525 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:01:52 ID:j/oEcZ8U0



0.零の証人



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526 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:03:22 ID:j/oEcZ8U0

西暦2024年1月末 某日早朝

(アルゴ)「直接依頼したいというから来てみたら」

(   )「売れる情報ならなんでも売ると聞いたから呼んでみたら」

(アルゴ)「情報屋であって、探偵じゃないんだけどね」

(   )「では、引き受けてもらえないと?」

(アルゴ)「…いや、引き受けるよ。ただびっくりしただけさ」

(   )「びっくり?」

(アルゴ)「あんた達は一枚板だと思っていたからね」

(   )「   」

(アルゴ)?

(   )「これからも、そう思っていてくれると嬉しいですよ」

(アルゴ)?(笑顔…ねぇ。なにかある…か)

(   )「そうそう、一つお願いがあるんですが」

(アルゴ)「ん?なんだい?」

(   )「この依頼の件は、だれにも売らないでほしいんです」

(アルゴ)「それは出来ないね。わたしの主義に反する」

アルゴの目の前に現れるトレードウインドウ。
困惑気味に内容を確認するアルゴの瞳が大きく見開かれる。

(   )「探しているって聞いたけど、いりませんか?」

(アルゴ)「……どこから聞いた?」

(   )「アルゴさんは情報のソースは簡単に明かす人だったかな」

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527 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:05:00 ID:j/oEcZ8U0

(アルゴ)「…わかった。その条件で引き受けよう」

(   )「ありがとうございます。絶対に誰にも…ですよ。例えばあなたが懇意にしている攻略組のビーター、黒の騎士さんにももちろん」

(アルゴ)「何故今その名前を出すのかわからないけどね」

(   )「世間話ですよ。攻略組にも内緒ですよってことです。攻略組トップギルドの血盟騎士団の方などにももちろん、言わないでくださいね」

トレードウインドウから品物を受け取るアルゴ。

(アルゴ)「肝に銘じていくよ。しかし、よく、手に入れられたね。これを」

(   )「蛇の道は蛇、ですよ。情報屋には情報屋の、道具屋には道具屋の道があるってことです」

(アルゴ)「…これから欲しいものがあったら、エギルの次にあんたん所に行くことにするよ」

(*   )「それは光栄だ」

(アルゴ)「それじゃあ、依頼の確認だ。これから一か月の間、ギルドVIPのギルマスであるショボンの動向を調査させてもらうよ」

(   )「基本、調べるのは夜9時から朝5時までの分で構わないです」

(アルゴ)「やると決まれば、ちゃんとやるよ。日中とはいえ君たちのあずかり知らぬ瞬間もあるだろう。報告はどうする?」

(   )「基本は三日に一度くらいでいいです。ただ、アルゴさんの目で緊急を要するものがあったらすぐ連絡を入れてください。あと、追跡中に見失った時も」

(アルゴ)「?まったく変な依頼だね」

(   )「こんなことはアルゴさんにしか頼めないですよ」

(アルゴ)「まったく…報酬は」

528 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:07:37 ID:j/oEcZ8U0

アルゴの言葉を遮るように現れるトレードウインドウ。
いくつかのアイテムとともにコル(アインクラッドの通貨)が提示される。

(アルゴ)「…順当な金額だね。あとは…回復POT、対毒・対麻痺POT、回復結晶、転移結晶に、回廊結晶!?しかもこの金額は!?」

(   )「POTは使用したら補充します。結晶はもしもの時に。回廊結晶は行き先をこの街に設定してありますから、使用した際はすぐに呼んでください。コルは装備の強化に使っていただいて結構です」

(アルゴ)「……わかった」

(   )「もしも人を使うようならその方たちの分も用意します。ですが、依頼内容は調査です。危険を感じた場合は撤収してくださって問題ありません。ただ、」

(アルゴ)「すぐに連絡するよ。…情報屋アルゴの名に懸けて、受けた依頼を投げ出すことはしないさ。ひとりでやるしね。知っている者も少ない方がいいんだろう?……ああでも一つ言っておこう」

(   )?

(アルゴ)「君は普段のしゃべり方のほうが良いね。いつもの特徴的な。その方が、きっと君らしい」

(   )「……おっおっおっ。よろしく頼むお」

(アルゴ)「じゃあ、またね。ブーン君」

( ^ω^)「よろしくだお。アルゴさん」




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529 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:08:52 ID:j/oEcZ8U0




第六話  数え歌がきこえる 前編 〜あんたがたどこさ〜




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530 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:09:42 ID:j/oEcZ8U0



1.一輪の百合。二つのグラス。



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531 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:11:17 ID:j/oEcZ8U0

同日午後三時。

ドアベルが音を立て、準備中と書かれたプレートのかかった木目調の扉が開かれた。
今は二件あるレストランカフェ『バーボンハウス』は、二件とも木目調の落ち着いた雰囲気だが、特に二号店としてオープンしたこの40層にある『バーボンハウス』は調度品にもかなりの手とお金をかけられており、落ち着いた雰囲気をかもし出している。

(*゚ー゚)「もどりました〜」

少し語尾を延ばしてカウンターの中にいるはずのショボンに声をかけて入ってきたのはしぃ。
右手と胸で紙袋を抱えている。

(*゚ー゚)「帰り道の露天で美味しそうな果物があったので、買っちゃいました。あっ」

(´・ω・`)「おかえり、しぃ」

視線の先には笑顔で帰りを迎えるショボン。
そして彼のいるカウンターの前には、一人の客がいた。

(;*゚ー゚)「すみません」

細身の体に白衣のような白いコートを纏った人物に頭を下げ、奥に行こうとするしぃ。
しかしそれをその人物は引き止めた。

从 ゚∀从「そんな逃げるように奥に行くなんて、傷付くな」

肩にかかるかかからないかのワンレングスの薄茶色の髪をかき上げながら、しぃに向かってにっこりと微笑む。

(*゚ー゚)「い、いえ、お客さんに気づかなかったので、申し訳ありません」

从 ゚∀从「そんなに存在感ないかな?」

(*゚ー゚)「い、いえそんなことないです!」

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532 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:12:32 ID:j/oEcZ8U0

座っていてもわかる、革の装備に包まれたしなやかな体。
背も高く、ショボンと同じくらいだろうか。
そして整った顔に微笑みかけられ、思わず頬を赤くするしぃ。

(*゚ー゚)「存在感がないなんてそんな…それどころか…」

(´・ω・`)「ハイン…きみ…」

从 ゚∀从「おっと、自己紹介が遅れたね。私の名はハインリッヒ。皆にはハインと呼ばれている。ショボンとは馴染みでね、今日はちょっと依頼できているんだが……そうか、君が噂の新人だね?」

椅子を下り、しぃの目の前に立つハイン。

从 ゚∀从「よろしく」

(*゚ー゚)「こ、こちらこそよろしくお願いします」

差し出された右手を握り、握手をするしぃ。
にっこりと微笑んだハインの瞳を見て、更に頬を染めた。

从 ゚∀从「かわいいお嬢さん、名前を聞いても良いかな?」

(*゚ー゚)「す、すみません。私の名前はしぃと言います!」

从 ゚∀从「しぃか、君に似合った可愛い名前だね。名は体を現すとは、よく言ったものだと思うよ」

(**゚ー゚)「そんな…ハインさんこそかっこいいです」

(´-ω-`)「ハイン…君って人はまったく…」

从 ゚∀从「ん?どうかしたかい?」

(´・ω・`)「しぃ、それ、女だから騙されちゃだめだよ」

(*゚ー゚)「………え?」

从 ゚∀从「ばらすのが早いよ、ショボン」

(;*゚ー゚)「えー!!!???」

从 ゚∀从「……自分でやっといてなんだけど、そこまで驚かれるとちょっと傷付くね」


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533 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:16:49 ID:j/oEcZ8U0



(;*゚ー゚)「すみませんでした」

散々驚いたあとカウンターに座るよう促され、ショボンの淹れたお茶を飲んで一息ついたしぃが、隣に座るハインリッヒに向かって頭を下げた。

从 ゚∀从「良いって良いって。私が悪乗りしたのが最初だからね」

(´・ω・`)「ほんとだよ。うちの新人をあんまりからかわないでほしいね」

从 ゚∀从「ははは」

改めてカウンターに座るハインリッヒ。
同じくショボンの出した背の高いグラスに入った褐色の液体に口を付け、一啜りする。
グラスの中で氷が音を立てた。

从 ゚∀从「これは?」

(´・ω・`)「カラムラ茶のアイスティーだよ。飲みやすくするために少しだけ甘くしてあるけど、君でも飲める甘さだろ?」

从 ゚∀从「甘味を足してあるのか。気付かなかったよ。食事も美味しいし、お茶も美味しい。いつか君の入れた酒が飲みたいね」

(´・ω・`)「いつかね」

ギルドのメンバーと居る時とはまた違った顔と口調を見せるショボン。
手は忙しくグラスや皿を磨いているが。
それを不思議な気持ちで見るしぃ。

(´・ω・`)「どうかした?しぃ」

(*゚ー゚)「い、いえ。なんでもないです」

从 ゚∀从「しかしVIPのニューフェイスがこんなに可愛い女の子だとはね。一人は女だと聞いてはいたが。驚いた」

(*゚ー゚)「あの、さっきも気になったんですけど、噂って?」

从 ゚∀从「ん?中層階をメインにしているギルドやパーティーの中ではちょっとした噂だよ。『ギルドV.I.P.に新人が二人も入った』ってね」

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534 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:19:20 ID:j/oEcZ8U0

(;*゚ー゚)「え!?なんでですか!?」

从 ゚∀从「それだけこのギルドが中層では有名だってことさ。強さも職業も攻略組レベルと言われているこのギルドだけど、少数精鋭でここまでやってきたからな。なあショボン、私が知り合ってからは初だろ?」

(´・ω・`)「どうだったかな。その頃モララーは居た?」

从 ゚∀从「いたいた」

(´・ω・`)「じゃあそうだね」

从 ゚∀从「そういえば、人材補強して、満を持して攻略組と合流なんて噂も流れてたな」

(´-ω-`)「まったく困った噂だよ」

ため息をつきながら、あきれたように首を振るショボン。
それでも両手はグラスを磨いている。

(;*゚ー゚)「そうだったんですか」

从 ゚∀从「それに、VIPに入りたいってやつも今までに結構居たから、大変なんじゃないか?」

(´・ω・`)「まあね」

(;*゚ー゚)「そうなんですか!?」

ショボンとハイン、二人の顔を交互に見るしぃに困ったような顔を見せるショボンといたずらっ子のような笑顔を見せるハイン。

(´・ω・`)「ありがたいことに、また希望者の問い合わせが増えたよ」

从 ゚∀从「だろうね」

(;*゚ー゚)「そうなんですか」

(´・ω・`)「募集とかはしてないんだけどね」

从 ゚∀从「基本はショボンのスカウトだろ?」

(´・ω・`)「別にそういうわけじゃないよ。独断で声をかけたりはしないし。基本、みんなの総意さ」

从 ゚∀从「でも、最初に目をつけるのはおまえだろ?」

(´・ω・‘)「まぁ…今のところはそうかな」

从 ゚∀从「そのショボンのお眼鏡にかない、あまたのライバルを蹴落としてVIPに入った新人二人。そりゃあ注目されるよ。どんなやつらだってね」

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535 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:23:44 ID:j/oEcZ8U0

