677 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:10:14 ID:l1O.OzB20



第七話 数え歌がきこえる 後編    〜かごめかごめ〜



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678 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:11:16 ID:l1O.OzB20



1.十人目の男



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679 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:12:39 ID:l1O.OzB20
西暦2024年1月末某日

ギルドV.I.P.のホームは40層にある。
一階にはショボンのバーボンハウスとブーンの雑貨屋。その他に二件分の作業部屋とツンとクーの作業部屋がそれぞれにあり、裏庭などもあった。
二階にはミーティングルーム兼大食堂とリビング、ギルマス用の執務室(ショボンの部屋)。三階と四階は個人の部屋になっており、今はブーン、ツン、クー、ドクオ、ジョルジュ、ギコとしぃが使っているが、まだ部屋は余っている。。
この中にある大食堂で、ギルドメンバーが食事をすることは週に一度の定例会以外では滅多にない。
といっても全員が集まることが少ないのではなく、実は週四回は全員で食事をしているし、それ以外の日も二・三人少ない状態で集まって食事をすることがほとんどだった。

では何故この大食堂で食事をとることが少ないのか。

それはこの食堂の形状に答えがあった。

(`・ω・´)「相変わらず、ここは喋り辛いな」

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680 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:13:43 ID:l1O.OzB20

白い壁の大きな長方形の部屋の中心に、真っ白い大きなテーブル。
短辺は三人ほどがゆったりと座れ、長辺には六人がゆったりと座れる。
椅子は固定ではないので動かせるのだが、何故かなんとなく動かす気になる者はおらず、等間隔に座っている。

('A`)「そうなんだよ」

( ^ω^)「ショボンの狙いらしいお」
 _
( ゚∀゚)「前のホームの時は『会議の時くらい私語は慎め!』ってショボンがよく怒鳴ってたからな」

(`・ω・´)「お前ららしいよ」

面白そうに笑顔を見せるシャキン。
それを受けて眉をひそめつつ笑う三人だったが、その話し声はその両隣にはあまり聞こえない。

つまり、雑談がし辛い為あまりこの食堂は使われていなかった。逆に言うとこの食堂が使われるということは、誰かが〜今のところ100%ショボンだが〜真面目な話をするということだった。

ちなみに声が聞こえ辛いというようなことではなく、全員に向かって話しかけるには特に違和感がないのだが、何故か近場の数人と会話をしようとすると声の音量が難しく、ひそひそ話や知られたくない話がし辛い部屋だった。

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681 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:14:40 ID:l1O.OzB20

( ´_ゝ`)「食事は隣ですればいいんじゃないのか」

既に全員の目の前には夕食が置かれており、それぞれに口をつけている。

( ´∀`)「そうもなね〜。ショボンとふさもいないし」

(´<_` )「店の稼ぎ時だからな」

▼*・ェ・▼「きゃきゃん!」

( ´_ゝ`)「……今のはショボンの名前が出たからか?」

( ´∀`)「ビーグルとショボンは仲良しさんもな」

(´<_` )「まぁ……うん……いやしかし、今日は疲れたな」

( ´_ゝ`)「そうだな。あの朝の客はきつかった」

( ´∀`)「あれは大変だったもなね。そうそう、貰った武器、牧場で振ってみたもなけど、すごい良かったもな!すぐに手に馴染んだもな!」

( ´_ゝ`)「それは良かった。そういってもらえると、作り甲斐がある」

武器の作製に関してはどんな時も真剣になる兄者の言葉を受けて笑顔になるモナーと弟者。
周囲が笑顔で一人真顔の兄者というのは、なかなか見られない姿だろう。

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682 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:15:36 ID:l1O.OzB20

( ・∀・)「ギコより粗忽者がいるとはビックリだな」

( ゚∋゚)「おれもビックリした」

(,,゚Д゚)「そこまで言うなゴルァ」

( ・∀・)「このまえの」

( ゚∋゚)「採取で」

(,,゚Д゚)「ごめんなさい」

( ゚∋゚)「モラの方は今日は何かあったか?」

( ・∀・)「………聞くな」

(;゚∋゚)「なんか悪かった」

(,,゚Д゚)「?何があったんだゴラァ?」

(#・∀・)「空気を読めよこのやろう」

(,,゚Д゚)「?」

(;゚∋゚)「ギコ…」

殺気を含んだモララーの睨みを軽く受け止めるギコに驚くクックルだったが、今までの鈍感さを考えれば特に驚くことでもないことに気付き、眉間にしわを寄せて通じない嫌味をぶつけてくるモララーに戸惑うギコを見て、思わず笑みを漏らした。

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683 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:17:44 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「ハインに会ったんだ」

(*゚ー゚)「はい」

川 ゚ -゚)「口説かれただろ」

(**゚ー゚)「口説かれたとか…そこまでは…」

全員に食事を配り終り席についたしぃ。

ξ゚听)ξ「本気にしちゃだめよ。ハインはあいつに夢中だから」

(*゚ー゚)「?」

川 ゚ -゚)「ハインは好きなやつがいるんだが、そいつに群がるかもしれない女を自分に夢中にさせて、あいつとくっつかないようにしているんだ」

(*゚ー゚)「え!?」

照れたようにフォークで目の前のプレートに乗った肉をつついていたしぃだったが、クーの言葉で動きを止めた。

(*゚ー゚)「え?」

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684 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:18:37 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「ま、無理ないわよね」

川 ゚ -゚)「ツンも少しその気になってたよな。ブーンとの関係を知られるまで口説かれてたし」

ξ゚听)ξ「うるさい。……そういえばあんたは口説かれなかったわよね。なんで?」

川 ゚ -゚)「知らん。おそらく私はあの程度では落ちないということが分かっていたのだろう」

ξ゚听)ξ「ホントむかつくわね」

(*゚ー゚)「あ…あの…」

川 ゚ -゚)「ん?なんだ?」

(*゚ー゚)「ハインさんの好きな人って…」

ξ゚听)ξ「誰だと思う?」

川 ゚ -゚)「しぃも知っている奴だぞ」

しぃの質問を聞き、面白そうにニヤニヤと笑いながら顔を覗き込むようにする二人。

(*゚ー゚)「ジョルジュさん?」

ξ゚听)ξ「違う〜。まぁそう思っても仕方ないわよね。並んで見栄えがしそうだし」

(*゚ー゚)「モララーさん?」

川 ゚ -゚)「そっちに来たか。違うぞ」

(*゚ー゚)「ショボンさん?」

ξ゚听)ξ「まぁあってもおかしくないわよね。違うけど」

(*゚ー゚)「兄者さんはないとして、弟者さん?」

川 ゚ -゚)「両方なかった」

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685 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:19:29 ID:l1O.OzB20

(´<_` )「どうした兄者?」

( ´_ゝ`)「何故か誰かに馬鹿にされた気がした」

(´<_` )「されてるだろ、いつも誰かに」

( ´_ゝ`)「え?おれってそうだったの?」

( ´∀`)「気にしないのが一番もなよ」

▼・ェ・▼「きゃん!」

( ´_ゝ`)「え?モナーとビーグルまで否定してくれないの!?」


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686 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:20:55 ID:l1O.OzB20

(*゚ー゚)「じゃあモナーさんかクックルさん?」

ξ゚听)ξ「選定の順番が気になるところだけど、それも違う」

(*゚ー゚)「ってことはふささん!」

川 ゚ -゚)「ブー。違います」

(*゚ー゚)「え?だってブーンさんってことはなくて、ギコ君な訳もないし」

ξ#゚听)ξ「しぃちゃん、それはどういう意味かな?」

(;*゚ー゚) 「え、あ、いや、ブーンさんが対象外というわけじゃなく、さっきツンさんがブーンさんのことを好きって知られてからはハインさんに口説かれなくなったって 言っていたので、もしハインさんが好きなのがブーンさんなら、逆にもっと激しく口説かれそうですから、だからです!」

ξ゚听)ξ「ああ、そういうことね。って、誰が誰を好きだっていうのよ!」

川 ゚ -゚)「ツン、そこでツンデレ属性発生させると話が進まないから」

ξ;゚听)ξ「でもクー」

川 ゚ -゚)「クリスマスのイルミネーション、手をつないで…」

ξ*゚听)ξ「わかった!わかった!ごめん!なし!」

川 ゚ -゚)「まったく」

ξ*゚听)ξ「だいたいあれだってあいつが」

川 ゚ -゚)「記録結晶見るか?」

ξ゚听)ξ「撮ってたの!?」

川 ゚ -゚)「ああ。ショボンに頼まれてたからな」

ξ#゚听)ξ「あの男……。あとでコピーちょうだい」

川 ゚ -゚)「わかった」

(*゚ー゚)「あれ?でもこれでギルド内なら全員ですよね。あと誰が…」

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687 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:22:44 ID:l1O.OzB20
困惑していたしぃをよそに盛り上がっていたクーとツンだったが、しぃの呟きを聞いて喋るのを止め、ゆっくりとしぃを見る。

(*゚ー゚)「?どうかしましたか?」

ξ;゚听)ξ「えっと…しぃちゃん?まだ全員じゃ」

川 ゚ -゚)「気持ちがわかるがさすがにそれは」

(;*゚ー゚) 「え?でも、ジョルジュさん、モララーさん、ショボンさん、兄者さん弟者さん、モナーさん、クックルさん、フサギコさん。…ハインさんが好きになりそうな 人で私が知っている人って……あ!シャキンさん!でもハインさんに会った時点では、私はまだシャキンさんにお会いしてなかったですけど」

ξ;゚听)ξ「えっと…」

川;゚ -゚)「もしかして本気でなのか?」

(*゚ー゚)「?」

顔をこわばらせるツンとクー。
アインクラッドでは浮かばないはずの冷や汗がこめかみと頬を伝っているように錯覚する。

ξ゚听)ξ「う、うちのギルド全員の名前は言えるわよね?」

(*゚ー゚)「もちろんですよ?」

川 ゚ -゚)「言ってみてくれないか?」

(*゚ー゚)「は、はい。ギルマスのショボンさん、サブマスターのクーさん、ツンさん、ブーンさん、ドクオさん、ジョルジュさん、兄者さん、弟者さん、フサさん、モナーさん、ビーグルちゃん、クックルさん、モララーさん、ギコ君と私です」

川 ゚ -゚)「ちゃんと言えたな」

(*゚ー゚)「当然ですよ?どうしたんですかいったい」

ξ゚听)ξ「うん、まあ、そうなんだけどね」

自分を見るツンとクーの表情に違和感を感じ、不安になるしぃ。
そんなしぃをみて、どうしようか本気で悩むツンとクー。

(;*゚ー゚)「あ、あの?」

川 ゚ -゚)「ハインの片思いの相手だが、このギルドの中にいるんだ。そしてハインは女や動物には恋心は抱かない」

(;*゚ー゚)「はい」

ξ;゚听)ξ「で、さっきしぃが確認していった中に、ギルドのメンバーが一人抜けてたのよ」

(;*゚ー゚)「え!?全員言ったつもりなんですけど」

川;゚ -゚)「うわぁ」

ξ;゚听)ξ「うわぁ」
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688 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:23:38 ID:l1O.OzB20


('A`)ウツダシノウ


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689 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:29:44 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「いきなりどうしたドクオ?」

( ^ω^)「いつものことだお」

(`・ω・´)「それは知ってるが、さすがに唐突じゃないか?」
 _
( ゚∀゚)「突然ネガティブ電波を受信するよな」

('A`)「どうでもいいことだけど、かなり悲しい気がした」

(;^ω^)「なんだおいったい」

('A`)「わからん」


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690 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:30:46 ID:l1O.OzB20

川 ゚ -゚)「とりあえずしぃ、私とツンとしぃ、ビーグルとギコを覗いたメンバーは何人だ?」

(*゚ー゚)「10人ですよね」

ξ゚听)ξ「じゃあこんどは、ハインの片思いの相手を想像しながら、さっきの順番で指折りしながら数えてみて」

(*゚ー゚)「は、はい。…ジョルジュさん、モララーさん、ショボンさん」

言われた通りに指折り数えながらゆっくりと名前を言うしぃ。
それを二人が固唾を飲んで見守っている。

(*゚ー゚)「兄者さん弟者さん、モナーさん、クックルさん、フサギコさん……ブーンさん……」

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)!

(;*゚ー゚)「あれ?9人しかいない。なんでだろう」

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691 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:31:32 ID:l1O.OzB20


('A`)ヤッパリウツダシノウ


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692 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:32:20 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「おいおいおいおい、さすがにスパンが短くないか」

(;^ω^)「だおね。ドクオ、どうしたんだお?」
 _
(;゚∀゚)「どこかで誰かに呪われてるとか」

('A`)「わからん。かなりどうでもいいことで、ものすごく悲しい気分になった気がした」

(`・ω・´)?

(;^ω^)?
 _
(;゚∀゚)?


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693 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:33:27 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「ダメか」

川 ゚ -゚)「どうしたもんだろうな」

(;*゚ー゚)「あれ?あれ?あ……れ………」

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)「!何か引っかかった」

(;*゚ー゚)「あれ?でも、けど、だって、そんな、でも、あれ、うそ、そんな、でも、やだ、あれ?え?え?やだ、え?あれ?そんな」

川 ゚ -゚)「もうちょっとだ!いけ!」

ξ゚听)ξ「すべての可能性を排除したら、どんなに奇妙であろうとも残ったものが真実なのよ!」

川 ゚ -゚)「たとそれが受け入れがたい事実でも!うけとめるんだ!」

ξ゚听)ξ「がんばれしぃ!」

川 ゚ -゚)「がんばれ!しぃ!」

(*  )「そう……か……ドク…オ…さんなん…ですね」

ξ;凵G)ξ「たどりついたのね、しぃ」

川 ; -;)「そうだ、そうなんだ。しぃ」

(*  )「まさか…そんな…」

ξ;凵G)ξ「がんばったね」

川 ; -;)「よく耐えたぞ」

(*  )「はい…はい…」


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694 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:34:21 ID:l1O.OzB20



('A`)ドウデモイイケドウツデシノウ



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695 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:35:17 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「ブーン、このまえは急に納品頼んで悪かったな」

( ^ω^)「こちらこそ、いつもありがとうだお。もうちょっと早めに言ってくれると慌てなくていいからうれしいけど」

(`・ω・´)「いつもすまんな」
 _
( ゚∀゚)「なんだ、二人は結構会ってるのか」

( ^ω^)「お得意様だお」

(`・ω・´)「大量注文も対応してくれるからな」

('A`)「あれ?スルー?」

(`・ω・´)「飽きた」

( ^ω^)「もういいお」
 _
( ゚∀゚)「なんか言ってたのもあいつらだろ多分」

ちらっと女子三人を見る四人だったが、その状況を見て全員の表情が固まった。


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696 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:36:23 ID:l1O.OzB20

( ´∀`)「向こうはなんか盛り上がってるみたいもなね」

( ´_ゝ`)「あれは盛り上がってる…のか?」

(´<_` )「どうせまた、ツンとクーがあほなことを言ってるんだろ」

( ´∀`)「もしくはしぃの天然が爆発してるもなね」

▼・ェ・▼「きゃん!」

(´<_` )「最近はその確率が高いのが怖いな」

( ´_ゝ`)「そういえば、結局ギコとの」

(´<_` )「みなまで言うな」

( ´∀`)「聞かないであげるのが優しさもなよ」

( ´_ゝ`)「おれに言われたくないだろうが、あいつも不憫なやつだな」

ギコを見てからしぃを見て眉をひそめる三人。
モナーの膝の上に乗るビーグルが、小さく鳴いた。

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697 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:37:26 ID:l1O.OzB20

(#・∀・)「だいたいあいつは空気を読めっていうんだよ。おれたちがどれだけブーンとの仲を心配してやったか」

( ゚∋゚)「心配する必要がないくらいの仲良さだった気もするが」

(#・∀・)「大体なんでこんなにカッコいいおれに彼女ができないで、ブーンやギコに可愛い彼女がいるんだよ」

(,,゚Д゚)「少なくともおれはそんな事を口にしたことはないぞゴラァ」

(#・∀・)「可愛い小物や小さいアクセサリーとか作れば女の客が増えて出会いがあるかと思えばやってくるのは付加性能目当てのムサイ男が大半だし」

(;゚∋゚)「おまえ、そんな理由で職人になったのか?もしかして」

(,,゚Д゚)「モララーのアクセサリーは戦士仲間の中で評判高いぞ」

(#・∀・)「だいたいなんで気合い入れて可愛いの作るとほぼ全部防御力アップとか攻撃力アップの付加価値が付くんだよ」

(;゚∋゚)「それは確かに気の毒な気もするが、おまえのアクセサリー作成能力が高いというかなんというか」

(,,゚Д゚)「おれもギルドに入る前から一つ持ってたし、しぃにもプレゼントしたぞ。そういえばごつい戦士が可愛い飾りを胸とかつけてたなゴルァ」

(#・∀・)「ああもうなんだっていうんだよまったくよう。やっと可愛くておれに興味がありそうな客が来たと思ったらあいつにもってかれるし、だいたいあいつ……」

苦々しげに眉間にしわ寄せつつツンたちを見たモララーの表情が固まり、ゆっくりと眉間のしわがとれた。が、変わりに怒りではない理由で眉間にしわが寄った。
その表情の変化を見ていたクックルとギコが不審に思ってモララーの視線の先にいる三人を見ると、二人も表情が固まった。

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698 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:39:00 ID:l1O.OzB20

女子三人をみて男全員が呆然と表情が固まる。
という珍妙な状況の中に入ってきた彼ら二人の心情はどれほどだったであろう。

ミ,,゚Д゚彡「おそくなったから!ごめんなさいだから!」

(´・ω・`)「ごめんね。遅くなって。食事はもう終わったかな?」

扉を開けて入ってくる二人。
ショボンはいつもの席に、フサギコはあいている席に向かうが、途中で異様な雰囲気に気付き、メンバーを見回す。

ミ,,゚Д゚彡「どうしたんだから?」

(´・ω・`)「どうしたのみんな?」

その二人の視線も、女子三人で止まる。

表情をなくし、呆然と焦点の定まっていない瞳で斜め上の天井を見つめるしぃ。
席を立ち、そのしぃを両側から抱いてしくしくと涙を流すツンとクー。

ミ;,,゚Д゚彡「しぃ…ちゃん?だいじょうぶ?」

(´・ω・`)「えっと、なにがあったのかな?そこの三人」

三人に近寄る二人。
声をかけられ、機械仕掛けのように首を動かしてフサギコを見るしぃ。

ミ;,,゚Д゚彡「しぃちゃん?」

(*  )「…ふさぎこ……さん……」

ミ;,,゚Д゚彡「ど、どうしたんだから?なにがあったから?」

(*  )「わたし……しんじ……られ…なくて…」

(´・ω・`)「しぃ?どしたのいったい」

(*  )「ショボン……さん………。ハインさんが……好きなのって」

(´・ω・`)「ああ、なんだ。知ったんだ」

ミ,,゚Д゚彡「それは確かに驚くから」
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699 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:39:49 ID:l1O.OzB20


('A`)………


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700 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:40:47 ID:l1O.OzB20

納得したのか、大きく頷くショボン。
フサギコはしぃの肩に手を置き、肯定するように小さく何回か頷く。

そしてショボンが柏手を打った。

部屋に響く音によって、二人を除く全員の目が覚める。

(*゚ー゚)「しょ、ショボンさん」

(´・ω・`)「了解、それについてはまた今度説明するよ。まぁ多分納得してくれると思うから」

(*゚ー゚)「は、はい!」

(´・ω・`)「それじゃあミーティングを始めるよ!食事はそのまま続けてくれていいけど、目は資料、耳は僕の声に向けてね」

しぃの目の前に紙の束を置き、「ごめん、みんなに配ってもらえるかな」と言って自分の席に向かうショボン。
フサギコも自分の席に座り、持ってきた夕食を出す。
席に着いたショボンも自分の夕飯のサンドイッチとタンブラーを置き、自分用の資料を目の前に広げた。

(`・ω・´)「お、なんだそのサンドイッチは」

(´・ω・`)「ぼくの夕飯だよ」

( ^ω^)「味はなんだお?」

(´・ω・`)「BLTとツナとチーズチキン]

(`・ω・´)「おれも食べたい」

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701 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:42:07 ID:l1O.OzB20

