260 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:32:00 ID:EjoqH.6c0


0.いま から


西暦2024年1月

『V.I.P.牧場』

牧場入り口の柵にはそんな看板がかけられていた。

ここは百層から成る架空世界の空中城砦アインクラッドの低層階にあるギルド『V.I.P.』が持つ牧場。
一人の男が何の障害もなしに入っていくと、厩舎の前に一人の長身の男が立っていた。

( ´∀`)「!弟者!ここにくるのは久し振りもなね」

(´<_` )「よう、モナー。牧場の調子はどうだ?」

軽く手を上げて挨拶をする弟者。
そのままハイタッチをして互いの無事を確認し、笑顔をかわす。

( ´∀`)「順調もなよ。なかなかレア種を誕生されられないけど、少しだけコツが分かってきた気がするもな」

(´<_` )「この前食わしてもらったAクラスの肉は旨かったからな。またよろしく頼むよ」

( ´∀`)「頑張るもな。今日は店は良いもなか?」

.

261 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:33:03 ID:EjoqH.6c0

弟者が厩舎の横の道に進み始めたため、モナーもその横について歩き始める。

(´<_` )「オーダー品の作製と納品が一段楽したからな。たまにはのんびりしようと思ったんだがこことクックルの植物園くらいしか思いつかなかった」

( ´∀`)「思い出してくれて嬉しいもなよ。のんびりしていくといいもな」

(´<_` )「ああ、ここは静かで良いな……って、そういえばビーグルはどうした?普段ならまとわり付いてくるのに」

( ´∀`)「先客と遊んでいるもなよ」

(´<_` )「先客?」

厩舎を通り越した先に一面に広がる牧場地。
柵がはるか彼方に見え、牛に似た動物や羊に似た動物など色々な家畜が点在している。
そしてモナーが指差した先には『先客』と遊ぶビーグルがいた。

(´<_`;)「………」

( ´∀`)「どうしたもな?」

(´<_`;)「       ショボン」

.

262 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:34:21 ID:EjoqH.6c0

(*´・ω・`*)「ビーグル!」

▼*・ェ・*▼「きゃん!」

モナーと弟者の視線の先で、こちらに全く気付かずに走り回り、抱き合い、転げまわる一人と一匹。

(´<_`;)「見たくなかった」

両膝と両手の平を地に付いて四つんばいになる弟者。
緑の芝生が手に気持ちよい。

( ´∀`)「ビーグルと遊んでくれているおかげで作業がはかどるもな」

(´<_`;)「まあ、うん、いや、いいなら、いいんだ。ああ。別に何が変わるわけじゃないしな。うん。そうだ。息抜きは必要だしな。そうそう、大事大事。大丈夫だ。がんばれ、おれ」

( ´∀`)「もな?」

一人自分に言い聞かせる弟者。
それを不思議そうに見るモナーだった。


.

263 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:35:24 ID:EjoqH.6c0

気を取り直した弟者とモナーは、普段モナーが生活している家に入った。
一階のリビングでお茶をすすりながらソファーに座る。
座ると目の前の壁一面が数枚の大きなガラス戸で作られており、牧場を一望できた。
眼の端に移る一人と一匹を意識しないようにしながら、弟者が口を開く。

