2 名前:登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:24:11.23 ID:pt1QL8vE0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
19歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城

●('A`) ドクオ=オルルッド
19歳 新兵
使用可能アルファベット:C
現在地:ヴィップ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
29歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
24歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:エヴァ城

●( ,,゚Д゚) ギコ=ロワード
27歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
5 名前:登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:25:57.93 ID:pt1QL8vE0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
25歳 大尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヴィップ城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
22歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャナ城


〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
34歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ハルヒ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
35歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
38歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ハルヒ城
7 名前:階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:28:10.04 ID:pt1QL8vE0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー・モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー・シラネーヨ
中尉:
少尉:ブーン・ビロード


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:
9 名前:使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:29:36.78 ID:pt1QL8vE0
A:
B:
C:ドクオ
D:
E:
F:
G:
H:
I:ブーン
J:
K:
L:プギャー
M:
N:ヒッキー
O:
P:
Q:
R:モララー
S:ジョルジュ
T:ショボン
U:
V:
W:
X:
Y:
Z:

10 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:31:58.82 ID:pt1QL8vE0
【第13話 : Strange】


――世界暦・515年――

――ヴィップ城――

 年が明けて、ヴィップ城内はようやく落ち着きを取り戻した。

 年末のヴィップを騒がせたのは、ベル急逝の報だった。
 誰もが予想より早い、と感じたのだ。

(´・ω・`)「稀代の英傑も、戦場で死ぬことは叶わん、か」

( ^Д^)「ラウンジの戦力は格段に落ちましたね」

(´・ω・`)「あぁ……ジョルジュ大将は、一気にヒグラシ城を奪おうとするだろうな」

 ベルが死んだことにより、ラウンジは軍を退いた。
 今ヒグラシ城を守っているのは、一万に満たないという。
 落とせる見込みはある、とショボンは語った。

 ラウンジの大将が死んだからといって、ブーンに特別影響が出たわけではなかった。
 新年を迎えて一つ歳を取り、新たな年を祝う宴に参加した程度だ。
 オオカミ方面を担当する東塔に属している以上、ラウンジの動向による影響は微々たるものだった。
 
15 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:39:01.30 ID:pt1QL8vE0
( ^ω^)(……次の戦までに、一つでも上のアルファベットに……)

 Jの壁は突破できていない。さすがに、厚かった。
 プギャーに聞いてみたが、Jの壁突破には一年かかったという。
 ギコもほぼ一年、ショボンでさえ半年かかったという話だ。
 今使っているIとは、長い付き合いになりそうだった。

 しかし、このJを突破できるかどうかが将校足りえる指標の一つだという。
 アルファベットIは癖がなく扱いやすい。リーチも上位に引けを取らない、易しいアルファベットだった。
 だが、テグハのような形状をした、刃先が大きく反っているJは、一気にリーチが短くなる。
 癖はさほどないが、扱いづらさはかなり上がるはずだ。

 そのJを扱えるようになれれば、将校として胸が張れる。
 何となく、そんな気がした。

( ^Д^)「調練行くぞ、ブーン」

 プギャーがLを背に負って、歩き出した。
 相当の重量があるはずだが、片手で軽々振るう。
 自分も、もっと膂力をつけなければならない、とブーンは思った。

 原野に出て、馬に跨った。
 入軍したころに比べれば良くなったが、それでも馬の扱いは下手だ。
 はっきり自覚できるほどだった。

( ^Д^)「馬は自分の足だぜ。一体感が大切だ。
     ま、急ぐ必要はない。じっくり慣れてきゃいいさ」

(;^ω^)「はいですお」

16 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:40:24.04 ID:pt1QL8vE0
 馬上では、アルファベットの扱いも難しくなる。
 地に足をつけているときとは、段違いだ。思った通りに振るえない。
 このもどかしさを、早めに消し去りたかった。


 調練を終えて夕食を取ったあとは、自室で戦術の勉強に励んだ。
 書物室で何冊か借りたが、一冊を読むのに数日はかかる。
 しかも、一度読んだだけでは頭に入らない。要点を紙に書き写すなどして、やっと少し記憶できた。
 率直に言って、苦痛だった。

(;^ω^)(勉強は嫌いだお……)