( ^ω^)「あ、シャキンばっかりずるいお」

('A`)「ならおれも食べる」
 _
( ゚∀゚)「もちろんおれも」

(´・ω・`)「君たちもう一人前分食べたんじゃないの?」

(*゚ー゚)「…あの、私も食べたいです」

(´・ω・`)「しぃまで!?」

資料を配って回ってきたしぃがおずおずと、けれどはっきりと口をはさむ。

(*゚ー゚)「いや、私の場合は最近ショボンさんの料理食べてないので味わいたいなと」

(`・ω・´)「おれもだぞ。今日店に行ったのは久しぶりにお前の料理を食べようと思ったからだからな」

(´・ω・`)「久しぶりって……まぁこうなるだろうとは思ったけどさ」

ウインドウを出してストレージを操作するショボン。

(´・ω・`)「ぼくの作ったサンドイッチ食べたい奴は挙手!」

一斉に上がる全員の手。

(´・ω・`)「はいはい…って、ふさまで」

立ち上がり、一人一人の目の前にサンドイッチの入ったボックスを置いて歩くショボン。
貰ったメンバーは「ありがとう」と言いつつ受け取ると箱を開け、ほくほくとどれから食べるか選び始めた。

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702 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:43:05 ID:l1O.OzB20

ミ,,゚Д゚彡「ありがとうだから。ショボンの作ったサンドイッチは自分の作ったのよりおいしいから」

(´・ω・`)「まったくもう……じゃあふさの持ってきてるやつはぼくに食べさせてよ」

ミ;,,゚Д゚彡「そ、それはだめだから!」

(´・ω・`)「みとめません。はいぼっしゅー。久しぶりの味チェックだね」

フサギコの目の前の箱を取り上げ、自分のサンドイッチを置くショボン。

ミ;,,゚Д゚彡「あうあう」

(´・ω・`)「デザートはみんなが食べ終わったころによろしく」

ミ,,゚Д゚彡「…………わかったから…」

うなだれるフサギコをよそに、サンドイッチを配り終わって席に戻るショボン。

('A`)「ちゃんと全員分作ってきたんだな」

(´・ω・`)「まあね。こんなことになるかもしれないって思ってさ。ならなくても、どうせミーティングの後は隣の部屋で喋るんだろうから、夜食にすればいいやと思って」

( ^ω^)「流石ショボンだお」

(`・ω・´)「あいかわらずだな」

(´・ω・`)「はいはい。それじゃあ改めてミーティングを始めるよ!資料の一ページ目を見て」

ショボンの言葉を受け、口を動かしながらも目は真剣に資料を見るメンバー達。

それを確認したショボンが、口を開いた。


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703 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:44:12 ID:l1O.OzB20

今回の議題は、ギルド『N−S』より依頼のあった第49層でのクエスト攻略です。
まだクリアは一度もされていないクエストを3件、同時に攻略します。

質問は後で受けるからまずは静かに聞いてねー。

クエスト攻略による依頼アイテムは無しで、途中のモンスター討伐で得たアイテムはもちろん、クエスト攻略で得たアイテムも基本ギルドで管理します。
つまり、いつものごとくドロップした者の持ち物ってことです。
必要ないアイテムは不明アイテムはできるだけギルドストレージに移して、必要者もしくは鑑定できる者が使える形にするようにしてください。
ただし、途中で採取できる『ゲルマライムの木の実』はN−Sからの依頼品でもあるので、必ず採取して、さらにミッション終了後に集めてN−Sに渡します。もしドロップ品でもとれたらそれも渡します。

はい、クーうるさい。
あとであとで。

地図は資料の次のページにあります。
見てもらうとわかるけど、大きい街で依頼を受けて、周囲の森を走り回るクエストです。
途中までは成功しているので資料に載せてますが、以降は分かりません。
その理由は時間制限。日の出の後朝9時から夕暮れの午後6時まで、9時間以内にクリアしなければいけない計算であり、それが一番の問題点とされています。
一つ一つのクエストの細かい設定を考えると、とてもじゃないけどその時間内では無理だと思われます。ただ、動線と攻略内容を考えた結果、三つを同時に進行、攻略すればクリアできるのではないかと推測できるため、今回の依頼がうちに回ってきました。

まあ、ここまで言うばわかると思うけど、この依頼はギルド『N−S』からきましたが、その上には情報屋がいて、おそらくその上には攻略組がいると思われます。

今の最前線は51層。
51層の攻略がメインだけど、49層に残っているクエストも気になる。
皆も知っていると思うけど、50層ボス攻略ではかなりの死傷者が出て、攻略組は動揺しています。
だから情報は今まで以上に必要で欲しい。
けれど最前線の攻略以外に攻略組の人員をまわすのは色々と厳しい。
そこで……。

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704 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:45:23 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「って感じでぼくは思っていますが、どうでしょう?ギルド『N−S』のギルドマスターさん」

隣に座るシャキンに話を振るショボン。
特に驚いた様子もなくシャキンはにやっと笑い、全員の視線を感じつつも臆することなく口を開く。

(`・ ω・´)「直接うちに話を持ってきたやつの名前は伏せるが、まぁそんな感じだと思ってくれていいだろう。基本的には攻略組からのクエスト攻略依頼。つまり 一番欲しいのは『アインクラッドの攻略に関する情報』だ。今回のクエスト三種のうち一つは50層を攻略中に発見されていたが、二つは50層が攻略された後 に発見されたクエストだ。そしてさっきの話の通り、見つかっていた一つもクリアは出来なかった。攻略していなくても、50層のボスクエに対する攻略への対 応には関係なかったと思われるが、もしかすると以降の上層階をクリアするのに有効な情報やスキルの追加などがあるかもしれない…と、攻略組が考えたとして も不思議じゃない」

('A`)「なるほどな」

( ´_ゝ`)「だが、そんなことがあるのか?」

(´<_` )「前例はないはずだが」

( ・∀・)「実際の攻略情報ではないかもしれないけど、いままでもクエスト攻略によって解禁になる素材とかはあったよな」

川 ゚ -゚)「薬はそれが多いな。強い薬や今までNPCショップでしか手に入れられなかった薬が作れるようになったりする。そのたびに派生のスキルが増えたりして大変だが」

( ´_ゝ`)「新しい武器や防具も有り得るか」

( ^ω^)「純粋に情報が出たこともあったはずだお。たしか十何層で、二つくらい上に出てくるモンスターの弱点が判明したことがあったはずだお。ボスではなかったはずだけど」

ミ,,゚Д゚彡「この前街で売り出された野菜も、何かのクエスト攻略がキーになっていたのかもしれないから!」

(*゚ー゚)「あ!あの野菜!急に売りに出されましたよね」

( ´∀`)「そういえば、低層の牛型モンスターが最近飼育できるようになったって噂があるもな」

( ゚∋゚)「      」

(,,゚Д゚)「クックルも気になる点があるらしいぞゴラァ!」

( ゚∋゚)《ある時急に、一部の薬草に花が咲くようになったことがある。特に能力や効能に変化は無かったようだが》

.

705 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:46:32 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「なんだ、クックルはまだ喋れないのか。難儀だな」

((( ゚∋゚)))

少しだけ困ったように、けれど笑顔で首を横に振るクックル。

(`・ω・´)「ま、こいつらなら大丈夫か」

( ゚∋゚)))

今度はにっこりとほほ笑んで頷くクックルを見て笑顔を見せるシャキン。

.

706 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:47:43 ID:l1O.OzB20

川 ゚ -゚)「花が咲くことにより、薬草に付加価値や能力アップなどの可能性はあるな。それに、その花を利用したレシピがこれから解禁される可能性もある」

ウインドウを出し、自分のスキルスロットを見始めるクー。

川 ゚ -゚)「まだ増えてないか」

ξ゚听)ξ「裁縫、装飾系は特に変化なしかな。素材が増えるか、デザインが増えるかくらいあると良いんだけど」

同じくウインドウを開いていたツンが視線を外す。

ξ゚听)ξ「で?クエストやるのは分かったけど、続きは?」

(´・ ω・`)「うん。この三つのクエストには、人数制限があるんだ。各クエストともに、最大7人。それ以上だとクエストのスタートができないし、一つのクエス トは少ない人数でもクエストフラグが立たなくなっているらしい。難易度的には特に変わらないけど、色々と隠し要素がありそうなんだ」

('A`)「この世界は、そんなに簡単なゲームじゃないからな」

(´・ω・`)「だね。人数が多いから簡単なのか、さらに難しく危険度が増すのか。…上層階だし、未クリアクエストだし、油断はできないよ」
 _
( ゚∀゚)「でもやるんだろ?」

(´・ω・`)「それなんだけどね」

全員の顔を見回すショボン。
不思議そうな顔をするもの、笑顔の者、表情が分からない者、色々いるが全員とも不信感を表す者はいない。

(´・ω・`)「今回は、クエストのレベルを考慮して、一部メンバー以外は不参加を認めます。かろうじて全員フロア数に対して最低で5以上高いけど、レベル的に不安がある人や自信がない人は、今不参加表明してください」

( ・∀・)「あ、おれ」

(´・ω・`)「モララーは強制。だいたいレベル的にも経験的にも問題ないでしょ」

( ・∀・)「なんでだよ」

(´・ω・`)「中層クラスでも、戦闘力だけならうちより高いギルドもパーティーもソロプレイヤーもいないわけじゃないよ。でも、この話はうちのギルドに来た。さてここで問題です。何故だと思う?」

.

707 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:48:46 ID:l1O.OzB20

( ・∀・)「…職業スキルが必要ってことか」

(´・ω・`)「そういうこと。それもこのクエストが攻略できていない理由の一つだと思うよ。そういうことで、モララーとクー、クックル、ブーンは悪いけど必須でよろしく」

( ・∀・)「まったく」

ξ゚听)ξ「あれ?あたしとかモナーは大丈夫なの?」

いまだにウインドウを出したまま操作をしていたツンが口をはさむ。

(´・ω・`)「スキル的にはね。あと僕とふさとしぃの料理スキルもとくには必要なさそうだから、二人はよく考えて」

ミ,,゚Д゚彡「やるから!」

(*゚ー゚)「やります!」

(,,゚Д゚)「もちろん俺もだゴラァ!」

間髪入れずにフサギコとしぃが答え、それに続いて何故かギコも参加表明をした。

(´・ω・`)「あ、うん、わかったよ、ギコ」

おそらくは一番レベルの低いしぃのことを気にしていたであろうショボンだったが、あまりのギコの勢いに押されてそこに話を戻せなかった。

(´・ω・`)「えっと…ほかのみんなは?」

視線を一蹴させるショボンにあわせて参加肯定のピースや頷きを見せるメンバー達。

(´・ω・`)「了解。全員参加だね」

.

708 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:50:04 ID:l1O.OzB20

川 ゚ -゚)「ショボン、うちのギルドだけじゃ人数が足りなくないか?」

にっこりとほほ笑んだショボンに向けられるクーの言葉。
ギコやふさは見回して指折り数えている。

(´・ω・`)「今回は『N−S』との合同クエストなんだ。クエストの内容と規定人数、攻守のバランスを考慮してシャッフルさせてもらうよ」

( ^ω^)「ギルド以外のメンバーと組むのも久しぶりだおね」

('A`)「そういえばそうだな。しぃとギコが入るまでは、けっこうやってたけど」

(*゚ー゚)「そうなんですか?」

(´<_` )「プギャーやシラネーヨとは結構やってたぞ」

( ´∀`)「向こうから依頼されたこともあるけど、クエストにあわせて助っ人を頼んだことも多かったもなね」

(,,゚Д゚)「おれもあの二人とは何度か一緒にクエストやら採取やらをしたことがあるぞゴラァ。でもあいつらがこのギルドとそんなにクエストをやっていたとは初耳だぞゴラァ」

(´<_` )「ま、普通は言わないだろうな。基本的に他者のスキルや強さに関して部外者にペラペラ喋るのはマナー違反だし」

( ´_ゝ`)「でもあいつら、最初の時に俺らのことべらべら喋ってたぞ」

( ´∀`)「命が助かった喜びで、しかも助けてくれたのがみんなで嬉しくて、思わずべらべら喋ってしまったって後悔していたもなよ」

(´<_` )「?なんでそんなことを知ってるんだ?モナー」

( ´∀`)「三人で農場にやってきたもな。謝りたいけどショボンの所に直接行くのは恐いから、間を取り持ってほしいって言っていたもなよ」

ξ゚听)ξ「モナーを窓口にするとは、わかっているわね。あいつらも」

川 ゚ -゚)「だな。モナーが窓口だとショボンも怒れない」

(;´∀`)「そんなこともなかったもなよ」

('A`)「そういえば、あのあと何日かしてからショボンの部屋から三人分の悲鳴が…」

.

709 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:51:23 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「ちょ、ちょっと、ドクオ。なに人聞きの悪いこと言ってるの。悲鳴の出るようなことはしてないよ。ちょっと採取や情報集めでお願いをしたくらいで」

ミ,,゚Д゚彡「お願い…」

( ^ω^)「お願い…」

( ´∀`)「お願い…」
 _
( ゚∀゚)「お願い…」

(,,゚Д゚)「お願い…」

( ・∀・)「という名前の?」

( ゚∋゚)《命令or脅迫》

(;´・ω・`)「く、クックル?なんでそんなボードの用意がしてあるの!?」

何人かが表情がなく反復した言葉をモララーがまとめ、クックルが真実に変えると、ドッと笑いが起きた。

(`・ω・´)「ホントにお前らは面白いな」

(´・ω・`)「まったく。だいたい命令なんてできるわけないでしょ。ギルメンにすらそんなことしたことないのに」

ξ゚听)ξ「ないんだ」

川 ゚ -゚)「ないらしいぞ」

( ´_ゝ`)「ないみたいだな」

(´<_` )「ないようだ」

(*゚ー゚)「ないんですか」

('A`)「…脅迫は否定しないんだな」

(´・ω・`)「話が進まないから!」

.

710 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:52:15 ID:l1O.OzB20


 _
( ゚∀゚)ξ゚听)ξ( ^ω^)川 ゚ -゚)( ・∀・)
ミ,,゚Д゚彡( ´_ゝ`)( ´∀`)(,,゚Д゚)(*゚―゚)
         「はーい」
('A`)(´<_` )

( ゚∋゚)《はーい》

▼・ェ・▼「きゃん!」


.
711 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:53:42 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「漫才やコントのスキルとかあるのか?」

(#´・ω・`)「ないよ!」

(`・ω・´)「隠すということはユニークスキルか」

(;´・ω・`)「ないから!」

一連の流れを見ていたシャキンは最初こそ腹を抱えて笑っていただけだったが、最後には真剣に見ており、ぼそっとつぶやいていた。

(´・ω・`)「まったく……なんでこんなことに」

ξ゚听)ξ「で、結局全員参加で良いのよね。シャキンの所を入れれば人数は足りるの?あんたの所も人数四人だから、足りなくない?」

川 ゚ -゚)「『少数精鋭だ!』とか言って増やさなかったんだよな」

(`・ω・´)「ほとんどお前らと合同だったからな。実は最近二人いれたんだ。一人はちょっとおかしいが強いし、もう一人はちょっと変だが強いぞ」

( ´∀`)「つまり『N−S』のメンバーは全員変人ってこともなね」

(`・ω・´)「お前らにだけは言われたくないがな」

.

712 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:54:38 ID:l1O.OzB20


 _
( ゚∀゚)ξ゚听)ξ( ^ω^)川 ゚ ?゚)( ・∀・)
ミ,,゚Д゚彡( ´_ゝ`)( ´∀`)(,,゚Д゚)(*゚―゚)
         「なぜ?」
(´・ω・`)('A`)(´<_` )

( ゚∋゚)《なぜ?》

▼・ェ・▼「きゃん?」


.

713 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:55:49 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「数の暴力ひどいなおい。それとショボンだけでも認めろ」

(´・ω・`)「もちろん、うちも大概だとは思うけど、シャキンの所には負けるというかなんというか」

(`・ω・´)「え!?俺達ってそんな風に思われてたの!?」

ξ゚听)ξ「何をいまさら」

(`・ω・´)「こちらもキャラが濃いのは認めるが、お前らほどではないだろ」
 _
( ゚∀゚)「ハインの趣味と行動は酷いよな」

('A`)

(`・ω・´)「あいつはしょうがない」

( ´∀`)「ミルナも初めて会った時とのキャラの違いがびっくりしたもな」

(`・ω・´)「そうだな。あいつもなかなかだな」

( ´_ゝ`)「デミタスはいいのかあれで?俺が言うのもなんだが」

(`・ω・´)「デミタスはなぁ。腕は確かなんだけど、ちょっとな」

(´<_` )「兄者に言われて反論できないのは厳しいぞ」

(`・ω・´)「だが!今度入ったやつらは」

ξ゚听)ξ「おかしいやつと変なやつなんでしょ?」

(`・ω・´)「……なんだよな」

( ^ω^)「会えるのを楽しみにしてるお」

(´・ω・`)「まだなんかある?」

(`・ω・´)「……とりあえず話を進めよう」

(´・ω・`)「…わかった」

(`・ω・´)「お互いメンバーがメンバーだと苦労するな」

(´・ω・`)「ほんとだよね」

.

714 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:56:59 ID:l1O.OzB20

( ^ω^)「うちもシャキンのとこも、ギルドの中で一番おかしいのはギルマスだお」

(´・ω・`)「またまたご冗談を」(`・ω・´)

ξ゚听)ξ「何故冗談だと思えるかが謎なんだけど」

(´・ω・`)「え?本気で?」(`・ω・´)

川 ゚ -゚)「いい加減話が進まないな」

ぼそっとクーが呟く。
全員が「ほんとだよ」と思ってはいるが、全員が自分が原因だとは思っていない。

(´・ω・`)「さっきから何度か言ってるんだけど」

ξ゚听)ξ「話が長いのよね」

(´・ω・`)「雑談には触れないんだ」
 _
( ゚∀゚)「確かに話が長いよな。もうちょっとサクサク進めてくれないと、頭に入らない」

( ´_ゝ`)「そうだな」

('A`)「結局やるんだから」

(#´・ω・`)「雑談しているのはだれかと小一時間説明する必要があるのかな」

川 ゚ -゚)「そんな話をしている時間がもったいないだろう。ショボン。時々周りが見えなくなるくせはどうにかした方が良いぞ」

(#´・ω・`)

(`・ω・´)「ショボン、落ち着け」

(#´・ω・`)「ん?落ち着いてるよ?なんかへんかな?」

(`・ω・´)「い、いや、落ち着いてるならいいんだ」

隣に座るショボンの目が座ったのを見て、シャキンが恐る恐る声をかける。
その雰囲気に何人かが気付き、さすがに雑談が過ぎたかと姿勢を正しくするが、気付かなかった何人かはそのまま雑談を続けた。

.

715 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:58:56 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「そういうところあるわよね。ショボンって」

( ´_ゝ`)「時々周りが見えなくなることがある」
 _
( ゚∀゚)「目の前のことしか見えなくなるんだよな」

川 ゚ -゚)「まぁそういうな。その集中力で脱した困難も数多い。一人で分かった気になっててイラつくときもあるが、それもまた特性だ」

ξ゚听)ξ「それにしても問題よ。ビーグルと遊ぶ時といい、もうちょっと周りを気にしたほうが良いと思う」

( ´_ゝ`)「あれは面白いからいいだろ」
 _
( ゚∀゚)「あとクエストの時のテンパり具合も問題あると思うぞ」

川 ゚ -゚)「あれは確かにひどいな」

( ´_ゝ`)「クリスマスの時のショボンは」

ξ゚听)ξ「笑ったわよね」

笑う四人。
硬直する残りメンバーと、完全に表情をなくしているショボン。

(;`・ω・´)「しょ、ショボン?」


.

716 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:59:53 ID:l1O.OzB20



(#´   )「       」



.

