177 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 22:42:48.20 ID:NZHX3HO+0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
18歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城

●('A`) ドクオ=オルルッド
18歳 新兵
使用可能アルファベット:C
現在地:ヴィップ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
28歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
23歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:エヴァ城

●( ,,゚Д゚) ギコ=ロワード
26歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
179 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 22:44:03.66 ID:NZHX3HO+0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
24歳 大尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヴィップ城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
21歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャナ城


〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
33歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ハルヒ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
34歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
37歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ハルヒ城
181 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 22:45:35.28 ID:NZHX3HO+0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー・モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー・シラネーヨ
中尉:
少尉:ブーン・ビロード


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ

大尉:ヒッキー
中尉:ビコーズ
少尉:
184 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 22:47:04.98 ID:NZHX3HO+0
A:
B:
C:ドクオ
D:
E:
F:
G:
H:
I:ブーン
J:
K:
L:プギャー
M:
N:ヒッキー
O:
P:
Q:
R:モララー
S:ジョルジュ
T:ショボン
U:
V:ベル(ラウンジ)
W:
X:
Y:
Z:
189 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 22:50:16.95 ID:NZHX3HO+0
【第12話 : Bell】


――ラウンジ城・大将室――

(`∠´)(……いい風だ……)

 寝床からはほとんど動けなかった。

 首を動かすだけで外が見れる。
 汚れ一つない、この窓が好きだった。
 いつもここから、兵の調練を見てきた。

 陽も角度をつけはじめ、雲ひとつない空に独り佇んでいる。
 冬なのに、暖かみを感じられた。
 窓を開く。心を癒すような風が吹き込んだ。

 閉めていたときには聞こえなかった兵の掛け声や、刃の交わる音が、耳に届いた。
 どれも心地良い。全てが、世界を構築している。
 どれ一つ欠けても、世界は姿を変えるのだ。

 自分が、死んで居なくなっても当然、世界は動きを見せる。

( ’ t ’ )「朝食をお持ちしました」

 カルリナが現れた。
 まだ二十二と若く、才気に溢れている、期待の新鋭だ。
 自分のことを尊敬しているためか、将校になってすぐ従者としての働きを申し出てきた。
 最初は困惑したが、受けることにした。側にいれば、学ばせてやれることも多い。
192 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 22:52:49.02 ID:NZHX3HO+0
(`∠´)「ありがとう」

 朝食を受け取り、ゆっくり口に入れた。
 喉を通しやすいものばかりだ。固いものはとても食べられない。
 最大限、栄養面も考慮しているという。

(;’ t ’ )「口に運ぶのは、自分が」

(`∠´)「いい。それくらい、自分でやれるさ」

 腕は重い。下げるのはいいが、上げるのが辛かった。
 だが、こうやって時々動かさないと、本当に機能しなくなりそうで怖かった。
 体が全く動かなくなるとすれば、命があっても、軍人にとっては死と同然だ。

 時間をかけて食べきった。
 一息ついて、再び外を見る。騎馬隊が調練していた。
 隊を組んで動いている。寒さのせいか、動きが緩慢に見えた。
 自分があの場にいれば、即座に注意してやるのに、とベルは思った。

( ’ t ’ )「薬湯です」

 カルリナが湯飲みを差し出してきた。
 礼を言って受け取り、傾けた。咽てしまいそうなこの味にも、いつしか慣れてしまっていた。

( ’ t ’ )「失礼します」

 空になった朝食の器と湯飲みを抱えて、カルリナが部屋を退出した。
198 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 22:55:08.83 ID:NZHX3HO+0
 寝床で横になる。体が楽になった。
 カルリナが持ってきてくれた薬湯のおかげで、全身が暖かい。少し汗をかいているくらいだ。
 決して不快ではなかった。

 カルリナは、素直で優しい武将だった。
 大局を見通せる目もある。決断力には欠けるが、経験を積めば多少は緩和されるだろう。
 あとは、少し悪賢くなれれば、ラウンジ国軍を統べる存在になれる可能性もある、と感じていた。

 そういった、将来性を持った者ばかりではなかった。
 カルリナは久々に期待できる武将だ。つまり、近年は、小粒ばかりだった。
 若手が育っていないのだ。

 自分はもう四十八になる。ラウンジが建国されたのは、十七のときだ。
 挙兵に応じて、混沌としていた建国当初を支えた。アルファベットでは、誰にも負けなかった。
 戦での武勲が認められて、足早に昇格していった。大将暦は二十年に及ぶ。
 ラウンジにとって、なくてはならない存在だと、自分でも思った。