(´<_` )「そういえば、まだここの名前って『V.I.P.』のままなのな。そろそろ『モナー牧場』とかにしたらどうだ?」

( ´∀`)「このままで良いもなよ。それに、ここはギルドの持ち物もな」

(´<_` )「別に気にしなくていいのに。クックルの所もそうだけど、おれ等やブーン所みたいに自分の名前つけたほうが愛着わくだろうしさ」

( ´∀`)「モナーはこのギルドにいられることが嬉しいからこれで良いもなよ」

(´<_` )「まぁそれなら……そうだ、いっそのこと『ビーグル牧場』とか」

( ´∀`)「それは良いかもなね。ビーグルと一緒にだからVIPにも入れたもなから、出会えたことに感謝の気持ちを込めるのも」

(´<_` )「?」

( ´∀`)「どうしたもな?」

(´<_` )「……モナーと会ったのは…そうか、あの時か」

( ´∀`)「?」

(´<_` )「確かに出会いがあれだし、ギルマスもあれだからそう思っちまうかもしれないな。だけどな、モナー」

(;´∀`)「な、なにもな?」

(´<_` )「それ、ショボンやツンやブーンやクーやドクオやジョルジュや兄貴の前で言わない方が良いぞ」

(;´∀`)「え?」

(´<_` )「本気で怒るから。で、おれもちょっと今怒ってるから詳しく話を聞かせてもらおうかな。今日の仕事はもう終わったんだろ?」

(;´∀`)「終わったもなけど」

(´<_` )「じゃあ少し、昔話でもしようか。といっても考えてみれば一年も昔の話じゃないんだな…」



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264 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:36:14 ID:EjoqH.6c0


第三話 「 それ から 」



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265 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:37:08 ID:EjoqH.6c0

1.そこ から


西暦2023年5月

(#´∀`)「やめるもな!」

▼;ェ・▼「きゃんっ!」

ビーグルが切り付けられ、そのヒットポイントバーを大きく減らす。
そのビーグルを守るように立つモナーのヒットポイントも、既にイエローになり、あと少しでレッドゾーンになる量である。

(A)「別にいいだろ、モンスターなんだからよ」

(凵j「しかもレアモンだぜ」

(ー)「シルブリュールフって、倒せば高確率で高く売れる毛皮落とすんだろ」

小さな村と小さな村の間にある森。
出現するモンスターは低層階のためレベルはあまり高くなく、また村と村を繋ぐ意味合いが強いため、ポップ数もそれほど多くは無い。
そしてすでに攻略されて久しいフロアな上、特にレアアイテムの出る宝箱やドロップすることの出来るモンスターも出ないため、他のプレイヤーもほとんどいなかった。

▼#・ェ・▼「ぐるりゅrぅyrぅるrぅ」

(へ)「けっ!いっちょまえに威嚇しやがる」

(θ)「さっさとやっちまって、金にしようよ」

(Ω)「そうだな。はやいとこやっちまおう」

(#´∀`)「さいしょからそのつもりでパーティーに誘ったもなね!」

(θ)「正解!」

(凵j「でもちょっと気付くのが遅かったね」

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266 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:37:49 ID:EjoqH.6c0

ビーグルを抱きかかえ、男たちを睨むモナー。

(#´∀`)「モナーはビーグルを離さないもな!だからビーグルを殺そうとすればモナーも傷付けてレッドプレイヤーになっちゃうもなよ!」

(へ)「まぁ、一人殺すのも二人殺すのも三人殺すのもおなじだからなぁ。な、おまえら」

(A)「まあね」

(ー)「うーんと、とくに良いかな。どっちでも」

(Ω)「その狼をはやく殺させてくれたらモナー君とはここで解散の予定だったけど、このままだとモナー君がここでおわりになるかもね」

(;´∀`)「おまえら!まさかすでに殺したことがあるもなか!」

▼#・ェ・▼「うーーーー」

(Ω)「さあ、どうだろうね」

数刻前、モナーは素材集めのために声をかけてきた男たちとパーティーを組んだ。
普段なら初めて会うプレイヤー達とは遠出はしないのだが、声をかけてきた三人のうち一人が以前に一度組んだことがあるのと、欲しい素材がそれほど需要のあるものではなく、しかも高確率でゲット出来る森に行くのは一人では心もとなかったため誘いに乗ってしまった。
目的の森に行くには転移門のある村からまずは二つ先の村へ行かなくてはならず、その道中にパーティーメンバーに刃を向けられていた。

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268 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:38:53 ID:EjoqH.6c0

(;´∀`)「まさか、あんたまでオレンジギルドの仲間だったなんて。前にパーティーを組んだときも、そうだったもなか」

(Δ)「…」

アインクラッドにおいて、プレイヤーの上には通常グリーンのカーソルが浮かんでいる。友人や仲間ならそこから名前や状態などをしるすべもあるが、見ず知らずの相手では原則的には『そこにプレイヤーがいる』程度のことしかわからない。
だが一つ、決定的に分かることがある。