717 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:01:48 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「お、おちつけ。なぁ」

(#´   )「 だいじょうぶ。 おちついてるよ 」

('A`)「シャキンがいて良かった」

(#´   )「ふさ、今日のデザートはたしかA級食品を使ったあれだよね」

よく通るショボンの声が部屋に響き、笑っていた四人も含めて全員が『A級』に反応してフサギコを見た。

ミ;,,゚Д゚彡「か、カルボーヌの実が手に入ったから、それでベギルカウのミルククリームたっぷりのケーキと、ミンテリア草とクラベリの実と合わせたクラッシュゼリーを作ったから」

ξ゚听)ξ「クリームたっぷりのケーキ…」

川 ゚ -゚)「カルボーヌの実…だと…」

(#´   )「それ、今日の議題があと30分で終わらなかったら全部シャキンにあげていいから。それ以上時間かかったら、もうデザートとか食べてる時間なくなるしね」

川 ゚ -゚)「さ、議題を進めるぞ。ショボン。あとは何を決めればいいんだ?」

(#´   )「   ?   」

ξ゚听)ξ「資料は次で最後のページよね。なになに。あーなるほど。これは大変そうなクエストね。でも、それほどシビアには感じないから、実際動いてみたらいろいろあるんでしょうね」

(#´   )「   まったく…食べ物に目がくらんで   」

ブツブツと呟くショボン。
気付かないふりをして会議を進めようとするクーとツンを筆頭としたショボン以外の全員だったが、基本的に会議の内容はショボンの頭の中のため、しっかりとした進行ができなかった。

(´<_` )「だがショボン、結局人は足りなくないか?うちが14人、シャキンの所が6人で合計20人。マックスで21人必要なんだろ?ビーグルを一人として数えてくれるなら21人になるが、残念だがシステム上ビーグルはモナーの従属扱いだろうし」

(´・ω・`)「そうなんだよね。ビーグルちゃんも一人として扱ってくれればいいんだけど」

弟者の一言にすっと表情を戻して会話を返すショボン。
そのままモナーも巻き込み、ビーグル絡みの話をいくつか繰り広げる。

弟者とショボン以外の全員が心の中で弟者に賛辞を贈った。

(´・ω・`)「人数に関してはパワーバランスとクエストの設定を考えて、班分け時に検討するよ。それこそ誰か声をかけてもいいしね。さて、ではいくつか確認をしつつまとめるよ。資料に書いてあることとその補足説明もするからよく聞いてね」

.

718 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:02:48 ID:l1O.OzB20

クエスト実行日は明後日。
明日は各人準備のこと。
特にブーンとクー、モララーは持っていくPOTやクリスタル、アイテムの確保とメンテナンスを頼むよ。クックルも協力してやってくれ。
レベルはDで、人数は念のため21人分。
兄者と弟者は、明日の夕方から全員分の武器防具のメンテナンスを頼むことになるから、申し訳ないけど店を早めに閉めてくれ。
各人とも、明日の自分の予定を組んだらメンテナンス希望時間を弟者に連絡を。
弟者はスケジュールを組んで、明日中に全員の武器・防具のメンテナンスが終わるようにしてくれ。
兄者、メンテナンス業務嫌いなのは知ってるけど、ここは頼むよ。

もしあと少しでレベルもが上がりそうなら、積極的に明日の夕方まで外に出てレベルを上げてほしい。もちろんソロじゃなく、パーティーでね。
ドクオ、ジョルジュ、皆のサポートも頼む。

スキルの方は新しいものを覚えてもすぐには使いこなせないだろうから、それよりも今使っているスキルの精度を上げるように。もちろん使えるスキルを覚えたら、どんどん使ってくれて構わないけどね。
モナーとモララーは最近戦闘に行ってないと思うから、出来れば45層以上で肩慣らしをしておいてくれると嬉しい。
ふさ、しぃ。これは僕にも言えることだけど、明日は店よりも自分のパラメーターによってはレベル上げを最優先させてほしい。

クエストのパーティーは明日の夜には連絡するようにするけど、クエスト内容、地図は三つとも頭に入れておくこと。
自分たちの行動がほかの二つに影響を及ぼす可能性があることを思考に入れておいてほしい。


以上、他に質問はあるかな?


.

719 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:03:58 ID:l1O.OzB20

全員の顔を見回すショボン。
すっと弟者が手を挙げた。

(´・ω・`)「なに?弟者」

(´<_` )「メンテナンスはシャキンの所もするのか?」

(`・ω・´)「頼みたいところだが、20人分はさすがにつらいだろ。各人に懇意にしているとこもあるだろうから、それぞれにどうにかするよう言っておく」

(´<_` )「わかった。だがもしこっちに来るようなら早めに連絡をくれ」

(`・ω・´)「了解した。俺の分は午前中には連絡する」

( ´_ゝ`)「お前は頼むのか」

(´・ω・`)「他にはー?」

再度全員の顔を見回すショボン。
全員と視線を交わすが、とくに聞くことはないようで誰も何も行動をしない。

(´・ω・`)「じゃあ終わりかな。何かあったら個別に聞くかメッセージでも飛ばして」

手に持っていた資料をテーブルに置き、一回大きく柏手を打つショボン。

その音で姿勢を正すメンバー。

(´・ω・`)「それでは終了します。お疲れ様でした」

 _
( ゚∀゚)ξ゚听)ξ( ^ω^)川 ゚ ?゚)( ・∀・)
ミ,,゚Д゚彡( ´_ゝ`)( ´∀`)(,,゚Д゚)(*゚―゚)
         「おつかれさまでした!」
('A`)(´<_` )

( ゚∋゚)《おつかれさま》

▼・ェ・▼「きゃん!」

(`・ω・´)「おつかれさま!」


.

720 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:05:17 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「よっしゃ!ふさ!デザートよろしく!」

川 ゚ -゚)「待てツン、その前に隣に移動だ!」

(*゚ー゚)「ケーキにあうお茶を淹れますね」

席を立つ三人。
連れだって部屋を出て隣に向かう。

( ^ω^)「デザートたのしみだお」

('A`)「この世界じゃ太らなくてよかったな」

( ^ω^)「ツンとクーが睨んでるお。ドクオ」

('A`;)「お、おれはブーンに言ったのであってお前たちに言ったわけでは…って、ブーンあいつらもういないじゃねぇか」

( ^ω^)「おっおっおっ」
 _
( ゚∀゚)「ドクオはもうちょっと太りたいところだな」

('A`)「言うな。でもおれはこれで良いんだよ」
 _
( ゚∀゚)「身長も…」

('A`)「言うなこのやろう」

( ^ω^)「おっおっおっ。痩せることもできないからつまらないおね」

('A`)「冗談は体だけにしておけ」

(#^ω^)「ぼくだって痩せたことくらいあるお!」
 _
( ゚∀゚)「どれくらい落としたんだ?」

('A`)「ジョルジュ、相手にするだけ時間の無駄だから」

.

721 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:07:53 ID:l1O.OzB20

(#^ω^)「二キロ!」
  _
( ゚∀゚)「ホントに無駄だった」

('A`)「だろ」

(#^ω^)「ぼくが二キロ痩せるのに、どれほど厳しい毎日を」

('A`)「ハイハイ分かったから」
  _
( ゚∀゚)「はやく隣の部屋に行こうぜ」

( ´_ゝ`)「あー長かった」

(´<_` )「その責任の一端が兄者もあるだろう」

( ´_ゝ`)「おれに?」

(´<_` )「ダメだこの男。はやくなんとかしないと」

( ´∀`)「弟者は、なんで仕事用のハンマーを今取り出しているもなか?」

▼・ェ・▼「くぅ〜ん」

(,,゚Д゚)「ビーグルはもう眠たいみたいだぞゴラァ」

( ´∀`)「いつもならそろそろ眠る時間もなからね。向こうの部屋で、ちょっと寝かしてあげるもなよ」

( ゚∋゚)《しょぼんにじゃまされないとよいな》

(;,,゚Д゚)「それはさすがにだぞゴラァ」

それに続き、それぞれに席を立って隣の部屋に向かうメンバー達。

.

722 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:09:51 ID:l1O.OzB20

ミ,,゚Д゚彡「シャキン、シャキン」

(`・ω・´)「お、どうした?」

ミ,,゚Д゚彡「お土産は別に用意してあるから、持って帰るとよいから」

シャキンの目の前に浮かぶトレードウインドウ。
そこにはケーキとゼリーの名前があり、それぞれ六つ入っていた。

(`・ω・´)「!いいのか?A級食材なんだろ」

ミ,,゚Д゚彡「多量に手に入ったから、サンプルでいろいろいっぱい作ったから。クエストの日に感想を聞きたいから」

(`・ω・´)「分かった。感想を提出させるよ。フサギコの作る料理も美味しいが、特に甘いものは別格だからな。食べるのが楽しみだ。ありがとうな」

ミ*,,゚Д゚彡「照れくさいから!」

シャキンを呼び止めるフサギコ。
仲良さそうに連れだって部屋を出ていく。

その後ろをウインドウを開いたモララーが続く。

『ξ゚听)ξ「しょうがないから、サンプルは明々後日まで待ってあげる」』

(#・∀・)「アホか!」

思わず叫んだモララー。
びっくりしたように前にいたシャキンとフサギコが立ち止まって振り向くが、ウインドウに向かって悪態をついているモララーを見て苦笑しながら隣のリビングに向かう。

モララーの耳に届く、さらなるメッセージ着信音。

『ξ゚听)ξ「嘘よ。さすがにそこまで鬼じゃないって。もし明日までに作ってくれても、明後日のクエストには間に合わないだろうから、そこまで急がなくていい わ。でも出来れば四日後までにお願い。追加報酬は、デレのオーダー品の受け渡しをあんたの店でしてあげるってことでどうよ』

( ・∀・)「『了解した』っと」

メッセージをすぐさま返すモララー。
受け取ったツンが馬鹿にしたように笑うのが容易に想像できるが、そんなことは気にしていられない。
彼は愛に生きる男なのである。

ウインドウを閉じ、にこやかに部屋を出るモララー。

それを見守って、最後に部屋を出るショボン。
扉の横にあるコンソールを操作すると、部屋の電気がすべて消える。

(´・ω・`)「疲れた……」

思わず漏れた深いため息は、夜の静けさに溶けて行った。

.
725 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:40:12 ID:l1O.OzB20



2.一人歩く、白夜の道を




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726 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:41:11 ID:l1O.OzB20

二日後早朝。
第49層主街区。転移門前。

大きな街に備え付けてある転移門からは、どの層のその街の転移門へもテレポートすることができる。
もちろんそれは、解放された層の、解放された街の、解放された転移門同士の話ではあるが。
つまりたとえレベル1の初心者でも、転移門さえあれば最前線の街に行くことが可能なのである。

上の層の街ならレベルの高い武器や防具、そしてアイテムなどが手に入るため店目当てでやってくる者も多数いるが、それよりなにより新たな層の新たな街にやってきたいと思うものが数多くいるため、最前線に近い街は賑わうのが常だった。

何故人が集まるのか。

当然といえば当然なのかもしれない。
このソードアートオンラインというデスゲームは全百層になる浮遊城アインクラッドにおいて行われている。第一層、一番下の層から始まったこのゲームにおいて、上の層ということはそれだけクリアに近付いている証拠なのである。

その喜びを、新たな景色を見ることができる喜びを噛み締める為に、プレイヤーは新しい街にこぞってやってくるのであろう。

攻略組が心と命をすり減らしながら戦ってくれた結果であるそのことを、真剣に感謝しているものがどれほどいるのかは分からないが。

普段なら人の行き来の激しい転移門広場だが、今は早朝ということもありまだ人影もまばらだった。
その中に二つの集団が見える。

ギルドVIPとギルドNSである。

.

727 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:43:07 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「ギルドVIP、全員居るね」
 _
( ゚∀゚)ξ゚听)ξ( ^ω^)川 ゚ ?゚)( ・∀・)
ミ,,゚Д゚彡( ´_ゝ`)( ´∀`)(,,゚Д゚)(*゚―゚)
         「はーい!」
('A`)(´<_` )

( ゚∋゚)《はい》

▼・ェ・▼「きゃん!」

(`・ω・´)「ギルドNS!全員居るな!」

( ゚д゚ )「点呼なんて今までやったことないだろう?」

(´・_ゝ・`)「どうした?いったい」

(゚、゚トソン「そうなんですか?」

<_プー゚)フ「いるぞ!おれはいるぞ!」

从*゚∀从「ドクオ…かっこいい……」

(`・ω・´)「やってみたかったんだよ!…ほんとにうちの方が変人だらけなのかな」

それでもまとまって全員の顔をチェックしているVIPのメンバーに比べ、半数以下なのにそれぞれ勝手なことをしているN−Sのメンバー。

うなだれるシャキンのそばにやってくるショボン。

(´・ω・`)「シャキン、こっちは全員そろったけど」

(`;ω;´)「いい気になるなよ!点呼くらいで!」

(´・ω・`)「え?なに?どうしたの?」

涙目でこちらを見るシャキンに戸惑うショボン。
助けを求めるように、一番近くにいたN−Sのメンバーに声をかける。

.

728 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:44:23 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「久しぶりだね、ミルナ。これ、一体どうなってるのかな?」

( ゚д゚ )「気にしないでくれ。いつも通りおかしいだけだ」

(´・_ゝ・`)「VIPみたく声掛けをしてみたかったようだが、うちのギルド、しかもこのメンバーでやれるわけがなくてな。で、いじけたんだ」

(´・ω・`)「なるほどね。説明ありがとう。デミタスも久しぶり」

( ゚д゚ )「久しぶりだな、ショボン」

(´・_ゝ・`)「数か月ぶりか?」

(´・ω・`)「二人ともまた会えて嬉しいよ」

( ゚д゚ )「お前の所も相変わらずのようだな」

(´・ω・`)「二人増えたけどね」

(´・_ゝ・`)「知ってる。今日のクエストが楽しみだ」

( ゚д゚ )「おれたちと同じパーティーにしてくれたのは、顔見せ力見せってことだろ?」

(´・ω・`)「クエスト内容とバランスで分けたつもりだけどね。意識はしたけれど。それに、君たちの所の新人さんの力も見せてもらうよ」

笑顔でうなずきあう三人。
そこにやっと涙を拭いたシャキンが割り込んだ。

(`・ω;´)「グズ…グズ…うちの…新人も……強いぞ……」

(´・ω・`)「あ、うん、とりあえず鼻も拭いて」

(;゚д゚ )「まったくうちのギルマスは…」

(;´・_ゝ・`)「ほんとだよ」

(`;ω・´)「この…グズ…ギルドで……グズ…点呼…やりたかった…」

( ゚д゚ )「泣くな。今度やってやるから」

729 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:45:25 ID:l1O.OzB20

(`;ω;´)「ほんとか…?」

(´・_ゝ・`)「ほんとほんと。ちゃんと点呼の練習もしような」

(`・ω・´)「ぜったいだからな!」

(´・ω・`)「復活はや!」

( ゚д゚ )「いつものことだ」

(´・_ゝ・`)「はぁ…」

(゚、゚トソン「あの…」

ハインほどではないが長身の女性が近寄ってきた。
柔らかいベージュの長い髪をひとまとめにしており、細い銀縁の眼鏡をかけている。

( ゚д゚ )「どうした?トソン」

(゚、゚トソン「そちらがギルド『V.I.P.』のギルマスの方ですか?」

(´・_ゝ・`)「ショボン、これがうちの新人の一人、トソンだ」

(´・ω・`)「初めまして。V.I.P.でギルマスをやっているショボンです」

(゚、゚トソン「初めまして。トソンと申します。以後宜しくお願いいたします」

(´・ω・`)「こちらこそ。よろしく」

ショボンが手を差し出し、握手をする二人。

(´・ω・`)「このギルドにしてはまともなメンバーが入ったね」

横にいるミルナとデミタスに向けて驚いたように話す。

( ゚д゚ )「……」

(´・_ゝ・`)「一見な」

(´・ω・`)「?」

.

730 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:46:33 ID:l1O.OzB20

(゚、゚トソン「ところでショボンさん、この二つのギルド、VIPとNSはとても懇意にさせていただいていると聞き及んでおります。一時は一つのギルドではないかと思われるほどに一緒に行動していたとか」

(´・ω・`)「ああ、そうだね。お互いのギルドの足りないところを補うというか…」

(゚、゚トソン「それでは是非我々にもギルドの恩恵をいただけないでしょうか」

(´・ω・`)「恩恵?」

(゚、゚トソン「バーボンハウス、雑貨屋booon、流石武具店、モララー細工工房、VIP農場と牧場での買い物を、是非ギルド価格で!」

(´・ω・`)「へ?」

(゚、゚トソン「他にもありますね、表には出てませんが裁縫師ツンさんの作る衣服のオーダーも是非!」

(´・ω・`)「いや、その…」

(゚、゚ トソン「ダメですか?良いじゃないですか。仲の良いギルドで一緒にクエスト攻略を行う仲なんです!仲の良いギルドが全滅してもいいんですか?クリスタル一 つ、POT一つ買えなかったせいで死んでしまうかもしれないんですよ?ショボンさんはその結果に耐えられるんですか!?」

(´・ω・`)「ええ……」

(゚、゚トソン「そうですか。ダメですか。私たちが死ぬ思いをしてもいいんですね。そうですか。そうですよね。所詮自分のギルドだけが裕福ならいいんですよね。わかりました。仕入れ単価とは言いません。3割引き、いや、しょうがない、2割引きではどうですか?」

(´・ω・`)「……トソンさん」

(゚、゚トソン「その気になっていただけましたか!?」

(´・ω・`)「君もやっぱりこのギルドのメンバーなんだね」

(゚、゚トソン「?ちょっと言っている意味が分かりませんが、どうでしょう、よくお考えいただけませんか?」

.

731 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:48:09 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「はいはいトソン、とりあえずそれくらいにしておこうか」

(゚、゚トソン「シャキンさん!ですがこういったことは早めに」

(`・ω・´)「クエストの時間が差し迫ってるからね。今日はクエスト優先。その辺の話は僕からも相談しておくから。」

(゚、゚トソン「…はい…わかりました」

一礼し、けれどぶつぶつ言いながら恨めしそうにこちらを見る。

<_プー゚)フ「シャキン!戦闘はまだか!?」

(`・ω・´)「エクスト、お前もちょっとこっちにこい」

<_プー゚)フ「なんだなんだ!」

真っ赤に染め上げた大ぶりの両手剣ぶんぶん振り回しながらシャキンに声をかけた青年を呼ぶ。

(`・ω・´)「こいつがもう一人の新人、エクストだ。エクスト、こちらがギルドV.I.P.のギルマス、ショボンだ」

<_プー゚)フ「おれがエクストだ!」

(´・ω・`)「ショボンです。よろしく」

ショボンが差し出した手を掴んでぶんぶんと振るエクスト。
肩に担いだ両手剣が動きにあわせて揺れて周囲の人間に当たりそうになるが、NSのメンバーは慣れているのか器用によけている

<_プー゚)フ「お前あれだろ、お前と戦うと自分の力が何倍にもなるんだろ?おれ、今日の戦闘が超楽しみだからな!」

(´・ω・`)「いや、そんなことは」

<_プー゚)フ「みなまで言うな!みんな言ってる!さあ戦闘だ!」

駆け出してまた素振りを始めるエクスト。
心の底から嬉しそうな笑顔で両手剣を振り回している。

(´・ω・`)「彼はこういうキャラなんだ。……しかしこのギルドのメンバーはもう…」

(`・ω・´)「すまんなショボン」

( ゚д゚ )「まさかこんな奴らだとは思わなくてな」

(´・_ゝ・`)「腕は確かなんだ。腕は。性格は……だがな」

既に疲れたように肩を落とすショボンに声をかけながら三様にため息をつく三人。

.

732 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:48:53 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)( ゚д゚ )(´・_ゝ・`)
「しかしこのギルドでまともなのはおれだけだな」

.

733 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:49:47 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「おいおい」

( ゚д゚ )「何を言っているんだ二人とも」

(´・_ゝ・`)「もう少し自らを省みたほうが良いぞ」

(#`・ω・´)

(# ゚д゚ )

(#´・_ゝ・`)

(´・ω・`)「まったくこのギルドは…」

从*゚∀从「どっくんカッコいい……」

(´・ω・`)「……まったく」

あからさまに疲れた様子を見せるショボン。
そんなギルマスの様子を見て、VIPのメンバーが近寄ってきた。



.

