415 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:23:17.29 ID:GJpq3tow0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
18歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:ヴィップ城

●('A`) ドクオ=オルルッド
18歳 新兵
使用可能アルファベット:C
現在地:ヴィップ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
28歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
23歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:エヴァ城

●( ,,゚Д゚) ギコ=ロワード
26歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
418 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:25:10.14 ID:GJpq3tow0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
24歳 大尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヴィップ城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
21歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャナ城


〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
33歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ハルヒ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
34歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
37歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ハルヒ城
421 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:27:04.64 ID:GJpq3tow0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー・モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー・シラネーヨ
中尉:
少尉:ブーン・ビロード


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:

大尉:ヒッキー
中尉:
少尉:
425 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:28:55.91 ID:GJpq3tow0
A:
B:
C:ドクオ
D:
E:
F:
G:
H:
I:ブーン
J:
K:
L:プギャー
M:
N:ヒッキー
O:
P:
Q:
R:モララー
S:ジョルジュ
T:ショボン
U:
V:ベル(ラウンジ)
W:
X:
Y:
Z:

427 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:31:14.61 ID:GJpq3tow0
【第10話 : Knowledge】


――ヴィップ城――

 ヴィップ城凱旋。
 アラマキ皇帝が自ら出迎えてくれた。

/ ,' 3「本当によくやってくれました」

 ショボン、ギコ、プギャー、そしてブーンの将校たち一人ひとりに手を差し出す皇帝。
 皺の刻まれた手は、不思議な温かみを持っていた。

/ ,' 3「祝宴の用意も整っていますよ。喜びを分かち合いましょう」

(´・ω・`)「ありがとうございます、アラマキ皇帝」

 初めて姿を見たが、柔和な表情と物腰を持った、細身の老人だった。
 しかし、独特の空気を持っている。近付きがたいような、触れがたいような、そんな空気だ。
 常に高みにいるのを、肌で感じさせられる。

 少し魅了され始めているのが、自分で分かった。

428 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:33:09.66 ID:GJpq3tow0
――ヴィップ城・多目的ホール――

 その後の祝宴では、多くの人に声をかけられた。
 特に新兵だ。
 戦のことや、ショボン、ジョルジュの二大将についてなど、質問内容は多種。
 あからさまに媚を売りにきたやつもいた。
 適当にあしらったが、こんなやつが増えると面倒だった。

('A`)「おう、ブーン。オオカミのミラルド大尉を討ち取ったってな。おめっとさん」

(*^ω^)「ありがとだお!」

 ドクオが酒を片手に話しかけてくれて、ようやく気が楽になった。
 気心の知れた相手と喋るのが、やはり一番楽だ。
 酒が入っていたこともあり、饒舌になった。ドクオは笑っている。

('A`)「それにしても、入軍してからまだ三ヶ月も経ってねーのに、もう敵将を二人討ち取ったのか……。
   お前はどんどん先に行っちまうな。悔しいぜ」

( ^ω^)「でも、周りのほうが凄いから萎縮しちゃうお……あんまり居心地が良いとは言えないお。
     早くドクオと一緒に戦場に立ちたいお。頑張ってほしいお」

('A`)「言われなくたって、やってやるさ。今に見てろよ」

 ドクオの笑みは、軽く見えた。
431 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:35:24.53 ID:GJpq3tow0
――翌日――

――東塔・最上階――

(´・ω・`)「今回は咎めないが、あまり何度も無視してくれるなよ。最善手を示しているんだ」

(;^ω^)「す、すみませんでしたお」

(´・ω・`)「まぁ、結果は最高だったがな」

 ショボンが優しい笑みを浮かべた。
 オオカミ戦でショボンの指令を無視したことを多少窘められたが、気にはしていないようだ。
 胸を撫で下ろせた。

(´・ω・`)「しばらく戦はないぞ。昨日の祝宴で、文官連中に散々小言を言われた。
      せっかく蓄えた兵糧を一瞬で使ってしまったからな……二つ戦線を抱えるのは、やはり厳しいようだ」

