4 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:08:04.82 ID:sn32L8v90
〜ヴィップの兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
32歳 大将
使用可能アルファベット:X
現在地:オリンシス城付近

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
47歳 中将
使用可能アルファベット:U
現在地:オリンシス城付近

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
37歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ギフト城

●( ゚д゚) ミルナ=クォッチ
48歳 中将
使用可能アルファベット:W
現在地:オリンシス城付近

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
48歳 中将
使用可能アルファベット:T
現在地:オリンシス城付近
7 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:09:10.85 ID:sn32L8v90
●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
44歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城付近

●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
46歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:オリンシス城付近

●(´<_` ) オトジャ=サスガ
46歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:オリンシス城付近

●( ФωФ) ロマネスク=リティット
25歳 中尉
使用可能アルファベット:N
現在地:オリンシス城付近
10 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:10:09.75 ID:sn32L8v90
●(个△个) ルシファー=ラストフェニックス
25歳 少尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヒトヒラ城

●/ ゚、。 / ダイオード=ウッドベル
30歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ギフト城
13 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:10:51.77 ID:sn32L8v90
大将:ブーン
中将:ジョルジュ/モララー/ミルナ/ニダー
少将:フサギコ

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ロマネスク/ダイオード
少尉:ルシファー

(佐官級は存在しません)
18 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:11:35.61 ID:sn32L8v90
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:ルシファー
M:
N:ロマネスク
O:
P:アニジャ/オトジャ
Q:
R:フサギコ
S:
T:ニダー/ファルロ
U:ジョルジュ
V:
W:ミルナ
X:ブーン
Y:
Z:ショボン
21 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:12:35.87 ID:sn32L8v90
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・フェイト城〜オリンシス城間

 

28 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:13:54.16 ID:sn32L8v90
【第114話 : Defeat】
 
 
――キョーアニ川・畔――
 
 針を投げても、狙い通りの位置に落ちない。
 川のなかでも徐々に流されてしまい、なかなか魚は興味を示してくれないようだ。
 
 今日は、やけに夜風が強かった。
 汗ばむような熱帯夜にはちょうどいいが、空腹のままでは快く眠れない。
 なんとか一匹でも、と思いはじめてからもう、四刻は経っていた。
 
 嘆息を吐いて、川に投げた針を引き戻す。
 適当に支流を探して、浅い川の魚をアルファベットで狙ったほうが早いだろうか。
 
( ’ t ’ )「……はぁ」
 
 何となく気怠くなって、竿を放り投げた。
 一晩くらい、食べなくても問題はないだろう。
 明日の朝、早く起きて市場へ向かえばいいだけだ。
 
 快眠は約束されないが、それほど眠くもない。
 ゆっくり微睡んでいけばいいだろう。
 周囲に喧騒はない。邪魔は何もないはずだ。
 
 ここは、戦場からかなり遠い。
 戦があるたびに出向くが、常に近場にいるわけではなかった。
 下手に誰かに見つかると、面倒事を起こしかねないからだ。
31 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:15:26.64 ID:sn32L8v90
 今、ラウンジはかなりヴィップを押している。
 その邪魔になるようなことを、してはならないのだ。
 
( ’ t ’ )(……快調だな、ラウンジは……)
 
 偽りの優勢ではない。
 明らかに、ラウンジがヴィップを押し込んでいるのだ。
 
 緒戦、ブーンとショボンが五千の騎馬を率いて戦った。
 あの戦は、圧勝ではなかったものの、ショボンが勝利を収めた。
 そしてその勝利という二文字が、非常に大きかったのだ。
 
 二度目の戦では、互いに十万を超える兵を使った。
 将校も、両軍が出せるだけを出した。
 正に総力戦だった。
 
( ’ t ’ )(……しかし……)
 
 そこでも、勝ったのはラウンジだった。
 正面から堂々と受け止める戦で、実際にヴィップの攻めを完全に殺しきった。
 その後、悠々とヴィップ軍を押し潰したのだ。
 
 兵力では完全にラウンジが優っている。
 だから、当然の結果ともいえた。
 
 しかしそれでも、敗北を重ねていたのだ。
 昨今のラウンジは。
 寡兵のヴィップ相手に、敗戦を喫してきていたのだ。
36 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:17:07.73 ID:sn32L8v90
 ラウンジが圧勝した二度目の戦は、内容も良かった。
 先鋒として起用されたファルロが、見事にヴィップ先陣指揮のフサギコを封じたのだ。
 余勢を駆って、ミルナの攻撃さえも打ち消した。獅子奮迅の活躍だった。
 
 クーとオワタも、ジョルジュとニダーの組み合わせを相手に互角に戦った。
 後詰のサスガ兄弟の補佐が上手く嵌まったせいで押しきれなかったが、悪くない展開だった。
 その後、満を持して登場したショボンが、ヴィップを天から踏みつけた。
 
 全体を指揮していたブーンも、見事ではあったのだ。
 鶴翼に構えたラウンジに対し、同時に両翼を攻め立てた。
 それは恐らく、ショボンの不意を突いたであろう攻撃だったのだ。
 