734 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:51:35 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「それでは、昨日送った班ごとに分かれてください」

「はーい!」《はい》「きゃん!」
  _
( ゚∀゚)( ・∀・)ミ,,゚Д゚彡<_プー゚)フ(゚、゚トソン

(,,゚Д゚)(*゚ー゚)('A`)从 ゚∀从( ゚д゚ )(´・_ゝ・`)

川 ゚ -゚)( ゚∋゚)( ´∀`)▼・ェ・▼( ^ω^)ξ゚听)ξ( ´_ゝ`)(´<_` )

(`;ω;´)「なんでみんなショボンの号令だとちゃんと返事をするんだ」

(´・ω・`)「まぁまぁ」

自分の隣に立つシャキンを慰めつつ三組に分かれたメンバーを見回すショボン。
VIPだけで固まった班が一つあるが、残りの二つは混合パーティーのためそれぞれに会釈をしたり挨拶をしていた。

(´・ω・`)「ちょっと心配だったけど何とかなりそうだね」

(`;ω・´)「お前の所だけ人数少ないけど大丈夫か?」

(´・ω・`)「とりあえず涙を拭こうよ。本当はもう一人いるとよかったんだけどね。各クエストの攻略内容と戦力と機動性のバランスを考えると、この班分けがベストだから」

(`・ω・´)「そうか。機動性か。なるほどな」

涙を拭いたシャキンが三つの班を見て頷く。

(´・ω・`)「うちのギコとしぃ、そっちのエクストとトソンは新規で未知数だけどね。ドクオも付けたから、そっちは大丈夫でしょ」

(`・ω・´)「うちの二人も大丈夫だ。存分に使ってやってくれ」

('A`)ノ「はい!」

.

735 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:52:21 ID:l1O.OzB20

从*゚∀从「なに?どっくん」

('A`)「おまえじゃない。いや、お前はとりあえずおれの左手に絡めた手を外せ」

从*゚∀从「えー。やだー」

(`・ω・´)「ハイン…」

(´・ω・`)「どうしたの?ドクオ」

パーティーごとに分かれた真ん中にいるドクオ。
その横にはぴったりと寄り添ったハイン。
身長差があるため手の位置があっていないが、ドクオの左手は器用にハインの右手が絡んでいる。

(;*゚ー゚)「ホントに本当なんだ…」

(,,゚Д゚)!?

ギコとともにその後ろに立つしぃが、ぼそっと呟く。

('A`)「パーティーの組み直しを要求します」

(´・ω・`)「却下します。ではスケジュールを確認しまーす」

('A`)キノウメッセージガトドイタジテンデヘンコウヲタノンダノニムシシヤガッテショボンノヤロウ

从*゚∀从「どっくん、私に愛をささやくならクエストが終わった後でが良いな。それとも今から二人でどこかに」

('∀`)「さあクエスト頑張るか!」

从*゚∀从「笑顔も素敵だ」

新人四人はさすがにびっくりしたように二人を見ているが、他のメンバーは慣れたもので全く気にしていなかった。
一見いろいろな意味で不似合いな二人だが、慣れてくるとこれはこれでありだとも思えてくるから不思議だとメンバーのほとんどが思っているのはドクオには誰も言わず、ハインには含みを込めて「お似合いだよ」と言っていた。

.

736 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:53:27 ID:l1O.OzB20

(´・ ω・`)「パーティーはABCの三つ。Aのリーダーは僕ことショボン、副リーダーはモララー。あとはジョルジュ、フサギコとエクストとトソンの6人。Bの リーダーはシャキン、副リーダーはミルナ、あとはハインとデミタス、ドクオ、ギコ、しぃの7人。Cのリーダーはクー、副リーダーはクックル、モナー、ブー ン、ツン、兄者と弟者の7人とビーグル。クエスト内容からこの班分けをしましたが、ドクオ以外で意見のある人いますかー」

ぶつぶつと呟くドクオをよそに、問題なしとうなずいたりサムズアップをするメンバー達。

(´・ω・`)「大丈夫そうだね。じゃあリーダーは各人をパーティーに誘ってください。」

そう言いながら自らもウインドウを出すショボン。
シャキンとクーもウインドウを出し、そばにいるメンバーからパーティー申請を行っていく。

(´・ω・`)「POT類はVIPのメンバーにはもう配ってあるけど、NSの皆には今送るから、確認してください。パーティー用のPOTは、パーティー用の共通タグを作ってそこに保存するかするように」

(゚、゚トソン「!こんなにいっぱい!でもこの費用は」

(´・ω・`)「使わなかった分は返してもらって、使った分は原価で買い取りか、クエストの報酬の割合をこちらを増やしてもらうことで相殺します」

(゚、゚トソン「原価!素晴らしい!」

川 ゚ -゚)「原価といっても作ったの私達だから、ほとんどが言い値だけどな」

目を輝かせたトソンを見て呟くクー。
幸いなことにトソンを始めNSのメンバーには聞こえていなかったため、特に問題は起きなかった。

(´・ω・`)「準備は終わったかな?」

(`・ω・´)「ああ、大丈夫だ」

川 ゚ -゚)「こちらも問題ない」

(´・ω・`)「それでは改めて。今回の3クエスト同時クリアを統括指揮するショボンです。よろしく」

湧き上がる拍手。

(`・ω・´)「副統括のシャキンだ!」

VIPのメンバーから拍手が湧く、NSのメンバーからブーイングが湧く。

(`・ω・´)「いいもん、負けないもん」

.

737 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:54:39 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「統括指揮といっても全体スケジュールを組んだくらいで、現場では各パーティーのリーダーが指揮を執ります。全体のスケジュールも昨日のうちに送ったので全員読んで理解し、頭にいれておいてくれていると思いますが…」

全員の顔を見るように視線を走らせるショボン。
目をそらすジョルジュ、エクスト、兄者、ギコ、そしてシャキン。

(´・ω・`)「え?ちょ?シャキン?」

(`・ω・´)「ウソウソジョーダン、昨日のミーティングでやったこともちゃんと覚えてるし、理解してる」

(´・ω・`)「……ミルナ、デミタス、シャキンのサポート頼むよ」

( ゚д゚ )「心得た」

(´・_ゝ・`)「いつものことだ」

(`・ω・´)「ちょっとした茶目っ気なのにな」

(´・ ω・`)「今回は三つのパーティー、A班B班C班でそれぞれ別のクエストを攻略します。そしてそれぞれの行動が他の違う二つの班の攻略をしやすくしたり大 変にしたりと、かなり干渉しあうと思われます。効率良く行うためにはタイムスケジュールが重要です。各リーダーは時間に注意しつつ、副リーダーはリーダー のサポートを、メンバーはリーダーの言うことを聞いて余分な動きは出来るだけ排除し、クエストクリアを目指してください。また、班によってクエストクリア に必要な素材も違うので、自分の班に必要のない素材に関しては、採取時に場所及び種類を充分注意してください。ポイントとなるエリアは全部で9つ。便宜上 名前を付けてあります。クエストの始まるこの【街1】、それを中心に東にある花を採取する【花畑】、実を採取する北の【大樹】、薬草を採取する東の【叢 1】と東南の【叢2】、南の【湖】では水を採取、北東の【村】では追加クエスト、【村】の北にある【山】では討伐対象との戦闘、北北西の先にも追加クエス トの発生する【街2】。班によっては行かない場所もありますが、位置の確認は全員がしてください。以上のポイント以外の場所での採取は基本自由です。ま た、今回のクエストは未クリアクエストです。攻略組が途中まで攻略した情報をもとにスケジュールを立てましたが、追加クエストや追加採取がないとも限りま せん。その場合はリーダーの権限で続行・中止を決定。情報はメッセージで他の二班のリーダーと副リーダーに送ってください」

ショボンの言葉をうけ、全員が真剣な目でうなずく。

(´・ω・`)「クエストフラグは原則としてリーダーが立ててください。POT強化は今回は二人設定で。リーダーともう一人、これは副リーダーでなくてかまいません。リーダーとのポジショニングの関係をみて、パーティーごとに相談して設定してください」

.
738 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:55:49 ID:l1O.OzB20

聞きなれない言葉を聞いて不思議そうな顔をするエクストとトソン。
それを見たモララーがそっとそばによる。

( ・∀・)「POT強化についてはあとで教えてやる。今は聞いとけ」

<_プー゚)フ「わかったぞ」

(゚、゚トソン「お願いします」

モララーの行動を視界の端で確認しつつショボンが話を続ける。

(´・ ω・`)「C班が回るルートには毒を使うモンスターが多数出るので、対毒POTは必要に応じて全員使ってください。B班も一部重なるので、対毒及び毒消し 系を多めに支給してあります。ここらへんは臨機応変に。今回は最前線にも近いフロアです。出てくるモンスターも一筋縄でいかないモノも出てくるでしょう。 準備は確実に行ってください。あとフラグを立てる時間にも注意を。クエスト自体は三つとも9時からフラグ立てを出来ますが、出発時間は予定通りにスタート してください」

そこで一息つき、全員の顔を見るショボン。
それぞれに黙って聞いていたり自分のウインドウを開いてもらっている資料を読んでいたメンバーが、不思議そうにショボンの顔を見る。

(´・ ω・`)「いろいろ言いましたが、今回はあくまでもクエスト攻略がメインです。出来る限りの力をかけてクエスト攻略を目指しますが、命の危険は出来るだけ 避け、安全にことを進めましょう。コルもPOTもクリスタルもこの先頑張ればどうにかなりますが、命には代えられません。時には逃げる英断を、クエストを 途中で放棄することもいとわない様に。特にリーダーはすべてのタイミングを逃さないように細心の注意と決断をしてください」

真剣に語るショボンの言葉を真剣に受け止めるメンバー。
それを感じ、ショボンがにっこりとほほ笑む。

.

739 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:56:47 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「以上!」

(`・ω・´)「目標3クエストの攻略!夜には全員生きてこの場に集合だ!」

「おーーーーー!!!!」
            _
(´・ω・`)( ・∀・)( ゚∀゚)ミ,,゚Д゚彡<_プー゚)フ(゚、゚トソン
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)('A`)从 ゚∀从( ゚д゚ )(´・_ゝ・`)
川 ゚ -゚)( ゚∋゚)( ´∀`)▼・ェ・▼( ^ω^)ξ゚听)ξ( ´_ゝ`)(´<_` )

シャキンの号令で雄叫びを上げるメンバー達。

早朝とはいえちらほらと歩いているプレイヤー達が何事かとこちらを見る。

(`;ω;´)「よかった。今度はみんな答えてくれた」

時間は、朝八時を過ぎたところだった。


.

740 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:59:38 ID:l1O.OzB20

A.ショボン班:【街1】



(゚、゚トソン「!なるほど。そのシステムは良いですね」

<_プー゚)フ「戦いに余裕ができるな」

ミ,,゚Д゚彡「実際そのおかげで危機に陥らなかったこともあるから」

(゚、゚トソン「ですがやはり、そのシステムができるのはメンバーに道具屋や薬剤師がいるからであって…」

モララーからPOT強化システムの説明を受けたトソンとエクスト。
二人とも納得して感心しているが、トソンの目が怪しく光る。

(゚、゚トソン「やはりショボンさん、先ほどの話ですが」

(´・ω・`)「あれ、メッセージだ。ごめんモララー、フラグ立てる家まで先頭を頼むよ」

( ・∀・)「はいはい」

先頭を歩いていたショボンに駆け寄ろうとしたトソンだったが、ショボンがウインドウを出したため舌打ちをしながら歩行を緩める。
モララーがかわりに先頭に立ち、フサギコがその横に駆け寄った。

( ・∀・)「どうした?」

ミ,,゚Д゚彡「一緒にパーティー組むの久しぶりだから」

( ・∀・)「そういやそうだな。俺ら盾無しアタッカーは振り分けられること多いからな。っていうか、今回のメンバー誰も盾持ってないけど振り分けこれで良いのか。おい、ジョル!」
  _
( ゚∀゚)「ん?なんだ?」

ショボンの隣をだらだら歩いていたジョルジュがフサギコの横に足を進めた。

( ・∀・)「お前今日盾装備じゃないの?」
  _
( ゚∀゚)「ショボンから指定来てないからいつも通りの両手剣だ」

.

741 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:01:50 ID:l1O.OzB20

ミ,,゚Д゚彡「両手剣なら盾代わりもできるから」

( ・∀・)「代わりってのは語弊があるだろ」
 _
( ゚∀゚)「もともとうちのギルドは盾スキル活用している奴少ないからな。代わりに防御系のスキルは鍛えさせられるけど」

( ・∀・)「えっと…エクスト!トソン!ちょっといいか!」

ショボンの後ろを歩いていた二人に声をかける。

<_プー゚)フ「なんだなんだ!」

(゚、゚トソン「なんでしょう」

走り出すエクストを見て後を追うトソン。

( ・∀・)「エクストの両手剣はこの前カラーリングと装飾をする時に散々見たしさっきも振り回してたからいいとして、トソンのメイン武器はなんだ?」

(゚、゚トソン「そういうあなたは?」

( ・∀・)「え、なに、おれのことがそんなに気になる?」

(゚、゚;トソン「そ、そういうことではなくてですね。…はぁ、わたしは両手槍です」
 _
( ゚∀゚)「ってことは、こいつも盾無しか」

ミ,,゚Д゚彡「結局盾使いが誰もいないから!」

(゚、゚トソン「そうなんですか?」

( ・∀・)「おれが爪」

ミ,,゚Д゚彡「刀だから」
 _
( ゚∀゚)「両手剣」

( ・∀・)「ショボンは投擲系武器」

.
743 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:02:50 ID:l1O.OzB20

(゚、゚;トソン「投擲?」

<_プー゚)フ「なんだそりゃ。あれって役に立つのか?」

ミ,,゚Д゚彡「戦いを楽しみにすると良いから!」

投擲という言葉を聞いて困惑した二人を見て、フサギコが少し怒ったように、けれど誇らしく胸を張る。

(゚、゚トソン「はぁ…」

<_プー゚)フ「まぁ別に良いか!モンスターはおれが全部倒せば済むことだ!」

( ・∀・)「しかし、そうなると今回のフォーメーションは…」

(´・ω・`)「トップにジョルジュとエクスト。二列目にモララーとフサ。三列目にトソンと僕。これで行こうと思ってる」

いつの間にかウインドウを消していたショボンが後ろから声をかけた。

そしてすっと前にいた五人に近寄ると、自然とショボンを囲むように歩きはじめる。

(´・ω・`)「特攻の一列目。二人とも両手剣で威力が高いから敵がノックバックして固まる可能性が高い。追撃は近接のモララーか連撃のフサ。取りこぼし及び多方向からの追撃をトソンの槍と僕で対処。で、行けるかなと思ってるんだけどね」

(゚、゚トソン「…なるほど。効率が良い戦いのように思えますね。紙の上でなら安心して戦えそうな」

ミ#,,゚Д゚彡「……ショボンが考えたフォーメーションだから」

(´・ω・`)「それは、みんなの動き次第だよ。それにこの班は時間通りに所定の敵を倒すことが一番大事だから、それ以外の敵に関しては時間を見て戦うか決めるから、そこらへんも考慮してよろしく頼むよ」

にっこりほほ笑んだショボンに軽く会釈で返すトソンとエクスト。
その微笑みを見て心の中で冷や汗を流すジョルジュとモララー。
何故か得意げに胸を張るフサギコ。

(´・ω・`)「さ、クエスト受理の民家に着いたみたいだね。中に入って、クエスト開始と行こうか」



.

744 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:04:10 ID:l1O.OzB20

B.シャキン班:【街1】



(`・ω・´)「ってことで、おれ達のやるのは北東にある【村】のさらに北にある【山】にいる狼型のモンスターを倒すことだ」

街の中心にある大きな教会で、北東の村からきた使いからクエスト受けたシャキン達が、教会前の広場で打ち合わせをしていた。

( ゚д゚ )「そして、そのためにはこの街の南にある【湖】でイベントアイテムの水をくむことが必要と」

ミルナが右手の人差し指と親指でつまんだ小瓶を目の高さでゆらゆらと振る。

(´・_ゝ・`)「更に途中でこの街の東にある【花畑】で青い花を摘んでいくと」

(*゚ー゚)「この二つが狼を出現させるためのイベントアイテムってことですね」

(´・_ゝ・`)「おそらく」

( ゚д゚ )「ただ、直接山に向かうのではなくその前に【村】に寄らなければならないらしいから、その際にこの二つを使う可能性はあるな」

('A`)「狼型モンスターを、村でどう扱っているかにもよるな。ただの邪魔物なのか、神聖視しているか」

从 ゚∀从「さすがドックン目の付け所が素敵だ。そういえばさっきの男は『山の主』としか言っていなかったな」

('A`)「いい加減手を離さない?」

从 ゚∀从「やだ。久しぶりだもん。もうちょっと」

('A`)「……はぁ」

(,,゚Д゚)「それによって戦い方の違いはあるのかゴラァ」

(`・ω・´)「基本的にはないよ。ただ神聖視されている場合付加的能力を持っていることが多いな」

.

745 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:05:15 ID:l1O.OzB20

(*゚ー゚)「付加的能力?」

( ゚д゚ )「基本ボスキャラだから弱いわけがない。もちろんフロアボスとは比べ物にならないだろうが。だが毒・麻痺系の属性攻撃は通常のモンスターより確率が高いし威力もある」

(´・_ゝ・`)「あと火を吐いたり電撃のような攻撃をしてくる敵もいる。神聖視されている場合はそういった通常攻撃以上に付加的能力が脅威になることが多いような気がする」

(`・ω・´)「戦闘時の対麻痺・対毒POTは散策時とは別のをショボンから預かっている。村での情報によっては戦闘前から飲むことになるだろうな」

デレデレとしたハイン以外の全員が真剣な面持ちで頷く。
そのハインもドクオに睨まれて表情を引き締めた。

(`・ω・´)「村に入る前には他の班との兼ね合いで実の採れる【大樹】エリアでの戦闘もある。すべての戦いにおいてだが、気を引き締めていくぞ!」

頷きあうメンバー。

(`・ω・´)「…今度は掛け声とかしてくれないんだ…」

( ゚д゚ )「そろそろ出発時間だな。行くか」

シャキンの呟きをスルーして出発用の門に向かうメンバー。
一人取り残されるシャキン。

(`;ω;´)「うっ…」

ある程度離れた後、ハインに耳打ちされたしぃがシャキンのもとに駆けて戻ってくる。

(`;ω;´)「しぃちゃん、しぃちゃんだけだよ気にしてくれるのは」

(*゚ー゚)「シャキンさん」

(`;ω;´)「ありがとう、しぃちゃん」

(*゚ー゚)「いい加減めんどくさいんだボケ。さっさと行くぞゴルァ」

(`・ω・´)「…え?」

(*゚ー゚)「って、ハインさんから言付です。それじゃあ、先に行ってますね」

(`・ω・´)

ぺこりとお辞儀をして、止まって待っていたメンバーの元に走って戻るしぃ。

(`・ω・´)「ああ、うん、待ってくれるかな」

慌てて走り出すシャキン。

既に歩き出していたメンバーと合流できたのは、出発の門の手前だった。
.

746 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:06:42 ID:l1O.OzB20

C.クー班:【叢1】



川 ゚ -゚)「ブーン右!」

クーの指示によって右を見たブーンの目前、タヌキのような顔をした人型モンスターが曲刀を振り上げていた。

( ^ω^)「当たらないお!」

間 合いを測るように手のひらを敵に向けて右手を伸ばし、振り下ろされた曲刀をほんの少しだけ左にステップを踏むことで避け、左手で持った片手剣を光らせなが ら左下から右上に一閃し、そのまま真下に振り下ろして敵の刀を持つ手を切り落とし、更に右下から左上に手首を返しながら剣を振り上げる。

モンスターの体に大きく刻まれるバツの文字。

川 ゚ ?゚)「ツンスイッチ!」

クーの言葉の前にブーンの右下に低い姿勢で剣を構えたツンが駆け込み、そのまま水色に光らせた例ピアをモンスターの顎に一突きした。

ξ゚听)ξ「どうだ!」

剣技の流れのまま二つ目の突きを打とうとするツンの視界の中で敵のHPバーの赤いドットがすべて消え、モンスターがポリゴンと化した。

ξ゚听)ξ「よし!」

二発目をキャンセルしたツンが細剣を払いながら周囲を見ると、それぞれに戦っていたメンバーは、それぞれに対していたモンスターをポリゴンと変えていた。

川 ゚ -゚)「これでこのエリアの敵は一掃できたな」

薬草を採取するエリア【叢1】での戦いを終了させたメンバー達が、中央に立つクーのもとに近寄る。

( ´∀`)「けっこう手間取ったもなね」

.

