4 名前:登場人物 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:17:24.06 ID:R5sPwwbw0
〜ヴィップの兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
32歳 大将
使用可能アルファベット:X
現在地:ヒトヒラ城・南東

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
47歳 中将
使用可能アルファベット:U
現在地:ヒトヒラ城・南東

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
37歳 中将
使用可能アルファベット:U
現在地:ギフト城

●( ゚д゚) ミルナ=クォッチ
48歳 中将
使用可能アルファベット:W
現在地:ミーナ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
48歳 中将
使用可能アルファベット:T
現在地:ギフト城
17 名前:登場人物 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:19:38.60 ID:R5sPwwbw0
●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
44歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オオカミ城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
35歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:ギフト城

●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
46歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:シャッフル城

●(´<_` ) オトジャ=サスガ
46歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:オリンシス城
28 名前:登場人物 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:21:23.78 ID:R5sPwwbw0
●( ФωФ) ロマネスク=リティット
25歳 中尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ギフト城

●(个△个) ルシファー=ラストフェニックス
25歳 少尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヒトヒラ城・南東

●/ ゚、。 / ダイオード=ウッドベル
30歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ギフト城
33 名前:階級表 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:22:43.43 ID:R5sPwwbw0
大将:ブーン
中将:ジョルジュ/モララー/ミルナ/ニダー
少将:フサギコ/ビロード

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ロマネスク/ダイオード
少尉:ルシファー

(佐官級は存在しません)
42 名前:使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:24:01.59 ID:R5sPwwbw0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:ルシファー
M:
N:ロマネスク
O:ビロード
P:アニジャ/オトジャ
Q:
R:フサギコ
S:ファルロ
T:ニダー
U:ジョルジュ/モララー
V:シャイツー
W:ミルナ
X:ブーン
Y:
Z:ショボン
51 名前:この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:25:55.75 ID:R5sPwwbw0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・全ての国境線上
 
 
58 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:27:38.51 ID:R5sPwwbw0
【第110話 : Snarl】


――ミーナ城付近――

 ミルナが自分の首を諦めたとは思えなかった。

(´・ω・`)「負傷した兵は……やはりもう、戦えんか」

( ̄⊥ ̄)「恐らくは、二度と……」

(´・ω・`)「できれば本城に送り返したいが、かえって手間だな」

( ̄⊥ ̄)「しかし、陣中の兵糧が減っていくのも由々しき問題です」

 いっそ、殺してくれたほうが良かった。
 ファルロも決して口にはしないが、そう思っているだろう。

 三日前にヴィップがミーナ城から躍り出て、ラウンジ軍に攻撃を加えた。
 そのとき、ヴィップは前衛の兵を、殺さずに生かし、それだけで撤退していったのだ。

 およそ三千。
 十万の大軍から見れば、無視してもいいような数だった。
 だが、陣内に留めておく必要がある。

 戦えなくなった兵に兵糧を減らされていくのは、仕方ないのかも知れないが、歯噛みさせられた。
 ただでさえ兵糧は苦しいのに、更に切り詰めなければならないとなれば、全軍の士気に影響する。
65 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:29:50.84 ID:R5sPwwbw0
(´・ω・`)「負傷した兵には、少し、我慢を強いよう。
      兵糧を碌に食べられないとしても、数日の辛抱だ」

( ̄⊥ ̄)「そうですね、長引かせたくはない戦です」

(´・ω・`)「終わらせるさ。互いにもう、手札は多くない」

 西の戦の情報は、まだ入らない。
 早ければ、そろそろ終結を見ている頃合いだ。
 常に気を配っておく必要があった。

 しかし、城の奪取にはまだ時間を要する。
 一度、陣を下げてから再び前進しているが、まだ半里ほどの距離があるのだ。
 例え城に近づいたとしても、Fに狙われる。安易に接近すべきではなかった。

(´・ω・`)「こっちから近づく必要は、ないかも知れんな」

( ̄⊥ ̄)「と、言いますと?」

(´・ω・`)「またミルナは、必ず打って出てくる」

 そこを、返り討ちにしてやれば。
 必然的にミーナ城は手に入る。

( ̄⊥ ̄)「しかし、出てきたミルナが、何をやってくるか……」

(´・ω・`)「それは、確かに読めん」
76 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:32:03.86 ID:R5sPwwbw0
 城の周囲には土嚢が撒かれていた。
 騎馬隊の進軍には、邪魔になるだろう。
 しかし歩兵ならば、何なく越えていける。

