393 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 21:50:43 ID:ylSOxNhA0




0.浮遊城




VRMMORPG 『SWORD ART ONLINE』の舞台は、100層からなる浮遊城である。
それぞれの層は円形大地であり、
第一層の上に第二層、そして第三層と基本的には少しずつ小さくなった円形台地が重なっている。
層と層は一つの迷宮によって繋がっており、
一番下の一層から一番上の百層を目指し、百層にいるとされる最後の敵を倒すのが、
このゲームのグランドクエスト、最終目的である。
迷宮の一番奥にはその層のボスがおり、ボスを倒さない限り次の層に行くことは出来ない。
層の一番端、岩壁を登ることは不可能であり、
また落ちればその距離に応じた衝撃が身体を襲う。

先に書いたが、この世界は『浮遊』城である。
つまり、天空に浮いているのだ。
層の端から外に向かって落ちるということは、
見えない大地に向かって落ちて行くことと同じであり、
そして、それは「死」を意味している。

βテスト時代に外の壁を登ろうとした猛者もいたということだが、
結局は失敗していた。

.

394 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 21:52:39 ID:ylSOxNhA0

円形の大地が層になっているため、
上を見上げてもそこには上の層の底しか見えない。

大地の端に行けば無限の空が見えるが、ただ空が見えるだけである。

太陽はこの浮遊城を照らし、光は外側から降り注いでいる。
地球と同じように太陽の周りをこの浮遊城が回っているのか、
浮遊城の周りを太陽が回っているのかは定かではない。

日本の標準時刻と同じペースで時は進み、
浮遊城の一日は、現実世界の一日と同等である。

常春の層。
常夏の層。
常秋の層。
常冬の層。
昼の層。
夜の層。
鉄の層。
花の層。
水の層。
牛の層。
鳥の層。
虫の層。

層には気候の固定された特色のある層もあれば、
季節によって気候が移り変わる層もあり、
更には出てくるモンスターやボスキャラクターの種類を特化した層もある。

.

395 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 21:54:43 ID:ylSOxNhA0

当初プレイヤーは浮遊『城』と呼ぶことに多少の抵抗を持っていた。
浮遊しているとはいえ、大地があり、湖があり、川があり、木々のあるその世界を、
【城】と呼ぶことに違和感があった。

しかしいつしかその違和感は消えていた。

無意識下で、心の奥底で、本当に理解したのであろう。

自分達のいるこの世界が、
天才【茅場晶彦】の創り出した世界であるということを。
彼の手の中の、彼の頭の中の『城』であるということを。

≪SWORD ART ONLINE≫は、
この浮遊城を舞台としたゲームである。


そして、

浮遊城は、

≪アインクラッド≫

と、

名付けられていた。





.

396 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 21:56:39 ID:ylSOxNhA0





( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。




第二十話




はじまりの日  DEATH GAME 〜SWORD ART ONLINE〜




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397 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 21:58:26 ID:ylSOxNhA0






1.はじまりの日






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398 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:02:54 ID:ylSOxNhA0

2022年11月6日

デジタル時計は夕方六時を過ぎたことを教えてくれている。
夕闇の赤が血の様に見える真紅の世界。

ついさっきまで上空を覆っていた赤と黒の市松模様は消えている。

この世界の創造主である【茅場晶彦】から告げられた内容をやっと認識した人々が、
声を上げ、泣き、叫び、怒鳴り、嘆き、はじまりの街の中央広場には混乱の渦が生まれた。

だが、騒ぎの起きる前に五人は広場から外に飛び出していた。

('A`)「ショボン……どうするんだ?」

(´・ω・`)「まずは一度西の教会に行こう。
最短の道を先導してほしい」

('A`)「……分かった」

ドクオを先頭に、ブーンがツンを、ショボンがクーを支える様にして駆けていく五人。
少し動きがゆっくりしているのは、
先ほど告げられた現実の重さを考えれば仕方ないことだろう。

そして、後方の広場から聞こえるプレイヤーの声が、心を暗くさせる。

彼らが人の渦に巻き込まれる前に外に飛び出せたのは、
的確に指示を出したショボンのおかげだった。

('A`)「その後、どうする?」

(´・ω・`)「まずはとにかく教会に」

心細げなドクオの言葉に、しっかりとした声で答えるショボン。
その声に後押しされるように、ドクオの足取りがしっかりとしたものに変わった。




.
400 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:07:45 ID:ylSOxNhA0

西区教会

つい先ほど、五時間ほど前に来た教会に、彼らは再び訪れた。
奥の部屋に入り、疲れた様に椅子に座る。
ツンとクーが肩を寄せ合い、二人を守る様にブーンが腰掛ける。
その前にドクオが座った。

(´・ω・`)「みんな、ごめん」

そしてドクオの横に立っていたショボンが、
座らずに頭を下げる。
腰を九十度に曲げ、テーブルに額当たる勢いで頭を下げた。

('A`)「!」

(;^ω^)「ショボン!なにを!」

(´・ω・`)「僕がナーヴギアを提供し、SAOというゲームも提供した。
皆が今ここにいるのは、僕の責任だ。
謝って済むことじゃない。
でも、まずは謝らせてほしい。
許してほしいともいえない。
ただ、謝らせてほしい。
みんな。ごめんなさい。
巻き込んでしまって、ごめんなさい」

('A`)「お前のせいじゃないだろ!
おれは自分で選んだ!
テストに自分でお応募して、自分で始めたんだ!」

(´・ω・`)「でも、ナーヴギアを使わせなければよかったんだ」

('A`)「おれがお願いしたんだろ!だからお前のせいじゃない!
それにバイトしてナーヴギアは買ってた!」

.

401 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:09:58 ID:ylSOxNhA0

(´・ω・`)「バイトの金額計算しても、
当日までには、スタートの今日までには溜まらないかもって言ってたよね。
同梱版の金額。最後のバイト代が出るのが、11月の10日だから。
夏休みにいっぱい入れたとしても、それ以外は週一回か二回じゃ、無理だって」

('A`)「それは……」

(´・ω・`)「だから、僕のせいなんだ」

('A`)「でも、おれが楽しそうにSAOをやらなければお前だってみんなを誘ったりしなかっただろ!?
だから、おれにも!」

(´・ω・`)「どちらにせよ、誘っていたよ。
僕は、友達皆で何かをやるってことに憧れていたから」

( ^ω^)「!」

('A`)「!」

(´・ω・`)「SAOは、五人で、友達でやる、特別なことに、最適だったんだ。
たった一万人の中に入れた、特別な五人。
世界で初のバーチャルゲーム。
それを楽しむ、特別な五人。
それが、したかったんだ」

('A`)「ショボン……」

( ^ω^)「ショボン……」

川 ゚ -゚)

ξ 凵@)ξ

(´・ω・`)「僕の勝手な思いに巻き込んでしまったんだ。
だから、ごめんなさい」

.

402 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:12:11 ID:ylSOxNhA0

川 ゚ -゚)「……だが、やることを決めたのは自分だ。
術着に着替えたのも、ベッドに寝たのも、
ナーヴギアを被ったのも、『リンク・スタート』と言って飛び込んだのも、
私だ。私なんだよ」

( ^ω^)「そうだお!みんな自分で決めたんだお!」

('A`)「ああ、そうだ。自分で決めたんだ。
だから、きにすんな」

(´・ω・`)「でも、それでも。僕が誘わなければ、みんなは……」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「……」

( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「だから、僕はここに誓う。
絶対に、みんなは生きて向こうの世界に戻す。
何に変えても、絶対に。
現実世界に戻れる日まで、絶対にみんなが生き残れるようにする。
だから、その日までみんな、僕」

ξ 凵@)ξ「そうね。全部、あんたのせいだもの。当然よ」

ずっと黙っていたツンが、ショボンの言葉にかぶせるように呟いた。

川 ゚ -゚)「ツン!?」

(;^ω^)「ツン!?」

('A`#)「ツン!」

(´・ω・`)「うんそうだよ。僕のせいなんだ。だから」

ゆっくりと立ち上がるツン。
そしてショボンを睨む。

.

403 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:15:54 ID:ylSOxNhA0

ξ゚听)ξ「って、言えば、満足?
でも、絶対にそんなこと言ってやらない!
バカにすんな!バーカ!」

(´・ω・`)「え?」

(*^ω^)「ツン」

川 ゚ -゚)「……朋美……」

('A`)「うわぁ……」

ξ゚听)ξ「バーカ、バーカ、バーカ。
私の事をバカにすんなこの野郎」

('A`)「ショボンをバカとかよく言えるよな」

ξ゚听)ξ「良いのよ。だってこいつホントにバカなんだから」

川 ゚ -゚)「ツン」

ξ゚听)ξ「……そうね。
あんたの言葉に甘えて、
あんたのせいにして、
あんたを恨めば楽よ。
どうせあんたの事だから、
私達を安全な所に置いて、
何とかして帰還の日までもたせようとか、
考えているんでしょ。
私たち以外の使えるモノは何でも利用して」

(´・ω・`)「そんなことは」

('A`)「しそうだな」

( ^ω^)「やりそうだお」

川 ゚ -゚)「うむ」

.

404 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:19:52 ID:ylSOxNhA0

(´・ω・`)「いや、だから」

ξ゚听)ξ「でもそんなの、私は嫌。
ここには、自分の意思で来た。
その事実に蓋をして、あんたを恨んで生きるなんて絶対にいや!」

( ^ω^)「ツン……」

ξ゚听)ξ「………。
こんなところで死にたくない!
現実に戻りたい!
あの声を聞いて、ここに移動するまでの間、ずっと思ってた。
心が張り裂けそうだった。
でも、誰かを恨んでまで、
友達を恨んでまで、心の平穏なんて求めてない!」

ツンの叫びが部屋に響き、四人がツンを見た。
空気が固まり、誰も動けず、何も言えなかった。

ただ一人、ツンはショボンを睨みつけながら、口を開く。
震える身体を支える様に自分の体を抱きしめた彼女を、
クーが横から抱きしめようとした直前だった。

ξ゚听)ξ「あとあんた、
私達が無事に帰れるなら自分は死んでもいいって思ってるでしょ」

(´・ω・`)「!」

('A`)!

(;^ω^)!

川 ゚ -゚)!

(´・ω・`)「別に、僕はそんなこと……」

ξ゚听)ξ「いいや、思ってる!
どうせ本当なら死んでお詫びしたいけど、
でもみんなが帰るまでは死ねないとか思ってるのよ!
ブーンやドクオだって、分かってるでしょ!」

.

405 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:26:36 ID:ylSOxNhA0

('A`)「……そうだな」

( ^ω^)「ショボンなら、……思っていそうだお」

ξ゚听)ξ「『いそう』じゃなくて、思ってるのよ。
だってこいつ、さっき『なににかえてもみんなは』って言ったもの。
きっと、自分の命は、二の次にしてる。
もちろん私達を活かすために頑張って生きるでしょう。
でも、私達を生き残らせるためになら、簡単に自分の命を捨てるつもりよ。
そして、私たち以外の命を犠牲にすることもいとわないわよ。こいつ」

右手の人差し指でショボンを指さすツン。

その指先は少しだけ震えていて、
それを見て我に返ったクーはツンを抱きしめた。

ξ゚听)ξ「久美子……」

川 ゚ -゚)「朋美。もういい。もういいよ」

ξ゚听)ξ「だって、あんた……」

川 ゚ -゚)「本城、私も朋美と同じ気持ちだ」

(´・ω・`)「……」

川 ゚ -゚)「私の家が本城の家に救ってもらえたから、
私は美ノ付に通うことが出来ているし、
不自由無い生活を送っていた。
高校で再会できた時、……恩返ししたいと、思った。
私がそれを言った時、困ったように笑って、言ってくれたよな。
『僕は何もしてないよ。そんな事考えないで、高校生活を楽しもう』って」

ξ゚听)ξ「!久美子、あんた……」

('A`)

( ^ω^)

(´・ω・`)「融資を決めたのもおこなったのも、父や母や祖父であって、僕は何もしていない」

.

406 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:30:37 ID:ylSOxNhA0

川 ゚ -゚)「……来島家を救ってくれたのは本城家だが、
私を救ってくれたのは、本城、お前だ。
本城は覚えてないかもしれないがな。
私は、忘れない。
あの、あの日から、ずっと。
私は……。
だからこそ、『友達』にはなれないと思っていた。
借りが多すぎて、大きすぎて、対等である友達になんて、なれないと思った。
でも本城、言ってくれたよな。私達五人は、友達だって。仲間だって。
私はそれが、凄く、凄く、嬉しかったんだ。
ずっと、色んなことに引け目を感じていた私を、
友達だって言ってくれた、仲間だって言ってくれた、
本城が、朋美が、内藤が、徳永が、大事で、大好きなんだ。
一緒に笑って、バカな話をして、お弁当を食べて、勉強をして、
毎日が楽しかったんだ。
だから、自分が決めた事のせいで、大事な人を恨んだり憎んだりなんてできない。
したくない。でも私は弱いから、本城にそんなことを言われ続けたら、
心の片隅に思ってしまう日が来てしまうかもしれない。
だからもう、そんなことは言わないでくれ。
私は、私を嫌いになりたくないんだ。
だから、頼む」

(´・ω・`)「来島さん……」

顔を伏せ、互いの体を支えるように抱きしめあうツンとクー。

ブーンが近寄り、二人に椅子に座るように促した。

( ^ω^)「ショボン、ショボンはいつも僕達の事を考えてくれるけど、
僕達だってショボンの事を考えてるんだお。
ショボンが僕達の事を好きでいてくれるように、
僕達もショボンの事が好きなんだお。
いつもショボンに甘えちゃってるけど……」

('A`)「そうだな。
おれ達は、ショボンに甘え過ぎてた。
いつも笑って、おれ達の事を考えていてくれたから。
より良い道を、正解の道を指し示してくれたから、
それを普通に思ってしまっていた」

.

407 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:37:28 ID:ylSOxNhA0

ξ 凵@)ξ「甘えてたのはあんたたち二人でしょ」

('A`;)「お、おれ達ってのはおれとブーンの事であってだな、」

ξ 凵@)ξ「分かってるなら良い」

('A`;)「お、おお」

なんとなく気まずそうに頭を掻くドクオ。
ブーンも困ったようにそんなドクオを見ている。

('A`)「で、まあ、何を言いたいかっていうと、
自分を責めるのは止めてくれってことだ。
おまえは今のこの状態は自分のせいだって思ってる。
でもおれ達は、自分が選んだ結果だって思ってる。
本当は、ショボンがそんなことを思うのを止めてほしいけど、
おれ達が何を言ったって、多分変わらないよな。
でも、ショボンがどんなに言っても、
おれ達も自分の選んだ結果だって意見は変えない」

(´・ω・`)「ドクオ……」

('A`)「でも、そんな状態だと、この世界では生きていけないと思う」

(´・ω・`)「!」

( ^ω^)「!」

ξ゚听)ξ「!」

川 ゚ -゚)「!」

俯いていた二人もドクオの顔を見た。

('A`)「おれはβテストのとき、ダンジョンどころかフィールドですら、
それこそさっき倒した青イノシシに負けて死んだことがある。
戦い方が分からないんだから、当然だよな。
自画自賛になるけど、もし俺がいなかったら、
お前ら全員もう死んでいたかもしれない」

.

408 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:42:20 ID:ylSOxNhA0

四人の背中に冷たい物が走った。

('A`)「武道をやっていたクーですら最初はへっぴり腰だったもんな」

川 ゚ -゚)「……ああ。徳永のアドバイスが無かったら、
あの時に死んでいたかもしれない」

('A`)「まあおれも教えるのがそれほどうまいってわけじゃないし、
ショボンに言われてポーション飲んでなかったら、
あそこで与えられたダメージ総量を考えると、死んでいたかもしれない」

自分達に戦い方を指導しながら、
自分達を守るためにイノシシの攻撃を受けて傷を負ったドクオを思い出す四人。

( ^ω^)「……ドクオ」

('A`)「一番最初に突っ込むタイミングを掴んだツンだって、
そう思うだろ?」

ξ゚听)ξ「……ええ。
何回も攻撃受けたし、ドクオにも守ってもらった。
思い返せば、いつ死んでもおかしくなかったかも」

('A`)「ショボン、どんなにお前の頭が良くても、
多分この世界はそれだけじゃ生き抜くことは難しい。
よっぽどの『力』をもつ奴ならともかく、
本当に一人で生き抜く事なんて無理だと思う。
ましてや、自分以外に四人も守るなんて、無理だ」

(´・ω・`)「でも…ぼくは……」

('A`)「けれど、おれ達は一個一個を見ればかなり高スペックだと思う」

(´・ω・`)「?」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「?」

川 ゚ -゚)「どういうことだ?」

.

409 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:48:19 ID:ylSOxNhA0

ドクオは全員の顔をゆっくりと見回し、そしてショボンを見た。

('A`)「ショボンの頭の良さ、記憶力。
更にテストタイプのナーヴギアを使っていることによる敵の出現をいち早く察知できる目。
これはかなりのアドバンテージになると思う」

(´・ω・`)「……」

ξ゚听)ξ「いち早く察知?」

川 ゚ -゚)「詳しくは後で話すが、
ショボンが使ってるナーヴギアはテストタイプのため、
私達より少しだけ早く敵が現れる場所を知ることが出来る様なんだ」

( ^ω^)「おお!すごいお!」

ドクオは視線をクーに移す。

('A`)「クーの武術と冷静さ。
槍捌き自体はいつかは他の奴もうまいやつが出てくるだろうけど、
現時点ではβテスターを含めてもトップクラスだと思う。
それに状況を掴む冷静さ、観察眼はショボンと同等、
いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。
ショボンはさ、おれ達には甘すぎるから」

(´・ω・`)「……そう……かな」

川 ゚ -゚)「ふふふ。そうかもしれんな」

そしてツンを見る。

('A`)「ツンの持つ思い切りの良さと剣技のセンス。
それと歯にモノ着せない物言い」

ξ゚听)ξ「褒めてないわよね?」

('A`)「……大事だよ。
おれ達じゃ、ショボンが暴走したら止められないかもしれない。
さっきみたいに、ガツンと言ってやることが出来ないかもしれない。
それじゃ、ダメなんだけどな。友達に気後れするとかさ……」

.

410 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:50:53 ID:ylSOxNhA0

( ^ω^)「おー。だおね。ショボンの方がちゃんと考えていてくれるから、
いつも甘えちゃってて、ショボンが言うなら間違いないだろうって思っちゃってるお」

('A`)「ああ。
それに、あの剣技の切れは、
今まで見たどの細剣の初期技と比べても、
トップクラスだったと思う。
もしかしたら、ツンの性格は細剣の剣技と相性がいいのかもしれない」

ξ゚听)ξ「性格と剣技の相性ねぇ……」

('A`)「剣技は技によっても武器によっても癖がある。
ツンが細剣の全部の剣技と相性が良いのかは分からないけど、
あの技にはかなり相性が良いように見えた。
技後硬直とか注意点も大きいけど、
自分の能力を格段に引き上げる剣技を使いこなせるのは、
かなりの強みだ」

ξ゚听)ξ「なるほどね」

('A`)「そしてブーン」

( ^ω^)「おっ」

('A`)「ブーンの体の動きと呼吸の合わせ方。
他のどの武器ともそれなりに合わせやすい片手剣ってこともあるけど、
おれやツンと共闘した時の呼吸の合わせ方は、見事だった。
ソロはともかく、パーティーで戦う時は大きな武器だ。
それに普段から運動をしていただけあって、
自分の体の動かし方がよく分かってる。
小学校の時に通ってた体操教室の動きも活かされてるのかもしれないな」

(*^ω^)「お!そうかお?」

ξ゚听)ξ「で?あんたは?」

.

411 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:54:36 ID:ylSOxNhA0

('A`)「ゲームの知識。お約束。
βテスターとしてこの世界を生きた経験と知識は、
一般プレイヤーには無いものだ。
モンスターの種類と特徴と出現場所。
抜け道を含めた細かいマップ。
街の中の店や細かい裏技。
いつかはみんなが分かることだけど、
最初からある程度分かっているというのはそれなりに力になるはずだ。
あと、古今東西のRPGや複数のMMORPGをプレイしたゲーマーとしての知識も」

ξ゚听)ξ「……」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「ん?どうした」

ξ゚听)ξ「いや、確かに今の私達にとって、
生きる為の凄い武器だと思うんだけど……」

川 ゚ -゚)「少し引いた」

ξ゚听)ξ「昔からゲーム良くしてたもんね。
私達が誘わないと外出ないし」

('A`)「今は良いんだよそんなことは」

( ^ω^)「おっおっお」

川 ゚ -゚)「だが同時に、かなりすごいとも思う。
あの短時間で、私達の事をよくそこまで……」

('A`)「ああ、まあな。
パーティー組んで戦うには全員の長所と短所、
得手不得手、好きな戦い方嫌いな戦い方を知らないといけないからさ。
最終的には指揮をショボンに任せるとはいえ、
おれも意見できるようにしたほうが良いかなと思って」

そしてショボンに視線を戻した。

.

412 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 22:57:08 ID:ylSOxNhA0

('A`)「おれ達がパーティーを組んで戦うとしたら、指揮はショボン、お前だ」

(´・ω・`)

('A`)「今みたいに一人一人の特性を見ることは出来ても、
それを組み合わせて、状況に合わせて動かす事なんて、
おれにはできない。
この五人の中でそれが出来るのは、
ショボン、お前だ」

(´・ω・`)「……来島さんも出来るよ」

川 ゚ -゚)「は?」

('A`)「ああ、そうだな。資質だけなら出来る可能性は高いと思う」

川 ゚ -゚)「いやちょっとまってくれ」

('A`)「でも、お前の目とクーの戦闘能力を充分に発揮させるなら、
お前が指揮を執るのが順当だろう?
悪いけど、戦闘能力はお前よりクーの方が上だ。
お前が前線に出るより、クーが前線に出た方が安全に敵を倒せる。
それにお前の持つ目の能力は、後方で全体を見渡すことで、
最大限に威力を発揮するんじゃないか?」

(´・ω・`)「それは……」

川 ゚ -゚)「二人とも私の声が聞こえているか?」

('A`)「お前だってわかってるはずだ。
自分の真価は、『人を使うこと』だってな。
だからお爺さんたちに」

(´・ω・`)「ドクオ!」

('A`)「……わるい。今はそれは関係なかったな。
でも、おれの言いたいことは分かるだろ?」

(´・ω・`)「……うん」

.

413 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 23:00:33 ID:ylSOxNhA0

ドクオの言葉に、珍しく声を荒げるショボン。
その声にツンとクーは驚いてショボンの顔を見た。

ブーンは何も言えず、少しだけ悲しそうにショボンとドクオの顔を見ている。

(´・ω・`)「でも……やっぱり……」

項垂れるショボン。

( ^ω^)「帰る日まで、みんなで頑張ればいいんだお」

ブーンが朗らかに、事も無げに言い放つ。

(´・ω・`)「ブーン……」

頭を上げるショボン
その簡単な物言いに、ドクオとクーは苦笑いを浮かべながらも追従した。

('A`)「そうだな」

川 ゚ -゚)「それしかない」

出来るだけ簡単に、何事も無いように。

(´・ω・`)「でも、皆に命が危険にさらされるようなことは」

それでも異議を唱えるショボン。

ξ゚听)ξ「なら、私達が危険にならないように、考えなさい」

しかしすぐにツンの言葉によって遮られた。
それはまるで最初にショボンが提案しようとしたことを認めるような言葉だった。

(´・ω・`)「え?いや、じゃあ」

が、違った。

.

414 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 23:02:52 ID:ylSOxNhA0

ξ゚听)ξ「ただし、私達は自由に動くわよ。
納得できる内容なら、従ってあげる。
でも、納得できなかったら指示になんて従わない。
どこかに閉じ込めるとか、この街から出ないなんてのはもってのほかだから、
それ以外で私達が出来るだけ死なない道を考えなさい」

(´・ω・`)「…………え?」

('A`)「……上から目線だ」

川;゚ -゚)「朋美……」

(;^ω^)「おー」

おもわず唖然としたショボン。
ツン以外の三人も同じような表情で二人を見た。

ξ゚听)ξ「だってそれしかないじゃない」

四人に対し、普段のツンと何も変わらない仕草で喋り続ける。

ξ゚听)ξ「本城の望みと、私達の思い。
そこら辺が折衷案でしょ?
本来なら自由に動いていい私達が、
納得できれば指示に従うって言ってるんだから、
喜んで欲しいくらいよ」

('A`)「うわ」

ξ゚听)ξ「ま、考えるのめんどくさいから、
細かいことは任せるっていうのもあるけど」

( ^ω^)「賛成だお」

ξ゚听)ξ「あと、自分の命も大切にして」

川 ゚ -゚)「ああ。私からも頼む。
自分の事も大事にしてほしい」

.

415 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 23:05:26 ID:ylSOxNhA0

( ^ω^)「来る時と一緒だお!
五人皆で帰れる様に頑張るんだお!」

('A`)「ああ、そうだな」

川 ゚ -゚)「うむ。内藤の言うとおりだ」

ξ゚听)ξ「そういうことよ。わかった?」

(´・ω-`)「みんな……」

笑顔で告げる四人に、片目をこすりながら、やっと笑顔を見せるショボン。

(´・ω・`)「わかったよ。
皆で、生きて帰る。
その為に頑張るよ!」

('A`)「おう!」

( ^ω^)「だお!」

川 ゚ -゚)「うむ」

ξ゚听)ξ「やっとわかったか」

(´・ω・`)「償いは、帰ってからするよ」

('A`)「って、わかってんだが、わかってないんだか」

( ^ω^)「おっおっお。でも、ショボンらしいお」

川 ゚ -゚)「ならば私も帰ってから恩返し攻撃をしなければな」

ξ゚听)ξ「私鉄とバスとタクシー乗り放題くらいで良いわよ」

('A`;)「おいおい」

(;^ω^)「おっおっお」

川;゚ -゚)「朋美」

.