(;*゚ー゚)「そ、そんな」

(´・ω・`)「ハイン、あんまり変なプレッシャーかけるのは止めてくれよ」

从 ゚∀从「事実を事実として教えてあげただけなんだけどね。元からのメンバーには勝てなくても、新人には勝てるかもって勝負を挑んでくるバカもいないとは限らないし」

肩をすくめながらしぃを見るハインだったが、視線の先に居る彼女は既に冷や汗を垂らしながら顔をこわばらせていた。

(;*゚ー゚)「あ、あの、私」

从; ゚∀从「ごめん、ごめん。そんなに気にするとは思わなかったよ。今までの面子は『受けて立ってやるぜ』ってタイプだからさ。ツンとかクーとか。だからしぃちゃんも大人しそうに見えて実はそういうタイプかと」

(´・ω・`)「あの二人や君と一緒にしたら駄目だよ」

从; ゚∀从「いや、このギルドに入るにはアレくらいのキャラじゃないと駄目なんじゃないかと…って、いま私も入れたか?」

(´・ω・`)「もちろん」

从 ゚∀从「いくらなんでもあの二人ほどじゃないと思うんだが」

(´・ω・`)「あんまり変わらないよ」

从 -∀从「……これからもうちょっと大人しくしておこう」

(;*゚ー゚)「ふふ」

自分が注目されていることを知り動揺していたしぃだったが、二人の会話を聞いているうちに少しだけ余裕が生まれ、思わず笑みを漏らす。

从 ゚∀从「笑った」

しぃの手をとり、そっと両手で包みながらじっと彼女の瞳を見るハイン。

(**゚ー゚)「あ、あの」

再び頬を染めるしぃ。

从 ゚∀从「ごめんね。しぃちゃん。驚かせちゃって」

(**゚ー゚)「そ、そんな。ハインさんは私を気づかってくださったんですよね」

从 ゚∀从「でも、驚かせちゃったから」

椅子からおり、照れて顔を伏せようとするしぃの顔を下から覗き込むハイン。

从 ゚∀从「ごめんね。しぃちゃん」

(**゚ー゚)「は、ハインさん。気にしないで下さい」

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536 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:25:58 ID:j/oEcZ8U0

从 ゚∀从「許してくれる?」

(**゚ー゚)「そんな、許すとか許さないとか」

从 ゚∀从「許して……くれないよね」

(*゚ー゚)「許します」

从 ゚∀从「良かった!ありがとうしぃちゃん。しぃちゃんに嫌われたくないから」

(*゚ー゚)「ハインさん」

しぃの手をぎゅっと握って満面の笑顔を向けるハイン。
釣られて笑顔を見せるしぃ。

从 ゚∀从「今日はこの後暇?」

(*゚ー゚)「え?」

从 ゚∀从「きれいな夕焼けが見れる湖を知ってるんだ。良ければ一緒に…どうかな。その後食事とか」

(**゚ー゚)「そ、そんな」

(´-ω-`)「はーいーん。いい加減にしようか」

从 ゚∀从「なんだよショボン。別に女同士食事くらい」

(´・ω・`)「しぃには彼氏いるよ。しかも婚約してる」

从 ゚∀从「え?そうなの?」

(*゚ー゚)「は、はい。私にはギコ君が」

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537 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:28:06 ID:j/oEcZ8U0

ぱっと手を離し、椅子に座りなおすハイン。

从 ゚∀从「なんだもう決まった人がいるんだ。それならそうと早く言ってくれないと」

(;´・ω・`)「まったく君って人は」

从 ゚∀从「しぃちゃん、その彼とお幸せに」

(;*゚ー゚)「は、はい」

从 ゚∀从「で、ショボン。依頼は受けてくれるのか?」

(´・ω・`)「明日連絡するよ。在庫のチェックもしたいし」

从 ゚∀从「分かった。出来るだけ早く頼むな」

(´・ω・`)「うん。分かったよ」

グラスに残っていたアイスティーを一気に飲み干し、椅子からおりるハイン。

从 ゚∀从「じゃ、よりよい返事を待ってる」

(´・ω・`)「はいはい」

从 ゚∀从「しぃちゃんもまた!」

(;*゚ー゚)「は、はい!」

从 ゚∀从「それじゃ!」

笑顔で二人に軽く手を振った後店を出て行くハイン。

(´・ω・`)「まったく…」


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538 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:29:13 ID:j/oEcZ8U0

一息ついたショボンと呆然としているしぃ。

(;´・ω・`)「大丈夫?」

(;*゚ー゚)「はい……あの……彼女はいったい」

(´-ω-`)「……彼女から依頼を受けた件もあるから、とりあえずは夜に話すよ。まずはお店を開けないとね。どうする?休んでもいいけど」

(*゚ー゚)「いえ、大丈夫です!」

(´・ω・`)「そう?じゃあ特急で開店準備をしよう」

(*゚ー゚)「はい!」

慌しく動き始めるショボンとしぃ。
既に扉の前には待っている人たちが数組いるのだが、まだ気付いていなかった。



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539 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:31:13 ID:j/oEcZ8U0




2.二人静、三人寄ればかしましい。




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540 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:32:17 ID:j/oEcZ8U0

同日午後2時

V.I.P.農場
クックルが管理しているこの農場は、バーボンハウスに卸す野菜だけではなく、クーが薬や毒を作るのに使う薬草や、モララーが工芸品を作るのに使う植物なども栽培している。そして最近では隣のV.I.P.牧場にいる家畜たちに食べさせる牧草などにも手を広げ始めていた。
またクックルの趣味で花畑もあるため、それなりに広大な土地を保有しているのだがそろそろ手狭と感じるほどになってきていた。

この電子の世界アインクラッドでは現実の世界ほど手をかけなくても植物を栽培できるためクックル一人でもどうにかなっているが、それでも収穫などには人手がある方がありがたいため、職業を持たないドクオ・ジョルジュ・ギコの三人は頻繁に手伝いに来ていた。

今日は収穫はないのだが、広い農地を眺めることの出来る東屋に、ギコが一人座ってお茶を啜っている。

(,,゚Д゚)「あ〜お茶が美味い」

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541 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:33:42 ID:j/oEcZ8U0

(;゚∋゚)「ギコ、お前こんなところで油を売っていて良いのか?」

(,,゚Д゚)「おおクックル。飲むか?」

木製の長椅子の中央に座っているギコが、自分の隣をぺしぺしと叩く。

( ゚∋゚)「まったく」

呆れたように、それでも少し笑顔でそこに座るクックル。
ギコはストレージから湯飲みを取り出すと、反対側に置いていた水筒からお茶を注ぎ、クックルに差し出した。

( ゚∋゚)「ありがとう」

(,,゚Д゚)「朝ショボンが淹れてくれたやつだから、美味いぞ」

( ゚∋゚)「……うん。美味い」

同じ方向を見ながらお茶を啜る男二人。
もしもこの二人を知らない者がこの光景を見たら、首をかしげるような風景である。

( ゚∋゚)「いいのか?こんなところにいて?」

(,,゚Д゚)「午前中にドクオとジョルジュとモララーと四人で採取しながら戦闘してきたぞゴルァ」

( ゚∋゚)「そうか。どうだった?」

(,,゚Д゚)「オレはまだまだだゴルァ」

( ゚∋゚)「それが分かっているのなら、良いだろう。だが、訓練にいかないのか?」

(,,゚Д゚)「オレはまだショボンからソロで戦闘の許しが出てないから。ドクオもジョルジュも野暮用とか言って、午後は付き合えないって言われてよ。他の皆には店があるし」

( ゚∋゚)「そうか」

(,,゚Д゚)「ああ」

( ゚∋゚)「……言わないのか?」

(,,゚Д゚)「?」

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542 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:34:57 ID:j/oEcZ8U0

( ゚∋゚)「戦闘訓練の誘いに来たのかと思っていた」

(,,゚Д゚)「ん〜〜。来る時まではそのつもりだったけど、働いてるクックルを見て、こういう職業を頑張るのもありなのかな…とか思ってよ」

( ゚∋゚)「栽培スキル、あげてみるか?」

(,,゚ Д゚)「みんなは、その職業が好きでやってるんだろ?オレは、そういうのじゃないから悪い気がする。この世界はスキルを上げればある程度の物は作れたり出 来るけど、やっぱり好きでやってるやつとは違うと思うんだ。オレには花や草木に水をあげるときのクックルみたいな優しい表情は出来ない」

( ゚∋゚)「……お前、変わったな」

(,,゚Д゚)「そうか?」

( ゚∋゚)「ああ」

(,,゚Д゚)「そうか。クックルの声も聞こえるようになったしな」

( ゚∋゚)「ははは」

ギコがポツリと最後にした呟きに笑うクックル。
それをじろっと睨むギコ。

(,,゚Д゚)「笑い事じゃないぞゴルァ」

( ゚∋゚)「すまんすまん」

(,,゚Д゚)「しぃと二人、いつになったらクックルと喋られるようになるかひやひやしてたからな」

(*゚∋゚)「なんだ、そんなにおれと話したかったのか?」

ほんのり頬を染めてギコを見るクックル。

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543 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:36:03 ID:j/oEcZ8U0

(;,,゚Д゚)「べ、別にそういう意味じゃないぞ!せっかくギルドに入ったんだから仲良くなりたいなと」

(*゚∋゚)「分かった分かった」

照れたようにもじもじするクックルをみて、慌てて立ち上がるギコ。

(;,,゚Д゚)「く、クックル!」

( ゚∋゚)「冗談だ」

すっと真顔に戻り、口をあんぐりと開けたギコを見て、にやっと笑う。

(,,゚Д゚)「……悪趣味だぞ、ゴラァ」

疲れたようにもう一度長椅子に座るギコを見て、面白そうに笑うクックル。

(,,゚Д゚)「クックルは、そういう冗談も言えるんだな」

( ゚∋゚)「もっと堅物かと思ったか?」

(,,゚Д゚)「そうだな…ゴラァ」

( ゚∋゚)「おれも自分がこんな冗談を言う日が来るとは思ってなかった。生きてきて、初めてだ」

その言葉に感ずる物があり、じっとクックルを見るギコ。
その視線を感じ、照れくさそうに頭をかくクックル。

( ゚∋゚)「おれは堅物というか、面白みがないやつだったと思う。この世界では………特にな。だけど、このギルドに入ってあいつらと話していたら、いつの間にかこんな風なことを自然にするようになっていた。自分でも不思議だ。ギコ、お前もそうじゃないのか?」

(,,゚Д゚)「ああ……そうだなゴラァ。今までは自分としぃのことしか考えてなかったし、ただ生き続けるためだけに動いていた。けれど、今はどう生きるかを少し考えているような気がするぞゴラァ」

( ゚∋゚)「不思議なやつらだ」

(,,゚Д゚)「ああ。不思議なやつらだ」

顔を見合わせてニヤニヤと笑う二人。
そこにチャイムが鳴り、クックルが立ち上がる。

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544 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:38:06 ID:j/oEcZ8U0

(,,゚Д゚)「何だ今の音?」

( ゚∋゚)「来客だよ。ここはギルドのメンバー以外は出入りできないようにしてあるからな。用事のある者は門にあるチャイムを鳴らすんだ」

(,,゚Д゚)「そんなのあったか?」

(; ゚∋゚)「流石にもう少し注意力を持て」

(;,,゚Д゚)「…ショボンやドクオにもよく言われるぞゴルァ」

門に向かって歩き始めたクックルの後を追うギコ。

( ゚∋゚)「どうした?」

(,,゚Д゚)「せっかくだから見に行く」

( ゚∋゚)「別に良いが、邪魔するなよ」

(,,゚Д゚)「しないぞゴルァ」

門に近付くと人影が見えた。
そして向こうもこちらに気付くき、頭を下げているのが分かる。

( ><)「こんにちはなんです!」

( ゚∋゚)《こんにちは》

ストレージから出したボードにペンを走らせるクックル。
門の外に立つ少年はお辞儀をした後にボードに書かれた文字を読み、ニッコリ微笑んだ。

(,,゚Д゚)?

