854◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:22:48 ID:V0flVRTk0

( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。




第二十四話

crossing field  後編 ? way of life -










.

855◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:24:23 ID:V0flVRTk0

25.



  _
(  ∀ )「モララーあああああああああ!!!!!!!!!!」

ジョルジュの叫びが響く中、砕け散ったポリゴンは全て消え去った。
  _
(  ∀ )「モラ……ラー…… ……」

身体を横たえたまま大地を拳で叩くジョルジュ。

( ФωФ)「ふむ。意外とあっけないモノであるな」
  _
(  ∀゚)「!?」

鎗を杖の様に持ち、つまらなそうにジョルジュを見ているロマネスク。

( ФωФ)「もう少し手応えがあるのかと思っていたが、
所詮はデジタル。
モンスターを倒すのと違いが無かったのである」
  _
(  ∀ )

( ФωФ)「しかし、折角の記念がこれでは台無しである。
ジョルジュ、今のは無かった事にしてもよいであるか?
即死発動で死ぬ様な雑魚が一人目など、
覚えていたくないのである」
  _
(# ∀ )「           ケルナ」

( ФωФ)「?なんであるか?」
  _
(#  ∀ )「フザケルナ!!!!!!」

両手剣を杖のようにして立ち上がるジョルジュ。
  _
( ゚∀゚)「ヒール!」

いつの間にか手にしていた回復結晶でHPを全回復させる。

.

856◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:25:36 ID:V0flVRTk0

( ФωФ)「ほぅ……意外と冷静であるな」
  _
( ゚∀゚)「この結晶はモララーから貰ったもんだ!
この結晶にかけて!おれは!おまえを!」

( ФωФ)「形見であるか?
死ぬ前に良い思い出が出来て良かったであるな」
  _
( ゚∀゚)「黙れロマネスク!」

両手剣を振り被るジョルジュ。

( ФωФ)「!ヒール!」

いつの間にか手にしていた結晶でHPを全回復させるロマネスク。

その頭上に振り下ろされた両手剣を鎗で受け止めた。

( ФωФ)「ふむ。やっと本気になったようであるな。
雑魚は雑魚なりに良い仕事をしてくれたである」
  _
(#゚∀゚)「ロマネスク!」

( ФωФ)「良いである良いである。
本気のお主を殺してこそ、吾輩の始まりにふさわしいというもの」
  _
(#゚∀゚)

( ФωФ)「はっはっはっはっはっはっはっ」

弾かれる両手剣。

後退したジョルジュを見ながら器用に鎗を振り回すロマネスク。
そして笑みをこぼしながら改めて鎗を構えた。





.

857◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:29:05 ID:V0flVRTk0

26.




茂みから飛び出した影はトソンとミルナを襲撃した。

(゚、゚;トソン「なっ」

( ゚д゚ )「ちっ!」

そして一撃攻撃をするとすぐに茂みに戻った。

頭の中で時間を計測しつつ、
現れる予定の兵隊蟻に意識を向けていたトソンが腕を切られていた。

川 ゚ -゚)「トソン!」

(゚、゚トソン「大丈夫!損傷は微量です!
対兵隊蟻に戻ります!」

満タンだったHPバーの一番先端を点滅させながらトソンが叫ぶ。

( ゚д゚ )「おれは大丈夫だ!」

( ゚∋゚)『!』

注意を周囲に向けたミルナの目の前で兵隊蟻が実体化する。

駆けだしたクックルがミルナの横に移動し、
兵隊蟻が突き出した槍を弾いた。

( ゚д゚ )「助かった!」

( ゚∋゚))

クックルは頷きながら駆けだす。

.

858◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:32:29 ID:V0flVRTk0

その視界の端で茂みから飛び出した二つの影が、
後方を気にしつつ前方に意識を向けているデミタスに向かっているのを見た。

(;゚∋゚)

川 ゚ -゚)「左を頼む!」

右にクーの気配を感じ、
迷うことなく左に向かうクックル。

デミタスを左右から狙う影。

その剣をクックルの棍とクーの薙刀がリーチを最大限に利用して弾いた。

(´・_ゝ・`)「助かった!」

<_プー゚)フ「スイッチいくぞ!」

(´・_ゝ・`)「おう!」

エクストの放った単発重攻撃が巨大蜘蛛を後退させる。

その隙に向かって走り出しているデミタス。

<_プー゚)フ「どうなっている!?」

川 ゚ -゚)「襲撃者を二名確認!」

<_プー゚)フ「先にそっちを叩くか!?」

川 ゚ -゚)「無理だ!」

周囲を見回して襲撃者が見えないことを確認するエクスト。

<_プー゚)フ「ちっ」

川 ゚ -゚)「エクストは蜘蛛に集中してくれ!
デミタスとクックルで場の管理を頼む!」

(;゚∋゚)!?

.

859◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:34:12 ID:V0flVRTk0

川 ゚ -゚)「後方からの私の指示に対応した動きを取られてしまう以上、
現場で臨機応変に対応した方が良い!」

話しながら走り出すクー。

川 ゚ -゚)「ミルナ!3秒後一撃でスイッチ!
トソン!右の茂みに注意しつつ蟻から距離をとれ!
二匹を出来るだけ近寄らせて三人でローテを回す!」

( ゚д゚ )「心得た!」

(゚、゚;トソン「やってみます!」

(;´・_ゝ・`)「おい、大丈夫か?」

(((;゚∋゚)))

エクストとスイッチをしたデミタスがクックルのそばに駆け寄ってきて話しかける。

そしてその問いかけにただ首を横に振るクックル。

(;゚∋゚)「(襲撃者が二人ならこのフォーメーションでどうにかなる。
だが……)」

(;´・_ゝ・`)「ふざけるなてめえら!」

攻撃を避けて後方に飛んだエクストの背後に向かっている影に向かって走り出すデミタス。

だがクックルの先で、クー達三人は二人の襲撃者と二匹の兵隊蟻を相手にしている。

(;゚∋゚)「(敵は三人!いやそれ以上!)」

クー達に向かって走り出そうとするクックル。

川;゚ -゚)「クックル!デミタスを!」

(;゚∋゚)!

襲撃者の剣を受け止めているデミタス。
その彼を狙ってもう一人の襲撃者が駆け寄っているのに気付き、
慌てて四人目の襲撃者を妨害するために走るクックル。

.
861◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:37:38 ID:V0flVRTk0

(;゚∋゚)「(四人目!)」

クックルの棍が襲撃者の剣をギリギリに弾いた。

(   )「っ」

こちらをちらっと見た後再び茂みに走る襲撃者。

デミタスを襲っていた襲撃者も茂みに戻っている。

川;゚ -゚)「全部で四人か……?」

クー達を襲っていた襲撃者も茂みに戻っていた。

同じ服装、同じ片手剣を操る襲撃者達。
プレイヤーを示すカーソルは最初から全員オレンジで、
ここにいる六人は襲撃者の個体識別が出来ていない。

(;゚д゚ )「シャキンかショボンが居れば判別はしてくれそうだが……」

ミルナの呟きは全員が心の中で思っていたことだった。

<_プー゚;)フ「おい、どうするよ」

クーに駆け寄るエクスト。
ミルナとトソンはそれぞれに兵隊蟻と対峙している。

川;゚ -゚)「まずは兵隊蟻を一匹潰す。
一匹残ってれば追加は出てこないはずだからな。
その間に蜘蛛を倒す。
襲撃者の対応をしつつだから時間はかかるし危険度は上がるが……」

(;゚∋゚)「(通常の敵なら、おれ達6人なら大蜘蛛が居ても雑魚敵を10体くらいまで対処できる。
多分プレイヤー相手でも今襲ってきている奴らのレベルなら8人くらいは大丈夫だ。
でも、モンスターとプレイヤーを同時に対応するのがこんなに難しいとは……。
ショボン、いや、クーの指揮がちゃんと通ればまだ勝機はある……が……)」

<_プー゚;)フ「……それしかねえか」

.
863◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:39:06 ID:V0flVRTk0

川;゚ -゚)「みんな!聞こえたか!」

(;゚д゚ )「分かった」

(゚、゚;トソン「了解しました」

(;゚∋゚)))!

(;´・_ゝ・`)「エクスト!」

<_プー゚)フ「おう!」

(´・_ゝ・`)「スイッチ!」<_プー゚)フ

大蜘蛛に対応する二人とクックルを見てから走り出すクー。

川 ゚ -゚)「トソン!まずはそいつを倒す!」

(゚、゚トソン「はい!」

デミタスの三連重攻撃が綺麗に決まり、
硬直をおこしながら後退りする大蜘蛛。

そのタイミングで走り寄るエクストと退避するデミタス。

その二人に恐ろしい速さで駆け寄る二つの影。

川;゚ -゚)「デミタス!エクスト!」

それぞれに横からの襲撃者からの攻撃に対応するデミタスとエクスト。

振り下ろされた片手剣をそれぞれの武器で受け止めた。

(;´・_ゝ・`)「硬直解けギリギリとか!」

<_プー゚;)フ「まじうぜえ!」

川;゚ -゚)「狙いは蜘蛛だーーーー!!」

慌てて踵を返したクーの背後ではミルナとトソンが兵隊蟻と戦闘しており場の移動が出来ない。

.

864◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:40:38 ID:V0flVRTk0

巨大蜘蛛が襲撃者の刃を受け止めているデミタスとエクストに向かって長い脚を突き出す。

川;゚ -゚)「よけろーーーーー!!!!」

(#゚∋゚)『!!!』

巨大蜘蛛の懐に潜り込んだクックルが、
単発重攻撃をその腹に打ち込んだ。

巨大蜘蛛「gyugyaaaaaaaa!!!」

音にならない雄叫びをあげで巨大蜘蛛が横に倒れた。

剣技発動後の硬直をで立ち止まるクックル。

そのとき、クー達の耳に声が響いた。




.

865◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:41:59 ID:V0flVRTk0

27.




フィレンクトの槍をシャキンが盾で受け止めたその時、
黒い影が二人に向かって飛び込んできた。

(`・ω・´)!

(;‘_L’)!

咄嗟に後方に飛ぶシャキンとフィレンクト。

先程まで二人のいた場所に、
二人の間ほぼ中央に立つ黒影が、
短刀を構えた。

(‘_L’)「……ミセリ……」

(`・ω・´)「ミセリ」

黒一色の忍び装束に同じく黒いマントを付けたミセリだった。

ミセ*゚ー゚)リ

(;‘_L’)「どうやってここに……」

(`・ω・´)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「……」

(`・ω・´)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「……」

(`・ω・´)「……」

(;‘_L’)「……ミセリ」

.
867◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:44:26 ID:V0flVRTk0

(`・ω・´)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「……」

(`・ω・´)「なあ、ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ「なに?シャキン」

(`・ω・´)「武器を向ける相手は、それで正解なのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「ええ。間違っていないわ」

(`・ω・´)「そうか」

二人の中央に立ち、シャキンを見るミセリ。
そして彼女の持つ短刀は、シャキンに切っ先を向けていた。

ミセ*゚ー゚)リ「5秒あげる。転移結晶でどこかの街に飛んで」

表情無く、冷たい瞳でシャキンを見ている。

(`・ω・´)「……おそらくこの近くにショボンが居るはずだ。
ここを片付けてから、向かわなければならないから無理だ」

ミセ*゚ー゚)リ「逃げてから向かえばいいでしょ」

(`・ω・´)「タイムロスがもったいない。
それに今このエリアがどこかもわかっていないからな、
一度出たら戻れるか分からないだろう」

ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫、来れるわよ。
時間は少し、かかるかもしれないけど」

(`・ω・´)「じゃあ無理だな」

ミセ*゚ー゚)リ「死にたいの?」

(`・ω・´)「死なないさ」

.

868◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:46:33 ID:V0flVRTk0

ミセ*゚ー゚)リ「2対1でも?」

(`・ω・´)「死なない」

ミセ*゚ー゚)リ「そう……」

言葉がシャキンに届くと同時にミセリの刃がシャキンを襲う。

(`・ω・´)「!」

一撃目は盾で防ぐシャキン。

しかしその動きを読んでいたミセリは弾かれる反動を利用して体を回転させ、
盾の側面に回り込んでシャキンを攻撃した。

ミセ*゚ー゚)リ

(`・ω・´)「くっ!」

盾が間に合わないと判断したシャキンは片手剣で短刀を弾く。

ミセ*゚ー゚)リ

(`・ω・´)「はっ!」

そして出来た隙に盾を構え直す。

ミセ*゚ー゚)リ

ミセリは盾を蹴り、大きく弧を描きながら後方に宙返りをして距離をとった。

(;`・ω・´)「おっと」

衝撃でバランスを崩したシャキンだったが、
すぐに体勢を立て直して盾を構えた。

ミセリは着地と同時に短刀を構えている。

(;‘_L’)「ミ、ミセリ!」

.

869◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:48:36 ID:V0flVRTk0

駆け寄るフィレンクト。

表情無く戦っていたミセリがほんの少しだけ表情を変えた。

ミセ*゚ー゚)リ「フィレフィレ……」

それは微笑みのようでもあり、
悲しみのようにも見えた。

(;‘_L’)「何故ここに!
貴女には嘘の情報を渡していたのに!」

ミセ*゚ー゚)リ「そんなウソくらい、分かる」

(;‘_L’)「それに貴女は私達をスパイしていたはず!
何故私を守るような」

ミセ*゚ー゚)リ「分からない?」

(‘_L’)「え?」

ミセ*゚ー゚)リ「私は、女だから」

(‘_L’)「ミセリ……」

ミセ*゚ー゚)リ「フィレンクト……」

(`   ´)「うをおおおおおおおおお!!!!!!!」

突然の叫び。

ミセ*゚ー゚)リ!

(‘_L’)!

エリアに響くシャキンの声。

(` ω ´)「本気かミセリ!」

.

870◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:50:15 ID:V0flVRTk0

ミセ*゚ー゚)リ「……私はいつでも本気」

(` ω ´)「本気でおれ達を裏切るというのか!」

ミセ*゚ー゚)リ「私は、私を裏切らない。
私は、私の大事な人を、守りたい。
それだけ」

(` ω ´)「おれ達の敵になるつもりか」

ミセ*゚ー゚)リ「……だから、逃げて」

(` ω ´)「『おれ達』の、敵になるつもりなのか!」

ミセ*゚ー゚)リ「私は、フィレフィレの味方。
もちろん、殺したくなんかない。
だから、逃げて。今ならまだ間に合うでしょ」

(` ω ´)「おれも言ったはずだ。
今ここを離れるわけにはいかない。
ショボンが待ってるんでな」

ミセ*゚ー゚)リ「……もう、死んでるかもよ」

(` ω ´)「ミセリ……貴様……」

ミセ*゚ー゚)リ「貴方達が思っているよりも、
ANGLERは用意周到にこの作戦を始めている。
私もついさっきまで知らなかったことが沢山ある」

(‘_L’)「ミセリ……」

ミセ*゚ー゚)リ「……狙われたことが、不運だったの。
だから、せめて生き残るチャンスのあるシャキンだけでも」

(` ω ´)「ふざけるな!
おれ達は誰も死なない!
死なせやしない!」

.

871◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:52:42 ID:V0flVRTk0

ミセ*゚ー゚)リ「……そう」

武器を構えるミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「もう、逃がしてあげられないかもしれないよ」

(‘_L’)「……ミセリ、良いのか」

その横でやりを構えるフィレンクト。

ミセ*゚ー゚)リ「……シャキン、今ならまだ間に合う」

(` ω ´)「思い上がるなよ。
お前が一人や二人増えたところで、
戦闘を鍛えてきたおれに勝てると思うな。
穏便に済まそうと思ったが、
命乞いさせてやるよ。
殺すまではしないが、
殺された方がましだと思わせてやる」

ミセ*゚ー゚)リ「……思い上がりは、どっちよ」

(‘_L’)「いやミセリ、確かに彼は強い。
心も、戦闘も」

ミセ*゚ー゚)リ「……わかってる。でも、二人なら」

「いや、四人だ」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

(も)「おい、お前も出て来いよ」

木陰から現れた男。

片手剣を肩に担ぎ、
ニヤニヤと笑っている。

.

872◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:54:08 ID:V0flVRTk0

(り)「お、おい、いいのか?」

そして男が出てきた位置とは全く違う場所からも、
一人の男が現れる。

こちらは槍を持ち、
先の男に比べると腰が引けているようだった。

(‘_L’)「お、お前達!
二人も何故ここに!」

(も)「ロマネスクが、
お前は裏切っているんじゃないかと心配してたんだよ。
だがまさか……」

ちらりとミセリを見る男。

(も)「VIPのスパイをこちらに引き込んでいるとはな。
ロマネスクも喜ぶんじゃねえか」

いやらしい笑いを見せる男。

ミセリは嫌悪を表情にあらわすが、
すぐに目を伏せた。

(り)「な、なあ……。
本当に出ていいのか?」

(も)「構わねえよ。
さっきのこの姉ちゃんの攻撃は本物だった。
演技には見えねぇ。
もしものことを考えて俺とお前の二人が付いていたが、
これなら四人で攻撃した方が早い」

(り)「それはそうだけど……」

ミセ*゚ー゚)リ「私はシャキンを殺すつもりなんて!」

(も)「そいつを生かしておけば、
お前が裏切ったことはそこから漏れるぜ」

.

873◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:57:38 ID:V0flVRTk0

ミセ*゚ー゚)リ!

(も)「だが、ここでそいつを殺しておけば、
俺達が喋らない限り誰も知らない。
殺したのはおれ達だってことに出来る」

ミセ*゚ー゚)リ「それは……そうだけど……」

(も)「もちろんその対価はいただくけどよ」

舐める様にミセリの身体を見る男。

ミセ*゚ー゚)リ!!

(り)「お、俺も、それなら言わない……」

(;‘_L’)「お、お前達!」

(も)「あんただって、そいつを殺したのは自分だって言っておきたいだろ?」

(‘_L’)「そ、それは……」

(も)「あとでゆっくり話そうぜ。
ミセリちゃん」

(り)「お、俺も」

ミセ*゚ー゚)リ

顔を伏せながら横を向くミセリ。

その間に二人の男はフィレンクト達の横に立ち、
武器を構えた。

(も)「俺達三人で、あいつの動きを封じてやるよ。
おい!」

ミセリの横に立った男が武器を構えた。

.

874◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 21:59:49 ID:V0flVRTk0

(り)「わ、わかった」

フィレンクトの横でもう一人の男が武器を構える。

ミセ*゚ー゚)リ「シャキン……ごめん」

ミセリが悲し気に短刀を構えた。

(‘_L’)「……それしか、ありませんね」

意を決した様にフィレンクトが武器を構える。

(` ω ´)「やられてたまるか!」

腰のポーチから青い瓶を二つ取り出すシャキン。

(も)「回復なんてさせねえよ!」

走り出す男。

(り)!

それにつられる様にもう一人の男も走り出し、

ミセ*゚ー゚)リ!

(‘_L’)!

間髪を入れずミセリとフィレンクトも駆け出した。

(`・ω・´)

そのすぐ後に、ポリゴンが砕ける音が、エリアに響いた。





.

875◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:05:12 ID:V0flVRTk0

28.




( ´∀`)「お客扱いしてくれるのは嬉しいもなね」

(θ)「招かれざる客って奴だがな」

エリアに悠然と現れたモナーに対し、
片手剣の男がビロードとぽっぽへの道を塞ぐように移動した。

( ´∀`)「そのままどこかに行ってくれると更に嬉しいもなけど」

立ち止まるモナー。

(θ)「それは出来ない相談だな。
お前達はそこの二人をそれぞれ捕まえてろ。
後ろから誰か来るかもしれないから注意しろよ」

(る)「あ、ああ」

(Ω)「分かった」

( ><)「も、モナーさん!」

(*‘ω‘ *)「一人じゃ危険っぽ!」

(る)「こ、こっちにこい!」

(;><)「や、やめるんです!」

(Ω)「お前はこっちだ!」

(*‘ω‘ *;)「触るなっぽ!」

片手剣の男の指示に従い、
曲刀を持つ男と槍を持つ男がビロードとぽっぽを離し、
それぞれに武器を向けた。

.

876◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:07:00 ID:V0flVRTk0

( ´∀`)「知恵はあるみたいもなね。
でも、こんなことに参加している時点でバカもな。
人殺しをしようなんて、大バカもなね」

(θ)「どうせ死ぬんだ。
誰が殺そうが一緒だ。
それに本当に殺すのは『ナーヴギア』だ」

( ´∀`)「リアルの世界での肉体の死はそうもな」

(θ)「あ?」

( ´∀`)「でも、今ここでお前が二人を殺すなら、
精神の死は、心を殺したのは、お前もな。
それは『殺人』もなよ」

(θ)「はっ。別にいいさ。どうせ俺もこの世界で死ぬんだ。
その前に殺人者になろうが、どうでもいい」

( ´∀`)「攻略組が頑張ってくれているもなよ。
中層エリアでも攻略組を支えるために頑張っている人がいるもな。
この世界を、終わらせるためにみんな頑張っているもなよ」

(θ)「帰られる保証なんかない」

( ´∀`)「帰られる可能性はあるもな。
希望は捨てるべきではないもなよ」

(θ)「お前は希望を捨てずに死ねばいい。
俺は希望を持たずにやりたいことをやるだけだ」

( ´∀`)「やりたいことってのは、誰かのしもべになって人質を殺すこともな?」

(θ)「少なくとも、見せかけの仲間と牛を育てながら友達ごっこをすることではないな」

( ´∀`)「誰からも愛されたことが無いもなね。
だから人の持つ、本当の愛情に気付けないもな。
可哀想もな」

.

877◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:08:28 ID:V0flVRTk0

(#θ)「ふざけたことを……」

ゆっくりと歩くモナー。

( ´∀`)「今モナーの周りには、
どんなに傷付けられても、裏切られても、
人を信じることを止められなかった人が何人もいるもな。
モナーはそんな人達をいとおしく思うもな。
みんな、人の心と命を大事にする、優しい人達もな。
きっとそういう人は他にもいっぱいいるもな。
その『本物』に、『本当』に気付けないなんて、可哀想もなね」

そして男のすぐ目の前に移動して立ち止まった。

口調は柔らかいが、表情は冷たいモナー。

身長差もあり男を見下ろすように呟いた。

( ´∀`)「本当に、『可哀想』もな」

(#θ)!!

男が予備動作もなく片手剣を下から斜め上に振り上げる。

しかしその攻撃は簡単に三又の矛に受け止められた。

すぐさまバックステップした男は後方に飛ぶと、
近くにいたぽっぽの顔を片手剣の先で切り裂いた。

(*‘ω‘ //*)!

(;><)「ぽっぽちゃん!」

ポリゴンがまるで血の様に飛び散った。

(#θ)「動いたらこいつらを殺す!
どうせすぐに全員死ぬんだ!
今おれがお前も殺してやるよ!」

.

878◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:09:34 ID:V0flVRTk0

( ´∀`)「死にたきゃ一人で死んでろ」

(θ)「え?」

( ´∀`)「ビーグル!」

相棒の名を叫びながら走り出すモナー。

▼#・ェ・▼ギャン!!

草むらから飛び出すビーグル。

(る)「え?え?」

(Ω)「ちくしょう!」

咄嗟に動けないでいた曲刀の男に体当たりするビーグル。

(る)「えっ!?」

バランスを崩したその右手を噛むビーグル。
腕がちぎれ、曲刀が地に落ちる。

(る)「えっえっえっ」

(Ω)「ぎゃーーーーー!!!」

何が起きたのか分かっていない曲刀の男とは違い、
槍使いの男は自分の置かれた状況に叫び声をあげた。

目の前に転がる自分の右腕と、槍。

( ´∀`)「死ぬことは無いもな」

ポリゴンと化し砕け散った自分の右腕を呆然と見つめる男。
モナーの言葉の通りHPは半分も削れてはいない。

(;θ)「い、いったい何が」

.

879◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:11:39 ID:V0flVRTk0

( ´∀`)「二人とも大丈夫もな」

( ><)「あ、ありがとうなんです!」

(*‘ω‘ *)「あ、ありがとうだっぽ」

▼・ェ・▼「きゃん!」

ビーグルと共にモナーのそばに駆け寄る二人。

( ´∀`)「武器が有るなら出すもな」

( ><)「は、はい!」

(*‘ω‘ *)「ハイだっぽ!」

ウインドウを操作する二人。

(*‘ω‘ *)「メイン武器は取られてしまったけど、
言われている通り予備は準備してあるっぽ!」

( ><)「教えてもらったことは守っているんです!」

片手剣と盾を出すビロードの横でぽっぽが槍を構えた。

( ´∀`)「二人は自分の身を守ることだけを考えていればいいもな。
ビーグル、二人を頼むもなよ」

▼・ェ・▼「きゃん!」

( ><)「え?」

( ´∀`)「あいつらの相手はモナーがするもな」

(*‘ω‘ *)「一人で三人だなんて無謀だっぽ!」

( ´∀`)「大丈夫もなよ」

二人を背中にして仁王立ちするモナー。

.

880◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:13:03 ID:V0flVRTk0

足元まであるマントを羽織って三又の矛を持ったその姿は、
海神を思わせた。

( ´∀`)「やるならば、相手をするもな」

敵は三人。
しかし二人は手を部位欠損している状態で、
戦える状態ではない。

事実二人は片手剣の男の後ろで無くした手をかばう様に立っているだけだった。

( ´∀`)「逃げるのならば追わないもな。
他にもやることはあるもなからね」

柔らかい口調で話しかける。

( ´∀`)「それに、
今この場から逃げ出す以外の選択肢があるとは思わないもなから、
さっさと逃げるのがいいもなよ」

表情は冷たく、汚物を見るような眼だったが。

(;る)「お、おい」

(;Ω)「い、良いんじゃないか?」

手を無くしている二人は既に逃げ腰だ。

(θ)「…… …… …… はははははははあははっはああああああはっははははh」

突然笑いだす男。

モナー以外の四人がギョッとした顔をした。

(θ)「選択肢!
選択肢!?
選択肢だと!!?
ああそうだな、これはゲームだ。
『選択肢』から行動を選ばないといけないな!
二択か?三択か?良いさ教えてやるよ!」

.

881◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:13:59 ID:V0flVRTk0

(;る)「お、おい何を言って」

(;Ω)「どうしたっていうんだよ」

(*‘ω‘ *)「どうしたっぽ?」

( ><)「おかしくなっちゃったんです」

( ´∀`)「二人とも」

モナーが後ろ手にPOTを二つ、二人を見ないで差し出した。

(*‘ω‘ *)「ぽ?」

( ´∀`)「早く飲むもな」

口調の鋭さに反論できずそれぞれに受け取って口にする二人。
もちろんHPを回復することに異論はないのだが、
醸し出す空気に違和感を感じていた。

(θ)「これが、選択肢だよ」

片手剣の男がウインドウを操作して一つの瓶を実体化させた。




.

882◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:19:42 ID:V0flVRTk0

29.



ダイオードの鎌が兄者を襲う。

( ´_ゝ`)!

兄者は全ての打ち込みに対応し弾いているが、
防御に集中していると言って良い状態だった。

/ ゚、。 /「すべてうけるとは 流石」

( ´_ゝ`)「おれは流石だからな」

ダイオードの攻撃は、『剛』だった。

一撃一撃が衝撃波を生むような唸りをあげて兄者を襲った。

受け止めることよりも避けることを選ぶ戦い方は兄者の好みではなかったが、
今のダイオードの攻撃を全て受け止めることは体力の消耗が激しいため、
半分以上を避けつつ反撃の隙を伺っていた。

普段は本能で戦っているように装っている兄者だが、
その実は一度相手に攻撃させ、
その中で攻撃パターンや行動を見極めてから反撃することが多かった。

パーティーを組むときは後方にそれを見極めて指揮を執る者が居るため任せているが、
ソロの場合や指揮者が居ない時は自分で見極めをしていた。

( ´_ゝ`)(そろそろか……)

兄者がそんなことを考えた時、
ダイオードの戦い方が変わった。

『速』

『剛』から『速』への急激な変化。

.

883◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:21:09 ID:V0flVRTk0

その攻撃を腕をかすらせるだけで躱せたのは、
運が良かったと言われても仕方のないほどの攻撃だった。

( ´_ゝ`)(ちょっ。どういうことだ!)

ダイオードが鎌を振り回す。

/ ゚、。 /「これを 避けるのは、本当に すごい」

速さだけを追求し、
命中や一撃の破壊力を捨てたような攻撃。

だがその『武器』の真価を誰よりも知っていると言っても良い兄者は、
変えない表情の奥で冷や汗を流した。

( ´_ゝ`)(あの武器をあの速さで振り回せるだと!?
確かにそれほど重くはないが、
あんなスピードで振り回せるとは余程のパワーだ。
命中補正も高かったし、攻撃力も変わるわけじゃない。
スピードに惑わされるな。
一撃受ければ大きく削られるのは変わりない)

自分に向かって歩き始めたダイオードに対し、距離をとる兄者。

( ´_ゝ`)(これはどう受ける!)

今兄者の使っている鎚は今まで使っていた鎚よりも、
頭の部分がはるかに小さい。

だがこのアインクラッドにおいて、
『大きさ』に惑わされるのは愚の骨頂である。

( ´_ゝ`)「ふん!」

振り上げた鎚で地面を叩きつける兄者。

/ ゚、。 /!

その瞬間、叩かれた地面を中心に、
使用者である兄者を避ける分だけ除いた衝撃波が円形に大地を走った。

.

884◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:23:09 ID:V0flVRTk0

/ ゚、。 /「  愚か」

ハンマー系武器の固有剣技の中でも特殊単発重攻撃に分類されるその技は、
発動後の硬直が長いことで知られている。

もちろん当たれば大きくHPを削れるだけでなく、
通常の敵ならば高い確率で硬直効果を与えられるため、
パーティー戦の場合は、
つまり自身が硬直している時のフォローをしてもらえる場合は、
戦局をがらりと変える可能性を持つ重要な技でもあった。

だがそれはパーティー戦の場合。
もしソロの戦闘で使用し、
その一撃で敵を倒すことが出来なかったら。
敵に硬直効果をもたらすことが出来なかったら。
技後の硬直を起こした自分がどうなるかなど、
考えるまでもないことだった。

しかも今回は対人戦である。
攻撃された『人』がその衝撃波を真正面から受けるとは、
普通に考えてありえない。

ダイオードが漏らした言葉はしょうがないと言えるだろう。

/ ゚、。 /「これで 終わりか」

鎌を輝かせて走り出すダイオード。

そして鎌を振り回す。
先程と同じようにみえて全く違う軌道を描く鎌は、
ダイオードの身体を柔らかい光で球状に包んだ。

敵のブレスや衝撃波から身を護る防御剣技である。

そして防御系剣技の技後硬直は基本短く設定されており、
熟練度をあげればほぼゼロにすることが出来ていた。

光を纏ったダイオードが走りながら兄者の作りだした衝撃波をすり抜ける。

.

885◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:24:40 ID:V0flVRTk0

/ ゚、。 /「少しは  楽しめた」

防御技を解除したダイオードが鎌を振り上げる。
視線の先には、技を発動した状態、
つまり両手で持った鎚で大地を叩きつけた状態で硬直している兄者。

そして振り下ろそうとした瞬間、
視線の先の兄者が消えた。

/ ゚、。 /!

ダイオードは気付いていなかった。

兄者の脚がほんの少しだけ宙に浮いていたことに。

ダイオードはその可能性を考慮しなかった。

兄者が体術スキルを持っていることを。

ダイオードは体術スキルを知らなかった。

体術スキルの中には足を使った攻撃技があることを。

そしてダイオードは分かっていなかった。

兄者は人をおちょくるのが大好きなことを。

/ ゚、。 /!!!

兄者の右脚が、いや、踵が、
ダイオードの頭頂部と後頭部の中間に、
振り下ろされた。

いわゆる『踵落とし』。
『空中前転踵落とし』が、ダイオードの頭を直撃した。

/  、  /!?!?????

.

886◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:28:00 ID:V0flVRTk0

( ´_ゝ`)「片手武器使用者は、
空いてる手で体術スキルの技を出して追加攻撃をしたり、
技の後の硬直を短くできたりするんだ。
両手系の武器の使用者はそれが出来ない。
ずるいと思わないか?」

涼しい顔で立つ兄者が、
靴越しの足の裏でダイオードの後頭部を感じながら、
ダイオードに話しかける。

( ´_ゝ`)「だから頑張ったんだ。
インパクトの瞬間、体重を全部ハンマーに乗せて両足を浮かして姿勢を決めて、
足技につなげることが出来る様に」

顔を大地にうずめて倒れているダイオードに、
兄者の言葉が聞こえているかは分からない。

( ´_ゝ`)「実戦では使ったことなかったけど、
上手く当てることが出来て良かった」

自分の頭の上で、
何の比喩的表現ではなく実際に頭の上で喋っている兄者の声を聞き、
ダイオードの精神に歪が生まれる。

( ´_ゝ`)「おい、ちゃんと聞いてるのか?
人の話はちゃんと聞かないとだめだぞ」

仲間が聞いたら総突っ込みを入れられそうな言葉を吐いた兄者に対し、
ダイオードはピクリとも動かないでいる。

( ´_ゝ`)「?
まだHP半分くらいあるけど、
気を失っちゃった?」

ダイオードの頭に乗ったまましゃがむ兄者。

( ´_ゝ`)「ダイオード?」

突然飛び起きるダイオード。

.

887◆dKWWLKB7io :2017/06/30(金) 22:29:22 ID:V0flVRTk0

そのまま闇雲に鎌を振り回すが、
瞬時に跳んで距離をとった兄者を傷付けることは出来なかった。

/ ゚、。##/「殺す 殺す 殺す 殺す 殺す 殺す
絶対に 殺す 殺す 殺す 殺す」

( ´_ゝ`)「!兄者ビックリ」

/ ゚、。##/「殺す 殺す 殺す 殺す 殺す 殺す
絶対に 殺す 殺す 殺す 殺す」

( ´_ゝ`)「その喋り方って『キャラ付け』じゃなかったんだ。
モナーと一緒かと思ってた」

/ ゚、。##/「絶対に 殺す
絶対に 殺す 絶対に 殺す 殺す 殺す
絶対に 絶対に 絶対に 殺す 殺す 殺す 殺す」

闇雲に鎌を振り回していたダイオードが兄者を睨む。

( ´_ゝ`)「勢いで勝てるほどおれは甘くないぞ」

その視線を、兄者は口者だけの笑みで受け流した。




.
909◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 19:37:21 ID:dmMfqlnI0

30.




( ^ω^)『……いつもの空間だお』

ブーンが心の中でそんなことを思った時、
既に決着はついていたのかもしれない。

( ^ω^)『……空を飛んでいるようだお』

巨大蟷螂の周りを縦横無尽に飛びまわるブーン。

流石に空中での方向転換や停止は出来ないが、
巨大蟷螂の周囲を走り回りながら跳躍するその姿は
『飛んでいる』ようにすら見えた。

( ^ω^)『……その攻撃は当たらないお』

蟷螂の攻撃をすべて躱すブーン。

いや、『躱す』という言葉には当てはまらないかもしれない。

蟷螂がブーンに向けて攻撃を繰り出そうとしたその時には、
既にその場からブーンが移動しているのだから。

( ^ω^)『……動きが全て見える。
……もしかして、ショボンはいつもこんな世界を見ているのかお』

蟷螂の全ての動きが見え、予測できる。

しかも今の彼には『速度』があった。

左手に持った剣で回転しながら蟷螂を切り裂く。

切り裂いた瞬間に左手を開いて剣を離し、
上から落ちてくる剣を右手で掴むと回転したまま再度切り裂く。

.

910◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 19:38:59 ID:dmMfqlnI0

( ^ω^)『……ツンやショボン、兄者ほどじゃないけど、
プギャーもブームもここまでやってくれるなんてすごいお』

視界の隅にブーンの動きを見ながら取り出した剣を放り投げるプギャーとブーンが居た。

先の攻撃は剣が落ちてくる場所を予想しつつ行った攻撃だった。

( ^ω^)『……両手剣のスキルが無いのはダメだおね。
両手で武器を持つとエラーになるとかもっとダメだお』

《天使の神速斬》

ツンが名付けた《天使の神速斬(エンジェルホライズン)》は、
ブーンが限界まで速度を上げて目標の周囲を駆け、
跳びながら剣で攻撃をする技である。

その肝は速度もさることながら、
武器を両手で使うことにあった。

ブーンの言葉通り、現在アインクラッドでは両手に一本ずつ剣を持つことは出来ない。
《両手剣》といったスキルは発見されていないし、
試しに両手に武器を持ってみると、
両方の武器がエラーとなって《武器》として使用が出来なくなる。
しかし片手で持つ武器は右手用左手用といった分け方はされておらず、
また個人の利き手設定なども無い。
これにより、右手で武器を持って攻撃した後に武器を離し、
すぐ後に左手で武器をもって攻撃することは可能だった。

もちろんそんなことをする意味は全くない。

片方の手に持った剣で普通に二度攻撃する方が効率が良いのだから。

ただ、ブーンには活路に思えた。

自分の持つ足を、速度を最大限に利用した『必殺技』を作れるのではないかと思ったのだ。

《速度》

仲間たちが自分の方向性を決めた時、
ブーンは皆のサポートをする為の『鑑定』と『道具屋』を選んだ時、
戦闘に対する自分の存在を見出そうとした時、
彼は《速度》を選んだのだった。

.
911◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 19:40:17 ID:dmMfqlnI0

パーティーの中で誰よりも早く攻撃をする。
敵よりも早く初撃を当てる。

知識や技能、戦闘能力以外で戦闘に貢献するためにはこれが良いと考えた。

そして速度に特化した能力構成を行いつつ、
それだけでは弱体化する部分を武器と防具、アイテムで補いつつ、
辿り着いた先がこの技だった。

テストタイプのナーヴギアを利用していることにより、
おそらくは通常よりも早く動けるこの身体。

けれど全速力で動くと30秒ほどで酷い頭痛が襲うこの身体。

その限られた時間の中で出来るだけ攻撃をする。

その為に武器を選び、防具を選び、装備品を探し、アイテムを身に付けた。

そして兄者が量産できるようになった天使の名を持つ片手剣を得て、
《天使の神速斬(エンジェルホライズン)》は完成した。

( ^ω^)『……耐久値がもう少し高ければいいのに』

ブーンが右手でふるった剣が砕け散りポリゴンに変わった。

『エンジェル・フェザー』
中層で持てる片手剣の中では攻撃力も高い方に分類され、
更に鍛冶屋で添加剤を使って鍛える事により付加できる能力も数多くある剣だが、
大きな弱点として耐久値が弱かった。

一回のダンジョン探索でメンテナンスしなければ使い物にならなくなってしまう剣。

そんな使い辛い剣を愛用する者は少ない。

しかしその基本攻撃能力値と軽さはブーンの戦い方に合致していた。

そしてその耐久値の低さを量でカバーしているのがこの技だった。

.
913◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 19:44:18 ID:dmMfqlnI0

一人でもある程度は出来る様に最初に剣をばらまいたり、
左手の剣を離した瞬間に右手でクイックチェンジを行えるようにした。

だがやはり最大火力の《天使の神速斬(エンジェルホライズン)》を行うには、
周囲から剣を投げ入れてもらう必要があった。

( ^ω^)『……周囲にいてくれれば、
ツンやショボンを戦闘させないで済むかなと思ったんだけど、
あの二人がそれで良しとするわけがないんだおね』

砕け散った剣がポリゴンをまき散らす中、
既に反撃する意思すらもなくしたかのように棒立ちとなった巨大蟷螂。

その周囲を
《跳ぶ》
ブーン。

思考の八割を敵の動きと、
飛んでくる片手剣と地面に落ちている片手剣の位置取りに割きつつ、
残りの二割でスローモーションの世界と戦闘以外の事に意識を置いているブーン。


.
914◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 19:46:08 ID:dmMfqlnI0
( ^ω^)『……少し、頭が、重く、なって、きたお……。

頭痛が始まると、一つのことしか考えられなくなるお。

もっと、いっぱい、いろんなことを、考えなきゃなのに。

だめだおね。

目の前の敵を倒すことだけに意識が集中しちゃうお。

いまは、あの、紫の塊だお。

あれが何だろうと、関係ないお。

ただ、『あれ』を倒すだけになってしまうんだお。

ああ、紫色の塊がポリゴンに変わった。

ああ、頭が痛いお。

でも、みんなを守らなきゃ。

痛い……。

もっと、早く、

……痛い……。

もっと。早く。

痛い…痛い…痛い…痛い…

誰にも、負けない、速さで、全ての、物を、切り裂いて。

痛い…痛い…痛い…痛い…

痛い…痛い…痛い…痛い…

痛い…痛い…痛い…痛い…

痛い…痛い…痛い…痛い…


◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終わりなさい!』』


…… …… ……ああ……ツン……良かった………』
.

915◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 19:49:19 ID:dmMfqlnI0

31.




(キリト)「武器の移動?」

*(‘‘)*「はい。
片手剣を移動しています」

(アスナ)「っと、どういうことかな?」

*(‘‘)*「……始まったみたいですね。
見ていてください」

ヘリカルが出しているウインドウは五つ。
そのうち四つは画面が出ており、
残りの一つには黒い画面に『Unable to connect』と記されている。

*(‘‘)*「私のウインドウ、つまり私のフォルダに保存しているこの武器を、
武器を実体化させて空きが出来たこのパーティー用の共通フォルダに送ります」

(キリト)「はあ」

(アスナ)「うん」

*(‘‘)*「そして私は……」

一歩後ろに下がるヘリカル。
するとウインドウの表示が変わり、
五つのうち三つが『Unable to connect』に変わった。

*(‘‘)*「私がオーナー設定してある道具屋の倉庫に、
階層や街は異なっても『街』に入っていればつながることが出来るので、
倉庫から自分のフォルダに剣を移します。
そしてまたダンジョンの中に居る三名の方に繋がってから……」

一歩前に出るヘリカル。

.

916◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 19:50:25 ID:dmMfqlnI0

再び画面表記が変わった。

*(‘‘)*「剣を共有フォルダに移していきます」

(キリト)「な、なんだそりゃ」

(アスナ)「えっと、つまり、
さっきから前後に移動しているのは『街』と『フィールドダンジョン』を移動するためで、
『街』に居る時はお店から剣を取り出して、
『ダンジョン』に居る時は先のエリアに居るパーティーの人に
片手剣を送っているってことでいいのかな?」

*(‘‘)*「はい。その通りです」

会話しながら作業を続けるヘリカル。

(アスナ)「そんなこと、出来るんだ。
同じダンジョン内や同じ町に居る時は共有フォルダを使えることは分かってたけど」

(キリト)「で、でも、なんで片手剣なんだ?
回復ポーションとかクリスタルならまだしも。
片手剣なんてそんな大量に使う物じゃ」

*(‘‘)*

ニッコリとほほ笑みながら作業を続けるヘリカル。

(キリト)「な、なあ」

(アスナ)「ちょっと、キリト君」

(キリト)「そりゃマナー違反だけど、
アスナだって気になるだろ?
どんな戦闘をしているか」

(アスナ)「気にならないと言えばうそだけど……」

*(‘‘)*「流石にそこまでは話せません」

(アスナ)「そうよね」

(キリト)「うぅ……」

.

917◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 19:51:52 ID:dmMfqlnI0

(アスナ)「って、あれ?ヘリカルちゃん?」

*(‘‘)*「はい?」

二人と話すヘリカルはウインドウの操作をしていなかった。

(アスナ)「もうやらなくていいの?」

*(‘‘)*「はい。もう終わったみたいです。
もうすぐメッセージも来ると思うので、
それがきたらとりあえずは終了です」

(キリト)「一分もかけずに終わらせることが出来る。
倒せるってことか」

(アスナ)「キリト君!」

ヘリカルに顔を近づけるキリトの頭を叩くアスナ。

HPが減ることは無いが、
衝撃で頭をおさえるキリト。

(キリト)「おまっ」

(アスナ)「いい加減にしなさい!」

(キリト)「だってよぅ」

*(‘‘)*「お二人は仲が良いんですね」

(*アスナ)「えっ」

(キリト)「ヘリカルちゃん、
何処をどう見たらそういう感想が出るのかな?」

(アスナ)「……」

.

918◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 19:53:42 ID:dmMfqlnI0

(キリト)「い、いや、ほら、
天下の血盟騎士団の副団長様、
閃光のアスナ様とこんなソロプレーヤーが仲が良いとかさ」

(アスナ)「……」

(キリト)「へ、ヘリカルちゃんは一人でお店やってるのかな?
凄いね」

じっとキリトを見ていたアスナだったが、
あからさまに話題を変えたその姿を見て溜息を一つついた。

(キリト)「な、なんだよ……」

(アスナ)「なんでもありません。
ヘリカルちゃんごめんね。
変なことばっかり聞いちゃって。
……ヘリカルちゃん?」

アスナの目の前で、
ヘリカルが握った右手で胸を押さえていた。

ウインドウを見る目も少しだけ潤んでおり、
アスナが慌てて横にしゃがむ。

(アスナ)「大丈夫?
調子が悪いならどこかで横になろうか?
もうやることも終わったんだよね」

*(‘‘)*「……独りじゃ、ないんですよ……」

(アスナ)「え?」

*(‘‘)*「お兄ちゃんが、いるんですよ……。
ここに……」

そう言って、胸の前で右手をぎゅっと握る。

(アスナ)「……ヘリカルちゃん……」

.

919◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 19:59:02 ID:dmMfqlnI0

*(‘‘)*「ずっと、一緒なんですよ。
会えないけど、ずっと、一緒なんですよ」

(アスナ)「……」

(キリト)「……」

ヘリカルの隣、アスナとは反対側に立ち、
少しだけかがんだキリト。

(キリト)「そっか。ずっと、一緒なんだな」

キリトの言葉に、
ヘリカルが画面を見ながら少しだけ頷いた。

*(‘‘)*「一緒……なんですよ」

空を見上げるヘリカル。

*(‘‘)*「お兄ちゃんも、一緒に戦っているんですよ」

ヘリカルの呟きに、
両側の二人がほんの少しだけ視線を伏せた。





.

920◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:00:36 ID:dmMfqlnI0

32.



『ここからはおれが指示を出す!』




その声を聞いた瞬間、クーはニヤリと笑った。

そしてデミタスは大きく目を見開いた後何事も無かったように襲撃者の武器を払い、
ミルナも驚いたように一度顔をこわばらせたが、
すぐに小さく笑みを漏らした。

唯一純粋に驚いたトソンは思わず声のした方向を見ようとしてしまったが、

川 ゚ -゚)「トソン!カウント10秒!」

(゚、゚;トソン「え、あ、は、はい!」

すぐにその意図に気付いて心を落ち着かせ、
少しだけ呆れたように肩をすくめた後に目の前の兵隊蟻に攻撃を与えた。

『俺の声は仲間にしか届かない!』

そして再び声が響く。

.

921◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:04:28 ID:dmMfqlnI0

因みにエクストは、

<_プー゚)フ「ぎゃははははははっは……」

最初の声の後いきなり笑いだして嬉しそうに武器を振り回して襲撃者を襲い始めたため、
それに関しては誰も何も触れなかった。

( ゚∋゚)『おれはクックル!ミルナ!トソン!落ち着いて対応してくれ!』

( ゚д゚ )「!クッ……ク―!次はどうする!」

(゚、゚トソン「8、9、10!クッ……ク―さん!次の指示を!」

川;゚ -゚)「と、とりあえず引き続き蟻を誘導してくれ!
(『クッ……ク―』って、なんか嫌だ。
っていうか、トソンは絶対わざとだろそれ)」

( ゚∋゚)『二人ともありがとう!説明は後でする!
まずはこの場を収めよう!
フォーメーションは今まで通りだが』

自身の硬直が終わった後、
巨大蜘蛛を追加攻撃するクックル。

巨大蜘蛛は更に後方に押されて動きを止めた。

( ゚∋゚)『ダウン状態!
この五秒で体制を整える!』

走るクックル。
巨大蜘蛛を攻撃しつつ五人を見渡せる位置に移動した。

( ゚∋゚)『デミタス!エクスト!そのままそいつらを攻撃!
一回撤退させろ!
ミルナとトソンは引き続き蟻の誘導!
クーは残りの襲撃者が出た時の対応を!
場所はおれが指示を出す!』

クックルの指示に少しだけ頷く仕草を見せて攻撃を始めるクー以外の四人。

.

922◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:07:53 ID:dmMfqlnI0

クーは移動しながら二匹の蟻を攻撃している。

( ゚∋゚)『おれはこの位置で指示を出す!
俺を狙う襲撃者フォローはデミタス頼む!
常におれを視界に入れる様にして見ていてくれ』

クックルの指示は高度なものだったが、
デミタスは躊躇することなく小さく頷いた。

( ゚∋゚)『エクストは前から蜘蛛を攻撃!
おれは後ろから追撃する!
デミタスはエクストもフォロー!』

エクストの両手剣が唸り、
デミタスは指示の意味を受け取って位置を変える。

( ゚∋゚)『クー!ミルナの右に敵!
ミルナはそのまま蟻を誘導!
トソンは右を警戒しつつ蟻の位置を維持してくれ!』

飛び出してきた襲撃者の片手剣をはじくクーの薙刀。

ミルナはそのまま蟻を誘導し、
トソンは右側の茂みを意識しつつ蟻と戦う。

( ゚∋゚)『エクスト!デミタス!スイッチ用意!
エクスト!3秒以上ダウン状態にさせろ!
タイミングは指示する!
そのタイミングに合わせておれは一度蟻に向かう!
スイッチ後はエクストが周囲を警戒!
デミタスは距離をとりつつ蜘蛛を攻撃!
クー!おれの単重攻撃に合わせてミルナの蟻に攻撃!
デミタス!右から敵がくるから注意!
おれの硬直は3秒!
ミルナ!クーの攻撃で蟻が倒せなかった時はそのまま追撃!
倒せ!周囲はおれが回る!
クー!トソンの左側茂みに注意!
トソンはそこから蟻を中央まで誘導開始!
倒さず負けずをキープ!
一匹倒したらデミタスとエクストはスイッチ!
クーは蟻を攻撃した後は襲撃者に専念!』

.

923◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:16:58 ID:dmMfqlnI0

エクストが蜘蛛に攻撃を繰り出しながらニヤリと笑い、
他の四人は小さく頷く。

( ゚∋゚)『エクスト!カウント3でいくぞ!
3!

2!

1!』

仲間だけに届くクックルの声がゼロを告げた瞬間、
全員が自分の役割を果たすために動き始める。

襲撃者から見れば異様な光景だっただろう。

どんなに相手の隙を突こうとしても軽々と阻止されるようになり、
更にモンスターを的確に攻撃をしている。

そして今目の前では誰も何も言わず、
見ている限りアイコンタクトもせず剣技を放って敵のHPを削り、
更に自分達を警戒していることが分かる。

そして兵隊蟻が一匹消えた。

(;襲撃者1)「ちくしょう、なんなんだよ一体」

それを茂みの中で、
木に隠れるようにして立って見ている黒尽くめの男。
その服装と装備、
そして頭の上に浮かぶカーソルがオレンジであることから、
五人を卑怯な方法で攻撃していた一人であることが分かる。

.

924◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:27:36 ID:dmMfqlnI0

(;襲撃者1)「ロマネスクからは時間稼ぎメインの簡単な仕事だって。
けれど流れによっては殺せば良いって言われていたのに、
これじゃあ……」

片手剣を持つ手が震えている。

(;襲撃者1)「おれ達がロマネスクに……」

「大丈夫だ」

(襲撃者1)「え?」

後方から聞こえた声に気を取られた瞬間、
自分の胸から『黄色く光る刃』が生えた事に気付く。

(襲撃者1)「え……」

「黒鉄宮の牢獄は攻撃行為完全禁止エリア。
殺されることは無い」

そしてすぐに刃は消えた。

もちろん生えたわけではなく、
後ろから刺された刃が飛び出したわけだが、
それに気付いたのは倒れる時に自分の後ろに立つ者を見たからだった。

(襲撃者1)「おま……えは……」

川 ゚ -゚)「麻痺状態になる薬付きの刃だ。
大人しくしていろ」

(襲撃者1)「ばか……な……」

川 ゚ -゚)「この森で、
お前達のオレンジ色のカーソルは良く目立つ」

(襲撃者1)「  ……  ……」

襲撃者の視界の隅には、
自身が麻痺していることを告げるマークが点灯している。

.

925◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:29:49 ID:dmMfqlnI0

(襲撃者1)「!?」

川 ゚ -゚)「麻痺対策はしてきているようだが、
生憎と私の使う麻痺毒は現状広まっているアイテムでは完全に防ぎきることは出来ない。
しかも今回は……効いてきたようだな」

クーの目の前で崩れ落ちる様に倒れる黒尽くめの男。

川 ゚ -゚)「睡眠毒付だ。
二種類の毒の混合毒。
私の持つエクストラスキルで作った。
即効の麻痺毒で体の自由を奪い、
遅効性の睡眠毒で眠らせる。
……と、いうわけだ。
こいつで三人目。
残りはお前一人。
武器を捨てて投降するか、毒に侵されるか今すぐ選べ」

(襲撃者2)「……お前だけでもここで殺す」

クーの背後に現れる黒尽くめの男。

川 ゚ -゚)「毒に侵されるのを選ぶわけだな」

(襲撃者2)「この木々の中で、
お前の武器が振り回せるのか?」

武器をショートダガーに変えている男。
その刃も黄色く光っている。

川 ゚ -゚)「……ふむ」

(襲撃者2)「毒使いはお前だけじゃないんだよ!」

木々の間を縫うようにその身を隠しつつ男が動く。

川 ゚ -゚)「木々を使い私の死角を狙う。
忍び装束には隠蔽スキルの増幅効果があるというしな。
悪くない戦い方だ」

.

926◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:32:05 ID:dmMfqlnI0

それを声に出して評価するクー。

無表情に呟くその様子は、
相手を馬鹿にしているようにしか見えなかった。

川 ゚ -゚)「バカはバカなりに考えるわけだな。
ウジ虫にはウジ虫の戦い方があるという事か。
ふむ。参考にはなる。
私は人間だから、
想像して、色々考えて行動することが出来るからな。
クズの行動だとしても、侮ったりはしないぞ。
お前達のような価値無く生きる物と違って、
私は人間だからな」

いや、完全に馬鹿にしていた。

(襲撃者2)「(……落ち着け……落ち着け。
俺を怒らせて襲わせたところをカウンターするつもりなんだ。
この森とあいつの武器。相性はかなり悪い。
それにおれの隠蔽系スキルとこの忍び装束なら、
一度完全に視界から消えることが出来れば追跡は出来ないはず。
あとは、俺達を四人だと思っている隙を突けば……」

森の中で武器を構えてたたずむクー。

彼女を狙い、黒い影が木々の中を揺らめいた。




.

927◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:38:28 ID:dmMfqlnI0

33.


モナーの目の前で、
男が小瓶を大地に落とした。

( ´∀`)「!ちっ」

距離を縮めたモナーが三又の槍の先ですくい拾おうとするが、
間に合わず地面に落ちる小瓶。

割れることは無かったが口が開けてあった瓶からは液体が流れ出る。

( ´∀`)「!やっぱり!」

瓶からこぼれた液体は大地に染み、
そして赤紫色の煙となって立ち上った。

(;´∀`)!

慌てて瓶を拾うモナー。
液体は半分以上が流れ出てしまっている。

(#´∀`)「おまえ!自分が何しているか分かってるのか!?」

(θ)「ぎゃははははははっははhっ!
死ぬんだ!俺達は全員死ぬんだよ!
ははははっはあはっは!!」

(#´∀`)「ビロード!ぽっぽ!これですぐ転移しろ!
場所は街ならどこでも良い!」

( ><)「え?」

(*‘ω‘ *)「ぽ?」

ポーチから取り出した転移結晶をビロードとぽっぽに投げるモナー。

二人は難なくそれを受け取るが、
呆気に取られてすぐさま動けない。

.

928◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:41:50 ID:dmMfqlnI0

(#´∀`)「さっさとしろ!」

(;><)「ハイなんです!」

(*‘ω‘ *;)「だっぽ!」

クリスタルを握りしめて掲げる二人。

(#´∀`)「ビーグル!先に隣のエリアに行ってろ!」

▼#・ェ・▼「キャン!」

ビーグルがモナーの指示を無視し、
ビロード達のそばからモナーのそばに駆け寄った。

(#´∀`)「ビーグル!」

▼#・ェ・▼「キャン!」

片側だけ長いマントの裾を、
普段は自分を守ってくれるマントの裾を噛み、
いやいやするように首を振った。

( ´∀`)「……ビーグル……」

▼・ェ・▼「……くぅーん」

( ´∀`)「分かった……もな」

眉間に皺を寄せ、
少しだけ泣きそうな顔でしゃがみ、
ビーグルの頭を撫でるモナー。

▼*・ェ・▼「きゃん!」

ビーグルが嬉しそうにひと鳴きして裾を離した時、
ビロードの声がモナーに届いた。

.

929◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:46:25 ID:dmMfqlnI0

(;><)「モナーさん!
転移しないんです!」

(*‘ω‘ *;)「つ、使い方が違うっぽ?」

(;´∀`)「なっ」

慌てて見上げるモナー。

(;´∀`)「遅かった……もな」

周囲の空が赤紫に染まっているのをみて、
モナーがいつもの口調で呟いた。

( ><)「も、モナーさん!
これはいったい!」

( ´∀`)「二人とも武器をかまえるもな!

(;><)「え?え?」

(*‘ω‘ *;)「!
ビロード!かまえるっぽ!」

慌てたように槍をかまえたぽっぽを見て、
彼女の視線の先を見るビロード。

( ><)「……え?」

(*‘ω‘ *;)「早くするっぽ!」

(;><)「ハイなんです!」

エリアの中央にいる六人を囲むように、
ポリゴンが漂っている。

( ><)「こ、これは」

( ´∀`)「さっきあの男が零したのは『トラップの素』もな」

.

930◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:50:39 ID:dmMfqlnI0

(*‘ω‘ *)「トラップの素?」

( ´∀`)「あの液体と入っていた瓶を素体として、
宝箱型筐体や壺型筐体なんかと組み合わせてトラップを作るもなよ」

(;><)「そ、それじゃあ今ここは!」

( ´∀`)「このエリアは結晶無効エリアになり、
ポリゴンは全てモンスターに変わるもな。
素からの直接発動だから時間がかかってるもなから、
今のうちに準備するものな」

笑い続けている男と、
その後ろで部位欠損を起こしたまま震えている二人の男のそば
に近寄るモナー。

( ´∀`)「全部倒さないとエリア封鎖は解除されないもな。
お前らも手伝うもなよ」

三又の矛を突き付けながら近寄るモナー。

(;Ω)「ひっぃ」

(;る)「て、っ手が」

( ´∀`)「リペア!」

モナーが腰のポーチから取り出した結晶を取り出し、
片腕を失った男に向けてキーワードを告げると右手が蘇る。

続けてもう一つ同じ結晶を取り出して同じ動作を繰り返すと、
手を欠損していた男にも同様の修復が行われた。

(Ω)「え?」

(る)「ま、まだペナルティの時間が」

( ´∀`)「『修復結晶(リペアクリスタル)』。
まだ市場には出回っていないレアアイテムもなよ。
せめて自分の命くらいは自分で守るもな。
あと……」

.

931◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:55:52 ID:dmMfqlnI0

喋りながら狂ったように笑い続けている男の襟首を掴んで転がす。
そして直った腕を見ながら驚いている二人の足元に移動させた。

( ´∀`)「この男の事も守ってやるもな」

(Ω)「え、で、でも」

(る)「……」

実体化し始めた周囲をみて震える二人。

( ´∀`)「大丈夫もな」

突然駆け出したモナーが周囲で一番最初に実体化した敵を二回攻撃する。

ポリゴンに戻るカブトムシのような形をしたモンスター。

(Ω)「え?」

(る)「?」

( ´∀`)「6割はモナーが倒すもな。
ぽっぽ!ワカッテマスにメッセージを入れるもな!」

(*‘ω‘ *)「!分かったっぽ!」

即座にウインドウを出すぽっぽ。

( ´∀`)「ビロードはその間は防御に徹するもな!
送った後は二人で自分達に向かってくる敵を倒すもな!」

喋りながら実体化したモンスターを倒していくモナー。
ほとんどの敵を二撃、或いは一撃で倒している。

( ><)「は、はいなんです!
で、でも……」

( ´∀`)「素は少ししか零さなかったからそれほど数は出てこないはずもな。
それに下層だから敵も弱いもなよ!
今まで頑張った二人なら大丈夫もな!
モナ達はこの程度で負けてしまうような戦いは教えていないもなよ!」

.

932◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 20:58:31 ID:dmMfqlnI0

次々にポリゴンに変わっていくモンスター。
しかしそれ以上の速さでモンスターは生まれている。

( ><)「!ハイなんです!」

(*‘ω‘ *)「送ったっぽ!」

ウインドウを閉じると同時に槍を構えてビロードの後ろにつくぽっぽ。
その両手が少しだけ震えているのはモンスターに囲まれたこの状況下では仕方ないことだろう。

しかしモナーはそれを見て顔を綻ばせた。

( ´∀`)「二人なら3割倒せるもな!
自信を持って戦うもなよ!」

(*><)「ハイなんです!」

モナーに褒められたのが嬉しいのか、
周囲を敵に囲まれたこの状況下にも関わらず笑顔を見せるビロード。

それを見たぽっぽの表情も少しだけ緩む。

(*‘ω‘ *)「わかったっぽ!」

ビロードがしっかりと盾を構えたその後ろで、
ぽっぽが戦闘を開始した。






( ´∀`)「ビーグル!」

▼・ェ・▼「きゃん!」

モンスターの間を走り回り、
モナーの手が届かない敵を細かく攻撃していたビーグルがモナーの足元に駆け寄る。

( ´∀`)「頼むもな」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

.

933◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 21:03:57 ID:dmMfqlnI0

身体を震わせるビーグル。

身体から銀色に輝く毛が浮き出て周囲に漂うと、
モナーとビロード、そしてぽっぽの身体に張り付いて消えた。

三人のHPが回復する。

( ´∀`)「ビーグル、あっちの三人にも頼むもな」

▼・ェ・▼「うー」

( ´∀`)「お願いもな」

▼・ェ・▼「……きゃん」

モナーにお願いされ、
不服そうに身体をふるって毛を飛ばすビーグル。

その毛は必死に自分の身を守っている二人の男と呆然と周囲を見ている男の身体にまとわりつくと、
HPを多少回復させた。

(;´∀`)「ビーグル……」

▼・ェ・▼「きゃん!」

自分達との回復量の差に苦笑いを浮かべつつも、
走り回って敵を消し続けるモナー。

ビーグルはひと鳴きした後その足元を駆け抜け、
後方から弓矢でモナーを狙っていた敵に体当たりをした。

( ><)「……すごいんです」

盾で敵の攻撃を受け止め流しつつその様子を見たビロードが呟く。

(*‘ω‘ *)「モナーさん達が凄いのは今に始まったことじゃないっぽ。
それよりそっち、来るっぽよ」

( ><)「分かってるんです!」

.

934◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 21:12:16 ID:dmMfqlnI0

ビロードの左後方、
ぽっぽの背後からビロードに向かって滑空した巨大蜂。

対してビロードは危なげなく盾で攻撃を受け流しす。
更にその移動した盾の隙間を縫って襲い掛かった大甲虫を片手剣で一閃。
倒すことは出来なかったが大きく後退させることには成功した。

( ><)「僕でもこれくらいは出来るんです!」

(*‘ω‘ *)「がんばるっぽ!」

( ><)「ハイなんです!」

改めて盾を構え、片手剣を握りなおすビロード。
そしてその後ろで槍を構えるぽっぽ。

視界の端でそれを見ながら、モナーは走りながら敵を葬り去り続けた。







▼*・ェ・▼「きゃんっ!」

ビーグルが嬉しそうにひと鳴きしたとき、
全てのモンスターは消え、
空が青く戻っていた。

.

935◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 21:13:30 ID:dmMfqlnI0

その空を見ながらゆっくりと座り込んでしまうビロードとぽっぽ。

三人の男も腰を抜かしたように地面に寝転ぶ。

結局一人で九割方倒したモナーだったが、
嬉しそうに駆け寄ってきたビーグルを抱き上げたその時も、
疲れた様子は全く見せなかった。





.

936◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 21:16:29 ID:dmMfqlnI0

34.



(<>)「さあ、早く武器を放せ」

鉄仮面の男がワカッテマスに片手剣の刃を当て、
フサギコに武器の放棄を要求する。

ミ,,゚Д゚彡「……卑怯だから」

( <●><●>)「フサギコさん、気にすることはありません」

苦虫を噛み潰したような表情をしたフサギコに対し、
ワカッテマスが冷静に話しかける。

(<>)「ああ?」

( <●><●>)「どう転ぼうと、死ぬ運命だったと思います。
貴方が罠に気付かずに攻撃を繰り出し死ぬか、
このようにこいつらに殺されてしまうか。
私が殺されるだけならば、それで終わりです」

淡々としゃべり続けるワカッテマス。

( <●><●>)「唯一心残りなのはビロードとぽっぽの事ですが、
フサギコさん達が、VIPの皆さんがしっかりと動かれているのならば、
助けていただいている事でしょう。
ですから、私の事は気にせずこいつを倒してください。
こんな雑魚、フサギコさんなら一瞬で倒せます。」

(#<>)「貴様!」

( <●><●>)「私を殺せば!」

ワカッテマスの恫喝に似た一声。

剣を突き立てようとした男の身体が止まった。

( <●><●>)「私を殺せば、その瞬間にフサギコさんは動きます。
あなた、フサギコさんに勝てるんですか?」

.
937◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 21:18:07 ID:dmMfqlnI0

(<>)「…… ちっ」

男はワカッテマスを引き寄せて首筋に片手剣を当てる。

(<>)「……こいつを殺されたくなければ武器を捨てろ」

それはワカッテマスが作り出した奇妙な均衡だった。

生きていてこそ人質の意味があるのは当然のことだが、
自分の命を気にすることは無いと言いつつ、
自分を殺せばお前も死ぬと自分を拘束する者を脅す。

フサギコの実力があってこそできる駆け引きとはいえ、
危うく、綱渡り的な均衡。

そしてやはり鉄仮面の男が有利であることには変わりなかった。

(<>)「ふっ。ははははは。
そいつに人を殺す度胸があるもんか。
さあ、武器を捨てろ!」

ミ,,゚Д゚彡「……死ぬよりも……」

(<>)「ん?」

ミ,, Д 彡「ワカッテマス君を殺したら、
死ぬよりも恐ろしい目に合わせるから」

(<>)「はっ!そんなもん!」

ミ,, Д 彡「その体を、切り刻んであげるから。
頭も、首も、体も、すべての部位を、切り刻んであげるから」

肩の力を抜いた自然体で仮面の男を見るフサギコ。

男はその虚ろな瞳と殺気に恐怖を感じ、喉を鳴らした。

(;<>)「っひっ、……、そ、そんな、もん」

.

938◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 21:19:18 ID:dmMfqlnI0

ミ,, Д 彡「殺してほしいと、
死なせてくれと泣き叫んでも、
殺したりはしないから。
でも、その心に、恐怖と苦しみは植え付けるから」

(;<>)「お、お、おれがそんな脅しに……」

ミ,, Д 彡「覚悟しておくと良いから」

先程までワカッテマスと話していた時の声とは違う、
感情も抑揚も無い声。

そこに込められた『本気』を感じ取り、
且つその身に同じギルドの者からの攻撃を受けた事のある仮面の男は、
自分との実力の違いを思い出し、襲い来る恐怖で心を震わせた。

(;<>)「で、出て来いお前ら!」

思わず叫んだ仮面の男。

だが何も起こらなかった。

(;<>)「は、早く出て来い!
ここのリーダーは俺だ!
作戦を変更する!」

すると森から二人の男が現れた。

(も)「おい、良いのか?」

(り)「……俺達は切り札だろ?」

呆れたように肩をすくめながら出てきた二人。
しかしその身のこなしはフサギコを充分警戒しており、
一定の距離をとって立ち止まり武器をかまえた。

(;<>)「お前らはおれの前に来い!
こいつの攻撃がおれにこないようにするんだ!
おい!全員出るんだ!
俺がこいつを人質にしてるうちに三人がかりでやるんだよ!」

.

939◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 21:21:01 ID:dmMfqlnI0

(も)!

(り)「ちっ」

仮面の男が焦ったように叫ぶと、
更に男が一人茂みから現れた。

(Δ)「……」

男は一言、もしゃべらずに、フサギコに向かって武器をかまえる。
それを見て最初の二人は仮面の男を守るように移動した。

(;<>)「そ、それで良いんだ!
お前達もかまえろ!
こいつを三人がかりで殺すんだ!」

仮面の男の物言いを聞きながら武器をかまえる三人。

(;<>)「動くなよ!
動いたらこいつを殺すからな!
おまえら!殺せ!」

「させないよぅ」

(<>)「え?」

声と同時に背後に人がいることを知り、
そして自分の腰に短刀が刺さったことを知った。

(#<>)「!」

ワカッテマスの拘束したまま自分を刺した小柄な者を攻撃しようとする男。
しかしそれは叶わなかった。

(;<>)「……えっ」

力なく倒れる仮面の男。
ワカッテマスもそれに巻き込まれるように倒れてしまうが、
男の拘束は解けていた。

.

940◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 21:22:06 ID:dmMfqlnI0

(;<>)「(何故……麻痺は完全に防御しているのに……)」

視界の隅、自分のステータス異常を知らせる麻痺のマークを見つけた男。

(;<●><●>)「ど、どうなって」

「わっ!!!!!」

(も)!

(り)!

(Δ)!

背後で何かが起きた。

三人の男の注意が一瞬背後に向かう。

その一瞬の隙を見逃さずに動いた侍。

そして鍛え上げたスキルはその一瞬で三人を無力化する。

(;も)!

(;り)!

(;Δ)!

旋風が吹き抜けた瞬間、
三人の男の腕が武器を持ったまま宙を舞う。

(;も)!

(;り)!

(;Δ)!

自分の腕が地面に落ちてポリゴンとなり砕け散るのを呆然と見る三人。

そしてその三人の間をすり抜ける影。

.

941◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 21:23:46 ID:dmMfqlnI0

(り;)!

(Δ;)!

(も;)!

次々と倒れる男達。
その視界の隅に浮かぶ、麻痺を告げる状態異常のマーク。

「この麻痺毒は今までの耐性補助じゃあ防げない特別製だよぅ」

黒尽くめの声を聞きながら意識をなくす三人。
仮面の男は既に意識を無くしている。

ミ,,゚Д゚彡「睡眠毒との混合毒だから」

技後硬直の解けたフサギコが呟きは、
眠りについた四人には届いていない。

(;<●><●>)「そ、そんな毒が」

大地に膝をつくワカッテマス。
その横にフード付きマントと黒装束を纏った影がそっと寄り添った。

「大丈夫ですかょぅ」

( <●><●>)「あ、ありがとうございます。
ですが、あなたはいったい。
いや、思い当たる方はいるのですが、ですが……」

「ボクですょぅ」

フードを取り顔を出す影。

(;<●><●>)「い、いよう君!
口調からそうだとは思いましたが
で、ですが君は死んだはずでは!?」

(=゚ω゚)「死んでないょぅ」

.

942◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 21:25:16 ID:dmMfqlnI0

(;<●><●>)「で、ですが!」

ニッコリとほほ笑んだぃょぅと、
驚きで顔をこわばらせているワカッテマス。

(;<●><●>)「黒鉄宮の碑に刻まれた『e−YOU』の文字、
それを見て泣き叫ぶヘリカルちゃんを!」

ミ,,゚Д゚彡「『e−YOU(イーユウ)』さんと、ぃょぅ君は別人だから。」

意識を失った四人を回廊結晶を使って牢獄に送ったフサギコが二人のそばによる。

( <●><●>)「フサギコさん!
え?『イーユウ』?」

ミ,,゚Д゚彡「そう、……殺されたのは、『イーユウ』さんだから」

(=゚ω゚)「……うちの店の常連さんだったんだょぅ。
下層と中層の間くらいで頑張ってた人だったんだょぅ
でも、レアアイテムをドロップしたことを知って近付いてきた女の人に騙されて……」

ミ,,゚Д゚彡「イーユウさんが亡くなったことを知ったぃょぅ君とヘリカルちゃんが相談に来て、
ショボンと情報屋さん達が調べてくれて、
殺した犯罪ギルドは潰したけど……」

(=゚ω゚)「許せなかったんだょぅ。
人殺しをする奴らが」

ミ,,゚Д゚彡「その時の話の流れでANGLERの事を知ったぃょぅ君から申し出があって、
死んだことにして陰に隠れてくれていろいろ動いてくれたから」

(;<●><●>)「あ…あ……う」

二人の話を聞いて言葉を無くすワカッテマス。
それでも何とか声をひねり出す。

(;<●><●>)「な、何度かお店に行きましたが、
ヘリカルさんはこのことは」

.

943◆dKWWLKB7io :2017/07/31(月) 21:26:25 ID:dmMfqlnI0

(=゚ω゚)「もちろん知ってるょぅ」

(;<●><●>)「こ、黒鉄宮で号泣していたと!」

(*=゚ω゚)「ヘリカルは凄い女優さんなんだょぅ」

胸を張って妹を褒めるぃょぅ。

(;<●><●>)「じょ、女優?」

ミ,,゚Д゚彡「……女の子は怖いから」

(;<●><●>)「え?フサギコさん?」

(=゚ω゚)「ヘリカルは怖くなんかないですょぅ。
ヘリカルの可愛さは世界一ですょぅ!」

ミ,,゚Д゚彡「あ、うん」

(;<●><●>)「は、はい……」

(=゚ω゚)「ヘリカルは昔から可愛くて可愛くて……」

ミ;,,゚Д゚彡「あ!ビロード君とぽっぽちゃんにメッセージ送ってあげないと!
ワカッテマス君!」

(;<●><●>)「あ、は、はい!」

ミ,,゚Д゚彡「フサはモナーとショボンに連絡入れるから!
ぃょぅ君もヘリカルちゃんに打つと良いから!
これがちゃんと終われば計画は終了で帰れるから!」

ウインドウを出してメッセージを打ち始める二人。

ぃょぅもそんな二人を見てウインドウを出した。





.
11◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 22:39:59 ID:Y.9qViVM0

35





ξ゚听)ξ「それがあんたの本当の武器なのね」

ζ(゚ー゚*ζ「あんまり可愛くないから嫌いなんですけどね」

デレが新たに実体化させたのは巨大な斧だった。

ζ(゚ー゚*ζ「棍と違って、パワーだけだし」

巨大な斧を軽々と片手で振り上げるデレ。

そして軽やかにツンの目の前に移動したかと思うと、
両手で斧を持って振り下ろした。

ξ゚听)ξ!

振り下ろされた斧が地面を抉る。

ζ(゚ー゚*ζ「避けちゃだめですよ」

ξ゚听)ξ「避けるに決まってるでしょ」

ζ(゚ー゚*ζ「ですよねー。でも」

微笑みながら巨大斧を片手で持ち上げる。

ζ(゚ー゚*ζ「よけ続けられるかな?」

ツンを狙って斧が振り下ろされる。

ξ゚听)ξ「大きさだけなら弟者のより大きいか」

後方に跳んで避けるツン。

ζ(゚ー゚*ζ

.

12◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 22:41:30 ID:Y.9qViVM0

デレは笑みを消すことなく、
斧は大地を抉ることなく方向を変え、
空間を裂くようなうねりを生みながら横からツンを襲う。

ツンはそれをジャンプして躱しながら、
真下に斧の側面がきた瞬間にそれを踏みつけて前方に跳び、
デレの頭の上を回転しながら飛んだ。

ζ(゚ー゚*ζ「ちっ」

似合わない舌打ちをしながら斧を構えるデレ。

ふり返った時には既にツンは細剣を構えていた。

ζ(゚ー゚*ζ「やっぱりレイピア使いはちょこまかするのね。
短剣使いほどじゃないけど、うざいなぁ」

ξ゚听)ξ「両手斧を片手で振り回しても攻撃判定はでないわよ。
剣技ならともかく」

ζ(゚ー゚*ζ「攻撃判定は出なくてHPを削れなくても、」

デレの斧がツンを狙って右へ左へ横薙ぎに振り回される。

ζ(゚ー゚*ζ「『衝撃』は与えられるかなって思って」

しかしその全てを完璧に避けるツン。

ζ(゚ー゚*ζ「いるんだけど、
ホントにちょこまかと避けるなー」

だが縦横無尽に振り回される巨大斧は徐々にツンの集中力を摩耗し、
何度かギリギリで躱す場面も見られるようになる。

ξ゚听)ξ「ちっ」

口汚く舌打ちし、体勢を立て直すために後方に跳ぶツン。

ζ(゚ー゚*ζ

.

13◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 22:43:42 ID:Y.9qViVM0

そしてそれを狙っていたかのように、
デレは斧を両手で持つ。

ζ(゚ー゚*ζ「死ね」

そして水色に輝いた斧を横に振った。

ξ゚听)ξ!

両手斧の生み出した衝撃波がデレを中心に扇状に広がる。

それを見たツンは、
自分が着地するタイミングと衝撃波が通り過ぎるタイミングが
ほぼ同時であることを推測した。

ξ゚听)ξ「(デレ、予想よりも強いわね……)」

そして慌てることなく細剣を二回くるくると回して白く輝かせた。

ξ゚听)ξ「本当は先に理由を知りたかったんだけどね」

着地した瞬間ツンを襲う衝撃波。

細剣と衝撃波がぶつかり、火花のような光が迸る。

ζ(゚ー゚*ζ!

そして光がおさまった先にはツンが立っていた。

ζ(゚ー゚*ζ「……なんで、無傷なのよ」

その姿を見て思わず口にするデレ。

ξ゚听)ξ「無傷じゃないわよ。
耐久値ギリギリ。
この剣それなりにレアもので結構気に入ってるんだから。
兄者に直してもらわなきゃ」

手首を振るツン。

.

14◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 22:45:22 ID:Y.9qViVM0

すると今まで持っていた細剣が消え、
別の細剣が現れた。

ζ(゚ー゚*ζ「だって、
あの技は防御技無しで細剣で受け止める事なんて……。
余程大きなレベル差がなきゃ……。
レベル差!?レア!?」

ξ゚听)ξ「レアって言っても反則級じゃないわよ。
ちょっとドロップ率の低いアイテムは使っているけど、
一日頑張ればドロップできるし。
普通のレイピアより少しだけ硬くて、
更に10秒間だけ硬度を上げる武器特有スキルがあるだけ。
兄者の製作者補正で他の人が作るよりは多少良い数値化もだけど、
誤差範囲だろうし」

ζ(゚ー゚*ζ「そんなことで……」

ξ゚听)ξ「あとはこの服や防具は伊達じゃないってことと、
あの技は何度も弟者相手に練習してるって事かしらね」

ζ(゚ー゚*ζ!

ξ゚听)ξ「さて、どうする?
諦めてくれるならうれしいけど」

そう言いながら細剣を構えるツン。

新たに出した細剣は先程まで使っていた細剣よりもさらに武骨であり、
その形は細長い円錐状の槍の先端部に柄を付けたように見えた。

ζ(゚ー゚*ζ「諦めるわけないでしょ」

ξ゚听)ξ「でしょうね」

笑いながら闘気を漲らせて再び巨大斧を構えるデレ。

それに対するツンは静かに細剣を構えている。

.

15◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 22:48:57 ID:Y.9qViVM0

ζ(゚ー゚*ζ「次は外さない」

ξ゚听)ξ「いいわよ。来なさい」

ζ(゚ー゚#ζ!

ツンの言葉に一瞬怒りを露わにするが、
すぐに笑顔に戻るデレ。

ζ(゚ー゚*ζ「本当……嫌な女」

二人は数メートルの距離を間において構え合っていた。

ξ゚听)ξ「そう?」

ζ(゚ー゚*ζ「ええ。本当に」

そして次の瞬間デレが跳躍する。

ξ゚听)ξ!

ζ(゚ー゚*ζ「嫌な女!」

助走も構えもせずに、
足首の動きだけで距離を詰めたデレ。
斧は赤く光り輝いており、
一連の動きが剣技であることが分かる。

そしてツンはその場から動けなかった。

ζ(゚ー゚*ζ「はっ!」

斧がツンの斜め左上から襲い掛かる。

ζ(゚ー゚*ζ!

誰かが見ていれば、ツンは死んだと思っただろう。

いや、ツンの事を知らない誰かが見ていたとしたら、
ツンは死んだと思っただろう。

.

16◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 22:51:32 ID:Y.9qViVM0

ξ゚听)ξ「で?」

しかし彼女は、無傷でそこに立っていた。

ξ゚听)ξ「この程度?」

更に言うのならば、その場から動いていなかった。

ζ(゚ー゚*ζ「う、うそ……」

二人の武器が接する点から火花が散る。

ζ(゚ー゚*ζ「な、なんで……」

剣技を発動した巨大両手斧の攻撃を、
片手で持たれた細剣が微動だにせず受け止めている。

ζ(゚ー゚*ζ「どうして……」

ξ゚听)ξ「……まずは現実を見なさい」

ζ(゚ー゚*ζ「!ちっ」

剣技発動の残っている時間を使って後ろに跳ぶデレ。

そして地に膝をついた状態で発動後の硬直を起こして動けずにいるが、
ツンはじっとその様を見つめるだけで追撃をしようとはしない。

ζ(゚ー゚*ζ「……何故、追撃しないの」

ξ゚听)ξ「……一瞬で終わりたいの?」

ζ(゚ー゚#ζ!

両手斧を握りしめて立ち上がるデレ。

ζ(゚ー゚#ζ「私を、憐れむな」

ξ゚听)ξ「別に憐れんでなんかないわよ」

ζ(゚ー゚#ζ「その目が憐れんでるっていうのよ!」

.

17◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 22:54:31 ID:Y.9qViVM0

両手斧でツンに襲い掛かるデレ。

しかし彼女の持った細剣に簡単に弾かれる。

ζ(゚ー゚#ζ「くっ!」

弾かれた両手斧を即座に持ち直し、
再び振り下ろすデレ。

しかしそれも即座に弾かれる。

ζ(゚ー゚#ζ「なんで!なんで!」

両手で持った巨大両手斧を何度も振り下ろすデレ。

しかしツンはその全てを細剣で軽く弾く。

避けるのでも、躱すのでもなく、
巨大両手斧の攻撃を軽く弾く。

ζ(゚ー゚;ζ「なんで!なんで!なんで!」

ツンは全ての攻撃を細剣で弾き、
その場を動いてもいない。

ζ(゚ー゚;ζ「どうしてよ!」

水色に輝いた両手斧が、
ツンの真上からまっすぐに振り下ろされる。

ξ゚听)ξ「……」

ツンは横にした細剣を頭上に掲げそれを受け止めた。

ζ(゚ー゚;ζ「なんで!なんでなの!?」

ξ゚听)ξ「レベルは私の方が上でしょうね。
けれど、普通の細剣使いならこんな戦い方はしないわよ」

ζ(゚ー゚;ζ「え?」

.

18◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 22:56:58 ID:Y.9qViVM0

ツンが軽く細剣を振ると、
デレが押し負けて後方に跳ぶ。

ξ゚听)ξ「私は、隣に立つために、
そして、殺さない為の構成をしたから」

ζ(゚ー゚;ζ「……なによ、それ」

膝をつき、技後硬直を起こしているデレ。

ξ゚听)ξ「……私は皆を率いることもできないし、
ここにいる責任を背負う覚悟なんて持てなかった」

ζ(゚ー゚;ζ「はあ?」

ξ゚听)ξ「自分の持つ知識を最大限に生かすために一人でも戦えるようになるなんて、
考えもしなかった。
自分の得意とする武器を持ち、
仲間を支えるために何を得れば一番いいかを考える事も出来なかった」

ζ(゚ー゚*ζ「なに言ってるのよ」

ξ゚听)ξ「自分が出来る事、得意なことを考えて、
苦しんで、痛みに耐えながら、
誰にもできないことを出来るようになろうだなんて、
想像もしなかった」

ζ(゚ー゚*ζ「だから何を」

ξ゚听)ξ「その時私は泣いているだけだった!」

ζ(゚ー゚*ζ!

ξ゚听)ξ「みんなが前を向いて歩み始めても、
私は自分の過ちを悔い、懺悔をし、
悲劇のヒロインの様に泣くことしかしていなかった」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

.

19◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 22:58:07 ID:Y.9qViVM0

ξ゚听)ξ「気付いた時には、
私がそこに居なくてもパーティーはまわるようになっていた。
そこにいるのは『私』じゃなくても良かった。
苦しかった。
悲しかった。
自分の愚かさに嫌気がさした。
だから、せめて、隣に立てるようなスキル構成を考えた。
もう、誰も殺さないで済む戦い方を考えた!」

ζ(゚ー゚*ζ「……何をしたのよ」

ξ゚听)ξ「スピード特化の隣に立てて、
且つ足りないパワーを補える」

ζ(゚ー゚;ζ「そ、そんなの無理でしょ!」

ξ゚听)ξ「出来たのよ。
散々皆に怒られたけどね。
武器屋と、防具屋と、道具屋。
薬によるドーピング。
そして最後に細工師の力を借りてね。
あと、おそらくは隠しパラメーター」

ζ(゚ー゚*ζ「なにそれ……」

ξ゚听)ξ「この世界は、
とても現実世界に沿っているのよ。
それでいて、もちろんゲームとしてのパラメーターが大きく作用する。
例えば同じ人が1キロの物を持って走るのと、
10キロの物を持って走るのでは、
移動速度は違うわよね。
そして、1キロの物しか持てない人が1キロの物を持った時と、
10キロの物を持てる人が1キロの物を持って走るとき、
その移動速度は違ってくる。
もちろんどのパラメーターにどれだけポイントを振っているかにもよるけど、
重いものを持てる人が軽い装備の時、
ある程度速度にも数値を振っていればそこそこ素早く動くことが出来るのよ」

ζ(゚ー゚*ζ「な、なにそれ!」

.

20◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 22:59:30 ID:Y.9qViVM0

ξ゚听)ξ「もちろん最初から分かっていたことじゃなく、
私がこのパラメーターを設定し、
実際に装備した結果からの考察だから間違っているかもだけどね。
けれど、私は今おそらくこの世界で瞬間最速を出すことが出来る彼を、
短い時間ならその背中を見失わないで追うことが出来る。
彼の持ちえないパワーを手にすることが出来ている。
だからきっと、この考察は間違ってない」

ζ(゚ー゚*ζ「なんで!あんたばっかりそんな!」

両手斧を強く握りしめて立ち上がるデレ。

ζ(゚ー゚*ζ「あんたばっかり!」

ξ゚听)ξ「何をそんなに私を憎むのか私には分からないけど、
そんなに憎いのなら渾身の一撃で私を殺しにきなさい」

ζ(゚ー゚#ζ「はあ!?」

ξ゚听)ξ「もちろん私はそれを打ち砕くけどね」

ζ(゚ー゚#ζ「……やってやるわよ」

デレが両手斧を剣の様に上段に構える。

ζ(゚ー゚#ζ「死ね!
『グレートインパクト』!!」

飛び上がり、ツンに向かってオレンジ色に輝く両手斧を振り下ろすデレ。

ツンは一歩踏み出し、
細剣の先を斧に合わせて差し出す。

二つの武器が重なった瞬間、
重なった個所から光が迸る。

ζ(゚ー゚*ζ「……え?」

ξ゚听)ξ「これで、終わり」

.

21◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:01:17 ID:Y.9qViVM0

ツンの目の前には、両手斧の柄だけを持って着地しているデレ。

柄を折られた斧は回転しながらデレの後方に飛び、
大地に刺さるとポリゴンに変わった。

ζ(゚ー゚*ζ「なん……で」

呆然と見つめる視線の先で、
手元に残った柄もポリゴンに変わる。

ζ(゚ー゚*ζ「なに……よ、これ……」

ξ゚听)ξ「私はもう、誰も殺したくない。
でも、みんなの横に立つのなら、
戦わないという選択肢はない。
だから私は、この戦い方を選んだの」

ζ(゚ー゚*ζ「戦い……方?」

ゆっくりと上を向き、ツンの顔を見る。

ξ゚听)ξ「相手の武器を破壊すれば、
もう攻撃されない。
攻撃されないのならば、私も攻撃しない」

デレの身体が揺れ、両膝を地に付けた。

ξ゚听)ξ「まだ他に武器が有るなら手にしても良いわ。
さっきの棍でも良い。
でも、全部私が破壊するからそのつもりでかかってきなさい」

細剣を構えるツン。

しかしデレは動こうとせず、
じっとツンの顔を見ている。

ξ゚听)ξ「……どうして、そこまで私を狙うの?」

その瞳にうっすらと涙が浮かんだのを見て、
ツンが困った顔で、けれど構えは解かずに、問いかけた。

.

22◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:02:53 ID:Y.9qViVM0

ζ(゚ー゚*ζ「…… …… ……」

小さく動く口。
おそらくは声に出していると思われるが、
小さすぎてツンに届いていない。

ξ゚听)ξ「ごめん、聞こえない」

ζ(゚ー゚*ζ「…… …… ……」

ξ゚听)ξ「……ん?何?」

ζ(゚ー゚*ζ「…… …… ……」

ξ゚听)ξ「いやだから聞こえないって」

ζ(゚ー゚*ζ「…… …… ……」

ξ゚听)ξ「ごめん、もうちょっと大きくして」

ζ(゚ー゚*ζ「…… …… ……」

ξ゚听)ξ「いや、だから」

ζ(゚ー゚#ζ「何であんたばっかりって言ってるの!
何で何度も言わせるのよ!」

ξ゚听)ξ「聞こえなかったんだから仕方ないでしょ!」

ζ(゚ー゚#ζ「それくらいさっしなさいって言ってるの!」

ξ゚听)ξ「分かるわけないでしょ!」

ζ(;ー゚#ζ「なんで分からないのよ!」

ξ゚听)ξ「……デレ」

ζ(;ー;#ζ「なんで!なんで!あんたは!
なんで!なん、で、……わた、し、は!」

.

23◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:03:57 ID:Y.9qViVM0

ぼろぼろと泣き出したデレ。

ξ゚听)ξ「デレ……」

ζ(;ー;*ζ「なんで…なんで……わたしは……」

両膝をついたまま両手で顔を覆って泣き出したデレ。

ツンは武器を横に置きながらしゃがみ、彼女を抱きしめる。

ξ゚听)ξ「違ってたらごめんね。
もしかしてだけど、わたしが、うらやましかったりした?」

ツンの腕の中でデレの身体が大きく震える。

ξ゚听)ξ「そっか。
……仲間に囲まれて、好きな服とか作ってて、
自由にものを言って、好きな人のそばにいる私が……。
……『女』である私が、うらやましくて、憎かった?」

ツンの言葉に更に大きくデレの身体が震えた。

そして顔を覆っていた手をゆっくりと外し、
自分を抱きしめている彼女の横顔を見た。

ζ(;ー゚*ζ「知ってたんだ」

ξ゚听)ξ「最初はまぁもしかしたらそうかなって。
その後は、うちのギルドには見ただけで性別分かる変態がいるから」

ζ(;ー゚*ζ「…なんで?さいしょから?
ほとんどの人が、気付かないのに……」

ξ゚听)ξ「……だって、最初の帽子、被ってくれなかったから」

ζ(;ー;*ζ「……。
かぶれ、ないから。
凄く、可愛くて、大好きで、なのに、あれ、かぶれない」

.

24◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:04:59 ID:Y.9qViVM0

ξ゚听)ξ「……うん。ごめんね。
最初の頃は、可愛いのとかは、全部女性用で作ってたから。
かぶれなかったんだよね」

ζ(;ー;*ζ「かぶれないのは、分かってたの。
持った時に、分かったの。
でも、あれを、他の人がかぶっているところとか見たくなくて。
もしかしたら、いつか、かぶれるようになるかもって」

ξ゚听)ξ「……うん」

ζ(;ー;*ζ「でも、やっぱり、いまでも、かぶれなくて。
ツンが作ってくれた服も可愛いいし、
その後作ってくれた、かぶれる帽子も、可愛くて、
好き、だけ、ど、やっ、ぱり、あれ、が、
かぶり、たく、て……。で、も、
いつ、ま、で、たっても、やっぱ、り……、
かぶれ……なく、て……」

ξ゚听)ξ「私の事が、憎くなっちゃった?」

ζ(;ー;*ζ

頷くデレ。

ツンは彼女を抱く力を強くした。

ζ(;ー;*ζ「ツ……ン……」

ξ゚听)ξ「そっか……」

ζ(;ー;*ζ「せっかくこの世界に来たのに……、
最初は女の子のでいられたのに……」

ξ゚听)ξ「……性別設定できたもんね」

ζ(;ー;*ζ「女に、なれるって。
ここでなら、体も女の子でいられるって。
だから、来たのに……。
……」

.

25◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:05:55 ID:Y.9qViVM0

ξ゚听)ξ「ログアウト出来なくなって、
デスゲームになって、
見た目を、性別を、元に戻された」

頷くデレ。

ξ゚听)ξ「そっか……」

ζ(;ー;*ζ「うん……」

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

.

26◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:06:52 ID:Y.9qViVM0

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ「?」

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(;ー;*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(゚ー゚*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(゚ー゚*ζ

ξ゚听)ξ

.

27◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:07:51 ID:Y.9qViVM0

ζ(゚ー゚*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(゚ー゚*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(゚ー゚*ζ

ξ゚听)ξ

ζ(゚ー゚*ζ「……」

ξ゚听)ξ

ζ(゚ー゚*ζ「……?」

ξ゚听)ξ

ζ(゚ー゚*ζ「…… ツン?」

ξ゚听)ξ「なに?」

ζ(゚ー゚*ζ「えっと……なんか、ないの?」

ξ゚听)ξ「なんか?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん」

ξ゚听)ξ「なんかって、なに?」

ζ(゚ー゚*ζ「えっと、いや、その、ほら、さ」

ξ゚听)ξ「?」

ζ(゚ー゚*ζ「……えっと……」

ξ゚听)ξ「ん?」

.

28◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:09:13 ID:Y.9qViVM0

ζ(゚ー゚*ζ「……ツンって、そういうところあるよね」

ξ゚听)ξ「へ?」

ζ(゚ー゚*ζ「普段はバシバシ言いたいこと言うくせにさ」

ξ゚听)ξ「言ってないわよ」

ζ(゚ー゚*ζ「言った」

ξ゚听)ξ「言ってない」

ζ(゚ー゚*ζ「言いました」

ξ゚听)ξ「言ってない」

ζ(゚ー゚*ζ「言いましたー」

ξ゚听)ξ「いつよ」

ζ(゚ー゚*ζ「前に私がオレンジのスカート欲しいって言った時に」

ξ゚听)ξ「だってあんたにあの色は似合わないし」

ζ(゚ー゚*ζ「ひっどい!」

ξ゚听)ξ「オレンジ系にしたって、もっと可愛く淡い感じの色ならともかく、
あんな原色原色してたり蛍光系のオレンジは似合いません」

ζ(゚ー゚*ζ「私は好きな色なの!着たいの!」

ξ゚听)ξ「ならせめてジャケットとかボレロっぽい感じにして、
中は引き締めないとおかしくなるって言ったでしょ!」

ζ(゚ー゚*ζ「スカートが良いんです!
あの形のスカートが良いんです!」

ξ゚听)ξ「単品で見ると確かに可愛いけど、
あんたには似合わないって言ってるのよ!」

.

29◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:10:31 ID:Y.9qViVM0

ζ(゚ー゚*ζ「似合わないなんて分からないし―。」

ξ゚听)ξ「シミュレーション画像で見て一瞬言葉詰まらせたくせして」

ζ(゚ー゚*ζ「そ、それはさ」

ξ゚听)ξ「あれは反対です。
オーダーでも作りません。
何故ならばデレには似合わないから」

ζ(゚ー゚*ζ「ひっどい!」

ξ゚听)ξ「その代わりに作ったオレンジ系統のシフォンスカート気に入ってたじゃない」

ζ(゚ー゚*ζ「それはそれ、あれはあれですー」

ξ゚听)ξ「モララーにだってオレンジ色のアクセサリー作ってもらったんだから、
それで我慢しておきなさいよ」

ζ(゚ー゚*ζ「あれはあれ、これはこれですー」

ξ゚听)ξ「っていうか、一番好きなのオレンジなのに、
武器のデコはピンクなのは何でよ」

ζ(゚ー゚*ζ「好きなオレンジでモンスター叩くのとか嫌だし」

ξ゚听)ξ「うっわ!」

ζ(゚ー゚*ζ「なによー」

ξ゚听)ξ「いやべつに。
でも『うっわ!!』」

ζ(゚ー゚*ζ「むかつくー」

ξ゚听)ξ「『うっわ!』」

ζ(゚ー゚*ζ「ツンー?」

.

30◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:11:54 ID:Y.9qViVM0

ξ゚听)ξ「なに?デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

ξ゚听)ξ「なによ」

ζ(゚ー゚*ζ「……ごめんなさい」

ξ゚听)ξ「良いわよ別に」

ζ(゚ー゚*ζ「……良くないよ」

ξ゚听)ξ「……そうね。良くないわね。でも、良いわよ」

ζ(゚ー゚*ζ「なにそれ」

ξ゚听)ξ「んー。私個人としては良いんだけど、
デレにとっては良くないんだろうなって事」

ζ(゚ー゚*ζ「なにそれ」

ξ゚听)ξ「デレがもうこのことで私を殺そうとしないなら、
私は死ななかったしケガもしなかったから、
別にいいやって思ってる」

ζ(゚ー゚*ζ「……そう、なんだ……」

ξ゚听)ξ「でも、デレは違うでしょ?」

ζ(゚ー゚*ζ

ξ゚听)ξ「後悔してる。悔やんでる。
だから、簡単に『良いよ』って言えないだろうなって思う」

ζ(゚ー゚*ζ

ξ゚听)ξ「私としては、友達とちょっと喧嘩しちゃった感じで良いんだけどね」

ζ(゚ー゚*ζ「……派手なケンカだよ……」

.

31◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:12:57 ID:Y.9qViVM0

ξ゚听)ξ「大喧嘩ね」

ζ(゚ー゚*ζ「……うん」

ξ゚听)ξ「で、仲直りした。
雨降って地固まるってやつよ」

ζ(゚ー゚*ζ「ツン……」

ξ゚听)ξ「なに?」

ζ(゚ー゚*ζ「……大バカだよ」

ξ゚听)ξ「え?また喧嘩売られてる?」

ζ(゚ー゚*ζ「売らない。
もう武器破壊されたくないし」

ξ゚听)ξ「ふっふっふ。それが賢明な判断よ」

ζ(゚ー゚*ζ「でも、ほんとう、大バカだよ」

ツンを強く抱きしめるデレ。

ξ゚听)ξ「デレ……」

ζ( ー *ζ「ごめん、本当にごめんなさい。
…… …… …… ありがとう」

ξ゚听)ξ「……うん」

ζ( ー *ζ「ごめんなさい……
ごめんなさい……」

ξ゚听)ξ「一個だけ約束して。
また、来てよね。
今まで通り、友達価格で作ってあげるからさ。
そして、モララーからかって、お茶しに行こう」

.

32◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:13:57 ID:Y.9qViVM0

ζ( ー *ζ「うん……うん……」

ξ゚听)ξ「っていうか、明日来るようにね。
帽子、作るからさ」

ζ( ー *ζ「ありがとう……。
オレンジのスカートも作ってね」

ξ゚听)ξ「それは嫌だ」

ζ(゚ー゚*ζ「ダメかー。
今の流れなら作ってくれるかと思ったのに」

ξ゚听)ξ「ふっふっふ。流されないわよ」

ζ(゚ー゚*ζ「ちっ」

ゆっくりと身体を離す二人。

互いの手を握り、顔を見る。

ニッコリとほほ笑んだツンと、
少しだけぎこちなく笑ったデレ。

それを見たツンが、一度頬を膨らませた後にさっきよりもにっこりとほほ笑む。

そしてデレが、今度は泣きそうな顔で笑顔を見せた。

「そろそろ時間だぞー」

そんな二人に男が声をかけた。

ξ゚听)ξ「!もうそんな時間か!」

ζ(゚ー゚*;ζ「!」

驚いて横を向いたデレと、立ち上がって周囲を見るツン。

.

33◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:15:02 ID:Y.9qViVM0

ζ(゚ー゚*ζ「え?あ?」

( ^Д^)「ちーっす」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、ち、ちーっす」

( ^Д^)「お、結構ノリが良い」

片手をあげて手のひらを近づけたプギャー。
デレがその手のひらに自分の手のひらを近づけると、
プギャーは軽く叩いた。

ξ゚听)ξ「もう近いの?」

( ^Д^)「ああ。五メートルってところかな」

最初に使っていた物とも違う細剣を出し周囲を伺うツンに、
プギャーがのんきに答えた。

ζ(゚ー゚*ζ「え?え?」

ξ゚听)ξ「多分あんたのことも使い捨てにするつもりだったんでしょうね。
あいつら。
ほら、さっさと立って武器持って。
斧の予備が無いなら棍でもいいから」

ζ(゚ー゚*ζ「両手斧の予備はあるけど……」

立ち上がりながらウインドウを操作して武器を取り出すデレ。

そして周囲を伺う。

ζ(゚ー゚*ζ「でも……」

ξ゚听)ξ「ここは、ある一定の条件下で『出る』のよ。
アレが」

ζ(゚ー゚*ζ「え?で、出るって?」

.

34◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:16:20 ID:Y.9qViVM0

( ^Д^)「ある一定の時間決まった小人数だけがこの場にいると、
出没するモンスターが居るんだ」

ζ(゚ー゚*ζ「え?」

( ^Д^)「このフロアが解放されてあんまり人が来なくなってから発見された状況だけどな」

ξ゚听)ξ「プギャー、あとどれくらい?
あと、あんた指揮出来る?」

( ^Д^)「あと3メートルってところだな。
出来るわけないだろ」

ζ(゚ー゚*ζ「ね、ねえ、ちょっと出るってなにが?」

ξ゚听)ξ「デレ、円形放射系範囲攻撃の準備して。
しょうがないからタイミングは私が執る」

ζ(゚ー゚*ζ「な、何?どういう事?」

戸惑いながらも武器をかまえるデレ。

ζ(゚ー゚*ζ「も、もうモーションに入っていいの?
あと技は水平に扇状にひろがるタイプで良いよね」

ξ゚听)ξ「『スクーレアトラオーネ』?」

ζ(゚ー゚*ζ「え?あ、う、うん」

ξ゚听)ξ「うん、技は上等よ!
硬直時間も最大15秒まで使っていいから威力最大でやってね。
あと確かあれはモーションも30秒まで待機大丈夫よね」

ζ(゚ー゚*;ζ「は、はい」

ξ゚听)ξ「プギャー?」

( ^Д^)「もうすぐだな。10秒くらいで分かるはずだ」

.

35◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:17:34 ID:Y.9qViVM0

ξ゚听)ξ「了解。デレ、もう少し待って。
ただ準備はするとして、
森を背に草原を見て構えた状態でいて」

言われた通りに動くデレ。

ツンとプギャーは技に巻き込まれない位置に移動する。

ζ(゚ー゚*ζ「ね、ねえ」

ξ゚听)ξ「技を出した後の硬直状態時は私とこいつで守るから安心して。
その後はこいつのスキルを使って出来るだけ敵が少ない道を使って脱出するからついてきて。
基本的には周囲に来る敵を一撃当てて怯ませて深追いは無し。
移動に重点を置いて、逃げるわよ」

ζ(゚ー゚#ζ「そうじゃなくて!だから何が出るのよ!?」

( ^Д^)「出るぞ」

三人の視線の先、2メートルほど離れた場所の地面が隆起する。

ζ(゚ー゚*ζ「え?」

直径1メートル、高さ30センチほどに隆起した地面。

ζ(゚ー゚*ζ「なにこれ」

一つ隆起したと思うと、
視界一面に次々と円錐が生まれる。

それは三人を中心にした半径二メートルほどの空間以外の地面で起こった。

ζ(゚ー゚*;ζ「え?え?」

ξ゚听)ξ「デレ準備!」

ζ(゚ー゚*ζ「う、うん!」

ξ゚听)ξ「今から相手するのは『フルミトープ』。
モグラアリって呼んでる蟻の形をしたモンスターよ」

ζ(゚ー゚*;ζ「はあ?」

.

36◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:19:09 ID:Y.9qViVM0

一番最初に出来上がった円錐の先端がはじけ、
中から新たな円錐が見えたと同時に円錐がはじけ、
中から人と同じ大きさの蟻が現れる。

ζ(゚ー゚*ζ!!

二足で立ち上がり、手に持った槍を構えて三人を見ている。

ζ(゚ー゚*ζ「ひっ!」

ξ゚听)ξ「まだ撃たないで!
こいつは集団で出てくるの!」

デレは顔を引きつらせながら両手斧を持つ手に力を籠めるデレ。

ζ(゚ー゚*;ζ「集団!?」

デレの叫びと同時に全ての三角錐がはじけ、
中から巨大アリが現れた。

ζ(゚ー゚*ζ「     」

その光景に思わず呆けたデレ。

ツンの声が響く。

ξ゚听)ξ「今よ!」

ζ(゚ー゚*ζ「!は、はい!」

デレが赤く光った両手斧を左から右に一閃すると、
扇状に衝撃波が放たれた。

巨大アリ「「キーーーーーーーー!!!!!!!」

技後硬直しながら見つめるデレ。

ξ゚听)ξ「プギャー!」

.

37◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:20:52 ID:Y.9qViVM0

( ^Д^)「はいはい」

デレの手から斧がツンに奪われ、
その体をプギャーが横抱きにする。

ζ(゚ー゚**ζ「えっえっえっっっ!!!?」

いわゆるお姫さま抱っこと呼ばれるものである。

ξ゚听)ξ「行くわよ!」

巨大斧を服の装飾リボンで背中に固定すると走り出すツン。

( ^Д^)「右に少し修正!そっちの方が薄い!」

ξ゚听)ξ「了解!
とりゃあ!」

ζ(゚ー゚*ζ「えっちょっなにこれ!」

ξ゚听)ξ「硬直時間でも無駄にできないのよ!
硬直時間過ぎたらもう一回行くわよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「は、話が違うでしょ!」

ξ゚听)ξ「言ったら嫌がるでしょ!」

ζ(゚ー゚*ζ「何でこんなことに!」

ξ゚听)ξ「ここを脱出したら教えてあげるわよ!」

喋りながらも少しずつ湧き出る敵を一撃で葬り続けるツン。

ζ(゚ー゚*ζ「なんなのー」

.

38◆dKWWLKB7io :2017/10/24(火) 23:22:00 ID:Y.9qViVM0

( ^Д^)「(とりあえず一番悲しいのは、
男をお姫さま抱っこして走っているおれだよな。
……男、……なんだよな。
ツンより女らしいけど。
胸は詰め物かな)」

ξ゚听)ξ「プギャー!
こっちで良いの!?」

( ^Д^)「あ、ああ。
大丈夫。そっちが一番薄いし出口に向かってる」

ξ゚听)ξ「そう。わかった。
方向指示は任せたわよ。
あと、全部終わったら話があるから覚えておきなさい」

(;^Д^)「お、おう。
(ブーンとドクオに気を付けろって言われてたのに!
っていうかなんで分かるんだよ!)」

ξ゚听)ξ「女の勘よ!!
とりゃああああああああああ!!!!」

(;^Д^)「おれの心の声と会話をするなーーーー!!!!」

ツンが敵を倒しながら走る後ろを、
プギャーがデレを抱き上げたままついて走った。





.
45◆dKWWLKB7io :2017/10/25(水) 23:07:42 ID:/T2YtcK.0

36.





ヒッキーがドクオの喉に剣を突き立てようとした時、
茂みから飛び出した彼女は持っていた武器を力任せに投げた。

(;-_-)「おっと」

少しだけ慌てたように後方に跳びつつ飛んできた長柄の鎌を片手剣ではじく。

从;゚∀从「ドクオ!」

ドクオのそばに駆け寄るハイン。
肩を抱き、背後からその体を抱きしめる。

从;゚∀从「ドクオ!ドクオ!ドクオ!ドクオ!ドクオ!ドクオ!」

('A`;)「もちつけハイン」

从;゚∀从「良かった、良かった。
生きてる、生きてるよー。
ドクオー」

涙目で抱きつくハイン。
その彼女の頭を、ドクオは優しくなでる。

('A`;)「いいから落ち着け」

从;゚∀从「あ、ご、ごめん!
最後まで見ていろって言われてたのに出てきちゃって。
でも、でも」

('A`;)「怒ってないから落ち着けって。
出てきてくれなきゃ死んでた可能性があるから助かったよ。
ありがとう」

.

46◆dKWWLKB7io :2017/10/25(水) 23:08:56 ID:/T2YtcK.0

从*゚∀从「あ、ご、ごめん抱きついちゃったりして。
あー。でも生きてる。良かった」

('A`;)「あーうん。ありがとう。
ところでおれの声聞こえてる?」

从*゚∀从「もちろん!」

('A`;)「聞こえてるけど伝わってないパターン?」

从*゚∀从「大丈夫!分かってる!」

('A`;)「えっとじゃあ、あそこで睨んでる人いるから離れてもらえるかな」

从 ゚∀从「……ちっ」

('A`;)「え?」

从 ゚∀从「とりあえずあいつを倒せばいいってことで」

立ち上がりヒッキーを見るハイン。

ヒッキーは苦虫を噛み潰したような渋い顔をしつつ二人を睨んでいた。

(#-_-)「男装の麗人でヤンデレとか盛り込みすぎだろ」

从 ゚∀从「?何を言ってる」

('A`;)「いや、別にハインはヤンデレではないと思うけど」

(-_-)「……どうでもいい。
殺すのが二人に増えただけだ」

表情を変えて二人を見るヒッキー。

从 ゚∀从「ふっ。私たち二人を相手に殺せるとか」

.

47◆dKWWLKB7io :2017/10/25(水) 23:10:24 ID:/T2YtcK.0

(-_-)「君たちの武器は僕が預かっている。
予備は持っているだろうけど、
これに比べれば落ちるでしょ。
そんな武器で僕と戦えると思ってるの?」

从 ゚∀从「何言ってんだお前?」

手を振るハイン。
現れる長柄の鎌を持って構える。
その鎌はヒッキーに投げた鎌と同じように見える。

(-_-)「ふっ。だからそんな武器……で……えっ?」

从 ゚∀从「ドロップ品ならともかく、
私達の武器はほぼ全部兄者に作ってもらってるからな。
最低でも素材は二つ分用意して、
同等の武器を作ってもらうようにしてるんだ」

(;-_-)「な、なんだよそれ」

从 ゚∀从「それに、大体みんな予備の方に強力な奴を用意してるし」

(;-_-)「な、なんで!?」

从 ゚∀从「だって今使っている武器で倒せない相手が出た時に、
それより弱い武器に持ち替えたって勝てるわけないだろ?」

(-_-)!!

从 ゚∀从「だからそういう風にしてるんだ。
最低でも同等の武器を持つこと。
出来ればさらに強い武器を持っておくこと」

(;-_-)「そ、そんなのずるい!」

.

48◆dKWWLKB7io :2017/10/25(水) 23:12:15 ID:/T2YtcK.0

从;゚∀从「いや、ずるいって言われても……。
ねえ。どっくん」

('A`;)「あー。まぁ普通は今持ってる武器が一番強いのが普通だからなぁ。
でもほら、うちはギルマスが特殊だから。
奥の手とか持ってないと不安になるタイプだし」

从;゚∀从「だなー」

('A`;)「それに武器落としの危険もあるけど、
武器破壊もされる可能性あるからさ」

(;-_-)「そんなことしてくる敵いないだろ!」

('A`;)「敵はなー。
モンスターは今のところ出てきてないか。
ボス戦では起きたって話は聞いたけど。
ただまあな、
うちにいるプレイヤーというかモンスターがそういうプレイスタイルだから、
自然と色々と対策を各人も考えているわけで」

从;゚∀从「……だなー」

(;-_-)「なんだよそれ!」

('A`;)「えっと……ごめん?」

(#-_-)「あやまるな!」

肩を上下させ、呼吸を荒くし、
全身で怒りを表しているヒッキー。

困惑した表情でドクオたち二人はそれを見ていたが、
ヒッキーはすぐに呼吸を落ち着かせた。

(-_-)「……まあいい。
いくら武器はちゃんとしていても、
部位欠損はまだ回復しない。
その足でどこまで戦えるか」

从 ゚∀从「『リペア』!」

.
50◆dKWWLKB7io :2017/10/25(水) 23:14:26 ID:/T2YtcK.0

ドクオの身体にポリゴンの光が集まり、
部位欠損をしていた足が元に戻った。

(-_-)「……え?」

从 ゚∀从「『修復結晶(リペアクリスタル)』」

(-_-)「……は?」

('A`;)「あー。
まだ市場には出回っていないレアアイテムなんだ。
というか、知ってるやつの方が少ないだろうな。
情報屋DBにも載せてないし」

(#-_-)「ふ、ふ、ふ、ふ、ふ」

从 ゚∀从「え?笑ってる?」

(#-_-)「ふざけるなーーーー!!!!!」

('A`;)「ああうん。
おれも多分同じ立場だったらそう思うと思う」

(#-_-)「ころす!ころす!ころす!ころす!ころす!
ぜったいにころす!」

二人の武器を後方に放り投げ、
片手剣を構えるヒッキー。

ドクオの前に立とうとするハインを押さえるドクオ。

从 ゚∀从「どっくん?」

('A`)「大丈夫だ。
今度こそ、見ていてくれ」

从 ゚∀从「……わかった」

鎌をかまえつつ、それでも後ろに下がるハイン。

そしてドクオはやる気がなさそうに武器をかまえた。

.

51◆dKWWLKB7io :2017/10/25(水) 23:15:58 ID:/T2YtcK.0

('A`)「ヒッキー、悪かったな」

(#-_-)「はぁ!?」

('A`)「甘く見ていたわけじゃない。
手加減をしていたわけじゃない。
けれど、戦い方は確かにおれの本来のスタイルではなかったかもしれない」

(#-_-)「知るかそんなこと!」

('A`)「ああ。そりゃそうだ。
でも言っておく。
いままでは、おれが成りたかったスタイル。
けど、今のおれにはまだ無理だった。
だから、これからは、おれのスタイルでお前と戦う」

(#-_-)「はっ!それなら勝てるとでもいうのかよ!」

('A`)「……ああ」

駆け出すドクオ。

(#-_-)「不意打ちのつもりか!」

ドクオの動きに合わせて片手剣を動かす。

そしてその時、ヒッキーの視界からドクオが消えた。

('A`)「勝つよ」

ヒッキーの身体に刺さるドクオの片手剣。

(-_-)「!?」

自分のHPが急激に減るのを視界の隅に確認しながらドクオの姿を追って足を動かすヒッキー。

そして剣を振り下ろすが既にその場にドクオはおらず、
逆に自分の武器を持つ手首が切り裂かれるのを見た。

.

52◆dKWWLKB7io :2017/10/25(水) 23:17:20 ID:/T2YtcK.0

(-_-)「え?」

思わず漏れた一言。

腹が切り裂かれるのを感じながら、
地面に落ちる自分の武器と、
ポリゴンとなって消える右手を見た。

(-_-)「どういうこと……」

既にヒットポイントは赤くなっており、
あと二回胴体を切り裂かれれば自分は死ぬであろうことが分かるヒッキー。

恐怖に強張り動かなくなる身体。

何かが割れる様な音が聞こえると、
赤く染まった片手剣が自分の身体を切り裂くのが分かる。

(-_-)「や……だ……死にたく……ない……」

意識せず膝をついてしまった自分に驚きつつ、
無意識にドクオの姿を探すヒッキー。

そして目の前にいた彼に懇願するような顔で見つめた。

('A`)「今のは麻痺毒と睡眠毒の混合毒だ。
両方の耐性を最高まで上げてあっても、効く」

(-_-)「なんだよ……それ……。
ずるい……よ……」

地面に横たわるヒッキー。

死なないことに、
殺されないことに安心したのか、
表情は元に戻っている。

.

53◆dKWWLKB7io :2017/10/25(水) 23:18:53 ID:/T2YtcK.0

('A`)「それはおれもそう思う。
ただこれ、対プレイヤーにしか効かないから、
ほぼPK専用なんだよ。
だからこれが世に出ることは無い」

(-_-)「……手も足も……でなかった」

('A`)「おれの持ち味は気配を消して死角からの攻撃だからな。
真正面から、しかも相手がおれに、
おれの動きに注目して武器を動かしてくれれば、
そこに生まれた死角と隙を読んで攻撃できる」

(-_-)「……なんだよそれ……」

('A`)「もちろんレベル差や能力差があれば通用しないけどな。
お前相手なら、勝てるよ。おれは」

(-_-)「……ひでぇな」

口元をゆがめる。

(-_-)「なあ、……ロマネスクを……」

最後まで言えず、眠りに落ちるヒッキー。

('A`)「……」

足元で倒れているヒッキーを見つめるドクオ。

从 ゚∀从「どっくん……」

('A`)「……ハイン。
そうだな……効果が切れる前に回廊を開いて、
向こうで待ってる風林火山の人達に渡さないと……」

ドクオの背中に抱きつくハイン。

('A`)「ハイン?」

.

54◆dKWWLKB7io :2017/10/25(水) 23:21:35 ID:/T2YtcK.0

从 ゚∀从「無理しないで。
どっくん、プレイヤーを攻撃するの本当に嫌いなの、
私は知ってるから」

('A`)「……ハイン」

从 ゚∀从「どっくんは理性で感情を押し殺して無理するから、心配」

('A`)「大丈夫。
今日は最初から覚悟していたし。
でも、そうだな。
今日が無事に終わったら、
明日は気分転換に一緒に出掛けてもらえるかな?
ほら、この前言ってたカフェとか?
その……フラワーガーデン?とか?」

从 ゚∀从「…… …… ……    え?」

('A`)「あ、いや、その、嫌だったらいいんだけどその、
デキレバイッショニデカケタイナナンテオモッタリシタンダケドドウカナ」

从*゚∀从「い、い、行く!
行く!行く!
絶対行く!
シャキンとかに邪魔されたら殺してでも行く!
っていうか今から行こう!
さっさとこいつ牢獄に押し込んで!
ほらさっさと!」

('A`;)「いや殺すのはやめてほしいのと、
とりあえず全部終わるまでは各チームのフォローとかしないとだし」

从*゚∀从「初めてどっくんから狩り以外誘われたから!」

('A`)「あ、そうだっけ?」

从*゚∀从「どうしよう!服何着ればいいか分からないから!
ツンに新しいの作ってもらうから!」

.