それは色による識別。

通常はグリーンであるカーソルが、オレンジの者がいる。
これはその者が『犯罪者』であることを意味していた。
そしてここでいう『犯罪』とはシステム上の犯罪を指すのだが、ほとんどが現実社会でも犯罪である盗みや傷害、そして殺人のことであった。
そこから、彼らオレンジカーソルのものは『犯罪者』を表す『オレンジプレイヤー』と呼ばれ、そういった者達の集団である『犯罪者組織』は『オレンジギルド』と呼ばれている。

▼#・ェ・▼「う〜〜わん!わん!」

(θ)「吼えてる吼えてる、怖い怖い」

嘲笑したように笑うオレンジプレイヤー。

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269 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:39:54 ID:EjoqH.6c0

オレンジプレイヤーになると、犯罪防止コードで守られた街や村には入ることが出来なくなる。
そのためオレンジギルドのメンバーには街や村で諜報や補給を担当するグリーンプレイヤーが居る事が常だった。

今回モナーはそのグリーンプレイヤーに誘われたのである。

(Δ)「………狼を置いて、逃げればいい。所詮、ただのモンスターだ」

(;´∀`)「!」

▼#・ェ・▼「ぐりゅるうyぅりゅgyる」

(Δ)「それに、また捕まえることが出来るさ。一度捕まえられたんだから。ビーストテイマーのモナーさん」

『ビーストテイマー』
それは、システム上で規定とされた称号やスキルではなく、通称である。
一部のモンスターと遭遇した時に友好的な態度を示され、更にこちらからのアクションもそのモンスターにとって良好なものであればそのモンスターを飼い馴らす事が出来る。
そうやって『使い魔』として使役できればプレイヤーを助ける様々な行動を取ってくれるようになるのだ。
そういった『幸運』を掴んだものの事を、やっかみを込めてそう呼んでいた。

(Δ)「しかしまあ、モンスターと自分の命、秤にかけることがそもそも間違っていると俺は思うがな」

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270 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:40:49 ID:EjoqH.6c0

(;´∀`)「おまえ…」

(Δ)「?」

(#´Д`)「違うもな!ビーグルはモンスターなんかじゃないもな!ビーグルはビーグルもな!」

(Δ)「へっ。じゃあ一緒に死ね」

グリーンカーソルの男が手を上げると、オレンジカーソルの男達が武器を構え、切っ先をモナーに向ける。
それを受けて槍を構えるモナー。足下のビーグルも威嚇の唸りをあげる。

(Δ)「やれ」

男が手を振り下ろそうとした瞬間、後ろから顔のすぐ横を光る何かが通り過ぎた。

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271 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:41:56 ID:EjoqH.6c0

(;Δ)「!」

モナーの後方にある木に刺さる一本の針。

(;Δ)「な!」

男が驚きで振り向こうとすると同時に、数本の『線』がオレンジプレイヤー達の目前を掠める。
木々に刺さる数本の針。

武器を構えたまま顔だけで周囲を伺おうとするオレンジプレイヤーの周囲を黒い風が吹き荒れた。

ガシャン

.

272 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:43:04 ID:EjoqH.6c0

(Ω)「!」

(;θ)「な、なんだよこれ」

オレンジプレイヤー達の手が切り落とされ、武器が音を立てて地に落ちる。

モナーの横に佇む一人の男。

( ^ω^)「大丈夫かお?」

モナーを見ることはせず、オレンジプレイヤー達に視線を向けたまま話しかけるブーン。

(;´∀`)「!い、今のはあんたがやったもな?!」

▼;・ェ・▼「うゎん!」

それには答えず、自分が腕を切り落とした男たちを冷たい視線で見回すブーン。
するとグリーンプレイヤー達が我を取り戻し、ブーンに向けて武器を構える。

(;Δ)「な、何だお前は!モナーの仲間か!?」

( ^ω^)「正義の味方だお」

(:−)「ふ、ふざけるな!あっ…?」

(;Ω)「!うっ」

次々に倒れていく腕を切り落とされたオレンジプレーヤー達。

.

