- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:07:44.37 ID:b3WNFq2M0
( ^ω^)「じゃ死んでお。僕と一緒にコレ飲んで死んでくれお」
そう言うと彼は、わたしの前に白い錠剤の詰まったビンを差し出して、しゃかしゃかと振った。
( ^ω^)「これがばーって飲めば楽に死ねるからお。ブーンと一緒に飲もうお」
ξ゚听)ξ「・・・は?」
( ^ω^)「だからこれ飲めば一瞬で死ねるんだお」
ξ゚听)ξ「何言ってんの?」
( ^ω^)「ちょっと高かったけど、ツンのために買ったんだお」
わたしは急に頭が痛くなってきたので、大きく息を吐いてから、こめかみのあたりを親指で押さえた。
ξ゚听)ξ「・・・今わかった」
わたしはしかめっつらで言い放つ。
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:18:00.57 ID:AzKHZnbG0
- ( ^ω^)「何がだお?」
ξ゚听)ξ「今わかった。アンタがそんな怖い奴だなんて。2年も付き合っても全然わかんなかった」
( ^ω^)「怖い?」
ブーンはものすごい顔で言い返す。
( ^ω^)「怖いのはツンのほうだお! 急に別れたいだなんて!」
ξ゚听)ξ「だから言ったじゃない! 他に好きな人ができたって・・・」
頭はズキズキとその痛みを増してくる。ホントなんなのよコイツ。早くシャワーを浴びて、さっさと寝てしまいたい気分だった。
( ^ω^)「誰だお?」
彼はビンをぎゅっと握り締めた。ビンの中の錠剤がかすかに音を立てる。耳障りな音だった。
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:19:13.39 ID:AzKHZnbG0
- ξ゚听)ξ「だからブーンは全然知らない人って言ったでしょ。それに死のうだなんて冗談じゃないわ」
( ^ω^)「ぼくねぼくねぼくね、か、考えたんだお。ツンに言われてから、よく考えました。ツンのいないを生活を、じ、人生を」
ξ゚听)ξ「やめて」
( ^ω^)「そ、それでね、わかったんだお。そんな人生は暗闇だって」
ξ゚听)ξ「ホントやめて」
( ^ω^)「わかったんだお! はっきりとわかったんだお!」
彼は荒く息をつきながら、薬のビンで床を二度叩いた。
( ^ω^)「ツンがいなけりゃ、生きてはいけないお」
さっきまであった愛情の残りカスみたいなものは、このセリフで消し跡形もなく飛んだ。
ξ゚听)ξ「もういいよ。もううんざりなの、そういうの。ねえ、もう帰って」
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:20:15.41 ID:AzKHZnbG0
- 今はただ目の前の男に嫌悪しか感じない。ブーンはそんなわたしの顔を見ながら、クククと笑いながら言う。
( ^ω^)「ウヒ、ウヒヒヒヒヒヒヒ、あーあツンは分からず屋だお。ほんとまいっちゃうお」
彼の渇いた笑い声はアパートの部屋中に響き渡って、わたしをぞっとさせた。
( ^ω^)「これだけ言っても、そんなこと言うだなんて、あーあ、まいっちゃうお」
ξ゚听)ξ「ねえ、もうやめよ? 辛いかもしれないけど乗り越えてよ? 男でしょ?」
( ^ω^)「でも背に腹はかえられないお! 死んでお! 一緒に死んでくれお!」
そう遮ると彼はビンの蓋を開けて、白い錠剤を何粒か手のひらにのせた。
ξ゚听)ξ「背に腹はかえなれないって、そんな時につかうの?」
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:21:29.09 ID:AzKHZnbG0
- ( ^ω^)「わかんないお! いいんだおそんなことはどうでも! これ飲んでくれお! 一緒に死んでくれお!」
ξ゚听)ξ「イヤよ! アンタの家に帰って自分ひとりで死になさいよ!」
( ^ω^)「あああああ!!!」
わたしがそう言うと、彼は手のひらの錠剤と、ビンの中に入った残りを床にばらまいた。白い錠剤が乾いた音を立てて、四方に散らばる。
( ^ω^)「飲んでくれないんなら、ツンを殺してからガバっと飲む」
彼のズボンの後ろから取り出された長いナイフを見て、わたしは一瞬息をとめた。
ξ;゚听)ξ「そ、そんなの持ってきて、何考えてんのよ!」
わたしは後ずさりながら叫ぶ。声が震えてるのが自分でもわかった。
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:22:14.00 ID:AzKHZnbG0
- ( ^ω^)「だって一緒に死んでくれないんだお?」
さっきまで冷静だったわたしを動揺させたのが嬉しいのか、彼はニヤニヤ笑いながら、ナイフの刃先をわたしの方へ向けた。
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと待って。わたしを刺すの?」
わたしは彼の方をうかがいながら、ゆっくりとキッチンのほうへ後ずさる。
( ^ω^)「だって薬飲んでくれないんだお?」
キッチンのテーブルを挟んで彼と向かい合わせながら、わたしは必死に叫ぶ。
ξ;゚听)ξ「ねぇ、ホントやめて! わたし刺して自分も死ぬの?」
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:22:58.21 ID:AzKHZnbG0
- ( ^ω^)「ツンを刺して自分も死ぬお」