416 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 23:10:10 ID:ylSOxNhA0

ξ゚听)ξ「冗談よ、冗談」

(´・ω・`)「了解」

ξ;゚听)ξ「いやいや、冗談だからね!」

五人全員に笑顔が戻り、会話を交わす。
それは生徒会室で昼ご飯を食べている時のようで、
五人の心に落ち着きを与えていた。







('A`)「さてバカ話もこれくらいにして、
ショボン、これからどうするのが良いと考えている?」

(´・ω・`)「うん……」

時折笑い声も出るような会話を30分以上した後、
全員が一呼吸置いた時に、ドクオが真剣面持ちで口を開いた。

(´・ω・`)「出来れば、早めにこの街を出たい。
今すぐにでも。
この街の情報収集もしたいけど、
ひとまずはドクオの知識があれば事足りるだろうし」

川 ゚ -゚)「何故この街ではいけないんだ?」

('A`)「広いし宿屋も多いし、当分は拠点にしてもいいと思うが?」

(´・ω・`)「宿屋を借り続けてずっと中に籠るならそれもいいと思う。
でも、その道を選ばないなら、着実に安全に早急にある程度までレベル上げをしたい。
おそらくそう考えたβテストをやっていないプレイヤーはこの周辺で狩りを、
戦闘訓練を、レベル上げを始めると思う。
この街の中にいるだけなら、規模でみれば1万人いても大丈夫だと思うけど、
周辺で狩りや戦闘を行うと考えると、キャパが足りないような気がする」

.

417 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 23:12:31 ID:ylSOxNhA0

('A`)「そうか。ああ、そうだな。
そうなれば、この周辺のモンスターはすぐ狩られるだろうし、
狩場をめぐって争いが起こるかもしれない。
そうなると、まずは次の街か。
あそこにはアニールブレードのクエストもあるし、
早めに取りたかったからそれもいいか。
でも……いや……すぐはだめだ。最低でも一つはレベルを上げて」

ショボンの話を聞いて、考え込むドクオ。
最初は周りに聞こえるような声だったが、
だんだん小さくなり最後はぼそぼそと独り言になっていた。

ξ゚听)ξ「何がダメなのよ?」

('A`)「あ、いや、順当にいくとしても、まずは次の街
『ホルンカ』になると思う。
もともとそこには早く行きたかったから行くことには賛成だけど、
出来るだけ早くってのは、厳しい」

ξ゚听)ξ「なんでよ」

('A`)「行く途中にモンスターが出る。
さっき倒した青イノシシよりも強いやつが。
といってもそこまで変わらないけど、危険度が上がるのは事実だ。
それに、今はもう夜の時間だからモンスターの出現率も高くなってるし。
少し回り道をしてできるだけモンスターの出ない道を選ぶとしても、
『今すぐ』ってのは無理だ。
安全を考えるのであれば最低でもレベルを一つ上げてから行きたい」

川 ゚ -゚)「どれくらいかかる?」

('A`)「んー。夜はランダムで強いモンスターも出るから、
明日の朝から始めたとして、三日後の昼には全員出られるかな……」

(´・ω・`)「それだと遅い」

.

418 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 23:15:45 ID:ylSOxNhA0

( ^ω^)「どうしたんだお?そんなに慌てて」

(´・ω・`)「……さっきのは、一つ目の理由。
もう一つは、おそらくこの街はこの先更なる混乱に包まれる。
自棄になったやつが、何をしでかすか分からない。
街の中は『圏外』といって戦闘行為は出来ないから僕達に命の危険は無いと思うけど、
出来れば早めに出ておきたいんだ」

('A`)「んなこと言われても……」

(´・ω・`)「今ドクオの言っていたのは、五人全員で動いた場合だよね」

('A`)「ん?ああ」

(´・ω・`)「ドクオ一人なら、次の街まで行ける?」

('A`)「おれ一人なら?ああ。行ける。
でも、おれ一人行ったって……」

(´・ω・`)「もう一人、僕以外の三人のうち誰かを連れていくとしたら?」

('A`)「二人……。まあそれなら行けるかな。
ブーンにせよツンにせよクーにせよ、
一人ならおれもフォローできるだろうし。
あ、ショボンでも大丈夫だぞ?
ああ、そうだな。それなら行けるな。
その方法で一人連れて行って、おれがまた戻ってきてまた一人連れていけば」

(´・ω・`)「いや、流石にそれは効率が悪いよ。
それに、ドクオの負担が大きすぎる。
長く続く緊張や疲れが、ミスを誘うよ」

('A`)「じゃあどうするんだ?」

(´・ω・`)「まず二人で行って、その一人を鍛えてほしい。
そして、ドクオが大丈夫と思えるところまで鍛えたら、
二人で迎えに来てくれ」

.

419名も無きAAのようです:2015/11/30(月) 23:16:53 ID:QiYv79HQO
滑り込みで11月に来てたー
これから読みます

420 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 23:22:20 ID:ylSOxNhA0

('A`)「!なるほど。それなら五人での移動がいけるかもしれない。
昼の移動なら二人で三人のフォローも出来るだろうし……。
それに、あのクエストをやれば戦いにも慣れるしレベルも上がるはずだ」

(´・ω・`)「できれば、明後日の昼頃までにお願いしたいけど、間に合うかな?」

('A`)「一緒に行くのが、鍛えるのが一人なら充分だ。
運さえよければもっと早くできるかもな」

(´・ω・`)「出来るだけ安全に。
間に合えば嬉しいけど、急がなくていいよ」

('A`)「でも、それくらいで大丈夫なのか?」

(´・ω・`)「……現実世界からすぐに救出があるとしたら、
おそらく明日の夜までには帰れると思う。
でも、……おそらくそれは無い。
茅場晶彦、あの人は良くも悪くも天才だから、そんな結果にはしないと思う。
そして、この街に居てただただ向こうからの救出を待っている人が大きく騒ぎ出すのは、
多分明々後日くらい……。
扇動者がいればもっと早くなるかもしれないけど、多分それくらいだと思う」

川 ゚ -゚)「……騒動になるまでそんなにかかるのか?
先程の広場では既に……」

(´・ω・`)「小さな騒ぎや騒動、小競り合いは勿論起きるよ。
当分は起き続けるさ。
今もあの広場では起きているんじゃないかな。
でも、全体を巻き込むような騒動は『指揮者』が、
『扇動者』いなければそう簡単には起きない。
一万人って数は、それなりの人数だからね。
無秩序な騒動にだって、引き起こす人や盛り上げる人はいるんだよ。
それに、こんな特殊な状況、だれも信じたくないからね。
『一回寝て、起きたら全部夢だった』って思いたい。
『壮大なオープニングイベントで、もうすぐネタばらしが来る』って思ってる。
それが大多数の人だと思う。
だから、受け入れたくない現実を受け入れて、絶望する。
大きな騒動が起きるのはこのタイミングだと思う」

.

421 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 23:27:05 ID:ylSOxNhA0

川 ゚ -゚)「なるほどな……」

ξ゚听)ξ「!あんた、もしかして……」

(´・ω・`)「なに?宇佐木さん」

ξ゚听)ξ「……いや、なんでもない。
……それにしてもあんた、ほんと、やなやつね」

(´・ω・`)「褒めてくれてありがとう」

ξ゚听)ξ「……褒めたつもりはないわよ。
まあいいわ。それでドクオ、誰を連れて行くのよ」

('A`)「ああ、連れて行くやつだけど……」

(´・ω・`)「うん」

('A`)「ブーン、良いか?」

( ^ω^)「お?僕かお?」

ξ゚听)ξ「ブーンなの?」

川 ゚ -゚)「私でもいいぞ?」

('A`)「……移動の時に必要な戦闘力ではクーは勿論ツンでも大丈夫だと思うけど、
何かあった際におれの指示で安全な場所まで逃げてもらうのを考えると、
出来るだけ足の速いやつがいいんだ」

川 ゚ -゚)「そういうことか」

('A`)「それに、着いてからのレベル上げなんだけどさ、
ついでに街売りしてない片手剣をゲットする為のクエストをやろうと思う。
おれの分も含めて二本。
結構使える武器だし、そのままその武器を使える片手剣使いの方が良いだろ。
この先落ち着いてからならまだしも、
折角少しは慣れた今の武器を変えるのは時間の無駄だから。
そして、そのクエスト中に戦闘に慣れてレベルも上げられると思う。」

.

422 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 23:32:19 ID:ylSOxNhA0

(´・ω・`)「うん。分かった。
ブーン、宇佐木さん、来島さん、良いね」

ドクオの説明に頷き、ショボンが三人に確認をした。

川 ゚ -゚)「問題ない」

( ^ω^)「……大丈夫だお」

ξ゚听)ξ「……しょうがないわね」

クーはすぐに返答したが、
ブーンとツンは互いの顔をちらっと見てから同意を告げる。

(´・ω・`)「二人を離すのは心苦しけど……」

ξ*゚听)ξ「な、何言ってるのよ!」

(* ^ω^)「おっおっお!
出来るだけ早くみんなを迎えに来られるように頑張るお!」

(´・ω・`)「危険だけど、頼むよ」

ξ゚听)ξ「ブーン、時間かかってもいいから。出来るだけ安全にね」

川 ゚ -゚)「徳永、内藤、頼んだ」

( ^ω^)「頑張るお!」

('A`)「ああ。おれも頑張るよ。
あ、でさ、さっきからちょっと気になってたんだけど」

川 ゚ -゚)「ん?なんだ?」

('A`)「いや、クーだけじゃなくみんなにさ」

(´・ω・`)「なに?」

('A`)「この世界では、リアルネームじゃなくてこちらの世界の名前を使ったほうが良い」

.

423 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 23:35:50 ID:ylSOxNhA0

ξ゚听)ξ「そういえば顔が一緒だから普通に名前呼んでたわね」

川 ゚ -゚)「まずいのか?」

('A`)「んー。明確な理由があってまずいってことは無いと思うし、
リアルネームとこちらの名前を同じにしてる人もいるだろうから一概には何とも言えないけどな。
ただ、これから先この世界でそれなりの時間過ごすことを考えると、
こちらでの名前を使っていたほうが良いと思う。
こちらの世界で知り合う人もいるだろうし」

(´・ω・`)「そうなんだ。
そこら辺はよく分からないけど、ドクオがそう言うなら気を付けるよ。
ドクオとブーンはいいとして、ツンさんとクーさんだね」

ξ゚听)ξ「呼び捨てで良いわよ。
わたしもショボンって呼ぶから。
っていうか、あんたにツン『さん』とか言われるとむず痒くなる」

(´・ω・`)「酷いな」

川 ゚ -゚)「私も呼び捨てにしてくれ。
私も呼び捨てで呼ぶしな。
ブーン、君もそうしてくれ」

( ^ω^)「わかったお!」

(´・ω・`)「うん。僕もそうするよ」

('A`)「うん。それでいい。
それでショボン、おれ達が鍛えている間、
お前達はどうするんだ?」

(´・ω・`)「中央から離れた宿屋に籠ろうかと思う。
僕は、日中は情報収集の為に出たりするつもりだけど、
ツンとクーは部屋の中に居てもらうよ」

ξ゚听)ξ「やだ」

( ^ω^)「ツン、僕とドクオが戻るまではそうして欲しいお」

ξ゚听)ξ「うーーーー」

.

424 ◆dKWWLKB7io:2015/11/30(月) 23:39:06 ID:ylSOxNhA0

川 ゚ -゚)「仕方あるまい。
三人とも街の外に出たりしないのは当然として、
闇雲に部屋の外には出ない様にしよう。
ま、二日が限度だと思うがな」

('A`)「戻ってこれるとは思うけど。……あ。そうだ」

(´・ω・`)「どうしたの?」

('A`)「ショボン、別に宿屋じゃなくてもいいよな?
鍵がかかって外から守れれば」

(´・ω・`)「うん。それは良いけど」

('A`)「ならあそこがある!」




.
434 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:15:48 ID:txZEg.9U0




2.出発




.

435 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:17:27 ID:txZEg.9U0

ドクオの先導で教会を出た五人は、
何の変哲もない通路にやってきた。

街の外れに位置するその路地には店の看板を掲げている家も無く、
その通りには『民家』しかない様に見える。

( ^ω^)「なにもないおね……」

川 ゚ -゚)「またさっきの様な隠し店舗があるのか?」

('A`)「まあ見とけって」

ドクオの指示により、曲がり角に隠れる四人。
ドクオは一人角から十数メートル先の民家の前で立ち止まった。

ξ゚听)ξ「うわ。こっち見て笑った。
何あのドヤ顔」

川 ゚ -゚)「爽やかではないな」

(; ^ω^)「……許してあげてほしいお」

(´・ω・`)「なにするんだろ」

四人が見守る中、ドクオは大きく深呼吸すると目の前のドアを力強く蹴った。

(´・ω・`)「え?」

(; ^ω^)「ど、ドクオ!?」

ξ゚听)ξ「何してるのあいつ」

川#゚ -゚)「ああいう行為はいただけんな」

蹴るというよりはドアを踏みつける様に、
足の裏で全部で四回蹴ると、すぐに隣の家の門柱の陰に隠れるドクオ。

.

436 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:20:59 ID:txZEg.9U0

駆け寄ろうとした三人をショボンが
「とりあえず隠れて見ていてくれって言っていたし」
と言って制止していると、民家のドアが開いた。

女性が周囲を見回している。

そして誰もいないのを確認すると、ドアを閉めた。

それを確認したドクオが四人のもとに駆け寄ってきた。

ξ゚听)ξ「何やってんのよあんた」

('A`)「あれを後三回やるから、もうちょっと見ててくれ」
  
川#゚ -゚)「あと三回も?」

(; ^ω^)「おー」

(´・ω・`)「ドクオ、これはβテスターしか知らない内容なんだよね?」

('A`)「ん?ああ。っていうか、おれと数人しか知らないと思う」

(´・ω・`)「分かった。
ツン、ブーン、こちらに残って、誰か来たら声をかけて。
クー、僕と一緒に向こう側の角に移動しよう。
ドクオ、何をするのかは知らないけど、誰にも見られないようにしてくれ」

('A`)「え?あ。ああ。わかった」

(´・ω・`)「あと三回蹴ったらどうしたらよい?」

('A`)「終わったら呼ぶから、やってきてくれ」

(´・ω・`)「わかった。
じゃ、クー、向こう側に行こう。
ブーン、ツン、頼んだよ」

川 ゚ -゚)「う、うむ」

( ^ω^)「おっお。わかったお」

ξ゚听)ξ「わかった」

.

437 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:23:56 ID:txZEg.9U0

駆け出すショボンと、後に続くクー。

不思議そうな顔をした残った三人だったが、ドクオは気を取り直して民家の前に戻った。





同じようにドアに蹴りを入れるドクオ。

四回目の蹴りの後にドアを開けた女性は、
遠目で見てもイラついているのが分かった。

そして大きく音を立ててドアを閉めるのを確認すると、
ドクオが四人を手招きした。

ξ゚听)ξ「それで、これでどうなるってのよ」

('A`)「ショボン、これで中に入るとイベントが発生する。
基本どんな受け答えでも三日間はこの家の二階にただで寝泊まりさせてもらえるから、
この家を拠点にしてくれ」

(´・ω・`)「ここに?」

('A`)「ああ。この世界では、
宿屋の看板が出ているところ以外にも泊まれるところが結構あるんだよ。
ま、こんなフラグ立てをしなきゃいけないのはそんなにないし、
ただで泊まれるところはほんとに少ないけど。
ここも三日間泊まった後は、多分二週間くらいここにただで泊まることは出来ない」

( ^ω^)「全員分やらないとなのかお?」

('A`)「いや、パーティー設定している全員が泊まれる。
ここは元宿屋かなんかで、上にはリビング一つに寝室が二つあるんだ。
寝室にはベッドが二つあったから、三人なら充分だろ?」

(´・ω・`)「パーティー。
教会でやったあの設定?」

.

438 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:25:28 ID:txZEg.9U0

('A`)「そ。あれで今この五人はパーティー。
まあグループ設定されてるってわけだ。
って、早く入らないと最初からやり直しだから、ショボン、入ってくれ」

(´・ω・`)「う、うん。わかったよ」

詳しいことを聞きたそうなショボンだったが、
ドクオに急かされてドアの前に立ち、ノックをした。

『……誰だい?』

すぐに開かれるドア。
先程までの蹴りにより、
ドアの前に待機していたのだろう

(´・ω・`)「こ、こんばんは」

会釈をするショボンを上から下までじっくりとあからさまに見まわす女性。

同時にショボンも女性を観察する。
少しふくよかな体格。
身長もショボンより高いだろう。
そこまでは現実世界の人間と遜色ないが、大きな違いが一つ。l

頭の上に、エクスクラメーションマーク。
俗に言う『ビックリマーク』が浮かんでいた。

(´・ω・`)(これがクエスト受託マークなのかな)

『何か用かい?』

(´・ω・`)「え、あ、その」

('A`)「……え。会話が違う」

(´・ω・`)「い、色々とお話を伺いたくて」

『話……ね。あんたたち、旅行者かい?それとも冒険者かい?』

.

439 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:29:28 ID:txZEg.9U0

(´・ω・`)「ぼ、僕達は……冒険者です」

『その姿でただの旅行者ですとか言われたら、ドアを締める所だったよ。
立ち話もなんだ、中に入りな』

ドアが開け放たれ、五人を中に促す女性。

どうやら玄関という概念は無いようで、すぐにリビングの様になっていた。
八人は腰掛けることが出来そうなソファーセットがあり、促されて五人はそこに座った。

(´・ω・`)「ドクオ、この後はどうしたらいいの?」

('A`)「……任せる」

(´・ω・`)「は?」

('A`;)「βの時と、色々違ってるから掴めん」

女性が「ちょっと待ってな」と言って奥の部屋に行ったのを確認した後、
ぼそぼそと会話する二人。
その会話を呆れた顔で三人が聞いている。

('A`)「とりあえず生死にかかわる様な事にはならないはずなのと、
どこかに行くとか何かを選択する時にはウインドウが現れてキャンセルも出来るはずだから、
とりあえずは会話を進めてみてくれ」

(´・ω・`)「……分かったよ」

ショボンの言葉で会話が終わり、なんとなく黙り込む五人。
それぞれに部屋の調度を見回している。

部屋はかなり広いが、家具と呼べるものは彼らが座っているソファーセットぐらいだった。
奥に扉が一つと、二階に上がる階段があるくらいである。
しかし壁にはいくつもの絵画が飾られていた。
中には空に浮かぶ卵の様な絵もあるが、ほとんどは空と大地を描いた風景画だった。
壁にはアンティーク調の壁紙も貼られており、
βテスト時代に多くの民家や宿屋を見てきたドクオも新鮮な気持ちで観察していた。

('A`)(全然違ってる……)

.

440 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:32:08 ID:txZEg.9U0

『待たせたね』

帰ってきた女性がローテーブルの上にコップを置く。

テーブルの長辺には三人掛けのソファーがあり、五人は男女に分かれて座っていた。
そして短辺にある一人掛けのソファーに女性が腰を掛けた。

『それはサービスだ、飲むも飲まないも自由だよ』

(´・ω・`)「いただきます」

テーブルの上のカップを手に取り、口をつけるショボン。
一口啜ると、弱い苦みの中にほんのりと甘さのある味が広がった。

(´・ω・`)「初めて飲む味です。これは?」

一瞬顔をしかめたショボンを見てにやりと笑う女性。
そして自分も一口啜ってから、口を開いた。

『これは【ラウラ草】という薬草を乾燥して作ったお茶だよ』

(´・ω・`)「よく飲まれるんですか?」

『ここでは採れない草だ。飲むのはたまにさ』

(´・ω・`)「貴重なものをありがとうございます。
ここでは採れないとのことですが、どちらで採れるんでしょう?
次の街ですか?」

『……【ラウラ草】は、この層では採れない』

(´・ω・`)「そうですか」

女性に対し、ニッコリと微笑むショボン。

.

441 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:35:35 ID:txZEg.9U0

『私の名前は『アイネ=ハウンゼン』。
ここに来たということは勿論私の名前は知っていると思うが、
自己紹介をするのは当たり前だからね』

(´・ω・`)「申しおくれました。僕の名前は『ショボン』です」

チラッと横を見るショボン。
二人の会話を黙って聞いていたドクオが慌てて口を開く。

('A`)「ど、『ドクオ』です」

( ^ω^)「『ブーン』ですお」

ξ゚听)ξ「『ツン』です」

川 ゚ -゚)「『クー』と申します。
本日は夜分にお伺いして申し訳ありません」

(アイネ)『気にすることは無いさ。
こんな時間、まだ昼も同じだよ』

川 ゚ -゚)「そうですか」

(アイネ)『それで、話ってのはなんだい?』

('A`;)!

NPCとの会話。

通常NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)との会話では、
一人一人に一定の会話設定がされており、
そのキャラクターに沿ったキーワードを与えることが出来れば、
会話が成立して話を進めることが出来る。

例えばある村の村長に『何かお困りですか?』といったようなセリフを言えば、
【村を襲うゴブリンを退治しろ】というクエストを始めることが出来るが、
『今日はいい天気ですね』と話しかけても、クエストは始まらない。

('A`;)(こんな状況で何の話をしろってんだよ)

.

442 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:37:29 ID:txZEg.9U0

(´・ω・`)「この世界の話をお聞かせ願いますか?」

('A`;)(はあ!?)

アイネの顔を見ながら迷うことなく告げるショボン。

焦った様にショボンの顔を見るドクオを見て、
残りの三人もショボンの顔を見た。

しかしショボンはそんなことは全く気にすることなくアイネの顔をじっと見ている。

すると、アイネの上に浮かんでいたエクスクラメーションマークの色が変わった。

('A`;)「え?」

思わず声を出してしまったドクオだったが、
アイネは気にすることなくショボンを見ながら笑い出した。

(アイネ)「合格だ。話してやろう」

('A`;)(はああああああ?)

豪快に笑いながらショボンの顔を値踏みするかのように見るアイネ。
そして笑い終わると、表情を引き締めた。

(アイネ)「私に話をさせる気にさせたのは、あんたが初めてだよ。
だが、全部を話すにはどれだけの夜を重ねればいいのか分からないほどこの世界は広い。
まずは自分で調べるんだね」

立ち上がるアイネ。
そして二階に上がる階段に向かった。

(アイネ)「ついてきな」

(´・ω・`)「はい」

立ち上がったショボンがアイネに続き、
その後を慌てて四人が続いた。

.

443 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:39:13 ID:txZEg.9U0



二階に上がると、人が二人余裕で通れる廊下の先にあるドアに連れて行かれた。

('A`)「おれが泊まったのは手前のドアだ」

川 ゚ -゚)「正式サービスで変わったのか?」

('A`)「分からない……。でも、この受け答えは無かったと思うから、
おそらくは変更したとおもう。
それか、テストの時は実装してなかっただけで、元からこうする仕様だったのか」

ドアは全部で四つ。
階段近くのドアを見ながらドクオは先に進んだショボンの後に続く。

(アイネ)「ここだよ」

アイネが奥の扉の一つを開くと中に入った。
その後をショボン達が続く。

(´・ω・`)「これは」

壁一面の本棚と、そこに収められた本。
ところどころに開いている個所はあるが、ほとんどが埋まっていた。

(アイネ)「ハウンゼン家が集めた知識。
『ハウンゼン=レコード』だ。
これが見たかったんだろ?」

(´・ω・`)「はい」

('A`;)「(えーーーー)」

(;^ω^)「(ショボン)」

ξ゚听)ξ「(この男)」

川 ゚ -゚)「(これが吉と出るか、凶と出るか)」

.

444 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:41:16 ID:txZEg.9U0

(アイネ)「ホントに度胸があるね。
そういうやつは嫌いじゃない」

ニヤッと笑ったアイネに笑顔で返すショボン。

('A`)「(どういうフラグなんだ?)」

( ^ω^)「(ショボンすごいお)」

ξ゚听)ξ「(うまくいきやがった)」

川 ゚ -゚)「(吉と出たようだな)」

(アイネ)「といっても、今お前達が読めるのはこの辺りだけだろう」

アイネが扉の近くの本棚に向かい、一冊の本を出した。
そしてそれをショボンに渡す。

(´・ω・`)「【はじまりの街】」

('A`)「この街の名前だな」

表紙に書かれた文字を読んだショボン。
開くと、そこには目次があった。

(´・ω・`)「これは……もしかしてクエストリスト?」

('A`)「なに!」

慌てて横から覗き込むドクオ。
そして目を輝かせた。

('A`)「うを!まじか!」

ξ゚听)ξ「クエストリスト?」

( ^ω^)「クエストっていうのは、
街や外にいるNPCから請け負うことの出来るアルバイトみたいなものだお。
街の中での簡単なお使いから、外に出て採取したりモンスターを何匹か倒したり、
あとは中ボスクラスのモンスターを倒すなんてのもあるお」

.

445 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:45:08 ID:txZEg.9U0

川 ゚ -゚)「クエスト……か。
それで、あの本にはそのリストが載っているのか?」

( ^ω^)「みたいだお。
通常は自分でNPCに声をかけて探さなきゃいけないから、
リストがあればすごく楽になるお」

ξ゚听)ξ「攻略本みたいって事?」

( ^ω^)「おっお。少し違うけど、そんな感じだと思ってくれていいお」

川 ゚ -゚)「なるほど。
それであんなにドクオが喜んでいたわけだな」

ξ゚听)ξ「でも、なんかテンション下がってない」

三人の視線の先、先ほどまで目をキラキラさせていたドクオが目に見えて項垂れていた。

('A`)「クエストタイトルしか書いてねーじゃん」

(´・ω・`)「どこで請け負えるかも書いてあるよ?」

('A`)「まあそれは少しは役に立つけどさ。
攻略方法はともかく内容も書いてないとか……」

(アイネ)「当たり前だ。
冒険者なら、冒険者らしく自分で埋めるんだね」

('A`)「そりゃそうだけど…」

棚の二冊目を手に取るドクオ。
その本の表紙には【ホルンカ】と書かれている。

('A`)「街ごと有るんだな」

本を開くドクオ。
しかし、今度はクエストネームも書かれておらず、目次には数字だけが並んでいた。

('A`)「……名前も無いとか」

.