それを見て不思議そうな顔をしたギコを視界の端に捕らえ、口の端を少し上げたクックル。

( ゚∋゚)『しゃべるなよ。俺の声はギルドのメンバーにしか聞こえないから、見えないやつと会話する変なやつに見える』

.

545 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:40:14 ID:j/oEcZ8U0

(,,゚Д゚)!

( ><)「どうしたんですか!?」

( ゚∋゚)《なんでもない。きょうも花かな?》

( ><)「ハイなんです!」

( ゚∋゚)《自分でえらぶかい?》

( ><)「このまえ自分で選んだのはセンスがないって笑われたんです!だから今日はお願いします!ピンク色の花で花束を作って欲しいんです!」

( ゚∋゚)《わかった。まっててくれ》

笑顔とボードで答え、街路沿いにある花壇に向かうクックル。
それを見て、街路沿いについてくる少年。

(,,゚Д゚)「口も開かないんだな」

( ゚∋゚)『腹話術みたいなもんだな』

(,,゚Д゚)「すげぇもんだ」

こそこそと囁くように話す二人。
街路沿いだが境界はあるため少年は中に入ってこれないが、音は多少漏れるためギコの声が聞こえないようにしていた。

(,,゚Д゚)「そういえば、花束なんか作れるのか?」

( ゚∋゚)『モララーとツンから包装に使う紙やリボンは買ってるから、後はスキルを上げてるところだ』

(,,゚Д゚)「……色々やってるんだな」

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546 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:41:29 ID:j/oEcZ8U0

花壇に着くと、走ったのか先に着いていた少年が目を輝かせながら花壇を見ていた。

(,,゚Д゚)「花が好きなんだなゴラァ」

( ><)「はい!好きなんです!さいしょはぽっぽちゃんにあげる為に買いに来たんですが、今は僕も部屋に飾ったりしているんです!」

(,,゚Д゚)「おお!」

( ><)「お兄さんも花を育ててるんですか!?」

(,,゚Д゚)「おれはこいつの友達なだけだ」

( ><)「そうなんですか!」

ギコと少年が話をしている間に花束を作るクックル。
濃いピンク色の花を中心に、薄いピンクと淡い水色の花を回りにあわせ、それを白地に緑の蔦をあしらった紙で巻いてから、ピンクのリボンで根元を留める。
そしてそれをギコと楽しそうに話をしている少年に見せようとしたときに、こちらに向かってやってくる二人に気付き、動きを止めた。

( ゚∋゚)?

(,,゚Д゚)「ん?どうした?」

花を扱うときに見せる優しい笑顔を消したクックルに気付き、その視線の先を見るギコ。
少年も不思議そうにそちらに眼を向けると、誰にでも分かるレベルで顔を強張らせた。

(;><)「ち、ちがうんです!」

( <●><●>)「何も違わないのは分かってます」

(*‘ω‘ *)「もう嘘はやめるっぽ」

(;><)「ち、ちがうんです…」

.

547 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:43:10 ID:j/oEcZ8U0

(,,゚Д゚)「おい、知り合いか?」

花を買いに来た少年よりも頭ひとつ分くらい背の高い青年と、すこしぽっちゃりとした少女が少年を挟むように立ち、怒っているのか強い口調で詰め寄る。

( <●><●>)「ビロードがここに来ていることは分かっていました」

(;><)「知ってたんですか!?」

(*‘ω‘ *)「急に花とか買ってくるからなんだと思ったっぽ」

(;><)「それは…」

パーティーでも組んでいるのか、会話からどうも親しい間柄らしいことが分かり、とりあえず静観する事に決めたクックルとギコだったが、背の高い青年がちらちらとこちらを見ているため身構えてはいた。

( <●><●>)「ぽっぽちゃん……いえ、私たちがギルドV.I.P.に入ることが悲願だとはいえ、一人で」

(;><)「え?ギルドVIP?」

(*‘ω‘ *)「この農園はギルドVIPが経営してる農園だから顔を売るために来てるんだっぽ?」

(;><)「え!?ここはそうなんですか!?」

.

548 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:46:28 ID:j/oEcZ8U0

(;<●><●>)「ビロード?」

(*‘ω‘ *;)「もしかして、知らなかったっぽ?」

(;><)「知らなかったんです!なんでワカッテマス君とぽっぽちゃんは知ってるんですか!?」

(*‘ω‘ *)「なぜって…」

(;<●><●>)「農園の名前を見れば一目瞭然なのは分かってます」

(;><)「農園の名前なんてどこに書いてあるんですか!???」

(;<●><●>)「ビロード…」

(*‘ω‘ *;)「ビロード…」

(;,,゚Д゚)「……おれより注意力散漫なやつがいた」

(;゚∋゚)))

思わず頷いたクックルを尻目に、とりあえず三人に声をかけたギコだった。



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549 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:47:08 ID:j/oEcZ8U0



3.三人模様、四面楚歌



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550 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:49:21 ID:j/oEcZ8U0

同日午後四時

モララー細工工房
今モララーが経営する細工工房は、昔はブーンが雑貨屋を開いていた店である。
薬から武具まで扱っていたその時は手狭に感じたが、今は店頭に置くのは小物が主なため、少し広々とスペースを使っていた。

( ・∀・)「さて客もいなくなったし、続きをやるか」

カウンターの奥に作った作業台に向かうモララー。
通常の細工品を作るにはまず素材を準備する。そしてスキルを持っている者が素材をタップすると、作製メニューが現れ、そこから作りたい物を選び、更に使用する工具を選んで作製していく。
更に添加素材を使用する場合もあるが、基本的には大まかなジャンル分け以外はランダムに出来上がる。

しかしある程度スキルを上げ、派生スキルも習得すると武器防具以外はデザインを決めることが出来るようになる。
更に武器防具にも、一度出来上がったものを細工することが出来るようになる。

既にモララーの作製スキルは更にその域を超えており、ほぼ自分の思い通りに装身具や小物を作り上げていた。

( ・∀・)「でっきるかな、でっきるっかな」

紙に作りたいものの絵を描き、それをもとにイメージを固め、素材を細工していくのが最近のモララーのスタイルだった。
今日もデザインを描いた紙を見ながらストレージや店の倉庫にある素材を確認していると、ドアベルが鳴った。

( ・∀・)「いらっしゃい!って、なんだ」

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551 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:51:58 ID:j/oEcZ8U0

ξ゚听)ξ「なんだとは何よ」

ツインテールにした柔らかく光る金色の髪を揺らしながら店に入ってきたのは、同じギルドのツンだった。

( ・∀・)「こんな時間にめずらしいな?自分の店は?」

ξ゚听)ξ「納品は終わり。予約も入ってないから今日は終了」

慌ててしまおうとした紙を作業台の上に戻し、作業台からカウンターに戻るモララー。

( ・∀・)「で?今日はなんだ?」

ξ゚听)ξ「ん?」

( ・∀・)「どうせまた無茶な依頼だろ?」

ξ゚听)ξ「失礼ね。頼まれていたレースと刺繍、あとリボンを持ってきてあげたっていうのに」

ツンもカウンターに近付き、ウインドウを操作してストレージから品物をいくつか取り出す。
カウンターに並べられる可憐なレースや華やかなリボン。

( ・∀・)「おお!早かったな。助かるよ」

ξ゚听)ξ「感謝しなさい。で、かわりと言ったらなんなんだけどさぁ」

( ・∀・)「…やっぱり無茶な依頼じゃねえか。とりあえず先にいくらだよ。これ全部で」

ξ゚听)ξ「あら、良いわよ。同じギルドの仲間じゃない。モララーには更にこれからお世話になるし」

(;・∀・)「マジで金払うからやめてくれ」

ξ゚听)ξ「そんなこと言わないの。で、これなんだけどさ」

モララーが片付けたカウンターの上に紙を広げるツン。
気が乗らないのが見てわかるモララーだが、とりあえず覗き込んだ。

( ・∀・)「……こんなもん、何に使うんだ?」

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552 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:53:02 ID:j/oEcZ8U0

ξ゚听)ξ「もちろん、これで服を作るのよ」

( ・∀・)「できるのか?」

ξ゚听)ξ「わからない。だからチャレンジしてみるの」

( ・∀・)「…防御力のアップか」

ξ゚听)ξ「それが基本的に欲しい能力よね。更に今私がランダムで付与できているプラス性能をある程度コントロールできるようになれば、防具だけじゃなく衣服に意味を持たせることができるようになるかもしれない」

( ・∀・)「……わかった。だが多分時間がかかるぞ」

ξ゚听)ξ「よろしく。サンプルはまずどれくらいでできる?」

(;・∀・)「お前今のおれのセリフ聞いてたか?」

ξ゚听)ξ「とりあえずのサンプルでいいのよ。まず作れるかどうかやってみたいから」

(;・∀・)「まったく…」

ため息をつきつつ自分のストレージと店の在庫を確認するモララー。

( ・∀・)「……素材で強度は低いけど細工で失敗したことがないのが残ってるからまずはそれで作ってみる。ただ作り方を工夫しないとだから…明後日の昼には持っていくようにする」

ξ゚听)ξ「わかった。明日の夕飯の時ね」

(;-∀-)「はいはい、頑張りますよ」

ξ゚听)ξ「…ほかのメンバーには内緒でね」

( ・∀・)?

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553 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:54:30 ID:j/oEcZ8U0

ξ゚听)ξ「これ、前からやってみたいと思ってはいたんだけど、今回のは……ショボンオーダーなのよ」

( ・∀・)「わかった。至急であたりをつける」

ξ゚听)ξ「ごめんね。お願い」

( ・∀・)「理由は聞いたのか?」

ξ゚听)ξ「詳しくは聞いてない。ブーンやドクオにも話してないみたいだから」

( ・∀・)「もしかして、カン…か?」

ξ゚听)ξ「多分ね。ちゃんとした理由があれば聞く前に言うだろうから。全部話すかは別として」

(;・∀・)「おいおい、ショボンのカンは当たるだろ。しかも悪いことは特に。そしてかなりの確率で斜め上に悪い方向へ」

ξ;゚听)ξ「やめてよ怖いこと言うの」

顔を見合わせて大きくため息をつく二人。

(;・∀・)「…とりあえずやってみる」

ξ;゚听)ξ「よろしく」

ツンが踵を返そうとするとドアが開いた。

ζ(゚―゚*ζ「こんにちはー」

(*・∀・)「いらっしゃい!」

ξ゚听)ξ!

