- 3 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水)
15:56:30.86 ID:fMzL16nx0
- 〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
19歳 少尉
使用可能アルファベット:J
現在地:ヴィップ城
●('A`) ドクオ=オルルッド
19歳 シャッフル城戦・ブーン少尉配下部隊長
使用可能アルファベット:G
現在地:ヴィップ城
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
29歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
24歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:エヴァ城
●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
27歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
- 5 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水)
15:58:11.28 ID:fMzL16nx0
- ●( ^Д^) プギャー=アリスト
25歳 大尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヴィップ城
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
22歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャナ城
●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
28歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
44歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:パニポニ城
●(‘_L’) フィレンクト=ミッドガルド
26歳 シャッフル城戦・ブーン少尉配下部隊長
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城
- 6 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水)
15:59:19.50 ID:fMzL16nx0
- 〜西塔の兵〜
●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
34歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ヴィップ城
●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
35歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城
●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
38歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ヴィップ城
●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
31歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
- 7 :階級表
◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水)
16:01:10.91 ID:fMzL16nx0
- 〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ
大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:イヨウ
少尉:ブーン/ビロード
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ
大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:
- 8 :使用アルファベット一覧
◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水)
16:02:07.52 ID:fMzL16nx0
- A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:ドクオ
H:
I:フィレンクト
J:ブーン
K:
L:プギャー
M:
N:ヒッキー
O:
P:
Q:
R:モララー
S:ジョルジュ
T:ショボン
U:
V:
W:
X:
Y:
Z:

- 11 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:05:11.02 ID:fMzL16nx0
- 【第19話 : Repulse】
――夜――
――帰らずの森・小屋――
ξ゚听)ξ「Jは私が一番得意なアルファベット。依頼が一番多いからね。仕上がりも早いってわけ」
部屋の中心にある机に、長方形の箱が置かれていた。
ツンが蓋を開ける。大きく反った刃を持するJが、姿を現した。
( ^ω^)「ありがとうございますお」
柄を握った。
城にあったJで、既に触れられることは分かっている。
当然、熱はない。
ξ゚听)ξ「次の戦の前に壁を越えられて、良かったわね」
( ^ω^)「ホントですお。Iも好きだったけど、Jは威圧感があるっていうか……将校らしさがあって、いい感じですお」
ξ゚听)ξ「そうね……ただ、Iの扱いやすさに慣れてると苦労するかもしれないわ。訓練だけは怠らないでね」
( ^ω^)「もちろんですお。助言ありがとうございますお」
机の上に置かれたツンの左手を、握った。
軽く握りしめられていた拳を、包むような形で。
ξ*゚听)ξ「え、えっ……?」
