- 300 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:52:41
ID:S5Fgy2l20
第四話 緑の手
0.花壇
西暦2023年6月
迷宮区そばの村。
既に攻略されたフロアではあるが最前線がまだ三つ上のため、小さな村のここも冒険者で賑わっていた。
_
( ゚∀゚)「次は何を飼うんだ?」
( ´∀`)「鶏がいて牛と豚が手に入ったから、次は羊か馬もなかね。でも繁殖にも力を入れないといけないもな」
ξ゚听)ξ「アインクラッドの羊も毛は取れるの?」
(´・ω・`)「確か取れたはずだよ。服のジャンルに羊毛があった筈だし」
川 ゚ -゚)「馬肉もいいな」
(;´_ゝ`)「最初から肉を付けるあたりがさすがだな」
(´<_` )「乗馬も出来るんだよな。羊の次は馬が良いな。サラブレッドとか乗らせてくれよ」
( ^ω^)「ジンギスカンも桜肉も好きだお」
('A`)「おまえら牧場にだって大きさの上限はあるんだぞ」
( ´∀`)「まだまだ余裕はあるから良いもなよ。でも買うより捕まえた個体の方が繁殖力が強いしレア種が生まれる可能性も高いらしいもなから、捕獲の狩りとクエストをよろしく頼むもな」
_
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ( ´_ゝ`)川
゚ -゚)
「ショボン、情報収集はよろしく」
('A`)(´<_` )
(;´-ω-`)「はいはい」
( ´∀`)「よろしくもな」
▼*・ェ・▼「きゃんっ」
.
- 301 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:53:45
ID:S5Fgy2l20
ぞろぞろと連れ立って歩く、ギルド「V.I.P.」の9人と1匹。
足並みは軽く、軽口を言い合っているその姿はまるで学校帰りの学生のようだが、つい先程まで迷宮区でモンスター相手に死闘を繰り広げていた。
しかし今、その姿には戦闘での疲れを感じさせない。
それはもしかすると、心と体の疲労を上回る今生きていることへの感謝の心と、仲間たちが傍に居る事への安心感があるからなのかもしれない。
('A`)「なんか向こうが騒がしいな」
( ^ω^)「だおね。人が集まってるみたいだお」
(´・ω・`)「…向こうの広場では、ふさが屋台を出してるはずだけど」
ショボンの言葉を聞くか聞かないかのうちに駆け出す9人と1匹。
といってもそれほど距離は無いためすぐに人ごみにたどり着く。
ξ゚听)ξ「ケンカ?」
川 ゚ -゚)「圏内でそれは無いんじゃないか。犯罪防止コードが働くだろう」
('A`)「違う、決闘だ」
_
(;゚∀゚)「おい、あれもしかして『初撃決着モード』じゃなくないか?やられてるほう、HPバーもう半分以下っぽく見えるぞ」
(;^ω^)「え?」
.
- 302 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:54:33
ID:S5Fgy2l20
デジタル世界であるこのアインクラッドでは、通常街や村は犯罪防止コードで守られており、武器は勿論素手での攻撃も見えざる壁によって阻まれる。
その守られている範囲をプレイヤー達は『圏内』と呼んでいた。
しかしその圏内でも攻撃が当たりHPが減る状況が存在する。
それが『決闘(デュエル)』である。
申請し、相手が承諾することによって始まるその決闘の間は、相手の攻撃によってのみ自分のHPが減り、自分の攻撃によってのみ相手のHPを減らせることが出来るようになる。
人ごみの向こう、広場の隅にある花壇の中で体を丸める男と、その男に曲刀を振るう男。
曲刀の男は奇妙な仮面をつけており、同じく似たような仮面をつけた仲間が二人、すぐ傍で囃し立てていた。
(;´_ゝ`)「まさか」
(´<_`;)「さすがにそれはないだろう」
(´・ω・`)「いや、多分ジョルジュの言う通りだよ。あれは初撃モードじゃない。……どちらかのHPがなくなるまで戦う『完全決着モード』か、制限時間の間戦ってどちらが多くHPを減らすかを競う『制限時間モード』か…」
ξ゚听)ξ「それって…ほんとに殺すつもりってこと?」
(;´_ゝ`)「どちらにせよ降伏すれば終われるはずだ。花壇の男がさっさとすれば良いんだよ」
(´<_`;)「ああ、そうだな。……花壇の男、意識失ってたりしてないよな」
_
(;゚∀゚)「微妙に動いてるから大丈夫だと思うけどよ」
('A`;)「何で反撃するなり逃げるなり降参するなりしないんだ?」
笑いながら花壇で丸くなる男を切りつける男。
曲刀の切っ先で掠る様に切り裂いているため一度に多量のHPは減らないが、手数は少なくないため徐々にレッドゾーンに近付いている。
.
- 303 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:56:23
ID:S5Fgy2l20
曲刀を振るう男の仮面は目の部分が広めに露出しており、血走ったような目で花壇の男を凝視しているのが良く見えた。
最初は物珍しさに集まっていた野次馬たちも徐々に決闘のモードに気付くものが現れ始め、ざわつき始める。
(<>)「おら!武器を持てよ!人間とそんな花の価値が同じなんだろ!だったら戦えよ!」
花を蹴散らそうとする曲刀男の足の前に体を持っていく花壇男。
(<>)「そんなことしてる暇があったら少しは俺達に役立つことしてみろっていうんだよ!」
(も)「ボス戦に出ないやつが俺達にたてついてんじゃねえよ!」
(り)「やっちまえ!」
一方的に攻撃を仕掛ける曲刀の男。
周囲のざわめきは徐々に大きくなり、制止をするよう声をあげるものもいるが、曲刀男の仲間が武器を向けて睨むと声を抑えてしまう。
ξ#゚听)ξ「なにあいつら。攻略組なの?」
_
(#゚∀゚)「だから何だってんだよ」
(;^ω^)「二人とも落ち着くお。まさか命まではとらないだろうし」
今にも剣を抜いて駆け出しそうなツンとジョルジュを抑えるブーン。
そういうブーンもいつでも駆け出せるように視線は花壇男のHPバーを凝視している。
川 ゚ -゚)「お前たち、決闘に割り込むような真似はするなよ」
.
- 304 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:57:50
ID:S5Fgy2l20
ξ#゚听)ξ「クーはむかつかないの!?」
川#゚ -゚)「むかつかないわけが無いだろうが!だが感情のみの行動でギルドが目を付けられて無用な争いに巻き込まれる可能性があることを考えろ」
('A`;)「?どうしたモナー?さっきから黙り込んでいるが」
(;´∀`)「……やっぱりもな……」
(;^ω^)「モナー?」
(´<_`;)「お、おい!」
制止するまもなく駆け出すモナー。
その後をビーグルが追う。
(;´∀`)「クックル!」
花壇の中に入り、うずくまっている男の肩に手をかけるモナー。
そして顔を上げる男。
(〆;∋゚)「 」
(;´∀`)「やっぱりクックルもな」
(#<>)「決闘の邪魔すんじゃねえよ!」
突然の乱入者に呆気に取られ剣をひいていた男が荒げた声を放つ。
(;´∀`)「こんなのは決闘じゃないもな!ただの人殺しもな!」
▼#・ェ・▼「ぐるryぅぅrぅぅrryぅぅう」
( ´∀`)「クックル、早く降参するもな。こんなのに付き合う必要ないもな」
(((〆;∋゚)))
黙って首を振り、再び顔を伏せるクックル。
(;´∀`)「ど、どうしたもな!」
(<>)「その兄ちゃんはまだ決闘を続けるってよ。とっとと退け!神聖な決闘をじゃますんな!それともなんだ、お前が変わるのか?ビーストテイマーの兄ちゃんよ!攻略組にかなうつもりならやってやるぜ!」
(;´∀`)「!」
▼#・ェ・▼「うぅぅぅぅぅぅううぅぅぅうぅぅぅ」
(´・ω・`)「『神聖な決闘』ねぇ」
.
- 305 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:59:04
ID:S5Fgy2l20
石畳の通路を、わざと音を立てて歩き、ゆっくりと近寄るショボン。
川;゚ -゚)「ショボン!?」
( ´_ゝ`)「あ〜あ」
_
(#゚∀゚)「先を越された」
(#<>)「次から次へとなんだ!おまえも死にたいのか!」
(´・ω・`)「本当に『神聖な決闘』なら、せめて顔くらい出すんだね。それとも、人に見せられないような不細工な顔なのかな」
そのまま仮面の男達を通り過ぎてから、振り返る。
腕を組み、斜に構え、微笑を浮かべながら憐れむ様な視線で仮面の男たちを見た。
(#<>)「なっ!」
(#も)「貴様!」
(#り)「俺達をだれだと!」
(´・ ω・`)「『プレイヤーが育てることの出来る花壇に水をやっていたその彼。そこに「花なんか育ててるんじゃねぇ!攻略もしないやつが前線の町に出てくるん
じゃねえよ!」とわめきながら花壇に入って花を蹴散らす仮面の男達。止めに入った彼を口汚く罵り、花を蹴散らし続ける。育てていた花を守ろうと体を張った
彼に、決闘を誘う。「受けなければ、お前がいなくなった後に花を全て潰してやる」と言い、更に「制限時間の間俺の攻撃を受け続けられたらもうやらないでや
るよ」…そして、決闘スタート』…なるほどね。これはすごい『神聖な決闘』だ」
いつの間にか開いたウインドウでメッセージを開き、読み上げるショボン。
その声は大きくは感じないがよく響く声で、固唾を飲んで見守っていたVIPのギルドメンバーは勿論、野次馬にも届いていた。
そして非難の言葉を口々に言いながらざわめき始める。
.
- 306 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:00:40
ID:S5Fgy2l20
(;<>)「だ、誰がそんなものを」
(´・ω・`)「こんな広場でそんなことをやれば、見ていた人だっているさ」
花壇のそば、屋台『バーボンハウス』にいるフサが、表情は真剣だが下げた手で小さくピースサインをし、自分を見ている何人かのVIPの面々にアピールした。
(;^ω^)「ふさ…」
(´<_` )「あいつ、まわりにNPCだと思われてないか」
ξ;゚听)ξ「あいつはもう…」
(´・ω・`)「顔がぶさいくだと、やることなすことぶさいくで良いね」
(#<>)「貴様……攻略組にたてついていいと思っているのか!」
(#も)「そうだ!俺達がいなければこの層にも来る事が出来なかったんだぞ!」
(#り)「このゲームから解放されたいのなら俺達を敬え!言うことを聞け!」
(´・ω・`)「本音が出たね。心が汚いから姿が不細工なのか、姿が不細工だから心が汚くなったのか。…両方かな」
仮面をつけているため表情は見えないが、口調は勿論体全体から怒気を放つ仮面の男達。
既にクックルとモナーには目もくれず、ショボン一人だけを睨んでいる
(#<>)「だが事実だ!俺達がいなければクリアはありえない!解放されない!それに考えてみろ!ここで花を育てる暇があったら外に出てモンスターを倒して攻略に参加する方が攻略に繋がるはずだ!」
.
- 307 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:01:57
ID:S5Fgy2l20
曲刀の男の言葉に、周囲のざわめきが止まる。
思うところは少しずつ全員があるのだろう、目をそらす者、唇を噛む者、頷く者、色々である。
(#<>)「ボス戦に出ないやつに、俺達にたてつく資格など無い!」
(´・ω・`)「それは、全ての生産職と情報屋を敵に回す発言だね」
(#<>)「今のこのゲームでそんな職を選ぶ奴は戦うことから逃げているだけだ!」
(´・ω・`)「……下司の極みだね」
(#<>)「なんだと」
(´・ω・`)「今のこの世界だからこそ、生産職は必要なんだ。攻略のためはもちろん、生きる為、『生き続ける為』にね。それが本当に分からないのなら、分かるまで人前に出ない方が良い」
(#<>)「!」
(´・ω・`)「不細工な顔を人前に晒さないためにもさ」
ファンファーレ。
決闘の勝敗が決し、曲刀の男の頭上に『WINNER』の文字が浮かぶ。
(´・ω・`)「約束は守りなよ」
(#<>)「なんだと!?」
(´・ω・`)「制限時間の間、彼は花を守り続けた。君達が出した条件だろ?『神聖な決闘』をするために交わした誓いだ。破るわけないよね」
(#<>)「くっ…」
(も)「この決闘は無効だ!」
(り)「そうだ!邪魔が入ったんだから当然だろう!」
(#<>)「そ、そうだ!神聖な決闘に邪魔が入ったんだ!無効に決まってる!」
.
- 308 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:03:41
ID:S5Fgy2l20
(´・ω・`)「名は体を現すというけど、顔は心をあらわすってのもあるよね。不細工な顔をした奴は、不細工な心の持ち主だよ」
(#<>)「うるさい!今度はお前が相手だ!」
ウインドウを出し、操作する曲刀の男。
するとショボンの前にウインドウが現れる。
(<>)「お前が勝ったらさっきの約束は守ってやる。だが、俺が勝ったらお前は俺の奴隷だ」
(´・ω・`)「…良いだろう」
('A`)「おい!」
(´・ω・`)「おや。大丈夫。安心して」
('A`)「心配なんかしてねぇよ。めんどうになるから、勝ちすぎるなよって言いに来ただけだ」
(´・ω・`)「なんだ…って言うか、そんなこと言うために出てきたの君」
.
