- 5 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水)
22:02:57.17 ID:SjWscXPQ0
- 〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
19歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:レベッカ城
●('A`) ドクオ=オルルッド
19歳 新兵
使用可能アルファベット:C
現在地:ヴィップ城
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
29歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
24歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:エヴァ城
●( ,,゚Д゚) ギコ=ロワード
27歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
- 7 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水)
22:03:51.44 ID:SjWscXPQ0
- ●( ^Д^) プギャー=アリスト
25歳 大尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヴィップ城
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
22歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャナ城
●(=゚ω゚)ノ イヨウ=クライスラー
28歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
〜西塔の兵〜
●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
34歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ハルヒ城
●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
35歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城
- 8 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水)
22:04:26.43 ID:SjWscXPQ0
- ●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
38歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ハルヒ城
●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
31歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城
- 9 :階級表
◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水)
22:05:16.67 ID:SjWscXPQ0
- 〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー/モナー
少将:ギコ
大尉:プギャー/シラネーヨ
中尉:イヨウ
少尉:ブーン/ビロード
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ
大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:
- 10 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE
:2007/02/21(水) 22:06:01.13 ID:SjWscXPQ0
- A:
B:
C:ドクオ
D:
E:
F:
G:
H:
I:ブーン
J:
K:
L:プギャー
M:
N:ヒッキー
O:
P:
Q:
R:モララー
S:ジョルジュ
T:ショボン
U:
V:
W:
X:
Y:
Z:
- 12 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:07:55.98 ID:SjWscXPQ0
- 【第14話 : Addition】
――レベッカ城――
暁の光が地表を明るく照らしていた。
冬の朝の空気は、澄み切っている。
五日かけて、イチジョー山の麓にあるレベッカ城に到達した。
馬を城に預け、徒歩で山を登る。
さほど高さはないが、登山道は入り組んでいた。
山肌を露わにし、隠れる場所はない。右や左に行かなければ城まで届かない。
加えて、パニポニ城からは山を登っている様がよく見えるはずだ。攻めにくい城だというのが分かった。
山を登っている途中、ずっと考えていた。
ヴィップ城を出る前の、ドクオのことだ。
(;^ω^)(……ドクオ、一体なんで……)
西塔の最上階まで昇って、真意を確かめたかった。
しかし、行軍の予定を滞らせるわけにはいかない。ドクオのことは、あくまで個人的な事情だ。
国軍全体に影響を与えるわけには、いかなかった。
