7 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 00:38:33.20 ID:Fx6dzm1f0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
19歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城

●('A`) ドクオ=オルルッド
19歳 新兵
使用可能アルファベット:F
現在地:ヴィップ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
29歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
24歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:エヴァ城

●( ,,゚Д゚) ギコ=ロワード
27歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
9 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 00:39:36.64 ID:Fx6dzm1f0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
25歳 大尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヴィップ城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
22歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャナ城

●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
28歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城

●( ´∀`) モナー=パグリアーロ
44歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:パニポニ城

10 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 00:40:36.94 ID:Fx6dzm1f0
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
34歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ヴィップ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
35歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
38歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ヴィップ城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
31歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
12 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 00:41:22.88 ID:Fx6dzm1f0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:イヨウ
少尉:ブーン/ビロード


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:
14 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 00:42:24.38 ID:Fx6dzm1f0
A:
B:
C:
D:
E:
F:ドクオ
G:
H:
I:ブーン
J:
K:
L:プギャー
M:
N:ヒッキー
O:
P:
Q:
R:モララー
S:ジョルジュ
T:ショボン
U:
V:
W:
X:
Y:
Z:

16 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 00:44:47.69 ID:Fx6dzm1f0
【第18話 : Selection】


――西塔・最上階――

 中からの返事を、一瞬待った。
 だが反応はない。

 居ることは分かっている。
 取っ手を捻って、扉を押した。

 鍵はかかっていない。開いた。

(;'A`)「ブーン……!?」

 入口の扉にほど近いところに立っていた。
 ドクオ、それから、ジョルジュ。

( ゚∀゚)「……何の用だ」

 ジョルジュの背中には、アルファベット。
 いつでも手にとって振るえる状態だ。

 落ち着け。いかに東西の違いがあっても、同軍の兵を手にかけることなど、ありえない。
 おかしな行動を取らなければ、大丈夫だ。

 だが、ジョルジュから発されているのは、竦みあがるような殺気。

 もう後には退けない。しかし、重心は自然に後ろへと傾いていた。

17 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 00:48:33.31 ID:Fx6dzm1f0
(;^ω^)「……なんで、ここに居るんだお……? ドクオ……」

(;'A`)「お前が言うなよ……そっちこそ、なんで……」

( ゚∀゚)「人の部屋の扉を勝手に開けるのは、関心しねーな」

 ジョルジュが一歩、前に出た。
 手を伸ばせば、届く距離。

 退くな。自分に言い聞かせた。
 毅然とした態度で接すれば、何も問題はないはずだ。

(;^ω^)「教えてくださいお、ジョルジュ大将……何故、ドクオ=オルルッドを部屋に招いたんですかお……?」

 ジョルジュが無言のまま息を吐いた。
 流れる沈黙。
 ジョルジュは下を向いている。ドクオは、固まったまま動かない。

 耐えきれず、声を出した。

(;^ω^)「まだラウンジと戦ってたとき……ジョルジュ大将は、ドクオに『忘れ物を届けてほしい』と頼んだ、と聞きましたお」

(;'A`)「な、なんでお前がそれを……!?」

(;^ω^)「いったい、何故ですお? ヴィップ城には西塔の兵もいたのに……どうしてドクオに?」

( ゚∀゚)「……理由はねーよ。オルルッドって姓が珍しかったから、なんとなく覚えてただけだ」

(;^ω^)「じゃあ、忘れ物ってのはいったい何だったんですかお?」
20 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 00:52:26.18 ID:Fx6dzm1f0
( ゚∀゚)「あぁ、あれは俺の勘違いだった。実はハルヒ城にあったんだ。今日はそのときの詫びをな」

(;'A`)「そ、そうだ。そういうことなんだ」

 そんな嘘が、本気で通ると思っているのか。
 半ば怒りにも近い思いが、込み上げてきた。

(  ω )「本当に、それだけですかお?」

( ゚∀゚)「そんだけだ。大将の言葉を疑うとは、ずいぶん立派になったもんだな、ブーン少尉」

(  ω )「お詫びの言葉くらい、わざわざ夜に自室で言わなくても、と思っただけですお」

( ゚∀゚)「あんまり調子に乗るなよ。この前のラウンジ戦じゃ、俺はお前の働きのおかげで命拾いした。
    それについては感謝している。だから、この場での無礼は全部許してやる。今回限りだ」