- 309 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:05:00
ID:S5Fgy2l20
近寄ってきたドクオ。
それに気付いてモナーの傍に駆け寄るクーとブーン。
ツンとジョルジュはドクオに近寄り、対決を見守る。
兄者と弟者は呆れた顔をしながらのんびりと歩いてきた。
(;´・ω・`)「みんな…出てきたら僕一人が矢面に立った意味がさ……って、もう遅いか。まぁ大人しくしてろって言う方が無理なメンバーだよね。……で、モードはどれにする?」
ギルドメンバーの動きを見た後、曲刀の男に向き直す。
(#<>)「『初撃』でいい」
(´・ω・`)「それで良いの?」
(#<>)「殺しちまったらお前を奴隷に出来ないからな」
『初撃決着モード』
クリティカルに値する一撃か、ある程度のダメージの蓄積を最初に与えた方が勝利となるモードである。
それを選択して決闘を承認するショボン。
すると開始までをカウントする60の文字が視界の端に浮かび、カウントしていく。
(#<>)「どうせお前も生産職なんだろう。攻略組との格の違いを教えてやる!」
曲刀を構える男。
.
- 310 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:06:09
ID:S5Fgy2l20
男に対し、10メートルほど離れた位置に立ったショボンはウインドウを操作して片手直剣と手甲を装備し、手甲を前にして剣を後ろに下げて構えを取る。
( ^ω^)「モナー、大丈夫かお?」
(;´∀`)「もなは大丈夫だけど、ショボンが」
川 ゚ -゚)「あいつなら大丈夫だ。もう完全にショボンのペースだからな。完全に手の中で躍らせている。相手が可哀想なくらいだ。それよりもモナー、彼にヒールクリスタルを」
(;´∀`)「でも、これは今日の迷宮探索用に渡された…」
( ^ω^)「共有タグじゃなくて、個人に渡されたものはいつ何に使っても問題ないお」
川 ゚ -゚)「ホームに帰った時に使わなかったら回収してギルドの倉庫に戻すが、まだ帰ってないから問題ない」
( ´∀`)「ありがとうもな!ヒール!」
取り出したクリスタルをクックルに使う。
( ´∀`)「クックル!大丈夫もなか?」
( ゚∋゚)「 」
( ´∀`)「よかったもな!」
顔を上げたクックルに笑顔を向けるモナー。
ちょうどその時、ショボン視界に浮かぶカウントが0となった。
.
- 311 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:07:08
ID:S5Fgy2l20
剣技の加速を使って突進する曲刀使いの仮面の男。
視界の中のショボンが武器を落としたのを見て勝利を確信する。
しかしその直後目の前が暗くなり、顔と頭に痛みが走る。
(;<>)「ぐわっ!」
剣技は中断され、ショボンまであと2メートルほどの位置で立ち止まって目を押さえる仮面の男。
両目に刺さった太い針が、指の隙間から飛び出している。
そして剣技キャンセルによる硬直をした男の体に次々に突き刺さる針。
(´・ω・`)「本当、初撃決着モードでよかったよ」
攻撃判定は低いが『急所』と呼ばれる場所に突き刺さる針は、痛みと共に思考を麻痺させた。
少しずつ削られるHP。
(´・ω・`)「僕が君を殺さないですんだ」
二十数本の銀色の線が男の体を通り過ぎた後、目に刺さった物と同じ太い針が仮面の男の喉元に刺さる。その数秒後、ショボンの頭上に『WINNER』の文字が浮かんだ。
.
- 312 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:10:52
ID:S5Fgy2l20
1.花影
.
- 313 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:11:50
ID:S5Fgy2l20
一瞬の静寂。
あまりの出来事に周囲で見ていた者達も声を出すことが出来ず、ただ呆然とのた打ち回る仮面の男を見ていた。
「すげぇ」
しかし一人が声を漏らすと、小さなどよめきが生まれ、それは次第に大きな歓声となった。
口々に今の技を賛美する野次馬たち。
「あ、あれって投擲スキルだよな」
「片手直剣使いと思わせて、その剣を離して針に持ち替えるなんて普通考えてもやらねぇよ」
「なんだあいつ」
「おい、あいつ誰だ」
「しらねぇよ」
「投擲スキルもカッコいいなぁ」
「あいつ、どこかで見たことあるような…」
「どんだけ命中上げればあんなに精密に当てることが出来るんだよ」
「すげえ!すげえよ!」
曲刀使いの男に近寄り、無造作に太い針を抜くショボン。
(´・ω・`)「ぼくの勝ちだ。今度こそ約束は守ってもらうよ」
.
- 314 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:12:53
ID:S5Fgy2l20
(;<>)「あっ……あっ……」
声にならない嗚咽を漏らす曲刀使い。
(´・ω・`)「そこの二人!」
ショボンが何も出来ずに立ちすくむ残りの仮面の男達に声をかける。それでやっと我に返ったのか慌ててのた打ち回る男に駆け寄ってくる。
(´・ω・`)「両目の部位欠損ペナルティ。目だからすぐ治ると思うけどね。回復するまで付いていてあげるといい」
(;<>)「殺す!お前を殺す!二人とも!こいつを殺せ!」
(;も)「……」
(;り)「……」
(´・ω・`)「……今から完全決着モードで決闘するかい?」
(((;も)))
(((;り)))
(;<>)「おい!どうした二人とも!?」
黙って首を振る二人に苛立ったように声をかける曲刀使いの男。
(;<>)「おい!」
_
( ゚∀゚)「次の相手は俺だよ」
.
- 315 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:14:14
ID:S5Fgy2l20
男の首筋に当てられる剣の切っ先。
もちろん攻撃は当たらないが、ただ乗せられただけならばその刃物の感触と冷たさは伝わる。
ξ゚听)ξ「いいえ、私よ」
喉仏に当たる細剣の先。
まるで肉に食い込むように当てられ、アバターなのだから気にすることは無いのだが、何故か喋るのをためらってしまう。
(;<>)「!」
(´・ω・`)「二人とも…」
ショボンの後方にはドクオが片手直剣を無造作に肩に担ぎながらこちらを見ている。
視界が快復した曲刀使いの男は自分を囲む三人の殺気を含んだ瞳に勢いをそがれ、ただ息を飲んだ。
(´・ω・`)「『彼が育てた花を、花壇の花を悪戯に蹴散らすような真似はしない』。約束してもらえますね」
(;<>)「……分かった」
_
(;゚∀゚)「わかっちまったよ。つまんねぇ」
ξ゚听)ξ「別に良いわよ。こんなのと戦っても得るものなんて無いし。でも、私としてはもう一つ約束してほしいけな。二度と私達の前に姿を現さないって」
(;´・ω・`)「二人ともさぁ」
ξ゚听)ξ「ね、約束してくれないかな」
持った細剣にほんの少しだけ力を込めるツン。
.
- 316 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:15:19
ID:S5Fgy2l20
(;<>)「お、お前たち、俺達攻略組にこんな事をしていいと思っているのか」
(´・ω・`)「攻略組ね…。ギルドはどこ?」
(;<>)「そ、それは…ソロだ、俺達はソロで攻略している。群れなければ何も出来ない奴とは違うんだ!」
(´・ω・`)「君も三人で行動しているように僕には見えるけどね」
(;<>)「…」
(´・ω・`)「それに、例え本当に攻略組だとしても、君達がやったことは許されるべきことではない……と、僕は思う」
(;<>)「!」
(´・ω・`)「君達がこれからも今の心のままでこのアインクラッドを生き、攻略をするのは君たちの自由だし、それは僕や僕の仲間の感知するところではない。けれど、次に僕の仲間に害が及ぶような真似をしたら、容赦はしない」
語りかけるショボンのどこからも殺気や憎しみは現れていない。
ただ、淡々と言葉を紡いでいるだけだった。
けれど、それが仮面の男達には恐ろしかった。
(;<>)「……わかった。約束は守る」
(´・ω・`)「よろしく頼むよ」
衆人環視のなか、仲間の手を借りて立ち上がる曲刀使いの仮面の男。
そして疲労困憊の様相を見せながら、周囲に悪態をつきつつ立ち去っていった。
.
- 317 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:16:26
ID:S5Fgy2l20
彼らの姿が視界から消えるのを確認し、モナーに近寄るショボン達。
花壇から出てクックルを介抱していたクーとブーンが立ち上がり、スペースを作る。
(´・ω・`)「モナー」
( ´∀`)「ショボン、ありがとうもな!」
(´・ω・`)「ありがとうじゃ無いよまったく……心配かけないでよほんとにさぁ。急に走り出したのを見たときはどうしようかと思ったよ」
(;´∀`)「ご、ごめんなさいもな」
(´・ω・`)「まずは無事でよかった。で、彼は?」
立ち上がり、お辞儀をするクックル。
大きな体だが、縮こまるように体を丸めてお辞儀をする。
( ´∀`)「彼はクックルもな。…昔、パーティーをくんでいたもな」
( ゚∋゚)「 」
( ´Д`)「まだ大きな声は出ないもなね」
(;´・ω・`)「え?」
_
(;゚∀゚)「今喋ったのか?」
ξ゚听)ξ「うそ」
( ゚∋゚)「 」
( ´Д`)「『ありがとう。こんな声でごめんなさい』って言ってるもな」
(;´・ω・`)「いや、こちらこそすみません。失礼な態度を」
ショボンの言葉に笑顔を見せながら顔を横に振るクックル。
.
- 318 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:17:24
ID:S5Fgy2l20
( ´Д`)「『気にしないで下さい』っていってるもな」
そして花壇に向かってしゃがみこむと、花を二本摘み取った。
( ´Д`)「クックル?」
それをツンとクーに一本ずつ渡す。
見たことの無い淡い暖かい色をしたその花は、二人の手の中で風にそよぐように揺れた。
再び大きくお辞儀をするクックル。
そして何度かお辞儀を繰り返しながら、立ち去ろうとする。
( ´∀`)「クックル!またフレンド登録をするもな!」
モナーの言葉を聞き、悲しそうに首を振るクックル。
( ´Д`)「クックル…」
もう一度大きくお辞儀をしてから、逃げるように駆け出すクックル。
( ´Д`)「!クックル!」
人ごみに紛れるクックル。
追おうとするモナーだが、ショボンに腕を掴まれてしまった。
.
- 319 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:18:27
ID:S5Fgy2l20
( ´Д`)「ショボン?」
((´・ω・`))
黙ってモナーの瞳を見る。そして首を振った。
( ´Д`)「いなくなったのは、クックルの意志もなね……。モナも、それは分かってるもな……」
(´・ω・`)「何があったのかを知らない僕が言うべきことではないかもしれないけど」
( ´Д`)「ううん。ありがとうだもな。これ以上、クックルを苦しめたらだめもな」
▼・ェ・▼「くぅ〜ん」
( ´∀`)「ありがとう、ビーグル」
モナーの足に体を擦り付けるビーグル。
そんなビーグルを抱き上げて、胸に抱く。
( ´∀`)「モナーは、大丈夫もなよ。ビーグルも、皆もいるから。…だから、クックルにもそういう人がいてほしいもな」
川 ゚ -゚)「話しているところすまん。ショボン、来てくれ」
ビーグルを抱くモナーを複雑な表情で見つめていたショボンだったが、クーに呼ばれ花壇に近寄った。
.
- 320 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:20:59
ID:S5Fgy2l20
(´・ω・`)「どうしたの?」
(´<_` )「さっき貰った花だが、レア種だそうだ」
(´・ω・`)「え?」
川 ゚ -゚)「見たことが無かったからタップして情報を出したんだが、私のレベルでは判別が出来なかった」
( ´_ゝ`)「花に見えても属性は違う可能性があるから俺達も調べてみたんだが、出てこないんだ」
ξ゚听)ξ「こっちも。私も駄目だし、」
( ^ω^)「僕でも名前しか出なかったお」
川 ゚ -゚)「なんて名前だ?」
( ^ω^)「えっと……『アルムマリネの花』だお」
川;゚ -゚)「アルムマリネだと?」
_
( ゚∀゚)「ん?なんか聞き覚えがあるな」
川;゚ -゚)「前に採取クエストを手伝ってもらったやつだ。それは『アルムマリネ』という薬草だったが」
( ´_ゝ`)「花も咲くんだな」
川;゚ -゚)「聞いたことが無い。花の咲く薬草など」
(´<_` )「どういうことだ?」
川;゚ -゚)「……わからん」
.
- 321 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:21:53
ID:S5Fgy2l20
( ^ω^)「新しいPOTとか、何かを作れるようになる可能性もあるおね。新しい物が見つかったってことは」
(´<_` )「情報屋にも情報を流して…」
川;゚ -゚)「とりあえずは待て、まずはこちらで調べて整理する。薬草系なら調合のフォルダも調べないとならんしな」
ξ゚听)ξ「染色とかでもうれしいな。きれいな花の色してるし。この色で春物のブラウスとかスカート作ってみたい」
_
( ゚∀゚)「それ、さっきの男が栽培した花なんだよな」
( ´_ゝ`)「そうだろうな。ずっと守ってたみたいだし」
(´<_` )「ってことだ。どうするショボン」
(´・ω・`)「……」
黙ってメンバーの会話を聞いていたショボンがモナーを見る。
(´・ω・`)「モナー」
( ´∀`)「なにもな?」
(´・ω・`)「なにはともあれ、さっきの行動にはペナルティを与えさせてもらうよ」
.
