440◆dKWWLKB7io :2017/03/22(水) 00:43:43 ID:OVRAjKuE0

cm  LongVersion(微妙に映画のネタバレあり)




「これが、あの事件の真実」



♪僕の声が届いた時に〜♪



SAO事件から2年。
街にはARデバイス。《オーグマー》を装着した者であふれていた。

そしてオーグマーを使用したゲーム《オーディナル・スケール》は、
若者を中心に浸透していく。


「学校で配ってくれたって聞いたもなよ」

「便利だから!」

「みんなもオーディナルスケールをやってるんだろ?
おれも買うべきかな」

「ポイントととか溜まるし」


オーディナルスケールの人気はゲームの面白さだけではなく、
世界初のARアイドル《ユナ》によるところも大きかった。

彼女の初ライブは大きく注目される。


.

441◆dKWWLKB7io :2017/03/22(水) 00:46:03 ID:OVRAjKuE0

「みんなは行くの?」

「んー。無料だし、学校全員招待されたわけだし。
学校の友達にも誘われてるから行こうかと思ってる」

「あれ?行かないのか?」

「そうか。行かないのか。私もやめるかな」

「ならおれにチケットくれよ」

「おれらが渡されたチケットは学生証と同時に出さないとだからダメだな」

「楽しみだなー。ユナちゃん」


ライブ会場で進行していた陰謀。

しかしその企みは、『ヒーロー』により阻止された。



企みの全貌と結末を知った少年が、静かに狂う。



「……僕ならもっと、うまくやれる……」



VRの世界に囚われていた少年たちが、
ARの世界でも武器を手にする。


.

442◆dKWWLKB7io :2017/03/22(水) 00:47:33 ID:OVRAjKuE0

「あんた!自分が何をしようとしているか分かってるの!?」


「私は、何処までもそばにいる」


「おれだって!おれだって……。でも……っ!」


少年の狂気が、仲間達の運命をも狂わせる。


「おれは、誰とも戦いたくない」

「進むにも、止めるにも、戦いは避けられないもなよ」

「くぅ〜ん」


それぞれの思いが交差し、絡み、悲しみを引き寄せる。


「あの日あの時、声をかけられた時から、今どうするかは決まっているから」


「おれだって!おれだってあいつに……。あいつとも、もう一度話せるのなら……」


神速の片手剣士が、空色の風となり、天使の羽根をきらめかせながら街を駆ける。


「やろうとしていると事の善悪は別として、技術や仕組みには興味がある」


「そうか。……初めてだな。完全に敵になるのは」


それぞれの思いをもって武器を持ち、目の前の仲間との戦いを選ぶ。


.

443◆dKWWLKB7io :2017/03/22(水) 00:48:49 ID:OVRAjKuE0

「門下生になったとはいえ、現実世界で私に勝てると思っているのか?」

「勝てるとは思ってない。でも、足止めくらいはしてみせる」


少年と少女の思いは同じ。


「わたしもあいつも!誰もそんなこと望んでない!」


「自己満足だけだったことはわかってる。でも……」


その先にあるモノは。


『( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。−MOMENT−
〜VIPのメンバーはオーディナルスケールで戦うようです〜』


彼らの先にあるのは悲しみだけ


『2018年投下予定』


♪この瞬間を掴め〜♪


「  僕の名前は、《ホライゾン》だお  」


♪Catch the Moment♪



.
449◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:12:50 ID:pUPAGRQU0
cm ShortVersion (TYPE−sh)

「これが、僕の贖罪」

♪僕の声が届いた時に〜♪

ARデバイス《オーグマー》を使用したゲーム《オーディナルスケール》
その陰で進行していた陰謀は、英雄によって阻止された。

「僕は失敗しない」

だがその陰謀を知った少年が、
自らの願いの為に動き出す。

「あんた!自分が何やってるか分かってるの!?」

「前を見ていればいい。私はそばにいる」

「おれはどうすれば……」

友人を傷付けてでも成し遂げたい思い。

「そんなことが……」 
「できるっていうのか」
「でも、代償は必要もなよ」
「あいつは、そんなことを」
「やりたいっていうなら、やれば良いさ」
「仲間だから、止めたい」
「力になりたいから」
「おれだって……」

交差する思い。

袂を別つ友人達。

『( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。−MOMENT−
〜VIPのメンバーはオーディナルスケールで戦うようです〜』

願いが悲しみを呼ぶ。

「あんたが忘れたら意味ないでしょ!」

「僕の記憶を、基にする」

♪この瞬間を掴め〜♪

「  僕の名前は、《ホライゾン》だお  」

♪Catch the Moment♪
.
451◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:22:16 ID:pUPAGRQU0

( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。




第二十三話

crossing field  前編 ? 命は美しい -






.

452◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:23:46 ID:pUPAGRQU0
1.

2024年10月初旬 アインクラッド

ギルドVIPホーム、執務室。

執務机に備えられた椅子にショボンが座り、
扉と執務机の間にあるソファーセットには、
ブーン、ドクオ、ツン、クー、シャキンが座っている。

(´・ω・`)「集まってくれてありがとう。
この後また全体ミーティングをするわけだけど、
先に情報のすり合わせをしておきたくてね」

(`・ω・´)「根回しは大事だからな」

(;´・ω・`)「根回しというかなんというか」

ξ゚听)ξ「別にいいわよ。私もショボンに伝えておくことあったし」

川 ゚ -゚)「おやツンもか。奇遇だな、私もだ」

ξ゚听)ξ「あ、あれ?
この前苦戦してたのがやっとなんとかなったの?」

川 ゚ -゚)「別に苦戦などしていないがな」

( ^ω^)「アイテムの買い占めはもうしなくていいのかお?」

川 ゚ -゚)「いや、試作が済んでこれから本格的に生産に入るから、
市場の動向は見ておいてくれ。
悔しいことにまだ成功率は70%くらいなんだ」

( ^ω^)「了解だお」

('A`)「ってことはまさか」

川 ゚ -゚)「素材集めを付き合ってもらう」

('A`)「うえー」

.

453◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:25:28 ID:pUPAGRQU0

ξ゚听)ξ「あ、私も今回の生産で全部使いきっちゃったから、
欲しいの一杯あるのよ。
よろしく頼むわ」

('A`)「お前も一緒に行くんだよ」

ξ゚听)ξ「行っても良いけど、
普通のオーダーも入っているから、
あんたに頼まれているマントの製作は遅くなるわよ」

('A`)「……ちゃんとリスト作れよ。
もう『書いてなくてもいつも頼んでいる奴なんだから気を利かせなさいよ』
は、無しだからな」

ξ゚听)ξ「はいはい。
クーは一緒に行っている暇あるの?」

川 ゚ -゚)「作りたくても手元に残っている材料が少ないからな」

( ^ω^)「前に買い占めした時の名残で、
他の道具屋から回ってきているのがあるお。
今はあんまり人気の無い商材でどこの店でもちょっと余ってるみたいだから、
声をかければ多少は集められると思うお」

川 ゚ -゚)「そうか!」

('A`)「……クーもちゃんとリスト作れよ」

川;゚ -゚)「すまん、助かる。ありがとう」

(`・ω・´)「なんだなんだ。
また新しい商材か?」

(´・ω・`)「二人とも、頼んでおいた奴で良いのかな?」

ξ゚听)ξ「そうよ。
高性能インナーウエア。
当社比防御能力80パーセント以上アップ」

.

454◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:27:55 ID:pUPAGRQU0

(`・ω・´)「それは凄いな」

ξ゚听)ξ「その分作るのは難しいし、
耐久値にはまだ問題が残っているけどね。
攻略組に下ろすのも無理として関係者全員に配り終えたから、
それを報告したかったの」

( ^ω^)「着心地もいいおね」

川 ゚ -゚)「着心地?」

('A`)「そっか?」

(´・ω・`)「鉱物から作った糸で作ったとは思えない出来ではあったけど、
前から作ってもらってたインナーとそれほど変化は無かったように思えたけど」

( ^ω^)「お?そうかお?
前のより軽くて着てないような感覚だお」

ξ゚听)ξ「ま、着心地なんて人それぞれの感想よね」

川 ゚ -゚)

('A`)

(´・ω・`)

ξ゚听)ξ「な、なによ。人の顔をじろじろと」

川 ゚ -゚)「いや別に」

('A`)「いいんじゃね」

(´・ω・`)「防御能力が一緒なら」

ξ゚听)ξ「一緒よ!そこに差をつけるわけないでしょ!」

(´・ω・`)「ならいいや」

.

455◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:29:31 ID:pUPAGRQU0

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「はいはい。この話は終了。
ちゃんと報告したわよ」

(´・ω・`)「うん。ありがとう。防御力は出来るだけ上げておきたいからね」

(`・ω・´)「なあツン」

ξ゚听)ξ「なに?」

(`・ω・´)「おれ、もらってない。
関係者じゃない感じか?
うちのメンバーも渡されたって報告貰ってるから楽しみに待ってたんだけど」

ξ゚听)ξ「……」

(`・ω・´)「ツン?」

ξ゚听)ξ「忘れることは、誰にでもあるわよね」

(`;ω;´)

ξ;゚听)ξ「だ、大丈夫よ。
余ったからおかしいなとは思ったのよね。
人数分はちゃんと作ったから、安心して。
後で渡すから」

(`・ω・´)「絶対だからな!」

ξ゚听)ξ「はいはい」

('A`)「他にも忘れられた奴いたりして」

ξ゚听)ξ「…… ……」

川 ゚ -゚)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

('A`;)「否定しないのかよ」

.

456◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:31:30 ID:pUPAGRQU0

(;^ω^)「……あとで皆が来た時に聞いてみた方が」

ξ゚听)ξ「ま、まあ、うん。
大丈夫だと思うけど、念には念を入れないとね」

(´・ω・`)「じゃあ後のミーティングは、まずはその確認からだね」

ξ゚听)ξ「だ、大丈夫よ。多分」

(´・ω・`)「クーの方は、例の毒の件だよね」

川 ゚ -゚)「ああ。報告書も作成した。
目を通して問題が無ければアルゴに回してくれ」

(´・ω・`)「ありがとう」

川 ゚ -゚)「通常毒と麻痺毒、それとその二つの混合毒。
通常毒と麻痺毒は今までのレベルを超えている。
通常の解毒薬でも効果が無いわけじゃないが、
飲んですぐ消えるわけじゃないようだ。
クリスタルでの浄化もすぐに効果が出るわけじゃないようだ」

(´・ω・`)「それは……」

川 ゚ -゚)「今のところは犯されている時間が現状の物より短いからどうにかなっているが、
これが長くなったら命に直結するだろうな」

('A`)「特にボス戦で麻痺毒なんてくらったら……」

(`・ω・´)「で、解毒薬も作ったんだろ?」

川 ゚ -゚)「もちろんだ。
多少難航したが、成功している」

ξ゚听)ξ「さすがね」

川 ゚ -゚)「以前クリスマスにやったクエストの経験が役に立ったな。
思えばあれは複合毒の存在を教えてくれていたわけだし、
今回の製法に関してアイデアのもとになった」

(`・ω・´)「ほぉ……」

.

457◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:33:43 ID:pUPAGRQU0

(´・ω・`)「この世界に偶然は無い。
全て必然である。だね」

('A`)「茅場晶彦の作りだしたゲームの世界だからな」

( ^ω^)「もう販売できるのかお?」

川 ゚ -゚)「いや、そこまでの量は出来ていない。
何分面倒臭い。
製法が難しいから作れる者も少ないと思うが、
まあ情報が出回れば、一週間もあれば何とかなるだろう。
今ある分は、うちの者達と攻略組に回す分くらいだな。
攻略組の方はアルゴ通しで渡してもらえばいいだろう。
私が作ったと分からないよう、街売りの瓶を買ってこないと」

(´・ω・`)「よろしく頼むよ」

川 ゚ -゚)「クリスタルの方はモララーに作らせている。
あいつの作った空水晶に解毒薬を足すわけだが、
どうやらこちらも成功率が悪いようだ」

('A`)「当分は薬メインにした方が良いだろうな」

川 ゚ -゚)「ああ。
それが賢明だろうな。
あと、耐麻痺効果を持ったアイテムの製作は既にモララーに依頼済みだ」

('A`)「モララーの睡眠時間がまた減ったわけか」

川 ゚ -゚)「もう一人細工師が欲しいところだな。
水晶の生成はともかく誰かマシロに居ないのか?」

ξ゚听)ξ「あ、裁縫スキルもいない?」

(´・ω・`)「うーん。
両方とも聞かないな。
フォックスに聞いておくよ」

ξ゚听)ξ「よろしく」

川 ゚ -゚)「頼んだ。
あとショボン、生成方法の情報散布方法も任せる」

.

458◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:35:25 ID:pUPAGRQU0

(´・ω・`)「うん。いつも通りに進めるよ」

川 ゚ -゚)「私の方もこれでおわりだ」

(´・ω・`)「了解したよ。
さて、他に何かある人はいるかな」

全員の顔を見るショボン。
誰も何も言わない。

(´・ω・`)「じゃあ僕から。
正式に依頼が来たよ」

川 ゚ -゚)「そうか……」

ショボンの言葉に全員が頷き、
クーだけが口に出して返答した。

(`・ω・´)「どうするんだ?」

(´・ω・`)「どうするもなにも、受けるしかないよ」

川 ゚ -゚)「そう……だな」

ξ゚听)ξ「しょうがないわよね」

( ^ω^)「例の『遺跡調査』かお?」

(´・ω・`)「うん。そう。
アルゴさんから内内に連絡は来てたからね。
正式発注は『血盟騎士団』だけど、
実際は攻略組全体での話し合いかな」

('A`)「今の最前線の迷宮区に、
遺跡フロアにあったものと同じモチーフの石像が多数あるんだよな」

(´・ω・`)「うん。
もともとフロア内にも点在してたから、
関係があるんじゃないかってのは言われていたみたいだけど。
で、迷宮区が本当に迷宮で、
いまだに完全な地図が作れてないみたい」

.

459◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:36:49 ID:pUPAGRQU0

ξ゚听)ξ「そこで下のフロアを調べてほしいって訳ね。
自分達でやれば良いのに」

('A`)「うま味も面白みも少ないからな。
今の攻略組の奴らじゃレベル上げには下のフロア過ぎて不向きだし」

ξ゚听)ξ「そんなのこっちも一緒でしょ」

川 ゚ -゚)「フロアが広がってはいないがクエストが増えたという情報はある」

( ^ω^)「新しいアイテムが出てくるかもしれないおね」

ξ゚听)ξ「まあそこらへんは気になるけど」

(´・ω・`)「もともとはアルゴさんに来た話だけど、
彼女だけじゃあのフロアの総浚いは無理だよ」

(`・ω・´)「そこで、VIPに回ってきたと」

(´・ω・`)「うん」

ショボンが机をタップするとウインドウが現れる。
そして操作を始めると執務室の壁に映像が浮かんだ。

(´・ω・`)「右が遺跡フロアの全域図。
で、左がその上のフロアの全域図」

ξ゚听)ξ「上のフロア?
ってどんなところだっけ」

川 ゚ -゚)「虫がいっぱい出てきたところだろ」

ξ゚听)ξ「ああ、あそこね」

心底嫌そうに顔をしかめたツン。

(´・ω・`)「覚えてる?中央道路?」

( ^ω^)「お、あそこかお!」

.

460◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:38:53 ID:pUPAGRQU0

('A`)「真っすぐの道をひたすら進んでくやつな。
ちゃんとした名前のあるフィールドダンジョンだったよな確か。
中央道路って呼んでたから覚えてないけど」

( ^ω^)「途中で出てきたカマキリ男がむやみに強い奴だおね」

ξ゚听)ξ「ああ!
あのバー四本あって、むやみに強いカマキリ!
無視して横をすり抜けること出来るけど、
後ろから襲ってきてうざい奴」

川 ゚ -゚)「だが後方から襲ってくるのはクエストをやってるときだけだし、
時間をかけてやればそれほど驚異ではなかったはずだが」

('A`)「確かあそこを通るよりも別のルートを通れば安全に行けることが分かって、
迷宮区をクリアするころには、クエストやる以外では使われてなかったよな」

(`・ω・´)「一回全員でやりに行ったな」

( ^ω^)「おっおっ。覚えてるお!」

川 ゚ -゚)「それで、そこがどうしたんだ?」

(´・ω・`)「それだけ覚えてくれているなら次に進むけど、
まずはここに色を付けておくよ」

フロア図の中心近くに引かれる青い線。

(´・ω・`)「で、こっちの遺跡フロア。
遺跡フロアの中心の円形遺跡群フィールドダンジョンは覚えてるよね」

全員が頷く。

(´・ω・`)「その中心に、大きな木があったの覚えてる?」

ξ゚听)ξ「……なんとなく」

( ^ω^)「根元でご飯食べたことあるおね?
たしか安全エリアで」

.

461◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:40:28 ID:pUPAGRQU0

川 ゚ -゚)「上を見てもてっぺんが見えなかったような」

(´・ω・`)「そう、あれ。
この位置なんだ」

右の図に赤い丸を付けるショボン。

(´・ω・`)「そして、この二つの地図の東西南北を合わせて、
迷宮区の位置を合わせると……」

左の図が動き、右の図に重なる。

すると青い線の先に紫色の丸が浮かんだ。

川 ゚ -゚)「位置が重なり合う?
中央道路のほぼ先端だなここは」

ξ゚听)ξ「何がある場所?
中央道路の一番先は遺跡があって、
そこでクエストボスと戦ったのは覚えてるけど」

('A`)「その二つ前の安全エリア。
たしか中央に森があって、
森の中には入れなかったような」

( ^ω^)「確か石碑があったおね。
なんて書いてあるかは分からなかったけど」

ξ゚听)ξ「はいはい。あったあった。
え、じゃあもしかしてあの森は……」

(`・ω・´)「下の巨木の先端ってことか?」

(´・ω・`)「もしかするとね」

ξ゚听)ξ「へー」

( ^ω^)「おー」

('A`)「ふーん」

(´・ω・`)「なんか気の抜けたような」

.

462◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:42:17 ID:pUPAGRQU0

川 ゚ -゚)「それが何か関係あるのか?」

(´・ω・`)「関係あるかどうかを調べるのが今回の僕達の仕事なんだけどね。
そこから何か道が開けるかもしれないから」

ξ゚听)ξ「そりゃそうか」

(`・ω・´)「だが闇雲に調べるわけじゃないんだろ?」

(´・ω・`)「そりゃね」

重なった図に新たにひかれる赤い線。

川 ゚ -゚)「これは?」

(´・ω・`)「円形遺跡群の外周と、
そのすぐ内側の通路。
『円形』と呼んではいるけど綺麗な円ではないんだよね。
で、こっちが今攻略組がマップ攻略している迷宮区の図面」

重なったフロア図の横に、迷宮区のマップが現れる。

浮かんでいる黄色の線。

(´・ω・`)「線は判明している迷宮区の外周通路。
もちろん尺度は調整してあるけど、
これもまた重ねてみると……」

画面の図が重なると、
一部の赤い線がオレンジに変わった。

(`・ω・´)「これ、色はお前が変えてる?」

(´・ω・`)「うん。分かり易いかと思って」

(`・ω・´)「だよな」

( ^ω^)「お?」

(`・ω・´)「いや、なんでもない」

.

463◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:44:23 ID:pUPAGRQU0

('A`)「部分部分がきれいに重なるわけだ」

(´・ω・`)「うん。
で、更に言うと」

ξ゚听)ξ「迷宮区の入り口と、中央道路の入り口が同じ」

川 ゚ -゚)「迷宮区のいまだ未到達地点、おそらくはフロアボスの部屋と、
紫色の丸が重なるわけか」

(´・ω・`)「そういうこと」

ショボン以外の全員が溜息に似た吐息をつき、
壁の図面を凝視する。

(´・ω・`)「あとは現地で調べてみないとだけど、
何かヒントはあるんじゃないかな」

( ^ω^)「遺跡フロアでスイッチを押したら迷宮区に通路が出来るとかだったら面白いおね」

(´・ω・`)

川 ゚ -゚)

(`・ω・´)

('A`)

ξ゚听)ξ

(;^ω^)「じょ、じょうだんだお。
そんな目で僕を見るのは止めてほしいお」

(´・ω・`)「いや、うん。そうか」

川 ゚ -゚)「その可能性も……」

(`・ω・´)「無くはないだろう」

('A`)「簡単なスイッチとかではなくても」

ξ゚听)ξ「遺跡で何か決まった行動をするとか」

川 ゚ -゚)「遺跡と中央道路、両方で同じタイミングとか」

(;^ω^)「おっおっ?」

.

464◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:46:48 ID:pUPAGRQU0

川 ゚ -゚)「他には重なる場所とかないのか?
中央道路の周辺も気にしてみた方が良いだろう」

(´・ω・`)「もう少し詳しい情報をもらうよ。
同じモチーフの石像とか石舞台とかがあるかもしれない」

(`・ω・´)「それがいいな。
なんなら迷宮区を見に行くのも良い」

('A`)「迷宮区か。
パーティー二つでいくか」

ξ゚听)ξ「なに喜んでんのよ」

('A`;)「べ、別に最前線に興味があるとかそんなんじゃ」

( ^ω^)「興味があるんだおね」

川 ゚ -゚)「あるんだな」

ξ゚听)ξ「あるんだ」

(`・ω・´)「素直になれ」

('A`;)「べ、べべべべ別に」

(´・ω・`)「とりあえずアルゴさんと、
血盟騎士団のアスナさん、
あとエギルさんにも話を聞いてみるよ。
流石武具店のお得意さんにも攻略組がいるっていうから、
兄者と弟者に頼んでそこにも繋いでもらって。
色んな角度からの情報のすり合わせもしておきたいし」

(`・ω・´)「そうだな。それが良い」

川 ゚ -゚)「中央道路の周辺も調べなおしが必要かもしれん」

('A`)「そうそう。そこからそこから」

.
465◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:48:31 ID:pUPAGRQU0

ξ゚听)ξ「じゃああんたは中央道路、
私達は迷宮区の調査ね」

('A`#)「なんでだよ!」

立ち上がったドクオを白けた目で見るツン達。

('A`;)「あ、いや、その、ほら、レベル的にも強さ的にもさ、
迷宮区にはギルドのトップクラスをさ」

(`・ω・´)「素直になれ」

('A`)「……最前線行ってみたいです」

(´・ω・`)「とりあえずは打ち合わせが済んでからね。
というか、ボス戦はともかく最前線に行くのは反対はしてないんだけど。
ちゃんとルールさえ守ってくれれば」

('A`)「はーい。
そのルールがめんどくさい」

返事をしつつ座るドクオを、
ブーン以外は呆れた表情で見ていた。

ξ゚听)ξ「ところでさ。
ねえ、あっちからの連絡は?」

(´・ω・`)「あれ以来ないね」

ξ゚听)ξ「あんたの予想が外れたの?」

(´・ω・`)「なら良いけど」

ξ゚听)ξ「どういう事よ」

(´・ω・`)「今最前線で起きていることは、
知ろうと思えば誰でも知ることが出来る。
情報屋にコルを支払えばね。
そして、僕達の事をある程度知っている人なら、
僕達が関わることを想像するのは簡単だよ」

.

466◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:50:07 ID:pUPAGRQU0

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)「つまり、そういうことか?」

(´・ω・`)「多分ね。
あのギルドからの依頼なら受けないって選択肢もあるけど、
アルゴさん、というよりも攻略組からの依頼ならば、
僕達は受けざるを得ないってことも分かる事だよ。
なんといっても『攻略』に関わる事だから」

(`・ω・´)「しかも、おれ達が倒されれば攻略が遅れる可能性がある。
ギルドを殺人ギルドとして一躍世に広めるチャンスだな」

ξ゚听)ξ「……シャキン」

冷静に、他人事のように呟いたシャキンを睨むツン。

(`・ω・´)「バカが考えそうなことを、言っただけだぞ」

ξ゚听)ξ「分かるけど、ムカつく」

川 ゚ -゚)「つまり、今回の調査が狙われるという事か」

(´・ω・`)「可能性は高いと思う」

川 ゚ -゚)「ふむ……。
分かっていても、やるのか?」

(´・ω・`)「……うん」

川 ゚ -゚)「別に攻めているわけじゃない。
あの会議で、気持ちは切り替えたつもりだ」

ξ゚听)ξ「ええ。
向こうが振りかけてきた火の粉は、
完膚なきまでに振り払って消してしまわないとね。
二度とそんな気にならないように」

('A`)「ああ。そうだな」

( ^ω^)「だおだお」

.

467◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:51:44 ID:pUPAGRQU0

(´・ω・`)「みんな……」

川 ゚ -゚)「それで、いつやるんだ?
状況を考えれば、すぐなんだろ?」

(´・ω・`)「うん。
攻略組からは早急の対応を依頼されている。
だから明後日って答えておいた」

ξ゚听)ξ「本当に早いわね。
ま、しょうがないけど」

('A`)「迷宮攻略に手間取ると、
その分勢いは下がるからな」

(´・ω・`)「本当は明日って言いたかったみたいだけど、
流石にそれはね。準備もあるし。
今話した内容も上げて、答えをもらわなきゃだし。
あと、血盟からはサポートに何人か出そうかって言われたけど、
急なチームだと動きが乱れる可能性があるからお断りしておいたよ」

(`・ω・´)「いいのか?」

(´・ω・`)「攻略組が居たら出てこないだろうからね」

川 ゚ -゚)「それならそれでいいと思うが」

(´・ω・`)「これ以上被害が出る前に潰さないと、とも思うんだ」

川 ゚ -゚)「うむ……」

ξ゚听)ξ「クー」

川 ゚ -゚)「いや、すまん。
大丈夫だ」

(´・ω・`)「……」

('A`)「クー。
不安なのはおれも、きっとみんな同じだ」

ドクオの言葉にそれぞれがそれぞれの態度で頷く。

.

468◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:53:48 ID:pUPAGRQU0

('A`)「でも、それ以上に殺人ギルドなんてものを許すことはできない。
ラフコフには、いやPoHには正直勝てる気はしないけど、
あいつ等には勝てるチャンスがあって、
潰すことが出来る力をおれ達は持っていると思う」

川 ゚ -゚)「ドクオ……」

( ^ω^)「僕達が出来るだけの事をやれば、
きっと勝てるお。
その為の策をショボンとシャキンが考えてくれたし、
僕らも頑張ってるお」

クーの手を握るツン。
その手がほんの少しだけ震えているのに気付き、
クーは驚いたように彼女の顔を見た。

ξ゚ー゚)ξ

ニッコリとほほ笑む彼女に、クーは泣き顔のような笑顔を見せた。

(´・ω・`)「みんなには、大変な思いをさせてしまっている。
けれど、僕達に出来る力があり、
そして狙われているのならば、
やるべきだと思うんだ」

(`・ω・´)「今回の件、
全員の意志でリーダーのお前についてきている。
だから今回は、お前は前を向いていればいい。
横や上や下は四人で、
後ろはおれが見ているから」

(´・ω・`)「……ありがとう」

( ^ω^)「おー!っだお」

.

469◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:55:24 ID:pUPAGRQU0

突然立ち上がり、片手を上げるブーン。

(;´・ω・`)「ちょ、ブーン!?」

(`・ω・´)「パーティーをやるぞ!」

続いて立ち上がり片手を上げるシャキン。
二人とも顔は笑っている。

(;´・ω・`)「シャキン!?」

('A`)「おー!だな」

ξ゚听)ξ「おー!ね」

川 ゚ -゚)「うむ、おー!だ」

ついで立ち上がり片手を上げる三人。

三人共ショボンを見ながら笑っている。

(;´・ω・`)「あ、あれはついやっちゃっただけで、
キャラじゃないのは分かってるから!
もうやめて!」

顔を隠して机に伏せるショボン。
耳まで赤くなっているのが分かる。

それを見た五人はそれぞれに笑い、
そして視線でそれぞれに合図して頷きあった。






.

470◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 22:57:49 ID:pUPAGRQU0
cm ShortVersion TYPE−TU

「私だって会いたいわよ!」

♪僕の声が届いた時に〜♪

ARデバイス《オーグマー》を使用したゲーム《オーディナルスケール》
その陰で進行していた陰謀は、英雄によって阻止された。

「でも、それが許されないことだって分かってる!」

だがその陰謀を知った少年が、自らの願いの為に動き出した。

「会わせてあげられると思う」

「おい!本気か!?」

「すまない。私は……」

少年の思いは波紋となり、

「そんなことが……」 
「できるっていうのか」
「でも、代償は必要もなよ」
「あいつは、そんなことを」
「やりたいっていうなら、やれば良いさ」
「仲間だから、止めたい」
「力になりたいから」
「おれだって……」

巨大な波を起こす。

そして袂を別つ友人達。

『( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。−MOMENT−
〜VIPのメンバーはオーディナルスケールで戦うようです〜』

少年に、彼女の声は届かない。

「大丈夫だよ。基にするのは、僕の記憶だから」

「あいつだって嬉しくない!私は笑ってるあいつに会いたいの!」

♪この瞬間を掴め〜♪

「  僕の名前は、《ホライゾン》だお  」

♪Catch the Moment♪

.

471◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 23:04:31 ID:pUPAGRQU0
cm

「赤い糸システム?って、あれ?」
「そう、あれだお」

♪君の前前前世から僕は〜♪

「火事一つで村を隕石で壊滅させるなんて、やるわねそいつ」
「犯罪者を褒めてどうするんだお」
「だってその火事では死者を出さなかったからタイムパトロールに引っかからなかったんでしょ。
それで2013年の隕石で壊滅なんてパトロールの穴をついた見事な作戦よ」
「だーかーら」
「でも、それならその火事を消しに行きましょうよ」
「だめだお」
「……同時間軸への複数の介入は禁止ってやつ?」
「それもだけど、時空嵐が起きてて難しいんだお」
「げっ」
「ギリギリ行けるのは、2016年」
「……は?隕石の三年後とか、どうすんのよって、そうかだから」
「「赤い糸システム!」」
「だおだお」
......  《赤い糸システム》
......  《特異点》
「どう?似合う?」
「おっおっ。綺麗だお」
「ば、バカ。名前はどうしようか……」
「戸籍もあった方が良いおね」
「……私の名は真知子」
「その名前とストールの巻き方はアウトだお」
「じゃあ……ミキとかで」
......  隕石の落下による死者。
......  歪まされた歴史。
「でも、なんでそんな回りくどいことをしてまで
こんな小さな集落をつぶしたかったの」
「歴史が狂うからだお。
計算だと大戦が起きて世界がぐちゃぐちゃになるお」
「…… …… は?」
.......  正しい歴史に戻すため、タイムパトロールが時をかける。
「もーもうあの男決断遅すぎ!」
「二人の糸を辿ってこれたのは良いけど結局僕らがやるしかないのかお!」
「タイムロック!巻き戻し!」
「スロー!」
「「「手伝いに来たよー」」」
「「遅い(お)!!」」
...... 『T.P.BOONのようです 〜your name〜 』
♪何光年でも この歌を口ずさみながら♪
「 君の名は 」
「ブーンだお」
.

472◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 23:07:08 ID:pUPAGRQU0

2.



二日後。
遺跡フロア。

目的の遺跡、『Aridend』にほど近い街の転移門前。

低層階と中層階の間ほどに位置し、
既に攻略されつくしてあると思われており、
且つそれほど重要なクエストも発見されていない為普段は閑散としている。

しかし今は人だかりができていた。

(アルゴ)「ショボン」

両頬に三本のひげのペイントを付けた女性、
『情報屋の鼠』ことアルゴが転移門から現れ、
集団の端にいたショボンに話しかけた。

(´・ω・`)「アルゴさん。
お疲れ様です」

ショボンは軽くお辞儀をしながら挨拶をし、
集団から離れて彼女に近付く。
そして彼女に続いて転移門から現れた女性にも頭を下げた。

(´・ω・`)「アスナさん。
おはようございます」

(アスナ)「おはようございます。
ショボンさん」

白と赤の戦闘服を纏った血盟騎士団副団長、
『閃光』の異名を持つアスナが栗色の長い髪をなびかせて同じように頭を下げた。

(アスナ)「壮観ですね」

.

473◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 23:08:50 ID:pUPAGRQU0

(アルゴ)「だネ」

(´・ω・`)「はい?」

(アスナ)「もしかすると、攻略組が集まった時よりも色取り取りで凄いかも」

(;´・ω・`)「ああ……」

アルゴとアスナの視線の先にはわいわいと喋っているメンバーたち。

武器も多種多様で見事だが、
各人の出で立ち、防具は『豪華』ですらある。
金・銀・青・赤といった派手な色をした堅固な鎧を纏う者がいれば、
刺繍の施された上品な色合いの軽装備の者。
ゴシックロリータのレースをふんだんにあしらったヒールの少女が目を引けば、
その横には落ち着いた色合いの袴姿の少女。
近くには同じく袴姿の刀を携えた浪人がいたかと思うと、
彼は公園でスケートボードでもしていそうな少年と話していた。

そして目の前にいるこの集団のリーダーである少年も、
今から舞踏会にでも行きそうな服装のマント姿であり、
二人は思わず笑みを漏らした。

しかし目の前の少年が投擲に関してはアインクラッド随一の実力者であり、
彼がマスターを務めるギルドは戦闘能力を含めて
中層エリアで活動するギルドとしてはトップクラスであることを知っているため、
その笑顔は好意的なものだった。

また、アスナは以前に調査依頼をして作戦の指揮を任せて以来、
それ以降何度となく自ギルドに勧誘している。

(;´・ω・`)「と、ところで今日は?」

(アスナ)「アルゴさんを通してはいますが、
元は攻略組からの依頼ですから一度ちゃんとご挨拶をと思いまして」

(´・ω・`)「そうでしたか。
わざわざありがとうございます。
ですが、命を懸けてボス戦をしていただいているのですから、
これくらいの手助けは当然です。
ですからお気になさらないようにしてください」

.

474◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 23:10:37 ID:pUPAGRQU0

(アスナ)「ショボンさん。
ありがとうございます。
そう言っていただけると少しは気が楽になります」

(´・ω・`)「それに、ギルドとして請け負った仕事ですので、
ちゃんと報酬もいただいていますし」

(アスナ)「それは当然です。
本来ならば自分達でやれば良いことですから。
ただこういった『調査』ならば、
戦闘に特化している私達より皆さんの方が適任だと言われまして」

(´・ω・`)「ご期待に沿えるように頑張ります」

(アスナ)「よろしくお願いします。
あと、迷宮区には今も血盟騎士団の者が攻略に出ています。
いくつかすぐ連絡のつく攻略組のメンバーもいます。
迷宮区での調査が必要な場合は、
私かアルゴさんにメッセージをください」

(´・ω・`)「はい。よろしくお願いします」

じっとショボンの顔を見るアスナ。

(´・ω・`)「なにか?」

(アスナ)「例のギルドの件、
アルゴさんからお聞きしています。
それが本当ならこちらに血盟騎士団からメンバーを出しますし、
私が一緒に行く事もできますが」

(´・ω・`)「ありがとうございます。
ですが今はまだ『中層フロアレベル』です。
攻略組とはいえ、皆さんがすべてを背負うことは無いと思います。
それに、おそらくは僕達が狙われています。
ですから自分達で対応しようと思っております」

(アスナ)「そうですか……。
ですが、気を付けてくださいね。
命が危険な真似は、出来るだけ避けてください」

.

475◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 23:11:59 ID:pUPAGRQU0

(´・ω・`)「ありがとうございます」

(アルゴ)「アーちゃんも心配性だネ」

(アスナ)「アルゴさん。
当然のことです」

(アルゴ)「大丈夫だヨ。
ショボン達ならネ」

(´・ω・`)「はいはい」

(アルゴ)「なんかアーちゃんに対する対応と違わないかイ?」

(´・ω・`)「いえいえそんなことありませんよー」

(アルゴ)「まったくこの子ハ」

(´・ω・`)「ところでお願いした件、
大丈夫ですか?」

(アルゴ)「ああ。大丈夫だヨ。
ショボン達と関係の薄い奴らで強い奴ってオーダーなら、
うってつけがいたんでネ」

(´・ω・`)「良かった」

(アルゴ)「な、アーちゃん」

(アスナ)「はい。任せてください」

(;´・ω・`)「え、ちょ、ま、まさかアスナさんに頼んだんですか!?」

(アルゴ)「だって、『強い人』って依頼だからね。
ショボンの信用に答える為に、
アインクラッドで三本の指に入るであろう二人に頼んだのサ」

(;´・ω・`)「確かにこれ以上ないくらい安心ですけど、
でもまさかアスナさんに……って、二人?」

.

476◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 23:13:49 ID:pUPAGRQU0

(アルゴ)「ああ。二・三人いれば安心だって話だったからネ」

(;´・ω・`)「いやまぁ『ありがとうございます。』
なんですけど、そんな二人に頼むなんて……」

(アスナ)「お気になさらないでください。
もともと作戦が終わるまでこの辺りにいるつもりだったので予定は開けてありましたから」

(´・ω・`)「ありがとうございます」

頭を下げるショボン。

(アルゴ)「やっぱり対応が違う」

(´・ω・`)「アルゴさんも、ありがとうございます」

(アルゴ)「よナって、い、いや、うん。
気にしないでいいヨ」

アルゴに向かって頭を下げたショボン。

慌てるアルゴを見てアスナが笑い、
頭を上げたショボンも笑顔を見せた。

(`・ω・´)「ショボン!全員揃ってるぞ!」

(´・ω・`)「はーい!」

シャキンに名を呼ばれふり返るショボン。

そして改めてアスナとアルゴにお辞儀をする。

(´・ω・`)「それでは、行ってきます。
依頼の件、よろしくお願いします」

(アスナ)「お気をつけて。
その件は、お任せください」

(アルゴ)「気を付けろヨ。
連絡もよろしくナ」

.

477◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 23:15:50 ID:pUPAGRQU0

(´・ω・`)「はい」

短く答え、足早にメンバーのもとに向かうショボン。

(アスナ)「本当に、大丈夫でしょうか」

(アルゴ)「大丈夫大丈夫。
あいつは、いや、あいつらは思ったよりも図太いからネ」

(アスナ)「アルゴさんはもう……」

(アルゴ)「さ、こっちはこっちで依頼を遂行しようかネ。
もう一人は先に行ってる手はずだヨ」

踵を返し、転移門に向かうアルゴ。

(アスナ)「あ、ちょっとアルゴさん!
もう一人って誰ですか?
それにアインクラッドで三本の指って。
団長はこういうのに関わらないだろうし、
も、もしかして……。
あ、アルゴさん!」

アルゴの後を追うアスナ。

転移門の前で二人は一度振り返って集団を見た後、
フロアの名前を言いながら転移門を通った。





川 ゚ -゚)「何の話をしていたんだ?」

(´・ω・`)「攻略組を代表して来てくれたみたい。
あと、アルゴさんに頼んでた護衛の件、
アスナさんが引き受けてくれてた」

川 ゚ -゚)「ほお。それは太っ腹だな」

.

478◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 23:17:36 ID:pUPAGRQU0

(;´・ω・`)「その感想は何か違う気がするけど」

(`・ω・´)「でもこれで安心だな。
気にしないで済む」

(´・ω・`)「うん。
要の一つだからね」

ショボンを中心にして、両側に立つクーとシャキン。

三人と向かい合うように立つ残りのメンバー。

軍隊のように整列はしていないが、
自然と今回のチームに分かれて固まっていた。

(´・ω・`)「みんな、朝早くからお疲れさま」

思い思いに返答するメンバーたち。

(´・ω・`)「詳細はメッセージしたしそれぞれに話してあるから大丈夫だと思うけど」

目を泳がす数名。

(´・ω・`)「一応概略だけ説明するよ」

数名がホッとした顔をした。

(´・ω・`)「この遺跡フロアにあるフィールドダンジョン『Aridend』遺跡の調査と、
上のフロアにあるフィールドダンジョン、
通称中央道路こと『Blesstart』を同時攻略します。
目的や調査ポイントもメッセージに送ったけど……」

ショボンの目線から外すように視線を外す数人。

.

479◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 23:19:32 ID:pUPAGRQU0

(´・ω・`)「……基本はリーダーやサブリーダーが指示を出すので、
指示通りに動いてください。
もしかすると別のエリアや隠し宝箱なんかを見つけることがあるかもだけど、
勝手に進んだり触ったりしないように。
特にジョルジュとシャキンとエクスト、気を付けてね」
  _
( ゚∀゚)「ほーい」

(`・ω・´)「はーい」

<_プー゚)フ「ここで名指し!?」

(゚、゚トソン「エクスト、返事は?」

<_プー゚;)フ「は、はい……」

(´・ω・`)「チームA(Aridend)はリーダーを僕として、
ドクオ、ジョルジュ、フサギコ、そしてシャキン、よろしく」

('A`)「んー」
  _
( ゚∀゚)「おう」

ミ,,゚Д゚彡「頑張るから!」

(`・ω・´)「ふっふっふ」

川 ゚ -゚)「チームB(Blesstart)は私がリーダーとして指揮を執る。
クックル、ミルナ、デミタス、エクスト、トソン、頼むぞ」

( ゚∋゚)『ああ』

( ゚д゚ )「うむ」

(´・_ゝ・`)「準備は万端だ」

<_プー゚)フ「まかせろ!」

(゚、゚トソン「力の限りに」

.

480◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 23:21:33 ID:pUPAGRQU0

川 ゚ -゚)「私達の役目は道を進み、ショボン達と連携を取ることだ。
途中に出るボスクラス対策は、一緒に進むチーム4に任せる。
ブーン、ツン、ブーム、シラネーヨ」

( ^ω^)「おっおっお!頑張るお!」

ξ゚听)ξ「任せなさい」

|  ^o^ |「微力ですが、尽力を注ぎます」

( ´ー`)「やれることはやるだーよ」

(´・ω・`)「今回は完全同時進行で、本部は置きません。
随時リーダー同士が連絡を取り合い調整を行いますが、
メッセージを送れない場合や、
送ることが出来ないエリアが発生することも考えられます。
そこで、」

( ´_ゝ`)「おれ達『チーム8』の出番だな」

(´・ω・`)「う、うん。そうなんだけど」

(´<_` )「なんでそんな名前なんだ?」

(´・ω・`)「何でもよかったんだけど、ドクオと兄者がそれが良いって」

( ´∀`)「仕事内容は二つのエリアを行き来して二つのチームのお手伝いもなね。
『そこにある』とか『なにをしろ』とか指示を出すもなから、
蜂の8の字ダンスからきてるもな?」

▼・ェ・▼「きゃん!」

( ´_ゝ`)「……うん。そう」

(´<_` )「(絶対に違う)」

(´・ω・`)「(違うよね)」

( ^Д^)「おい、……本当におれで大丈夫なのか?」

.

481◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 23:24:10 ID:pUPAGRQU0

(´・ω・`)「うん?適任だと思ってるよ?」

( ^Д^)「……わかった」

それぞれに表情を引き締めて仲間たちと会話するメンバー。

そんな彼らを見つめるいくつかの目。

しかし気にすることなくショボンは簡単な指示を出していく。

(´・ω・`)「あと兄者、弟者、黒鉄宮の件は?」

( ´_ゝ`)b「大丈夫だ。了解は得た。
さっき準備についたと連絡も来たしな」

(´・ω・`)「そう。良かった」

(´<_` )「うちの和装シリーズのお得意さんだけど、
まさか攻略組だとは思わなかった」

( ´_ゝ`)「あ、報酬はバーボンハウスで合コンよろしくとのことだ」

(´・ω・`)「……合コンはともかく、
報酬以外にご馳走はさせていただくよ。
さて、他に質問とかは?」

両隣以外の全員の顔を見るショボン。

それぞれに決意を込めた表情で頷き、
合図をして肯定の意を示す。

それに頷きで答えたショボンが、
シャキンを見た。

(`・ω・´)「ああ。大丈夫だ」

頷き、そしてクーを見る。

川 ゚ -゚)「問題ない」

(´・ω・`)「よし」

改めて目の前のメンバーたちを見るショボン。

(´・ω・`)「それでは、作戦『CROSS FIELD』を開始します」

良く通るその声に、全員が一斉に大きな声で答えた。

.

482◆dKWWLKB7io :2017/03/25(土) 23:32:56 ID:pUPAGRQU0
cm ShortVersion TYPE−C&D

「おれだって会えるなら会いたいさ!」
「ならばこちらに来い!」

♪僕の声が届いた時に〜♪

ARデバイス《オーグマー》を使用したゲーム《オーディナルスケール》
その陰で進行していた陰謀は英雄によって阻止された

「間違えるのが分かっているから、止めたいんだ」
「間違えに気付いて立ち止まった時に、一番そばに居たい」

だがその陰謀を知った少年が、自らの願いの為に動き出した。

「会わせてあげられると思う」
「そんなのあいつも私も望んでない!」

少年の起こした波紋は、

「そんなことが……」 
「できるっていうのか」
「でも、代償は必要もなよ」
「あいつは、そんなことを」
「やりたいっていうなら、やれば良いさ」
「仲間だから、止めたい」
「力になりたいから」
「おれだって……」

巨大な波となり彼らを飲み込んだ。

『  僕の名前は、《ホライゾン》だお  』

そして袂を別つ友人達。

『( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。−MOMENT−
〜VIPのメンバーはオーディナルスケールで戦うようです〜』

叫んでも届かない思い。

「私に勝てると思っているのか?」
「足止めくらいはしてみせる」

悲しみが、連鎖する。

♪この瞬間を掴め〜♪

「それでも私は!」「だからおれは!」

♪Catch the Moment♪
493◆dKWWLKB7io :2017/03/27(月) 22:09:57 ID:WqVPvnkw0

3.



( ・∀・)「そろそろ始まった時間だな」

从 ゚∀从「『チームK』も始動だな」

視界の端のデジタル表示で時間を確認していたモララーが小さく呟くと、
横にいたハインが不敵な笑みを浮かべながら呟いた。

その顔を横目で見ていたモララーが小さくため息をつく。

从 ゚∀从「ん?」

( ・∀・)「いや、無駄にイケメンだなと思って」

从 ゚∀从「か弱い女の子に対してなんてことを。
傷つくぞこのやろう」

( ・∀・)「その言い方からして傷付いてなんかないだろうが。
それに、そう見えるようにワザとしているわけだし」

从 ゚∀从「……まあな」

フィールドダンジョン『Aridend』の中、
入り口から三つほど進んだエリアに二人はいた。

エリアに入ってすぐの茂みに隠れ、
隠蔽スキルとマントを使ってモンスターから完全に姿を隠している。

もちろん声にも反応してしまうため、
二人の会話はかなりの小声だった。

( ・∀・)「ま、その顔をしてれば、
そうした方が良いよな」

从 ゚∀从「まあ……な」

.

494◆dKWWLKB7io :2017/03/27(月) 22:12:21 ID:WqVPvnkw0

ウインドウを出し、操作を始めるモララー。
どうやらメッセージを打っているようだった。

从 ゚∀从「前から聞こうと思っていたんだが」

( ・∀・)「ん?」

从 ゚∀从「モララーは私の事、
知っているのか?」

( ・∀・)「……うん」

从 ゚∀从「そう……か。
黙っていてくれて、ありがとう」

( ・∀・)「ま、知ったところで誰も変わらないと思うけどよ」

从 ゚∀从「私もそう思う」

( ・∀・)「本当、変な奴らだよな」

从 ゚∀从「おまえもな」

( ・∀・)「おまえもだぞ」

二人は横目で互いの顔を見て、
ニヤリと笑った。

( ・∀・)「そういえば、何でおれ達『チームK』なんだ?
A,Bは攻略する場所のところから、4と8は人数からだろうけど」

从 ゚∀从「どっくん命名だ。
チームKのKは影のこと、
KAGEのKだ。
流石どっくん」

( ・∀・)「ドクオ……。
なんとなく後付けな気もするけど?」

.

495◆dKWWLKB7io :2017/03/27(月) 22:18:29 ID:WqVPvnkw0

从 ゚∀从「……言わないでくれ」

( ・∀・)「ま、チーム名なんて何でもいいんだけどよ。
確かに今回は、おれ達もあいつらもギリギリまでは『影』の予定だしな」

从 ゚∀从「……」

( ・∀・)「ハイン?」

从 ゚∀从「正直自信ない」

ウエストポーチに手を入れるハイン。
指先でアイテムを探し、指先でつまんだ。

( ・∀・)「ま、ショボンもそこは織り込み済みだろうから、
お前の好きにやっていいんじゃないか?
おれも、借りを返せるかなって思ってるし」

从 ゚∀从「……うん」

( ・∀・)「…… ……良かったな」

从 ゚∀从「え?」

( ・∀・)「ドクオに会えてさ」

从 ゚∀从「!」

思わず横にいるモララーに顔を向けるハイン。

その横顔は決してバカにした様子はなく、
真剣に前を見ていた。

ハインは息をのみ、
ほんの少しだけ頬を赤らめて口を開いた。

从* ∀从「うん」

( ・∀・)「さて、そろそろ準備しないとだな」

.
496◆dKWWLKB7io :2017/03/27(月) 22:23:26 ID:WqVPvnkw0

そんなハインの表情を見ることは無く、
モララーは更に表情を引き締めながら、
手に装着している爪を撫でた。







フィールドダンジョン『Aridend』の入り口に、
ショボン達5人がいた。

(´・ω・`)「チームB、4共に入り口に着いたみたい」

簡易メッセージを打ち終えたショボンがウインドウを消しながら四人に声をかける。

('A`)「時間通りだな。
あと3分」

.

497◆dKWWLKB7io :2017/03/27(月) 22:25:51 ID:WqVPvnkw0

(`・ω・´)「流石クーとトソンが一緒のチーム」

(´・ω・`)「シャキンも頼むよ?」

(`・ω・´)「任せておけ」

(´・ω・`)「……」

('A`)「……」

(`・ω・´)「なんだよー」

('A`)「がんばれ」

(´・ω・`)「信じてるから」

(`・ω・´)「むー」

話している三人から離れたジョルジュがダンジョンの入り口を見つめた。

深い緑の中にたたずむ巨大な石の門には、
リアルの世界で感じるような自然のぬくもりを感じることは出来なかった。
  _
( ゚∀゚)「     」

ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュ?」

横に立ったフサギコが、顔を向けて声をかける。
  _
( ゚∀゚)「ん?なんだフサギコ」

門を見上げたままのジョルジュ。

ミ,,゚Д゚彡「……大丈夫?……だから……」
  _
( ゚∀゚)「ああ。大丈夫だ。
まだ完全に信じちゃいないが、割り切った。
それが真実なら、おれはやるさ」

.

498◆dKWWLKB7io :2017/03/27(月) 22:27:52 ID:WqVPvnkw0

ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュ……」

やっと横を向き、フサギコを見るジョルジュ。
不敵な笑みを浮かべていた。
  _
( ゚∀゚)「おれはおれのやれることを、
いや、やるべきことをやるだけだ。
……本当にそうなら、おれが止めてみせる」

ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュ……。
うん。頑張って、ほしいから……。
ふさも、頑張るから」

(´・ω・`)「ジョルジュ、フサギコ」
  _
( ゚∀゚)「ショボン」

ミ,,゚Д゚彡「ショボン」

名前を呼ばれふり返る二人。

ショボン達三人が、並んで立っていた。

(´・ω・`)「時間だよ。行こう」

気負いを感じさせない、穏やかな口調。

表情すらもいつもと変わらず穏やかだが、
どこか鋭利な刃物のようなイメージを抱く。

('A`)「この門のサイズなら、五人並べるな」

(`・ω・´)「お、いいなそれ。
最初の一歩は『せーの』だぞ」

二人の口調も軽く、会話はとりとめもない、いつもの雰囲気。

けれど心は鋭く引き締まっていた。

.

499◆dKWWLKB7io :2017/03/27(月) 22:29:15 ID:WqVPvnkw0

笑顔の裏で気合を入れながら門のすぐ前で横に並ぶ五人。

(`・ω・´)「せーの!」

「「「「「最初のいーっぽ!」」」」」

シャキンの合図に声をそろえ、
全員が左足を一歩踏み出した。









.

500◆dKWWLKB7io :2017/03/27(月) 22:31:33 ID:WqVPvnkw0

4.



川 ゚ -゚)「初めて来たときも驚いたが、
改めて来ても凄いな」

クーは、草原に立っていた。

正確にはそこはフィールドダンジョンであり、
且つ「草原」ですらない。

両側には森が見えるここは、二つの街をつなぐ『街道』だった。

だがフィールドダンジョンとしての名前『Blesstart』があり、
更に途中でエリアボス相当の敵が現れるこの道を、
ただの『道』として扱うプレイヤーはほとんどいなかった。

( ゚д゚ )「巨大な二等辺三角形」

川 ゚ -゚)「ん?」

(´・_ゝ・`)「シャキンがそんなことを言っていたが……」

川 ゚ -゚)「ああ。ショボンも言っていた。
今いるここが底辺で、頂点に向かってただひたすらに進んでいくような形だと」

ξ゚听)ξ「十個くらい進むとやっと『道』らしくなるのよね。確か」

(゚、゚トソン「はい。
そこに行くまでは本当に草原を歩いているようで、
ちゃんと『先』に向かっているのか不安になります」

( ^ω^)「迷った覚えがあるお」

<_プー゚)フ「おれもおれも!」

( ´ー`)「気を付けるだーよ」

.

501◆dKWWLKB7io :2017/03/27(月) 22:33:59 ID:WqVPvnkw0

|  ^o^ |「そういうシラネーヨも進む方向を間違ったことがありますね」

( ´ー`)「忘れただーよ」

ガヤガヤと喋りながら進む九人。

そんな彼らを一歩引いた形でついて歩くクックル。

時折現れる虫型のモンスターも、
前の九人が即座に倒していく為彼は全員の背中を見ながら歩いているだけだった。

(´・_ゝ・`)「クックル」

( ゚∋゚)「?」

(´・_ゝ・`)「あー。その。ミルナとトソンも、良い奴だぞ」

( ゚∋゚)『ああ。よくしってる』

ボードに書くクックル。

(´・_ゝ・`)「うん。分かってくれてるなら、良いんだ」

ぽんぽんとその肩を叩き、
クックルの横を歩くデミタス。

ミルナも後方をチラチラとみている。

( ゚∋゚)「(ショボンは二人にばれた事を、笑顔で喜んでくれた。
でもたぶん、デミタスとミルナは前から知っていた。
おれがVIPのみんなと『喋って』いることを。
おそらくシャキンも知っている。
なのにショボンがそれをおれに言わなかったということは、
何か意味があったんじゃないだろうか。
おれが声を出せないという事実が。
おれの心が、仲間以外にも開けるようになる強さを持つまでの間。
だから、それが何か分かるまでは……)」

.

502◆dKWWLKB7io :2017/03/27(月) 22:36:33 ID:WqVPvnkw0

デミタスの話を笑顔で聞きながら、
こちらを時々見るミルナの思いを感じながら、
前を見て歩く同じギルドの仲間の思いを信じながら、
クックルは歩いていた。





フィールドダンジョン『Blesstart』に入っていった十人を見送った兄者達は、
近くのオープンカフェでお茶を飲んでいた。

( ´_ゝ`)「むー」

(´<_` )「どうした?」

( ´_ゝ`)「ショボンの淹れてくれたお茶の方が美味い」

(´<_` )「それは同感だが、
NPC経営のカフェにあれクラスのクオリティを求めるのは無理だろう」

▼・ェ・▼「くーん……」

( ´∀`)「ショボンの淹れ方はもちろんもなけど、
茶葉もクックルが頑張って作った特製もなから、
一緒にしたらダメもなよ」

( ^Д^)「……」

転移門の見えるカフェで、
丸いテーブルを囲む四人。

モナーの足元ではビーグルがつまらなそうに体を擦り付けている。

( ´∀`)「ビーグル、どうしたもな?
大丈夫もなよ?」

▼・ェ・▼「……くぅん」

.

503◆dKWWLKB7io :2017/03/27(月) 22:38:21 ID:WqVPvnkw0

( ^Д^)「な、なあ」

(´<_` )「ん?どうした?」

( ^Д^)「いや、その、いいのか?
こんなところでお茶してて」

( ´_ゝ`)「おれ達の仕事は、まず『待機』だ。
動ける時に動けるようにしておくのが、仕事だぞ」

( ^Д^)「いや、それは分かるんだけどよ」

( ´∀`)「アルゴさんから連絡が来たもなよ」

いつの間にかウインドウを開いていたモナー。
膝の上に載ったビーグルがウインドウを覗き込んでいる。

( ´∀`)「指定位置に到着したとのこともな」

( ´_ゝ`)「『チーム8』、揃ったな」

(´<_` )「まったく。勝手にチームに入れられてることを知ったら怒られるぞ」

( ´_ゝ`)「その程度で怒るような奴が攻略組にいるとしたら世も末だな」

(´<_` )「兄者の存在が世も末の象徴なんだけどな」

(*´_ゝ`)「照れるな」

(´<_` )「褒めてない。
あ、あと『風林火山』のやつらは人数に入れてないのか?」

( ´_ゝ`)「あいつらは支店だ」

(´<_` )「はあ?」

( ´_ゝ`)「名古屋っぽい」

(´<_` )「山梨じゃなくて?」

.

