4 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 20:45:41.05 ID:rolFXjMd0
〜ヴィップの兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
32歳 大将
使用可能アルファベット:W
現在地:ミーナ城・北東

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
47歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:オオカミ城近辺

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
37歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:パニポニ城

●( ゚д゚) ミルナ=クォッチ
48歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:ミーナ城・北東

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
48歳 中将
使用可能アルファベット:T
現在地:ギフト城
7 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 20:46:47.80 ID:rolFXjMd0
●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
51歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:ギフト城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
44歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オオカミ城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
35歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:ミーナ城・北東

●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
46歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:シャッフル城

●(´<_` ) オトジャ=サスガ
46歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:オリンシス城
15 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 20:47:36.30 ID:rolFXjMd0
●( ФωФ) ロマネスク=リティット
25歳 中尉
使用可能アルファベット:M
現在地:ギフト城

●(个△个) ルシファー=ラストフェニックス
25歳 少尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ミーナ城・北東

●/ ゚、。 / ダイオード=ウッドベル
30歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ギフト城
19 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 20:48:37.81 ID:rolFXjMd0
大将:ブーン
中将:ジョルジュ/モララー/ミルナ/ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー/ビロード

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ロマネスク/ダイオード
少尉:ルシファー

(佐官級は存在しません)
25 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 20:49:29.28 ID:rolFXjMd0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:ルシファー
M:ロマネスク
N:
O:ヒッキー/ビロード
P:アニジャ/オトジャ
Q:
R:プギャー/フサギコ
S:ファルロ/ギルバード
T:ニダー/アルタイム
U:
V:ジョルジュ/ミルナ/シャイツー
W:ブーン
X:
Y:
Z:ショボン
27 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 20:50:13.20 ID:rolFXjMd0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・全ての国境線上

 

29 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 20:51:11.18 ID:rolFXjMd0
【第101話 : Anger】


――山間の村――

( ’ t ’ )「必ずここに帰ってくるので、家から絶対に出ないでください。
     僕が山賊たちのところへ行くことも、決して口外しないようお願いします」

从;・_・从「はい、もちろんです」

 準備は万端に整えた。
 一応地図も見せてもらい、本営の場所はしかと確認している。
 迷うことなく到達できるはずだ。

( ’ t ’ )「それでは、行ってきます」

从;´・_・从「……あ、あの……」

( ’ t ’ )「はい?」

从;´・_・从「どうか……どうか、無理だけはなさらないでください。
      もし危険を感じた場合は、すぐに逃げて下さい。
      村のことは、直接中将には関係ないのですから……」

( ’ t ’ )「……いえ、賊が元ラウンジの兵であった場合、中将であった僕の管理不行き届きです。
     突き詰めれば、僕の責任です。申し訳ありませんでした」

 深々と、頭を下げた。
37 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 20:53:10.78 ID:rolFXjMd0
 山賊たちが元ラウンジの兵であるかは、まだ分からない。
 が、もしそうだった場合、ここで謝っておかないと、もう機会がない。
 元ラウンジ兵だったのなら、謝罪ひとつで許されることではなかった。

从;´・_・从「や、やめてください……! 中将が、頭を下げるなんて……!」

( ’ t ’ )「もう、中将じゃないですよ。ただの流浪人です」

 それでも、ほんの少し前まで中将だった。
 そのときの責任は、今もまだ消えずに残されているのだ。
 置き去りにして逃げるべきではない。

( ’ t ’ )「管理不行き届きの責任は、必ず取ります。必ずです」

从;´・_・从「本当に……お気をつけて……」

( ’ t ’ )「ありがとうございます」

 荷物を抱えて、家の扉を開いた。
 冷たい空気が吹き込む。

 外は、音もない空間。
 身を切るような寒さが在るだけだった。

 首を後ろに捻り、少しだけ笑って、扉を閉めた。

( ’ t ’ )(さてと……)
48 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 20:55:18.21 ID:rolFXjMd0
 雪が降り始めていた。
 いくつも残されている足跡が、隠されていく。
 埋められ、また白き道に戻る。

 なるべく足跡を残さないように歩いた。
 既存のものを辿るようにしてだ。
 誰かに後をつけられたくはない。

 村から外れて、山中に入った。
 木に遮られているせいか、さほど雪はない。
 足跡を気にせず歩けそうだった。

( ’ t ’ )(こっちか……)

 地図を見ながら慎重に進んだ。
 ユイカはあまり絵が上手くないようで、分かりづらい部分もあったが、方角さえ掴めれば何とかなる。
 星が薄らながら見えている今のうちに、目的地へ到達したいところだ。

 一際目立つ大木を基点として、北に半里ほど進んだ。
 途中、いくつか不自然な木々を見つけた。

 噛みちぎったように一部が欠けている木。
 斜めに、無造作に裁断された木。

 全て、鋭利な刃物で行われたもののようだった。

( ’ t ’ )(……間違いないな)

 樵が使うような斧では、不可能な芸当だ。
 間違いなく、アルファベットだった。
56 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 20:57:20.10 ID:rolFXjMd0
( ’ t ’ )(……よし)

 背中からアルファベットを取り外し、太い木に立てかけた。
 山賊の本営のほうからは、見えない位置。
 これでいいはずだ。

 更に北へ四半里ほど進んだところで、ひとりの男が腕組みしながら待っていた。

(キ"ー")「よぉ、来たか」

 下卑た笑みを浮かべている。
 問答無用で嫌悪感を抱かされるような、醜悪なものだ。

 山賊の頭目ではないだろう。
 この寒い中、外で待たされているということは、下っ端だ。

( ’ t ’ )「……初めまして」

(キ"ー")「ん?」

 やはり気付いたようだ。
 暗闇で顔はほとんど確認できないはずだが、声の違いはどうしようもない。

(キ"ー")「誰だ、お前。ユイカはどうした?」

( ’ t ’ )「実は、ユイカさんが体調を崩されまして」

(キ"ー")「はぁ?」

( ’ t ’ )「代役として、私が」
69 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 20:59:55.86 ID:rolFXjMd0
 我ながら、女のような声だと思う。
 元々、声は高いほうだったが、意識して高音を出すと、本当に女のそれだ。

 ユイカの家で化粧を施し、服も借りてきた。
 相手は、女と信じて疑っていないようだった。

(キ"ー")「初めて見るな。お前、あの村に居たか?」

( ’ t ’ )「皮膚が弱いもので、昼間は外に出られないのです」

(キ"ー")「はぁん」

 男は軽く首を捻った。

(キ"ー")「お前ほどの上玉なら……隠匿してたと見たほうが自然なんだがな?」

( ’ t ’ )「…………」

 確かに、そう考えるのが自然だろう。
 村の女は先ほど見たが、あまり冴えない女や、若くない女が多い。
 自分がもし女として村にいたのであれば、やはり、賊たちは目をつけるはずだ。