- 322 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:23:25
ID:S5Fgy2l20
ξ゚听)ξ「ちょっ」
(;^ω^)「ショボン!?」
(´<_` )「おいおい」
_
(;゚∀゚)「まじか」
(´・ω・`)「……洗いざらい、彼のことを話してほしい。おそらくはモナーにとって思い出したくない過去も含まれていると思うけれど」
( ´Д`)「もな…」
川 ゚ -゚)「ショボン」
( ´_ゝ`)「なるほどな」
(´・ω・`)「彼の私的な部分のことも、君が知っていることを全部。これはギルドマスターとして、メンバーに対する命令だよ」
ξ゚听)ξ「ショボン…」
( ^ω^)「ショボン…」
(´<_` )「さすがだな」
_
( ゚∀゚)「?」
( ´Д`)「わかったもな…」
抱いていたビーグルをおろすモナー。
ビーグルが心配そうに体を摺り寄せ、モナーを見上げる。
▼・ェ・▼「くぅ〜ん」
( ´∀`)「ショボン、ありがとうもな。でも、話すのは命令だからじゃないもな。皆にモナーの事を知っていてほしいからもな。そして…」
口淀むモナー。
躊躇し、そして思い切ったように口を開く。
( ´∀`)「クックルを、助けたいからもな」
みんなの顔を見回すモナー。
みんなの笑顔を見て、ニッコリと微笑む。
▼*・ェ・▼「きゃんっ!」
.
- 334 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:18:24
ID:W8XyU8Gk0
2.弔花
.
- 335 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:19:33
ID:W8XyU8Gk0
ギルドVIPホーム。
雑貨屋Boon二階のリビングにて思い思い椅子に座り、モナーを見ている。
ウインドウを開いていたショボンがメッセージを打ち終わり、皆を見た。
(´・ω・`)「ごめんごめん。さ、話といこうか」
ξ゚听)ξ「まだ全員揃ってないけどいいの?というかあいつはどこに行った訳?いつのまにか姿が見えなかったけど」
(´・ω・`)「ドクオにはぼくから伝えるよ。今はちょっと用事をお願いしてる」
( ^ω^)「メッセージの方はもう大丈夫なのかお?」
(´・ω・`)「とりあえず大手と親密に取引してるギルドとは終わったから、残りは後で処理するよ。あ、でもウインドウはちょっと出したままにしておくけど気にしないで」
(´<_` )「スカウトか?」
(´・ω・`)「まあね。僕個人と、ギルド全体の吸収と、各メンバーに向けてと…ちゃんと断ってるのになぁ」
ミ,,゚Д゚彡「あれを見たらしょうがないから」
川 ゚ -゚)「最前線に近い分、まともな攻略組もいただろうしな」
( ´_ゝ`)「このギルドは戦力としても財源としても魅力的だからしょうがないだろ」
(´・ω・`)「みんなのおかげでね。常連も得意客も増えてきたし。みんなも個別にスカウト来る事があると思うけど、突然辞めるのだけはやめてね」
.
- 336 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:20:46
ID:W8XyU8Gk0
- _
( ゚∀゚)「抜けないし」
ξ゚听)ξ「同じく」
川 ゚ -゚)「当然」
( ^ω^)「おっおっ」
( ´_ゝ`)「ここは居心地がいいんだよ」
(´<_` )「だな」
( ´∀`)「やめないもな」
▼*・ェ・▼「きゃんっ」
ミ,,゚Д゚彡「やめるわけないから」
(*´・ω・`)「…ありがと。みんな」
(´・ω・`)「でもフサギコは誘っても誘っても入ってくれなかったよね」
ミ;,,゚Д゚彡「そ、それはおれに入る資格が無かっただけだから。本当はずっと入りたかったから。いまだって戦闘無しの約束だから入ったから」
慌てるフサギコを見て笑いが起こる。
そしてその波が収まるのを見計らい、モナーが口を開いた。
( ´∀`)「みんな、今日はありがとうもな。クックルを、助けてくれて」
_
( ゚∀゚)「ショボンが良いかっこしただけだけどな」
(´・ω・`)「ジョルジュ?」
_
( ゚∀゚)「事実じゃねぇか。俺もデュエルしたかった」
(´・ω・`)「まったく」
ξ゚听)ξ「まったくはこっちセリフ!話がそれてるわよ!」
_
(;゚∀゚)(;´・ω・`)「ごめんなさい」
.
- 337 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:21:59
ID:W8XyU8Gk0
( ´∀`)「もなもな。いいもなよ」
座る位置を直し、背筋を伸ばすモナー。
足下で不安そうにビーグルが体を寄せている。
( ´∀`)「あの始まりの日から数日後、モナーはクックルとあと二人の男とパーティーを組んだもな。まだビーグルには出会えてなくて、友達とかもいなくて、ソロプレイをしていた頃もな」
( ´∀`)「モナーは槍、クックルは両手棍、他の二人は片手直剣と曲刀で、バランスはそれなりに良かったもな」
( ´∀`)「四人で動くようになってからは活動範囲も広がって、次の村は勿論、周辺の村にも行ける様になっていたもな」
( ´∀`)「攻略は進み、もう二層まで攻略が終わって三層が最前線になった頃、モナ達はまだ一層の中頃に居たもな。二層に行くのは、一層の最後の村に自力でたどり着いてからって決めていたもなからね…」
その頃のことを思い出しながら順調に話していたモナーだったが、ここに来て口を止める。
ほんの少しだけ表情が曇り、そして引き締めて、口を開く。
( ´∀`)「【スワップコボルト・トラッパー】。武器屋に置いてあった、無料で手に入れた攻略本に注意が載っていた敵もな」
(´<_` )「武器落とし属性攻撃の使い手…」
( ´_ゝ`)「ディスアーム使いってやつだな」
( ´∀`)「もな……。出現エリアに踏み込む前に全員で確認したもな。注意しようって…。でも、いざ本当にその時になると…ダメだったもな…」
.
- 338 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:23:13
ID:W8XyU8Gk0
ξ゚听)ξ「私も、あそこは苦労した」
川 ゚ -゚)「ギルド全員少してこずったな。あそこは」
( ^ω^)「思わず取ろうとしゃがんだときには、後ろで待機していた仲間がピックとかを投擲して攻撃を牽制したおね」
(´・ω・`)「したね。後は無理やりスイッチして攻撃を相殺したり」
( ´∀`)「最初はモナ達も、そんな風に攻略していたもな。でもある時、四匹のモンスターに、三方向から襲われたもな」
_
(;゚∀゚)「それは」
( ´Д`)「それぞれ一人一匹ずつ相手をしたもな。レベル的には安全マージンをちゃんと取ってあったけど、やっぱり緊張したもな」
( ´Д`)「そんな時、一人がディスアームを仕掛けられて武器を落としてしまったもな。思わず拾おうとした彼に、視界の端でそれを見たクックルが大きな声で名前を呼んだもな。彼は、その声で驚いてしまったのか、自分の行動に驚いたのか、硬直してしまったみたいもな」
ξ゚听)ξ「…」
( ´ω`)「…」
(´・ω・`)「…」
( ´_ゝ`)「…」
_
( ゚∀゚)「…」
ミ,,゚Д゚彡「…」
(´<_` )「…」
( ´Д`)「モナ達の目の前で、彼は死んだもな」
.
- 339 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:24:24
ID:W8XyU8Gk0
( ´Д`)「それからもな。クックルの声が小さくなったのは。クックルは、きっと自分が殺したと思ってるもな…自分が、あの時声をかけたからって…」
静まり返る部屋。
誰も何も話さず、モナーを見ている。
足下のビーグルが体をモナーに擦り付けている。
( ´∀`)「モナの話は、これでおわりもな」
(´・ω・`)「…話してくれてありがとう」
(( ´∀`))
首を横に振るモナー。
飛び上がって膝に乗ったビーグルを、抱き締める。
( ´∀`)「聞いてくれてありがとうもな。…あの頃のアインクラッドでは、残念ながらよくあったこともなけど、モナにとっては忘れられない…忘れてはいけないことだと思っているもな」
( ´∀`)「辛かったもな……。でもモナーはビーグルに出会えて、そして皆にも出会えたもな。だから、今は大丈夫もな」
_
( ゚∀゚)「モナー」
( ´_ゝ`)「…モナー。ああ、そうだな」
(´<_` )「……」
ミ,,゚Д゚彡「…」
静かになる室内。
それぞれに思うことがあるのか、沈痛な面持ちの者もいれば、優しげにモナーを見ている者もいる。
そしてそんな空気を破るのはやはりこの人だった。
.
- 340 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:25:55
ID:W8XyU8Gk0
ξ゚听)ξ「で、どうするのよ。ショボン」
(;´_ゝ`)「さすがのエアデストロイヤー」
ξ#゚听)ξ「なによそれ」
(´<_`;)「空気ぶち壊し」
ξ;゚听)ξ「知らないわよそんなの。ここでダラダラしててもしょうがないでしょ」
(;´・ω・`)「その通りなんだけどね」
( ^ω^)「そこがツンの良いところだお」
ξ*゚听)ξ「なに言ってるのよ、ばか」
_
( ゚∀゚)「あついあつい」
川 ゚ -゚)「リア充もげろ」
ミ;,,゚Д゚彡「クー?」
川 ゚ -゚)「言うやつがいないから言ってみた」
( ´∀`)「お約束は大事もな」
ξ゚听)ξ「だから話が進まない!ショボン!」
(´・ω・`)「そこまで言うなら自分が進めれば良いのに」
ξ゚听)ξ「それはあんたの役目でしょ」
(;´・ω・`)「はいはい」
ξ゚听)ξ「ハイは、一回!」
(´・ω・`)「はい」
開いていたウインドウを何回かタップするショボン。
正六面体の小さいクリスタルを物質化する。
( ^ω^)「記録結晶だおね」
(´・ω・`)「ドクオが撮ったやつだよ。共通フォルダに入れて、メッセージも送ってきた」
クリスタルをタップすると、ホログラフが浮かび上がった。
.
- 341 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:27:00
ID:W8XyU8Gk0
(;´∀`)「クックル!?」
花壇に水をやるクックルの姿。
ショボンがタップするたびに画面が変わるが、全て花壇に水をやるクックルの姿だった。
(´<_` )「なんだこれ?」
( ´_ゝ`)「おんなじ写真ばかり」
川;゚ -゚)「いや、花の種類や背景が違う」
(´・ω・`)「ドクオが彼の後を付けていったんだけど、あのあと色々な層の色々な街を回って手入れできる花壇に水を上げていたらしい」
ミ,,゚Д゚彡「すごいから…」
(´・ω・`)「…そこからよく咲いた花を少しずつとって…」
結晶をタップするショボン。
森の中、一つの樹の根元に花束を置くクックル。
(;´∀`)「!」
(´・ω・`)「モナーは見覚えがあるみたいだね」
(;´∀`)「…ここで…死んだもな」
(´・ω・`)「この後、周囲にポップした【スワップコボルト・トラッパー】を殲滅して、宿に戻ったらしい」
( ´_ゝ`)「殲滅…」
ξ;゚听)ξ「あそこ、確かポップ多かったわよね」
(;^ω^)「時間湧きポップだったけど次から次に出てきてうんざりしたような」
('A`)「何かにとり憑かれた様に両手棍を振り回してたぞ」
.
- 342 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:28:31
ID:W8XyU8Gk0
(´<_` )「おう、お帰りドクオ」
部屋に入ってきたドクオが弟者に片手を上げて挨拶をしつつ、ショボンの隣のイスに腰掛ける。
('A`)「疲れた」
(´・ω・`)「お疲れ様。大丈夫だった?」
('A`)「戦闘エリアに足を踏み入れたのは一層だけで、後は全部転移門のある街を渡ってから戦闘はそれほどやってないけどな。しかし、強いな。彼。レベル差があるとはいえ、複数のコボルトをあんな簡単に倒すとは」
_
( ゚∀゚)「それは凄いな。見てみたい」
('A`)「でも」
( ´∀`)「?」
('A`)「あんな戦い方じゃあ、いつ死んでもおかしくない。あそこならレベル差がある戦いだからなんとかなってるが、防御や回避があありにもお粗末だ。それに、倒し方もオーバーキル過ぎる」
( ´Д`)「もな……それはきっと……」
('A`)「ショボンからのメッセージで概略は教えてもらった。確かにそういう事情なら、あの戦い方も意味は分かる。けれど、それとこれとは別だ。あの戦い方は危険すぎる」
( ´Д`)「そうもなね……クックル……」
川 ゚ -゚)「ショボン」
(´・ω・`)「ん?」
川 ゚ -゚)「どうするつもりだ?」
クーの問い掛けに、全員がショボンを見る。
川 ゚ -゚)「考えはあるんだろ?」
(´・ω・`)「まあね。でも…」
川 ゚ -゚)「でも?」
(´・ω・`)「正直、今僕が考えているプランで彼が立ち直れるかは分からない。それに、彼にとって僕らがそんなことをするのは、良いことなんだろうか」
_
( ゚∀゚)「そりゃいいんじゃないか?ドクオの見た感じじゃちょっとヤバいんだから」
( ´_ゝ`)「だが、彼自身がそれを求めているかどうか…ということか?」
(´・ω・`)「そうだね」
.
- 343 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:30:01
ID:W8XyU8Gk0
(´<_` )「確かにそれはそうだな。花を育てているというのも、人と触れ合うことを怖がっているようにも思える」
ξ゚听)ξ「でも、死んだらダメよ」
('A`)「いくら一層でも、あの戦い方は危険だ」
川 ゚ -゚)「しかし、声が聞こえないというのは不思議だな。しかもモナーには聞こえるんだろ?」
( ´∀`)「聞こえるもな。けして大きくは無いけど」
_
( ゚∀゚)「俺達にはまったく聞こえなかった」
ミ,,゚Д゚彡「あいつらに因縁つけられたときも黙って花を守ってたみたいだから」
川 ゚ -゚)「そもそも、声が聞こえないなんてありえるのか?というか、この世界の『声』がどうやって聞こえているのか分からないが」
(´<_` )「テレパシーみたいなもんだな」
( ´_ゝ`)「頭で『伝えたい』と考えたことを相手に伝えつつ、システムが周囲にいるやつの耳に、聞こえていると錯覚させている」
ξ;゚听)ξ「え?」
川;゚ -゚)「その系統の話は苦手なんだが」
( ^ω^)「僕がツンやクーに『おなかすいたお』って伝えようとすると、システムが届けてくれて、尚且つそばに居る人にも僕が二人に話した内容が広められてるってことだお」
川;゚ -゚)「分かったような、分からないような」
('A`)「ま、現実世界で言うところの『音波』みたいな『デジタル波』を飛ばしているとでも考えときゃいいさ」
ξ゚听)ξ「それなら分かる」
.