446 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:50:38 ID:txZEg.9U0

(´・ω・`)「行くことは出来るけど、
行ったことが無い街の本は見られるけどクエストネームすら分からない。
っていうことかな?
それにほら、この棚の本は出す事も出来ない」

違う棚の本に手をかけるショボン。
しかし出す事すらできない。

('A`)「この部屋、意味あるのか?いやない」

(´・ω・`)「そう?
自分で記録を取ることを考えたらかなり楽だよ?」

('A`)「そりゃそうだけどよ」

(´・ω・`)「それに、ヒントもある。
例えばこのはじまりの街の本。
ここ、ナンバーは書いてあるけどクエストネームは書いてない。
つまり、隠しクエストがあるってことだよね。多分」

('A`)「!なるほど。
隠しが有るか無いかが分かるだけでもかなりの手間が省ける……か?」

(アイネ)「自分の力で埋めることが出来れば、
それは歴史であり、経験であり、知識であり、糧となる。
そして、それ以外にここに来ればいいことがあるかもしれんぞ。
私を始め、ハウンゼンの者は知識や話が好きだからな」

(´・ω・`)「そうですね。ここの本をすべて埋められるよう頑張ります」

(アイネ)「頑張ってくれ。
といってもそれだけじゃ、折角ここに一番最初に来たのにつまらんだろう」

そう言いながら懐から一冊の本を取り出し、ショボンに渡した。

(´・ω・`)「……【アインクラッド】?」

.

447 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:54:11 ID:txZEg.9U0

(アイネ)「このアインクラッドの成り立ちと歴史をしたためた本だ。
その本を受け継ぐことが『ハウンゼン家』の当主たる証だから
やることは出来ないが、ここに来ればいつでも読ませてやろう」

(´・ω・`)「ありがとうございます」

(アイネ)「さて、そろそろ夜も更けてきた。
お前達、今夜の宿はとってあるのか?」

(´・ω・`)「いえ……」

アイネに促されて部屋を出る五人。
そして向かいのドアを開けたアイネが、そこに五人を通した。

(´・ω・`)「ここは……」

('A`)「βの時より豪華だ」

ξ゚听)ξ「なかなかね」

川 ゚ -゚)「居心地が良いな」

一階の最初に通された部屋が嘘のような部屋だった。
中央に置かれたソファーセットは大きさこそ先ほどの部屋のもとの同じだが、
見ただけで格段に良いものであるのが分かる。
部屋には他にも暖炉や燭台があり、天井には小さいがシャンデリアまである。
壁沿いには水差しの置かれたテーブルや棚などが備え付けられていた。

(アイネ)「三日くらいなら、ただで泊めてやろう」

('A`)「(ここでこのルートか……)」

(アイネ)「実はお前達が来る前に玄関にいたずらをされてな。
冒険者がいると分かればいたずらする奴もいないだろう」

ドクオを見ながらアイネが話す。
思わず視線を逸らしたドクオを見て、唇の端で笑った。

(´・ω・`)「いえ、払わせてください」

.

448 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:56:25 ID:txZEg.9U0

('A`)「え?ショボン?!」

(アイネ)「……どういうことだい?」

アイネの表情から笑みが消え、
冷たくショボンを見下ろす。

(´・ω・`)「今はやられてはいないのかもしれませんが、
おそらくここは宿屋をされていたのではありませんか?」

(アイネ)「ああ。そうだ」

(´・ω・`)「でしたら、ちゃんと料金は徴収してください。
【ハウンゼン=レコード】を読みに来る度に泊まらせてもらうわけにもいきませんし、
これからあの部屋を使わせていただくにあたって、
出来るだけ対等でいられるようにさせていただきたい」

('A`)「お、おい……」

(アイネ)「悪いがこの部屋は、というよりこの宿はもともと特別室のみでね。
どの部屋もこの街の通常の宿屋とは格も桁も違う。
あんた達に払えるとは思えないよ」

(´・ω・`)「では、外に宿を取ります。
この本を読む間、一時間ほど先ほどの
【ハウンゼン=レコード】の部屋をお貸し願いますか」

冷たく見下ろすアイネと、臆することなく対峙するショボン。

数分誰もしゃべらずその状態が続き、
ドクオが意を決して話しかけようと口を開こうとしたその瞬間、
アイネが大きな声で笑い始めた。

('A`)「(へ?)」

(アイネ)「意地っ張りなやつは嫌いじゃない。
しかもこのアイネさんに、
元宿屋ギルド総元締めのアイネ=ハウンゼンに意地を通すとは、
気に入ったよ。あんた」

.

449 ◆dKWWLKB7io:2015/12/05(土) 23:58:45 ID:txZEg.9U0

心底面白そうに笑っているアイネ。

(´・ω・`)「では……」

(アイネ)「だが、あたしにも意地はある。
気に入った奴から宿代を貰うなんて、
アタシの名に傷が付くからね。
しかも他の宿に行かれたなんてことは以ての外だ。
絶対にここに、ただで泊まってもらうよ」

(´・ω・`)「……」

(アイネ)「明日、用事をいくつかこなしてくれ。
それが宿代ってことで良いだろう」

(´・ω・`)「用事ですか?」

(アイネ)「もちろん、今のあんた達にできるレベルでだよ。
今回はこの街の中で色々とお使いをしてもらうだけさ。
勿論、この先出来ることが増えたら色々やってもらうけどね。
それでどうだい?」

(´・ω・`)「そうですね……」

(アイネ)「女の我儘を笑ってきくのも、男の度量ってもんだよ?」

(´・ω・`)「はい。分かりました」

(アイネ)「よし!成立だ!」

笑顔で右手を差し出すアイネ。
そしてショボンも笑顔でその右手を取り、握手を交わす。

(アイネ)「この部屋はいつでもこれから好きな様に使ってくれ」

五人の耳に、チャイムの様な電子音が響いた。

('A`)「クエスト完了!?」

.

450 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 00:03:03 ID:oINB0dP60

(´・ω・`)「え!?」

( ^ω^)「お!?」

ξ゚听)ξ「どういうことよ」

川 ゚ -゚)「今のは?」

そして続いて同じような、けれど旋律の違う音が彼らの耳に別々に鳴っていた。

(アイネ)「それじゃまた明日朝に待ってるよ」

呆然とする五人に構うことなく、
アイネはもう一冊小さな本をショボンに手渡した。

(アイネ)「これは一番最初に辿り着いた報酬だよ。
大事に使うんだね」

アイネは今日で一番人の悪い笑顔を見せると、部屋を出て行った。

('A`)「ショボン、それは?」

(´・ω・`)「【アイネの手帳】」

川 ゚ -゚)「アイネの手帳?」

小さな本を開くショボン。
最初の数ページに幾つかの文章が書かれており、
その次のページには数字の羅列が書かれ、
その先のページは空白だった。

.

451 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 00:05:52 ID:oINB0dP60

(´・ω・`)「これも基本的にはクエストを記録する手帳みたいだね。
多分明日の『依頼』を筆頭に、
彼女から請け負うクエストでこれを埋めていくんじゃないかな。
そして、最初のページに幾つか書いてあるよ。
この手帳を持って来た者は、
【アイネ=ハウンゼンの宿】を無料で使うことが出来る。
多分ここがその宿なんだろうね。
ただし、継続利用は最長七泊八日。
使用した後は、その直前に継続宿泊した日数分利用することは出来ない。
つまり最大泊数の一週間泊まったら、その後一週間は泊まることは出来ないってことみたい。
この手帳を持っている者は、【ハウンゼン系列の宿】に泊まる際に、
宿ごとのサービスを受けることが出来る。
この手帳を持っている者は、【ハウンゼン系列が売る建物】を購入する際に、
手帳を埋めている率に相応した割引価格で購入することが出来る。
他にもいろいろ書いてあるけど、
【ハウンゼン家】はアインクラッドで宿屋とか不動産業を営んでる、
大富豪って感じなのかな。
この手帳はハウンゼン系の店で使える割引パスポートってことみたい」

ξ゚听)ξ「あら、結構お得ね」

川 ゚ -゚)「うむ。役立ちそうだな」

('A`)「……」

(;^ω^)「……」

渡された手帳の内容を読んだショボン。
ツンとクーは部屋のソファーの座り心地を確かめながら素直に思ったことを口にしている。

川 ゚ -゚)「?どうした?二人とも呆けた顔して」

ξ゚听)ξ「締まりの無い顔が更にぼんやりしてるわよ」

(´・ω・`)「どうしたの?」

ショボンもソファーに腰掛け、
ツンとクーの二人とかけ心地について話しはじめても、
二人はぼんやりと立ちつくしていた。

.

452 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 00:07:44 ID:oINB0dP60

(;^ω^)「……」

('A`)「……」

(´・ω・`)「ホントにどうしたのさ二人とも」

(;^ω^)「おーー……。
ねえドクオ、あの手帳って……」

('A`)「ああ。おそらく超レアアイテムだ」

(´・ω・`)「ふーん。そうなんだ」

ξ゚听)ξ「あら、珍しいアイテムなの?」

川 ゚ -゚)「ふむ。まぁ全員がこんなのを持っていたら、
宿屋の商売はあがったりだな」

ξ゚听)ξ「それもそうね」

(´・ω・`)「そうだね。
商売にならないかも」

笑う三人をよそに、ドクオとブーンの表情は更に強張る。

('A`;)「っていうか、超レアアイテムなんてレベルを超えて、
武器で言うところの魔剣クラス、
いや、多分、伝説級(レジェンダリー)……」

(;^ω^)「伝説級武器(レジェンダリー・ウエポン)ならぬ、
伝説級アイテムかお?」

('A`;)「……サーバーに一個しかないやつかも。
さっきあの人【一番最初に辿り着いた報酬】って言ってたよな」

(;^ω^)「うわぁ……」

ξ゚听)ξ「さっきから何ぼそぼそ話してるのよ。
このソファー座り心地良いわよ。
座ったら?」

.

453 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 00:10:43 ID:oINB0dP60

川 ゚ -゚)「レジェンダリー?伝説級?
その手帳がそんなにすごいのか?」

('A`;)「凄いなんてもんじゃない。
……多分」

(;^ω^)「サーバーに、この世界に一つしかないアイテムかもしれないんだお」

ツンの隣に腰掛けるブーンと、一人用のソファーに腰掛けるドクオ。

テーブルの上に開かれた手帳をこわごわ覗き込む。

(´・ω・`)「レアアイテムかなとは思ったけど、これってそんなに凄いの?」

('A`;)「多分な。
規格外だろ。こんなの」

(; ^ω^)「さっきも言ったけど、
もしかすると世界に一つだけのアイテムかもしれないんだお」

ξ゚听)ξ「ふーん」

川 ゚ -゚)「ほお」

('A`)「……相変わらず感動薄いなおい」

ξ゚听)ξ「まだそんなに恩恵受けてないし」

川 ゚ -゚)「実感が湧かないな」

('A`)「そうですか」

(´・ω・`)「あとさ、なんかレベル上がってるんだけど」

('A`)「え?あ、さっきの音!」

ウインドウを開いていたショボン。
慌ててドクオが開き、残りの三人もそれぞれに開いた。

.

454 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 00:12:52 ID:oINB0dP60

('A`)「……レベル2。
っていうか、もうすぐ3?
なんだこれ……チートすぎる」

ξ゚听)ξ「ねえ、レベル上がったから一緒に行けるんじゃない?」

('A`)「え?ああ……。いや、ダメだ。
レベル上げってのは、戦闘の経験を積むってことでもある。
いくらレベルが上がっても、経験が無いのは恐い」

ξ゚听)ξ「そう……」

( ^ω^)「頑張ってくるから、待っててほしいお」

ξ゚听)ξ「うん。頑張ってね。
絶対戻ってきなさい」

( ^ω^)「はいだお!」

川 ゚ -゚)「それで、結局なんだったんだ今のは」

('A`)「おれがβの時には、
部屋をただで借りるための隠しイベントだったんだ。
まさか、こんな事になるなんて」

(´・ω・`)「もともとそうだったけどテストのときは隠していたのか、
正式サービスに際して変わったのか……」

川 ゚ -゚)「こういったイベントをするとレベルが上がるのか?」

('A`)「イベントやクエストでも経験値は入るけど、
ここまで入るのは……。
まあ今回のも、本当はもう少し経ってからクリアされるのを想定していたかもしれないな。
ある程度レベルが上がってからなら、
この量の経験値が加算されても簡単にレベルが上がったりしないだろうし」

ξ゚听)ξ「ねえ、明日頼まれるお使いをちゃんと出来れば、
また経験値が入るかもしれないのね?」

.

455 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 00:14:58 ID:oINB0dP60

('A`)「そうか。そうだな。可能性はある。
宿代の対価だから、お金やアイテムは手に入らないだろうし」

ξ゚听)ξ「じゃあ私達もやるからね?ショボン」

(´・ω・`)「……うん。分かった」

('A`)「大丈夫だろ。
街の外に出さえしなきゃ」

川 ゚ -゚)「ああ。気を付けるよ」

(´・ω・`)

( ^ω^)「お?ショボンどうしたんだお?
また難しい顔して」

ξ゚听)ξ「ダメだって言ってもやるわよ?」

(´・ω・`)「いや、それは一緒にやろう。
安全にレベルを上げられる可能性があるなら、やっておいたほうが良い。
経験も大事だけど、レベル、最大HPを上げられるチャンスを逃す手は無いからね」

( ^ω^)「じゃあどうしたんだお?」

(´・ω・`)「ドクオ、こういったβテストから変更ってのはよくあるのかな?」

('A`)「ん?ああ、そうだな。結構ある。
行けないところが行けるようになったり、クエストが増えたり。
今回みたいに分岐が増えたり」

(´・ω・`)「敵は?」

('A`)「敵?」

(´・ω・`)「見た目は同じモンスターだけど、動きが変わったり、
弱点が変わったり」

('A`)「!あ、ああ。そうだな。ある。…ああ、あるな。うん」

.

456 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 00:16:13 ID:oINB0dP60

(´・ω・`)「それじゃあ、」

('A`)「ただ、ここ周辺のモンスターと、
次の街に行くまでの道すがらのモンスターは大丈夫だと思う。
まだ武器を持つタイプは出てこないから攻撃のバリエーションも少ないし。
もし出没モンスターが変わっていたら、一度撤退するよ」

(´・ω・`)「うん。気を付けて」

ξ゚听)ξ「ブーン、ドクオ……」

( ^ω^)「大丈夫だお。
頑張ってくるから、ツンとクーもクエスト頑張って!」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ゚听)ξ「まったく、能天気なんだから」

( ^ω^)「おっおっ」

('A`)「さて、じゃあそろそろおれ達は行くか」

立ち上がるドクオ。
続いてブーンが立ち上がり、
自然と残りの三人も立ち上がる。

('A`)「見送りは良いぞ。
外に出ないほうが良いだろ?」

(´・ω・`)「うん……。
ドクオ、一つお願いがある」

('A`)「ん?」

(´・ω・`)「出来るだけβテスターだってことが周りに知られないようにしてくれ」

('A`)「?ああ、わかった。
でも、何故だ?」

.

457 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 00:17:49 ID:oINB0dP60

(´・ω・`)「……長くなるし、杞憂で終わる可能性もある。
……戻ったら説明するよ、だから」

('A`)「わかったよ。
おまえが言うなら隠しておいたほうが良いんだろう。
気を付ける」

(´・ω・`)「うん。よろしく」

ξ゚听)ξ「……いってらっしゃい」

( ^ω^)「行ってくるお」

川 ゚ -゚)「二人とも、気を付けて」

('A`)「ああ」

互いの顔を見て頷きあう五人。

そしてせめて下まで行こうとする三人をドクオが制し、
ドクオとブーンだけが部屋を出て行った。

扉のしまる音がツンの胸を苦しめ、
クーの心に不安を呼び、
ショボンに後悔を覚えさせた。

けれど三人はそれを外には出さず、
しばらくの間しまったドアを見つめていた。






.

 

465 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:07:52 ID:oINB0dP60




3.武器





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466 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:11:51 ID:oINB0dP60

『はじまりの街』から『ホルンカ』への道。
最短ルートではないが、
ドクオ曰く『モンスターがそれほどでない道』とのことだった。

('A`)「ブーン、片手剣の良さって、なんだと思う?」

( ^ω^)「お?」

ドクオが指示した通りに進んできたブーン。

立ち止まり、道すがらの大樹の下に隠れている二人。
ブーンはやってきた道を、一目散に駆け抜けた道を振り返る。

そこには四体の狼がいた。

闇に浮かぶ赤い八つの光、瞳と思われるその光を見て、
思わず身震いした時に、ドクオに問いかけられた。

( ^ω^)「だいたい初期装備とか主人公は片手剣だおね。
良さ……。良さ……。良さ……」

狼を気にしながらドクオと喋る。

('A`)「大丈夫だ、この場所は後ろの奴には縄張り外だから。
あと一分くらいで叢に戻る。
そしたらこの先に一匹狼が出る。
それは倒そう。
そこでは、順調に倒すことができれば、
倒した後に次の奴が出てくるはずだ。
ここで少し経験を積む」

( ^ω^)「わかったお」

('A`)「で、なんだと思う?」

(;^ω^)「おー。使いやすいのかお?」

.

467 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:13:42 ID:oINB0dP60

('A`)「それも一つだな。
片手で持って、手の延長線上の流れで攻撃することが出来る。
でも、それは一番じゃないと、おれは思う」

( ^ω^)「じゃあなんだお?」

('A`)「もう片方の手に盾を持てる」

( ^ω^)「おお!そうだおね」

('A`)「剣と盾、攻撃と防御を一つずつもてるんだ。
センスは必要だけど、かなり美味しいと思う」

( ^ω^)「なるほどだお。
あれ?でもドクオはもってないおね?
僕にも買えって言わなかったし」

('A`)「おれのやりたいスタイルには盾が邪魔なんだよ。
スキルスロットも二つしかないから剣と盾で埋まっちゃうし。
で、ブーン、お前も多分盾は持たないほうが良いと思う」

( ^ω^)「なんでだお?」

('A`)「お前の持ち味のスピードが損なわれる可能性が高い。
盾ってのは、相手の攻撃を受けて防ぐのが基本だ。
でもお前の持ち味がスピードなら、避けることが可能かもしれない」

( ^ω^)「スピード……」

('A`)「ただこれはおれの勝手な意見だ。
やりながらスタイルを決めれば良い。
スキルスロットの数にも限りがあるしな」

( ^ω^)「お……」

('A`)「さ、うしろの狼も去ったし、進むぞ。
まずはおれがやるから、二体目はブーンも参加してくれ」

( ^ω^)「わかったお」

.

468 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:15:59 ID:oINB0dP60

立ち上がるドクオ。
ブーンも立ち上がり、二人とも剣を構える。

('A`)「いくぞ」

( ^ω^)「おうっ!」

二人は闇に向かって走り出した。







二人が部屋を出た後、少しの間雑談していたが、すぐに沈黙が襲ってしまった。

それを感じ、立ち上がるショボン。

そして壁際に設置された小さいテーブルの上の水差しを確認して、グラスに手をかける。

(´・ω・`)「飲む?」

ξ゚听)ξ「え。あ、わたしは……」

川 ゚ -゚)「ああ。頼む。
ツンも飲むだろ?」

ξ゚听)ξ「え、あ、うん。そうね。よろしく」

(´・ω・`)「了解」

グラスを三つ用意して水差しを手にしようとすると、間違えて指先でタップしてしまった。
するとウインドウが現れた。

(´・ω・`)?

ウインドウを読み、頷いた後操作を始めるショボン。

.

469 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:19:46 ID:oINB0dP60

そして横の棚からティーセットを出してグラスを片付け始めた。

川 ゚ -゚)?

ξ゚听)ξ?

クーとツンが見守る中更にいくつか操作をすると、
トレイの上にティーセットを乗せてショボンが戻る。

(´・ω・`)「なんかね、お茶みたいのがあったんだ」

テーブルにトレイを置いた後、二人の前にソーサーにのったカップを置いた。

ほのかに湯気が立っている。

(´・ω・`)「凄いよね。あたたかいよ」

先程までと同じ位置に座ってカップを手にしたショボン一啜りして、呟いた。

それを見たクーとツンもカップを手に取る。

ξ゚听)ξ「ほんとだ……」

川 ゚ -゚)「うむ。あたたかいな」

口を付けると、表情が和らいだ。

川 ゚ -゚)「……優しい味だな。
ほんのり甘い」

ξ゚听)ξ「昔飲んだような、初めて飲んだ様な。
不思議な味」

(´・ω・`)「……」

そんな二人を見て表情を緩めたショボン。

(´・ω・`)「さて、今日は疲れたでしょ。
早めに休もうか」

.

470 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:21:31 ID:oINB0dP60

立ち上がり、奥のドアを開けるショボン。

一つ目と二つ目のドアは寝室のドアで、
三つ目は浴室に続くドアだった。

(´・ω・`)「こっちにはお風呂もあるよ」

ξ゚听)ξ「今日はとりあえず横になろうかな」

川 ゚ -゚)「ああ」

ショボンが二回目に開けたドアの中を覗く二人。
セミダブルサイズのベッドが二つあり、リビングと同じ色調の部屋は、
落ち着くことが出来そうだった。

ξ゚听)ξ「この部屋使うから、入ってこないように」

(´・ω・`)「わかってます」

ξ゚听)ξ「よろしい」

川 ゚ -゚)「ショボンはまだ休まないのか?」

(´・ω・`)「とりあえずさっきの本を読まないと。
あとあの本の部屋を隅々まで調査したいし」

川 ゚ -゚)「そうか……。
手伝いたいところだが、逆に負担になるだろうから止めておこう。
あまり無理はしない様にな」

(´・ω・`)「うん。ありがとう」

ξ゚听)ξ「ちゃんと寝なさいよ」

(´・ω・`)「ありがとう。うん。ちゃんと休むよ」

その後明日の事も簡単に決めた後、
ショボンに就寝の言葉を告げてから二人は寝室に入った。





.
472 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:24:46 ID:oINB0dP60




部屋に入った後、
それぞれにベッドに腰掛ける二人。
スプリングを確かめた後、
ツンはそのままの姿で横たわった。

ξ゚听)ξ「不思議な気分。
疲れているから眠れそうだけど、
夢の中で眠る様なものなのかな」

川 ゚ -゚)「体が疲れているように感じるが、
現実世界の体は疲れていない。
本当に変な気分だ」

ξ゚听)ξ「倦怠感?
だるいとか、精神的に疲労しているっていう。
あれなのかな。
それが、身体の疲れのように感じているのかも」

川 ゚ -゚)「……そうか。着替えが無いんだな」

ξ゚听)ξ「え?」

川 ゚ -゚)「汚れたりしているわけではないが、服は脱がないとじゃないか?
特に防具はそれなりにごわごわしているというか……」

ξ゚听)ξ「ああ、うん。そうね。
この革のやつ、外さないとか。
普通に脱ぐのとは違うのよね」

川 ゚ -゚)「ああ。多分ウインドウで操作るんだと思う」

腰掛けたままウインドウを開くクー。
そして操作をすると、そのままの体勢で胸当てと腰回りの装備品が消える。

川 ゚ -゚)「ふむ。普通に脱ぐよりは楽だな。たたまなくてよい」

ξ゚听)ξ「何言ってるのよ」

.

473 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:27:03 ID:oINB0dP60

横になったまま、天井を向いたままウインドウを操作するツン。

胸当て、腰の装備が消える。
そしてそのまま布の衣服も全て消した。

川 ゚ ?゚)「ツン?」

下着姿になったツンを見て首をかしげるクー。

ξ゚听)ξ「……パジャマとか欲しいな。
売ってるのかな。そういうの」

川 ゚ -゚)「どうだろうな。自分で作る事も出来るらしいぞ」

ξ゚听)ξ「私の家庭科のレベルは知っているでしょ」

川 ゚ -゚)「こちらの世界ではスキルが全てだ。
裁縫スキルさえちゃんと持っていれば色々作ることが出来るらしいぞ」

ξ゚听)ξ「じゃあ針とか糸とか自分で縫ったりしなくていいの?」

川 ゚ -゚)「そう思われる」

ξ゚听)ξ「そうなんだ。やってみようかな」

川 ゚ -゚)「そうしたら私の分も作ってくれ」

ξ゚听)ξ「りょうかーい」

白い下着姿のまま掛け布団に包まるツン。

川 ゚ -゚)「何をしているんだ」

ξ゚听)ξ「へへへ。ふかふかで気持ち良いよ」

川 ゚ -゚)「まったく」

胸当てや靴といった『装備』のみを解いたクーが立ちあがり、
扉の横のパネルをタップする。

.

474 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:29:17 ID:oINB0dP60

タップするごとに部屋の光が少しずつ暗くなった。

川 ゚ -゚)「ツンは、真っ暗はいやだったな」

ξ゚听)ξ「うん。ありがと」

壁の燭台だけが、ぼんやりとしたオレンジの光で部屋を満たした。

自分のベッドにもぐりこむクー。

何度か寝返りをうった後、ウインドウを出した。

川 ゚ -゚)

小さな電子音が響く。

ξ゚听)ξ「脱いだ方が気持ち良いでしょ」

川 ゚ -゚)「うむ。
素肌にシーツの感触と毛のもふもふ感が直接当たって、
不思議な気分だ。
ツンも普段はパジャマだよな?」

ξ゚听)ξ「うん。パジャマ。クーは浴衣?」

川 ゚ -゚)「寝間着だな。
だが最近はスエットにした」

ξ゚听)ξ「変えたんだ」

川 ゚ -゚)「楽だな。あれは」

ξ゚听)ξ「女の子なんだから、可愛いのにしなさいよ」

川 ゚ -゚)「上下グレーではダメか?」

ξ゚听)ξ「女子力低いので却下です」

川 ゚ -゚)「ピンクはあまり好きではないんだがな」

.