 しかし当然、相手に言われることは予測していた。

( ’ t ’ )「そう言われてしまうと、何を言っても言い訳にしかならないと思いますが」

(キ"ー")「なんか理由があんのか?」

( ’ t ’ )「人と接することに、あまり慣れていないもので……申し訳ありません」
79 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:01:58.20 ID:rolFXjMd0
 下手に正当化しようとすれば、逆効果になる可能性が高い。
 素直に謝ってしまったほうがいい、と考えた。

(キ"ー")「重いぜぇ? その罪は」

 不快な笑みが、男の満面に広がった。
 口が引きつりそうだった。

(キ"ー")「たっぷり可愛がってやるからよ、ついてこい」

( ’ t ’ )「……はい」

 緩やかな斜面を大きな歩幅で登っていく男。
 こちらは動きづらい服装で、ついていくのに必死だった。

(キ"ー")「しかし、女にしちゃデケェな」

( ’ t ’ )「それが、恥ずかしくて」

(キ"ー")「なるほどな。だから他人とあまり接さないってわけか」

 最も愚かな種別の人間だ。
 自分を賢いと思っているが、実はそうではない、といった類。
 これがもし元ラウンジの兵だったのなら、悲しくなる。

( ’ t ’ )「本営は、この上にあるのですか?」

(キ"ー")「そうだ」

( ’ t ’ )「一箇所だけですか?」
95 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:04:07.58 ID:rolFXjMd0
 変に臆するより、単刀直入に。
 そのほうが怪しまれにくい。

 ユイカは、一箇所しか示さなかった。
 恐らく他の本営については何も知らないのだろう。
 あるのかどうかさえ。

 自分も分からない。
 もし複数個所あるなら、事前に聞いておかないと、大変なことになる。

(キ"ー")「……あぁ、一箇所だけだ」

 男はまた、口元を歪めていた。
 違和を感じ取るには、充分だった。

( ’ t ’ )「でしたら、いいのですが」

(キ"ー")「何がだ?」

( ’ t ’ )「初めてなので、皆さんにご挨拶を、と思いまして」

(キ"−")「……ふぅむ」

 表情から笑みが消え、真剣な顔つきになった。
 歩く速度も少し落ちている。

(キ"ー")「なるほどな……それも必要か」

( ’ t ’ )「はい」
106 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:06:09.74 ID:rolFXjMd0
(キ"ー")「でもなぁ」

 下っ端の一存で決めることはできない、ということだろう。
 ならば、それでもいい。

( ’ t ’ )「無理にとは、申しませんが」

(キ"ー")「んー」

( ’ t ’ )「頭目の方は、どちらに?」

(キ"ー")「奥にいるが……」

 やはり、本営はひとつではないらしい。
 それさえ知れれば良かった。
 もう、こいつに用はない。

( ’ t ’ )「あっ……」

(キ"ー")「なんだ?」

( ’ t ’ )「……手土産が……」

 慌てふためく振りをして、辺りを見回した。
 何もないことは分かっているが、当然演技だ。

(キ"ー")「手土産?」

( ’ t ’ )「皆さんにお渡ししなければならないのですが……あ、先ほど休んだときに、木の根元に……」
116 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:08:21.47 ID:rolFXjMd0
(キ"ー")「要らねぇよ、んなもん。早く行くぞ」

( ’ t ’ )「ですが、村長から『どうしても渡してほしい』と頼まれまして」

(キ"−")「村長からぁ? なんだそりゃ、中身はなんなんだ?」

( ’ t ’ )「分かりません。ですが、お渡ししないと」

(キ"−")「メンドくせぇな」

 男は頭を掻いた。
 頭皮が粉のようになって散り落ちている。

(キ"−")「しゃーねぇ、取りに戻るぞ」

( ’ t ’ )「すぐ近くですから、はい」

 踵を返し、いま来たばかりの道を再び歩いた。

 突然、襲われたりしないよう、後方には注意を払っている。
 どうやら、男は情欲が溜まっているようだ。
 今この場で、と言ってきてもおかしくない表情だった。

(キ"ー")「楽しみだぜ。お前がどんな女なのか」

 言葉の端々に卑しさが滲み込んでいる。
 これが、元軍人なのだろうか。
 だとしたら失望せざるをえない。
129 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:11:11.18 ID:rolFXjMd0
(キ"ー")「ユイカはよぉ、いい女だが大人しすぎるのが難点でな。
    最初から最後まで、一言も喋らねぇんだ。声を堪えやがるんだ。
    それがみんな不満でよ」

( ’ t ’ )「…………」

 暗い怒りが、溜まり始めていた。

(キ"ー")「お前は声を出せよ。じゃねぇとよ、燃えねぇんだよ」

( ’ t ’ )「…………」

(キ"ー")「存分に嫌がってるとこを無理やりするのが、楽しいんだからな」

( ’ t ’ )「……そうか、良かった」

(キ"ー")「あ?」

 木に、到達した。
 こちらからは死角。しかし、向こう側にある。
 静かに、時を待っている。

(キ"ー")「良かったって、なんだ?」

( ’ t ’ )「仮に、お前が昔、僕の部下だったとして――――」
142 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:13:19.50 ID:rolFXjMd0
 木の後ろに、回り込む。
 もう、見られようが見られまいが、関係ない。
 布は既に取り払ってあった。

( ’ t ’ )「僕を慕ってくれていたとしても――――躊躇なく殺せるような人間で、良かった」

(キ"−")「……てめぇ……女じゃねぇな……」

 アルファベットの、柄を握った。

(キ"ー")「はっ、アルファベットの模造品かよ。んなもんにビビる俺達と思ったのか?」

(キ"ー")「残念だがなぁ、俺達はおま」

 濁声を、聞いていたくはなかった。
 最初からだ。

 ゆっくりと懐に手を伸ばした男。
 恐らく、なにか得物を忍ばせていたのだろう。
 が、そんな余裕は与えなかった。

 男の首は、まるで噴水のように血を放っている。

( ’ t ’ )(……まだまだ、これからが本番だ)

 柄を握りなおし、死体を見ることもなく、歩き出した。
153 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:15:43.15 ID:rolFXjMd0
 本営は確実に二つ以上ある。
 一晩で終わらせるためには、休んでいられない。