( ^ω^)「そういえば、ラウンジ戦は今どうなってるんですかお?」

(´・ω・`)「分からん。ヴィップ城に戻ってきたばかりで、まだ慌しいから情報が整理されていない。
      編成を整えなきゃならんし、各城の配置も見直す必要がある。
      パニポニ城の周りでラウンジの兵がうろついているという情報もあるし……。
      何にせよ、戦をやれる力は今のヴィップにはない。休養の時期だ」

 ショボンが普段、仕事を行う机の上に、書類が山積していた。
 机の後ろに眼をやると、頭が眩みそうなほどの更なる膨大な書類。
 大将にはなりたくない、と思った。
435 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:38:21.20 ID:GJpq3tow0
(´・ω・`)「まぁ、ジョルジュ大将のことだから、兵糧と上手く付き合って戦をやると思うがな。
      文官も必死こいて遣り繰りしているし……ベルが相手な以上、長引く気はする」

( ^ω^)「今のところ、あれ以来戦はないんですかお?」

(´・ω・`)「そのはずだ。ラウンジが動きを見せないらしいからな」

 ショボンが椅子に腰掛けた。
 視界を埋める書類に、溜息を吐く。
 首を上下左右に動かし、筆を取って書類に何かを書き込んでいく。

(´・ω・`)「今回の戦はお前にとってかなり大きかったはずだ。初めての指揮だったからな」

(;^ω^)「でも、失敗ばっかりでしたお……」

(´・ω・`)「誰でも失敗はするさ。大事なのは今後にそれを活かすことだ」

( ^ω^)「……はいですお!」

 机から零れ落ちた数枚の書類を拾い集め、机の上に乗せた。
 ありがとう、とショボンが小さく言った。

(´・ω・`)「しかし、入軍して以来、お前にはアルファベットの訓練ばかりさせてきたからな……。
      他の新兵と比べても、知識が欠如しているのは否定できないな」

(;^ω^)「……それは、ブーンも感じてましたお……」

(´・ω・`)「しばらく戦はない。この機会に、色々勉強してみろ。
      書物室や資料室に行けば大抵の知識は手に入るしな。
      それから、アルファベットについても勉強してこい」

436 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:40:42.19 ID:GJpq3tow0
( ^ω^)「アルファベットですかお?」

(´・ω・`)「知らないことが多いだろうしな。実はもう、この上ない講師に話をつけてあるんだ」

( ^ω^)「……この上ない講師?」

 ショボンが微笑んだ。


――帰らずの森・小屋前――

 木製の扉をノックすると、中から慌しい音が聞こえた。
 すぐに扉が中から開かれる。軽く息を切らしたツンが姿を現した。

ξ*゚听)ξ「こ、こんにちは!」

(;^ω^)「こ、こんにちはですお」

 心なしか、頬が赤らんで見えた。
 急いだせいで体が暖まっているのだろうか。

ξ*゚听)ξ「わ、私は忙しいんだからね! 感謝しなさいよね!」

(;^ω^)「あ、ありがとうございますお」

 そそくさと中に入っていくツン。入っていいのか一瞬分からなかったが、後についていった。
 小さな小屋の中央のテーブルに、茶と菓子が置かれている。
441 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:43:07.44 ID:GJpq3tow0
(;^ω^)「気遣っていただいてすみませんお」

ξ*゚听)ξ「……べ、別にブーンくんのために用意したんじゃないんだから!
       貰い物が余ってて、腐らせるのももったいないから……それだけなんだから!」

 ツンが椅子を引いて、座った。
 頬の赤みはまだ抜けないままだ。

ξ゚听)ξ「少尉になって、敵将を討ち取ったんだってね……おめでとう」

(*^ω^)「ありがとうございますお! ツンさんのおかげですお!」

ξ*゚听)ξ「え……え、そんな……わ、私なんて……」

(*^ω^)「ツンさんのアルファベットは凄いですお! 初めて持ったIも、すぐに馴染みましたお!
     おかげで敵将のミラルドを討ち取れましたお!」

ξ///)ξ「わ、私の力じゃないわよ……ブーンくんが頑張ったからでしょ……」

( ^ω^)「ブーンの頑張りだけじゃ、とても無理でしたお……本当にありがとうございますお!」

 ツンは一層頬の赤みを増させ、ぼそぼそと何かを呟いていたが、聞き取れなかった。

 その後、雑談などで過ぎていく時間。
 ツンが小さいときからアルファベットを作っていることを知り、二十六にして世界一になった所以も分かった。
 まだ若いのだし、本当はもう少し遊びたいのではないかと思ったが、仕事は楽しいらしい。
 嬉しそうに喋るツンを見ていると、心が癒された。
445 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:45:22.26 ID:GJpq3tow0
ξ゚听)ξ「っと……雑談ばっかしてるわけにもいかないわね。今日は勉強に来たんだもんね」