(;'A`)「帰ろうブーン。もう帰ろう。
    もういいですよね、ジョルジュ大将」

( ゚∀゚)「……あぁ、またな」

 ドクオが、強引に腕を引っ張った。
 よろけつつも倒れることはなく、部屋の外に出る。
 冷たい風が吹いていた。

 二人とも無言のまま、階段を降りた。
 ドクオの後を追いかける形だ。表情は見えない。

 しかし、先に口を開いたのはドクオだった。
23 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 00:56:18.23 ID:Fx6dzm1f0
('A`)「……余計なことを」

 背を向けたままの一言に、再び怒りが湧き上がった。
 肩を掴んでこちらを向かせる。ドクオは少し驚いたような顔をしていた。

(#^ω^)「何が余計なんだお! どういうことなのか、説明してもらうお!」

 胸倉を掴んだ手を、ドクオが払う。
 薄紫の唇から漏れたのは、声を伴う嘆息だった。

('A`)「余計なことだったんだよ、ブーン。お前があそこに来たのは。おかげで台無しだ」

(#^ω^)「わけ分かんないお! 説明しろって言ってんだお!」

('A`)「ジョルジュ大将は、俺に誘いをかけてきた。西塔に来ないか? ってな」

 衣服を正しながら、ドクオは静かに言った。
 細く開かれた瞼は、その奥の光を隠しきれないでいる。

(;^ω^)「引き抜きかお……!? ドクオにまで……!?」

('A`)「やっぱり、お前もか? 俺が誘われたのは多分、お前と仲が良いからだ。
   お前の交友関係も調べ上げたんだろうな。まぁ、何でお前を狙うのかは分かんねーんだが」

 ドクオは屋上の壁際へと歩み行く。
 城の周辺に植えられた木が、指の間に収まるほどの高さだ。
 風が一層強まったように思えた。

('A`)「お前がパニポニ城に出発する夜、俺はジョルジュ大将の頼みで忘れ物を探した。
   忘れ物ってのはハルヒ城の武具庫の鍵らしい。おかしいよな?」
27 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 00:59:58.98 ID:Fx6dzm1f0
( ^ω^)「武具庫の鍵なんて……もっと早くに気付くはずだお」

('A`)「だろ? それを今まで放置してるわけがねぇ。当然、部屋の中にはなかった。
   今日はそのときの礼がしたいって言われたんだ。そんで行ってみたら、西塔に来い、だ」

(;^ω^)「返事は?」

('A`)「考えさせてください、って言ったよ。無論、西塔に行く気はねぇ。俺はショボン大将やお前のいる東塔が好きだ。
   答えを保留したのは、ジョルジュ大将の行動を探りたかったからだ。何故、東塔の新兵を狙うのか、って部分が不可解でな」

( ^ω^)「……それは、確かに不思議だお……」

('A`)「何か理由があるはずだ。ちょっと危険だが、調べる必要がありそうだと思ってな。
   さりげなく色々聞き出す予定だったんだが……そこにお前が来ちまったわけだ」

(;^ω^)「そうだったのかお……それは、確かに余計なことだったお……」

('A`)「ま、ジョルジュ大将が相手じゃ上手くやれたか分かんねぇけどな……。
   誰にも知られないほうがいいと思ってお前にも隠してたが、話しといたほうが良かったかも知れねーな」

 ドクオが肩を竦めた。視線は相変わらず渺茫な原野に向いている。
 その瞳は、澱みなく澄みきっていた。

( ^ω^)「……ドクオ、アルファベットが順調だって聞いたお。もうFに達した、って」

('A`)「あぁ……ちょっと悔しかったからな」

( ^ω^)「? 何がだお?」
33 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 01:04:39.64 ID:Fx6dzm1f0
('A`)「お前に、先へ先へ行かれたのが、さ。追いつきたくて、必死に頑張ったんだ。
   最近……といってもお前が少尉になってからだが、毎晩こっそり訓練してた。
   あ、この話は内緒な。消灯時間過ぎてから抜けだしてるのがバレたらヤバイ。
   ショボン大将に、次の戦には参加できるって言われたけど、これからも続けるつもりだ」