 しかし、今のまま次の戦に向かうわけにはいかない。
 前回、その場での適切な判断ができず、ショボンやモララーには迷惑をかけてしまった。
 あんなことは、二度とないようにしたい。

 本を読んでいるうちにいつの間にか眠ってしまい、次の日を迎えていた。
 朝はアルファベットの訓練がある。急いで朝食を胃に収め、訓練室に向かった。
 五百の兵がGを携えて、直立している。

(;^ω^)「遅れて申し訳ないですお」

 アルファベットの訓練を、指揮する立場。
 少尉であるから当然だが、ここにいるのは全員、ブーンより軍歴が上だ。
 不満を持っている者や、侮っている者も少なからず居る、というのは分かっていた。

 一昨日、初めて訓練を指揮した。
 ショボンにやり方を教えられ、周章しながらも何とかこなした。
 今日はショボンがいない。不安はあるが、やるしかなかった。

17 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:42:22.73 ID:pt1QL8vE0
( ^ω^)「皆さんご存知の通り、アルファベットGは攻めも守りもできる万能型アルファベットですお」

 五百人の前に立って、喋り始めた。声は、落ち着けている。
 何人かが小声で話しているのが分かった。

 ブーン自身、Gへの思いは強い。初めて敵将を討ち取ったアルファベットだ。
 その有力性も、しっかり分かっている。

( ^ω^)「特に、守り。Iくらいのアルファベットまでなら、何度でも攻撃を防げるはずですお。
     アルファベットIも、兵卒が使うアルファベットとしては一般的で、戦場でぶつかることは多いはずですお。
     ちょっとやってみますお。そこの方、前へ」

 一番近くにいた、長身の兵を手招きした。
 鋭い目つきをしている。威嚇されているような気がした。

( ^ω^)「ブーンの攻撃を、防いでもらいますお。十撃ほど」

 Iを、構えた。
 兵卒がGを前に出す。胴体を守る形だった。

( ^ω^)「いきますお」

 Iを突き出す。
 顔面を狙った一撃は、金属音へと変わった。
 的確に、攻撃を防がれている。
20 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:44:24.31 ID:pt1QL8vE0
 二撃目、Iを引いて再び突いた。今度は右脇腹。
 しかしこれも余裕で防がれる。横に払って足を狙うも、これは跳躍で躱された。
 そこに突きを見舞うも、やはり立ちふさがるG。

 兵卒の口角が、不敵に釣りあがった。

 五撃目、首筋に向けて突き出した。
 素早く攻撃を防ぐG。しかし、振り下ろすように右腕を狙う。
 今度は、切り裂く寸前での防御だった。

 刃先が地面に着く。そこから、左足に向かって振り上げた。
 それもまた、寸でのところで防がれる。しかし、体勢は崩れた。
 左腕を狙って一撃。防がれるが、ここまでだった。
 Iの刃先を、喉元に突きつける。兵卒は、身動き一つ取れないようだった。

( ^ω^)「……アルファベットIはリーチがあって扱いやすいですお。
     防御に優れたGと言えど、戦って防ぎきれる可能性は高くない。
     今日は、徹底して防御面を鍛えてもらいますお」

 喉元から、アルファベットを離した。
 一瞬浮かべた余裕が嘘のような汗が、兵卒の顎から垂れ落ちる。

 本当は、十撃全て防がせるつもりだった。
 しかし、兵卒が途中でこちらを侮った。戦で、最もしてはならないことだ。
 自分自身、先のオオカミ戦では、不遜があった。それが任務失敗にも繋がった。
 侮ることの恐ろしさを、教えておくべきだと思ったのだ。

 まだ大層なことを言える立場ではないが、できることはやる。
 それが、将校の役目だと思った。

21 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:46:42.94 ID:pt1QL8vE0
 二人一組にし、片方に木の棒を持たせた。
 長さはIと同じにしてある。
 攻撃と防御を、交互にやらせた。