 その程度のものだ。
 警戒するほどではないかも知れない。
 だが、いったい何のために。

(´・ω・`)「ミルナが」

( ̄⊥ ̄)「はい」

(´・ω・`)「俺を討ち取るとすれば、一騎打ちではありえない」

 ミルナの現在のアルファベットは、W。
 一騎打ちで使うアルファベットとなると、Vだ。

 Zとは比べものにならない。
 本気を出さずとも、例え片腕を封じられたとしても、苦労なく勝てるだろう。
 それは、ミルナほどの男なら分かっているはずのことだ。

 つまり、一騎打ちはありえない。

(´・ω・`)「となると……」

( ̄⊥ ̄)「W、ですか?」

(´・ω・`)「あぁ」
81 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:34:07.75 ID:R5sPwwbw0
 どこからかは分からない。
 しかし、確実に狙ってくるはずだ。
 ミルナはその一瞬に、全てを賭けているのだろう。

 ならば、注視すべきは、ミルナとWの行方だ。

( ̄⊥ ̄)「両方の位置を常に把握しておく必要が、あると思います」

(´・ω・`)「そうだな。ミルナとWの位置を常に把握しておけば、問題はない」

 もっとも、Wに狙われたところで、自分の首が飛ぶとは思えない。
 アルファベットZがこの手にはあるのだ。

 ただ、万全を期する、というだけの話だった。
 自分は、大将。万が一にでも討たれるようなことがあれば、ラウンジ軍そのものの崩壊に繋がる。

 そして、ミルナの目論見を打ち砕いた、そのときにこそ。
 ミルナを討ち取り、ミーナ城を奪い取ることができるのだ。

(´・ω・`)(……まぁ、人の壁がある以上、Fが俺を貫くことはないだろう)

 盾なら探す必要さえないほどにある。
 たかが数人を失う程度なら、大局に影響はないのだ。
 肝心なのは、ミルナを討つこと。

 そのためならば、多少の犠牲を厭うべきではなかった。

(´・ω・`)「…………」
88 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:36:09.38 ID:R5sPwwbw0
( ̄⊥ ̄)「……どうかされましたか?」

(´・ω・`)「ん……いや……」

 何故だ。
 ふと、思った。

 何故か、自分は、異常なほどミルナのことを気にしている。
 やけに、警戒してしまっている。

 取るに足らぬ相手だ。
 特に、一騎打ちであれば、負ける道理はない。
 例えWに狙われても、アルファベットZがあれば防げる。

 ならば、何故。
 何故、ミルナの顔が常にちらつく。

(´・ω・`)「……ファルロ」

( ̄⊥ ̄)「はい」

(´・ω・`)「もし……もし、俺に万一のことがあったら、後はヴィル=クールに従ってくれ」

(; ̄⊥ ̄)「えっ……!?」

 ファルロの細い眼が、大きく見開かれた。
102 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:38:59.42 ID:R5sPwwbw0
(´・ω・`)「あいつは、俺の代わりにはなれんが、それに近いところまではやってくれると思う。
      心許なさは、無論あるが、他に手もない」

(; ̄⊥ ̄)「どういうことですか? なにか、懸念事項が?」

(´・ω・`)「分からん。何も起きんだろうとは思う。
      しかし、何かが起きても不思議はない」

( ̄⊥ ̄)「それは、そうだと思いますが……」

 自分でも、何を言っているのか、分からなかった。
 しかし、ただひとつだけ、はっきりしていることがある。

 次にミルナが城外に出てくるとき、容易く勝てはしないだろう、ということだ。

( ̄⊥ ̄)「ん……?」

 陣内が、俄かに慌ただしくなった。
 無論、そうなる前に、自分は気付いていた。

 ミーナ城の城壁から、いつも決まった時間に投げられていた土嚢が、飛んでこなかった。
 ヴィップが、定型を崩してきた。

 城内から、はっきりと動きを感じる。
 間違いなかった。

 どうやら、再び城外戦に臨むつもりのようだ。

(´・ω・`)「いいだろう」
118 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:41:13.64 ID:R5sPwwbw0
 小細工はない。
 逃げも隠れも、しない。

 正面から、迎え撃つ。
 そして、この不気味な悪寒とともに、ヴィップ軍を蹴散らしてやる。

 ただ、それだけだ。



――ギフト城近辺――

 氷の粒が、空を舞っていた。

 踏みしめる地面は固く、馬蹄音は甲高く響き渡る。
 鞘から抜き放った、剣のようだ、と思えた。

 騎馬隊を先陣にして、ラウンジは進軍してきた。
 正面から、堅陣にぶつかろうとしている。

<ヽ`∀´>(……遂に、来るニカ)

 それ以外に道はない、と分かっていた。
 モララーの遊撃隊を追うのは、リスクが高い。
 大軍は機動性に欠点を持つからだ。

 だが、敵軍も遊撃隊を編成している可能性はある。
 防ぎようがないことだ。十万の大軍の鈍重性に賭けるしかない。
 あるいは、モララーの指揮に。
124 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:43:41.87 ID:R5sPwwbw0
 モララーならば、いかなる精神状態であろうとも、他将より上手く戦をやってくれるはずだ。
 もはや遊撃隊の動向は確認できないが、信頼するしかない状況だった。

<ヽ`∀´>(……?)