 明暗を分けたのは、遊撃隊の使い方だった。
 ヴィップのロマネスク=リティットが、ラウンジのアクセリト=ゼルフレアに封じられたことだ。
 
 アクセリトは、狙っていたわけではなかったのだろう。
 飛び出したところに偶然ロマネスクがいた、というように見えた。
 ただ、いずれにせよアクセリトはロマネスクを打ち破り、そこで大勢は決したのだ。
 
 ヴィップがラウンジの鶴翼を破っていれば、あとはブーンがラウンジ兵を喰い散らしていただろう。
 敵軍を蹂躙しつづけたショボンの姿が、ブーンに入れ替わっていた可能性もある、ということだ。
 しかし結局、ブーンはそのショボンの進攻を凌ぐので精一杯だった。
 
 ヴィップの損害は、およそ五千ほどだろう。
 対するラウンジは、二千程度。
 被害兵数から見ても、ラウンジが完勝したことは疑いようもない事実だった。
 
( ’ t ’ )(……しかし、緒戦の後の戦で勝利して……だからこそ三度目が、少し怖かったが……)
41 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:19:13.56 ID:sn32L8v90
 十日ほど経ってから行われた、三度目の戦。
 ヴィップの本領が発揮される頃か、と思っていたが、そこでも勝ったのはラウンジだった。
 
 今度は最初からショボンが獅子奮迅の活躍を見せた。
 近衛騎兵隊とともにヴィップの先陣を打ち崩し、そのまま傾れ込むように敵軍を圧倒した。
 
 今にして思えば、あの戦は最初の一撃で全てが決まっていたのだ。
 だが、眺めている自分には、常に安心できない状況が続いているように思えた。
 
 確かにショボンの攻勢は瞠目するほどのものではあった。
 しかし、ヴィップはブーンがじっと機を窺って耐えていたのだ。
 
 もしショボン率いる騎馬隊が僅かでも隙を見せれば、即座にブーンに潰されていただろう。
 それは、遠方の自分にまで伝わってくるような、緊迫感を伴った牽制だった。
 ショボンは常にブーンを警戒しながらの攻めを余儀なくされていたのだ。
 
 そのショボンに、ヴィップの他将が抗えなかった。
 ジョルジュなりミルナなりが、一度でもショボンを動揺させるような動きを見せていれば、ヴィップが勝っていただろう。
 しかし、両者ともにショボンを止めることはできなかったのだ。
 
 ショボンの戦ぶりは、正に圧巻。
 休むことなく、次々に敵兵を討ち取り、敵陣を崩していった。
 逆の視点から見れば、名だたる勇将揃いのヴィップ軍が、手も足も出ていなかったのだ。
 
( ’ t ’ )(ヴィップが取った作戦は、悪くはない……が……)
 
 完全にブーンを恃んでいる。
 もはや、実質的にショボンを倒せるのはブーンだけだからだ。
 いつしか、他者とは大きな隔たりが生まれてしまっているからだった。
47 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:21:11.05 ID:sn32L8v90
 寡兵であるヴィップにとって、最善の策であることは間違いない。
 やはり、思うようにいかない原因は、中将以下だろう。
 ミルナもジョルジュもニダーも、決して不調ではない。単純な、実力差なのだ。
 
 先の戦では、ミルナがショボンに対し、勝利を収めた。
 しかしあれは、野戦で完全に上回ったわけではなかったのだ。
 やはり、単純な用兵ならばショボンには敵わない、ということなのか。
 
( ’ t ’ )(オオカミ時代から……野戦では分が悪かったな)
 
 現状ではやはり、ブーンに全てを賭ける戦を続けるしかないだろう。
 
 既に三戦連続で敗北を喫したヴィップ。
 ここから、巻き返してくるのだろうか。
 その方策を、ブーンは持っているのだろうか。
 
( ’ t ’ )(……可能性としては……)
 
 戦を想定していくと、考えられる展開がある。
 ブーンも、ショボンも、恐らく想定しているのではないか、と思う展開。
 
 数字の、二と三が重要になってくる未来を。
 
( ’ t ’ )(……ん?)
 
 畔に、人影。
 自分以外の、だ。
50 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:22:51.51 ID:sn32L8v90
 夜半時には珍しい。
 老人だった。
 _、_
( ,_ノ` )「…………」
 
 川のせせらぎに耳を澄ましているのか。
 分からないが、雰囲気は、物静かだった。
 まるで銅像のように、微動だにしていない。
 
 しかし、足先の向きを変えて、歩き出した。
 何故か、自分のほうへと。
 
( ’ t ’ )「ッ……?」
 
 不思議だ。
 ただの老人に見えるのに、自分は身構えてしまっている。
 アルファベットに、手を伸ばそうとしてしまっている。
 
 その理由は、すぐに理解させられることとなった。
 _、_
( ,_ノ` )「カルリナ=ラーラスじゃな」
 
( ’ t ’ )「!!」
 
 暗くて顔も見えない、そもそも誰かも分からない老人に、正体を当てられた。
 即座に見破られたのは、下野してから初めてのことだった。
 
 確かにアルファベットPは、大きいぶん目立つだろう。
 しかし、布に包んであり、一目ではアルファベットと分からないはずだ。
 よほど、アルファベットに精通した人間でもなければ――――
56 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:24:50.53 ID:sn32L8v90
 そこまで考えて、ようやく分かった。
 