( ^ω^)「あ、はいですお! よろしくお願いしますお」

 ツンが姿勢を正した。
 つられて、ブーンも姿勢を正す。変な緊張感が生まれた。

ξ゚听)ξ「アルファベットが最初に作られたのは、紀元前300年〜200年ごろと言われてる」

( ^ω^)「700年以上前ですかお……?」

ξ゚听)ξ「えぇ。その頃、戦争があったの。全土を巻き込むような、大戦がね。
      そこで使われたのがアルファベット。絶大な威力で、かなりの人が死んだらしいわ。
      でも、大戦だったこともあって、アルファベットに関する資料はほとんど残らなかったの」

 ツンが湯飲みを傾けた。
 机に置いて、言葉を続ける。

ξ゚听)ξ「アルファベットは人に手に触れないまま三日ほど放置すると形を崩してしまう。
      だからその大戦が終わったあと、アルファベットは全部失われてしまった。
      それ以来、アルファベットは生産されることもなく時を経た」

( ^ω^)「……再登場したのは、いつなんですかお?」

ξ゚听)ξ「469年。今から45年前ね。古史の研究者がアルファベットについての資料を発見して作った。
      でも、いきなり作れたわけじゃないの。資料にはアルファベットの形しか書いてなかったから、分かんない部分が多くてね」

( ^ω^)「じゃあ、どうやって……?」
449 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:47:31.17 ID:GJpq3tow0
ξ゚听)ξ「α成分を混ぜ込んだのよ。それが資料に書いてなかったから、研究者は四苦八苦したらしいけど。
    そうやってAを作ってみたら、これがビックリ。途轍もない切れ味だったの。
    だけどアルファベットはすぐに戦争に用いられたわけじゃない。研究者が公開してなかったから。
    戦争で使われたのは491年。まだ23年前のことよ。ラウンジのベルが最初に使ったと言われてるわ」

 ファットマンの顔が頭に浮かんできた。
 あれは偽者だったが、容姿はベルに酷似しているという。

ξ゚听)ξ「α成分っていうのは、α鉱石が元になって作られる成分。火で溶かしてアルファベットに混ぜ込む。
    アルファベット職人にとっては一番厄介な作業ね。使えないアルファベットには触れられないわけだし」

( ^ω^)「じゃあ、ツンさんはショボンさんのTも扱えるんですかお?」

ξ゚听)ξ「そんなわけないじゃない。一応Lまでは使えるけど、それ以上は無理。
    でもα成分を混ぜ込むのは最終工程だし、混ぜてしまえば触れずに作業を終えられるから大丈夫よ。
    何かあったときに触れられないのは困るときもあるけどね」

( ^ω^)「触れずに、作業を……?」

ξ゚听)ξ「α成分を混ぜ込むって言っても、要はアルファベット全体に垂らして塗布するだけだからね。
    ただ、熱い窯の中でやらなきゃいけないから、最初は辛かったわ……もう慣れたけど」

 ツンの手を見つめた。
 よく見ないと分からないが、薄っすら火傷の跡がある。
 しかし、だいぶ古そうなところを見ると、最近はあまり火傷していないようだ。

ξ゚听)ξ「でも、扱えないアルファベットも、厚手の手袋を嵌めれば持つことはできる。
    ただ、アルファベットとしての性能は発揮できない。アルファベットは素手で持つ必要があるわ。
    素手じゃなきゃ、ただ単にアルファベットの形をした武器だから」
452 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:49:46.00 ID:GJpq3tow0
(;^ω^)「そうなんですかお? 知りませんでしたお……」