( ^ω^)「大丈夫だお。もし何かあったらブーンが呼び出したってことにしとくお」

('A`)「すまねぇ。何せ、寝る時間も最近は惜しくてな……おかげで日中は疲れ切ってるよ。
   もともと愛想なんて良くねーけど、更に悪くなっちまってみんなに迷惑かけてる」

( ^ω^)「そういうことだったのかお……」

('A`)「何がだ?」

( ^ω^)「何でもないお!」

('A`)「わけ分かんねーな……けっ」

( ^ω^)「風邪かお?」

('A`)「あぁ、ずっと前から咳だけ止まんねーんだ。だるさはないんだけどな。けっ、けっ」

(;^ω^)「変な咳だお」

(;'A`)「ほっとけ」

 笑いあって、屋上から中に戻った。
 足取りは軽い。自然と笑みもこぼれる。

 ドクオを、信じ続けよう。そう思えた夜だった。
39 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 01:08:26.82 ID:Fx6dzm1f0
 それからの日々は、平穏だった。
 調練の指揮に、余裕が出てきた。慣れ始めたのだ。
 入軍してすぐ少尉になった自分を、多くの人間は妬ましく思っていたらしい。
 しかし、それにも慣れてくれたようだ。今は誰も文句を言わない。
 気は楽になっていた。


 やがて春になった。
 ヴィップ城の周りの木が花びらを散らしている。
 鮮やかな色の花だ。

( ,,゚Д゚)「あれは桜っていうんだ。ヴィップの最南端にしかない珍しい木でな。国花にも指定されてる」

( ^ω^)「知りませんでしたお。綺麗な花ですお……」

( ,,゚Д゚)「ひとたび雨が降れば、みな散る。そういった弱さも秘めた、美しい花だ」

 屋上で夜桜を眺めながら、ギコと酒を飲んでいた。
 月の光を浴びた桜は、華美な輝きを放って見える。
 柔らかな風に煽られて、また何枚か花びらが散った。

( ^ω^)「この前、モララーさんに励まされましたお。信じるべきものを見失ってたブーンに、志を忘れるなって」

( ,,゚Д゚)「モララー中将か。あの人は不思議だな。何考えてるのか、未だによくわかんねぇ」

( ^ω^)「ブーンもそう思ってましたお。でも、芯のある凄くまっすぐな人で……びっくりでしたお」

( ,,゚Д゚)「あの人は嘘をつかない。発言に全てを込める人だ。表裏がないから、一緒にいると気楽だな」
51 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 01:13:31.30 ID:Fx6dzm1f0
 ギコが杯の底を月に向けた。
 喉を鳴らして、口から杯を離す。
 頬がほのかに赤かった。

( ,,゚Д゚)「じきに戦が始まる。恐らく、今年中にはな。
    また来年も、こうして酒を飲みたいもんだ」

( ^ω^)「是非また、ご一緒したいですお」

( ,,゚Д゚)「あぁ、こちらこそだ。それじゃあ、そろそろ戻るか」

 ギコが立ち上がって階段に、向かおうとした。

 しかし、動かなかった。

(;^ω^)「……ギコさん?」

 立ち止まって、階段のほうを見つめるギコ。
 視線を向けた。
 一人の男が、立っていた。

ミ,,゚Д゚彡「…………」

 フサギコだった。
 ラウンジ戦のときに、一度話したことがある。
 髪や髭を茫々に伸ばしており、野性味に溢れた風貌の武将だった。

ミ,,゚Д゚彡「酒でも飲もうと思ったが……気分が悪くなっちまったぜ」

( ,,゚Д゚)「……そんなこと、いちいち口に出すなよ」
58 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 01:17:33.45 ID:Fx6dzm1f0
ミ,,゚Д゚彡「何を言おうが、俺の勝手だ。じゃあな」

( ,,゚Д゚)「俺はもう部屋に戻る。酒が飲みたいんなら、飲んでけよ」

 フサギコの目つきが、鋭くなった。
 二人が黙る。風の音だけが耳に響く。

 やがてフサギコが鼻を鳴らして、壁際まで歩いて行った。

 ギコは無言で階段を降りていく。
 慌てて後を追った。しかし、何と声をかけていいのか、分からなかった。

( ,,゚Д゚)「フサギコ少将は俺の兄貴だ」

 言葉を探しているうちに、ギコのほうから話してくれた。
 兄弟。姓が違うが、どちらかが母親の姓を名乗っているのだろう。
 結婚しても母親の姓が変わらないこの国では、たまにあることだった。