ギルドのメンバーの中ではどちらかというと落ち着いた言動をするモララーの元気な大声を聞いて思わずびっくりするツン。
そして入口のほうを見ると、可愛らしい女性がいた。

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554 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:55:55 ID:j/oEcZ8U0

ζ(゚―゚*ζ「あ、すみません。待ってますね」

(*・∀・)「いいよいいよ。もうこれ帰るから」

ξ#゚听)ξ「これ?」

ζ(゚―゚;ζ「え?でも」

(*・∀・)「頼まれていたイヤリングだよね。出来てるよ」

カウンターの下から小さな箱を取り出すモララー。
そしてツンを見て追い払うように手を振る。

( ・∀・)「ほら、お客さん来たから」

ξ#゚听)ξ「あんたねぇ」

ζ(゚―゚;ζ「あ、あの…」

ξ#゚听)ξ「もう一つ用事思い出した」

(#・∀・)「はぁ?」

ξ#゚听)ξ「終わるまで待ってるから」

(#・∀・)「一度帰れ」

ξ#゚听)ξ「終、わ、る、ま、で、こ、こ、で、待ってるから」

(#・∀・)「おまえ」

ξ#゚听)ξ「なに、なんか問題あるの?」

ζ(゚―゚;ζ「あの…」

火花を散らす二人を怖がりつつカウンターに近寄る少女。
この世界では珍しいレースやフリルがたくさん付いたふんわりとした服を着た可愛らしい少女に、モララーはもちろんツンも思わず見惚れてしまうが、ツンはすぐに正気を取り戻してにっこりとほほ笑む。

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555 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:57:25 ID:j/oEcZ8U0

ξ゚听)ξ「注文した品の受け取りに来たのよね。ちょっと待っててくれるかな」

ζ(゚―゚*ζ「は、はい」

ξ#゚听)ξ「ほら、はやくしなさい。お客さんをお待たせしないの」

(#・∀・)「ちくしょう」

カウンターに出していた小箱のふたを開け、中を少女に見せる。

( ・∀・)「話した通りのデザインにしたつもりだけど、どうかな」

更にカウンターに近寄り、小箱を覗き込む少女。

ζ(゚―゚*ζ「すごい!私の想像よりも可愛くてきれいです!ありがとうございます!」

(*・∀・)「そう!良かった」

小さなピンクの意思を中心に、花弁のような金と銀の細かい細工が施され、さらにそこから零れ落ちたような小さなしずく型の透明な石が、華奢な銀の鎖によって繋がれていた。

(*・∀・)「これくらいの鎖の長さなら戦闘にもギリギリ邪魔にならないだろうし、デレさんなら着こなせると思ったから、ちょっと長めにしてみたよ」

ζ(゚―゚*ζ「本当に素敵です!ありがとうございます!」

(*・∀・)「いやいや、おれも作り甲斐があったよ」

横からイヤリングを覗き込むツン。
それはツンの目から見ても可愛く美しく儚げで、思わず見惚れてしまう。

ξ;゚听)ξ「まったく…性格はともかく腕は確かよね」

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556 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:59:30 ID:j/oEcZ8U0

ζ(゚―゚;ζ「でも、こんなにきれいで素晴らしいのに、本当に先にお渡ししたあの金額でいいんですか?」

( ・∀・)「メインの石と素材はデレさんの持ち込みだし、デザインも基本はデレさんだしね。多少は在庫の素材も使ったけど、それよりなによりこういうデザインのものを作れることが分かったのがかなりの収穫なんだよ。だから今回はあのお値段で大丈夫です」

ζ(゚―゚;ζ「そうですか?ありがとうございます」

(*・∀・)「でも、次の時はもう少しちゃんとしたお値段になると思いますから覚悟してくださいね。もちろんサービスもしますけど」

ζ(゚―゚*ζ「はい。その時はお願いします。またきれいな石を見付けたり良いモチーフを思いついたときは飛んできますね」

(*・∀・)「楽しみにしてますよ。今回のもので俺のレベルも上がったので、良ければ店も覗きに来てください」

ζ(゚―゚*ζ「はい。寄らせていただきますね」

ξ゚听)ξ「なるほど。こうやって次に繋げてるわけか」

(#・∀・)「おまえはさっきからうるさいよ」

ξ#゚听)ξ「はいはい」

ζ(゚―゚;ζ「あの…」

(*・∀・)「はい!」

ζ(゚―゚*ζ「あ、いえ。モララーさんじゃなくて、あの…」

モララーと掛け合いを繰り広げていたツンに声をかけるデレと呼ばれた少女。

ξ゚听)ξ「私?」

ζ(゚―゚*ζ「はい。間違ってたら申し訳ありません。もしかして、裁縫師のツンさんですか?」

ξ゚听)ξ「!?た、確かに私はツンだけど、どうして」

ζ(゚―゚*ζ「!初めまして!私はデレといいます!ツンさんの作った帽子は宝物です!」

ξ゚听)ξ「え!?」

ウインドウを出してストレージから帽子を実体化させるデレ。
そして白とピンクのレースとフリルで彩られた小さめのベレー帽を大事そうに持つ。

ξ゚听)ξ「これ…私がブーンの店に品をちゃんと置いてた頃の…中期の頃の作品だ」

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557 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:01:21 ID:j/oEcZ8U0

ζ(゚―゚*ζ「そうなんです!その頃一回お見かけしたことがあって、でもお店がなくなってしまってて」

ξ゚听)ξ「そういえば、上の店に移転するちょっと前に売れたような…」

ζ(゚―゚*ζ「今は上層階にお店を出されてるんですか!?」

ξ゚听)ξ「自分の店じゃないのよ。あの頃と同じ雑貨屋においてもらったり。でも今はほとんどオーダー物かな。上に行くと女の子の数がそれほど多くないしね」

ζ(゚―゚*ζ「あ、あの、お店の場所を教えてもらってもいいですか?今度行きます!」

ξ゚听)ξ「そう?……どうせなら、今から一緒に行こうか?わたしもう戻るし。説明するにはちょっと入り組んでるのよね。場所。一回行けば覚えると思うから。良ければオーダーの話もするし。時間は大丈夫?」

ζ(゚―゚*ζ「本当ですか!?はい!時間なら大丈夫です!!うれしいです!!ありがとうございます!!」

( ・∀・)「……あれ?」

ツンとの会話で見せるデレの満面の笑顔をみながら会話を聞き、頭がついていけなくなっているモララー。

ζ(゚―゚*ζ「じゃあモララーさん、本当にありがとうございました」

カウンターの上の小箱を大事そうに受け取り、ストレージにしまうデレ。
先ほど出した帽子を大事そうに抱えながら。

ζ(゚―゚*ζ「ツンさん、お願いします!」

ぺこりと頭を下げるデレを見て、笑みをこぼすツン。
身長も体格もそれほど違っておらず、おそらく年齢もほとんど変わらないように見えるが、その仕草や行動からデレのほうが幾分か年下に見える。

更に言うと瞳や髪の感じがよく似ているため、姉妹といえば信じる人もいるかもしれない。

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558 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:02:08 ID:j/oEcZ8U0

ξ*゚听)ξ「じゃあ行きましょうか。デレさん」

ζ(゚―゚*ζ「呼び捨てでいいですよ」

ξ*゚听)ξ「じゃあデレちゃん、いこっか」

ζ(゚―゚*ζ「はい、ツンさん」

ξ*゚听)ξ「私も呼び捨てでいいけど…」

ζ(゚―゚*ζ「じゃあ私も……ツンちゃん、つれてって」

二人してキャーキャーと嬌声をだす。
それを呆然と見るモララー。

ξ*゚听)ξ「じゃあね、モララー。また連絡する」

ζ(゚―゚*ζ「モララーさん!ありがとうございました!」

はしゃぎながら店を出ていくツンとデレ。
モララーはそんな二人の背中を呆然と見送った。

( ・∀・)「………………あれ?」

モララーがポツリと呟くと、ツンが持ってきた仕様書が、ひらひらと床に落ちた。




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559 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:06:38 ID:j/oEcZ8U0




4.四の五の言わずに言うことを聞け



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560 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:07:35 ID:j/oEcZ8U0

同日午前11時


流石兄弟の武具店は、38層の街にある。

街 の入口から街を囲む壁沿いに、街外れの墓地に向かって進んだ途中にあるその店は、開店当初は立地の悪さから知る人ぞ知る店であり、最初はブーンの雑貨屋か らの付き合いの常連と迷宮での戦闘などで知り合った者達が来店するくらいだった。だが口コミでその存在が広がると、わざわざやってくるものが増えて展示品 の販売からオーダー品の作製までかなりの繁盛を見せいている。

兄者の「やだやだやだやだここがいい〜。ここじゃなきゃやだ〜」という我儘で全員のため息とともに決まった店だったが、広さ、設備共に兄弟二人で武器屋と防具屋をするには最適であった。

店のオープンは10時頃。
オーナーである二人を知る者は、よほどのことがない限りこの時間の前には来ないし、急いでいても遅めに来るようにしていた。

( ´∀`)「こんにちはもなー」

▼・ェ・▼「きゃん!」

つまり11時を少し過ぎた頃に店のドアを開けたモナーの判断は正しいもだが、今日は日が悪かった。

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561 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:08:41 ID:j/oEcZ8U0

ミセ*゚ー゚)リ「これ、かわいくない!」

(‘_L’)「この武器はなぜこんな形をしているのでしょう。槍…ですよね」

/ ゚、。 /「もっと射程の長い武器が欲しい。ここに来ればあるかもしれないと聞いた」

<_プー゚)フ「おいおい、物はいっぱいあるけど俺に似合うのがないぞ!もっとかっこいいのは置いてないのか?」

(゚、゚トソン「この防具は質は良さそうですが少々お高いですね。このスペックならもう少し安くてもよいと思うのですが」

ミセ*゚ー゚)リ「この武器も可愛くない!もっとラブリーなやつないの!?せっかく可愛い服を着てもこれじゃあ台無しだよ!もっと可愛いのほしい!」

/ ゚、。 /「この鎌、もっと柄を長くしてほしい。もしくはこの槍、柄か刃の部分をもっと長く」

(゚、゚トソン「これとこれとこれでこんなにするのですか…。もう少し安くなりませんか。たとえばこれ位」

<_プー゚)フ「わかった!隠してるんだな!だーせ!だーせ!だーせ!勿体つけるな!」

(‘_L’)「この剣のこの突起は一体何の為に?この槍のこれもそうです。そしてこの盾のこのレリーフには意味があるのですか?」

<_プー゚)フ「店主!」

ミセ*゚ー゚)リ「店主さん!」

/ ゚、。 /「…店主」

(゚、゚トソン「店主」

(‘_L’)「店主殿」

(;´∀`)

▼;・ェ・▼

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562 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:09:48 ID:j/oEcZ8U0

店内の騒々しさに呆然とするモナーとビーグル。
そして中に入らずにそのまま扉を閉めようとした。

(;´_ゝ`)「やあモナー君、いらっしゃい」

(´<_`;)「どうしたんだい、早く中にお入りよ」

しかしそれは許されず、二人の同じ顔が扉に手をかけ、汗をかきながらこちらをみてにやっと笑った。

(;´∀`)「お、お忙しそうだから帰るもな。武器の受け取りはまた今度」

▼;・ェ・▼「く、くぅ〜ん」

(´<_` )「いやいや」

( ´_ゝ`)「帰さないよ」

ミセ*゚ー゚)リ「ちょっと店主さん!あ!可愛い犬!」

<_プー゚)フ「おい!早くもっとかっこいいの持ってきてくれ!こうダーッとしてガーッときてボワッとするようなグッとくるやつをさぁ」

( ´_ゝ`)「お前ら少しは静かにしろ!」

(´<_`;)「モナー頼む、手伝ってくれ」

(;´∀`)「そ、そんなことを言われても」

(゚、゚ トソン「お客相手にその物言いはないと思われます。確かに騒がしいですし、お客様は神様ですなどというつもりも毛頭ございませんが、それでもやはり店の オーナーが客に向かって怒鳴りつけるのはいかがなものかと。ここはやはり多少の値引きなどでそのことに対する贖罪せねばならないと思います」