273 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:44:06 ID:EjoqH.6c0

(;Δ)「お、おい!どうした!」

(´・ω・`)「レベル3、麻痺毒。これが効くってことは、たいした麻痺対策はやっていないみたいだね」

グリープレイヤーの後方から聞こえる冷静な口調。
ダーツのように針を構え持ったショボンが後ろから声をかけた。

(;Δ)「なに!?」

更なる乱入者を知り振り向いたグリーンプレイヤー達の喉元に、短刀の切っ先が突きつけられる。

(へ)「うっ!」

(´<_` )「とりあえず、動くな」
 _
( ゚∀゚)「動くと切っちまうかも」

(´<_` )「大人しくして、武器を手から離せ」

(´・ω・`)「それにはレベル5の麻痺毒が塗ってあるから、わざと相手に切らせるってのは良い作戦ではないよ」

.

274 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:45:02 ID:EjoqH.6c0

HPが命の全てであるアインクラッドにおいては、個人の力量もしくは相手の武器と自分の防具との間に余程のレベル差がなければ即死はありえない。
現実世界なら喉を切られたり心臓を刺されれば即死することもあるが、この世界ではHPがなくならない限り、その一撃で死ぬことはない。
先ほど腕を切り落とされたオレンジプレイヤーも、HPは減るし腕も欠損したが、ステータス的には死ぬほどではなく、腕も部位欠損ペナルティによって10分前後は腕が無い状態だが、その後は元に戻る。
よって喉元に短刀を突きつけられたグリーンプレイヤー達は、自分のHPが満タンであることを考えれば喉を切られても死ぬことはないのだからそのまま振り切って逃げてもよいのだが、ショボンの言葉を聞き動くことが出来なくなってしまった。

麻痺毒

その名の通り麻痺を起こす毒であり、武器に塗ることでモンスターに状態異常を起こさせることも出来る。
レベルによって効果時間が変わるこの毒は、モンスターが使ってくることもあるためかなり注意が必要である。
勿論対応策はある。対麻痺効力の付いた武具を装備したり対麻痺スキルを身につければそのレベルの麻痺までは異常をおこさなくなるし、効果期限はあるが対麻痺POT等を飲むことによって対抗することも出来る。
だが対応する武具やPOTが高価であることや、ソロプレイ時やボスクラスの攻略時でもない限り麻痺毒イコール死と直結して考える者は多くなく、対応をおろそかにしている者が多いのも事実だった。

.
275 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:46:06 ID:EjoqH.6c0

(´・ω・`)「低レベルとはいえ、モンスターの闊歩する森に麻痺状態で放置されたくは無いよね?オレンジギルドの君等でもさ」

(;Δ)「……分かった」

武器を手から離すグリーンプレイヤー達。

ξ゚听)ξ「大丈夫だった?」

自分の周囲で突然起こった数々のことと、命の危険が少なくとも去ったことに安心し、ビーグルを抱いて座り込んでいるモナー。
そんなモナーの頭上に、どこからか現れたツンがピンク色のクリスタルをかざした。

ξ゚听)ξ「ヒール!」

クリスタルが砕け、モナーのHPを全快させる。

( ´∀`)「ありがとうもな。でも、あなたたちは一体」

モナーの問い掛けに微笑みで返し、今度はビーグルの頭上にもクリスタルをかざした。

ξ゚听)ξ「ヒール」

(;´∀`)「こ、高価なクリスタルをそんな何度も簡単に」

( ^ω^)「命にはかえられないお」

オレンジプレイヤー達を警戒して構えを解かないブーンが、二人を見ないで呟く。
それをうけてツンがモナーを見ながら頷き、ビーグルの頭を撫でた。

.