 躊躇なく、討ち取っていかなければならない。



――ミーナ城・北東――

 生まれてから一度も、キョーアニ川以西には来たことがなかった。
 出身はヴィップ城の近辺で、ハンナバルが居なくなってからはずっと、ラウンジと戦ってきたのだ。
 だから、昔に東塔が担当していた方面に訪れることはなかった。

(-_-)(……しかし……)

 北とは違った良さがある。
 土壌の豊かさや、風景の彩り深さ。
 いずれも寒冷に晒される北部にはないものだ。

 が、感慨に浸っている余裕はなかった。
 今回、西の戦いに呼び出されたのは、それだけ戦況が逼迫しているという意味だからだ。

( ^ω^)「すみませんお、御足労を……」

(-_-)「……いい……問題ない……」

 以前よりも体つきは逞しくなっているように見えた。
 去年から大将となったブーン。戦でも、ラウンジ相手に悪くないものを見せているという。
164 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:17:52.77 ID:rolFXjMd0
( ^ω^)「ギフト城、ありがとうございましたお。勝っていただけて、本当に嬉しいですお」

(-_-)「モララー中将の力だ……自分は何もしていない……」

( ^ω^)「そんなことありませんお」

 昔から、物腰は柔らかい男だった。
 感情を隠しきれないところがあり、喜びも悲しみも素直に表現する。

 物腰が柔らかいというとモナーを思い出すが、決定的な違いは感情の表現だ。
 モナーは、常に裏がありそうな笑顔と発言で、警戒させられた。
 しかし、ブーンにそのような強かさはない。

 優しさを、打算なしで発揮できる面もある。
 それは大将として、強みにもなり、弱みにもなるだろう、と思っていた。

 ただやはり、以前のような無邪気さはない。

(-_-)「……今回は、少し……厳しいようだな……」

( ^ω^)「……申し訳ありませんお……ブーンの力不足ですお」

(-_-)「別に、責めているわけじゃないさ……」

( ^ω^)「いえ……皆さんの期待に応えられなくて、それが申し訳ない限りなんですお」

(-_-)「…………」

 ふと、微かに、過る。
 違和感。
179 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:20:30.75 ID:rolFXjMd0
(-_-)「……大将としての……責務か……?」

( ^ω^)「ですお」

(-_-)「……そうか……」

 同じ話を、していたくなくなった。
 違和感を拭い切れないためだ。

 わざと間を取って、話題を切り替える。

(-_-)「新しく将校となった、ルシファーは……どうだ……?」

( ^ω^)「頑張ってくれてますお。この前も、ラウンジの夜襲を上手く防いでくれましたお」

(-_-)「……喜ばしいことだな、それは……」

( ^ω^)「ミルナさんもビロードさんも、奮戦してくれてますお」

 兵糧に余裕があるのはヴィップのほうだ。
 だから、いつどこで戦をやるか、という主導権は握れる。
 が、やはりラウンジの兵力数には敵わない。

 本来厳しいはずの戦いで、ここまで持ちこたえているのは、諸将の奮闘あってこそのものだろう。
 当然、その中には大将であるブーンも含まれている。

(-_-)「……ラウンジの、動向は……?」

( ^ω^)「間者からの情報はまだありませんお」
189 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:22:38.93 ID:rolFXjMd0
(-_-)「……かえって、不気味な気もするが……」

( ^ω^)「もちろん、間者に情報が伝達されてない可能性も考慮して、警戒は続けてますお」

(-_-)「間者は、有能か……?」

( ^ω^)「そう思いますお」

 ブーンが間者を送り込んでいるというのも、自分からすればしっくりこない。
 が、大将ともなれば当然であり、むしろ送りこんでいないほうがおかしいのだ。

 最後の質問は余計だったかも知れないが、聞いておきたかった。
 大将として仰ぐブーンのことは、理解しておきたい。
 自分は、軍人だからだ。

(-_-)「……大きな力になれるとは思わんが……微力は、尽くさせてもらおう……」

( ^ω^)「よろしくお願いしますお。頼もしい限りですお」

(-_-)「……よしてくれ……」

 過度の期待を抱かれたところで、実力以上を出せる男ではない。
 自分のことぐらい、自分で分かっているのだ。

 今年で五十一になった。
 気付けば、全国一の老将だ。
 経験が多少あるだけで、本来、少将という地位さえ過ぎたものだと思っていた。

 が、活かせるとすれば、やはり経験。
 人より場数を多く踏み、数多なる生と死に触れてきた経験だ。
202 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:25:10.61 ID:rolFXjMd0
 様々な戦を経たし、様々な人間にも接してきた。
 生来、あまり積極的ではなかったが、否応なく自分に寄りかかってきたものも多かった。
 何十年という歳月を閲してきたからこそだ。

(-_-)(…………)

 先ほどブーンから感じたものは、やはり、その経験が囁いたのだろうか。
 姿を曖昧にしている。もどかしいほどに。
 だからこそ、気にかかるという部分もあるのだ。

( ゚д゚)「ヒッキー=ヘンダーソンか」

 陣内を歩き回っていたところ、ミルナ=クォッチに出くわした。
 アルファベットがVになっている。この歳でまだ成長するとは、さすがミルナだった。
 自分はもう、ひとつたりとも上がる気がしない。

(-_-)「……久しぶりだな……」

( ゚д゚)「そうなるか」

 ミルナがヴィップ城に初めて来た頃に少し、時間を共有しただけだ。
 ほとんど接点はなかったと言っていい。
 自分は西塔に所属していたため、刃を交えた過去もない。

(-_-)「……ジョルジュ中将は、どうしている……?」

( ゚д゚)「戦列復帰には、まだ相当の時間が必要だろう」

 ミルナは、まるで遠くを見るような目をしながら言った。
212 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:27:31.12 ID:rolFXjMd0
(-_-)「……この近くには、居ないのか……?」

 自分は、ミーナ城にいるものと思っていた。
 だから後で挨拶に行くつもりでもいたのだ。
 しかし、違うのだろうか。

( ゚д゚)「あぁ……腕のいい医者に、診てもらっているからな」

(-_-)「……それでも、時間はかかるのか……」

( ゚д゚)「戦に出られるかどうか、分からない状態だったろう。
    ジョルジュはあくまで、戦場復帰を優先したんだ」

(-_-)「なるほど……時間がかかることは、厭わなかったわけか……」

( ゚д゚)「ん……まぁ、そういうことだな」

 ミルナはどこか、歯切れが悪かった。
 どうやら話しきれない別の要素を抱えているようだ。

 詮索しようとは思わなかった。
 下手に踏み込みすぎて戻れなくなるのは、昔から恐れていることのひとつだ。

( ゚д゚)「そろそろ、ラウンジは痺れを切らして攻め込んでくるはずだ。
    苛立ち、動きが大きくなってきたところで、カウンターを狙う」

(-_-)「ブーン大将の策か……?」

( ゚д゚)「あぁ」
223 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:29:46.42 ID:rolFXjMd0
(-_-)「……昔より……考え方に幅が出たようだな……」