( ,,゚Д゚)「顔、似てるだろ?」

(;^ω^)「そう言われれば、確かに……」

( ,,゚Д゚)「性格も似てるんだ。兄貴が身だしなみを整えたら、入れ替わっても分からないくらいにな。
    ……そんな俺達の兄弟仲が最悪なのは……どうやら、俺のせいらしい」

(;^ω^)「ギコさんの……?」
66 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 01:21:58.57 ID:Fx6dzm1f0
( ,,゚Д゚)「俺は兄貴より四年遅れで軍に入った。なのにもう、兄貴と同じ少将だ。
    それが気に食わなかったらしい。兄より弟のほうが優秀、と周りが囃したからな」

(;^ω^)「でも、それはギコさんのせいじゃないと思いますお……」

( ,,゚Д゚)「いや、正確には、俺が東塔にいったことが原因なのかもな……。
    兄貴はジョルジュ大将を尊敬している。俺にも、西塔に入れと言ってきた。
    だが俺はジョルジュ大将が嫌いだ。戦う姿勢に共感できない。だから東塔にしたんだが……。
    それから兄貴は冷たくなった気がする。あんなに優しかった兄貴が……今でもちょっと信じられないな」

 平静を装いきれていないギコの表情が、切なく思えた。
 軍に入るまでは、仲が良かったのだろう。しかし屋上での会話からは、とても想像できなかった。

( ,,゚Д゚)「いつかまた、昔みたいに……とは思ってるけどな……もう無理かも知れないな……」

(;^ω^)「そんなこと……」

( ,,゚Д゚)「悪い、湿っぽかったな。忘れてくれ。また明日な」

 いつの間にか、ギコの部屋の前だった。
 こちらの言葉を待たずに、ギコは中に入ってしまった。鍵のかかる音が小さく響く。
 溜息とギコへの心配をその場に残して、ブーンも部屋に戻った。


――翌日――

――東塔・最上階――

(´・ω・`)「戦だ」
92 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 01:42:20.29 ID:Fx6dzm1f0
 まだ朝の光が心地よい時間だった。
 朝食を食べ終えたあとすぐ、最上階に呼ばれて、そう切り出された。

(;^ω^)「戦……ですかお」

(´・ω・`)「オオカミのシャッフル城を奪る。こちらは三万を投入する予定だ。
      今シャッフル城にいるのは一万だが、戦までに五万は超えるだろうな」

(;^ω^)「ラウンジとの戦が終わってから、それほど時が経ってないのに……大丈夫ですかお?」

(´・ω・`)「エヴァ城を手に入れたのが大きかったんだ。あの周辺は昔から作物が豊富で、エヴァ城にかなり蓄えられている。
      幸い、兵糧は地下に保存してあったため火計を免れている。戦に耐えうる量があるらしい」

( ^ω^)「では、何故この時期に……?」

(´・ω・`)「雨季を避けたくてな。六月に入ると、シャッフル城の周辺は泥濘して戦どころじゃなくなる。
      まだ六月までは三ヶ月ある。その六月までに落とせば、オオカミのカウンターは防ぎやすくなるだろう」

( ^ω^)「なるほどです……お?」

 突然、入口の扉が開いた。
 外から溢れるはずの光を、遮る巨躯。
 ショボンに負けず劣らずの体格をした、イヨウだ。

(=゚ω゚)ノ「おはようございます、ショボン大将。お話とは?」

 扉を雑に閉めて、中に入ってきた。
 猫のような髭が上下に揺れている。
98 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 01:46:14.76 ID:Fx6dzm1f0
(´・ω・`)「次の戦のことさ。シャッフル城に攻め込む。お前たち二人は、先鋒だ」