747 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:08:18 ID:l1O.OzB20

(´<_` )「時間は大丈夫か?」

( ゚∋゚)「大丈夫だな。予定よりは数分余裕がある。」

( ´_ゝ`)「ホントにギリギリのスケジュール組んだんだな。ショボンは」

ξ゚听)ξ「私たちの戦闘力と情報から全部計算してるんだから、いつもの事とは言え感心するわよ」

川 ゚ -゚)「とはいえ余裕はないな。採取を終わらせて先に進もう」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

淡く光る薬草の前にお座りをしてモナーを呼ぶビーグル。

( ´∀`)「ビーグルが見つけたもなよ」

川 ゚ -゚)「良いぞビーグル」

駆け寄り、ビーグルの頭をひと撫でしてから薬草を採取するクー。
その後ろからきたモナーがビーグルを抱き上げる。

( ´∀`)「えらいもな」

▼*・ェ・▼「くーん」

( ´_ゝ`)「次はどこだ?」

( ^ω^)「【村】だおね。今とった薬草を村の道具屋に届けるんだお」

(´<_` )「そこで次のクエストか」

ξ゚听)ξ「次っていうより、追加?最初のクエストがまだ終わらないし」

川 ゚ -゚)「採取終了!」

採取をしていたクーの周囲を警戒しつつも呑気に喋っているメンバー達。
立ち上がったクーが振り返り、にやっと笑う。

川*゚ -゚)「限度いっぱい採れた」

ξ゚听)ξ「はいはい、おめでとう」

.

748 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:09:22 ID:l1O.OzB20

川 ゚ -゚)「じゃあ次に行こう。兄者、弟者」

( ´_ゝ`)「了解した」

(´<_` )「おう」

一番前に立つ兄者と弟者。
その次にブーンとツンが続き、モナーとビーグルがその後ろを進む。
そしてクックルが続こうとすると、隣にクーが並んで歩き始めた。

川 ゚ ?゚)「クックル」

( ゚∋゚)「なんだ?」

川 ゚ -゚)「村を出た後は、戦闘指揮は任せたぞ」

( ゚∋゚)「……分かった。分かったが…ほんとにやるのか」

川 ゚ ?゚)「人数も増えたし、指揮を執れる人間も増えないとだからな。モララーと兄者、弟者もこれから練習させる予定らしい」

( ゚∋゚)「しかし、ショボンの考えだしこれからを見据えた指示だとは思うが、おれに指揮が執れるとは思えないんだが」

川 ゚ ?゚)「まぁそう言うな。ショボンから講習も受けたんだろ?」

(;-∋-)「言うな…思い出したくない」

川;゚ -゚)「悪かった」

( -∋-)「まったく。なんでおれなんだ」

川 ゚ -゚)「うちのメンバーは前に出る特攻好きが多いからな、後方支援系のクックルには指揮もできるようになってもらいたいんだろ」

(;-∋-)「はあ…」

クックルのため息とともに、時間通りに次のエリアへと向かうC班の面々だった。



.

749 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:11:18 ID:l1O.OzB20

A.ショボン班:【叢1】と【叢2】の間のエリア



街を出たショボン班はまず【花畑】に向かい、一戦を済ませている。
50層に近くなりりモンスターは強力だったが、レベルはもちろんのこと戦いに慣れたメンバーにとってはそれほど強敵ではなく、予定通りにエリア内のモンスターを殲滅し、必要なアイテムだけを採取して次のエリアに向かった。

(´・ω・`)「エクスト左!」

<_プー゚)フ「おう!」

(´・ω・`)「トソン右後ろ下!前に出過ぎ!」

(゚、゚;トソン「は、はい!」

大型の蜂型モンスターを倒して一息つこうとしたエクストに飛ぶショボンの指示。
最後の一撃を通常攻撃にしていたことからすぐさま反応でき、左側で既に攻撃態勢を取っていた蜂型モンスターに両手剣を向ける。
更にスイッチと援護のためにと前に出ようとしていたトソンに向けて飛ぶ声。

トソンが前に出るのを止め、右後ろ斜め下を見ながら槍を構えようとすると地面の一部が吹き飛び緑色の蔦が襲い掛かった。

(゚、゚;トソン!

思わず槍を掴んで防御姿勢を取ったトソン。
しかし目前で蔦の動きが止まったため、慌ててバックステップで距離を取った。

そのトソンの瞳に映る、蔦に刺さった数本の針。
それは今日何度か見ているショボンの投擲武器であった。

(´・ω・`)「トソン止まらずに切る!」

(゚、゚トソン「!はい!」

根元を削ぐ様に槍を一閃し、蔦を切り裂いた。
しかしそれは敵モンスターの一部にすぎず、切り裂かれたことに怒った本体が大地を揺らして数十本の蔦を繰り出した。

(゚、゚トソン!

.

750 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:12:46 ID:l1O.OzB20

<_プー゚)フ「うりゃあ!」

両手剣を振り回して駆け回るエクスト。
一振りでけん制し、一振りで蔦を裂く。

(゚、゚トソン「エクスト!」

<_プー゚)フ「やるぜやるぜやるぜやるぜ!」

周りから見るとただ闇雲に振り回しているようにしか見えないその剣の軌道はかなり不安だが、蔦を切り裂くという結果は出ているので本人は多少は考えているのであろう。

<_プー゚)フ「あっ」

空振り一閃。

逃れた蔦がエクストの頭上から降り注ぐ。

(゚、゚トソン「エクスト!!」
 _
( ゚∀゚)「あんまり突っ込むなよ」

エクストの頭上、自分の位置から斜め上空に向けて剣技を繰り出すジョルジュ。
駆け出した加速とともに空を飛ぶようジャンプする。そして大きく両手剣を一閃した。

(゚、゚トソン「すごい!」

<_プー゚)フ「うを!」

バラバラと地面に落ちながらポリゴンと化し消えていく蔦。
それを背後に着地したジョルジュ。
剣技後の硬直を起こすその体を狙おうと地面から顔を出した触手。
それを端からことごとく潰していくモララーとフサギコ。

( ・∀・)「ジョルジュに突っ込むなって注意を受けるって」

ミ,,゚Д゚彡「もうすこし視野を広くすると良いから」

.

751 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:14:03 ID:l1O.OzB20

二人はギルド内では特にスピードに力を入れているわけではないが、その速さと一撃で蔦を撃破していく姿はトソンとエクストを驚嘆させた。

( ・∀・)「ふさ、刈る数競争な」

ミ,,゚Д゚彡「今度は負けないから!」

しかも雑談しつつ。
 _
( ゚∀゚)「おれもやりたいが、おれはこっちだな!」

硬直が解け両手剣を構えなおしたジョルジュだが、視界の隅に走った光の線がショボンの投げたナイフだと気付き、視界をそちらに向けた。
そして大地に突き刺さったナイフを見て、その位置向かって駆け寄り渾身の単発重撃の剣技を放つ。

(゚、゚トソン「なっ!なにをして!」

<_プー゚)フ「おいおい」

地面深く突き刺さるジョルジュの両手剣。
同時にあたり一面に響くモンスターの叫び声。

( ・∀・)「おっしゃ」

ミ,,゚Д゚彡「いけるから!」

蠢く蔦を刈っていたモララーとフサギコがジョルジュが剣を突き立てた場所に駆け寄り、構えを取る。
呆然とそれを見るエクストとトソン。

硬直の溶けたジョルジュが剣を抜きながら後方にバックステップするとその前に移動するモララーとフサギコ。

(´・ω・`)「フサギコから3!2!1!くる!」

ショボンのカウントと共に地表が吹き飛ぶと、幾本もの太い蔦を体にし、巨大な花を顔のようにした植物型モンスターが現れた。
HPゲージは三本。しかし既に二本まで減っている。

ミ,,゚Д゚彡「!!」

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752 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:15:11 ID:l1O.OzB20

モンスターが態勢を整える前、今だ土埃が舞う中を駆けるフサギコ。
無言で刀用剣技を放つ。

(゚、゚トソン「!あの技は!」

小型モンスターならば体を浮かせてしまう一撃。
しかし今戦っている植物モンスターはフサギコとくらべ三倍ほどの高さと4倍ほどの横幅があるため浮かせることは出来なかった。

<_プー゚)フ「さすがにむりか」

だが相手を硬直させることには成功し、危なげなくそのまま連撃につなげる。

(゚、゚トソン「刀用ソードスキルの連続攻撃」

フサギコの持つ刀が青く光り、赤く光り、水色に光り、そのたびに光の線をモンスターに叩き込む。その一つ一つがHPゲージを減らし、残り一本となった。

(´・ω・‘)「もら!カウント3!2!1!ゴー!」

いまだフサギコが剣をふるう背中に向かって駆け出すモララー。
その右手にはめられた爪の武器はすでに赤色に光っている。

<_プー゚)フ「はやいだろおい!」

(゚、゚トソン「タイミングが!」

外野の声など全く気にせずフサギコの背に向かってジャンプするモララー。

( ・∀・)「ふさ!」

ミ,,゚Д゚彡「モララー!」

ミ,,゚Д゚彡「スイッチ!」(・∀・ )

連撃の最後の一撃を放ったフサギコの肩に足をかけて更に高く飛ぶモララー。
苦悶の雄叫びをあげるその巨大な花を右上から左下に爪で裂く。
そしてそのまま空中で5連撃を放ち、その全てを命中させた。

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753 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:16:35 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「ジョル!最後二発で撃破!エクスト!トソン!遊んでないで左後方上空に蜂!二人で叩け!」

<_プー゚)フ「お、おう!」

(゚、゚トソン「は、はい!」

呆然とその姿を見ていたエクストとトソンに対して飛ぶ指示。
慌てて左側を見る二人の目の前に、ポリゴンから蜂型に体を完成させようとする二匹のモンスター。

<_プー゚)フ「トソン!初撃で手前のを半分まで削るからそのあとは頼む!おれはそのまま後ろのを叩く!」

(゚、゚トソン「!わ、わかりました!手前を倒したら援護に回ります!」

トソンの言葉を最後まで聞かず、先にモンスターの形に成った手前の蜂に対して単発重撃加速移動剣技を叩き込むエクスト。
加速移動という言葉はだてではなく、二匹目の蜂が完全に成形する前にその目の前に移動していた。

(゚、゚トソン「は!」

長槍で突き、払う。
エクストの一撃で半分まで減っていたHPゲージをさらに減らし、続けて剣技に頼らぬ攻撃を二発。
そしてモンスターが硬直したと思い剣技を出すために構えを取ったその時に動き始めた蜂。

(゚、゚;トソン(まずい!)

尻尾の針をこちらに向けた蜂を切り裂く二本の針。

(゚、゚トソン!(ありがとうございます!)

ショボンの作ってくれた隙をついて剣技を放つトソン。
それによってかろうじて手前の蜂を倒す。

(゚、゚;トソン「はあ……はあ……」

肩で息をして呼吸を整えるが、すぐに思い直し先にいるエクストを見ると、ちょうど後方の蜂をポリゴンに変えていた。

<_プー゚;)フ「た、倒した…」

.

754 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:17:40 ID:l1O.OzB20

自分と同じように肩で息をするエクストを見て、膝をついてしまうトソン。

(゚、゚;トソン「良かった…」

(´・ω・`)「モララー、予定との時間差見てもらえる?」

そんな二人をよそにエリア内に落ちている自分の投げたナイフや針を回収しているショボン。モララー達三人も手伝っていたが、ショボンの質問でウインドウを出す。

( ・∀・)「次が【叢2】のエリアだけど、このままだと5分くらい早いな。どうする?」

(´・ω・`)「2分…いや3分休憩しようか。それくらいなら次のモンスターポップもしないだろうし。カウント頼んでいいかな」

( ・∀・)「分かった」

<_プー゚;)フ「なんだこいつら…」

(゚、゚;トソン「疲れないんですか?」

ミ,,゚Д゚彡「無駄打ちや空振りがないから。必要最低限の攻撃しかしてないから」

( ・∀・)「二人は無駄な動きが多いよな。特にエクストは」

<_プー゚;)フ「そんなこと言われてもよ」

針を拾っていたフサギコが動けないでいる二人に声をかけると、ウインドウを開いたまま時間とスケジュールのチェックをしているモララーも話に参加した。

( ・∀・)「とりあえず両手剣を振り回すな」

ミ,,゚Д゚彡「トソンはもう少し相手との距離感をつかまないとだめだから」

<_プー゚)フ「でもよう」

(゚、゚トソン「……はい」

ワイワイと話し始める四人を見て、口元に笑みを浮かべるショボン。
 _
( ゚∀゚)「まーたいろいろ企んでやがるし」

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755 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:18:47 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「人聞きが悪いな。別に企んでないよ」
 _
( ゚∀゚)「でも、予定通りの状況だろ?ほら、ナイフと針」

ショボンのそばにやってきたジョルジュが差し出した右手には、二本のナイフと十数本の針が握られていた。

(´・ω・`)「ありがと。助かるよ。……まあね。あの二人は僕の指示に慣れてもしょうがないから、ちょっと厳しめに指示は出してるけどさ」
 _
( ゚∀゚)「そっちもそうだけど、モラとふさのほうだよ」

(´・ω・`)「ん?なんの話かな?」
 _
(;゚∀゚)「…はいはい。何もないってことなんだな」

にっこりとほほ笑むショボンを見て、本日二度目の冷や汗を流すジョルジュだった。



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756 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:19:59 ID:l1O.OzB20

B.シャキン班:【山】の麓



(`・ω・´)「うをーーー!!!」

目の前に現れた五体の狼男。
真っ先に突っ込んでいったシャキンの後を追うミルナとデミタス。
その後ろにドクオとハイン、そしてギコとしぃが続く。

(`・ω・´)「っ!」

左手に持った盾で先頭にいた[狼男1]にぶつかり、その勢いのまま後方に押す。
雄叫びをあげて抵抗する狼男だったがシャキンの勢いに負け、何も出来ぬまま吹き飛ばされてしまった。
シャキンは更に突進し、二匹目の[狼男2]に向かって片手剣を構え、剣技を放った。

(`・ω・´)「くらえやおら!」

単発重攻撃。
更に相手をノックバックさせるその攻撃は二匹目の狼男も後方に吹き飛ばし、三体目が最前列になった。

しかしそれには目もくれず、ノックバックを起こした[狼男2]を追撃するためにはしるシャキン。
しかしそれを黙って見逃すことはなく、[狼男3]が剣を振り上げた。

( ゚д゚ )「悪いな。それでもうちのギルマスなんでな」

シャキンを追って背を向けた[狼男3]。
その後頭部から背骨に沿って振り下ろされるミルナの斧。
もともと攻撃力のある斧による単発重攻撃は[狼男3]のHPを半分以上削り、カラーをイエローにした。

(´・_ゝ・`)「で、おれの出番と」

勢い余って地面に斧を突き立ててしまったまま硬直したミルナの横にデミタスが飛び出し、舞うように曲刀を振るう。

(´・_ゝ・`)「うらうらうらうらうらうらうらうら!」

剣技を使わずに振るわれた曲刀は[狼男3]を幾重にも切り裂き、その体をポリゴンに変えた。

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757 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:21:00 ID:l1O.OzB20

その二人を横に走り抜けるドクオとハイン。
[狼男2]に追撃の一閃を与えたながら駆け抜けるシャキンの後ろから飛び出し、右からドクオが片手剣で、左からハインが長柄の鎌で攻撃を放つ。

('A`)「ハイン!」

从*゚∀从「ドクオ!」

('A`)「ハイン!」

从*゚∀从「ドクオ!」

一撃目をドクオが放ち、普通ならそのまま返す刀で二撃目を放つところをほんの少しだけ動きを遅くすることにより、ハインが攻撃をした。
そしてハインも同じように動きを遅くすることによりドクオが攻撃を行う。
通常なら互いの動きを邪魔してしまう攻撃方法であり、汎用性は低くやる者はいない。しかし、小回りを利かすドクオと中距離からの攻撃を精密に行うハインの特性、そして武器を持つ手が逆なこともあり攻撃を可能とし、更にその個人スキルの高さから高い攻撃能力を持っていた。

('A`)「ハイン!」

从*゚∀从「ドクオ!」

流石に剣技は使えないが、そのかわりにタイミングさえ合えば永遠に続けることの出来る二人の剣の舞は幾重にも重ねられ、[狼男2]をポリゴンへと変える。

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

シャキンを追い、四人が戦う背中を見ながら走り抜けるしぃとギコ。

シャキンが[狼男1]に三発目の斬撃を加えた時にやっとたどり着き、武器を構えた。

(`・ω・´)「二人とも遅いぞ!次でスイッチ!」

(;*゚ー゚)「はい!」

(;,,゚Д゚)「おう!」

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758 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:22:04 ID:l1O.OzB20

シャキンが繰り出した剣技によって後退する[狼男1]。その隙を縫ってさらに奥に進むシャキン。
シャキンを敵と認識しているためその背中を追おうとした[狼男1]の懐に小さい体をさらに小さくさせてもぐりこんだしぃが、自分から見て斜め上、狼男ののどもと目掛けて探検を突き刺した。

(*゚ー゚)「はあ!」

一撃目をきれいに決め、そのまま二撃三撃と剣技を狼男に浴びせる。

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「ゴルァア!」

四撃目をわざと外して横に抜けたしぃの代わりにギコが狼男の正面に立ち、しぃを掴もうと伸ばした狼男の手を切り落とす。

狼男1「ぐうをおおぅををををおおお!」

雄叫びをあげる狼男に怯むことなくさらに剣を振るうギコ。
視界の隅でしぃが再び構えたのを確認し、タイミングを見計らって剣技を放つ。

(,,゚Д゚)「ゴラァァアアァァア!」

目の前に三角形を描くように剣を振るい、狼男のHPバーを赤にしてしぃとスイッチした。

(*゚ー゚)「!」

気合い一閃、覚えている剣技の中で一番強力な連撃技を繰り出すしぃ。
短剣が最後の一撃を放つと、[狼男1]がポリゴンと化した。



(`・ω・´)「まあこんなもんか」

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759 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:23:15 ID:l1O.OzB20

残りの二体は五人で倒し、肩で息をしているしぃとギコのもとにシャキンがやってきた。

(;*゚ー゚)「タイミングが遅くて、申し訳ありません」

(;,,゚Д゚)「すまなかった」

(`・ω・´)「遅いといっても対応できる遅さだからまだよかったがな、このフォーメーションでは前の四人を信じてもう少し前に出てきておいていいぞ」

(;*゚ー゚)「はい」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴルァ」

(`・ω・´)「頼むぞ」

シャキンは二人の頭を大きな手でわしわしと撫でた後、ミルナの名を呼びながら周囲を調べているミルナ達の方に向かった。

(,,゚Д゚)「戦闘前とはまるで別人だなゴルァ」

(*゚ー゚)「すごいよね。シャキンさんも、ミルナさん達も。これで中層クラスなんだから、攻略組とかどんなに強いんだろ」

(,,゚Д゚)「……想像したくないぞ」

(*゚ー゚)「『想像できない』でしょ、本音は」

(,,゚Д゚)「……」

(*゚ー゚)「私もそうだよ。VIPに入ってひと月ちょっと、戦闘力も戦い方も上がったつもりだけど、もっともっと頑張らなきゃだね」

(,,゚Д゚)「そうだなゴルァ」

エリアの端で顔を見合わせて笑う二人に、中央からシャキンが声をかけた。



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760 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:24:20 ID:l1O.OzB20

C.クー班:【花畑】



村で追加のクエスト受理したクー班は、村を出て【大樹】にて実を採取し、【街2】へと向かった。そこで更に追加クエストを受理し、次の採取エリア【花畑】へと向かった。

その道中で何回かモンスターに遭遇したが、それは数も少なく一種類のみだったため、指示を出すクックルも迷わずに済み、問題なく撃破していった。
本来ならば【大樹】エリアには強力なモンスターがいたはずなのだが、C班が到着する前にB班が通って退治していたため、一度倒された後再度ポップする時間の関係でC班は戦わずに実を採取しすることができていた。

そしてこのエリア【花畑】にて初めて同時に三種類の敵と数多くの敵に相対し、クックルは何回か間違えて指示を出してしまい、メンバーが攻撃を受けてしまった。

致命傷ではもちろんなく、HPバーのドットを一つ減らす程度の傷ではあったがクックルが平常心をなくすには充分な出来事であったため、飛ばす指示は逆に全員の戦闘を邪魔してしまうこともあった。