475 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:31:49 ID:oINB0dP60

ξ゚听)ξ「ピンク以外にもオレンジとか花柄とかあるでしょ。
クーは明るすぎない赤が似合うから、そんな感じのにするように」

川 ゚ -゚)「……善処しよう」

ξ゚听)ξ「まったく」

それぞれに掛け布団に包まって会話をする二人。

言葉だけを抜き出せば取りとめのない『普段の』会話。

だがそこに流れる感情は、『普段』とはかけ離れていた。

そして沈黙が訪れる。

隣のベッドの上の友人が身じろぎ一つしないのを感じて、
クーは瞳を閉じた。

ξ゚听)ξ「寝た?」

川 ゚ -゚)「いや」

ξ゚听)ξ「そっち、行って良い?」

川 ゚ -゚)「ああ」

閉じると同時に声をかけられ、返事をした。
そして瞳を開けた時には、隣に友人が潜り込んできた。

ξ゚听)ξ「……ごめんね」

川 ゚ -゚)「いや、大丈夫だ。
セミダブル程度の広さがある」

ξ゚听)ξ「いや、そうじゃなくて」

川 ゚ -゚)「それとも何か?私と二人では狭いとでも?」

ξ゚听)ξ「もう……」

.

476 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:34:49 ID:oINB0dP60

寄り添うように横たわる二人。

お互いの肌が触れ、自然に繋がれる手。

二人は自他ともに認める親友だが、
性質からべたべたとする方ではない。
同じ格好をして手を繋いで繁華街を歩く女同士を見て
『バカみたい』
と同時に思う程度には冷めていて、気もあっている。

だが、今日は違った。

強く握られる手。

ξ゚听)ξ「なんか、変なことになっちゃったね」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ゚听)ξ「デジタルの世界。
ハイテクノロジーの成果。
ゲームの中」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ゚听)ξ「そう、ゲームの中なのよね。
敵を倒してレベルを上げて、
自分を鍛えて更に敵を倒す。
ゲームの世界」

川 ゚ -゚)「そうだな。ゲームの中。
ゲームの世界だ」

ξ゚听)ξ「でも、遊びじゃなくなっちゃったんだね」

川 ゚ -゚)「遊んで、勝って、負けて、終わって、帰って、
『楽しかった』って笑うことが、出来なくなってしまった」

ξ゚听)ξ「ゲームだけど、遊びじゃない。
命がけのゲーム」

.

477 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:37:33 ID:oINB0dP60

川 ゚ -゚)「武器で敵を倒さなければ、自分が死ぬ。
現実世界の自分が、死んでしまう」

訪れる沈黙。

クーは自分の手を握るツンの手が強くなったのを感じた。
そして彼女が自分に向かって寝返りをうったのを感じ、
なんとなくツンの方向に身体を向けた。

川 ゚ -゚)!

ξ 凵@)ξ「……ごめん」

つないでいた手が解かれた。
そしてそのかわりにツンの両手はクーの背中に回された。

ξ 凵@)ξ「ごめん……」

謝りながら、クーに抱きつくツン。

下着越しに互いの体温を感じる。

川 ゚ -゚)「ツン……」

ツンの名を呼び、自分の胸に顔をうずめる彼女の体と頭を抱える様に両手を回すクー。

川 ゚ -゚)「こんな状態になったんだ、私も心細い」

ξ 凵@)ξ「違うの……」

川 ゚ -゚)「ツン?」

ξ 凵@)ξ「わたし、いっしゅん、しょぼんのせいだって、思った」

川 ゚ -゚)!

クーに抱きつくツンの腕の力が強くなる。

ξ 凵@)ξ「わたし、いっしゅん、ショボンに言われる前にそういう風に思っちゃった」

.

478 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:40:00 ID:oINB0dP60

川 ゚ -゚)「ツン……」

ξ 凵@)ξ「そして、ショボンが自分のせいだって言った時に、
本当に、本当に一瞬だけど、『その通りだ!お前のせいで!』
って思ったの」

川 ゚ -゚)

ξ 凵@)ξ「でも信じて!本当に一瞬なの!
すぐにそんなの違うって思ったの!
ここには自分の意思で来たんだって、分かってた!
でも、でも、でも……ごめん……」

川 ゚ -゚)「そんなこと、思って当然だと思う」

ξ 凵@)ξ!

川 ゚ -゚)「ただ私や、ドクオや、ブーンは、
ツンよりはショボンと付き合いが長いから、
そんな風に思わなかった。
それだけだ」

ξ 凵@)ξ「ちがう……」

川 ゚ -゚)「あとな、私は……。
そしてきっと、ブーンやドクオも、ショボンの言葉に安心したんだ」

ξ 凵@)ξ「え?」

川 ゚ -゚)「ショボンは、私達を生きて向こうの世界に戻すと言った。
あいつは不言実行でもあるが、それ以上に有言実行だ。
一度言ったことは、何としてでもやり遂げる。
だから、あいつがそういうなら大丈夫だろうって思ってしまったんだよ

ξ 凵@)ξ「信頼しているのね」

.

479 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:42:18 ID:oINB0dP60

川 ゚ -゚)「そんな良いもんじゃない。
私に限って言えば、結局甘えてしまっているんだよ。
あの日、あの土手で私に『qoo』のオレンジを手渡して泣き止ませた後、
要領を得ない私の言葉を組み立てて家まで連れて帰ってくれたあの日のショボンに、
私はまだ甘えているんだ。
あの日繋いでくれた手の温かさに、
私はまだ甘えてしまっているだけなんだ」

ξ 凵@)ξ「クー」

川 ゚ -゚)「だから、ツンの持った感情の方が当たり前で、当然なんだ。
おそらく、自分を責めているショボンの心もな。
無条件であいつを信じている、
一瞬たりともあいつを責めなかった私達の方が、異常なんだ。
だから、ツンは気にしなくていい」

ξ 凵@)ξ「でも……でも……」

川 ゚ -゚)「それにツン。
私はツンに感謝しているんだ」

ξ 凵@)ξ「え?」

川 ゚ -゚)「ツンが言ってくれなかったら、
ショボンの事を信じるだけの、
その言葉にただ従う人形のようになってしまっていたかもしれない」

ξ 凵@)ξ「クー」

川 ゚ -゚)「それではいけないんだ。
それでは、全ての責任をショボンに押し付けているのと変わらないんだ。
ショボンを頼るのと、すべて任せてしまうのは違う。
自分の事は自分で考える。
ショボンに頼るのはそれからなんだ。
それに頼ってしまうのはショボンだけじゃない。
ドクオにも、ブーンにも、そしてツン」

ξ 凵@)ξ!

.

480 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:44:18 ID:oINB0dP60

川 ゚ -゚)「ツンに頼ることだってある。
そして、私はみんなに頼ってもらえるようになりたい。
クーに任せておけば大丈夫だって言ってもらえるようになりたい」

ξ 凵@)ξ「……クー」

川 ゚ -゚)「今はまだこの胸を貸すことくらいしかできないが、
これからは他の事でも頼られたいよ」

ξ 凵@)ξ「クー……」

川 ゚ -゚)「それに、私が辛くなったら貸してくれるだろ?」

ξ 凵@)ξ「!うん!」

川 ゚ -゚)「その薄い胸を」

ξ 凵@)ξ「…………」

川 ゚ -゚)「…………」

ξ゚听)ξ「どうせ薄い胸ですよ。
っていうかなんなのよこの胸は!
体触る時にずるしたんじゃないの!」

川 ゚ -゚)「いや、現実世界より少し小さい気がするんだが……」

ξ゚Д゚)ξ「なんだとーーー!」

その豊満な胸に顔をうずめたまま、更に奥に進むように顔を横に振るツン。

川 ////)「つ、つんやめろ」

背中に回していた手を解き、両手で胸を外側から揉むツン。
親指や人差し指が時折小さな突起に触れるが、
優しく柔らかく、時に強くその柔らかくて白い胸を揉むので夢中であまり気にしていない。

川 ////)「つ、つん」

.

481 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:45:58 ID:oINB0dP60

ξ゚Д゚)ξ「ここがいいのか!
ここがいいのか!
でかい胸しやがってこの女!」

川 ////)「つ、つん」

押し退けようとしたクーの手がツンのお椀型の胸を包む。

ξ////)ξ「んっ!」

クーの、女性としては少しだけ大きめの手で優しく包める大きさではあるが、
その柔らかさと弾力は見事なものだった。

クーの甘い吐息に紛れ、
ツンの口からも色付いた息が漏れた。

川 ////)「な、なんだツンはこういう風にされたいのか?」

ξ////)ξ「ちょ、ばか、やめなさいよ」

親指の先で突起を弾いた後に下から優しく揉み上げ、
谷間を強調する様に両サイドから押さえる。

川 ////)「ど、どうだ?」

ξ////)ξ「ば、ばか……。こっちだって……」

川 ////)「んっ…」

ξ////)ξ「あっ」

川 ////)「そ、そこは……」

ξ////)ξ「だ、だめ……」



互いの胸や体を弄り始めた二人。

その攻防は、数分後転がった二人がベッドから落ちるまで続いた。



.

482 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:47:55 ID:oINB0dP60





ベッドから仲良く落ちた二人が我に返り、
互いの顔を見た後笑いあったころ、
隣の部屋ではショボンがダーツをしていた。

(´・ω・`)「……」

灯りの落とされた部屋の中で、
右手で構えた矢は青白く光り輝いている。

(´・ω・`)!

記憶の中の見様見真似だが様になっている姿勢で投げられた矢は、
吸い込まれるように的の真ん中に刺さった。

左手に持っていた別の矢を構えるショボン。

(´・ω・`)「まずは知識。
調べられることは、すべて調べる。
知れることは、すべて知る。
情報は、力だ」

投げられた矢は、青白い光をまとって的に刺さった。

(´・ω・`)「効率よく、力を手に入れる。
少しのことでは死なない体。
能力を身に付ける。
生きるための、力を身に付ける。
それぞれの特性に合致した、それぞれの力。
一人が最強になる必要はない。
いや、『最強』になんてならなくていい。
生き残るための、生き続けるための力があればいい」

二人が部屋に入った後に改めて室内を調査した際に見付けたダーツセット。

二十本の矢は、すでに半数が投げられていた。

.

483 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:51:27 ID:oINB0dP60

(´・ω・`)「お金の単位はコル。
モンスターを倒せば手に入るけど、それを目的に戦うのは避けたい。
戦いは、自分を鍛えるためだけでいい。
生きるための力を手に入れるためだけでいい。
アイテムを売って稼ぐなら、
売る相手は価格を設定できるプレイヤーの方が最終的には儲けることができるはず
採取、宝箱、ドロップ品よりも、
自分で作って売ったほうが価格をコントロールできる」

呟きとともに手から放れる矢。
寸分の狂いもなく狙った場所に当たっていることは全く意識せず、
自分の思考の中に入っているショボン。

(´・ω・`)「需要と供給。
自分たちにとって必要なもの。
他のプレイヤーにとって必要なもの。
武器、防具、装備、アイテム、生活用品。
おそらくは、武器や防具、装備にアイテムは手に入りやすいはず。
ゲームとしての必需品は、低層階からも準備されているはず。
でも、『生活』のための品はそれほどではないはず。
けれど、これからここで『生活』するのならば、
戦い以外の『遊び』が重要になってくる」

構えた矢の放つ青白い光が部屋の中を飛ぶ。

(´・ω・`)「死なないこと、生きることは考えるまでもない。
その先にある、ここで生活するということを。
笑顔で、笑うことのできる生活をするためにできることを考えろ。
四人の顔に、笑顔を。
泥水を飲むのは、僕だけでいい。
汚い部分は僕だけが知ればいい。
四人には、笑顔で……」






.

484 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:53:16 ID:oINB0dP60




《ホルンカ》
始まりの街の隣。
大きさは村と呼ばれる程度だが、
宿屋や武器屋といった基本の設備は整っている。

('A`)「さて、ここが目的の村だけど」

村の門をくぐり、圏内に入ったことを確認してから一息ついたドクオ。
そして振り返った。

('A`)「大丈夫か?」

(;^ω^)「つ、疲れたし危なかったけど、無事に着けてよかったお」

('A`)「だな」

剣を杖のようにして立ち、
肩で息をしている友を見つつ周囲を観察するドクオ。

('A`)「まずは一休みするか」

(;^ω^)「お?大丈夫なのかお?
来る途中の話だと、
このクエストを知っている片手剣使いは
殺到するんじゃないかって言ってたおね」

('A`)「思ったより……というか、
全然プレイヤーの気配がない」

( ^ω^)「そうなのかお?」
.

485 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:55:34 ID:oINB0dP60

('A`)「ああ。
来るのがだいぶ遅くなったから心配だったけど、
ほとんどいないみたいだ」

( ^ω^)「そうなのかお……」

('A`)「あれを聞いてすぐ行動に移せたのは、
やっぱり少ないみたいだな。
ショボンがいてくれてよかったよ。
おれ一人だったらここに来る度胸なんて出なかったかもしれない」

( ^ω^)「ショボン……」

剣を鞘にしまい、大きく伸びをしたブーン。

( ^ω^)「ドクオ、行くお」

('A`)「休まなくて大丈夫か?」

( ^ω^)「早く手に入れて、強くなって、みんなのところに帰るんだお」

('A`)「……そうだな」

決意を込めてにっこりとほほ笑んだブーン。
それにつられて笑顔を見せたドクオ。
だがすぐにその笑みは消えてしまった

( ^ω^)「ドクオ?」

('A`)「結局ショボンに頼っちまったんだな」

( ^ω^)「ドクオ」

表情と身振りでブーンを促しつつ歩き出すドクオ。
ブーンも慌てて歩き出し、彼の横に並んだ。

('A`)「この世界でなら、おれがイニシアチブをとれる。
あいつを指導して、かばって、一緒に強くなって、
ショボンにおまえもおれたちを頼ったっていいんだって分からせるつもりだったのに」
 
.
486 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:57:49 ID:oINB0dP60

( ^ω^)「ショボンに甘えてばっかりだったおね」

('A`)「ああ。
あいつが、その方が笑顔を見せてくれるから、
まずはそれでって思ってただけなのにな」

( ^ω^)「ショボンはまだ気にしているんだおね」

('A`)「多分。
三つ子の魂百までじゃないけどよ、
小学校でいじめられてたからって、
たまたまそれを気にしないおれ等に会って、
なんとなく一緒に遊ぶようになったからって、
そんなに気にしなくていいのによ」

( ^ω^)「本当に、それだけなのかお」

('A`)「ん?」

( ^ω^)「いや、本当にそれだけなのかなって思ったんだお。
それだけの理由なのかなって」

('A`)「んー。
まあ、いじめが無くなってクラスに馴染みかけたのが小5の途中。
中学校に入る前にはあいつの天才性でまた微妙にはぶられ始めてたからな」

( ^ω^)「中学校に上がる前の春休みに、
本城病院がマシログループの総合病院になって、
ショボンがその子供ってことが広まって」

('A`)「ゴマすって媚びる奴らと、
あからさまに陰口いうやつらばっかりで」

( ^ω^)「私立に通えって聞こえるように言ってたやつもいたおね」

('A`)「いたな。
マジむかついたから、下駄箱にごみ入れといた」

(;^ω^)「ドクオ……」

.

487 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 22:58:59 ID:oINB0dP60

('A`)「ツンがあの場にいたらすごいことになってただろうな」

(;^ω^)「初めて学区が違って良かったって思えたお」

('A`)「表立ってのいじめってのは無かったと思うけど、
居心地は良くなかっただろうな」

( ^ω^)「私立に行かなかったのは僕たちと離れたくなかったって本当なのかお」

('A`)「どうだろうな。
おばさんが笑いながら言ってたけど」

( ^ω^)「でも、幼稚園で行ってた私立で持ち上がらなかったのも、
幼稚園でいじめられてたからなんだおね」

('A`)「それも言ってたな。
ま、4歳にして三島由紀夫とか量子力学の本とか読んでたらしいから、
浮いてはいたんだろうけど」

( ^ω^)「それは引く」

('A`)「だよなー」

立ち止まり、互いの顔を見て笑う二人。

('A`)「空気の読み方が大人のそれだったみたいだしな」

( ^ω^)「ショボンにとってはお遊戯とか絵本とか理解の範囲外だったみたいだおね」

('A`)「無理やり合わせても、ダメだっただろうな。
『大人びている』とか言えるレベルじゃないし」

( ^ω^)「見た目は子供、中身は大人」

('A`)「殺人はおきてないぞ」

( ^ω^)「おっおっお」

笑いながら歩き出す二人。

.

488 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 23:00:21 ID:oINB0dP60

('A`)「人生経験積んでるわけじゃないから、
あの名探偵ほど子供のふりができてなかっただろうし」

( ^ω^)「本当に子どもなのに子供のふりってのもすごいおね」

('A`)「そういやそうだな」

今度は立ち止まらずに噴き出す二人。
そしてドクオが立ち止まり、ブーンも歩くのをやめた。

目の前には小さな民家。

( ^ω^)「この家かお?」

('A`)「ああ。ここでクエストを受ける。
病気の少女に薬を届けるお使い系だけど、
薬は出現率の低いモンスターからしかドロップできない。
あとでちゃんと話すけど、いろいろ注意点があるから気をつけろよ。
報酬でもらえる片手剣はそのままでも店売りより強いし、
強化次第では3層くらいまで使えるはずだ」

( ^ω^)「わかったお」

('A`)「よし、じゃあ入るか」

扉に手をかけようとするドクオ。
しかしブーンがついてこなかったため、
手をかける前に振り返った。

('A`)「どうした?」

.

489 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 23:02:31 ID:oINB0dP60

( ^ω^)「ドクオ」

('A`)「ん?」

( ^ω^)「ぼく、頑張るお。
早く強くなって、みんなのところに戻れるように。
ツンを守れるように。
みんなを守れるように。
……ショボンに頼ってもらえるように」

('A`)「ああ。
おれも頑張る。
頑張るしか、ないんだよな」

決意を込めて頷き合う二人。

そしてブーンがこちらに向かってきたのを見てから、
ドクオは民家の扉を開けた。




《はじまりの街》

日付は既に明日になって数時間経っている。

ショボンは、流れ作業のように手を動かし、
矢を的に当てていた。

(´・ω・`)「どうすればいい……。
どうすればいい……。
みんなを守るには……。
笑顔で過ごしてもらうには……」

既に何度も読んだ本が足元に何冊か置かれている。
先ほどまでは時折思い出したかのように開き、
中を貪るように読んでいたが、
ここ一時間は開くことはなかった。

.

490 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 23:04:06 ID:oINB0dP60

(´・ω・`)「まずは今わかっている事実の検証。
僕たちの持つアドバンテージを生かす方法」

先ほどまで青白く光っていた矢は、
今はオレンジ色の光を帯びている。

(´・ω・`)「知識を持つものは妬まれる。
それは、どんな世界でも同じ。
その知識を持たざる者に公平に分配し、
持つ者が持たざる者より不幸にならない限り、
その思いは消えない。
おそらくこの先、βテスターは妬まれ、忌避される。
その仲間である僕らも、その的になる」

ショボンの手から放たれた矢は、
弧を描いて的に刺さった

(´・ω・`)「僕は、僕を、僕自身を見てくれる皆を、
守るためならば、なんだってやる。
誰の命も、僕の命も、気にしない」

手に持った矢は青白く光り、
放たれると同時に光の直線を描きながら的に刺さった。

(´・ω・`)「……きにしない」

意識せずに再び矢を構えるショボン。

しかし手は動かず、オレンジ色の光だけが弱弱しく部屋を照らす。

(´・ω・`)「……父さん……母さん……。
あの爺に何を言われても、頼むから、馬鹿なことはしないでよ……。
……志也兄さん……。
僕達がログインした時にはまだ入っていなかったはず。
このことが報道されるまで何かしらの事情でこちらに来ていなければいいけど……。
……でも、もし……来ているとしたら……」

.

491 ◆dKWWLKB7io:2015/12/06(日) 23:06:01 ID:oINB0dP60

手が動き、矢が放たれる。

的に向かって弧を描くオレンジの光。

そして中央に刺さっていた矢に当たった。

二つの矢が、床に落ちる。

初めて、的に当たらなかった。





(´ ω `)「……たすけて」






窓の外では、朝の白い光が街並みを照らし始めていた。









.
504 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:30:23 ID:RiB.7oDE0





4.スキル





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505 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:31:56 ID:RiB.7oDE0

アインクラッドに囚われてから三日目の昼、
始まりの街の入り口で五人は合流した。

ξ゚听)ξ「ブーン、ドクオ、無事でよかった」

( ^ω^)「おっお。強くなって帰ってきたお」

('A`)「こいつ頑張ったぞ。もう一人でも往復できる」

川 ゚ -゚)「頑張ったのはドクオも同じだろ。
お疲れさま」

外から手を振ってやってきた二人に駆け寄ろうとするツンとクー。
しかし門の外に出る前にドクオとブーンが慌てて走り始め、
門の中で落ち合うことができていた。

(´・ω・`)「メッセージはもらっていたから無事なのは分かっていたけれど、
顔を見られてやっと安心できたよ。
二人ともお疲れさま」

( ^ω^)「おっお。ショボンもお疲れさまだお」

('A`)「村で飯食べてるときにレベルが急に上がってびっくりしたぞおい」

ξ゚听)ξ「ふふん。
私たちがこっちで何もしないと思ったら大間違いよ。
ショボンのよみ通り、あの人の指定したクエストは経験値が得られるのが多かったようよ」

(´・ω・`)「パーティー設定してあれば離れていても加算してくれたからね。
最初のクエストでそれが確認できたから、やれるクエストは全部消化したよ」

( ^ω^)「危ない真似はしなかったんだおね」

川 ゚ -゚)「外に出るクエストはショボンがストップさせたからな」

('A`)「それでここで待ち合わせだったのか」

(´・ω・`)「そういうこと。
フラグは立てまくったから、
いまから六つ消化して、できれば今日中、
遅くとも明日の朝には旅立ちたい」

.

506 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:33:16 ID:RiB.7oDE0

( ^ω^)「おっお!戦闘は任せてだお!」

ξ゚听)ξ「私たちの戦闘訓練でもあるんだから、
あんたたち二人だけ戦っても仕方ないんだからね」

('A`)「ん。了解」

川 ゚ -゚)「だが、ブーンの戦いぶりを見られるのは楽しみではあるな」

( ^ω^)「おっおっお。
見て驚くなだお!」

ξ゚听)ξ「……すぐに追いつくからね」

(´・ω・`)「それじゃあ行こうか。
まずは青猪ニ体と、緑猪一体を倒したい」

('A`)「わかった」

それぞれに武器を握り待ちの外に出た五人。

街に残った三人は久し振りの戦闘に少し緊張気味だったが、
帰ってきた二人の落ち着いた身のこなしと指示により、
順調に戦闘を重ねていった。




アイネ=ハウンゼンの宿

消化予定のクエストを消化することはできたが日が落ちてしまったため、
この日もこの宿に泊まることにした。

川 ゚ -゚)「もともとその予定ではあったのだがな」

('A`)「どうした?クー」

川 ゚ -゚)「いや、もっと早くクエストを消化できたら、
今日中に次の町に行きたいとショボンは言っていたなと思ってな」

.

507 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:34:53 ID:RiB.7oDE0

('A`)「?ああ。そんなことも言っていたな。
最後にはあいつも戦闘に入れ込んでいたけど」

ξ゚听)ξ「ほんとよね。
最初は私とクーが戦うのを後ろでむすっとした顔で見ていたくせして」

リビングでくつろいでいる三人。
ドクオはまだソファーの快適さに慣れていないが、
ツンとクーはゆったりと腰かけている。

('A`)「まあそういうなって。
最初のうち、二人の戦闘はやっぱり危ういところがあったから。
おれとブーンがついてちょうど良い感じだった」

ξ゚听)ξ「とはいってもねぇ」

ツンに至っては半分横になっているような姿勢で、
ふかふかのひじ掛けに手をのせて、その上に顎をつけて会話していた。

川 ゚ -゚)「うむ。
長刀と槍はやはり勝手が違うし、
剣技も槍としての技だからまだ慣れていないな。
その点でいえば、ツンの方が武器の使い方はうまいんじゃないか?」

あまりの行儀の悪さに隣に座っていたクーがお尻を軽くたたいた。

ξ゚听)ξ「そう?」

クーの言葉に疑問符を投げかけてから「良いのよドクオは」と言いながらも起き上がり、
テーブルの上のカップに手を伸ばすツン。

('A`)「こいつの行儀の悪さは知ってるから大丈夫」

川 ゚ -゚)「そういう問題じゃない」

ξ゚听)ξ「変なところで真面目なんだから」

.