 ラウンジの本隊は、広がっていたが、一隊にまとまって進軍していた。
 しかし、接触まで二里ほどとなったところで、突如として隊を分け始めた。

 遊撃隊か。
 そうも思ったが、違う。

 単純に、およそ三万ずつの隊を、三つ。
 三方面から、堅陣を攻め込むつもりだ。

<ヽ`∀´>(……愚策ニダ)

 力の分散など、堅陣が相手なら愚策以外の何物でもない。
 一点突破で形を崩すことこそ、堅陣に対しては有効な手立てなのだ。

 だが、分かっていた。
 瞭然とした愚策など、ラウンジが取ってくるはずはない、と。

<ヽ`∀´>(恐らく、三隊の指揮官は、オワタとシャイツーとヴィル……)

<ヽ`∀´>(……ラウンジの狙いは、シャイツーとモララーの一騎打ち……ニカ?)

 そうだとすれば、どれがシャイツー指揮の部隊なのか、見極める必要がある。
 モララーとシャイツーの一騎打ちは、モララーが絶対不利だ。
 戦わせてはならない。
129 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:46:10.93 ID:R5sPwwbw0
 だが、堅陣では身動きも取れないのだ。
 見極められた時点で、堅陣を動かすか。
 準備はしているが、そうした場合は、ギフト城の守備が疎かになる。

<ヽ`∀´>(……堅陣は動かせないニダ……)

 戦の勝利に必要な条件とは。
 ギフト城の死守。

 そのためには、敵軍の敗走。
 そのためには、敵軍指揮官の首。

 構造を単純化させればいい。

<ヽ`∀´>(シャイツーじゃなくて……オワタかヴィルの首を取れれば……)

 やはり、必要になってくるのは、どの隊を誰が率いているのか、の見極めだ。

 モララーを信じるしかない。
 必ず、敵軍の指揮官を見極めて、オワタもしくはヴィルを討ち取ってくれると。

 それまで、自分は、一瞬でも長く堅陣を持ち堪えさせなければならない。

<ヽ`∀´>「前衛! 死力を尽くすニダよ!!」

 敵軍と衝突した。
 戦が、始まった。

 衝撃が中核まで伝わってくる。
 三方面から打ち破らんとして攻め込んでくるラウンジの圧力は、相当なものだ。
133 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:48:21.61 ID:R5sPwwbw0
 しかし、力は前回の戦で把握しきっている。

 現に、ヴィップの堅陣は、充分に持ち堪えていた。
 連戦の疲れは確実に蓄積されているが、ラウンジと互角、あるいはそれ以上に戦えている事実が大きい。
 仮に先の戦で大敗していたら、この戦もただ押し込まれるだけだっただろう。

 数の暴力には、抗いきれない点もある。
 徐々に堅陣の装甲は剥がれていくが、時間は稼げているはずだ。
 この間に、モララーの遊撃隊が、敵軍の見極めを進めてくれているだろう。

 充分だ、充分勝てる戦だ。
 光明に手を伸ばして、開いた手のひらを閉じようとした。

 しかし、不意に喧噪が大きくなってきた。

<ヽ`∀´>「……?」

 最初は、分からなかった。
 気づくまでに、幾らかの時間を要した。

 それほど、徐々に、徐々に増してきていたのだ。
 ラウンジの、圧力は。

<;`∀´>(これはっ……!)

 完全に、押し込まれている。
 堅陣の形は、崩されはじめている。
142 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:50:41.91 ID:R5sPwwbw0
 馬鹿な、先の戦で完全に把握したはずだ。
 ラウンジの攻め方、その力。
 いずれも把握したうえでの守りだったのだ。

 まだ真価は発揮していなかったのか。
 確かに、今にして思えば、前回の戦はやけにあっさりと撤退していった。
 そこに不自然さを覚えるべきだったのか。

 このままでは、もって二刻。
 堅陣が破られれば、間違いなくギフト城を落とされる。

 モララーは、間に合うか。
 分からない。

 例えすぐに敵軍の指揮官を見破り、オワタかヴィルを狙ったとしても、際どい。
 この堅陣を、保ちきれない可能性が高い。

 ならば――――

(;><)「ニダー中将! 攻撃に転じましょう!」

<;`∀´>「ビロード少将」

 自分が薄ら考えていたことと、同じ意見だった。

(;><)「このまま堅陣を突破されるとギフト城は守れないんです!
     だったらいっそ、不意をついて反撃したほうがいいんです!」

<ヽ`∀´>「……そうニダね」
153 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:53:05.75 ID:R5sPwwbw0
 頷いて、鉦を鳴らさせた。
 すぐさま、堅陣は姿を変えた。