(;゚∋゚)「み、みんな」

( ^ω^)「クックル!おちつくんだお!」

攻撃を受けたブーンが頭より高く飛ぶ蜂と悪戦苦闘しつつ、クックルに声をかけた。

(;゚∋゚)「ブーン!傷は!」

( ^ω^)「別に部位欠損ペナルティが入ったわけでもなく、ただちょっとHPが減っただけだお!気にしなくていいお!」

ξ゚听)ξ「そうそう!それよりも深呼吸して!」

同じく蜂相手に苦戦するツンが声をかける。

ξ゚听)ξ「まずは落ち着くの!」

( ´∀`)「そうもなよ!おちつくもな!」

ゴリラ型モンスターと対峙するモナー。
動きは遅いがパワーがあり、更に固い体毛が軽い攻撃は弾くことがあるためうかつに近寄れず、クーと共に距離を取って細かい攻撃を仕掛けている。

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761 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:25:25 ID:l1O.OzB20

( ´∀`)「ビーグル!たのむもな!」

▼*・ェ・▼「きゃんきゃん!」

モナーの合図を受けて身震いするビーグル。
すると体の産毛が抜けて空中を漂い、メンバーの体に絡みつく。
するとHPを減らしていたメンバーのゲージが1〜2目盛回復した。

( ^ω^)「ビーグルありがとうだお!」

( ´_ゝ`)「サンキュービーグル!」

(´<_` )「いいぞビーグル!」

すばしっこいタヌキの群れに翻弄される兄者と弟者。
攻撃力はほとんどないが動きが早いため、二人は攻撃を当てることができずにいた。

(´<_` )「クックル!自分を信じるんだ!俺らはおまえを信じてる!」

( ´_ゝ`)「この程度ならまだまだ耐えられる!慌てず騒がず考えろ!」

( ゚∋゚)「みんな……」

川 ゚ -゚)「そうだクックル!私たちを見ろ!おのずと出す指示が浮かぶはずだ!」

モナーと共にゴリラに一撃を与えたクーが叫ぶ。

それらを聞いて、大きく深呼吸するクックル。
一回ギュッと目をつむり、そしてすぐに大きく見開いて戦う仲間たちを見た。

( ゚∋゚)「よし」

小さく、けれど力強く呟いてから、大きく息を吸った。

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762 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:26:32 ID:l1O.OzB20

( ゚∋゚)「クーは挑発して注意をひきつつ後退!モナー!ブーン!チェンジ!」

川 ゚ -゚)「了解した」

( ´∀`)「わかったもな!」

( ^ω^)「了解だお!」

薙刀を腋に挟んで大きく手を叩くクー。
その音に反応し、ゴリラがクーに向かう。

それを見逃さずブーンの場所に向かうモナー。ビーグルが後ろを続く。

( ´∀`)「もなもな、もな!」

三つ又の槍を振るい、ブーンとモンスターの間に躍り出るモナー。
驚いたように後ろ向きに飛びつつ態勢を整えようとした蜂に向かって槍を突き刺すモナー。

( ´∀`)「ブーンの剣よりリーチはあるもなよ」

突き刺された大型蜂のHPゲージが目に見えて減った。

( ゚∋゚)「ブーンはゴリラの背中に一撃後兄者とチェンジ!兄者はクーの代わりに挑発!クーは兄者が来たらツンと交代!ツン!クーとチェンジ!」

( ^ω^)「!」

( ´_ゝ`)「!」

川 ゚ -゚)「!分かった!」

走りを加速させたブーンがクーに襲い掛からんと両手を上げたゴリラ型モンスターの背中に深く一撃を入れ、そのまま通り過ぎて兄者の横に滑り込む。
そしてそのままタヌキの群れに飛び込み、タヌキを超えるスピードで片手剣を振るった。

( ´_ゝ`)「やれブーン!」

一声かけてゴリラに向かう兄者。

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763 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:28:35 ID:l1O.OzB20

ブーンの一撃で一度動きを止めたもののすぐに戦闘態勢に戻ったゴリラに鎚による単発重撃の剣技を放った。

( ´_ゝ`)「大人しくしてろ!」

叫び声をあげて後退するゴリラ。
重い一発を与えることでモンスターを硬直させたが自分も剣技後の硬直で動けなくなる兄者。
しかし瞳を動かしてクーを見る。
その視線に頷いてから駆け出すクー。

( ゚∋゚)「ツン!クーとチェンジしたらそのまま弟者とチェンジ!」

ξ゚听)ξ「了解!」

川 ゚ -゚)「とりゃあ!」

ツンが細剣を蜂の頭めがけて繰り出すと、予想していたかのように避けられる。
しかしその避けた先にクーが現れ、薙刀で攻撃を与えた。

川 ゚ -゚)「ツンナイス!」

ξ゚听)ξ「あと宜しく!」

敵を見据えたまま言葉を交わした後走り出すツン。
最短距離で弟者のそばにたどり着くと、走り回るタヌキに対して細剣の先を的確に当て始めた。

ξ゚听)ξ「ここは任せて!」

(´<_` )「任せた!」

既に硬直を終わらせて対峙している兄者とゴリラのもとに向かう弟者。

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764 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:29:43 ID:l1O.OzB20

( ゚∋゚)「…よし。全員そのまま撃破!」

ξ゚听)ξ川 ゚ ?゚)( ´_ゝ`)「了解!」(^ω^ )(´∀` )(´<_` )

▼・ェ・▼「きゃん!」

走り回るタヌキに対してそれ以上のスピードで確実に攻撃を与えるブーンとツン。

飛ぶ敵にも慌てることなくそのリーチを活かしてダメージを与えるモナーとクー。
巨大蜂がバランスを崩して低空飛行に変えると、そこにビーグルが爪による攻撃を仕掛けていた。

そしてパワーにはパワーで対抗する兄者と弟者はどちらかが対峙して防御をすると、横からもう一人が確実に重い一撃を当てることでゴリラのHPを削った。

三つの戦いを見ながらいつでもフォローに入れるように場所取りをしつつ、それ以外の周囲を見回すクックル。

その全てを見通すような瞳は、ショボンがするそれと非常によく似ていた。



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765 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:31:17 ID:l1O.OzB20

A.ショボン班:【大樹】



上の層の底まで届きそうな大樹の下。
何匹かのモンスターを倒して、周囲を伺うA班のメンバー達。

(´・ω・`)「大丈夫みたいだね。情報よりポップ数が二体多かったけど、ぎりぎり誤差範囲かな」

ショボンの声で緊張を解く五人。
特にエクストとトソンは目に見えて疲れており、大きく吐息を吐きながら座ってしまった。

( ・∀・)「お疲れさん」

(´・ω・`)「ちょっと疲れたかな?戦えそうだったから予定よりも戦闘を増やしたけど、セーブするかい?」

<_プー゚;)フ「だ、大丈夫だ!まだいける」

モララーに渡された飲み物を飲むエクストとトソン。

(゚、゚;トソン「わ、私も大丈夫です」

座ったままショボンと話す二人。
モララーはウインドウを出して状況の整理を始め、ジョルジュとフサギコは自分のストレージから出した回復POTを出して飲みながら周囲の採取物を探し始めた。

( ・∀・)「ここを出たら次の目的地は【村】。そこまでは森の中だから、モンスターは出まくりだな。BとCの先行からも時間が外れるから、次がポップしてるだろうし」

(´・ω・`)「回避して進むことも可能だろうから、出来るだけ回避で行こうか」
 _
( ゚∀゚)「おれの負担をもっと増やしてもいいぞ。余裕あるし」

ミ,,゚Д゚彡「ふさもだいじょうぶだから!」

めぼしいものを採取したジョルジュとフサギコもやってきて、周囲を観察しながら話に加わった。

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766 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:32:22 ID:l1O.OzB20

<_プー゚;)フ「あんたたちは、かなり余裕があるな」

(゚、゚;トソン「なにか、新しい薬でも…」

(;・∀・)「ねーよそんなもん。危ない発想だなおい」
 _
( ゚∀゚)「二人は攻撃力は高いけど、無駄な動きが多いから疲れやすいんだよ。とどめを決める時もオーバーキルが多いし。二人とも、自分の攻撃力で相手にどれだけのダメージを与えられるかをわかってないだろ」

<_プー゚;)フ「……」

(゚、゚;トソン「……」

ミ,,゚Д゚彡「通常攻撃はもちろん、ソードスキルもよく使うやつや使い勝手の良いやつは、攻撃した時にどれくらいダメージを与えられたのかを瞬時に判断しなきゃだめだから。そしてそれ以外の技だとどれくらい攻撃を与えられるのかをすぐに計算しなきゃだめだから」

( ・∀・)「シャキンの所は特攻と速攻がメインだからわかり辛いけど、四人ともそれが出来てるぞ。よく見ればわかるはずだ」

ミ,,゚Д゚彡「きっとミルナやデミタスの方が二人の戦闘力を冷静に分析してわかってると思うから、一度聞いてみると良いから」

<_プー゚;)フ「……」

(゚、゚;トソン「……」

自分たちの欠点を指摘され、何も言えなくなってしまう二人。
二人とも攻略組ではないものの、ソロでここまで戦い生きて生きた自負があり、同じ中層クラスならトップクラスであるという自信があった。
しかしギルドN−Sに入り自分より強い者の存在を肌で感じ、V.I.P.のメンバーと共闘することによってそのことを完全に理解し、動けなくなってしまった。

(´・ω・`)(あ……ちょっとやばいかな)

.

767 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:33:32 ID:l1O.OzB20

(´・ ω・`)「……ま、そうはいっても出来ないものは仕方ないね。シャキンがうちの新人は強い強い言うから期待して今回の戦闘を組んだけど、ちょっと厳しかっ たかな。この後は規定エリア以外の戦闘は避ける方向で行こうか。僕の設定は机上の空論だったね。ごめんね、二人とも」

柔らかいほほえみで二人を見降ろすショボン。

<_プー゚;)フ!

(゚、゚;トソン!

そして三人にだけわかるように怒りを含んだ視線を向けた。
 _
(;゚∀゚)!

(;・∀・)!

ミ;,,゚Д゚彡!
 _
(;゚∀゚)「で、でも手数の多さでそれを補って余りあるよな。エクストは。おれより多いんじゃないか」

<_プー゚;)フ「え、あ、そ、そうか?」

(;・∀・)「トソンの正確さも捨てたもんじゃないぞ。うちでいえばツンが得意だけど、匹敵するんじゃないか?」

(゚、゚;トソン「あ、ありがとうございます」

ミ;,,゚Д゚彡「それに今までソロでいたならオーバーキルも仕方ないから!確実に倒すために慎重になってしまうのは仕方ないから!」
 _
(;゚∀゚)「そ、そうだよな。そりゃそうだ」

(;・∀・)「計算間違えは恐いからな。どうしてもそうなるだろ」

(´・ω・`)「なにみんな、いきなり甘くなっちゃって」
 
.

768 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:34:59 ID:l1O.OzB20

 _
(;゚∀゚)「い、いや別に甘いわけじゃないぞ。よく考えたらそうだってだけで。」

(;・∀・)「そうそう、ソロとパーティーなら戦い方も違うし。おれもVIPとNSくらいしか知らねえけど、この二つは戦い方は特殊だろ。多分」

ミ;,,゚Д゚彡「そうだから!しょうがないから!」

(´・ω・`)「ふーん。さて、それじゃあどうしようか」

三人に向けていた怒りの視線を解除したショボン。
受けていた三人はあからさまにほっとした表情をしたが、座っている二人は気付いていない。

(´・ω・`)「そろそろ出発しないとだけど……」

ショボンが腰をさげ、しゃがみ、座る二人と目線を合わせた。

(´・ω・`)「どうする?やれる?」

<_プー゚)フ!

(゚、゚トソン!

(´・ω・`)「二人がやれるなら、このままいく。けれど、今までのペースではきついというのなら、戦闘は必要最低限にした作戦に変更する。フォーメーションも二人の負荷を軽減させる。」

<_プー゚;)フ「……」

(゚、゚;トソン「……」

(´・ω・`)「けれど、これは断言できる。僕は二人に無理な指示は出してない。出来ないことを求めたりはしていない。実際、戦闘自体は問題なかったからね。あとは戦い方と、意識の向け方の問題だけだと思っている」

<_プー゚)フ!

(゚、゚トソン!

(´・ω・`)「そして僕は、君たち二人がその【戦い方】と【意識の使い方】を掴む手助けができると思っている。…いまのこのクエストでの戦闘を通してね」

.

769 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:35:59 ID:l1O.OzB20

<_プー゚)フ

(゚、゚トソン

(´・ω・`)「もう一度だけ聞こう。どうする?やれるかい?」

<_プー゚)フ「やる」

(゚、゚トソン「やります」

(´・ω・`)「モララー!時間は!?」

立ち上がり、そのまま振り返って鋭い瞳でモララーをみるショボン。
ピンと伸びた背筋、それほど大きくないその体が、座る二人にはとても大きく見えた。

( ・∀・)「あと5分は余裕がある」

(´・ω・`)「3分で出発する」
 _
( ゚∀゚)「オッケー」

ミ,,゚Д゚彡「分かったから!」

ウインドウを出して準備を始める三人。
装備に変更は無いしHPもすでに満タンにしてあるが、POTの持ち数と必要な時にすぐ使えるようにいくつかのPOTやクリスタルを実体化させて腰につけたポーチに入れた。

(´・ω・`)「二人も……大丈夫みたいだね」

振り返ったショボンの視線の先には、すでに立ち上がり準備を整えたエクストとトソン。

ミ,,゚Д゚彡「準備完了だから!」
 _
( ゚∀゚)「いけるぜ」

( ・∀・)「準備万端」

<_プー゚)フ「いくぜいくぜいくぜいくぜ!」

(゚、゚トソン「宜しくお願いします」

5人を見て、にっこりとほほ笑むショボン。

(´・ω・`)「よし、まだ2分しかたってないけど、いこうか」



.

770 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:37:09 ID:l1O.OzB20

B.シャキン班:【山】



鬱蒼と茂った木々のエリア。
野球場ほどの大きさの芝生だが空を隠すようにドームを作る木々が外からの光を遮っている
そしてその薄闇の中、中央でこちらを睨む巨大な狼が、体全体からうすぼんやりと銀色の輝きを放っていた。

(;`・ω・´)「さすがに強いな」

(; ゚д゚ )「予想以上だ」

(;´・_ゝ・`)「俺らの班だけ早めに終わりそうな時間設定だったが、こういうことか」

盾を装備したシャキンとデミタス。両手斧を装備したミルナが盾役で隊列の一番前にいる。

('A`;)「おい、下がってPOT飲んどけ」

从;゚∀从「大丈夫、…と言いたいが甘える。ギコ、しぃ、いけるか?」

二列目にいた距離攻撃の出来るハインと速攻ができるドクオ。
HPバーが黄色に近くなったため、ハインが回復POTをポーチから出しながら後退する。

(,,゚Д゚)「オウだゴルァ!」

(*゚ー゚)「はい!いきます!」

メインの五人のうちの誰かが回復POTを飲むために下がった時に穴を埋め、更に全員攻撃時は一番外から中に入って剣技を放つギコとしぃがドクオの隣に立つ。

視線は中央の巨大狼にむけたまま、口を開くドクオ。

('A`)「二人とも大丈夫か」

(,,゚Д゚)「全然大丈夫だゴラァ!」

(*゚ー゚)「…ドクオさん、あれ、もしかして【シルブリュールフ】ですか?」

六人の武器と視線の先に立つ、ぼんやりと光る巨大な銀色の狼。
低く嘶くような唸り声が、耳に届く。

.

771 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:38:18 ID:l1O.OzB20

(,,゚Д゚)「それって確か」

('A`)「ああ、多分そうだ」

(,,゚Д゚)「!ってことはビーグルも育つとああなるってことか!?」

ギコの驚きの声に反応したかのように雄叫びをあげる巨大狼。

(`・ω・´)「衝撃波!」

狼のモーションにあわせて盾を構えたシャキンとデミタス。
その後ろに隠れるミルナと三人。

('A`)「雄叫びによる衝撃波、爪による攻撃、手足及び尻尾での薙ぎ払い、直訳した後の体当たりによる薙ぎ倒し。共通点は多いな。なにより見た目がそっくりだ」

(,,゚Д゚)「マジか」

('A`)「いっておくが、ビーグルはあの大きさから成長しないから」

(,,゚Д゚)「なんだ……よかったような、残念なような」

(; ゚д゚ )「こんな時に雑談とは余裕だな、ドクオ」

('A`)「状況がどんな時でも冷静に分析。うちのギルマスに叩き込まれてるからな」

(´・_ゝ・`)「うちの特攻野郎とは大違いだな」

(`・ω・´)「デミタス、ちゃんと前を見ろ」

(*゚ー゚)「咆哮の後は高い確率で尻尾による薙ぎ払いですよね」

ぼそっと呟いたしぃの言葉を受けて、はっと前を見る五人。

(`・ω・´)「しぃちゃんそういうのはもっと早く!」

雄叫びを止めた狼が視線をこちらに向け、跳躍しようとする姿勢を取った。

(*゚ー゚)「あ、薙ぎ倒しの方だ」

(;´・_ゝ・`)「なんでこの娘この状態でこんなに冷静!?」

.

772 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:39:26 ID:l1O.OzB20

慌てて下がろうとする盾役三人に対し、逆に武器を構える残りの三人。

(; ゚д゚ )「おい!」

ミルナがしぃの首根っこを持とうとしたその瞬間、叫び声が薄闇を切り裂いた。

从#゚∀从「ドクオに何しようとしてくれてんだこの野郎!!!!!」

長柄の鎌を構えたハインが武器を黄色に光らせながら突進し、跳躍モーションになって無防備になった狼の右足に向けて跳ぶ。

从#゚∀从「死にさらせ!」

振るわれた鎌。

右足の根元から首や肩に向かって幾数もの光の線を放つ。

从 ゚∀从「へっ」

('A`)「ナイスタイミングだ。ハイン」

从*゚∀从「どっくん!」

跳躍をキャンセルさせられて硬直した狼。そこに襲い掛かるドクオの片手剣。
その横からギコとしぃも突進する。

体の巨大な敵に同時に何人かが攻撃するのはあることだが、それが出来るサイズの敵はフロアボスであることがほとんどで、クエストボス程度ではほとんどお目にかからない。
通常のダンジョンやクエストに出てくる『巨大』と呼ばれるサイズは人の数倍程度の大きさがほとんどで、一度に攻撃を当てることが出来るのは一人もしくは二人くらいが限度である。
今目前にそびえたつ大きさの敵と戦ったことはドクオも片手が余るほどだし、ギコとしぃは初めてだった。
しかし、ドクオはもちろんギコとしぃも臆することなく剣を振るっていた。

(`・ω・´)「さすがショボンに鍛えられただけのことはあるな」

感心したように、けれどどこか呆れたように呟いたシャキン。
ミルナとデミタスは大きく頷いた。

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773 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:40:41 ID:l1O.OzB20

('A`)「次の攻撃が来る!」

剣技を放った後の硬直も解け、その場を離れる四人。
慌てて盾役の三人がそれぞれに防御の構えを取る。

しかしその目の前で狼が体を震わせた。

(*゚ー゚)「!これは!」

水に濡れた体を乾かすかのように体を振るわせる狼。
銀色の体毛が空中に漂うと、三本まであるHPバーの二本目の真ん中まで減っていたゲージが、一本目の1ドット分まで回復した。

( ゚д゚ )「反則だろおい」

(*゚ー゚)「ビーグルちゃんと同じ……」

(,,゚Д゚)「おれ達のHPは回復してくれないんだな」

ギコの呟きに心の中で『あたりまえだろ』と突っ込みを入れつつも改めて戦闘態勢を取る六人。
各々に回復POTを口にしつつ、そのまま決めているフォーメーションの位置に着く。

(*゚ー゚)「ギコ君、刀身を青く光らせる剣技で3連撃以上の長いやつか突進系ってある?」

(,,゚Д゚)「?突然なんだゴルァ」

(*゚ー゚)「いいから」

(,,゚Д゚)「昨日レベル上げしてる時に覚えたのがたしか青かったぞゴルァ。突進からの3連撃だ。でもまだうまく使えないぞゴルァ」

(*゚ー゚)「流石ギコ君いいタイミングで覚えてる!」

横を向いてにっこりとほほ笑むしぃ。
そしてすぐさま前を向き、シャキンのいる場所に向けて走り出す。

(*゚ー゚)「ギコ君も来て!」

(,,゚Д゚)「お、おう!」

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774 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:42:02 ID:l1O.OzB20

('A`)「しぃ!?ギコ!?」

自分の横を走り抜けたしぃとギコに驚くドクオ。

(*゚ー゚)「シャキンさん!」

(`・ω・´)「なんだ!?すぐ攻撃が来るぞ!さがれ!」

(*゚ー゚)「あの狼が【シルブリュールフ】なら、もしもビーグルちゃんと同じ特性を持っているなら注意をひけるかもしれません。やらせてください」

(`・ω・´)「なんだって!?」

(*゚ー゚)「ギコ君、失敗した時のフォローと、成功した時の追撃をお願い」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴラァ」

(´・_ゝ・`)「お、おいお前ら」

(*゚ー゚)「もうすぐ攻撃が来ます。そのタイミングで出ます!」

三人の前に躍り出るしぃ。
それにギコが続き、しぃを視界の中心に置いて剣を構えた。

巨大狼「グルァアアアアアァアアアァアア!」

雄叫びをあげ、前足を上げようとした狼。
その瞬間しぃが駆け出し、刀身を青く光らせた短刀を前に突き出して跳躍した。

巨大狼の目前を、右下から左上に跳ぶしぃ。
しかし距離は遠く、狼に当たることなくただ4回の斬撃に繋がる剣技を繰り出した。

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775 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:43:01 ID:l1O.OzB20



青い光をまとい。
下から上に走る流星のように。



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776 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:44:06 ID:l1O.OzB20

すると巨大狼は、動きを止めてゆっくりとそのしぃの動きを視線で追いはじめた。

(,,゚Д゚)「!前にしぃが言ってたぞゴルァ!モナーに短刀の使い方の特訓を受けた時に、ある剣技をするとビーグルがすごく喜んでいたって。それが、青い光かゴラァ!」

自分の後ろの五人が驚きの声をあげるなか、しぃが最後の空振りをしたのを見て駆け出すギコ。
それはしぃを助ける為ではなく、自らも剣技を繰り出すためだった。

(#,,゚Д゚)「ゴルァアアアァアアアアア!」

しぃの作った青い光の線と交差するように剣技を打つギコ。

青く光り輝く片手剣。
自然界ではあまり存在しない鮮明な青い光が線を作り、さきにしぃが作った光の残像と交差して大きなバツの字を空中に作り描く。

その足元を駆ける黒い影。

('A`)「このチャンスを無駄にしたら、この二人にもう偉そうなことは言えないな!」

叩きつけるようなドクオの一撃が巨大狼の足を襲い、巨大狼の一本目のバーの明かりをすべて消した。

思わず下を見る巨大狼の目前を、再びしぃが青い光を纏って跳ぶ。

それに目を奪われる巨大狼。

(`・ω・´)「!二人のソードスキルにあわせて速攻!連撃よりも重攻撃!モーションとタメが遅くても、2人に合わせろ!一回の攻撃で出来るだけ大きく削れ!!おれ達の攻撃のタイミングも合わせるんだ!」

(# ゚д゚ )
(#´・_ゝ・`)「おう!」
从#゚∀从

走り出したシャキンの後を追う残りの三人。

その間も、巨大狼の目前、青い光を纏って空を舞うしぃとギコ。
それに合わせて着実に確実に巨大狼のHPを削っていく五人。

この時点で、勝敗はすでについていた。



.