508 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:36:58 ID:RiB.7oDE0

川 ゚ -゚)「ブーンに嫌われるぞ」

ξ゚听)ξ「な、なんでそこでブーンの名前が出てくるのよ」

('A`)「ブーンも知っているから大丈夫だ」

川 ゚ -゚)「さすがは幼馴染ということか」

ξ゚听)ξ「ブーンといえば、あの二人も遅いわね」

('A`)「そうか?
どうせブーンが寄り道してるんだろ」

視界の左上を気にしながらドクオが答える。

そこにはパーティーメンバーの名前とそのHPバーが表示されていた。

川 ゚ -゚)「最初は少しなれなかったが、
便利なものだな」

ξ゚听)ξ「でも視界が塞がれるわよね」

同じように表示を見る二人。
一番上に自分の名前とHPバー。
その下に友達四人の名前と対応するHPバーがあり、
今近くにいない二人のHPが満タンのまま動いていないことを確認した。

('A`)「非表示にもできたはずだけどな。
あと透過率を上げて薄くしたり。
でも出来れば慣れておいてほしい」

ξ゚听)ξ「やっぱり?」

('A`)「仲間の命綱になるかもしれないからな」

川 ゚ -゚)「だが、五人分でもそれなりに視界を塞がれているから、
これが十人、二十人と増えたら」

('A`)「パーティーは最大六人だから、
増えてあと一人分だよ」

.

509 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:38:30 ID:RiB.7oDE0

ξ゚听)ξ「六人?」

('A`)「そ。
行動を一緒にしたりすることはできるけど、
互いのHPを確認しあえたり戦闘時の効果を分け合えるパーティーを組めるのは、
最大で六人なんだ」

ξ゚听)ξ「そうなんだ」

('A`)「クエストやイベントで参加人数が固定されたりしたら
増減する時もあるかもしれないけど、
滅多にないだろうな」

川 ゚ -゚)「それではやはりあの時のショボンは嘘をついたんだな」

ξ゚听)ξ「そういえばそうね」

('A`)「何かあったのか?」

ξ゚听)ξ「昨日お使いクエストをやってるときに、
変な男に声をかけられたのよ。
ちょうどショボンが一人で買い物してて、
私とクーが少し離れたところで待ってた時だったから
ナンパだと思ったんだけどさ」

川 ゚ -゚)「どうせ私たちの容姿に対して
美辞麗句を並べているだけだと思って
全く話しは聞いていなかったんだが、
ショボンが戻ってきたら
『俺も仲間に加えてくれ!』
と言い出したからびっくりした」

ξ゚听)ξ「そうそう。
朝から後ろを付いてきてたみたいで、
ストーカーかと思った」

川 ゚ -゚)「なんとなく後ろにいるなと思ってはいたが、
どうせまたツンがつけられているんだと思ったんだがな」

.

510 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:40:00 ID:RiB.7oDE0

ξ゚听)ξ「はいはい。
ストーカーもどきのナンパはあんたの方が多いでしょ。
一見清楚系だから」

川 ゚ -゚)「ツンは見た目が派手だから、
とりあえず声をかけてくるようなバカが多いだろ」

ξ゚听)ξ「そうそう。
だから昨日の奴みたいに付きまとう系はクー相手よ。
あーでも、昨日の奴はあの時の奴に似てた感じがする。
ほら覚えてる?駅で待ち合わせした時に声をかけてきたバカ」

川 ゚ -゚)「数が多くて覚えきれない」

ξ゚听)ξ「ほら、あの時よ。
あんたがなんだかってお寺にお参りに行きたいとか言って
駅で待ち合わせした時に声かけてきたオールデニムでリュック背負った」

川 ゚ -゚)「ああ。あの時のバカか」

ξ゚听)ξ「似てない?」

川 ゚ -゚)「雰囲気は似ていたかもな」

ξ゚听)ξ「えー。似てたってー」

川 ゚ -゚)「高岡美咲と結城かなえの区別がつかない者に似ているといわれてもな」

ξ゚听)ξ「ドクモの顔なんてみんな一緒よ。
っていうか、ちゃんと見てないし。
着こなし方を参考にしているだけなんだから」

川 ゚ -゚)「たかみーの方は芸能界デビューしたみたいだぞ。
ドラマの出演が決まったとかなんとか書いてあった」

ξ゚听)ξ「へー。やっぱあの雑誌のドクモはそっちに行くんだ。
そういえば水樹リンダも出身だったよね」

.

511 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:41:47 ID:RiB.7oDE0

川 ゚ -゚)「ああ。
芸能界への道になってるな。
ツンも原宿辺り歩いてればスカウトされるんじゃないか?」

ξ゚听)ξ「興味ないからなー」

('A`)「えっと……いいか?」

二人の脱線した会話に割って入るドクオ。

ξ゚听)ξ「なに?」

川 ゚ -゚)「なんだ?」

('A`)「色々と突っ込みたいところはあるんだけどさ、
とりあえずその男とショボンの会話を覚えてる?」

会話を途切れさせられたことは気にせずにドクオを見る二人。
そのドクオの顔はかなり疲れたように見えたが、
二人ともそれに関しても気にしなかった。

川 ゚ -゚)「一言一句覚えているかけではないが、
流れくらいなら」

('A`)「どんなだった?」

川 ゚ -゚)「私たちがクエストを消化しているのを見て、
今のここで既にそんなことをしている人を初めて見た。
仲間に入れてほしい。
そんなことを言っていた」

ξ゚听)ξ「そしたらショボンが無理って答えて、
でも引き下がらなくて、
結局リアルからの友達で作ったパーティーで
もう入れることはできなとか言って、
何とか諦めさせてたわよ」

('A`)「……ふむ。
そっか……。
ショボンは、驚いてたか?
話しかけられたとき」

512 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:44:05 ID:RiB.7oDE0

ξ゚听)ξ「え?ああ、そうね。
急にだったし。
驚いてたみたいだったけど?」

('A`)「でも、朝から後ろを付いてきてたんだよな?」

川 ゚ -゚)「ああ。ツンの後ろをな」

ξ゚听)ξ「クーの後ろをね」

('A`)「それはどっちでもいい。
……そっか。
ショボンも落ち着いてるように見せてただけなんだな。
……そりゃ、そうだよな」

川 ゚ -゚)「どういうことだ?ドクオ」

('A`)「……ほら、ショボンっていいところの坊ちゃんだろ。
だから小さい頃からまぁそれなりに色んなことがあったらしいんだよ。
だから結構視線とか後ろを付いてくるやつとかに敏感なんだけど、
昨日は気付いていなかったんだなと思って」

川 ゚ -゚)「それもそうだな。
マシログループの中枢の関係者の子供。
ショボンの小さい頃は親が医者程度しか周囲には広まっていなかったはずだが、
調べればすぐにわかることだ」

ξ゚听)ξ「そりゃ、そうよね。
しかも私達のことばかり考えているわけだし」

('A`)「ん?いや、そうか。違うな」

自分の考えに一人納得し、
更に二人に説明して考えをまとめたドクオだったが、
ツンの言葉で今までとは違う答えにたどり着いた。

ξ゚听)ξ「何がよ」

('A`)「そう、ショボンはおれたちのことを一番に考えている。
だから昨日は二人に対する付きまといや監視なら、気付いただろう」

.

513 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:48:19 ID:RiB.7oDE0

川 ゚ -゚)!

ξ゚听)ξ!

眉間にしわを寄せて新たな考えを話し始めるドクオ。
クーとツンはその言葉にはっとした。

川 ゚ -゚)「そうか」

ξ゚听)ξ「私たち狙いじゃなかった」

('A`)「そう、おそらくそいつは…」

ξ゚听)ξ「狙いはショボンだった!

('A`)「ああ」

ξ゚听)ξ「ショボンをナンパしたかったのね!」

('A`;)「違うわボケ!」

たどり着いた答えは違っていた。

川 ゚ -゚)「違うのか?
ショボンは違うと思うが、そういうのを否定はしないぞ?」

('A`)「ナンパから離れろ」

ξ゚听)ξ「なんだつまらない」

('A`)「はぁ……」

川 ゚ -゚)「では本当にクエストをしている私たちの仲間になりたかったのか?」

('A`)「本当に『仲間』になりたかったのかはわからねーけどよ。
『今、この状況下でクエストをやっているおれ達』に
いや、『今、この状況下で冷静にクエストを消化しているショボン』に対して、
興味があったのは事実だろうな」

.

514 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:50:03 ID:RiB.7oDE0

ξ゚听)ξ「でも、この街のクエストって初歩の初歩ばかりなんでしょ?
付いてくる必要なんてないし、
クエストのやり方を覚える練習レベルってショボンは言ってたわよ?」

川 ゚ -゚)「うむ。付いてくる必要があるとは思えないが」

('A`)「どんなに簡単なクエストでも、
つまずく奴は躓く。
だから自分がやろうと思っているクエストを先にやっている奴がいたら、
参考にして付いてくる奴だっているよ。
でも多分、今回はそんな話じゃない」

ξ゚听)ξ「もったいぶらずに言いなさいよ」

('A`)「もったいぶっているわけじゃないって。
っていうか、二人だって本当はわかってるんだろ?」

川 ゚ -゚)

ξ゚听)ξ

ドクオの問いかけに口を閉ざす二人。
その行動こそがドクオの言葉が正しいということを示していた。

('A`)「二日経って、一見平穏だけど、
やっぱり小さな騒ぎは起こってる。
平穏といっても、おそらく大体の連中は、
何も行動を起こせずにこの街で宿屋とかに籠ってるんだろう。
ログイン時にもらえる金額が残ってれば、
一番安い宿屋なら一週間くらいなら泊まれるからな。
教会の奥の部屋なら雑魚寝だけどただのところもあったはずだし、
ベッドはないけど出入り自由の建物だってある。
おれ達がいた村にも昨日になってちらほらやってくる奴がいたけど、
あの行動を見る限りおそらくみんなβテスターだ。
で、何が言いたいかっていうと、今この街で冷静にクエストをやる奴なんて、
ほとんどいないってことだ」

.

515 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:51:30 ID:RiB.7oDE0

苦しそうに話すドクオ。
それは話すことが苦しいのではなく、
自分が言葉にして出した内容が、
今のこの世界を、自分たちを取り巻く環境が
悲惨なものであるということを改めて明確にしてしまうだからだった。

しかし彼は続ける。

('A`)「おれ達は、幸運なことにこの宿に居られるし、
自分でいうのもなんだけど仲間内にβテスターがいて、
更にショボンが居てくれたからこんなバカ話ができているけど、
ほとんどはまだ絶望していて、活動できていないだろう。
今もう前向きになれてる人なんて、きっとほんの一握りだ。
そんな中でショボンが冷静にクエストをこなしている姿は、
仲間と一緒に行動している姿は、どう見えたか。」

口を閉ざすドクオ。
二人も何も言えず、沈黙が部屋を支配する。
三人の頭には、『羨望』という言葉と、
『嫉妬』という言葉が浮かんでいた。

( ^ω^)「ただいまだおー!」

突然開かれた扉。
重苦しい空気を吹き飛ばす元気な声。

ブーンの登場に、
あからさまにほっとした顔をする三人。

('A`)「おう、お帰り」

ξ゚听)ξ「おかえり。
遅かったわね。
どこで道草食ってたのよ」

川 ゚ -゚)「ショボンもお帰り。
買い物はどうだった?」

( ^ω^)「おっおっお。
街のはじからはじまでいったら流石に時間がかかったんだお」

.

516 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:52:50 ID:RiB.7oDE0

(´・ω・`)「ただいま。
遅くなってごめんね。
ご飯も買ってきたよ」

ブーンの後ろからショボンが続いて入ってくる。

ショボンは手には何も持っておらず、
テーブルの前まで来るとウインドウを開いた。

( ^ω^)「手に持たなくて良いってのは楽ちんだおね」

同じようにブーンもウインドウを開き、
目の前に浮かんだ操作パネルをタッチしていく。

あっという間にテーブルの上はアイテムで埋め尽くされた。

(´・ω・`)「回復、解毒、麻痺解除といったPOT類。
ドクオに教えてもらった店で買いそろえたよ」

('A`)「安かっただろ?
このフロアだと、多分教えた店が一番安い」

(´・ω・`)「そうなんだ。
じゃあちゃんと場所を覚えないとだね」

出したアイテムからいくつかをいそいそと袋に入れ、
部屋の片隅に移動するショボン。

川 ゚ -゚)「POTを自分で作ったりもできるんだろ?
その方が安くならないか?」

テーブルの上のアイテムを仕分け始めるドクオ。
反対側のソファーに座っているクーがピンク色の瓶を手に取った。

('A`)「できるけど、スキルを鍛えないといけないし、
材料も買ったら街売りより高くなる」

川 ゚ -゚)「採取すればよいだろう」

.

517 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:55:52 ID:RiB.7oDE0

('A`)「クー、スキルを鍛えるつもりか?」

川 ゚ -゚)「ああ、折角だからな」

ドクオに向かってにやりと笑うクー。

('A`)「まあ、パーティーって考え方なら、それもありだな。
ソロなら戦闘に役立つスキルを先に覚えてほしいけど」

川 ゚ -゚)「今日手に入れたアレを使えば問題ないだろ?
それに私達はスキルスロットが現時点では余裕があるわけだし」

('A`)「言っておくが『余裕』があるわけじゃないぞ。
戦闘に限っても覚えておいた方がよいスキルはまだたくさんある」

ξ゚听)ξ「『裁縫』は外さないわよ」

( ^ω^)「『鑑定』も大事だと思うお」

クーの隣でツンが、
ドクオの隣に座ったブーンが既にスキルスロットに入れたスキルを口にした。

('A`)「…『調剤』なら『裁縫』よりはましか」

ξ゚听)ξ「女には大事なスキルよ」

('A`)「家庭科の成績底辺だったくせして」

ξ#゚听)ξ「ちょ!何で知ってるのよ!」

('A`)「母ちゃん経由でおばさんから聞いた」

ξ#゚听)ξ「母さんったらもう……」

川 ゚ -゚)「ツンは設計図は描けるが細かい作業が苦手だからな。
料理も中華はうまかったぞ」

ξ゚听)ξ「ふふん」

('A`)「女子中学生が中華鍋を振る姿を想像できない」

.

518 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:57:33 ID:RiB.7oDE0

ξ゚听)ξ「うるさい」

川 ゚ -゚)「ブーン?
顔がこわばっているがどうした?」

(; ^ω^)「お?なんでもないお」

('A`)「2月14日は決死の覚悟でアレを食べなきゃいけなかったから、
それを思い出したんだろ」

川 ゚ -゚)「なるほど」

ξ゚听)ξ「なんでクーは納得してるのよ!」

(; ^ω^)「お、おいしかったお。ツン」

ξ゚听)ξ「ほら」

('A`)

川 ゚ -゚)

ξ゚听)ξ「何か言いなさいよ二人とも」

('A`)「よし、仕分け完了。
各自、自分のアイテム欄に入れておけ」

川 ゚ -゚)「分かった」

( ^ω^)「了解だおー」

ξ゚听)ξ「ちょっと三人とも?話は終わってないのよ?」

しゃべりながらもテーブルの上のアイテムを仕分けしていたドクオが、
三人の前にそれぞれアイテムを置いた。

クーとブーンはウインドウを開き、
アイテムを一つずつ確かめながら閉まっていく。

.

519 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 22:59:03 ID:RiB.7oDE0

ξ゚听)ξ「終わったらゆっくり話しましょう」

ツンも諦めて二人に倣って作業を始めた。
そして四人がアイテムをすべて収納すると、
待っていたかのようにショボンが声をかけた。

(´・ω・`)「お待たせ」

両手で持ったトレイの上には、
五つ皿が乗っていた。
そして皿の上には、
焼けた肉の塊が乗っている。

( ^ω^)「おっおっお!
お肉だお!」

ξ゚听)ξ「はしゃがないの!」

川 ゚ -゚)「ショボン、ショボンの分のアイテムはあちらの台の上に置いておくぞ」

テーブルの上を片付けるクー。
ブーンは立ち上がってトレイをのぞき込んでいる。

(´・ω・`)「ありがと、クー。
仕分けありがとうね。ドクオ。
ブーン、ちゃんと全員分あるから落ち着いて。
ツン、あそこにおいてあるパンの入った籠を持ってきてもらえるかな」

( ^ω^)「いい匂いだお!」

ξ゚听)ξ「了解。
三つともいいのよね?」

川 ゚ -゚)「では私はもう一つの皿をもって来よう。
このサラダも良いんだな?」

立ち上がり、ショボンに頼まれた籠の置いてる部屋の隅に向かうツン。
壁際のローテーブルにショボンの分のアイテムを移動出せたクーも、
ツンの後ろに続いた。

.

520 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:02:34 ID:RiB.7oDE0

(´・ω・`)「うん。三つとも。
ありがと、クー」

トレイのまま一度テーブルの上に置くショボン。

( ^ω^)「おいしそうだお!
向こうではパンくらいしか食べなかったから、
お肉うれしいお」

こぶし大の肉はこんがりと焼けており、
その上から褐色のソースがかかっていた。

(´・ω・`)「喜んでもらえてうれしいよ」

にっこりとほほ笑むショボン。
ブーンも笑顔で皿をトレイからテーブルに移す手伝いをする。

( ^ω^)「ドクオも手伝うお」

('A`)「で、ショボンが『料理』か……」

(´・ω・`)「相談せずにスキル決めてごめんね」

('A`)「謝るようなことじゃないけどよ」

ブーンに促され、食事の準備を手伝い始める。

('A`)「いつのまにそんなにレベルを上げたんだ?」

(´・ω・`)「焼くのはタイミングの問題だけだったよ。
もっとレベルが上がるか専用の道具があれば自動になりそうな気がするけどね」

('A`)「かかってるソースは?」

(´・ω・`)「焼く機械の上の棚にいろいろあったんだ。
一回戻った来た時にブーンに詳しく調べてもらったら、
細かい注釈があって、
それに逆らわないでできる限り色々混ぜてみた。
ちゃんと味見もしたからそれほどまずくはないと思うよ」

('A`)「うん……」

.

521 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:05:52 ID:RiB.7oDE0

( ^ω^)「おいしそうだお!」

ξ゚听)ξ「はい、パン」

川 ゚ -゚)「サラダ……。
この野菜は食べて大丈夫なのか?」

(´・ω・`)「ちゃんと食用って書いてあったよ。
ドレッシングは肉に使った物の流用だから味が似通っちゃうけど」

('A`)「パンも焼いたのか?」

( ^ω^)「それはさっき一緒に買ってきたやつだお。
ちょっと硬いけど、味はまあまあだおね」

('A`)「向こうで食べた奴と一緒か」

ξ゚听)ξ「どうしたのよさっきから」

('A`)「いや、……うん。なんでもない」

ξ゚听)ξ「変な奴」

( ^ω^)「準備完了!
さあ食べるお!」

全員の前に肉の皿と野菜の皿が一つずつ置かれ、
中央にはパンの入った籠がある。

(´・ω・`)「口に合えばいいけど」

水の注がれたグラスをショボンが配るときには全員が座っていた。

( ^ω^)「大丈夫だお!
いい匂いがするおね!」

ξ゚听)ξ「うん。おいしそう」

川 ゚ -゚)「あれから取れた肉とは思えないな」

ξ゚听)ξ「言うな」

.

522 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:26:08 ID:RiB.7oDE0

( ^ω^)「牡丹肉はおいしいお」

(´・ω・`)「処理さえちゃんとすれば、
臭みも抑えられるからね。
今回はソースも濃い味にしたし」

川 ゚ -゚)「ふむ。楽しみだ」

( ^ω^)「それじゃあみんな手を合わせて」

ブーンの合図で手を合わせる五人。

( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ -゚)
  「いただきまーす」
  ('A`)(´・ω・`)

この世界に来てから初めての、
五人でする食事だった。





( ^ω^)「おいしかったおー。
おなかいっぱいだおー」

両手を広げてソファーの背にもたれかかりながら
天井を見上げているブーン。

ξ゚听)ξ「お行儀悪いわよ」

川 ゚ -゚)「ツンは言える立場にいないな」

流石にブーンほどではないが、
正面に座るツンも体をソファーに沈ませてひじ掛けにもたれている。

ξ゚听)ξ「そういうあんたもでしょ」

川 ゚ -゚)「私は自分の事がわかっているからな。
人に言うような真似はしていない」

.

523 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:28:15 ID:RiB.7oDE0

隣に座るクーもゆったりとソファーに腰を掛けている。
ツン程ではないが、だいぶリラックスしているように見えた。
そしてさらに二人に共通しているのは、目が既に閉じかけているということだろう。

ξ゚听)ξ「なによそれー」

川 ゚ -゚)「はっはっはー」

力のない声で会話をする二人。

('A`)「……三人ともだらけすぎだ」

ドクオはブーンの隣でソファーに浅く腰かけていた。
そして少し前のめりで、
開いたウインドウを操作していた。

(´・ω・`)「今日も疲れたしね。
早く休みたいけど、まずは明日からの予定を打ち合わせよっか」

片付けを終わらせたショボンが戻ってくる。
先ほどと同じトレイをもっており、
その上にはマグカップと大きめのティーポットが乗っていた。

川 ゚ -゚)「手伝おう」

(´・ω・`)「ありがと」

クーとショボンがカップを配り終わると、
四人は浅く腰かけて話をする体制になった。

ξ゚听)ξ「ブーン、起きなさい」

( ´ω`)「おー。もう朝かお?」

ξ゚听)ξ「バカ言ってないの」

('A`)「まったく」

目をこすりながら体を起こすブーン。
大きくあくびをしたのを見てから、
座ったショボンが口を開いた。

.

524 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:32:18 ID:RiB.7oDE0

(´・ω・`)「さて、まずは明日からのスケジュールの確認かな」

('A`)「予定通り『ホルンカ』に向かう」

(´・ω・`)「うん。まずは『ホルンカ』へ。
そこでモンスターと戦うことに慣れるのと、
レベル上げ、クエストの消化をしたい」

川 ゚ -゚)「目標とかあるのか?」

(´・ω・`)「実際にはやるつもりはないけど、
この『はじまりの街』と『ホルンカ』を、
一人で一日で往復できるような強さと経験を積みたい。
ただ、状況を見て『ホルンカ』の次の町への移動も考えてはいる」

ξ゚听)ξ「街を転々とするってことね」

(´・ω・`)「落ち着けるところがあれば拠点を作るのもありだとは思うけどね。
まずは自分たちのレベルアップ、経験値では表せない経験を身に付けたいと思う」

('A`)「賛成だ。
こればっかりは実践あるのみだからな。
クエストで得られる経験値でのレベル上げなんて、たかが知れてるし。
遭遇する敵によってはすぐに逃げられない場合もあるから、
戦いの経験を積みたい」

ξ゚听)ξ「逃げたりなんてしないわよ」

川 ゚ -゚)「ちゃんと戦うぞ」

('A`)「……戦略的撤退も覚えてくれよ」

ξ゚听)ξ「むーーーー」

川 ゚ -゚)「仕方ない。善処してやろう」

('A`)「なぜ上から目線かな」

(´・ω・`)「戦闘やレベル上げに関してはドクオに頼ってしまうけど、
よろしく頼むね」

('A`)「ああ。きっちりやろう」

.

525 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:34:23 ID:RiB.7oDE0

ξ゚听)ξ「ホルンカってどんなところなの?」

( ^ω^)「良いところだったお。
こことは違って道とかも舗装されてなかったけど、
家とか木や藁でできてて暖かい雰囲気だったお」

ξ゚听)ξ「土の道か……」

('A`)「土で汚れたりはしないだろ」

ξ゚听)ξ「ならいっか」

('A`)「まったくもうこいつは……」

ξ゚听)ξ「女子には大問題よ」

('A`)「はいはい」

(´・ω・`)「それじゃあ、次は武器とスキルの件だね」

('A`)「それだよそれ!」

ξ゚听)ξ「なによいきなり大声出して」

('A`)「スキルだよスキル!
とりあえず最初のうちはちゃんとどれを選ぶか相談してだな」

ξ゚听)ξ「はいはい」

('A`)「おまえなー」

ξ゚听)ξ「とはいってもさ。
基本よくわからないし」

川 ゚ -゚)「そうだな。
とりあえず何が必要とか説明してもらってないわけだし」

('A`)「……」

( ^ω^)「一応聞いたけど、
もう一度ちゃんと聞いておきたいお」

.

526 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:39:37 ID:RiB.7oDE0

('A`)「はぁ……」

(´・ω・`)「まずはスキルの基本知識が必要だね」

ため息をついたドクオを見て苦笑いを浮かべながらショボンがウインドウを開く。

ξ゚听)ξ「基本知識ならわかるわよ。
それくらい。
スキルってのを設定しておかないと、
そのスキルにかかわる作業ができないってことでしょ」

川 ゚ -゚)「片手剣で戦いたかったら『片手剣』、
槍で戦いたかったら『槍』。
服を作りたかったら『裁縫』
料理をしたかったら『料理』」

ξ゚听)ξ「それくらいわかるわよね」

川 ゚ -゚)「全くだ」

ショボンの言葉に心外だとばかりに知識を披露する二人。
心なしか二人とも胸を張っている。

('A`)「『索敵』、『隠蔽』なんかはわかるのか?」

川 ゚ -゚)「知らん」

ξ゚听)ξ「知らない」

そして同じテンションでドクオの問いに答えた。

('A`)「はぁ……」

(´・ω・`)「スキルは、本当に大まかに分けると二つに分類できる。
一つは戦闘に直接かかわるスキル。
一つは戦闘に直接かかわらないスキル」

うなだれたドクオに代わってショボンが説明を始めた。

.