( ’ t ’ )「……貴方が、かつてはオオカミに、そして今はヴィップにアルファベットを提供している、シブサワ=ダンディですか」
 _、_
( ,_ノ` )「いかにもそうじゃよ」
 
 渋みのある声で、はっきりとシブサワは答えた。
 
 互いに、敵愾心は持っていない。
 それをシブサワも感じたようで、ゆっくりと自分の隣に腰掛けてきた。
 
( ’ t ’ )「こんなところにアルファベットPを扱うような兵がいるはずはない……いるとしたらカルリナだろう、ですか?」
 _、_
( ,_ノ` )「そうじゃな。お前さんがカルリナだと分かった理由は、そんなところじゃ」
 
 一般的には、自分はヴィップに暗殺されたことになっているらしい。
 だが、ヴィップの城にいるシブサワには、荒唐無稽な話だという事実が伝わっているのだろう。
 シブサワのみならず、ヴィップの将校たちは自分が下野したと考えていると見て間違いなさそうだった。
 _、_
( ,_ノ` )「あとは、なんとなくじゃが」
 
( ’ t ’ )「?」
 _、_
( ,_ノ` )「どこかに、ベルの面影が見えた」
64 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:26:49.85 ID:sn32L8v90
 シブサワが、ひとつ息を吐いた。
 それが何の感情と共に出されたものなのかは、分からない。
 _、_
( ,_ノ` )「ベルと会ったのは、Wを作ったときだけじゃが……あの男に似たものを、少し感じたのじゃよ」
 
( ’ t ’ )「僕に、ですか……」
 _、_
( ,_ノ` )「ベルが自らの手で育てたという、カルリナの名が浮かんでくるのは、当然じゃな」
 
( ’ t ’ )「……ありがとうございます」
 
 自然と、口から礼が零れた。
 シブサワは、微かに眉を動かしたようだ。
 _、_
( ,_ノ` )「礼を言われるようなことは、しとらんぞ」
 
( ’ t ’ )「いえ……ベル大将に、アルファベットを作っていただいたことに関して、です」
 
 それについては、できれば昔から、礼を述べたいと思っていた。
 長年、戦に生きてきたベルに、最高の舞台が最後に用意された。
 ミルナの手によって、そしてシブサワの手によって、だ。
 
( ’ t ’ )「ベル大将は、Wを用いた最後の戦を行えたことで、最後まで武人で或ることができました」
 _、_
( ,_ノ` )「……ふむ」
 
( ’ t ’ )「ベル大将を、父のように慕っていた自分にとって……それは自分のことのように、喜ばしいことでしたので」
71 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:28:55.72 ID:sn32L8v90
 シブサワは、やはり表情を微妙に変化させただけだった。
 初対面である自分にとって、僅かな機微で感情まで読み取ることは難しい。
 _、_
( ,_ノ` )「しかし、こんなところにいるということは、やはり今でもラウンジの戦は気にかかるということかのう」
 
( ’ t ’ )「それは、もちろんそうです」
 _、_
( ,_ノ` )「そうなると、下野した理由は多少気にかかるところじゃな。まぁ、それは聞かないでおくがのう」
 
 理由に関しては、語りたいとも、語りたくないとも思わなかった。
 どうせ語ったところで、他者に理解はしてもらえない。
 
( ’ t ’ )「しかし、こんな時間に、大丈夫ですか?」
 _、_
( ,_ノ` )「ん?」
 
( ’ t ’ )「自分が言うことでもないのかも知れませんが……ご自身のことです」
 _、_
( ,_ノ` )「あぁ……一応、用心棒は連れてきておるよ。といっても、弟子じゃがのう」
 
( ’ t ’ )「ッ……」
 
 ぼんやりと、暗闇の空間に人の姿が浮かんだ。
 離れていたせいもあるが、存在を全く察知できなかった。
 
 背格好はせいぜい自分ほどしかないが、手錬であることが分かる。
 相当、アルファベットの訓練を積んでいるだろう。
 _、_
( ,_ノ` )「作るほうはまだまだじゃが、アルファベットはQまで使える」
76 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:30:54.58 ID:sn32L8v90
( ’ t ’ )「自分よりも上位ですか……それなら、元ラウンジの自分が近くにいても、問題ないというわけですね」
 _、_
( ,_ノ` )「まぁ、それもある」
 
 しかし、アルファベットQを扱えるのは大したものだった。
 Jの壁突破さえ千人に一人と言われる難関だが、Sの壁が間近なQだ。
 もしオオカミに入軍していれば、手強い敵将となっていたかも知れない。
 