 しかし、皆が自分に頼りすぎたのが問題だった。
 いざというときにはベルがいる、ベルに任せておけば大丈夫。
 そういった風潮が、ラウンジ軍内に蔓延してしまった。
 無論それは自分のせいでもあったが、由々しき事態だった。
 武将が成長しなくなってしまっていたのだ。

 事実、自分がいないままハルヒ城を攻め寄せたラウンジ軍は、何もできずに撤退している。
 兵糧や兵、アルファベットや馬を失っただけの、完全な敗北だった。
200 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 22:57:21.75 ID:NZHX3HO+0
 深刻な事態だ、と気付いたのは九年前だった。
 ヴィップにハルヒ城を奪われた。原野戦での負け方がまずく、城まで一気に取られてしまったのだ。
 あのとき、自分はヒグラシ城にいた。ヴィップ軍の挟撃を狙っていたのだ。
 ハルヒ城付近まで攻め寄せたヴィップ軍は、落ち着いて守れば退けられるはずだった。
 だが、気付けばラウンジ軍はハルヒ城から引き離され、別働隊に城まで攻められた。

 ハルヒ城から離れずに、守りだけを考えれば良かったのに、敵将のジョルジュに引っ掻き回され、惑わされた。
 ただ城の周りで戦うだけで良かった。それすらできない武将が、多すぎた。


 改善は試みた。
 極力自分は参加しないようにして、敵と戦わせた。
 まず将校の意見を聞く。そのあとで、自分が意見を述べる。
 戦でもできる限り個人で判断させるようにした。

 そして気付けば、自分の体が弱っていた。

(`∠´)(つくづく、頭の悪い話だ……)

 他の武将のことを考えるあまり、自分のことが疎かになっていた。
 病を得て、もう一年近くになる。最重要機密として、隠し通してきたが、遂にヴィップに発覚してしまったらしい。
 ファットマンがヴィップ戦で討ち取られ、自分の代わりはいなくなった。
 ずっと姿を現さなければ、ベルに何かあったと勘繰られるのは当然だった。

 最初はときどき発熱する程度で、一晩寝れば体は楽になった。
 しかし、頻度が増え、数日経っても熱が引かなくなり、体も重く感じるようになった。
 そのとき、侍医から重い病であることを聞かされた。
 不思議と、衝撃は大きくなかった。
202 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 22:59:39.10 ID:NZHX3HO+0
 軍人である以上、常に死は覚悟していた。
 頻繁に長距離を行軍するなど、体を酷使する職業柄、病に罹ることも予測はできていたのだ。

 ただ、できれば戦場で死にたい、とは思っていた。
 軍人なら恐らく、誰でもそうだ。

 しかし、病でいなくなるのも、悪いことばかりではなかった。
 軍内は危機感を抱き始める。心の準備ができる。
 自分がいなくなったあとのことも、伝えておける。
 戦死より、ずっとスムーズに引き継げるはずだった。
 ただし、自分の代わりになれるような武将はいない。


 壁に立てかけられたアルファベット、Vを見つめた。
 ラウンジ随一の名工に作らせたもので、三年は使っている。
 さすがにVまで来ると、一つ上がるのも壁を越えるように辛かった。

 まだ、アルファベットの限界に達したとは思っていない。
 体さえ動けば、まだ上にいける。W以上を扱えるようになれる、と感じていた。
 しかし、今はアルファベットに触れるだけで精一杯だ。

 戦場に出られれば、ヴィップのショボン=ルージアルやジョルジュ=ラダビノード。
 オオカミのミルナ=クォッチも、打ち負かせる自信はあった。
 まだ若造にやられるほど落魄れてはいない。体さえ、まともなら。

203 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 23:01:42.04 ID:NZHX3HO+0
 戦場に立ちたい。ラウンジの全土制覇のために、討ち取っておきたい武将が何人かいる。
 特に、武勇国家として名を馳せるヴィップ。
 ショボンは二十八にしてアルファベットTを使う猛将だ。
 また、ショボンのアルファベット技術で霞んではいるが、三十三でSの壁を越えたジョルジュも手強い。
 この二人が大将を務めるヴィップは、警戒しなければならない。
 若手も多く育っている、怖い敵軍だった。

 逆にオオカミは、ミルナが唯一Sの壁を突破しているだけで、あとは時々名前を思い出す程度だ。
 ただ、戦略面で読めないところがある。どう動くか、予測がつきにくいのだ。
 確実に領土を得ようとするヴィップに比べると、戦いにくい相手と言えた。
 しかし、戦は上手くない。
 自分がいなくなったあとのラウンジと、五分といったところだろう。

