991 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:18:12 ID:AbKyzT5c0

第C話 閑話 ガールズルール 1



(*゚ー゚)「こんばんはー」

ξ゚听)ξ「お、きたきた」

川 ゚ -゚)「待ってたぞー」

ツンの部屋がノックされ、しぃが声をかけるとドアが開かれた。

(*゚ー゚)「おじゃまします」

ξ゚听)ξ「そんなの良いから良いから、さ、はやく座って」

VIPのギルドホームであるこの建物の個人部屋は、備え付けのベッドがある大き目のワンルームになっており、奥にあるドアはお風呂場と洗面所への入り口となっている。

この建物、外側は元からあったものだが中身はほぼ全て改装されていた。
そして、3・4階にある個人の部屋を作る際に、部屋に風呂を作ることは少しだけもめた経緯がある。

電子の世界であるアインクラッドでは身体を汚す的な意味合いで汗をかくことはないし、身体が汚れることはない。
戦闘時に状態異常として『汚れ』的なものが体に付着することはあるが、それは水で洗い流せば取れるというわけでもないため、ドクオやジョルジュなどは『風呂なんていらないだろ』と言ってしまったのだ。

そしてもちろん。

ξ゚听)ξ「汚い。心も体も精神的な意味で」

川 ゚ -゚)「一日の終わりを湯船につかって終わりたいという情緒も理解できない屑どもが」

といった女性二人からの冷たい口撃を複数受け、「ごめんなさい」をし、めでたくギルドの個人部屋には一つ一つ風呂が備え付けられた。

(*゚ー゚)「やっぱりお風呂っていいですよね」

しぃがギルドに入って一番最初に一番の笑顔を見せたのは、部屋に風呂があるのを知った時かもしれない。

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992 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:19:29 ID:AbKyzT5c0

ワンルームの方はベッドが置かれているだけであり、あとは自分でカスタマイズしていた。

今三人がいるのはツンの部屋なのだが…。

(*゚ー゚)「改まってちゃんと入ったのは初めてですけど…」

ダブルのベッドにアンティーク調の飾りが付いたタンス。部屋の隅には女性型と男性型のトルソーが一体ずつ。大き目の姿見が三つと裁縫師というツンの職業スキルを考えればまぁなんとなく納得できるものがある程度で女性らしい可愛い部屋に仕上げてあるのだが。

川 ゚ -゚)「これでも片付いたんだぞ」

ベッドから床から、数多くの布や服、リボンといった装飾物が散乱していた。

ξ゚听)ξ「仕方ないでしょ。さっきまで仕事してたんだから。片付けてるから、座って喋っててよ」

(;*゚ー゚)「はい…」

散乱はしているように見えるが、すべての物は重なることなく上から見ればすべての色や柄や形が分かるようになっているところを見ると、仕事に使っていたのは確かなのだろう。
そこでふとしぃは疑問に思ったことを口にした。

(*゚ー゚)「下の作業部屋で作らないんですか?」

ξ゚听)ξ「オーダーとかで色柄が決まってるのはあっちで作るけどね。メンバー用の服とか自分で色々決める奴はここでやった方がはかどるのよ」

川 ゚ ?゚)「散乱した生地の中でベッドの上に仁王立ちして頭の中で服をデザインしている姿は結構面白いぞ」

ξ゚听)ξ「いいでしょ!その方がイメージしやすいのよ」

部屋の中央、あからさまに急ごしらえに作られたのが分かるスペース小さなテーブルが置かれ、それを囲うように身体をうずめることが出来るサイズのクッションが三つ置かれていた。
その一つにクーが座っている。

川 ゚ -゚)「ま、片付けしながらでも話せるしな。しぃ、とりあえず座っておけ」

(*゚ー゚)「はい」

ξ゚听)ξ「私の部屋なんだけどな」

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993 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:21:29 ID:AbKyzT5c0

散乱…いや、部屋中に置かれた素材を一つ一つ手に取りながら決まった収納場所に保存する作業を繰り返すツンを横目に、空いているクッションの一つに座るしぃ。

(*゚ー゚)「これ、座り心地良いですね!肌触りもすごく良いし」

ξ゚听)ξ「でしょでしょ!中身は買ってきたけど、カバーは自分で作ったのよ」

川 ゚ -゚)「しかもひどいぞツンは、買ったその足でわざわざモララーの店に行って見せびらかして、更に『あんたにはこんなのは作れないわよね』などと言い放ったからな」

(*゚ー゚)「ツンさん…」

ξ゚听)ξ「中身、結構高いのよ。あいつが作れるようになれば安く手に入るわよ」

(*゚ー゚)「がんばれモララーさん」

川 ゚ -゚)「しぃまでか」

顔を見合わせて笑う三人。

(*゚ー゚)「モララーさんの店に並んだら、私も買おうかな。ツンさん、お茶とお菓子、ここに置きますね」

ξ゚听)ξ「んー。ありがと」

テーブルの上に三つのカップと一口大のケーキを十数個乗せた皿を準備しつつ、ツンに声をかける。

すでにケーキを一つ口に運ぶクー。

川 ゚ -゚)「ん、うまい。腕を上げたな。しぃのおかげで私がバーボンハウスに出ることが少なくなってありがたいよ」

(*゚ー゚)「たまに出ると男のお客さん、すごいじゃないですか」

川 ゚ -゚)「なんだろうな、あいつらは」

ξ゚听)ξ「あんたも人気あるからね。しぃだってすごいって聞いたけど?」

(*゚ー゚)「クーさんに比べれば全然ですよ」

ξ゚听)ξ「さりげなく否定はしないところがさすがね」

慌てて否定するしぃをからかうツンとクー。
それはしぃが頬を膨らませてテーブルの上のケーキをしまおうとするまで続いた。

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994 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:23:58 ID:AbKyzT5c0