 世界一のアルファベット職人として名を馳せたツンも、Lまで振るうことができたという。
 女性としては異例の高ランクアルファベット使いだった。
 やはり、アルファベットの構造を熟知し、一日中アルファベットに触れているからこそだろうか。
 _、_
( ,_ノ` )「まぁ、安心はしきれんよ。なんといっても、ラウンジはツン=デレートを暗殺しておるからのう」
 
( ’ t ’ )「ッ……それは……」
 _、_
( ,_ノ` )「ショボン=ルージアルの策じゃろうが……しかし、のう」
 
 謝罪したい気持ちは、ある。
 本来、軍人は、戦場に立たない人間に手をかけるべきではないのだ。
 絶対に。
 
 ショボンがツンを殺すとは思わなかった。
 最初に報せを聞いたときは、衝撃も受けた。
 自分やアルタイムには、事前にも事後にも報告はなかったのだ。
 
 つまり、自分はまったく関与していない。
 だが、それでも、ラウンジ軍の中将だった。
 責任が皆無であるとも言えないのだ。
82 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:32:39.92 ID:sn32L8v90
 しかし、ここでシブサワに謝ったところで、誰も救われない。
 シブサワも、そして自分も。
 
( ’ t ’ )「もし今、ラウンジの兵が貴方を狙うようなら、そのときは僕が全力で貴方を守ります」
 _、_
( ,_ノ` )「ほう」
 
( ’ t ’ )「例えそれが、親友であったとしてもです」
 
 もはや、自分にできるのは、ただ戦を見守ることだけ。
 そう思っているのは、今でも変わらない。
 
 だからこそ、という理由もあるのだ、と思った。
 _、_
( ,_ノ` )「お前さん、今の戦をどう見とるんじゃ?」
 
 シブサワは、先ほどまでより、少し肩の力を抜いているように見えた。
 自分もなんとなく、姿勢を崩してシブサワの問いに答える。
 
( ’ t ’ )「単純には、ラウンジのほうが優勢ですね」
 _、_
( ,_ノ` )「わしも、そう聞いておる」
 
( ’ t ’ )「ヴィップは、緒戦の敗北が響いています」
 _、_
( ,_ノ` )「ブーンがショボンにやられた、という話じゃな」
 
( ’ t ’ )「実はあの戦い、本当に紙一重で……ショボンが負けていたとしても、決しておかしくはない戦でした」
 _、_
( ,_ノ` )「ほう?」

 

89 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:34:51.08 ID:sn32L8v90
( ’ t ’ )「あくまでも、自分にはそう見えた、という程度の話に過ぎないのですが」
 
 夜が深まるとともに、辺りは更に静けさが増していた。
 
( ’ t ’ )「ショボンの攻撃をブーンが受け止めたあと、ブーンは一気に反撃しました」
 
( ’ t ’ )「凄まじい猛攻で……恐らくラウンジには戦慄が走ったでしょう」
 
( ’ t ’ )「そしてラウンジを突き破り……そこにショボンの側面攻撃が待ち構えていて、ブーンは慌てて逃げたわけですが」
 
( ’ t ’ )「恐らく、ラウンジを突破する速度が、鈍かったんです」
 _、_
( ,_ノ` )「ふむ……だからショボンに追いつかれた、と?」
 
( ’ t ’ )「はい。あくまで推測に過ぎませんが、ヴィップが万全なら、もっと素早く打ち破っていたはずです」
 
( ’ t ’ )「それが為せなかったのは、恐らく連戦による疲労でしょうね」
 _、_
( ,_ノ` )「ずっと戦い続けているヴィップにそれがあるというのは、懸念されていたことじゃが……」
 
( ’ t ’ )「表面化してしまった、と僕は見ました」
 _、_
( ,_ノ` )「すると……二度目、三度目いずれでもヴィップが負けているのも」
 
( ’ t ’ )「影響はあると思います。特に三度目の戦では、顕著にそれが出ていたと」
 _、_
( ,_ノ` )「ショボンひとりに、誰も抗えなかったという戦じゃな」
 
( ’ t ’ )「はい。いくらショボンが優れた指揮官といっても、ミルナやジョルジュがあそこまで一方的にやられるのはおかしいと思います」
92 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:36:51.73 ID:sn32L8v90
( ’ t ’ )「将校自身はともかく、配下の兵が命令を忠実にこなしきれていないような気がしますね」
 _、_
( ,_ノ` )「……それは、今後も蓄積されていくもの、か」
 
( ’ t ’ )「なので、ヴィップは今後も苦しいでしょうね」
 _、_
( ,_ノ` )「しかし、ラウンジの勝利を楽観しているようには見えんぞ、カルリナ=ラーラス」
 
 小石を拾って、川へと放り投げる。
 かなり遠方へと投げたが、今宵の静寂さは、自分の耳にまで水音を届けてくれた。
 
( ’ t ’ )「そう見えますか」
 _、_
( ,_ノ` )「そう見える」
 
( ’ t ’ )「このままヴィップが終わるはずはない、とは考えています」
 _、_
( ,_ノ` )「何らかの策があるだろう、と?」
 
( ’ t ’ )「そうですね。自分の読みが正しければ、この総力戦、ヴィップは絶対に負けられないはずなので」
 _、_
( ,_ノ` )「カルリナ=ラーラスがヴィップに居るとしたらば、この戦、どう引っくり返す?」
 