ξ゚听)ξ「誰も手袋してアルファベットを握ってないでしょ?
    α成分は人間とリンクする不思議な成分。素手じゃないとα成分とリンクできないのよ。
    その理由は分かってない。α成分は特質なのよ。
    アルファベットの発熱が、外皮からじゃなくて内側からによるもの、って部分なんて特にね」

( ^ω^)「あっ……そういえば、ブーンが最初に触れたとき……
     手のひらが熱いっていうより、手全体が熱く感じましたお」

ξ゚听)ξ「そうなのよ。あれは体の内部からの熱さだから。
    まぁ、だからこそ無理やり持つこともできない、厄介な代物なんだけどね」

 ツンが菓子を口に放った。
 口をもごもごさせながら、更に説明は続く。

ξ゚听)ξ「Aが最弱でZが最強、ってのは知ってるわよね?」

( ^ω^)「もちろんですお」

ξ゚听)ξ「理由は、α成分の含有量によるものよ。つまり、Aが最小でZが最大なの。
    Aは大さじ二杯程度のα成分しか含まれてない。大量生産も容易ね。
    だけど、Tなら樽一つじゃ足りないくらい。コストも高いわ」

( ^ω^)「……そういえば、アルファベットの形って固定なんですかお?
     このIも、全部この形なんですかお?」
454 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:52:00.59 ID:GJpq3tow0
ξ゚听)ξ「そうよ。過去の資料に記されている形なの、全て。
    もちろん、別種を作ってみようという動きはあった。私も作ったことがあるわ。
    だけど全然ダメ。既存のアルファベットと比べると、性能が段違い。
    ついでに言うと、過去の資料に記された形を忠実に再現するのがアルファベットでは大切なの。
    その形からのズレが大きければ大きいほど性能は落ちる。
    ヴィップ城の地下にある生産所では再現がおざなりだから、性能があまり良くない。
    職人がきっちり理想の形を頭に叩き込んで、再現させないとね」

( ^ω^)「つまり、この世界で一番理想の形に近づけるのがツンさんなんですかお?」

ξ゚听)ξ「まぁ、ありがたいことにそういう評価を頂いてるわね。
    だけど、まだまだ精進しなきゃ。いずれは全てのアルファベットを作るのが目標だしね」

( ^ω^)「Zまでは作れないんですかお?」

ξ゚听)ξ「作ったとしても、それがアルファベットとして機能するかどうか、確かめようがないわ。
    469年以降、W以上のアルファベットを操った人は存在しない。
    私も作ったことがあるのはUまでよ。V以上は作れるかどうか分からない。
    資料とかを見る限り、Xまでは作れると思ってるんだけどね。
    早くショボン様がそこまでいってくれないかなーって思ってるわ」

( ^ω^)「……そういえば……ツンさんは、ジョルジュ大将のアルファベットも作ってるんですかお?」

ξ゚听)ξ「??? 当たり前じゃない。
    私はヴィップ国軍からの依頼は断らないわよ。
    誰からどんな要求が来ても、報酬さえ払ってもらえれば仕事するわよ。
    まぁ、口説こうとしてくるのだけは勘弁してほしいけど……」

(;^ω^)「ジョルジュ大将がですかお?」
457 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:55:09.90 ID:GJpq3tow0
ξ゚听)ξ「来るたびに、私を側室にしようとしてくるのよね……。
    ジョルジュ大将は男前だけど、私年上に興味ないから、困るのよ……」

 物憂げな表情を浮かべていた。
 笑顔も純美だが、この表情もまた違った美しさを秘めている。

( ^ω^)「他の疑問、いいですかお?」

ξ゚听)ξ「遠慮なくどうぞ」

( ^ω^)「アルファベットの強さはα成分の含有量で決まる、ってことは……
     Aにも大量のα成分を混ぜ込めば、それでオッケーじゃないんですかお?」

ξ゚听)ξ「ダメなのよ。それぞれに基準量があるから。
    その基準量の見定めもアルファベット職人の腕の見せ所。
    基準量をオーバーすると、アルファベットが形を保っていられなくなるからね。
    かといって少なかったりすると、アルファベットの性能を完全に発揮できなくなる……。
    α成分の注入はアルファベット作成作業の中で一番難しいわ」

