323 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 13:56:33.80 ID:tmrG3lqt0
('A`)「そっか・・なら、まあいいんだけど」

ξ゚听)ξ「・・・・・・」

('A`)「で、どこへ行けばいいの?」

ξ゚听)ξ「あの・・・できればここから、できるだけ遠いところ・・・」

('A`)「へ?」

ξ゚听)ξ「あ、あの迷惑だったら、どこかの駅かバス亭でもいいの」

('A`)「いや、どうせ俺暇だし、どこでも送ってくけど」
325 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 13:58:23.78 ID:tmrG3lqt0
ξ゚听)ξ「じゃあ・・・このまま北へ行ってほしいの」

('A`)「北?・・・君、旅行かなんかしてるの?」

ξ゚听)ξ「うん・・・・まあ、旅行・・・みたいなもの」

('A`)「ふぅん・・・ま、なんか訳ありって顔してるから、これ以上聞かないでおくわ」

ξ゚听)ξ「ありがとう」

('A`)「別に礼言わなくてもいいよ」
328 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 13:59:56.84 ID:tmrG3lqt0

男の名前はドクオと言った。年は25のようだ。

最初は無口そうに見えたけど、意外にもよく話す男だった。

ξ゚听)ξ「今日は仕事に向かう途中とかじゃなかったの?」

('A`)「仕事? いや俺さ、無職なんだ。いわゆるNEETってやつ」

ξ゚听)ξ「そうなの?」

('A`)「うん、いつも朝方にドライブするんだ。朝は空いてるからさ。で、今日はなんだか飛ばしたい気分だったから高速乗ったわけよ」

329 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 14:03:06.66 ID:tmrG3lqt0
ξ゚听)ξ「そうなんだ・・・」

('A`)「したら、事故ってる車見つけてさあ、これはヤバイと思って止めたわけ。んでそれが君だったってわけ」

ξ゚听)ξ「そっか・・・」

('A`)「ところで君さ、名前何ていうの? なんか名前呼ばないと会話しにくくてさ」

ξ゚听)ξ「えっ・・あたし?・・・えーっと・・・」

一瞬ドキッとした。もしかしたらもうニュースかなんかで、わたしの名前を報道しているのかもしれない。


330 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 14:05:12.19 ID:tmrG3lqt0

ξ゚听)ξ「えっと・・・その・・」

('A`)「・・・・ああ言いたくないなら別にいいや。こっちもそれほど知りたいってわけじゃないし」

ξ゚听)ξ「ごめんなさい」

('A`)「別にいいよ。それより久しぶりに女の子と話せて、俺テンション上がってるわ」

ξ゚听)ξ「え?」

('A`)「いやー俺さ、ドライブと買いもんくらいしか家から出ないからさ。あんま人と話す機会ないわけ」

331 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 14:08:06.26 ID:tmrG3lqt0

ξ゚听)ξ「そうなんだ・・・」

('A`)「ところで君いくつなの? 年くらいは教えてくれてもいいだろ?」

ξ゚听)ξ「・・・・21」

('A`)「へー若いね。学生?」

ξ゚听)ξ「うん・・・」

('A`)「・・・そっか、ま、なんか知らないけど、くじけずにがんばれよ」

男、ドクオはそう言うとセブンスターを取り出し、口にくわえた。
336 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 14:11:18.44 ID:tmrG3lqt0

きっとわたしのことを、失恋して旅に出た女とでも勘違いしているのだろう。

でもわたしとしては、その勘違いはありがたかった。

できればずっとそう思っておいてほしい。

ξ゚听)ξ「ちょっとだけ寝てもいいかな?」

337 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 14:11:59.17 ID:tmrG3lqt0
('A`)「ああ、いいよ。トイレとかお腹すいたらいつでも言ってくれ」

ξ゚听)ξ「ありがとう」



そう言うとわたしは目を閉じた。

時折かすかに体に伝わってくる振動が、なんだかとっても気持ちよかった。

ジープはわたしとブーンを乗せ、北上する。

338 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 14:14:01.77 ID:tmrG3lqt0

夢を見る。ブーンの夢だ。

ブーンと付き合ってたころは、ブーンの夢なんか一度も見なかったのに。

なんで今になって、こんなときに、ブーンの夢なんか見るんだろう。



その夢でブーンとわたしはコインランドリーの管理人になっていた。

ぐるぐる回転するドラム式の乾燥機を眺めながら、ブーンとわたしは色んな話をする。


339 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 14:19:53.61 ID:tmrG3lqt0
ξ゚听)ξ「ねえ、ブーン、あの洗濯機の中の洗濯物になれたら幸せじゃない?」

( ^ω^)「なんでだお?」

ξ゚听)ξ「だって一緒に絡まりあって、一緒に綺麗になっていくじゃない?」

( ^ω^)「そう言われればそうだお」

ξ゚听)ξ「少しづつ痛んだり、色あせたりしていくけど、それでも汚れるたびにああやって綺麗にしていくの、一緒に」

( ^ω^)「人生は洗濯機の中の洗濯物であるってことかお?」

ξ゚听)ξ「あたし、幸せってそういうものだと思うの」
342 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 14:29:28.75 ID:tmrG3lqt0

目を開けるとなぜか涙がいっぱいたまっていた。

わたしは涙をぬぐって、ゆっくりと息を吐いた。



わたしはブーンが好きだったのだろうか?