( ’ t ’ )「……難しい問いですね、それは」
 
 全ての感情を排して考えれば、逆転は可能かもしれない。
 ただ、自分はそこまで冷酷な軍人には徹しきれないのだ。
96 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:38:40.18 ID:sn32L8v90
 恐らく、ブーンも同様だろう。
 ならば、感情を抱えたままでも勝てる道を模索してくるだろうか。
 
 自分ならば、どうするだろうか。
 
( ’ t ’ )「……とにかく、野戦で一度でも勝って、勢いを取り戻したいですね」
 _、_
( ,_ノ` )「しかし、困難を極めるじゃろう」
 
( ’ t ’ )「だからこそ、勝利を一度でも得れば大きいのです」
 _、_
( ,_ノ` )「その理屈は、分からんでもないが……」
 
( ’ t ’ )「戦そのものは、兵数に差があるにも関わらず、ヴィップは善戦しています」
 
( ’ t ’ )「そしてラウンジも、最近の連敗を思わせない堂々とした姿勢で戦っていますね」
 
( ’ t ’ )「さすがに両軍が総力を結集させているだけはある、と思わせてくれます」
 
( ’ t ’ )「正直、どちらに勝利が転がるかは分からない状態ですね」
 _、_
( ,_ノ` )「なるほどのう……」
 
 シブサワは、口元に浅く蓄えた髭を摩っていた。
 そのほとんどは既に、色が抜けてしまっている。
102 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:40:41.32 ID:sn32L8v90
 _、_
( ,_ノ` )「さて……わしはそろそろ、城に戻るとしよう」
 
( ’ t ’ )「はい。どうか、お気をつけて」
 _、_
( ,_ノ` )「あぁ、これから大きな仕事が待っておるからのう、自分の身に何かあってはまずい」
 
 必要ならば、自分も護衛に。
 そう言おうとしたが、ヴィップ領の城に近づきすぎるのは、賢い行動とは言えない。
 何も言わずに、ただ頭だけを下げた。
 _、_
( ,_ノ` )「もう会うこともないじゃろうが、達者でな」
 
( ’ t ’ )「互いに」
 
 シブサワは、僅かに唇の形を変化させて、夜闇に溶けていった。
 自分もまた、月に思いを馳せることもなく、ゆっくりと寝床を求めて歩き出した。
 
 
 
――フェイト城とオリンシス城の中間地点――
 
 四度目は、明らかな焦燥が見えた。
 
(´・ω・`)(そう来たか……)
 
 夏の日差しで汗ばんだ肌を、風は穏やかに撫でていく。
 それがたとえ、戦場であっても。
 
(´・ω・`)(二度目、三度目とブーンが戦わずして負けた……同じ愚を犯すわけにはいかない、ということか)
108 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:42:17.90 ID:sn32L8v90
 全身が清涼感で満ちて、頭のなかの老廃物も取り払われたような気がした。
 予想していたことではあったが、やはり、ブーンが出てくるとなれば今までのようにはいかない。
 そう気を引き締める必要があった。
 
 ヴィップは、全軍を三つに分けている。
 その中核で指揮執る男が、ブーン=トロッソだ。
 今度は、アルファベットを振るわないまま撤退するようなことはないだろう。
 
 全軍を三つに、と見たが、よくよく見てみれば更にそれぞれ三つに分かれている。
 合計、九つの部隊。
 大部隊を指揮しているのが、ブーンと、ジョルジュと、ミルナだ。
 
(´・ω・`)(現状、最善の布陣か)
 
 ニダーやフサギコなどもそれぞれ優秀だが、攻めではブーンらに及ばないだろう。
 いずれも大将を経験している。正に最強の布陣と言ってもいい。
 もしモララーがこの戦に加わっていたら、二度目と三度目の勝利も危うかったかも知れない。
 
(´・ω・`)(……いや……)
 
 この戦の場合、勝敗は指揮官の能力に左右されない。
 今のところは、そう感じていた。
 
 ブーンは言わずもがなだが、ミルナとジョルジュも指揮は悪くないのだ。
 ただ、指揮官の思惑どおりに、戦を展開できていない。
 兵が、ついてきていないのだ。
 
 それはもはや、疲労の一言で片づけられる問題でもなくなってきている。
 連戦連勝を続けていたヴィップが、いま確実に挫かれているのだ。
 士気が、低下しているのだ。
113 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:44:10.32 ID:sn32L8v90
 ブーンは、覚悟していただろう。
 負ければ苦しくなる、と。
 だから、緒戦の勝利には拘っていたはずだ。
 