/ ゚、。 /「別に気にしない。欲しい武具が欲しいだけ。出来るの?出来ないの?あるの?ないの?それが知りたいだけ」

(#´_ゝ`)「一度に話しかけるな!まずはカウンターに並べ!」

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563 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:11:12 ID:j/oEcZ8U0

(‘_L’) 「しかしながら店主よ、並べてある武具は店主が持って渡してくれないと手に取ることができない。置いてある状態でもステータスの確認はできるようにしてく れてあるが、やはり持った感じは大事ではなかろうか。特にこの突起が持った際にどのような位置にくるとかを確かめないことには」

ミセ*゚3゚)リ「ワンちゃんワンちゃんワンちゃん、ちっちっちっ」

四人の男女が思い思いに兄者と弟者に詰め寄り、一人の少女は唇をすぼめて舌を鳴らしながらビーグルに向かってくる。

怖がってモナーの後ろに隠れるビーグル。

▼;・ェ・▼「くぅ〜ん」

(#´_ゝ`)「いいから並べ!!!!」

(´<_`;)「とりあえずビーグルを奥の部屋に連れてってから、カウンターの中を頼む」

(;´∀`)「も、モナーが!?」

(;´_ゝ`)「頼むモナー。売るだけなら店番のNPCでも出来るが、細かい商品の説明は無理だ」

(;´∀`)「モナにも無理もなよ」

(´<_`;)「ショボンの座学を受けてるだろ。あの地獄のテストで得た知識があれば、大体のことは答えられるから。店の商品はギルメンならある程度まで情報出るよう設定変えておくし」

(;´_ゝ`)「頼むモナー」

いつも飄々としている流石兄弟の必死さを感じる哀願にしょうがなく頷くモナー。

(*´_ゝ`)「ありがとうモナー」

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564 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:13:49 ID:j/oEcZ8U0

( ´∀`)「ビーグル、奥の部屋に行ってるもな。大人しくしてるもなよ」

▼・ェ・▼「きゃん!」

ミセ*゚3゚)リ「わんちゃん行っちゃった」

(´<_` )「この馬鹿五人は俺らで片を付けるようにするが、会計の時は頼む。流れてきたのは適当に流すか俺たちに戻してくれ。あとこいつら以外のまともな客の接客も頼むな」

( ´_ゝ`)「オーダー品の受け取りの客が来たら、奥の工房に保管してあるから。武器は地下のおれの工房、防具は一階の弟者の工房にある」

<_プー゚)フ「早く出せよ〜」

(#´_ゝ`)「ちょっと黙って待ってろ!」

(゚、゚トソン「だからその言い方は客に対する物言いではないと。やはりここは値引きで誠意を見せていただかないと」

(´<_`#)「うちの店は値引きはしない!絶対だ!」

/ ゚、。 /「柄が長いか刃が長ければ相応の値段で買う」

ミセ*゚ー゚)リ「可愛いのがあったら買うよ!」

(‘_L’)「まずはこの突起の必要性からご説明を」

(#´_ゝ`)「俺たちが話しかけるまで喋るな!!!並んで棚の品でも見てろ!!!」

(;´∀`)「兄者が…」

(´<_`;)「わるい、モナー。よろしく頼む」

(;´∀`)「分かったもな」

モナーがカウンターに入り、兄者と弟者はカウンターの前に並ぶ五人のそばに寄った。

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565 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:14:51 ID:j/oEcZ8U0

<_プー゚)フ「おそいぞー」

(#´_ゝ`)「うるさい!で、どんな武器が欲しいんだ!」

<_プー゚)フ「かっこいいやつが欲しい!」

(#´_ゝ`)「はぁ?」

<_プー゚)フ「もっとこう俺に似合う派手なやつが欲しいんだよ。もっとこうガーッときてダーッときてグッときてズバッて感じの」

(#´_ゝ`)「分かるかそんな説明で!!」

<_プー゚)フ「お前ほんとに武器の鍛冶職人か?客のイメージをわからないでどうすんだよ」

(#´_ゝ`)「てめぇ…」

一触即発の雰囲気で睨み合う兄者と男。
慌ててモナーが割って入った。

(;´∀`)「と、とにかく派手なのが欲しいもな?」

<_プー゚)フ「ん〜まぁそうっていえばそうだな」

( ´∀`)「種類は何が良いもな?あと形にこだわりとかはないもなか?」

<_プー゚)フ「おれは両手剣使いだからよ。やっぱ両刃の両手剣だな。厚くてごついのが好きだ」

( ´_ゝ`)「モナー?」

( ´∀`)「なら、そういう両手剣を買って、モララーのところで飾りをつけてもらえばいいもな」

( ´_ゝ`)「ああ。なるほど」

<_プー゚)フ「!そんなことができるのか!?」

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566 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:16:12 ID:j/oEcZ8U0

( ´_ゝ`)「出来るはずだ。刀身に装飾や彫とかを入れると基本耐久値が落ちたりすることがあるけど、攻撃値が落ちるなんてことは聞かないな」

<_プー゚)フ「それやる!」

( ´∀`)「じゃあまず、自分に合った両手剣を選ぶもな」

<_プー゚)フ「おう!店主、両手剣はどこだ!?」

( ´_ゝ`)「こっちだ!っておまえ、さっき見ていただろうが」

<_プー゚)フ「忘れた!」

( ´_ゝ`)「ハァ…」

<_プー゚)フ「はやくはやく!」

( ´_ゝ`)「こっちだよ」

カウンターから離れた棚の前に移動する兄者と、それに続く青年。
ほっと息をついたモナーの耳に届く弟者と女性の声

(´<_`#)「だから、値引きはしないんだよ!」

(゚、゚トソン「ですが、この防具がこの値段で、その下位モデルがこの値段なら、上位モデルであるこれはこれくらいの値段でないとおかしくありませんか」

(´<_`#)「値段はそんな機械的に決まるわけじゃない。能力、使った素材、希少性、すべてを考慮してきめているんだ」

(゚、゚トソン「ですが」

(´<_`#)「値引きはしない!」

(゚、゚トソン「先ほどの暴言は」

(´<_`#)「あれはあっちの武器担当が言ったことだからな。武器がほしければあっちに値引き交渉するんだな。防具の担当はおれだ!」

(゚、゚トソン「強情な人ですね。客をなくしますよ」

(´<_`#)「客は神様なんかじゃないんでね」

(;´∀`)「その防具は、希少性の高い鉱物で出来てるもな?」

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567 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:18:27 ID:j/oEcZ8U0

珍しく感情的になっている弟者を見て冷や汗を垂らしながら割って入るモナー。
冷静なその質問で自分を取り戻したのか、いつもの飄々とした表情に戻って受け答える。

(´<_` )「ん?いや、希少性は高くないが必要量が多いのと、種類が必要なんだ」

( ´∀`)「その鉱石があれば、高い確率で作れるもな?」

(´<_` )「添加材も必要だが…まぁそうだな。今までにも何度か作ってる」

( ´∀`)「お嬢さんがその鉱石と添加材をもっていたら、その分くらいは安くできるもな?」

(´<_` )「……まあ、多少は。仕入れに使う値段そのままとはいかないが」

(゚、゚トソン「!教えてください!」

(´<_` )「ああ、ええと…」

カウンターの上に置かれた紙に幾つかの鉱石と添加材を書いていく。

(゚、゚トソン「これとこれとこれは持ってます!」

(´<_` )「なに!おい、これは持ってないか?」

(゚、゚トソン「少しで良ければ」

(´<_` )「これだけをその量貰えるなら半額、いや、三分の一でいい!」

(゚、゚トソン「あげます!」

(´<_` )「よし売った!」

トレードウインドウを出す二人。
すると両手剣を選ぶ男をそのままにして兄者が戻ってきた。

( ´_ゝ`)「助かったよモナー」

( ´∀`)「よかったもな。次をよろしくもな。他のお客さんも入ってきたもなよ」

( ´_ゝ`)「ああ。モナーも頼む」

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568 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:19:49 ID:j/oEcZ8U0

戻ってきた兄者に近寄る、並んでいた長身の青年。

/ ゚、。 /「この鎌か槍のもっと長いのが欲しいのだが」

( ´_ゝ`)「あることはあるが、能力はこれより劣るぞ」

/ ゚、。 /「それは困る。同レベルではないのか?」

( ´_ゝ`)「在庫は無いな。オーダーで作ることも可能だが、今は素材がないかもしれん。自分で持ってくるか?」

/ ゚、。 /「ふむ…。何が必要なんだ?」

( ´_ゝ`)「こっちにこい。説明する」

奥に置かれた商談用のテーブルに促す兄者。
頷いた青年が後に続いた。

( ´∀`)「何とかなりそうもなね」

(‘_L’)「次は私だが、武器は今商談をしているあちらの青年が担当のようですね」

( ´∀`)「すみませんもな。武器担当が戻るまでもう少々お待ちくださいもな」

(‘_L’)「はい、待たせてもらいます」

ミセ*゚ー゚)リ「ねぇねぇお兄さん、可愛い防具ってないのかな?」

( ´∀`)「可愛い防具もな…。防具に絵をかいたりとかじゃだめもな?」

ミセ*゚ー゚)リ「そういうのじゃなくって、防具が可愛いのがいいの!あ、もちろん武器も!」

(;´∀`)「可愛い武器と防具もなか…」

(´<_` )「大きさをある程度抑えて、色や形をモララーに細工させて、あとはコーディネートでどうにかできないのか?」

戻ってきた弟者が口をはさむ。

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569 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:20:52 ID:j/oEcZ8U0

ミセ*゚ー゚)リ「あたしそういうの苦手なの」

(;´∀`)「そうもなか」

(´<_`;)「なるほどな」

少女の言葉を聞いて、少女の姿をまじまじと見る二人。
確かに一つ一つのアイテムは男の二人から見ても可愛いに分類されるものだと思うが、それが重ねられることによって何故か野暮ったく感じる。

ミセ*゚ー゚)リ「だから可愛い防具と武器が欲しいの!」

モナーがウインドウを出し、メッセージをうち始める。

(´<_` )「なにをするんだ?」

( ´∀`)「そういうのが得意な人に聞いてみるもな!」

(´<_` )「……ああ、そういえばあいつはそれが本業みたいなもんか」

ミセ*゚ー゚)リ「?」

( ´∀`)「もなもな!モナはモナーって名前だけど、名前を聞いていいもなか?」

ミセ*゚ー゚)リ「もなもなもなもはもなー?」

(´<_`;)「いやいや。彼の名前はモナー。俺の名前はテイ。鍛冶屋としては弟者と呼んでくれ」

ミセ*゚ー゚)リ「モナーと弟者ね。わたしはミセリ」

( ´∀`)「ミセリさんは明日は暇もな?仲間に服飾系の専門家がいるもなよ。今連絡してみたら、明日の午前中なら時間が取れるそうもな」

ミセ*゚ー゚)リ「!行く!暇!お金もそれなりにあるから大丈夫!」

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570 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:22:00 ID:j/oEcZ8U0