- 14 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:09:09.43 ID:fMzL16nx0
- (;^ω^)「いや、あの、握手しようと思って……」
ξ;゚听)ξ「……あ、うん……」
ツンが左手を引っ込めた。
机の下に隠れていた右手を、差し出される。
思わず、首を傾げた。
(;^ω^)「あれ? なんで右手なんですかお?」
ξ )ξ「……私、左利きなの」
(;^ω^)「???」
ならば尚更、左手でするものではないのだろうか。
利き手を引っ込める理由が、分からなかった。
( ^ω^)「左利きなら、普通は左で……」
ξ )ξ「……鈍いのね、ブーンくん……」
(;^ω^)「鈍い??」
ツンが顔を俯けた。
同時に右手を再び机の下に隠す。
微かに、震えた手を。
- 18 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:13:00.86 ID:fMzL16nx0
- ξ )ξ「毎日、鉱物を触って、熱された窯に手を入れて……鉄槌を握って、振るって……。
……そんな日々を送る女の利き手が、綺麗だと思う?」
(;^ω^)「……!!」
輝くような色を持ったツンの髪は、表情を隠している。
確認せずとも分かる、その表情を。
ξ )ξ「右手だってボロボロだわ……それでも、左手に比べたらはるかにマシなの……」
(;^ω^)「ツンさん……」
ξ )ξ「……ゴメンね、下らない話をして」
ツンが顔を上げた。
柔らかな笑み。優美な顔立ちを、際立たせている。
縦断する一筋の涙さえなければ。
ξ;゚听)ξ「……え?」
立ち上がった。
長椅子に座っていたツンの隣に、腰掛ける。
机の下で固く握りしめられた左手を掴んだ。
ツンは驚いて、更に手を固く閉じる。
左手で手首を掴んで、右手でゆっくり、ツンの手を解していく。
人差し指から一本ずつ、指を伸ばさせていく。
細く柔な指。女性特有の温かみもある。
- 23 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:16:48.37 ID:fMzL16nx0
- 開かれたツンの手を、右手で握りしめた。
( ^ω^)「……ツンさん、僕たち国軍将校は、ツンさんのおかげで戦えますお」
ツンの顎から、涙が一滴流れ落ちた。
ブーンの手に当たり、やがて床へと流れていく。
( ^ω^)「ツンさんがこの手で作り出したアルファベットのおかげで、生きていられますお……全部、ツンさんのおかげですお。
ツンさんの手は、国を天下に導き、僕たちの命を守る……世界一、美しい手ですお」
ξ*;凵G)ξ「ブーンくん……」
指を絡ませる。
皮の捲れや火傷の痕、すべてが彩りとなっていた。
ξ*;凵G)ξ「……嬉しくなんか……嬉しくなんか……ないんだからね……」
互いに、握る力を強めた。
言葉もなく、ただ互いの熱を感じるだけの時間。
充実という言葉では、足りないほどだった。
朝になるまでずっと、手を繋いで、寄り添いあっていた。
- 25 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:21:12.39 ID:fMzL16nx0
- ――十日後――
――エヴァ城――
( ・∀・)「行軍お疲れさん」
( ^ω^)「お久しぶりですお。先日はありがとうございましたお」
( ・∀・)「何がだ?」
この人らしい答えだ、と思った。とぼけているわけでも何でもなく、純粋に分からないのだろう。
頭を横に振って、何でもないですお、と言った。
( ・∀・)「なんだそりゃ……まぁいいや。お前が率いてきたのは五千の歩兵だな。明日の朝、全部シンジ城に入れろ。
イヨウ中尉の騎兵三千も一緒だ。明後日には再び行軍、一日三十里のペースでシャッフル城に向かってもらう。
二人にはまず属城のシア城を落としてもらうんだが、そのシア城まで三十里の距離で行軍停止。
滞陣して指示を待て。多分すぐに攻撃命令は下ると思うがな。とりあえず、そんなところだ」
( ^ω^)「了解ですお」
( ・∀・)「ところで、イヨウ中尉は?」
( ^ω^)「外で野営の準備を整えてますお」
( ・∀・)「お前の補佐をするらしいな。気をつけろよ」
( ^ω^)「???」
- 27 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:24:58.60 ID:fMzL16nx0
- ( ・∀・)「イヨウ中尉みたいな直情型の武将は、いつ何をするか分かんねーからな」
窓の外は闇色に染まりかけている。
まだ姿を明確にしていない月にかかる、薄雲。
夜が深まれば、不穏な光が空に広がるだろう。
――翌日――
――シンジ城――
五千の歩兵を率いてシンジ城に入った。
イヨウ中尉率いる騎兵は既に到着している。
行軍を共にすることはなかった。
兵をシンジ城にすべて入れてから、ようやく休みが取れた。
ドクオと二人で屋上に昇り、風景を眺める。遠方にエヴァ城の片影が見えた。
暖かみを帯びた風が、二人の側を静かに通り抜ける。
('A`)「ヴィップ城にすっかり慣れちまったからかな……やたら小さく感じるぜ」
( ^ω^)「まぁ、実際シンジ城は小さいお」
('A`)「そうなのか……今度攻めるシア城はどうなんだろうな」
( ^ω^)「知らないけど、城の大きさは関係ないお。敵も城の外に滞陣してるらしいお」
('A`)「ん? なんで城外に出てるんだ?
寡兵なのはこっちだろ?
打って出ずに篭城すれば戦を長期化させられるのに」
- 30 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:28:48.42 ID:fMzL16nx0
- ( ^ω^)「あっちも短期で終わらせたいんだお。慢性的に兵糧不足なオオカミは、戦が長引くと不利なんだお」
('A`)「あー、なるほどな……城外に陣を構えればぶつかるからな。オオカミはこっちを打ち破る自信があるってわけか」
( ^ω^)「数を恃みにしてるんだお。八千の攻めに対して、一万の兵で対抗するつもりらしいお」
('A`)「……まぁ、それだけじゃないんだろうけどな」
( ^ω^)「……ミルナ=クォッチかお?」
オオカミ軍最強武将、ミルナ=クォッチ。
大将としてアルファベットSを操る、オオカミの柱だ。
まだ三十五で、これから円熟の域に入る手強い相手だった。
('A`)「モララー中将はミルナと戦ったことあるんだろ?