 あの戦は、際どかった。
 渾身の攻めをヴィップに受け止められたときは、一瞬、敗北をも覚悟した。
 だが、即座に反転して潰しにいく際、惑わなかったことが奏功した。
 
 勝利に対しては、どこまでも貪欲になっていい。
 分かっていたことではあるのだ。
 だが、再認識させられた気がした。
 
 いずれブーンは、"二と三の展開"に持ち込むつもりかもしれない。
 しかし、相手の状況を把握してやれば、分はこちらにあるだろう。
 今のところ、二と三は、ラウンジにとってもヴィップにとっても悪くない選択肢だ。
 
(´・ω・`)「来るか」
 
 ヴィップ軍の中核から、鉦が鳴っていた。
 
 今回は、敵の出方次第で戦い方を変える。
 敵軍の疲弊は明らかであり、それを増幅させてやりたい、と思っていた。
 だから、相手に合わせて翻弄するつもりだ。
 
 恐らくは、ブーンが先陣きって突っ込んでくるだろう。
 そうでなくとも、戦い方は数多くある。
 
 来い。
 小さく呟いて、駆け出した。
122 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:46:02.28 ID:sn32L8v90
――オリンシス城とフェイト城の中間地点――
 
 まずは、自分が。
 前回負けた直後から、そう決めていた。
 
( ^ω^)「まずは、正面からだお」
 
 いつもと同じように、手綱を引く。
 自分が頭で思い描くように、部隊が動く。
 
 そうはならないのが、現状だ。
 
 疲労を、士気で隠せなくなってきた。
 前回と前々回の戦で、実感させられた。
 
 ショボンに裏切られた直後、モララーと共に、懸念していたことではある。
 兵力と物資を可能な限り投入し、一時的にラウンジを押し返したとしても、必ず再び押し返されるときが来るだろう、と。
 それでは何の意味もない、と話し合っていたのだ。
 
 実際、二人で話し合っていたことは、現実となりつつある。
 
 それでも、負けられない。
 この戦に負ければ、ヴィップの滅亡が現実味を帯びてきてしまう。
 連勝を続けていた直後である、この状況でも、だ。
 
 ヴィップが取った策は、そういう策だ。
 他に、道はなかった。
127 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:48:05.93 ID:sn32L8v90
 ラウンジ軍との距離が詰まっていく。
 もう少し、速度を上げてから突っ込みたい。
 そう思ったが、今は叶わない状況だ。
 
 そのまま、斬り込んだ。
 
(;^ω^)「ッ……」
 
 戦うたびに、ラウンジの固さは増している。
 実際には変わっていないとしても、そのように感じた。
 
 アルファベットXを振るう自分の腕に、違和感はない。
 ラウンジのG隊を自らの手で薙ぎ倒していく。
 だが、そのままどこまでも突き進める、とは全く思えなかった。
 
 ラウンジは、堅陣だ。
 最初、少しだけ動きを見せたが、結局は堅陣のままで止まった。
 こちらの出方を窺って、戦い方に変化をつけるつもりだろう。
 
 ラウンジのG隊は岩のように頑として崩れない。
 崩されて、くれない。
 
 だが、このままでは終わらない。
 
( ゚д゚)「道を、開けてもらおうか」
 
 アルファベットVを真横に構えたミルナが、歩兵隊を率いて側面を突いた。
 自分の部隊は、やや攻勢を緩める。ずっと全力ではもたない。
 ミルナが攻めてくれている間に、敵陣から抜けた。
129 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:49:45.27 ID:sn32L8v90
 同時に、後方からの一撃。
  _
( ゚∀゚)「いくぜ」
 
 アルファベットUを高々を掲げ、振り下ろす。
 ジョルジュの初撃で、二つほど首が舞った。
 
 今回の戦いで取った作戦は、波状攻撃だ。
 少しずつ敵陣を揺さぶるため、連続の攻撃を仕掛ける。
 確実に敵軍に被害を与えることが、今は重要だ。
 
 ミルナと共に戦っているのは、サスガ兄弟。
 ジョルジュを補佐しているのは、ニダーとフサギコだ。
 自分には、ロマネスクがついてくれていた。
 
( ^ω^)「ロマネスク、もっかい突っ込むお」
 
( ФωФ)「承服致しました」
 
 二度目と三度目は、自分が戦わずして負けた。
 今度は、同じ轍を踏むわけにはいかない。
 
 攻め立てている堅陣の頭は、オワタの指揮だった。
 五万の兵を、上手く操っている。
 ヴィップに居た頃は、あれほどの大軍を指揮できるだけの力はなかった。
 
 本気を出していなかっただけなのかもしれない。
 いずれにせよ、侮れない相手だ。
132 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:51:43.68 ID:sn32L8v90
 自分が敵軍と再び戦い始めた直後、ミルナが一時、後ろに下がった。
 これでいい。常時戦うのは二部隊だ。
 いずれ、オワタは堪えきれなくなる。
 