 ラウンジも、全く予想していなかったわけではないだろう。
 だが、予測を上回る速度で転じられたことは間違いない。

 雁行陣形で、ラウンジと相対した。
 すぐさま、勢いを挫くべく、ラウンジ軍を迎え撃った。

<#`∀´>「ニダァァァァァァァァ!!」

 まずは、高ランクアルファベットを扱う自分が、斬り込む。
 調子づいていたラウンジ軍の、勢いを削ぐ。

 縦横無尽にアルファベットTを振り回した。
 刃で、返して鎚で。
 長いリーチを存分に活かし、敵を寄せ付けなかった。

 幾つも首を飛ばして、まずは一方的な攻勢を凌ぐことができた。
 だが、相手は依然として十万近い軍勢。
 局所的に堰き止めたところで、勝利に近づくことはできない。

 オワタを、そしてヴィルを。
 見つけなければ。

 確率としては三分のニ。
 二人が相手ならば、モララーに頼らずとも、アルファベットTで討ち取れるはずだ。
 運を頼りに攻め込んでみてもいい。
165 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:55:38.84 ID:R5sPwwbw0
 だが、深入りすると間違いなく、ギフト城を落とされる。
 城門は固く閉じておくよう言ってあるが、ヴィップ軍が殲滅されるようでは、攻城兵器の出番を許すことになるのだ。

 やはりここは、鍔迫り合いを続けておくべきだ。
 敵将の首は、モララーが取ってくれることを願うしかない。

 結局は、あの男が鍵を握っているのだ。


――ギフト城近辺――

 狙うべき敵将は、オワタ=ライフ。
 もしくは、ヴィル=クール。

 それは、分かっていた。
 狙いもずっと、その二人に絞っていた。

( ・∀・)「…………」

 十万の軍を三隊に分けたラウンジの攻撃は、見事だった。
 力の分散は下策とされるが、圧倒的大軍を擁していることを考慮したらしい。
 三方面からの攻撃を受けたヴィップ軍は、あっという間に軋みはじめ、堅陣を解体せざるをえなかった。

 守りのニダーでさえ、陣を保ちつづけられなかったのだ。
 誰が指揮執っても、ラウンジの攻勢には抗えなかっただろう。
 恐らくは、本領発揮だ。

( ・∀・)(前の戦じゃ、まだ本気を見せてなかったってことか……)
175 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 00:58:10.97 ID:R5sPwwbw0
 そうだとすれば、ヴィル=クールの本気は底が知れない。
 手を抜いていたと表現していい前回の戦でさえ、ヴィップは苦戦を強いられたのだ。
 今回の戦も、まだ全力かどうか分からない。

 恐らく、ヴィップにいたころのショボンも、そうだったのだろう。
 一度たりとも、本気を出したことはなかったのだろう。
 今も、しがらみに捕らわれ、真価を見せることができていないように思える。

 ヴィル=クールはショボンの影武者と考えてもいい。
 それほどに、戦のやり方は似ていた。

 ショボンと同じような戦であれば、こちらも小細工を用いる必要はない。
 敵将の位置を見極め、その首を狙いにいくだけでいい。

 先の戦では、シャイツー=マタンキの指揮執る騎馬隊が、圧倒的な強さを誇っていた。
 見極め方としては、そこが大事になる。
 活発に動いている騎馬隊の存在だ。

 既に、見抜いてはいるのだ。
 ヴィップの本隊から見て、右翼方向の部隊。
 騎馬隊が縦横無尽に動き回っている。

 恐らくは、あそこにシャイツーがいる。

( ・∀・)「…………」

 狙うべきは、誰だ。
 誰を、狙うべきだ。

 いま一度、自分に問いかけてみた。
182 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:00:53.12 ID:R5sPwwbw0
 分かり切ったことだ。

( ・∀・)「行くぞ。敵将の首を取る」

 手綱を引いて、強く駆けだす。
 狙いは、中央の部隊。攻撃の圧力が最も強い。

 読みが正しければ、オワタ=ライフが指揮執っている部隊だ。
 得体の知れないヴィル=クールより、まずは見知ったオワタを狙った方がいい。
 確実性が高いからだ。

 敵軍の後方は、ヴィップの遊撃隊を警戒していた。
 さすがに、大軍の利は活かしている。
 前方、後方、いずれも憂いはないようだ。

 そこを、打ち破るのが自分の役目だった。

 斬り込んで、敵軍に突撃する。
 ニダーが攻撃に転じた、今こそが好機だ。
 アルファベットUを振り回した。

( ・∀・)「ッ……」

 やはり抵抗は強い。
 アルファベットGを操る敵兵が、必死で守りを固めているのだ。
 アルファベットごと砕いて前に進むも、非常に遅々とした動き。

 進軍速度が緩むと、敵軍の反撃を許してしまい、自軍を解体される恐れがある。
 散り散りになってしまっては、脱出も困難だ。
191 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:04:12.32 ID:R5sPwwbw0
( ・∀・)「散らばるなよ!」