なんか言ってたか?」
( ^ω^)「今ショボン大将と正面から戦えるのはミルナだけだ、って」
('A`)「一般的にも、ラウンジの新大将アルタイムよりは高い評価だよな」
( ^ω^)「だお。経験豊富なだけあって、戦も上手いらしいお。三年前のエヴァ城陥落もミルナの功績だお」
('A`)「ショボン大将を自陣ギリギリまで引き込み、一気に打通してほぼ空になってたエヴァ城を占拠……並の武将じゃ絶対無理だな」
(;^ω^)「あのショボン大将が後手後手に回らされたなんて、信じられないくらいだお」
('A`)「そのミルナが今回の戦に出てくる、か……まぁ、シア城戦にはさすがに出てこないだろうが、シャッフル城まで行けばな……」
( ^ω^)「エヴァ城を奪ってから、ヴィップの士気は高いままだお。
勢いを衰えさせずにシャッフル城を奪いたいところだお」
- 35 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:32:17.61 ID:fMzL16nx0
- ('A`)「だな。とにかく、シア城の奪取。そっからだ。
ところで、リン城はどうするんだ?
二つの属城はどっちも奪っとかないと」
( ^ω^)「リン城はモララー中将が攻めるらしいお。策があるって言ってたお」
('A`)「へー、モララー中将の策か……そりゃ楽しみだ」
ドクオが軽く笑った。
初めての戦ということで、ドクオは興奮している。恐怖はあまりないようだ。
モララーの策も、純粋に楽しみなのだろう。
今は何もかもが新鮮なはずだ。
(‘_L’)「ブーン少尉、軍議の準備が整いました」
フィレンクトが屋上に昇ってきた。
吹きつける風に目を細めている。腰布が後ろに靡いていた。
( ^ω^)「ありがとうございますお。イヨウ中尉は?」
(‘_L’)「連絡してあります」
( ^ω^)「何から何まで押し付けてしまって、すみませんお」
(‘_L’)「……ブーン少尉は部隊長経験がおありですか?」
(;^ω^)「ほぇ? いや、ブーンはないですお」
- 38 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:35:45.18 ID:fMzL16nx0
- (‘_L’)「部隊長は本来、もっと雑務をこなすものです。
私は一度、イヨウ中尉の許で部隊長をやったことがありました。
かなり人使いが荒く、行軍の指揮から守将への挨拶まで全てやらされた記憶があります。
イヨウ中尉ほどではないにしろ、他の武将もそんなものです。ブーン少尉は甘いのでないか、と思うくらいです」
(;^ω^)「そうなんですかお? ブーンやドクオが何もわからないからって、全部フィレンクトさんに押し付けて、申し訳ないくらいですお……」
(‘_L’)「つまり私が言いたいのは、気にしないでください、ということです。
軍議に向かいましょう。明日にはここを発たなければならないのですから」
フィレンクトが踵を返した。
普通の歩みが、颯爽として見える。
(*'A`)「フィレンクトさんって、かっこいいな……頼りになる大人の男って感じだぜ」
( ^ω^)「いつも助けてもらってるお。あの人ならきっと将校も近いお」
('A`)「いろいろ勉強になりそうだ……よし、俺達も軍議室に行こうぜ」
頷いて、階段を下った。
シンジ城は小さいといっても、軍議室は一階にあり、そこに行くまでに時間はかかる。
すぐに軍議が始まるわけではないが、少し急ぎ気味で向かった。
軍議室に入ると、既に将校と部隊長は全員揃っていた。
( ^ω^)「……皆さん揃っているようなので、ちょっと早めですが、軍議を始めたいと思いますお」
地図を広げて、話し始めた。
- 39 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:39:53.29 ID:fMzL16nx0
- 軍議といっても、モララーからの指示を皆に伝えるだけだ。
ここにいる将校は自分とイヨウだけで、役割は大きく二つに分担される。
先陣切って敵にぶつかる自分と、それを後方援護するイヨウ。
ショボンは、イヨウを補佐役に位置付けた。
つまり、対等にするなと暗に言っているのだ。
後方援護の役目にするべきなのだろう。
(=゚ω゚)ノ「終いか?」
イヨウが低い声で言った。
圧するような凄味が込められている。
しかし、怯むわけにはいかない。
( ^ω^)「……説明は以上ですお」
(=゚ω゚)ノ「じゃあ、俺から意見を述べさせてもらう」
イヨウが立ち上がった。
地図の上に置かれた、武将の駒を握る。
イヨウを表すために置いた、青色の駒だ。
それを、前に進めた。
- 42 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:43:46.93 ID:fMzL16nx0
- (=゚ω゚)ノ「俺の役目を後方援護としたが、敵が大軍である以上、束になってぶつかるべきだろう。
縦しんばブーン少尉が単体でぶつかるとしても、俺は側面を突ける位置にいるべきだ。
寡兵であるこちらが後方援護など置ける余裕はない」