777 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:45:13 ID:l1O.OzB20

C.クー班:【街1】



クー班が追加クエストと派生クエストをすべて終わらせて、更に指定のアイテムを持って最初にクエストフラグを立てた【街1】に戻った時、すでに空は赤くなりかけていた。

川 ゚ -゚)「何とか間に合いそうだな」

ウインドウを出して、渡すアイテムをチェックしているクーを先頭に、クエストの依頼人がいる家に向かう7人。

( ´∀`)「良かったもな」

疲れて眠ってしまったビーグルを背負ったモナー。

( ´_ゝ`)「思ったより手間取ったな」

早速武器をしまい、採取した鉱石をチェックしている兄者。

(´<_` ;)「細かい蟻の大群がきつかった」

思い出したのか、顔をしかめる弟者。

ξ゚听)ξ「あれよりも切っても切っても立ち上がってくるゴーレム系がいやだったな」

忌々しげに眉間にしわを寄せるツン。

(;^ω^)「土人形の体力ははんばないからキツイお」

自分の剣だけでは倒せなかっただろうことを思い出し、冷や汗を流すブーン。

( ゚∋゚)「……」

そして、自分が指示を出す戦闘が終わってホッとした顔をしたクックル。
だが、何故かすぐに表情を引き締めた

川 ゚ -゚)「どうした?」

.
778 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:46:15 ID:l1O.OzB20

( ゚∋゚)「いや、スピードのブーンとツン。パワーの兄弟。中距離のクーとモナーとおれ。バランスのよい配置だったんだなと、改めて思った。」

川 ゚ -゚)「そうだな。更にモナーとクックルはパワー寄り、私がスピード寄り。流石の二人はポジション的な盾装備で先頭に立てるし、速攻のブーンもいるし。まぁバランスはいいだろ。今回の3班では一番バランスが良かったんじゃないか?」

( ´∀`)「そう思うもな」

(´<_` )「戦闘力特化のシャキンの所もそれなりだけど、ショボンの所は大丈夫だったのか。どうやらショボン以外はほぼ近接先頭で、盾装備もいなようだったが」

川 ゚ -゚)「ショボンとシャキンからクエストクリアの報告は来てたぞ。まぁショボン班はショボンがうまく回しただろ」

(;´_ゝ`)「シャキンの所の新人二人が潰れてなきゃいいが」

(´<_`;)「そんなことはしないだろ。潰さないギリギリのところで育てたんじゃないか?」

( ^ω^)「多分そうだお。潰すようなまねはしないはずだお。それよりもっと酷いことはしたかもしれないけど」

ξ゚听)ξ「否定できないところが辛いわね。まぁ後の打ち上げで色々聞きましょう」

(;´∀`)「誰もフォローできないもなね。モナも出来ないもなけど」

(;゚∋゚)「まあ、強くはなってるだろうから良いんじゃないだろうか」

川 ゚ -゚)「それで良いのかうちのギルマス」

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779 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:47:18 ID:l1O.OzB20

(´<_` )「でも、」

( ´_ゝ`)「まあ、」

( ´∀`)「そんなショボンが好きもなよ」

ξ゚听)ξ「そのおかげで生きてこられたしね」

( ^ω^)「そうだおね。ショボンがいなかったらとか考えたくないお」

自嘲気味にぼそっと呟くブーン。
そんな滅多に見せない表情を見て、ツンとモナーが不思議そうな顔をした。

川 ゚ -゚)「私やツンは普通にいる中層クラスの戦士に成れたかもわからないな」

( ^ω^)「ブーンもスピードに特化だけし続けて、途中でダメになってたかもだお」

(´<_` )「なんだ、三人は最初からショボンに色々指導されてたのか?」

ξ゚听)ξ「私とクーはこういうゲーム初めてだしね。あの日から二か月くらいはドクオの知識とショボンの判断に完全に任せてたわよ。正直、最初は何も考えられなかったし」

( ´Д`)「そうだったもなか」

川 ゚ -゚)「さすがにな。そういえば初めてだな。こんな話するの。…まあ、あの最初の日のことを口にするのは、さすがに辛かったからか」

( ´_ゝ`)「……そうだな。どうしてもあの日のことを思い出さなければいけなくなってしまうし」

( ゚∋゚)「あの日のことを思い出すのは……な……」

それぞれに思い出すことや考えることがあり、黙ってしまう7人。

夕焼けに赤く染まる道。
赤茶けた大地に、7人の影がを黒く伸びる。
それはまるで現実のようで、仮想現実だと思えなくて、今ちょうどあのはじまりの日のことを話していたこともあり、夢から覚めた夢のようなこの今の現実を前に、誰も何も話せなくなってしまった。

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780 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:48:27 ID:l1O.OzB20

( ゚∋゚)「……でも……」

川 ゚ -゚)「クックル?」

小さく、自分に対して呟いた一言。
しかしそれは全員の耳に届き、クーがクックルの顔を見るとほぼ同時に6人がクックルを見た。

( ゚∋゚)「なんだろう。おれは、悲観に暮れてない。帰れると、元の世界に帰られると信じているんだろうな。きっと。そして、そう思えたのは、多分、みんなと一緒にいるからなんだと思う」

ξ゚听)ξ「クックル…」

( ´∀`)「そうもなよ!戻れるもな!」

( ´_ゝ`)「こんだけ頑張ってるんだからな。帰られなきゃ嘘だ」

(´<_` )「兄者はもっと頑張ったほうが良いと思うけどな」

( ´_ゝ`)「弟者はもう少し気楽にしないとダメだな」

(´<_` )「兄者のようになれと?」

( ´_ゝ`)「お手本にしていいんだぞ」

(´<_` )「絶対に嫌だ」

ξ゚听)ξ「そうね。戻れるわ。ううん。絶対に戻ってみせる」

川 ゚ -゚)「ああ、絶対にだ」

( ^ω^)「そうだお。絶対にだお」

7人の顔に笑顔が戻った頃、目的の家に7人は辿り着いた。



.
783 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:16:41 ID:l1O.OzB20



3.幾千の夜を超えて



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784 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:18:06 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「それでは!3クエストの攻略と全員の無事な生還を祝いまして!乾杯!」

 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ ?゚)
( ´_ゝ`)( ´∀`)ミ,,゚Д゚彡
( ・∀・)(*゚―゚)(,,゚Д゚)
( ゚д゚ )(´・_ゝ・`)<_プー゚)フ

「かんぱーい!」

(´・ω・`)(´<_` )(゚、゚トソン

从*゚∀从('A`)「かんぱーい」

( ゚∋゚)《乾杯!》

▼*・ェ・▼「きゃん!」

(`;ω;´)「良かったみんなちゃんと乾杯してくれた」

,

785 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:19:00 ID:l1O.OzB20

当日の夜。
モナーの管理するVIP農場に、ギルドV.I.PとギルドN−Sの全員が集まっていた。

3クエストは無事にすべてクリアし、クエストクリアの情報は通常通り情報屋に渡し、シャキンは別に依頼者にその情報を送って仕事は終了した。
そして今回の合同クエスト攻略の無事の成功を祝い、祝賀会を始めたところだった。

まだ日の光がほんの少しだけ残る夕闇の中、周囲を明るくする松明を燃やし、テーブルにはごちそうをフサギコとしぃが並べる。
炭を燃やした火の上にはモナーとクックルが用意した肉と野菜が刺さった串が並べられ、かぐわしい香りを周囲に漂わせている。

最初は全員で、その後はクエストをクリアした班に分かれて、途中からは入り乱れて話し、笑い、共感し、怒り、許し、そしてまた笑い、ギルドの垣根を越えた親睦を深めていった。

.

786 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:20:00 ID:l1O.OzB20

(゚、゚トソン「本当にショボンさんはすごいです!」

ξ゚听)ξ「はいはい」

<_プー゚)フ「いやマジですごいって!なんだあの的確な指示はよ。でも、それよりなによりあの采配に振り回されないで戦っていられるあんた達は、本当に強くてすごいんだな!」

( ´_ゝ`)「俺らのすごさが分かったか」

( ゚∋゚)《ショボンのしじにこたえられたなら、ふたりもじゅうぶんつよい》

<_プー゚)フ「いや、正直井の中の蛙だった」

(゚、゚トソン「私はそこまで自分に自信はなかったのですが、逆にショボンさんの導きによって、自分があんなに戦えるってことを知りました」

ξ゚听)ξ「導きとか言っちゃってるし」

(;゚∋゚)《まあまあ》

<_プー゚)フ「だけど、おれは更に強くなる!」

( ´_ゝ`)「あ、やっぱりそういうキャラか」

<_プー゚)フ「そしてこの赤い剣が金色になってもその派手さに負けない強さを身に着ける!」

ξ゚听)ξ「趣味悪いな〜」

(;゚∋゚)《ツン、ひとことおおい》

ξ゚听)ξ「じゃあクックルは趣味が良いとでもいうの?」

(;゚∋゚)

ξ゚听)ξ「ほらみなさい」

(゚、゚トソン「ですが、その強さの根底に流れるものの一つに、やはり良質な薬や道具、武具を安価に手に入れられるというのがあると思うのです」

( ´_ゝ`)「なにこのこ。目の色が変わった。値切ってた時とおんなじ目だ」

(゚、゚トソン「どうでしょう、兄者さん。兄者さんからもショボンさんにギルドNSにもVIPと同じように供給していただけるようお口添えを」

(;´_ゝ`)「やだ、何この子怖い」

.

787 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:22:35 ID:l1O.OzB20


(*゚д゚ )「今回のクエストは眼福だった!」

( ^ω^)「今度はどこで会ったんだお」

(*゚д゚ )「村のおかみさんが肉感的な姿でな!あれはいい!しかしどうして熟女のCPがいないんだろうな」

(*゚ー゚)「?????」

( ・∀・)「ミルナは熟女好きなんだよ。プレイヤーで熟女に出会ったことがないから、新しい街に行くとプレイヤーはもちろん、NPCのキャラまで熟女探しをしているんだ」

(;*゚ー゚)「は、はあ…」

(´・_ゝ・`)「まったく変なやつだよな。これがなければいいやつなのに」

( ´∀`)「デミタスも人のことは言えないもなよ」

(,,゚Д゚)「デミタスは何が変なんだゴルァ」

川 ゚ -゚)「ショタコンなんだ」

(,,゚Д゚)「         へ?」

(´・_ゝ・`)「少年は至高だ。異議は認めない」

( ^ω^)「うわぁ」

.

788 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:23:33 ID:l1O.OzB20

( ゚д゚ )「おれのことを変とかいうな。おれは年齢が高いだけでノーマルだ」

(´・_ゝ・`)「少年の美しさ、儚さ、神秘さが分からないとは可哀想なやつめ」

川 ゚ -゚)「デミタスの場合は逆にNPCにしか興味ないし、遠くから見ているのが好きなだけだから、害はないな」

( ・∀・)「害が無ければ良いとか悪いとかというレベルの話ではないという気もしないでもないが」

( ´∀`)「まえに二十何層かの村で水遊びしている少年たちを木陰からこっそり覗いているのを見たときは、さすがにどうにかしなきゃダメだと思ったもな」

▼;・ェ・▼「くぅ〜ん」

(´・_ゝ・`)「ま、おれもそれに気付いたのはこの世界に来てからだからな。分からないのも仕方ない。今度ゆっくりレクチャーしてやるよ」

( ゚д゚ )「いらん」

( ・∀・)「必要ない」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

( ´∀`)「遠慮するもなよ」

( ^ω^)「いらないお」

(**゚ー゚)「ちょっと興味あるかもしれないです」

川*゚ -゚)「………同じく」

( ・∀・)(,,゚Д゚)( ´∀`)( ゚д゚ )( ^ω^)「え!?」

(*´・_ゝ・`)「じゃあ今度な」


.

789 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:24:56 ID:l1O.OzB20

(´<_` )「そういえばドクオ。聞いたぞ。また二人で息の合った剣さばきを見せたって」

('A`)「……」

从*゚∀从「なんだ、聞いたのか。私たちの愛の剣の舞のことを」

('A`)「愛なんかねー」

ミ,,゚Д゚彡「すごかったって聞いたから」

(´<_` )「そろそろみとめたらどうだ?」

('A`)「なにをだ!」

ξ*゚听)ξ「なになに、とうとう付き合うの」

川*゚ -゚)「やっとドクオが素直になったのか?」

('A`)「またうるさいのが寄ってきた」

(*゚ー゚)「素直になりましょうよドクオさん!」

('A`)「一人増えてた」

从*゚∀从「なんだ、しぃちゃんも応援してくれるのか。嬉しいよ。ありがとう」
 _
( ゚∀゚)「こりゃもうドクオの負けだな」

('A`)「ジョルジュうるさい。いい加減もう許してくれよ」

.

790 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:25:51 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「っていうか、何が不満なのよ」

川 ゚ -゚)「それは私も気になるな。ちょっと思い込みは激しいが、ハインの何が気に入らないんだ?」

('A`)「……うっせーよ」

从 ゚∀从「ドクオ…」

(´<_` )「あ〜、まあ男にも色々あるから。許してやれよ。それくらいで」

ξ゚听)ξ「む〜〜」

川 ゚ -゚)「う〜〜」

(*゚ー゚)「ぐ〜〜」

('A`)「お前ら絶対遊んでるだけだよな」

川 ゚ -゚)「そういえばハイン、『ゲルマライムの木の実』は何に使うんだ?あれも薬作成スキルが無いと使わないようなアイテムだが。もし必要数以上あるなら、こちらに売ってもらいたいんだが」

从*゚∀从「あ…あれはその…」

川 ゚ -゚)「ん?どうした?」



.

791 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:26:57 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「おつかれさん」

(´・ω・`)「お疲れ様」

ワイワイと騒ぐメンバー達と離れ、全員を見渡せる場所で椅子に座ってウインドウを開いていたショボン。
そこにシャキンが椅子を引きずりながら近寄ってきた。

(´・ω・`)「みんなはいいの?」

(`・ω・´)「とくにいいだろ。エクストとトソンも慣れたみたいだしな」

ショボンの隣に椅子を置き、音を立てて腰かける。
そして同じようにウインドウを出すと、しまっておいた飲み物と食べ物をいくつか実体化させてショボンの前の小さなテーブルに置く。
そしてカップを一つ取って口をつけた。

(`・ω・´)「お前は何やってるんだ?」

(´・ω・`)「今日のクエストの整理だよ。クーとドクオから話とデータももらったから、三つまとめてね」

(`・ω・´)「毎度のことだがまめなこった」

(´・ω・`)「あとで送るよ」

(`・ω・´)「いつも悪いな」

(´・ω・`)「別に。情報屋にも渡して、データベースに入れてもらってるしね」

(`・ω・´)「……まめなこったよ」

(´・ω・`)「ん?どうした?」

(`・ω・´)「いや……二人はどうだった?」

(´・ω・`)「エクストとトソン?まだちょっと粗削りだけど、注意力を鍛えればいい戦士になりそうだね。シャキン達の戦い方に合いそうだ」

(`・ω・´)「ショボンがそういってくれるなら安心だ」

(´・ω・`)「ちゃんと育ててあげなよ」

.

792 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:28:01 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「……二人を一か月くらいVIPで預かってみるとか」

(´・ω・`)「何をばかなことを」

(`・ω・´)「だよね」

(´・ω・`)「まったく……で?話したいことはそんな事じゃないんでしょ?」

(`・ω・´)「そうだな」

喋るのを止め、カップの中の飲み物を一息にあおる。
そして、そのままの姿勢で上を見るシャキン。

(´・ω・`)「シャキン?」

(`・ω・´)「なあ、ショボン」

(´・ω・`)「なにさ」

(`・ω・´)「いまのままで、本当にこのゲームをクリアすることが出来ると思うか?」

(´・ω・`)「何を突然言い出すやら」

(`・ω・´)「やっと50層、とうとう50層、まだ50層」

(´・ω・`)「いろいろ言ってるよね。特に下に行くほど。攻略組にも一部鼻につくのがいるけど、下で文句しか言わない奴らよりはやってることをやってる分だけましだと思うよ」

(`・ω・´)「この先60層、75層、80層、90層……おれは、今の攻略組では行けるとは思えない」

(´・ω・`)「シャキン。……でも、ぼくらがそんなことを」

(`・ ω・´)「そう、言える立場じゃない。おれ達だって攻略組じゃないからな。でも、おれにもわかる。それくらいは。今のままの攻略組では本当の統制は取れて いないことくらい。今は血盟騎士団の団長のカリスマ性でもっているが、彼が崩れたら終わりだ。その状態で、この先のボス戦をクリアできるとは思えない。 ショボン、おれがわかるくらいだから、お前はよくわかっているんじゃないのか?」

限りある空、上の層の底をを見つめていたシャキンがゆっくりとショボンを見る。

.