今回の任務が終わり、ヴィップ城に戻ったときに、行動を起こさなければならない。
(;^ω^)「……ふぅ……」
二刻ほどかけて、ようやく城までたどり着いた。
- 14 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:10:29.53 ID:SjWscXPQ0
- パニポニ城はハルヒ城よりも、シャナ城やエヴァ城よりも大きかった。
城壁が斜めに傾いており、上から岩などを転がせるようになっている。
城塔の窓にはD隊が配備されるのだろう。防衛面に優れた城だった。
城内に入ろうとしたところ、一人の男が前から歩いてきた。
具足に身を包み、静粛と威厳を兼ね備えた歩みを進める。
同じくらいの背丈なのに、何故か天をも貫きそうなほど大きく見える。
モナーだと、すぐに分かった。
( ´∀`)「遠いところから、わざわざすみません」
城門を開いて、モナーが手を伸ばしてきた。
その右手を握って頭を下げる。
(;^ω^)「は、初めましてですお。ブーン=トロッソと申しますお」
( ´∀`)「存じておりますよ。このパニポニ城にも、噂が届いていますので」
(;^ω^)「こ、光栄ですお」
( ´∀`)「モララー中将に匹敵すると言われる才覚の持ち主だそうですね。
ショボン大将は近年の人材不足を憂えていたそうですが、ブーン少尉のおかげで若干解消されたことでしょう。
単独でパニポニ城に送ったのも、恐らく期待の現われでしょうね」
- 16 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:13:05.82 ID:SjWscXPQ0
- (;^ω^)「まだまだ、未熟者ですお」
( ´∀`)「謙遜もお上手ですね。とにかく、城に入りましょう。ご案内致します」
モナーが踵を返して、城内へと進んでいく。
背中は、やはり大きかった。
―パニポニ城内
モナーが直々に城内を案内してくれた。
彩り鮮やかな城で、洒落た雰囲気があり、歩き回るのが楽しい。
小物ひとつとっても精緻に作りこまれており、不思議な輝きを放っている。
窓の外に見える鉱山との差異が際立っていた。
城内を一通り歩き終わり、モナーが用意してくれた居室に向かう途中、あることを思い出した。
同時に、血の気が引いた。
(;^ω^)「モ、モナー中将……」
( ´∀`)「はい。どうかしましたか?」
(;^ω^)「あの……モナー中将は、怪我をしているはずでは……?」
眼の前に立っているのは、明朗な壮年の男性。
静寂さを持してはいるが、快活に見えた。
どこにも怪我らしい怪我は見当たらない。
大体、もし本当に怪我をしているなら、こんな風に城内を案内できるはずはなかった。
- 18 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:16:13.33 ID:SjWscXPQ0
- ( ´∀`)「そうですよ。この歳になると完治までに時間がかかってしまって……厄介なものです」
モナーの口調は軽い。
思わず、拍子抜けしてしまったほどに。
一体、どういうことなのか。
(;^ω^)「まだ完治していないなら……こんな風に歩き回って、大丈夫なんですかお?」
( ´∀`)「大丈夫ですよ。ずっと休んでたら体が鈍ってしまいますしね」
モナーは微かな笑みを浮かべている。
それを、どう捉えていいのか分からなかった。
( ´∀`)「しかし、戦にはまだ出られそうにありません。そこで、ブーン少尉に来ていただいたというわけです」
(;^ω^)「……なるほどですお」
( ´∀`)「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。私も既に四十四、最盛期は過ぎております。
長年の疲労からか、体を重く感じることも多々あります。嫌なものですね。
しかし、まだ隠遁するわけにはまいりません。ヴィップのために、朽ち果てるまで戦う心積もりです。
この怪我もそろそろ完治するはずです。いずれ轡を並べられるときも来るでしょう」
いやに、饒舌だと思えた。
気のせいだと自分に言い聞かせた。
- 21 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:18:59.17 ID:SjWscXPQ0
- ――軍議室――
( ´∀`)「最近、北のギフト城からラウンジの兵が出てきているんです」
軍議室に案内され、着座した。
窓もないこの部屋は長机と椅子が置いてあるだけで、軍議には適切かも知れない、と思った。
( ^ω^)「この近くまで、ですかお? 数はどれくらい?」
( ´∀`)「最初は五百程度でした。しばらく放置していたのですが、鉱山に入る動きを見せたので、部隊長に蹴散らさせました。
ご存知の通り、鉱山は国有。α鉱石も国しか取り扱ってはいけないことになっています。
鉱山に入り込むような輩はラウンジの兵でなくても大罪。追い払ったのは適切だったと思うのですが……
半月前には、三千の兵が十里にまで迫ってきました。正直、厳しい数です」
( ^ω^)「パニポニ城からなら、逆落としをかければ……」
( ´∀`)「逆落としをするには、距離がありすぎます。ラウンジの兵がパニポニ城を落とそうとしない限り、無理でしょう。
しかし、ラウンジはパニポニ城を狙ってはいません。この要塞を落とそうと思ったら七万以上は必要ですしね。
つまり、今ジョルジュ大将が戦っている西方面の戦を、邪魔されたくない。
言わば牽制の意味合いが強いのではないか、と思っています」
( ^ω^)「ということは……仮にブーンが出陣してラウンジ軍を蹴散らしても、あまり意味はないってことですかお?」