 その言葉には、続けたい別の言葉があったが、何故か憚られた。
 ミルナも、言葉の続きを望んでいないように見えた。

( ゚д゚)「この戦は、穏やかな流れのまま長引いてきた。動きが出るとすれば、今が頃合いだろう」

(-_-)「だからこそ……人員を補充したわけか……」

( ゚д゚)「そういうことさ」

 大事な戦だ。
 ショボンやギルバードといった将が、フェイト城を守り抜こうとしている。
 それを打ち破れるか、どうか。

 勝てるか、どうか。
 非常に大きな意味合いを持ってくる。

( ゚д゚)「ショボン、ギルバード、シャイツー、プギャー……多くの将がいるが、撃破できんことはないはずだ」

(-_-)「あぁ……」

( ゚д゚)「ともに戦い、勝利を得よう」

 ミルナは、静かに背を向けた。

 軽く息を吐いて、自分も歩き出した。
 ビロードやルシファーに会い、軽く言葉を交わし、着々と戦の準備を進める。
 馴れきった作業になっていた。
231 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:31:49.06 ID:rolFXjMd0
 動きが出るとすれば、頃合い。
 恐らく、ミルナの言ったとおりだろう。

 相手の隙を窺いつつ、警戒を強める必要がありそうだった。
 内にも、外にもだ。



――山中――

 霜の降りた地面の上を歩くと、落ち葉を踏み砕いたような音が鳴った。

 この音を、あと少し聞いている間に、山賊たちの本営へ到達するはずだ。
 恐れはなかった。

( ’ t ’ )(罠は……)

 一応、仕掛けられている。
 が、まるで子供騙しだ。警戒感が伝わってこない。
 村の者が挑んでくることを、想定していないのか。

 いや、例え挑んできても、打ち払える自信があるのだろう。
 アルファベットを有しているからこそだ。

 足元に張られた紐や、触れれば動くであろう樹などを、やりすごした。
 全て罠の仕掛けとなっているものだ。

 壊して進んでもいいが、音で山賊たちに気づかれる恐れがある。
 できれば静かに接近して、山賊を殲滅したいのだ。
240 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:33:59.16 ID:rolFXjMd0
 紐の上を大きく跨いで通過する。
 すると正面に、今度は不自然な落ち葉の堆積があった。
 落とし穴か何かだろうか。

 横に移動して、不自然な膨らみを避けた。
 やはり随分と、分かりやすい罠だ。
 こちらとしてはありがたい。

 そんな慢心が、災いするのだった。

( ’ t ’ )「ッ……」

 多量の落ち葉を避けたところに、隠された細い紐。
 視認したわけではない。が、微かに切れる音がした。

 頭上の枝葉が揺れる。
 自分めがけて、岩石が降ってくる。

( ’ t ’ )(しまったな……)

 素早くアルファベットを振るって、岩は破壊した。
 この程度の罠自体は何ともないが、問題は、罠にかかってしまったという事実だ。

 稚拙な罠を避けた先に、巧妙な罠。
 思ったより、頭の切れる相手なようだ。
 今までに敷かれていた程度の低い罠も、このための伏線だったのかと思える。

(メ`ム´)「なんだぁ?」
252 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:36:16.97 ID:rolFXjMd0
 恐らく、罠が発動すると本営に報せが届く仕組みでもあったのだろう。
 ここはもう、本営からほんの僅かな距離だった。

 だからこそもっと警戒すべきだったのだが、はっきりと、自分の落ち度だった。
 やはり、まだまだ未熟な男だ、自分は。

(メ`ム´)「ッ……てめぇ、それは……」

( ’ t ’ )「しょうがないな」

 ここから先に、罠はないようだった。
 隠されているだけかも知れないが、山賊が臆することなく進んでくるということは、間違いない。

(メ`ム´)「アルファベットの模造品か……? いや、罠の岩を砕いたってことは……」

( ’ t ’ )「答えを知る必要はない」

 跳躍。
 そして、アルファベットPを薙ぐ。

 山賊は、身を屈めて躱した。
 間違いない。こいつは、元軍人だ。
 恐らく頭目ではないだろうが、身のこなしを見れば分かる。

(メ;`ム´)「てめぇ、まさか……カルリナ……!?」

 男が、アルファベットを背から掴んだ。
 Hだ。
 ユイカが見たのは、これだろう。
263 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:38:24.62 ID:rolFXjMd0
( ’ t ’ )「二度、同じことを言わせないでほしい」

 男の打ち込みを、最小限の動きで躱す。
 鼻先をHの刃が通過していったが、自分の中に、動揺はなかった。
 計算どおりだったからだ。

( ’ t ’ )「お前は、答えを知る必要なんてないんだ」

 体勢の崩れた男を、蹴飛ばした。
 雪のうえに倒れこんだ男は、受け身を取って、軽やかに起き上がる。

 ――――その、起き上がったところで。

 雪を深紅に染めた。

( ’ t ’ )(……っと……)

 外の喧噪に気づいたのか、粗末な小屋から何人かの男が飛び出してきた。
 それぞれに武器を携えているが、アルファベットは一つもない。

 六人。
 思ったよりも少ない数だ。
 やはり、ここではないどこかに、真打はいるらしい。

( ’ t ’ )(時間は、かけられないな)

 雄叫びと共に、襲いかかってくる。
 少しずつ攻撃をずらして、だ。
 さすがに戦い方は知っているようだった。
278 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:40:35.21 ID:rolFXjMd0
 が、問題にはならない。

 まずは強引に二人の首を取る。
 脆い武器を粉砕してだ。

 その体を跳ね飛ばして、後方の賊を牽制し、もう一度アルファベットを振るう。
 左方から自分を狙っていた賊の胴を両断して、倒れてくる上半身を躱した。

 隙を狙ったつもりか、躱した直後に二人が斧で攻めかかってきたが、それも一撃で討ち取る。
 残った一人は完全に委縮し、無様に背を見せて逃げ出したが、すぐさま追い付いて首を刎ねた。

( ’ t ’ )(こんなものか……)

 やはり、相手がアルファベット以外の武器であれば、六人程度はどうにでもなる。
 アルファベットIだったとしても、難なく討ち取れただろう。

 自分のPを上回るような相手は、山賊のなかに居ないはずだ。
 しかし、それに近い者はいるかも知れない。
 そしてそれが数人いるとしたら。

( ’ t ’ )(……安全な戦いとは言えないな……)