- 344 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:31:45
ID:W8XyU8Gk0
川 ゚ -゚)「ではクックル氏は?」
(´<_` )「おそらくは、伝えようという思いよりも、伝える怖さが先立って自分で無意識のうちにセーブしているんじゃないかと思う。それで、知り合いであるモナーには辛うじて言葉が届いているけど、俺達初めての相手には届かないのではないかな」
ξ゚听)ξ「そんなことが可能なの?」
( ´_ゝ`)「わからん」
ミ;,,゚Д゚彡「そんな」
( ´_ゝ`)「理論的には可能だと思うし、あってもおかしくは無い。だがこのアインクラッドを動かしているシステムがそれをよしとしているかどうかだな」
川 ゚ -゚)「?」
(´<_` )「考えてみろ、『伝えたい』と『伝えたくない』だったら簡単なプラスとマイナスと考えられるが、『伝えたい』と『伝えることが怖い』は単純な計算に出来ると思うか?」
川 ゚ -゚)「無理だろうな」
('A`)「確かにアインクラッドを動かしているシステムは世界最高峰のシステムらしいが、何千人といるプレイヤーのそんな細かい心の勘定までサポートしているとは考えにくい」
( ^ω^)「でも、クックルさんが『そう』な以上、サポートしてくれていると考える方が当然じゃないのかお?」
( ´_ゝ`)「まあ、そうだな」
(´<_` )「そうなると、全員に聞こえないなら完全に閉ざしているが、モナーには聞こえているのならば、人との触れ合いを完全に諦めているわけではないのかもしれない」
( ´∀`)「そうもなよ!きっとそうもな!」
▼*・ェ・▼「きゃんきゃんっ!」
嬉しそうに声をあげたモナーに釣られ、今まで大人しくしていたビーグルが嬉しそうに声をあげる。
沸き起こる笑い。
ひとしきり笑った後、再びショボンを見るメンバー。
川 ゚ -゚)「ということだ、ショボン」
.
- 345 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:32:55
ID:W8XyU8Gk0
(´・ω・`)「分かったよ」
ウインドウをタップして全員にメッセージを飛ばす。
着信音を聞いて全員がウインドウを出してショボンからのメッセージを開いた。
(´・ ω・`)「クエスト名『おじいちゃんの花壇をきれいにして』。少女の願いにより、村を囲む森の中の四箇所の花壇に種を植えて花を咲かせるクエスト。クエス
ト発動には栽培スキルが100以上のメンバーが必要。クリア条件は四箇所の花壇に花を咲かせること。クエストボスは無し。ただし、森にはモンスターが出
る。しかも…」
一気にメッセージの内容を話すショボンだったが、一拍置いて呼吸を整える。
(´・ω・`)「…しかも、この森にはディスアーム(武器落し技)使い及びスナッチアーム(武器奪い技)使いが出る」
( ´Д`)「!」
ウインドウを見つつショボンの話を聞いていたメンバー全員が息を呑む。
ミ;,,゚Д゚彡「れ、レベルは」
(´・ω・`)「安全マージン…レベル的にはソロで戦っても問題なく勝てるレベル差だよ。戦い方さえ間違えなければね」
_
( ゚∀゚)「…逆にいいんじゃないか?その方が」
ξ゚听)ξ「そうね」
川 ゚ -゚)「乗り越えられるチャンスは多い方が良い」
(´・ω・`)「それじゃあ、詳しい情報は各自読んでおいて。あとは、彼を誘うわけだけど…」
全員を見回していたショボンだったが、視線をモナーで止める。
(´・ω・`)「誘うのは僕がするつもりだけど、それでいいかな?」
( ´∀`)「お願いするもな」
(´・ω・`)「じゃあ、頑張るよ」
ニッコリ微笑んだショボンの顔を見た数名が、何故か心の中で冷や汗を垂らした。
.
- 346 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:40:23
ID:W8XyU8Gk0
3.風花
.
- 347 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:41:34
ID:W8XyU8Gk0
三日後。低層階郊外。
コードで守られてはいるが転移門が無い村の外れにある果樹園。そのオーナーであるNPC夫婦が住む農家の二階を、クックルは常駐の宿に借りていた。
(´・ω・`)「すみません、突然」
(( ゚∋゚))
手振りによって勧められ、備え付けと思われるソファーに座るショボン。
クックルがその前にお茶を置き、ウインドウを開く。
ショボンの耳に届くメッセージの着信音。
『( ゚∋゚)「このまえはたすけてくれてありがとう」』
目の前にいるクックルからのメッセージである。
(´・ω・`)「いえ、こちらこそ出すぎた真似をしてしまいました。申し訳ありません。あの後彼らから嫌がらせなどはありませんか?」
(( ゚∋゚))
(´・ω・`)「それは良かった」
首を横に振るクックルに、安堵した笑顔を見せるショボン。
(´・ω・`)「それで、今日お伺いした理由なんですが、一つお願いがあって参りました」
( ゚∋゚)「 」
自分で自分を指差すクックルに頷くショボン。
(´・ω・`)「はい。クックルさんに」
.
- 348 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:42:51
ID:W8XyU8Gk0
『( ゚∋゚)「おれになにを?」』
(´・ ω・`)「ぼくは『V.I.P.』という名前のギルドのマスターをしています。生産職メインのギルドで、各メンバーはほとんどが何かしらの職業を持ってい
ます。その一環で欲しいアイテムがあるのですが、それを得る為のクエストに栽培スキルを持っている方が必要なんです」
( ゚∋゚)「 」
(´・ω・`)「クエスト自体に討伐必須モンスターはいないのですが、クエストをクリアするためにはモンスターの出る森に行く必要があり、栽培スキルを持っていて、尚且つ戦える方を探していたのですが、なかなか見つからず…」
( ゚∋゚)「 」
(´・ω・`)「あ、もちろん先頭に立って戦うのはギルドのメンバーが行います。ただ、何かしらの不慮の問題が発生した際に、自分の身を自分で守れる強さを持った方を探していたので」
(( ゚∋゚))
『( ゚∋゚)「おれではむりだ。つよくない」』
首を横に振ってからメッセージを飛ばすクックル。
それを読んだショボンが更に口を開く。
(´・ω・`)「モナーは、今はぼくと同じギルドで育成スキルを使って牧場主をしています」
( ゚∋゚)
(´・ ω・`)「彼から、あなたが戦えていたことは聞いています。また、失礼ですがクックルさんを探していたときに仲間の一人がお見かけして後を追わせていただ
きました。それでこの常駐の宿も知ったわけですが、そのときの戦いぶりを聞き、今回のお願いをさせていただいたわけです」
( -∋-)
目を閉じて黙り込むクックル。
それを見てメッセージを書くショボン。
.
- 349 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:43:54
ID:W8XyU8Gk0
(´・ω・`)「こちらが今回のクエストの概要と、クエストクリア時の成功報酬等諸々の条件です」
( ゚∋゚)「 」
何かを言おうと目を開けたクックルに合わせてメッセージを送るショボン。
(;゚∋゚)
(´・ω・`)「クリア報酬は少し高めにさせていただいています。ただ今回の目的はクエストクリア時のクリア報酬アイテムなので、それをクックルさんが手にした場合は、こちらに渡してください」
立ち上がるショボン。
慌てて同じように立ち上がるクックル。
(´・ω・`)「すぐには決められないと思います。ただこちらも少々急いでおりまして、申し訳ありませんが本日中にご返答をおねがいします」
(;゚∋゚)「 」
(´・ω・`)「それでは、失礼します」
(;゚∋゚)!
お辞儀をして部屋を出るショボン。
ただそれを見送ったクックルは、もう一度ソファーに深く腰をかけた。
.
- 350 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:44:50
ID:W8XyU8Gk0
雑貨屋Boon店内
( ^ω^)「お帰りだお」
(´・ω・`)「ただいま」
(´<_` )「首尾はどうだ?」
(´・ω・`)「どうだろうね…」
ブーンが店の入り口が開くとなる鈴が鳴ったのでそちらを見ると、ショボンが入ってきたところだった
カウンターの中で在庫のチェックをしていた居たブーンだったが声をかけながら途中で止め、棚に自分の作った商品を並べていた弟者が手を休めて寄って来る。
(´・ω・`)「みんなは?」
( ^ω^)「ふさは屋台だお。ツンとクーは奥で仕事してるはずだお」
(´<_` )「残りはモナーの牧場に行ってる。なんでも牛が産まれそうらしい」
.
- 351 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:46:44
ID:W8XyU8Gk0
(´・ω・`)「そっか。とりあえず問題無しで通常営業だね」
(´<_` )「疲れてるな」
( ^ω^)「だおね。説得疲れかお?」
(´・ω・`)「いや」
カウンターの横に備え付けられているベンチに腰掛けるショボン。
(´・ω・`)「クックルさんの住んでる村から転移門のある一番近い街まで歩いたんだけど、途中で敵にも出くわしたし、結構疲れたよ」
一回大きく息をつき、たっている二人に軽く肩をすくめる。
(;^ω^)「クリスタル使わなかったのかお!?」
(´<_`;)「お前、おれ等にはソロプレイするなってあれだけ言っているくせして」
(´・ω・`)「それは謝るよ。ただ、クックルさんが毎回移動でクリスタルを使ってるとも思えないから、ちょっとやってみたくなってさ。もちろんレベルも問題な
いし、周囲の敵も特に気にするようなのは出てこないみたいだからやってみたんだけどね。ちゃんと転移クリスタルはすぐ出せるようにして」
( ^ω^)「ソロプレイは凄いと思うお」
(´<_` )「そうだな。店にも時々ソロプレイヤーが来てるが、やはりおれらとは何かが違う感じだ。買う量も思い切りもパーティープレイヤーとは違うから、個人としてみれば良い客だが」
( ^ω^)「攻略組のソロプレイヤーとか化け物だお」
(´・ω・`)「ジョルとかドクならやれそうだけどね」
.
- 352 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:47:58
ID:W8XyU8Gk0
(´<_` )「無理だな」
( ^ω^)「無理だおね」
(;´・ω・`)「そう?ドクオはともかくジョルジュは会ったときはソロプレイヤーだったし、二人とも充分強いと思うけど。レベルも遜色ないし。今はギルドにあわせたスキル構成してるけど、構成を作り直せば」
(´<_` )「そういう問題じゃないさ」
( ^ω^)「だおね」
顔を見合わせてニヤニヤと笑う弟者とブーン。
めずらしく状況が分からずショボンが視線を泳がせる。
(;´・ω・`)「え?なにどうしたの?二人だけ分かった感じで」
(´<_` )「俺達が分かってるんじゃなくて、お前が分からないだけだな。多分、お前以外の全員が分かってる」
( ^ω^)「だから気にしなくて良いお」
(;´・ω・`)「いやいや、もっと気になるでしょそれ」
立ち上がったショボンだったが、自分宛に送られてきたメッセージ音を聞いて再び座る。
(´・ω・`)「クックルさんからだ。早いな」
( ^ω^)「おっ」
(´<_` )「返事はなんだって?」
(´・ω・`)「受けてくれたよ」
( ^ω^)「おっおっ」
(´<_` )「第一関門はクリアだな」
(´・ω・`)「あとは、クエスト中に上手く話をもっていけるかと…」
(´<_` )「と?」
(´・ω・`)「クックルさんが、ぼく達のことを信用してくれるようになるか…かな」
表情を引き締める三人。
ショボンはそのままメンバーに連絡するためのメッセージを打ち始めた。
.
- 353 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:49:34
ID:W8XyU8Gk0
二日後。
(´・ω・`)「フラグ立ててきたよ」
小さな村の小さな家。
ショボンが木の扉を開けて外に出ると、村の入り口横で固まっているメンバーを見つけて声をかけた。
( ´_ゝ`)「ずいぶん長かったな」
(´・ω・`)「身の上話がね…。ユリエンヌちゃんの好きな食べ物から、おじいちゃんの吸っていた葉巻の銘柄まで…」
ξ゚听)ξ「おつ」
('A`)「おつ」
( ´_ゝ`)「ユリエンヌちゃんはどんな食べ物が好きなんだ?」
川 ゚ -゚)「ロリおつ」
(´<_` )「ロリおつ」
( ´_ゝ`)「いや、おれは純粋な興味でだな」
_
( ゚∀゚)「フラグ立てやりたいって言ってたのはそういうことか」
(;´∀`)「ひくもな」
▼・ェ・▼
( ´_ゝ`)「ビーグルまでそんな目でおれを…」
(´・ω・`)「NPCにセクハラして黒鉄宮に飛ばされるような真似はしないでね」
.