( ^ω^)「……確かにブーンが単体でぶつかったら、敵に打ち破られるかも知れませんお。
でも、後方にイヨウ中尉の三千が居れば敵は攻撃の手を緩めますお。
騎馬隊なら機動力は抜群。敵は常に警戒を強いられる……圧力をかけられますお。
つまりブーンは五千の歩兵だけで戦うわけじゃなく、後ろにイヨウ中尉の存在を加えて、五千以上の力で戦いますお」
(=゚ω゚)ノ「…………」
( ^ω^)「もしブーンが負けそうになったときこそ、イヨウ中尉には満を持して突撃していただければ、と思いますお」
(=゚ω゚)ノ「……空論だな……上手くいくとは思えん」
イヨウが背を向けた。
巨躯の肩をいからせ、軍議室から出て行く。
イヨウ配下の部隊長が、慌ててそれを追った。
部屋の中はフィレンクトとドクオの三人となった。
(‘_L’)「……意地になっているようですね、イヨウ中尉」
('A`)「空論とは思えませんでしたが……」
( ^ω^)「……時間をかけて説得しますお。きっと納得してくれるはずですお」
波乱含みの日々が続きそうだった。
- 44 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:47:57.85 ID:fMzL16nx0
- 次の日から、再び行軍が始まった。
シア城までは四日もあれば着くはずだが、森や湿地が多い。
間道を通る際は斥侯も出したため、進軍は遅々としていた。
騎馬隊とは基本的に別行動だったが、夜は一緒だった。
野営の準備を整え、兵糧を取り終えると、イヨウの許に走った。
戦について話し合う。イヨウは、全く聞き耳持たず、というわけではなかった。
しかし、こちらの発言は尽く否定される。
中には筋の通っていない反論もあったが、耐えて話し続けた。
これも戦の一部なのだ、と思えば不思議と耐えられた。
しかし、話し合いは平行線を辿った。
二日、三日を過ぎても。
やがて、シア城まで三十里に迫った。
三十里を挟んで、敵軍と対陣している。
いつでも戦える距離だ。
(;^ω^)「犠牲を抑える戦術として、理に叶っていると思いますお」
(=゚ω゚)ノ「俺は敗戦の可能性について論じてるんだ。犠牲ばかり気にして負けたら元も子もない」
( ^ω^)「敵軍はG隊とE隊が五千ずつ……H隊とI隊で固めたヴィップなら、勝てる可能性のほうが高いと思いますお」
(=゚ω゚)ノ「その不遜に足元を掬われなければいいがな」
篝火の側からイヨウが離れた。
明日の正午に攻め込め、とショボンから指令が来ている。今夜のうちに説得しなければならないが、イヨウは立ち去ってしまった。
後を追うかどうか迷ったが、その場に留まった。再び声をかけるにしても、何を言えばいいのか分からない。
- 45 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:52:26.16 ID:fMzL16nx0
- そのまましばらく考えていると、フィレンクトとドクオが側に寄ってきた。
(‘_L’)「イヨウ中尉はやはり、納得してくれませんでしたか?」
(;^ω^)「……みたいですお……」
('A`)「もし明日の戦でイヨウ中尉が勝手な行動をとった場合……どうするつもりですか?
ブーン少尉」
ドクオは、余人がいるときは上下関係を意識した言葉遣いになる。
友達としての態度を取るのは、二人きりのときだけだ。
( ^ω^)「……ショボン大将に報告せざるを得ないお……」
('A`)「……そうならないよう、祈るばかりですね……」
(‘_L’)「とにかく今日は休みましょう。行軍の疲れを少しでも取らないと、明日の戦に響きます」
( ^ω^)「……その前に、二人に言っておきたいことがありますお」
その場から離れかけていたドクオが立ち止まった。
フィレンクトは真剣な表情でこちらを見ている。
篝火に照らされて、顔に赤みが揺らめいていた。
( ^ω^)「明日の戦で、もしブーンの指示が届かない状況になった場合……二人には自己判断で動いてもらいたいんですお」
(‘_L’)「……自己判断に移る距離は、どれほどでしょうか?」
( ^ω^)「半里。それ以上離れることがあれば、自己判断を最優先して動いてくださいお」
('A`)「しかし、それほど離れる状況があるでしょうか?」
- 47 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 16:56:25.52 ID:fMzL16nx0
- ( ^ω^)「一人の指示が届くのはせいぜい二千か三千……五千の歩兵をまとめるのは難しいと思うお」
(‘_L’)「つまり、隊が伸びて後方まで指示が届かない場合ですね」
( ^ω^)「そういうことですお。隊を分ける状況になったときなども、お願いしますお」
二人が揃って頷いた。
一足早くフィレンクトが寝床へ向かった。
ドクオは篝火に手を翳している。寒さの残る初更だった。
('A`)「ブーン……俺は正直、不安だ」
( ^ω^)「……何がだお?」
('A`)「お前さっき、自己判断してほしいって言ったよな……?