55◆dKWWLKB7io :2017/10/25(水) 23:22:41 ID:/T2YtcK.0

('A`)「狩りは最近よく行ってたからな」

从*゚∀从「緊張してるから!」

('A`)「ところでなんで口調がフサギコみたいになってんの?」

从*゚∀从「楽しみだから!」

('A`;)「ああ、うん。
ま、いいか。
とりあえず、回廊結晶使うから少し離れてて」

結晶を取り出しつつ少し離れるドクオ。

('A`)「おれも楽しみだし、
……緊張、してる」

ドクオの呟きは、浮かれているハインには聞こえなかった。





.
61◆dKWWLKB7io :2017/10/26(木) 23:02:37 ID:nmMoCbVE0

37



(゚、゚トソン「残り通常5発!」

( ゚∋゚)『了解!もう一匹が再ポップするまでの間、
残り3発でキープしてくれ!
デミタス!ミルナと交代!
デミタスはHP回復優先!
襲撃者はクーが片付けているはずだが周囲の警戒は継続!
エクスト!おれとスイッチして重攻撃の準備!』

目の前の兵隊蟻のHPバーを確認したトソンが誰に向けてか分からない報告をすると、
クックルは仲間にしか聞こえない声で追加の指示を出し、
更に仲間達にも指示を出した。

(゚、゚トソン

(´・_ゝ・`)

( ゚д゚ )

三人は頷きもせず視線も交わさず身体を動かし、

<_プー゚)フ「うをおおおおおおりゃあああああああ!」

エクストは最後のHPバーを黄色に変えた巨大蜘蛛相手に両手剣を振り回していた。

( ゚∋゚)『エクスト!』

クックルがエクストの背後で彼の名を呼ぶ。

<_プー゚)フ

ちらりと後を気にしてから更に両手剣を振り回すエクスト。

そして硬直時間をほぼゼロにするまで鍛え上げた剣技を放つ。

.

62◆dKWWLKB7io :2017/10/26(木) 23:04:18 ID:nmMoCbVE0

( ゚∋゚)『スイッチ!』

巨大蜘蛛がエクストの剣技で後退した瞬間に飛び出すクックル。

エクストはそのまま後ろに下がる。

( ゚∋゚)『おれの攻撃で赤に変える!』

流れるような棍さばきで巨大蜘蛛を攻撃するクックル。

巨大蜘蛛の攻撃はほぼすべてが棍によって向きを変えられ、
流されている。

攻撃を見極めることが出来ているのはもちろんだが、
レベルに余裕があるからこそできる戦い方だった。

( ゚∋゚)『そのタイミングでエクスト!ミルナ!重攻撃!とどめを刺そう!』

<_プー゚)フ!

( ゚д゚ )!?

(´・_ゝ・`)!?

(゚、゚トソン!?

クックルの言葉に思わず体を強張らせる三人。
エクストのみ不敵な笑みを浮かべて両手剣を頭上に掲げている。

( ゚д゚ )「お、おいエクスト」

<_プー゚)フ「ん?」

( ゚д゚ )「おれたち三人の最上級剣技で倒せ」

<_プー゚)フ「計算だと無理じゃね?
多分削り切れないだろ」

駆け寄り、小声で話しかけてきたデミタスの言葉に被せる様に小声で喋るエクスト。

63◆dKWWLKB7io :2017/10/26(木) 23:05:44 ID:nmMoCbVE0

( ゚д゚ )「ならなんで笑ってられるんだ」

<_プー゚)フ「このギルドの戦闘で、
指揮者の言葉を信じないでどうすんだ?」

不思議そうに問いかけるエクスト。

( ゚д゚ )!

<_プー゚)フ「それに今は覚悟を決めたクックルが指揮者だ。
どんな結末が出るか楽しみだよな」

( ゚д゚ )「……ああ、そうだな」

ニヤリと笑ったエクストの横顔を見ながら、
ミルナが口元を忌々し気にゆがめた。

( ゚д゚ )「(こいつに教えられるとはな)」

苦笑と呼ぶにふさわしい表情で離れようと心配そうにこちらを見る二人に気付く。

再ポップした兵隊蟻と戦いながらこちらを気にするデミタスと、
周囲を警戒しつつ心配げなトソン。

ミルナは笑顔で二人に頷いた。






薙刀を下段に構え、周囲を警戒するクー。

その周囲を木々に隠れる様に襲撃者が走り回っている。

川 ゚ -゚)「(ふむ……)」

走り回る襲撃者の位置を、
視界に頼ることなく感覚で掴んでいるクーもただ者ではないのだが、
本人に自覚は無く襲撃者も甘く見ていた。

.

64◆dKWWLKB7io :2017/10/26(木) 23:06:50 ID:nmMoCbVE0

川 ゚ -゚)「(予想よりかは手強いが、まあそれだけだな。
想定の範囲内だ)」

(襲撃者2)「(おれの位置が分からなくて棒立ちか。
これならあいつが来る前におれ一人で……。
い、いや、ダメだ。あの女はそこまで強くないが弱いわけじゃない。
念には念を入れて確実に勝たないと)」

時折木の陰に立ち止まりつつも走り回る襲撃者。

川 ゚ -゚)「(さて、そろそろ決着を付けにくるかな。
狙うとしたら背後、右に武器を持っているから左後方からくるか……。
ま、やることは変わらないか。
麻痺毒の効き目はまだ大丈夫だが、
早めに片付けて合流したいところだ)」

(襲撃者2)「(……よし)」

襲撃者が視界の片隅に仲間を確認し、片手剣を持つ手に力を込める。

(襲撃者2)「(あいつは、あいつらは、俺達を殺そうとはしない。
ならばこれで……いける!)」

(襲撃者2)「死ねー!」

クーの右斜め前から飛びかかる男。

川 ゚ -゚)「ふむ」

上段から振り下ろされる片手剣を薙刀で薙ぐクー。

(襲撃者2)!

クーの薙刀は剣を払うと円を描いて男を攻撃し、
そのHPを三分の一程削る。

(襲撃者2)「(ここまで削られるのか!?)

.
65◆dKWWLKB7io :2017/10/26(木) 23:07:56 ID:nmMoCbVE0

そしてクーは攻撃されて地面に落ちた男を見る事も無く、
薙刀を回しながら振り返り、
後ろから攻撃してきた男の片手剣を下から上に払った。

(襲撃者3)「!!」

しっかりと握っていたはずの剣が、
自分の武器が宙に舞うのを思わず視線で追う男。

その隙を見逃すほどクーは愚かでもなく、
男はその体に薙刀の攻撃を3回受けて崩れ落ちる。

(襲撃者3)「!」

視界の隅に浮かぶ自分の名前とHPバー。
赤に変わったそれと、麻痺を意味するアイコンを見ると同時に、
男は意識を手放した。

(襲撃者2)「!ちくしょう!」

既に振り返って自分を見ているクーに対して立ち上がって剣を振り上げた男。

そして自分に対して薙刀が振るわれた瞬間勝利を確信した。

(襲撃者2)「……え?」

だがその勝利の確信は次の瞬間に打ち砕かれる。

クーの薙刀は男の身体ではなく剣をはじき上げ、
そして左側の樹に刃先を突き立てた。

(襲撃者4)「ぐぇっ!」

刃先には今まで見えていなかった男がいた。

腹に刃を突き立てられた男は悲鳴を上げてクーを睨む。

だがすぐさま薙刀を引き抜いたクーは舞うように回転し、
薙刀の刃先で二人の男を二回ずつ切り裂いた。

.

66◆dKWWLKB7io :2017/10/26(木) 23:09:32 ID:nmMoCbVE0

襷で括っていた袖と、
動きを邪魔しない程度に広がっている袴が、
ふわりと揺れつつ元の状態に収まる時には、
二人の男はすでに地面に横たわっていた。

(襲撃者2)「な……ぜ……」

川 ゚ -゚)「おや。まだ意識があるのか。
抵抗を一番あげているところを見ると、
君がこの隊のリーダーということで良いか?」

(襲撃者2)「な……ぜ……」

川 ゚ -゚)「……ふむ。
まず、おそらく薙刀ではこの森の中での戦闘は不利と思っていたと思うがどうだ?
薙刀は長柄物ではあるが、
武術としては日本家屋の中でも戦える武術だ。
周囲に樹があろうが、
この程度では動きを阻害されることは無い。
あと襲ってくる者の数だが、
もともと何人いても倒すつもりでいるから何人いようと関係ない。
それに私は薙刀の届く範囲にいる者を見逃すような教育は受けていないのでな。
そこに人がいるならば、私に敵意があるのならば、私には分かるんだよ」

袂に手を入れるクー。

出したその左手は、
緑色に濡れた針をつまんでいた。

川 ゚ -゚)「悪いが、眠ってもらう。
……と、もう寝ているか。
最後のあがきだったか」

針を袂に戻す。

川 ゚ -゚)「ま、木に隠れていた男を見つけられたのはこれのおかげなんだがな。
そこまで教えてやる必要はないだろう」

そのまま左手で髪に隠れたピアスにふれる。

.

67◆dKWWLKB7io :2017/10/26(木) 23:21:58 ID:nmMoCbVE0

川 ゚ -゚)「まったく、もう少し小さくしてくれないと困ると言ったのにこんなに大きくするとは、
モララーの腕もまだまだだな」

決して大きくない紫色の小さな花を指先で撫でる。

川 ゚ -゚)「とはいえこれのおかげで対して高くない私の『看破』スキルが最高値になっているわけだから、
プラスマイナスで少し文句を言う程度で済ましてやろう」

そして倒れている男たちを見回す。

川 ゚ -゚)「ツンと違って私一人では一人を運ぶのも無理だな。
皆を呼んでこよう」

そう呟くと、
クックル達の戦っているであろうスペースに向かって歩き始めた。







クックルの放った一撃が巨大蜘蛛のHPバーを赤に変えた。

( ゚∋゚)『スイッチ!!!』

後退りし動きを止めた巨大蜘蛛に向かって両手剣を振り下ろすエクスト。

<_プー゚#)フ「とりゃああああああああああ!!!!」

深紅に光らせた真っ赤な両手剣は攻撃と同時に赤い光をまき散らす。

( ゚∋゚)『ミルナ!』

(#゚д゚ )「ふんっ!」

.

68◆dKWWLKB7io :2017/10/26(木) 23:23:06 ID:nmMoCbVE0

緑色に光る斧の五連撃。

上、下、右、左、と流れる様に斧が蜘蛛を裂き、
最後に大きく中心を切り裂いた。

<_プー゚)フ「クックル!」
( ゚д゚ )「クックル!」

同時に聞こえた二人の声に背中を押されて棍を突き出すクックル。

実際の太さを3倍ほど太くした光を纏った棍は、
巨大蜘蛛の胴体を大きく抉った。

(´・_ゝ・`)!

(゚、゚トソン!

<_プー゚)フ!

( ゚д゚ )!

四人の視線の先で巨大蜘蛛のHPバーの光が消えていくが、
最後の一つが残る。

<_プー゚;)フ「ちっ」

(;゚д゚ )「くっ」

(;´・_ゝ・`)「おいおい」

(゚、゚;トソン「クックルさん!」

硬直している身体を無理矢理動かそうとするエクストとミルナ。
駆け出すデミタス。
蟻を葬ったトソンが思わず声をかける。

( ゚∋゚)

巨大蜘蛛の前で無防備に立ち尽くすクックル。

.

69◆dKWWLKB7io :2017/10/26(木) 23:24:53 ID:nmMoCbVE0

巨大蜘蛛がその体に攻撃をしようと両手を振り上げる。

( ゚∋゚)『大丈夫』

クックルがニヤリと笑った瞬間、
巨大蜘蛛の体の中心を、
頭から胴体の先までを、
青い光が走った。

<_プー゚)フ「へ?」

( ゚д゚ )「は?」

(´・_ゝ・`)「……ああ」

(゚、゚トソン「……そういう事ですか」

六人の目の前でポリゴンと化す巨大蜘蛛。

五人の視線は降り注ぐポリゴンを払っている六人目に注がれる。

( ゚∋゚)『ナイスタイミング』

<_プー゚)フ「弟者!?」
( ゚д゚ )「弟者!」
(´・_ゝ・`)「弟者」
(゚、゚トソン「弟者さん」

(´<_` )「美味しいところ総取りいただきました」

事もなげに笑顔を見せる弟者。

( ゚∋゚)『兄者は?』

(´<_` )「え、ああ……」

川 ゚ -゚)「早く行け。回廊結晶は持ってるな?」

横の樹の影から出てきたクーが声をかける。

.

70◆dKWWLKB7io :2017/10/26(木) 23:27:48 ID:nmMoCbVE0

(゚、゚トソン「クーさん!良かった……」

(´<_` )「クー。……ああ」

( ゚∋゚)『こちらはもう大丈夫だ』

(´<_` )「……すまん」

逡巡したのちに踵を返す弟者。

川 ゚ -゚)「弟者、」

(´<_` )「ん?」

川 ゚ -゚)「ちゃんと回廊結晶を使わせろよ」

ふり返った弟者に真剣な顔で告げるクー。

(´<_` )「ああ、分かってる」

そしてすぐに前に向き直し、やってきた道に向かって走り出す弟者。

<_プー゚)フ「え?何?」

( ゚д゚ )「あー」

(´・_ゝ・`)「まあ」

(゚、゚トソン「えっと……」

<_プー゚)フ「え?おれ以外みんな分かってるの?」

( ゚д゚ )「あー」

(´・_ゝ・`)「まあ」

(゚、゚トソン「えっと……」

<_プー゚)フ「ひっでー!教えてくれよー!」

.

71◆dKWWLKB7io :2017/10/26(木) 23:30:33 ID:nmMoCbVE0

川 ゚ -゚)「あとで教えてやるからこっちを片付けるの手伝ってくれ。
倒れている奴らを黒鉄宮にぶっこむ」

既に弛緩している空気を感じて眉間に皺を刻むクー。

しかし自分の指示で男四人がぞろぞろとクーが出てきた茂みに向かって歩き出すのを見て、
皺を消して口元を緩めた。

そして四人に続こうとするトソンを呼び止める。

川 ゚ -゚)「トソンは良い。
こういうのは男の仕事だからな」

(゚、゚トソン「え?ああ……はい」

ニッコリとほほ笑んだトソンを見て、
クーは一つ終わったことを感じながら、
この場にいない仲間たちの事を思いながら空を見た。






.
77◆IdIQLHp8Vc :2017/10/27(金) 23:48:16 ID:Mjkaa9AM0

38.




(;´ー`)「ブーン!」

|; ^o^ |「ブーンさん!」

散乱する片手剣。
宙を舞うポリゴンの欠片。
その中で倒れているブーンに駆け寄る二人。

(;´ー`)「おい!ブーン!」

|; ^o^ |「だ、大丈夫ですか!?」

( -“ω-)

(;´ー`)「練習の時よりひどいだーよ」

|; ^o^ |「しっかりしてください!ブーンさん!」

ブーンを抱き上げて上半身を起こすシラネーヨ。
ブームはその正面に回り、ブーンの頬を軽く叩いた。

|; ^o^ |「ブーンさん!ブーンさん!」

(;´ー`)「HPバーも残ってるし、
もちろん消えていないから死んでいないことは分かるだーよ」

|; ^o^ |「でも、ただ眠っているだけのようにも見えません」

(;´ー`)「そんなことは分かってるだーよ!」

|  ^o^ |「!こ、これをもう一度」

腰のポーチからクリスタルを取り出すブーム。
そしてタップする。

.

78◆IdIQLHp8Vc :2017/10/27(金) 23:49:21 ID:Mjkaa9AM0

◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終わりなさい!』』

ツンのホログラフが現れて叫んだ。

( “=ω-)「  」

|; ^o^ |「!反応が少し!」

(;´ー`)「あれのどこをそこまで好きなんだーよ」

|; ^o^ |「それは謎ですがもう一度!」

◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終わりなさい!』』

( “=ω-)「……」

|  ^o^ |「変わりはないですね」

( ´ー`)「連打してみるだーよ」

|  ^o^ |「え?」

( ´ー`)「『そこまでよぶーん』辺りで止めていっぱい呼ばせるだーよ」

|  ^o^ |「はぁ……」

◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終わりなさい!』』

◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終わりなさい!』』

◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終わりなさい!』』

( ´ー`)「そうじゃないだーよ」

|  ^o^ |「え?」

.

79◆IdIQLHp8Vc :2017/10/27(金) 23:50:36 ID:Mjkaa9AM0

◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終わり
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終わ
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブー
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終
◇『ξ゚听)ξ『そこま
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブ
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!

|  ^o^ |「お!」

( ´ー`)「ふっふっふ。だーよ。

◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!

( ´ー`)「どうだーよ」

( -ω-)「……」

|  ^o^ |「反応はありませんが、表情は穏やかになったような……」

(;´ー`)「これで穏やかになるとかどうなってるだーよ」

.

80◆IdIQLHp8Vc :2017/10/27(金) 23:52:02 ID:Mjkaa9AM0

◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!

軽快にタップするシラネーヨ。

( ´ー`)「ちょっと面白くなってきただーよ」

◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終わり
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終わ
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブー
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終
◇『ξ゚听)ξ『そこま
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブーン!終わりなさ
◇『ξ゚听)ξ『そこ
◇『ξ゚听)ξ『そこ
◇『ξ゚听)ξ『そこ
◇『ξ゚听)ξ『そこま
◇『ξ゚听)ξ『そこま
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブー
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブー
◇『ξ゚听)ξ『そこまでよ!ブー

( ´ー`)「ひゃっひゃっひゃ。
高木さんを止めるツンだーよ」

|; ^o^ |「ねーよ……!あっ」

.

81◆IdIQLHp8Vc :2017/10/27(金) 23:53:30 ID:Mjkaa9AM0

シラネーヨの頭に振り下ろされる棍。

(  ー )   ´  `   「!!!」

ξ#゚听)ξ「何をあんたは遊んでるのよ」

右手に細剣を持ったまま、左手で持った棍でシラネーヨを叩いたツン。

(;´ー`)「攻撃したらオレンジになるぞ……って、なってない」

ξ#゚听)ξ「武器じゃないもので殴ったところでHPは減らないし、
HPが減らなければれば攻撃したことにもならないでしょ。
あんたの頭に衝撃を与えただけよ」

(;´ー`)「それが一番問題だーよ」

ξ゚听)ξ「って、ブーン!?
ブーム!説明して!」

武器を放り出してブーンの正面に駆け寄るツン。

突き飛ばされたブームが尻餅をついた身体を起き上がらせながら口を開いた。

|  ^o^ |「ブーンさんが
『エンジェルホライズン』を使用して予定通り蟷螂は倒せましたが、
その後倒れたままこの状態です」

ξ゚听)ξ「技の時間は?」

後でデレがプギャーに「なに?エンジェルホライズンって。ださっ」
と笑いながら言っているのが聞こえるがとりあえず無視してブームに問いかけるツン。

|  ^o^ |「練習と同じです」

ξ゚听)ξ「……そう……。
やっぱり短くなってるのね。
まったく。無茶するんだから」

そう言いながらブーンの耳元に顔を寄せる。

.

82◆IdIQLHp8Vc :2017/10/27(金) 23:55:34 ID:Mjkaa9AM0

ξ゚听)ξ「……ブーン、起きて」

囁くツン。

ξ゚听)ξ「ねえ、ブーン、起きて」

柔らかく、甘く囁く。

ξ゚听)ξ「ねえ。ブーン」

(*-ω-)

目を閉じたまま頬を染めるブーン。
何故か他の男三人も頬を染めている。

ξ゚听)ξ「ねえ。ブーン?」

(*-ω-)

ξ゚听)ξ「起きて」

(*-ω-)

ブーンの右耳を、左手で優しくつまむツン。
そして更に唇を耳元に寄せる。

吐息は既に当たり、
唇ですら触れそうな距離。

ξ#゚听)ξ「お、き、て」

(*-ω-*)

ξ#゚听)ξ「おきろーーーーー!!!!!」

そして叫んだ。






.

83◆IdIQLHp8Vc :2017/10/27(金) 23:57:48 ID:Mjkaa9AM0

( ^ω^)「おっおっおー。
酷いお。
まだ耳がキンキンするお」

力の入らない体を樹に預けて地面に座るブーン。
それを囲むようにツン達4人が立っていた。

ξ゚听)ξ「さっさと起きないあんたが悪い。
私が来たくらいから起きてたでしょ?」

( ^ω^)「おー。
何の事だかわからないおー。
無事でよかったお。ツン」

ξ゚听)ξ「まったく……。
ブーンもね。
ブーム、シラネーヨ、ありがとう」

( ´ー`)「役割をこなしただけだーよ」

|  ^o^ |「そういう事なんです」

ξ゚听)ξ「それでもよ」

( ^ω^)「プギャーもありがとうだお」

( ^Д^)「ま、おれは撤退の手伝いだけだからな」

( ^ω^)「いくら弱くても、あの数を相手するのは大変だったはずだお」

( ^Д^)「あー。まあ……な」

頭を掻きながらチラリと離れた場所に立ちこちらを伺うデレを見た。

( ^ω^)「デレさんもありがとうだお」

ζ(゚ー゚*ζ「え?あ、いや、私は……その……」

ξ゚听)ξ「デレの範囲攻撃でかなり楽だったからね」

.

84◆IdIQLHp8Vc :2017/10/28(土) 00:00:31 ID:yBcYKiZs0

( ^Д^)「抱いて走るのは大変だったけどな」

|  ^o^ |「……抱いて?走る?」

( ´ー`)「大人の階段をのぼっただーよ?」

( ^Д^)「その『抱く』じゃねーよぼけ!
っていうかおれはここに来る前に大人だアホ!」

ξ゚听)ξ「なに大声でセクハラ発言してるのよこのバカ共は」

( ^ω^)「おっおっおー」

ξ゚听)ξ「さて、とりあえず一回クーと合流したいけど……」

( ^ω^)「もう行けるお」

座るブーンを見るツン。
その視線を受けて立ち上がろうとするブーン。
しかしツンが頭を人差し指でつつくと、
バランスを崩してまた座ってしまった。

ξ゚听)ξ「その状態で行けるわけないでしょ」

(;^ω^)「おーー」

ξ゚听)ξ「プギャー、悪いけど合流場所まで付き合って。
もしまだ戦闘中なら参戦したいから宜しく」

( ^Д^)「ああ」

ξ゚听)ξ「ブームとシラネーヨもまだ疲れてるでしょ。
ここに居て休んでいて」

( ´ー`)「その言葉に甘えるだーよ」

|  ^o^ |「ありがとうございます。
モンスターがポップした際はブーンさんは守ります」

ξ゚听)ξ「ああ。それはデレに任せるから大丈夫よ。
デレ、ここに居て三人の護衛宜しく」

.

85◆IdIQLHp8Vc :2017/10/28(土) 00:02:08 ID:yBcYKiZs0

ζ(゚ー゚*ζ「え!?」

ξ゚听)ξ「あんたならここに出てくる敵くらい簡単でしょ?
フォローはブームとシラネーヨにやらせればいいから。
二人もデレのサポートくらいなら大丈夫でしょ?」

( ´ー`)「それくらいなら大丈夫だーよ。ブームが」

|  ^o^ |「もちろん私もやりますがシラネーヨも一緒にお願いします」

ζ(゚ー゚*ζ「え?ちょっと、え?私だよ?」

( ´ー`)「ツンがそう言ってるんだからしょうがないだーよ」

|  ^o^ |「その通りです」

ζ(゚ー゚*ζ「はあ?」

( ^Д^)「デレ」

横に立ったプギャーがデレの肩をポンと叩く。

( ^Д^)「諦めろ。ここはそういうギルドだ」

ζ(゚Д゚*ζ「はあああああああ?」

ξ゚听)ξ「ブーン、クーと合流したら連絡するから」

( ^ω^)「了解だおー」

ζ(゚Д゚*ζ「ちょ、ちょっとツン!?
私を信じるわけ!?
あんた達も!?」

慌てて叫ぶデレ。

しかしツンは表情を変えず、
それを確認した四人の男は苦笑しつつデレを見る。

.

86◆IdIQLHp8Vc :2017/10/28(土) 00:03:18 ID:yBcYKiZs0

ξ゚听)ξ「私があんたを信じるの。
友達であるあんたをね、私は信じるの。
それだけよ。
あ、明日か明後日女子会やるだろうからあんたも参加よ。
拒否は認めないからね。
あと『天使の神速斬(エンジェルホライズン)』の名付け親は私だから、
覚えておきなさい」

ζ(゚Д゚*ζ「へ?」

ξ゚听)ξ「このエリアは貴方達が苦戦するような強い敵は出ないはずだけど、
一応気を付けるように。
じゃ、よろしく。
プギャー、行くわよ」

( ^Д^)「へーい」

視線でブーンと頷きあうと次のエリアに向かって駆けだすツン。
その後を追って走り出すプギャー。
呆然と立ち尽くすデレ

ζ(゚Д゚*ζ「はあ?」

( ^ω^)「デレさんデレさん」

ζ(゚Д゚*ζ「はあ」

( ^ω^)「考えたら負けだお。
感じるんだお」

ζ(゚Д゚*ζ「はあ?」

ニッコリとほほ笑むブーンと、
未だ呆然としているデレ。

そんな二人を見る二人の男は、
二者二様のため息をついた。





.
95◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 22:59:53 ID:yBcYKiZs0

39.



それは、戦闘と呼べるものではなかった。

襲い来る鎌に対峙するその動きに無駄は全くなく、
躱し、
去なし、
時に受け止め、
流し、
弾き、
翻弄する。

速さと威力を自在に使い分けていても当たらなければ意味が無く、
その体を傷付けることが出来たのは一度だけ。

おそらくはそれも頭のカーソルの色を変えない為だけの理由で受けたのだと思われる。

それでも鎌は紙一重で襲えている。

ほんの少し横にすれば、
力を強くすれば、
ダメージを与えられるかもしれない。

あの一撃は、
本当に攻撃出来たのかもしれない。

そんな希望を抱いてしまい、
男は鎌をふるって襲い掛かる。

その『希望』すらも、
対峙している男の策略だと気付かずに。

いや、もう気付いているだろう。

だが、それを認めることは完全な敗北を意味するため、
気付いていないふりをして、
男は攻撃を繰り出す。

.

96◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:01:26 ID:yBcYKiZs0

/ ゚、。 /「ふんっ」

( ´_ゝ`)「おっとっと」

/ ゚、。 /「くっ」

( ´_ゝ`)「とりゃっ」

/ ゚、。 /「っ!」

( ´_ゝ`)「あらよっとっと」

ダイオードが振り下ろした鎌を兄者が鎚の柄で弾き、
浮いた鎌を鎚の頭で叩きダイオードの体勢を更に崩す。
そして動きの止まった身体をフェンシングの様なポーズをしつつ鎚で押すと、
ダイオードは尻餅をついて転んだ。

/ ゚、。 /「!?」

無防備な姿をさらしたダイオードが慌てて座ったまま鎌を構えるが、
追撃で鎚が振り下ろされることは無かった。

/ ゚、。 /「?」

( ´_ゝ`)「ダイオードちゃん良い表情だよー。
ハイこっち向いてー。
追撃への恐怖に慄いて良い表情だったよー」

その瞳に映るのは、
クリスタルを片手にこちらを見下ろす兄者。

/ ゚、。 /「!!」

立ち上がって鎌を振るダイオード。

( ´_ゝ`)「おっとっと。
あまり好きじゃなかったけど、
今となっては食べたいな。
ショボかフサに頼んでみるかな。
あー。でもショボはそういうジャンクフード食べたことあるのかな。
おぼっちゃんだし」

.

97◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:02:42 ID:yBcYKiZs0

しかしその鎌も兄者の持つクリスタルに触れることは出来なかった。

/ ゚、。 /「それ を よこせ」

( ´_ゝ`)「えー。折角録画したのにー」

/ ゚、。 #/「よこ  せ」

( ´_ゝ`)「これだけ奪っても仕方ないだろ?」

ポーチから記録結晶を四つ取り出す兄者。

( ´_ゝ`)「尻餅ダイオード。
ずっこけダイオード。
頭に乗られたダイオード。
勝利を確信してドヤ顔した後やられたダイオード。
鎌が木に当たって手をしびれさせたダイオード」

/ ゚、。 #/「ふざ  けるな!」

鎌が兄者のいる場所に襲い掛かるが、
既にその場所に兄者はいない。

( ´_ゝ`)「これは中にしまって、新しい結晶を出して」

ウインドウを出して記録結晶を入れ替える。

( ´_ゝ`)「もっと良い表情撮れるかな」

/ ゚、。 #/「きさ ま」

( ´_ゝ`)「おれを殺さないとこれ取り戻せないぞー?
んで、取り戻さないと、これは殺人者の記録として広めるぞー」

/ ゚、。 /「ふざ、けるな」

( ´_ゝ`)「お、なんか口調が変わった?
やっぱりキャラ付けだった?
それだと兄者つまらないー」

.

98◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:04:00 ID:yBcYKiZs0

空間を切り裂くような鋭い鎌の軌跡。

しかしそれすらも兄者に当てることは叶わず、
勢い余って足元をふらつかせてしまう。

( ´_ゝ`)「お!これもいいねいいね。
表情と無様な恰好があってるよ!」

記録結晶を片手に兄者が笑う。

/ ゚、。 #/「ふ、ざ、け、る、な」

( ´_ゝ`)「ふざけなきゃ、
お前の相手なんかできるわけないだろうが。

/ ゚、。 /!

.

99◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:09:09 ID:yBcYKiZs0

( ´_ゝ`)「鍛冶屋はな、
可哀想な職業なんだよ。
鍛冶のレベルをあげなきゃまともな物なんか作れない。
良い材料を集めなきゃ、
ちゃんとしたものを作れない。
良い材料を集めるには、
金で買うか命を懸けて自分が取りに行かなきゃいけない。
材料と叩くハンマーも良いものを使うには、
レベルをあげなきゃいけない。
しかもだ、
どんなに自身のレベルを上げて、
良いハンマーを使って、
良い炉を用意して、
最高の材料を使っても、
失敗する時はある。
そしてどんなに良いモノを作っても、
材料や苦労を考えた適正価格でも、
プレイヤーは高いとか言いやがる。
でもな、おれは、おれ達はまだ良い。
仲間がいるから。
しかも反則級の仲間だ。
他の鍛冶仲間に比べれば、
甘いって言われても仕方ないくらいの環境だ。
だがな、
お前が殺した皆はな、
全部自分でやって、
最高を目指してきた人なんだ。
更に自身の知識を人に分け与えていたような人なんだよ。
それもこれも、
強い武器を、
強い防具を、
命を守り戦うための装備を作るために、
それをプレイヤーに渡すために命を懸けてきたような人なんだ」

.

100◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:14:46 ID:yBcYKiZs0

/ ゚、。 #/「関係、ない」

( ´_ゝ`)「ああ。
お前には関係ないだろうな。
でも、おれにとっても、
お前は関係ないんだよ。
だから、おれは、関係ないお前をどこまでも蹂躙する。
今ここで出来るだけ屈辱を味わわせ、
それを記録し、そして世に流す」

/ ゚、。 /!!

( ´_ゝ`)「お前は笑いものだな。
そして殺人鬼だ。
笑い者殺人鬼になるんだよ」

/ ゚、。#/「やめ ろ」

( ´_ゝ`)「ああ、でも、大丈夫だ。安心しろ。
これが世に広まるとき、
お前はこの世界にいないから」

無造作に振った兄者の鎚がダイオードの鼻先をかすめる。

/ ゚、。 /!

高い鼻の先端がほんの少しだけ当たりポリゴンに変わるが、
すぐに元に戻る。

/ ゚、。;/「     」

( ´_ゝ`)「お、良いね―その表情」

/ ゚、。;/「なん だ 今の は」

( ´_ゝ`)「ん?少しだけ本気出した。
ほら、おれってやればできる子だから」

記録結晶を宙に浮かべて鎚を振り回す兄者。

.

101◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:16:42 ID:yBcYKiZs0

/ ゚、。;/「ひっ ひっ」

鎚の先がダイオードの身体をほんの少しだけかすり、
削り取る。

( ´_ゝ`)「なに?ラマーズ法っちゃう?」

すぐに元に戻るポリゴンの身体を、
無造作に削り取る。

( ´_ゝ`)「お前が産み出すモノなんて何もないけどな」

鎚を肩に担ぎ、記録結晶を回収する。

( ´_ゝ`)「良い画が撮れた」

/ ゚、。;/「お、おまえ も、殺人者 に なる」

( ´_ゝ`)「いいさ。
ゲームの中だ。
ゲーム内のPKだ。
MMORPGじゃよくあることだ」

新しい記録結晶を出す兄者。

そして喋りながらも鎚を振り回す。

/ ゚、。;/「ひっ ひっ」

( ´_ゝ`)「うるさいぞ」

ダイオードの鎌を弾き、
無防備にさらけ出されたその体を削る。

/ ゚、。;/「な ん なん だ」

( ´_ゝ`)「ん?」

/ ゚、。;/「おま えは、 いったい」

( ´_ゝ`)「   つまらん」

/ ゚、。;/「?」

.

102◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:20:54 ID:yBcYKiZs0

( ´_ゝ`)「おれはギルドVIPのKei。
流石武具店の武器担当鍛冶師。
それ以上でも、それ以下でもない。
ま、VIPにいるのも今日までだけどな!」

/ ゚、。;/「!!」

宙を舞うダイオードの鎌。

鎚がダイオードの右手首から先を粉砕した。

/ ゚、。;/「なっ」

( ´_ゝ`)「この世界に、痛みは無い。
手が無くなろうが、
足が消えようが、
そこに痛みは存在しない。
与えられるのは衝撃のみ。
記憶から導き出される痛みを感じることはあっても、
経験以上の痛みはこの世界には存在しない。
だけど、恐怖は違う」

右手が無くなり呆然とするダイオードの右足甲を叩きつける鎚。

/ ゚、。;/「!」

( ´_ゝ`)「痛くはないだろ?」

ポリゴンと化した右足。
防具で固めてあった足を簡単に粉砕されたことに驚愕し、
ダイオードの思考が止まる。

( ´_ゝ`)「痛くは、無いよな」

容赦なく襲い掛かる鎚は左膝を叩く。

/ ゚、。;/「ガッ」

決して小さくはない衝撃がダイオードの左脚を襲う。

( ´_ゝ`)「ぬるぽはしてないぞ」

.

103◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:23:24 ID:yBcYKiZs0

ふらついたダイオードの視線の先でポリゴンと化す左膝。
そしてその先の、左脚のすねから先がボトリと落ちる。

/ ゚、。;;/「ギャっ」

尻餅をついて叫んだダイオードの唇をかすめる鎚。

( ´_ゝ`)「うるさい」

/ ゚、。;/「ヒッ  ヒッ ヒッ ヒッ   ヒッ」

尻餅をついた姿のまま、
唯一無事である左手を使って後退るダイオード。

/ ゚、。;/「た、たす 」

( ´_ゝ`)「ふむ」

/ ゚、。/「  !!」

ダイオードの左肩に与えられた強い衝撃。

そのまま転がるダイオード。

/ ゚、。;;/「も、も  う  」

手首の無い右腕を使って上半身を持ち上げるダイオード。

そして左腕が肩のすぐ先から消えている事に気付く。

/;゚、。;/「たす   けて  」

見上げた視線の先に、男の顔。

自分を見る、男の顔。

/;゚、。;/「あ   あ   あ……」

そしてダイオードは心で理解した。

自分が、死ぬという事を。

.

104◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:28:47 ID:yBcYKiZs0

無造作に鎚を肩に担いだ男の顔を見て、
初めて人の顔をしっかりとみて、
そして、わかった。

自分が、ここで死ぬということを。

/ ;、; /「たす  け   て  
ゆるし    て   」

もう記録結晶の事など頭から消えていた。
ただ、怖かった。

震える身体。
零れ落ちる涙。
懇願の言葉が自然と口から溢れる。

/ ;、。 /「おね   がい しま  す」

( ´_ゝ`)「ある意味あっぱれだな」

/ ;、。 /「  ?  」

( ´_ゝ`)「これだけの状況で、
助けてくれ、許してくれ、
って今の自分を生きながらえさせる要望だけで、
自分がしてきたことの懺悔が一つもない」

/ ;、。 /「!」

( ´_ゝ`)「お見事だよ」

.

105◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:30:04 ID:yBcYKiZs0

/ ;、。 /「そ、それ    は」

( ´_ゝ`)「おれも、心置きなくとどめをさせる」

そう言いながら鎚を両手で持って高く上げる。

/;゚、。;/「あ   あ   あ
た すけ  て     
死に   たくない」

( ´_ゝ`)「安心しろ、その無様な姿はいつまでもどこまでも広めてやるから」

執拗に体を削り取られた攻撃と、
四肢を粉砕した攻撃によって、
既にダイオードのHPは赤く変わっている。

/ ;、。 /「ゆる   して
ごめ   んな   さい」

強い一撃を受けてしまえばHPバーが光を無くすことは、
ダイオード自身が分かっていた。

( ´_ゝ`)「……さよならだ」

だがそんな懇願は意味をなさず、
ダイオードの頭に向けて、
鎚が振り下ろされた。

.

106◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:32:12 ID:yBcYKiZs0

( ´_ゝ`)「っ!」

ダイオードの頭に当たるギリギリに、
横から飛んできた斧が鎚の柄に当たり、
その衝撃で鎚が飛ばされた。

(´<_` )「そこまでだ。兄者」

( ´_ゝ`)「……弟者」

息を整えつつ近寄る弟者。

投げた斧は兄者の足元に転がっており、
歩きながら腰に付けた投げ針を手にしている。

(´<_` )「必要ないみたいだけど、一応な」

恐怖で気を失ったダイオードを見下ろす弟者。
そして無造作に針を投げる。

(´<_` )「あとは黒鉄宮に送るだけだな」

ダイオードの頭の上に麻痺のアイコンが出たのを確認し、
兄者に顔を向けた。

(´<_` )「どうした兄者?
そんな顔して」

不思議そうに肩をすくめる。

(´<_` )「……何故、振り上げてるんだ」

鎚を振り上げている兄者。
倒れているダイオードを見ている。

.

107◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:33:57 ID:yBcYKiZs0

( ´_ゝ`)「目を、閉じていてくれ」

(´<_` )「いやだ」

( ´_ゝ`)「頼む。
おれが人を殺すところを、
お前に見られたくない」

(´<_` )「なら、殺さなければいい」

( ´_ゝ`)「…………」

(´<_` )「だろ?」

( ´_ゝ`)「目を、閉じてくれ。頼む」

(´<_` )「……伝言がある」

腰のポーチから記録結晶を取り出す弟者。

そして再生する。





.

108◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:37:25 ID:yBcYKiZs0

◇( ^ω^)「兄者、だめだおー。
そんなことしちゃダメなんだお。
絶対、絶対、駄目なんだお。
でも、信じてるお。
兄者はそんなこと出来ないって」
◇ξ゚听)ξ「止めときなさい。
あんたまで、背負うことは無いのよ。
しかも、そんな奴の」
◇川 ゚ -゚)「気持ちが分かるとは言えない。
言わない。
だが、そのあと兄者が苦しむのは分かる。
仲間として、友人として、見過ごすことは出来ない。
だから、言わせてもらう。
今すぐやめろ」
◇('A`)「あー。普通のMMOでも、
先輩はそういうことしなかったじゃないですか。
だから、やめた方が良いと思います。
絶対、あとで後悔すると思うんで」
◇川 ゚ -゚)「後でするのが後悔だな。
素直に『絶対後悔する』の方が良いと思う」
◇ξ゚听)ξ「こういう大事な時にあんたは」
◇('A`;)「……ごめんなさい」
◇(;^ω^)「おー」
◇(´・ω・`)「どうせギルドも抜けようとしてると思うけど、
抜けさせたりしないからね。
だから、胸張って会えるように、
また一緒にバカなこと出来るように、
変なことはしないように。
これはギルマス命令です」
◇ξ゚听)ξ「あんた、よくこの状況で話を進めるわね」
◇(´・ω・`)「あれ?撮り直しする?」
◇川 ゚ -゚)「流石だな」
◇('A`)「……兄者を止めるだけに」
◇(;^ω^)「ドクオ、それはちょっとどうかと」
◇ξ゚听)ξ「サイテー」
◇川 ゚ -゚)「フォローできんな。
するつもりもないが」
◇('A`;)「……ゴメンナサイ」
◇(´・ω・`)「とにかく、ダイオードはちゃんと黒鉄宮に送るように!
いいね!絶対だよ!」
◇( ^ω^)「無理矢理まとめたお」
◇ξ゚听)ξ「弟者!撮り直すわよ!」
◇川 ゚ -゚)「……それが順当だな」
◇('A`)「次は気を付けます」
◇(´・ω・`)「どうせまたこんな感じになると思うけど」
◇( ^ω^)「僕もそう思うお」

.

109◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:39:28 ID:yBcYKiZs0




(´<_` )「撮り直したの見る?」

( ´_ゝ`)「……いや、いい」

腕は振り上げたまま、
けれど少しだけ表情に笑みを浮かべ、
弟者にゆっくりと視線を向けた。

( ´_ゝ`)「……なあ、弟者」

(´<_` )「いつか会えた時、絶対怒られるぞ。
下手したら、毎晩夢の中に出てきて説教される」

( ´_ゝ`)「……夢の中で、会えるかな。
でも、あの人たちに説教されるのは、怖いな」

(´<_` )「だろ?」

( ´_ゝ`)「ああ」

(´<_` )「だから、やめとけ」

( ´_ゝ`)「……でも」

(´<_` )「おれも、こいつは殺したい」

( ´_ゝ`)「!」

(´<_` )「でも、それじゃこいつと同じだ」

( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「兄者。
おれと再会する前に、
グレンさん達と既に知り合ってただろ?
もしかしたら、パーティー組んでたりしただろ?」

( ´_ゝ`)「!…… …… ああ」

.

110◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:41:42 ID:yBcYKiZs0

(´<_` )「やっぱりな。
黙ってたのは、
おれを探しながらもゲームを楽しんでたって思われない為か?」

( ´_ゝ`)「……ごめん」

(´<_` )「いや、責めているわけじゃない。
当然と言えば、当然だ。
あの時一人でいるのは、
辛かったと思うから。
あと、ごめん。
グレンさん達が亡くなった時、
おれが落ち込みすぎて、
兄者はフォローしてくれていた。
兄者の方が、辛かっただろうに。
おれ、気付いていなかった」

( ´_ゝ`)「……気にするな」

(´<_` )「けれど、兄者はそれでちゃんと悲しんでないんじゃないか?」

( ´_ゝ`)「!」

(´<_` )「おれがぼろぼろに泣いていた時、
ずっとそばにいてくれていた」

( ´_ゝ`)「……弟者」

(´<_` )「おれだけが自分の感情のままに悲しんで、
泣いて、踏ん切りをつけていたけれど、
兄者はまだグレンさんが亡くなったことから」

( ´_ゝ`)「弟者!」

(´<_` )「!」

( ´_ゝ`)「あ、……わるい、だが、その先は……」

(´<_` )「……こちらこそ、ごめん。
おれのせいなのに、無神経だった」

.

111◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:44:45 ID:yBcYKiZs0

( ´_ゝ`)「違う!
弟者のせいじゃない!
おれが……おれが、結局……」

拳を握り、
弟者の視線から逃げる様に顔をそむける兄者。

(´<_` )「……一番悪いのは結局こいつで」

倒れているダイオードを見る弟者。
兄者もつられるように俯き加減にダイオードを見る。

(´<_` )「正直、殺したい。
それくらいには、憎い」

( ´_ゝ`)「……」

俯いたまま、視線を弟者に向ける兄者。

(´<_` )「それこそこいつが死んだら祝杯をあげたいくらいに。
殺されたのなら殺した奴に一番の防具をプレゼントしたいくらいに。
……けれど、兄者には殺してほしくない」

顔をあげる兄者。

その瞳を、弟者のまっすぐな瞳が射抜く。

(´<_` )「兄さんには、人殺しになってほしくない。
でもそれは、兄弟が人殺しになるのが嫌なだけじゃない。
兄さんがそんなことをするのなら、
そうしなければならなかった理由があるはずだから。
世間に後ろ指をさされても、
おれは胸をはれる。
父さんも、母さんも、
姉さんも、未花も、
きっと同じ気持ちだと思う。
でも、やっぱり、なってほしくない。
だって兄さんは、絶対に苦しむから。
例えどんな理由があったとしても、
人を殺したら兄さんは苦しむ。
それによって誰かの命が助かっても、
千人の命を助けたとしても、
一人の命を奪ったことに苦しむ。
だから、やめてほしいんだ」

.

112◆dKWWLKB7io :2017/10/28(土) 23:47:07 ID:yBcYKiZs0

( ´_ゝ`)「…… ……悌悟」

(´<_` )「こんなやつの命を、兄さんが背負うことは無い。
こんなやつの命の為に、兄さんに苦しんでほしくない。
だから、やめてくれ」

(  _ゝ )「…… …… 悌……悟」

ゆっくりと手を下ろす兄者。

手も開かれ、鎚が地面に落ち斧にぶつかる。

(  _ゝ )「グレンさんの店、
持ち主消えた後のリセットでまた売りに出された後、
アルさん達とコル出し合って買い戻して、
今はアルさんが管理しているんだよな」

(´<_` )「?ああ。その通りだけど……まさか!?」

(  _ゝ )「墓を、庭に作ったんだよな」

(´<_` )「……ああ」

(  _ゝ )「こんど、一緒に、行ってくれるか?」

(´<_` )「ああ。一緒に行こう」

(  _ゝ )「……頼む」

(´<_` )「それこそ夢で叱られるぞ。やっと来たって。
笑いながら、頭叩かれそうだ」

(  _ゝ )「……ああ、そうだな」

(´<_` )「ああ。絶対だ」

( ´_ゝ`)「……。
会えたら、土下座して謝らなきゃだな」

顔を上げた兄者の顔は、
晴れ晴れと言うにはほど遠かったが、
それでも、まだ辛そうではあるが、
弟者に笑いかけていた。



.
125◆dKWWLKB7io :2017/10/29(日) 23:41:53 ID:cjU6OEj20

40.




砕かれた小瓶。

入っていた青い液体は黄色い液体に変わり宙を舞った。

(も)!!

片手剣の攻撃をシャキンの盾に受け止められた男がそれに気付く。

(も)「なんだと!」

(`・ω・´)「気付けなくても無理はない。
モラの作った偽装瓶を見抜けるのは、
ショボとドクオくらいだ」

液体を切ったシャキンの片手剣が男を切り裂く。

(も)「ちっ」

追撃を避けようと後ろに跳ぼうとした男が膝から崩れ落ち、
その場に座ってしまった。

(も)「!!?」

慌てて自身の状態を確認するが麻痺状態にはなっていない。

(`・ω・´)「遅い」

自分を切り裂く片手剣に防御しようとするが、
時折動かなくなる身体に立つことも出来ず、思うような防御も出来ない。

(も)「なっ」

攻撃しようとふるった片手剣は弾かれ、
更に身体を切り裂かれる。

.

126◆dKWWLKB7io :2017/10/29(日) 23:43:03 ID:cjU6OEj20

(も)「!」

そしてHPバーが赤くなった瞬間に自身を襲う虚脱感。
身体に力が入らず、地面に倒れてしまった。

唯一動かせる視界を動かし、
自分を見下ろす男を見る。

(`・ω・´)「今おれが使っている麻痺毒はまだ発表されていない、
強力な毒だ。
HPバーが青や黄色の時は抵抗できるが、
赤くなると完全に麻痺状態になり、その後眠りに落ちる。
ついでに言うと、
使用者とのレベル差や抵抗値が低い状態だと、
青や黄色の状態でも麻痺の効果を打ち消すのにタイムラグが起きる事がある」

自身の負けを認め視線をシャキンから外す男。

そして眠りに落ちる前に見たのは、
ミセリと戦う仲間の姿だった。

(り)「短剣で俺に歯向かうとはな」

ミセ*゚ー゚)リ「そういうセリフは私の攻撃を完全に封じてからじゃないと笑われるよ」

男の放つ槍の攻撃をすべて避けきるミセリ。
逆にその隙をついて近寄り攻撃し、
そしてすぐに距離をとる。

(り)「……ちっ」

横目で見た先には片腕を失って倒れているフィレンクト。

(り)「しかしまさか、付き合ってた男をこんな簡単に倒すとはな」

ミセ*゚ー゚)リ「その程度で動揺させようなんて無駄だよ」

黄色く輝く短刀を構えてミセリが笑う。

.

127◆dKWWLKB7io :2017/10/29(日) 23:44:13 ID:cjU6OEj20

(り)「……さっきまでとは大違いだな。
まあ、おれもあいつもそいつも騙された口だがよ。
怖い女だ」

ミセ*゚ー゚)リ「あら、褒めてくれてありがとう。
でも、シャキンはちゃんと本気で攻撃したわよ?」

(り)「はぁ?」

ミセ*゚ー゚)リ「だってそうしなきゃ疑わられただろうし。
でも、あの程度の私の本気でシャキンがやられるわけないから」

(り)「……ちっ」

ミセ*゚ー゚)リ「あんたは、さっきとは別人ね。
なに、戦闘になると性格変わるタイプ?」

(り)「はっ。人を二重人格みたいに言うなよ。
その方が、油断してくれて面白いからやってるだけだ」

ミセ*゚ー゚)リ「なにそれ」

(り)「あいつらとPKするときよ、
対象を囲んで俺がガタガタ震えてるとよ、
まぁどいつもこいつも俺に向かってくるんだわ。
気弱そうな俺に突撃すれば穴を作って逃げられるとでも思うんだろうな」

喉奥で空気を吸うように笑う男。

ミセ*゚ー゚)リ

(り)「その後俺に殺される奴の顔は絶妙なんだこれがまたよ。
呆然として、恐怖におびえ、怒りの混じった、絶望した表情がまた」

ミセ*゚ー゚)リ「あー。不愉快だから黙って」

.

128◆dKWWLKB7io :2017/10/29(日) 23:45:55 ID:cjU6OEj20

(り)「なんだ。お前は殺したことないのか。
人を殺す度胸もねぇのに武器を俺に向けるなよカスが。
ま、おれも一人殺すまでは緊張したけどよ、
二人目以降は簡単だったな。
一人も二人も一緒だな」

ミセ*゚ー゚)リ「言ったよね。黙れって」

笑みを消して男を見るミセリ。

対して男は感情を出したミセリに笑顔を見せる。
そして自分達を見るシャキンにも意識を向けた。

ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫よ」

(り)「?」

ミセ*゚ー゚)リ「シャキンには手出しさせないから。
それに、貴方がシャキンと戦うことは無いから」

(り)「……?」

ミセ*゚ー゚)リ「だって、あなたは私に倒されるんだから」

(り)「……なら、お前を殺してからそいつを殺すとするか」

男の目に怒りが宿り、恐ろしいほどの速さで槍を繰り出す。

ミセ*゚ー゚)リ「少しは出来るかな」

しかしミセリは短刀の腹で受け、
火花を散らしながら勢いを後方に流し、
そして重さを感じさせない動きで男の懐に移動した。

男の喉元に突き付けられた短刀の刃。

(り;)「なっ」

.

129◆dKWWLKB7io :2017/10/29(日) 23:48:45 ID:cjU6OEj20

ミセ*゚ー゚)リ「でもね、集団で人を襲い、
奪い取ったアイテムとコルで装備を良くし、
安全な戦闘でモンスターを倒してレベリングしたあなたに」

男の喉が切り裂かれ、HPバーが大きく減る。

(り;)「ぐっ」

ミセリは男が槍を構え直す前に更に二回切りつけてから距離をとる。

ミセ*゚ー゚)リ「私達が負けるわけにはいかないの」

(り;)「この世界はレベルが全てだ!」

再度突き出される槍を軽々と躱して男の背後に移動するミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「そうよ。それは正解」

男の脇腹に突き立てられる短刀。

(り;)「がっ」

衝撃が男を襲う。

突き立てられた短刀がそのまま背中に向かって横に振り抜かれると、
ポリゴンがまるで血の様に宙を舞った。

(り;)「ぐっ!」

HPバーが黄色に変わり、膝をつく男。

ミセ*゚ー゚)リ「でもね、当然だけど、
戦闘経験が全く意味を成さないわけじゃないのよ」

ミセリの短刀に男の両肩が切り裂かれる。

(り;)「がはっ!」

ミセリが動きを止めた男の背中を蹴る。

.
130◆dKWWLKB7io :2017/10/29(日) 23:54:20 ID:cjU6OEj20

(り;)「ごっ!」

スキルに体術を入れてあるミセリの蹴りは攻撃であり、
男のHPは削られて赤に変わった。

(り;)「ひっひっ」

地面を転がった男がミセリを見上げる。

ミセ*゚ー゚)リ「それに、レベルでもあなたは私に負けていると思うわよ?」

(り;)「た、助けて……」

ミセ*゚ー゚)リ「あなたは、
今までそうやって助けを求めた人を、
助けたの?」

(り;)「!」

自分に向けられた短刀に言葉を無くす男。

(り;)「み、みのがして……。

お、おまえは、人を殺すのか!殺せるのか!」

ミセ*゚ー゚)リ「……私が人を殺したことが無いって、
誰が言ったの?」

悲しげに笑いながら短刀を構えるミセリ。

短刀が赤く輝く。

(り;)!!

ミセ*゚ー゚)リ「一人殺すのも、二人殺すのも、一緒なのよね?」

(り;)「し、死にたく……!!
な……い……」

.

131◆dKWWLKB7io :2017/10/29(日) 23:56:23 ID:cjU6OEj20

男の身体を黄色の輝く線が通ると、
男がその場に崩れ落ち意識を失った。

ミセリはそれを見届けた後、
一番初期の技でありほとんど技後硬直を起こさない剣技を空打ちした。

ミセ*゚ー゚)リ「……ありがとう」

そして視線を彼に向けた。

視線の先では、
残った片手で麻痺毒を付加した針を投げたフィレンクトが居た。

(‘_L’)「……予定通りですね」

苦しそうな表情をしたミセリに、
いつものような軽い口調で話しかけることが出来ないフィレンクト。

ミセ*゚ー゚)リ「はい」

ミセリもそれに口調を合わせて返事をする。

地面に倒れる男を見下ろすミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「……一人も二人も一緒とか、
そんなわけ、無いじゃない……」

呟いたミセリ。

その声が聞こえたかどうかは分からないが、
片腕の無いままのフィレンクトがミセリに近付いた。

(‘_L’)「ミセリさん」

ミセ*゚ー゚)リ「腕、大丈夫ですか?」

(‘_L’)「はい。ただの部位欠損ですし。
欠損部位が大きいから時間は長いですが……。
あと六十秒くらいです」

.

132◆dKWWLKB7io :2017/10/29(日) 23:58:44 ID:cjU6OEj20

ミセ*゚ー゚)リ「思い切りが良くてびっくりしました。
自分でやっても部位欠損できるとは聞いてましたけど。
まさかあんなだとは。
しかも、その後叫んで二人の注意を引いてくれて」

(‘_L’)「何回か自分で練習しましたから」

ミセ*゚ー゚)リ「凄いですね……」

(‘_L’)「本当は貴女がそいつと戦うのも反対だったんですが」

ミセ*゚ー゚)リ「またそれを言う。
フィレンクトさんがダブルスパイしていたのは、
出来るだけ隠しておかないと。
フィレンクトさんが疑われていたのは知っていましたから、
本当は私が貴方の腕を切り落とすところを二人に見せておきたかったんですけど。
牢獄でそいつらがフィレンクトさんを恨む危険性を減らさないと」

(‘_L’)「私は覚悟していますが」

ミセ*゚ー゚)リ「ダメですよ。
もともとロマネスク達の動きをコントロールして、
出来るだけ人を殺させないようにしていたのはフィレンクトさんなんですから」

(‘_L’)「ですが、私だけでは完全に止めることは出来ませんでした。
二人が直接手を下すのは先延ばしに出来ましたが、
結局、VIPやN−Sの皆さんの、ミセリさんの協力が無ければ……」

ミセ*゚ー゚)リ「私達の思惑と、
フィレンクトさんがあの二人を人殺しにしたく無いという思いが合致しただけです」

(‘_L’)「私にとって、
ロマネスクとヒッキーが恩人であるというのは、
変わらない事実なので。
本当なら、
二人が間違った方向に進むのを止めなければいけなかったのに」

ミセ*゚ー゚)リ「……恐怖や苦しみや嫉妬は、
人を間違った方向に進めてしまいますから」

.

133◆dKWWLKB7io :2017/10/30(月) 00:00:10 ID:qmlqk3ss0

悲しげに、少し強張った顔でほほ笑むミセリ。

フィレンクトもその微笑みに釣られて少しだけ微笑んだ。

その微笑みを受けてミセリは少しだけ強張りを緩めるが、
すぐに表情を引き締めて周囲を見回す。

ミセ*゚ー゚)リ「それで、シャキンは……?」

盾と片手剣を地面に置いたままうずくまっているシャキン。

ミセ*゚ー゚)リ「……なにしてるの?」

シャキンが腹を抱えてうずくまる。

(` ω ´)「ひっひっ……」

ミセ*゚ー゚)リ「!シャキン!?」

(‘_L’)「シャキンさん!?」

慌てて駆け寄ろうとする二人の前に映し出される映像



◇ミセ*゚ー゚)リ「私は、女だから」



(`;ω;´)「お、ん、な、だ、か、ら」

シャキンは腹を抱えて笑っていた。

ミセ*゚ー゚)リ「…… …… シャキン?」

134◆dKWWLKB7io :2017/10/30(月) 00:01:45 ID:qmlqk3ss0

それはもう、声は出さずに引きつるように笑っていた。



◇ミセ*゚ー゚)リ「私は、女だから」


◇ミセ*゚ー゚)リ「私は、女だから」


◇ミセ*゚ー゚)リ「私は女だから」




(`;ω;´)「お、ん、な、だ、か、ら」

(`;ω;´)「お、ん、な、だ、か、ら」

泣きながら、腹を抱えて、笑っていた。

ミセ* ー )リ

(;‘_L’)「シャ、シャキンさん、それは」

(`;ω・´)「い、一応あとでショボに報告するようで記録してたんだけどよ、
ちゃんと撮れてるか確認したらちょうどこのシーンが再生されて。
リアルに聞いた時も噴き出すの抑えるために叫んだし」

(;‘_L’)「あ、ああ。あの時の叫びにはそんな意味が」

(`・ω;´)「フィレンクトは、よくあの時噴き出さなかったよな」

(*‘_L’)「あ、ま、まあ、私は、その」

ミセ* ー )リ「シャキン」

地を這うようなミセリの低い声。

(`・ω・´)「……って、あれ?」

ミセ* ー )リ「それをよこしなさい」

.

135◆dKWWLKB7io :2017/10/30(月) 00:03:01 ID:qmlqk3ss0

ゆっくりとシャキンに近寄るミセリ

(`・ω・´)「あ、いや、ほら、ショボンに報告する時に」

ミセ* ー )リ「大丈夫」

右手に持った短刀が光を反射してきらめく。

ミセ* ー )リ「私が報告するから」

(`・ω・´)「み、ミセリ?」

慌てて立ち上がり、片手剣を持って盾を構えるシャキン。

(`・ω・´)「映像が無くてもおれが報告したら一緒だしさ」

ミセ* ー )リ「大丈夫よ」

ミセリがニヤリと笑う。

(;`・ω・´)「み、ミセリさん?」

ミセ* ー )リ「ちゃんと名誉の戦死をしたことにしてあげるから」

(;`・ω・´)「ひっ!」

ミセリの攻撃を受け止めるシャキンの盾。

刃の当たった場所から火花が散っている。

(;`・ω・´)「お、落ち着けミセリ!」

ミセ* ー )リ「大丈夫」

繰り出される攻撃を受け止め、弾く盾。

ミセ#゚ー゚)リ「私は冷静よ!
死ねシャキン!それを渡しなさい!」

.

