちも奪っとかないと」

( ^ω^)「リン城はモララー中将が攻めるらしいお。策があるって言ってたお」

('A`)「へー、モララー中将の策か……そりゃ楽しみだ」

 ドクオが軽く笑った。
 初めての戦ということで、ドクオは興奮している。恐怖はあまりないようだ。
 モララーの策も、純粋に楽しみなのだろう。
 今は何もかもが新鮮なはずだ。

(‘_L’)「ブーン少尉、軍議の準備が整いました」

 フィレンクトが屋上に昇ってきた。
 吹きつける風に目を細めている。腰布が後ろに靡いていた。

( ^ω^)「ありがとうございますお。イヨウ中尉は?」

(‘_L’)「連絡してあります」

( ^ω^)「何から何まで押し付けてしまって、すみませんお」

(‘_L’)「……ブーン少尉は部隊長経験がおありですか?」

(;^ω^)「ほぇ? いや、ブーンはないですお」
38 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:35:45.18 ID:fMzL16nx0
(‘_L’)「部隊長は本来、もっと雑務をこなすものです。
    私は一度、イヨウ中尉の許で部隊長をやったことがありました。
    かなり人使いが荒く、行軍の指揮から守将への挨拶まで全てやらされた記憶があります。
    イヨウ中尉ほどではないにしろ、他の武将もそんなものです。ブーン少尉は甘いのでないか、と思うくらいです」

(;^ω^)「そうなんですかお? ブーンやドクオが何もわからないからって、全部フィレンクトさんに押し付けて、申し訳ないくらいですお……」

(‘_L’)「つまり私が言いたいのは、気にしないでください、ということです。
    軍議に向かいましょう。明日にはここを発たなければならないのですから」

 フィレンクトが踵を返した。
 普通の歩みが、颯爽として見える。

(*'A`)「フィレンクトさんって、かっこいいな……頼りになる大人の男って感じだぜ」

( ^ω^)「いつも助けてもらってるお。あの人ならきっと将校も近いお」

('A`)「いろいろ勉強になりそうだ……よし、俺達も軍議室に行こうぜ」

 頷いて、階段を下った。
 シンジ城は小さいといっても、軍議室は一階にあり、そこに行くまでに時間はかかる。
 すぐに軍議が始まるわけではないが、少し急ぎ気味で向かった。

 軍議室に入ると、既に将校と部隊長は全員揃っていた。

( ^ω^)「……皆さん揃っているようなので、ちょっと早めですが、軍議を始めたいと思いますお」

 地図を広げて、話し始めた。

39 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:39:53.29 ID:fMzL16nx0
 軍議といっても、モララーからの指示を皆に伝えるだけだ。
 ここにいる将校は自分とイヨウだけで、役割は大きく二つに分担される。
 先陣切って敵にぶつかる自分と、それを後方援護するイヨウ。

 ショボンは、イヨウを補佐役に位置付けた。
 つまり、対等にするなと暗に言っているのだ。
 後方援護の役目にするべきなのだろう。

(=゚ω゚)ノ「終いか?」

 イヨウが低い声で言った。
 圧するような凄味が込められている。
 しかし、怯むわけにはいかない。

( ^ω^)「……説明は以上ですお」

(=゚ω゚)ノ「じゃあ、俺から意見を述べさせてもらう」

 イヨウが立ち上がった。
 地図の上に置かれた、武将の駒を握る。
 イヨウを表すために置いた、青色の駒だ。

 それを、前に進めた。
42 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:43:46.93 ID:fMzL16nx0
(=゚ω゚)ノ「俺の役目を後方援護としたが、敵が大軍である以上、束になってぶつかるべきだろう。
     
縦しんばブーン少尉が単体でぶつかるとしても、俺は側面を突ける位置にいるべきだ。
     寡兵であるこちらが後方援護など置ける余裕はない」

( ^ω^)「……確かにブーンが単体でぶつかったら、敵に打ち破られるかも知れませんお。
     でも、後方にイヨウ中尉の三千が居れば敵は攻撃の手を緩めますお。
     騎馬隊なら機動力は抜群。敵は常に警戒を強いられる……圧力をかけられますお。
     つまりブーンは五千の歩兵だけで戦うわけじゃなく、後ろにイヨウ中尉の存在を加えて、五千以上の力で戦いますお」