 声を張り上げる。
 尚も、前進を続ける。

 敵軍、総勢十万。
 攻撃を得手としないニダーでは、いずれ押し返されるだろう。
 猶予はない。

 自分が敵将に達するのが先か、ニダーが破られるのが先か。
 非常に過酷な戦だった。

 留まらずに斬り進み、簡単には反転できない位置にまで食い込んだ。
 人の波の熱気は、一瞬、寒さを忘れてしまうほどだ。
 温血を浴びた身を寒風が冷やすも、すぐさま別の血で体は塗れる。

 それでも、アルファベットを振るい続けた。
 ただ、戦の勝利のために。

 ギフト城の死守を、誰よりもブーンが願っている。
 自分たちに、託している。

 応えなければならないのだ。
 それがひいては、ヴィップの天下へも繋がるのだから。

パレ゚ド「通さん!!」

 アルファベットKの切っ先が、自分の喉元に向いていた。
 ハレド=レガシィ中尉。
 新鋭の将として、名前だけは聞いたことがあった。
207 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:06:41.44 ID:R5sPwwbw0
 たかだかKで刃向かってくる、その勢いだけは認めてやってもいい。
 しかし、戦場に生きる者であれば、自分の力量は正確に把握しているべきだ。

 突き出されたアルファベットKを、軽くいなす。
 隙だらけの懐へ向けて、Uを押し出した。

 ハレドの胴体を、貫く。

( ・∀・)「ッ……!?」

 貫いた瞬間、ハレドは、アルファベットKを突きおろした。
 そして、アルファベットUの穴に、刃と柄を通したのだ。
 同時に、穴を片手で掴まれた。

 アルファベットUの自由を、奪われてしまったのだ。

(;・∀・)「くっ!!」

 油断した。ただこれだけのために、命を投げ出してくるとは。
 強引に引き抜こうとするが、まだハレドは意識を保っている。
 人生の全てを、この瞬間に賭けているのだ。

 何のために。
 その答えは、分かっていた。

 ハレドの後方から迫る、オワタ=ライフ。
 アルファベットOを構えている。

 そして――――そして、更なる獣。
228 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:09:21.70 ID:R5sPwwbw0
 爪牙を光らせながら、接近してくる。
 一頭、その後方に、もう一頭。

(・∀ ・)「あははははははははははははははは」

川 ゚ -゚)「…………」

 シャイツー=マタンキ。
 そして恐らく、ヴィル=クール。

(;・∀・)「くっ……!!」

 完全に、読み違えた。
 三人は、三隊をそれぞれ率いるのではなく、一隊にまとまっていたのだ。
 ただ自分をしとめるためだけに。

 騎馬隊が苛烈な動きを見せていたのも囮か。
 中央の部隊の攻撃力が高かったのも、オワタを狙ってくると読んでいたからか。

 全力で、アルファベットUを振った。
 ハレドの胴体を切り裂いて、ようやくUに自由が戻る。

 しかし、そのときには、オワタのアルファベットが迫っていた。
 同時に、シャイツーとヴィルのアルファベットも。

 シャイツーひとりでさえ、勝てるかどうか分からない。
 その状態で、オワタとヴィルまで居ては――――もはや、この勝負――――

(;><)「モララー中将!!」
255 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:13:19.58 ID:R5sPwwbw0
 闇に落ちかけた自分の心に、射し込んだ光明。
 すかさずオワタのOを防いでくれた。

 ビロード=フィラデルフィア。
 この混戦でも、状況を的確に見極めていたのか。

(;・∀・)「ビロード!! 助かった!!」

(;><)「モララー中将は僕が守るんです!!」

 絶望の淵に、まだ両手で掴まることができている。
 運が良ければ、這い上がることもできる。

 だが、それでも、絶望に触れていることは間違いないのだ。



――ミーナ城付近――

 城外への出撃は、驚くほど滑らかに進んだ。
 ラウンジの妨害活動は、全くと言っていいほど行なわれなかった。

( ゚д゚)(野戦に全てを賭けるか、ショボン=ルージアル)

 もはや、小細工に拘る必要などない、と見たのだろう。
 ただ目の前の敵を殲滅すればいい、と。

 こちらからすれば、望ましくはない展開だ。
 しかし、作戦は変わらない。
274 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:16:08.51 ID:R5sPwwbw0
 ショボンの位置は正確に把握している。
 討ち取る準備は、できている。