ξ;゚听)ξ「わたし刺して、自分は薬飲んで死ぬの!? わたしだけに痛い思いさせて、ずるいじゃない、卑怯よ!」
( ^ω^)「じゃあ、ブーンもこれで死ぬお。それならいいお?」
彼の息づかいが荒くなって、だんだんと目つきが変わってくる。
ξ;゚听)ξ「自分で刺して死ねるわけないじゃない、痛いだけよ!」
( ゚ ω゚ )「じゃあ、やっぱ、薬で死ぬお」
ξ;゚听)ξ「それは卑怯だって言ったでしょう!」
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:23:41.27 ID:AzKHZnbG0
- ( ゚ ω゚ )「ひ、卑怯だっていいお! ずるくたってなんだっていいお! どうせ死ぬんだお! 死んだら関係ないお!」
冷蔵庫が背中にあたって、もう逃げ場がなくなった。
さっきまで薄笑いしていた彼はいつのまにか顔中を真っ赤にしながら、こっちをにらんでいる。
( ゚ ω゚ )「ツン、ごめんだお!」
そう叫びながら彼はわたしに向かって突進してきた。
すばやく横に開いて必死にかわす。
コイツ、本気だ。本気でわたしを殺そうとしている。
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:24:37.17 ID:AzKHZnbG0
- ξ;゚听)ξ「わかった! 飲むから、薬飲むからもうやめて!」
( ^ω^)「ほんとかお?」
彼の表情がぱっと明るくなった。
わたしは息を整えながら「飲むから、飲むから刺さないでよ」と言った。
( ^ω^)「刺さないお。そこに座って。今、水持ってくるからお」
わたしが椅子に座ったのを確認すると、彼はキッチンに走っていった。
( ^ω^)「よかったお。飲んでくれるんなら、こんないいことないお、もう、これが一番いい方法なんだからお」
彼は、キッチンでわたしに背を向けながら水を入れている。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:25:46.07 ID:AzKHZnbG0
- ――今だ。
わたしは全力でドアに向かって駆け出した。鍵を外し、ドアを開けようとした。
がっと音がしてドアが開かない。
チェーンだ。
チェーンがかかってる。
ξ;゚听)ξ「こんなときに限って、なんなのよ!!」
わたしは急いでチェーンを外してドアを開ける。
誰か助けて! そう叫んだ瞬間、腕を思いっきりつかまれた。
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:26:45.32 ID:AzKHZnbG0
- 手首のあたりがグキッと嫌な音を立てて鋭い痛みが全身に走り、そのままものすごい力で引っ張られて部屋の中に連れ戻された。
(# ゚ ω゚ )「もうだめだ、また、嘘ついたお。また嘘だお」
ξ;゚听)ξ「やめてよ、ねぇやめて!」
コイツ完全に狂ってる、殺される。そう思ったわたしは足元に転がっていたワインの空きビンを握り締めた。
(# ゚ ω゚ )「だめだ!!!もうだめだ!!!だめだだめだだめだあああああああ!!!」
彼が狂ったようにナイフを振りかざした瞬間、わたしはワインのビンを思いっきり彼の頭めがけて振り下ろした。
ぐおん、と鈍い音が響いて、ビンが割れ、破片があたりに散らばる。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:27:38.70 ID:AzKHZnbG0
- 一瞬ブーンは動きを止めた。そして彼の額から血がゆっくりと、やがて大量に噴きだした。
塊になって流れ出た血が彼の顔を覆った後、彼はゆっくりと膝を付くとぼんやりとした瞳でわたしを見た。
( ゚ ω゚ )「・・・・・・・・・?」
その瞳はツン?とわたしに助けを求めているようだった。
そしてひどくゆっくりとした動作で前のめりに倒れこんだ。
わたしは映画やドラマのワンシーンを観ている錯覚にとらわれて、しばらく割れたワインのビンを持ったまま立っていた。
ξ;゚听)ξ「ブーン?」
しばらく待ってみても返事は返ってこなかった。
わたしは手に持ったビンを床に落とした。ゴン、と鈍い音が部屋中に響いた。
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:28:24.28 ID:AzKHZnbG0
- ――あ、ショボン? うん、あたし。うん、元気だけど。
――あのね、こんな時間に悪いんだけど、ちょっと用があるから、ちょっと今から来てくれないかな?
――うん、そりゃ明日早いのはわかるけど、今来てほしいの。うんそう、急用なの、え?
――ちょっと一口で言えないから、とにかく来てほしいのよ、来てもらえばわかるから。
――えっ、ゴキブリ退治? ……うん、近いかも。とにかく早く来て、困ってるのよ。
――ほんと? うん、ありがとう。早く来てね、それじゃあ待ってるから。
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/20(木) 18:30:48.09 ID:AzKHZnbG0
- 携帯をテーブルの置いてから、もう一度、ブーンの方を見たけれど、やっぱりもうブーンは動かなかった。
血はもう止まってフローリングの床にどす黒い血のたまりができていた。
ビンの破片が血のかたまりに転々と浮かんでいる。
部屋の中が急に寒くなった気がして、わたしは暖房のスイッチをオンにして、さらにジップアップのパーカーを上からはおった。
部屋のすみで膝を抱えながら、目をぎゅっとつむる。
お願い、ショボン早く来て、と祈ったらまた頭が痛み始めた。
戻る