(=゚ω゚)ノ「…………」

( ^ω^)「もしブーンが負けそうになったときこそ、イヨウ中尉には満を持して突撃していただければ、と思いますお」

(=゚ω゚)ノ「……空論だな……上手くいくとは思えん」

 イヨウが背を向けた。
 巨躯の肩をいからせ、軍議室から出て行く。
 イヨウ配下の部隊長が、慌ててそれを追った。
 部屋の中はフィレンクトとドクオの三人となった。

(‘_L’)「……意地になっているようですね、イヨウ中尉」

('A`)「空論とは思えませんでしたが……」

( ^ω^)「……時間をかけて説得しますお。きっと納得してくれるはずですお」

 波乱含みの日々が続きそうだった。
44 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:47:57.85 ID:fMzL16nx0
 次の日から、再び行軍が始まった。
 シア城までは四日もあれば着くはずだが、森や湿地が多い。
 間道を通る際は斥侯も出したため、進軍は遅々としていた。

 騎馬隊とは基本的に別行動だったが、夜は一緒だった。
 野営の準備を整え、兵糧を取り終えると、イヨウの許に走った。
 戦について話し合う。イヨウは、全く聞き耳持たず、というわけではなかった。
 しかし、こちらの発言は尽く否定される。
 中には筋の通っていない反論もあったが、耐えて話し続けた。
 これも戦の一部なのだ、と思えば不思議と耐えられた。

 しかし、話し合いは平行線を辿った。
 二日、三日を過ぎても。

 やがて、シア城まで三十里に迫った。
 三十里を挟んで、敵軍と対陣している。
 いつでも戦える距離だ。

(;^ω^)「犠牲を抑える戦術として、理に叶っていると思いますお」

(=゚ω゚)ノ「俺は敗戦の可能性について論じてるんだ。犠牲ばかり気にして負けたら元も子もない」

( ^ω^)「敵軍はG隊とE隊が五千ずつ……H隊とI隊で固めたヴィップなら、勝てる可能性のほうが高いと思いますお」

(=゚ω゚)ノ「その不遜に足元を掬われなければいいがな」

 
篝火の側からイヨウが離れた。
 明日の正午に攻め込め、とショボンから指令が来ている。今夜のうちに説得しなければならないが、イヨウは立ち去ってしまった。
 後を追うかどうか迷ったが、その場に留まった。再び声をかけるにしても、何を言えばいいのか分からない。

45 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:52:26.16 ID:fMzL16nx0
 そのまましばらく考えていると、フィレンクトとドクオが側に寄ってきた。

(‘_L’)「イヨウ中尉はやはり、納得してくれませんでしたか?」

(;^ω^)「……みたいですお……」

('A`)「もし明日の戦でイヨウ中尉が勝手な行動をとった場合……どうするつもりですか? ブーン少尉」

 ドクオは、余人がいるときは上下関係を意識した言葉遣いになる。
 友達としての態度を取るのは、二人きりのときだけだ。

( ^ω^)「……ショボン大将に報告せざるを得ないお……」

('A`)「……そうならないよう、祈るばかりですね……」

(‘_L’)「とにかく今日は休みましょう。行軍の疲れを少しでも取らないと、明日の戦に響きます」

( ^ω^)「……その前に、二人に言っておきたいことがありますお」

 その場から離れかけていたドクオが立ち止まった。
 フィレンクトは真剣な表情でこちらを見ている。
 篝火に照らされて、顔に赤みが揺らめいていた。

( ^ω^)「明日の戦で、もしブーンの指示が届かない状況になった場合……二人には自己判断で動いてもらいたいんですお」

(‘_L’)「……自己判断に移る距離は、どれほどでしょうか?」

( ^ω^)「半里。それ以上離れることがあれば、自己判断を最優先して動いてくださいお」

('A`)「しかし、それほど離れる状況があるでしょうか?」
47 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:56:25.52 ID:fMzL16nx0
( ^ω^)「一人の指示が届くのはせいぜい二千か三千……五千の歩兵をまとめるのは難しいと思うお」