793 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:29:28 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「おれ達も、攻略組に行かないか?おれ達なら、もっと本気になれば参加できるはずだ。そして、おまえなら今の攻略組に新しい風をいれることが出来るはずだ。ショボン。いや、…しょ」

(´・ω・`)「シャキン!」

小さい声。
けれど凛とした、どこか鬼気迫る、張り詰めた、冷たい声

(`・ω・´)「……すまん。だが、」

(´・ω・`)「シャキン、ギルドN−Sが攻略組になろうと努力するのは止めない。おそらく、それだけの力を持つこともできると思うよ。けれど、僕たちを、ギルドV.I.P.を巻き込まないでくれ」

(`・ω・´)「……ショボン。そう……だな。悪かった」

(´・ω・`)「いや……分かってもらえればいいよ。……すぐに攻略組に合流できるよう目指すの?」

(`・ω・´)「いいや。人数も増えたし、まずは地道にレベルを上げてからだ。あいつらが今の話にのるかどうかも分からないしな」

(´・ω・`)「そう」

(`・ω・´)「ああ」

やってきた沈黙。
それから逃げるように、テーブルの上の食べ物に手を伸ばすシャキン。
ショボンも開いたままのウインドウに視線を戻す。

(`・ω・´)「ん?メッセージだ」

視界の端に点滅した、メッセージが着たことを知らせるランプ。

(`・ω・´)「誰だこんな時間に」

沈黙を埋めるように独り言を呟きながらウインドウを開くシャキン。
メッセージを開くと同時に眉間にしわが寄った。

.

794 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:32:00 ID:l1O.OzB20
(´・ω・`)?

隣で気付かれないように気にしていたショボンがそのしわに気付くが、気にしたまま気付いていないふりを装いつつ気を向ける。

(`・ω・´)「ショボン」

(´・ω・`)「なに?」

(`・ω・´)「いま、暇?」

(´・ω・`)「何言ってんの?」

(`・ω・´)「今のメール、今回の依頼者からの連絡だったんだ。今回のクエストの話を直接聞かせてほしいって」

(´・ω・`)「だから?」

(`・ω・´)「おれがそんな説明できると思うか?」

(´・ω・`)「………」

(`・ω・´)「………」

(´・ω・`)「………」

(`・ω・´)「………」

(´・ω・`)「………」

(`・ω・´)「………」

(´・ω・`)「分かったよ」

(`・ω・´)「頼む。話の内容によっては追加の報酬もあるらしい」

(´・ω・`)「わかった。行こうか」

(`・ω・´)「現金だなおい」

立ち上がったショボンを見て、笑いながら立ち上がるシャキン。

(`・ω・´)「ミルナを連れていくが、そっちはどうする?」

(´・ω・`)「一人ずつついてきて貰うかな」

ウインドウを消しながら歩き始めたショボンだった。
.

795 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:33:25 ID:l1O.OzB20

川 ゚ -゚)「おまじない……だと?」

从*゚∀从「ああ」

川 ゚ -゚)「      とりあえずどんなことをするのか言ってみろ」

从*゚∀从「42層の西の村で噂になってるんだ。『ゲルマライムの木の実』を夕焼けを見ながら口に含んで好きな人の名前を言って、そのあと口から出さないで食べきると恋がかなうって」

川 ゚ -゚)「そんなことのために『ゲルマライムの木の実』を?」

从*゚∀从「毎日やろうかなって思って」

もじもじと照れているハインと、彼女に腕を掴まれてげんなりとしているドクオ。
そして表情を強張らせたクー。

その三人を一歩引いて見守るメンバー達。

川 ゚ -゚)「ドクオ」

('A`)「……なんだよ」

川 ゚ -゚)「さっさとハインと付き合え」

('A`)「だから…」

川 ゚ -゚)「『ゲルマライムの木の実』がそんなことに使われるのを黙って見ていられるか!!!」

('A`)「あ、そっち」

川 ゚ -゚)「あのアイテムがあれば色々な薬の素が作れるんだぞ!!!!在庫に残ってるあれやそれと組み合わせれば強力なアイテムが!!!!!」

从 ゚∀从「あの木の実ってそんなアイテムなんだ」

川 ゚ -゚)「それすらも知らない奴にあのアイテムがそんな使い方をされてしまうなんて!!!!!」

握り拳を作って熱く力説するクーに一歩どころでなく数歩距離を置くメンバー達。
ドクオはもちろんハインも後ずさるが、それに合わせてクーが距離を詰めるため、うまく逃げられない。

从;゚∀从「なんかごめん」

.

796 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:34:33 ID:l1O.OzB20

川 ゚ -゚)「そう思うのならば!」

从*゚∀从「でもおまじないしたいし」

川#゚ ?゚)「ドクオー!!!!!」

('A`)「もう終わろうよ」

(´・ω・`)「またおかしなことをしてるし」

川 ゚ -゚)「ショボン!良いところに来た!お前からも言ってくれ!」

(´・ω・`)「はいはい、あとでね。ドクオ、弟者、悪いけどちょっと付き合ってもらえるかな。今回のクエストの経過説明で依頼者の所に行くことになったんだ」

三人を中心にできていた輪の中に入ってきたショボンとシャキン。

('A`)「なんでおれ?もう今日は疲れた」

(´<_` )「おれはいいが、おれで良いのか?」

(´・ω・`)「弟者ありがとう。戦闘の話を冷静に聞きたいし話してほしいから、適任じゃないかな。で、ドクオがまだここにいたいならだれ」

('A`)「さあ行こうかショボン。悪いなハイン。クー。仕事だ仕事」

(´・ω・`)「かあの班のメンバーでVIPの人というとしぃかなと思ったけど、行ってくれるみたいだね」

ハインの手をそっと外してショボンに駆け寄るドクオ。

('A`)「さあ行こうか」

苦笑しながら弟者もショボンのそばに寄ってきた。

(´<_` )「もう行くか?」

从 ゚∀从「どっくん!」

川 ゚ -゚)「待てドクオ!」

.

797 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:35:39 ID:l1O.OzB20

手を離されて淋しそうなハインと話の途中だと声をかけるクー。
しかしドクオがにやにや笑いながら片手をあげて制する。

('A`)「まあまて二人とも。クエスト絡みだぞ。何が大事か考えろ」

从 ゚∀从「そりゃあそうだけど」

川 ゚ -゚)「弟者の代わりに私が行く!」

(´・ω・`)「クーはこの後ここの片付けを頼むよ。まだまだ時間はいいけど、日付が変わる前には解散して片付けも終わるよう、宜しく。サブリーダーさん」

川 ゚ -゚)「む」

从 ゚∀从「なら私も一緒に」

(`・ω・´)「ミルナに行ってもらうから大丈夫だ。ミルナ、頼む」

( ゚д゚ )「分かった」

从 ゚∀从「むー」

(`・ω・´)「だいたいおまえ、ずっとドクオの横にいて他のメンバーとあんまり喋ってないだろ。ちょっと交流しとけ」

从 ゚∀从「はーい」

しぶしぶながらも納得したクーとハイン。
ショボンは更にいくつかクーとフサギコに指示を出し、四人は牧場を後にした。

.

798 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:36:35 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「ショボン、なんだって?」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンの作ったデザートを渡されたから!」

川 ゚ -゚)「あとは薬とアイテムの在庫チェックとかだな。ブーンとモララーにも頼まないと」
 _
( ゚∀゚)「まだいていいんだろ?」

川 ゚ -゚)「ああ。大丈夫だ」

<_プー゚)フ「おれの剣を見せてやるぜ!」
 _
( ゚∀゚)「おれの両手剣だってなかなかのもんだぞ」

(゚、゚トソン「あ、あのモララーさん

( ・∀・)「なに?」

(゚、゚*トソン「あの、……装備アイテムの事なんですが」

( ・∀・)「値引きはしないからな!」

( ´_ゝ`)「がんばれモララー」

結局この馬鹿騒ぎは、日付が変わっても続いた。



.

799 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:37:23 ID:l1O.OzB20



4.万の言の葉よりも伝わるもの。




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800 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:38:26 ID:l1O.OzB20

次の日の40層バーボンハウス。
昼の喧騒もおわり、そろそろ休憩しようかと思いつつ大きな欠伸をしたショボン。
すると扉が開いた。

(´・ω・`)「いらっしゃい……って、なんだジョルジュか」
 _
( ゚∀゚)「なんだってことはないだろ」

笑いながらNPCのスタッフが席に案内しようとするのを片手をあげて拒否し、当たり前のようにショボンの前のカウンターに座った。

(´・ω・`)「今日の昼はクックルの所で食べるっていうから、お弁当を送っておいたけど?」
 _
( ゚∀゚)「ああ、うまかった。サンキューな」

何も言わずに出されたグラスを口につけ、一気に飲み干す。

(´・ω・`)「まったく、ちゃんと味わってほしいな」

呆れたように口にするが、すぐに同じグラスを差し出す。
今度はちょっとだけ飲んだ後、カウンターに戻した。
 _
( ゚∀゚)「なあ、ショボン」

(´・ω・`)「なに?」
 _
( ゚∀゚)「おれ達は、良いぜ」

(´・ω・`)「?なにを?」
 _
( ゚∀゚)「攻略組目指しても」

(´・ω・`)「!」

軽い世間話のようにさらっと告げたジョルジュに対し、あからさまに動揺を見せるショボン。
グラスを磨いていいた手を止め、ジョルジュの顔を凝視する。

.
801 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:39:28 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「何を言って」
 _
( ゚∀゚)「昨日の夜馬鹿騒ぎを抜けて行ったの、会ってたんじゃないのか?攻略組と」

(´・ω・`)「あ、ああ。そっち」
 _
( ゚∀゚)「他にあるのか?」

(´・ω・`)「いや、なんでもない。ああ、……うん、会ってきたよ。勢揃い…ってわけじゃないけど血盟騎士団と聖竜連合の上層部が来てた。もともとあのクエスト攻略の依頼が攻略組から来ていたとは思ったけど、結構壮観だったよ」
 _
( ゚∀゚)「血盟の団長とか副団長が来たのか!」

興奮して立ち上がったジョルジュ。
ショボンはそれに驚きつつも先ほどよりも更に呆れたような顔を見せるが、わかりやすくため息をついて口を開いた。

(´・ω・`)「さすがにそこまでの面子は来てなかったよ」
 _
( ゚∀゚)「なんだつまらん」

口をとがらせながら座るジョルジュ。
つまらなそうにグラスをあける。

(´・ω・`)「まったく。でもそんなに会いたいんだ?」
 _
( ゚∀゚)「いや別に」

(´・ω・`)「なんだそりゃ」
 _
( ゚∀゚)「いや、レアモンスターなみに会わないっていうからよ。特に団長の方は」

(´・ω・`)「ああ、そう聞くよね。騎士団に入っても滅多に見ないとか、実はいないとか噂が流れてた」
 _
( ゚∀゚)「だから」

(´・ω・`)「なるほどね」
 _
( ゚∀゚)「で、話は戻すけどよ」

.

802 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:40:31 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)チッ
 _
( ゚∀゚)「今舌打ちしなかったか?」

(´・ω・`)「してないよ」

じっと自分の顔を見るジョルジュの視線を難なく受け止めてにっこりとほほ笑むショボン。
 _
( ゚∀゚)「なら良いけどよ」

(´・ω・`)「気にしない気にしない」
 _
( ゚∀゚)「で、ほんとのところ、ショボンはどう思ってるんだ?おれたちが攻略組に参加するってのは」

(´・ω・`)「現実問題として無理だよ。まぁ頑張れば細かい迷宮クエストの攻略あたりは手伝えるかもしれないけど、とてもじゃないけどボス戦は無理だね」
 _
( ゚∀゚)「本当に?」

(´・ω・`)「ああ。本当に。馬鹿なことは考えない方が良い」
 _
( ゚∀゚)「おれやドクオも?」

(´・ω・`)「下っ端の下っ端くらいにはなれるかもね。でも、二人はソロならともかく団体戦は無理でしょ」
 _
( ゚∀゚)「……ま、そうだな」

(´・ω・`)「だから、馬鹿なことは考えない方が良い。だいたい、なんでそんなことを考え付いたの?」

訝しげにジョルジュの顔を見るショボン。
今度はジョルジュがその視線を難無く受け止め、にやっと笑った。
 _
( ゚∀゚)「ショボンたちが出た後、2期メン3期メン、あとデミタスで話したんだよ」

(;´・ω・`)「ちょ、ちょとまって」
 _
( ゚∀゚)「ん?なんだ?」

(;´・ω・`)「なにその2期とか3期とか」

.

803 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:41:40 ID:l1O.OzB20

 _
( ゚∀゚)「初期メンが5人、2期がおれと流石兄弟とふさ、3期がモナーとクックルとモララー、4期がギコとしぃ」

(;´・ω・`)「はあ?なにそれ。今までそんな分け方したことないよね?」
 _
( ゚∀゚)「前にふさの店でたまたま2期と3期の七人が集まったことがあってよ、なんかの流れで入団時期の話になって、んで話をしてたらそんな感じだよなって話になって」

(´・ω・`)「わけわからないことを」
 _
( ゚∀゚)「そうか?結構カラーが出てるって話になってるんだけどな。入団の経緯とか色々」

(´・ω・`)「んーーーー。まぁそう言われればそうかもだけど、別にオーディションしてるわけでもないし、出会ったのも友達になったのもたまたまだからなぁ」

苦虫をかみつぶしたような微妙な表情をしつつ、考えを巡らせるショボン。
 _
( ゚∀゚)「で、この7人と、デミタスで話してたんだよ。どうもシャキンは攻略組入りを狙っているんじゃないかって」

(´・ω・`)
 _
( ゚∀゚)「で、ショボンを誘ってるんじゃないかってな」

(´・ω・`)「はあ」
 _
( ゚∀゚)「で、更に話題になったんだよ。ショボンは攻略組入りを考えてないのかって」

(´・ω・`)「それで?」
 _
( ゚∀゚)「満場一致で『考えてない』になった」

(´・ω・`)「ならそれで終わりでしょ」
 _
( ゚∀゚)「でも、うちのギルマスの一番の目標が何かって話になると、全員口淀んだ」

(´・ω・`)「……君たちがぼくのことをギルマスって呼ぶときは、だいたいしょうもないことを考えた時か、無理なお願いをしてくる時だよね。あとはからかう時か」
 
.

804 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:42:42 ID:l1O.OzB20

 _
( ゚ ∀゚)「うちのギルマスの一番の目標は、ギルメンが全員生きてこのゲームから脱出すること。でも、このゲームがクリアされなければその目標は達成されな い。クリアするには、死線を乗り越えていく者達が必要。今は攻略組がいるからいいけど、このまえあったボス戦みたいに死者が出て行けば、攻略組だって人数 は減る。攻略組がいなくなれば、ゲームはクリアされない。ゲームがクリアされなければ、おれ達はこのゲームから生きて抜け出すことはできない。生きて抜け 出すためには、ゲームをクリアするしかない。ゲームをクリアするには、ボスを倒し続けていくしかない………」

(´・ω・`)「だから、僕がゲームクリアを目指すために攻略組に参加するって?馬鹿げてるよ」
 _
( ゚∀゚)「おれ達が一番むかつくのは、お前が一人で攻略組に参加することさ。おれ達を危険な目に合わせないためにな」

(´・ω・`)「僕は、そんなに良いやつじゃないよ」
 _
( ゚∀゚)「そうだな」

(;´・ω・`)「え?そこ、肯定しちゃうところ?」
 _
( ゚∀゚)「腹黒いし、睨むと怖いし、怒ると酷いし、何考えてるかわからないし」

(;´・ω・`)「えっと……え?」
 _
( ゚∀゚)「でもおれ達は、そんなお前を信じてるし、好きなんだよ。お前の指示を信じて、命を懸けて戦うことが出来る。お前がおれ達のことを好きだって知ってるし、なにより大事な友達だからな」

(´・ω・`)「ジョルジュ……」

にやにやと笑みをこぼすジョルジュと、困惑したように、でもどこか泣きそうな、けれど笑みを含んだ複雑な表情のショボン。
珍しくショボンが根負けし、視線をそらす。
 _
( ゚∀゚)「だから、お前が決めるならおれ達もちゃんと考えるし、本気で鍛えるってことさ。レベルを300くらい上げて真面目に戦い方を決めれば、今の最前線のボスだって倒せるだろ」

(´・ω・`)「ジョルジュ」

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805 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:43:30 ID:l1O.OzB20

軽く笑ったジョルジュに笑みで返すショボン。
少し張りつめていた空気が、ほんの少しだけ和らぐ。
 _
( ゚∀゚)「今日はそれを伝えに来た!」

(´・ω・`)「……ありがとう」

音を立てて立ち上がるジョルジュ。
そしてもう一度にやっと笑い、手のひらをショボンに差し出す。

それを見て、少し躊躇して、けれど同じようににやっと笑って、その手のひらをショボンが音を立てて叩いた。




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806 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:45:04 ID:l1O.OzB20



0.ゼロとイチの世界




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807 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:46:48 ID:l1O.OzB20


夜の帳が下り、時計の針は12時を回っていた。

夜の狩りに出掛けるものはすでに外に出ており、日中の狩りに出掛けるものは床に着く時間。

そんな時間の街外れは更に人影がなく、静寂が支配していた。

煉瓦の壁に寄りかかり全く動かない彼は、一瞬見ただけではプレイヤーに見えず、かといってノンプレイヤーキャラクターでもなく、像か、絵の様に見えた。

( ^ω^)「そろそろ時間かお」

ぼそっと呟いた彼、ブーン。

その影に背後から忍び寄る一つの影。

( ^ω^)「来たかお」

振り返った彼は飛んできた影に胸ぐらを掴まれ、壁に背中を押しつけられた。

( ^ω^)「手荒いご挨拶だお」

(アルゴ)「おい、どういうことだ」

( ^ω^)「なんのことだお」

(アルゴ)「分かっていたんだろ」

女性の力とは思えない力で、いや、隠密系スキルをメインとしているとは思えない力でブーンを壁に押し付けるアルゴ。

ブーンの目の前には圏内での犯罪行為を防止するための警報が出ており、ほんの少し操作すればアルゴを監獄に送ることが出来る状態だった。

( ^ω^)「何を見たんだお?」

(アルゴ)「……おまえ」

あくまでもにこやかな表情でアルゴと話すブーン。

しかし、その細められた目の奥にある瞳の思いは分からず、アルゴは困惑する。

壁に押し付ける力が、ほんの少しだけ緩んだ。

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808 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:47:51 ID:l1O.OzB20

(アルゴ)「…なぜ、あいつは……ショボンはあいつらと会っているんだ。あんな、恐ろしい…」

出来るだけ冷静に、けれど嫌悪感を露わにした、そして怒気を含んだ声でブーンを詰問する。

( ^ω^)

それでも表情を崩さないブーン。

(アルゴ)「……知っていることをすべて言え」

( ^ω^)「情報屋さんにしては、力尽くだおね」

(アルゴ)「なに?」

( ^ω^)「もう少し緻密に、綿密に、静かに、冷静に、情報を集めるのかと思ったお」

大きく目を見開くアルゴ。

手の力が抜け、ブーンの胸元から手を放した。

(アルゴ)「……なにを、企んでいる」

( ^ω^)「僕が頼んだのは、ショボンの動向だけだお。でも、これで僕の知りたいことは知れたから、依頼は終了するお。頼んでいた日数はまだあるけど、その分が成功報酬でちょうどくらいじゃないかお」

にこやかに、飄々と、夜の少し冷たい、けれど気持ちもよい風のように言葉を紡ぐブーン。

(アルゴ)「……」

その姿を、どこか異質なモノを見るような少しだけ警戒した瞳でアルゴは見る。

(アルゴ)「(わからない…真意が)」

( ^ω^)「どうしたんだお?」

(アルゴ)「……わかった。依頼はこれで終了する」

( ^ω^)「今までありがとうだお。詳細な報告書は後日で良いお」

(アルゴ)「悪いね。明日中には送るよ」

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809 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:48:53 ID:l1O.OzB20

( ^ω^)「急がなくていいお」

(アルゴ)「いや、仕事だから、やることはやるさ」

踵を返し、まっすぐ前を見て歩き出すアルゴ。

(アルゴ)「じゃあね」

( ^ω^)「また宜しくだお」

振り返らずに、別れを告げ、背中でブーンの声を聴く。

(アルゴ)「(情報屋として、調べてやるよ。全部ね)」

少し離れた後、風のように駆け出すアルゴ。

砂埃が舞い、その場からいなくなる。

それを静かに、いつまでもにこやかに見続けたブーン。

どれほどそうしていただろうか、ふと表情を消すと、自分の家に向かって歩き出した。

街路樹の影が、人の影のように蠢く道を進む。

そして、ポツリと呟いた。

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810 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:50:17 ID:l1O.OzB20




( ^ω^)「安心していいお。その時が来たら、ぼくがショボンを………」




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811 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:51:00 ID:l1O.OzB20


言葉の最後は、吹き抜ける風に掻き消えた。







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