504◆dKWWLKB7io :2017/03/27(月) 22:41:38 ID:WqVPvnkw0

( ´_ゝ`)「新潟かも」

(´<_` )「兄者……」

( ´_ゝ`)「坂道は」

(´<_` )「ほんとに怒られるぞ」

( ^Д^)「(いいのかこれで)」

( ´∀`)「良いもなよ。今はこれで」

(;^Д^)!

プギャーに向かってにっこりとほほ笑むモナー。

その膝の上でビーグルが鋭く鳴いた時、
モナーの耳に新たにメッセージが届いた音が聞こえた。






.
516◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:02:07 ID:iZHxhR5I0

5.





遺跡フロアでは、チームAが遺跡の調査を進めていた。

('A`)「宝箱開けるぞー」

(´・ω・`)「トラップは?」

('A`)「もちろん解除済み」

(´・ω・`)「ならよろしくー」

ミ,,゚Д゚彡「この石像、これと似てるから!」

(`・ω・´)「そうか?それよりもこっちだろ」
  _
( ゚∀゚)「でもそれだと、さっきの塔と位置がずれるよな?」

(`・ω・´)「だがこっちの方が似てるだろ?」
  _
( ゚∀゚)「似てるのは……そうだなぁ」

ミ,,゚Д゚彡「難しいから……」

地図や画像を見つつ、
周囲の攻略をする。

もちろん攻略はちゃんと行われており地図も出来ているのだが、
点在する石像や石でできた塔、小さな門、
描かれた紋様を調査し、
上のフロアや目的の迷宮区で調査された内容と組み合わせていた。

パズルのような作業をしつつ戦闘を行うのは面倒ではあったが、
敵のレベルが低いため難しい行動ではなかった。

.

517◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:04:11 ID:iZHxhR5I0

(´・ω・`)「そろそろ次のがポップする時間だよ」
  _
( ゚∀゚)「よし!」

笑顔で武器を構えるジョルジュの前に立つドクオ。

('A`)「お前はさっき戦っただろ?
今度はおれの番だろうが」
  _
( ゚∀゚)「えー」

('A`)「調査宜しく」

武器を構えるドクオの後ろで、
唇を尖らせたジョルジュがつまらなそうにフサギコのそばに移動した。

ミ,,゚Д゚彡「……でもそうすると、こっちが合わないから」

(`・ω・´)「ふむ。そうだな」
  _
( ゚∀゚)「ういー。まだなんかあるのかよ」

ミ,,゚Д゚彡「石像を合わせると石舞台が合わなくて、
塔を合わせると、石像が合わないから」
  _
( ゚∀゚)「なんだそりゃ」

(`・ω・´)「ショボン、迷宮区のポイントはこれで全部なのか?」

(´・ω・`)「いま連絡した。
でも、今の資料はアルゴさん監修で作ったはずだから大丈夫だと思うよ」

(`・ω・´)「ふむ……」

地図と地図をにらめっこする四人。

敵を倒したドクオが小さく「ヨシっ」と呟いていたが、
その声が聞こえるくらい静かな森だった。




.

518◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:06:25 ID:iZHxhR5I0





川 ゚ -゚)「下は難航しているようだ」

草原の中心に固まって休んでいるチームBのメンバー。
何人かは座っている。

自身で調合した回復POTで回復しながら喉を潤しつつ
ウインドウを見ていたクーが涼しい顔で呟くと、
それ以外のメンバーは疲れた顔で小さく頷いた。

川 ゚ -゚)「なんだみんなどうした?」

ξ;゚听)ξ「何であんたはそんな普通なのよ」

川 ゚ -゚)「ん?こちらは特に問題なく進んでいないか?」

<_プー゚;)フ「問題は無いかもしれないけどよ」

(゚、゚;トソン「ちょっと範囲が……」

川 ゚ -゚)「広いから疲れているのか。
それでも今日は人数がいるからまだ良いだろう」

(;´ー`)「これでクーがさぼってるなら文句も言えるのに……」

(;´・_ゝ・`)「調査をまとめつつちゃんと動いているからなぁ」

(;^ω^)「それを見て僕らも更に動くから、
調査はサクサク進むけど大変なんだおね」

|; ^o^ |「リーダーの鑑と言えば鑑ですが」

(; ゚д゚ )「あるべき姿なんだがな」

(;゚∋゚)))

川 ゚ -゚)「もう少し行くとエリアも狭くなるし、
その先には安全エリアもある。
そこで下と合わせて昼食の予定だから、
まずはそこまで頑張ってくれ」

.

519◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:08:20 ID:iZHxhR5I0

クーの言葉にそれぞれが答えると、
自然と座っていた者が立ち上がった。

川 ゚ -゚)「まだ時間は大丈夫だろ?」

(゚、゚トソン「はい。5分くらい余裕があります。
それに予定よりは3分ほど早いです」

( ´ー`)「もう休んだだーよ」

|  ^o^ |「どうせなら安全エリアでがっつりと休みましょう」

( ゚д゚ )「ふっ。ならば進むか」

( ^ω^)「おっお。だお」

ξ゚听)ξ「そうね。
やること終わってるならさっさと行きましょう」

<_プー゚)フ「弁当を作ったのはショボンか?!フサギコか!?」

(´・_ゝ・`)「現金な奴だなお前も」

(゚、゚トソン「朝から楽しみにしてましたよ。エクストは」

( ^ω^)「おっおっお」

ξ゚听)ξ「まったく。
これで私が作ったと言ったらどんな顔するのかしら」

クーを除く全員がツンを見る。

ξ゚听)ξ「……なによ」

.

520◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:09:43 ID:iZHxhR5I0

( ゚д゚ )「冗談だよな」

(´・_ゝ・`)「嘘だろう?」

( ´ー`)「嘘はいけないだーよ」

|  ^o^ |「ツンさんのギャグセンスもなかなかですね」

ξ゚听)ξ「…… …… マジよ」

全員の動きが止まり、
笑顔が凍り付き、
青褪めていく。

<_プー゚)フ「……おれはもうだめだ。みんな、先に行ってくれ」

( ゚д゚ )「バカを言うなエクスト。おまえを置いて先に行けるわけがないだろう」

崩れ落ちるように膝をつくエクスト。
その肩を力強く抱くミルナ。

<_プー゚)フ「だって、だって、……よりにもよって……」

( ゚д゚ )「大丈夫だエクスト!
ここはアインクラッドだ!
料理スキルを持っていないはずのツンが、
『弁当』など作れるはずがない!
アレは嘘だ!冗談だ!」

ξ゚听)ξ「…… ……。
手料理をご馳走したくて、
ひそかに鍛えていたのよ」

全員の目がブーンに注がれる。

(;^ω^)「おっおっ?」

その冷や汗を垂らした顔を見て、
二人とクーを除くメンバーの顔色が土気色に変わった。

.

521◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:12:21 ID:iZHxhR5I0

無言で体を震わせる者。
口に手を当て、自分の身体を抱きしめている者。
ぶつぶつと何かを呟きながら一人足踏みを続ける者。

そんなメンバーの姿を見るツンのこめかみには、
青い筋が浮かんでいた。

川 ゚ -゚)「ツン、嘘だよな?
今日ショボンとフサギコからお弁当預かったけど」

ξ#゚听)ξ「もちろん嘘よ。
ただの冗談。
料理スキル鍛える暇があったら細剣と裁縫鍛えるわよ」

全員の顔に生気が戻る。

空に向かって両手を広げ光を体いっぱいに浴びる者。
跪き、神に祈るような姿で感謝の言葉を口にする者。
身体を抱いたまま座り込み、安堵の吐息を吐く者。

ツンのこめかみの青筋が、さらに太くくっきりと浮かんだ。

ξ#゚听)ξ「お前達……」

(;^ω^)「と、とりあえず先に進むお。
トソン、もう時間だおね」

(゚、゚;トソン「あ、は、はい。そうですね」

いそいそと先に進もうとするブーン。
促されたツンもその斜め後ろに続き、
クーとトソン、残りのメンバーと動き始めた。

.

522◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:14:16 ID:iZHxhR5I0

ξ#゚听)ξ「大体、
なんで私の料理を食べた事が無いくせに、
そんなことを言われないといけないのよ」

(;^ω^)「ま、まあツン。
ツンの料理がどうこうじゃなくて、
ショボンとフサギコの料理が食べたいだけじゃないのかお」

ξ#゚听)ξ「いや、あれは違う。
そういうんじゃない。
私の料理のことを変な風に誰かから聞いたのよきっと」

(;^ω^)「と、とりあえず先に進むお」

ξ#゚听)ξ「いやまてよ。
私の料理を食べた事のあるのはブーンとクー、そしてドクオ。
ショボンは確か無いはず」

(;^ω^)「ツ、ツン、クエスト中は他の事を考えたらだめだお」

ξ#゚听)ξ「クーの料理の腕は私と似たり寄ったりだし、
人にそういう事は言わないはず」

川 ゚ -゚)「(信じられているのは嬉しいが、
ツン程ではないつもりなんだがな)」

ξ#゚听)ξ「ブーンには成功したのしか渡してないから、
そういう感想は持たない」

(;^ω^)「(あ、あれは成功品だったのかお!?)」

ξ#゚听)ξ「つまり犯人は……ドクオ!」

川 ゚ -゚)「(ドクオ、骨はひろってやろう)」

(;^ω^)「(ごめんだおドクオ。
っていうかドクオは失敗作を食べさせられてたのかお!?)」

ξ#゚听)ξ「ドクオ……。許さん」

.

523◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:19:22 ID:iZHxhR5I0

右手で細剣を力強く握ったツン。

それを横目で見た二人は、
それぞれにドクオの事を思っていた。





('A`)「ふぃっくしょん!」

(´・ω・`)「大丈夫?
……風邪?じゃないよねぇ」

('A`)「シラネ。
どうせツン辺りがおれの悪口でも言ってるんだろ」

(´・ω・`)「ははは」

(`・ω・´)「ショボン、さっき貰ったデータだけどよ」

(´・ω・`)「うん?
エギルさんから直接送ってもらった追加データだよね。
どうかした?」

(`・ω・´)「迷宮区の外周データ、
最初のと変わってないか?」

(´・ω・`)「ん?外周が?」

慌ててウインドウを開くショボン。
アイテムを出し、目の前の空間に地図を投影した。

(´・ω・`)「こっちが最初の奴。
で、こっちが今貰ったやつ」

更に地図が浮かぶ。
よく見ると微妙に異なっている箇所があった。

.

524◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:21:03 ID:iZHxhR5I0

(´・ω・`)「ホントだ。よく似てるけど、ちょっと違う」

(`・ω・´)「どういう事だ?
変化するってことか?」

(´・ω・`)「いや、最初の地図の外周が消えたわけじゃなく、
隠し通路?なのかな。
道が増えてるんだ」

('A`)「道が増える?」

(´・ω・`)「もちろんもとからあったのが発見されたんだと思うけど」

(`・ω・´)「攻略組は何をやっとる」

(´・ω・`)「いや、違うと思う」

(`・ω・´)「ん?」

(´・ω・`)「きっと僕達がこちらで何かをしているんだよ。
その『操作』に合わせて隠れていた道が出てきたんじゃないかな」

('A`)「……でもおれら、なんかやったか?」

(´・ω・`)「分からない。
でもほら見て」

古い地図を消し、遺跡の地図を出すショボン。
そして遺跡の地図を少しだけ回して重ねた。

(´・ω・`)「ほら、外周と遺跡の形が少し重なった」

('A`;)「それは無理矢理過ぎないか?」

(`・ω・´)「……いや。そうか。
石像の位置を重ねたんだな」

(´・ω・`)「うん。
これは石像の位置を重ねた。
きっと、像、塔、舞台、門といった、
キーと思われている石で造られたものにはまだ何かあるんだよ。
それぞれが少しずつずれたりしていたけど、
像の位置を合わせたら今まで重ならなかった外周が重なった部分がある」

('A`)「でも、おれ達石像に何かやったか?
調査はしたけど特に目新しいことはやってないぞ」

.

525◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:22:36 ID:iZHxhR5I0

(´・ω・`)「うん。僕も覚えはない。
でも、新しい発見だよ。
それぞれのキーをもっと詳しく調べてみよう。
迷宮区にいる皆さんに調べてもらうようアスナさんに連絡する。
あと血盟騎士団以外にもエギルさん達がいるし、
他にも連絡が出来る人がいるはずだから、
分かる全員に一斉送信しておくよ。
特に外周周辺の新しい道の調査をしてもらおう」

ウインドウを出すショボン。
メッセージを打ち始めると、
戦闘をこなしていたジョルジュとフサギコが
晴れ晴れとした顔で三人のもとに歩いてきた。







両側に鬱蒼としげる木々を見て、
ミルナは笑顔を見せた。

( ^ω^)「やっと……だおね」

( ゚д゚ )「ああ。やっと道の両側が見渡せるようになった」

それを横から見ていたブーンも同じ様に笑顔で話しかける。

(゚、゚トソン「トラップも前のエリアで終わりましたから、
ここは時間をかけられますよ」

|  ^o^ |「あれは本当に厄介です」

<_プー゚)フ「次の次で休憩だよな!」

川 ゚ -゚)「その前の調査がある」

<_プー゚)フ「分かってるけどよー」

.

526◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:24:15 ID:iZHxhR5I0

川 ゚ -゚)「分かっているなら良いが、
よろしく頼むぞ」

<_プー゚)フ「え?あ、うん。頑張る」

首をかしげながらミルナに近寄るエクスト。
そしてそのまま二人で左側の端にある石像を調査しに行った。

川 ゚ -゚)「なんだあいつは。変な顔して」

(゚、゚トソン「エクストが変な顔をするのはいつもの事ですが、
今回は気持ちは分かりますよ」

ξ゚听)ξ「ホント相変わらずエクストにはキツイわね」

(゚、゚トソン「そうですか?」

ξ゚听)ξ「天然かよ!」

(゚、゚トソン「養殖気味です」

ξ゚听)ξ「養殖かい!
って、気味ってなによ、気味って」

川 ゚ -゚)「漫才は良いからトソン、
今回は気持ちが分かるというのはなにかあるのか?」

三人は道の中央におり、その先ではブーンとブーム、シラネーヨが戦闘を。
左側にエクストとミルナ。
右側をクックルとデミタスが調査をしている。

(゚、゚トソン「今回の作戦が始まってから、
クーさんずっとピリピリしてましたけど、
ここにきて急に穏やか……とは違うけど、
普段通りくらいになったので」

.

527◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:25:50 ID:iZHxhR5I0

川 ゚ -゚)「……私の普段が穏やかではないと言われたような」

ξ゚听)ξ「そこは流しなさい」

(゚、゚トソン「ぜひ流してください」

川 ゚ -゚)「解せないが良しとしよう」

ξ゚听)ξ「で?なんかスッキリしたの?」

川 ゚ -゚)「別にスッキリしたわけじゃない。
今も不安なのは変わらない。
けれど、信じてみようと思ったんだ」

ξ゚听)ξ「ショボンを?」

川 ゚ -゚)「今回に限って……いや、限ってではないな。
自分の安全を考えるという点に関しては時々信じることはできないし、
今回もどうせ無茶するだろうからその辺は信用しない。
だいたい、いくら人数不足とはいえあんな作戦を」

ξ゚听)ξ「まあ……そうね。
シャキンと合流するまで一人になるスケジュールだったし。
それまでの間にどうにかなったらどうするつもりなのか」

川 ゚ -゚)「普通の相手なら口で延ばすことはできるだろう。
だが、相手によっては問答無用で襲ってくる」

(゚、゚トソン「では何を信用したんですか?」

川 ゚ -゚)「あの二人を」

ξ゚听)ξ「ああ」

(゚、゚トソン「なるほど」

.

528◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:27:28 ID:iZHxhR5I0

川 ゚ -゚)「一人では無理だけど、
あの二人も居たら何とかしてくれるだろ。
と、信じることにしたんだ」

(゚、゚トソン「ショボンさん、驚くでしょうか」

川 ゚ -゚)「驚かせられたらうれしいな」

ξ゚听)ξ「ふふ」

川 ゚ -゚)「ん?なんだ?」

(゚、゚トソン「どうしたんですか、鼻で笑ったりして」

ξ゚听)ξ「鼻でなんか笑ってないわよ!
微笑ましく思って呟いたのよ!」

(゚、゚トソン「失礼しました。で?」

ξ゚听)ξ「まったく……。
ちょっと気分良くなっただけよ。
なんか、『チーム』だなって思って」

川 ゚ -゚)「お前が言うか」

(゚、゚トソン「ツンさんが言いますか」

ξ゚听)ξ「はいはい。どうせ個人で動くわよ。
でも仕方ないでしょ」

(゚、゚トソン「戦闘が終わりました。
今から13分52秒、ポップしない予定です」

突然トソンが機械的に呟くと、
道の先で戦闘を行っていたブーン達三人がにこやかに歩いてきた。

.

529◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:28:59 ID:iZHxhR5I0

( ^ω^)「終わったおー。」

|  ^o^ |「ほとんど出る幕がありませんでした」

( ´ー`)「タイミングの復習で終わっただーよ」

( ^ω^)「おっお。二人が後ろにいてくれるから安心して戦えたお」

|  ^o^ |「おだてられるのも嬉しいです」

( ´ー`)「分かっていても、悪い気はしないだーよ」

( ^ω^)「おっおっ。
お世辞とかじゃないおー」

ξ゚听)ξ「はいはい。
じゃあ私達も調査をしましょうか」

川 ゚ -゚)「そうだな。ブーン、ツン、ブームは左側の先を、
私とトソンとシラネーヨは右側の先に行こう」

両側の調査班を見て即座に指示を出すクー。

川 ゚ -゚)「トソンは残り4分になったら教えてくれ」

(゚、゚トソン「はい。わかりました」

指示に従い二手に分かれる六人。

その時、声が聞こえた。

「あーー!!!
ツンさん!ツンさん!ツンさーーん!!」

ξ゚听)ξ「は?」

逆側からやってきた一つの影。

「偶然ですねー!」

.

530◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:31:35 ID:iZHxhR5I0

ξ゚听)ξ「……あんた、なんでここで」

眉を顰めるツン。
他のメンバーも近寄る者を見てから、ツンを見た。

ζ(;ー;*ζ「こんなところで会えるなんて!」






ウインドウを閉じたモナーが立ち上がると、
椅子の下で丸まっていたビーグルも立ち上がり、
モナーの足にすり寄った。

( ´∀`)「準備は大丈夫もな?」

▼・ェ・▼「きゃん!」

( ´_ゝ`)「連絡が来たのか?」

( ´∀`)「流石アルゴさんもなね」

(´<_` )「一人で大丈夫か?」

( ´∀`)「向こうで二人と合流するから大丈夫もなよ」

( ^Д^)「え?誰かいましたか?」

( ´∀`)「もなもな。
二人もいるもなよ。
というか何故敬語もな?」

( ^Д^)「いや、なんか、殺気というか……。
敵に回したらやばそうな気がして」

( ´∀`)「もなもな。
プギャーがバカなことをしない限り敵になったりしないもなよ」

.

531◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:34:36 ID:iZHxhR5I0

( ^Д^)「気を付けます」

立ち上がり、愛用の三又の矛、
もちろん以前よりも格段とレベルの高いものだが、
形状は同じ三又のそれを手にするモナー。
そして視線で自身の装備を確かめた。

( ´∀`)「ビーグル、頼むもなよ」

▼・ェ・▼「キャン!」

左手から足首までの半身を隠すマントの裾からビーグルが顔を覗かせて鋭く鳴いた。

( ´_ゝ`)「準備万端だそうだ」

( ´∀`)「もなね」

ニッコリとほほ笑む。
そしてテーブルを離れ、三人を見た。

( ´∀`)「では、行ってくるもな。
三人もそろそろもなね。頑張るもな」

三人に軽く手を振って転移門に向かうモナー。
ビーグルはマントの影にうまく隠れながら足元に付いていった。

(´<_` )「モナーもしっかりな!」

( ^Д^)「頑張ります!」

( ´_ゝ`)「手加減してやれよ!」

振り向かず、片手だけ挙げて三人の声にこたえる。

そして転移門に消えた。

.

532◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:36:23 ID:iZHxhR5I0

( ^Д^)「……」

(´<_` )「大丈夫か?プギャー」

( ^Д^)「なんか、モナーが怖かった」

( ´_ゝ`)「ぶち切れてたからな」

(´<_` )「モナーが嫌いなやり方だからな」

(;^Д^)「いつも穏やかな人が本気で切れると怖いってやつか」

( ´_ゝ`)「……ま、そんなとこだ」

(´<_` )「さて、おれ達もそろそろ準備するか」

( ^Д^)「こっちも予定ではそろそろ……あ」

ウインドウを開くプギャー。

(´<_` )「来たか?」

( ^Д^)「ああ。行ってくる」

ウインドウを閉じて立ち上がるプギャー。

( ´_ゝ`)「頑張れよー」

( ^Д^)「当然だ。
兄者、弟者もしっかりな」

(´<_` )「当然だ」

( ´_ゝ`)「頑張れよー」

( ^Д^)「なんか気が抜けるぞ兄者」

( ´_ゝ`)「お前は少し肩の力を抜いたほうが良いからな。
出所を見誤らないようにな」

.

533◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:39:05 ID:iZHxhR5I0

( ^Д^)「!……。
ああ、分かってる。
ありがとう」

ニヤリと笑った後、
表情を引き締め、
そして少しだけ緩めてサムズアップを二人にした。

それに対し同じようにサムズアップで返す二人。

( ^Д^)「じゃ、行ってくる」

街から外に出る門に向かうプギャー。
その背中を見守る二人。

( ´_ゝ`)「弟者、準備は出来ているか?」

少し後、二人の視界の片隅にメッセージの到着を告げるランプが灯った。

立ち上がる二人。
声もかけず、
視線すら交わさずとも、
そのタイミングは完全に一致していた。

(´<_` )「聞くまでもないだろ。兄者」

( ´_ゝ`)「そうだな」

カフェを出て、同じ方向を見て歩く二人だった。









.

534◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:41:11 ID:iZHxhR5I0





  _
( ゚∀゚)「ごちそうさま!」

(´・ω・`)「はい、お茶」
  _
( ゚∀゚)「さんきゅー!」

ミ,,゚Д゚彡「食後のデザートもあるから」

(`・ω・´)「豪勢だなおい」

('A`)「メンバーの大半が出てるときはこんなもんだぞいつも」

(`・ω・´)「やっぱり仲間に料理人がいるのは良いな。
作戦中も豪勢だ」

('A`)「いや、うちは特殊だと思う」

(´・ω・`)「食事は大事だよー」

ミ,,゚Д゚彡「大事だから!」

チームAの面々は安全エリア内の片隅にシートを広げ、
その上で食事をとっていた。

(`・ω・´)「ま、他のギルドやパーティーでこんなことをしているのはほとんどいないだろうな」

('A`)「おれは反対したんだぞ。
シートだって容量をとるわけだし」

(´・ω・`)「だから出来るだけ容量の少ないのを用意しているわけだし」

(`・ω・´)「ふかふかだけどな」

ミ,,゚Д゚彡「寝そべっても大丈夫だから!」

.

535◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:42:49 ID:iZHxhR5I0

('A`)「ツンとモララーが本気出したからな」

(`・ω・´)「凄いなあの二人」
  _
( ゚∀゚)「あの二人が手を組めば作れないものないんじゃないか?」

(´・ω・`)「さすがにそんなことは無いと思うけど」

('A`)「そう思わせる実績はある」

ミ,,゚Д゚彡「二人とも凄いから」

穏やかに会話をつづける五人。
もちろん武器から離れる様なことは無いが、
一見すればただのお茶会のように見える。

('A`)「さて、そろそろ動くか?」

しばらくの間談笑したのち、表情を曇らせたドクオが呟くと、全員の表情が引き締まる。

(´・ω・`)「うん。もうすぐ予定時間だよ」
  _
( ゚∀゚)「上の奴らも食べ終わった頃か」

(´・ω・`)「うん。みんな動くはず」

ミ,,゚Д゚彡「午後も頑張るから!」

(`・ω・´)「そうだな」

('A`)「ああ」

そしてそれぞれに立ち上がり、
身支度を整え始めた。







.

536◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:44:42 ID:iZHxhR5I0




ζ(゚ー゚*ζ「ごちそうさまでした!
本当に美味しかったです」

ξ゚听)ξ「それ言うの何度目よ」

フィールドダンジョン『Blesstart』を、
先程とは逆方向に向かって歩いているツン。
そしてその横を歩くデレ。

接近戦向きのツンの細剣と中距離も可能なデレの両手棍。
七割方はツンが倒しているが、
デレも充分戦力となっていた。

ζ(゚ー゚*ζ「相変わらずツンさんはすごいですね」

ξ゚听)ξ「そう?」

ζ(゚ー゚*ζ「はい。
ものすごく強くて、綺麗で、裁縫とかできて……」

ξ゚听)ξ「もちろん努力はしたけど、所詮はスキルよ。
スキルさえ鍛えれば、誰でも出来る事」

ζ(゚ー゚*ζ「それが出来ている人が少ないから凄いんです!」

ξ゚听)ξ「はいはい。ありがと」

ζ(゚ー゚*ζ「『綺麗で』に関しては何かないんですか?」

ξ゚听)ξ「同じくらい可愛い子にそんなこと言われてもねぇ」

ζ(゚ー゚*ζ「うっ。そう来ますか。
褒められるのは嬉しいですけど、
ツンさんほどじゃないです」

ξ゚听)ξ「あんたもなかなかちゃんと認めるわね」

ζ(゚ー゚*ζ「はい!」

.

537◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:47:33 ID:iZHxhR5I0

ξ゚听)ξ「まったく」

口調は呆れているが、
笑顔で会話しているツン。

デレも照れたように笑いながらその横を歩く。

ξ゚听)ξ「しっかしさっきも思ったけど、
相変わらず武器をデコってるのね」

ζ(゚ー゚*ζ「可愛くないですか?」

ξ゚听)ξ「可愛いには可愛いけど、
使い辛くないの?
耐久値とか下がるって聞くけど」

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫ですよ?
私は色を変えたりパーツを付けるくらいですから。
基本の持ち手の場所は色や柄を付ける程度ですし」

ξ゚听)ξ「ふーん」

ζ(゚ー゚*ζ「ツンさんもデコったらいいのに。
そんなに可愛いのに、細剣は普通だからちょっとアンバランスですよ」

ξ゚听)ξ「そうねー。
今度考えてみようかな」

ζ(゚ー゚*ζ「やりましょやりましょ!
その銀色の細剣もカッコいいですけど、
黒とか赤に染めたらもっと可愛いですよ!」

ξ゚听)ξ「そうね……考えとく。
あ、そろそろ右ね。
その先にある特徴的な木の根元から見つかるみたい」

ζ(゚ー゚*ζ「え!ここなんですか?」

ξ゚听)ξ「ら、らしいわよ」

.

538◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:48:50 ID:iZHxhR5I0

デレの勢いに押され、腰の隠しポーチから渡されていた地図を取り出すツン。

自分の位置を確認しつつ、右を指さす。

既に『草原』と言っても良いほど広い道に戻っていたが、
視界の先に何とか『道の端』がわかる。

ζ(゚ー゚*ζ「地図も読めるんですね!」

ξ゚听)ξ「あんたそれ、馬鹿にしてるように聞こえるわよ」

ζ(゚ー゚*;ζ「い、いえ、そういう事ではないんですけど」

ξ゚听)ξ「ま、私もリアルでは得意じゃなかったけどね。
こっちに来てからよ。
ちゃんと分かるようになったのって」

ζ(゚ー゚*ζ「ほえーーーー」

ξ゚听)ξ「あざとい感心の仕方ね」

ζ(゚ー゚*;ζ「え、あ、いや、思わず漏れただけです!」

ξ゚听)ξ「はいはい。じゃ、さっさと採取しましょ」

ζ(゚ー゚*ζ「はい!」

道の端に向かって歩く二人。

ξ゚听)ξ「それにしてもあんた、あれ何に使うの?」

ζ(゚ー゚*ζ「え?」

ξ゚听)ξ「いや、確かに『クラムライト』はあまり採取できない鉱石だけど、
特に強い武器や防具が作れるわけじゃないじゃない」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、知らないんですかツンさん。
遅れてますよー。
『クラムライト』は添加剤に使うことによって、
武器の強度を2から5も上げることが出来るってことが分かったんです!」

.

539◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:50:02 ID:iZHxhR5I0

ξ゚听)ξ「え?」

ζ(゚ー゚*ζ「ダメですよーツンさん。
それくらい押さえておかないと」

ξ゚听)ξ「それ、『ロクラムイト』と間違えてない?」

ζ(゚ー゚*ζ「…………え?」

ξ゚听)ξ「防具に使っていた添加剤だけど、
一部の武器にも使うと強度を上げることが出来る事が分かったのは、
『ロクラムイト』のはずだけど?
(兄者とブーンが見つけてたし)」

ζ(゚ー゚*ζ「え、いや、でも、『クラムライト』って書いて」

慌ててウインドウを開き、アイテムを取り出すデレ。
それは道具屋で配られている新聞で、
少し高額だが信頼できる情報のみが載っていることで有名だった。

ζ(゚ー゚*ζ「ほら、ここ、ここ……に………」

語尾が小さくなり、黙り込んでしまうデレ。

ξ゚听)ξ「……どんまい」

ζ(゚ー゚*ζ「……はい」

ξ゚听)ξ「クラムライトもオレンジ色のきれいな鉱石だったはずだし、
とりあえず採取していこうか?
モララーに何か作らせればいいし」

ζ(゚ー゚*ζ「……そうします」

とぼとぼと歩くデレを見て困ったような笑みを浮かべるツン。

ξ゚听)ξ「次から気を付ければいいだけよ。
なんか気になるのがあったら、
まず私とかモララーに相談するようにしなさいね」

.

540◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:53:00 ID:iZHxhR5I0

ζ(゚ー゚*ζ「……ありがとうございます」

ツンの言葉に笑みを見せるが、
あからさまに無理をしているように見え、
ツンは再び困ったように笑った。

会話が弾まぬまま二人は歩き、道の端に到着する。

目の前には木々が生えているが、
その中に一本、これもあからさまに『何かある』と感じさせる木があった。

ξ゚听)ξ「これね」

ζ(゚ー゚*ζ「そうですね」

ξ゚听)ξ「採取、しないの?」

ζ(゚ー゚*ζ「しないとですよね」

ため息をつき、のろのろと木に向かうデレ。

ζ(゚ー゚*ζ「本当、ダメだなぁ。わたし」

ξ゚听)ξ「……まったく」

ζ(゚ー゚*ζ「……見つからないし」

ξ゚听)ξ「はぁ?」

しゃがんでいるデレの横に同じようにしゃがむツン。

.

541◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 00:55:34 ID:iZHxhR5I0

ξ゚听)ξ「ちゃんとクリックしなさいよ」

ζ(゚ー゚*ζ「え、でも……。ほら、出ないんです」

ξ゚听)ξ「その手袋がいけないんじゃないの?
私がやってあげるから、ほら、ちょっと横にどいて」

ζ(゚ー゚*ζ「……はい。
ほんとにわたしってダメダメだ……」

ξ゚听)ξ「全く」

その場を移動するデレ。
代わりにツンが入り、しゃがんで木の根元のポイントをクリックする。

ξ゚听)ξ「ほら、採れた」

ウインドウを出して採取した品を確認するツン。

その後頭部に向かって、両手棍が振り下ろされた。










.
548◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 18:40:50 ID:iZHxhR5I0

6.



チームAは遺跡の調査を続けていた。

細かい遺跡の調査はほぼ終了し、
後は中央の大樹の調査と、
攻略組から送られてくる地図データとの照合、
そしてチームBが調べたデータとの統合性調査となっていた。

(´・ω・`)「それじゃあそろそろたいちゅ」

('A`)「(噛んだ……)」

ミ,,゚Д゚彡「(噛んだから……)」
  _
( ゚∀゚)「(見事に噛んだなおい)」

(´・ω・`)「大樹に向かおうか」

(`・ω・´)「何にも無しかい!」

(´・ω・`)「ん?何のこと?」

(`・ω・´)「今思いっきり噛んだだろうが!」

(´・ω・`)「?何のこと?
変なシャキンだな。
というか、シャキンが変なのは最初からか」

(`・ω・´)「おまえ達も突っ込めよ!」

( 'A`)

ミ ,,゚Д゚彡
   _
(  ゚∀゚)

(`・ω・´)「目を合わせろよー」

.

549◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 18:42:26 ID:iZHxhR5I0

(´・ω・`)「ほらほら、無駄口叩いてないで行くよ」

(`・ω・´)「……はい」

歩き出すショボンの後ろに続くシャキン。
その後ろに三人が続く。
シャキンが小声で「ナー『ブ』ギアのくせして……」
などと言っていっていたが、
その肩をドクオが首を横に振りながら軽く叩くと呟くのも止めた。

そして五人が二つエリアを移動した時、
人影が見えた。

(´・ω・`)「……人がいるね」

本来ならば出てくるはずのモンスターがポップせず、
その先で戦っている三人が見えた。
  _
(  ∀ )「あれは……」

( ФωФ)「ショボン殿!」

戦闘を終えたロマネスク、ヒッキー、フィレンクトがこちらに気付き、
ロマネスクがゆっくりとショボン達に向かって歩いてきた。

( ФωФ)「ジョルジュも一緒であるか。
久し振りであるな!
元気か!?」
  _
( ゚∀゚)「おう、おっさん!
おっさんこそ元気か!?」

( ФωФ)「おっさん呼ばわりされるのも久し振りであるな」

笑いながらジョルジュに近寄るロマネスク。
ジョルジュも近寄り、拳と拳をぶつける挨拶をした。

(´・ω・`)「ロマネスクさん、ヒッキーさん、こんにちは。
あと、……フィレフィレさん?」

.

550◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 18:45:39 ID:iZHxhR5I0

(;‘_L’)「フィレンクトと申します!」

( ФωФ)「二人は知り合いなのであるか?」

(´・ω・`)「あ、『フィレフィレ』は違うんですね。
いつもお店に来ていただきありがとうございます。
フィレフィレさんは店の方によく来ていただいています。
前にギルドマークが見えたので、
ANGLERの方なのは知っておりましたが」

( ФωФ)「なるほどなのである」

(‘_L’)「はい。
改めて自己紹介させていただきます。
ANGLERで事務系を取り仕切っております、
フィレンクトと申します」

(´・ω・`)「ご丁寧にありがとうございます。
ギルドVIPでギルマスをしているショボンと申します」

(‘_L’)「『フィレンクト』と申します」

(;´・ω・`)「は、はい、分かりました」

頭を下げあう二人。

(´・ω・`)「今日はギルドの皆さんでクエストですか?」

(‘_L’)「はい」

(-_-)「ロマが、
鉱石の採取をしようって」

(´・ω・`)「鉱石?
このエリアに何か特別なものありましたか?」

( ФωФ)「『ロクラムイト』である!
ショボン殿!
最近話題の鉱石である!」

(´・ω・`)「『ロクラムイト』?」

.

551◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 18:47:28 ID:iZHxhR5I0

(*ФωФ)「お、知らないであるか?
最近話題の鉱石なのである。
最近、添加物として使うと使い方によっては
武器の強度を上げることが出来ることが分かったのである。
ショボン殿の知らない情報を吾輩が知っていたとは」

(´・ω・`)「いや、それは知ってますけど、
このエリアで採取できるって話は聞かないなと思って」

( ФωФ)「え?」

(´・ω・`)「今のところ採れました?」

(‘_L’)「採れておりません」

(´・ω・`)「ですよね?
何か情報を間違えてないですか?」

(-_-)「ロマネスク……」

( ´ФωФ)「確かここで見つかるって聞いたし……」

('A`)「もしかして、『クラムライト』と間違えてるとか?」

(´・ω・`)「あ」

('A`)「確かここでも採れるよな?あれ」

(´・ω・`)「うん。大樹のエリアで」

(-_-)「『ロクラムイト』、『クラムライト』……」

(‘_L’)「ロマネスク殿……」

( ´ФωФ)「だってー」

(-_-)「だってじゃないよまったく。
だからこういうのはフィレンクトに任せておけって」

(‘_L’)「ちゃんと私が調査するべきでした」

.

552◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 18:51:29 ID:iZHxhR5I0

( ´ФωФ)「ギルマスらしいことしたかっただけなのである」

(-_-)「ショボンさんの真似をしようとしても駄目だよ」

( ´ФωФ)「はーい」

(‘_L’)「これからはこういうのは私にちゃんと相談してください」

( ´ФωФ)「はーい」

ミ,,゚Д゚彡「……なんとなくデジャヴを感じるから」

三人の会話を聞いていたフサギコがシャキンを見ると、
ドクオ達三人もシャキンを見ていた。

(`・ω・´)「おれは最初からミルナ達に頼るから違うな。
あいつらもショボンに聞きに来るだろ?」

(´・ω・`)「いや、そんなに来ないよ。
ちゃんと自分で調べてるみたいだよ?
ミルナもデミタスも」

(`・ω・´)「え?マジ?
ちゃんとショボンに聞けって言ってあるのに」

('A`)「シャキン……」

ミ,,゚Д゚彡「シャキン……」

胸を張るシャキンを見て呆れたようにその名を呟く二人。
ショボンとジョルジュは顔を見合わせて苦笑した。

( ФωФ)「みっともないところをお見せしたのである」

幾分か気落ちした様に見えるロマネスクがショボンに近付いてきた。

(´・ω・`)「まあ間違えは誰にでもありますから」

( ФωФ)「それで、その『クラムライト』は大樹というところで採取できるのであるか?」

.

553◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 18:53:03 ID:iZHxhR5I0

(´・ω・`)「ええ。このフィールドでは確かあそこだけです」

( ФωФ)「そうであるか。
折角だから取りに行こうと思うのであるが、
このフィールドにはボスクラスの敵は出ないと記憶しているのであるが……」

(´・ω・`)「はい。出ません。
ここはフィールドダンジョンですが、
クエストに使用されるだけで、
街道でもありませんし」

( ФωФ)「であるよな」

ふり返り、ヒッキーとフィレンクトに自慢げに笑う。

それを見て、あからさまに頬を引きつらせる二人。

( ФωФ)「では行こうと思うのである。
ところで皆さんはどちらに行かれるのであるか?」

(´・ω・`)「僕達も大樹に向かうところです。
途中のエリアで用事があるのでゆっくりの予定ですが」

ショボンの言葉に視線を走らせるシャキン達四人。

( ФωФ)「おお!
それでは途中までご一緒できるのであるな」

(-_-)「なに喜んでるのさ」

(‘_L’)「皆さんにもご都合がありますよ」

( ´ФωФ)「だめであるか?」

(´・ω・`)「……途中まで、
というか、二つ先のエリアまでならご一緒できますよ」

( ФωФ)「そうであるか!
あ、良ければ何かお手伝いできることがあれば、やらせてほしいのである」

.

554◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 18:56:06 ID:iZHxhR5I0

(´・ω・`)「それには及びません。
これは請け負った仕事での調査で報酬が発生していますから、
ギルド内及びこちらから依頼したメンバーでやらないと」

( ФωФ)「そうであるか……。
調査と言っておられたが、
このダンジョンのクエストであるか?」

(´・ω・`)「いえ、クエストではなくこのダンジョン全体のですね。
遺跡や地形や道、すべてを調査しています」

( ФωФ)「それは凄いのである。
あ、そういえばさっき前のフロアの巨像を調べた時、
初めて見るアイテムを拾ったのである」

(´・ω・`)「え?」

( ФωФ)「これであるが、
タップしても名前も出てこないので、
あとで道具屋さんに持っていくつもりなのであるが」

ウインドウを操作し、革袋を取り出すロマネスク。
そしてその中から、少し大きめのビー玉のようなアイテムを取り出した。

( ФωФ)「ショボン殿はご存知であるか?」

そう言いながら親指と人差し指でつまむように持ち、
目の高さまで上げた。

( ФωФ)「ビー玉であるな」

陽光を反射して水色に輝いている。

(´・ω・`)「見たことはないですね……」

( ФωФ)「ジョルジュ、見たことないであるか?
さっきから黙っているであるが」
  _
( ゚∀゚)「ん?ああ、いや、おれも見たことは無い。
それにショボンが見た事が無いものを
おれが知ってるってことも無いだろ」

.

555◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 18:58:46 ID:iZHxhR5I0

(´・ω・`)「そんなことは無いと思うけど」

( ФωФ)「まあ手に取ってみるのである。
出来ればタップして情報を見てほしいのである」

革袋に手を突っ込み、
五個のビー玉を取り出した。

( ФωФ)「五個あるのであるが、
吾輩もヒッキーもフィレンクトも分からなかったのである。
でも皆さんなら何か分かるかもしれないのである」

(´・ω・`)「今日は識別系のスキルを鍛えているのがほとんどいないので……」

( ФωФ)「そうなのであるか?」

ショボンが言った時には既に四人に配り終えており、
差し出されたビー玉をショボンも手にした。

(´・ω・`)「……では、一応」

それぞれに、黒、青、赤、白、黄の球が渡され、
ショボンは黒色の球をタップした。

(´・ω・`)「これは!」

ショボンがロマネスクの顔を見たと同時に、
横の森の奥で小さな爆発が起きた。
そしてそこから白い光がひろがり、
八人の視界を白く染めた。






.

556◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 19:03:17 ID:iZHxhR5I0

7.



川 ゚ -゚)「それでは三人とも、よろしく頼む」

( ^ω^)「おっおっお。任せろお」

( ´ー`)「頑張るだーよ」

|  ^o^ |「役目は分かっていますから大丈夫です」

食事をしたエリアから先、
道の真ん中でこちらから手を出さない限りたたずんでいるだけの巨大紫蟷螂を素通りし、
さらに二つ先のエリアに来ていた。

川 ゚ -゚)「……ツンもやってくると思うが」

( ^ω^)「……ツンが来る前に終わらせて、
逆に迎えに行ってくるお」

川 ゚ -゚)「ああ。そうだな。
それも良いだろう」

ニッコリとほほ笑んだブーンに笑顔で返すクー。

その表情を見てVIP以外のメンバーは驚愕する。

川 ゚ -゚)「なんだその反応は」

(゚、゚トソン「い、いえ、正直びっくりしただけです」

川 ゚ -゚)「本当に正直で不躾だな。
人の笑顔を見て驚くとは失礼だぞ」

(゚、゚トソン「もちろん微笑や笑顔も今まで見たことはあったのですが、
今のような『笑顔』は初見でしたので」

川 ゚ -゚)「……そうか?」

.

557◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 19:13:27 ID:iZHxhR5I0

大きくうなずいているVIP以外のメンバーを見て、
少し眉をひそめながらブーンとクックルを見る。

(;^ω^)「おー。そんなことは無いと思うけど」

( ゚∋゚)『あまり見せないかもしれない』

こまった様に呟いたブーンに比べ、
クックルは取り出したボードに冷静に書いていた。

川 ゚ -゚)「そうか……気を付けよう」

( ゚∋゚)(というか、ブーンの屈託のない笑みにつられるんだろうな)

クックルの思ったことはミルナやデミタス、
そしてトソンも感じていたが、
口には出さず他のメンバーと同じようにただ驚いた表情をしていた。

川 ゚ -゚)「ま、そんなことはどうでもいいか。
トソン、時間は大丈夫か?」

(゚、゚トソン「あ、は、はい。
……予定通りですね。
素通りしたタイミング、
エリア移動したタイミングも合わせましたから」

川 ゚ -゚)「あとどれくらいだ?」

(゚、゚トソン「十分三十……いえ、十分二十秒ほどです」

.

558◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 19:17:07 ID:iZHxhR5I0

川 ゚ -゚)「分かった。
それでは三人とも、
私達は先のエリアで戦っているから、
万が一やばい時は戦線をそこまで下げてくれ」

( ^ω^)「大丈夫だお!」

川 ゚ -゚)「それも一つの方法として、
無理はしないでほしいという事だ」

( ´ー`)「無理はさせないだーよ」

|  ^o^ |「トソンさんのようにはいきませんが、
精一杯頑張ります」

川 ゚ -゚)「二人とも頼んだ」

クーの言葉に心強い返事で返す二人。

( ^ω^)「おー。信用無いおー」

そして少しむくれたブーンを見て全員が笑った。







.

559◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 19:20:51 ID:iZHxhR5I0

8.



クー達六人がエリアを移動し、五分ほどが経過した。

( ´ー`)「ブーンは大丈夫か?」

( ^ω^)「お?何がだお?
これから来る紫カマキリはめんどくさいけど勝てない敵じゃないお」

( ´ー`)「あ、いや、それはおれも心配してないだーよ。
その……ほら……」

( ^ω^)「ツンの事なら心配だお」

( ´ー`)「まあ、そうだよな」

( ^ω^)「でも、この件でツンを心配するのは彼女に失礼だお」

( ´ー`)「え?」

( ^ω^)「ツンは彼に負けるほど、弱くないお」

( ´ー`)「え、いや、でも」

|  ^o^ |「残り三分、二人とも準備は大丈夫ですか?」

( ^ω^)「おっお。準備万端だお」

愛用の片手剣を右手で握りしめるブーン。

( ´ー`)「おれも大丈夫だーよ」

( ^ω^)「ツンは、今までずっと頑張ってきたんだお。
あの時から、ずっと、本当に、本当に。
だから、大丈夫だお。
それに、ツンと彼の相性はツンに分があるから大丈夫だお。
普通なら両手斧対細剣は、レベルが同じくらいなら細剣不利だけど、
ツンの場合は大丈夫なんだお」

.

560◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 19:26:44 ID:iZHxhR5I0

( ´ー`)「……ブーンがそういうなら、大丈夫なんだーよ」

|  ^o^ |「そうですね。我々は我々の役目に向き合いましょう」

二人も武器の準備を改めて行う。

|  ^o^ |「まずは三人で攻撃し、HPバーを三本消すわけですが……」

( ´ー`)「そこはおれたち二人が主体だーよ」

( ^ω^)「お?
ちゃんと僕もやるお」

|  ^o^ |「残り一本はブーンさんにお任せするわけですから、
そこまでは私達に任せてください」

( ^ω^)「その時も二人にはやってもらうことがあるから、
その為にもちゃんと戦うお」

( ´ー`)「おれはローテの1番目、
ブームは2番目、ブーンは3番目だーよ」

|  ^o^ |「1.2.1.2.1.2.3の順で行きましょう」

( ^ω^)「おー。わかったお。
でも大変だって思ったら声かけてすぐ出るお」

( ´ー`)「そんな場面は無いだーよ」

|  ^o^ |「!そろそろです!」

三人の視線が紫蟷螂のやってくる予定の方向に向いた。

そして武器を構える。

(  ω )「…… …… ツンは大丈夫 …… だお」

一番後ろ、
少し離れた場所に移動したブーンの呟きは二人の耳には届かず、
強く握りしめた片手剣の剣先は少し震えていた。





.

561◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 19:32:20 ID:iZHxhR5I0

9.




『Aridend』遺跡はフィールド上のダンジョンであり、
近くの街のクエスト用のダンジョンであるだけだと思われていた。

それに対し『Blesstart』は『中央道路』と呼ばれる通り、
街と街をつなぐ道でもある。
その大きさと途中に現れるボスクラスの敵、
そしてクエストの受注もあるたりフィールドダンジョンでもあるのだが、
基本は『道』である。

ただその街と街をつなぐのが『Blesstart』だけではないため、
今では『道』として使う者はほとんどいない。

( ´_ゝ`)「さて、例の森まで何エリアだ?」

(´<_` )「すぐだすぐ。
この次の次だ。
覚えておけよ」

( ´_ゝ`)「久しぶりに会って挨拶したら可愛すぎて忘れた」

(´<_` )「確かに可愛かったが二度と兄者は会うのは禁止だな」

クー達が進んでいる『Blesstart』を、
逆側から歩き始めた兄者と弟者。

もちろんクー達が『Blesstart』に入るところを見守った彼らがそこにいることが出来るのは、
『安全で速く辿り着けるもう一つの道』を利用した為である。

今の時間にこちらから進めばクー達が戦闘中に合流でき、
モンスターを後ろから奇襲が出来る計算である。

しかし兄者が歩みを止め、
弟者をまじまじと見つめた。

.

562◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 19:34:29 ID:iZHxhR5I0

並んで歩いていた双子の兄が歩みを止めたため、
数歩先に歩いた弟者も足を止めて振り返った。

(´<_` )「どうした兄者」

( ´_ゝ`)「そうか、とうとう弟者にも少女の良さが分かったか。
次は幼女だな」

(´<_`#)「この戦いが終わったらマジで殺すぞ」

( ´_ゝ`)「やーん。
弟者こわーい」

(´<_`#)「アホなこと言ってないでさっさと行くぞボケ!」

次のエリアに移動する二人。

現れた巨大アリを斧と鎚で、簡単に粉砕する。
もちろん『簡単に』倒せるのは、今までの努力の結果だった。

( ´_ゝ`)「我が最愛の弟よ!」

(´<_`#)「兄者死ね!」

( ´_ゝ`)「やんこわーい。続きよろしくー」

(´<_`#)「本気で殴るぞバカ兄貴!」

二匹のアリを倒すときにした会話はこれだけだが、
流れるようなタイミングで攻撃を入れ替えていた。

(´<_` )「まったく……」

( ´_ゝ`)「どうかしたか?」

(´<_`#)

( ´_ゝ`)「イライラはお肌の天敵だぞー」

(´<_`#)「しるか!」

.

563◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 19:37:38 ID:iZHxhR5I0

そして二人はエリアを移動し、
エリアの中央に円形の森があるフロアに辿り着いた。

( ´_ゝ`)「これが下から伸びてる大樹の先端とはね」

(´<_`#)

( ´_ゝ`)「なんだよ機嫌なおせよー」

(´<_` )「……まったく」

ため息交じりに呟いた弟者。

そして森を見ている兄者を見ると、
その表情が変わった。

(´<_` )「兄者?」

生まれた時からの付き合いだがあまり見た事が無い、
いや、アインクラッドに来てからは時折見る表情。

研ぎ澄まされた、鋭利な刃物を思わせる、
そして今日は今までで一番、
同じ顔のはずなのに、怖さを感じるその表情。

( ´_ゝ`)「……来るぞ」

弟者にだけ聞こえるように呟いたその言葉を聞き、
視線の先を見た。
 
/ ゚、。 /「流石武具店 の 店主か。
奇遇、だな」

身長よりも長い柄。
その先には肩幅よりも長く大きな刃物。
死神が持つような長柄の鎌をもった青年が、
森の影から現れた。

( ´_ゝ`)「奇遇、ねぇ……」

.

564◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 19:39:08 ID:iZHxhR5I0

口調は暢気だが、
その表情は、瞳は、
強敵と対面した時のようだった。

そして弟者は思い出す。

人殺しを快楽とする者達に、
兄者と二人で対峙したあの時を。

(´<_` )「兄者……」

( ´_ゝ`)「ダイオード、だったか」

/ ゚、。 /「この 鎌、すごく いい」

( ´_ゝ`)「おれの作った武器だからな」

(´<_` )「兄者……」

/ ゚、。 /「どんな モンスターにも 勝てる、気がする」

( ´_ゝ`)「生憎と、おれはモンスターじゃない」

ウインドウを開き、肩に担いでいた巨大金鎚を仕舞う。
そして今まで使っていた物より二回りほど小ぶりな頭の付いた金鎚を取り出した。
頭は小さくなったが柄の長さは先ほどよりも長く、
頭とは逆側を大地に杖のように突くと、
頭の部分は兄者の肩を少し超える位置にあった。

(´<_` )「兄者!」

( ´_ゝ`)「弟者、先に行け」

(´<_`;)「バカなことを!」

( ´_ゝ`)「おれ達が行かなければ、
あいつらが危険になるやもしれん。
何が重要かを考えろ」

.

565◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 19:41:37 ID:iZHxhR5I0

(´<_`#)「おれにとって一番重要なのは!」

( ´_ゝ`)「『仲間』だ。
今のお前にとって一番大事なのは、『仲間』だ。
間違えるな」

(´<_` )「……兄者」

自分を見ないで淡々と話す兄を見て、
弟者は一歩後退する。

(´<_` )「すぐ戻る」

そして下唇を噛んで何かから耐えるような表情をした後、
巨大斧を肩に担いだままダイオードに向かって走り出した。

(´<_` )「……!」

そしてそのままダイオードの横を通り過ぎる。

(´<_` )!

素通りできたことに驚いたのは弟者だけで、
兄者はただダイオードを見ており、
ダイオードも兄者だけを見ていた。

ダイオードを通り過ぎた後、
一度だけ後ろを見たが立ち止まることは無く、
弟者はそのままエリアを駆け抜けた

( ´_ゝ`)「武器屋しか狙わないのは徹底しているんだな」

/ ゚、。 /「この 武器は、お前を ころすために 産まれた」

( ´_ゝ`)「おれが武器を作るのは、
その武器で使用者が生きるためだ。
自分の命をやるためじゃない」

/ ゚、。 /「嘘 だ。
武器は、人を 殺すためにある」

.

566◆dKWWLKB7io :2017/04/02(日) 19:44:50 ID:iZHxhR5I0

( ´_ゝ`)「……一度売った以上、
その武器を何に使おうが買ったやつの自由だ。
だからお前が何に使おうが、
使い道に対して文句は言わない。
けどな……」

杖のように持っていた柄の長い鎚を天を衝くように掲げ、
視線はダイオードに固定したまま大きく振り回し、
そしてまるで槍のように構えをとる兄者。

( ´_ゝ`)「おれや、
おれの大事な人間に害が及ぶなら話は別だ。
その鎌、返してもらうぞ」

/ ゚、。 /「……この武器は お前を殺す。
そうしたら、墓標に してやる」

( ´_ゝ`)「ちゃんとコルは返してやるよ。
黒鉄宮の中の牢獄中じゃ使い道は無いだろうけどな」

ずっと無表情だったダイオードの口元が、
ほんの少しだけ笑ったように見えた。









.
578◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 22:59:59 ID:3GQdYQKw0
10.





目的のエリアに辿り着いたクー達チームB。

エリアに入ると同時にエクストとデミタスが一番前に立ち、
二列目にトソンとミルナ、
三列目にクーとクックルが立って武器を構える。

<_プー゚)フ「やるぜやるぜやるぜ!」

(´・_ゝ・`)「おれは前で特攻するキャラじゃないんだがな」

( ゚д゚ )「そうか?
おれはシャキンやエクストが前にいるより安心だが」

(゚、゚トソン「そうですね。
二人よりは安心して後ろにいられます」

<_プー゚)フ「なんだよ。
おれが危なっかしいとでもいうのか?」

(゚、゚トソン「最近は闇雲に突っ込まなくなりましたけどね」

( ゚д゚ )「シャキンより酷かった」

(´・_ゝ・`)「エクストとシャキンと比べられても嬉しくないな」

<_プー゚)フ「……泣くぞ」

(゚、゚トソン「今は実力に伴った突進だから良いって事ですよ」

( ゚д゚ )「闇雲ではなくなったな。
ちゃんと状況を見て突っ込んでる」

(´・_ゝ・`)「うちのギルドで安心して先頭を任せられる二人と比べられて、
ぎりぎり勝ってる部分を褒められても嬉しくないってことだ」

.

579◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:01:47 ID:3GQdYQKw0

<_プー゚*)フ「なんだよなんだよ、褒めても駄目だぞ」

口元を緩めて歩くエクスト。

(´・_ゝ・`)「(ちょろ過ぎだろ)」

( ゚д゚ )「(ちょろすぎて不安になるな)」

(゚、゚トソン「(本当にちょろいですね)」

その横と後ろを歩く三人の眉間には、
うっすらと皺が浮かんでいた。

川 ゚ -゚)「(あんなちょろくて今までよく生き残ってきたな)」

四人とは少し間を開けて歩くクーとクックル。

(;゚∋゚)「あのちょろさはなかなか心配だ」

川 ゚ -゚)「そうだな」

(;゚∋゚)「!え?」

川 ゚ -゚)「ん?どうした?」

(;゚∋゚)「今、おれの声が聞こえたのか?」

川 ゚ -゚)「?ああ。普通に聞こえたがどうした?」

(;゚∋゚)「今喋ったつもりが無かったんだ」

川 ゚ -゚)「思わずつぶやいたか」

(;゚∋゚)「いや、そんなつもりは無かったんだ」

川 ゚ -゚)「?だから、『思わず』なんじゃないか?」

( ゚∋゚)!

.

580◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:03:58 ID:3GQdYQKw0

川 ゚ -゚)「……クックルはずっと気を張っていたからな。
ギルドに入る前はもちろん、
ギルドに入ってからも。
大勢といる時はいつもだ。
モナーやショボン達と、
二人や三人でいる時はそうでもないと聞くが」

( ゚∋゚)「え?いや、そんなことは」

川 ゚ -゚)「だけど最近は表情も穏やかになってきたし、
大人数でいるときの笑顔も柔らかくなってきていた。
そこにきてデミタスやエクストと話せるようになった。
ショボンやモナーが本当に喜んでいたぞ」

( ゚∋゚)「クー……」

川 ゚ -゚)「もちろん、私やツン、ブーンやドクオ、
ギルドの全員が喜んでいる。
負担にならないよう静かにしていたがな」

( ゚∋゚)「……みんな……そうだったのか。
……おれは、……本当に馬鹿だな」

川 ゚ -゚)「ん?どうした?」

( ゚∋゚)「いや、なんでもない」

クーにだけ聞こえることを意識しながら呟く。

川 ゚ -゚)?

そして不思議そうに自分を見るクーに、
照れくさそうに微笑んだ。

(゚、゚トソン「そろそろ出ます!」

トソンの声に合わせて武器を構える面々。

すると道の先の空間が歪んだ。

.

581◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:05:44 ID:3GQdYQKw0

<_プー゚)フ「本当なら前門の虎、後門の狼ってやつだよな」

不敵な笑みを浮かべながら呟いたエクスト。

その呟きを聞き、ほぼ全員が視線だけをエクストに向けた。

<_プー゚)フ「え?おれ間違ってる?」

(´・_ゝ・`)「いや……」

(゚、゚トソン「それを言うなら『前に大蜘蛛後ろから大蟷螂』だろ……
って、思っただけですよ」

<_プー゚)フ「なんだよ比喩じゃないかよー」

( ゚д゚ )「(トソンナイス。
エクストが諺を使ったことにビックリとか流石に言えないからな)」

川 ゚ -゚)「エクストもそんな表現を使えることにびっくりした」

( ゚д゚ )

<_プー゚)フ「泣くぞ」

先程と同じセリフ。
しかしその表情は全く違い、
爛々と目を輝かせながら口元だけ笑みを浮かべていた。

(゚、゚トソン「(戦闘モードですね)」

『Blesstart』で決まった行動を行うと、
途中で巨大蜘蛛と戦うことになる。
しかも戦闘中に後方から巨大蟷螂が襲ってくるというオプション付きだった。

川 ゚ -゚)「前から巨大蜘蛛、途中後ろから巨大蟷螂。
そして横には蜘蛛を守ろうと兵隊蟻が現れる。
どちらかというと四面楚歌に近いかもな」

(´・_ゝ・`)「やめて!エクストのヒットポイントはもうゼロよ!」

.

582◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:08:35 ID:3GQdYQKw0

<_プー゚)フ「ぶー」

エクストの表情が緩み、
全員の顔からも緊張が少し消えた。

<_プー゚)フ「さんきゅ、肩の力抜けた」

川 ゚ -゚)「巨大蜘蛛に対する攻撃のメインはエクストだ。
意気込みは頼もしいが、
すこし余裕を持ってくれ」

<_プー゚)フ「ああ。わかった」

ニヤリと笑うエクスト。
けれど先程とは違い口元だけじゃなく瞳にも柔らかさがあった。

( ゚д゚ )「(かなわんな)」

(゚、゚トソン「(かないませんね)」

ミルナとトソンが同じような感想をクーに覚えていると、
目の前のポリゴンが完全に巨大蜘蛛に形を変えた。

川 ゚ -゚)「今回は蟷螂をブーン達が抑えている。
その分さっさと済ませて他に回る予定だが、無茶はしないように!」

全員が武器を掲げ、数人は声を上げ、その言葉に答える。
そしてエクストとデミタスが巨大蜘蛛に向かって駆けだした。





.

583◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:12:52 ID:3GQdYQKw0

11.



白い光に視界を奪われて目を閉じたジョルジュ。
  _
( -∀゚)「みんな!大丈夫か」

そしてゆっくりと目を開けると、そこは別の場所だった。
  _
( ゚∀゚)「……ここは」

( ФωФ)「ジョルジュ!」
  _
( ゚∀゚)「おっさん……」

( ФωФ)「ここはいったい?」
  _
( ゚∀゚)「さっきの光がなんかのトラップだったんだろうな」

キョロキョロと周囲をうかがった後ウインドウを開いて地図を出す。
  _
( ゚∀゚)「ここにいるのはおれ達だけで……、
……今の場所がマップに反映されてない。
場所移動と個体識別信号をロストさせるトラップだったのか」

ウインドウを切り替えながら、もう一度周囲を見回す。
  _
( ゚∀゚)「もしくは全然違う空間に飛ばされてるか。
出入り口は一つ確認できるけど、
どこに繋がるか分からない以上闇雲に動くのは悪手。
まずはメッセージを打って自分の生存連絡と、
あいつらの安否確認。
トラップでロストしているだけなら有効時間があるはずだから、
時間を確認しながら待機。
15分経過しても何も起きない場合はエリアの特性の可能性が高いから、
充分注意しながら移動を開始する。
現段階で敵もポップしてないから、
おそらくここは安全エリアなんだろう」

.

584◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:14:16 ID:3GQdYQKw0

メッセージウインドウに文字を打ち込み、
仲間に一斉送信するジョルジュ。
  _
( ゚∀゚)「ま、おそらくメッセージもブロックされてるだろうから、
まずは待機だな」

ウインドウを閉じ、武器を持ったままロマネスクを見るジョルジュ。
  _
( ゚∀゚)「どうしたおっさん?
鳩が豆鉄砲を食ったような顔して」

( ФωФ)「い、いや、ちょっとビックリしたのである」
  _
( ゚∀゚)「これくらい、うちのギルドのメンバーなら当然だからな。
ショボンとクーに鍛えられてる」

近寄ってくるロマネスクに両手剣を突き付けるジョルジュ。

ロマネスクは驚いた顔で歩みを止めた。

( ФωФ)「ど、どうしたのであるか?」
  _
( ゚∀゚)「さっきのトラップ。
誰かが発動させた」

( ФωФ)「そ、そうなのであるか!?」
  _
( ゚∀゚)「下調べじゃあの場所に時間発動によるトラップなんて確認されていない。
つーか、宝箱はもちろん、トラップ自体発見されていない」

( ФωФ)「見つかっていないだけじゃ」
  _
( ゚∀゚)「あんなやりつくされているフロア、
フィールドダンジョンで?
それに、もしも新たに宝箱やトラップが備え付けられていたとしても、
誰がそれを発動させたのかってことになる。
生憎と、おれの仲間にそれをする奴はいない」

( ФωФ)「……吾輩の仲間にもいないのである」
  _
( ゚∀゚)「仲間……か」

.

585◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:15:27 ID:3GQdYQKw0

( ФωФ)「ジョルジュ、
何を考えているのかは知らんが、
何か思い違いをしているのである。
ジョルジュには吾輩に剣を向ける理由などないはずであろう」

持っていた片手剣を大地に突き刺し、両手を上げるロマネスク。
その表情は困惑していた。
  _
( ゚∀゚)「……そうだな。
おれには、無いはずだな」

( ФωФ)「であろう、だからこの剣を」
  _
( ゚∀゚)「おれには無い。
けれど、あんたにはあるんじゃないか?」

( ФωФ)「ジョルジュ?」
  _
( ゚∀゚)「……殺人ギルド、『ANGLER』のギルドマスターであるあんたになら!」

(;ФωФ)「な、なにを言って!
さ、ささ、殺人ギルド?いったいな、なにをいって」
  _
( ゚∀゚)「おれ達を殺して、
『ANGLER』の名前を広めるために!」

(;ФωФ)「何を言っているのであるか!
落ち着くのである!
マタンキのことでギルドを疑われるのは仕方ないことであるが、
あれはマタンキだけで吾輩たちは!
吾輩たちはそんなことは考えていないのである!」
  _
( ゚∀゚)「……もう、いいだろ」

(;ФωФ)「何か勘違いをしているのである!
ショボン殿であるか!?そんなことを言っているのは!?」
  _
(  ∀ )「……もういいだろ!!
頼むよ、本当のことを言ってくれ。
おれを後ろから切り殺したいのかよ……。
なあ、……ロマネスク」

.

586◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:16:21 ID:3GQdYQKw0

( ФωФ)「……ジョルジュ」

両手剣をロマネスクに突き付けたまま顔を伏せるジョルジュ。
その震える切っ先を見ながら困惑の表情を見せていたロマネスクだったが、
ジョルジュが自分の顔を見ていないのを知ると、
ゆっくりと表情を変え、口の端だけを上げた笑みを浮かべた。





.

587◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:18:07 ID:3GQdYQKw0

12.



('A`)「さて、そろそろ本音トークをしないか?」

(-_-)「な、なにをですか?」

直径10メートル以上ある円形のエリアに飛ばされたドクオとヒッキー。

非常時の処理を済ませたドクオがヒッキーに向けて片手剣を突き出している。

('A`)「(この光景、傍から見たらおれが悪役なんだろうな)」

目の前でリスのように震えながらおびえた表情を見せるヒッキーを見ながら、
ドクオはそんなことを考えていた。

(;-_-)「ど、ドクオ、さん?」

('A`)「ん?いや、今のお前をショタコン(デミタス)が見たらおれが糾弾されるのかなって思ってた」

(;-_-)「え?え?」

('A`)「(昔だったらこの姿を見ただけでいらついてただろうな。
でも今は全くイラつかない。
……多分、みんなと、ハインが居てくれるから……)」

(;-_-)「あ、あの……」

('A`)「ああ悪い。
最高の仲間と最愛の女のこと考えてた」

(#-_-)

ドクオの言葉に思わず睨みつけるヒッキー。

('A`)「お、本当の顔だな」

(;-_-)「え、あ、いや、なんのことですか。
と、とにかく、剣が怖いので……」

.

588◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:19:17 ID:3GQdYQKw0

('A`)「おれと同等の強さのくせして何言ってるんだよ」

(;-_-)「ぼ、僕はそんなに強くないです!」

('A`)「だから、一度剣を交えているおれにそんなこと言っても無駄だって」

ドクオが手首を返すと、
突き付けている片手剣の先が陽光を反射し、
ヒッキーの顔に光の線を作った。

そしてその瞬間、ヒッキーの瞳が怪しくぎらついたのをドクオは見た。

('A`)「(さてどうしたもんかな。
下手すると実力は同レベルだ。
あいつが来る前に心を折りたいところだけど、
ショボンじゃあるまいしそんなことおれに出来るかって話だよな)」

(-_-)「な、何か勘違いを……」

('A`)「……うちのギルマスがよ、
今この世界で殺人をするやつを幾つかに分類分けしたんだ」

(-_-)「ぼ、ぼくは……」

('A`)「その中で、
ここでの殺人がリアル世界での死につながっていることを本当に理解している奴は、
ほとんどいないってのが、うちのギルマスの持論」

(-_-)「そ、それが……」

('A`)「自分も閉じ込められた被害者。
たとえこの世界で殺しても、
本当にリアルの世界で死んでいるなんて分からない。
なんてことを思ってるやつらだな。
それに、例え本当に死んだとしても殺したのは自分じゃない。
ナーヴギアが殺したんだって思ってるやつ」

(-_-)「そ、それは、そうなんじゃ……」

.

589◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:22:34 ID:3GQdYQKw0

('A`)「確かにそうかもな。
でも、おれ達は言うならば死刑執行台に登らされて、
首に縄を付けられた状態なんだ」

(-_-)「え?」

('A`)「あるいは電気椅子に座っている状態。
もしくはギロチンに首を固定された状態。
そしてその手には、ボタンが握らされている」

(-_-)「な、なにを言って……」

('A`)「そのボタンを押すと、どこかで誰かが首を吊り、
あるいは誰かの電気椅子に電気を流し、
もしくはギロチンが落ちて、だれかの首が胴体から離れちまう」

(;-_-)「……」

('A`)「そして言うんだ。
『本当にそうなるなんて思わなかった。
悪いのは俺にこのボタンを持たせたやつだ。
殺したのは機械だから俺じゃない』って。
ちゃんと説明を受けているのに、
自分の意志で押しておきながらな」

(;-_-)「……」

('A`)「ここでの『Player Kill』ってのは、
そのボタンを押す行為。
殺人なんだよ。
お前に、その覚悟が本当にあるのか?」

(-_-)「ぼ、ぼくはそんなこと……」

('A`)「そんな覚悟、無いよな。
ただあいつに言われてやってるだけなんだろ?」

(-_-)!

.

590◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:25:44 ID:3GQdYQKw0

('A`)「(……ここか?)
あいつに言われて、
あいつに唆されて、
あいつの言いなりに、
あいつに言われるがままに、
捨てられるのが怖くて、
やっているだけなんだろ」

(#-_-)「ぉ……ぉ……ぉ…… ……」

('A`)「そんなのは本当の仲間なんて言わない。
ただの隷属。
奴隷と一緒だ。
そして洗脳されているだけ。
おまえだって、使い捨ての駒なんじゃないのか?」

(#-_-)「お……お……お……おま……」

('A`)「本当は分かっているんだろ?
あいつはお前のことなんかちゃんと考えていない。
自分の欲望だけに忠実な、クソみたいな奴だって」

(#-_-)「おまえに何が分かる!」

左の腰に下げていた片手剣を瞬時に閃かせドクオの片手剣を打ち払おうとするが、
右手の動きを察知したドクオの動きの方が早く、
それには出来なかった。

しかし距離をとる事には成功し、
右手に持った片手剣をドクオに向けて構えをとる。

(#-_-)「独りだった僕を仲間にしてくれたロマネスクの事を!」

怒りでヒッキーの持つ剣先が震えている。

(#-_-)「僕を一人にしたあの世界を!
恐怖で震えていても誰も助けてくれなかったこの世界を!
復讐するすべを教えてくれたロマネスクの事を!」

.

591◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:26:58 ID:3GQdYQKw0

興奮し、大声を出したことによって震えた手を抑える様に片手剣を両手で持ち、
けれどさらに大声を出す。

(#-_-)「お前に!お前に!
最初から仲間がいて守られていたお前に何が分かる!」

肩を震わせ、
身体を上下させて呼吸をするヒッキー。

だが自分を見るドクオの視線を感じ、
後ずさりしながら剣を下ろした。

(;-_-)「あ、いや、その、ぼく、は、その……」

('A`)「なるほどね。
それで……か」

(;-_-)「いや、その、今のは、その……」

('A`)「一見似ている、
いや、自分よりも劣っているように見えるおれが、
仲間と楽しくやってるの見たら、
そりゃむかつくよな」

(;-_-)「いや、その、今のは、その……」

('A`)「確かにさ、
ブーンと幼馴染だってのは、偶然だ。運だ。
ツンと幼馴染だっていうのも、運だ。
ショボンと友達になったのもブーン絡みだし、
おれが努力したからじゃねえ。
けどな、おれのことを親友だって言ってくれる二人の事を、
胸張って親友だって言えるように、
おれは努力してきた。
おれと話していてもツンがバカにされないように、
努力してきた。
親父が死んで自暴自棄になって友達だと思っていた皆が離れていった時にも、
そばにいてくれたブーンとツン。
頭良くて、金持ちで、スポーツだってそこそこできて、
見た目だって悪くなくて、おれとなんか接点なんか全然なかったのに、
おれの中二病の戯言や訳分かんない知識を凄いって聞いてくれて、
何かあると意見を求めてくれるようになったショボン。
おれは、みんなの横に立ちたいから、努力してきた」

.

592◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:28:06 ID:3GQdYQKw0

(;-_-)!

('A`)「なあ、本当に一人だったのか?
誰も手を差し伸べてくれなかったのか?
隣にいて待っていてくれるやつはいなかったのか?
少し前で振り返ってくれたやつはいなかったのか?
声をかけてくれたやつはいなかったのか?」

(#-_-)「ぅ……ぅ……ぅ……」

('A`)「この世界でもそうだ。
開いている門はあったはずだ。
他にも仲間を見つける手段はあったはずだろ?
全員がリアルのツレで繋がっていたわけじゃないんだから。
この世界にだって、他に繋がりを作る手段はあったんじゃないのか?」

(#-_-)「うるさい……うるさい……うるさい……」

('A`)「ここはMMORPGの世界だ。
Playerは自分だけじゃない。
生きている、人間と一緒にゲームしてるんだ。
リアルの世界で出来なかったことを、
まっさらな気持ちでやるためにこの世界に来たんじゃないのか?
理想の自分に生まれ変わるために来たんじゃなかったのか?
おまえは、今の状態で満足なのか?
人殺しが……お前のやりたかったことなのか?」

(#-_-)「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」

片手剣を構えるヒッキー。
剣身が青白く光る。

(#-_-)「だまれーーーーー!!!!」

剣技の発動。
ほんの少しの助走でドクオのそばに瞬時に近付き、
すれ違いざま剣を振りぬく。

('A`;)「くっ」

.

593◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:31:19 ID:3GQdYQKw0

身を捩って足首だけの力で横に飛ぶドクオ。

ヒッキーの剣先はわき腹をかすめた。

('A`;)「(避けきれない!)」

ヒッキーの構えと初撃の動きから使われた剣技を理解し、
通常の動きでは二撃目はともかく三撃目以降を避けるのは困難だと考えたドクオは、
同じく剣技を発動。

だがそれは片手剣の技ではなく、
体術の技だった。

(#-_-)「はぁ!?」

剣を持っていない左手を緑色に光らせたドクオが、
剣を放り投げた先、
誰もいない、
何もない空間に向かってその左手を突き出し、
まるでその左の拳に引っ張られる様に体を移動させた。

四連撃のうちの三つを何もない場所で放ったヒッキーの視線の先で、
着地に失敗したドクオがゴロゴロと転がり、
すぐに立ち上がることもできず、
それでもこちらを見ながら拾い上げた剣を持ち直していた。

('A`)「あいつらのようにはうまくいかないか」

(#-_-)「なんだよそれなんだよそれなんだよそれ!」

.

594◆dKWWLKB7io :2017/04/07(金) 23:33:16 ID:3GQdYQKw0

('A`)「お前の知らない事なんか、この世界にはまだまだある。
おれだって知らないし、
知った顔して自信満々でおれ達に指示を出すうちのギルマスだって、
知らないことはまだいっぱいあるはずだ」

(#-_-)「なんなんだよなんなんだよ一体何なんだよお前は!」

('A`)「おれの知っていることなら、教えることが出来る。
おれ達の知っていることも、きっと教えてやれる。
そして、知らないことを一緒に知ることだってできるかもしれない。
でもそれには、お前が今までしてきたことを見つめなおすことが必要だ」

(#-_-)「むかつくむかつくむかつくむかつくむかつく!!」

('A`)「……剣で戦うのではなく、手を握りたかったんだけどな」

剣技後の硬直が解け、片手剣を持ち直すヒッキー。

同じく硬直が解けているドクオが立ち上がり、
片手剣を構えた。

(#-_-)「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる」

頭に浮かぶカーソルをオレンジに変えたヒッキーと、
HPバーを1ドット減らしたドクオが、
二人の盾無し片手剣士が、
互いを見ながらそれぞれに剣を構えた。




.
598◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:23:56 ID:7b.AdBTQ0

13.




ミ;,,゚Д゚彡「や、やめるのが良いから!」

( <●><●>)!

ワカッテマスの片手斧がフサギコに向かって振り下ろされるが、
余裕をもって彼はかわした。

ミ;,,゚Д゚彡「や、やめるから!」

フサギコはこのエリアに飛ばされた後、
ウインドウを開きながら周囲を確認しようとした。

そこに生まれた隙をつかれて後方から攻撃をされたが、
ワカッテマスの踏み込みが甘かったのと、
斧を振り下ろされる前に気付いたため腕に攻撃を受ける程度で済んでいた。

ミ,,゚Д゚彡「その武器は……」

そして今、フサギコのHPバーでは、
HPが減った時に一番最初に消えるドットが、点滅している状態だった。
つまり、計上するに値しないレベルの攻撃しか受けていないことになる。

ミ,,゚Д゚彡「手だけど、ちゃんと攻撃されたから。
防御力は上げてあるけど、
ワカッテマス君のレベルと通常の武器なら、
もっとヒットポイントは減るはずだから」

振り回される斧をかわしながらフサギコが声をかける。

ミ,,゚Д゚彡「その武器、攻撃力がほとんどない武器?」

( <●><●>)「……」

振り回していた斧を止めるワカッテマス。

.

599◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:25:49 ID:7b.AdBTQ0

二人がいるエリアは中央に一本の木があり、
その木の後ろにワカッテマスはまわった。

( <●><●>)「すぐに見抜かれることはワカッテいました」

木を挟んで対峙する二人。

ミ,,゚Д゚彡「こんなことをするのは止めた方が良いから!」

( <●><●>)「私は、やらなければいけないのです」

そう言いながら斧を構えて走り出すワカッテマス。

ミ,,゚Д゚彡「!」

木の横を抜けてフサギコに近寄ろうとするが、
フサギコは彼とは逆方向に走り距離を置いた。

ミ,,゚Д゚彡「ダメだから!こんなことしちゃ!」

( <●><●>)「……もう、どちらかが死ぬしかないのはワカッテマス」

ミ,,゚Д゚彡「そんなの分からないから!」

更に追い、振り回される片手斧。
一見ただ振り回しているだけのように見えるが、
経験から動く身体は確実にフサギコを狙っている。

ミ;,,゚Д゚彡「くっ」

避けきれないと判断した一撃に、
刀を合わせてその動きを止める。

そして、ワカッテマスのHPバーが1ドット消えた。

ミ,,゚Д゚彡!

思わず刀を引こうとするが、
ワカッテマスは斧に力を込めたままであるためそのまま受け止める。

.

600◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:27:58 ID:7b.AdBTQ0

ミ,,゚Д゚彡「くっ(なんでワカッテマス君のヒットポイントが……)」

ワカッテマスの込める力と武器の威力。
自分の出す力と武器の威力。

どちらが勝ってもいけないと思い、
ギリギリのバランスで斧を受け止めているフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「(真っ向から武器がぶつかった時の勝敗は、
パワーと武器の能力、
そして武器の種類、相性から決定されるから。
武器の能力はこちらが勝っているとしても、
斧と刀でこの体勢なら斧の方が優位だから、
レア度で勝っていたとしても……。
ましてやあの程度の反撃で、
しかも刀で使い手のヒットポイントを削るなんて……)」

( <●><●>)「お願いします。
死んでください」

ミ;,,゚Д゚彡「そんなこと!できないから!」

( <●><●>)「それならば……」

大きな瞳を悲しげに曇らせ、
更に斧に力をこめるワカッテマス。

ミ,,゚Д゚彡「なんでこんなことを……。
(ショボンから、ドクオから、兄者から、
みんなから教えてもらったことを思い出すから……)」

( <●><●>)「あなたは私が攻撃したことに驚いていなかった。
本当に攻撃されたことには驚いていたようでしたが、
『私が』攻撃したことには驚いていなかった。
ならば、分かっているのではないですか?
今、私があなたを攻撃している理由を。
私は貴方たちの情報収集力を、
あの男ほど楽観視してはいません」

.

601◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:29:09 ID:7b.AdBTQ0

ミ,,゚Д゚彡!

( <●><●>)「だから、死んでください」

ミ,,゚Д゚彡!

更に強くなるワカッテマスの力。
フサギコは力の配分を狂わせたのか片膝をついてしまう。

( <●><●>)!

右手に持った斧に力をこめ、
上から下に、
真下にいるフサギコを狙うワカッテマス。

フサギコはその斧を横に向けた刀で受け止め、
片膝をついて耐えていた。

ミ,,゚Д゚彡「(!?
ワカッテマス君のこの体勢なら、
斧の剣技が発動するはず。
もちろん意識的に発動をしないことはできるけど、
これだけ力を込めているこの状態で?)」

( <●><●>)「フサギコさん……」

ミ,,゚Д゚彡「ワカッテマス君……」

斧を受け止めているフサギコの刀が徐々に下に落ち、
自然と二人の顔が少しだけ近づいた。

ミ,,゚Д゚彡「……僕は、死なないから。
そして君も、殺さないから」

( <●><●>)「そんな夢のようなこと……」

囁くように呟くフサギコに合わせ、
ワカッテマスも小声になる。

.

602◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:30:33 ID:7b.AdBTQ0

ミ,,゚Д゚彡「フサギコ一人だったら、無理だから。
でも、ショボンが居て、クーが居て、みんながいるから、
大丈夫だから……」

( <●><●>)「フサギコさん……」

ミ,,゚Д゚彡「独りでどうしたら良いかわからなかったフサギコを、
ショボンは助けてくれたから。
そして、知ったから。
だから、大丈夫。
VIPの皆は、人と人が助け合うことを知っている人達だから」

( <●><●>)「……私のしていることは、
助けてもらえるようなことではありません」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫。
三人とも、助けるから」

囁きながら、瞳だけで微笑むフサギコ。

( <●><●>)「!……フサギコ……さん……」

その言葉に縋るようにか細く自分が殺そうとしている者の名を呼ぶワカッテマス。

( <●><●>)「……ですが……」

ミ,,゚Д゚彡「その武器は!」

突然の大声。

思わず体を強張らせたワカッテマスの隙をついて後方に大きく飛ぶフサギコ。
しかし無理矢理だったため地面を転がり土煙を上げた。

そしてワカッテマスも斧に込めていた力の方向を微妙に横にずらされたため、
バランスを崩して膝をついてしまっている。

同じタイミングで起き上がる二人。

ミ,,゚Д゚彡「その武器の謎は全て解けたから!」

.

603◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:31:43 ID:7b.AdBTQ0

叫ぶフサギコ。

武器を構えたまま動きを止めるワカッテマス。

ワカッテマスに向かって少しだけ斜に構えて立ち、
右手に持った刀を人差し指のように突き出すフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「真実は常に一つだから!」

( <●><●>)「……え?」

ミ,,゚Д゚彡「し、真実は、常に一つだから!」

(;<●><●>)「そ、それは、永遠の小学一年生?」

ミ;,,゚Д゚彡「し、しんじつは、つねにひとつだから!!」

更に声を張るフサギコ。

困惑するワカッテマス。

ミ;,,゚Д゚彡「(何とかして時間を稼ぐから!)」

(;<●><●>)「(ど、どうするのが正解なのかさっぱりわかりません!)」

刀を前に突き出したフサギコ。
片手斧を構えつつも及び腰のワカッテマス。

奇妙な二人の対峙はしばらく続く。






.
605◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:37:42 ID:7b.AdBTQ0

14.



別のエリアに飛ばされたシャキンはエリアの中央に立つと、
自分の身体を覆うには充分すぎる大きさの盾を軽々と担ぎながら、
周囲を観察していた。

もちろん右手には長めの片手剣を持っており、
その姿は立派な騎士に見える。

(`・ω・´)「でーてこーいよー」

その態度と軽さに目をつむれば。

(`・ω・´)「はーやーくー」

(‘_L’)「……まったく」

(`・ω・´)「!?よ!フィレフィレ!」

(;‘_L’)「フィレンクトです!」

(`・ω・´)「えー。フィレンクトよりフィレフィレの方が呼びやすいからなー」

(‘_L’)「……まったく……」

少しだけ歪んだ楕円の形をしたエリア。

木の影から槍を持ったフィレンクトから現れると、
少しだけ意外そうな顔をしたシャキンがすぐに笑顔で話しかけていた。

(‘_L’)「さて、私で意外でしたか?」

(`・ω・´)「じゃあ間をとって『フィレっち』とかどうだ?」

(;‘_L’)「どこが間なのかさっぱりわかりません!」

(`・ω・´)「おれ基準!」

.

606◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:39:08 ID:7b.AdBTQ0

(;-_L-)「あーもう、好きにしてください」

(`・ω・´)「じゃあフィレンクト」

(#‘_L’)「『フィレっち』じゃないんかい!」

(`・ω・´)「希望通り名前で呼んだのに何で怒るんだ?」

(#-_L-)「あーもう!」

イラつきを隠そうともせず槍を構えるフィレンクト。

シャキンは口だけで笑いつつ盾を構えた。

(#‘_L’)「私が来たのは意外でしたか?」

(`・ω・´)「いや別に?
消去法でフィレっちかワカッテマスだと思ってたし」

(#‘_L’)

.

607◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:42:08 ID:7b.AdBTQ0

(`・ω・´)「あれ?まだ怒ってる?」

(#‘_L’)「色々言いたいことはありますが、
幾つかは横に置いておいて、
では先ほどの表情はいったい何ですか?」

(`・ω・´)「ん?ああ、いや、思ったより普通に出てきたなと思って」

(‘_L’)「…… …… は?」

(`・ω・´)「いや、こうもっと劇的な登場をするかと思って」

(‘_L’)「…… 劇…… ……的?」

(`・ω・´)「なんつーの?こう、ミュージカルみたいに歌いながらとか、
よくある黒幕みたいに高らかに笑いながらとか」

(#‘_L’)「するわけないでしょそんなこと!」

(`・ω・´)「なんだー。つまらん」

突き出された槍を盾ではじくシャキン。

その勢いを使って距離をとる。

(`・ω・´)「せっかくの登場シーンなんだから凝ればいいのに」

(#‘_L’)「あなたの娯楽に付き合うほど暇ではありません」

突き出される槍をすべて盾ではじくシャキン。
しかしそのヒットポイントはいつの間にか削られ、
ドットが一つ点滅を始めた。

(`・ω・´)?

(‘_L’)「……不思議ですか?」

頭の上のカーソルをオレンジに変えたフィレンクトが、
少しだけ笑みを浮かべた。

.

608◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:44:15 ID:7b.AdBTQ0

(`・ω・´)「特殊効果を持った槍。
ってことか」

(‘_L’)「それはどうでしょう。
私の能力かもしれませんよ?」

更に槍を突き出すフィレンクト。

(`・ω・´)!

その動きは決してレベルの低いものではないが、
剣技ではないその突きはシャキンが遅れを取るものではなく、
連続で放たれるその突きをすべて盾ではじき、流した。

しかし一つ目のドットの点滅が早くなった。

(`・ω・´)「…… ……ふむ」

少しだけ表情を曇らせるシャキン。

(‘_L’)「いつまでも攻撃を受けるだけで良いのですか?」

(`・ω・´)「剣技の発動ではない以上、
武器の性能と考えるのが普通だよな。
武器の中には特殊効果があるものがあるから。
ハンマー系の武器なんかだと、
通常攻撃に衝撃波が付随している物なんかがあるから、
それなんだろう。
『ウインドスピア』の上級クラスでもそんな能力がある奴があったよな。
ただ……」

(‘_L’)「流石ですね。
この槍は『モンスーン=スピア』。
一定のスピードで突きを行うことで、
広範囲攻撃を繰り出すことが出来ます」

シャキンの言葉を遮るようにフィレンクトが話し、
そして槍を構える。

.

609◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:49:16 ID:7b.AdBTQ0

(`・ω・´)「良いのか?
ネタばらしして」

(‘_L’)「問題ありません」

言葉と同時に槍を突き出すフィレンクト。
流れるような連続突きだったが、
今度も盾に阻まれシャキンの身体を直接攻撃は出来なかった。

(`・ω・´)「……ふむ」

しかし一つ目のドットが消えた。

(‘_L’)「全ての攻撃を受け止めるのは流石ですが、
このまま攻撃を受け止めているだけならば、
ヒットポイントが削られるだけですよ」

(`・ω・´)「……なるほどね」

シャキンの顔から笑みが消え、
フィレンクトを睨んだ。

(‘_L’)「やっと本気になりましたか?」

(`・ω・´)「悪いけど、おれは人殺しをするつもりはない」

(‘_L’)「……バカなのか、もしくは余程の策でもあるのか」

(`・ω・´)「バカでも凄い策があるわけでもないさ。
ただ、おれは知っているだけさ」

(‘_L’)「ほお。
何を知っているというんです?」

(`・ω・´)「お前が知っている事と、
それプラス少しをさ」

(‘_L’)「……何を言っているか分かりませんが、
これを受けてもそんなことが言えますか」

.

610◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:50:34 ID:7b.AdBTQ0

フィレンクトが何度目かの連続突きを放つ。

剣技ではないそれは程々のスピードであり、
素早さに自信のある者なら避けることも可能にも見える。

(`・ω・´)「……」

しかしシャキンは今までと同じように盾に身体を隠した。
だが今までは大きな盾を左右上下に動かしつつも
最小の動きで突きを受け止めていたが、
今回は槍の一つ一つの動きに合わせて細かく盾を動かしていた。

(‘_L’)「!」

最後に一度強い一撃を放つとすぐにバックステップで距離をとるフィレンクト。

(`・ω・´)「終わりか?」

(‘_L’)「……」

シャキンのヒットポイントは欠けておらず、
点滅も開始していない。

(‘_L’)「……何故」

(`・ω・´)「街売りの武器や簡単に手に入る武器は、
情報屋のデータに画像付きで出てるよな。
でも、レア度が上がるにつれ画像が付いてなくなる。
それでもレア武器の所持者が気前良く画像データを渡してくれたやつは、
載ってる。
『MONSOON』も、その一つだ。
実際良くできていると思う。
その『SNAKE=SPEAR』に施した偽装は」

(‘_L’)「!」

.

611◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:52:01 ID:7b.AdBTQ0

(`・ω・´)「?そんなに不思議か?
それが『MONSOON』で無ければ推測するだけだ。
攻撃が盾をすり抜ける武器。
フィレンクトが使って一撃から二撃でおれのHPを削った量。
武器DBに載っている画像に偽装できる形状。
おれに攻撃を与える時のお前の動き。
これだけヒントがあれば誰だってわかるさ」

(;‘_L’)「『誰でも』は、違うと思いますよ」

(`・ω・´)「そうか?」

(‘_L’)「ええ」

(`・ω・´)「分かると思うけどなー」

(‘_L’)「……何故、これが『偽装』だと思ったのですか?」

不思議そうに首を傾げたシャキンをじっと見るフィレンクト。

その瞳には怒りに似た、
けれど違う炎が宿っているように見える。

(`・ω・´)「あー。
それはなー。
あれ載せたの、アルゴじゃないんだよ」

(‘_L’)「……は?」

(`・ω・´)「あのデータベースは、
情報屋の有志が作っている。
最終的なチェックはアルゴもやっているらしいけど、
基本的には情報屋の組合に入っていれば、
自分の名前を付ければ登録、書き換えができる。
そして新規登録したものは、10日は登録者以外操作ができない。
10日経過すると、修正や削除を他の情報屋が出来るようになる。
知ってたか?」

(‘_L’)「い、いえ。存じません。
ですがそれが?」

.

612◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:53:33 ID:7b.AdBTQ0

(`・ω・´)「分からないか?」

(‘_L’)「……登録者が、間違えて登録した?」

(`・ω・´)「そういうこと。
あのリストの『MONSOON=SPEAR』の項に付いている画像は『BOREAS=SPEAR』。
『MONSOON=SPEAR』を作るための素材の一つだよ」

(;‘_L’)「な、何故そんな!」

(`・ω・´)「情報屋として名を上げたがっていたからな。
レア武器を画像付きで登録できたとかなったら、
一躍有名になれるだろ?」

(;‘_L’)「そ、そんなことで!?
で、ですがそれでも私の持っている武器の性能が広範囲攻撃ではないと分かるわけが!」

(`・ω・´)「んー。
まぁ種明かしすると、
装飾の変更は『柄』の部分だけで、
『刃』の部分は変えられないだろ?
『SNAKE』と『BOREAS』は刃の形が似てはいるけど、
微妙な色とかサイズとか形状が違っているから、
そこからだな」

(;‘_L’)「そ、そんな箇所で判別できるわけがない!」

(`・ω・´)「いや、出来る。
おれはな。
あと、おれが知ってるだけで二人は出来るな」

(;‘_L’)「そんなばかな……」

(`・ω・´)「ま、おれとかは一度見たものは忘れないからわかるけど、
おれ等のギルドメンバーなら、
おそらく推理で『SNAKE』だって辿り着くぞ」

(;‘_L’)「え?」

.

613◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:54:50 ID:7b.AdBTQ0

(`・ω・´)「特殊効果を持つ武器に関しては、
その特徴と対応策をしっかり叩き込まれるからな。
どんなにごまかしてもその発動条件と効果内容から推測するさ。
それが『MONSOON』じゃないことくらい」

(;‘_L’)「なんなんですか、貴方達は」

(`・ω・´)「ゲーマーだよ」

(‘_L’)「は?」

(`・ω・´)「ゲーマー。
ゲームをする人。
おれ達は、ゲームをしてるんだ」

(‘_L’)「……」

(`・ω・´)「だから、死なない。
『お遊び』で死ぬなんて、
馬鹿げてるからな。
本気で遊ぶけど、命は賭けない」

(‘_L’)「ですがこの世界では」

(`・ω・´)「誰が何と言おうと、
これは『ゲーム』、お遊びだ。
『遊び』で死ぬなんて、あっちゃならない。
だから、おれは死なない。
そして、仲間も死なせない」

(‘_L’)「……幸せですね。
あなたも、あなたの仲間も」

(`・ω・´)「?お前もだぞ?」

(‘_L’)「私はあなたの敵ですよ。
仲間じゃありません」

(`・ω・´)「確かに今の立場は『敵』かもしれない。
けれど、同じ『ゲーム』をする仲間だろうが」

.

614◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:56:38 ID:7b.AdBTQ0

(‘_L’)!

(`・ω・´)「ゲームの中の立場は敵だとしても、
同じゲームを遊ぶ仲間だろ?」

(‘_L’)「……シャキン……さん……」

(`・ω・´)「だから、おれは死なない。
そしてフィレンクト、お前も死なない。
死なせない」

(‘_L’)「……例え私が持つこの武器が『SNAKE=SPEAR』だとしても、
盾をすり抜けて攻撃できることには変わりません。
私に勝てるつもりですか?」

(`・ω・´)「さっきおれのHPが減らなかったの覚えてないのか?」

(;‘_L’)「そ、それは」

(`・ω・´)「『SNAKE=SPEAR』の特殊効果は、
『盾無効化』でも『衝撃波』でもない。
蛇のように軌道が変わる能力。
その発動条件は、
『3回以上の連打後に、刃渡り3つ以上の長さの移動をする突き』」

(‘_L’)「だからそれが」

(`・ω・´)「結構難しいよな。
でもうまくごまかしていたと思う。
けど、ごまかすためにギリギリの距離でやらざるを得ない」

(‘_L’)「!まさか」

(`・ω・´)「ちょっと盾を前に動かして、
必要距離動く前に盾で受け止めた」

(;‘_L’)「そ、そんなこと、出来るわけが」

.

615◆dKWWLKB7io :2017/04/09(日) 23:57:51 ID:7b.AdBTQ0

(`・ω・´)「何言ってんだ。
それが出来たから、
さっきの攻撃でおれはHPを減らさなかったんだろうが」

(‘_L’)「な、ならば、
それが本当だと証明してみなさい!」

フィレンクトが槍を強く掴んでシャキンに向かう。

(`・ω・´)「はいはい」

放たれる突きをシャキンが盾で弾いた。






.
632◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:09:06 ID:clYB1jZA0

15.



(´・ω・`)「とりあえずやれることは終了」

呟いた後、ウインドウを閉じたショボン。

白い光に包まれた後この場に飛ばされた彼は、
ウインドウを開いて対応作業をしていたところだった。

(´・ω・`)「さてと……」

独り言ちながら周囲を見回す。

背後には、森。
目の前には一辺10メートルを超える長さの真四角の芝生。

(´・ω・`)「きれいに四角なんだ。
こういうフィールドダンジョンではあまりお目にかからない形状だね。
しかも土の地面じゃなくて芝生とか」

誰かに話しかけるように状況を話し整理している。

(´・ω・`)「出入口は一つ。
さっきまで居たフィールドダンジョンの中なのか、
同じフロアなのか、全くわからない。
ただ現在地点が分からない状況ですぐにエリアを移動するのは得策ではないね。
その先に罠があるかもしれないし、
出たところでここに戻るだけかもしれない。
まずはこのエリアの探索をしないと」

目の前、エリアの端に見える道を確認しながら話すショボン。

(´・ω・`)「さて、このままだと大きな独り言をしている危ない男になっちゃうから、
そろそろ出てきてほしいんだけどどうかな?」

周囲を見回すショボン。

けれど穏やかな風が葉を揺らしているだけだった。

.

633◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:12:12 ID:clYB1jZA0

(´・ω・`)「ねえ!マタンキさん!」

しかしショボンがその名を呼んだ瞬間、
一本の樹の幹が揺らめいた。

「ま、ばれないとは思ってないけどよ」

(´・ω・`)「僕を後ろから切りつけたかったですか?」

(・∀ ・)「そっか。顔が見えなければ意味が無いな」

隠蔽スキルとアイテムを使って姿を隠していたマタンキがその姿を現した。

身体を隠していた樹は道のそばにあった為、
そのまま道に向かっていれば、
背後から攻撃されていたかもしれなかった。

(・∀ ・)「死ぬ間際の苦悶の表情が見れないじゃんか」

笑顔でショボンに語りかけるマタンキ。

ショボンは特に表情を変えなかった。

(・∀ ・)「あれー。
なにもないのかな?」

(´・ω・`)「お久しぶりです。マタンキさん」

(・∀ ・)「ひさしぶりー!
チョウ会いたかった!
って、ちがうちがう!
そういうんじゃなくて!」

(´・ω・`)「あなたが僕を狙うのは分かっていましたから、
会えるとは思っていましたが」

(・∀ ・)「えー。
なにショボっちチョウ俺にラブラブー?
俺超嬉しいー!
チョウ会いたかったー!
真剣チョウうれしいー!」

.

634◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:14:01 ID:clYB1jZA0

(´・ω・`)「……そうですね。
お会いしたかったです」

(・∀ ・)「ホント今すぐ切り刻んで殺したいくらい、
会いたかったー」

(´・ω・`)「……あの時と今日の二回。
いえ、正確にはあの日だけで、
なぜそこまで憎まれるのか、
その理由を知りたかったっ!」

ショボンが言い終える前に駆けだしていたマタンキ。

ショボンが円形の投擲武器、
『チャクラム』を二つ盾のように構えた位置に片手剣の刃が当たった。

(;´・ω・`)「くっ」

激しい激突音。
それと共にショボンのHPバーの一つが点滅を始めた。

(・∀ ・)「すげー。
盾や両手剣以外で受け止めた。
でもよう」

マタンキがニヤリと笑った瞬間にショボンを襲う衝撃波。

しかしそれも予期していたのか、
マタンキの言葉が終わる前にショボンが後方に飛んでおり、
防御の構えを行っていた。

(・∀ ・)「ひゅーひゅー。
さすがだな」

しかしマタンキは驚きもせず、
からかう様に声をかけた。

片手剣を肩に担いだその姿は余裕すら感じられる。

.

635◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:17:39 ID:clYB1jZA0

(・∀ ・)「俺のこの剣で分かったか?」

(;´・ω・`)「追加攻撃能力を持つ片手剣。
『HURRICANE=SWORD』。
少し前に見付かった、
何層にもわたるクエストの最終獲得アイテムの一つ。
ただその『暴風』の発動条件はいくつかある。
一つは完全に攻撃を決める事が出来た時。
逆に攻撃を受け止められた時は、4秒間の静止」

(・∀ ・)「さすがさすがー」

(;´・ω・`)「でも、今のカウントは2秒くらいだったし、
こんなに大きな衝撃波を生み出せるなんて……。
追加攻撃スキルを持つ武器は、
そのスキルを鍛えることが出来るとは聞いてるけど」

(・∀ ・)「いいねいいねー。
でもよ」

襲い掛かるマタンキ。
その速さはドクオに匹敵する。

(・∀ ・)「考える暇なんてあるのか?」

マタンキの衝撃音が五回響く。
全てショボンがマタンキの攻撃をはじいた音だが、
先程とは違って軽かった。

(・∀ ・)「はっはっはー。
なるほどなるほど。
いいねいいねさすがだね」

五回目の攻撃を弾くと同時にマタンキの横を抜けて『飛んだ』ショボン。

突き出した片手が赤く光っていた為、
それが体術スキルの技であったことが分かる。

(;´・ω・`)「はぁ……はぁ……」

.

636◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:22:12 ID:clYB1jZA0

マタンキから出来るだけ離れたショボン。
剣技後の硬直を、呼吸を整えるのに使っている。

(・∀ ・)「いいぜいいぜー。
硬直時間に襲うのもありだけど、
まだまだ楽しまないとなー」

(;´・ω・`)「何故……そこまで……」

(・∀ ・)「んー?
きらいだからだよー」

さも当然といったように答えるマタンキ。
口調は軽く表情も笑顔だが、
瞳だけは鋭くショボンを射抜くように冷たく見つめている。

(;´・ω・`)「理由を、教えてほしい!」

(・∀ ・)「嫌いなだけだってばー」

(;´・ω・`)「それでも!
嫌いになった理由があるはずだ!」

(・∀ ・)「んー。
生理的に無理って感じかなー。
そういうところが」 

(;´・ω・`)!

(・∀ ・)「だけどさー」

喋りながらのマタンキの突進。

(;´・ω・`)「!」

振り下ろされる片手剣をチャクラムで受け止めながら角度を変え、
自分の横に流れるのを見ながら跳躍した。

(・∀ ・)「いやー。
凄いね凄いねー」

.

637◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:23:34 ID:clYB1jZA0

(´・ω・`)「……今の攻撃は、
僕を殺そうとする一撃ではなかった。
ただ、傷付けようとしただけ。
だから今みたいに避けることが出来た」

(・∀ ・)「……ふーん。
じゃあさじゃあさ、
本気の一撃なら受け止めてくれるんだ」

(´・ω・`)「……僕は死ねない。
死ぬ事は許されない。
友達が全員帰るまで、
死んではいけないんだ。
だから攻撃を受け入れることはできないけれど、
そこまで僕を憎む理由があるなら」

(・∀ ・)「俺のすべてを受け止めてくれるってか?」

楽しそうに、
本当に楽しそうに、
表情だけは満面の笑みでショボンを見るマタンキ。

(・∀ ・)「けどさー」

何の小細工もなく一直線にショボンに突進するマタンキ。
そしてショボンはチャクラムでマタンキの片手剣を受け止める。

(・∀ ・)「ひゅーひゅー。
ゆうげんじっこうしゅしゅとりあーん。
流石のショボンさん、
俺の思いをチョウ受け止めてくれちゃったー」

笑みを浮かべたまま剣に力を籠めるマタンキ。
ジリジリと動いているせいか、
そのほかの要因の為か、
相手を襲う風は吹いていない。

(・∀ ・)「いつまでもつかなー」

.

638◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:24:48 ID:clYB1jZA0

しばらくするとショボンが右膝をついてしまった。
そしてヒットポイントバーのメモリが一つ完全に消えた。

(・∀ ・)「おっ。そろそろー?」

(;´・ω・`)「……『けどさぁ』?」

(・∀ ・)「ん?」

(;´・ω・`)「さっき、『けどさぁ』って、言っていたから。
その、……続き……は?なに?」

(・∀ ・)「……」

片手剣を受け止めつつ、
自分を見下ろすマタンキの瞳をじっと見つめて語り掛けるショボン。

マタンキの表情から、笑みが消えた。

(・∀ ・)「…… …… ウゼエ」

(;´・ω・`)「え?」

(・∀ ・#)「         !!!」

何かを叫びながら器用に手首とひじの角度を変えて片手剣を振りぬくマタンキ。

剣先がショボンの右足太ももを切り裂いた。





.

639◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:26:25 ID:clYB1jZA0

16.


振り下ろされた棍が大地を穿ち、
土煙が上がった。

ζ(゚ー゚*ζ「ツンさん流石ですね」

ξ゚听)ξ「……まあね」

咄嗟に横に飛んでいたツンは既に立ち上がっており、
細剣を構えていた。

ζ(゚ー゚*ζ「気配とか声色とか変わってなかったはずなのになー」

棍を肩に担ぎ直しながらデレが呟く。

ξ゚听)ξ「これよ」

武器を持たない左手を上げ、
手の甲を見せるツン。

黒いレースの手袋が、陽光を反射させた。

ζ(゚ー゚*ζ「え?」

ξ゚听)ξ「これ、一応手甲。
手の甲には透明に限りなく近い、
薄いクリスタルの防具が付いてるの。
で、それをモララーに極限まで磨かせて、
鏡とまではいかないけど動きくらいは見られるようにしてあるの。
このレースも糸は糸でも鉄鋼で出来た糸だしね。
だからあんたが棍を振り上げたのが見えたのよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

悲し気に説明するツンを無表情に見つめるデレ。

しかしすぐに自分の表情に気付き、
笑みを見せた。

.

640◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:27:40 ID:clYB1jZA0

ζ(゚ー゚*ζ「流石ツンさんですね!
でも、避けられた理由は分かっても、
私が攻撃してきたことに驚いてないみたいでちょっとショックです。
もしかして、分かってました?」

ξ゚听)ξ「……あんたが私を本当は嫌いだってことはね」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、それは誤解ですよ。
私、ツンさんの事嫌いじゃないです。
っていうか、『好き』かな」

可愛らしく、
あくまでも『可愛らしく』小首をかしげ、
微笑むデレ。

ξ゚听)ξ「好きなのに、殺そうとしたわけ?」

ζ(゚ー゚*ζ「たとえ今の一撃が当たってたとしても、
死んだりしませんよー」

ξ゚听)ξ「……死ぬかもしれない」

ζ(゚ー゚*ζ「無理です無理ですー。
この棍のポテンシャルと私のレベルで最高の攻撃をしたとしても、
完全装備のツンさんだったらいいとこ黄色くらいまで。
頑張って半分削れるかな。
赤にすらなりませんよ」

ξ゚听)ξ「私の事、良く調べてるのね」

ζ(゚ー゚*ζ「はい!
だって好きな人のことは知りたいですから!」

ξ゚听)ξ「はいはい」

ζ(゚ー゚*ζ「あー。
信じてくれないですね」

ξ゚听)ξ「信じろって方が無理でしょ」

.

641◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:29:20 ID:clYB1jZA0

ζ(゚ー゚*ζ「酷いなー。
こんなに好きなのに」

ξ゚听)ξ「殺したいくらい好き?」

ζ(゚ー゚*ζ「あー。うー。
それはちょっと、違うかな」

ξ゚听)ξ「『殺したい』を否定して欲しいんだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「えへへ」

長い棍を器用に振り回してからツンに向かって構えるデレ。

ξ゚听)ξ「……やるんだ」

ζ(゚ー゚*ζ「物は試しです」

ξ゚听)ξ「あ、そう」

細剣を握りなおし、
剣を持った右手と共に右足を少し前に出して構えるツン。

ζ(゚ー゚*ζ「その細剣で私の棍に耐えられるんですか?」

ξ゚听)ξ「『物は試し』でしょ」

ζ(゚ー゚*ζ「ふふふ」

笑顔のまま棍を突き出すデレ。
それをほんの少しの動作で躱し、
そのまま棍を沿うように前に進もうとするツン。

ζ(゚ー゚*ζ

しかしデレの笑顔と棍を持つ手首の動きを見て真横に飛んだ。

ζ(゚ー゚*ζ!

.

642◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:30:29 ID:clYB1jZA0

そのすぐ後に風が巻き起こり、
ツンが居た場所に大地から砂や小石が巻き上がっていた。

ζ(゚ー゚*ζ「……」

ξ゚听)ξ「ちゃんと使えるんだ。風塵」

デレが数度瞼を閉じ、気持ちを落ち着かせてからニッコリとほほ笑む。

ζ(゚ー゚*ζ「よく気付きましたね」

ξ゚听)ξ「バレバレに手首捻ってたから。
もう少しやり方考えた方が良いわよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……よくこの棍が『風塵棍』だと気付いたなって思ったんですけど」

ξ゚听)ξ「あ、そっち。
まあね。
デコってあっても基本の形は変わってないし、
分かっている人間なら全員気付くんじゃない?」

ζ(゚ー゚*ζ「あまり気付かないと思いますよ。
出来るだけ特徴を消すようにデコりましたから」

ξ゚听)ξ「あらそう?」

ζ(゚ー゚*ζ「はい……。
……『流石ツンさん』ですね」

ξ#゚听)ξ「……」

ζ(゚ー゚*ζ「?どうしました?」

あからさまに不愉快そうな顔をしたツンにデレが困惑気に声をかけた。

ξ゚听)ξ「ああごめん。
ちょっと発音にムカついた。
次にその言葉を言う時はイントネーションに気を付けてもらえる?」

ζ(゚ー゚*ζ「え、あ、はい」

.

643◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:32:48 ID:clYB1jZA0

その会話は友人同士の会話としても成り立つものだったが、
二人はもちろん武器を構えており、
一触即発の雰囲気を漂わせている。

ζ(゚ー゚*ζ「でもまあ、分かっているならもっとあからさまに使ってもいいかな」

ξ゚听)ξ「……」

デレが微笑みながら棍棒を突き出す。

ツンはそれをすべて避けきるが、
ランダムに発動される『風塵』の力により巻き起こる風と、
その風によって巻き上げられる砂埃や小石をすべて避けきることは不可能だった。

ξ゚听)ξ「……やるわね」

HPバーのドットを一つ減らしたツンが感心すると、
頭の上のカーソルをオレンジに変えたデレがニッコリとほほ笑んだ。

ζ(゚ー゚*ζ「ツンさんに認められてうれしいです」

ξ゚听)ξ「あ、そ」

ζ(゚ー゚*ζ「でもこれだけの攻撃を受けてもドット一つなんて、
『流石ツン』さんですね」

ξ#゚听)ξ「だーかーら」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、えっと……。
さすが、ツンさんですね」

ξ゚听)ξ「はいはい。
褒められても嬉しくないわよ。
攻撃を止めてくれた方が嬉しい」

ζ(゚ー゚*ζ

ξ゚听)ξ「無理みたいね」

.
644◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:34:02 ID:clYB1jZA0

ζ(゚ー゚*ζ「はい」

ξ゚听)ξ「でも、その攻撃じゃあこれ以上は効かないわよ?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうですか?」

棍を突き出すデレ。

ツンはその直線状から体をずらしつつ、
螺旋を描こうとする棍を細剣で攻撃し、
ほんの少しだけ軌道をずらした。

ζ(゚ー゚*ζ!

連続で棍を突き出すデレ。

しかし今度は一度も風は吹かなかった。

ζ(゚ー゚*ζ「……!」

動揺を隠すことが出来ないデレ。
そんなデレを悲しげに見つめるツン。

ζ(゚ー゚*ζ「どう……して」

ξ゚听)ξ「『風塵棍』が『風塵』を起こす条件は、
『直線に突き出された棍が1回転』すること。
だから、回転してるときに横から攻撃して『直線』にならないようにすれば、
発動しないのよ」

ζ(゚ー゚*ζ「だからってそんなこと出来るわけがない!」

ξ゚听)ξ「私は出来る。それだけのことよ」

ζ(゚ー゚*ζ「なに……それ……」

.

645◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:36:17 ID:clYB1jZA0

ξ゚听)ξ「私は、それが出来るような訓練をしてきたの。
ちょうど身近に馬鹿みたいなスピードで全方向から攻撃できるやつとか、
人の死角から攻撃したりするやつとか、
訳の分からない角度から武器を飛ばしてくるやつとか、
武術の師範クラスとかが居たから、
総動員して相手をしてもらって練習しているの」

ζ(゚ー゚*ζ「なによ……それ……」

ξ゚听)ξ「あとは、あんたの『棍のレベル』がそれほどじゃないから出来たのよ」

ζ(゚ー゚*ζ!

ξ゚听)ξ「私をあんたの棍レベルで殺そうだなんて、
冗談にもほどがあるわよ。
本当に私を殺したいなら、
あんたの全部で、
あんたの『本当』で、
全力で来なさい」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

ξ゚听)ξ「そしてあんたの全力を、私は叩きつぶしてあげる」

ζ( ー *ζ「……ウルサイ」

ξ゚听)ξ「ん?」

目を伏せたデレが小さく呟く。

.

646◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:38:48 ID:clYB1jZA0

ζ( ー *ζ「アンタワタシノコトアンタアンタッテイウケドワタシアンタノコトアンタッテヨンデナインダカラアンタモワタシノコトアンタッテヨバナイデヨ」

ξ゚听)ξ「え?なに?」

ζ(゚ー゚*ζ「何でもないですー。
そう、じゃ、見せてあげますね。
私の本当を」

顔を上げるデレ。
その表情に笑みは無い。

ζ(゚ー゚*ζ「これでもそれなりに棍のレベルも上げてあったんだけどな」

デコレーションしてある『風塵棍』を放り投げるデレ。
そして手首を二回振った。

『クイックチェンジ』
武器を瞬時にストレージから出すスキル。
基本的には武器が破壊されたり落とした際に、
ストレージから今持っていた武器と同じ種類の武器を瞬時に取り出すスキルなのだが、
設定によって何の武器を取り出すかを決めておくことも出来る。

ζ(゚ー゚*ζ「あんまりこれ、可愛くないから嫌なんですけど」

デレはクイックチェンジを使い、
自分の持つ一番の武器を取り出した。

ξ゚听)ξ「それがあんたの本当の武器なのね」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

新たな武器を実体化させたデレが、ツンに向かって構えた。





.

647◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:42:05 ID:clYB1jZA0

17.




少女が一人いた。

街とフィールドダンジョンを繋ぐ境界の道で、
土の道に引かれた線をまたぎ、
時に前のめりになり、
ある時は後ろに体重移動しながら、
なにかしら両手を動かしていた。

正確には彼女のそばには一組の男女がおり彼女を見守っているのだが、
その佇まいは『独り』を連想させる。

彼女は、街を背に、目の前の森を見つめていた。

(男)「……アスナ、結局どうすればいいんだ?」

(アスナ)「アルゴさんには、彼女の護衛を頼むってだけ。
キリト君は何か聞いてないの?」

(キリト)「おれは今日一日付き合ってくれって言われて、
理由はさっき聞いた」

(アスナ)「そうなんだ」

(キリト)「護衛ってさぁ。
あの子、さっきからずっとここにいるだけだよな」

(アスナ)「それはそうだけど……。
あ、もしかしてつまらなくなってきてるでしょ」

(キリト)「い、いや、そんなことは……ある……かな」

(アスナ)「まったくもう」

.

648◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:43:29 ID:clYB1jZA0

一組の男女のうち、一人は血盟騎士団副団長の『アスナ』である。
先程情報屋アルゴと共にショボンと会話した彼女は、
そのアルゴに連れられて少女の住む店に行き彼女と合流した後、
三人で今いる場所にやってきた。
そして今横にいる男と合流した。

男の名は『キリト』
ソロでありながら攻略組の中核を担うプレイヤーである。
その姿は常に黒を基調としているため、
一部の攻略組のメンバーからは『ブラッキー(黒尽くめ)』などと呼ばれる事もあった。
一見馬鹿にしたようなその渾名だが、
彼のもう一つの仇名である『ビーター』に比べれば、
遥かに良い名前だと言えるだろう。

(アスナ)「まったく……」

(キリト)「そうは言ってもさぁ」

血盟騎士団のカラーである白と赤を基調とした戦闘服を着た栗色の髪のアスナと、
全身黒で決めた黒髪のキリト。
見るからに対照的な二人だった。

(少女)「お二人とも、ありがとうございます。
ですが、ご用事がありましたら離れていただいても結構ですので」

二人がコソコソと話していると、
少女が二人に向かってお辞儀をした。

(アスナ)「ち、違うのヘリカルちゃん。
大丈夫だよ。ずっとそばにいるから安心して」

*(‘‘)*「ですが、お二人にも大事なご用事が」

(アスナ)「今日はヘリカルちゃんを守ることが私達にとって大事なこと。
この人もそうだから、なんか言ってても気にしなくていいからね」

(キリト)「ああ、気にしないでくれ。
今日は君を守るよう頼まれているからな。
気にしないでいいよ」

.

649◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:45:08 ID:clYB1jZA0

*(‘‘)*「……ありがとう、ございます」

もう一度お辞儀をするヘリカル。

そして再び街を背に森を見つめた。

(キリト)「……ふむ」

(アスナ)「小さい女の子のお尻をまじまじと見るのは止めた方が良いわよ」

(キリト)「お、お尻なんか見てないぞ!」

(アスナ)「どうだか。
それじゃあ何をまじまじと見ているのよ」

(キリト)「あー。いや、ウインドウを出して何を見ているのかなって」

(アスナ)「不可視モードにしてある他人のウインドウを見られるわけないでしょ?」

(キリト)「ああ、いや、まあ、そうなんだけどさ」

(アスナ)「……え、ちょっともしかしてそんなスキルあるの?」

(キリト)「ないないないない。
多分だけど、無いと思う」

(アスナ)「じゃあ見たって仕方ないじゃない」

(キリト)「うん……まぁ、そうなんだけど……」

じっとヘリカルを見つめるキリト。

アスナは数歩後ろに下がり、
キリトの視線の動きとヘリカルの手の動きを同時に観察した。

(アスナ)「え、キリト君、もしかして手の動きで推理してるとか?」

(キリト)「ばれたか」

.

650◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:46:43 ID:clYB1jZA0

(アスナ)「……」

いたずらっ子のように笑うキリトを呆然と見つめるアスナ。

(アスナ)「そんなこと、出来るの?」

(キリト)「んー。
多分アイテムの移動をしているんだと思うけど」

(アスナ)「……気持ちわる」

(キリト)「え?」

(アスナ)「いや、手の動きでそんなことが分かるとか、ちょっと引く」

(キリト)「いやいやいやいや、多分だから、多分」

(アスナ)「いや、無理」

(キリト)「いやいや無理とかじゃなくって、多分だしさ。
それに多分違うから」

(アスナ)「まだお尻見てたとかの方が健全だったかも。
ヘリカルちゃん可愛いし」

(キリト)「いやお尻見てるよりはいいだろ」

(アスナ)「えー」

*(‘‘)*「あの……」

すっかり二人の世界を作って言い合いをしていたキリトとアスナに、
ヘリカルが戸惑い気味に声をかけた。

(アスナ)「あ、な、なに?ヘリカルちゃん」

*(*‘‘)*「いえ、その、お尻がどうとか聞こえたので」

視線は前を向いたまま、
ほんの少しだけ頬を赤らめたヘリカル。

.

651◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:49:01 ID:clYB1jZA0

(アスナ)「ああ、ごめんね。
こっちの変態がヘリカルちゃんのお尻をじっと見つめていたからちょっと注意してたの。
大丈夫。安心して。変な真似はさせないから。
あと、変態だけど実力はあるから護衛はこのままさせてね」

(キリト)「冤罪だ!
お尻なんて見ていない!
ウインドウを操作する手の動きがちょっと特殊な気がしたから見ていただけだ!
し、信じてくれるよな!」

*(‘‘)*「ああ、そうだったんですか」

(アスナ)「ホント、ごめんね。
もうそういう目で見させないから安心してね」

(キリト)「き、君は信じてくれるよな!」

*(‘‘)*「大丈夫ですよ。
隣にそんな綺麗な女性が居るのに私の事をそんな目で見る暇があるとは思いませんから」

(*アスナ)「えっ」

(キリト)「ま、まあ、信じてもらえるのは嬉しいけど、
その理由だとな……」

*(‘‘)*「ショボンさんから、
もし何をやっているか聞かれたらお答えしていいと返答をもらっています。
説明しますか?」

(キリト)「『ショボンさん』?」

(アスナ)「今回の調査を引き受けてくれたギルドのギルマスよ。
キリト君も聞いたことあるでしょ?
中層のトップギルド、『V.I.P』」

(キリト)「ああ。そっか。そのギルマスか。
確か『バーボンハウス』って店を経営してるギルドだよな。
何回か行ったことある。
かなりうまかった」

.

652◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:52:46 ID:clYB1jZA0

(アスナ)「へえ。そうなんだ。
うちのメンバー達も行ってるみたいだけど、
そんなに美味しいんだ」

(キリト)「ちょっと割高感はあるけど
その分味は良いし量も満足した」

(アスナ)「へー。
ふーん。
キリト君も一人でそういう店行くんだね」

(キリト)「初めて行ったときはその時ダンジョンで助けたパーティーに、
お礼だって連れていかれたんだよ。
それからは一人だな。
でも後で屋台の店だったのを知って、ちょっと納得した。
ダンジョンに行くときにお世話になってた店だったからな。
サンドイッチも美味しかった」

(アスナ)「なんだ。
そっか。うん。そうなんだ」

(キリト)「ん?どうかしたか?」

(アスナ)「ううん。何でもない」

*(‘‘)*「あの……」

(アスナ)「あ、ご、ごめんね。
でも、良いの?
ギルド特有のとかじゃ」

.

653◆dKWWLKB7io :2017/04/16(日) 23:53:42 ID:clYB1jZA0

*(‘‘)*「ショボンさんが言うには、
システム的にできるからやってるだけなので、
別に知られるのは問題ないそうです。
それに、知られたからと言って他の人が出来るかどうか、
やる意味があるかどうかは別の話だとも」

(キリト)「誰でもできるわけじゃないってことか?」

*(‘‘)*「そう……だと思います。
でも、もし活用出来るなら役立てて欲しいとも言っていました」

(アスナ)「そうなんだ。じゃあ教えてもらえる?」

*(‘‘)*「はい。
私がやっているのは、武器の移動です」

(キリト)「武器の移動?」

*(‘‘)*「はい」

ニッコリとほほ笑んでから自分が開いているウインドウを可視モードに、
自分以外のプレイヤーにも見られるように変更した。





.
711◆dKWWLKB7io :2017/04/23(日) 23:33:55 ID:WbIL6lxc0

18.




ブーン達3人、
いや、シラネーヨとブーム、そしてブーンと巨大蟷螂との戦いは、
順調とは言えないものの、
HPを一列消すことに成功した。

蟷螂「ギャリャアアアアアアアアアア!」

雄叫びをあげて威嚇する蟷螂。
同時に周囲に放たれる衝撃波。
HPは削られないが当たると硬直させられるため、
人は距離をとっている。

(;´ー`)「なんとなく……前より強い気がするだーよ」

|; ^o^ |「はい。この前のようにいけてないです」

(;^ω^)「やっぱり僕ももっと参加するお!」

|; ^o^ |「それはダメです。
三本目はブーンさんにお任せしてしまうわけですから、
そこまで負担させるわけにはいきません」

(;^ω^)「でも二本目はさっきより強くなるお!」

(;´ー`)「あいつが本気を出した三本目を一人でやらしちまうんだから、
ここまではおれ達に活躍させろって言ってるだーよ!」

( ^ω^)!

|; ^o^ |「一緒に戦えて、
皆さんの役に立てることが嬉しいんです。
だから、頑張らせてください」

( ´ー`)「とりあえず見てるだーよ!」

.

712◆dKWWLKB7io :2017/04/23(日) 23:35:58 ID:WbIL6lxc0

衝撃波が消える絶妙なタイミングで駆けだすシラネーヨ。

( ^ω^)「!右じゃなくて左だお!」

大きな鎌の付いた左手を振り上げている蟷螂の懐に飛び込もうとしたシラネーヨ。
しかしブーンの言葉で目標を変え、
すれ違い様に曲刀で攻撃するにとどめた。

蟷螂が下からすくい上げる様に振るった右手の攻撃が空振りに終わる。

( ´ー`)!

|  ^o^ |!

( ^ω^)「良かったお!」

蟷螂の後方に回り込んだシラネーヨがそのまま剣技を放つ。

蟷螂「ギュキャギャアアアアア!」

悲鳴を上げて振り返ろうとする蟷螂。
その無防備な背後にブームが駆け寄ろうとする。

( ^ω^)「しっぽが左から右上に跳ねるお!」

|  ^o^ |「はい!」

ブーンの叫びの最後にブームの返事が重なり、
ブームは狙いすましたようにその尾を攻撃した。

身体を硬直させる蟷螂。

その隙にシラネーヨはブーンのそばに駆け寄り、
ブームは剣技を使わず攻撃を続けた。

( ´ー`)「おい!今のはいったいなんだーよ!」

.

713◆dKWWLKB7io :2017/04/23(日) 23:39:22 ID:WbIL6lxc0

( ^ω^)「……時々、エンジェルホライズンを使う時に、
頭が冴えて敵の大きな攻撃が『分かる』ことがあるんだお。
今日は実際に攻撃はしてないけど、
ずっとそれと同じ気分でいたから、
なんとなく分かったんだお」

( ´ー`)「……ショボンといいお前といい、
なんなんだーよ」

|  ^o^ |「シラネーヨ!
スイッチいきますよ!
準備を!」

( ´ー`)「分かっただーよ!」

戦うブームに近寄るシラネーヨ。

( ^ω^)「(きっとこれも僕が使っているナーヴギアのおかげだおね。
ショボンほどじゃなくても、
足を使っていない時にも神経を集中すれば見えるんだお。
少し頭が重い気もするけど、
まだまだ大丈夫だお)」

|  ^o^ |「スイッチ!」

ブームの放った重単発剣技が蟷螂をノックバックさせた。

( ´ー`)「ふん!」

突進したシラネーヨの曲刀が縦横無尽に蟷螂を傷付ける。

蟷螂「ギュリョオオオオオオオオアアアアアアアア!」

二本目のHPバーが、目に見えて大きく減った。




巨大蟷螂の二本目のHPバーを削るのは、
順調に進んだと言って良いだろう。

もちろんシラネーヨとブームの攻撃が全てなのだが、
要所要所でブーンが叫ぶ助言が流れを決めたと言っても過言ではなかった。

.

714◆dKWWLKB7io :2017/04/23(日) 23:41:43 ID:WbIL6lxc0

( ´ー`)「ヨシ!」

|  ^o^ |「二本目消去しました!」

(;^ω^)「次は僕の番だお!」

巨大蟷螂から離れる三人。

二本目のHPバーを消去させられた蟷螂は体をのけぞらせ、
上を見ながら体を震わせて雄叫びをあげた。

蟷螂「ギャギャリャリャアアアアアアアアアア!」

音波に乗せた衝撃。
先程よりも広い範囲に影響を与えるそれから逃れるために、
三人は動いていたのだ。

( ´ー`)「ここまで来れば影響はないとはいえ……」

|  ^o^ |「この声というか音は、
気分を滅入らせてくれますね」

(;^ω^)「おっおっお」

蟷螂の雄叫びは最後にはガラスを釘で傷付けるような『音』に変化し、
三人の眉間に皺を与えた。

三人はもちろんただ見ているだけではなく、
次の戦闘に向けて準備を始めている。

( ´ー`)「お、出したらちゃんと補充されただーよ」

ウインドウを開いている三人。
そして三人とも、小脇に十本程度の片手剣を抱えた。

|  ^o^ |「ブーンさん」

(;^ω^)「お?なんだお?」

.

715◆dKWWLKB7io :2017/04/23(日) 23:43:41 ID:WbIL6lxc0

|  ^o^ |「大丈夫ですか?」

(;^ω^)「お?大丈夫だお?」

|  ^o^ |「そうですか?
それならよいのですが。
先程から少し口数が少なくなったのと、
表情が曇っているような気がしたので」

( ^ω^)「おっお。
流石にちょっと緊張しているだけだお」

|  ^o^ |「そうですか?
それならば良いのですが」

( ^ω^)「二人もよろしく頼むお」

自分の右斜め前にいるブームに笑いかけた後、
左側にいるシラネーヨに向かってサムズアップするブーン。

( ´ー`)「任せるだーよ」

|  ^o^ |「練習の成果、出してみせます」

真剣な顔でブーンに頷く二人。

( ^ω^)「さ、そろそろだお」

まだ雄叫びをあげている蟷螂は、体の一部を銀色に光らせていた。

|  ^o^ |「表面の金属化は30パーセント程度ですね。
防御能力は15パーセントほど上がっていると考えられます」

( ^ω^)「その分動きは遅くなるから問題ないお」

( ´ー`)「HPバーは一本目の倍以上。
ランダムでHPが変化するとはいえ、ちょっと伸びすぎだーよ」

.

716◆dKWWLKB7io :2017/04/23(日) 23:45:34 ID:WbIL6lxc0

( ^ω^)「でも想定内だお。
兄者が新しく準備してくれた武器もあるから、
それほど長くはならないはずだお」

両手で十数本の片手剣を纏めて持ったブーンが走り出す準備をする。

それを見た二人も同じ様に武器を持って走り出す準備をした。
ブーンとの違いはウインドウを出したままであるという事だろう。

( ^ω^)「…… …… 行くお」

走り出すブーン。
続いて走りだすシラネーヨとブーム。

衝撃波が消えた瞬間にエリア内に突入したブーンは持っていた剣を前方に、
蟷螂の頭の上に向かって放り投げた。

しかし蟷螂はそれに惑わされることなく自分に向かって突進しているブーンを見ていた。







.

717◆dKWWLKB7io :2017/04/23(日) 23:48:40 ID:WbIL6lxc0

19.




メンバーたちが戦っているフロアから10層以上下の層、
層の外れのフィールドエリアの更に外側にあるエリアで、
三人の男が立って会話をしていた。

(θ)「……今頃上はどうなってるんだろうな」

(Ω)「さあな」

(る)「……なあ」

(θ)「ん?」

(Ω)「なんだ?」

(る)「あんたたち、殺したことあるのか?」

(θ)「なんだよ突然」

(る)「いや、おれは、まだないから」

(Ω)「ビビってんのか?」

(#る)「び、びびってなんかねえよ!」

(θ)「さっきから震えてる」

(;る)「べ、別に震えてなんかねえよ!」

(θ)「別にいいさ。
俺らの仕事は、
連絡が来るまでこいつらを見張ってるってことだ」

片手剣や槍を持った男達が視線を向けた先。
そこにはエリアの端の木にロープで後ろ手に拘束された一組の男女が居た。

.

718◆dKWWLKB7io :2017/04/23(日) 23:50:29 ID:WbIL6lxc0

(*‘ω‘ *)「こんな真似は止めるっぽ!」

(;><)「早くこれを解いてほしいんです!」

ビロードとぽっぽである。

(θ)「うるさい」

片手剣の先がビロードの肩先をつつく。

(;><)!

(θ)「人質は一人でも良いんだ。
死にたくなければ静かにしているんだな」

(*‘ω‘ *;)「っ……」

(;><)「僕は良いけどぽっぽちゃんとワカッテマス君は自由にしてほしいんです!」

(Ω)「はあ?」

(;><)「ワカッテマス君はどこに囚われているんですか!」

(Ω)「何言ってんだこいつ」

(る)「あいつは上で人殺しの真っ最中だよ」

(;><)「そんなの嘘なんです!」

(Ω)「うわ。イラつく奴」

(;><)「ワカッテマス君は確かにドエスですが、
根は優しくていい人なんです!
人殺しなんてできるわけないんです!
だから嘘なんです!

(Ω)「……マジでイラつく」

眉間に皺をよせた男が槍を逆手に持ち、
ビロードの足に向けて振り下ろした。

.

719◆dKWWLKB7io :2017/04/23(日) 23:51:36 ID:WbIL6lxc0

(;><)「はうっ!」

(*‘ω‘ *;)「ビロード!
し、静かにするから止めるっぽ!」

ビロードのHPバーが2ドット消え、
男の頭の上のカーソルがオレンジに変わった。

(Ω)「女の方が聞き分けが良いな」

槍を引き抜く男。

(Ω)「だが、もう遅い」

ニヤリと笑い、今度はビロードの眉間に狙いを向けた。

(;><)!

(*‘ω‘ *;)「やめるっぽ!」

(θ)「止めておけ」

槍が振り下ろされる前に、
片手剣の男が槍の男の肩を軽く叩いた。

(Ω)「あ?なんでだよ。
ロマネスクも最悪一人残しておけばいいって言ってただろ」

(θ)「客が来た」

片手剣の男の視線の先に、三又の矛を持った長身の男がいた。







.

720◆dKWWLKB7io :2017/04/23(日) 23:53:40 ID:WbIL6lxc0

20.




ミ,,゚Д゚彡「真実は常に一つだから!」

十数回目の決め言葉に、ワカッテマスの眉間には困惑の皺が浮かんだ。

(;<●><●>)「あの、ですから、何が真実だと?」

ミ,,゚Д゚彡「ひ、ひとつだから!」

( <●><●>)「いやあの、ですからですね」

ミ,,゚Д゚彡「フサの言いたいことは分かっているはずだから」

(;<●><●>)「え?」

ミ,,゚Д゚彡「フサがいまさら言わなくても、
ワカッテマス君はわかってますから!」

(;<●><●>)「イやそんなドヤ顔でそんなことを言われても」

ミ,,゚Д゚彡「フサがいまさら言わなくても、
ワカッテマス君はわかってますから!」

(;<●><●>)?

ミ,,゚Д゚彡「フサがいまさら言わなくても、
ワカッテマス君はわかってますから!」

(;<●><●>)「??」

ミ,,゚Д゚彡「フサがいまさら言わなくても、
ワカッテマス君はわかってますから!!」

(;<●><●>)「……な、なんだってー」

.

721◆dKWWLKB7io :2017/04/23(日) 23:55:32 ID:WbIL6lxc0

ミ,,゚Д゚,,彡

(;<●><●>)「いや、ですからドヤ顔でこっち見るの止めてください。
っていうかフサギコさんそういうキャラでしたか?」

ミ,,゚Д゚,,彡

( <●><●>)「ですからもう!」

一瞬周囲を伺ってから斧を振り上げるワカッテマス。
そして腰を落として走り出す準備をした。

ミ,,゚Д゚彡「そこだから!」

(;<●><●>)「!な、なにがですか!」

ミ,,゚Д゚彡「普通なら剣技が発動するから!」

(;<●><●>)!

ミ,,゚Д゚彡「でも、今はしていないし、
兆候も見えないから」

( <●><●>)「それは私がそういう風に意識しているからであって」

ミ,,゚Д゚彡「それも出来るけど、でも今はそれじゃないから!」

( <●><●>)「何を根拠に」

ミ,,゚Д゚彡「今の流れから繰り出すことのできる剣技は、
『ワールド・シャウト』と『トルネード・スマッシュ』。
トルネードの方は初手を外しても連撃できる片手斧の汎用技。
ワールドの方は単発だけど重い一発」

( <●><●>)!

ミ,,゚Д゚彡「両方とも初期で覚えることが出来るし使い勝手も良いから鍛えてあるはず。
つまり、発動後の硬直時間は最小限の1・2秒まで減らしてあるはず。
今この状況で、フサを本当に殺すつもりなら発動しない方が不自然だから」

.

722◆dKWWLKB7io :2017/04/23(日) 23:57:43 ID:WbIL6lxc0

(;<●><●>)「そ、それは、その。
じわじわと殺すために」

ミ,,゚Д゚彡「レベルも実力も上のフサに対してそれはあり得ないから」

(;<●><●>)!

ミ,,゚Д゚彡「悪いけど、
真正面から正々堂々と戦って君に負けるほど、
フサは弱くないから」

(;<●><●>)「……何故そんな……。
私は実力を隠して貴方たちに近付いていただけかもしれませんよ」

ミ,,゚Д゚彡「『相手の力を見極めろ』」

( <●><●>)!

ミ,,゚Д゚彡「『自分の力を過信しない事』
『自分の力を過小評価しない事』
ショボンから言われているから」

( <●><●>)「そんなこと……」

ミ,,゚Д゚彡「ギルドVIPは、
依頼を受けて色んな人と一緒にクエストをやったり、
初級から中級クラスで強くなりたい人達のサポートをしてきたから。
そのなかで、『レベルやスキル強化による強さ』を学び、
『経験して強くなった人の戦い方』を見て勉強してきたから。
ショボンや兄者のように歩き方や構え方から推測することは出来なくても、
戦いを見れば、武器をぶつけ合えば、
その人の強さを感じることはフサでも出来るから」

(;<●><●>)「貴方たちはいったい……」

ミ,,゚Д゚彡「きっと、攻略組の人達は経験からそれくらいできるから。
でもフサ達はショボンや兄者からいっぱい教えてもらって何とか出来てるから。
……ワカッテマス君」

(;<●><●>)「は、はい!」

.

723◆dKWWLKB7io :2017/04/24(月) 00:00:37 ID:YnYKni460

ミ,,゚Д゚彡「ワカッテマス君がビロード君やぽっぽちゃんより強いことを、
そしてそれを隠していることを、VIPの皆は知ってるから。
……なぜ隠しているのかも、多分わかっているから」

( <●><●>)!

ミ,,゚Д゚彡「……だから、本気でフサを殺すつもりなら、
フサが君に対して本気になっていない今、
剣技を使って出来るだけ削るのが正解だから」

( <●><●>)「……」

ミ,,゚Д゚彡「それをしないのか。
もしくは、『出来ない』のか」

( <●><●>)!

ミ,,゚Д゚彡「今ワカッテマス君が持っている武器は、
武器だけど武器じゃない。
確か12層のクエストでキーアイテムになる祭礼用の『斧』。
唯一御神木を切ることのできる、持ち出し可能なアイテムだから。
だからここまで持ってくることは出来るけど、
正確には『武器』じゃないから剣技は使えないから。
……それが、真実だから」

( <●><●>)「……何故私がそんなことをしなければいけないのですか」

ミ,,゚Д゚彡「フサに君を殺させる。
それが狙いだから。
ほとんど防御力の無い服と防具、攻撃力皆無の斧。
確か祭礼時は『無防備になる』のが習わしで、
その斧を持っている間はパラメーターアップアイテムや装備も力を無くしていたはずだから。
今のワカッテマス君は、自らのレベルの力しか防御力が無い状態のはずだから」

( <●><●>)「……」

ミ,,゚Д゚彡「そして君を殺してしまい、
呆然としたフサを後ろから攻撃して殺すのが本当の目的だから」

.
729◆dKWWLKB7io :2017/04/24(月) 00:41:52 ID:YnYKni460

( <●><●>)「……」

ミ,,゚Д゚彡「もうこんなことは止めるのが良いから!」

フサギコの言葉を受けて立ち尽くすワカッテマス。

ミ,,゚Д゚彡「ワカッテマス君……」

近寄ろうと一歩踏み出した時、
右から突進してきた者に反応して武器を構えたフサギコ。

しかし突進してきた者はフサギコに攻撃せずワカッテマスの横に移動した。

(<>)「仕方ない。
次の作戦だ」

ミ,,゚Д゚彡「……」

フルフェイスの鉄仮面を付けた男が、
ワカッテマスの横に立つ。

ミ,,゚Д゚彡「……」

刀を構えるフサギコ。

(<>)「おっと。
こいつがどうなっても良いのか?」

仮面の男がワカッテマスの首に片手剣を当てた。

ミ,,゚Д゚彡!

(<>)「俺もお前と戦えるほどじゃないが、
今のこいつの防御力なら一発で殺せるかもしれないぜ」

ミ#,,゚Д゚彡「……卑怯だから……」

(<>)「卑怯でもなんでも勝てればいいんだよ」
725◆dKWWLKB7io :2017/04/24(月) 00:03:16 ID:YnYKni460

仮面のせいで表情は見えないが、
声の調子から笑っているように聞こえた。

(<>)「さてどうするよ。正義の武士さん」

ミ#,,゚Д゚彡「すぐにワカッテマス君を開放するのが良いから」

(<>)「かー。自分の今の状況が分かってないのかよ」

ミ#,,゚Д゚彡「フサは負けないし、ワカッテマス君も助けるから。
それが一番いいから」

(<>)「今お前が出来るのは、武器を捨てて両手を上げる事だけだ」

ワカッテマスの首に片手剣が食い込む。

ミ#,,゚Д゚彡!

(<>)「おら。早くしろ」

フサギコは刀を強く握りしめた。





.
743◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:17:11 ID:v9nbCCzI0

21.




チームBの戦いは、エクストの攻撃から始まった。

腹部と左右の後脚1本ずつを使って体を持ち上げ、
残り6本の脚と牙をもった口で威嚇する巨大蜘蛛。

怯むことなく突進したエクストが両手剣を振り上げて跳躍した。

<_プー゚)フ「とりゃああああああああああああああ」

巨大蜘蛛の左足、
向かって右側の一番手前の足に向かって振り下ろされる両手剣。

長い脚の中央ほどにある脚先から二つ目の関節で手の先を切り落とす。

<_プー゚)フ「よっしゃ!一発!」

(´・_ゝ・`)「続くぞ!」

一本一本はそれほど長くないが五本並んだ巨大蜘蛛のHPバー。
一本目を三分の一ほど減らされ、
部位欠損をおこした左脚を振り回し威嚇とも叫びともとれる雄叫びをあげる巨大蜘蛛。

右後方にバックステップで退避したエクストと入れ替わりに
デミタスが曲刀を振り上げて跳躍する。

(´・_ゝ・`)「とう!」

水色に輝いた曲刀が巨大蜘蛛の一番上の右脚、
その先から一つ目の関節を切り裂きつつ大きく弧を描き、
その胴体部も攻撃した。
そして手首を返して曲刀の向きを逆に向けると曲刀は赤く輝いた。

(´・_ゝ・`)「とりゃ!」

.

744◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:20:17 ID:v9nbCCzI0

曲刀用剣技『BLOODY・CRESCENT』
『血まみれの三日月』と名付けられたその技は、
弧を描きながら攻撃する曲刀用剣技『CRESCENT・LINE』からの派生技であり、
三日月を描くように軌跡を描いて敵を攻撃する。

(´・_ゝ・`)「こっちはどうだ!」

下から上に弧を描いて巨大蜘蛛を切り裂くデミタスの曲刀。

最終的な狙いは先程と同じ巨大蜘蛛の一番上の右脚。
今度は先端から二つ目の関節を切り裂いた。

巨大蜘蛛「ギーーーーーーーーー!!」

関節から切り落とされた右脚が落ちてポリゴンに変わる。

(´・_ゝ・`)「よし!」

着地したデミタスが硬直する横で巨大蜘蛛の左脚を攻撃するエクスト。
しかしそれは注目を自分に向けさせるための攻撃であった。

そして二人の背中、陣形の一番後ろからクーが指示を出す。

川 ゚ -゚)「欠損は右1が2!左1が2!
予想よりHPの減りが大きい、
ミルナとトソンは対兵隊蟻の準備!」

( ゚д゚ )「おう!」

(゚、゚トソン「はい!」

それぞれに巨大蜘蛛の左右を見ながら武器を構える二人。

その目の前で、空間が歪みポリゴンが現れた。

( ゚д゚ )「ポリゴン発生!」

(゚、゚トソン「こちらもです!」

.
745◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:22:03 ID:v9nbCCzI0

川 ゚ -゚)「実体化と同時に戦闘開始!
スイッチには私が入る!
クックルはまずはエクストとデミタスのサポートを!」

( ゚∋゚)))

頷き駆けだそうとするクックル。

その一歩目と同時に、
二つの黒い影がエリアの左右の茂みから飛び出した。





.

746◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:23:54 ID:v9nbCCzI0

22.




一方的に攻撃を繰り出すフィレンクト。
ただただ盾で防御をするシャキン。

攻撃は多彩であり、
通常の槍での突きに加えて硬直時間の短い剣技も放ち、
時には武器の特性を使った盾を避ける攻撃を放とうとする。

しかしシャキンは盾を上手く攻撃に合わせ、
ほとんどの攻撃を受け止め、無効化していた。

(;‘_L’)

(`・ω・´)

攻撃より、防御の方が大変であるということはない。
同じように、
防御より、攻撃の方が大変であるということもない。

だからこそ、二人の状況は異質だった。

(;‘_L’)「…… …… …… ハァ…… ハァ……」

(`・ω・´)「大丈夫か?疲れているようだが」

呼吸を乱し、肩で息をするフィレンクト。
それに対峙するシャキンは、まったく疲れているように見えない。

(;;‘_L’)「なん……なん……です…か……、
あな……たは……」

(`・ω・´)「ん?」

(;‘_L’)「何故……そんな……に、
疲れ……ていないん……です……か」

.

747◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:26:04 ID:v9nbCCzI0

呼吸が乱れ、会話をするのが辛そうなフィレンクト。
対してシャキンは疲れているようには全く見えない。

(`・ω・´)「鍛え方の違いと、
動きの無駄の少なさ。
あとは、自分に合った武器と防具だな」

(;‘_L’)「……」

(`・ω・´)「自分でも分かっているんだろ?
その武器が、自分には合ってないって」

(;‘_L’)「お見通し……ですか」

(`・ω・´)「どうする?ちょっと休むか?」

(;‘_L’)「バカな…ことを……」

槍を握りしめ、疲れた顔でニヤリと笑おうとしたフィレンクト。
しかしその試みは失敗におわり、疲れた笑みを見せただけだった。

(`・ω・´)「まあ休憩よりはさっさと諦めて降参してくれるとありがたいんだがな」

(;‘_L’)「ばかなことを……」

(`・ω・´)「バカっていう方がバカなんですー」

(;‘_L’)「子供ですか!」

水色に輝く槍が弧を描くようにシャキンを狙う。

しかし雑作もなく盾で弾くシャキン。

(`・ω・´)「子供だよ?
本気でゲームするくらいにはな。
今おれは、本気で遊んでいるんだ」

(;‘_L’)「…… ……」

.

748◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:29:48 ID:v9nbCCzI0

硬直が解けたフィレンクトが口を開く。

(;‘_L’)「これは、ゲームですが、遊びではありません」

(`・ω・´)「さっきも言っただろ?
ゲームなんだから遊びだって」

(;‘_L’)「命を懸けた遊びなど、
あってはならない」

(`・ω・´)「なんだ。
分かってるじゃないか。
だから、命なんてかけちゃいけないんだ」

(;‘_L’)「ですが!
ここで死ねば現実世界で死んでしまう!
命がかかっている以上!」

(#`・ω・´)「なら命を賭けなくても良いようにすればいい!」

声を荒げたフィレンクト。
それを超える、まさに『怒声』をあげたシャキン。

(;‘_L’)!

(#`・ω・´)「なにが『殺人ギルド』だ!
なにが『攻略組』だ!
勝手に命を懸けて!
人の命を軽々し弄ぶ馬鹿どもも!
自分の命を軽んじているあほ共も!
おれにしてみりゃ大きな違いはない!」

(;‘_L’)「な、なにを言って」

(`・ω・´)「ああ、悪い。
ちょっと話がそれたな。
前からちょっと思うところがあるからつい。
っていうか、本当に命が大事なら、
なんで『殺人ギルド』なんかに参加してるんだ?
フィレっちは」

.

749◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:32:56 ID:v9nbCCzI0

(;‘_L’)「それは……。
貴方には、関係のないことです」

(`・ω・´)「ま、今度ゆっくり聞かせてくれよ」

(;‘_L’)「……今度、などありません」

武器を構え直すフィレンクト。

(‘_L’)「今ここで、私かあなたのどちらかは死ぬのですから」

(`・ω・´)「なんだよ。まだ諦めてないのか」

(‘_L’)「……諦めるわけには、いかないのです」

槍を持って突進するフィレンクト。

その動きに合わせて盾を構えるシャキン。

槍と盾が鋭い音を響かせる瞬間、
黒い影が飛び込んだ。







.

750◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:34:34 ID:v9nbCCzI0

23.






ヒッキーの片手剣が空間を切り裂くような鋭さをもってドクオを襲う。

('A`)「っくっ」

剣の勢いに負けないように、
相手を傷付けないように弾き返すドクオ。

戦闘に対する能力は拮抗している二人だが、
こういった『上手さ』はドクオに軍配が上がる。

(#-_-)「くそっくそっくそっ!」

('A`)「ま、対人戦闘においての質と量の差だな」

時に刃を重ねたまま滑らせるようにヒッキーの武器を流し、
時に先程と同じように弾き、
そしてある時は、互いの刃を重ねたまま、
至近距離に顔を突き合わせる二人。

('A`)「それだけ強ければ、
攻略組に行きたいとか思わなければ充分生きていけるだろう。
何故そこまでロマネスクに従う」

(#-_-)「うるさいうるさいうるさいうるさい!」

黄色く輝き始めた剣。

('A`;)「ちょっ!おい!」

慌てて離れるドクオ。

そのいなくなった空間を襲うヒッキーの片手剣。

.

751◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:36:25 ID:v9nbCCzI0

(#-_-)「ちっ」

ヒッキーの片手剣の剣先が、大地を穿ち土埃を巻き上げた。

('A`;)「やっっば。まじやっばっ」

唇を引きつらせた笑みを浮かべながらドクオが剣を構える。

('A`;)(ふつうゼロ距離で剣技発動させるかよ。
我を忘れさせるのは成功したみたいだけど、
この先はどのルートにするか……)

(-_-)「殺してやるよ!」

('A`)「うをっ」

土煙の中から突進してきたヒッキー。
剣技は使わず剣を振る。

ドクオはその攻撃を剣ではじくが、
闇雲だが早さと強さを兼ね備えているヒッキーの攻撃は、
ドクオから余裕を奪う。

('A`;)「ちょっ、ヒッキー、
落ち着け!」

それは経験からくる条件反射。

自分を襲うヒッキーの攻撃を弾いた瞬間、
思わずドクオは一歩踏み込み、
片手剣をヒッキーの開いた胴を横薙ぎに切り裂こうとした。

('A`;)!

自分の動きに戸惑いつつも、直前で剣を止めるドクオ。

次の瞬間、自分の右脚が切り落とされたのをドクオは見た。

('A`)!

.

752◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:38:05 ID:v9nbCCzI0

自分のHPが大幅に減ったのを視界の隅で確認しつつ、
左脚だけで後方に跳躍するドクオ。

着地はバランスを崩し転がるが、
膝から下を切り落とされた右脚も器用に使い、
右膝を地に付け、左脚を曲げた状態で体を起き上がらせた。

('A`)

そのままヒッキーを見るドクオ。

(-_-)「なんだ。もっと驚くかと思ったのにな」

こちらを見るヒッキーは感情を感じさせない。

('A`)「いや、充分驚いてる」

(-_-)「そう?ま、どうでもいいけど」

武器を手に、冷静にドクオを見ていた。

(-_-)「どう?格下だと馬鹿にしていた相手に足を切り落とされた気分は」

('A`)「格下だなんて思ったことは無い」

(-_-)「口ではなんとでも言える。
もしかしたら、ほんとうにそう思ってはいなかったのかもね。
でも、君は僕の事を対等には見ていなかった」

('A`)「そんなことは!」

(-_-)「口ではなんと言おうと、
今君の脚が切り落とされたことが事実だよ。
本当に僕を対等に見ていたのなら、
僕の剣が君の脚を切り落とすことは出来なかった」

('A`)「っ」

.

753◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:39:42 ID:v9nbCCzI0

(-_-)「もちろん。
僕がそう仕向けたってのもあるけど、
君がもともと僕の事を下に見ていたのは事実だよ」

('A`)「そんなことはない!」

(-_-)「対等に見ていれば、
あの剣を途中で止めるような真似はしなかった。
あれくらい、避ける事も止める事も出来る。
例えすこし切り裂かれたとしても、
致命傷になることは無い」

('A`;)!

(-_-)「そこに出来た隙を、
僕は狙わせてもらっただけだよ。
あと、腰から上に隙は無かったけど、
足元はがら空きだった。
それも僕を格下に見ていたから、だよね。
『こいつは足を狙うような知能は持ってない』って」

('A`;)「おれはそんなこと思ってない!」

(-_-)「結果が全てだよ。
君の脚が切り落とされたという」

ゆっくりと歩きだすヒッキー。

(-_-)「でもさ、ちょっと面白かったよ。
『おちつけっ』とか叫んじゃったりしてさ。
僕の演技力も捨てたもんじゃないのか、
君がバカなのかどっちなんだろう」

('A`)「おまえ……」

(-_-)「ロマネスクが言ってたんだ。
きっと君は僕の心を揺さぶろうとするだろうって。
だから、それに乗ってみせた」

.

754◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:42:14 ID:v9nbCCzI0

('A`)「多分あいつはお前のことなんて」

(-_-)「うん。わかってる。
ロマは僕の事を手下くらいにしか、
コマくらいにしか思ってないってことくらいは」

('A`)「なっ」

(-_-)「でも、手下の中でも一番使える奴なら、
少しは僕の事を見てくれると思うんだ」

ゆっくりと歩いていたヒッキーが突然走り、
後ろ手に回復結晶を使おうとうしていたドクオの手首を切り裂いた。

('A`)!

部位欠損は起こさなかったが、
結晶は手からこぼれ落ちる。

(-_-)「ちゃんと君を殺すことが出来れば、
僕をちゃんと見てくれると思うんだよね。
……ちゃんと褒めてくれるって、思うんだ」

ドクオの正面に回り、その喉元に剣を突き付けるヒッキー。

('A`;)「何故そこまでロマネスクの事を……」

(-_-)「いつか会えたら、教えてあげるよ」

初めて満面の笑みを見せたヒッキー。

(-_-)「あの世でね」

ゆっくりと片手剣を前に進めた。







.

755◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:44:30 ID:v9nbCCzI0

24.




( ФωФ)「落ち着くのである!
何か思い違いをしているのである!」

ロマネスクの叫びにジョルジュが顔を上げる。

そこにはいつもの人の良い顔をしたロマネスクがいた。
  _
( ゚∀゚)「思い違いでも、勘違いでも良い!
でも、すくなくとも、今ここに飛ばされたのは事実だ!」

( ФωФ)「偶然である!
だいたい、自慢にはならないであるが、
吾輩たちにそのようなことをする知識は無いのである!」

微笑みの中に戸惑いを見せつつ話しかけるロマネスク。
  _
( ゚∀゚)「……夫婦貝」

( ФωФ)「……」
  _
( ゚∀゚)「移動トラップの時に孤立しないように、
二人で分けて持ってると80%の確率で同じ場所に飛ばされるアイテムだ」

握りしめていたビー玉を人差し指と親指でつまむジョルジュ。

そしてロマネスクに差し出す。
  _
( ゚∀゚)「『クラム・マーブル』
夫婦貝を使って作るビー玉の形をしたアイテム。
三人以上を同じ場所に飛ばすアイテムだ。
ただし、一つの夫婦貝から二つのビー玉を作った時は、
同じ場所に飛ばされる確率を98%まで上げる。
……店売りもしていない、
プレイヤーメイドオンリーのアイテムだよな。
そんなものを、宝箱から見つけるわけがない」

.

756◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:45:51 ID:v9nbCCzI0

( ФωФ)「それが!?
でも吾輩も使ったことがあるが、
ちゃんとタップすれば説明が出るはずである!」
  _
( ゚∀゚)「……もう、言ってくれよ」

ジョルジュが指に力を籠める。

( ФωФ)「……」

ビー玉の表面にヒビが入り、
小さな音をたてて割れた。

( ФωФ)「……」

中から白と赤のマーブル模様の不透明なビー玉が現れ、
ジョルジュの手を滑り転がり落ちた。
  _
( ゚∀゚)「強度の低い宝石や、
色が好みではない宝石にカバーを付けて色を変えたり、
強度を上げる技術。
これってさ、
おれの知り合いの細工師を中心に防具屋と裁縫師が確立した技術なんだよ。
確立した時点で匿名を条件に情報屋に資料を渡したから、
世間には知られてないけどよ。
今はまだ上に被せる鉱石の強度と色を付ける事しかできないけど、
将来的には防御力とか、攻撃力とか、
そういったプラスの効果も追加できないか時間を見つけては模索してる」

ジョルジュの視線が、まっすぐにロマネスクを射抜く。
  _
( ゚∀゚)「そんな細工までされたアイテムを、
人数分拾うなんてあるわけがない」

強い口調でロマネスクに話すジョルジュ。

そして大きく息を吸い、
  _
( ゚∀゚)「ロマネスク!」

友人だと思っていた男の名を叫んだ。

.

757◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:47:06 ID:v9nbCCzI0

( ФωФ)「そんな大きな声を出さなくとも、聞こえているのである」
  _
( ゚∀゚)「ロマネスク」

( ФωФ)「そうであるな。それくらいの音量でよいのである」

自分を見る男の顔を見るジョルジュ。
  _
( ゚∀゚)「ロマネスク……だよな」

( ФωФ)「何を言っているのである。
ああ、これならいいであるか?」

そういうと彼は、ゆっくりと人の良い微笑みを浮かべた。
  _
( ゚∀゚)「!」

( ФωФ)「だが、もうこんな顔をする意味はないであろう」

笑顔を解くロマネスク。

そこにある顔を、
少なくともジョルジュは知らなかった。

ジョルジュの背中に悪寒がはしる。
  _
( ゚∀゚)「……なんだよそれ」

( ФωФ)「人のよさそうな顔も疲れるのであるよ。
そっちのギルマスにも聞いてみればよいのである。
生きて会えたら……の話であるが」
  _
(#゚∀゚)「なっ」

( ФωФ)「いつからであるか?」
  _
(#゚∀゚)「は?」

.

758◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:48:31 ID:v9nbCCzI0

( ФωФ)「ショボン殿はいつから気付いていたのか、いや、
いつから怪しいと思っていたのか教えてほしいのである」
  _
( ゚∀゚)「『最初から』」

( ФωФ)「ふむ。
やはりマタンキがなんと言おうと最初はやめるべきであったな。
どうもあ奴は最初から……」
  _
( ゚∀゚)「違う、『最初から』。
会った瞬間からだってよ」

( ФωФ)「……まあ、口ではなんとも言えるであるからな」
  _
( ゚∀゚)「その日のうちに情報屋に依頼して情報集めて、
一回目の調査では特に問題なかったからって、
もっと金払って再々調査までさせてるくらいだから、
ホントだろ」

( ФωФ)「ほう……。
後学の為にどこでそう思ったのか聞いておきたいところである」
  _
( ゚∀゚)「『最初に行っておく。一緒にするな。レベルが違う』」

( ФωФ)「……それもショボン殿が言っていたのであるか?」
  _
( ゚∀゚)「こっちは別。
でも、そいつも怪しんで、自分で調べていたみたいだ」

( ФωФ)「そいつは殺したいところであるが、
VIPのメンバーであるか?」
  _
( ゚∀゚)「……教える必要なんて無いよな。
って、そいつはって、ショボンも狙っているんだろ?」

.

759◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:49:55 ID:v9nbCCzI0

( ФωФ)「吾輩は殺したくないのである。
片腕にしたいところであるからな。
だがマタンキがどうしてもというので仕方なくなのであるよ。
まったく。何故そこまでショボン殿を憎んでいるのか……。
いっそのこと、ショボン殿がマタンキを殺してくれたらスカウトするのであるが」
  _
( ゚∀゚)「……」

( ФωФ)「どうしたのであるか?」
  _
( ゚∀゚)「いや、なんでもない」

首を横に何回か振った後、
両手剣を構えるジョルジュ。
  _
( ゚∀゚)「俺を殺すんだろ?」

ロマネスクは口の端を少しだけ釣り上げて笑うと、
ウインドウを呼び出し、剣をしまった。

( ФωФ)「楽しませてほしいのである」

そして鎗を取り出した。
  _
( ゚∀゚)「……それは……」

( ФωФ)「もともと吾輩は槍使いなのであるよ。
一部の者以外の前では剣を使っていたし、
レベルもそこそこ上げてあるが、
メインはこちらなのである」

掴んだ鎗を両手でくるくると器用に回してから構える。

( ФωФ)「『SILENT・SPEAR』
音もたてずに獲物を狩る鎗なのである」
  _
( ゚∀゚)「『獲物を狩る』ねぇ……。
『命を刈る』の方が近いんじゃないのか?
即死スキルを持つことが判明している武器だよな。それ」

.

760◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:51:06 ID:v9nbCCzI0

( ФωФ)「ほお。
知っているのであるか。
ショボン殿の教育は素晴らしいものであるな。
ますます片腕としてほしいのである」
  _
( ゚∀゚)「器が違うから無理だと思うぞ」

( ФωФ)「うん?」
  _
( ゚∀゚)「あんたとショボンじゃ、
人としての器が違うから無理だ」

( ФωФ)「ふっ。
何も知らない小僧が何を知ったようなことを言うかと思えば。
ショボン殿もこの世界の事を何でも知っていると思っている、
思いあがった小僧であることには変わりないのである。
吾輩のもとに来てやっと一人前になるというもの」
  _
(;゚∀゚)「ホントにショボンの事をそう思っているんだとしたら、
あんたの目も節穴としか言いようがないけど大丈夫か?」

( ФωФ)「……そう思っていれば別にいいであるよ。
どちらにせよ、ジョルジュ、お前はここで消えるのであるから」
  _
( ゚∀゚)「あんたに思惑があったとしても、
あんたがおれの恩人であるには違いない。
黒鉄宮の牢獄に面会には行ってやるよ」

( ФωФ)「甘いであるな」

喋りながらノーモーションで放たれた鋭い突き。
  _
(;゚∀゚)「ちっ」

避けることが出来ず両手剣の側面で受け止めた。

.

761◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:52:36 ID:v9nbCCzI0

( ФωФ)「ほぉ。今の突きを防ぐであるか。
それくらいしてもらわないと楽しめないであるが、
立派に育ってくれたであるな」
  _
( ゚∀゚)「何を言ってやがる」

( ФωФ)「あそこで殺すのは簡単であった。
だが、それではつまらないと思ったのである。
自暴自棄になったお主が救われ、
そして強くなった後、吾輩と戦い、苦しみながら死んでゆく。
良い物語だと思わないであるか?」
  _
(#゚∀゚)「……」

( ФωФ)「おや?
お気に召さなかったであるか?
確かに死ぬのが怖いと思うが、
何もなさないで死んでゆくよりも、
物語の重要な欠片を演じてから死ぬ方が有意義なのである」
  _
(#゚∀゚)「ふざけるな!」

ジョルジュが怒りに任せて両手剣を前に押し出すと、
その勢いでバランスを崩しかけたロマネスクが後方に飛んだ。

( ФωФ)「ふむ。『欠片』と言ったのが気に食わなかったのであるか」

横薙ぎに振るわれたジョルジュの両手剣。
余裕をもってギリギリにかわしたロマネスクは鎗を両手剣のように上から振り下ろした。
  _
( ゚∀゚)「ちっ」

横に飛んで避けた後に更に後ろに飛ぶ。

( ФωФ)「良い判断であるが!」

ロマネスクの連続突きがジョルジュを襲う。
  _
(;゚∀゚)「!」

.

762◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:54:16 ID:v9nbCCzI0

両手剣で防御するも、
幾つかは外して体をかすめてHPを奪われてしまう。
  _
(;゚∀゚)「っ!」

自身のHPバーに気を取られてバランスを崩したジョルジュ。
その隙をロマネスクが見逃すわけがなく、
空間に穴をあけるような激しく鋭い突きが襲い掛かる。
  _
(;゚∀゚)「!!」

崩したバランスを立て直すのではなく、
敢えてそのまま倒れるジョルジュ。

( ФωФ)「!?」

ブリッジをするよう仰向けに横になった自分の上を通る鎗。
その先端を確認しながら体を捻る。
地面に横になってしまう前に自分の身体程の大きさの両手剣を振り、
鎗を横殴りにした。

.

763◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:56:03 ID:v9nbCCzI0

(;ФωФ)「をっ」

軽い連続突きではなく、
しっかりと足を踏み込んだ一撃。
それを奇妙な体勢でかわされただけでなく、
真横からの武器への攻撃を受けてしまい、
重い武器に引っ張られる様にふらついてしまったロマネスク。

(;ФωФ)「なんという」

よろめいたロマネスクが体勢を立て直してジョルジュ見る。

と同時に襲い掛かるジョルジュの両手剣。

( ФωФ)「!」

その剣はまさに自由奔放。

型も剣技も無視した四方八方からの攻撃。
  _
(#゚∀゚)「とりゃあああああああああああああああああああ!!」

(;ФωФ)「くっ」

最初は全て鎗を上手く当てて軌道を逸らしかわしていたロマネスクだったが、
途中でジョルジュの狙いに気付くと、
余裕をもってつまらなそうにかわし始めた。

( ФωФ)「つまらん」

そして攻撃の切れ目に合わせて後方に飛ぶ。
  _
(;゚∀゚)「くっ」

追おうとはせずそのままの位置で武器を構え直すジョルジュ。

.

764◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:57:41 ID:v9nbCCzI0

( ФωФ)「武器破壊……もしくは、
吾輩に武器を落とさせる。
それが狙いであるな?」
  _
( ゚∀゚)「それが……どうした」

( ФωФ)「それで吾輩に勝とうなど、
吾輩も甘く見られたものである」
  _
( ゚∀゚)「武器が無ければ戦えない。
そうすればいい」

( ФωФ)「吾輩も予備くらい持っているのである」
  _
( ゚∀゚)「全部壊せばいい」

( ФωФ)「武器破壊など、
余程のレベル差が無ければ出来ぬことくらい知っておるであろう」
  _
( ゚∀゚)「おれは狙って出来ねえけど、
出来ないわけじゃない。
下手な鉄砲だって、数打てば当たる。
それに壊せなくても、飛ばすことは出来るかもしれない」

( ФωФ)「……吾輩の記念を、汚されたくないのだがな」
  _
( ゚∀゚)「記念?」

( ФωФ)「この戦いは、記念なのである」
  _
( ゚∀゚)「何のだよ」

( ФωФ)「育った獲物を、美味しく食べる記念である」
  _
(#゚∀゚)「おまえ……」

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765◆dKWWLKB7io :2017/04/29(土) 23:59:24 ID:v9nbCCzI0

( ФωФ)「吾輩はロマンチストなのである。
だから、最初に殺す者は記念になる者にしようと決めていたのである」
  _
(#゚∀゚)「ふざける……」

怒りを露わにしたジョルジュだったが、
その言葉に反応して目を大きく見開いた。
  _
( ゚∀゚)「『最初に殺す者』?
ってことは、ロマネスク、まだ殺しては……」

( ФωФ)「だから、記念の戦いを汚してほしくないのである。
充分育ったお前を殺すこの記念日を」

無表情に、けれどどこか熱に浮かれているような口調で喋り続けるロマネスク。

( ФωФ)「ジョルジュ、
お前を殺した瞬間、
その瞬間に、
吾輩の『ソード・アート・オンライン』が始まるのである。
そしてこのアインクラッドには、
さらなる死の恐怖がはびこるのである。
ラフィンコフィンなど比べ物にならないような、恐怖が」

ロマネスクの顔に少しだけ『表情』が浮かんだ。
  _
( ゚∀゚)「ロマネスク!おまえまだ殺してないのなら!」

ジョルジュの視界、左上の自分のHPの下に水色の点が浮かぶ。
  _
( ゚∀゚)「!」

( ФωФ)「ジョルジュ、
吾輩は全力でお前を殺すのである。
せいぜいしっかりとあがいて、
ちゃんと吾輩を楽しませてほしいのである」

バックステップでさらにジョルジュから離れるロマネスク。

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766◆dKWWLKB7io :2017/04/30(日) 00:00:44 ID:4R/a9SJc0

( ФωФ)「お主の死で、
吾輩の旅立ちを祝福してほしいのである」

走り出すロマネスク。

鎗をまっすぐに構え、
ジョルジュに向かって走る。
  _
( ゚∀゚)「それは!」

両手槍専用剣技『SILVERY・LINE』。
『銀色の線』と名付けられたその技は、
一直線上に両手槍を動かすことで発動する剣技であり、
発動条件の他に威力を決める要因として、移動距離が指定されている。
つまり、ある一定の距離を揺らさず高さを変えず移動させることで発動するこの剣技は、
長い距離を移動させることによって威力を増すことが出来た。

比較的早い時期に覚えることが出来る技なのだが、
その使い勝手の悪さから、使う者が少ない技だった。
  _
( ゚∀゚)「ちっ」

ロマネスクの移動距離は十分な距離があり、
命中すれば大きくHPを削られる可能性がある。

瞬時にそれを察したジョルジュが剣での防御ではなく避けることを選んだ瞬間、
ロマネスクの速度が加速する。
  _
( ゚∀゚)「!」

咄嗟に両手剣での防御に切り替えようとするジョルジュ。

( ФωФ)「遅いのである」

だがロマネスクの言葉通り、
鎗の先は既にジョルジュの身体に迫っていた。
  _
(;゚∀゚)!!

.

767◆dKWWLKB7io :2017/04/30(日) 00:02:19 ID:4R/a9SJc0

だがロマネスクは剣技の発動に精神を集中していたために気付いていなかった。

鎗の先がジョルジュを突き刺すその前に、
一人の男が二人のそばに駆け寄っていたことに。

( ФωФ)「なに!」

ジョルジュを突き飛ばす左手。
  _
( ゚∀゚)「!!」

倒れるジョルジュの代わりに鎗の動線の先に入る黒いマント。

鎗がマントを突き刺し、
その先にある体を穿つ。

( ・∀・)「あ、これって」

背中から鎗の攻撃を受けたモララーが、
ジョルジュの目を見ながら呟いた。
  _
( ゚∀゚)「モラ……」

自分の名を呼んだ友の顔を見て、モララーがニッコリとほほ笑む。

モララーの身体の上に浮かんだ緑色のバーが勢いよくその幅を変え、
黄色になり、
赤になり、
消えた。

( ・∀・)「   」
  _
(  ∀ )「モララーあああああああああ!!!!!!!!!!」

( ・∀・)「     」

.

768◆dKWWLKB7io :2017/04/30(日) 00:03:30 ID:4R/a9SJc0

ガラスが割れるような澄んだ音が響き、
モララーの身体が消え、
砕け散ったポリゴンが、
きらめきながら友の名を叫ぶジョルジュに降り注ぐ。

最後に微笑んだモララーがかけた言葉は、
彼の思いを乗せてジョルジュの耳にだけ届いていた。






第二十三話






第二十四話に続く












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