 Gの防御を鍛えるだけでなく、いずれIまでいったときの、予行演習にもなる。
 自分で考案したやり方だったが、不満は出なかった。

 訓練終了までの時間は、すぐに過ぎていった。


( ^ω^)「ギコさん、妻帯してるんですかお?」

( ,,゚Д゚)「あぁ。自分の部屋に居るよ。二人で暮らしてる。
    美人で評判だった、給仕の娘だ。今は仕事をやめてるけどな」

 ギコと二人で昼食をとっていた。
 以前は常にドクオと一緒だったが、最近は都合が合わないこともあり、将校クラスと一緒になることが多かった。

( ^ω^)「やっぱり、伴侶がいるといないじゃ、違いますかお?」

( ,,゚Д゚)「戦で、勝とうと思う気持ちが強くなる。死んだら、あいつを悲しませることになるからな。
    養ってかなきゃいけないし、活躍して喜ばせてやりたい。
    俺は、あいつがいるから今、頑張れてると思うよ」

 そう言って、ギコは微かに笑った。
 それは、憧憬を抱くには充分すぎる笑顔だった。

('A`)「ギコ少将、ブーン少尉」

22 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:48:43.97 ID:pt1QL8vE0
 二人で談笑していたとき、突然、ドクオが声をかけてきた。
 畏まった言い方に、違和感が沸く。

('A`)「一刻後に、軍議を開くとのことです。至急、第二軍議室へ」

( ,,゚Д゚)「誰からの伝令だ?」

('A`)「ショボン大将です。では、私は失礼します」

( ,,゚Д゚)「あぁ、わざわざすまなかったな」

 ドクオが一礼して去っていった。
 目は、一度も合わなかった。

 穏やかさは、かけらもない。

( ,,゚Д゚)「あいつ、お前の友人だろ? 会話くらい、してきゃいいのに」

( ^ω^)「……きっと、遠慮したんですお。そういう気遣いのできるやつですお」

( ,,゚Д゚)「そんなもんか? 俺にはよく分からんが」

 自分の言葉で、自分を納得させるしかなかった。
25 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:50:44.63 ID:pt1QL8vE0
――第二軍議室――

(´・ω・`)「ラウンジのヒグラシ城を、ジョルジュ大将が攻める。十日後だ」

 全員が着座して、ショボンはすぐそう言った。
 皆が予想していたことだ。驚きは少なかった。

(´・ω・`)「戦に次ぐ戦だが、防衛戦に勝利したことで士気は高い。
      勢いのあるうちに奪いたい、とのことだ」

( ,,゚Д゚)「東側がエヴァ城を奪ったから、焦っているのかも知れませんね」

(´・ω・`)「かも知れんな。まぁ、時機を誤っているわけではないし、ジョルジュ大将らしい決断だと思う」

( ^Д^)「しかし、この軍議は、それだけではありませんよね?」

(´・ω・`)「あぁ。実は今朝、モナー中将から伝令が来たんだが……」

 ショボンが懐から一枚の書簡を取り出した。

(´・ω・`)「どうやら、モナー中将のところに、ジョルジュ大将から要請が来たらしいんだ。
      ヒグラシ城を攻めるにあたって、パニポニ城から背後牽制をお願いしたい、と」

(=゚ω゚)ノ「パニポニ城に、そんな余裕がありますか?」

 イヨウ大尉が発言した。
 猫のような特徴的な髭を持った、偉丈夫だ。
 戦では攻めの姿勢が強い、熱血漢だという。

26 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:54:30.04 ID:pt1QL8vE0
(´・ω・`)「ない。あそこは天険の要塞、兵が少なくても充分守れるという理由で、兵数はかなりギリギリだ。
      重要拠点であるにも関わらず、守兵は五千……まぁ、モナー中将が守将として赴任しているおかげだが」