- 354 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:50:42
ID:W8XyU8Gk0
ショボンの周りに集まったメンバーが軽口を叩き合う。
一歩離れてその輪を見ているクックル。
( ^ω^)「今からショボンが流れを説明するから、クックルさんももっと寄ると良いお」
その隣にブーンが立ち、少し見上げるようにクックルの顔を見ながら促す。
( ゚∋゚)「 」
( ^ω^)「クエストの概要はもう貰ってるけど、フラグ立ての時に新しい情報が出る場合もあるし、移動の際の隊列に関しても指示が出るお。だからほらっ」
クックルの後ろに回り、背中を両手で押すブーン。
(;゚∋゚)「 」
戸惑いながらも一歩メンバーの作る輪に寄るクックル。
川 ゚ -゚)「適材適所だな」
それを横目で見つつ、クーが隣にいるツンに話しかける。
ξ゚听)ξ「まあね。ブーンなら喋らない相手でも会話が続くだろうし。ショボンがクックルの傍付きをブーンにした時は不思議だったけど、考えてみると他にいないわよね」
( ´∀`)「モナがいなくても大丈夫みたいもな」
川 ゚ -゚)「長いことツンの傍に居れば、言葉の裏腹を感じ取れるようになるだろうから、表情や発する雰囲気でなんとなく会話が成立するんだろうな」
ξ;゚听)ξ「ちょっ。クー、なによそれ」
川 ゚ -゚)「言葉の通りだが?」
( ´∀`)「なるほどもな」
ξ;゚听)ξ「モナーもなんで納得してるのよ!」
(´・ω・`)「はいはい、雑談はそれくらいでね。それじゃあ説明するよ。大部分はメールで送ってるけど、ちゃんと確認してね」
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- 355 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:51:38
ID:W8XyU8Gk0
クエスト名は『おじいちゃんの花壇をきれいにして』。
イグル村の少女ユリエンヌのお願いで、村を囲む森の中にある四つの花壇に花を咲かせるのがクエスト内容。
ちなみに花はユリエンヌちゃんから種を預かっているので、それを埋めて、栽培スキルが100以上のキャラクターが、これまたユリエンヌちゃんから渡されたじょうろでお水をあげると、花が咲くはず。
クリア報酬は十種類の薬草の中からランダムで四種類。それとクリア時のタイムや花の咲き具合で追加アイテムがあるらしい。
制限時間は五時間。
越えると自動的にクエスト失敗になって、渡された種とじょうろは没収になるので、持ち逃げは出来ないから。
周囲の森にはレベル的にはそれほど強くないけど特異な業を使うモンスターが出るので、注意すること。
特に『ディスアーム』と『スナッチアーム』を使う敵が出たときは注意。
チームは今回は二班に分けます。
《先行班》は、ドクオ、ジョルジュ、クー、ツン、モナー、ビーグル。指揮はクーよろしく。
《作業班》はクックルさん、ブーン、兄者、弟者、ぼくで、指揮はぼくで。
まあ、班といっても森自体は迷路タイプじゃないので、基本的にはエリア移動する際に先行班が先に行って敵を発見して戦闘開始。作業班は花を咲かせる役目のあるクックルさんを守りつつその後ろを付いて移動と、後ろから出てくる敵の排除がメインって感じで。
《先行班》は、後ろを見て必ず一回一つのエリアに全員が集まってから次に移動するようにね。クー、そこら辺の所は必須でよろしく。
POT、クリスタル系は先に渡した分で足りると思うけど、もし足りなくなったら随時ギルド共有フォルダから取り出しておくこと。
クックルさんはギルドフォルダは使えないのでちょっと多めに渡していますが、危なくなったらクリスタルで脱出してください。
時間制限はありますがその間別の層に行かない限りはクエストは続行されているので、この村に飛んでもらえれば仕切りなおしがしやすいので、よろしくお願いします。
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- 356 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:53:12
ID:W8XyU8Gk0
(´・ω・`)「これくらいかな。さて、何か質問は?」
集まった仲間たちの顔を見回すショボン。
ギルドメンバーは笑顔で余裕があり問題はなさそうだが、一人クックルは表情を強張らせている。
(´・ω・`)「なにかありますか?クックルさん」
(((;゚∋゚)))
名前を呼ばれ、小さく首を横に振るクックル。
( ´∀`)「だいじょうぶもなよ、クックル。みんなが傍にいるもな」
(;゚∋゚)
声をかけてきたモナーをじっと見るクックル。
そんな瞳に柔らかな笑顔で返すモナー。
小さくクックルが頷いた。
(´・ω・`)「それでは、出発!」
_
( ゚∀゚)川 ゚ -゚)ξ゚听)ξ( ^ω^)( ´_ゝ`)( ´∀`)
「おー!!!!!」
▼・ェ・▼('A`)(´<_` )
.
- 357 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:54:20
ID:W8XyU8Gk0
『イグルの森』
村の名前が付けられたその森は特にこれといった特徴があるわけではなく、近隣の街や迷宮に繋がっている道への通路なだけである。
宝箱すら落ちていないが、村の中心から見て東西南北にモンスターが出ない安全エリアがあるため休憩がしやすく、また出現するモンスターがそれなりに良い経験値を持っていることとモンスターが特異な技を使う為、訓練として訪れるプレイヤーが時々いた。
(´・ω・`)「そういえば『スナッチアーム』の対策で練習しに来たことあったよね、ここ」
( ^ω^)「なつかしいお」
前を歩く《先行班》の後姿を見ながら歩く《作業班》の五人。
クックルを中心に、前をブーンとショボン。後ろを流石兄弟で四角形に囲んでいる。
( ´_ゝ`)「練習で来たことなんかあったか?」
(´<_` )「俺達が入る前の話だろ」
(;´・ω・`)「いやいや、いたよそのとき君ら」
(;^ω^)「だお。兄者と一緒に倒した覚えがあるお」
( ´_ゝ`)「しらん」
(´<_` )「しらん」
(´・ω・`)「しらんって…しかも弟者まで」
( ´_ゝ`)「え?おれは忘れててもいいの?」
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- 358 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:56:10
ID:W8XyU8Gk0
雑談をして笑っているものの、四人は周囲を警戒することを忘れていなかった。
《先行班》が前から出てくる敵は倒しているため数は多くないが、横から来るモンスターにはショボンの投げナイフとブーンの片手直剣がうなり、後方からポップした敵には兄者の鎚と弟者の斧が空気と共に切り裂いた。
(´<_` )「このポップ数の多さはなんとなく覚えている気がする」
(´・ω・`)「ほんとに忘れたのかと思ってビックリしたよ」
( ´_ゝ`)「え?おれは?おれは?」
( ^ω^)「クックルさんはここは来た事あるのかお?」
(;゚∋゚)))
頷くクックル。
( ^ω^)「モナー達と解散してからはずっとソロなんだおね?凄いお」
((;゚∋゚))
( ^ω^)「謙遜しなくても良いお。そういえばずっと武器は両手棍なのかお?両手持ちだと『ディスアーム』も『スナッチアーム』もあんまり効かないって噂があるけどどうかお?」
((;゚∋゚))
( ^ω^)「そっか、ずっと両手棍なら他のとの違いがわからないおね。おっおっ」
.
- 359 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:57:05
ID:W8XyU8Gk0
(´・ω・`)「(すごいな…なんとなく会話になってる)」
( ´_ゝ`)「(ブーンすげえ。改めて色々スゲェ)」
(´<_` )「(ただ者じゃないとは思っていたが)」
( ´_ゝ`)「(ただのにやけ顔じゃなかった)」(´<_` )
( ^ω^)「………どこかでバカにされた気がする」
(((;゚∋゚)))
( ^ω^)「おっおっ。クックルさんが言ったとは思って無いお」
(´・ω・`)「(ブーンには彼の声が聞こえてるなんてことは無いよね)」
( ^ω^)「そろそろ一つ目の花壇だおね」
暗い道を抜けると、小さな花壇のある安全エリアに到着した。
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- 377 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 22:59:17
ID:r.am2grM0
4.花嵐
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- 378 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:00:07
ID:r.am2grM0
クックルが直径1メートルほどの円形の花壇にじょうろで水をやると瞬く間に芽が出て草が生え、花で溢れた。
「おーーーー!!!」
(*゚∋゚)
本日三回目の歓声が上がり、クックルの表情も少しだけ緩む。
『イグルの森』
三つ目の安全エリアも先の二つと形は変わらず円形をしていた。広さも同じくちょっとした教室ほどあり、ギルドのメンバーが全員集まってもスペースに余裕がある。
クエストである種を植える花壇はその中央にあり、赤茶けたレンガで周囲を囲んだだけの質素なそれは、平時は何も植物が生えていないため、このクエストを知らないプレイヤーは下手をすると花壇とすら思わなかったかもしれない。
かと言って、花壇以外の何かに使えそうということも無いのだが。
( ゚∋゚)
何も植えられていない花壇の片隅にクックルが種を埋め、上からじょうろで水をやる。
たったそれだけで芽が出て緑が生まれ、花が咲く。
『アインクラッド』という《デジタルの世界》だから出来ることであり、そこには『生物の命』など無い。
だがクックルはこの芽が出る瞬間が好きだった。
.
- 379 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:01:04
ID:r.am2grM0
クックルは、そこに『命』を感じていた。
今回はクエストであるため通常の『栽培』よりも更に簡素化されていてあっという間に花となった。それでも芽が出る瞬間を見る時は、普段と変わらず心弾んでいた
ξ*゚听)ξ「きれい」
川*゚ -゚)「そうだな」
(*´・ω・`)「何度見ても感動するね」
(*^ω^)「すごいお!」
加えて今は周囲に人がいる。
今まで一人で見ていたものを、一緒に見て、同じように感じ、自分以上に感動してくれている。
一番最初のときは戸惑いの方が大きかったが三回目になると少しは慣れ、分かち合える感情に喜びを感じていた。
周囲で湧く歓声が心地よく、笑顔になれる。
それは、久し振りの感情だった。
それは、決して一人でいては味わうことの出来ない感情だった。
それは、逃げていた状況だった。
それは、もう自分は求めてはいけないと思っている幸せだった。
( ゚∋゚)
意識することなく自分に科した戒め。
緩んだ表情を引き締めて、じょうろをアイテム欄にしまった。
.
- 380 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:02:09
ID:r.am2grM0
_
(*゚∀゚)「なあなあ、栽培スキルって凄いのな。いつもあんな感じで芽が出て花が咲くのか?」
((( ゚∋゚)))
_
(*゚∀゚)「違うのか!でも芽は出るし、花を咲かせることも出来るんだよな。いいな、こういうのも。モナーの牧場で牛が産まれるのを見たときも思ったけど、命の誕生って…こう…くるよな!」
( ´∀`)「ジョルジュは感動して泣いてたもな」
_
(*゚∀゚)「うるせぇ。なんか凄かったんだよ!また見学させてくれよな」
(´<_` )「今度はおれも見たいな。この前はいけなかったし」
('A`)「凄かったぞ。色々と」
( ´_ゝ`)「花壇の花も色々植えれるんだろ?種とか売ってるんだよな?」
( ゚∋゚)))
( ´_ゝ`)「おれも育ててみようかな。女の子って花好きだよな。どれくらいで花束とか作れるくらい育てられるようになるんだ?」
川 ゚ -゚)「ロリおつ」
ξ゚听)ξ「ロリおつ」
( ´_ゝ`)「なぜに?」
('A`)「兄者の言う『女の子』って何歳くらいまでのことなんだ?」
( ´_ゝ`)「………」
( ^ω^)「ロリおつ」
( ´∀`)「ほらビーグル、ロリおつって言ってあげるもな」
▼・ェ・▼
(;´_ゝ`)「モナーやめてくれ!ビーグルに見られるのは心にくるから!おれが泣くから!」
(;゚∋゚)
逃げるようにクックルの背に隠れる兄者。
沸き起こる笑い。
.
- 381 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:03:20
ID:r.am2grM0
クックルが戸惑うのも当然だろう。
自分の声が届かなくなってから、会う人間はほとんど自分を奇異な目で見、離れていった。
もしくは腫れ物に触るように扱い、『障害を持つ者』に対する『慈愛』に溢れた行動をされた。
だが、彼らは違う。
もちろん彼らの『普段』など知らないクックルだが、そこに感じるのは『普通』な『普段』だった。
戦い、笑い、遊び、そして前を見る。
村を出発してから三つ目の花壇までの間、徐々に全員が話してきて、聞こえていないはずの声が聞こえているかのように会話が成立し始め、思わず頬が緩んでしまう。
もちろん時折は会話が繋がらないこともあるが、それが気にならない楽しさが心に芽生える。
しかし水をやってはいけない芽を静かに摘み、このクエストの間だけ、つかの間の夢を楽しむことも自分には許されないことなのだと気を引き締め、彼らを見た。
(´・ω・`)「さて、じゃあ次に向かいたいんだけど、ちょっと気になる情報があったので作戦タイムにしまーす」
('A`)「ん?めずらしいな。途中でなんて」
ショボンが声をかけると一気に雑談を止め、表情を引き締めて彼を見るメンバー達。
クックルが戸惑うのは、こんな瞬間もだった。
(´・ω・`)「いや、最初から不確定要素としてはピックアップしてあったんだけど、ちょっと気になってね」
出したウインドウを一回見た後、自分を見るメンバーを見回す。
( ^ω^)「どうしたんだお?」
(´・ω・`)「覚えていない兄者を除いて全員この森は経験者だから覚えていると思うんだけど」
( ´_ゝ`)「まだひっぱるかそれ」
(´・ω・`)「村から見て北東にある村の出入り口を出て時計回りに回りに東、南、ときてここが西の花壇、安全エリアになるのは分かってるよね」
川 ゚ -゚)「そうだな」
.