 そう、いずれ、と思っていた。
 
( ^ω^)「ッ!?」
 
 オワタの部隊が、崩壊した。
 こちらが思っていたよりも、随分と早くに、だ。
 
 まだ戦えただろう。
 堅陣を維持し、ヴィップの疲弊を蓄積させる作戦ならば、可能な限り粘ったはず。
 しかし、オワタは部隊の維持を諦めた。
 
 いや、諦めたのではない。
 陣をあえて一度崩し、再構築するつもりなのだ。
 そのためには全体の堅陣さえ崩す必要があるが、ラウンジにとっては、悪くない形。
 
 後方から、万全の状態でショボンが出撃してきた。
 
(;^ω^)「鉦!!」
 
 撤退ではない。
 遠方のミルナとジョルジュに指示を与えるためには、音がなければならないのだ。
 
 だが、さすがに二人は自己判断が早かった。
 オワタが陣を崩した次の瞬間にはもう、ショボンを見据えていたのだ。
 
 それでも、全身を突き刺すような戦慄。
142 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:53:55.16 ID:sn32L8v90
 双剣として振るわれる。
 アルファベット、Z。
 
 疾風のように、などという生易しい駆け方ではない。
 獲物を喰らいにいく猛獣のような騎馬隊。鋭い眼光を放っているかのようなZ。
 垂涎しながら、四肢を大きく前後させているような疾駆。
 
 ショボンの狙いは、ニダーだった。
 
<;`∀´>「ッ!!」
 
(;^ω^)「ニダーさん!!」
 
 ジョルジュは、ショボンの動きを読み取って、逃げようとしていた。
 盤石の体勢で迎え撃つべく、いったん退こうとしていたのだ。
 並の相手であれば、それは充分すぎるほど適切な判断だった。
 
 だが、ショボンは瞬時に追いついた。
 そして、ニダーの部隊に噛みついた。
 
(;゚ω゚)「ッ!!」
 
 ――――ショボンからすれば、甘噛みのような一撃だったのかもしれない。
 しかしそれは、ニダーの部隊が、機能不全に陥るほどに。
 
 ヴィップの兵を、削り取った。
 
 背後につかれたのだ。
 だから、予測はしていた。
149 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:56:40.29 ID:sn32L8v90
 それでも、恐怖に包まれた。
 
(;^ω^)(まずいおっ……!!)
 
 即座にショボンの部隊を牽制する。
 ここは、自分がいかなければならない。
 あのままでは、ニダーを失う。
 
 だが、自分よりも早く動いた部隊があった。
 その指揮官が、意外だった。
 
(´<_` )「ニダー中将!」
 
(#´_ゝ`)「やらせはせんぞぉぉぉ!」
 
(;^ω^)「ッ!! アニジャさん!! オトジャさん!!」
 
 好判断。
 ニダーを助けるなら、確かに、二人がいくのが最も早い。
 これは、責められない。
 
 そうだ、二人の責任ではない。
 一見、好判断に思える、という行動は。
 
 鉦を鳴らさせた。
 この戦、これ以上深く突っ込めば、被害は拡大する一方だ。
 撤退を視野に入れつつ戦う必要がある。
155 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 21:59:24.44 ID:sn32L8v90
 ミルナとフサギコはすぐに下がってくれた。
 何かあればすぐに戦える、という絶妙な位置だ。
 ジョルジュも位置取りは悪くない。
 
 ニダーとサスガ兄弟が、危なかった。
 ニダーひとりに限れば危険性は薄まったが、それでもまだ、安全とは言えない。
 討ち取られる可能性がある将校は、三人に増えてしまった。
 
 サスガ兄弟の判断は、当然だ。
 しかし、相手が悪すぎる。
 
 ロマネスクに後方を任せ、駆けた。
 ショボンと正面から戦うには、自分がいなければならない。
 それは、間違えようもない事実なのだ。
 
 しかし、自分の視界を塞ぐ敵勢。
 
\(^o^)/「止まってもらいましょう」
 
 先陣の指揮官だったオワタが、体勢を整え終えていた。
 自分の妨害には、絶好の位置にいる、というのは分かっていたのだ。
 しかし、ショボンに気圧されていたことで、頭から抜けていた。
 
( ^ω^)「……どけお」
 
 時間は、かけられない。
 ニダーやサスガ兄弟が簡単にやられるはずはないが、相手はショボンだ。
 
 何があっても、おかしくはない。
 そして、何かがあってはならないのだ。
159 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 22:01:29.93 ID:sn32L8v90
 オワタの部隊は先ほどより減って、およそ二万。
 自分が率いているのは一万。兵数だけを見れば、不利な戦いだ。
 だが、自分の部隊は、一人として怯んではいなかった。
 
 アルファベットXを、全軍の目が届く位置に掲げた。
 それだけで、ラウンジには動揺が走った。
 自分がXを使っていることなど分かりきっているはずだが、改めて恐怖したのだと分かる。
 