( ´∀`)「意味がない、ということはありません。三千の兵が敗れたら、ラウンジも焦ります。
ヒグラシ城も背後の警戒を余儀なくされる。兵を若干、東に割く必要も出てくる。
そうなれば、ジョルジュ大将の援護という役目も果たせます」
しかし、三千を打ち破っても北のカノン城から再び援軍が出てくるのではないか。
そう思ったが、言葉にはしなかった。モナーも、これくらいのことは当然思いついているはずだ。
それを口にしないということは、北から兵が出てこないという確信があるのだろう。
- 24 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:22:16.28 ID:SjWscXPQ0
- ( ´∀`)「ジョルジュ大将は五日後にヒグラシ城を攻めるようです。
パニポニ城付近のラウンジ兵と戦うなら、四日後ですね。それが一番効果的でしょう。
ブーン少尉に指揮していただくしかないんですが――――すみません、パニポニ城からは兵を出せません」
(;^ω^)「兵を、出せない? どういう意味ですかお?」
( ´∀`)「パニポニ城は最小限の兵で守られています。攻めのために使う拠点ではありませんから。
攻撃に兵を割くと、北西のダカーポ城などから兵が出てきて攻められた場合、守りきれない恐れがあります。
ラウンジの総兵数はヴィップの倍以上。可能性がないとは言い切れません」
(;^ω^)「じゃあ、本城から率いてきた二千で戦え、ということですかお?」
( ´∀`)「そうしていただくしかありません。申し訳ない限りですが……」
最初から決めていたかのような、話の流れだった。
しかし、モナーの言うことには筋が通っている。納得もできる。
( ^ω^)「……分かりましたお。全力を尽くしますお」
( ´∀`)「期待しています」
同時に席を立った。
その場に残ったのは、微かな蟠りだけだ。
- 25 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:25:09.75 ID:SjWscXPQ0
- ――翌日――
配下の二千に、新たなアルファベットが支給された。
パニポニ城の付近には鉱山が多くあり、そこで採れるα鉱石は全土でも最上のものだという。
属城であるレベッカ城にはアルファベット生産所もある。
パニポニ城は、ヴィップにとってなくてはならない重要拠点だった。
( ´∀`)「これくらいしかできず、申し訳ありません」
( ^ω^)「とんでもないですお。ありがとうございますお」
それぞれの兵に行き渡らせ、軽めの調練に移った。
城内しか調練場がない。激しい調練は、したくてもできないのだ。
夜になると、モナーと二人で夕食をとった。
今後についての話が主だったが、時折、昔話も出た。
( ´∀`)「ハンナバルさんはヴィップにとって唯一無二の存在でした。
私は建国当初からヴィップ国軍に在籍していますが、常にハンナバルさんが先導し、ヴィップは戦ってきました。
オオカミから寝返ってきたジョルジュ大将を育てたのもハンナバルさんです。今も目に見えぬ遺産が多くあります」
モナーが杯を傾ける。
机の上の皿は減りが遅かった。
( ´∀`)「ハンナバルさんといい、ラウンジのベルといい、名将は病に侵されて孤独な死を迎えてしまうものなようです」
( ^ω^)「モナーさんは、ベル=リミナリーと戦ったことはありますかお?」
- 28 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:28:54.42 ID:SjWscXPQ0
- ( ´∀`)「えぇ。何度かありますよ。最後に戦ったのは、もう八年も前ですね。
そのとき、私は総大将でした。ベルもラウンジの大将、刃を交わしたわけではありませんが……
非常に戦が巧く、謀略をめぐらせたにも関わらず、引き分けに終わってしまいました。
今のラウンジに、ベルの後釜がいるとは思えません。それほど大きな武将でした」
( ^ω^)「じゃあ、今後のラウンジは……」
( ´∀`)「まだ分かりません。アルタイム=フェイクファーという新しい大将も、無能ではありませんから。
ベルがいなくなったことによって、結束力が高まっている可能性もありますし。
ジョルジュ大将はそこを見極めてみよう、という思いもあって今回の攻めを決断したようです」
モナーが羊の肉に手を伸ばす。
皮を削ぎ落として火で炙ってあり、油が数滴、皿に落ちていた。
( ´∀`)「ところでブーン少尉、あなたの父上の名はもしや、ベーン=トロッソでは?」
(;^ω^)「とーちゃんを知ってるんですかお!?」
( ´∀`)「十六年前のオオカミ戦で、私の部下として戦っていました。
実に惜しい人材でした。あの戦いが終わったら、少尉に昇格する予定だったのですが……。
嫁や息子も喜ぶ、と子供のように騒いでいた彼の姿、今でもよく覚えております」
( ^ω^)「……とーちゃん……」
( ´∀`)「ベーンもアルファベットでは非凡なものをもっていました。
その才は、しっかりブーン少尉に受け継がれているようですね」
壁に立てかけられたIを横目で見た。
これは、とーちゃんがくれた力だ。とーちゃんのおかげで、戦っていられるんだ。
そう思えて、嬉しくなった。
- 31 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:32:01.00 ID:SjWscXPQ0
- 上機嫌になって酒を呷った。
モナーは優しく微笑んでいる。
( ´∀`)「さて、ここで謀略についてお話したいと思います」
( ^ω^)「……謀略?