 しかしそれも、分かっていて臨んだことだ。
 山賊の行ないは、決して許されるべきではないのだから。

 自分が、討つより他ないのだから。

( ’ t ’ )(それにしても……随分、粗末な小屋だな……)
293 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:42:51.71 ID:rolFXjMd0
 ユイカが描いてくれた地図では、ここが山賊の本営となっている。
 曖昧な地図だが間違いないだろう。

 しかし、こんな小屋に十数人の山賊が住めるはずはなかった。
 居住するのであれば五人程度が限界だろう。
 真の本営があることくらいは、ユイカに見抜いておいてもらいたかったが、一般人に求めるのも酷な話かも知れない。

 小屋の中に人の気配はなかった。
 開け放たれた扉から屋内へ侵入すると、男性特有の臭気に鼻を突かれる。
 腐った肉や果物も、そのまま放置されていた。

 人の鼻は、同じ匂いをずっと嗅ぎつづければ、次第に慣れてしまい、何も感じなくなるという。
 が、それにしても、この臭いは酷いものだった。
 こんな小屋でユイカが凌辱されていたのだと考えると、堪らず胸を手で押さえてしまう。

 鼻を指で摘みながら、屋内を物色した。
 アルファベットはやはりない。
 農民が使うものより多少マシな程度の鍬などがあるだけだ。

( ’ t ’ )(お……)

 丸まった羊皮紙を見つけた。
 紙の端がところどころ欠けている。
 環境が劣悪だったからか、かなり紙は劣化しているようだった。

 得体の知れない液体が沁み込んだ紙を、広げた。
 中央に丸が打たれている。
 その半里ほど先と記されている、北東との点の間を、線が結んでいた。

 真の本営の場所と見て、間違いないようだ。
314 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:45:01.51 ID:rolFXjMd0
 すぐに小屋を飛び出した。
 もう日付は変わっているだろう。急がなければ。
 夜明けまでには、全てを終わらせたかった。

 小屋の中にあった地図の信憑性は、問題ないとは言えない。
 先ほどのように、慢心していると足元を掬われかねないのだ。
 あらゆる可能性を、今度は想定していた。

 小走りで本営に向かったが、罠はない。
 道が踏み荒らされていて、まるで本営までを教えてくれているようだった。
 ただ、これが罠の可能性もある。方角にだけは充分、留意しながら走っていた。

 そのとき、不意に。

( ’ t ’ )「ッ!」

 視界の端で、影が動いた。

 強烈な打ち込み。
 あと一拍でも反応が遅れていたら、首はなかっただろう。
 振るわれたアルファベット、G。

(#エ エ)「ふんッ!!」

 間髪入れずに次の攻撃を繰り出してくる。
 重いアルファベットを扱っているとは思えない素早さだ。

 明らかに自分を待ち伏せていた。
 先ほど、六人を斬った光景を、恐らく影から見ていたのだろう。
 そして不意を打ってきた。
327 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:47:19.03 ID:rolFXjMd0
 果敢さは買うが、いささか無謀が過ぎるというものだった。

( ’ t ’ )「本営の場所を教えろ」

 一撃でアルファベットを粉砕し、Pを首につきつけた。
 賊は地面に滴り落ちるほどの冷や汗を生じさせている。

(;エ エ)「あ……案内します……」

( ’ t ’ )「そうしてくれ」

 威圧するために、高圧的な言葉を遣ってみたが、やはり慣れない。
 とある人物を思い出して、胸がざわめくような気分にもなる。

 賊の背中にアルファベットを突きつけたまま、歩いた。
 自分が向かっていた方向は、間違いではなかったようだ。

(;エ エ)「こ、ここです」

 賊が示した場所には、何もなかった。
 木々が疎らに生えているだけで、人がいる気配など、どこにもない。

 普通は、そう見る場所だ。
 自分の居場所に、注意を払わなければ。

( ’ t ’ )「地下か……なるほど」

 討滅されないよう、知恵を絞ったのだろう。
 行き着いたのが、山中に穴を掘って隠れ住むという選択肢だ。
 あのみすぼらしい成りだった小屋も、真の本営を隠すためだったのかも知れない。
337 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:50:05.16 ID:rolFXjMd0
(;エ エ)「あの……僕はもう、そろそろ」

( ’ t ’ )「そうだな」

 賊の肩から、手を離してやった。
 頭を何度も下げる賊が、立ち去ろうとする。

( ’ t ’ )「最後に、二つ聞かせてくれ」

 賊の表情は、まだ安堵に包まれていた。
 軽い笑みすら浮かべている。

( ’ t ’ )「あの村から、お前たちは税を絞り取り、女を貪っていたな?」

(;エ エ)「…………」

( ’ t ’ )「答えろ」

 再び、アルファベットPを賊に突きつける。
 男の顔から、安堵感が消えた。

 初めてだった。
 初めて、これほど残忍な気持ちになった。
 戦場でさえ一度もなかったことなのに、だ。

(;エ エ)「……はい……」

( ’ t ’ )「じゃあ、それが死罪になるほどの大罪と、分かっていたか?」

(;エ エ)「…………」
348 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:52:57.81 ID:rolFXjMd0
 二度は、言わない。
 時間の無駄でしかない。

( ’ t ’ )「答えなきも、また答えだ」

 軽く、アルファベットを振り上げた。
 まるで紙を切ったときのように、手応えもなく、Pは男の体を通過する。

 死体には目もくれずに、土の被さった扉を見つけ出し、引いた。
 薄暗い地中には、木製の梯子がある。
 固められた土の壁に、しっかりと固定されているようだ。

( ’ t ’ )(山で地下なんて……土砂崩れでもあったらどうするつもりだろうか……)

 何か対策を打ってあるのか、考えが及んでいないのか。
 まだここで住み始めてから、長い時間は経っていないはずだ。
 幸運に恵まれ、大した災害を経験することもなく過ごせている、と見たほうが現実的だった。

 地下からは笑い声。
 どうやら数人が篭っているらしい。

 先手を打ちたかった。
 山賊たちが、反応できる間も与えたくはなかった。

 ゆっくり降りる。光へ、近づく。
 どうやら火が灯されているらしい。

 となれば、恐らく、別の場所から外気を取り込んでいるはずだ。
 空気の篭った場所で火を使いつづければ酸素が失われてしまう。
 外気を補充しているであろう場所にも警戒したいが、賊を討たなければどうしようもなかった。
357 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:55:24.81 ID:rolFXjMd0
 梯子は短い。
 もう、飛び降りたとしても問題ない高さだ。