( ^ω^)「なるほどですお……じゃあ、もう一個質問ですお。
     強いアルファベットを持てるようになるには、どんな条件があるんですかお?」

ξ゚听)ξ「一番は、アルファベットの扱いに長けていること。
    アルファベットに触れて、扱っていればそのうち上位アルファベットにいけるわ。
    もちろん、身体能力も関わってくる。α成分は人とリンクするからね。
    筋肉の発達とか、反応の良さとか、そういうのも必要になってくるわね」

( ^ω^)「アルファベットと普通の武器の違いは?」
459 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 21:58:49.43 ID:GJpq3tow0
ξ゚听)ξ「威力と硬度よ。威力は比べ物にならないし、耐久性も高い。
    戦争では普通の武器を使う人はまずいない。当然のことだけどね。
    いくらアルファベットが扱いづらい武器と言っても、大抵の人は努力すればIくらいまでは握れるようになるわけだし」

(;^ω^)「そうなんですかお?」

ξ゚听)ξ「Jの壁、って聞いたことない? IからJに上がるのはアルファベットの難関よ。
    ブーンくんは今Iだから、ちょうど壁の前ね。Jに上がるのは苦労するわよ。
    国軍の将校っていうのは、基本的にJ以上を扱えることが条件だから。
    ブーンくんは特別だったみたいだけど、まぁJは突破するでしょうしね……。
    ちなみにSの壁もあるわ。RからSに上がるのはかなり難しい。
    ショボン様やジョルジュ様が別格なのは、S以上を扱えるからなの」

( ^ω^)「ほぇー……なるほどですお」

 窓から西日が射し込んだ。
 いつの間にかかなりの時間が経っているようだ。
 他の疑問をぶつけようと思ったが、浮かんでこない。
 ツンの表情に疲れが見えた気がして、椅子から立ち上がった。

ξ゚听)ξ「……もう帰るの?」

( ^ω^)「長いことお仕事の邪魔をするのも申し訳ないですお。
     今日はありがとうございましたお! いっぱい勉強になりましたお!」

ξ*゚听)ξ「……ま、まぁたまになら……また、来てもいいわよ……。
     暇だったら相手してあげるわ……」

(*^ω^)「ありがとうございますお!」
461 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 22:01:18.42 ID:GJpq3tow0
 深々と頭を下げて、扉の取っ手を握る。
 扉を開こうとしたとき、ツンに腕を引っ張られた。
 振り返る。その表情は、切羽詰っているように見えた。

 漂う、不穏さ。

(;^ω^)「……どうか、したんですかお?」

ξ )ξ「……あの……ね……」

 ツンの口が、開閉を二度繰り返した。
 そして顔を俯け、唇を噛みしめる。

ξ゚听)ξ「……弱いアルファベットは、強いアルファベットに当たると破壊される恐れがあるわ……。
    強い敵と当たる場合は気をつけてね……」

(;^ω^)「……? はいですお……」

ξ゚听)ξ「じゃあね……」

 閉ざされる扉が、二人を隔てた。

 ツンは、本当に今の一言を言おうとしたのだろうか。
 空気が違った。アルファベットについて語る雰囲気ではなかった。
 しかし、ツンの口から出てきたのは大したことのない情報だ。

 甘い空気があったわけでもない。
 何か、秘め事を打ち明けようとしたような、そんな気がした。
 しかし、ツンは口を噤んだ。言葉を、変えた。そう思った。

462 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 22:03:38.71 ID:GJpq3tow0
(;^ω^)(ツンさん……)

 森の土に残る足跡は、中々消えずに残っていた。


――夜――

――ヴィップ城・書物室――

 夕飯を食べ終えたあと、夜の調練に参加して、それから書物室へ向かった。
 ショボンに国史や戦史を調べるよう言われていたからだ。

( ^ω^)(……こういうやつかお?)