どこにしかけるんですかお?」
謀略をかける部分が思い当らなかった。
これから為すべきことは、パニポニ城の付近まで出てきているラウンジ軍の撃退だ。
こちらが寡兵とはいえ、決して難しいことではない、と思っていた。
( ´∀`)「私は、戦が嫌いです。血が流れるのが、嫌いです。
話し合いや謀略で事が済むなら、極力そうすべきだと考えています。
今回、パニポニ城に入った援軍は一千としました」
(;^ω^)「……一千……?」
( ´∀`)「二千なら、相手は五千を出してくるかも知れません。
しかし一千なら、多くても三千でしょう。二千だと知られていても三千だと思いますが、念のためです。
あとはブーン少尉にお任せ致します。お力をお見せいただきたい、という思いもありますので」
川を流れる草が、岩に引っかかって、動きを止める。
今の心境は、例えるならそんな感じだった。
( ^ω^)「……頑張りますお」
それしか言えない。
いや、言わせてもらえないのだ、と思った。
- 34 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:35:12.66 ID:SjWscXPQ0
- ――三日後――
十人選定した部隊長のうちの一人以外を曹長にし、新たに一人を加えて十人、曹長とした。
一人だけになった部隊長には、自分の補佐をしてもらうと告げた。
(‘_L’)「私でよろしいのですか?
ブーン少尉」
( ^ω^)「フィレンクトさんなら安心ですお」
(‘_L’)「お選びいただき光栄です。よろしくお願い致します」
オオカミ戦からの誼であるフィレンクトが今回の二千に入っていたことで、気は楽になっていた。
恐らく、ショボンが考慮してくれたのだろう。ありがたかった。
( ^ω^)「モナー中将の話によると、ラウンジの兵はギフト城の属城であるキリノ城に拠っているそうですお」
(‘_L’)「ここから五十里ほどですね」
( ^ω^)「まずはヒグラシ城に向けて進発しようと思ってますお。進軍速度は遅めで」
(‘_L’)「……誘き寄せるわけですか」
( ^ω^)「そうですお。分かりやすくヒグラシ城に向けて進発すれば、必ずギフト城から出てきますお」
(‘_L’)「敵軍が五千を超えていた場合はどうしますか?」
- 38 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:38:20.54 ID:SjWscXPQ0
- ( ^ω^)「多くても五千、普通に考えて三千だとモナー中将は仰っていましたお。
一千の兵がパニポニ城に入った、と既に流言工作してもらってありますお。三千でほぼ決まりですお」
(‘_L’)「了解です。指揮官がブーン少尉というのは、伝わっているのでしょうか?」
( ^ω^)「伝わっているはずですお。尚更、舐めてかかってくるはずですお」
(‘_L’)「それなら、こちらとしても戦いやすいですね」
話し合わなければならないことは、終わった。
あとは何があっても動じずに戦うことだ。
それが一番難しいとは分かっているが、今後はそれを為さなければならない、と思っていた。
城内の調練室で二千の体を動かさせ、武具の点検をさせる。
パニポニ城から降りてレベッカ城に預けてある馬を引いた。
陽は朱色に染まっている。夜が起き上がるまでに、進発しなければならない。
夜闇に紛れてしまって、敵軍に見逃されると辛かった。
パニポニ城の付近にある鉱山を迂回して北に出た。
荒地で、馬が駆けるのに適しているとは言えない。
だが、おかげで緩い進軍速度も自然に装えるはずだ。
仮に三千が出てきた場合。
こちらが寡兵であることは間違いない。しかも、自らが囮となっている。
背後から攻撃される可能性が高い、ということだ。
しかし、何故か不安は小さかった。
今回は失敗できない。してはならない。
そういった、普段なら重圧となるものが、今回は心地よい重石となっているようだ。
一歩間違えれば足枷になるが、その不安も今のところない。
- 41 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:42:39.28 ID:SjWscXPQ0