- 382 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:05:15
ID:r.am2grM0
(´・ω・`)「で、いまから北の花壇、《安全エリア》に向かうわけだけど、北の安全エリアは通路から道を外れて行き止まりにあるんだよね」
ξ゚听)ξ「今までのは通路の途中に安全エリアがある感じだったけど、北は違うってわけね」
( ^ω^)「そういえばそうだったような」
(´・ω・`)「で、その一つ前のエリアは今いる安全エリアと同じくらいの広さがあって、結構敵が出てくるんだよ」
(´<_` )「相当数なスナッチアーム使いがポップしてて乱戦になった覚えが」
( ´_ゝ`)「おれと弟者の範囲攻撃スキルが唸りまくったエリアだな」
_
( ゚∀゚)「おれあの時鍛えた剣獲られて発狂した」
川 ゚ -゚)「あったあった。全員で追いかけたな」
( ´_ゝ`)「あれ?覚えててもスルー?ほらほら、おれ覚えてたよ」
('A`)「そこを気をつけろってことか?」
- 383 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:06:01
ID:r.am2grM0
(´・ω・`)「それもあるんだけど…。このクエストを実行中に、何回か謎な敵が目撃されてるんだ」
( ´∀`)「謎な敵もな?」
(´・ω・`)「そう。この森は基本的にはスナッチアームとディスアームを使うコボルトが中心で、それ以外は蜘蛛とか蜂の敵ばかりなんだけど、そこのエリアでは巨大な花の敵が出てきたことがあるらしいんだ」
ξ゚听)ξ「花?」
川;゚ -゚)「巨大な花というと…いたなぁ。なんか触手がうにゅうにゅ出てる大きな花のモンスターが。でも確か層が違うような」
(´・ω・`)「うん。この層じゃないところでは出てる。ただ毎回出てるわけでもないし、出てきても同じ敵が出てるようではないみたいなんだよね」
('A`)「なんだそりゃ」
( ´∀`)「ランダムでポップするイベント専用モンスターってこともな?」
(´・ω・`)「もしかするとね。で、前はそうでもなかったんだけど最近のクエスト経験者のレポで多いんだ」
(´<_` )「なんだそりゃ」
(;^ω^)「クエストの難易度が上がったってことなのかお?」
(´・ω・`)「絶対数が少ないから、まだ確証が得られてないんだよね。だから今回のクエストをやるって決めた時にアルゴさんに情報が入ったら優先的に回してもらえるようにお願いをしてて」
川 ゚ -゚)
(´・ω・`)「さっきメッセージが来たんだけど、昨日このクエストをチャレンジしたパーティーは、そこの敵にかなわなくて撤退したらしい。幸い死者は出なかったけど、結構ギリギリだったみたいだ」
.
- 384 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:08:02
ID:r.am2grM0
ショボンの言葉に息を呑む何人かのメンバー。
それ以外の者も、表情を引き締める。
(´・ω・`)「出現に関する要素としては、クエストの攻略スピードとかクエストをはじめた時間、あるいは栽培スキルのコンプリート率とかが考えられるけど、まだ何かは分かっていない」
ショボンがチラッとクックルを見る。
目が合うが、クックルがゆっくりと視線をそらした。
(´・ω・`)「……まあ、今回も出るかどうか分からないけど、気は引き締めていこう。状況によっては一度撤退するから、転移クリスタルはすぐ出せるところに入れてあるか確認しておいて」
再びメンバーを見回すショボン。
ほとんどの者が腰のポーチや巾着に手を入れて、クリスタルの感触を確かめている。
(´・ω・`)「それじゃあ、出発しようか。先発組、よろしく」
.
- 385 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:08:56
ID:r.am2grM0
深い緑の森。
先ほどのショボンの話を聞き植物系の敵が出ると聞いたせいか、心なしか進むたびに緑が濃くなっているように思えてくる。
( ^ω^)「でも、この低層だしお使いクエストなんだからそこまで凄い敵は出てこないおね」
(´・ω・`)「レベル的には大丈夫だと思うよ。ただ攻撃力は弱くてもHPが桁違いだったり、特殊技を使う敵ってことも考えられる。花…植物系なら毒を使ってくる場合もあるしね」
(;^ω^)「そうだおね」
(´<_` )「こっちの班はブーンとクックルさんが対毒POT飲んでたよな。先発組は誰が飲んでるんだ?」
(´・ω・`)「ドクオ。あとさっきクーにも飲むように指示を出しておいた」
( ´_ゝ`)「植物系なら麻痺使いの可能性は低いか」
(´・ω・`)「油断は出来ないけどね。もしもの時は対麻痺POT飲んでるドクオとブーンに頑張ってもらわないと」
( ^ω^)「おっおっ」
(´<_` )「クックルさん、危なくなったらこちらが指示しなくても逃げてください」
( ^ω^)「おっ!そうだお!」
(;゚∋゚)
( ´_ゝ`)「こっちの依頼で来てもらって、あんまり危ない目にあわせるのも悪いしな」
(´・ω・`)「そうして下さい」
(;゚∋゚)
クックルはただ頷くことしか出来なかった。
.
- 386 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:09:48
ID:r.am2grM0
北の安全エリア、最後の花壇に向かう分かれ道の前で、一度集合をした。
(´・ ω・`)「ここからは班を止めて全員で移動にしよう。ただ通常の盾可能装備を最前にするのではなく、回避の上手いブーンとドクオを先頭に、二列目に索敵を
期待してビーグルとモナー、その次を僕とジョルジュ。その後ろにクックルさんを中央にしてツン、クー、兄者、弟者で」
戸惑うクックルに構わず場所を移動して隊列を組むメンバー。
▼・ェ・▼「きゃん!」
(;´∀`)「何か居るもな?」
ξ゚听)ξ「もう!?」
▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」
( ^ω^)「楽しんでるみたいに見えるお」
( ´∀`)「警戒ではないもなね…。どちらかというと、知ってる人とか自分を可愛がってくれる人がいるのを見つけた時の泣き声みたいもな」
(´・ω・`)「この先に誰かいるってこと?」
_
( ゚∀゚)「とりあえず進んでみようぜ。他のプレイヤーが居るのかもしれないしよ」
('A`)「だな。ショボン?」
(´・ω・`)「……うん、進もう」
ショボンの決断のもと、警戒しつつ動き始めた。
.
- 387 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:11:14
ID:r.am2grM0
メンバーの中では索敵能力を意識的に上げているドクオが先陣を切りエリアに入る。
('A`)「とりあえずは何もいない…と」
( ^ω^)「大丈夫みたいだおね」
▼・ェ・▼「きゃん!」
( ´∀`)「ビーグルも感じないみたいもな」
後ろを続くメンバー達。
それぞれに左右上下を警戒しながらエリアの中央に向かう。
_
( ゚∀゚)「なんだ、いないのかよ」
(´・ω・`)「クックルさんは入り口付近にいてください。四人はクックルさんを」
ξ゚听)ξ「了解」
川 ゚ -゚)「分かった」
(´<_` )「ん」
( ´_ゝ`)「おーけー」
(;゚∋゚)
先のメンバーがエリアの中央に向かうのを、入り口にかたまって見守る五人。
ドクオが中心に到着する。
▼#・ェ・▼「ぎゃん!」
.
- 388 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:12:19
ID:r.am2grM0
('A`;)「下!?」
飛びのくドクオとブーン。
土が盛り上がる。植物の蔦が十数本、土を弾け飛ばしながら生え、ジャンプしたドクオとブーンを狙った。
_
( ゚∀゚)「ちっ」
(´・ω・`)「!ブーン!これ!」
蔦が出た地面、その根元を切り裂くために走りこんだジョルジュ。
ショボンは左手に備えた円盤を右手に持って構え、淡く光ったのを確認して投げた。そしてそのまま腰につけたピックを掴み、跳んだ二人を追う蔦を牽制する。
_
(#゚∀゚)「そいや!」
ジョルジュの両手剣が唸り全ての蔦を切り裂くが、同時に別の場所から生えた蔦がジョルジュを狙う。
(#^ω^)「させないお!」
上空、ショボンが投げた円盤を蹴るブーン。
地面に向かって加速し、着地しつつ片手剣を一閃。
自分を狙う蔦を回避しつつ、ブーンが断ち切った蔦を狙って走るジョルジュ。
_
( ゚∀゚)「たすかった!」
( ^ω^)「おっおっ」
.
- 389 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:13:29
ID:r.am2grM0
('A`)「おれも仕事しないとな」
ジョルジュを追う蔦を攻撃しながら三人と合流するドクオ。
(´・ω・`)「三人とも大丈夫!?」
( ^ω^)「さっきのはありがとうだお」
_
( ゚∀゚)「これが言ってたやつか」
('A`)「ここまでとはな」
円盤を回収しつつ近寄ってくるショボン。
蔦を警戒しつつ四人が集まると、後ろからモナーとビーグルが駆け寄った。
▼#・ェ・▼「ぐlるrぅるううllるlるううぅぅぅ」
(;´∀`)「だいじょうぶもなか!?」
投擲武器を構えたショボンを中心に、扇状に立って武器を構える四人。
その前に躍り出たビーグルが唸り声を上げ、全員がその方向を見た。
.
- 390 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:14:12
ID:r.am2grM0
(;゚∋゚)
川 ゚ -゚)「大丈夫か?」
前を向いたまま自分を気遣う言葉をかけるクーに戸惑うクックル。
正直今の状況を眼前にして、自分は全く動けなかった。
しかし、あの状況を見て咄嗟に動くことが出来る能力を持っているであろう仲間の彼ら、自分を囲む四人の男女はピクリとも動かず、ただその背中を見つめていた。
しかも自分を気遣う言葉を吐く。
どう考えても自分よりも目の前で戦う彼らの仲間の方が大丈夫ではない状態のはずなのに。
ξ゚听)ξ「あなたは私たちが守るから心配しないで。って言っても無理か」
(´<_` )「ま、あの程度ならあいつらは大丈夫だから問題ない」
( ´_ゝ`)「相変わらずのショボンの采配と、あいつらの反射神経だな」
涼しい顔で会話する彼らを見て一つ分かる。
それは、仲間への『信頼』。
しかも、実績と経験に基づいた確信なのだろう。
そこで思い出してしまう一人の男の顔。
自分のかつての仲間の顔。
自分は、彼のことを彼らのように信頼していたのだろうか。
そんな思いが心をよぎり、表情を暗くした。
.
- 391 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:15:51
ID:r.am2grM0
戦う五人と一匹の目の前の大地が大きく盛り上がる。
▼#・ェ・▼「ぎゃんっ!」
('A`)「来るぞ!」
大地がはじけとび、巻き起こる土煙。
(´・ω・`)「ジョル!」
_
( ゚∀゚)「やってるよ!」
両手剣を振り回すジョルジュ。
既に緑色に光り輝くそれは、前方に気流を生み風の壁を作る。
その後ろに避難する四人と一匹。
('A`)「来るぞ!」
土煙の中から飛び出る数十本の蔦。
ジョルジュの放つ風の壁にほとんどが弾かれるが、それをかいくぐった蔦が襲いくる。
(#´∀`)「ふんっ!」
モナーの振るった槍が襲い来る蔦を全て絡め取る。
そして刃を大地に突き刺し、蔦の動きを封じた。
('A`)「ナイス!」
(#´∀`)「いまのうちもな!」
.
- 392 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:17:03
ID:r.am2grM0
蔦の繰り出された先に向かって駆け出そうとするブーンとドクオ。
大ぶりのナイフを構えたショボン。
しかしその時周囲に女性のような甲高い叫び声が響き、彼らは動きを止めた。
_
(;゚∀゚)「おい!なんだよ今の声は!」
ブーンとドクオが後方のツンとクーを見るが異常はなく、むしろそちらも困惑したように首を振る。
(;´・ω・`)「誰かいるのか?」
_
(;゚∀゚)「おい、終わるぞ!」
('A`)「分かった」
( ^ω^)「了解だお」
剣技後の硬直を起こすジョルジョに変わり前に立つために、タイミングを計る二人。
▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」
(;´∀`)「ビーグル?」
ジョルジュの起す風が一段と吹き荒れ、剣技が終了する。
前に躍り出る二人だが襲い掛かる蔦は無く、前方では徐々に土煙が薄くなっていった。
「助けて!」
(;´・ω・`)「……その声は!」
土煙が消え始め、大きな花を中心に何十本もの蔦を触手のようにうねうねと蠢かせるモンスターのシルエットが浮かび上がる。
('A`;)「ショボン!知ってるやつの声か!?」
(;^ω^)「誰だお!?」
巨大な花の下、触手に絡められた小さな人のシルエットが浮かぶ。
(;´・ω・`)「ユリエンヌちゃんっ!?」
_
( ゚∀゚)「なんだって!?……て、誰だそれ」
.
- 393 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:18:13
ID:r.am2grM0
(;´∀`)「今回のクエストの依頼人もなよ!」
▼;・ェ・▼「きゃんっ!」
巨大な花のモンスターに囚われた少女。
ショボンをみて表情を明るくし、そして暗くする。
(;´・ω・`)「なんでここに!?」
ユリエンヌ「ごめんなさい!」
(;^ω^)「依頼人!?」
('A`;)「捕まってるのかよ」
驚いているのは先の者たちだけではなく、クックルを含めた五人もだった。
ξ;゚听)ξ「どういうこと?彼女が依頼人?」
川;゚ -゚)「なにかのイベントが始まるのか?」
(*´_ゝ`)「ユリエンヌちゃん……かわいい……触手……」
(´<_`;)「よし分かった兄者、ぶれないのはさすがだが、少しの間黙ってろ」
(;゚∋゚)「 」
クックルが驚いたのが目の前の事象ではなく自分の両横にいる二人の言葉にだとしたら、思わず呟いた聞こえなかった言葉は想像が出来る。
- 394 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:19:13
ID:r.am2grM0
('A`;)「おいショボン!?」
(;´・ω・`)「追加イベント?でも情報は無かったよ?」
ユリエンヌ「ごめんなさい!わたしも花を咲かせようと思って何度か来た事がある北の花壇に向かっていたら突然このモンスターが現れて…」
(;^ω^)「ど、どうすれば良いんだお?」
(;´∀`)「もなっ」
▼;・ェ・▼「きゃきゃんっ」
力比べに負け、地に刺した槍を抜き取られてしまうモナー。
_
( ゚∀゚)「ほいさっ」
上段切りで一閃。
ジョルジュが蔦を切り、槍が落ちる。
( ´∀`)「ありがとうもな!」
_
( ゚∀゚)「へへっ」
.