 機を見計らった。

( ’ t ’ )(……行こう)

 扉が開けられたにも関わらず、賊は完全に油断している。
 間違いない。今が好機だ。

 梯子から手足を離して、飛び降りた。
 女物の服で、多少着地しづらい。体勢が崩れる。
 それでも、アルファベットは構えられた。

(;@〜@)「んなっ……!」

(;メ_メ)「テメェは……!?」

 思ったよりも素早い反応だ。
 しかも、握っているのはアルファベット。
 自分を見た瞬間、手にしたらしい。満点に近い対応だった。

(;ニ_ニ)「女……!?」

(;7=7)「でもアルファベットを……!」

(;〔★〕)「模造品だ! やっちまえ!」

 全員、アルファベットを握っている。
 反応の良さと併せ見ても、元軍人ということに間違いなさそうだった。
381 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 21:58:05.82 ID:rolFXjMd0
 ただ、アルファベットはI以下。
 安心した。Jの壁を越えている者は、いないようだった。

 問題はこの場所そのものだ。
 Pを存分に振り回せる広さがない。

 引き換え、相手はGやHなどの、小回りが利くアルファベット。
 多少なり、差を埋められてしまう。

 一人ずつ潰していくしかなさそうだった。

( ’ t ’ )(まずは……)

 右手で、刃付近の柄を握った。
 ユイカの目の前で硬貨を切ったときのように、小さく振るうためだ。
 威力は殺されるが、そうしなければここでは戦えない。

 まずは、目の前の小太りな男。
 見据えて、アルファベットを振るった。

 しかし、見かけによらず動きが機敏だ。
 転がるようにして攻撃を躱してきた。

 その後ろから、軽い跳躍と共に襲いかかってくる賊。
 頭が天井につきそうだったが、際どいところで回避したようだ。
 重力を伴わせた一撃を見舞ってくる。
395 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:00:40.91 ID:rolFXjMd0
( ’ t ’ )(ここは……!)

 力任せ。
 こんな場所では上手く避けられる保証がない。
 だから、渾身の力で、襲いかかるHを破るしかない。

 右手を下げた。
 柄の中央あたりを、掴む。

 真横に振るって、Hの刃を、砕き割った。

( ’ t ’ )(よし……!)

 機先は制した。
 あとは、流れに乗って斬り進むだけだ。

 まず、一人。
 豪快に首を刎ね飛ばした。

 次いで、二人、三人。
 こちらは、静かに。
 しかし失敗のないよう、確実に討ち取る。

 転がった死体を見ても怯まない、残りの二人が、同時に刃を向けてくる。
 両方、アルファベットHだ。
 そして一瞬の後には、二つのHが、無残な姿に変わっていた。

 二人の間を、縫うように通り過ぎる。
 両腕を丁寧に動かしながら。
417 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:03:06.06 ID:rolFXjMd0
 背中で、鮮血を浴びた。

( ’ t ’ )(終わりか……)

 ひとつ、息を吐いた。
 散々警戒したが、壁越えのアルファベットがなかったおかげで、思ったよりも楽だった。
 これで村に平和が戻る。適切な表現ではないのだろうが、少し、拍子抜けしてしまったほどだ。

 転がった五つの死体に対する感情は、何もない。
 抱きたくもなかった。

( ’ t ’ )(それにしても、よくこんな狭いところで――――)

 何日も暮らせたものだ。
 自分なら、三日も耐えられない。

 そう、心の中だけで、呟きかけたとき。

(;’ t ’ )「ッ!!」
433 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:05:26.67 ID:rolFXjMd0
 後背。
 完全に、絶たれていた気配。

 背中の表面を、刃が通過していった。
 溢れ出すは、温血。

 一瞬白んだ世界でも、確かに、捉えた。
 振り返った視界の奥で。

 自分を襲ったアルファベット、L。
 そして――――

(;’ t ’ )「……お前だったのか……ミッドガルド……」

 ゆったりとアルファベットを構える男がいた。
467 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:07:48.82 ID:rolFXjMd0
( ´‘J‘`)「何故そのような格好をしているのかは存じませんが、しかし……お久しぶりですね」

( ´‘J‘`)「カルリナ、中将」

( ’ t ’ )「…………」

 自分が軍から退いたことを、知らないのだろうか。
 それとも、皮肉を交えて言っただけなのか。
 何の皮肉にもなっていないが、何故か、表情からは余裕が窺えたのだ。

( ’ t ’ )「お前が頭目だとは思わなかった……久しいな……」

( ´‘J‘`)「覚えておいででしたか。誠に光栄ですよ、中将」

 背中の血が、止まらない。
 腰から脚にかけて血が伝い、地中の土壌に染みていく。
 当然、痛みも鈍々しく存在していた。

( ’ t ’ )「……零落れたものだな。一時は軍で騒がれた男が、山賊とは」

( ´‘J‘`)「国家のために戦うことの下らなさに、気づいたのですよ。賢明でしょう?」

( ’ t ’ )「下らなさ、か」

( ´‘J‘`)「えぇ」

 欺瞞に満ちた言葉であろうとも、一応は、耳を傾けるしかなかった。
 それが、中将という立場で軍にいた自分の責務だ。
482 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:09:44.42 ID:rolFXjMd0
( ´‘J‘`)「漫然と指揮を受けて訓練し、戦うことの意味。
      カルリナ中将は、お考えになったことが?」

( ’ t ’ )「ある。当然だ」

( ´‘J‘`)「でしたら、浅薄な思考に終始したのでしょう」

 俯瞰的な言葉にも、苛立つことはなかった。
 言葉の真意が、読み取れているからこそだ。

( ´‘J‘`)「私は、分かってしまったのです。個人の存在に、価値などないのだ、と」

( ’ t ’ )「…………」

( ´‘J‘`)「組織的な戦いの中で求められるのは、『如何に周囲と同調できるか』です。
      貴方ほどの将であれば、その大事さは充分、分かっていることでしょう」

( ’ t ’ )「否定はしない。いや、できない」

( ´‘J‘`)「えぇ、そうでしょう。一人が和を乱せば、必ず敗北に行き着くのが戦です」

 持論には、実体験が込められているのか。
 それは自分にさえ、はっきりとは分からない。

 無理に推測する必要もなかった。
 どうやら、放っておいても勝手に語ってくれるらしい。
 語りたがっているのが、分かる。

( ´‘J‘`)「ご存知のように、私は入軍した当初、多少なり周囲に騒がれました。
      この苗字のせいですね。ヴィップのフィレンクト=ミッドガルドと同姓でした」
496 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:11:55.57 ID:rolFXjMd0
( ’ t ’ )「親類ではないと聞いていたが」