 ここで首を取れれば、全てが終わる。
 自分の戦も、ヴィップの戦も。
 何もかも、終わらせることができるのだ。

 そして、今がその、千載一遇の好機でもある。

( ゚д゚)(何がなんでも、だ)

 あの忌まわしい首を、胴体から切り離してやる。
 そして、全てに終止符を打つ。

 まずは、ショボンへの道を切り開くことだ。

( ゚д゚)「行くぞ!!」

 一万の手勢、ほぼ全軍が城外に出た。
 ショボンと相対する北の方面に、だ。

 狙いは一点突破。

(#゚д゚)「ハァァァァァッ!!」

 射込まれるFを弾き落としながら前進する。
 相手がM隊ならば辛い攻撃だが、既に自分の手で殲滅した。
 D隊の攻撃も、余裕を持って防げるわけではないが、前進できないほどではない。
288 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:18:47.99 ID:R5sPwwbw0
 ただ、多少の被害は確実に出てくる。
 一万全てが生き残れるはずはなかった。

 乾坤一擲。
 この戦に臨む前から、皆が分かっていることだ。

 Fをひたすら防ぎつづけながら、前に進み続けた。
 投げ込んだ土嚢は、多少、Fを防ぐ役目を果たしてくれている。

 ただ、完全に防げるほど高く積み上げてしまうと、事前に土嚢を破られる可能性が高かった。
 せいぜい膝の高さ程度だ。大した効果は、やはりない。
 しかも、一撃を受ければ袋は破れ、たちまちただの土と化してしまう。

 土嚢は、破られてもいい。
 これはカムフラージュのために置いた意味合いが強い。

 最初に投げ込んだ石さえ無事ならば。
 ショボンを討ち取ることは、可能だ。

 やがて、前衛のD隊に接近した。
 ラウンジは慌ててD隊を下げ、G隊を前に押し出してくる。

 敵軍、およそ四万。
 部隊を小さく固めて突っ込んだ。

 アルファベットVで敵のIやHを、次々に弾いていく。
 力任せに薙ぎ倒し、留まらずに進み続けた。
302 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:21:20.52 ID:R5sPwwbw0
 ラウンジの抵抗は、決して強くはない。
 兵の錬度でヴィップが優っているため、そう感じるのだ。
 しかし、ヴィップの兵も連戦の疲れが溜まっている。

 互いに限界という名の線上で、刃を交えているのだ。
 足が震え、手は痺れ、それでも戦場に立ち続けている。

 命運を分けるのは、それぞれの、志にかける思いだろう。

(#゚д゚)「フンッ!!」

 脳天を狙ってきたラウンジ兵のHを防ぐべく、腕を斬り落とした。
 足で腹部を蹴って道を開き、後ろのG兵のアルファベットを、Vの突きで砕く。
 すれ違いざまに首を刎ねて、次のI兵のアルファベットを跳ね上げた。

 二つ、三つと首を飛ばしていく。
 それでもまだ、ショボンまでは遥かに遠い。

(;゚д゚)「くっ……」

 自分は一度、下がる必要がある。
 配下の兵のみでも道を切り開けるところまで導きたいが、限界か。
 しかし、このまま下がってしまうと、道は閉ざされたままの可能性が高い。

 ラウンジの圧力は弱まってはいる。
 それでも、依然として圧倒的な大軍だ。
 恐らく、次第に東や西の方面からも、敵兵が集まってくるだろう。

 躊躇している余裕はない。
 だが――――
317 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:24:45.89 ID:R5sPwwbw0
< `ζ´ >「ミルナ様」

 焦燥感に苛まれていた自分に、冷静さを与えてくれるような声。
 オールシン=クルーピング。
 アルファベットLで、的確に周りの敵兵を討ち取りつづけている。

< `ζ´ >「お命じ下さい」

(;゚д゚)「何をだ」

< `ζ´ >「お分かりになられているはずです、貴方なら」

 勢いよくアルファベットHを振り上げて、襲い来る敵兵。
 喉元を突いて討ち取った。

< `ζ´ >「ショボンを討ち取るには、もはやそれしかありません」

(;゚д゚)「…………」

 一刻も動きつづければ全身から汗が噴き出す。
 呼吸も乱れる。

 しかし、戦いつづけていることとは、無関係な要素が。
 心臓の鼓動を、速めさせているのだ。

< `ζ´ >「お切り捨て下さい。私と、フィッティルを」

< `ζ´ >「私たちの命を賭けなければ、ショボンへは到達できません」
333 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:27:24.38 ID:R5sPwwbw0
 降り注ぐ鮮血。
 足元の血溜まり。