 そうなると、今後強くなるのはヴィップだ。
 過日、エヴァ城を攻め寄せたときは開戦してわずか十日で城を奪った。
 報せに驚いて、思わず寝床から立ち上がってしまったほどだ。
 奇襲に次ぐ奇襲で、鮮やかな戦勝だったらしい。
 ショボンの配下にいる、モララーが立案したそうだ。
 これも、怖い武将だった。二十三にしてRに達している。壁の突破も、遠くはないだろう。

 やはり、警戒すべきなのはヴィップだった。
 どうにかしておきたい。
 何とか、自分の死を活かして、ヴィップに痛手を与えられないか。
 ベルは最近、そればかりを考えていた。

204 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 23:04:00.11 ID:NZHX3HO+0
 考え事をしている間に、いつの間にか太陽は見えない位置にまで昇っていた。
 カルリナが昼食を運んでくる。外で調練に参加していたらしく、具足が汚れていた。

 以前一度、その汚れを全て落として部屋に入ってきたカルリナを、叱った。
 軍人の具足は汚れていて当たり前だ。誇るべきですらあるのだ、とベルは思っていた。
 カルリナは言葉に詰まって何も言わなかったが、次からは汚れたまま入ってきた。
 その表情は、清々しく見えた。

 昼食を食べ終え、薬湯を飲み干すと、侍女が三人部屋に入ってきた。
 着物を脱いで体を拭かせる。体の垢が落ちるのが心地良い。
 それが終わると入れ替わりで侍医が部屋に入り、診察を始める。
 何か言っていたが、ほとんど耳に入らなかった。
 こんな薬湯や鍼で、今更快方に向かうとは考えられない。

(`∠´)「ふぅ……」

 侍医が去ると、また一人になった。
 病に罹った当初は常に誰かが部屋に居たが、煩わしくなって遠ざけた。
 気を遣うこともなく、考え事ができる。無心にもなれる。

 ずっと、一人でやってきた。
 軍に入った頃、年上の兵は多く居た。
 しかし、才覚で及ばないと思った者は一人として居なかった。
 アルファベットで圧倒し、戦略や戦術でも自分のほうが的確な意見を述べられた。
 数年経つと、誰もが自分を頼るようになった。

 誰にも頼れなかった。
 子供のような我が侭ではない。それはそれで、仕方のないことだったのだ。
 誰か、支えてくれる人がいればと思うことはあったが、無いものをねだっても意味はない。
 他の武将を育てることにもっと注力できれば良かったのだが、余裕はなかった。

205 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 23:06:18.26 ID:NZHX3HO+0
 後釜を育てられないまま軍を去るのは心残りだが、悔やんでも詮無いことだった。

(`∠´)(……だが……このまま死ぬわけには、いかない……)

 まだやれることはある。
 自分のことは、自分が一番よく分かる。棺に入る時まで、あと数日もない。
 その前に、やっておかなければならないことが、伝えておかなければならないことがある。

 呼び鈴を鳴らした。すぐに侍女が部屋に入ってくる。
 筆を紙を用意させ、下がらせた。
 私が書きます、という申し出も断った。情報はどこから漏れるか分からない。

 まず、息子への遺書。
 正室の子で、もう二十になる。一年前に入軍していた。
 自分のような才があるかは、分からない。
 ただ、自分のおかげで出世は早いはずだ。それに驕ることなく精進してほしい、と書いた。

 正室にも一筆残すかどうか、一瞬迷ったが、やめた。
 美しいが、気立ての荒い女で、自分にはどうにも合わなかった。
 十年前に、理由をつけて故郷に帰している。
 今更、何も言いたいことはなかった。

 それから、アルタイム=フェイクファー中将への遺書。
 自分が消えれば、アルタイムが大将になる。そうするよう、クラウン=ジェスター国王には言い残してある。
 アルタイムは冷静に戦を展開する力はあるが、機転が利かない。
 言われたことは確実にこなす。だが、それだけだった。
 大将の器ではないが、他に適材がいない。今更憂えても、仕方なかった。
207 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 23:08:47.03 ID:NZHX3HO+0
 自分の死を、最大限活かす。
 死んだあとのことは、自分ではどうしようもない。アルタイムに託すしかなかった。
 アルタイムなら、言い残しておけば確実に遂行してくれるはずだ。
 できれば、この死を活かして、ヴィップの大将格を討ち取っておきたい。
 容易ではないが、可能性がある限り、やってみるべきだった。