527 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:41:59 ID:RiB.7oDE0

(´・ω・`)「さっき二人が言っていた『片手剣』や『槍』、
ツンの使ってる『細剣』、『曲刀』、『投擲』なんかが《直接かかわるスキル》になるね。
で、『裁縫』や『料理』、ブーンが鍛え始めてる『解析』なんかが、
《直接かかわらないスキル》になる」

ξ゚听)ξ「うん」

川 ゚ -゚)「ふむ」

( ^ω^)「おー」

(´・ω・`)「そして、
《直接かかわらないスキル》の中には、
今言ったような生活を豊かにしたり便利にしたりするスキルのほかに、
戦闘を有利に進めるためのスキルも存在するんだ。
さっきドクオの言った『索敵』は自分の近くにいる敵を見つけやすくなったりできるし、
『隠蔽』なんかは周囲の木や草に隠れたりすることで、
敵をやり過ごすことができるようになったりする」

ξ゚听)ξ「へー」

川 ゚ -゚)「ふむふむ」

( ^ω^)「おー」

(´・ω・`)「そんな感じでスキルはいろいろ用意されているらしい。
だから色々なものを鍛えて戦闘を有利に、
生活を楽しくしたいところなんだけど、
スキルをセットする設定画面には枠が、
スキルスロットが初期では二つしかない。
しかも基本的にスキルはスロットから外すと経験値がゼロに戻るから、
一度鍛え始めたら外すのがもったいなくなる」

ξ゚听)ξ「あら」

川 ゚ -゚)「なるほど」

( ^ω^)「おー」

.

528 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:44:31 ID:RiB.7oDE0

(´・ω・`)「というわけで、スキルを決めるときは、
慎重に自分の戦闘スタイルや生活スタイルをよく考えて、
決めなければいけないってことなんだ」

ξ゚听)ξ「はーい」

川 ゚ -゚)「わかった」

( ^ω^)「おー!」

('A`)「三人ともほんとにわかってる?ねぇ」

ショボンの説明をまともに聞いているのかどうかわからないような受け答えしかしない三人に、
思わずため息混じりの突っ込みを入れてしまうドクオ。

川 ゚ -゚)「聞いてるぞ」

( ^ω^)「聞いてるお」

ξ゚听)ξ「聞いてるわよ?
でも、……さ。ねぇ」

川 ゚ -゚)「うむ」

(; ^ω^)「おー」

(´・ω・`)「まあしょうがないよね。
既に僕たちのスキルスロットは五つあるわけだし」

一瞬の空白。
仲間以外誰もいないのに、
何故か周囲の目を気にしてしまう五人。

そしてドクオが大きく息を吐いた。

('A`)「だよなー。
おれも言いながら説得力とかなかったし」

.

529 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:45:54 ID:RiB.7oDE0

ξ*゚听)ξ「そうよね」

川*゚ -゚)「もう五つもあるし」

('A`)「今日クリアしたクエストのうち三つがスキルスロット増加とか、
どんなチートだよ」

( ^ω^)「ショボンはもらえるのがわかってたのかお?」

(´・ω・`)「昨日のうちに消化した二つのクエストの報酬がレアアイテムみたいだったから、
残りのクエストもそうかなって思ったのと、
もしかしたら人数分くれるイベントとかもあるのかなって思ったから、
怪しいやつはできるところまでフラグを立てて、
二人が帰ってくるのを待ったんだ」

('A`)「そうしたらこうなったと」

(´・ω・`)「うん。さすがにこれはバグレベルだよね」

('A`)「だよな……」

自分のウインドウのスキルスロットを見てため息を吐くドクオ。
スロットが増えたことはかなり喜ばしいことなのだが、
今まで公正・公平なプレイヤーとして
多量課金プレイヤーや初心者狩りをするようなプレイヤーを忌避していた身としては、
いくら偶然とはいえ自分の今置かれている状況になんとなく納得がいっていなかった。

( ^ω^)「多分あの三つって、本当は一つしか受けられなかったんだおね」

('A`)「多分そうなんだろうな」

ξ゚听)ξ「でも出来た」

川 ゚ -゚)「ショボンがやらかしたと」

(;´・ω・`)「人聞きが悪いよ。
たまたま時間的タイムラグと同時進行するための穴を見つけただけだよ。
それに僕もアイテムがいっぱいもらえたら良いなとは思っていたけど、
スキルのスロットが増えるとは思ってなかった」

.

530 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:48:24 ID:RiB.7oDE0

('A`)「でも、道具の方は狙っただろ?」

(;´・ω・`)「もらっておけるものはいっぱいもらっておこうって思ったけど、
その瓶が更に手に入るとは思わなかったよ?」

川 ゚ -゚)「本当か?」

(;´・ω・`)「ちょっと、クーまでやめてよ」

ドクオがウインドウを操作すると、テーブルの上に小瓶が何個も現れた。

('A`)「《カレス・オーの水晶瓶》
スキルの熟練度を保存することができる……か。
まさかこんなアイテムがあるなんて。
そしてしかもこんなにいっぱい手に入るなんて」

(´・ω・`)「初日のクエスト報酬で一つ手に入れて、
昨日僕が試してみたけどちゃんと使えたよ」

('A`)「メッセージで教えられたときはびっくりした」

( ^ω^)「今日は五人で四回成功したんだおね」

ξ゚听)ξ「あれ?四回だった?」

川 ゚ -゚)「五回だな。
多分ブーンは最初の一回を数に入れていないんだろ。
あれはチャレンジの説明だと思ったら本番だったという、
一種の騙しだから」

('A`)「二十五個。最初の一個を加えたら二十六個か……」

(´・ω・`)「最初のクエストはおそらくあの手帳を持っている人専用だけど、
今日のクエストはほかの人も受けられそうだったよね。
そして説明という名の一回と、泣きの一回で、
誰でもニ個は手に入れられる確率があるってことだよね」

.
532 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:51:41 ID:RiB.7oDE0

('A`)「そんな簡単なことじゃない気もするけどな。
あのクエストを受けるには、まず手元にこの小瓶が必要なわけだし。
そしてどちらにせよ、システムの穴というかほぼバグを突いて
これだけの量を手入れることができたわけだけど、
あれをやるにはよほどの記憶力が必要だろ?」

(´・ω・`)「それに関しては否定しないけど」

('A`)「通常はレベルを上げないと手に入らないスキルスロットを、
最初からこれだけ持てているのはかなりのアドバンテージだ。
そしてこのアイテムもかなりありがたいアイテムなのは間違いない。
正直こんな能力を持ったアイテムがあるなんて知らなかったし、
かなりのレアアイテムだと思う。
システムの穴をついたとはいえ、
一応正規のルートで手に入れた品だから、
使うことに問題はないとも思う。
…………でもなー。やっぱなー」

頭を抱えてもんどりをうち始めるドクオ。
四人はそれを生暖かい視線で見ていたが、
三分を過ぎたところでツンが切れた。

ξ゚听)ξ「ドクオ、いい加減にしなさい」

ソファーの横に置かれた銀のトレイでドクオの頭をたたくツン。
トレイの形が変形などはしていないが、
大きな音が部屋に響いた。

(;A;)「いてぇ!お前何しやがんだよ」

ξ゚听)ξ「嫌なら使わなければいいじゃない。
小瓶もスロットも。
スロットは二つだけ使ってればいいだけなんだから」

('A`)「え、いや、それはなんか違うっていうか。
折角あるものは使わないとだし」

ξ゚听)ξ「ならもうグズグズ言わないの!」

('A`)「うえーい」

ξ゚听)ξ「まったく」

.

533 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:54:04 ID:RiB.7oDE0

薄い胸を持ち上げるように腕を組んでソファーに座るツン。

二人の掛け合いを笑顔で見ていた三人だったが、
ツンが座ると同時に目の前のカップに手を伸ばした。

そのタイミングがあまりに合致したため、
思わず笑ってしまった。

( ^ω^)「おっおっお」

川 ゚ -゚)「ふふ」

(´・ω・`)「  」

ξ#゚听)ξ「三人は何笑ってるの?」

(;^ω^)「おっ。ツンを笑ってたわけじゃないお」

川 ゚ -゚)「それは誤解だからな」

ξ゚听)ξ「まったく」

(´・ω・`)「さて、じゃあスキルについての相談だけど、
まずは僕の考えを言ってもいいかな」

ツンに睨まれて慌ててフォローを入れた二人。
ショボンは話を変えるように、
というよりは戻すために姿勢を正して四人を見た。

自然とソファーに座りなおしてショボンを見る四人。

(´・ω・`)「まずはスキルスロット。
五つのうち、一つはメイン武器。
これは今使っている武器から変えない方向で。
二つ目がサブの武器。
使用している武器に問題が発生した時用に、
一応別ジャンルの武器も練習しておいた方がいいと思うんだけど、
どうだろう?」

.
534 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:55:38 ID:RiB.7oDE0

ショボンがドクオを見る。
その視線を追って三人もドクオを見た。

('A`)「おれは反対だな。
武器によって敵との相性ってのは確かに存在するけど、
低層ではそれほど気にしなくてもいいと思う。
あと、同時に二つの武器を練習するってのは無理があると思う」

ξ゚听)ξ「そうね。
とりあえずは一つで良いかな」

川 ゚ -゚)「ああ。
私も長刀ならともかく、
槍はもう少し練習しないとだめだと思う」

( ^ω^)「ショボンはなにかやりたい武器があるのかお?」

ドクオの意見に賛成をする二人。
ブーンもとりあえずは片手剣だけのつもりだったが、
口から出たのはショボンへの問いかけだった。

その言葉に反応してショボンを見る三人。

(´・ω・`)「あ、うん。
メインには槍として、
サブ武器として《投擲》を入れたい」

('A`)「《投擲》?
あの趣味スキルを?」

( ^ω^)「趣味スキル?」

('A`)「いや、武器や物を投げるスキルだけどよ、
一回投げたら終わりだし、攻撃力の高いものを投げるのっていうのは、
金額の高い武器やレアなアイテムを投げるってことだから、
なかなかハードルが高いというかなんというか……」

川 ゚ -゚)「金持ちじゃないと成り立たないスキルってことか」

('A`)「もしくは自分が武器製造スキルを持つとかかな。
それにそれだけやっても与えるダメージはたかが知れてるだろうし」

.

535 ◆dKWWLKB7io:2015/12/13(日) 23:57:42 ID:RiB.7oDE0

ξ゚听)ξ「ショボンは何でそんなのを?」

(´・ω・`)「僕の目、敵の出現を素早く感知できる力を有効に使うためには、
このスキルが最適かなって思ったんだけどね」

ξ゚听)ξ「ああ、出現の時の空間の歪みが見えるっていうあれね」

(´・ω・`)「うん」

('A`)「あー。
それはそうかもしれないが、
実戦で意味のある使い方ができるにはかなりの練習が必要だろうな」

(´・ω・`)「そうだね。
じゃあ……」

( ^ω^)「武器にブーメランとかないのかお?」

(´・ω・`)!

('A`)「!
あ、ああ。そうだな。
ブーメランは聞いたことないけど、
そういえばなんか戻ってくる投擲武器あるとか。
いや、ドロップする敵がいるとかだったかな。
βの時にそんな噂を聞いたことがある」

川 ゚ -゚)「『戻ってくる投擲武器』?」

('A`)「ああ。
おれも実物は見てないし、
名前も聞いてないけど」

( ^ω^)「じゃああるかもなんだおね。
その武器が手に入ったらそのスキルも使えるんじゃないかお?
しかも武器が手に入ってから覚えるんじゃなくて最初から鍛えておいたら、
かなり使えるんじゃないかお?」

('A`)「あ、ああ。そうだな」

.

536 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:00:29 ID:moG2ydB.0

ニコニコと話すブーン。
眉間にしわを寄せて色々と考えつつ言葉を選ぶドクオ。

('A`)「……ああ。うん。
そんな武器を使えることができれば、
戦闘を優位に進められるかもしれない。
ただ、そのためにスキルスロットを……」

( ^ω^)「五つもあるし、小瓶もあるお。
ある程度使えるまでは個人練習にして、
戦闘に使えるレベルになったらレギュラーでスロットに入れておけばいいんじゃないかお?」

ξ゚听)ξ「どうしたのよブーン。
すごくブーンらしくない」

( ^ω^)「おー。ひどいお」

川 ゚ -゚)「だが、ブーンの言う通りだな。
これがスロットが二つのままだったり、
アイテムがなかったら諦めないといけないかもしれないが、
今の私達ならそれくらいの余裕を持ってもいいんじゃないか?」

('A`)「でも自主練とかいっても」

( ^ω^)「というか、
ショボンならそれくらい全部考えているように思うけど、
どうかお?」

(´・ω・`)「実は、すでに自主練はしてたんだ」

壁にかかったダーツ用の的を見るショボン。
その視線から、四人も壁の的を見た。

('A`)「ダーツ?」

(´・ω・`)「うん」

立ち上がり、同じく壁に掛けてあった矢を一本手に取り、
少し離れて構える。
四人はじっとそれを見つめている。

.

537 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:02:25 ID:moG2ydB.0

(´・ω・`)「いくよ」

ショボンが気合を入れると矢がオレンジ色に輝いた。

('A`)「おっ」

( ^ω^)「剣技(ソードスキル)だおね」

ξ゚听)ξ「オレンジだ」

川 ゚ -゚)「オレンジだな」

('A`;)「気にするのそこかよ」

ξ゚听)ξ「えー。だって。ねぇ。クーさん」

川 ゚ -゚)「うむ。オレンジは良い色だ」

('A`)「なんだそりゃ」

会話をしながらも視線はショボンに向けたまま。
そしてショボンは外野の声を気にすることなく矢を投げる。

( ^ω^)「おお!」

('A`)「おっ」

ξ゚听)ξ「あら」

川 ゚ -゚)「きれいだ」

弧を描いて的の中央に刺さる矢。

矢の動きを目で追うのは困難であったが、
そのオレンジの光は部屋の中に、
自然界ではありえない鮮やかな軌跡を残して消えた。

(´・ω・`)「趣味スキル扱いは運営もなのかな。
一つ目は直線だったけど、
二つ目はこんな風に弧を描く軌道を持った技を使えるようになったよ」

.

538 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:03:54 ID:moG2ydB.0

( ^ω^)「それだけ鍛えたのなら外したくないおね」

(´・ω・`)「スロットが二つだったら槍と投擲になっちゃうから諦めたけど、
今の状況なら良いかなって思って」

('A`)「そのダーツセットは持っていけるのか?」

(´・ω・`)「いや、無理だった。
隣の部屋には移動できたけど、
下の階には持っていけなかったよ。
持っていこうとしたら、自動的にこの部屋のこの場所に移動していた」

('A`)「なら、これから先の自主練はどうやってするんだ?」

(´・ω・`)「ここに泊まるときはダーツセットで。
無理な時は部屋で小石を投げたりすることでできないかなって思ってる」

('A`)「……それよりは、投擲用のナイフを数本買って、
部屋で丸太や非破壊オブジェクトに投げた方がいいだろ」

( ^ω^)「おっ!」

('A`)「回収可能投擲武器がある可能性が少しでもある以上、
そこまで鍛えたスキルを完全に捨ててしまうのはもったいないからな」

(´・ω・`)「ありがと」

('A`)「ただ、メイン武器になるかどうかは不明だから、
まずは槍の練習をしてくれ。
あと、戦闘時スロットには《武器防御》を入れること」

川 ゚ -゚)「《武器防御》?
うむ。あるな」

ξ゚听)ξ「なにそれ」

ウインドウを開いてスキルを確認するクー。

('A`)「言葉通り。武器で防御をするためのスキルだ。
それを入れておけば、使っている武器で相手の攻撃を防御することができる」

.

539 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:08:49 ID:moG2ydB.0

川 ゚ -゚)「これをつけておかないとできないのか?」

('A`)「剣の腹で相手の剣を受けたりすることはできるはずだけど、
スキルをつけておかないとまったく補正が働かないから、
ダメージを剣すべてで受けてしまう可能性がある。
滅多にないはずだけど武器破壊が起きてしまったり、
そこまでいかなくても武器の疲弊・摩耗には多大な影響があるだろうな。
それに防御技のスキルも使えるようになるはずだ」

( ^ω^)「おっ!そんなのがあるのかお?」

('A`)「ああ。火を吐いたりするモンスターも出てくるから、
それを避けるため、受けるための特殊技がスキルとして存在しているはずなんだ。
今のところパーティーに盾使いがいないから、
各人で自分の身を守る技をちゃんと持っておいた方がいい」

川 ゚ -゚)「なるほどな」

('A`)「あとは《軽業》とか《疾走》とか……。
あ、あと《容量拡張》関係も取っておきたいし、
うーむ……どうしよう。選べるけどどれを選ぶか……」

先ほどとは打って変わってニヤニヤと笑みを浮かべながらウインドウを操作し始めるドクオ。

残りの四人がイラッとするような笑みだったが、
そんなことは誰も言わず、
けれど呆れてドクオを見ていた。

川 ゚ -゚)「さっき言っていた《索敵》とか《隠蔽》とかは良いのか?」

('A`)「あー。
おれは取るつもりだけど、
基本ソロ向きのスキルだから、
四人には必要ないだろ」

ξ゚听)ξ「ソロ向き?って、あんた」

.

540 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:11:40 ID:moG2ydB.0

('A`)「あ、いや、別にパーティーを抜けるってわけじゃないぞ。
ただ、先行して次のエリアを見に行ったりすることもあるだろうし、
おれは一人で動くこともあるだろうから、
それ用に鍛えておいた方がよいスキルってことだ。
おれは四人みたいに職業スキルを入れない分、
戦闘に特化した、できれば一人でもフラフラできるスキル構成にするつもりなんだ」

(´・ω・`)「ドクオ……」

('A`)「悪いショボン。
このセッティングは譲れない。
その分、それを考慮した戦闘を組み立ててほしい。

(´・ω・`)「……わかったよ」

( ^ω^)「で、スキル構成はどうするんだお?」

('A`)「とりあえず、こんな感じっていう自分の方向性を考えてみて、
それに沿ったスキルを構築してみるか。
どうする?今からやるか?
それか一晩考えて、明日出発の前にやるか」

(´・ω・`)「できれば……」

ξ゚听)ξ「今からやりましょう。
めんどくさい」

川 ゚ -゚)「そうだな。さっさと済ませてしまおう」

( ^ω^)「おっおっお。それがいいお!」

('A`)「よし!やるか!」

満面の笑みを見せるドクオに、
ブーンを除く三人は少しだけなぜこんなに笑顔なのか不思議に思った。





.

541 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:14:49 ID:moG2ydB.0





そして二時間かかって全員の初期スキルを決定するころには、
全員がその理由をわかっていた。

川 ゚ -゚)「(そっか。ドクオは……)」

(´・ω・`)「(RPGとかの技設定とかを決めるのが好きなんだね)」

ξ゚听)ξ「(そういえば、
桃太郎の持つ武器とかお供三匹の装備とかを
ずいぶん気にしていたわね)」

( ^ω^)「昔からドクオはこういうの好きだおね」

('A`)「楽しいよな!
自分のやる技とか設定とか決めるの!」

川 ゚ -゚)
(´・ω・`)
ξ゚听)ξ

三人が心の中でため息をついたのを、
二人は知らない。

(´・ω・`)「さて、とりあえずはこれでやってみて、
あとは状況や装備に合わせて変更ってことで」

('A`)「そうだな。
やっていくうちに変更も出てくるだろうし」

( ^ω^)「おっおっお」

ξ゚听)ξ「もう夜も遅くなったわね」

川 ゚ -゚)「ああそうだな。
明日も早いし、そろそろ寝る時間だな」

.

542 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:17:00 ID:moG2ydB.0

(´・ω・`)「そうだね。
あ、でもちょっと話があるんだけどいいかな」

( ^ω^)「お?なんだお?」

(´・ω・`)「うん。
ドクオの事と、この部屋のこと、レアアイテムの事なんだけどさ」

('A`)「おれの事?」

(´・ω・`)「ドクオがβテスターだってこと、
この宿のこと、隣の書斎や宿代が無料だってこと、
あと手帳を含めたレアアイテム、特にスキルを保存する瓶の事は、
他言無用、僕達だけの秘密にしよう」

川 ゚ -゚)「……宿とアイテムに関してはその方がいいだろうな。
まわりからいろいろ言われそうだ」

('A`)「言われるだけならいいけどな。
ま、うん。そっちに関しては賛成。
でも、おれのβテスターってのは?
この前も言われたけど」

(´・ω・`)「ドクオが自分でも言っていたけど、
ドクオの持つβテスターの知識ってのは、
かなり僕たちの戦いを楽にしてくれると思う。
けれど、ほとんどの人はそれを持っていない。
一つの選択、決断が命にかかわるこの世界で、
その知識を持っている人やその仲間っていうのは、
羨望を通り越して妬み、恨みを持たれる可能性がある」

ξ゚听)ξ「それは……怖いわね」

(´・ω・`)「うん」

( ^ω^)「ドクオの知識を世に広めることはできないのかお?」

(´・ω・`)「どうやって?」

.

543 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:19:01 ID:moG2ydB.0

(;^ω^)「おー。それは…その……」

(´・ω・`)「口コミ、書類や本にして頒布。
色々考えたけど、やっぱり一つの事にぶち当たる。
もし、ドクオの知識が間違っていた時。
あるいは、本サービスへの移行による変更があった時。
そしてその記憶違いや変更によって死人が出てしまった時」

('A`)!

(;^ω^)!

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)!

(´・ω・`)「その時ドクオは恨まれるだろうし、
迫害されるかもしれない。
それどころか、命を狙われるかもしれない」

つらそうに話すショボン。
四人は黙って、沈痛な面持ちで次の言葉を待っている。

(´・ω・`)「だから、βテスターだってことは、
このメンバーだけの秘密にしたい」

('A`)「……わかった」

(´・ω・`)「ほかにドクオの事をβテスターだって知ってる人はいないよね?」

('A`)「……いる」

(;´・ω・`)「だれ!?」

焦ったように声を荒げるショボン。

('A`)「あいつらのこと覚えてないか?
初日にあった奇妙な三人組」

.

544 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:21:16 ID:moG2ydB.0

(´・ω・`)「あ、ああ。
あの姫とか忍者とか言ってた。
でもアバターの姿しか知らないわけだし」

('A`)「それが、ホルンカで会っちまったんだよ。
あいつらも移動してきていて。
おれとブーンがやったクエストの件でメッセージが来て、
会うつもりはなかったんだけど偶然がいろいろ重なってさ。
ばれた。
まあ名前も知ってフレンド登録もしていたから、
時間の問題ではあっただろうけど」

(´・ω・`)「そっか……。
じゃあ念のためメッセージは入れておいて。
僕の意見と、そちらも気を付けるようにってことと、
ドクオの事を広めないように」

('A`)「分かった。
で、実はあいつらがショボンに会いたいって言ってるんだ」

(´・ω・`)「僕に?」

('A`)「ああ。
宿の事なんかは話してないけど、
おれ達だけいまホルンカにいることや、
この後迎えに行くことなんかは話したら、
一度ゆっくり話したいって。
出来ればパーティーを組みたいようなことを言ってた」

(´・ω・`)「……ドクオ?」

('A`;)「ほんとに話してないぞ。
ただ最初五人でいたのにホルンカではブーンと二人だってことに食いつかれて、
根掘り葉掘り聞かれて、宿の事や手帳のことを黙ってるので精一杯だったんだよ」

( ^ω^)「横で聞いてたけど、
ほんとに喋ってなかったお。
ただ、女の子はちょっと焦ってるように見えたおね」

.

545 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:24:04 ID:moG2ydB.0

('A`;)「あ、ああ。
なんか切羽詰まっているような……。
まぁこんな状況だからと思ってあんまり気にしなかったけど」

(´・ω・`)「そう……。
パーティーは無理だとしても、
協力したり情報の共有をするにはいいかもね。
なんといっても向こうは三人共βテスターなわけだし」

('A`;)「そ、そ、そ、そうだろ」

(´・ω・`)

川 ゚ -゚)

ξ゚听)ξ「なんかあやしい」

挙動不審なドクオを見て、
怪訝な顔をする三人。
ツンは口にしたが、
ドクオは顔を横に向けてその視線から逃れようとする。

(´・ω・`)「あからさまに怪しすぎて突っ込む気にもなれないよ」

('A`;)「聞かないでくれ」

( ^ω^)「かわいい子だったから、ちょっとドキドキしたんだおね」

('A`;)「ちょ、ブーンおまえ!」

( ^ω^)「おっおっお。
かわいかったから仕方ないお。
アバターの時も可愛かったけど、
素顔も可愛かったおね」

ξ゚听)ξ「へーはーふーん。
可愛かったんだ」

( ^ω^)「おっ?
おっお。
可愛かったお」

.

546 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:25:47 ID:moG2ydB.0

ξ#゚听)ξ「へーはーふーん。
かわいかったんだ」

( ^ω^)「……お?」

ξ#゚听)ξ「へーはーふーん。
か、わ、い、か、っ、た、ん、だ」

(;^ω^)「そ、そうだお。
ツンのきれいさにはかなわないけど、
なかなか可愛い部類にはいる女の子だったから、
ドクオがドキドキしちゃったんだお」

ξ゚听)ξ「やだなにきれいだなんて。
お世辞言ってんじゃないわよ」

(;^ω^)「身近にきれいな人がいると審美眼が鍛えられるから大変なんだおね」

ξ゚听)ξ「はいはい。
でもその審美眼を持っていながらも可愛いっていうんだから、
なかなかの子ね。
で、その子がどうしたって?
ドクオ」

川;゚ -゚)「付き人みたいなのも一緒だったんだろ?」

(;´・ω・`)「そうそう。
姫を守る忍者とかなんとか」

('A`;)「お、おお。
後ろで見守ってたけど、
相も変わらず
『俺たちが姫を守る!』
とか言って盛り上がってた」

(;´・ω・`)「そ、そうなんだ。
と、とりあえずそれじゃあホルンカで会うってことで、
それでいいのかな」

.

547 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:30:26 ID:moG2ydB.0

('A`;)「お、おう。
それもメッセージしておく」

ツンを除く四人がひきつった笑顔を浮かべる中、
一人ツンは壁を見ながらニヤニヤと笑っていた。





(´・ω・`)「さて、それじゃあこれで打ち合わせは終わりかな」

(;^ω^)「おっ」

ニヤニヤと笑うツンを意識しないように場を締めようとしたショボンだったが、
ブーンが声を漏らし、ドクオを見た。

(´・ω・`)「?ブーン?ドクオ?
他にも何かあるの?」

ショボンの問いかけにブーンがドクオを見て、
ドクオはブーンに向かって静かにうなずき、
そしてショボンを見た。

('A`)「実は、もう一人おれがβテスターだって知ってる人がいる」

(´・ω・`)「……誰?」

先ほどとは違うもったいぶったような喋りを怪訝に思いつつ、
ショボンは次の言葉を待つ。

('A`)「シャキンさんだよ」

(´・ω・`)!

