302◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:25:00 ID:bswVTS720

( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。




第二十五話 


語るなら未来を




.

303◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:27:19 ID:bswVTS720

ショボンの乾杯で始まった打ち上げ会は、
ショボンの完敗でもう一つの幕を開けた。

(,,゚Д゚)「……まじか」

(´・ω・`)「勝った方が驚かないでほしいなぁ」

VIPとNSの八割方のメンバーと、
その他希望者で始まった勝ち抜き戦。

第一戦はショボンVSギコだった。

ショボンの放つ投擲武器を盾で弾き、時には躱すことにより接近に成功したギコが、
片手剣の剣技でショボンに完勝したのだ。

VIPとNSのメンバーは特に驚いていないがその他の者達はざわついている。

(´・ω・`)「基本的に僕の投擲攻撃は盾持ちとは相性悪いしね」

(,,゚Д゚)「で、でも今まで一回も勝てなかったぞゴルァ」

(´・ω・`)「だって盾の使い方が甘かったし。
投擲をメインに想定している時点で、
盾持ちや防御重視との戦いは一番に考えてるよ」

(,,゚Д゚)「じ、じゃあ」

(´・ω・`)「今のギコは、それを超えている。
それだけだよ。
今の戦いを見る限り、僕相手のイメージトレーニングをいっぱいしたのかな。
でも僕の戦闘スタイルは特殊な方だから、
他でどう活用するかはまた工夫が必要だと思う。
それに、今の戦いで僕の経験値も上がったから、
次同じ戦い方したら僕が勝つよ?
だから、気を抜かないようにね」

(,,゚Д゚)「ご……ゴルァ」

(´・ω・`)「とはいっても今日は僕の完敗だね。
お疲れさま。
次の試合もがんばってね」

.

304◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:28:49 ID:bswVTS720

眉間に皺を寄せて少しうつむき加減で何かを呟いているギコの肩を、
苦笑いをしながら軽く叩くショボン。

(,,゚Д゚)!

それに反応して顔を上げた時には既に目の前にはいなかった。

慌てて振り向き、その背中に声をかける。

(,,゚Д゚)「ショボン!」

(´・ω・`)「ん?」

ふり返ったショボン。
その瞳を真っ正面から見るギコ。

(,,゚Д゚)「おれ、優勝するぞゴルァ」

(´・ω・`)「え?あ、うん。頑張って」

(,,゚Д゚)「優勝したら、もう一度おれとしぃをギルドに入れてくれ!」

(´・ω・`)「は?え?うん。良いけど……。
(あれ?もともと今回の作戦が済んだから戻ることになってたよね?
あの時そう話さなかったっけ?)」

(,,゚Д゚)「よし!頑張るぞゴルァ!」

(´・ω・`)「あ、うん、頑張って。
(これってフラグだよね?)」

思わず周りの仲間たちの顔を見たショボンに対し、
数名が苦笑いを浮かべ頷き、
しぃが眉間に皺を寄せて頭を抱えてしゃがみこみ、
クーが黙ってその背中を撫でた。




.

305◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:30:06 ID:bswVTS720









ミ,,゚Д゚彡「ご、ごめんだから」

(,, Д )「……ゴルァ」

(´・ω・`)「(負けちゃったけどどうするんだろ。
戻らないのかなぁ)」

次の試合でフサギコに完敗し、
ギコは真っ白になっていた。











.

306◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:31:15 ID:bswVTS720




( ´∀`)「まだやってるもな」

モナーが扉を開けると、つい一時間ほど前に見たのと同じ光景が目に飛び込んだ。

それは、男二人が正座して向かい合っている姿と、
一人の女がソファーに座り脚を組んでそれを見ているという状況。

(*‘ω‘ *)「モナーさん、どうにかしてくれっぽ」

( ><)

( <●><●>)

一歩中に入ってきたモナーにぽっぽが声をかけた。
戦闘用装備を全て解いて私服でソファーに身体を投げ出すその姿は、
普段からは感じられない妖艶さをもっていた。

( ´∀`)「二人ともしょうがないもなねぇ」

ここはVIP牧場に建てられているペントハウスのリビング。
外は騒がしいが、防音に優れたこの部屋は静かだった。
外に面したガラスもすべて透明から有色に変わっており、
外からは覗けないようになっている。

( <●><●>)「私も牢獄に入るのが正しい道だということはわかってます」

( ><)「そんなのわかんないんです!
絶対違うんです!」

( <●><●>)「いいえ、わかってます」

( ><)「わかんないんです!」

( <●><●>)「私は二人を命の危険に晒してしまいました。
VIPの方々に刃を向けました。
それは償わなくてはいけません」

.

307◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:32:33 ID:bswVTS720

( ><)「でも誰も傷付いてないんです!
生きてるんです!
だから良いんです!」

( <●><●>)「それではだめなことはわかってます」

( ><)「わかんないんです!」

(*‘ω‘ *)「ずっとこうだっぽ」

呆れたように顔を伏せてため息をつくぽっぽ。

( ´∀`)「ぽっぽちゃんはどう思うっぽ?」

モナーの問いにぽっぽが顔を上げ、
ワカッテマスとビロードはぽっぽを見た。

(*‘ω‘ *)「……。
ワカッテマスが、償いたいって気持ちは分かるっぽ」

( ><)!

( <●><●>)「!ならば」

(*‘ω‘ *)「でも、私達はそれを望んでないっぽ。
私やビロードは、ワカッテマスが牢獄に入る事なんて望んでないっぽよ」

( <●><●>)「……」

( ><)「そうなんです!
望んでないんです!
だから!」

(*‘ω‘ *)「でも、こんなことをしてしまって、
ワカッテマスが私達に合わせる顔が無いってのも、
理解できるっぽ」

( ><)「!」

.

308◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:33:51 ID:bswVTS720

( <●><●>)「……」

(*‘ω‘ *)「……」

三人の視線がゆっくりとモナーを見た。

眉間に皺を寄せるモナー。
そしてため息をついてから口を開く。

( ´∀`)「こんな膠着した状態に、ぴったりの人をお呼びしたもな」

( ><)「?」

( <●><●>)「?」

(*‘ω‘ *)「?」

( ´∀`)「さ、どうぞどうぞ」

扉の前から退く様に中に入ったモナー。

そしてその後ろから二人入ってきた。

ξ゚听)ξ「どういう意味よそれ」

('A`)「え?おれもエアクラッシャーなの?」

ξ゚听)ξ「はぁ?」

('A`)イエナンデモアリマセン

ツンとドクオである。

(*‘ω‘ *)「こ、こんばんわだっぽ」

立ち上がり頭を下げるぽっぽ。

( ><)「こ、こんばんわなんです!」

立ち上がろうとするが足がしびれていて転がるビロード。

.

309◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:35:03 ID:bswVTS720

( <●><●>)「お邪魔させていただいています」

ξ゚听)ξ「まったく。
説教が溜まってるのに」

('A`)「おれも何で呼ばれたのか分からない」

( ´∀`)「二人が本気を出せばすぐ終わるもな」

('A`)「え?戦闘?決闘すればいいの?」

(;><)「!」

(*‘ω‘ *;)「!?」

(;<●><●>)「な、何故そういう事に!?」

( ´∀`)「ちがうもなよ」

不思議そうにモナーを見る二人。
ぽっぽ達三人はホッとした顔でモナーを見た。

( ´∀`)「この三人とおしゃべりしてほしいもな」

ξ゚听)ξ「はい?」

('A`)「え?」

(*‘ω‘ *)「!?」

( ><)「!?」

( <●><●>)「!?」

ξ゚听)ξ「なんで私なのよ」

('A`)「おれとおしゃべり?」

.

310◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:36:33 ID:bswVTS720

( ´∀`)「二人が適任だと思ったからもなよ」

ξ゚听)ξ「はぁ」

('A`)「はぁ」

にこにこと笑うモナー。
釈然としないといった表情をしているツンとドクオだったが、
すぐに一息ついて表情を戻した。

ξ゚听)ξ「ま、モナーの要請ならするけど」

('A`)「ん」

( ´∀`)「ありがとうもな。
さ、二人も正座を止めてちゃんと座るもな。
フサギコからお茶とお菓子を貰ってきているもなよ」

まだよろよろしているビロードがソファーに座るとぽっぽも座った。

( <●><●>)「……」

( ´∀`)「ワカッテマスも座るもな」

( <●><●>)「……はい」

立ち上がり、ぽっぽの横に座る。

三人の前の一人掛けにツンが座り、
その横の一人掛けにドクオが座った。

( ´∀`)「さて、めんどくさいからとりあえずモナーがわかっている事を話すもなよ」

ローテーブルに人数分の飲み物と多量の菓子を置いたモナーが二人掛けのソファーに腰かけて口を開く。

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311◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:38:52 ID:bswVTS720

('A`)「(あれ?実はモナーちょっと不機嫌?素が出てる系?モナー様降臨?)」

ξ゚听)ξ「(『知っている事』じゃなくて『わかっている事』か。
この三人なにしたのよ一体)」

眉間に皺を寄せた二人だったが、
それに気付かないふりをしてモナーは口を開いた。





打ち上げに出ている屋台はマッシロの料理スキル班が担当しており、
そこそこのレベルに高レベルの食材と調味料のおかげでかなりの料理が揃っていた。

採算度外視で調理できることに、
プレイヤーは喜々として料理を続けている。

料理スキルは回数はもちろんのこと、
新レシピや使用する食材のランクでもレベルは上がりやすくなる。

ζ(゚ー゚*ζ「何で私はここにいるのかなぁ」

そんな調理人たちを見つつぼそりと呟いたデレ。

( ^Д^)「と言いつつちゃんと食べるものは食べてるわけで」

後ろからやってきたプギャーが、
デレの右手に持たれたホットドックのようなものを見つつ横に立つ。

ζ(゚ー゚*ζ「そりゃあねぇ。ただなわけだし。美味しいし」

それでも浮かない顔で反応する。

( ^Д^)「急に声かけて驚くかと思った」

ζ(゚ー゚*ζ「周囲の警戒くらいいつもしてるわよ。
ソロなんだから。
それにあんたも隠蔽使ってないでしょ?」

.

312◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:39:54 ID:bswVTS720

( ^Д^)「そりゃ、ここで使っても意味ないし」

右手に二つグラス持っているプギャーが右手を差し出す。

ζ(゚ー゚*ζ「ありがと」

一つを左手で受け取って口を付ける。

ζ(゚ー゚*ζ「あ、美味しい」

( ^Д^)「リメの実とカラルの葉のジュースだと」

ζ(゚ー゚*ζ「へー。あれってこんな風な味なんだ」

( ^Д^)「知ってるのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「お使いクエストや採取クエストで何回かね」

ホットドックをかじりながら呟く。

( ^Д^)「へぇ……」

ζ(゚ー゚*ζ「なによ」

( ^Д^)「いや、そういったクエストもやってるんだなって思って」

ζ(゚ー゚*ζ「なによそれ」

( ^Д^)「そういう泥臭いクエストはやってないイメージ」

ζ(゚ー゚*ζ「なによそれ」

笑みを浮かべるデレ。
しかしその笑みは楽しそうではなかった。

ζ(゚ー゚*ζ「誰かに寄生でもしてるかって思ってた?」

攻撃的なデレの視線。
しかしプギャーは気にしない。

.

313◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:41:16 ID:bswVTS720

( ^Д^)「いや、討伐系しかやってないかと」

ζ(゚ー゚*ζ「……はい?」

( ^Д^)「強かったから」

ζ(゚ー゚*ζ「……はい?」

じっとプギャーを見るデレ。
プギャーは気にせず左手に持った串焼きにかぶりつく。

ζ(゚ー゚*ζ「バカ?」

( ^Д^)「誰がバカだおい!」

ζ(゚ー゚*ζ「あんたよあんた!」

( ^Д^)「バカっていう方がバカなんだぞおい!」

ζ(゚ー゚*ζ「小学生か!
っていうか討伐のクエストだけやってここまで来れるわけないでしょうが!」

( ^Д^)「いや、そこはほら、そこで」

ζ(゚ー゚*ζ「そこってどこよ!」

( ^Д^)「裏ワザ的なことでうまいこと」

ζ(゚ー゚*ζ「ホントにバカ!」

( ^Д^)「うるさい!」

ζ(゚ー゚*ζ「最初っから強いわけないでしょ!
生き抜くために頑張ったのよ!」

( ^Д^)「まー。そりゃそうか」

ζ(゚ー゚*ζ「まったく……」

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314◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:42:45 ID:bswVTS720

カップに口を付けるデレ。
口からカップが離れるのを見てからプギャーが口を開いた。

( ^Д^)「なんでソロなんだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「……うるさいわね」

( ^Д^)「いや、パーティーに誘われたりしなかったのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「……うるさい」

( ^Д^)「それだけ可愛けりゃ声かけられただろ」

ζ(゚ー゚*ζ「な、ば、バカじゃないの!」

( ^Д^)「なんだよ褒めたのに」

ζ(゚ー゚*ζ「あんた!あたしが男だって知ってるでしょ!?」

( ^Д^)「知ってるけど?」

ζ(゚ー゚*ζ「     」

( ^Д^)「ん?」

ζ(゚ー゚*ζ「     天然かよ」

( ^Д^)「おれが?天然?」

ζ(゚ー゚*ζ「ムカつく」

( ^Д^)「で、これからもソロなのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「……そのつもりだけど?」

( ^Д^)「……」

ζ(゚ー゚*ζ「なによ」

.

315◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:43:43 ID:bswVTS720

( ^Д^)「おれ達と組まないか?」

ζ(゚ー゚*ζ「はあ?」

( ^Д^)「いや、結構頑張ってるつもりだけど、なかなか次のフロアに三人で進むのがな。
クエストも討伐系は選ばざるを得ない状況だし」

ζ(゚ー゚*ζ「このギルドのメンバーと組めばいいじゃない」

( ^Д^)「それじゃあおれ達が甘えちまう。
出来れば対等な強さの仲間が欲しい」

ζ(゚ー゚*ζ「……わけわかんない」

( ^Д^)「どうだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「ほんとう、わけわかんない」

( ^Д^)「な、いいだろ?
ブームもネーヨもお前の強さは見て知ってるし」

ζ(゚ー゚*ζ「私は、ツンを殺そうとしたのよ」

( ^Д^)「で?」

ζ(゚ー゚*ζ「『で?』?」

( ^Д^)「いや、だから?」

ζ(゚ー゚*ζ「私は!本気で!ツンを殺そうとした!」

( ^Д^)「知ってる。見てたから」

ζ(゚ー゚*ζ「そんな私を何で誘うのよ!?
あ、そうか。監視?
監視のつもりか。
監視なんてしなくてももう来ないわよ!!」

.

316◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:44:50 ID:bswVTS720

( ^Д^)「お前はあいつらの事を分かってないなー」

ζ(゚ー゚*ζ「はぁ?」

( ^Д^)「おれ達が一緒にいて監視なんてしなくても、
アインクラッドで最強の情報屋と懇意にしているあいつらが、
中層をソロで動けるお前の動向を見張るくらいわけないだろ」

ζ(゚ー゚*ζ「うっ」

( ^Д^)「そしてなにより、ツンはもう気にしてない。
っていうかお前のことは友達扱いしてる。
ならおれ達がお前のしたことを気にする必要はない」

ζ(゚ー゚*ζ「……そこが根本的におかしいのよ」

( ^Д^)「ツンだからなぁ……。
そういうやつだと思っておかないと」

ζ(゚ー゚*ζ「なによそれ……」

( ^Д^)「もう来ないとか言ったらツンが怒るぞ」

ζ(゚ー゚*ζ「……もう怒られた」

( ^Д^)「m9(^Д^)プギャー」

ζ(゚ー゚*ζ「マジむかつく」

( ^Д^)「ツンはそういうやつだし、
このギルドの奴らも似たり寄ったりの奴らだよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……さっき色々言われたから何となくわかる」

( ^Д^)「m9(^Д^)プギャー」

ζ(゚ー゚*#ζ「次にそれやったら斧の錆にする」

( ^Д^)「棍と斧の二刀流ってのも良いな。
おれ達のどこの位置の強化も頼める」

.

317◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:45:53 ID:bswVTS720

ζ(゚ー゚*ζ「勝手に話を進めるな」

( ^Д^)「とりあえず一回。お試しで?」

ζ(゚ー゚*ζ「……言い方がいやらしい」

( ^Д^)「かわいいとは思うけどタイプじゃないです。
もっと清楚な人が好きです。
斧を振り回す人はごめんなさい」

ζ(゚ー゚*ζ「うん。やっぱりムカつく」

( ^Д^)「m9(^Д^)プギャー」

ζ(゚ー゚*#ζ「よし分かった決闘だ」

巨大斧を取り出しつつウインドウの操作をするデレ。

( ^Д^)「おれが勝ったらパーティー参加だな」

同じように武器を出しながら目の前に現れたウインドウを操作するプギャー。

ζ(゚ー゚*#ζ「はっ。勝てると思ってるの?
だいたい『対等な強さ』ってのもムカついたのよね」

( ^Д^)「言うねぇ。
でも、おれの本気も見せてやるよ」

ζ(゚ー゚*#ζ「ほえ面かかせてあげるわよ」

武器をかまえて距離を取る二人。

いつの間にか周囲をギャラリーが囲み声援を送っている。

ζ(゚ー゚*ζ「格の違いを教えてあげる」

( ^Д^)「メンバーゲットだな」

二人の間に浮かんだ数字がカウントダウンを始めた。




.

318◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:46:58 ID:bswVTS720






ミセ*゚ー゚)リ「あの二人は何をしてるんだか」

ギャラリーの中で二人の決闘を見ているミセリ。

(=゚ω゚)ノ「師匠はどっちが勝つと思うんだょぅ?」

ミセリを挟んでぃょぅとヘリカルが居た。

ミセ*゚ー゚)リ「んー。レベルと基本的な強さならデレ一択だけど、
VIPめんつ相手に経験積んでる分対人戦での闘いの上手さはプギャーだろうから、
難しいところかな」

(=゚ω゚)ノ「なるほどだよう」

*(‘‘)*「明日のパジャマパーティーが楽しみなんですよ」

ミセ*゚ー゚)リ「ああ、うん……そうね。
(ねえ、ヘリカルちゃんはデレが男だって知ってるの?)」

(=゚ω゚)ノ「(知ってるんだょぅ)」

ミセ*゚ー゚)リ「(……知ってるならいいか。
ん?ぃょぅは平気なの?)」

(=゚ω゚)ノ「(……気にしたら負けなんだょぅ)」

ミセ*゚ー゚)リ「(何の勝負なのよ)」

*(‘‘)*「二人ともどうかしたんですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「いいえ。何でもないわよ」

(=゚ω゚)ノ「何でもないんだょぅ」

.

319◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:48:56 ID:bswVTS720

ミセ*゚ー゚)リ「ところでヘリカルちゃん」

*(‘‘)*「なんですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「腕、放してくれない?
ぃょぅも袖つままないの」

*(‘‘)*「それは出来ないんです」

(=゚ω゚)ノ「放さないょぅ」

ミセリの左手を両手で組んでいるミセリと、
丈の長めなシャツの裾をそっとつまんでいるぃょぅ。

ミセ*゚ー゚)リ「……逃げないわよ」

*(‘‘)*「そう言っていつもいつの間にかいなくなっているのです」

(=゚ω゚)ノ「出会った時から神出鬼没なんだよう」

ミセ*゚ー゚)リ「うー。
でもほら両手が塞がってるとご飯も食べられないし」

*(‘‘)*「さっきいっぱい食べてもうお腹いっぱいなので大丈夫なのですよ」

ミセ*゚ー゚)リ「そっか……。
ぃょぅも手、放そうよ」

(=゚ω゚)ノ「約束したからダメなんだょぅ」

ミセ*゚ー゚)リ「誰と?」

(=゚ω゚)ノ「ショボンさんとドクオさんとブーンさんだょぅ」

*(‘‘)*「わたしはツンさんとクーさんから頼まれたのですよ」

ミセ;*゚ー゚)リ「あー。そっかぁー。
流石に今回は逃げられないかぁ」

.

320◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:50:00 ID:bswVTS720

盛大な溜息を吐くミセリ。

不思議そうな顔のぃょぅと、
笑顔のヘリカル。

*(‘‘)*「明日が楽しみなんですよ!」

ミセ;*゚ー゚)リ「ああ、うん。女子会ね」

*(*‘‘)*「パジャマパーティーなんですよ!」

嬉しそうなヘリカルを見て笑顔になるぃょぅ。

そんな二人を見て柔らかな笑みを浮かべるミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「よし、まだ食べてないものを食べに行こう!」

*(‘‘)*!

(=゚ω゚)ノ!

ミセ*゚ー゚)リ「二人とも、行くよ!」

*(‘‘)*「はい!」

(=゚ω゚)ノ「ハイですょぅ!」

自分の左腕に回していたヘリカルの腕に自分の腕を絡め、
裾をつまんでいたぃょぅの手を握るミセリ。

*(‘‘)*!

(=゚ω゚)ノ!

ミセ*゚ー゚)リ「ほらほら無くなる前に食べよう!」

ニッコリと笑ったミセリに、
ぃょぅとヘリカルも満面の笑みを返した。




.

321◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:52:46 ID:bswVTS720






それぞれに楽しんでいる仲間達から逃れる様にコソコソと移動する二人。

( ・∀・)「よし、大丈夫だ」
  _
( ゚∀゚)「ツンがいない今のうちに……」

( ・∀・)「モナーに呼ばれて行ったから、当分は大丈夫なはず」
  _
( ゚∀゚)「よし、まずは今日を乗り越えるぞ」

( ・∀・)「おう!」

(*゚ー゚)「ジョルジュさん、モララーさん、どうしたんですかー?」

周囲を伺いつつ人の輪から抜け出して出入口に向かおうとした二人。
その目の前に、しぃが居た。
  _
( ゚∀゚)「え!?」

( ・∀・)「い!?」

(*゚ー゚)「こんなはしっこでどうしたんですか?」

小首をかしげてにっこりと微笑んだしぃ。
  _
(;゚∀゚)「あ、いや、その」

(;・∀・)「気付かなかった。腕を上げたんだな」

(*゚ー゚)「努力しましたから」

会話しながらしぃは微笑み続ける。

その笑顔を見て二人はこめかみと背筋に冷たいものを感じた。

.

322◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:53:53 ID:bswVTS720

  _
(;゚∀゚)「な、なあ、物は相談なんだけど」

(*゚ー゚)「ダメですよー」
  _
(;゚∀゚)「話だけでも」

(*゚ー゚)「ツンさんに頼まれてるので」
  _
(;゚∀゚)「ぐっ」

(;・∀・)「(ジョル、走るぞ)」
  _
(;゚∀゚)「(おれのスピードじゃしぃを引き離せるか……)」

(;・∀・)「(一瞬距離を取って転移結晶でとぶんだ。フォローする)」
  _
(;゚∀゚)「(……わかった)」

(*゚ー゚)「んー。無理だと思います」

少しだけ腰を落として走り出そうとしたふたりの手が掴まれた。

( ゚∋゚)「逃げるな二人とも」

<_プー゚)フ「確保――!!」

モララーの手をクックルが、
ジョルジュの手はエクストが掴んでいた。

( ・∀・)「クックル!」
  _
( ゚∀゚)「エクスト!お前まで!」

<_プー゚)フ「はっはっはっはっは!!」

( ゚∋゚)「気付かれるかと思ったが、しぃに気を取られ過ぎてたな」

(*゚ー゚)「転移結晶没収しまーす」

.

323◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:55:43 ID:bswVTS720

( ・∀・)「あ!」
  _
( ゚∀゚)「げっ」

さっきよりも二人に近寄っているしぃが、両手に転移結晶を持っていた。

(;・∀・)「どうやって!?」
  _
( ゚∀゚)「まじか!?」

腰のポーチに掴まれていない手を突っ込む二人。

( ・∀・)「……あれ?」
  _
( ゚∀゚)「あるぞ?」

二人の手に握られている転移結晶。
  _
(;゚∀゚)「あっ!」(・∀・;)

だがその手を強く叩かれる二人。

そして地面に転がった転移結晶が回収される。

(゚、゚トソン「はい。回収完了です」

( ・∀・)「トソン!」

(*゚ー゚)「こんなのに騙されちゃだめですよ。二人とも」

(゚、゚トソン「逃げちゃだめですよ」
  _
(;゚∀゚)「おれたち二人にどれだけ戦力注ぎ込んでるんだよ!」

(;゚∋゚)「いや別に戦闘じゃないし」

苦笑いを浮かべる四人と、
それを見ながら肩を落とす二人。

.

324◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:56:58 ID:bswVTS720

( ・∀・)「……諦めるか」
  _
( ゚∀゚)「……短い命だった」

絶望したように呟いた二人に、
更に苦笑いを浮かべることしかできない四人。

( ゚∋゚)「まったく……」

<_プー゚)フ「ホントこいつら面白いなぁ」

( ・∀・)「お前もツンに説教されてみるか?」

<_プー゚)フ「遠慮しておく!」
  _
( ゚∀゚)「……はぁ……」

(*゚ー゚)「そんな世界の終わりみたいな」

(゚、゚トソン「そんなに怖いんでしょうか?」

(*゚ー゚)「んー。そうですね。
怖いのもあると思いますけど、
自分を心配しているのも分かるから、
むずがゆくなるんだと思います。
それを超えて怖いってのもあると思いますけどね」

(゚、゚;トソン「あー。なるほど。
怖いのは確定なんですね。
二度も言うくらいには」

(*゚ー゚)「大事なことなので」

表情を引き締めてトソンを見るしぃ。

数瞬の間の後、噴き出す二人。

(゚、゚トソン「もう、ツンさんに怒られますよ」

.

325◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:57:57 ID:bswVTS720

(*゚ー゚)「それくらいで怒る人じゃないですよ」

(゚、゚トソン「そうですね。
どちらかというと私達には甘いですし」

(*゚ー゚)「ですよね」

クスクスと笑う二人を悲しげに見る三人。

エクストは不思議そうにそんな三人を見ている。

<_プー゚)フ「で、そのツンはどこいってんだ?」

(*゚ー゚)「モナーさんに頼まれてドクオさんとモナーハウスに」

<_プー゚)フ「モナーハウス?」

(*゚ー゚)「あ、この農場の管理と、
モナーさんとクックルさんが住んでいるあの建物の事です」

今いる場所が農場の外れなため、離れた場所に建っている4階建ての建物をしぃが指さした。

( ゚∋゚)「モナーハウス?」

(*゚ー゚)「あ、ずっとギコくんとそう呼んでたのをツンさんとクーさんに知られて、
そしたらいつのまにか皆さんもそう呼ぶように」

( ゚∋゚)「知らなかった。
でも言い得て妙な呼び方ではあるな」

(゚、゚トソン「そういえばまた改築したんですね」

( ゚∋゚)「ああ。倉庫を増築して、
泊まりに来るやつも増えたから客室を増やした」

( ・∀・)「農場と牧場、あとその横の森で三つの土地だから、
システム的にはまだ増やせる?」

.

326◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 13:58:59 ID:bswVTS720

( ゚∋゚)「ああ。まだ余裕はあるらしい。
もちろん増築には多量のコルが必要だけどな」
  _
( ゚∀゚)「そういえば牧場の横の森も買ったんだよな?
あそこも買えることにビックリした」

( ゚∋゚)「ん?あ、ま、まあな」

(*゚ー゚)「え?牧場大きくするんですか?」

( ゚∋゚)「あ、ああ。そんな感じだ。
そう、牛と羊が増えて余裕が無くなってきたからショボンに相談したらポンッとな」

(゚、゚トソン「ポンッと……資金繰りが羨ましいですね」
  _
( ゚∀゚)「そういえば、NSのギルドホームってどんな感じなんだ?
おれ行ったことない」

( ・∀・)「そういえば無いな」

( ゚∋゚)「ん。そういえば」

(゚、゚トソン「こちらの方が広いですし、
会議するにも都合が良いですしね」

<_プー゚)フ「ブーンとかショボンはよく来てるぞ」

(*゚ー゚)「え?」

( ゚∋゚)「え?」

( ・∀・)「え?」
  _
( ゚∀゚)「……え?」

(゚、゚トソン「ジョルジュさんは他の皆さんが驚いているからって無理に驚かなくていいですよ?」
  _
(;゚∀゚)「べ、別に無理に驚いてねーし」

.

327◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:01:37 ID:bswVTS720

(*゚ー゚)「トソンさんは結構Sですよね」

(゚、゚トソン「そうですか?」

( ゚∋゚)「というかこの二つのギルドの女性メンバーは全員」

頷く男性陣とクックルを冷たい目で見る女性二人。

(;゚∋゚)「……なんでもありません」

(゚、゚トソン「で、なぜそんなに驚いているんですか?」

( ・∀・)「あ、いや、ショボンはともかくブーンは意外だなと」

(゚、゚トソン「そうですか?」

(*゚ー゚)「あ、ポーションとか備品の納品とかですか?」

(゚、゚トソン「……いえ、そんなこともなく、普通にみえられてシャキンさんと話したりしていますけど」

<_プー゚)フ「ドクオも来るけど、ハインに見付かると連れて行かれるからな」

(;・∀・)「ああ」

(;゚∋゚)「ああ」
  _
( ゚∀゚)「それは想像できる」

(*゚ー゚)「ですね」

(゚、゚トソン「ブーンさんが来るのはそんなに意外ですか?」

( ・∀・)「仲が良いのは知ってるけど、
ブーンも店にクエストに忙しいだろ?」

( ゚∋゚)「だからよく来るってのは驚いたな」

(゚、゚トソン「忙しさではショボンさんも」

.
329◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:04:01 ID:bswVTS720

  _
( ゚∀゚)「ショボンはショボンだから」

<_プー゚)フ「それで納得できるのもすげーな」

(*゚ー゚)「それはショボンさんだから」

(゚、゚トソン「答えになってないけど答えですね」

全員が顔を見合わせて小さく笑った。

(*゚ー゚)「そういえばハインさんはどちらに?
今はドクオさんと一緒じゃないんですよね?」

(゚、゚トソン「……先ほどまではドクオさんの横でニコニコしていたんですが……」

<_プー゚)フ「ドクオがモナーに連れて行かれた後は……」

口ごもって目を伏せる二人。

そんな二人を怪訝な顔で見る四人だった。






从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

農場と牧場は買った時点では別々であった為、
分けて運営をしていた。

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

そしてモナーは牧場を、クックルは農場を管理していた。

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

だがすぐにホームからの移動が面倒になり、
二人はそれぞれに牧場や農場で寝泊まりするようになった。

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

.

330◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:05:04 ID:bswVTS720

しかしこの牧場と農場には管理用の小さな小屋と敷地面積に似合わない倉庫しか付いていなかったため、
二人が小屋に泊まるのをショボンは良い顔をしなかった。

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

そして移動や深夜の管理が必要な場合もあることを知り、
牧場と農場を一つの敷地にしたうえで二人が済む建物を建てた。

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

モナーとクックルは立派なものは必要ないと反対したが、
バーボンハウスで使用する食品はもちろん、
POT等の元になる薬草系の栽培や防具や衣服に使用する革や羊毛の生産もする
農場と牧場に金をかけるのは当然のことと説得され今に至っている。

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

そして今回、牧場エリアの横にある森林も購入し一つの敷地としたわけだが、
実はこの購入には裏があり、
真の理由はモナーとクックル、そしてショボン、ブーン、ドクオしか知っていない。

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

▼・ェ・▼「くーん」

そんな牧場と森林エリアの境目で、ハインはビーグルを胸に抱いて一人笑っていた。

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

▼・ェ・▼「くーん」

因みにアインクラッドにおいて、
ティムされたモンスターはほとんどマスターのそばを離れない。
つまりビーグルはモナーのそばを通常ほとんど離れないのだが、
ホームに設定されているエリアでは比較的自由に動き回っている。

▼・ェ・▼「くーん」

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

.

331◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:06:11 ID:bswVTS720

先程からニヤニヤ笑っているだけのハインにさすがのビーグルも恐怖を覚え始めたころ、
やっとハインが口を開いた。

从 ゚∀从「なあビーグル」

▼・ェ・▼「きゃん!」

从 ゚∀从「あのな、どっくんがな」

▼・ェ・▼「きゃん」

从 ゚∀从「どっくんがな」

▼・ェ・▼「きゃん?」

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

▼・ェ・▼「……くーん」

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

▼・ェ・▼「きゃ、きゃん!」

从 ゚∀从「ん?どうした?
あ、そうか。話しの続きか。
そうか、ビーグルも聞きたいか。
うん。そう、どっくんがな」

▼・ェ・▼「きゃん!」

从 ゚∀从「二人で出かけようって言ってくれたんだ」

▼・ェ・▼「……きゃ?」

从 ゚∀从「どっくんがな、出かけようって誘ってくれたんだよ!」

▼・ェ・▼「……きゃぁ」

从 ゚∀从「あのどっくんだぞ!あのどっくんが!どっくんが、私と二人で……」

▼・ェ・;▼「……くー」

.

332◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:07:26 ID:bswVTS720

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

ビーグルを抱えたままうずくまるハイン。
そして小さく笑い続ける。

▼;・ェ・▼「くぅーん」

从 ゚∀从「ふっふっふっふっふ」

そしてそんな二人の前に、彼女はさっそうと飛び出してきた。
∩∩
ζ゚听)ζ

▼・ェ・▼「きゃん!」

从 ゚∀从「……へ?」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!」

真っ白毛並みのウサギ型モンスター。
デン・ツーレ=ラビットである。

惚けていても中層のトッププレイヤーであるハイン。
即座に距離を取りビーグルを地面に置くと普段使いの長柄の鎌を手元に呼びだした。

从;゚∀从「モンスター!?ここはVIPの敷地のはず!」

通常安全圏にモンスターは現れない。
街の外れだがここは《街》であり《安全圏》であり、
ギルドVIPが購入し管理している土地のはず。
そこにほとんど攻撃力を持たないとはいえ『モンスター』が出現した。
その異常事態にハインが臨戦態勢となる。

从 ゚∀从「ビーグルは私の後ろへ!
いや、すぐにモナーの所に!……い?」

先程までとは別人のように表情を引き締めたハインの視線の先で、
ビーグルがデンツーレにとことこと近寄って行った。

.

333◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:08:32 ID:bswVTS720

▼・ェ・▼「きゃん」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん」

お辞儀をし合う二人。

そして互いの頬を擦り付けあう。

从 ゚∀从「……あれ?」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!」

困惑して硬直するハインに向かい、
ビーグルとの挨拶を終えたデンツーレがハインを指さしてひと鳴きした。

从 ゚∀从「あれ?ビーグルと友達?え?でもここって安全圏で……」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!」

少しイラついたように指さすデンツーレ。

そしてピョンピョンとジャンプしながらハインの周りを一周する。
その後ろをとことこと付いていくビーグル。

そして正面に戻ると、再びひと鳴きした。
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!!」

从 ゚∀从「えっと……何か言いたいことでも?」
 ∩∩
ζ゚听)ζ「とぅん!」

大きく頷くデンツーレ。
そしてもう一度ハインを指さした後、
片足だけ地面につけて一回転した。

長毛種であるデンツーレの毛がふわりと舞い、
それはまるでお気に入りのスカートを着て喜んでいる女の子のようであった。

.

334◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:09:41 ID:bswVTS720

从 ゚∀从「なんかスカートみたいだな」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!」

大きく頷いてハインを指さす。

从 ゚∀从「え?」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!」

从 ゚∀从「えっと……私にもスカートをはけって?」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅとぅん!」

首を何度も立てにふる。

从 ゚∀从「え?いや、でもほらわたしはほら、ここではそういうキャラじゃないし、
リアルでもプライベートではそういった女の子女の子したのはあんまり……」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅとぅとぅん!」

从 ゚∀从「い、いや、でも」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!!!」

从 ゚∀从「……どっくんもそういう方が良いかなぁ」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!」

我が意を得たりと言ったように大きく鳴くデンツーレ。

从 ゚∀从「いやでも……」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅとぅん!」

再びふわりと舞うデンツーレ。

从 ゚∀从「確かに可愛いけど……」
 ∩∩
ζ゚听)ζ「とぅん!」

.

335◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:11:05 ID:bswVTS720

从 ゚∀从「そういうのはプライベートでは着なかったから……。
ちょっと恥ずかしいというか」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!」

从 ゚∀从「どっくん……喜んでくれるかなぁ」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!!」

从 ゚∀从「うぅ……でも……」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!」

从 ゚∀从「そうは言っても恥ずかしいもんは恥ずかしいというか……。
それにほら、ここだといつ戦いになるか分からないし」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!」

从 ゚∀从「そういえばツンがショートパンツでコートタイプでベルトでスカートがどうとか……」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!」

从 ゚∀从「いやでも……」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!」

しゃがんだハインとその目の前で鳴き続けるデンツーレ。

▼・ェ・▼「くぅーん」

少し離れた場所でそんな二人を見守るビーグル。
その後ろに忍び寄る白い玉。

(U ^ω^)「おっおっおっお」

▼・ェ・▼「きゃん」

お辞儀をし、頬を擦り付ける二人。

そして並んで二人を見る。

.

336◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:12:08 ID:bswVTS720

▼・ェ・▼「……きゃん」

(U;^ω^)「……おー」

从 ゚∀从「いやでもやっぱり」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん」

从 ゚∀从「いや分かるよ、わかる。でもさ」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅとぅん!」

从 ゚∀从「そうなんだよな。でもさぁ」
 ∩∩
ζ゚听)ζノ「とぅん!」

从 ゚∀从「そうなんだよな。うん。わかる」

▼;・ェ・▼「くぅーん」

(U;^ω^)
(U;^ω^)
(U;^ω^)
(U;^ω^)
(U;^ω^)
(U;^ω^)
(U;^ω^)
(U;^ω^)「おーん」

隣の一人と背後のワンワンオーの群れと共に二人を見守るビーグル。

二人の会話?は終わるように見えなかった。





ξ゚听)ξ「ばっかじゃないの」

.

337◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:13:09 ID:bswVTS720

('A`)「ああ、ツン、言葉を選ぼうな」

( ´∀`)「もなもなー」

(; <●><●>)

(*‘ω‘ *;)

(; ><)「うぅ……」

モナーハウスの一室。

話しを聞き終えたツンが吐き捨てる様に口にした言葉に三人が唇をかむ。

ξ゚听)ξ「なによドクオ。あんただってそう思うでしょ」

('A`)「否定は出来ないけど、でもほらおれは多分……」

ξ゚听)ξ「……ああ。そういうこと」

モナーを見るドクオとツン。
その視線を受けてにっこりと微笑むモナー。

ξ゚听)ξ「(まったく……)……ドクオ」

('A`)「(それでおれも呼んだのか)……ん」

( ´∀`)「もなもなー」

ワカッテマスに視線を移すドクオ。
ツンとモナー、そしてビロードとぽっぽもワカッテマスを見た。

('A`)「なあワカッテマス、おれもベータテスターなんだ」

( <●><●>)!

( ><)!

(*‘ω‘ *)!

.

338◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:14:47 ID:bswVTS720

('A`)「で、だ、多分分類されるとしたら『ビーター』って呼ばれても仕方ない部類に入る。
βテスト時にそれなりにレベルも上げたし、
出来る限り上の層にも行った。
色々な敵と戦ったし、
効率のよい狩場とか狩りの仕方なんかも知っていた。
で、スタートダッシュでレベル上げをしたし、
取り辛くなりそうなアイテムや武器をさっさと確保したりもした」

( <●><●>)

('A`)「ま、友達と来たからその知識は共有したし、
ベータテスターでもないのにおれより凄いのが身近に二人も居たからまあそれなりだったけどな。
それでも『友達を守るために』その力を使っていた時点で仲間以外のプレイヤーに
白い目で見られても仕方ないかもしれない」

( <●><●>)「……ドクオさん」

('A`)「ある程度落ち着いてからは情報屋に情報を流したり、
協力なんかはしたけれど、
それでもあの頃は肩身が狭かったよな」

( <●><●>)「……はい」

('A`)「ワカッテマスは、どれくらいだったんだ?」

( <●><●>)「……それなりにはまっていたので、
よく来ていました。
一回だけ、フロアボス戦にも参加を……」

('A`)「そっか」

( <●><●>)「正式サービス開始の日を楽しみにしていて、
ベータテスター時の知り合いと広場で待ち合わせしたりして。
けれど茅場が現れてこんなことになり……」

('A`)「どうした?」

.

339◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:15:57 ID:bswVTS720

( <●><●>)「怖くなって、一人の知り合いと宿に籠りました。
それ以外の三人の知り合いは外に出て行って……」

('A`)「そっか」

( <●><●>)「でも、それじゃいけないと思って外に出てみて、
最初は先行で情報をくれていた三人からも連絡が途絶えて。
宿に籠っていた一人ともだんだんと疎遠になり……。
ソロで狩りをしていました」

堰を切った様に喋り出したワカッテマス。

その様をビロードとぽっぽは驚いたように、
ドクオとツンは無表情に、
そしてモナーは悲しげに見つめている。

( <●><●>)「ソロでしたし、
進むことよりも生きることを優先していたため無理はしませんでした。
情報を集め、人の戦いを覗き見し、知識を得てから戦いに挑みました。
それでも戦い方が身についていたのと、
もとになる知識はあった為か順調にレベルを上げることもでき、
スキルを鍛え、出来るだけ安全な狩場で生きる為に戦っていました。
フロアボス戦もいくつか終わり上の階層にも行けるようになり、
ベータテスターへの風当たりやビーターと言う言葉におびえながら、
生きてきました。
……二人に会ったのは、そんなときです。
一人でマウントベアと戦っていたぽっぽが危なくなった時、
颯爽とビロードが助けに入ったんです」

( ><)!

(*‘ω‘ *)!

( <●><●>)「でもすぐにビロードもHPバーが黄色くなり、
このまま見ていたら二人は……と思い横からベアを切りつけ、
ヘイトをこちらに向けて逃げろと叫びました。
でも二人は助太刀ありがとうと叫びながら戦線に参加して来て……。
正直その時点で私にとってマウントベアは格下だったので二人は邪魔だったんですが」

(;><)「あ……」

(*‘ω‘ *;)「っっぽ。血気盛んだったぽっぽ」

.

340◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:16:57 ID:bswVTS720

( <●><●>)「しかも自分のHPをポーションで回復することも無く闇雲に横から切りつけてきたりして。
ヘイト管理もまともにできないのかと衝撃でした」

(;><)「それはその……」

(*‘ω‘ *;)「ポーションが切れてたっぽ」

( <●><●>)「邪魔な動きをする二人に指示を出して動きをコントロールすることによって、
なんとか無事にマウントベアを倒すことが出来ました。
正直二人が居なかった方が早かったと思います」

( ><)「うぅ……」

(*‘ω‘ *;)「そ、そんな時もあるっぽ」

( <●><●>)「ですがその後、
マウントベアを倒したそのすぐ後、
たいした戦果も上げず横でちょこちょこと攻撃を加えて時間をかけただけだったのに、
ものすごい笑顔で私に抱きついたりハイタッチをしたりしている二人を見て」

(;><)「穴があったら入りたいです」

(*‘ω‘ *;)「ものすごくディスられているっぽ」

( <●><●>)「心が、あたたかくなりました」

( ><)!

(*‘ω‘ *)!

( <●><●>)「今まで仮のパーティで戦ったことはありましたが、
あの時ほどの思いは抱きませんでした。
心の底からの笑顔と、生き残っていることの嬉しさを、感じたような気がしたんです」

('A`)「そっか」

( <●><●>)「……はい」

笑顔を見せるドクオ。

.

341◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:17:54 ID:bswVTS720

('A`)「それで、二人とパーティーを組むように」

( <●><●>)「懐かれて、一緒に森を出て、食事をおごってもらい、連絡先を交換し、いつしか……」

('A`)「なるほど。
で、隠していたわけか。
本当のレベルも、ベータテスターだってことも」

( <●><●>)「……はい」

('A`)「ま、両方ともわざわざ人に言うようなことじゃないし」

( <●><●>)「…… …… はい」

('A`)「で、辛くなってきたところを、ロマネスク達につけ込まれた?」

( <●><●>)「……ロマネスクは、昔は、あんな奴じゃなかった」

('A`)「……そっか」

( <●><●>)「先ほども言いましたが、
二人をだましていた。
危険な目に合わせた。
皆さんにも、ご迷惑をおかけしました。
だから」

ξ゚听)ξ「だから、牢屋に入るって?
ばっかじゃないの」

('A`)「だーかーらー」

( ´∀`)「もなもなー」

( <●><●>)「ですが!」

ξ゚听)ξ「結局独りよがりの謝罪行為でしょ。
とりあえず土下座して許しを請うのと同じレベルじゃない」

(;<●><●>)「!」

.

342◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:18:55 ID:bswVTS720

ξ゚听)ξ「まずビロードとぽっぽがどう思っているか、
どうしたいかを聞くのが先でしょ」

(;<●><●>)「そ、それは……。
……迷惑をかけたのにそんなことを聞けるような……」

ξ゚听)ξ「なら、その程度の関係だったって事よ?
もちろん今回の事に関しての心からの謝罪は必要だけど、
ベータテスターを黙ってたことやレベル差の事を黙ってた事を纏めて謝ろうってのはどうなのよ。
それは別問題じゃないの?」

( <●><●>)!

ξ゚听)ξ「それに、ビロードは知らないけどぽっぽは知ってたでしょ?」

( <●><●>)!

( ><)!

(*‘ω‘ *)「……知ってたというか、
多分そうだろうなって思ってたくらいっぽ」

( ><)「ぽっぽちゃん!?」

(*‘ω‘ *)「全く感付いていなかったビロードにこっちが驚きっぽ」

( ><)「うぅ……わかんないんです」

( <●><●>)「し、知ってたのですか?」

ξ゚听)ξ「っていうか、うちのギルドではほぼ全員そう思ってた」

(;<●><●>)「え!?」

('A`)「ジョルとフサぐらいか?」

ξ゚听)ξ「そうね。気付いてなかったっていうか、
まったく気にしてなかったのは」

.
344◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:24:02 ID:bswVTS720

( ´∀`)「あの二人はもともとそういうのを気にしないもな」

('A`)「おれも何回か話そうかと思ったけど、
何とかなってそうだったから……」

(*‘ω‘ *)「もともと知り合った頃にはベータテースターへの批判はそれなりに終息してたっぽ」

('A`)「『ビーターさん』がいたしな」

(*‘ω‘ *)「だっぽ」

( <●><●>)「で、ですが効率よくレベルを上げて」

ξ゚听)ξ「今はそんなに変わらないでしょ?」

( <●><●>)「え?」

ξ゚听)ξ「多分今はそんなに変わらないはずよ。
ま、あんたが一時期のうちの馬鹿とかそこの二人みたいに、
寝る間を惜しんで一人でレベル上げしてるとかならわからないけど」

ドクオが黙って飲み物を口にするのを見るツンとモナー。

(;<●><●>)「そ、そんなことは……」

ぽっぽを見るワカッテマス。

(*‘ω‘ *)「見るっぽ」

ウインドウを出し、可視状態にするぽっぽ。
ワカッテマスが覗き込む。

( <●><●>)「!た、確かに……。
もう三つしか変わらない……」

(*‘ω‘ *)「ビロードは私より高いはずだっぽ」

( <●><●>)「!」

.

345◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:25:06 ID:bswVTS720

( ><)!

ビロードを見るワカッテマス。

キョロキョロと周囲を見るビロードだったが、
ぽっぽとツンに顎と視線で促されてウインドウを出した。

( ><)「こ、こんな感じなんです」

ウインドウを覗き込むワカッテマス。

(;<●><●>)「……」

大きい目を更に見開いて固まるワカッテマス。

ξ゚听)ξ「レベルが全てではないけど、
それが今の現実よ」

( <●><●>)「な、何故!?」

ξ゚听)ξ「うちの気持ち悪いくらい頭の良いバカと、
ここにいるゲームバカが考え抜いた戦い方をしてきたからでしょ」

('A`)「どうもご紹介にあずかりましたがゲームバカです。
三人パーティーでレベル差が大きすぎるのは危険だから、
三人のレベルが並ぶように、かつ戦闘経験を積めるようにメニュー作った。
まぁ強さの違いを気にしていた二人から個別に相談されて、
夜にレベル上げだけの戦闘訓練したりしたし」

ξ゚听)ξ「認めてんじゃないわよ」

呆れたように呟きながらほんのりと笑顔を見せるツンと、
それを受けて表情筋を歪めつつもニヤリと笑ったドクオ。
モナーはそんな二人を見ながらニコニコとしている。

そして三人は、
そんな三人を少しだけ羨ましそうに見つめた。

.

346◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:27:05 ID:bswVTS720

ξ゚听)ξ「とにかく、私はこれから何人も説教しなきゃいけないから忙しいの。
まずは三人で腹を割って話し合いなさい。
今日は泊まってっていいし、
お腹がすいたから下のリビングか外の屋台にでも食べに来なさい」

言外に『ちゃんと話し合うまでここから立ち去るな』と言ったツンの言葉と表情に神妙にうなずいた三人。

('A`)「お前らなら大丈夫だと思う。
外から見てて、良いチームだと思う」

その後に出て言ったドクオの言葉で互いの顔を見た三人。

( ´∀`)「なにが大事なのか見失わない方が良いもな」

そして最後にモナーが部屋を出ると、部屋の中の音が無くなった。


「……っ」


何かを話そうと息を吸ったような音が、
三人から聞こえた。








灯りの付いてないない建物。
小さな中庭の中央近くに、
剣が二本刺さっている。

その前で跪いている一人の男と、その後ろに立つ一人の男。

暗がりでは二人の顔に違いが見えないほど、
二人の顔は同じだった。

.

347◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:28:53 ID:bswVTS720

( ´_ゝ`)「……」

閉じていた目を開き、じっと二本の剣を見る兄者。

( ´_ゝ`)「一本は、『初めて打った一本』だよな。
もう一本はなんだ?」

(´<_` )「それも鍛冶場に飾ってあった。
おそらくは、『最高の一本』じゃないのかな」

( ´_ゝ`)「『初めて』と『今の最高』を鍛冶場に飾るとか。
らしいっていえばらしいが」

(´<_` )「素材持ち込みのオーダー品が『今までの最高品』だったときは
どうしてたんだろうな」

( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「……」

( ´_ゝ`)「想像したくない」(´<_` )

見事にそろった二人の声。

一瞬の沈黙の後二人の顔が笑いで歪んだ。

(´<_` )「グレンさんなら、
納期延ばしてそれを飾りながら一本打ちそうだな」

( ´_ゝ`)「それならまだ良いくらいだ」

悲しげな笑顔を見せる二人。

( ´_ゝ`)「……今まで来なくて、すまなかった。
あんなに世話になったのに、
来れたのは、一番最後になっちまった。
ずっと、考えたくなかった。
あんたが死んだことを、
もう会えないことに、
真正面から立ち向かうことが出来なかった」

.

348◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:30:18 ID:bswVTS720

(´<_` )「……」

( ´_ゝ`)「一人でいたおれに、
弟者を探すことを諦めないことを、教えてくれた。
弟者を連れてきてしまった後悔にさいなまれて何もできなかったおれを、
ぶん殴ってくれた」

(´<_` )「!……兄者」

( ´_ゝ`)「おれも鍛冶をすることを決めた時に、
弟者を連れて行ったときに、
笑いながら、知っていることは何でも教えてくれた」

(´<_` )「……」

( ´_ゝ`)「……もう会えないなんて、考えたくなかった。
ここに来なければ、
黒鉄宮にいかなければ、
フレンドリストの色の違うあんたの名前を見なければ、
まだ会えるかもと自分をだますことが出来た。
だから、来なかった」

拳で地面を殴る兄者。
衝撃が土煙を産んだ。

( ´_ゝ`)「でも、それじゃ、駄目だった。
どこかで、ずっと、考えている自分がいた。
あんたのことを。
そして、死ぬかもしれないってことを。
ギルドの仲間が、鍛冶の仲間が、
そして、弟者が」

(´<_` )「!」

.

349◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:31:33 ID:bswVTS720

( ´_ゝ`)「怖かった。
ショボンやシャキンの注意を聞いて共に居れば普通の戦いで死ぬことは無いと思う。
無理をしなければ、モンスターやクエストで死ぬ事も無いと思う。
でも、人の悪意は、分からない。
どんなに強くなろうとも、
レベルを上げて強い武器と強固な防具を纏っても、
人からは逃れられない。
悪意からは、逃げられない。
……怖かった。
また、人からの悪意で傷付くのが」

(´<_` )「兄者……」

( ´_ゝ`)「おれは、もう、本気にならないって決めていた。
遊びならともかく、勉強やスポーツには、本気にならないって。
そうすれば、笑われることはあっても、
他人から悪意を向けられることが極端に減ったから。
だから、ここでもそうやって、いつか帰られる日までのらりくらりと過ごせばいいと思っていた。
でも、あんたの死で、知らないふりをしていた事に目を向けなければいけなくなった。
すぐそばにある死を。
人の悪意を。
……おれは、目を背けていた。
あんたの死から。
そして、現実から」

(´<_` )「……やっぱり、そうだったか」

( ´_ゝ`)「あの頃は、お前にも迷惑かけたな」

(´<_` )「いや、大丈夫だ。
『なんだ、弟の方か』
だったからな」

( ´_ゝ`)「……すまん」

(´<_` )「それよりも、
やっぱり本気を出していなかったんだな」

( ´_ゝ`)「……すまん」

.

350◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:32:38 ID:bswVTS720

(´<_` )「……気持ちは……今なら、分かる。
納得はできないが、しょうがないとも、思う。
母者や姉者が居てくれたからどうにかなってはいたが、
正直うっとうしかったのは覚えてる」

( ´_ゝ`)「…… ……すまん」

(´<_` )「ただ、言って欲しかったな。
本気を出していない兄者に勝てないのもきつかったけど、
勝った時の方が、勝ちを譲られた気がして、辛かった」

( ´_ゝ`)!

(´<_` )「ずっと目標で、
あこがれだった兄貴が突然バカばかりやり始めて、
真面目な話も出来ずにいて、
アホなことばっかりやってて、
変な本買ってきたり変な服着たりして、
バカな真似ばかりして、
ゲームばかりしてて、
アホなことばかり言っていて、
いつも飄々とバカなことを言いながらアホなことをしていて」

( ´_ゝ`)「……バカとアホを言い過ぎじゃない?」

(´<_` )「それでもおれがどんなに頑張っても負ける時は負けて。
正直ムカついた。」

( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「そして、ここに来て、色々あって、けど、いつの間にか楽しかった。
一緒にバカやって、時々あいつらも巻き込んで、
叱られて、笑って、真面目に戦って、そしてまた笑って。
……兄者、気付いているか?」

( ´_ゝ`)?

(´<_` )「時々おれのことを『悌悟』って呼ぶことがあるの」

.

351◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:33:46 ID:bswVTS720

( ´_ゝ`)「え?」

(´<_` )「気付いてないだろ。
鍛冶をやってるときとか二人だけの時、
本当に楽しそうにしている時に、
意識せずに言っている感じだからな」

( ´_ゝ`)「え?マジで?」

(´<_` )「マジで」

(;´_ゝ`)「あー。なんか恥ずかしいな」

(´<_` )「そうか?
おれは嬉しかった。
兄者が……克睦が、昔に戻ったみたいで。
好きなことを、精一杯、楽しんでやっていたあの頃みたいで」

( ´_ゝ`)「…… ……」

(´<_` )「もう、いいんじゃないか?
好きなことを、好きなように、全力でやってみても。
特にここは、ゲームの中なんだし」

( ´_ゝ`)「……そうかな」

(´<_` )「ああ。
フォローしてくれる仲間も、
説教してくる仲間も、
一緒にバカやる仲間もいるし」

( ´_ゝ`)「……ああ」

黙って二本の剣を見る二人。

数分もそうしていただろうか。

兄者が立ち上がった。

.

352◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:34:59 ID:bswVTS720

( ´_ゝ`)「グレンさん、また、来るよ。
今度は、おれが打った剣を持ってくる。
この剣よりも良い奴を、持ってくる。
あと、好きだったカザルの実のジュースも、持ってくる。
それに、アークの塩焼きと、メべの煮た奴も」

(´<_` )「みんなも呼んで、宴会でもするか?」

( ´_ゝ`)「それも良いかもな。
グレンさんはみんなで集まるのが好きだったし」

口元に笑みを浮かべる弟者と兄者。
二人は同じタイミングで剣に向かって頭を下げ、
そして上げた。

( ´_ゝ`)「じゃ、また」

(´<_` )「また来ます」

剣に背を向けて歩き出す兄者。
その動きに沿う様に剣に背を向け、兄者に続いて歩き出す弟者。

( ´_ゝ`)

中庭から直接外に出た二人だったが、
兄者が立ち止まり店を見上げている。

(´<_` )「どうした?」

( ´_ゝ`)「いや、……大丈夫だ。
なんでもない。
おれは、また、ここに来れた。
それを思っただけだ」

(´<_` )「……ん」

歩き出す兄者。

( ´_ゝ`)「さて、店に帰って剣でも打つか」

.

353◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:36:07 ID:bswVTS720

両手を上げて伸びをしながら歩く兄者。
そして手を下ろした時、その手を弟者に掴まれた。

( ´_ゝ`)「ん?どうした?」

(´<_` )「なにをバカのことを。牧場に行くに決まってるだろ」

( ´_ゝ`)「え?」

(´<_` )「『え?』?」

( ´_ゝ`)「いや、え?なんで?」

(´<_` )「打ち上げ」

( ´_ゝ`)「いや、今回は遠慮して」

(´<_` )「連れてかないとおれがツンに怒られる」

( ´_ゝ`)「……二人で逃げよう」

(´<_` )「バカなことを言ってないで行くぞ」

( ´_ゝ`)「やだやだやだ!」

(´<_` )「大人しく説教されろ!」

(;´_ゝ`)「むりむりむりむりむり」

(´<_` )「今ならジョルとモララーとショボンと合同説教だけど、
延ばすと一人で更に長くなるぞ!」

(;´_ゝ`)「うっ」

(´<_` )「おら!いくぞ!」

(;´_ゝ`)「ううぅ……」

腰の引けている兄者を引っ張って歩き出す弟者。

.

354◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:37:18 ID:bswVTS720

(;´_ゝ`)「やっぱり……」

(´<_` )「うるさい」

(;´_ゝ`)「弟者がいぢめる……」

(´<_` )「可愛く言うな。気持ち悪い」

(;´_ゝ`)「ううううう……」

(´<_` )「しっかり歩く!」

既に涙目の兄者と良い笑顔の弟者だった。






川 ゚ -゚)「フォックス」

爪'ー`)y‐「ん?おや、来島の姫。なにか御用ですか?」

人の輪から少し離れた場所で串焼きや焼き鳥を多量に持っているフォックスに声をかけたクーだったが、
その返しに眉をひそめた。

川 ゚ -゚)「その呼び方と喋り方はやめろと言ったはずだ」

爪'ー`)y-「誰も聞いてないからいいでしょう」

川 ゚ -゚)「そういう問題じゃない。
だいたい、それで言うならお前も『来島の若』だろうが」

爪'ー`)y-「いえいえ。『狐ヶ崎』は傍系。
切れ目を補う事はあっても、
飼い主である『来島』を狙うことなどありえませんからね。
孤独な狐は島の中でのみ生きられるんですよ」

川 ゚ -゚)「……まったく。
とにかく元に戻せ」

.

355◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:39:13 ID:bswVTS720

爪'ー`)y-「はいはい」

川#゚ -゚)「フォックス」

爪;'ー`)y-「いやこれは普通だから」

川 ゚ -゚)「ならば良い。
分かり辛いんだからしょうがない」

爪;'ー`)y-「理不尽極まりない」

クーの言葉に苦笑しながらも串に刺された肉を頬張るフォックス。

爪)'ー`()y‐「んへ、はんのようは?」

川 ゚ -゚)「とりあえず飲み込んでから喋れ。
……ブーンとドクオの調査はどうなってる?」

爪'ー`)y-「おまえさぁ、あの二人の調査とか気軽にできるわけないだろ?
どう考えてもおれより強いんだから」

川 ゚ -゚)「強さと調査は別物だろ?」

爪'ー`)y-「この世界じゃ同じ線上だボケ。
看破スキルとか気配察知とかシャレにならないんだぞあれ」

川 ゚ -゚)「で?どうなんだ?」

爪;'ー`)y-「……ホント人の話聞かないよな」

串を全て左手に持ち、右手を振ってウインドウをだした。

爪'ー`)y-「とりあえず頼まれてから今までの動向とデータ。
人と会ってた時はその相手。
近寄れないから会話の内容までは不明。
あと、ブーンの店によく来る客のリスト」

そしてデータを羊皮紙の巻物の形に実体化させる。

.

356◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:40:16 ID:bswVTS720

川 ゚ -゚)「うむ」

それを一つ一つ受け取りながら自身のスロットに収めていくクー。

爪'ー`)y-「で?」

川 ゚ -゚)「ん?」

爪'ー`)y-「なんでこの二人を調べてるんだ?
言っちゃ悪いがこいつらホントお人好しだぞ。
善人の調査とかほんとつまらないし。
仲間を裏切るとかできる奴らじゃないだろ?
まぁドクオの方は多少は悪いこともしそうだけど、
それこそ落ちてる金を拾うくらいだ」

川 ゚ -゚)「ふっ。そんなことは最初から思っていない。
あと、ドクオは女の子が水浴びしていたら普通に覗き位するぞ」

爪'ー`)y-「じゃあなんでだよ。
そういえばモンスターの生態調査で隠れてた時、
ミニスカ装備の女の子が触手系モンスターに囚われてたのを覗いてたな」

川 ゚ -゚)「……二人も、ショボンと同じだからだ」

爪'ー`)y-「ん?」

川 ゚ -゚)「ブーン、ドクオ、ショボンは自分の事よりも仲間の事を、
……私達の事を一番に考えてる。
もちろん三人の中でも自分よりも他の二人の事を先に考えている。
今までは分かり易い目に見える脅威があったから、
それに対抗するために同じ方向を見ていたが、
それも一部を除いて落ち着いた」

爪'ー`)y-「攻略組がラフコフを潰し、
今回アングラをお前たちが潰した。
で、ラフコフのトップがまだ監獄行きになってないし、
マタンキとかいうやつがまだ逃げてるのか」

.

357◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:41:21 ID:bswVTS720

川 ゚ -゚)「ああ。
でだ、大きな脅威が去った今、三人の目指す方向が、
見ている物が少しずれてしまう可能性がある。
もちろん仲間の為に行動するという姿勢は変わらないが、
自分自身をないがしろにする可能性は高い」

爪'ー`)y-「仲間の為……ねぇ」

川 ゚ -゚)「それでもブーンにはツンがいるしドクオにはハインが出来て、
未来の自分に隣にいる人を想像すれば少しは無茶もしないとは思うがな」

爪'ー`)y-「ショボンは?」

川 ゚ -゚)「仲間を増やしVIP以外にもNSやマッシロの事も背負わせたから、
自分に何かあった時にそのメンバーが大変になる事を考えれば、
そうそう自分自身を無下に扱うことも無くなるはずだ」

爪'ー`)y-「『ショボンには私が出来た』じゃないんだな」

川 ゚ -゚)

爪'ー`)y-

川 ゚ -゚)

爪'ー`)y-

川 ゚ -゚)

爪'ー`)y-

川 ゚ -゚)

爪'ー`)y-

川 ゚ -゚)

爪'ー`)y-

.

358◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:42:57 ID:bswVTS720

川 ゚ -゚)

爪;'ー`)y-

川 ゚ -゚)

爪;'ー`)y-

川 ゚ -゚)

爪;'ー`)y-

川 ゚ -゚)

爪;'ー`)y-

川 ゚ -゚)

爪;'ー`)y-「ごめんなさい」

ちょっとした軽口のつもりだったが、
黙って自分を見るクーの視線と圧力に屈して頭を下げたフォックス。

川 ゚ -゚)「そういう軽口を出来るくらいの余裕があるならこの後も頼むぞ」

爪'ー`)y-「へ?」

川 ゚ -゚)「引き続きドクオとブーン、シャキンの調査をしてくれ」

爪;'ー`)y-「増えてるし!
しかも『マシロのキサイ』かよ!」

川 ゚ -゚)「ましろのきさい?」

爪;'ー`)y-「シャキンの事だ!
弁護士でありながら調理師でカフェのオーナー!
マシロの後継者にならないための条件の為だけに司法試験に片手間で合格したアホ!
条件通りマシロの経営には関わってないという噂と、
実は経営戦略室のフィクサーと言う噂が流れている!」

川;゚ -゚)「どこのオレツエー小説だそれは」

.

359◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:44:22 ID:bswVTS720

爪'ー`)y-「まぁ最後のは噂だと思うけどな」

川 ゚ -゚)「だが事実である最初のだけでも二時間ドラマの主人公は出来そうだな」

爪'ー`)y-「『カフェ店長の事件簿。
珈琲の香りに誘われた殺人事件。
無実の罪を着せられたパンケーキ好きの常連を救ったのは弁護士店長!』
みたいな感じだな」

川 ゚ -゚)「それだけあほなことを考え付くなら余裕だな」

爪;'ー`)y-「いやちょっとまて!」

川 ゚ -゚)「そういえば結局ドクオはミニスカ女子のパンツは見れたのか?」

爪'ー`)y-「ああ、見れてた見れてた」

川 ゚ -゚)「まったくあの男は」

爪'ー`)y-「でかい花のモンスターで、
釣り上げられたミニスカ女子が短剣振り回して退治してた」

川 ゚ -゚)「……とりあえずハインには黙っておいてやろう」

爪'ー`)y-「おっ。優しい」

川 ゚ -゚)「さて、そろそろ時間だから戻らないとだな。
引き続き頼んだ」

爪'ー`)y-「ん」

片手を上げて立ち去るクー。

それを見送って串に刺した肉にかぶりつこうとしたフォックス。

爪;'ー`)y-「ああああああああああ」

しかしかぶりつく前にしゃがみ込んでしまった。

.

360◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:45:34 ID:bswVTS720

爪;'ー`)y-「断り切れなかった―!」

しかしすぐに立ち上がり、
肉にかぶりつく。

爪;'ー`)y-「(……狐は飼い主にはさからえないってことか)」

口を動かしながら心の中で呟くと、
視界の隅にランプがついていた。

流れる様にウインドウを出しメッセージを確認した。

爪'ー`)y-「(ブーンとシャキンにミルナとデミタス……か。
姫さんにも最初特にブーンを気にしてくれって言われてたし、
こりゃおれも行きますかね)」

ものすごい勢いで串に刺さった肉を口の中に入れているフォックス。

そしてすべてを食べ終わると、
残った数十本の櫛をしまいながら歩き始めた。





('A`)「なんかすごいディスられてた気がする」

ξ゚听)ξ「なに?」

('A`)「んー。いや、なんでもない」

先程まで試合や訓練が行われていた場所に集まっているVIPとNSのメンバー。
その周りには興味深げにそれを見る打ち上げの参加者たちが居た。

そして中央で仁王立ちするツンの横にはドクオが所在なさげに立ち、
その横には弟者がいる。

(´<_` )「四人か。思ったより少なかったな」

.

361◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:47:07 ID:bswVTS720

ツンの目の前には正座で項垂れている四人の男。

('A`)「ギコは別枠だからな」

ドクオが向けた視線の先では正座したギコがしぃに叱られていた。

(*゚ー゚)「どうして勝手なこと言うかなぁ」

(,,゚Д゚)「勝てると思ったんだぞゴルァ」

(*゚ー゚)「で、次でフサギコさんに負けたわけだけど」

(,,゚Д゚)「……ゴラァ」

(*゚ー゚)「ちゃんと最初に話し合ったでしょ!この件が終わったVIPに戻るって!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(*゚ー゚)「ちゃんと返事して!」

(,,゚Д゚)「……はい」

(*゚ー゚)「どうしてあんなこと言ったの」

(,,゚Д゚)「……全員に勝って華々しく復帰」

(*゚ー゚)「ギコくん?」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

(*゚ー゚)「ぎーこーくーん?」

(,,゚Д゚)「はい。ごめんなさい」

(´<_`;)「順調に調教されてるな」

('A`;)「お手本がツン、クー、トソンだからな」

(゚、゚トソン「え?私もですか?」

.

362◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:48:56 ID:bswVTS720

ξ゚听)ξ「ちょっとトソン、私の事も否定しなさい」

(゚、゚トソン「いえいえ」

('A`)「いやいや」

(´<_` )「いやいや」

( ´_ゝ`)「いやいや」

ξ゚听)ξ「あんたは黙って反省してなさい」

(*´_ゝ`)「はーい」

ツンから見て一番左側で正座をしている兄者が返事をしながら右手を上げる。

その横で正座しているモララーが呆れた顔をし、
その隣のジョルジュは笑っていた。

そして右端のショボンが声をかける。

(´・ω・`)「ツン、もうそろそろ」

ξ゚听)ξ「あんたが一番質が悪いのよ!」

(´・ω・`)「えー」

ξ゚听)ξ「『えー』じゃない!
『死んでも良い』なんて思いながら戦うなって何度言ったら分かるの!」

(´・ω・`)「でも」

ξ#゚听)ξ「でもでもだって言ってるんじゃないわよ!
当分一人になるな!
店の外に出る時は誰かと一緒!
いや、クーと行動を共にすること!
クーがいけない時はフサ!頼んだわよ!」

ミ;,,゚Д゚彡「わ、わかったから!」

(´・ω・`)「えー」

.

363◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:50:55 ID:bswVTS720

ξ#゚听)ξ「『えー』もクソも無い!!
個人行動は禁止!
これは決定だからね!
破ったらマッシロにも依頼して常に護衛を三人付けるようにするから!」

(;´・ω・`)「横暴だ!」

ξ#゚听)ξ「VIPとNSとマッシロと所属してないけど仲間であり友達でもある、
ここにいる皆の総意よ!」

(;´・ω・`)「総意って全員に聞いてないでしょ!?」

ξ゚听)ξ「異論のある者は挙手!」

大声を出しながら一回だけ周りを見るツン。

ξ゚听)ξ「よし!いない!
ここにいないメンバーが万が一反対してもここにいる全員が賛成なら総意よ!」

(´・ω・`)「『総意』って意味わかってる?」

ξ゚听)ξ「うるさい。
決定は決定だから」

(;´・ω・`)「ぶー」

ξ゚听)ξ「次!」

びくっと身体をふるわせるジョルジュ。

ξ゚听)ξ「モララー!」

( ・∀・)「え!?次おれ!?」

あからさまにほっとした顔をしたジョルジュと、
涼しげな顔の兄者。

.

364◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:51:52 ID:bswVTS720

ξ゚听)ξ「と見せかけて兄者!」

( ´_ゝ`)「へ?」

ξ゚听)ξ「本当は私が言うようなことじゃないけど、
言わせてもらうわよ」

一呼吸置くツン。
普段は見られないその行動に、
何人かが驚いた顔でツンの顔を見ている。

ξ゚听)ξ「本気を出す場所、間違えてんじゃないわよ」

( ´_ゝ`)!

兄者が目を見開き、自分を見下ろすツンの顔を見上げた。

ξ゚听)ξ「あんたのその手は、人を殺すための物なの?
違うわよね。
あんたの本気は、人の命を奪う為なの?
違うわよね。
それにあんた、その後ギルド抜けるつもりだったでしょう」

最後の言葉で兄者の眉間に皺が寄ったがそれを気にせずツンは続ける。

ξ゚听)ξ「ふざけるな」

ニヤリと笑ったツンを見て、驚く者と笑顔になる者。

ξ゚听)ξ「なに、あんたは私達の誰かが間違えてPKした時や、
自分の身や仲間を守るために最後の手段に出た者をギルドから追い出すつもりなの?」

( ´_ゝ`)「そんなわけがあるか!
だいたいそれは、今回のおれとは違うだろ!」

ξ゚听)ξ「一緒よ。
状況は違っても、
行動に至る経緯が違っても、
……後悔は同じ」

.

365◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:53:18 ID:bswVTS720

( ´_ゝ`)「!」

ξ゚听)ξ「それにね。
ずっと、思い出すのよ。
人がポリゴンに変わる、その瞬間を。
人が消える、その瞬間を」

( ´_ゝ`)「!」

ξ゚听)ξ「自分自身でしたことじゃなくても、
目の前で見てしまったら、
思い出す。
何度も何度も、
ずっと、思い出すの。
少なくとも、
今ここにいるやつらは、
そうなるような人達よ。
兄者もきっと、そうなるわ」

そこにいる全員が何も言わずツンの言葉に耳を傾けている。
中には顔を伏せている者、
必死に目をこする者もいる。

ξ゚听)ξ「……それでも私達は、笑う。
がんばって、がんばって、笑う。
忘れられなくても、眠れなくても、
隣にいる人と、笑う。
ここは、その為の場所」

じっと兄者を見るツン。
そんなツンを見る仲間達。

ξ゚听)ξ「でも、出来るだけそうしない為に、
そして、そんな人が少なくなればいいと思って私達は訓練してきた。
自分の力と相手の力を見極めるやり方を。
殺さない戦い方を。
本気で私達を殺そうとする相手を屈服させるやり方を。
今そこで正座してるうちのバカマスターと、
一応調査しとくとか言って今ここにいないバカマスターと、
隣にいるゲームバカと、
そして兄者、あんたも中心になって一緒に考えたでしょ」

.

366◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:54:29 ID:bswVTS720

( ´_ゝ`)「……ツン」

ξ゚听)ξ「それなのに、あんたはあいつを殺そうとして、
しかもギルドから消えようとした。
……ふざけないでよ」

( ´_ゝ`)「……ツン……。
……すまなかった」

ξ゚听)ξ「謝るのは、私にじゃない。
私なんかより、兄者の事を心配した人がいる。
わかってるでしょ?」

( ´_ゝ`)「……ああ」

ξ゚听)ξ「とはいってもせっかくあやまってくれたんだから」

笑みを浮かべながら軽く手を振るツン。
すると無骨なレイピアが右手に握られた。

(;´_ゝ`)「え?」

そしてそれは片手で持ち上げられると兄者の頭に振り落とされた。

(; _ゝ )「がふっ」

痛みや攻撃判定の無い衝撃だけとはいえその威力は兄者の許容を超え、

(´<_`;)「兄者――――!!!」

正座したまま横に倒れた。

ξ゚听)ξ「私はそれで許してあげる」

(; _ゝ )「は……い……」

ツンが再度手を振るとレイピアが消えた。

ξ゚听)ξ「さて、おつぎは……」

.
368◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:56:12 ID:bswVTS720

(;・∀・)!
  _
(;゚∀゚)!

ξ゚听)ξ「……ジョルジュ」
  _
(;゚∀゚)「は、はい!」

ξ゚听)ξ「気は晴れた?」
  _
( ゚∀゚)「!」

ξ゚听)ξ「私達がどんなに反対してもやらせてくれって言って対峙したんだから、
ちゃんとスッキリしたんでしょうね?」
  _
( ゚∀゚)「……ああ」

ξ゚听)ξ「もう、大丈夫なの?」
  _
( ゚∀゚)「ああ、心配かけたな。
もう、問題ない」

ξ゚听)ξ「そう。じゃ、よしにしてあげる」
  _
( ゚∀゚)「え!?まじで!?」

ξ゚听)ξ「……なによ。
あんたも一発食らいたかった?」

手を振る仕草をしようしたツンに被せるようにジョルジュが叫ぶ。
  _
( ゚∀゚)「何でもありません!ありがとうございます!」

ξ゚听)ξ「……まったく。
安心しなさい。
これから自分で深く落ち込むことになるから」
  _
( ゚∀゚)「へ?」

ξ゚听)ξ「で、モララー」

.

369◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:57:47 ID:bswVTS720

(;・∀・)「はい!
ごめんなさい!
マントをダメにしてごめんなさい!
素材取ってくるので許してください!」

いきなり土下座をするモララー。

それを見たツンは呆れたように一息ついた。

ξ゚听)ξ「それは分かってたからいいわよ。
いや、良くはないから素材の作製はしてよね。
で、それよりも問題があるってことは、
マントの事を持ち出して話の流れを作ろうとしたあんたが一番分かってるって事よね」

ツンの言葉に、モララーの肩が土下座したまま一度大きく上下した。

ξ゚听)ξ「渡してある『身代わり人形』、出して」

再度大きく揺れるモララーの肩。

隣で正座するジョルジュが驚いた顔でモララーを見る。

ξ゚听)ξ「だ、し、て」

(    )「……い、いえにおいてきちゃった」

ξ゚听)ξ「確認の為に今日の朝一回見せてもらったわよね。
そのあと出発して、今のここまであんたは帰る余裕は無かったはずだけど?」

(    )「…………」

ξ゚听)ξ「だ、し、て」

土下座した姿勢のまま顔だけ上げるモララー。

( ・∀・)「どうしても?」

ξ゚听)ξ「さっさとだせ」

.

370◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 14:59:08 ID:bswVTS720

( ・∀・)「……」

上半身を持ち上げて普通の星座に戻るモララー。
そして腰のポーチから黒い塊を出した。

それを見たVIPとNSのメンバーが息をのんだ。
  _
( ゚∀゚)「……モララー、おまえ、それ……」

ξ゚听)ξ「やっぱりね」

ツンも腰のポーチに手をやり、
一つの人形を取り出した。

それはツンの戦闘服を模したゴスロリチックな黒い服を着ていたが、
それ以外は普通に『色』が付いている。

ξ゚听)ξ「即死効果を一度だけ無効化する『身代わり人形』が炭化している。
つまり、使われたって事よね」

( ・∀・)「……助かったよ」

ξ゚听)ξ「気付いたのはいつ?」

( ・∀・)「ロマネスクに一撃食らった時になんか違和感あるなーと思いつつ転移して、
戻る途中で見たらこの状態だった」
  _
(;゚∀゚)「モララー!?」

ξ゚听)ξ「その状態で更にロマネスクと戦ったわけ?」

( ・∀・)「ああ」

ξ゚听)ξ「自分を一度殺した即死効果を持つ武器を持つ相手と?」

( ・∀・)「ああ」

ξ゚听)ξ「何の対策も取らずに?」

( ・∀・)「……ああ」

.

371◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:01:19 ID:bswVTS720

瞬間ツンの手に『レイピア』が握られ、
モララーの顔面を突いた。

システムにより顔に当たる寸前で切っ先は止まっているが、
衝撃波は顔面を襲う。
が、モララーは正座したまま耐えていた。

巻き起こった風が止んだ瞬間、更にツンの身体が動く。

ξ゚听)ξ「ふっ」

鋭い突きが再び顔面を狙い、その後すぐに肩と胸を突く。

レイピアが巻き起こす風が見守る仲間たちの間を吹き抜けた。
  _
(;゚∀゚)「ちょっ!ツ、ツン!」

ξ゚听)ξ「……」

巻き毛をなびかせ、レイピアを突き出した姿勢のまま動きを止める。

ξ゚听)ξ「……三発、ちゃんと避けれるじゃない」
  _
( ゚∀゚)「え?」

胸を狙ったレイピアはモララーの身体に当たってはいなかった。

ξ゚听)ξ「腕が落ちたわけじゃないなら良いわよ」

正座したまま上半身を捻っていたモララーは、
ツンがレイピアを引くと同時に体勢を戻す。

( ・∀・)「……ん」

ξ゚听)ξ「最初の一発を受けたのが、
作るのにレアアイテムをふんだんに使う人形を使ってしまったお詫びとか、
開発に死ぬほど苦労して、
今でも量産は出来ていないマントが破壊されたことへのお詫びとかなら別に良いわよ。
気にしてないから」

( ・∀・)「え?」

.

372◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:02:36 ID:bswVTS720

ξ゚听)ξ「私の作る装備は、持っている人を守るためのものよ。
それがその役目を果たしただけ。
それについてとやかく言うつもりは無いわよ。
ま、マントはちょっと違うけど。
弟者の防具はもちろん、
あんたの作るアクセサリーだってそのための物でしょ?」

( ・∀・)「ああ。そうだ」

ξ゚听)ξ「なら、わかるでしょ?そういうことよ」

( ・∀・)「……うん」

ξ゚听)ξ「で、…… ……ほら」

ウインドウを操作してレイピアを片付けた後に人形を取り出し、
それをモララーに投げるツン。

モララーの目の前に現れたトレードウインドウには『身代わり人形』と書かれている。

( ・∀・)「……へ?」

ξ゚听)ξ「?代わりの人形よ。とりあえずそれで我慢しなさい」

( ・∀・)「え?でも『身代わり人形』って量産できないんじゃ……」

ξ゚听)ξ「はぁ?」

( ・∀・)「え?」

ξ゚听)ξ「『身代わり人形』の作製条件は、
『裁縫』スキルのカンストと、派生の『刺繍』『染色』『機織り』をそれぞれ500以上にすること。
あとは核に『骸骨王の魂』を入れて、
『霊布』と『雲綿』を使えばいいだけなんだから簡単よ」

( ・∀・)「いや、その三つのアイテムが全部レアアイテム」

ξ゚听)ξ「?」

( ・∀・)「いや、その『なに言ってんのこいつ』って顔されても」

.

373◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:03:39 ID:bswVTS720

ξ゚听)ξ「『霊布』も『雲綿』も、今はレアドロップだけじゃないわよ?
『機織り』が600超えたらほぼ100%で作れるようになったし。
材料は農場と牧場で生産してるし」

( ・∀・)「はぁ!?」

ξ゚听)ξ「あれ?言ってなかった?」

( ・∀・)「聞いてねーよ!
で、でも『骸骨王の魂』はレアドロップだし、
骸骨王も中層のイベントボスだし」

ξ゚听)ξ「ええ。だからあれは持ち込みよ」

( ・∀・)「……へ?」

ツンの視線の先、
自分達を囲んでいるマッシロのメンバー達を見ると、
全員が慌てて腰のポーチから人形を取り出していた。

( ・∀・)「……うそん」

ξ゚听)ξ「中層と言っても下の方だし、
力押しで特殊攻撃が無いからパターンはめればそれほど強敵じゃないし」

('A`)「あー。おれかジョルジュあたり、ギコでもいいか。
そこら辺が一人一緒に行けば倒せるくらいには全員なってるな」

( ・∀・)「まじか!?」

('A`)「ああ。
それでおれも何個か『骸骨王の魂』ドロップして、
全部ツンに渡した」

( ・∀・)「で、でもあれのドロップ確率ってそんなに高くないだろ!?」

ξ゚听)ξ「フサの作った『ラッキーフォーチュンクッキー』で、
幸運値をバフっておくのよ。
そうすると六人中一人か二人はゲットできてるみたいよ」

( ・∀・)「……うそん」

.

374◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:05:36 ID:bswVTS720

ξ゚听)ξ「ま、最初に作った時はかなりのレアアイテムだったから、
メンバーのは隠蔽もかねて見た目を似せて作って、
一見ただのマスコットアイテムみたいにしてあったからオンリーワンアイテムだったけどね。
でも、そろそろ情報を流してもいいかしら?」

そういってショボンの顔を見るが、
眉間に皺を寄せていた。

ξ゚听)ξ「まだダメなの?」

(´・ω・`)「んー。
とりあえず作れるのがツンだけってのがね。
他にも作れそうな人の覚えある?」

ξ゚听)ξ「……知ってるところで『裁縫』カンストが三人いるけど、
『刺繍』ともかく『染色』と『機織り』もってのはいないかも」

(´・ω・`)「効果が『即死効果の一回だけ無効』とはいえ、
今出回ってるのは最高で『即死効果を高い確率で無効』で、
ツン作る人形の劣化版みたいな能力だから、
流石にちょっとどこまで盛り上がるか分からないんだよね」

ξ゚听)ξ「『即死効果』か……。
今のところ武器は超レアレベルでしか見つかってないし、
モンスターもそれほど多くは無いわよね?」

川 ゚ -゚)「アンデッド系のフロアボスクラスと、
この前見付かった蜂系の上位種。
それ以外だとエリアボスやイベントボスに時々いるくらいか」

ξ゚听)ξ「あー。『デスビー』と『クイーンデスビー』がいたか」

(´・ω・`)「うん。上層になって出てきたし、
今までの流れからナイトとキングも出てきそうだから」

ξ゚听)ξ「……なおさら……」

.

375◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:06:45 ID:bswVTS720

(´・ω・`)「販売はしたいね。
今のところは劣化版でどうにかなってるみたいだけど、
この先その幸運が続くとは思えない。
でも、それを生産できる唯一のプレイヤーがそのことによって狙われるのは避けたい。
ツン、当分はそれだけ作る生活になるかもよ?」

ξ゚听)ξ「それは……いやかも」

( ゚∋゚)「ならば、どうする?」

(´・ω・`)「製作方法は製作者の情報を隠蔽することを対価に情報屋に売るとして、
問題は販売の方だよね。
とりあえず製作者の偽装は当然するとして、
販売自体は折角できたコネを利用するのが良いかなって思ってるけど」

(´<_` )「コネ?」

(´・ω・`)「アインクラッド一の情報屋と、
攻略組の中では話の通じる方の血盟騎士団」

川 ゚ -゚)「!大丈夫なのか?」

(´・ω・`)「ここにいるみんなに何かが起きる様なことはしないよ。
幸いなことに血盟騎士団の副団長が半分プライベートで来てくれることになってるし、
いろいろ話してみるよ」

ξ゚听)ξ「さっき言ったこと、忘れてないでしょうね」

(´・ω・`)「……」

川 ゚ -゚)「ショボン」

(´・ω・`)「……善処します」

川 ゚ -゚)「わたしも同席しよう」

(´・ω・`)「え?」

ξ゚听)ξ「それがいいわね」

(´・ω・`)「え、いや」

.

376◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:07:47 ID:bswVTS720

ミ,,゚Д゚彡「料理の話の時はフサも一緒にするから」

川 ゚ -゚)「頼む」

(´・ω・`)「えー」

ξ゚听)ξ「信用されない行動をしてきたあんたが悪い」

(´・ω・`)「はい」

川 ゚ -゚)「しかし、そこを抑えたとしても販売をうち関係の店でしたら意味が無くないか?」

(´・ω・`)「そこでヘリカルちゃんが作ってくれたコネが輝く」

*(‘‘)*「ハイなんです!?」

(=゚ω゚)「ヘリカルに何をさせるんだよう!」

ミセ*゚ー゚)リ「はいはい二人とも落ち着いて」

自分の名が呼ばれて上ずった声を出すヘリカルと、
焦ったような声色でショボンに問いかけるぃょぅ。

(´・ω・`)「ヘリカルちゃんにしてもらうわけじゃないよ。
ヘリカルちゃんのおかげでコネが出来た、
ロッペンマイヤーさんの所で販売してもらえればと思ってる」

川 ゚ -゚)「……ああ。なるほど。
あそこのギルドは低層から最先端まで店舗や露店を出して手広くやってるからな。
血盟とも懇意にしてるようだし、
うちが卸して血盟経由で売らせれば、
カモフラージュとしては最高だな」

ミ;,,゚Д゚彡「なんとなくオーラが黒いから」

(;゚∋゚)「ふさ、思っても言わない方が良いこともある」

ξ゚听)ξ「で、話がいろいろそれたけど、モララー!」

( ・∀・)「はい!」

.
377◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:09:02 ID:bswVTS720

ξ゚听)ξ「今回で皆の服の補修に入るから、
素材収集宜しく。もちろん、マントの素材もね」

( ・∀・)「うっ!
……はい」

ξ゚听)ξ「あと、隣で落ち込んでるのをどうにかして」

( ・∀・)「はい?」
  _
( ゚∀゚)「……ごめん……モララー」

(;・∀・)「!」
  _
( ゚∀゚)「おれの……おれのわがままのせいで……」

(;・∀・)「い、いや、これはおれが未熟なだけで」
  _
( ;∀゚)「大事な仲間を死なせちまうところだったなんて」

(;・∀・)「ジョルジュ、落ち着け。
深呼吸しよう深呼吸」
  _
( ;∀;)「ごめんモララー、ごめんモララー」

(;・∀・)「泣き出した!
人の話聞かない!
メンドクサイのキター!
おいツン!」

ξ゚听)ξ「泣き出すと長いのよねー」

川 ゚ -゚)「めんどくさいな」

('A`;)「(うわぁ……)」

(´・ω・`)「(二人とも人の事は言えないんじゃ……)」

じろっとドクオを見るツンと、ショボンを見るクー。

('A`;)「なんでもありません」
(;´・ω・`)「なんでもないです」

.

378◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:10:24 ID:bswVTS720

(;・∀・)「なんでもいいからこいつどうにかして!」

ξ゚听)ξ「ジョルジュが元に戻るまで一緒に居るのが、
今回のあんたの行動に対するペナルティよ!」

(;・∀・)「ひでぇ!」
  _
( ;∀;)「モララーああああああああぁぁぁぁぁ」

(;・∀・)「うぜええええええぇぇぇぇぇぇ!」

泣きながらモララーに抱きつくジョルジュと、
涙でぐしょぐしょに濡れた顔から逃れようと必死のモララー。

その二名を除いてほのぼのとした空気が流れる中、
黙って立ち上がろうとした兄者にツンの蹴りが炸裂した。






( ´_ゝ`)「うー」

(´<_`;)「あれは兄者が悪い」

ξ゚听)ξ「素知らぬ顔して立ち上がろうとするからよ」

いまだ盛り上がる宴会。
その片隅に設置された木のテーブル席に彼らは座っていた。

( ´∀`)「見事に後頭部に決まってたもな」

('A`;)「攻撃無効の衝撃波でもぶっ飛ぶんだな」

(;゚∋゚)「流石ツンとしか言いようがない」

ξ*゚听)ξ「褒めても今度の服のデザインは変えないわよ」

.

379◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:11:23 ID:bswVTS720

( ゚∋゚)「褒めてないから変えてくれ。頼む」

ミ,,゚Д゚彡「ヒマワリだから」

(;゚∋゚)「許してくれ……」

川 ゚ -゚)「似合うと思うがな」

ξ゚听)ξ「ねー。ま、モチーフはモチーフよ。
出来てのお楽しみ」

(;゚∋゚)「許してくれ……」

頭を抱えたクックルを見てそこにいた7人が笑みを浮かべながらそれぞれに飲み物を口にする。

( ´_ゝ`)「……で、ブーンとシャキン達はどこいってんだ?」

ξ゚听)ξ「知らない。
とりあえず帰ってきたら問い詰めるつもりだけど」

ミ,,゚Д゚彡「フィレンクトと一緒にアジトに行くって言ってたから」

(´<_` )「それだけに、ここまで時間がかかるか?」

( ´∀`)「そういうこともなね」

川 ゚ ?゚)「一応フォックスたちに後を追うよう依頼したが」

( ´_ゝ`)「ブーンだけならともかく、シャキンがいるなら撒かれるか見付けられないか」

( ゚∋゚)「しかし、いったい……」

('A`)「……無事に帰ってくるなら、何でもいいよ」

ぼそりと呟いたドクオに、全員が目を向けた。

('A`)「ブーンが敵に回るとか、
おれ達が危機に陥るようなことをシャキン達がするとか、
そんなことがあるわけない。
言わなくていいことは言ってないだけだろ。
だから、無事に戻ってくるならそれでいい」

.

380◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:12:27 ID:bswVTS720

そういってお茶をすするドクオ。

(´<_` )「……そうだな」

弟者の呟きは全員の思いと一緒だったのか、
全員が少しだけ笑みを見せた。

だがそんな中、一人ツンだけは一瞬だけドクオを鋭い視線で見ていた。





(‘_L’)「……やはりここにもいませんね」

大きな木の中にある隠れ家。
フィレンクトが開けた扉からシャキン、ブーン、デミタスが入り、
ミルナが扉に身体を半分だけ入れて外を見張っている。

(‘_L’)「私が思い当たるのはここで最後です。
やはりいくら彼でも共通の隠れ家には戻ってこないかと……」

(´・_ゝ・`)「ま、そうだろうな」

隣にいるシャキンを見るデミタス。

(‘_L’)「マタンキの居場所を見つけたい気持ちは分かりますが、
流石に今日はどこか自分だけの隠れ家に潜伏しているかと」

(`・ω・´)「……悪いな。付き合わせて」

(‘_L’)「それは別にいいのですが……」

( ^ω^)「シャキン、ちゃんと言った方が良いと思うお」

(`・ω・´)「ブーン」

( ^ω^)「本当にそうなのか僕も気になるお」

(`・ω・´)「……」

(‘_L’)「?」

.

381◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:13:25 ID:bswVTS720

(´・_ゝ・`)「シャキン、フィレフィレには協力してもらった方が良いだろ?」

(`・ω・´)「……」

(;‘_L’)「デミタスさん、フィレフィレはその……」

(`・ω・´)「そう、だな……」

( ^ω^)「フィレフィレさんは信用できるお」

(´・_ゝ・`)「ブーンの方が喋るな」

( ^ω^)「そんなことないお」

( ゚д゚ )「ツンに問い詰められてもか?」

(;^ω^)「……言わないお」

(´・_ゝ・`)「無理だな」

( ゚д゚ )「無理だな」

(;^ω^)「おー」

(´・_ゝ・`)「それに、ここに来ることをドクオには連絡入れてるんだろ?」

(;^ω^)「それは最初シャキンに声をかけられた時に、
本当は一緒に来たがってたから一応報告を入れてるだけだお」

(´・_ゝ・`)「なんだつまらん」

( ゚д゚ )「そっか。ブーン達に声かけた時にデミタスはフィレフィレに声をかけに行ってたか」

(´・_ゝ・`)「ブーンしかいなかったから、ドクオには声かけなかったのかと思った」

(;‘_L’)「色々と微笑ましい会話のような気がしますが、
とりあえず私の名前はですね」

(`・ω・´)「そう……だな。
フィレフィレ。聞いてもらえるか」

(;‘_L’)「あ、はい。聞くのは良いんですが私の名前をですね」

.

382◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:14:26 ID:bswVTS720

(`・ω・´)「ここ、今もう使えるのはフィレフィレとマタンキだけか?」

(;‘_L’)「え、あ、そう……ですね。
あとデレも入れますが」

(`・ω・´)「なら大丈夫か。
マタンキも来ないだろうしな」

(´・_ゝ・`)「少しは落ち着いたか?」

(`・ω・´)「ああ。すまなかった。
ミルナ、警戒はもういいからドアを閉めてこっちに来てくれ。
あと、外で見ている狐にも来るように言ってくれ」

( ゚д゚ )「ああ。
おい!フォックス!出て来い!」

爪'ー`)「……あー。やっぱり見付かってたか。
だからいやだって言ったのに」

ミルナが声をかけると茂みから出てくるフォックス。
黒いマントを外しながら寄ってきた。

( ゚д゚ )「……一人か?」

爪'ー`)「ああ。込み入った話になりそうな気がしたから他のは帰しておいた。
今頃宴会に合流してるだろ」

フォックスが喋りながらドアをくぐる。

(`・ω・´)「クーか?」

爪'ー`)「黙秘権を要求する」

(`・ω・´)「狐は姫には従うもんだ」

爪'ー`)「その姫を従えてるそっちの若様に関わってるんじゃないのか?
良いのか?聞いて」

.

383◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:15:34 ID:bswVTS720

(`・ω・´)「どちらにせよツンから話は流れるだろ」

チラリとブーンを見るシャキン。

(;^ω^)「僕はツンに言わないお?」

爪'ー`)「言葉の最後にクエスチョンマークが付いてるぞ」

(;^ω^)「おー」

ミルナが扉を閉めて部屋の中心に移動する。
5人は、その間にそれぞれ椅子に座っていた。

(`・ω・´)「さて……。っておいフォックス」

爪'ー`)y‐「ん?」

(`・ω・´)「なにさも当たり前のように料理をテーブルに並べてるんだ」

爪'ー`)y‐「あれ?食べない?」

(`・ω・´)「ちゃんと全員分あるのか?」

爪'ー`)y‐「そこはぬかりなく」

(`・ω・´)「ならよし」

テーブルの上に並べられる串焼きの数々と飲み物。

( ^ω^)「串焼きメインだお」

爪'ー`)y‐「ほかのもあるぞー」

追加して並べられるたこ焼きのようなものや焼きそばに見えるもの。

.

384◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:16:38 ID:bswVTS720

(*^ω^)「おっおっお」

( ゚д゚ )

爪'ー`)y‐「こっちみるな」

更に料理を出すフォックス。

爪'ー`)y‐「ちゃんと甘いものも持ってきた」

(*゚д゚ )

爪;'ー`)y-「だからこっちを見るな」

(´・_ゝ・`)「いただくぞー」

串焼きを手に取ったデミタス。

爪'ー`)y-「くえくえー」

それを皮切りにそれぞれに手を伸ばしはじめる。

爪'ー`)y-「ほれ、あんたも」

(‘_L’)「……いただきます」

さいごにフィレンクトが手を出し、
全員が少しずつ会話をしながら食事を楽しんだ。




.

385◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:17:41 ID:bswVTS720




(`・ω・´)「さてフィレフィレ……と、ついでにフォックス」

(‘_L’)「……はい」

( ゚д゚ )「(お、諦めた?)」

(´・_ゝ・`)「(諦めたか?)」

(;^ω^)「(フィレンクトさん……ごめんなさいだお)」

爪'ー`)y‐「おれはついでかい。
フィレン…フィレとの差が酷くないか?」

(;‘_L’)「不通にフィレンクトと呼んでいいんですよ!」

爪'ー`)y‐「いや、なんかそこの二人の視線が怖かった」

(´・_ゝ・`)

( ゚д゚ )

(`・ω・´)「もう一度、しっかりとマタンキの顔を見たかったんだ」

(‘_L’)「今の流れは無視ですか!?
で、マタンキの顔を……ですか?」

(`・ω・´)「……ああ」

(´・_ゝ・`)「(やるなフィレフィレ)」

( ゚д゚ )「(見込んだ通りだ)」

(;^ω^)「(二人ともフィレンクトさんをツッコミ役として育てるとか本気かお?)」

爪'ー`)y‐「(この御人もなかなかな人だな)」

.

386◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:18:50 ID:bswVTS720

(‘_L’)「何故ですか?
(言いたい!『一目惚れですか?』って言いたい!
でものこの空気が言わせない!
でも『フィレフィレ』って呼ばれてるしそれくらいいいのか!?
空気を読む自分が恨めしい!)」

(`・ω・´)「それはもちろん一目惚れとかそんな話じゃなくて」

(‘_L’)「誰もそんなこと思いませんよ!
(言われたー!
ボケて良かったのかー!)」

(´・_ゝ・`)「(感じる!空気を読んでボケない性格を!)」

( ゚д゚ )「(それこそこのメンバーに足りないツッコミの資質!)」

(;^ω^)「(絶対この二人変なこと考えてるお)」

(`・ω・´)「実は、前に会ったことが……、
いや、見たことがある気がしたんだ」

(‘_L’)「マタンキを?」

(`・ω・´)「ああ」

(‘_L’)「……で、それが?」

(`・ω・´)「今日マタンキがショボンと戦いながら叫んでいたことを、
ショボンが撮っておいた記録映像で確認した」

(‘_L’)「はい」

(`・ω・´)「……おれがあいつを見た覚えがある瞬間が、
あいつがああなっちまった原因に繋がっているかもしれない」

(‘_L’)「……はい?」

部屋の中に奇妙な沈黙が訪れた後、シャキンは更に話を続けた。





.

387◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:19:57 ID:bswVTS720






(;´∀`)「これはいったいどういう状態もな?」

ミ,,゚Д゚彡「……」

▼;・ェ・▼「くぅーん」

新しく購入した森林エリアにやってきたモナーとフサギコ。

理由はビーグルを呼びに来たのだが、
目の前に広がる状況に言葉を無くしていた。

ミ,,゚Д゚彡「モナー?」

(;´∀`)「ワ、ワールドクエストで彼らのいたエリアが火に包まれることが分かって、
その前にここに避難させたもな。
でもツンに知られると危険だったもなから、
ここに彼らがいるのを知ってるのはショボンとクックルとドクオだけで、
後は何人かのテイマー仲間だけもなけど……」

▼;・ェ・▼「……」

困り顔のビーグルをそっと抱き上げるモナー。

ミ;,,゚Д゚彡「……モナー?」

(;´∀`)「い、いや、モナーは何もしてないもなよ?」

.

388◆dKWWLKB7io :2018/09/24(月) 15:20:48 ID:bswVTS720

(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)
(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)
(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)
(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)
(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)
(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)
 ∩∩
ζ゚听)ζノ 从∀゚ 从
(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)
(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)
(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)
(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)
(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)
(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)(U;^ω^)

困惑気味なワンワンオーの群れの中心で、
ハインがデンツーレに人生相談をしているという謎の状況に、
なすすべもなく見守る事しかできない二人だった。

ミ;,,゚Д゚彡「……モナー?」

(;´∀`)「なにがどうしてこうなったもな?」



 ∩∩
ζ゚听)ζノ 从∀゚ 从「どうしたら良いと思う?」






第二十五話








.

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