(*゚ー゚)「もう…」

川 ゚ -゚)「わるいわるい」

ξ゚听)ξ「可愛くて面白かった」

(*゚ー゚)「もう!からかわないでください!」

川 ゚ -゚)「いやしかし、本気だぞ。しぃは私たちにとって妹みたいなもんだからな」

(*゚ー゚)「え?」

ξ゚听)ξ「今までハインとか女の知り合いは何人かできたけど、これくらい上の層に来ちゃうと自分より小さいことかレベルの低いことかに会う機会がそれほどないのよ。知り合っても、親しくならなかったりね」

川 ゚ -゚)「このギルドは規模を大きくしようとか考えてないから、人もほとんど入れないしな」

ξ゚听)ξ「だから、ギコはともかくしぃが入ったのは嬉しかったの。女の友達が出来るなって。ね。クー」

川 ゚ ?゚)「ああ。しかも家庭的スキルをちゃんと持っていて、更に可愛いときたらもう」

(*゚ー゚)「あ、ありがとうございます」

ξ゚听)ξ「しかも自己主張もできるし」

川 ゚ -゚)「突っ込みスキルも高いと来た」

(*゚ー゚)「…え?」

ξ゚听)ξ「ギコを手のひらで転がす手腕」

川 ゚ -゚)「ショボンを筆頭に、誰に対しても物怖じしないで突っ込みや主張できる押しの強さ」

ξ゚听)ξ「笑顔で毒舌」

川 ゚ -゚)「接客中に口説かれた時の受け流しもすごいと聞いた」

(;*゚ー゚)「最後の方は絶対ほめてない!」

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995 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:25:58 ID:AbKyzT5c0

噴出したクー。
それを受けてツンも笑い出し、ふてくされていたしぃも笑顔を見せた。

ξ゚听)ξ「ごめんごめん」

川 ゚ -゚)「途中から面白くなってた」

(*゚ー゚)「酷いですよ、二人とも」

片付けが終わっていなかったが、ツンもクッションに座り、カップを手に取った。

川 ゚ -゚)「でも、最初に言ったのは本当だぞ」

(*゚ー゚)「え?」

ξ゚听)ξ「妹みたいってやつ」

川 ゚ -゚)「正確には家族だがな。あいつらを兄とか弟とか思うと虫唾が走るが、しぃは大事な姉妹みたいだ」

ξ゚听)ξ「同じく!」

(**゚ー゚)「…嬉しいです」

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996 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:26:59 ID:AbKyzT5c0

川 ゚ -゚)「私たちのことをお姉ちゃんと呼んでくれてもいいんだぞ」

(*゚ー゚)「え?」

ξ゚听)ξ「あ!わたしもわたしも!」

(;*゚ー゚)「え、いや、それは別に」

川 ゚ -゚)「まあ遠慮せずに」

ξ゚听)ξ「さあさあ」

(;*゚ー゚)「え、あ、いやその」

川 ゚ -゚)「そうか。しぃはそんな風には感じてくれていなかったんだな」

ξ゚听)ξ「嬉しいって言ってくれたのに」

川 ゚ -゚)「家族のように大事な存在だと思っていたのは私達だけだけだったか。さみしいな。ツン」

ξ゚听)ξ「そうね。クー。こういう片思いもあるのね」

(*゚ー゚)「い、いえ私も皆さんが大事です!家族のようだと言ってもらえてうれしいです!」

川 ゚ -゚)「ならば」

ξ゚听)ξ「ねぇ」

(;*゚ー゚)「う…」

川 ゚ -゚)「さあさあ」

ξ゚听)ξ「ほらほら」

(;*゚ー゚)「お…お姉ちゃん」

川 ゚ -゚)「どっちのことだ?私はクーだぞ」

ξ゚听)ξ「私はツンよ」

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997 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:28:13 ID:AbKyzT5c0



(**゚ー゚)「く、クーお姉ちゃん、ツンお姉ちゃん…」



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998 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:28:56 ID:AbKyzT5c0

川*゚ ?゚)

ξ*゚听)ξ

川*゚ ?゚)「こ、これはやばいな」

ξ*゚听)ξ「ええ、やばいわね」

川*゚ ?゚)「予想外すぎた。『ほんとに言ったぞ、ひくわ〜』とか言うつもりだったのに」

ξ*゚听)ξ「違う意味で記録結晶に録っておいて良かった」

(;*゚ー゚)「え!?ちょ!なにしてるんですか!」

ξ*゚听)ξ「破壊力デカすぎる」

川*゚ ?゚)「あとでコピーしてくれ」

ξ*゚听)ξ「了解」

(;*゚ー゚)「ちょっと二人とも!?」

ξ*゚听)ξ「良い物見たわ〜」

川*゚ ?゚)「これをおかずにご飯三杯はいけるな」

ξ*゚听)ξ「四杯はいける」

(;*゚ー゚)「もうやだこの人達!」

外はまだ夕闇に染まりかけ。
三人の会話は、まだ始まったばかりだ。





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