 G兵のアルファベットを、突いて砕く。
 そのまま腹部を貫き、敵兵の身体ごとアルファベットを振り回した。
 周囲のラウンジ兵が馬から落ちていく。
 
 Xが討った兵の身体を裂いたあと、更にラウンジ兵の首を飛ばす。
 敵兵の防ぎ方は、上手い。しかし、意味はない。
 何をしてこようとも、強引に討ち取ってしまえる。
 
 返り血に染まるアルファベット。
 振るうと、血滴が弾け飛んだ。
 しかしまた、アルファベットは真紅に彩られる。
 
\(;^o^)/「うぐっ……!!」
 
 オワタの戦い方は、夏の湿気のように粘っこくうっとうしい。
 たとえ不利な状況が続いていても、大きく崩れてはくれないのだ。
 
 敗北したとしても、それを大局にまで影響を及ぼすものにはしない。
 それは、軍人にとって有益な才能だった。
 
 だが、所詮は"負けない武将"に過ぎない。
165 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 22:03:40.07 ID:sn32L8v90
\(;^o^)/「う、うあああああ!!」
 
 更に突き進んでいく。
 オワタがいる、中核へと向かって。
 
 オワタ=ライフ。
 裏切りの将に、相応の報いを受けさせる。
 自分の手で、首を取ることで。
 
 それができれば、最上だ。
 しかし、容易くはない。
 
( ̄⊥ ̄)「行かせはせん」
 
 もう少しで、オワタに到達するところだった。
 ファルロの救援は、絶妙な時機だ。
 
 それだけならまだ良かったが、ここにもう一刃、追撃がある。
 
川 ゚ -゚)「…………」
 
 ヴィル=クールも、自分を足止めに来ていた。
 これで、敵勢は五万。
 五倍の敵を相手に、戦うことになる。
 
 負ける気はしない。
 しかし、勝つことも難しい。
 五万を相手に、突破して追撃を封じるのは、今ここでは厳しいのだ。
170 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 22:05:52.66 ID:sn32L8v90
 ファルロの部隊とヴィルの部隊が押し寄せてくる。
 冷静に、受け止めた。
 二人は全力を出しているのだろう。しかし、自分の部隊が揺るがされることはない。
 
 だが、足は止められている。
 ラウンジにとっては、それで充分なのだろう。
 
(;^ω^)「ッ……!!」
 
 もはや、撤退しなければならない状況だ。
 だが、まだニダーとサスガ兄弟が窮地を脱せていない。
 はっきりと戦況を確認できていないが、それは分かる。
 
 自分は、ここで三人の将を引きつけることしかできない。
 後ろに下がったミルナらが再び動くと、ラウンジも呼応して大軍を動員してくるだろう。
 なんといっても、相手は二十万だ。
 
 この状況で、大きな戦にしたくないのは、ショボンも同じであるはずだ。
 戦を拡大させれば、物資が乏しいラウンジにとっては苦しくなる。
 だから、自分の力のみでニダーとサスガ兄弟を討ち取ろうとしているのだ。
 
 やはり、危険を承知で賭けに出るしかないのか。
 再びミルナらに動いてもらい、ショボンと戦うしかないのか。
 
 そうなった場合、戦は複雑になり、先が読めなくなる。
 今のままでも既に負けていると言っていいが、被害が拡大する恐れがあった。
 ただでさえ疲労で動きが鈍っているのに、兵数の差が広がってしまっては、苦しくなる一方だ。
 
 何か、別の手を。
 そう思っていたところ、戦場に動揺が走った。
173 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 22:07:54.20 ID:sn32L8v90
(;^ω^)「ッ!?」
 
 オワタ、ファルロ、ヴィルを相手にしている自分には、見えない。
 誰かから情報が伝わってくることもない。
 
 しかし、分かるのだ。
 戦場を揺らしたのは、ジョルジュ=ラダビノードである、ということが。
 
 ジョルジュは、完全に下がりきってはいなかった。
 敵からすればミルナらと同じに見えていたかもしれないが、常に敵の隙を窺っていたのだ。
 そして、ショボンの意識が完全にニダーとサスガ兄弟に向いたところで、ショボンを狙いにいった。
 
 推測だが、恐らくそうだろう。
 
 防戦一方だったニダーやサスガ兄弟とは違い、ジョルジュの体勢は万全。
 不意を突いているのであれば、ニダーらを救出することができる。
 
 しかし、戦わなければならない。
 ショボン=ルージアルと。
 無論、ジョルジュはそれを覚悟で、挑んでいったのだろう。
  _
( ゚∀゚)「嬉しいことだな、ショボン。
     お前と戦い、この手で討つことが、俺の宿願だった」
 
(´・ω・`)「こちらこそ、東塔時代から、ずっと思っていましたよ。
      貴方を討つことができたら、とね」
 
 今の自分には、二人を止める手立てもなかった。
185 :第114話 ◆azwd/t2EpE :2009/09/13(日) 22:11:09.37 ID:sn32L8v90
 ジョルジュ一万、ショボン一万。
 兵力は互角の、互いの実力が如実に表れる戦いだ。
 
(;^ω^)(ジョルジュさん……!!)
 
 因縁深き、ジョルジュとショボン。
 かつて、東西の塔の頂点に立っていた二人。
 
 ニダーとサスガ兄弟は、窮境から抜け出せた。
 そして、二人の戦いが始まった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 第114話 終わり
 
     〜to be continued

戻る

inserted by FC2 system