276 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:47:37 ID:EjoqH.6c0

('A`)「とりあえず回りに潜んでいる仲間はいなかったぞ」

木々の間から出てくるドクオ。

(´・ω・`)「ありがと」

(Δ)「おれ達をどうするつもりだ」

(´・ω・`)「どうしてほしい?」

(#Δ)「ふざけるな!」

('A`)「オレンジギルドのお前らにそんなことを言われたくないな」

片手剣の切っ先を男に向けるドクオ。

(;Δ)「やれるならやってみろよ。オレンジのあいつらを傷付けたのとは違って、グリーンの俺を傷付けたらその時点でお前もオレンジの仲間入りだ」

(´・ω・`)「殺るなら僕が殺るさ。でもね」

ショボンが男に近付き、いつの間にか持ち替えた太目の針を男の目玉に近づける。

(;Δ)「な、何をするつもりだ」

(´・ω・`)「剣で切るなんて、簡単なことはしない」

揺れることなく目の前に突きつけられる針。
銀色に鈍く光る先端。時折鈍い緑色に光るのが、毒が塗られている証拠だろう。

(´・ω・`)「まずは眼をつぶしてあげるよ」

(;Δ)「ひっ」

.

277 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:48:58 ID:EjoqH.6c0

(;´∀`)「もういいもな!」

ξ゚听)ξ「いいの?あなたとこのこを殺そうとしたやつらだよ」

(;´∀`)「怖かったもな。でも、そんなやつを傷付けて、あんたがオレンジプレイヤーになっちゃったら駄目もな。それに…」

( ^ω^)「それに?」

(;´Д`)「たとえオレンジプレイヤーでも、もう、誰も死んでほしくないもな」

(´・ω・`)
 _
( ゚∀゚)

('A`)

( ^ω^)

ξ゚听)ξ

( ´∀`)「ど、どうしたもな?」

(´・ω・`)「いや、……そうですね。…あなたの言う通りだ」

男の目前から針を外すショボン。
まだ喉元にナイフは突きつけられているが、あからさまにホッとした表情をする男。

(´・ω・`)「それでは行きましょう。立てますか?」

ξ゚听)ξ「はい、立って」

ツンが差し出した手を掴み、立ち上がるモナー。

( ´∀`)「ありがとうもな」

.

278 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:50:26 ID:EjoqH.6c0

( ^ω^)「これからどうするんだお?」

(´・ω・`)「とりあえず一回近くの村に行こう。それで良いですか?」

最後の言葉が自分に向けられていることに気付き、慌てて頷くモナー。
 _
( ゚∀゚)「おい、こいつらどうすんだよ」

(´<_` )「とりあえず麻痺でも」

(´・ω・`)「それはこいつらだけでいいよ」

ショボンは言いながら腰に付けている数本の筒の一つからまた違った針を取り出し、空中に投げる。
無造作に見えるが剣技によって投げられた針は弧を描いてオレンジプレイヤーに刺さった。
それぞれに呻き声を上げるオレンジプレイヤー達。

(´・ ω・`)「今のはレベル5麻痺。さっきの効果が切れた頃だから、追加させてもらったよ。彼らの毒が消えてから僕らを追うなりどこかに逃げるなりすればい い。でも、追ってきたらそのときは容赦しない。今の君らはそのビーストテイマーの彼の言葉によって生きながらえているってことを、肝に銘じるんだね」

ξ゚听)ξ「あと、これ」

ツンが正四面体の小さなクリスタルを手にしている。

ξ゚听)ξ「この記録結晶に貴方達全員の顔と行動は記録したから」

.

279 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:51:23 ID:EjoqH.6c0

(;Δ)「なっ!」

('A`)「二度と俺達やそこの彼の前に現れるな」

(´<_` )「現れたら、その記録結晶の中身をアインクラッド全域に流す」

(;Δ)「そ、そんなこと出来るわけが」
 _
( ゚∀゚)「はぁ?方法なら色々あるだろうが」

(´・ω・`)「情報屋と有志で作っている新聞に情報をまわす。オレンジプレーヤーはもちろん、グリーンの君らのこともね。オレンジの彼らの名前は分からないけど、グリーンの君らのことなら、パーティーを組んでいたビーストテイマーの彼が知っているんじゃないかな?」

(;Δ)!