( ´‘J‘`)「えぇ。もし親族だったとしても、他人と言っていいぐらい遠いものでしょう。
     もちろん面識などありませんでした」

( ´‘J‘`)「当時フィレンクトは、Jの壁すら越えていないのに将校になったことで有名でしたが……
     むしろ私が周囲に名を知られたのは、アルファベットの成長が早かったことのほうが大きかったのです」

( ’ t ’ )「覚えている。それくらいのことは」

 ヴァリュアブル=ミッドガルドは確かに、当時話題のフィレンクトと同姓なことで少し、騒がれた。
 自分も先ほど、名よりも先に姓が頭に浮かんだほどだ。

 しかし当然、それだけでは将校にまで名が届くことはない。
 フィレンクトと同姓であり、尚且つ、アルファベットで早々にJの壁突破を成し遂げたからだった。
 そこはフィレンクトと同じでなくて良かったな、などと声をかける将校もいた。

( ’ t ’ )「しかし、伸び悩んだな、お前は」

 壁を越えた当初は、将校候補にも名が挙がった。
 経験が少ないとのことで昇進は見送られたが、先々を楽しみにされた男だったのだ。

 が、伸び悩んだ。
 JからKへのランクアップに、なんと五年もの時を要したのだ。
 これは、自分が知る限りでは最長の間隔だった。

 普通、Jの壁を突破すれば、Kへは数ヶ月か、長くとも一年程度で到達する。
 ヴィップのモララーなど一ヶ月もかからなかったという話だ。
 それを、五年。周囲から失望の眼差しを浴びせられ、やがて名が忘れられるのも、無理はないというものだった。
503 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:13:59.13 ID:rolFXjMd0
( ´‘J‘`)「伸び悩んだのは、環境のせいですよ、中将」

( ’ t ’ )「環境?」

( ´‘J‘`)「周囲が勝手に寄せた期待のせいです」

 ヴァリュアブルは、わざとらしく肩を竦めた。
 今度は、余裕を見せようとして、それが失敗した形だった。
 余裕など、表情のどこにもない。

( ´‘J‘`)「姓のことと、壁突破が早かったこと……。
      重なった二つの要素が重荷となり……私の成長を妨げたのです」

( ´‘J‘`)「おまけに、名を知られていたせいで、周囲からは浮いた存在となってしまいました。
      これは組織戦である現代の戦では致命的なことですよ」

( ’ t ’ )「……理想の自分になれなかったから、戦うことの意味を考え始めたのか?」

( ´‘J‘`)「いえ、それとは関係ありませんよ」

 そう言ったヴァリュアブルの声に、微かな震えが伴われていたのを、自分は聞き逃さなかった。

( ´‘J‘`)「戦うことの意味について考えたことに、理由などありません。
      強いて挙げるなら、私が戦に生きていたからでしょう」

( ’ t ’ )「"特別な"理由はない、ということか」

( ´‘J‘`)「えぇ」
518 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:16:24.47 ID:rolFXjMd0
 欺瞞に満ちた言葉であることなど、最初から分かっている。
 それでも聞かなければならないのだが、正直、苦痛でしかなかった。

( ´‘J‘`)「先述致しましたように、現代の戦では、個よりも全体としての結果が求められます。
      兵卒が死んだとて気にも留められない。戦に勝つことこそが全てなのです」

( ´‘J‘`)「"そうやって自分を殺してまで、得るべきものとは何か?"」

( ´‘J‘`)「私がそんな疑問に到達したのも、必然と言えるでしょう」

( ’ t ’ )「…………」

( ´‘J‘`)「国家の繁栄、大いに結構です。それを望む民は多いことでしょう。
      しかし、個人のやれることには限界があるのですよ。
      いくら一人で努力しようとも、軍を動かしたりすることはできないのです」

( ´‘J‘`)「個という視点から考えれば、実に、軍も戦も下らないものなのです」

( ’ t ’ )「論理の飛躍だな」

( ´‘J‘`)「いいえ、飛躍などしておりませんよ」

( ’ t ’ )「じゃあベル大将はどうなる、ヴァリュアブル」

 ヴァリュアブルの眉が、少しだけ動いた。

( ’ t ’ )「ベル大将は、一人で軍を動かしていた。一人で戦っていた」

( ´‘J‘`)「存じませんよ、私は。ベル大将にお会いしたことがないのでね」
527 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:18:47.43 ID:rolFXjMd0
( ´‘J‘`)「それに、ベル大将とて天下を統一できたわけではないでしょう」

( ’ t ’ )「だが、お前の持論に普遍性がないことは分かるだろう」

( ´‘J‘`)「…………」

 閉口しかけ、しかし何か言葉を返そうとするヴァリュアブルを無視して、言葉を継ぐ。

( ’ t ’ )「言いたいことは分かるが、お前の持論には決定的に欠けているものがあるんだ。
      確たる論証――――つまり実証さ」

( ´‘J‘`)「……実証?」

( ’ t ’ )「限定的な価値観を、世界というスケールの大きなものに、無理やり押し付けてるだけだ。
      お前の言うことに同調する者も、確かにいるだろう。しかし、対立者を納得させられるような証明がない」

( ’ t ’ )「外堀を埋めるのも面倒だから、核心を突かせてもらう。
      お前はただ、理想の自分になれなかったことから目を背けたいだけなのさ」

 ヴァリュアブルのように、わざとらしく肩を竦めた。
 その動作で、ヴァリュアブルの頭に血が昇るのが、はっきり見て取れた。

( ’ t ’ )「お前はいつか将校に、と思っていただろう。周囲からも騒がれたからな、当然だ。
      でも、なれなかった。アルファベットで伸び悩んだ。
      だからその要因を、外部に求めただけだ」
538 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:20:59.58 ID:rolFXjMd0
( ´‘J‘`)「……違いますね」

( ’ t ’ )「違わない。お前だって本当は気付いているはずなんだ。
      他人を指揮するような立場になりたい。でも、なれない。
      だから弱い民を狙ったんだろう。心の弱い他の兵を誘って」

( ’ t ’ )「自分が強くなれなかった。だから他人の弱みに付け込んだ。
      お前が成長できなかったのは、つまるところ、そんな脆弱な思考を持っていたからだ」