つまり、俺からの指示にみんなを従わせるってわけだ……。
……初陣の俺の命令を、聞いてくれるのか……と考えると……」
ドクオが顔を俯けた。
初陣の新鮮さにただ興奮しているのかと思っていたが、やはり悩みもあったようだ。
しかも、エヴァ城戦のときにブーンが抱いたものと、同じ内容。
ドクオを部隊長に選んだのは、自分だ。
ならば、不安を取り除いてやるのも、自分でなければならない、と思った。
( ^ω^)「ドクオ、大丈夫だお。ブーンだって初指揮のとき、同じ不安を抱えてたお。
実際、ブーンは失敗したけど……部隊長だったフィレンクトさんはしっかり指示に従ってくれたお。
ドクオにはフィレンクトさんもいるお。余計な不安は戦で足を鈍らせるお、何も心配しないでいいお」
- 50 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 17:01:10.40 ID:fMzL16nx0
- ('A`)「……あぁ、そうだな……。
よし、頑張るぜ。今日はゆっくり休んで……明日は全力で戦う!」
( ^ω^)「だおだお!」
小さな音を立てながら燃え続ける篝火から、揃って離れた。
下風が吹く。木々が葉音を奏でる。
原野に君臨するは重厚なる闇。
あまりに物々しく、それでいて広大だった。
穴を突くように夜を破る空の星。
それを覆う朧雲は、やがて断雲へと姿を変えるはずだ。
半ば祈るような気持ちで空を見上げて、幕舎の中に入った。
毛布に包まって、眠るまでにさほど時間はかからなかった。
疲れは少なからずあった。近頃、行軍続きでまともに眠れていなかったのもあった。
目を閉じれば自然に眠りに落ちていた。
- 52 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 17:04:28.03 ID:fMzL16nx0
- 夢の中に入り込んでいた。
靄がかかって見える。皚々たる雪原のような世界だ。
嗄声が、響いた。安穏としたこの世界を紊乱させるような声だ。
風声も感じる。颶風のような、強いものだった。
そんなはずはない、と思った。この平穏極まる世界に、起こりえることではない、と。
もう一度、嗄声が聞こえた。
そして同時に、世界が揺らぐ。
雪白の世界が、徐々に幽暗へと移ろっていく。
嫌だ。そう叫ぼうとしたが、声にならなかった。
風は、弱まっていた。
小夜風だ、と何故か分かった。
(;‘_L’)「ブーン少尉!!」
不意に、現実に引き戻された。
いや、不意ではない。本当は徐々に現実へと戻っていたのだ。
しかし、今はどうでもいいことだった。フィレンクトが、目の前にいる。
表情ははっきり確認できない。まだ、太陽は姿を見せていない、夜半時だ。
(;^ω^)「フィレンクトさん……?」
(;‘_L’)「起き上がってください!
出陣の用意を!」
(;^ω^)「出陣!?」
- 54 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 17:07:33.05 ID:fMzL16nx0
- 一気に眼が覚めた。
頭も、少しずつ冴えはじめる。
出陣。夜襲でも受けたのか。
確かに喧噪が幕舎の外から聞こえる。しかし、戦っているとは思えない程度のものだ。
まさか、と思った。
(;‘_L’)「先駆けです! イヨウ中尉が騎兵三千を率いて無断で夜襲に向かいました!」
跳ね上がるように、立った。
イヨウ。まさか、夜襲とは。全く想定していなかった。
すぐに具足をつけた。アルファベットJをしかと握りしめ、外に飛び出す。
歩兵五千も慌ただしく準備を整えていた。
- 56 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/07(水) 17:09:15.70 ID:fMzL16nx0
- 暮夜に吹く風は、小夜風だった。
しかし何故か夢の中では、それを強いものに感じた。
空に広がる朧雲は、その姿を未だ同じくしていた。
第19話 終わり
〜to be continued
戻る