(‘_L’)「つまり、隊が伸びて後方まで指示が届かない場合ですね」

( ^ω^)「そういうことですお。隊を分ける状況になったときなども、お願いしますお」

 二人が揃って頷いた。

 一足早くフィレンクトが寝床へ向かった。
 ドクオは篝火に手を翳している。寒さの残る初更だった。

('A`)「ブーン……俺は正直、不安だ」

( ^ω^)「……何がだお?」

('A`)「お前さっき、自己判断してほしいって言ったよな……?
   つまり、俺からの指示にみんなを従わせるってわけだ……。
   ……初陣の俺の命令を、聞いてくれるのか……と考えると……」

 ドクオが顔を俯けた。

 初陣の新鮮さにただ興奮しているのかと思っていたが、やはり悩みもあったようだ。
 しかも、エヴァ城戦のときにブーンが抱いたものと、同じ内容。

 ドクオを部隊長に選んだのは、自分だ。
 ならば、不安を取り除いてやるのも、自分でなければならない、と思った。

( ^ω^)「ドクオ、大丈夫だお。ブーンだって初指揮のとき、同じ不安を抱えてたお。
     実際、ブーンは失敗したけど……部隊長だったフィレンクトさんはしっかり指示に従ってくれたお。
     ドクオにはフィレンクトさんもいるお。余計な不安は戦で足を鈍らせるお、何も心配しないでいいお」
50 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 17:01:10.40 ID:fMzL16nx0
('A`)「……あぁ、そうだな……。
   よし、頑張るぜ。今日はゆっくり休んで……明日は全力で戦う!」

( ^ω^)「だおだお!」

 小さな音を立てながら燃え続ける篝火から、揃って離れた。
 下風が吹く。木々が葉音を奏でる。

 原野に君臨するは重厚なる闇。
 あまりに物々しく、それでいて広大だった。

 穴を突くように夜を破る空の星。
 それを覆う
朧雲は、やがて断雲へと姿を変えるはずだ。

 半ば祈るような気持ちで空を見上げて、幕舎の中に入った。


 毛布に包まって、眠るまでにさほど時間はかからなかった。
 疲れは少なからずあった。近頃、行軍続きでまともに眠れていなかったのもあった。
 目を閉じれば自然に眠りに落ちていた。
52 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 17:04:28.03 ID:fMzL16nx0
 夢の中に入り込んでいた。
 
がかかって見える。皚々たる雪原のような世界だ。

 
嗄声が、響いた。安穏としたこの世界を紊乱させるような声だ。
 風声も感じる。
颶風のような、強いものだった。
 そんなはずはない、と思った。この平穏極まる世界に、起こりえることではない、と。

 もう一度、嗄声が聞こえた。
 そして同時に、世界が揺らぐ。

 雪白の世界が、徐々に幽暗へと移ろっていく。
 嫌だ。そう叫ぼうとしたが、声にならなかった。

 風は、弱まっていた。
 
小夜風だ、と何故か分かった。

(;‘_L’)「ブーン少尉!!」

 不意に、現実に引き戻された。

 いや、不意ではない。本当は徐々に現実へと戻っていたのだ。
 しかし、今はどうでもいいことだった。フィレンクトが、目の前にいる。
 表情ははっきり確認できない。まだ、太陽は姿を見せていない、夜半時だ。

(;^ω^)「フィレンクトさん……?」

(;‘_L’)「起き上がってください! 出陣の用意を!」

(;^ω^)「出陣!?」
54 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 17:07:33.05 ID:fMzL16nx0
 一気に眼が覚めた。
 頭も、少しずつ冴えはじめる。

 出陣。夜襲でも受けたのか。
 確かに喧噪が幕舎の外から聞こえる。しかし、戦っているとは思えない程度のものだ。


 まさか、と思った。

(;‘_L’)「先駆けです! イヨウ中尉が騎兵三千を率いて無断で夜襲に向かいました!」

 跳ね上がるように、立った。
 イヨウ。まさか、夜襲とは。全く想定していなかった。

 すぐに具足をつけた。アルファベットJをしかと握りしめ、外に飛び出す。
 歩兵五千も慌ただしく準備を整えていた。
56 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 17:09:15.70 ID:fMzL16nx0
 暮夜に吹く風は、小夜風だった。
 しかし何故か夢の中では、それを強いものに感じた。

 空に広がる朧雲は、その姿を未だ同じくしていた。














 第19話 終わり

     〜to be continued

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