- 侮っているわけではないが、今回は意気が違う。
前回のような、何もわからないまま無駄な自信と余計な不安を抱えての出陣ではない。
落ち着いて戦に臨み、全力を尽くす。それだけを考えていられた。
夕日が徐々に高度を落とし始めた。
頃合いだった。
( ^ω^)「出陣」
短く言って、ゆっくり駈け出した。
二千頭もの馬が一斉に動き出す。
揺れる大地。響く馬蹄音。
荒地を蹂躙し、夕日に向かって直走った。
乾いた冬風に身を切られ、手綱を握る手は悴む。
身を低くして駆け続けた。辺りには森も山もない。
パニポニ城とヒグラシ城の間を定期的に調べる斥候が居れば、動向はすぐに伝わるはずだ。
あまりヒグラシ城に近づきすぎると、挟撃を受けかねない。
進軍速度を更に緩めた。
二千の騎兵は足並みを揃えて進軍しつづける。
敵の姿は、いまだ見えず。
もうパニポニ城から二十里は離れた。沈みゆく夕日とは対照的に、湧き上がる焦燥感。
( ^ω^)(……そろそろ止めに来ないと、本当にヒグラシ城まで行っちゃいそうだお……)
ヒグラシ城の背後を突かれるのが、ラウンジにとっては一番困ることのはずだ。
この二千の進軍に、気づいていないはずはない。放置するつもりなのか。
- 44 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:45:57.70 ID:SjWscXPQ0
- フィレンクトの横に馬を寄せ、話しかけた。
( ^ω^)「ちょっとおかしいですお……ラウンジが動かないなんて……」
(‘_L’)「……かえって不穏ですね……あと三十里進んだのち、一旦進軍を停止してみてはいかがでしょうか?」
( ^ω^)「そのほうが良さ……」
思わず、口を噤んでしまった。
言葉を遮る地鳴りが、耳に侵入してくる。
背後から、土煙を上げて駆ける軍。
ラウンジだ。
騎馬隊を反転させた。作戦を遂行しなければならない。
隊を二分し、片方で敵軍を縦に断ち割る。
そして一方で、握りつぶすように敵軍を攻撃する。
それを繰り返して敵軍を乱し、潰走させる。作戦は、はっきり覚えていた。
しかし、それができるわけがなかった。
舞い上がる砂塵が、多すぎるのだ。
(;^ω^)「……そんな……どう見ても……」
(;‘_L’)「……一万はいます……」
- 48 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:49:35.09 ID:SjWscXPQ0
- 逃げるしかなかった。
だが、背を向ければ追いつかれる。こちらは進軍を停止しているのだ。
勢いがあるのはラウンジ。隠れてやり過ごすことも、不可能だろう。
腹を決めろ。
少尉として、二千の命を預かる者として、最善の判断を下さなければならない。
考えはもう浮かんでいる。あとは、それを実行する決断力だけだ。
アルファベットIの穂先を、鋭く敵軍の方に向けた。
橙色の反射が敵軍を一瞬、掻き消す。
いくしかない。
( `ω´)「小さく固まるお! 敵軍の中心を突っ切って、パニポニ城まで引き返すお!」
迫り来る一万の大軍。こちらは、わずか二千。
ぶつからずに逃げ切るのは、不可能だ。戦うしかない。
例えどれほど寡兵であろうとも。
三年前のオオカミ戦、モララーは二千の騎兵で一万の敵軍を翻弄し、敗走に追い込んだという。
今は潰走させなくてもいい。とにかく、犠牲を最小限に抑えて逃げ切ることだ。
- 49 :第14話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/21(水) 22:51:50.08 ID:SjWscXPQ0
- ( `ω´)「行くおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
アルファベットを横に構えて駈け出す。
敵軍が、更なる速度で迫る。
頭の中には、皆でパニポニ城に帰還することしかなかった。
第14話 終わり
〜to be continued
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