- 395 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:20:05
ID:r.am2grM0
戸惑いつつも武器を構える五人。
再びショボンを要に扇状に陣を敷く。
ユリエンヌ「早く逃げて!そして北の花壇に花を!」
(;´・ω・`)「しかし、君をこのままには!」
ユリエンヌ「私のことは気にしないで!おじいちゃんが死んでしまって、私が死んでも悲しむ人なんかいないから!せめて、おじいちゃんの花壇をきれいにしたかったけど、私にはそんな力も無くて…」
_
( ゚∀゚)「!?」
ユリエンヌ「だから皆さんに依頼したんです!おじいちゃんの花壇にもう一度花が咲かせることが出来たら私も頑張ることが出来るかもって!でも、やっぱり私はダメなんです!だから!」
('A`;)「…」
(;^ω^)「…」
ユリエンヌ「おじいちゃんが死んだのだって、私のせいなんです!私がこの森に住むモンスターに襲われて、その時に私を守ろうとして……。私があの時おじいちゃんって叫ばなければ、おじいちゃんの気をそらさなかったら……おじいちゃんは……」
( ゚∋゚)
ユリエンヌ「だから!わたしのことは気にしないで!」
.
- 396 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:21:53
ID:r.am2grM0
(#´_ゝ`)「ダメだ!」
突然叫ぶ兄者に思わず全員が振り返る。
(#´_ゝ`)「君のような可憐な少女を見捨てることなど出来るわけが無い!」
兄者を除く全員が目を見開き、口をあけて呆然とする。
ユリエンヌ「でも、こんな世の中で私なんかが生きていても、また誰かを危険な目に…」
(#´_ゝ`)「おれが守る!」
ユリエンヌ「そんな…お兄さんみたいな戦士さんに守ってもらうなんて…。それに、私がそばにいたらお兄さんも危険な目に…」
(#´_ゝ`)「おれは死なない!」
ユリエンヌ「えっ!?」
全員「え?!?」
(#´_ゝ`)「おれはそばに居ても死なない!君はそこにいればいい!君が出来ることをすればいい!」
ユリエンヌ「お兄さん…」
(#´_ゝ`)「頼ればいい!時々甘えてくれればそれでいい!朝おはようって言ってくれればそれでいい!夜お休みって言ってくれればそれでいい!」
ユリエンヌ「私なんかのために…」
(*´_ゝ`)「あとお風呂で背中を流してくれたり、汚れるから薄着でエプロンつけておれのために料理をしてくれたり、ときどきおれの子守唄なんかで寝」
(´<_`;)「兄者っ!」
呆然と兄者の叫びを聞いていたメンバーだったが、突然弟者が更に大きな声で叫んだ。
(*´_ゝ`)「どうした弟者?突然大きな声を出して」
(´<_`;)「オーケー落ち着け。まずは落ち着いて喋るな。そして周りを見ろ」
(*´_ゝ`)「ん?」
自分を見るメンバーの顔を見る。
(;´_ゝ`)「……あれ?」
その冷たい視線で緩んでいた頬が元に戻る。
(;´_ゝ`)「いや、その…あれ?」
.
- 397 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:23:05
ID:r.am2grM0
冷や汗を垂らした兄者を全員が見るなか、一人が口を開いた。
_
( ゚∀゚)「まぁ間違っては無いよな」
視線を外し、巨大花に向けた剣を構えなおすジョルジュ。
_
( ゚∀゚)「おじいちゃんがあんたを守ったのは、あんたが大事だったからだ。だからそれを誇りこそすれ、悔やむべきじゃねぇ。それはおじいちゃんを侮辱してるのと同じだ。死んだのは残念だが、自分の命を危険に晒しても、あんたを守りたいってくらい、あんたの事を大事に思ってたんだろうよ。…声をかけて動きがと
まったなんてのは、よくあることだ。それで攻撃を受けるのは弱いからだし、甘かったからだ。でもそれを悔やむのはあんたの勝手だ。でも、悔やむから自分の命が無くなれば良いなんてのは間違ってる。悔やむのならば、今度はあんたが誰かを守れ。大事な何かを守れ!誰かとかかわれば、その誰かに迷惑をかけるかも
しれない。それならその分返せばいい。その分その人を、誰かを、何かを守れ!大事にしろ!それが生きている俺達の役目だ!だからそれを投げ出すのは許せねぇ!」
にやっと笑い、両手剣を片手で持って肩に乗せる
_
( ゚∀゚)「だから助けてやるよ。おれはあいつと違ってロリじゃないけどよ」
ジョルジュの言葉を黙って聞いていたメンバーが思わず噴き出し、そして気を取り直したように武器を構え直し始める。
.
- 398 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:24:29
ID:r.am2grM0
('A`)「そうだな。ここで見殺しにするのは趣味じゃないし、後悔しそうだ。だから戦おう。…おれもロリじゃないから勘違いするなよ」
( ^ω^)「おっおっ。だおね。見捨てるくらいならさっさと逃げてるだろうし、ぼくも戦うお。ロリじゃないけど」
( ´∀`)「モナも、このギルドに入って分かったことがあるもな。やらないでする後悔なら、やってやるもな!そして笑うもな!だから戦うもな!戦うけどその理由は兄者とはちがうもな!ロリじゃないもな!」
▼・ェ・▼「きゃん!」
ξ゚听)ξ「逃げるのは性に合わないのよね。それに、このメンバーで戦うなら負けないし。死なないし。勿論私もロリじゃないけど」
川 ゚ -゚)「同じく。ロリと同じ意見なのは癪にさわるが、間違ってはいないから良いだろう。NPCの命だろうが、命は命。守れるなら守るし、守る努力をするのは当然だ。…言っておくが私もロリでは勿論ない」
(´<_` )「色々間違っている兄だが前半言っていたことは正解だから、ここは助けるために戦うさ。…言っておくが同じ顔だからって一緒にするなよ。あー顔変えたい」
(´・ω・`)「一人を除いてロリじゃなくて良かったよ。あ、僕も違うよ。意見は一緒だから、君を助ける努力はするけどね」
(;´_ゝ`)「何も全員で…」
ユリエンヌ「私なんかのために……」
('A`)「『私なんか』のためじゃない、『ユリエンヌ』という人のために俺達は戦うんだ」
( ´_ゝ`)「そうだそうだ!」
(´<_` )「兄者はちょっと黙ってろ」
.
- 610 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 14:48:53
ID:DtHDfjCw0
全員が武器を構えつつ後退し、入り口付近で全員が合流する。
_
( ゚∀゚)「で、どうするよ、ショボン」
(´・ω・`)「…クックルさん、クリスタルで一度村に戻ってください。あの敵に不安を残さず戦うには全員の力が必要なので、クックルさんを守ることができなくなります。倒した後に迎えにいきますから、待機していてください。お願いします」
( ゚∋゚)
(´・ω・`)「さ、クックルさん」
((( ゚∋゚)))
ショボンの言葉に、黙って首を振るクックル。
(;´・ω・`)「クックルさん?」
黙って棍を構えるクックル。
(;´∀`)「クックル!?」
.
- 611 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 14:50:06
ID:DtHDfjCw0
( ゚∋゚)「俺も、戦う。俺も、変わりたいから。…一緒に、戦う。頼む、戦わせてくれ」
_
( ゚∀゚)「なんだ、低音でいい声してるじゃん」
(;´・ω・`)「え!?言うことまずそれ!?」
( ´∀`)「みんなにも聞こえたもな!?」
耳に届いたクックルの声。
それぞれに聞こえたことに驚き、ジョルジュの言葉で脱力し、肩の力を抜いてもう一度武器を構える。
(´・ω・`)「…わかりました。でも、戦うのなら僕の指示には従ってもらいますよ」
( ゚∋゚))
一度、大きく頷くクックル。
(´・ω・`)「では、」
( ゚∋゚)「あ!一つだけ」
(´・ω・`)「なんですか?」
( ゚∋゚)「俺もロリじゃないから」
瞬間全員が硬直し、そして噴き出す。
(´・ω・`)「兄者みたいじゃなくて、安心しましたよ」
( ´_ゝ`)「え?今回おれってそんな役回り?」
ξ゚听)ξ「別に今回だけじゃないでしょ」
..
- 399 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:28:16
ID:r.am2grM0
(´・ω・`)「じゃあいこう!ドク!ブン!ツン!クー!速攻で自分の前の蔦を各個撃破!ジョルと僕が四人のサポ!モナとクックルは範囲技を敵の足下で交互に!ビーグルにはサポートを命令!兄弟は二人のサポートをしつつ重単発技!」
駆け出す四人、追うジョルジュ。
ショボンは走りながら位置取りをしつつ既に何本かのナイフを牽制として閃かせ、左手の円盤に右手を添える。
( ´∀`)「行くもなよ、クックル」
( ゚∋゚)「おう!」
その後ろを走るモナーとクックル。二人の間をビーグルが駆ける。
(´<_` )「おら、行くぞ兄者。助けるんだろ」
(*´_ゝ`)「おおっ」
流石兄弟が駆け出したとき、ブーンの片手剣が蔦を切り裂いた。
まずは飛び込んだ四人が蔦を切り裂く。
後ろは気にせず動き回る四人。
ブーンの片手剣が風となって突破口を作り、ツンの細剣が蔦を刺し、ドクオの片手剣がとどめの一撃を与え、クーの槍が薙ぎ払う。
ジョルジュの両手剣は周囲から直線的に攻撃することで束となって四人を襲おうとする蔦を時に邪魔し、時に砕き、ショボンの投げナイフが上から狙う蔦を裂き、下から狙う蔦はピックで地面に刺し止める。
遅れて中に入ったモナーが地面と垂直に出来るだけ低い位置で範囲攻撃を行うと、巨大花がバランスを崩した。
(´・ω・`)「!」
.
- 412 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:46:30
ID:.xI1J6ZE0
円盤を投げるショボン。
弧を描いて飛ぶそれは、ユリエンヌを捕らえている蔦を全て切り裂いた。
ユリエンヌ「!キャー!」
(´・ω・`)「クックルさん!」
( ゚∋゚)「わかった!」
落ちてきた少女を抱きとめるクックル。
( ゚∋゚)「大丈夫か?」
ユリエンヌ「…はい…ありがとうございます」
( ´∀`)「一度離れるもな!」
( ゚∋゚)「分かった!」
抱きとめたまま外に向かって走り出すクックル。
その後ろをモナーが走り、追って迫る蔦を切り落とす。
.
- 413 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:47:23
ID:.xI1J6ZE0
(´<_` )「あとはまかせろ!」
( ´_ゝ`)「クックル!俺と変われ!」
(((;゚∋゚)))
( ´_ゝ`)「何故その役目が俺ではないんだ!」
光り輝く二人の武器。
斧と鎚が唸りを上げ、一撃で数十本の蔦を粉砕する。
目に見えて動きを悪くする巨大花に、更に攻撃を加える8人。
( ゚∋゚)「大丈夫か?」
ユリエンヌ「……はい」
( ´∀`)「もう安心していいもなよ」
▼・ェ・▼「きゃん」
ユリエンヌ「はい…」
( ´∀`)「どこか怪我したりしてないもなか?」
ユリエンヌ「大丈夫です」
下されたユリエンヌはずっと下を向いており、二人を見ようとしない。
(;´∀`)「もなもな」
( ゚∋゚)「……それでも、生きるしかないんだ」
ユリエンヌ「え?」
.
- 414 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:48:06
ID:.xI1J6ZE0
顔を上げるユリエンヌ。
ぼそっと呟いたクックルを見上げた。
( ゚∋゚)「自分のために、誰かが死んだ。自分がしでかした過ちのせいで、人が死に、自分が生き残る。…俺達は、生きるしかないんだ」
ユリエンヌ「…」
( ゚∋゚)「誰も自分に関わっちゃいけない、自分は他人と関わってはいけない、一人でいれば周りで誰も死なない。死ぬところを見たくない。おれも、そう考えていた。……でも、無理だ」
ユリエンヌと視線をあわせ、ぎこちなく笑顔を見せた。
( ゚∋゚)「俺は、人が好きだから。花や動物も好きだけど、それ以上に人が好きだから。関わっていたいんだ。そして出来るなら、友達がほしい。仲間がほしい。…君は違うか?」
ユリエンヌ「…」
小さく首を横に振るユリエンヌ。
( ゚∋゚)「花を見て、一緒に笑ってくれる友達を、仲間を作ろう。そうすれば、きっと何かが変わる。そして、…強くなろう」
クックルが前を見たとき、巨大花がポリゴンに変わった。
.
- 415 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:49:03
ID:.xI1J6ZE0
5.花園
.