( ´∀`)「じゃあ連絡するもな。武器と防具は能力としては問題ないもな?」

ミセ*゚ー゚)リ「ん〜〜。もうちょっと良いのが欲しいかな」

( ´∀`)「弟者、ツンから直接メッセージを入れてもらうから、まず防具を選ぶ手伝いをしてあげてほしいもな」

(´<_` )「わかった。じゃあ見てみるか」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。よろしく!」

防具の棚に少女とともに向かう弟者。
その背中を見送っていると、男に声をかけられた。

(‘_L’)「いろいろ知り合いがいるようですね」

( ´∀`)「おかげさまでもな!」

(‘_L’)「そういうのはよいですね。お互いが得意分野で支えあう。この世界を生き抜いてクリアするには、そういうことが大事なんだと思います」

(;´∀`)「そうもなね」

(‘_L’)「突然すみません。あなたの采配を見ていたらそんなことを考えまして。突然失礼ですが、どちらかのギルドなどには入られていらっしゃるのですか?お知り合いもギルドの仲間なのでしょうか」

(;´∀`)「もな?」

(‘_L’)「そういえば、さきほどは犬のようなモンスターを連れていらっしゃいましたよね。ビーストテイマーさんに初めてお会いしました。あのモンスターはどういった種類の」

( ´_ゝ`)「待たせたな。武器の仕様についてだったか?」

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571 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:23:23 ID:j/oEcZ8U0

込み入った話をさらっと聞いてくる男に困惑するモナー。
そこに兄者が戻り、声をかけた。

(‘_L’)「ああはい。この突起なんですが」

( ´_ゝ`)「それはその武器の基本仕様だからな。気に入らなければ使わなければよい。デザインに関してはこのゲームの武器デザイン担当者に聞いてくれ」

(‘_L’)「……なにか棘を感じる言いようですね」

(´<_` )「ここは武器と防具の店なんでね。それ以外の質問に関しては控えていただけますか」

(‘_L’)「おや、防具担当者さんもですか」

カウンターの中のモナーに向かって話していた男を囲うように立つ兄者と弟者。

(‘_L’)「それは失礼しました」

お辞儀をする男。
その動きはどこか芝居じみていて、心を感じさせない。

(‘_L’)「武器を見たかったのですが、今日は止めた方が良いようですね」

( ´_ゝ`)「見て行く分には構わない。売るかどうかは別の話だがな」

(´<_` )「悪いね。うちの店は、そういう店なんだ」

(;´∀`)「もな?二人ともどうしたもな?」

(‘_L’)「そうですか」

モナーの声は聞こえぬかのように踵を返して出口に向かう男。
その少しばかり異様な光景に、店内の者たちが不躾な視線を向ける。
先ほどまで騒いでいた者達も、戸惑ったようにその光景を見ていた。

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572 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:24:23 ID:j/oEcZ8U0

(‘_L’)「また武器を拝見しにまいります」

( ´_ゝ`)「どうぞどうぞ」

(´<_` )「お待ち申し上げております」

( ´_ゝ`)「売るかどうかはわかりませんが」(´<_` )

店を出る男。
扉が閉まると、兄者が大きく伸びをした。

( ´_ゝ`)「あ〜真面目な顔をすると疲れる」

(;´∀`)「二人ともどうしたもな?」

(´<_` )「今日の夕飯はショボンの所に行くのか?」

(;´∀`)「え?そ、そのつもりもなけど」

( ´_ゝ`)「じゃあその時に話す」

(´<_` )「今日は助かったよ。あとは大丈夫だ。悪かったな」

(;´∀`)「そうもなか…」

カウンターを出るモナー。
にこやかに笑う二人を見て、店の雰囲気も戻ったのを感じた。

( ´_ゝ`)「武器は工房に置いてあるから、持って行ってくれ。代金は今日のバイト代でチャラってことで」

( ´∀`)「?いいもなか?結構高くなるって話だったもなけど」

( ´_ゝ`)「なかなかの会心の出来だ。あれはいいぞ」

( ´∀`)「たのしみもな!ありがとうもな!」

(´<_` )「おれからのバイト代だ」

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573 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:25:28 ID:j/oEcZ8U0

モナーの目の前に現れるトレードウインドウ。
そこには転移結晶の文字があった。

( ´∀`)「弟者?」

(´<_` )「工房から直接40層に行ってくれ。この店の出入口は使わない方がいい」

( ´∀`)「……わかったもな」

ウインドウから転移結晶を取り出すモナー。
両手に余る大きさのそれをぎゅっと握り、二人に向かって笑顔を見せる。

( ´∀`)「夜にまたもな」

そう二人に告げてビーグルの待つ奥の部屋に入るモナー。
それを見送った流石兄弟は、一度目配せをした後に
残っている客の接客に戻った。
窓の外からこちらを覗く目を気にしつつ。




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574 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:26:25 ID:j/oEcZ8U0




5.五叉路の再会。六種の野草。




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575 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:27:27 ID:j/oEcZ8U0

同日 午後二時

48層。
迷宮区にほど近い森。
5本の道が交差する少し開けたエリアに、二人はいた。
 _
( ゚∀゚)「で、どうなんだ?」

両手剣を肩に担いだジョルジュが周囲をうかがいながらしゃがんでいるクーに声をかけた。

川 ゚ -゚)「ここにも無いな。本来ならこのエリアで二つくらい採れるはずなんだが」
 _
( ゚∀゚)「採取された後じゃないのか?」

川 ゚ -゚)「この森で採れる六種類はそれほど利用価値のある草じゃないし売価も安い。価値を知るものでないとストレージを埋めるだけのようなものだから、そうそう採取もされないと思うし、確か採取された後の次のポップも早かったはずだ」

立ち上がり、振り返るクー。
その表情は曇っている。
 _
( ゚∀゚)「この前から疑問だったんだけどよ、そんなに問題なのか?」

川 ゚ -゚)「季節的な変化とかなら問題ないんだがな。もしくは一定の期間で採取場所が変化する設定とか」

('A`)「マニュアルにない裏設定なら、それはそれで調べておいて損はないだろ」

先行して一本の道を調べていたドクオが合流する。

川 ゚ -゚)「そっちはどうだ?」

('A`)「同じく…だな。全部じゃないが、見つからないものも多い」
 _
( ゚∀゚)「ふーん」

.

576 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:28:29 ID:j/oEcZ8U0

のんきなジョルジュの呟きに、がっくりと肩を落とす二人。

('A`;)「まったくお前は」

川;゚ -゚)「まぁあんまり深刻にとらえても仕方ない面もあるからいいだろ。まずは状況を調べるだけだ」
 _
( ゚∀゚)「ショボンも気にしてたよな」

川 ゚ -゚)「気付いたのは私とブーンだが、体系付けて調査を始めたのはショボンの指示だな。ついでに採取もできるし戦闘訓練にもなるってのもあると思うが」
 _
( ゚∀゚)「ギコか」

('A`)「だな」
 _
( ゚∀゚)「ふさの成長にもびっくりしたけど、ギコも強くなりそうだよな」

('A`)「出会った時点で片手剣900越えとかしてたからな。ポテンシャルは高いのに使いきれてなかった良い例だよ」

川 ゚ -゚)「しぃもあれでいて思い切りの良い戦いをするしな」

('A`)「彼女も強くなる。ギコはともかく彼女の方は嬉しい誤算だな」

川 ゚ -゚)「スカウトしたのはショボンだぞ?ドクオ」
 _
( ゚∀゚)「ふさをスカウトした時も最初は戦闘メンバーには入れてなかったよな」

('A`;)「でもいくらなんでも彼女は……。でもショボンだしなぁ」

苦笑いをしながら腕を組むドクオを見てにやにやと笑うジョルジュとクー。
「いや」「でも」「しかし」「しょぼんか…」という呟きを何度か繰り返していたドクオだったが、急に視線を鋭くさせて一本の道を見る。

('A`)「二人くる」

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577 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:30:03 ID:j/oEcZ8U0

ドクオの見る道に向かって態勢を整える二人。
あからさまな構えではないが、それぞれにすぐ対応できるような構えを取る。

じっと見ていると影が見え、そしてその姿が視界に映った
 _
( ゚∀゚)「!」

( ФωФ)「!」
 _
( ゚∀゚)「ロマネスクのおっさん!」

( ФωФ)「ジョルジュであるか!?」

木々の小道を抜けたロマネスクと連れの青年。
そこに駆け寄るジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「おっさん元気してたか!」

( ФωФ)「久しぶりであるな。ジョルジュ。二か月…いや、三か月ぶりくらいか」

和気あいあいと話す二人を驚いた顔で見ている三人。
周りを気にせず話し続ける二人にしびれを切らし、声をかけたのはロマネスクの連れの青年だった。

(-_-)「ねえ、ロマ」

( ФωФ)「おお、すまんなヒッキー。紹介しよう、こいつがジョルジュだ。ジョルジュ、彼はヒッキーである」
 _
( ゚∀゚)「おう、ジョルジュだ」

(-_-)「は、初めまして。ヒッキーといいます」

青年と少年の間くらいに見えるヒッキーの手をつかんで握手をするジョルジュ。

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578 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:31:06 ID:j/oEcZ8U0

(-_-)「お噂はかねがねロマネスクさんよりお聞きしておりました」
 _
(;゚∀゚)「なんだよおっさん、おれの噂話なんかしてるのか」

( ФωФ)「はっはっは。釣り仲間にこういう面白いやつがいるという話をしていただけである。あとはいつ美味い魚を食わしてくれるか楽しみであるということも話したであるな」
 _
(;゚∀゚)「そんなことまで話してるのかよ」

( ФωФ)「はっはっは」

(-_-)「とても強いとお聞きしました」
 _
(*゚∀゚)「なんだよおっさん。変なこと教えるなって」

( ФωФ)「強いのは事実である。わしは事実を話しただけである」
 _
(*゚∀゚)「しょうがねぇなぁ」

( ФωФ)「ところでジョルジュ」

少し離れた位置で自分達を見ている二人に視線を向けるロマネスク。

( ФωФ)「あちらのお二人はお仲間であるか?」
 _
( ゚∀゚)「ああそうだ!紹介するよ!ドクオ!クー!」

手招きするジョルジュ。
それを受けて一度顔を見合わせた二人だったが、ジョルジュにせかされてそばまでやってきた。
 _
( ゚∀゚)「二人とも俺の所属するギルドの仲間だ。こいつがドクオで、こっちがクー。で、このおっさんがロマネスクで、その隣がヒッキー。前にちょっと話したことあるよな。魚釣りの時に一緒になるおっさんがいるって」

川 ゚ -゚)「初めまして。クーと申します」

('A`)「ドクオです」

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579 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:32:12 ID:j/oEcZ8U0