( ,,゚Д゚)「しかし、五千しかいないのはジョルジュ大将も分かっているはず。つまり……」

(´・ω・`)「あぁ。間接的に、本城から兵を出せと要請しているのさ。
      西塔の兵はほぼ総動員で戦に出ている。いま出られるのは、東塔の兵だ」

( ^Д^)「モナー中将がショボン大将に要請することも、ジョルジュ大将は読んでいるわけですか……」

( ,,゚Д゚)「要は、東塔の兵を戦に出させて、兵を削るのが目的ですか?」

(´・ω・`)「それは考えすぎさ」

( ,,゚Д゚)「しかし、牽制などしなくても、敗戦を引きずっているラウンジ軍など、ジョルジュ大将なら容易いでしょう」

(´・ω・`)「侮ることの怖さを知っているのさ、ジョルジュ大将は。
      万全を期したいのだと思う。そう信じるしかない」

( ^Д^)「それにしても、オオカミ戦が終わってからさほど時が経っていない東塔に要請とは……」

 ジョルジュはあくまでモナーに要請している。
 結果、本城の東塔に要請がいくことを分かっていても、モナーに要請したという事実しかないのだ。
 狡猾なやり方だった。

(´・ω・`)「当然、無視するわけにもいかない。多くは出せないがな。
      モナー中将も二千でいいと言っている。将校一人にI隊二千をつけて、進発させる」

( ,,゚Д゚)「誰が行きますか?」

27 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 18:57:03.18 ID:pt1QL8vE0
(´・ω・`)「若い将校に経験を積ませておきたい。ここは、ブーンに行ってもらおうと思ってる」

(;^ω^)「……ブ、ブーンですかお?」

 唐突に出た自分の名に、慌てた。
 何となく、ギコかプギャーが行くような気がしていたからだ。

(´・ω・`)「モナー中将には、一度会っておいたほうがいい。建国当初から軍を支えてきた将軍だからな。
      くれぐれも失礼のないように。しっかり挨拶しろよ」

(;^ω^)「は、はいですお」

(=゚ω゚)ノ「モナー中将の怪我は、完治したんですか?」

(´・ω・`)「いや、まだだ。だから武将が必要なのさ」

(;^ω^)「……それは、つまり……」

(´・ω・`)「お前が全体を指揮して戦うことになるかも知れない、ということだ」

 開いていた拳を、握り締めた。
 汗ばんでいる。震えている。
 しかし、高揚もしている。

( ^ω^)「……頑張りますお!」

 ショボンが頷いた。

(´・ω・`)「これで軍議は終わりだが、ブーンは残れ。細かく指示を与える。
      他の者は各々の仕事をこなしてくれ。以上だ」
29 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 19:00:14.67 ID:pt1QL8vE0
 二人以外が立ち上がり、軍議室を退出した。
 二人きりになったことで、少し寒さを感じる。
 寂寞感に身を包まれた。

(´・ω・`)「進発は明後日。二千の騎馬隊選別はこっちでやっておく。
      パニポニ城は"イチジョー山"という険阻な山の上にある。騎馬でいくのは辛い。
      馬は麓のレベッカ城に置いていけ。パニポニ城には徒歩で入ったほうがいい。
      あとはモナー中将の指示を仰いでくれ」

( ^ω^)「了解ですお!」

(´・ω・`)「それから……今回は、犠牲を抑えることを最優先してくれ。
      東塔はオオカミ戦が終わったばかりで、兵数が減少気味だ。
      要請があったから仕方ないが、本当は一兵も出したくないところなんだ。
      被害は最小限。それを頭に入れておいてくれ」

( ^ω^)「分かりましたお。頑張りますお!」

 ショボンは再び頷き、立ち上がった。


――二日後・夜――

( ^Д^)「こんな夜更けに進発か……気をつけろよ」

( ^ω^)「ありがとうございますお」

 城外に二千の兵が整列している。
 ショボンは所用があって見送りに来れず、代わりにプギャーが来てくれた。
31 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 19:03:22.92 ID:pt1QL8vE0
( ^Д^)「ブーン、モナー中将は心優しい将軍だ。俺も昔、良くしてもらった。
     ハンナバル総大将が亡くなった後、モナー中将は総大将を継いだ。
     しかし、そんなことを鼻にかけたりはしない、人格者だ。
     今でこそ年齢的な衰えを理由に、中将に自主降格したが、実質、軍の頂点に立っている。
     色々勉強になることもあると思うぞ。頑張れよ」

( ^ω^)「はいですお!」

( ^Д^)「じゃあな」

 プギャーが城内に引き返した。

 部隊長を十人選び、兵を数えさせた。
 馬に跨り、その様を少し眺めたあと、情景に視線を移す。

 今宵は、三日月。
 薄雲が光を遮った。暫し、闇が深まる。
 ヴィップ城が、巨大な影を作り出した。

 空を見上げるように、ヴィップ城を見上げた。
 国旗が揺らめいている。聳える城塔は細長い影を生み出す。

( ^ω^)(相変わらず、でっかいお城だお……)