ドクオの言葉に言葉をなくすショボン
大きく目を開き、口も半開きで、取り繕うことも忘れ驚きを身で表している。

ξ゚听)ξ「え?だれ?」

.

548 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:33:07 ID:moG2ydB.0

そんなショボンを見て驚くツンとクー。

( ^ω^)「ショボンのお兄さんだお」

川 ゚ -゚)「一人っ子じゃなかったのか?」

( ^ω^)「正確には親戚のお兄さんだけど、
兄弟のように仲良くて、
顔もよく似てるんだお」

ξ゚听)ξ「その人も、こっちに来てたんだ……」

川 ゚ -゚)「!そういえば、ナーヴギアを1台親戚が使うとかなんとか言っていたな」

( ^ω^)「その人だお。
シャキンさんって言って、
すごくいい人だお」

(´ ω `)「え、ほ、本当に?」

('A`)「ああ。ホルンカで会った」

( ^ω^)「びっくりしたお。
ショボンに聞いてはいたけど、
村でぱったり会ったから」

(´ ω `)「な、なんか言って……」

('A`)「……気にしてた。
ただ、……まずはこっちはこっちでやるから、
そっちはそっちで頑張れって」

(´ ω `)!

( ^ω^)「もう三人組のパーティーを組んでたお」

.

549 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:38:08 ID:moG2ydB.0

(´ ω `)「パーティー?」

('A`)「シャキンさんは片手剣。
あと曲刀と斧を持った人の三人パーティーだった。
このタイミングでホルンカにいるってことはどちらかがβテスターなのかと思ったけど、
そういうわけではなく、ただなんとなく強そうな人の後ろを付いてきたって言ってたな」

(´ ω `)「……そう……」

('A`)「だから俺たちのやった片手剣の為のクエストを教えたから、
今頃まだやってると思う」

(´ ω `)!

一瞬腰を浮かせかけたショボン。
しかしすぐに我に返って座りなおす。

その姿を見た四人のうち二人はさらに驚き、
二人は少しだけ悲しそうな顔をした。

(´ ω `)「なんで……」

('A`)「道は同じだから、時期が来たら会えるだろうって言ってた。
……シャキンさんに会ったことを話すかどうかも、
おれ達の判断に任せるって」

(´ ω `)「……そう」

( ^ω^)「すぐに言わなかったのは、
それもシャキンさんに頼まれたんだお。
もし言うのなら、ホルンカに向かう準備が全部整ってからにしてくれって」

ブーンの言葉に体を震わせたショボン。
そしてゆっくりとその顔を見た。

( ^ω^)「シャキンさんから伝言があるお。
『まわりをよくみてがんばってみろ』だ、そうだお」

(´ ω `)「…………志也兄さん……」

.

550 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:43:24 ID:moG2ydB.0

顔を隠すように俯くショボン。
膝の上で握れれている手は、
強く握られ震えている。

一分ほどそのまま動かないでいたショボンが、
すっと顔を上げた。

(´・ω・`)「うん。わかった。ありがとう。二人とも」

普段通りの柔らかい笑顔を二人に見せる。

(´・ω・`)「兄さんなら元気で過ごせるでしょ。
こちらに来てしまっていたのは残念だけど、
元気そうなら安心だよ。
ドクオはフレンド登録とかした?」

('A`)「え。あ、ああ。一応」

(´・ω・`)「そう。なら良かった。
兄さんにいろいろ教えてあげて。
クエストの事とかさ」

そういいながら立ち上がる。

川 ゚ -゚)!

ξ゚听)ξ?

( ^ω^)!

('A`)!

(´・ω・`)「さて、それじゃあこれで打ち合わせは終了だね。
僕は出発前にもう一度書庫の本の内容を確認しておくから、
みんなは休んでくれていいよ。
ブーン、ドクオ、ベッドは一つずつ使ってくれていいからね。
僕はこっちのソファーで寝るから」

( ^ω^)「いいおっ!
僕がこっちで寝るお!」

551 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:45:32 ID:moG2ydB.0

既に廊下に出るドアの前まで移動したショボンが、
ノブに手をかけて振り返る。

(´・ω・`)「ちょっと遅くなると思うから、
先に寝てて。
ブーン、ここのベットは寝心地良いから今日は使ってみて。
それじゃ、おやすみ。
明日は朝7時起床の8時半前には出発でよろしく」

誰に何も言わさないでそれだけ告げると、
ドアを開けて部屋を出た。

川 ゚ -゚)「ショボン……」

腰を上げて立ち上がりかけていたクーだったが、
後を追わないでもう一度座った。

ξ゚听)ξ「いいの?」

川 ゚ -゚)「……ああ」

俯いたクーにささやくツン。
クーはツンにさみしげにほほ笑んだ後、
小さく首を横に振った。

川 ゚ -゚)「今私が行っても、
ショボンは私に気を使うだけだろうからな」

ξ゚听)ξ「そう……ね」

先ほどのショボンと同じような姿でこぶしを握る親友の姿をみて、
ツンは彼女に寄り添うように座りなおした。

ξ゚听)ξ「で、これからどうするの?」

('A`)「……今日は寝て、明日ホルンカに……」

ξ゚听)ξ「そういうことじゃなくて、
今部屋を出たバカの事と、
そのシャキンって人の事よ」

.

552 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:47:40 ID:moG2ydB.0

('A`)「あ、ああ……。
まあ、なるようにしかならないだろうし」

ξ゚听)ξ「で、あんたたち二人は何を隠しているわけ?」

('A`;)「何も隠してねーよ!
なあ、ブーン」

(;^ω^)「お、おお。
そうだお。隠してなんかないお」

('A`;)「なあ」

(;^ω^)「そ、そうだお」

ツンの言葉にあからさまに取り乱す二人。

それを見て大きくため息をつくツン。

ξ゚听)ξ「そこまであからさまだと引くし、
突っ込みを入れるのも気が引け始めるけど、
さっさと話しなさい」

(;^ω^)「おっおっ。
な、何も話すことなんてないお」

('A`;)「な、なにを言ってるんだよツン」

ξ#゚听)ξ「あんたたちねぇ」

ツンがこめかみに青筋を立てようとしたその時、
隣のクーが口を開いた。

川 ゚ -゚)「教えて、くれないか?」

ゆっくりと顔を上げる。
そしてドクオとブーンの顔を交互に見た。

.

553 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:50:34 ID:moG2ydB.0

川 ゚ -゚)「今の私ではショボンの助けにはなれないが、
もし何かあるのなら、教えてほしい」 

ξ゚听)ξ「クー」

('A`)「クー」

( ^ω^)「クー」

川 ゚ -゚)「頼む」

三人に見られながら、
そのまま頭を下げようとするクー。

(;^ω^)「は、話すお!
だから頭とか下げないでほしいお!」

川 ゚ -゚)!

(;^ω^)「友達にそういう真似をされるのは、苦手だお」

泣き出す前のように表情を曇らせたブーン。
ドクオは腹を決めたのか、
ソファーに座りなおしてお茶をすすった。

('A`)「シャキンさんに、頼まれたんだ。
ショボンがシャキンさんの事を聞いて取り乱したら、
すぐにシャキンさん達ははじまりの街に戻るって」

川 ゚ -゚)「いま、十分に取り乱していたように見えるが?」

( ^ω^)「……まだまだだお。
ショボンは本当はもっと感情表現が豊かなんだお」

ξ゚听)ξ「あいつが?」

('A`)「ああ。
笑うし、泣くし、はしゃぐし。
おれから見たらブーンにならぶ」

(;^ω^)「おっおっお。
三人でいるときは、
ドクオがストッパーだおね」

.

554 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 00:53:14 ID:moG2ydB.0

('A`)「まあおれのテンションがおかしくなる時は、
ショボンは冷静なことが多いから、
三人のうち一人は冷静って感じだけどな」

川 ゚ -゚)「それで、なぜそのシャキンさんはそんなことを。
気にしているのなら、すぐに会いに来てくれれば……」

('A`)「シャキンさんの真意はわからない」

( ^ω^)「……だお」

川 ゚ -゚)「そんな……」

首を横に振ったドクオ。
ブーンも悲しげに視線を下に向けた。
クーはそんな二人を見て表情を曇らせたが、
一人ツンは二人に意見を聞く。

ξ゚听)ξ「でも、思い当たるところはあるんじゃない?」

('A`)「……なぜそう思う?」

ξ゚听)ξ「幼馴染をバカにするなってことよ。
って、まあ勘だけどね。
でもあんたがそういう返しをするってことは、
あるんでしょ?」

( ^ω^)「ツンにはかなわないおね」

ξ゚听)ξ「で、予想でいいから聞かせなさい」

川 ゚ -゚)「頼む」

互いの顔を見るドクオとブーン。
そして頷きあうと、先に前を向いたドクオが口を開いた。

('A`)「多分だぞ?
予想だからな?
それこそ勘だぞ?」

ξ゚听)ξ「さっさと言いなさい」

.

555 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 01:01:32 ID:moG2ydB.0

('A`)「ん〜。
今のあいつはさ、やっぱり責任を感じていて、緊迫状態なんだと思う。
おれ達がいるから、おれたちの前では冷静な顔をしているけど、
多分今向こうの部屋ではシャキンさんが生きていた喜びと、
シャキンさんがこっちの世界に来てしまっていたという絶望と、
シャキンさんがショボンと会おうとしないことに対する悲しみで、
ものすごいことになってるんじゃないかな」

川 ゚ -゚)!

立ち上がるクー。
しかし今度はツンがその手を掴んで引き留めた。

川 ゚ -゚)「ツン?」

ξ゚听)ξ「目の前のバカ二人はそれをわかっていて後を追ってない。
今はあいつにとって一人にさせた方が良いってことだと思う」

川 ゚ -゚)!

自分を見上げる親友の悲しげな瞳。
テーブルをはさんだ友人二人も少しだけ悲しそうに頷いた。

川 ゚ -゚)「でも……」

ξ゚听)ξ「まだ続きがあるみたいだから、
とりあえず座って聞きましょ。
ほらドクオ、続きを言いなさい」

('A`)「なんでおれには命令なんだよ」

ぶつぶつと文句を言う友人を見ながら再び腰を下ろすクー。
隣のツンと手をつなぎ、先ほどよりもさらに寄り添うように座った。。

( ^ω^)「僕やドクオの前では感情を表に出すし、
シャキンさんの前でも出してる。
多分僕たちに対するよりも、泣き言とかは言ってると思うお」

川 ゚ -゚)「……今は、私達がいるから……」

(;^ω^)「ち、違うと思うお!」

.

556 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 01:03:35 ID:moG2ydB.0

('A`)「多分ここに二人が居なくても、
今はおれたちの前でも、
弱音を吐いたり取り乱したりはしないと思う」

ξ゚听)ξ「それだけ思い詰めてるってこと?」

( ^ω^)「そう思うお」

ξ゚听)ξ「……ばっかみたい」

三人が悲しげな表情をする中、
一人怒りに似た感情を表に出すツン。

川 ゚ -゚)「ツン……」

ξ゚听)ξ「一人で全部背負ってるんじゃないわよ……。
私が言ったこと、何にもわかってないじゃない」

川 ゚ -゚)「……ツン」

吐き捨てるようにつぶやいた親友の言葉に、
最初の夜にその苦しみを聞いていたクーは言葉が出ず、
ただ握った手を強く握りしめることしかできなかった。

ξ゚听)ξ「で、結局そのシャキンってのはショボンと会うわけ?
時期とかなんとか言ってたbたいだけど」

( ^ω^)「シャキンさんもきっと会いたいと思ってると思うお。
ショボンの事が心配だろうし、
自分の元気な姿を見せてやりたいって思ってるんじゃないかお」

ξ゚听)ξ「ならさっさと来ればいいのに」

('A`)「いまシャキンさんに会ったら、
ショボンはシャキンさんに心のよりどころを求める。
おれ達を守ることにすべてをささげ、
自分の心はシャキンさんに頼ると思う」

ξ゚听)ξ

川 ゚ -゚)

ドクオの言葉に息をのむ二人。

.

557 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 01:05:59 ID:moG2ydB.0

( ^ω^)「でも、シャキンさんはそれじゃだめだと思ったんだと思うお。
そして、僕もそんなのは嫌だお」

--例えそれでもショボンの心が楽になるのなら--
そんなことを考えて口にしようとしたツンとクーだったが、
ブーンの言葉に何も言えなくなった。

( ^ω^)「だからシャキンさんの言う通り、
シャキンさんの事を伝えるのは今にしたんだお」

川 ゚ -゚)「まだ私達はショボンに頼ってしまっている……」

('A`)「ああ。けれど正直、
さっきのスキル設定なんかは自分達でやれるけど、
これからの事を一番考えていてくれるのはショボンなんだよ」

ξ゚听)ξ「……そうね。
それは私も反省しなきゃね。
いくらなんでもあいつに任せっぱなしだし」

川 ゚ -゚)「今の私たちが考えつくようなことは既にショボンは考え尽してくれているから、
どうしてもそうなってしまう。
それではいけないのは分かっているつもりなんだが……」

('A`)「……ああ。
βテスターとしての知識も、
あいつがいるから最大限に生かせてる気がする」

自分たちを省みて、気を引き締めつつも首を垂れる三人。

( ^ω^)「僕たちも、ショボンが安心して頼ってくれるように、
頑張らないとだお」

しかしブーンは笑顔でそう言い放った。

('A`)!

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)!

.

558 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 01:09:08 ID:moG2ydB.0

( ^ω^)「ショボンが一人で背負っちゃうのはそういう性格だし、
今の状況から考えたらそうなっちゃうのは仕方ないと思うお。
でも、それじゃだめだから、何か一つでも僕たちに頼ってもらえたら、
きっと変わるような気がするお」

('A`)「ブーン」

ξ゚听)ξ「ブーン」

川 ゚ -゚)「ブーン」

( ^ω^)「それに、今のショボンは必死に色々考えて、
それで僕たちが笑顔になることが一番の喜びなんだ思うお。
だから今は甘えて、でも着実に力をつけて、
出来るだけ早く頼ってもらえるように頑張るのが一番いいと思うお」

('A`)

ξ゚听)ξ

川 ゚ -゚)

満面の笑みを浮かべて三人に話すブーン。

その笑顔を眩しそうに見るドクオとツン。
クーは一人驚いたようにその笑顔を見つめていた。

( ^ω^)「そう思わないかお?」

('A`)「ああ、そうだな」

ξ゚听)ξ「悩んでも仕方ないわね。
ああいうやつなんだし」

( ^ω^)「おっおっお」

('A`)「ま、おれは戦闘とかで頼ってもらえると思うから、
三人はがんばれ」

ξ゚听)ξ「今それほど頼ってもらってないのに、
この先あいつも戦闘のコツを掴んだらさらに頼ってもらえないんじゃないの?」

.
567 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 19:54:20 ID:moG2ydB.0

('A`)「……まだβの知識がある」

ξ゚听)ξ「はやっ!
切り替えはやっ!」

('A`)「良いんだよ別に!
そういうお前はなんかあるのかよ」

ξ゚听)ξ「あんたにお前とか呼ばれたくありませんー」

('A`)「うっわ。マジむかつく」

( ^ω^)「ちょ、二人ともやめるお」

('A`)「でもそうやって話を逸らすってことは、
まだ何にも浮かんでないってことだな」

ξ゚听)ξ「うっ」

('A`)「へっへっへ」

ξ゚听)ξ「うるさい!
あんたにはない私の女子力で目にもの見せてやるわよ」

('A`)「女子力?
誰に?
え?ツンに?
え?女子力って意味わかってるか?」

ξ゚听)ξ「こいつ素で聞きやがった」

( ^ω^)「おっおっお」

ξ゚听)ξ「見てろよこの野郎」

('A`)「ま、おれが一番最初だな」

ξ゚听)ξ「あーら。
こっちにはクーがいるのをお忘れかしら?
生徒会での片腕!
事務処理の鬼!
和服のお嬢様!」

.

568 ◆dKWWLKB7io:2015/12/14(月) 19:56:39 ID:moG2ydB.0

('A`)「結局他力本願かよ!
つーかお嬢様とか関係ねー!」

ξ゚听)ξ「どちらのチームが先に頼られるか勝負よ!」

('A`)「主旨が変わってるぞおい!」

ξ゚听)ξ「結果が一緒ならいいのよ」

('A`)「よかねえよ!」

( ^ω^)「おっおっお」

ξ゚听)ξ「クー!頑張るわよ!」

川 ゚ -゚)「え?あ、ああ。
うん。そうだな。頑張ろう。
ショボンの片腕になれるように。
倒れる前の杖となれるように」

ξ゚听)ξ「いや、そこまでは」

('A`)「とりあえず目指せよ!」

( ^ω^)「おっおっおっ」

和気あいあいと話す四人。

それはまるで数日前まで過ごしていたお昼の生徒会室のようで、
四人の心を温かくした。
そして今ここにもう一人が欠けていることを全員が悲しく思い、
それぞれに決意を胸に秘めた。





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579 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 20:42:40 ID:jMQ1Wtwo0





5.彼等






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580 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 20:44:19 ID:jMQ1Wtwo0

時は少し遡る。

茅場晶彦のアバターが空から消えてから数時間後。
今なお中央広場は悲鳴と怒声に彩られていた。

それは当然のことで、
瞬間的に『先』を考えることができた十数名を除けば、
広場で泣き叫ぶか運営を呼ぶか、
あるいは現実を直視できず街をさまようものが大半だった。

そして一部には強制的にログアウトすれば戻れると思う者もいた。
彼らは崖から飛び降りてその身をポリゴンに変え、
あるいは街の外にいる魔獣にその身を差し出す者もいた。

その混乱の中、彼はまず冷静に自分の置かれた状況を理解し、
次の一手を考えつつ、
目の前の喧嘩を面白そうに見ていた。

(`・ω・´)「やばいぞ。
面白い奴らを見つけてしまった」

彼の名はシャキン。

(`・ω・´)「この状況で……。
スゲー面白い奴らだ」

今の状況下でそんな他人の喧嘩を『面白い』とみている時点で、
彼も充分『面白い』部類に入ると思うのだが、
彼はそんなことは全く考えていなかった。

とはいえ、シャキンも最初から目の前の喧嘩を見ていたわけではない。

とりあえず重要施設を確認しようと《黒鉄宮》と呼ばれる施設に入ると、
そこには漆黒の、黒曜石のような輝きを放つ大きな石の壁、
碑が存在していた。

そしてそこに書かれたアルファベットを見て、
それがプレイヤーの名前だと知った彼はまず自分の名前を探し、
そしてこの世界に来ているはずの弟同然の親類の名を探した。

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581 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 20:46:33 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「……『Shobon』。ま、これが祥大だろうな。
ってことは……『DOKUO』と……『Boon』これがあの二人か。
名前に取り消し線が入ってないってことは、
生きてるってことだよな」

既に取り消し線が上に引かれた名前が目に付く。
シャキンが名前を探している間にも、
いくつかの名前に線が引かれていた。

(`・ω・´)「命を粗末にするなバカ野郎」

ボソッと呟くと、踵を返し黒鉄宮を出るために出口へと足を進めた。

(`・ω・´)「さて、多分この三人であってると思うけど、
連絡はどうするか……。
おれが『Shakin』で来ているのは教えてないし、
多分、いま祥大はおれの事を考えている状態じゃないだろうからな。
ドクオかブーンに連絡するのが良いかもしれないな……」

そして黒鉄宮を出たシャキンはいろいろと考えながらプレイヤーの少なそうな路地に入った。

そこで、彼は見付けてしまった。



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582 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 20:48:40 ID:jMQ1Wtwo0








( ゚д゚ )「だから熟女の方が良いに決まっているだろう!」

(´・_ゝ・`)「二次の少年こそ至高だ!」










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583 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 20:50:34 ID:jMQ1Wtwo0

リアルの世界で叫んでいたら、
いやこの世界でも通常の状態なら通報されそうなことを叫んでいる二人の男。

どうやら最初は肩がぶつかった程度であったらしいが、
そのぶつかった理由が片方は店先にいた店員(熟女)に目を奪われていたからで、
もう片方がその店に買い物に来ていた少年に目を奪われていたから、
このような怒鳴りあいに発展したようだった。

(`・ω・´)「アホだ」

思わず近寄り、少しだけ隠れて二人を観察するシャキン。

最初は面白がっていただけだったが、
途中で気付いてしまった。

二人は、どうでもいいことで争うことで自我を保っているということに。

出来るだけ『普段の自分』を装うことで、
何とかして『自分』を繋ぎ止めているということを。

(`・ω・´)「……そりゃ、そうだよな。
おれとか祥大の方が特殊だろう」

自分が状況を冷静に観察していることを更に客観的に判断するシャキン。
そして自分と同じような環境下で育った弟のように思っている身内も、
この状況下でも冷静でいることを確信していた。

(`・ω・´)「ま、これも何かの縁か。
祥大達にはあとで連絡しよう」

街の中では通常の戦闘は出来ないよう設定されている。
しかし一歩街の外、圏外に出れば命のやり取りができる。
そして決闘システムを使えば街の中でも、
圏内でも命のやり取りができることを知っていたシャキンは、
軽い足取りで二人に近づいた。

シャキンが近づいてくることにも気付かずに言い争いを続ける二人。

.

584 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 20:52:07 ID:jMQ1Wtwo0

(# ゚д゚ )「よし!外に出ろ!」

(#´・_ゝ・`)「決着をつけてやる!」

(`・ω・´)「おいおい、いい加減にしろよ二人とも」

(# ゚д゚ )「ああ!?」

(#´・_ゝ・`)「だれだてめぇ!?」

.

585 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 20:53:36 ID:jMQ1Wtwo0







(`・ω・´)「おれの初一人エッチのおかずは20歳離れた(親類の)お姉ちゃんで、
更に(昔は)人目もはばからないブラコンだ!おれはあいつを愛してる!」







.

586 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 20:54:39 ID:jMQ1Wtwo0







( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)






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587 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 20:55:31 ID:jMQ1Wtwo0








( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)







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588 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 20:56:53 ID:jMQ1Wtwo0

( ゚д゚ )「(お姉ちゃん?20歳離れた?
近親相姦的な熟女好き変態?)」

(´・_ゝ・`)「(人目をはばからないブラコン?
実の弟を愛でる系?え?マジの人?)」

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)

(`・ω・´)

( ゚д゚ )「あ、そうなんだ」

(´・_ゝ・`)「へ、へー」

(`・ω・´)「いろいろ話そうぜ二人とも!」

『がしっ』というような擬音が聞こえそうな勢いで二人の肩を抱くシャキン。

( ゚д゚ )「え、あ、いや、おれはそろそろ」

(´・_ゝ・`)「あ、うん。おれもそろそろ」

.

589 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:05:55 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「なんだよ、二人とならいい酒が飲めそうなのに!
どうせウロウロしてただけなんだろ?
バーでも探して一杯やろうぜ!なっ!」

力が強いわけではないがうまく首元に手を回され、
更に体勢を崩された二人はシャキンの動きに合わせて歩き出した。

(`・ω・´)「仲良くしようぜ!兄弟!」

( ゚д゚ )「いや……」

(´・_ゝ・`)「その……」

(`・ω・´)「おれはシャキン!お前ら名前は!?」

( ゚д゚ )「み、ミルナ……」

(´・_ゝ・`)「……デミタス」

これが、後にギルドN−Sを結成した三人の出会いであった。

更に言うと、ギルド名はこの時『バー』を探して東に西に歩いたことに由来する。

そして後に彼の言う『ブラコン』の対象であるショボンに、
シャキンとの出会いを聞かれ二人はこう言った。



「自分を上回る変態に出会うと、一瞬で正気に戻るもんだぞ」



ショボンが頭を抱えてうずくまったのを見たシャキンは、
豪快に笑っていた。






.
591 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:10:52 ID:jMQ1Wtwo0

次の日の朝。
同じ宿に泊まった三人は宿の隣の店で朝食をとっていた。

(`・ω・´)「二人はこれからどうするんだ?」

朝食といっても硬いパンを二つと、
謎の飲み物である。

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)

シャキンの問いかけに答えられず、
顔を見合わせる二人。

(`・ω・´)「?二人はこれからどうするんだ?」

( ゚д゚ )「あ〜。まだ決めてない」

(´・_ゝ・`)「おれもだ」

(`・ω・´)「そっか。
おれは昨日話した弟と合流しようかと思う。
そっちはそっちで友達四人と一緒だから、
良ければ一緒に動いてみないか?」

( ゚д゚ )「え?」

(´・_ゝ・`)「で、でも」

(`・ω・´)「向こうは既に五人だからパーティーは組まないだろうけど、
何かしら一緒に行動するのはいいだろ」

(´・_ゝ・`)「五人なら、シャキンを入れればちょうど六人だろ?
それでパーティー組めばいいんじゃないか?」

(`・ω・´)「ずっと一緒だとあいつを甘やかしちまうからな」

( ゚д゚ )「(ブラコンだった)」

(´・_ゝ・`)「(ブラコンだった)」

.
593 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:12:41 ID:jMQ1Wtwo0

にやりと笑ったシャキンを見て、
同じことを考えた二人。

(`・ω・´)「どうだ?」

( ゚д゚ )「おれは……正直ありがたい」

(´・_ゝ・`)「おれもだ。ありがとう」

(`・ω・´)「何言ってんだ。
誘ったのはおれだぞ。
じゃあパーティーに誘うな。
えっと、こうしてこれで……。
お、ミルナの名前が出た。
どうだこれで!」

シャキンが独り言ちながら自分のウインドウを操作すると、
ミルナの目の前にシャキンからパーティーに誘われたウインドウが現れた。

( ゚д゚ )「よろしく頼む」

(`・ω・´)「よしよし。
じゃあこうしてこうすれば……。
よし、デミタス出た」

続いてデミタスの前に現れたウインドウ。

(´・_ゝ・`)「よろしく」

こうして三人は行動を共にすることとなった。






.