 ヴィップ国の歩み、と書かれた本。
 分厚い本に目眩がしたが、とりあえず脇に挟んだ。
 他にも、大陸史や各国の戦争の歴史についてまとめられた本などを一応手に取る。
 読むかどうかは分からないが、とにかく持ち帰ってみようと思ったのだ。

( ^ω^)(まぁ、書物室はこれで良さそうだお……)

 借り出しの手続きをし、本を紐を縛って抱えた。
 全部で四冊。さほど多くはないが、持ち歩くのも億劫だった。
 しかし、将校の居室が並ぶ五階に一旦戻るのは更に面倒だ。
 資料室は同じ三階にある。

( ^ω^)(資料室には何があるのかお……)
463 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 22:06:21.68 ID:GJpq3tow0
 資料室の扉を開いた。
 埃っぽい室内は薄い明かりに照らされている。
 人の気配も、わずかながら感じとれた。

 ブーンの背丈よりはるかに高い棚がいくつも並んでいる。
 脚立が側に置いてあり、上の方にある資料も取れるようになっていた。
 しかし、何年も誰も触れていないのではないか、と思えるほど埃が堆積している。
 とても閲覧してみる気にはなれなかった。

(;^ω^)(……っていうか……特に目的がないお……)

 書物室と違い、探したいものがあって来たわけではない。
 ショボンに行ってみろと言われたから来たまでで、目的はなかった。
 若干気が楽になり、適当にうろついてみることにした。

 歩き回ってみると、思ったより興味深い資料が多かった。
 過去の戦についての、詳細な資料があったりしたのだ。
 二年前、エヴァ城を失った際のオオカミ戦や、九年前にハルヒ城を奪った際の詳細データ。
 ハルヒ城をジョルジュが総指揮して奪取したことは、今初めて知った。
 恐らく、国史について記された本を読めばそれも書いてあるのだろう。

 他の戦の資料について探していると、十五年前のオオカミ戦の資料を見つけた。
 ヴィップ軍の総指揮官はモナー。
 会ったことはないが、軍内では最古参の中将だ。
 昔は総大将だったそうだが、年齢による衰えを理由に大将位はショボンに譲ったらしい。

( ^ω^)(……ん? 十五年前の、オオカミ戦?)
465 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 22:08:58.24 ID:GJpq3tow0
 はっとした。
 十五年前。とーちゃんが、戦死した年だ。
 オオカミ戦だったと聞いた。恐らく、この戦だ。
 何か、書いてあるかも知れない。

(;^ω^)(戦死者リスト……)

 とーちゃんが将校だったという話は聞いたことがない。
 戦に応じて位を与えられ、戦が終わると消える役職の、軍曹だったらしい。

 将校の下には部隊長があり、以下軍曹、曹長という位がある。
 普段から与えられる位ではないので、平時には兵卒と同等の扱いだ。
 しかし、将来的には将校に上がる可能性がある役職だという。

 戦死者リストを一つ一つチェックした。
 ベーン=トロッソ。その名前が、どこかにあるはずだ。
 埃っぽさに時々咳き込み、古紙独特の匂いに耐えられず、鼻からの呼吸を止めながら、必死で探した。
 戦死者全員について書かれているため、リストは膨大だ。

( ^ω^)「……あったお!!」

 見つけた。ベーン=トロッソの名を。
 やはり、十五年前のオオカミ戦だった。

 八月二十日。オオカミのマリミテ城を攻めていたときのことらしい。
 モナーの近衛騎兵として戦い、原野戦にて戦死。
 果敢に戦い抜いたと記されている。

( ^ω^)(……とーちゃん……)
468 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 22:11:33.12 ID:GJpq3tow0
 短い記述だが、確かにとーちゃんが居たこと、戦ったことが書き残されている。
 それが、何故か嬉しく思えた。

( ^ω^)(……とーちゃんの仇は、ブーンが討つお……)

 敵軍について調べ始めた。
 十五年前だ。とーちゃんの軍と戦った敵将は、もう居ないかも知れない。
 だが、名を知りたかった。
 そして、もし生きているなら、必ずいつか打ち勝ってみせる、と思っていた。

( ^ω^)(八月二十日の戦……あったお)

 八月二十日の、マリミテ城付近の戦。
 原野戦を行った敵将の名が、仇敵の名が、書かれていた。

 見知った名前が。

(;^ω^)「……えっ……」
472 :第10話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/15(月) 22:13:44.47 ID:GJpq3tow0
 ただの同姓同名だと、思いたかった。
 同時に、そんなはずはないとも感じた。


 敵将、ジョルジュ=ラダビノード大尉。


 はっきりと、そう記されていた。












 第10話 終わり

     〜to be continued

戻る

inserted by FC2 system