 数えきれないほどの、死骸。

< `ζ´ >「私たちが、オオカミ国を失ったあとも貴方に付き添った理由。
      結局それは、今の今までご理解いただけていないようでしたが」

|`-∪-´|「そういうとこが、嫌いなんですよ。何にも分かっちゃくれなかった」

 アルファベットNで周囲の攻撃を防ぎつづけるフィッティル。
 浅黒い肌は温血を浴びて、更にその色を深めている。

|`-∪-´|「俺達は、人生の全てを"それ"に賭けてきたんです。
     最後まで、貫かして下さいよ」

( ゚д゚)「…………」

 やはり自分は、上に立つ者としては、不適格な部分が多すぎた。
 配下を引き上げるような絶対的な力はなく、一緒に這い上がるには実力差がありすぎた。
 そして、何よりも、本質や心情を理解する力が、欠けていた。

( ゚д゚)「……すまん、二人とも」

 その瞬間に、全てを費やそう。
 宿敵を滅するために。
348 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:30:10.28 ID:R5sPwwbw0
 二人の気持ちに、応えるために。

( ゚д゚)「俺のために、死んでくれ」

 フィッティルが、口元を緩ませた。
 オールシンも、微かに笑った。

|`-∪-´|「その言葉を、ずっと待ってたんですよ」

 ――――いい部下を持った。
 かけがえのない、宝を。

 ショボンを、討つ。
 自分のためにも、自分のために死にゆく兵のためにも。

 そして、全てを終わらせよう。
368 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:33:22.65 ID:R5sPwwbw0
――ミーナ城付近――

 予想は、外れたのか。
 だとすれば、この攻撃、本気で一騎打ちを狙っているのか。

(´・ω・`)「とにかく、ヴィップの侵攻を防げ」

 まだ自分のところまで刃が届くことはない。
 しかし、一点突破のみを狙ったヴィップの攻撃の鋭さは、凄絶たるものがあった。

 いずれは、突破されるか。
 ミルナが先頭に立って突き進んでくるなら、充分ありえる。

 だが、そのまま一騎打ちに突入しようとするのであれば、愚の骨頂。
 アルファベットVごときで、自分に勝てようはずもない。

 だからこそ、ヴィップの狙いは、Wだと思っていた。
 アルファベットWで、自分の不意を突き、首を狙ってくるのだと。

 しかし、ミーナ城から躍り出てきたとき、ミルナの背にWはなかった。
 代わりにWを持ってきた兵がいるのかとも思ったが、それもなかった。

 自分の目の届かない範囲で、誰かがWを抱えている可能性はある。
 だが、アルファベットWを見つけたら、すぐに報告しろとも言ってあるのだ。

 一万の敵勢と言えど、十万の目があれば、誰かは気付くはずだ。
 アルファベットWは大型であり、隠し通せるものではない。

(´・ω・`)「…………」
381 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:36:00.16 ID:R5sPwwbw0
 元より、Wで自分を狙ってくることも、非現実的といえば非現実的だった。
 近距離でWが使えるはずはなく、遠距離ならいくらでも躱しようがある。
 ベル=リミナリーのWさえ防いだ過去が自分にはあるのだ。

 だが、ドクオと同じように、城外で敵将を討ち取ろうとするならば、一騎打ちかWしか道はない。
 一万の敵軍に、十万の自軍が完全に抑え込まれることは、ありえないのだ。

 読みきれない。

(´・ω・`)(……ならば……)

 こちらから打って出る。
 ミルナの首を、直接このZで刎ね飛ばしてやる。

 それで、戦は終わるのだ。

 もはや一刻の猶予もない。
 クラウン=ジェスターは病に倒れた。
 ラウンジの天下は、一日でも早く成し遂げなければならないのだ。

 北以外はファルロが指揮執ってくれている。
 安心して、ミルナを潰しに行ける。

 五百の騎馬隊と共に駆け出した。

 ヴィップ軍との距離は半里にも満たない。
 接触までに、時間はかからない。

(´・ω・`)「ッ……?」
398 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:39:24.42 ID:R5sPwwbw0
 不意に、ヴィップ軍の圧力が弱まった。
 しかも、一瞬だけ。

 弱まったと思った直後には、再び苛烈なまでの攻撃を見せ始めた。
 いや、むしろ先ほどまでより、気迫は増している。

 何だ、あの一瞬は。

 鍵を握っている。それは分かる。
 しかし、何を開く鍵なのかは、分からない。

 分からないならば、やはり力で捩じ伏せるより他ない。
 速度を緩めることさえしなかった。

 やがて、ヴィップ軍の先端が見えた。

(´・ω・`)(……ミルナは……!?)