(´・ω・`)「返事は聞かない。じゃ、さよなら。お互いのために二度と会わないことを願うよ」

呆然と立つグリーンプレイヤー達から短刀を外し、彼らの動きを警戒しつつ村へと向かって歩くVIPのメンバーとモナーとビーグル。

残ったオレンジギルドのメンバーは、麻痺が切れてもしばらくの間その場所を動くことが出来なかった。


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280 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:52:32 ID:EjoqH.6c0

2.ここ から


西暦2024年1月

( ´∀`)「正直あの時はみんなも怖かったもな」

そう言って微笑みながらお茶を啜るモナー。

(´<_` )「そうか」

( ´∀`) 「そうもなよ。あの後、あの頃のギルドホームに連れていかれて兄者やクーにも出会ったけど、なんとなくみんなピリピリしていたもな。あ、ふさだけは最初か らのんびりさんな雰囲気だったもなね。ふさは一緒にはいたけどギルドには入っていなかったからかもしれないもなけど、なんか皆と雰囲気が違ったもな」

(´<_` )「…最近はどうだ?」

( ´∀`)「あった頃だけもな!本当にこのギルドに入れてよかったもなよ。全部ビーグルのおかげもな」

(´<_` )「はぁ…」

(;´Д`)「あっ」

(´<_` )「……あのあと、ホームに戻って…。あの頃のホームは道具屋兼武具屋で、ショボンのバーボンハウスは屋台だった」

( ´∀`)「そうだったもなね。この前のクリスマスで久し振りに見れて懐かしかったもな」

(´<_` )「落ち着いてから色々話して、連続してパーティー組んでクエストやったりして」

( ´∀`)「結局欲しかった部材採取も一緒に行ってもらったもな」

(´<_` )「ビーグルが俺等のなかでアイドルみたいになって、モナーが飼育スキルを上げていたことや、牧場をやってみたいなんてことを聞いて」

( ´∀`)「ギルドが持っていたここを紹介されて、最初はNPCに管理させていたけど飼育スキルをもったプレイヤーがやった方が効率も良いからってことで、ギルドに入ったもな!」

(´<_` )「それ、実は逆なんだ」

( ´∀`)「もな?」

(´<_` )「モナーがいたから、モナーをギルドに誘うために、牧場を買ったんだ」

(;´∀`)「もな!?」

(´<_` )「あれは、モナーと知り合って少ししてからだったな」


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281 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:54:20 ID:EjoqH.6c0

西暦2023年5月

ギルド『V.I.P.』ホーム。
道具屋兼武具屋の集会所に、ショボンによって集められていた。
 _
( ゚∀゚)「なんだよ、相談って」

(´・ω・`)「モナーをギルドに誘おうかと思ってるんだけど、皆はどう思う?」

ショボンの言葉を受け、不思議そうな顔をしながらもそれぞれに意見を言う。

(´<_` )「いいんじゃないか?何度かクエストも行って、息もあってるし」

('A`)「俺も賛成」

( ^ω^)「僕も賛成だお。モナーといると楽しいお」

ξ゚听)ξ「いいんじゃない。賛成」
 _
( ゚∀゚)「特に反対する理由はないな。賛成ってことで」

( ´_ゝ`)「もんだいない」

川 ゚ -゚)「私も良いと思うが、いきなりどうした?皆がこう言う事くらい分かっていただろう。それにギルメンを増やすのは基本的にショボンに一任しているわけだし」

全員が感じていたことを率直に口にするクー。
ショボンが少し困ったように口をゆがめた後、理由を口にした。

282 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:55:22 ID:EjoqH.6c0

(´・ω・`)「問題は、モナーがギルドに入ってくれるかってことなんだけどね」

('A`)「結構仲良くやれていると思うが?」

(´・ω・`)「今はね。でもさ、ほら、出会いが出会いだから」

(´<_` )「あ〜なるほど」

(;^ω^)「それは…」

ξ゚听)ξ「無いとは言えないわね」

(´・ω・`)「ね」

川 ゚ -゚)「なんだ、やっぱりあの時は、また暴走したのか」

(;´・ω・`)「いや、暴走って程では」

('A`)「一番酷い時の二割程度か?」

( ´_ゝ`)「ってことは、怯えられても仕方ないレベルってことか」
 _
( ゚∀゚)「『まずは眼をつぶしてあげるよ』って言いながら毒針を眼に刺そうとした時はちょっと怖かった」