- 416 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:49:49
ID:.xI1J6ZE0
(*´・ω・`)「クエストクリア!お疲れ様でした!」
_
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ -゚)( ´∀`)( ゚∋゚)
「おつかれさまでした!!」
▼・ェ・▼('A`)(´<_` )
ミ,,゚Д゚彡「みんなお疲れ様だから!腕によりをかけたから、いっぱい食べてほしいから!」
( ´_ゝ`)「で、俺の手首を縛るロープはいつ外してくれるのかな?」
ギルドホームのリビング。
一人を除いて思い思いにグラスを掲げるメンバーたち。
('A`)「大きな被害無し、金も手に入ったし、そしてなにより」
川*゚ -゚)「レア薬草5種ゲット!」
(´・ω・`)「レアアイテムも貰えたよ。栽培用アイテム《ぞうさんじょうろ》。発動条件は不明だけど、イベントの件はアルゴさん達情報屋に渡しておかないとだね」
川 ゚ -゚)
ξ;゚听)ξ「クー、また顔が凍ってるわよ」
川 ゚ -゚)「ん?そうか?何故だろうな」
( ´_ゝ`)「安定のスルー能力。流石だな」
.
- 417 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:50:35
ID:.xI1J6ZE0
思い思いにテーブルの上の食べ物をつまみながら飲物を飲む。
_
( ゚∀゚)「しかし、あの巨大な花はグロだったな」
(;´∀`)「緑の蔦はともかく、花の部分の色彩がかなりのものだったもな」
(´<_` )「気持ち悪さは今まで戦った敵の中でもトップクラスだったな」
( ´_ゝ`)「おーい、弟者くん。そろそろきみだけでもどうだろうか。気付いてみないか?お兄ちゃんも食べたり飲んだりしたいな」
( ^ω^)「クックルさんの声も聞けたし、万々歳だお」
(;゚∋゚)「いや、そんな」
▼*・ェ・▼「きゃんきゃん!」
(*´・ω・`)「ビーグルちゃんも良かったって言ってるよ」
( ´_ゝ`)「おーいショボン、そろそろ外してみないか?これはギルマスのみ使用可能なギルド内アイテムだよな?」
.
- 418 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:51:28
ID:.xI1J6ZE0
ξ゚听)ξ「クーはその薬草どうするの?新しいPOT用?」
川 ゚ -゚)「まずは自分のレベル上げだな。幸い中に入れておけば劣化はしないタイプのようだし、これを扱える力量を手に入れるのが先だ。定期的に手に入るようになれば色々試してみたいが、まずはレベルと情報で成功率を上げないと」
ξ゚听)ξ「なるほどね」
ミ,,゚Д゚彡「ほら、いっぱい食べるといいから」
( ゚∋゚)「ありがとう。美味しい」
ミ*,,゚Д゚彡「もっともっといっぱい食べるといいから!」
(;゚∋゚)「い、いやさすがにそんなには」
クックルの持つ皿に次々に料理をのせてニコニコと笑っているフサギコ。
クックルも困りながらも箸をつけ、一つ一つに感想を言っていた。
.
- 419 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:52:45
ID:.xI1J6ZE0
( ´∀`)「モナはこれが好きもな」
_
( ゚∀゚)「この魚!おれが釣ってきたやつだよな?」
ミ,,゚Д゚彡「そう、それはこの前釣ってきてくれた魚だから。大きくておいしそうで調理のしがいがあったから、今日までとっといたから」
_
( ゚∀゚)「フサえらい!クックル!これも食べてみろ!」
( ゚∋゚)「分かった分かった」
▼*・ェ・▼「きゃんっ!」
_
(*゚∀゚)「ビーグルも食べるか!食え食え!」
( ´_ゝ`)「おれも食べたいな〜」
(´<_` )「本当に反省しているのか?」
( ´_ゝ`)「してるしてる」
クックルを中心に輪を作るメンバーたち。
そしてそれを視界の端で見ながら食事を続ける男が三人。
.
- 420 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:53:39
ID:.xI1J6ZE0
( ^ω^)「どうだお?」
(´・ω・`)「何が?」
('A`)「クックルだよ」
(´・ω・`)「だから何が?」
( ^ω^)「……クエスト条件はどこまで分かってたんだお?」
(´・ω・`)「…ばれてた?」
('A`)「お前の考えそうなことだからな」
(´・ω・`)「クエストの発動条件は、栽培スキルが500以上のプレイヤーが花を咲かせることだと思われたんだ。だから一か八かだったけどね」
( ^ω^)「……クックルの栽培スキルが500以上あるのはどこで知ったんだお?」
(´・ω・`)「………」
('A`)「ショボン?」
(´・ω・`)「花壇で咲かせていた花を検索したら、中層階では高レベルな栽培スキル保持者が育てないと咲かない花らしかったから」
('A`)「まったく」
.
- 421 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:54:25
ID:.xI1J6ZE0
川 ゚ -゚)「でも、あの巨大花が私たちの敵ではないことは分かっていたんだろ?」
(´・ω・`)「もちろん。最悪逃げることも視野に入れたけど、あの層のイベントモンスターなら敵ではない事くらいはね。一人ならともかく、パーティーでなら敵じゃないよ」
ξ゚听)ξ「まあ実際瞬殺だったわけだし、それに関しては文句は言わないけど」
川 ゚ -゚)「お前が私たちをそこまで危険な目にあわせないことは分かっているしな」
川 ゚ -゚)ξ゚听)ξ「でもちょっとむかつく」
(´・ω・`)「ごめんなさい」
こそこそと喋っていた三人の後ろに立つツンとクー。
ξ゚听)ξ「で?クックルは仲間にするの?」
(´・ω・`)「入ってくれたら良いよね」
川 ゚ -゚)「入れるつもりなんだろ?」
(´・ω・`)「入ってほしいよね」
( ^ω^)「口淀むなんてめずらしいおね」
('A`)「めずらしく自信なさげだな」
川 ゚ -゚)「どうした?いつものふてぶてしさが無いぞ?」
ξ゚听)ξ「いつもの詐欺師スマイルはどうしたのよ」
(´・ω・`)「あれ?やっぱりみんな怒ってる?」
ξ゚听)ξ川 ゚ -゚)( ^ω^)「いーやべつに」('A`)
(;´・ω・`)「なら良いんだけどさ」
.
- 422 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:55:24
ID:.xI1J6ZE0
自分を見る四人の冷たい視線を受け止めながら立ち上がるショボン。
そして一回手を叩いた。
(´・ω・`)「さて、盛り上がってるけど、先に事務的なことをやっちゃおうか」
_
( ゚∀゚)「ん?なんだ?」
そのままの位置で全員がショボンを見る。
(´・ω・`)「まずはクックルさん、今日はありがとうございました。おかげでクエストクリアすることが出来ました」
_
( ゚∀゚)「なんだよ、あらたまっちゃって」
(´・ω・`)「ゲストだからね。危ないめにもあわせちゃったし」
( ゚∋゚)「…」
(´・ω・`)「本当にありがとうございました。まずは、約束の報酬です」
( ゚∋゚)「あ、ああ」
ウインドウを出すショボン。
トレード画面で約束の金額を入力し、クックルに提示する。
(´・ω・`)「確認してくれたら了承してください」
( ゚∋゚)「……」
(´・ω・`)「クックルさん?」
.
- 423 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:56:27
ID:.xI1J6ZE0
自分の目の前に現れたウインドウ。
約束の金額が示されたそれを了承すれば、自分のストレージに大量のコルが入り、欲しかった武具を買うことが出来る。
だが、押せなかった。
( ゚∋゚)「これを押したら、多量の金が手に入る」
(´・ω・`)「そういう契約ですから」
( ゚∋゚)「俺は、いまこうやって喋っていることが信じられないんだ。自分がまた、こうやって大人数と喋ることが出来る日が来るなんて…」
( ´∀`)「クックル…」
( ゚∋゚)「みんなと一緒に行動して、苦しかった。死んだ仲間のことを考えて、苦しくなった。おれが声をかけたばっかりに死んでしまったあいつ……。今楽しいと感じている自分を殺したくなった。けれど、それを越えて……楽しかった」
クックルの目から流れる涙。
( ;∋゚)「一人は…辛いんだ。この世界で一人でいるのは、本当に苦しいんだ。けれど、あいつのことを思うと…おれは…おれは…」
袖で涙を拭い、まっすぐにショボンを見る。
( ゚∋゚)「この金を受け取れば、契約が終わる。また、一人に戻る。それが苦しいんだ。…すまん」
.
- 424 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:57:40
ID:.xI1J6ZE0
_
(#゚∀゚)「別に金を受け取ったからっておれらともう会えなくなるわけじゃないだろ!また一緒にクエストとか迷宮に行けばいいじゃねぇか!」
( ´∀`)「そうもな!またフレンド登録して、一緒に行けばいいもな!」
( ゚∋゚)「二人とも…」
_
( ゚∀゚)「っていうかショボン!クックルをギルドに入れろ!」
( ´_ゝ`)「ジョル…」
(´<_` )「…」
ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュ…」
_
( ゚∀゚)「なんだよ、おまえらだってそう思うだろ」
( ゚∋゚)「ありがとう、でも、良いんだ」
_
( ゚∀゚)「なんでだよ!ショボン!おい!」
( ゚∋゚)「それだけで充分だ」
ξ゚听)ξ「ショボン、何とか言いなさいよ」
('A`)「ギルドのメンバー加入はお前に任せてある」
( ^ω^)「メンバー加入に関しては、ショボンの一存で決めていいお」
川 ゚ -゚)「どうするんだ?」
(´・ω・`)「……」
.
- 425 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:59:07
ID:.xI1J6ZE0
全員の視線を集めるショボン。
しかし彼はそれを気にすることもなく、クックルを見る。
(´・ω・`)「正直なところ、最初は加入を誘いたいと思っていました」
_
( ゚∀゚)「だよな!……って、『思っていた』って言ったか?」
(´・ω・`)「モナーから話を聞いて、一緒にクエストを行って、クックルさんを知り、仲間になりたいとも思いました。…森の中でユリエンヌちゃんに話していたこと、心に響きました」
(;゚∋゚)「き、聞こえていたのか」
(´・ω・`)「立ち聞きしてすみません。そして、だからこそ、仲間にしたいと思うと同時に、躊躇しました」
(;´∀`)「どういうこともな?」
(´・ω・`)「このギルドに入るのならば、自分の命と仲間の命は対等と考えて欲しい」
( ゚∋゚)「もちろんだ!」
(´・ω・`)「いいえ、あなたは違います。あなたには自分の命にかえても他人の命を守ろうとする。それではダメなんです。ちゃんと、自分の命を大事に出来る人でないと」
( ゚∋゚)「!」
(´・ω・`)「このギルドに欲しいのは、自分を守ってくれる盾ではなく、横に立って戦ってくれる、背中を任せあえることが出来るメンバーです」
.
- 426 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 01:00:14
ID:.xI1J6ZE0
静まり返る室内。
( -∋-)「……確かにおれにはそういうところがあるかもしれない。憎くて、苦しくて、あいつを殺したコボルトたちを何度倒しにいったか覚えていない……死んでも良いと思っていた。こんどこそ誰かを守りたいと考えていた。……けれど」
( ゚∋゚)「許されるのなら、変わりたい。このギルドで、みんなと共に戦って、変わりたい。まだ、ダメかもしれない。けれど、変わる。変わってみせる。だから、おれを、このギルドに入れてほしい」
一つ一つの言葉をかみ締めるように言うクックル。
沈痛な面持ちで二人の会話を黙って聞いていたメンバーたちも、クックルの言葉が進むたびに笑顔になった。
そして、ニッコリと微笑むショボン。
(´・ω・`)「ようこそ。ギルド『V.I.P.』へ。これからよろしく。クックル」
今日一番の歓声が部屋を埋め尽くした。
.
- 427 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 01:02:05
ID:.xI1J6ZE0
数日後。
雑貨屋Boon店内。
( ^ω^)「今日はどこに行ってるんだお?」
(´・ω・`)「採取クエストだよ。低層階だけど、ランダムで出るレアアイテムがなかなかおいしいやつ」
カウンターの中のブーンと、カウンターの横のイスに腰掛けたショボン。
ショボンはウインドウをいじっている。
( ^ω^)「クックル以外の面子は?」
(´・ω・`)「ドクオとモナーとふさ」
(;^ω^)「ふさ!?大丈夫かお?」
(´・ω・`)「ドクオがいるし、レベル的にはふさでも安全圏な所だから。それに、ふさはスキルを選べば化けると思うんだよね」
(;^ω^)「ショボンがそういうなら…」
.
- 428 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 01:03:42
ID:.xI1J6ZE0
( ^ω^)「で、さっきからなにしてるんだお?」
(´・ω・`)「クックルに渡さなかったコルがあれば牧場の隣に農場を買えそうだから、資産計画」
( ^ω^)「おまえはなにものだ」
(´・ω・`)「きみの友達で、ギルドマスター」
( ^ω^)「そー返されーると、なーにも言ーえない、いーえないぼーくがいる」
(;´・ω・`)「なにそれ」
( ^ω^)「おっおっおっ」
(´・ω・`)「僕のほうこそ、時々君が分からなくなるよ」
( ^ω^)「おっおっおっ」
(;´・ω・`)「まったく。」
ウインドウを閉じ、立ち上がって大きく伸びをするショボン。
(´・ω・`)「さて」
( ^ω^)「?」
(´・ω・`)「あの程度のクエストならもう帰ってくるだろうから、昼ごはんの準備でもしようかな。午後はクックルと農場の打ち合わせしたいし」
( ^ω^)「きょうはなんだお?」
(´・ω・`)「ジョルジュが釣ってくる魚次第」
( ^ω^)「それは楽しみだお」
穏やかに流れる時間。
すると店のドアが開き、鈴が鳴った。
視線を扉に向ける二人。
中に入ってくる長身の男。
( ^ω^)「おかえりだお」
(´・ω・`)「おかえり」
二人の声を聞き、微笑む長身の男。
そして、口を開いた。
( ゚∋゚)「ただいま」
.
- 429 名前:
◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 01:04:28
ID:.xI1J6ZE0
第四話 終了。
.
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