( ’ t ’ )「自分を追い込めなかったからだ」

( ´‘J‘`)「……違う……」

( ’ t ’ )「個人に意味がない、などは自分を納得させるための言葉に過ぎない。
      それに、そんなものは民を虐げることの理由にならない」

( ’ t ’ )「戦うことの意味に関して考えるのはいいことだ。
      だが、そんなことを考えながら弱者を甚振ってどうする。何の答えが出る?」

 僕も、偉そうなことを言える立場じゃないけどな。
 そんな言葉は、とりあえず、喉の奥に封じ込めておいた。
 自分の中だけで処理すればいい。

( ’ t ’ )「軍には敵わない者が多くいた。だから民を狙った。
      それだけの話だろう。いちいち戦がどうの、軍がどうのと語るな」

( ’ t ’ )「事実から目を背けた。違う事実を作りだそうとした。
      だからこそ、お前は――――」

(#´‘J‘`)「黙れ!!」
547 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:23:24.43 ID:rolFXjMd0
 振り上げられる。
 アルファベット、L。

 天井に接しそうなほど、高く。

 そのLが、降りてきた。
 ゆっくり、ヴァリュアブルの手から、滑り落ちるように。

 ヴァリュアブルの、後ろに。

( ’ t ’ )「…………」

 アルファベットが地面に落ちるのと、ほぼ同時に、ヴァリュアブルの体も崩れ落ちた。
 最初に、上半身が。次いで下半身が。
 別たれた二つの体は、音もなく黒血を零している。

( ’ t ’ )(……終わったな……)

 今度こそ、本当に終わった。
 そう思った瞬間、自分の体から熱が失われていくのを感じた。

 ヴァリュアブルのように、どうやら、自分も頭に血が昇っていたようだ。
 自分らしくなかった、と今では思う。
 それでも、言いたいことは言えた。

 安堵と同時に、背中に痛みが走った。
 そういえば、ヴァリュアブルに斬られていたのだ、と思い出す。
 自分が思っていたよりも、深い傷だ。
554 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:25:51.67 ID:rolFXjMd0
 滔々と溢れ出す。
 自分の血など、久しぶりに見た。
 傷つけられる経験など、最近、ほとんどなかったのだ。

(;’ t ’ )(うわっ……)

 視界から色が抜けていく。
 そして、ところどころ、歪む。

 歪んでいるのは、自分の体が、ふらついているからだ。
 思ったより出血が激しい。
 すぐに衣服の袖を破いて、背中に当てた。

(;’ t ’ )(……包帯は、置いてあるけど……)

 不衛生な気がしてならない。
 傷口に当てれば、難なく細菌に侵入を許してしまいそうだ。

 黒ずんだ包帯から目を離し、何か止血に使えそうなものを探したが、ない。
 篭った空気に血の匂いが充満し、気分も悪くなってきた。
 とりあえず、外に出ることにする。

 地上と地下を隔てる扉の上には、雪が積もっているようだった。
 戦っている間にまた少し、降ったらしい。扉が重かった。
 背中から血が過剰に流れ、本来ならば白むはずもない暗闇の中、なんとか木製の扉を押し上げた。

(;’ t ’ )(くそっ……)

 頭が重い。
 地上に這い出たあとは、立ち上がることすらできなかった。
561 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:28:09.03 ID:rolFXjMd0
 だが、いかない。
 倒れているわけにはいかない。

 村には帰らない。
 このまま、去る。そのほうが後腐れがなくていい。
 黙って立ち去るのは、村のためではなく、自分のためだ。

 そう、したいのに――――

(;- t - )「うっ……」

 肩が、地面に接した。
 そして、胸部と腹部が。

 目に見えるのは白銀。
 頬が冷やされているのは、雪のせいか。
 それとも、溢れ出る血が体温を奪っているせいか。

(;- t - )(こんな……傷で……)

 この程度の、傷で。
 倒れている、わけには――――

 もう夜明けが近いはずなのに、何故か、視界は黒味を増しつつあった。
579 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:30:53.85 ID:rolFXjMd0
――フェイト城・南西――

 年明けからは大人しくしてきたが、そろそろ、動きどきだった。
 フェイト城とミーナ城の間で続いている、この戦の終焉も、近いはずだ。

(´・ω・`)「戦が始まる直前に皆を集めたのは」

 一同を見渡した。
 主だった将校は全員揃っている。
 居ないのは、外で調整を行なっているギルバードだけだった。

(´・ω・`)「無論、理由がある」

( ^Д^)「今日の戦については、昨晩の軍議ですべてお話しされたのかと」

(´・ω・`)「今日になって、話さなければならないことが出てきたんだ」

 皆の頭の上に、疑問符が見えるようだった。
 直前に話さなければならないこととは、何か。
 吉報か、凶報か。そんな戸惑いを抱えるのも無理からぬことだ。

(´・ω・`)「皆も知ってのとおり、今日の戦では大攻勢をかけるつもりだが」

 言った瞬間、目を輝かせた男がいた。
 いや、ぎらつかせたと言ったほうがいいか。
 炯々とした光だ。

 昨年末、夜襲に失敗したウィットランドだった。
 ギルバード指揮の許で、別動隊を率い、ヴィップを狙ったが破られた。
 新米将校であるルシファーにやられてしまうという体たらくだった。
592 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:34:19.49 ID:rolFXjMd0
 此度の戦では、先の失敗を是が非でも取り返したいと思っているだろう。
 期待して良さそうだった。

(´・ω・`)「今日の戦で城を奪おうとしているのは、どうもラウンジだけではないらしい」

( ^Д^)「え?」

(´・ω・`)「ヴィップも、逆転の策を練っているようなんだ」

 一座が、ざわめき始めた。
 どういう意味ですか、という声が遠くから聞こえる。

(´・ω・`)「ラウンジが大攻勢をかければ、当然、守りは甘くなる。
      懐に隙もできる。それを、ヴィップは狙ってくるつもりらしいんだ」

( ^Д^)「確かに考えられることですが、その情報は、いったいどこから――――」

 プギャーの言葉を遮るようにして、見せつける。
 一枚の、封筒。

(´・ω・`)「この戦、ラウンジの優勢だったが――――更に、追い風が吹いているらしいな」

 封筒の色は、白。
 この色は、ヴィップ軍内で使われているものとして、知られている。

(´・ω・`)「白い封筒、間違いない」

( ^Д^)「……!!」
610 :第101話 ◆azwd/t2EpE :2008/04/30(水) 22:36:40.38 ID:rolFXjMd0
 皆に聞こえるよう、はっきり言ってから、懐に戻した。
 将校陣の顔が、豹変している。

(´・ω・`)「ヴィップの将校から、内部情報が送られてきたんだ」

 言った瞬間は、水を打ったような静けさ。
 しかし、直後――――

 ――――外にまで漏れるような騒ぎが、幕舎内に広まった。















 第101話 終わり

     〜to be continued

戻る

inserted by FC2 system