( ФωФ)「わしはロマネスクである。ジョルジュとは魚釣りの時に一緒する間柄である」

(-_-)「……ヒッキーです」

川 ゚ -゚)「ロマネスクさんのことは何度かジョルジュからお聞きしました。ジョルジュの釣りの師匠だそうで」

(*ФωФ)「そんなことをこいつは言っているのであるか」
 _
(;゚∀゚)「おい!クー!」

川 ゚ -゚)「前にそう言っていたではないか」

(*ФωФ)「はっはっは。そんなたいそうなものではないが、そう思ってもらえているのは嬉しいであるな」
 _
(;゚∀゚)「きにするな!忘れろ!」

(*ФωФ)「はっはっは」

(-_-)「ねぇロマ、そろそろ行かないと」

( ФωФ)「おお、そうであるな」
 _
( ゚∀゚)「わるい、用事があったか。引き止めちまったかな」

(  ФωФ)「実はギルドを作ったであるよ。といっても釣り好き仲間でギルドに入ってない者が情報の共有化で集まっただけであるがな。吾輩が一番年上であるた め、便宜上ギルドマスターなるものをやっているのである。今日は午後から近くの湖に集まって釣りをする話があるのである」
 _
( ゚∀゚)「へー。いいな!」

( ФωФ)「また今度釣りで会えたら仲間を紹介するである。釣り好きならギルドメンバー以外にも情報の公開はしていく予定であるしな。ジョルジュも何か情報があったら教えてほしいである」
 _
( ゚∀゚)「おう!分かった。何かあったらメッセージを送るぜ」

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580 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:35:25 ID:j/oEcZ8U0

( ФωФ)「頼むである。ちなみにギルドの名前は《ANGLER》というである」
 _
( ゚∀゚)「あんぐらー?」

川 ゚ -゚)「ANGLER。確か釣り人とか釣師とかだったような意味だったと思いますが」

( ФωФ)「その通りである!」

('A`)「フィッシャーマンとかじゃないんだな」

川 ゚ -゚)「確か、釣りで生活している人、漁師の方のことなどをfishermanで、趣味の釣り人のことをanglerだったような」

( ФωФ)「そうであるそうである。よく知っているであるな」

川 ゚ -゚)「昔、英語の宿題で色々な職業の人を調べたことがありまして。それで」

( ФωФ)「そうであるか。何事も積み重ねなのであるな」

川 ゚ -゚)「はい。そうですね」

('A`)「英語は苦手だ」
 _
( ゚∀゚)「同じく」

(-_-)「……右に続きます」

いつの間にか五人で輪になって話していた。

見るからに大人しそうなヒッキーや基本初対面の者とは会話しないドクオや基本無表情で誤解されがちなクーがそんな風にしていられるのは、ロマネスクの持つ雰囲気の賜物であろう。

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581 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:37:03 ID:j/oEcZ8U0

( ФωФ)「さてさて、楽しくてもっと話したいがそろそろいかないとであるな」

(-_-)「そうだね。時間的に皆も集まるころだよ。 !」

('A`)「モンスターだ!」

ドクオの掛け声のもと武器を構える五人。
視界に現れたポリゴンが実体化し、三匹のオオカミ型モンスターになる。

('A`)「ガルバウルフ。たいして強くないが一匹でも残っていると短時間で仲間がポップしてくる集団戦が得意なやっかいなモンスターだ。一気に行くぞ!」
 _
( ゚∀゚)「分かった!」

川 ゚ ?゚)「了解した。私が中央、右をドクオ、左をジョルジュで」
 _
(#゚∀゚)「おりゃあ!」

('A`)「!」

川 ゚ ?゚)「ふん!」

それぞれに気合を込めてモンスターと距離を詰める三人。
ドクオの片手剣が四閃し、ジョルジュの両手剣が三閃し、クーの薙刀が三閃した後に大きく下から掬い上げるように一閃した。

( ФωФ)「見事であるな」

(-_-)「ロマが強いと言っていたのが分かるよ」

( ФωФ)「そうであろう」

(-_-)「上層階にも行けそうな強さだね」

( ФωФ)「うまいサカナを、くわせてくれそうであろう」

(-_-)「食べさせてもらえると良いね」

( ФωФ)「気が向いたらおすそ分けをしてやるである」

(-_-)「楽しみにしてるよ」

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582 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:38:44 ID:j/oEcZ8U0

ポリゴンに変わるモンスター達。
戻ってきた三人は疲れを見せることもなく、改めて挨拶をしてロマネスクとヒッキーは目的の場所に向かって行った。



 _
( ゚∀゚)「面白いおっさんだろ」

次のエリアに向かう三人。
道すがら薬草や鉱石の採取場所を確認している。

('A`)「そうだな」
 _
( ゚∀゚)「?なんだよ、なんかしかめっ面だな」

('A`)「いや。……あいつ、強いなと思って」
 _
( ゚∀゚)「おっさんが?」

('A`)「あの人はどうかわからないが、ヒッキーって方がさ。……おれより先に、モンスターの出現に気付いていた」
 _
( ゚∀゚)「!?ドクオより!?」

('A`)「ああ。声に出したのはおれの方が先だけど、先に反応してた」
 _
( ゚∀゚)「それはすごいな」

('A`)「まぁソロでやってたなら索敵関係のスキルは上げてるだろうし、強いのは別に良いんだけど、気付いていたのにそれを口にしなかったのが気になってな」
 _
( ゚∀゚)「内気そうだったから、声とかだせなかったんじゃないか」

('A`)「そうかもな。それに声に出さずとも反応して剣を構えれば周りもそれに倣うし。ここのフロアを二人で歩けるなら、ロマネスクさんの方も強いだろうしな。で、クーはさっきから何を悩んでるんだ?」

周囲の調査をしながら歩く三人だったが、クーはそれ以外の会話には参加せず、二人の後をぶつぶつ呟きながら歩いていた。

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584 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:39:47 ID:j/oEcZ8U0

川 ゚ -゚)「いや、さっきのギルド名なんだが、確かもう一つ意味があったような気がして」
 _
( ゚∀゚)「さっきのって、アングラーか?」

川 ゚ -゚)「ANGLERな。確か魚の名前かなんか、海に関係するような意味だったような…」
 _
( ゚∀゚)「魚…ねぇ」

('A`)「戻ったらあいつに聞いてみたらどうだ?」

川 ゚ -゚)「それが早いか。……いや、だめだ気になる。メールしておこう」

ウインドウを出してメッセージをうち始めるクー。
それを呆れた顔で見る二人だった。




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586 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:41:14 ID:j/oEcZ8U0




6.六つの品と七つ目の言葉




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587 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:42:20 ID:j/oEcZ8U0

同日 午前八時過ぎ

バーボンハウス一号店の扉の前に、一人の少年がいた。
扉には準備中と書かれた札がかけられているが、少年は気にせず扉を人差し指でタップする。
もちろんそれで開くわけがないのだが、そのまま少しの間待っているとドアが開いた。

ミ,,゚Д゚彡「おはようだから」

(=゚ω゚)「おはようだよう」

そのまま中に入る少年。

(=゚ω゚)「ご依頼のものを持ってきたよう」

ミ,,゚Д゚彡「ありがとう!助かったから!」

カウンターの中に入るフサギコと、その前に立つ少年。
少年が自分のウインドウを出してタップしていくと、カウンターの上に野菜や袋がいくつも現れる。

(=゚ω゚)「夜もやってる販売店を探して一軒一軒回るのが大変だったよう」

ミ,,゚Д゚彡「本当にありがとうだから!」

カウンターに並べられた六つ目の品物を一つ一つチェックしていくフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「確認するから待っていてほしいから」

(=゚ω゚)「わかったよう」

カウンターの椅子に座る少年。
体が小さいためカウンターの前の高い椅子には体のサイズが合わず、足をぶらぶらさせている。

そんな少年の前に湯気が立つカップを出すフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「サービスだから」

(=゚ω゚)「ありがとうだよう」

引き続き一つ一つ丁寧にチェックしているフサギコを見ながらカップに口をつける少年。

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588 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:44:43 ID:j/oEcZ8U0

(=゚ω゚)「美味しいよう」

ミ*,,゚Д゚彡「ありがとうだから」

賛辞を受けて照れるフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「いつもお買い物ありがとうだから」

(=゚ω゚)「こちらこそありがとうだよう。安全なお使いでこんなに割の良いのは滅多にないからもっとお願いしたいくらいだよう」

ミ,,゚Д゚彡「本当は毎日お願いしたいくらいだから。でも自分でいかないと新しい食材やメニューのヒントに出会えないから」

(=゚ω゚)「…そっかよう」

ミ,,゚Д゚彡「お買い物の時に見たことないお野菜とかあったら教えてくれるとうれしいから」

(=゚ω゚)「!今度から気を付けて見るようにするよう!」

ミ,,゚ Д゚彡「一つ15コル、全部で300コルまでなら実費で買い取るから。新メニューに使えるものだったら、別にお礼も用意するから。あと頼んだもの以外でも いつもより安く売ってるのを見付けたら、メッセージをくれてもいいから。安売りの利益がある範囲内で、その分報酬も追加するから」

(=*゚ω゚)「わかったよう。頑張るよう」

ミ,,゚Д゚彡「ぃょぅが選んできてくれた品は自分で選ぶより良いものが手にはいるから、これからも宜しくだから」

(=*゚ω゚)「うれしいよう」

にこにこと笑いあう二人。
ここがデスゲームの中だとは思えない穏やかな空気が流れる。

ミ,,゚Д゚彡「ぜんぶオーケーだから」

フサギコがウインドウを操作すると、ぃょぅの目の前にトレードウインドウが現れ、コルが提示される。

(=゚ω゚)「!予定より多いよう!」

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589 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:45:54 ID:j/oEcZ8U0

ミ,,゚Д゚彡「今回の報酬と実費と次に頼みたい買い物の準備金だから。あと、ぃょぅはもう朝ご飯は食べたのか知りたいから」

(=゚ω゚)「これからだよう」

ミ,,゚Д゚彡「じゃあ食べていくと良いから!その間に次の依頼の内容をまとめるから!」

(=゚ω゚)「うれしいよう!でも」

ミ,,゚Д゚彡「お弁当も作るから、持って帰ると良いから!今度は一緒に来ればよいから!」

(=゚ω゚)「!…あ、ありがとうだよう…」

ミ,,゚Д゚彡「フサギコとぃょぅの仲だから!遠慮しなくてよいから!」

笑いながらぃょぅの前にワンプレートの食事を出すフサギコ。
その横に今度は氷の入ったグラスを置き、ティーポットからお茶を注いだ。

(=゚ω゚)「いただきますだよう!」

ミ,,゚Д゚彡「おかわりもあるから!」

ぃょぅがプレートの上の野菜を食べ始めたのを見届けてから品物をしまっていくフサギコ。
そしてメッセージウインドウを出し、ぃょぅに依頼する内容を打ち始めた。

(=゚ω゚)「……そういえばだよう」

プレートの上を半分ほどたいらげた頃であろうか、ぃょぅが顔をあげた。

ミ,,゚Д゚彡「?」

(=゚ω゚)「さっき、ふさと同じギルドの人を見たよう。たしか雑貨屋さんをやってる」

ミ,,゚Д゚彡「雑貨屋ならブーンだから」

(=゚ω゚)「そう、ブーンさんだよう。情報屋のアルゴさんと話していたよう」

ミ,,゚Д゚彡「!?」

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590 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:47:22 ID:j/oEcZ8U0