(;^ω^)「先鋒!?」

(=゚ω゚)ノ「ありがたき役目です」

(´・ω・`)「とは、言い切れん。イヨウ、お前の役目はブーンの補佐だ」

(=゚ω゚)ノ「……はい?」

 嬉しそうな顔で頭を下げていたイヨウが、表情を変えた。
 わけが分からない、というような顔。それは、ブーンも同じだった。

(´・ω・`)「経験豊富な先輩として、ブーンを支えてやってくれ」

(=゚ω゚)ノ「……逆では、ないのですか?」

(´・ω・`)「ない。与えられた役割を、しっかり果たせ。
      それでは詳細についてだが……」

 ショボンが詳細を話し始めても、イヨウは憮然としていた。
 話し終えるまで、それは続いた。

(´・ω・`)「説明は以上だが、何か質問は?」

(=゚ω゚)ノ「何故、私がブーン少尉の補佐なのですか?」

(´・ω・`)「自分で考えろ。以上だ」
101 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 01:50:06.63 ID:Fx6dzm1f0
 イヨウの顔が赤くなった。ショボンは素知らぬ顔で書類に目を向けている。
 何も言わずに、イヨウは部屋の外に出ていった。気まずい空気を満たさせたままに。

(´・ω・`)「ふぅ……扱いが難しいな」

(;^ω^)「何故、イヨウ中尉がブーンの補佐なんですかお?」

(´・ω・`)「同じことを聞くなよ……と言っても、お前には分かる由もないな。
      イヨウはエヴァ城奪取時に遊撃隊として機動するはずだった、と知っているか?」

 頭を横に振った。
 うろ覚えだが、イヨウはマルコシアス城にいたはずだ。
 何かをした、という話は聞いていない。

(´・ω・`)「お前が援軍撃破を言い渡されながら失敗したあの戦で、イヨウは何もしなかった。
      あろうことか、酒に酔い潰れていたんだ。最終的に勝てたから良かったものの……」

(;^ω^)「知りませんでしたお……」

(´・ω・`)「あいつは以前からたびたび、酒に酔って失敗することがあった。
      そのたびに窘めつつも処罰は見送ってきたんだが……エヴァ城戦の件は、さすがに見逃せなかった。
      段階的な二階級降格を俺は決めた。あのときは少将だったが、ヴィップ城に戻ってからは大尉、しばらくして今は中尉だ。
      今回の補佐役も、懲罰的な意味合いが少なからずこめられている」

(;^ω^)「でも」

(´・ω・`)「お前には迷惑をかけてすまない。
      だが、新米将校として頑張るお前の姿を見て、イヨウには昔の自分を取り戻してもらいたいんだ。
      イヨウは不貞腐れていると思う。お前に押し付けてばかりですまないが、上手くコントロールしてやってくれ」
104 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 01:54:26.69 ID:Fx6dzm1f0
 ブーンの発言を遮ったショボンの言葉には、言いたかったことを解消する全ての要素が含まれていた。
 ショボンは再び書類に視線を落としている。

 自分の補佐に、上官がつく。
 言い表せない不安に、襲われた。ただの上官ではなく、役割に不満を持っている上官だ。
 すんなり事が進むとは、思えなかった。

 その不安を、少しでも取り除きたかった。
 口にしていいことか分からなかったが、ショボンに聞いてみようと思った。
 将校の下に置く、部隊長についてだ。
 名前を出した瞬間、ショボンの表情が変わったが、気にせず話し続けた。

(´・ω・`)「……その二人を部隊長に置くことを、俺からやめろとは言えない。お前が決めたなら、それでいい。
      だが、少なからず周りから反発はあるはずだ。もし失敗だった場合、俺もお前に責任を問わなければならない。
      その覚悟はあるか? その二人で戦をやり抜けるという、自信は?」

 自信があるとは言えなかったが、力強く頷いた。
 ショボンは一言、そうか、と言っただけだった。

( ^ω^)「それでは、失礼しますお」

 頭を下げて、部屋を退出する。
 急ぎ駆けて、すぐにその二人の許へ走った。
 まずは、フィレンクト=ミッドガルドだ。

(‘_L’)「何度もお選びいただき、光栄です。全力を尽くします」

( ^ω^)「よろしくお願いしますお!」
107 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 01:58:46.22 ID:Fx6dzm1f0
 戦について伝えて、了承をとった。
 フィレンクトから離れ、またすぐに駆けた。
 次の人物こそ、ショボンが心配した相手だろう。
 だがブーンには、他の人間が思い当らなかった。