136◆dKWWLKB7io :2017/10/30(月) 00:04:08 ID:qmlqk3ss0

縦横無尽に四方八方から繰り出される攻撃。

(;`・ω・´)「そういう攻撃に特化した冷静さはいらないから!」

その全てを無効化するシャキンの盾と片手剣。

ミセ*゚ー゚)リ「フィレンクト!手を貸して!」
(`・ω・´)「フィレンクト!こいつを止めてくれ!」

(;‘_L’)「あー。わたし、腕が無いので」

ペナルティの時間が終了し、
フィレンクトの腕が元に戻る。

ミセ*゚ー゚)リ「フィレンクト!」
(;`・ω・´)「フィレンクト!」

(‘_L’)「……仕方ない二人ですねえ。
……私ではその笑顔は取り戻せなかったんですが……。
少しくらいなら意地悪しても良いですかね」

ミセ*゚ー゚)リ「フィレンクト!」
(;`・ω・´)「フィレンクト!まじで助けて」

フィレンクトが武器を手にする。

(‘_L’)「付き合いの深さからすればミセリさんの手助けをするところですが、
どうしましょうか」

ミセ*゚ー゚)リ「もちろん手助けよ!」
(;`・ω・´)「フィレンクトおおおおおおお!?」

シャキンの叫び声がエリアに響く中、
盾に当たる刃の音がしばらく続いた。

(;`;ω;´)「たすけてー!」






.
157◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:14:05 ID:h6rr3Xoo0
41.




ミセ*゚ー゚)リ「まったく……」

記録結晶を手に仁王立ちしているミセリ。

その視線の先にはうずくまってシャキンがいる。

(`・ω・´)「取られた―。
ちゃんと報告しなきゃなのにー」

ミセ*゚ー゚)リ「報告なら私がしますー」

(`・ω・´)「ちゃんとあのセリフ」

音もたてずにシャキンの背後に回り、
後ろから短刀を首元に当てるミセリ。

ミセ* ー )リ「セリフ?セリフって、なんのこと?」

(;`・ω・´)「あ、いえ、なんでもありません。はい」

ミセ* ー )リ「報告は私がする。
貴方は何も言わない。
よろしいかしら?」

(`・ω・´)「いえす!まむ!」

ミセ*゚ー゚)リ「……まったく」

短刀を鞘にしまうミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「そんなことより、行かなくて良いの?」

(`・ω・´)「んー。そうだなあ」

(‘_L’)「マタンキは、行動には難はありますがレベル上げやモンスター狩りには積極的で強いです」

.

158◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:14:58 ID:h6rr3Xoo0

少し離れた場所で二人を見ていたフィレンクトが近寄る。

(‘_L’)「正直、ショボンさんお一人では厳しいかと思いますが」

ミセ*゚ー゚)リ「フィレンクトさん」

(‘_L’)「全員の飛ばされる場所は把握しています。
行くのならば早めに動きましょう」

ミセ*゚ー゚)リ「シャキン!」

(`・ω・´)「んー」

(‘_L’)「シャキンさん?」

ミセ*゚ー゚)リ「……シャキン?」

胡坐をかいて腕を組み唸っているシャキンを見て怪訝そうな顔をするミセリとフィレンクト。

(`・ω・´)「ま、ゆっくり行こう」

ミセ*゚ー゚)リ「はあ?」

(‘_L’)「シャキンさん!?」

(`・ω・´)「だって、おれらまで参戦したらいくら何でも戦力過多だからな」

楽しそうに笑ったシャキンを見て、
ミセリとフィレンクトは困惑した表情を見せた。







.

159◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:16:08 ID:h6rr3Xoo0

右脚を切り裂かれたショボンが後方に跳ぶが、
本能のままマタンキが追撃する。

(;´・ω・`)「くっ」

(・∀ ・#)「ひゃはははははははっははははははは」

上段、下段、横薙ぎ、袈裟切りと、縦横無尽に攻撃されるショボン。

(;´・ω・`)「!……!」

体術で躱しつつチャクラムでも防御するが掠る刃と衝撃はHPを削っていく。

(・∀ ・#)「有名ギルドのギルマスさんがなさけないですよー」

(;´・ω・`)「ぼくはっ!」

ショボンの指を狙った攻撃が綺麗に決まり、
マタンキの片手剣がチャクラムを飛ばす。

(;´・ω・`)「!」

(・∀ ・#)「しねええええええええええええ!!!!!!!!!」

「ゴルァアアアアアアアアアア!」

ショボンの無防備になった右側に片手剣を振り下ろそうとしたマタンキの身体に横から体当たりする盾。

(・∀ ・#)「!!!!」

(;´・ω・`)「シールドバッシュ!?」

衝撃で飛ばされながらも体勢を立て直すマタンキ。

(,,゚Д゚)「ショボンはやらせないぞゴルァ!」

身体と同じような大きさの盾。
その盾を片手で持ち、
前面に押し出してマタンキに激突したのはギコだった。

.

160◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:17:33 ID:h6rr3Xoo0

(;´・ω・`)「ギコ!?」

(,,゚Д゚)「遅れた!」

勢いのままショボンとマタンキの間に陣取り盾を地面に立てるギコ。
そして技後硬直を起こす

(・∀ ・#)「あの程度の剣技で硬直起こしている奴があああああ!!!!
ころしてやるるるるるるるううううううう!!!!!」

黄色に変わったHPを気にすることもなく突撃するマタンキ。

ギコはまだ硬直している。

(;´・ω・`)「ぼくが!」

(,,゚Д゚)「大丈夫だゴルァ」

(;´・ω・`)「え?あっ」

この状態で口元に笑みさえ浮かべながら前に出ようとするショボンを制するギコ。

そして二人の目の前で花が舞う。

「させないっ!」

(・∀ ・;)「なっ」

ギコに辿り着く前に頭の上に振り下ろされた短剣。

片手剣でそれを弾いたマタンキの背中が切り裂かれる。

(・∀ ・)「!」

慌てて自分を攻撃する者に片手剣を振るマタンキ。

それは攻撃と言うより威嚇に近いものだが空振りに終わった。

(・∀ ・)!

.

161◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:18:50 ID:h6rr3Xoo0

地を這うように自分に駆け寄る少女。

(;´・ω・`)「しぃまで……」

(*゚ー゚)「ひきなさい!」

右手に持った短剣を逆手に持ち、
マタンキの足元からアッパーカットを狙う様に飛び上がるしぃ。

刃がマタンキの顎を狙う。

(・∀ ・#)「その程度で!」

マタンキは叫びながら短剣を打ち下ろそうと片手剣を振り下ろした。

(・∀ ・)「!」

しかし片手剣は素通りする。

その横を突き上げられたしぃの右手が、
そして体が錐揉みしながら跳びあがる。

(*゚ー゚)「はっ!」

そして左手に持たれた短剣がマタンキの身体を切り裂いた。

(・∀ ・;)「ぐっ」

呆然としたマタンキの顔をしぃの脚が蹴り上げる。

衝撃で地面を転がるマタンキ。

しぃは大きな弧を描くように後方宙返りをしながら空を舞い、
ギコの前に華麗に着地した。

技後硬直の解けたギコがしぃを守るように移動する。

(;´・ω・`)「しぃ、今のはエクストラスキルの『ジャグリング』?」

.

162◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:20:10 ID:h6rr3Xoo0

(*゚ー゚)「お久しぶりです。ショボンさん。
はい。短剣と体術で覚えられる『ソード・ジャグリング』です。
エクストラスキルといっても短剣の拡張スキルみたいな感じです。
もちろん検証に協力しますよ。
おそらくショボンさんが使ってる『ジャグリング』の劣化版ですが、
結構使えます」

(,,゚Д゚)「こんな場面でもまずそこを気にするのは流石だぞゴルァ」

(;´・ω・`)「あっ」

(,,゚Д゚)「久しぶりだなゴルァ」

(´・ω・`)「あ、うん。会うのは久しぶりだね。二人とも」

(*゚ー゚)「色々変わってなくて安心しました」

(,,゚Д゚)「本当に相変わらずだ」

(;´・ω・`)「あ、うん。
二人も元気そうでよかった。
って!なぜここに!」

(・∀ ・#)「おまえら、よくも俺をコケに」

しぃの蹴りで転がっていたマタンキが起き上がり、
剣を構えてこちらを睨んだ。

(*゚ー゚)「三対一で、まだ戦うつもり?」

(,,゚Д゚)「お前の負けだ!」

(・∀ ・#)「三対一だろうが十対一だろうが、
なかよしこよしで呑気に生き抜いてきたお前らに負けるわけがねぇんだよ!」

三人に向かって駆けだすマタンキ。

(,,゚Д゚)「ゴラァ!」

.

163◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:21:08 ID:h6rr3Xoo0

合わせて前に出るギコ。

しぃは下がり、ギコの後ろ、ショボンの前に移動する。

(・∀ ・#)「てめぇ程度の盾で!」

青く光るマタンキの片手剣。

(・∀ ・#)「はぁ!」

流れるような三連撃がギコを襲う。

(,,゚Д゚)「!」

そして下から上にすくい上げる様な最後の一撃が盾を跳ね上げた。

マタンキにの視界にはギコの全身が映る。

(・∀ ・#)「はっ」

今使用した剣技は硬直時間をほぼゼロにまでしていたため、
ほとんどタイムラグ無しに横薙ぎの四撃目を放とうとした。

(・∀ ・#)「しねぇ!」

(,,゚Д゚)「甘いぞゴルァ」

(・∀ ・#)「!」

振り下ろされる盾。

身体ではなく片手剣を狙ったその攻撃により、
マタンキの片手剣が砕け散った。

(・∀ ・#)「ちっ」

剣に盾が当たる前に手を離し後方に跳んでいたマタンキ。

ギコが向けた視線の先で、新たな剣を手にしている。

.

164◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:22:23 ID:h6rr3Xoo0

(・∀ ・)「けっ。これを使うことになるとはな」

(,,゚Д゚)「……」

(・∀ ・#)「これで終わりだ!」

もう一度駆け出すマタンキ。

(,,゚Д゚)「おれは全ての武器を覚えられるほど頭は良くないが、
それでもショボンがピックアップしてくれたものは必死で覚えたんだぞゴルァ」

(・∀ ・#)「何を言っている!」

マタンキの一撃がギコの盾を攻撃し、火花が散る。

(・∀ ・#)「死ねぇ!」

(,,゚Д゚)「ゴルアァァァアアアア!」

マタンキの剣から迸る赤い光が束になり、
盾の無い外側からギコを狙おうとした瞬間、
ギコの盾から出た青い光が透明な盾となりギコを守った。

(・∀ ・#)「あっ!?
フォールス・シールドだと!?」

(;´・ω・`)「フォールス・シールド!?
もうそこまで鍛えたの!?」

剣技『フォールス・シールド』
使用した盾の1〜10倍の強度と1〜10倍の大きさを持った光の盾を、
10〜40秒盾の前面に貼ることの出来る剣技。
変数は使用者の任意で設定できるが、
スキルレベルが低いと大きい数値は失敗する。
また、適用時間によって硬直時間が増大するため使用タイミングが難しい剣技の一つとされている。

(,,゚Д゚)「『SNAKE・SWORD』の特殊攻撃は効かないぞゴルァ」

(・∀ ・#)「レベルだけは上げてあるみてぇだな」

.

165◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:23:23 ID:h6rr3Xoo0

マタンキは攻撃を止めて横にステップを踏み、

(・∀ ・#)「でもそれは硬直時間も長いし、」

光の盾に向かって一歩無踏み出した。

(・∀ ・#)「攻撃やモンスターは反射しても、
プレイヤーは素通りなんだよな!」

光の盾をすり抜けたマタンキが、
盾を維持しつつ硬直しているギコに向かって剣を振り下ろす。

だがその剣は、
そこにいなかったしぃの短剣に弾かれた。

(*゚ー゚)「私が居ます」

ギコの肩を使って高く飛んだしぃが回転しながらマタンキの剣を弾く。

(・∀ ・#)「またてめぇか!」

バランスを崩したマタンキだったが、
今度は転倒することなく後方に跳び剣を構えた。

(・∀ ・)「ならおまえからやってやるよ!」

しかし視界の中にしぃはいない。

(*゚ー゚)「私はここです」

声のした方に剣を振ったマタンキ。

その背中に繰り出されるしぃの正拳突き。

(・∀ ・#;)「ガアッ」

前方に倒れながら回転し体勢を整え、
しゃがんだまま剣を構える。

.

166◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:24:46 ID:h6rr3Xoo0

マタンキは自分の減ったHPを確認し、
それが衝撃ではなく体術による攻撃であることを知った。

(・∀ ・#)「結構やるじゃねぇか」

(,,゚Д゚)「おれもいるぞゴルァ」

しぃの前に移動して盾を構えるギコ。

(*゚ー゚)「もう、やめましょう。
貴方の負けです」

(・∀ ・#)「一人で戦えないくせにでかい口を叩くな!」

地を這うような低い姿勢で駆け出す

(,,゚Д゚)「ゴラァ!」

盾で迎え撃つギコに向かって跳躍するマタンキ。

(,,゚Д゚)!

盾を上に向けるギコ。

(・∀ ・)

その盾を蹴り、更に跳躍するマタンキ。

(・∀ ・#)「まずはてめえだ!」

盾を蹴られたことによりバランスを崩したギコを見下ろし、
降下しながら剣を振り下ろそうとするマタンキ。

(*゚ー゚)「させない!」

それを予期し、
阻止するために既にしぃは跳躍していた。

マタンキに向かって振り下ろされる短剣。

.

167◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:25:48 ID:h6rr3Xoo0

(・∀ ・#)「わかってんだよ!」

だがマタンキもその行動を予想しており、
手袋を装着した左手で短剣を掴む。

(*゚ー゚)「!」

そして落下しながら右手に持った片手剣をしぃの首に振り下ろそうとした。

(・∀ ・#)!!!!!!

マタンキの右手首と右肩に突き刺さるナイフ。

(・∀ ・#)「ショボン!」

(*゚ー゚)

(,,゚Д゚)

しぃとギコが笑みを漏らすなか
マタンキは顔のナイフを抜きながら着地し離れた場所に跳躍する。

片手剣を構えながらショボンを睨むマタンキ。

(´・ω・`)

(・∀ ・#)「ショボンんんんんんんん!!!!!!!」

(´・ω・`)「もうやめよう、マタンキ」

(・∀ ・#)「ふざけるなアアアアアアアアアア!!!」

ショボンに向かって走り出そうと構えたマタンキの前に立ちふさがるギコ。

(・∀ ・#)「てめえエエエエエエエエエエエ!!!!!」

(,,゚Д゚)「もう終わりだゴルァ!」

(・∀ ・#)「けっきょくそうだよなアアアアアア!!!!!」

.

168◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:27:08 ID:h6rr3Xoo0

(´・ω・`)!

(,,゚Д゚)!

(*゚ー゚)!

突然の叫ぶマタンキ。

それは今までの罵倒や軽口とはどこか違い、
三人は息をのみマタンキを見つめた。

(・∀ ・#)「けっきょくそうなんだ!!!!
けっきょくそうなんだ!!!!
けっきょくそうなんだ!!!!
けっきょくそうなんだ!!!!
けっきょくそうなんだああああああああああああ!!!!」

(´・ω・`)「マタンキさん?」

(・∀ ・#)「けっきょくおまえは!
何を言おうが!
何を取り繕うが!
結局そうなんだよ!!!!!」

(,,゚Д゚)「何を言ってるんだゴルァ」

(*゚ー゚)「ショボンさん、この人は……」

(´・ω・`)「……僕にもよく……」

( ∀  #)「うをおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

(´・ω・`)!

(,,゚Д゚)!

(*゚ー゚)!

駆け出したマタンキを見て構える三人。

.

169◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:28:32 ID:h6rr3Xoo0

しかしマタンキは三人とは別方向に向かって走っていった。

(,,゚Д゚)「あ」

(*゚ー゚)「あ、しょ、しょぼんさん!」

(´・ω・`)「……いや、追わなくていいよ。
きっとまた彼は僕を襲いに来るから、
その時に、もう一度」

(;*゚ー゚)「いやいやいやいやいや」

(;,,゚Д゚)「追うぞゴルァ」

駆け出すしぃとギコ。

(´・ω・`)「あっ、二人とも!」

二人を追ってショボンも走り出した。







ミセ*゚ー゚)リ「さっさと歩く!」

(`・ω・´)「大丈夫だって」

(‘_L’)「そのお二人も充分強いようですが、
何があるか分かりませんし」

(`・ω・´)「それはそうだけどよー。
おれの代わりに行ってるんだからちゃんと役目果たすって」

森の中の細長い道を歩く三人。

ミセ*゚ー゚)リ「何かあってからじゃ遅いんだからね」

.
171◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:29:49 ID:h6rr3Xoo0

(`・ω・´)「んー。
ショボ一人だとやばいけど、
ギコしぃが一緒なら二人の為に絶対勝つだろうからなぁ。
レベルも能力も充分だろうし」

ミセ*゚ー゚)リ「多分そうだろうけど、
とにかく行くの!」

(`・ω・´)「うぃーー」

(;‘_L’)「本当にやる気ない感じですね」

三人はショボンとマタンキが戦っているエリアに向かって急いでいた。

ミセ*゚ー゚)リ「ほら!ちゃっちゃと歩く!」

(`・ω・´)「うぃーーー」

(;‘_L’)「はぁ……」

二人は急いでいた。

ミセ*゚ー゚)リ!

(`・ω・´)!

(‘_L’)?

立ち止まり大きく曲がって出口の見えていない道の先を見るミセリ。

ほぼ同時にシャキンも前方を見ると、横の森に向かって移動する。

(;‘_L’)「え?」

ミセ*゚ー゚)リ「フィレンクトさん、何か来ます。
おそらくプレイヤーですが、とりあえず隠れましょう。
渡してあるマントを使ってください」

(;‘_L’)「あ、は、はい」

.

172◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:31:01 ID:h6rr3Xoo0

マントを装備してミセリと共にシャキンの後を追う。

既にフードを被ったシャキンが茂みに隠れつつ手招きしていた。

ミセ*゚ー゚)リ「全くこういう時は素早いんだから」

シャキンと隣に隠れるミセリ。
フィレンクトもその横に並んでしゃがんだ。

(‘_L’)「しかしこのマントは凄いですね」

ミセ*゚ー゚)リ「作るのは大変らしいけど、
隠密行動には欠かせないモノですね」

(`・ω・´)「でも耐久値かなり低いんだよな」

ミセ*゚ー゚)リ「低層のリザードウルフの爪攻撃一発でポリゴンだからね」

(;‘_L’)「それは……」

ミセ*゚ー゚)リ「前に一回壊してツンに報告したら、
かなり本気で怒られたから気を付けてね二人とも」

(`・ω・´)「はーい」

(;‘_L’)「はい」

三人がフードを被り静かにすると、
その姿は周囲に溶け込んだ。

そして隠れる三人が監視する道を、
一人の男が駆け抜けていった。

(・∀ ・#)

マタンキは三人の目の前を走り抜けた後、
腰のポーチから結晶を出し何かを呟くとその場から消えた。

.

173◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:31:58 ID:h6rr3Xoo0

それを見たフィレンクトとミセリが立ち上がる。

フィレンクトは道に出てマタンキの消え去った場所を伺い、
ミセリはウインドウを出す。

(`・ω・´)「……おい、どうした?」

突然の二人の行動に声をかけるシャキン。
しかしそう言った彼も顎に手を添え何かを考えている。

(‘_L’)「今のがマタンキです」

(`・ω・´)「え?」

(‘_L’)「シャキンさんは会っていませんでしたか」

(`・ω・´)「え?あ、ああ。
そうか……今のが、マタンキ……」

ミセ*゚ー゚)リ「ショボンは無事ね。
フレンドリストの色は変わってない。
一応メッセージは送ったけど。
?また何か来る?」

マタンキがやってきた方向。
自分達が向かっていた方向を見るミセリ。

するとすぐに二つの人影を視界にとらえた。

ミセ*゚ー゚)リ「……あれは」

ゆっくりと道に出るミセリ。

マタンキを追って走ってきたギコとしぃもフィレンクトとミセリを見て立ち止まった。

(,,゚Д゚)

(*゚ー゚)

.

174◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:32:55 ID:h6rr3Xoo0

二人を見て訝しげな顔をする二人に、
ミセリが笑顔を見せる。

ミセ*゚ー゚)リ「初めまして。
ギコさん。
しぃさん」

(,,゚Д゚)!

(*゚ー゚)!

ミセ*゚ー゚)リ「と言ってもしぃさんとは何度か会ったこともあるけれど、
覚えてる?かな?」

(,,゚Д゚)「どこでおれ達の名前を」

盾を構えてしぃの前に立つギコ。

(*゚ー゚)「バーボンハウスの……お客さん?
そこの男性と一緒に来られてた」

ミセ*゚ー゚)リ「当たり。
お久しぶり」

(*゚ー゚)「あ、はい。
いつもありがとうございます。
って、じゃなくて!」

ミセ*゚ー゚)リ「私の名前はミセリ。
そこの男の人はフィレンクトさん」

(*゚ー゚)「え?あ!」

(‘_L’)「こんにちは」

(*゚ー゚)「え、あ、はい。
こんにちは。
あ、そうなんですね。
ミセミセさんとフィレフィレさんじゃなかったんだ」

.

175◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:33:57 ID:h6rr3Xoo0

ミセ;*゚ー゚)リ「違うわよ!
(;‘_L’)「違います!」

(*゚ー゚)「それは失礼しました」

(;,,゚Д゚)

呑気に会話する三人を見て呆れるギコ。

ミセ*゚ー゚)リ「マタンキなら転移結晶で飛んだからこれ以上この先に進んでも無駄よ」

しかしすぐにミセリの言葉で表情を引き締める。

(,,゚Д゚)「どういう事だゴルァ」

盾を構えたまま片手剣を握りなおしてミセリを見るギコ

ミセ*゚ー゚)リ「ん?言葉通りの意味だけど?
詳しいことはショボンが来てから話すわね」

その行動を笑顔で見ながらミセリは答えた。

(,,゚Д゚)「ショボンと知り合い?」

(*゚ー゚)「?」

(´・ω・`)「ミセリ!フィレンクトさん!」

ギコとしぃを追ってやってきたショボンが、
やっと合流した。







.

176◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:35:24 ID:h6rr3Xoo0

42.




鈍色に陽光を反射させ輝く槍を使い、
空間を貫くような鋭い突きが放たれる

男はそれをバックステップで避けながら両手剣を振り上げ、
鎗の柄に当てて軌道を逸らす。

そして振り上げたその勢いをそのまま生かして身体を一回転させ、
両手剣を横薙ぎに一閃した。

しかしそこに姿は無く、
剣が通り過ぎたその場に上から着地した男は鎗を地面に突き刺し土煙を作り出した。

両手剣の男は眉間に皺をよせながらさらにバックステップで後退する。

( ФωФ)「愉快愉快!」
  _
( ゚∀゚)「何がゆかいだくそ野郎!」

( ФωФ)「言葉が汚いであるな」
  _
( ゚∀゚)「うるさい!」

土煙の中から放たれる突きをすべて弾くジョルジュ。
  _
( ゚∀゚)「ちっ」

幅広の両手剣を団扇のように横に一閃すると風が巻き起こり土煙が晴れる。

しかしそこにロマネスクはいない。

ジョルジュはロマネスクのいた場所に向かって駆けだすと、
今まで自分のいた場所に、
空から鎗が突き刺さった。

.

177◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:36:19 ID:h6rr3Xoo0

( ФωФ)「良いのである良いのである」
  _
( ゚∀゚)「けっ」

動きを止めているロマネスクを襲う衝撃波。

( ФωФ)「!これは!」
  _
( ゚∀゚)「両手剣にだって放出系の技はあるんだよ!」

1秒の技後硬直を終えたジョルジュが駆け出す。

( ФωФ)「くっ」

両手剣を鎗の柄で受け止める。
  _
( ゚∀゚)「技後硬直を起こしたふりをして、
おれが大技を放つところ狙うつもりか?」

( ФωФ)「流石に三回目は見破られるであるか」
  _
( ゚∀゚)「う、る、せ、えー!」

腰を入れ、バットを振るように両手剣を振り切るジョルジュ。

(;ФωФ)「お、これはっ」

押し切られ後方に飛ばされるロマネスク。

いや自分で跳んでいた。
一瞬驚いたもののすぐに口元に笑みを浮かべ、
ジョルジュの力を利用して後方に跳び、
体勢を崩すこともなく改めてゆっくりと鎗を構えた。

( ФωФ)「はっはっは。愉快愉快」
  _
( ゚∀゚)「けっ!」

ジョルジュも追撃はせず、
ゆっくりと両手剣を上にあげ、
上段の構えを少しだけ斜めにした構えをとる。

.

178◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:37:34 ID:h6rr3Xoo0

( ФωФ)「正直ここまで楽しめるとは思っていなかったのである」
  _
( ゚∀゚)「……何故、殺す」

( ФωФ)「逆に聞こう。
この世界で生きる事に何の意味を持っているのである?」
  _
( ゚∀゚)「はぁ?」

( ФωФ)「こんな偽りの世界で生きる事に、
何の意味を持っているのである?」
  _
( ゚∀゚)「元の世界に生きて帰りたくねぇのかよ」

( ФωФ)「帰れると思っているのであるか?
おめでたい脳味噌であるな」
  _
( ゚∀゚)「今だって!」

( ФωФ)「攻略組などと呼称し、
トップランナーなどと言って粋がっている者達が、
本当に攻略してくれると思っているのであるか?」
  _
( ゚∀゚)「なっ」

( ФωФ)「断言できるのである。
あの者達がどんなに強くなろうとも、
何人いようとも、
このゲームはクリアできないのである」
  _
( ゚∀゚)「っんで、そんなこと言えるんだよ」

( ФωФ)「茅場晶彦は、そんな程度の天才ではないのである」
  _
( ゚∀゚)「はぁ?」

.
180◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:38:45 ID:h6rr3Xoo0

( ФωФ)「天才ゆえの弱点、
『ゲーム』という制約がある以上確かにいつかはクリアできるであろう。
だが、このペースではクリアすることは出来ないのである」
  _
( ゚∀゚)「どういうことだよ」

( ФωФ)「考えてみるのである。
このアインクラッドの世界、
百層からなるこの世界を作るのにどれだけの時間と費用が掛かっているか」
  _
( ゚∀゚)「はぁ?」

( ФωФ)「通常のMMORPGとして、
この世界でどれだけの利益を産まなければならないか。
一層からフロアボスを倒していき百層のラスボスを倒すまでの、
グランドクエストが終わるまでの間にどれだけの利益を得なければならないのか」
  _
( ゚∀゚)「……何言ってんだよ」

( ФωФ)「この閉じられた世界は天才茅場晶彦が作り出した虚像。
けれど実際に運営しているのは企業。
企業にとって、ゲームは金を産むための手段。
一つの世界でどれだけ利益を上げられるか。
一つの世界を、どれだけ長い間持たせることが出来るか」
  _
( ゚∀゚)「!」

( ФωФ)「VRという技術の促進を目標として各方面から支援はされていても、
結局は民間企業の遊戯媒体なのである。
数年でクリアできるような甘い設定にはなっていないのであるよ」
  _
( ゚∀゚)「……何年かかっても、クリアすればいい」

( ФωФ)「現実世界の身体にもタイムリミットはあるのである」
  _
( ゚∀゚)「……」

( ФωФ)「表情を見る限り、それに関しては考えた事があるようであるな」

.

181◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:39:52 ID:h6rr3Xoo0

ロマネスクを睨みつつも何も言えないでいるジョルジュ。

ロマネスクは今までとは違いどこか寂し気な顔でジョルジュを見つめた。

( ФωФ)「もうすぐ二年。
現実世界の身体はもう悲鳴を上げているであろうな。
悲鳴で済んでいるうちに、本当にこの世界をクリアできると思っているのであるか?」
  _
( ゚∀゚)「……出来る」

( ФωФ)「返答までに時間が空いたのが、
真の答えである」
  _
( ゚∀゚)「出来るんだよ!」

ジョルジュが駆け出し距離を詰め、
両手剣を振り下ろした。

( ФωФ)「言葉で叶わなければ力尽くであるか?」

それを鎗の柄で受け止めるロマネスク。

( ФωФ)「短慮ではあるが、
嫌いではないのである!」

流さずに押し返し前に踏み込むロマネスク。
  _
( ゚∀゚)「ちっ」

ジョルジュはその動きに合わせて後方に跳ぶ。

今まで自分のいた場所にロマネスクの蹴りが一閃していた。
  _
( ゚∀゚)「体術スキルか」

( ФωФ)「別に体術スキルはVIPの専売特許ではないであるからな。
しかしよく避けれたであるな」
  _
( ゚∀゚)「何事も経験だからな!」

.

182◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:40:51 ID:h6rr3Xoo0

再び距離を詰め、左下から右上へのすくい上げるような攻撃。

ジャンプして躱そうとしたロマネスクがそれを取りやめて地面に突き刺した鎗で受け止めた。
  _
( ゚∀゚)「……何故分かった」

( ФωФ)「やはり何か企んでいたのであるか。
経験則……ではなくカンである」

ジョルジュが狙っていたのは水平回転による3連撃。

出だしをすくい上げに見せる事により相手の隙を誘うやり方であったが、
ロマネスクはそれを受け止める事により防いでいた。
  _
( ゚∀゚)「ちっ」

両手剣を引き、
即座に突く。

しかしロマネスクはそれを危なげなく躱し、
逆に鎗で両手剣を跳ね上げた。

( ФωФ)「ふっ!」

そして気合を込めて鎗で横薙ぎに一閃。

( ФωФ)「!」

しかしそこにジョルジュの姿は無かった。

( ФωФ)「!!」

振り下ろされた両手剣を避けるために横に跳ぶロマネスク。

しかし腕の一部と足に攻撃を受け、
大地をゴロゴロと転がった。

( ФωФ)「……これは」

.

183◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:41:58 ID:h6rr3Xoo0

そのまま倒れるのではなく自身で転がって出来るだけ離れ、
しゃがんだ状態だがすぐさま体勢を整えたのは見事と言えよう。

そして両手剣を振り下ろした姿のままこちらを見ているジョルジュを睨む。

( ФωФ)「……なかなか、やるであるな」

そう言いながら立ち上がり、鎗を構える。
  _
( ゚∀゚)「そうか?」

その動きに合わせて両手剣で正眼の構えをとるジョルジュ。

( ФωФ)「その構えでは吾輩の動きを見るのに剣が邪魔ではないのか?」
  _
( ゚∀゚)「まだ、答えを聞いていなかった」

( ФωФ)「……。
?なんのであるか?」
  _
( ゚∀゚)「何故、人を殺す」

( ФωФ)「……ふむ。
この先攻略組とやらが壊滅し、
クリアの希望が絶たれ、
絶望し、失意のままモンスターに殺され、
もしくはリアルで衰弱死するよりも、
ゲームを楽しみつつ吾輩たちに殺された方が良いと思うのである」
  _
( ゚∀゚)「……」

( ФωФ)「今は絶好のタイミングなのである。
攻略組は叶わぬ夢を叶えようと意味のない努力をし、
中層や低層のプレイヤーは見果てぬ夢を見、
更にはこの虚無の世界を楽しんでいる愚かな今この時が!
幸せな死を与えられる絶好の機会なのである!」

.

184◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:43:36 ID:h6rr3Xoo0

高らかに、
朗らかに、
演説するロマネスク。
  _
( ゚∀゚)「……それだけじゃねえだろ?」

( ФωФ)「ああ、もちろん幸せな死を与えてあげるのであるから対価はいただくのである」

そしてニヤリと笑った。

(*ФωФ)「吾輩を楽しませてほしいのである」
  _
( ゚∀゚)「最初から、それだけ言えばいいんだよ!」

今までとは違う『速さ』でロマネスクとの距離を詰める。

( ФωФ)「!」

驚きつつも突き出された両手剣に合わせて鎗を突き出すロマネスク。
  _
(#゚∀゚)「ちっ」

火花が似た閃光を散らして両手剣と鎗をぶつけ合う二人。

( ФωФ)「先ほどから思っていたであるが、予想よりも強いであるな」
  _
(#゚∀゚)「なら降参して黒鉄宮に行け」

( ФωФ)「ふざけたことを言うであるな。
所詮レベルを上げたポイント振っただけの強さ。
同じようなレベルなら殺す覚悟のある者が勝つのである!」

ロマネスクの放つ鎗の突きがジョルジュを襲う。

それは目で追うのが困難な速度の突きであり、
しかもそれが十数回タイミングを変えて襲った。

( ФωФ)「どういうことである」

.

185◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:44:33 ID:h6rr3Xoo0

しかしジョルジュはそれを危なげなくすべてを避ける。

距離を取り、
今までよりも慎重にジョルジュを見るロマネスク。
  _
( ゚∀゚)「なにが?」

両手剣を肩に担いだジョルジュがロマネスクの呟きに答えた。

( ФωФ)「吾輩の今の突きを全て躱すなど、
ありえないのである」
  _
( ゚∀゚)「自信満々だな」

( ФωФ)「客観的事実である。
吾輩のレベル、槍スキルのレベル、鎗の武器としてのレア度、
どう考えても今のジョルジュがすべて避けるなどありえないのである」
  _
( ゚∀゚)「はっ。そんなもんでっ!」

瞬く間に距離を詰めたジョルジュが両手剣をロマネスクの脚を狙って薙ぐ。

しかしそれは剣先がロマネスクの左脚をかすめる事しかできなかった。
  _
( ゚∀゚)「実力を推測したところで『推測』でしかねぇってことだろ!」

( ФωФ)「!」

一撃離脱よろしく既に距離をとって両手剣を構えているジョルジュを睨むロマネスク。

( ФωФ)「推測は推測でしかない。
確かにそうであるな。
しかし、そうであったとしてもこれだけずれているとは……」

睨みつつも思考を働かせるロマネスク。
眉間に皺が寄る。

( ФωФ)「レベル、スキルレベル、武器、装備、
もともと高く評価していましたが、
それを更に上方に修正」

.

186◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:45:45 ID:h6rr3Xoo0

表情から感情を消して鎗を構えるロマネスク。
  _
( ゚∀゚)「冷静な判断。真の能力開放ってところか?」

再び瞬く間に距離を詰めるジョルジュ。

同時に振り下ろされた両手剣を、
横にして両手で持った鎗でロマネスクが危なげなく受け止める。

だが勢いには押され、片膝を着いた。

( ФωФ)「くっ」
  _
( ゚∀゚)「ちゃんと受け止められたのは褒めてやるよ」

ジョルジュも今度は離れず剣に力を込める。

(;ФωФ)「うっ」

ロマネスクの手が震える。

(;ФωФ)「し、しかし……」

支えるのに辛くなったロマネスクが、
ジョルジュを見ながら口元だけ笑った。

(;ФωФ)「これほど強いのであれば、
最初から吾輩とこうやって戦っていれば、
あの者が死ぬことは無かったのであるのにな」

それはジョルジュの気を散らすための一手だった。

しかしすぐにそれは失敗したことに気付く。
  _
( ゚∀゚)「……」

.

187◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:47:16 ID:h6rr3Xoo0

ジョルジュは悲しげな表情を見せた後、
すぐに口元には笑みを浮かべた。
そして両手剣を押す力を更に強くする。

(;ФωФ)「!」

そしてロマネスクの思考に一つの可能性が生まれた。

(;ФωФ)「まさか……。
だが、……。
しかし……。
……でも、どうやって。
!いや、確か、前に一つそんな話を聞いた覚えが……」

ロマネスクの頭脳を走る可能性。
芽生えたそれは急激に育ち花が咲き実を結ぶ。

(;ФωФ)「だが、何故そんなことをする必要が?」

思考するために意識の外に外していたジョルジュの顔を、
再びしっかりと見据えるロマネスク。

(;ФωФ)「……ジョルジュ!?」

そして名を呼ぶが、
  _
( ゚∀゚)「……」

ジョルジュは口を開かず、
ただ悲し気に口元を歪め笑みとも苦しみとも思える表情で、
両手剣に力を込めている。

(;ФωФ)「答えろジョルジュ!
あの者は!」

「正解!」

背後から声が聞こえたと思ったと同時に、
背中を切り裂かれたロマネスク。

.
189◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:49:05 ID:h6rr3Xoo0

(;ФωФ)「ぐっ」

両手剣の力が弱まった瞬間に横に跳ぶ。

地面を転がりながらも右手は鎗を手放さず、
更に起き上がりながら空いた左手でクリスタルを取り出しているのは見事と言えよう。

(;ФωФ)「ヒール!」

自分を攻撃した者達を見ながら叫ぶとクリスタルが砕け、
黄色く変わっていたHPバーが満タンになり緑に戻る。
それを視界の片隅で確認しつつ目の前の男達を見つめた。

一人は体の要所を金属の鎧で固めた両手剣の男。
そしてもう一人はそのまま渋谷や池袋に居てもおかしくないような姿の男。

(;ФωФ)「生きているだと」

( ・∀・)「正解!
ってさっき言ったのに」

(;ФωФ)「あの時消えたのは……」

( ・∀・)「?あれ?知らない?
一部では有名なあの事件。
圏内での死亡詐称事件」

(;ФωФ)「……。
聞いた覚えは……」

モララーがウインドウを操作すると背中にマントが現れる。
そしてそれを外し隣にいるジョルジュの前にふわりと投げた。

ジョルジュが黙って両手剣で一閃する。

切り裂かれたマントの上にHPバーに似たバーが浮かび、
緑から黄色に変わり、そして赤になって光が無くなるとマントは音を立ててポリゴンに変わった。

(;ФωФ)「……それがどうした?」

.

190◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:50:16 ID:h6rr3Xoo0

( ・∀・)「え?わからない?マジで?」

(;ФωФ)「……」

( ・∀・)「しょうがないなぁ」

やれやれと溜息を吐きながら腰のポーチからクリスタルを取り出す。

( ・∀・)「『転移結晶−!』」

結晶を片手に持ち掲げながら高らかに叫ぶモララー。

( ・∀・)「……あれ?似てなかった?」

(;ФωФ)「……マントがポリゴンとなって砕け散る瞬間に転移結晶を使って消え、
死んだように見せかけた?」

( ・∀・)「あ、うん」

(;ФωФ)「あの瞬間にそんなことが出来るわけがないのである!」

( ・∀・)「いや出来るし。
まぁジョルジュに身体隠してもらったり、
叫んでもらって転移の場所を言うのをかき消してもらったりしたけど。
で、似てなかった?」

(;ФωФ)「そんなことが……」

( ・∀・)「まぁクリスタルに慣れてないとタイミングとかずれてばれるかもだけどな。
でも、別の所で失敗したのに気付かなかったよな。あんた」

(;ФωФ)「なに?」

( ・∀・)「いや、横になった状態で攻撃を受けたからマントの耐久値バーが体の上に出てたじゃん。
HPバーは頭に出るからそこでばれたかなーと思って思わず呟いちゃったし。
でも気付かなかったよな」

( ФωФ)「!」

( ・∀・)「で、さっきの似てなかった?
けっこう自信あったんだけど。
あ、あんたの年だともしかして大山さん?」

.

191◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:51:36 ID:h6rr3Xoo0

(;ФωФ)「そんなことが……出来る訳……」
  _
( ゚∀゚)「ショボンなら」

( ФωФ)「!?」

今まで黙って聞いていたジョルジュが口を開く。
  _
( ゚∀゚)「ショボンなら、気付く」

( ФωФ)「なにを言って」

( ・∀・)「うん。気付く。あんな分かり易いミス。
シャキンとか兄者、クーにモナーも初見で気付くだろ。
で、似てなかった?」
  _
( ゚∀゚)「言っただろ。
器が違うって」

( ФωФ)「!!」
  _
( ゚∀゚)「おっさんが自分の事を凄い奴だと思っているのは分かる。
こんなギルドをやってるんだから、それなりに凄いとも思う。
でも、ショボンとは器が違う。
おっさんがショボンを取り込むとか、
夢物語も良いところだ」

ジョルジュの言葉に大きく目を開くロマネスク。

モララーは横でそんな二人を見ている。
  _
( ゚∀゚)「もう終わりだ。
大人しく、黒鉄宮に行ってくれ」

( ФωФ)「……。
……。
…… ……そんなことは、出来ないのである」

ロマネスクが鎗を構える。
  _
( ゚∀゚)「おっさん……」

.

192◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:52:52 ID:h6rr3Xoo0

( ・∀・)「はぁー。
年よりは意固地だね。
なぁ、なんでジョルジュがこんな回りくどいことを」

(#ФωФ)「うるさいのである!!」

モララーの言葉を遮るロマネスクの叫び。

(#ФωФ)「うるさいのである!
うるさいのである!
うるさいのである!
うるさいのである!
うるさいのであるうるさいのである!!!!!」
  _
( ゚∀゚)「……おっさん?」

(#ФωФ)「あんな若造に負けるわけがないのである!
吾輩が死を持ってこの世界を支配するのである!」

( ・∀・)「うわ」
  
(#ФωФ)「ラフィンコフィンなどという邪魔な存在もなくなり!
これからは吾輩が死の恐怖をコントロールするのである!
レベルの高い者も低い者も吾輩を恐れて暮らすのである!!
そして戦いにおいて吾輩を楽しませるのである!!!」

怒りに任せて叫ぶロマネスク。

ジョルジュはそんロマネスクを見ながら黙って両手剣を構え、
モララーはジョルジュを見た後悲し気な表情をした後、
ロマネスクに視線を向けて構えた。
  _
( ゚∀゚)「……茶番は終わりだ」

ロマネスクの目の前に移動したジョルジュが両手剣を振り下ろす。

.

193◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:54:27 ID:h6rr3Xoo0

(#ФωФ)「!」

かろうじて鎗で受け止める。

しかしその脇腹をモララーの爪が切り裂いた。

(#ФωФ)「!!」

モララーの攻撃を避けようとまずは両手剣の軌道を横に流そうとするが、
その隙に背中をモララーに切り裂かれ、
更に横に流すのに失敗した両手剣により足を切り裂かれた。

(#ФωФ)「ぐっ」

ロマネスクが二人から逃げるように移動する。
そして憎しみのこもった目で二人を見ながら鎗を構えた。

HPバーは既に黄色に変わっていた。

(#ФωФ)「許さん!許さんぞ!ジョルジュ!!」

( ・∀・)「許されないのはお前だ」

(#ФωФ)!

いつの間にか背後に立つモララーの爪がロマネスクの背中を大きく切り裂く。

(#ФωФ)「クソがっ!」
  _
( ゚∀゚)「言葉遣いが汚いぞ」

振り向いたその先にモララーは既におらず、
逆に背後からジョルジュの両手剣が振り下ろされる。

(#ФωФ)「ちっ」

後を見ずに横に跳ぶロマネスク。
腕を切られるが部位欠損は起きなかった。

.

194◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:55:32 ID:h6rr3Xoo0
  _
( ゚∀゚)「ダメか」

( ・∀・)「本当は狙ってやれるもんじゃないからな」
  _
( ゚∀゚)「そうだよな」

( ・∀・)「おれは一回成功したけどな!」
  _
( ゚∀゚)「……次の練習で必ず」

(#ФωФ)「貴様ら!!」

自分を見ながらも呑気に話す二人に怒鳴るロマネスク。

距離をとりつつ腰のポーチを探り回復結晶を取り出した。

( ・∀・)「おっ」

(#ФωФ)「ヒール!」

赤く変わっていたHPバーが完全回復し緑色に戻る。

(#ФωФ)「この屈辱は」

( ・∀・)「逃がさないよ?」

(#ФωФ)!?

エリアの出入り口に向かって後退っていたロマネスクの後方から声をかけられる。

(#ФωФ)「ちっ」

忌々し気に舌打ちすると同時に横に移動して二人をギリギリ視界に入れた。

(#ФωФ)「結局お前達も人殺し集団だ」
  _
( ゚∀゚)「は?」

( ・∀・)「はあ?」

.

195◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:57:09 ID:h6rr3Xoo0

(#ФωФ)「確かに吾輩達は人を殺してきたがのである。
だが、だからといって吾輩たちを殺せば貴様たちは殺人者なのである」
  _
( ゚∀゚)「……はぁ」

( ・∀・)「いや、殺さないし。
黒鉄宮の牢屋に入れるだけだし」

(#ФωФ)「吾輩は入らない!
あの牢屋はゲームの規定に反しシステムに断罪された場合以外、
無理矢理入れることなど不可能なのである!」

( ・∀・)「気を失わせれば入れられるぞ」

( ФωФ)「はっはっは。
それこそ不可能なのである。
吾輩達に麻痺と睡眠は効かないのである!」

勝ち誇ったように笑うロマネスク。
そして二人を睨む。

(#ФωФ)「だからお前達に出来るのは、
吾輩を逃がすか、殺すだけなのである」

( ・∀・)「一つ聞きたいんだけどさ」

ロマネスクの言葉に動揺することなく呑気に声をかけるモララー。

(#ФωФ)「……」

不愉快そうに自分を見たロマネスクの顔を見て言葉を続ける。

( ・∀・)「仲間のことは心配じゃないのか?」

( ФωФ)「仲間?」
  _
( ゚∀゚)「……」

( ・∀・)「……ああ、あんたの仲間だ。
ヒッキーとか、マタンキとか」

.

196◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 09:58:13 ID:h6rr3Xoo0

( ФωФ)「はっはっは。
これはまた珍妙なことを言うであるな」
  _
( ゚∀゚)「珍妙?」

( ФωФ)「替えのきく駒を仲間などと思ったことはないのである」
  _
( ゚∀゚)「!」

( ・∀・)「!」
  _
( ゚∀゚)「……」

( ・∀・)「……」
  _
( ゚∀゚)「……」

( ・∀・)「……ジョルジュ」
  _
( ゚∀゚)「ああ。もういい。手間かけた」

( ・∀・)「……ん」

(*ФωФ)「はっはっは!
怒ったであるか?
仲間などという幻想に囚われた愚か者よ!」

笑いながら鎗を構えるロマネスク。

( ФωФ)「怒ったら、どうするのである?」
  _
( ゚∀゚)「別に怒っちゃいない」

( ・∀・)「……ただ、」
  _
( ゚∀゚)「呆れた」
( ・∀・)「呆れた」

同時にロマネスクに近付く二人。

.

197◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 10:00:07 ID:h6rr3Xoo0

(;ФωФ)「くっ」

振り下ろされる直前の両手剣を弾きながらモララーの爪を攻撃する。
  _
( ゚∀゚)「おっ」

( ・∀・)「おや」

すぐさま距離をとる二人。

( ФωФ)「ふふふっ。
この程度で吾輩を殺すつもりだとは片腹痛いのである」
  _
( ゚∀゚)「殺さねぇよ!」

胴体を狙った横薙ぎの一戦。

( ФωФ)「はっ!」

縦に地面に突き刺した鎗の柄で両手剣を受け止める。

( ФωФ)「そしてこう来るのは分かっているのである!」

鎗を離し、背中に隠し装着しておいた短剣を握りしめて振る。

( ФωФ)「え?」

しかしそこには誰もいない。

( ・∀・)「ざんねーん」

上空から声が聞こえるとほぼ同時に、
モララーの爪がロマネスクの後頭部から背中を通り尻までを切り裂いた。

(;ФωФ)「ぐおっ」

声を漏らしながら仰け反ったロマネスクの肩口を切り裂くジョルジュの両手剣。

(;ФωФ)「ぐっ」

.

198◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 10:02:11 ID:h6rr3Xoo0

ロマネスクのHPバーが黄色に変わり、
地面を転がって二人から距離を取る。
そして短剣を構えると同時に目の前にいるジョルジュに気付く。
  _
( ゚∀゚)「大人しくしていてくれ」

水色に光る両手剣。

( ФωФ)

振り下ろされる瞬間、
ロマネスクの短剣がロマネスクの心臓を貫いた。

赤に変わるHPバー。

( ФωФ)「はっはっはっはっはっは!」

( ・∀・)「ヒール!」

振り下ろされた両手剣がロマネスクの身体を袈裟懸けに切り裂き、
そのHPバーを黄色にした。

( ФωФ)「はっはっはっは……は?え?」

( ・∀・)「させないよー」

呆然と立ち尽くしたロマネスクの身体を切り刻むモララーの爪。
言葉は軽いがその表情は冷たく、怒りをにじませていた。

(;ФωФ)「なっ何故!」

踊るようなステップでロマネスクを翻弄しながら切り刻み、
そのHPバーを赤に変えた。

(;ФωФ)「ちっ」

バックステップで距離を取ったモララー。

短剣を闇雲に振り回すロマネスクに向かって爪の付いていない左手を振った。

.

199◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 10:03:26 ID:h6rr3Xoo0

( ФωФ)「仕切り直しである!」

ロマネスクは腰のポーチに手を伸ばそうとするが、
動きを止めてそのまま崩れ落ちた。

(;ФωФ)「ま……ひ……だと……?
なぜ……」

横向きに倒れ、
自分を見下ろすモララーを見る。

( ・∀・)「まだ情報の出回っていない麻痺毒だよ。
うちの調薬師が作ったやつ。
あ、すでにイベントボスとかで使うやつがいるから」

(;ФωФ)「麻痺……。
てい……こう……」

( ・∀・)「今までの麻痺毒に対して完全抵抗できる状態で、
HPバーがグリーンなら100パー抵抗できる。
で、黄色で半々、赤で90パー侵されるって」

(;ФωФ)!

( ・∀・)「もうすぐ意識も失うから聞いとけ。
……悪いけど、ジョルジュにお前を殺させるような真似はさせない。
逃げられないならジョルジュの心に傷を残そうとか、
お前の考える事なんかお見通しなんだよ。
目が覚めたら黒鉄宮でこのゲームがクリアされるまで大人しくしてろ」

( ФωФ)「!……。
……。
……。
ふっ……ふっ……ふ……」

.

200◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 10:04:38 ID:h6rr3Xoo0

( ・∀・)「なにを笑ってるんだか。
……おい、なんでジョルジュがこんな回りくどいことをしたか分かるか?
最後まで、あんたを信じてたんだよ。
おれが死んだ瞬間に、
そのことに後悔して、
苦しんでくれるんじゃないかって、
期待したんだ。
それをあんたは……って、
もう寝てるか」

目を閉じて横たわるロマネスク。

頭の上に浮かぶアイコンには麻痺と睡眠のマークが付いている。
  _
( ゚∀゚)「モララー」

( ・∀・)「ん?」

それを見下ろしていた二人だったが、
ジョルジュが口を開いた。
  _
( ゚∀゚)「さんきゅ。」

( ・∀・)「……ん。きにすんな」
  _
( ゚∀゚)「……おう。さんきゅ」

互いの顔を見ずに会話する二人。

少しの沈黙ののち、ジョルジュが回廊結晶を使った。








.
203◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 10:06:09 ID:h6rr3Xoo0

43.





(アスナ)「……はい。ありがとうございます。
これで、フロアボスに挑めます」

夕闇の迫る転移門広場に集合した者達。

ウインドウを操作する攻略組トップギルド血盟騎士団の副団長、
閃光ことアスナ。

その後ろには所在なさげに立つ黒尽くしの装備を身に付けた、
ビーター或いはブラッキーと呼ばれるソロ剣士キリト。

その横には、頬にペイントした髭が特徴のトップ情報屋、
鼠のアルゴがにやにやと笑って立っている。

(´・ω・`)「よろしくお願いします」

(アスナ)「はい。後は私達が。
キリト君、このあと打ち合わせするから。
これなら明日朝一で向かえる」

(キリト)「分かった」

(アスナ)「アルゴさん、出来れば情報提供者の立場から参加してください」

(アルゴ)「……まあ、今回は仕方ないかナ。
本当なら……」

視線をアスナから移動するアルゴ。

アスナとキリトも一人を見る。

(´・ω・`)「僕は遠慮させていただきます」

(アルゴ)「そういうと思ったけどネ」

ニッコリと笑ったショボンに向けて疲れた笑顔を見せるアルゴとアスナ。

.

204◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 10:08:01 ID:h6rr3Xoo0

川 ゚ -゚)

(`・ω・´)

('A`)

( ´∀`)

爪'ー`)

ショボンの後ろにいる5人も疲れたような笑顔を見せた。

(´・ω・`)「そうだアルゴさん、マッシロの皆への連絡と情報収集ありがとうございました」

(アルゴ)「いや、問題なかったヨ。
ショボン達が調査から外れて戦闘に入った後は
そこの彼がメインで動いて遺跡の調査が出来たから、
やったのはサポート程度だシ。
けど、VIPとN−S以外にこんなギルドを使っていたとはネ」

(´・ω・`)「使っているとは人聞きの悪い。
協力関係なだけですよ」

(アルゴ)「ま、そういう事にしておいてあげるヨ」

(´・ω・`)「よろしくお願いします」

(アスナ)「それでショボンさん。
例の殺人ギルドは……」

(´・ω・`)「一人逃がしましたが、
それ以外は黒鉄宮に。
ギルドとしては壊滅できたと思います」

.

205◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 10:09:03 ID:h6rr3Xoo0

(アスナ)「そうですか……。
出来れば詳しい話を伺いたいので後日ホームの方へ伺わせて下さい」

(´・ω・`)「それではレポートにしてアルゴさん経由で」

(アスナ)「伺わせてください」

(´・ω・`)「あ、いえ、レポートを」

(アスナ)「伺わせてください」

(´・ω・`)「……ではまた後日こちらから」

(アスナ)「ボス戦が終わり次第、
宜しくお願いします」

(´・ω・`)「……はい。
連絡をお待ちしております」

(アスナ)「ありがとうございます」

川 ゚ -゚)「(ショボンが押し負けた!)」

('A`)「(これがトップギルドの副団長の実力か!?)」

キリト「(攻略組に引き込むつもりか?)」

(アルゴ)「(アーちゃん料理スキル鍛える為に通うつもりだネ)」

ニッコリとほほ笑んだアスナにぎこちない笑顔を見せるショボン。

(´・ω・`)「そ、それでは今日はこの辺で」

(キリト)「あ、一つ質問していいかな」

(アスナ)「キリト君?」

(アルゴ)「キー坊?珍しいネ。
こんな場でキー坊が発言するなんテ」

.

206◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 10:10:17 ID:h6rr3Xoo0

手を上げたキリト。

それに対して二人は驚いたようなことを言うが、
ショボンは普通にうなずいた。

(´・ω・`)「どうぞ。
答えられることなら良いんですが」

(キリト)「あー。いや、別に大したことじゃないんだけど。
むこうでヘリカルちゃんが抱きついている男の子は誰かなって思って」

(アスナ)「   キリト、君?」

(アルゴ)「あー。キー坊は可愛い子は見逃さないからネ。
に、してもヘリカルちゃんは若すぎないかナ?」

(;キリト)「ち、違う!そういうんじゃなくて。
さっき『お兄ちゃん』って言ってたみたいだから」

(アスナ)「え?
でも、ヘリカルちゃんのお兄さんは……」

(´・ω・`)「はい。
あそこにいるぃょぅ君はヘリカルちゃんのお兄さんです」

(アスナ)「!」

(キリト)「ヘリカルちゃんのお兄さんは二人いたんですね」

(´・ω・`)「いえ、一人ですよ」

(キリト)「!」

(アスナ)「え、え?
でも、その、亡くなったって」

(´・ω・`)「彼女、
『亡くなった』とか『死んだ』とか言いました?」

(キリト)「……え?」

.

207◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 10:11:24 ID:h6rr3Xoo0

(アスナ)「そういえば……直接的な言葉は……」

(´・ω・`)「ぃょぅ君が自分から志願して、
死んだように見せかけて黒子として動いてくれまして。
ヘリカルちゃんには寂しい思いをさせてしまいました。
彼女も彼の思いは理解したようですが、
いくらそう見せる為でも直接的な言葉は口にしたくなかったみたいです。
アルゴさんはご存知でしたよね?」

(アルゴ)「ん?ああ。
ぃょぅ君の『Hiyou』って名前は消されていなかったからネ。
生きてることは知ってたヨ。
ただ、彼が黒子だとか、
あの時助けてくれたのが彼だと知ったのは最近だけどネ」

アルゴがニヤニヤと笑いながら話に乗る。

(キリト)「アルゴ!?」

(アスナ)「アルゴさん!?」

(キリト)「知ってたのか!?
あと、助けられたって?」

(アルゴ)「ショボンが何か企んでそうだったから色々調べていたからネ。
なるほど、それで合流した時変な空気だったのカ」

腕を組み、納得したと意思表示をするかのようにうなずいているアルゴ。

だがその表情はニヤニヤと笑っている為、
色々と台無しだった。

.

208◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 10:12:24 ID:h6rr3Xoo0

(キリト)「アルゴ……」

(アスナ)「アルゴさん……」

それぞれの表情でアルゴを見る二人。
そしてほぼ同じタイミングで二人の視線がヘリカルとぃょぅに移った。

(キリト)「……ヘリカルちゃんが幸せなら良しということで」

(アスナ)「……そうね」

(´・ω・`)「ありがとうございます」

(アルゴ)「小さくても女は女優ってことだネ」

呟いたアルゴを睨むキリトとアスナだった。








攻略組の二人と情報屋が去った後、
メンバーは移動をした。

ギルドVIP
ギルドN−S
プギャー達3人
ギコとしぃ
ぃょぅとヘリカル
ミセリ
ギルドマッシロから調査に参加した者達
そして、デレとフィレンクト。

40名を超える人数が余裕を持って入れる広さがホームには無いため、
VIP牧場の敷地に簡単なテーブルとイスを置いて打ち上げの準備をしていた。

.

209◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 10:13:33 ID:h6rr3Xoo0

屋台バーボンハウスも3号機まで準備されている。

(´・ω・`)「みんないいかなー」

簡易踏み台に乗ったショボンが声をかけると全員が手を止めてそちらを見た。

(´・ω・`)「だいたい準備を終わったみたいだね。
マッシロのメンバーで遅くなる人もいるけど、
今回の作戦に参加した皆はそろったから連絡事項と一回目の乾杯をしちゃいます」

顔を向けるだけでなく体全体をショボンに向けるメンバー達。

座らされていたブーンは立ち上がろうとしたのをツンとドクオに実力行使で止められ、
更に目線でショボンに頷かれて渋々と居心地悪そうに一人座っていた。

(´・ω・`)「今日は本当にお疲れさまでした。
反省しなければいけない点や、
無茶したメンバーもいましたが、
まずは全員今ここにいられることを喜びたいと思います」

何人かのメンバーが視線をそらし、
その者を何人かがじっと見つめる。

(´・ω・`)「あとでお説教タイムが待っている人もいますが、
まずは打ち上げを楽しみましょう!」

項垂れる数名と、
それ以外の笑顔のメンバー達。

(´・ω・`)「それではとりあえずグラスを持ってください」

全員が近くのテーブルからグラスを持ち、
ショボンを見る。

今度はブーンが立ち上がるのを二人は阻止しなかった。

.
210◆dKWWLKB7io :2017/12/17(日) 10:14:29 ID:h6rr3Xoo0

(´・ω・`)「みんな持ったかな?
では、かんぱーい!」


「「「「「「かんぱーい!!!!!」」」」」


その日は夜遅くまでVIP牧場はライトアップされ、
メンバーは思い思い楽しんでいた。




情報屋によって今回の件の表に出せる内容が解禁・報告・広報され、
ギルドVIPの名が生産ギルド以外の形でさらに大きく広まるのは、
数日後のことだった。





第二十四話








.

戻る

inserted by FC2 system