 呆然と城を眺めていた、そのとき。 

 不意に、西の寮塔で、影が動いた。

(;^ω^)(……お?)
34 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 19:06:50.23 ID:pt1QL8vE0
 最上階。
 影が、上へと移動する。
 ジョルジュは居ないはずだ。

 夜、誰も屋上には出ていない。
 兵は就寝する時間だ。人が居ることもほとんどない。

 こんな時間に、誰も居ない部屋に、向かっている。
 真っ当な理由があるとは思えない。
 辺りを窺うような仕草まで見せている。

(;^ω^)(一体誰が……)

 目を凝らした。
 背丈はさほどない。細身。
 体格は心もとなく見える。

 腰が、輝いた。
 アルファベットの光だ。

 今宵の月が、降りてきたのだと思えた。
 アルファベットC。三日月のような形をしたアルファベットだ。

(;^ω^)(……C?)

 今、Cを使っているのは、新兵だ。

 まさか、と思った。
 しかし、すぐに確信に変わった。
37 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 19:09:58.60 ID:pt1QL8vE0
 ドクオだった。

(;^ω^)(な……なんで……)

 最上階の扉に、達していた。
 鍵がかかっているはずだ。開けられるわけがない。
 しかし、ドクオの姿が消えた。

 扉が開き、そして閉じた。

(;^ω^)(一体……どういうことだお……?)

 居ても立ってもいられなくなった。
 最初に人数を数え終わった部隊長に、待機を命じて、城に駆け戻った。
 全速力だった。

(;^ω^)(ドクオ……ドクオ……)

 最近、素っ気無い態度を取られることが多かった。
 疲れているのだろう、と思っていた。新兵の訓練は、激しさを増している。
 しかし、それだけが理由ではないだろうと、どこかで分かっていた。

 城門を潜った。
 何をどうすればいいかも、分からぬままに。

 城内に戻り、駆けた。
 西塔の最上階は遠い。あまり時間はかけられない。
 急ぐ理由は整いすぎているほどだ。

 しかしそのとき、廊下で一人の男と出会った。
39 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 19:12:56.32 ID:pt1QL8vE0
 兵が不要に出歩いていないか見回る、鍵番だ。
 飄々とした小男で、背筋が大きく曲がっている。

(;^ω^)「鍵番さん!」

(’e’)「ありゃまぁ、ブーン少尉でねぇか。まだ進発してなかったのかい?」

(;^ω^)「お聞きしたいことがありますお! 鍵番さん、西塔最上階の鍵はありますかお!?」

 鍵番が、不思議そうに首を傾げた。
 何故そんなことを聞くのか。そう思っているのだろう、と思った。
 しかし、そうではなかった。

(’e’)「鍵がないことを、知ってるんですかい?」

 そう言って、鍵板を掲げた。
 一枚の板に、多くの部屋の鍵がかけられている。
 確かに、西塔最上階の鍵はなかった。

(;^ω^)「やっぱり、盗られたんですかお?」

 鍵を盗んで、忍び込んだ。
 そうとしか、考えられなかった。

(’e’)「いやいや、そうじゃあねぇんです」

 鍵番が頭を横に振った。
 予想外だった。
41 名前:第13話 ◆azwd/t2EpE :2007/02/04(日) 19:15:59.71 ID:pt1QL8vE0
(;^ω^)「え? それじゃあ……」

(’e’)「鍵は、渡したんです。どうやら、ドクオさんのところに、ジョルジュ大将から手紙が来たらしくて」

 鍵板を再び腰に戻す。
 小柄な鍵番がつけると、あまり大きくはない鍵板が床に接しそうだった。
 窓の外、まだ月は姿を消している。

(’e’)「必要な物があるから、ハルヒ城まで送ってほしいと。そういうことらしいんです。
    手紙を見せてもらいましたが、確かにジョルジュ大将の字だと思ったので、渡しました」

 鍵番が頭を下げて、見回りに戻っていった。

(;^ω^)(……なんでだお……)

 手紙は、本当にジョルジュからなのか。
 もし本当なら、何故ドクオに送ったのか。
 西塔の兵がほとんど戦に駆り出されているとはいえ、全くいないわけではないのだ。
 東塔の、しかも新兵に頼む理由は、どこにもないはずだ。

 分からないことが、多すぎた。






 第13話 終わり

     〜to be continued

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