川;゚ -゚)「それは」

(;´_ゝ`)「初対面でそれか」

(;´・ω・`)「ほら、ちょっと怒りでね、我を忘れたというか何と言うかなんというか」

('A`)「でもまぁ大丈夫だとは思うけどな。モナーなら、分かってくれてるだろうし」

(´<_` )「だな」

(´・ω・`)「うん。だと良いんだけどね。で、一つ提案があってさ。兄者と弟者には申し訳ないんだけど」

( ´_ゝ`)「オレ達が?」

(´<_` )「何だいったい」

283 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:56:27 ID:EjoqH.6c0

(´・ω・`)「モナーが飼育スキルを上げていて、牧場に興味があるみたいなんだ。だからギルドで用意して、そこを使ってもらおうかと思うんだど」

( ´_ゝ`)「なるほど。で?オレ達がなんなんだ?」

(´・ω・`)「お金がさすがにね。今はブーンの道具屋だけだけど、次は二人の武具屋を買おうと思っていたから、牧場を買っちゃうとそれが遅くなるなと」

(´<_` )「いやいや、次に買うのはお前のバーボンハウスじゃなかったのか?」

(´・ω・`)「当分は屋台があるから大丈夫だよ。ふさもいるから二つ稼動できる日もあるし」

( ^ω^)「そういえば、ふさはギルドに入れないのかお?」

(´・ω・`)「何度か誘ってるんだけど、断られちゃうんだよね。
『ミ,,゚Д゚彡「俺がメンバーとかおこがましいから!』
とか言って。ホームに寝泊りしてくれればいいのに、いつも宿屋に泊まっているし。まぁそれもあって、モナーを誘うのが怖かったりもするんだよ」

('A`)「モナーなら大丈夫だと思うけどな」

( ´_ゝ`)「とにかく武具屋の店は気にしなくていいぞ。当分はブーンの店を間借り出来ればいい。その方が気軽だし」

(´<_` )「店を持つのはもう少しスキルレベルが上がってからの法がいい。それに上の階層にいい物件があるかもしれないからな」

ξ゚听)ξ「でも、牧場買ってから誘って、断られたらどうするの?」

(´・ω・`)「……それは、まぁ。どうにかするよ」

川 ゚ -゚)「私的にはおまえのそのセリフの方が怖いけどな」

(´・ω・`)「そう?」


.

284 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:58:28 ID:EjoqH.6c0


西暦2024年1月


(;´∀`)「そうだったもなか…」

(´<_` )「そういうことだ。だからこの牧場はもともとお前のもんなんだよ」

(;´Д`)「で、でも、どうしてそこまでモナーを」

(´<_` )「みんな、モナーのそばにいたかったんだよ」

(;´Д`)「もな?」

(´<_` )「モナーがそばに居てくれたら、人でいられる気がしたんだ」

(;´Д`)「?みんな、ひともなよ?」

不思議そうに呟くモナーを見て、自嘲気味に笑う弟者。

(´<_` )「モナーに会った頃、何度かオレンジプレイヤーやギルドに襲われていた人を助けたりしていたんだ」

(´<_` )「助けることもできたし、助けられなかったこともあった」

(;´Д`)「!」

(´<_` )「そのうちに、少しずつ麻痺していたんだな。オレンジプレイヤーと戦うことに。『人』と戦うことに」

(;´Д`)「…」

(´<_`  )「それに、襲われていたやつは大体こう言うんだ『そんなやつら殺してくれ!』ってね。勿論殺したことは無い。ギリギリまでHPを減らしたことはあった けど。そして、多分、どこかで『オレンジプレーヤー』の事を人とは思えなくなっていたんだろうな。酷い現実を見てきて」

(´<_` )「あの時、モナーが止めなければもしかするとショボンは…」

285 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:59:20 ID:EjoqH.6c0

( ´Д`)「ショボンは…みんなはそんな事しないもな」

(´<_` )「…」

断言するモナーに泣きそうな笑顔を見せる弟者。

(´<_` )「モナーは、今まで助けた誰とも違った。自分が襲われたのに、襲った相手の命を心配できた。あの時、おれ達も人間に戻れたような気がしたんだ。モナーの優しさに触れて、救われたんだ」

( ´Д`)「モナーはそんな良い奴じゃないもな」

(´<_` )「そんなモナーが、みんな好きなんだよ。だから、ギルドに誘った」

( ´Д`)「もなもな…」

(´<_` )「だから、ビーグルのおまけみたいな事は言わないでくれよ」

( ´Д`)「……分かったもな」

(´<_` )「ありがと」

( ´∀`)「お礼を言うのはこっちもな」

笑いあう二人。
冷めたお茶を、二人とも飲み干した。


.