おそらく好きだったのだろう。好きでもないやつと何年も付き合えるはずがない。

でも惚れてはいなかった、決して。

わたしはブーンの素直さや優しさは好きだった。

でも一人の男として、生涯愛し続けていけるほどの魅力は感じなかった。

だからこそ他の男を好きになり、ブーンと別れようと思った。


じゃあ、わたしはなんで泣いてるの? この涙は何?

それでも涙はとめどなくあふれ、頬を伝いシートに落ちていった。
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 20:31:33.72 ID:T9QdBisC0

('A`)「よお、目覚めたかい?」

気がつくとドクオが助手席の窓からのぞいてる。

どうやらここはコンビニの駐車場のようだ。

いつのまにか高速を出ていたらしい。

わたしはあくびをして、ごまかしながら、さっと涙を拭った。

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 20:33:07.23 ID:T9QdBisC0

('A`)「パンとか飲み物買ってきたけどいる?」

ξ゚听)ξ「あ・・・ありがとう」

ドクオはわたしにビニールの袋を手渡すと、再びコンビニの中へ行ってしまった。

食欲なんかまったくなかったけど、クリームパンをひとかけらちぎって口に入れたみる。

ξ゚听)ξ「・・・甘い」

そういえばわたし菓子パンが嫌いだったんだ。

ξ゚听)ξ「でも、ブーンはよく好きで食べてたよね? クリームパン」
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 20:36:14.33 ID:T9QdBisC0
ねぇブーン? と、わたしが後ろを振り返ろうとしたとき、いつのまにかドクオが戻ってきて、車のドアを開けていた。

('A`)「・・・へ? ブーンって誰?」

ドクオは変な顔をしながら、こっちを見ている。

ξ゚听)ξ「あ・・・ううん・・・なんでもない」

マズい・・・変に思われたかもしれない・・・。

('A`)「あ・・・ああ・・・」

ドクオは生返事を返しながら、運転席に乗り込んだ。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 20:38:48.98 ID:T9QdBisC0
なにかフォローをしなければと思いながらも、うまく言葉が出てこない。

('A`)「あのさ・・・」

ξ゚听)ξ「は、はい・・・」

('A`)「今は辛いかもしれないけどさ・・・きっとこれ乗り越えたらいいことあるから」

ξ゚听)ξ「・・・・・・・」

('A`)「だから、絶対負けたらたらダメだ・・・あ、そうだ、これ飲んで元気出せ」

そう言うとドクオはコンビニの袋の中から、不透明な液体が入ったビンを取り出した。

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 20:44:22.55 ID:T9QdBisC0

そのビンには「超力水」と書かれたラベルが貼ってあった。

ξ゚听)ξ「ちょー・・・りき・・・・・・すい?」

('A`)「いいから飲め。元気でるから」

ξ゚听)ξ「あ、どうも・・・」

どうやらまた何か勘違いしてくれているようだった。ドクオは根っからの善人らしい。

今度は少し申し訳ない気分になりながら、わたしはビンを傾けた。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 20:45:49.56 ID:T9QdBisC0
('A`)「さて・・・どうするよ」

ξ゚听)ξ「え?」

('A`)「ん、いやさ、ただ北へ行くって言っても、まさか最北端まで行く気じゃないだろ?」

ξ゚听)ξ「うん、それはそうだけど・・・」

('A`)「じゃあ、当てもなく行くよりどこか目的地を決めようぜ」

ξ゚听)ξ「うん・・そうね」

('A`)「つーわけで地図買ってきた」

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 20:47:27.37 ID:T9QdBisC0
ドクオはコンビニの袋から地図を取り出しす、バサッと広げた。

('A`)「さてどこ行きますか」

ξ゚听)ξ「えーっと」

この際どこでもよかった。少しでも遠くへ行きたかった。少しでも・・・。

ξ゚听)ξ「じゃあここ」

('A`)「へ!?」
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/21(金) 20:51:28.64 ID:T9QdBisC0
わたしが指差した先は、本州から遠く離れた小さな島。

地図上では豆粒のように小さく載っていて、よほど注意して見ないとわかららない。

('A`)「ここ!? ははは・・・いいねえ・・・」

ξ゚听)ξ「お金なら出すから・・・ねぇ、ダメ?」

少し甘えた声を出してみる。

本当こんなやり方はイヤだったけど、手段を選んでる余裕なんてなかった。

(*'A`)「お、おう、まあどうせヒマだし、いいか・・・」

 

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