 読んだあとは燃やすように、と最後に書き終えて、筆を置いた。
 息を吐く。いつの間にか、陽は沈んでいた。
 カルリナが夕食を持って部屋に入ってくる。ランタンに火を灯した。

( ’ t ’ )「本日も、調練は滞りなく終わりました」

(`∠´)「そうか」

 少し見ただけだが、確かに滞ってはいなかった。
 だが、動きが鈍すぎる。あれで、本当にヴィップに勝てると思っているのか。
 不安になって、カルリナに聞いてみた。

( ’ t ’ )「……確かに、ヴィップの力は脅威です。私は戦ったことがないので、分かりませんが……」

 それもそうだった。カルリナはヴィップの軍勢と当たったことがない。
 聞いても仕様がなかった。

(`∠´)「今日の調子でヴィップに当たると、敵の三倍は被害を受けるぞ。
    もっと前に出ろ。速度がなさすぎる。翻弄されて終わるぞ」

( ’ t ’ )「はい」

208 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 23:11:00.03 ID:NZHX3HO+0
 しっかりした口調だった。
 カルリナが、どこまで成長してくれるか。それが、ラウンジの命運を握っているといっても、過言ではない。

 また、温かな風が吹いた。

( ’ t ’ )「窓を開けていると、お体に障ります」

(`∠´)「いい。風を受けるのが、好きなんだ」

 冬も深まりつつあるというのに、この風は不思議だった。
 カルリナは、少し寒そうにしている。そのほうが、おかしいと思えるくらいだ。

 カルリナが頭を下げて、外に出ていった。
 また、一人になった。

 ずっと一人で生きてきた。
 両親は若くに亡くなり、兄弟はいない。
 正室とは気が合わず、息子にも父親らしいことはしてやれなかった。
 いつも、一人だったのだ。

 死も、一人で迎えることは決めていた。
 誰にも看取られたくない。触れてほしくない。
 一人で生き、一人で死ぬのが人間だと思うからだ。

 温かな風が身を掠めた。
210 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 23:13:21.83 ID:NZHX3HO+0
 翌朝、アルタイムに遺書を渡した。
 誰にも見られない自信がある場所で読め、と伝えると、アルタイムは涙を流しながら頷いた。

(`∠´)「後事は頼んだぞ。お前が、ラウンジを天下に導け」

 アルタイムは、涙声で答えた。
 恐らく、自分の耳が聞こえにくくなったせいで、何と答えたのかは分からなかった。


 アルタイムが部屋を出たあと、入れ替わりで息子のファルロが入ってきた。

(`∠´)「すまなかったな……お前には、何も父親らしいことを、してやれなかった」

( ̄⊥ ̄)「父上は、ラウンジを統括する身ですから……」

(`∠´)「ファルロ、精進を怠るなよ。自分が軍を支える、という気概を持ってくれ」

 ファルロが目を潤ませて、頷いた。
 喋っているのが辛くなり、遺書を渡して退出させた。
 恐らく、これが今生の別れになる。

 昼が過ぎ、空が色を変え始めた。
 夕刻、温かな風は変わらずに吹いている。
 自分をまるで、外に誘い出すかのように。

 今行く。そう、小声で呟いた。
212 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 23:15:46.32 ID:NZHX3HO+0
 空が闇色に塗り潰されつつあった。
 誰も、部屋に入ってくるなと伝えた。自分のことは、自分が一番分かる。
 漆黒に染まりつつあるのは、空だけではないのだ。

 まだ、やらなければならないことは多い。
 しかし、叶わない。それもまた、人生だ。
 駄目なときは、こんなものだろう、と思った。

 寝床の脇に置かれた呼び鈴を眺めた。
 月明かりで輝いている。これを鳴らせば、アルタイムが入ってくるはずだ。
 従者をしているカルリナには、部屋から出るなと伝えてある。
 カルリナも、これからは一人で生きていかなければならないのだ。

 自分が居なくなったときのことを、一瞬考え、すぐやめた。
 もう、考え尽くしたことだ。

 また、温かな風が吹く。
 心は、穏やかだ。
214 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/28(日) 23:18:05.08 ID:NZHX3HO+0
(`∠´)「……今、行くさ」

 また、呟いた。

 目を閉じた。
 視界は、明るさと暗さが同居している。
 一旦開いて、また閉じた。

 呼び鈴を、静かに鳴らした。

 視界が、ただひたすら、暗くなった。












 第12話 終わり

     〜to be continued

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