286 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 01:00:37 ID:EjoqH.6c0


3.これ から

(´<_` )「しかしあれ、いつまで続くんだ?」

( ´∀`)「あれ?」

(´<_`;)「あれだよあれ」

弟者の指差した先で駆け回るショボンとビーグル。

( ´∀`)「今日は時間があるって言っていたもなから、多分30分くらいは」

(´<_`;)「あのギルマスを見てれば、そんな風に思っても仕方が無いよな」

(;´∀`)「それは……まぁ」

モナーの苦笑いを見て何故かウインドウを出す弟者。

(´<_` )「なんか頭にきた」

( ´∀`)「なにをするもな?」

(´<_` )「皆を呼んでやる」



.

287 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 01:01:38 ID:EjoqH.6c0

30分後


 _
(;゚∀゚)「…」

川;゚ -゚)「…」

( ´_ゝ`)「…」

('A`;)「…」

(;・∀・)「…」

(;,,゚Д゚)「…」

(;*゚ー゚)「…」

(;゚∋゚)「…」

(;´∀`)「みんなどうしたもなか?」

(´<_` )「そりゃまぁ絶句するよな」

ξ゚听)ξ「じー」

(´<_` )「ツンはなにやってんだ?」

ξ゚听)ξ「記録結晶に保存。ブーンとフサは店でこられないし、あとでショボンにも見せてあげようかと」

(;・∀・)「(鬼だ…)」

(;´_ゝ`)「(ここに鬼がいる)」

ξ゚听)ξ「なんか文句あるなら後で決闘する?」

( -∀-)「なんのことでしょう」

( ´_ゝ`)「いや、良いんじゃないかな。うん」

.

288 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 01:03:44 ID:EjoqH.6c0

('A`)「あ、こっちに気付いたぞ。表情がくるくる変わってる。さ、帰るか」
 _
( ゚∀゚)「そうだな!釣りの続きをしないと」

(´<_` )「俺もそろそろ戻るか」

( ´_ゝ`)「オーダーの続きをやらないと」

(;*゚ー゚)「わ、私もふささんの手伝いに」

(;,,゚Д゚)「おれも戻るぞゴラァ」

( ・∀・)「工房もそんなに長くあけられないし」

ξ゚听)ξ「これくらい撮れれば良いか」

川 ゚ -゚)「私も新作の調合の続きを…」
 _
( ゚∀゚)「ってことでモナー、」

川 ゚ -゚)ξ゚听)ξ( ・∀・)( ´_ゝ`)
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)「あとはよろしく(お願いします)」('A`)(´<_` )

.

289 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 01:04:45 ID:EjoqH.6c0

(;´∀`)「え?」

( ゚∋゚)「   」

(;´∀`)「クックルまでもなか!」

風が通り過ぎたように部屋から消えるメンバーたち。
そして変わりにやってくるショボンとビーグル。

(;´・ω・`)「み、みんなは」

▼*・ェ・▼「きゃんっ」

(;´∀`)「さっき来て、今帰ったもな」

(#´・ω・`)「…モナー?」

(;´∀`)「ち、違うもなよ、皆を呼んだのはモナーじゃないもな」

(#´・ω・`)「モナ〜?」

(;´∀`)「違うもな!モナーじゃないもな!みんな!戻ってくるもな!」

▼*・ェ・*▼「きゃんきゃんっ」

その日『V.I.P.牧場』に夜遅くまでショボンの呟きが聞こえたのは、また別の話。

.

290 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 01:05:34 ID:EjoqH.6c0


第三話 終了


(#´・ω・`)「ツン、記録結晶は?」

ξ゚听)ξ「はい、あげる(もう複製作ったしね)」


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