(=゚ω゚)「?」

ミ,,゚Д゚彡「ど、どこで見たのか知りたいから」

(=゚ω゚)「40層の街外れだよう。奥の店で買い物してから転移門に向かって移動してるときにちらっと見かけただけだよう」

ミ,,゚Д゚彡「……ブーンと…情報屋……」

動きを止めてぶつぶつと呟くフサギコを不思議そうに見るぃょぅ。

(=゚ω゚)「どうかしたのかよう」

ミ,,゚Д゚彡「だ!大丈夫だから!」

(=゚ω゚)「?」

慌てて続きのメッセージを打ちはじめるフサギコ。そして数瞬動きを止めた後、自分のストレージからいくつかのアイテムをトレードウインドウに移動させる。

(=゚ω゚)「ごちそうさまだよう!すごくおいしかったよう!」

ミ*,,゚Д゚彡「良かったから!」

ぃょぅの前に再び現れるトレードウインドウ。
一番上から三つは[お弁当]と書かれた品があり、その下にはいくつかのアイテムがあった。

(=゚ω゚)「お弁当をありがとうだよう!……このアイテムは?回復POT
、対麻痺POT、回復結晶、毒消結晶、転移結晶!回廊結晶!!???は、初めて見たよう。で、でもなんで」

ミ,,゚Д゚彡「ぃょぅに何かあったらヘリカルちゃんが悲しむから。それに、一つ依頼もあるから」

(=゚ω゚)「?」

ミ,,゚Д゚彡「もしアルゴさんが危険な目にあっていたら、逃げる手伝いをしてあげてほしいから。転移結晶じゃあ間に合わない敵と戦っていたら、回廊結晶でこの層までの道をつないで、二人で逃げてきてほしいから」

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591 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:48:46 ID:j/oEcZ8U0

(=゚ω゚)「転移結晶も回廊結晶も使ったことないよう」

ミ,,゚ Д゚彡「転移結晶は持って、転移門のある街を叫べば飛ばしてくれるから。でも叫んでから飛ぶまで時間がかかるから。その間に攻撃されると移動がキャンセル されて、大変なことになっちゃうから。回廊結晶は先に決めてある場所にしか行けないけど、一度開けは時間内なら転移門みたいに何人も移動できるし、飛び込 んだ後はすぐ移動できるから攻撃されないから」

(=゚ω゚)「……」

ミ,,゚Д゚彡「開くときは手に持って『開け!』って言えばいいから。その回廊結晶の行き先は40層になってるけど、転移門のそばに飛ぶからすぐ行きたい層に行けるから」

(=゚ω゚)「……使えないよう…」

ミ,,゚Д゚彡「もしもの時に、自分の命を守るために使えば良いから。でも、お使いや移動の際にさっき言ったみたいな状況を見かけたら、助けてあげてほしいから。それはきっと、ぃょぅの命を守ることだから。ヘリカルちゃんを悲しませないためだから」

(=゚ω゚)「……わかったよう」

ミ,,゚Д゚彡「もしもの時のアイテムだから!使わないように気を付けるのが一番だけど、もしものためだから!」

それでも気が乗っていないのがよくわかる表情でトレードウインドウを操作して自分のストレージにしまうぃょぅ。

その姿を見守るフサギコの表情は、鋭く、優しく、厳しかった。


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593 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:49:59 ID:j/oEcZ8U0




7.七回も転ばない。一回だって転ばない。




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594 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:52:43 ID:j/oEcZ8U0

同日午後八時過ぎ。

40層にあるバーボンハウスも客の波が過ぎ、数組の常連がショボンの料理よりも、今日の生を感謝しつつ明日へ狩りに思いを向けながら、目の前の友と話すことに楽しみを感じる時間となっていた。

(´・ω・`)「しぃ、今日はこの辺にして先に戻ってくれるかな」

(*゚―゚)「まだ片付け途中ですけど」

(´・ω・`)「今日はみんな来るからね。ふさは店があるから遅くなると思うけど、他の皆はもう待ってるんじゃないかな。夕飯」

(*゚―゚)「ですね」

笑いあう二人。

(´・ω・`)「今日はそのあとミーティングしたいから、僕を待たずに食事も先にしてていいよ。メインに使う肉は用意しておいたけど、ジョルジュが人数に回る魚を釣ってきてたらそっちを使ってあげて。付け合せとかは倉庫から適当によろしく」

(*゚―゚)「はい」

しぃが持っていたお皿をカウンターに置き、それをショボンが手に取ろうとした時にドアベルが鳴った。

(*゚―゚)「いらっしゃいませ」

(´・ω・`)「いらっしゃい」

(`・ω・´)「よう!ひさしぶり!」

カツカツと一直線にカウンターに近寄る男。
雰囲気はとてもショボンに良く似ているが、優しさよりも凛々しさを感じ、背格好も似ているのだが男の方が見るだけでパワータイプに見えた。

(*゚―゚)「あ、あの」

(´・ω・`)「久しぶり。シャキン」

(`・ω・´)「よう、ショボン」

.

595 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:56:12 ID:j/oEcZ8U0

(*゚―゚)「あ、あれ?」

(´・ω・`)「ああ、知り合いだから」

(`・ω・´)「お、噂の新人ちゃんかな」

(*゚―゚)「しょぼんさん、兄弟いらしたんですか?」

(´・ω・`)「     」

(`・ω・´)「     」

一瞬の間。
硬直する二人の顔。

(´-ω-`)「しぃ…」

(;*゚―゚)「え、あ、秘密とか…でも、そんなそっくりで」

(`・ω・´)「流石噂の新人ちゃんだな!聞きにくいことをズバッと聞いてくる!」

大笑いしながらカウンターを叩くシャキンと呼ばれた男。
そしてそのまま椅子に座ると、ショボンがすっとグラスに入れた水を出した。

(`・ω・´)「いやー二人そろってる時に直接聞かれたのは初めてだ。どうだショボン、ここらで兄弟の杯でもかわすか」

(´-ω-`)「何をばかなことを」

(;*゚―゚)「え?え?」

大きくため息をついた後、グラスに注いだアイスティーを一杯飲みほすショボン。

(´・ω・`)「彼はギルド『N−S(North-South)』のギルドマスターのシャキン。僕とは他人だよ」

(`・ω・´)「なんだよ、つれないな。友達だろ」

(´・ω・`)「友達だよ。友達だけどさ……まったく」

今日何度目かのため息をこぼすショボンと、それを見て笑うシャキン。
そしてそれを見て目を白黒させるしぃ。

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596 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 17:00:44 ID:j/oEcZ8U0

(`・ω・´)「ギルド名は『エヌエス』で通ってるな。『V.I.P.(ヴイアイピー)』が『ヴィップ』って呼ばれることがあるみたいに」

(´・ω・`)「ギルドN−Sは中層ではトップクラスの攻略ギルドでね。攻略組が取りこぼしたクエストやダンジョンを積極的に攻略しているんだ。人数はうちより少ないけど、それだけに小回りの利く素晴らしいギルドだよ」

(*`・ω・´)「照れるな」

(´・ω・`)「ギルマスの人格は別としてね」

(#`・ω・´)「お前に言われたくないけどな」

(´・ω・`)「今日来たハインもN−Sのメンバーだよ」

(*゚―゚)「そうなんですか!?」

(`・ω・´)「え?この子もハインの毒牙にかかっちゃった?」

(´・ω・`)「かるくね」

(`・ω・´)「まったくあいつは」

(´・ω・`)「彼女はすごいよね」

(*゚―゚)「???」

眉間にしわを寄せたシャキン。
呆れたように肩をすくめるショボンだったが、しぃに声をかけた。

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597 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 17:01:56 ID:j/oEcZ8U0

(´・ω・`)「それじゃあしぃ、さっき言った感じでよろしく頼むよ。みんなお腹すかせてるだろうし」

(;*゚―゚)「え?あ!はい!」

慌てたようにシャキンにお辞儀をして奥に向かうしぃ。
手を振るシャキンに気付かずに、扉の向こうに消えた。

(`・ω・´)「おもしろいな、あの子」

(´・ω・`)「でも、強くなるよ。彼女は」

(`・ω・´)「とうとう攻略組に殴り込みか?」

(´・ω・`)「なにそれ」

(`・ω・´)「噂だよ、噂。俺は信じちゃいないがな」

(´・ω・`)「煙がないところにも立つよね。噂って」

(`・ω・´)「まあな」

(´・ω・`)「それで?」

問いかけをしながら頼まれていないグラスを差し出すショボン。
そしてそれを何も言わずに受け取り、一気に半分ほど飲み干すシャキン。

(`・ω・´)「ん?」

(´・ω・`)「どうしたの?ここに来るなんて珍しい」

(`・ω・´)「いや、ハインが依頼に来たと聞いてな。あいつのことだから変な気をまわしたかもしれないし、とりあえず話を聞きに来たほうが良いかなと」

(´・ω・`)「一時期は一つのギルドかと思うほど合同でクエストとかダンジョン攻略してたのに、ここ数か月はさっぱりだからね。僕と君が喧嘩でもしたのかと思っちゃったのかな」

(`・ω・´)「あいつのことだからな。まぁ彼に会えなくてフラストレーションも溜まってるだろうし」

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598 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 17:02:43 ID:j/oEcZ8U0

(´・ω・`)「   」

(`・ω・´)「どうした?」

(´・ω・`)「その趣味もすごいよね」

(`・ω・´)「何気にお前もひどいことを言うな」

(´・ω・`)「そう?」

シャキンの飲み干したグラスをさげ、同じ色の飲み物の入ったグラスを出すショボン。

(`・ω・´)「それで、依頼は受けてくれるのか?」

(´・ω・`)「一応そのつもりだけど、この後のミーティング次第かな」

(`・ω・´)「なんだ、多数決か?」

(´・ω・`)「いや、普段より高層階でのクエストだからね。レベル的には問題ないけど一応自由参加にしないと。で、参加人数が少なかったら止めるかもってこと」

(`・ω・´)「なるほどな」

(´・ω・`)「とはいっても、うちのメンバーだったらほぼ全員参加だろうけどさ」

(`・ω・´)「ノリ良いしな」

(´・ω・`)「良すぎで困るよ」

今日何度目か数えることも忘れてしまいそうなため息。
それにを見てまた笑うシャキン。
そうこうしていると、奥のドアが開いた。

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599 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 17:04:57 ID:j/oEcZ8U0

ξ゚听)ξ「あ、ほんとにいた!」
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( ゚∀゚)「ひさしぶりだな!」

ツンとジョルジュがドアから駆け足で出てくる。

(`・ω・´)「久しぶりだな!」

ξ゚听)ξ「ホントよ。生きててびっくり」

(`・ω・´)「ひでぇなぁ、おい」
 _
( ゚∀゚)「クエストか!?採取か!?ダンジョン攻略か!!?」

(`・ω・´)「詳しい話はこのあとのミーティングで話すそうだ」

ξ゚听)ξ「じゃあ奥に来なさいよ。ご飯食べてそのままミーティングに出れば」
 _
( ゚∀゚)「そうだそうだ!」

ξ゚听)ξ「別に良いわよね。ショボン」

(´・ω・`)「うん、構わないよ」

(`・ω・´)「ギルマスのオーケーも出たし、なら行くか」

ξ゚听)ξ「ほら早く来なさい」
 _
( ゚∀゚)「行くぞ!」

(`・ω・´)「分かった分かった」

ツンを先頭に奥に消える三人。
そんな様子を笑みを浮かべながら見送るショボン。

シャキンが飲み干した二杯目のグラスの中で、氷が音を立てた。






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