 見えない。
 ミルナの姿を、確認できない。

 一騎打ちが狙いではないということか。
 しかし、アルファベットWも手元にはないはずだ。

 何のつもりだ、ミルナ=クォッチ。

(´・ω・`)「……お前たちでは、代わりは務まらんだろう」

 二列になって一点突破を狙ってきたヴィップ軍。
 その先頭に、アルファベットLとNの男が立っている。
411 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:41:54.03 ID:R5sPwwbw0
 考えられるとすれば、囮。
 二人を囮にして、ミルナは影から自分を狙っている可能性がある。

 ミルナらしくはない作戦だが、考慮しておくべきだった。
 そのうえで、二人を討ち取るべきなのだ。

 同時に打ちかかってくる。
 分離させたアルファベットZで、受け止める。

 気概は大したものだ。
 待ち受けるものが死と、分かっているはずなのに、攻撃は重い。
 いや、あるいは、だからこそなのか。

|#`-∪-´|「オオオオオオオオオオォォォォォォッ!!」

< `ζ´#>「ハァァァァァァァッ!!」

 自分からすれば、新兵の一撃と大して変わらない。
 だが、反撃に出られないでいるのは、やはり二人が死を覚悟しているからか。

 いや、違う。
 本当は、単に、自分の悪い癖が出てしまっているだけだ。

 フィレンクトのときも、そうだった。
 相手に、全力を出させたうえで、討ち取ってやりたくなるのだ。
 最後は、武人らしく死なせてやりたい、と思ってしまうのだ。

 侮辱と思われてもいい。
 だが、自分と同じく、戦場に生きてきた者なのだ。
 最後の一瞬、それを自分も楽しみたい。
432 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:45:00.79 ID:R5sPwwbw0
 結局、軍人に徹しきることはできない。
 だからこそ、ヴィップに押し返されているのだ、と分かっていても。

 自分を、純粋な軍人にしてしまっては、自分でなくなる。
 それでは、死んでしまっているのと同じだ。

 最後まで、自分のままで勝つ。
 その思いは昔から変わらない。

(´・ω・`)「悪くはないな」

 言葉が漏れた。
 目の前の二人が、一瞬、気を削がれたように見えた。
 あるいは、戸惑ったように。

 それでも怯まずに、何撃もアルファベットを繰り出してくる。
 全てに渾身の力が込められていた。もはや、体力は限界だろう。
 潮時だった。

 二人がアルファベットを下げた、一瞬の隙を突いて。
 アルファベットZを繰り出す。

|;`-∪-´|「ッ!!」

< `ζ´;>「ッ!!」

 二人の手元から離れるアルファベットL、N。
 いや、正確には、二人の手が腕から離れたのだ。
444 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:47:56.02 ID:R5sPwwbw0
 よく戦った。
 そう言ってやりたい気持ちだったが、口にはしなかった。

 アルファベットZを、振り上げる。

|#`-∪-´|「まだだぁぁぁぁぁ!!」

< `ζ´#>「終わらせん!!」

(´・ω・`)「ッ!?」

 片手を失い、赤い血を撒き散らしながら。
 それでも二人は立っていた。

 そして、背に手を回し、アルファベットを取った。
 小型のアルファベット、Eだ。

 馬鹿な、その程度のアルファベットを用いて、どうするつもりだ。
 精々、自分の不意を一瞬突けるくらいだろう。
 届きもしない、そのアルファベットでは。
461 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:51:08.27 ID:R5sPwwbw0
 一撃でアルファベットEを破壊した。
 そのまま、二人の胴を両断した。

 アルファベットZは、下りている。
 Eの破壊も伴ったため、無駄な動作が加わってしまった。

 そして、時の流れは緩み出す。

(´・ω・`)「ッ……!?」

 崩れ落ちる二人の体。
 それに塞がれていた、視界。

 後方に、ほんの僅かな。

 道。

(´・ω・`)(あれ……は……!)

 一尺にも満たないような、狭い隙間だった。
 それでも、自分までの道は、開かれていた。

 その先に見えるのは、石。
 足元に石がある、ミルナ=クォッチ。

(´・ω・`)「……ッ!!」

 アルファベットWを、構えていた。
486 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:54:07.08 ID:R5sPwwbw0
 足元の土が抉られている。
 深く、大きめの穴が。

 しまった。
 Wについての情報が、ないばかりに。

 ほんの僅かながら、意識から外れてしまっていた。


 まさか、前に城外へと躍り出てきた目的は――――

 アルファベットWを、地中に隠すために――――


(#゚д゚)「ウオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォッ!!!!」


 目いっぱい弦の張られたWから、放たれるF。
 一瞬にして、自分との距離を詰める。

 無心だった。

 無心で、アルファベットZを振り上げていた。
 身を、守るべく。


 しかし、そのアルファベットZは――――

 ――――無残にも、Wによって、打ち砕かれた。
529 名前:第110話 ◆azwd/t2EpE :2009/01/01(木) 01:57:28.54 ID:R5sPwwbw0
 


 そして、自分の体を貫いた。

















 第110話 終わり

     〜to be continued

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