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名前: ◆hb8Q6YeeDk:2012/06/05(火) 18:57:03 ID:XeEvIbEM0
山小屋を見つけたのはいいが、問題はその中にいた者たちだった。
一宿一飯だけ頼みたかったが、ことは上手く運ばない。
山小屋の中には六人の男たちと、一人の少女がいた。
少女は柱にもたれかかり、淡い桃色の着物をはだけさせていた。
一人の男が全裸で、彼女の顔めがけて腰を振っていた。
( ・∀・)「邪魔しちゃったかな」
男たちが農民でないのは一目瞭然だった。
ぎらついた目をした男たちの一人が、伸ばしっぱなしの髭を撫でながら言った。
- 18
名前: ◆hb8Q6YeeDk:2012/06/05(火) 18:59:41 ID:XeEvIbEM0
(’e’)「有り金全て寄こせ。その袴も脱げ」
男たちは山賊の類だろうと思われた。
少女はどこからかさらってきたものだろう。
( ・∀・)「それは困る。邪魔するつもりもないし、帰るよ」
モララーは軽い感じで言い返し、踵を返した。
背中に殺気を感じた。
振り返るよりも先にモララーは抜刀していた。
- 19
名前: ◆hb8Q6YeeDk:2012/06/05(火) 19:03:52 ID:XeEvIbEM0
振り向き様に一太刀、匕首を振りかぶっていた男の両腕を薙いだ。
血の一閃が宙で弾け、床に落ちるよりも前に返しの太刀で男の顔を切り裂いた。
骨にまで達した斬撃は、即死とはいかなくても致命傷となった。
山賊たちは思い思いの武器を手に取り、モララーへ襲いかかった。
不用意に間合いをつめた二人の男は、一人は首を飛ばされ、もう一人は肩から股下にかけて斬り捨てられた。
(;’e’)「囲め!」
おそらく首領であろう男が叫ぶ。
しかし遅かった。
モララーの突きが一人の男の胸に突き刺さり、一度刀を引いてから振り上げられた太刀に胸と顔を斬られた。
- 20
名前: ◆hb8Q6YeeDk:2012/06/05(火) 19:10:10 ID:XeEvIbEM0
焦ったのか、男が不細工な悲鳴を上げながら長脇差しで突進してくる。
刀身を器用に使い、攻撃をいなしてから男の喉を切り裂いた。
喉の傷口と、開きっぱなしの口から、鮮やかな色の血を吐き出しながら、虚ろな目で男は倒れた。
(;’e’)「名前を聞かせろ」
モララーが首領だと感じた男が、八双の構えを崩さずに尋ねてきた。
この中では唯一剣の心得がありそうだった。
( ・∀・)「モララーだ」
山賊の男は甲高い叫びを上げながらモララーへと駆け込んだ。
- 21
名前: ◆hb8Q6YeeDk:2012/06/05(火) 19:14:55 ID:XeEvIbEM0
二度、三度、男は太刀を浴びせたが、寸前の所でモララーは見きっていた。
身の躱し方が上手いのではなく、目がよかった。
山小屋の中にはむしろが引いてあり、男がむしろの上に足を踏み降ろしたとき、
一瞬であったが足を取られた。
次の瞬間には、男の頭頂に振り下ろされた太刀が、左脇腹を駆けていった。
濃い血の臭いが立ちこめる。
土がむき出しになった土に、血と内臓が混じり墨のように黒く濁った。
( ・∀・)(面倒なことになった)
- 22
名前: ◆hb8Q6YeeDk:2012/06/05(火) 19:17:14 ID:XeEvIbEM0
残骸となった男たちの後ろに、俯いた少女の姿が見える。
先ほどまで男たちの慰み者にされていただろう少女だが、いっそ自分に斬りかかってきてくれないかと
モララーは考えていた。
面倒は何よりも嫌いだった。
だが関わってしまったことを、途中で投げ出すことはそれ以上に嫌っていた。
( ・∀・)「無事か」
モララーは少女の傍に腰を下ろした。
はだけた着物から乳頭が見えていた。
胸は真っ平らで、顔も幼いので十か十一くらいの小娘だと思った。
- 23
名前: ◆hb8Q6YeeDk:2012/06/05(火) 19:19:33 ID:XeEvIbEM0
少女はゆっくりと顔を上げた。
その時初めて周りの惨状に気がついたのか、男たちの死体を見て小さな悲鳴を上げた。
(*;゚∀゚)「……」
( ・∀・)「俺が斬った。お前は自由だ。帰れる場所があるなら帰るといい」
しばらく返事を待ったが、一向に口を開かない。
腹が減って苛々していた所でもあるので、犯してやろうかとも考えたが、
女を抱けるほど体力の余裕も無かった。
(*゚∀゚)「侍の人?」
- 24
名前: ◆hb8Q6YeeDk:2012/06/05(火) 19:22:29 ID:XeEvIbEM0
もうしばらくして少女はやっと口を開いた。
憔悴しているかと思ったが、声を聞く限りはまだ元気がありそうだった。
( ・∀・)「ただの浪人だ」
(*゚∀゚)「ねえ。オレを抱ける?」
モララーは面食らって答えに詰まった。
少女は着物の裾を割り、股を開いてみせる。
―――目を見開いた。
股間には、少女ではなく、少年であるという証がついていた。
- 25
名前: ◆hb8Q6YeeDk:2012/06/05(火) 19:25:23 ID:XeEvIbEM0
( ;・∀・)「お、男……」
(*゚∀゚)「うん。こいつらは、オレを買ったんだ」
( ・∀・)「金を払うような輩じゃないぞ」
(*゚∀゚)「そうなんだ。だから困ってた。助かったよ」
( ・∀・)「とにかく、すぐに帰れ」
(*゚∀゚)「家なんて無いよ」
モララーは深いため息をついた。
いっそ傍に転がっている山賊たちが蘇って、目の前の少年を斬り殺して欲しかった。
- 26
名前: ◆hb8Q6YeeDk:2012/06/05(火) 19:29:48 ID:XeEvIbEM0
(*゚∀゚)「オレ、どうしても路銀がいるんだ」
( ・∀・)「どこに向かってる?」
(*゚∀゚)「美府だよ」
訊かなければよかったと後悔する。
モララーが行こうとしていた先もまた、美府だからだ。
( ・∀・)「……とりあえず、ここを出るぞ」
(*゚∀゚)「うん」
少年がモララーの腕を掴んできたので、軽く振り払って山小屋を出た。
モララーの後を追って小さい歩幅でついてくる。
- 27
名前: ◆hb8Q6YeeDk:2012/06/05(火) 19:33:50 ID:XeEvIbEM0
( ・∀・)「俺はモララー。名は?」
(*゚∀゚)「つー」
( ・∀・)「俺も美府に向かってる。何かの縁だ。一緒に来い」
つーの顔がぱっと明るくなった。
嬉しそうに何度も頷くと、少年にしては長い髪がさらさらと縦に揺れた。
親はどうした、家はどうした、聞きたい気持ちはあったが堪えた。
面倒事は嫌いであった。
モララーは袴についた血を洗うために、ひとまず近くに流れている小川へ向かった。
血の臭いは、面倒事の次に嫌いである。
二輪「美府へ向かう者たち」
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