( ^ω^)「ドクオ!」

('A`)「ん?」

 食堂に向かう途中だったドクオを呼び止めた。
 恐らく、昨晩も訓練をしていたのだろう。眠そうに目を擦っている。

('A`)「おぉ、ブーンか。ちょうど良かった。聞いてくれ」

( ^ω^)「こっちも聞いてほしいことがあるんだお!」

('A`)「待て待て、俺が先だ。もう見えてると思うが、これを見ろ」

 ドクオがアルファベットを掲げた。
 大型で、攻防一体アルファベットの、Gだ。

( ^ω^)「Gになったのかお!? おめでとうだお!」

('A`)「これで次の戦には主力部隊の歩兵として参加できるぜ。いや、上手くいけば騎兵の可能性も……」

( ^ω^)「その次の戦について、話があるんだお」

('A`)「んあ?」
121 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 02:03:07.76 ID:Fx6dzm1f0
 話を伝えた。もうすぐシャッフル城奪取に向けての戦が始まること、ブーンが先鋒であること。
 そして、そのブーンの下につく部隊長として、ドクオを置きたいということ。

 話を終えたあと、ドクオはしばらく呆然としていた。

(;'A`)「俺が……部隊長? おいおい……笑えない冗談はやめろ」

(;^ω^)「冗談じゃないお。ドクオなら大丈夫だと思ったんだお」

(;'A`)「初陣だぞ? 誰が俺の命令を聞くってんだよ……大体、友人だからって俺を任命するのはちょっと……」

( ^ω^)「大丈夫だお。昔から紙の上での戦で、ブーンが一回も勝てなかったドクオなら」

(;'A`)「そ、そりゃお前が少尉になる前の話だ。今のお前には勝てねーよ……」

( ^ω^)「そんなことないお。ドクオ、将校になるチャンスも開ける部隊長の地位、捨てるには惜しいお。
     縁故だとか贔屓だとか言われても、跳ね返してやるんだお。ドクオならできると信じてるお」

 ドクオの頬が、少し赤らんだ。
 考える素振りを見せたり、頭を横に振ったりしている。
 魅力と不安の狭間で、揺れ動いているようだった。

(‘_L’)「やってみて損はない、と思います」

( ^ω^)「フィレンクトさん!?」

 後ろから突然出てきた声に驚いた。
 ドクオは当惑している。面識はないのだろう。
127 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 02:07:42.25 ID:Fx6dzm1f0
( ^ω^)「ドクオ、こちらはフィレンクトさんだお。次の戦で、ドクオと一緒に部隊長をやってもらうお」

(‘_L’)「初めまして。ブーン少尉から噂を聞いております。自分より才のある友人だ、と。
    二人で少尉を支えましょう。よろしくお願いします」

(;'A`)「え、え? あ、はい……」

 二人が握手を交わした。
 ドクオは困惑の表情を浮かべて、どうしていいか分からない、という風に慌てている。
 しかし、ドクオは了承した。一度頷いたからには、もう取り消させない。
 思わず、小さな握り拳を作った。

(‘_L’)「昼食、よろしいのですか? 早く食べないと調練の時間に間に合わなくなりますが」

(;'A`)「え!? あ、そうだった……失礼します!」

 ドクオは慌てて駆けて行った。
 角を曲がって姿が見えなくなってから、フィレンクトに頭を下げた。

( ^ω^)「ありがとうございますお。助かりましたお」

(‘_L’)「手こずっているようでしたので、手助けできればと思いまして」

(;^ω^)「でも、ドクオの話をした覚えがないですお……」

(‘_L’)「そう言えば納得してもらえるかと思いまして、咄嗟の嘘でした。失礼しました」

( ^ω^)「本当に、ありがとうございますお」

 再び頭を下げた。
129 :第18話 ◆azwd/t2EpE :2007/03/04(日) 02:11:40.16 ID:Fx6dzm1f0
 不安は消えていない。だが、とりあえず思った通りに部隊長を定められた。
 イヨウが補佐役に回ることを、今さら変えられはしない。ショボンが決めたことなのだ。
 しかし、やるしかない。互いに命をかける戦という化物は、決して甘くない。
 全力を、尽くすしかない。

 戦が始まる。
 城の周りにある桜は、まだ花びらを残している。
 ヴィップ城から発つころには、恐らくすべて散っているだろう。

 それも、戦に発つ状況としては、悪くないかもしれない、とブーンは思った。













 第18話 終わり

     〜to be continued

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