594 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:14:32 ID:jMQ1Wtwo0

(´・_ゝ・`)「シャキン、聞いていいか?」

(`・ω・´)「ん?なにをだ?」

路地を歩く三人。
先頭を進むシャキンの後ろを、ミルナとデミタスが並んで歩く。

(´・_ゝ・`)「道、覚えてるのか?」

(`・ω・´)「ああ。はじまりの街は説明書にマップも載ってたしな」

( ゚д゚ )「え?あれを覚えてるのか?」

(`・ω・´)「?あれだけじゃないぞ?
こっちに来て中央広場に詳細な地図があったし、
通った場所は自動でマッピングされてるし」

(´・_ゝ・`)「でも今それを見てないよな?」

(`・ω・´)「黒鉄宮は昨日も行ったしな。
まぁ中央広場のそばだし、わかりやすいだろ」

(´・_ゝ・`)「はぁ……」

( ゚д゚ )「あの分厚い説明書も読んだのか?」

(`・ω・´)「さすがに二回は読まないとちゃんと覚えられなかったな」

(;゚д゚ )「覚えた!?」

(;´・_ゝ・`)「あれを!?」

(`・ω・´)「ん?ああ。
お、着いたぞ」

目の前には大きな広場。

茅場晶彦とその言葉を思い出し、顔をしかめるミルナとデミタス。
昨日の事であるはずなのに、なぜか遠い過去のような、
それでいてついさっきの事のように脳裏に浮かぶ。

.
596 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:18:52 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「ん?どうした?」

足を止めた二人を不思議そうに見るシャキン。

(`・ω・´)「黒鉄宮に行くぞー」

自分たちが感じているような感覚を全く持っていないように見えるシャキンを、
二人は少しだけ羨ましく感じていた。



黒鉄宮につくと、シャキンは入り口付近を見渡せることができ、
なおかつ隠れることのできる場所を探した。

( ゚д゚ )「何故隠れる?」

(`・ω・´)「突然現れて驚かそうと思って」

(´・_ゝ・`)「待ち合わせをしてるんだろ?」

そしてうまいことそんな場所を見つけると、
二人とともに隠れた。

(`・ω・´)「いや、してない」

( ゚д゚ )「は?」

(´・_ゝ・`)「え、じゃあなんでここに?」

(`・ω・´)「いや、あいつの事だから来るだろうと思って」

( ゚д゚ )「いやいやいやいや」

(´・_ゝ・`)「さすがに無理だろそれは」

(`・ω・´)「んー。あいつの思考を考えると、
多分今日の朝ここに来ると思うんだよな。
友達と一緒に」

.

597 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:21:34 ID:jMQ1Wtwo0

柱の陰に押し込まれ、二人に詰め寄られるシャキン。

( ゚д゚ )「この状況でそんな悠長なことを」

(´・_ゝ・`)「名前もわかってるんだろ?
そのショートメッセージってのなら、
名前さえわかればメッセージを送れるんだろ?
送ってみろよ」

(*`・ω・´)「もし間違ってたら恥ずかしいじゃないか」

(´・_ゝ・`)「今更そんなことで恥ずかしがるな」

( ゚д゚ )「……あ……れ?」

呆れる二人。
なんとかしてメッセージを送らせようと考えつつ、
ちらりと黒鉄宮を見たミルナの動きが止まった。

(´・_ゝ・`)「どうしたミルナ?」

( ゚д゚ )「シャキン、弟は顔が似てるのか?」

(*`・ω・´)「おれに似てかっこ可愛いぞ。
怒られるからあいつには言えないけど」

( ゚д゚ )「もしかして、彼か?」

(´・_ゝ・`)「なに!?」

慌ててデミタスがそれでもこっそりと柱の陰から顔を出す。
そしてその後ろからシャキンも続いた。

(´・ω・`)

川 ゚ -゚)

ξ゚听)ξ

(`・ω・´)「おっショボンだ」

.
599 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:38:13 ID:jMQ1Wtwo0

(´・_ゝ・`)「ほんとに来やがった」

( ゚д゚ )「マジか」

振り返り、ニヤニヤとショボンを見ているシャキンを見る二人。

(`・ω・´)「あいつの事だから無茶はしていないと思ったが、
無事で何より。
けどドクオとブーンがいないな……。
あの三人がこの状況下で別行動をするとは考えにくいが……」

呟いている内容はまじめだが、
その顔はにやにやとした笑顔で正直気持ち悪いと二人は思った。

( ゚д゚ )「で、で、でだ。
出て行って声はかけないのか?」

(`・ω・´)「んー。ちょっと考える。
多分あいつ等も生命の碑を見に来たんだろうから、
そのあとおれも確認して……。
ミルナ、デミタス、どちらか頼まれてくれるか?」

( ゚д゚ )「何をだ?」

(`・ω・´)「生命の碑を見に行ってきてもらいたい。
そこで、『Boon』と『DOKUO』の名前を確認してきてほしい。
……線が引かれていたりはしないと思うが」

(´・_ゝ・`)?

(`・ω・´)「あいつ、『Shobon』は、その二人とこの世界に来たはずなんだ」

.
601 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:40:28 ID:jMQ1Wtwo0

(´・_ゝ・`)「彼女たちは?」

(`・ω・´)「さらに一緒に来た友達だとは思うが。
会ったことはない」

( ゚д゚ )「分かった。おれが行ってこよう」

(`・ω・´)「頼む」

ミルナが柱の陰から出て黒鉄宮の入り口に向かう。

(´・_ゝ・`)「だが、それと今顔を出さないのは意味があるのか?」

(`・ω・´)「今のあいつは何か追い込まれているように見える。
もし二人のうちのどちらかに何かがあったんだとしたらすぐに飛び出すが、
そうでなければ少し様子を見たい」

(´・_ゝ・`)「……」

まじまじとシャキンの顔を見るデミタス。

(`・ω・´)「どうした?」

(´・_ゝ・`)「いや、ブラコンなのに甘やかすだけじゃないんだなと思った」

(`・ω・´)「甘やかすだけが愛じゃないのさ」

(´・_ゝ・`)「はいはい」

瞬間的に表情を引き締めたシャキン。
しかしすぐにニヤニヤとした笑いに戻ってしまったため、
デミタスはまた心の中でため息をつくこととなった。

.

602 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:42:35 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「お。出てきたな」

しばらくするとシャキンが心なしか弾んだ声で呟いた。

(´・ω・`)

ξ゚听)ξ

川 ゚ -゚)

少年を先頭に、少女が二人続く。

その歩き方は先ほどまでの自分達のようで、
デミタスは少しだけ恥ずかしくなった。

(´・_ゝ・`)「み、ミルナが遅いな。
後は付けなくていいのか?」

(`・ω・´)「んー。多分、これが使えるから」

ウインドウを出していたシャキンが、
流れるように指を動かしている。

(´・_ゝ・`)「なにしてるんだ?」

(`・ω・´)「『追跡』ってスキルを使うと対象の跡を追えるらしいんだ。
レベルを上げればその場に居なくても足跡とかを追えるらしいけど、
まあ目の前にいる奴の後ろを追うだけなら、
付け焼刃で設定したスキルでも大丈夫だろ。
本当なら『聞き耳』スキルであいつらの会話も聞きたいところだけど、
さすがに武器のスキルを外すのは心もとないからな」

(´・_ゝ・`)「…………シャキン、
おれがその『追跡』を付けて追うから、
お前はその『聞き耳』ってのをつけろ」

(`・ω・´)「え?いやそれは」

(´・_ゝ・`)「少しは役に立たせろ。
パーティーなんだから」

.

603 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:53:03 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「……ありがとう。
それじゃあ頼む」

既に開いていたウインドウを操作し始めるデミタス。

そしてショボンの後姿を注目する。

(´・_ゝ・`)「……なるほど。足跡が見えるようになるんだな。
ん?もう黒鉄宮の入り口近辺の足跡は消えかけてる。
おれの顔はばれてないはずだし、
先に行くぞ」

(`・ω・´)「ありがとう」

(´・_ゝ・`)「見失わなかったら、
後でまとめて聞くさ」

ショボンの後姿が路地の角を曲がったのを確認した後、
柱の陰から出て歩き始めるデミタス。

それと同時にミルナが黒鉄宮から外に出た。

( ゚д゚ )「?」

一人歩くデミタスを見て不思議そうな顔をするミルナ。
シャキンが駆け寄る。

(`・ω・´)「ミルナ」

.

604 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:55:00 ID:jMQ1Wtwo0

( ゚д゚ )「デミタスは一人でどうしたんだ?」

(`・ω・´)「いまスキルを使ってショボンを追ってくれているんだ。
おれ達はデミタスの後ろを少し空けてついていこう」

( ゚д゚ )「そんなスキルがあるんだな」

歩き始めたシャキンの隣に駆け寄るミルナ。

そして歩調を合わせて歩き始める。

( ゚д゚ )「『Boon』と『DOKUO』に線は引かれていなかった」

(`・ω・´)「そうか…よかった」

( ゚д゚ )「あと、彼が彼女たちの名前を呼んでいるのを聞いた。
背の高い方が『クー』。小さい方が『ツン』だ。
字は分からないが、対応しそうな名前としては『KuU』、『COO』、『Qoo』。
『TUNN』、『T.U.N.』なんてのがあった。
そこらへんも見ていたら遅れた。すまん」

(`・ω・´)「!そ、そうか。
ありがとう。助かるよ」

驚いたようにミルナの横顔を見るシャキン。

( ゚д゚ )「……助けてもらってばかりってのも、
いやだからな」

ミルナは前を向いたまま、
少し照れくさそうにつぶやいた。




.

605 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:56:59 ID:jMQ1Wtwo0

時間は二時間ほどが過ぎようとしており、
時計の針はお昼へと向かっていた。

シャキンたち三人の視界の隅にいるのはクーとツン。
ショボンは二人より少し前にいて、
屋台のような店先で中の女性と話をしている。

(´・_ゝ・`)「で、どうなんだ?」

(`・ω・´)「普通にクエストをしているみたいだな。
さっきも今も物を届けるお使いの話をしている」

( ゚д゚ )「ならそろそろ話しかけたらどうだ?」

(`・ω・´)「それなんだけどな……」

( ゚д゚ )「どうした?」

(`・ω・´)「三人の会話が、不自然なんだ。
一見普通に会話しているけど、
ショボンがおかしい。
あいつは友達に対してああいう喋り方はしないと思う」

(´・_ゝ・`)「友達じゃないとか?」

(`・ω・´)「いや、三人の会話の中に『ブーン』と『ドクオ』が出てくることと、
その内容からこっちに一緒に来たことは間違いない。
全部で五人で遊ぶってのも、向こうで聞いたしな」

( ゚д゚ )「ふむ。
それで、どうするんだ?」

.

606 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 21:59:02 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「……先にドクオとブーンに会いたいな。
話をしたい。
出来ればメッセージより直接会いたいが、
どうやら二人は先行して次の町に行っているみたいなんだ」

少しうつむき加減で眉間にしわを寄せるシャキン。
こめかみや眉間を数回人差し指でたたくと、
ミルナとデミタスの顔を見た。

(`・ω・´)「二人ともすまない、
せっかくパーティーを組んだ…」

( ゚д゚ )「なんて街に行くんだ?」

(´・_ゝ・`)「パーティーとしての初陣だ、
腕が鳴るな」

(`・ω・´)「のに……え?」

( ゚д゚ )「行くんだろ?次の町に。
パーティーとして、一緒に行くぞ」

(´・_ゝ・`)「どちらにせよいつかは外には出なきゃいけなくなる。
それなら信用できる奴らと数人で出た方が安心だろ?」

(`・ω・´)「二人とも……。ありがとう」

頭を下げたシャキンに慌てる二人。
しかしすぐにミルナがショボンたちを再び見た。

( ゚д゚ )「ん?おい、シャキン、一人近づいてくる奴がいるぞ?
あれはドクオとかブーンじゃないんだよな?」

(`・ω・´)「え?」

ミルナの横、隠れていた角から顔を出すシャキン。
デミタスも後ろから顔を覗かせる。

.

607 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 22:01:21 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「いや……違うな。二人のどちらでもない。
会話も……仲間にしてほしいとか話しているな。
それでショボンが断ったところだ」

(´・_ゝ・`)「そうか」

( ゚д゚ )「一人でいるのは心細いからな」

デミタスとミルナは互いの顔を見たあと少しだけ笑いあい、
そして二人してシャキンを見た。

(`・ω・´)「……今はしょうがないな。
だが、あの断り方は……やはり追い詰められているのか……」

そんな視線には気付かず、スキルによって会話を聞いているシャキン。

デミタスとミルナも視線を再びショボンたちに向ける。

既に話はついたのか、ショボンたち三人は歩き始めていた。

話しかけていた青年が、一人たたずんでいる。

(´・_ゝ・`)

( ゚д゚ )

(`・ω・´)「……この街にとどまるなら声をかけてもいいが、
これから外に出るつもりである以上、
話しかけるわけにはいかない」

(´・_ゝ・`)「……うん」

( ゚д゚ )「ああ。そうだな」

たたずむ青年を見つめるデミタスとミルナに、
そして自分に言い聞かせるように話すシャキン。

二人は無言でうなずいた。

.

608 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 22:03:39 ID:jMQ1Wtwo0

そしてデミタスが慌てて声をかける。

(´・_ゝ・`)「シャキン、どうする?まだ後をつけるか?」

追跡スキルを発動させるデミタス。

(`・ω・´)「いや、大丈夫だ。ありがとう。
あの様子ならショボンたちはとりあえず大丈夫だろうから。
次の街に行く準備をしよう。
回復POTとかポーション類をそろえたり、行き方、道を調べないと」

( ゚д゚ )「本当にいいのか?」

(`・ω・´)「ああ。とりあえずは顔を見ることができたから満足だ」

ウインドウを開くシャキン。
そして街の地図を開くと、道具屋の位置を確認する。

(`・ω・´)「ここから北に行ったところに道具屋があるはずだ。
まずはそこで揃えよう」

(´・_ゝ・`)「分かった」

( ゚д゚ )「おう」

それぞれの顔を見る三人。
そして頷きあうとシャキンの先導で進もうとするが、
そのシャキンが急に足を止める。

その視線の先には、男女の三人組がいた。

( ゚д゚ )?

(´・_ゝ・`)?

不思議そうに声をかけようとした二人に対し、
左手を上げて声を出さないように指示するシャキン。

.

609 ◆dKWWLKB7io:2015/12/26(土) 22:06:07 ID:jMQ1Wtwo0

そして右手を右耳に当て、声を聴きとれるような仕草をする。

( ゚д゚ )「(聞き耳?)」

(´・_ゝ・`)「(スキル?)」

そしてその三人を追い始めるシャキン。
慌てて二人もそれに続く。

(´・_ゝ・`)「どうした?」

(`・ω・´)「どうやらあの三人も次の街《ホルンカ》に行く予定らしい。
ちょっとついて行ってみよう」

二人に向かっていたずらっ子のような笑顔をするシャキン。

それに対し二人は呆れながらも笑顔で返し、
シャキンに続いて視線の片隅に映る三人を追う。

デミタスはそっと追跡スキルを発動した。







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621 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 19:17:59 ID:jPuH2I2s0






6.βテスター







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623 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 19:20:24 ID:jPuH2I2s0

《ホルンカ》

はじまりの街を早朝に出た五人は、
昼前に目的地である《ホルンカ》にたどり着いていた。

ξ゚听)ξ「なるほど。ここは『村』ね」

入り口から見える民家を見てツンが呟いた。

川 ゚ -゚)「映画や書物で見るような『中世の村』だな。
魔女狩りの時代を思わせる」

周囲を観察しながらクーも呟く。
その横でドクオとブーンは先頭で村に入ったショボンの背中を見ていた。

ショボンは無言で周囲を見ていた。

ξ゚听)ξ「私たちの服装もそんなイメージよね。
ドクオ、ずっとこんな感じなの?」

('A`)「おれが行ったところはこんな感じだったな」

(;^ω^)「つ、ツンもドクオも」

('A`)「あ……」

ξ゚听)ξ「まわりに誰もいないことぐらい確認してます」

川 ゚ -゚)「うむ。近くには誰もいないな。
だが、昨日の話に出てきた『聞き耳』スキルを使われたら」

ξ゚听)ξ「あっ」

(´・ω・`)「さすがに今のタイミングで
あのスキルをスロットに入れている人はいないと思うけどね。
ふつうは」

四人の会話も聞いていたショボンが振り返りつつ、
苦笑しながら会話に参加した。

.

624 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 19:22:36 ID:jPuH2I2s0

川 ゚ -゚)「それもそうだな。ふつうは」

( ^ω^)「だおねー。ふつうは」

ξ゚听)ξ「え、あ、そうか。そうね。ふつうはそうね」

意味ありげにドクオを見る四人。
少しだけ不機嫌そうに横を向くドクオ。

('A`)ゼッタイヤクニタツカライインダヨ

誰にも聞こえない声でぶつぶつと呟くドクオを見て笑顔を見せた四人だった。




(´・ω・`)「でも……確かに思ったよりも人が少ないね」

ドクオを先頭に歩く五人。
その横にショボン。
クーとツンが続き、その後ろをブーンが歩く。

('A`)「だろ?
まあこの時間だから、
この村にいるほとんどの奴は狩りに出てると思うけどな」

(´・ω・`)「そっか。今日の天気なら森でも明るいもんね」

('A`)「ああ。
今ここにいるってことは、
戦ってここに来たってことだし、
片手剣使いはあのクエストやってるだろうしな」

川 ゚ -゚)「ふむ。
今二人が持っている剣はそれほど強いのか?」

('A`)「この村までで手に入る剣の中では段違いだ。
それに強化回数もそれなりに多いから、
うまく鍛えれば3層か4層くらいまで使えるんじゃないかな」

ξ゚听)ξ「お得ね」

.

625 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 19:27:53 ID:jPuH2I2s0

川 ゚ -゚)「だが、失敗もあるんだろ?
その強化ってやつは」

('A`)「ああ。
しかも失敗した分も回数としてカウントされる。
強化の種類も何種類かあるから、
それも楽しみでもあるな」

そう言って笑ったドクオの笑みはスキルを決めるときの笑顔とほぼ同じで、
横で見たショボンは後ろの三人に見られなくてよかったと思った。

(´・ω・`)「強化回数は、武器ごとに異なる。
強い武器でも一回しかなかったり、
それなりの武器でも複数回強化できたら、
最終的には強い武器になる。
ってことでいいんだよね」

('A`)「ああ。そういうことだ。
強化の種類は耐久値や重さ、正確性や切れ味に速さがある。
どの武器にも好きな強化ができるはずだから、
どんな強化をするかによって同じ名前の武器でも個性が変わるだろうな」

川 ゚ -゚)「なるほどな。
基本の武器を自分好みに変えられるということか」

ξ゚听)ξ「じゃあ私の細剣をものすっごく重く硬くしたり、
ブーンの片手剣とかをものすごく軽くできたりするの?」

('A`)「回数が多い武器なら可能だろうけど、
かなり回数が多くないと難しいだろうな。
まあ基本となる武器の特性を損なうことはしない方が良いだろ」

( ^ω^)「スキルと同じでどんな強化をするか考えるのが楽しそうだおね」

('∀`)「だよな!」

ブーンの言葉に思わず振り向いたドクオ。

ツンとクーがその笑顔を見て眉間にしわを寄せた。
昨日のスキル設定を思い出したからだった。

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626 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 19:31:38 ID:jPuH2I2s0

そしてその眉間のしわに気付いたドクオは慌てて前を向く。

('A`)「も、もうすぐ着くぞ。
ショボン、ここにはどれくらいいるつもりなんだ?」

(´・ω・`)「……五日。出来れば四日。
状況に応じても一週間くらいをめどにしたい」

( ^ω^)「お?」

(´・ω・`)「ここには転移門もないからね。
出来れば転移門のある街を拠点にして、
各村や街でのクエストをこなすのはもちろん、
あの《書庫》で進行を確認したりしたいし」

ショボンの言う《書庫》をどこの事か理解した四人。
男二名は壁一面の本を思い出し、心の中で苦笑いを浮かべた。

ξ゚听)ξ「で、今私達はどこに向かってるわけ?」

('A`)「ん?ああ。ここだよ」

ツンの問いかけとほぼ同時にドクオが歩みを止め、
四人も止まると彼の指さす方向を見た。

( ^ω^)「結構広くていい感じだったお」

村はずれまでやってきた五人。
村に入ってから見た見た家屋としては大きめの部類に入る家の前で歩みを止めた。

川 ゚ -゚)「農場?牧場か?」

('A`)「農場だな。
二階部分に泊まることができるんだ。
泊まると家主からクエストを受注できるようになるけど、
やらなくても別にペナルティはない。
最初の日に一度に借りられる最大日数の7泊分を借りてあるから、
まだおれが借主になってるはずだ」


.

627 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 19:38:35 ID:jPuH2I2s0

農家の入り口に進むドクオ。
無言でドアを開け、中に入る。
入ったすぐが大きな部屋になっており、
ソファーには中年の男女が座っていた。
しかしこちらを見ようとはせず、
男は黙って新聞のようなものを読んでおり、
女性は編み物を行っている。
ドクオの後ろを四人が続く。
三人は小さな声で「おじゃまします」と呟きながら周囲を見回していたが、
最後に入ったブーンは「またおせわになりますおー!」と、
元気よく挨拶をした。

思わず立ち止まる三人。
しかし部屋にいた男女はちらりとこちらを見ただけですぐに視線を元に戻した。

ドクオは部屋の隅の会談の前で振り返っていた。

('A`)「反応ないから声かけなくてもいいと思うんだけどよ」

( ^ω^)「挨拶は大事だお」

ξ゚听)ξ「挨拶は良いけど声が大きすぎるのよ」

( ^ω^)「おっおっお。
驚いたのならごめんだお」

まったく悪いと思っていないブーンの言葉に苦笑いを浮かべる四人。

階段を上がると短い廊下の先にドアがあった。

('A`)「二階全部を使ってるんだ。
風呂はないけど、それ以外は大体そろってる」

(´・ω・`)「最終日にまた連続で借りることが出来るの?」

('A`)「ん?ああ。大丈夫だ。
ただ一度借りるとキャンセルや、
途中で泊まらなくなっても返金はできないから、
そこら辺は注意して借りた方がよいな。
今回はあとで全員で来ることが決まってたから、
一週間分キープしたけど」

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628 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 19:40:54 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「了解。
ここは宿屋じゃないから割引もないだろうしね」

('A`)「ああ。
一回クエストをクリアした後に借りたけど、
金額が結構ぎりぎりだった」

(´・ω・`)「あとで金額教えて」

('A`)「お、お、おお」

ξ゚听)ξ「(忘れてるわね)」

( ^ω^)「(こりゃ忘れてるおね)」

川 ゚ -゚)「(覚えていないな)」

(´・ω・`)「(忘れたなら言ってくれればいいのに)」

('A`;)「お、覚えてるぞちゃんと。
う、うん。ちょっと待ってくれ」

四人の視線にうろたえながらも、
扉を開いて中に四人を促した。





ξ゚听)ξ「ベッドルームは一つなのね」

川 ゚ -゚)「ベッドは二つあったが」

今日の朝まで泊まっていた宿よりは質素だが、
素朴な雰囲気を持つ部屋を一通りチェックしたツンとクーがソファーに座った。

部屋の隅のキッチンを自分のスペースと決めたショボンに
「とりあえず座ってて」
と言われ、ドクオとブーンもソファーに座っている。

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629 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 19:43:18 ID:jPuH2I2s0

川 ゚ -゚)「手伝えることはあるか?」

(´・ω・`)「大丈夫だよ。
ありがとう。
今はお茶だけだからね、
まずは座って待ってて」

川 ゚ -゚)「……うむ」

立ち上がろうと腰を浮かせたクーだったが、
ショボンの言葉に座りなおした。

そのやり取りを複雑そうな表情で見守る三人。

(´・ω・`)「お待たせ」

木のトレイにカップを五つ乗せてやってくるショボン。

トレイをテーブルの上に乗せる。
席を譲ろうと立ち上がったブーンを制して、
部屋の隅にある小さな丸い木の椅子に近寄るショボン。

(´・ω・`)「どうぞ」

四人がトレイの上のカップを手に取ると、
ショボンは木の椅子をテーブルの横に置いてそれに座った。

その位置は四人と話すには都合の良い場所で、
リーダーとして会話を進めるにはちょうど良い場所であり、
四人は自分の座った場所を、座り心地の良い椅子をショボンに譲ることが出来なくなった。

(´・ω・`)「さて、とりあえずこれからだけど、
まずは戦闘の訓練だね。
できれば二人がやったクエストもやってみたいけど、
それは僕らでも大丈夫かな?」

.
630 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 19:45:55 ID:jPuH2I2s0

('A`)「レベル的には問題ないと思う。
今日の戦いぶりを見ても、
よほどのへまをしなければ問題ないと思う。
ただ、おれとブーンがクリアしてるからクエストを制覇するって意味では
やる意味はないんじゃないか?」

(´・ω・`)「他のクエストもやりたいから、
それにかかりっきりになるようならまずは他のクエストをするつもりだけど、
戦闘の練習も何か目的があったほうがやりがいがあるだろうからさ」

ξ゚听)ξ「それもそうね。
報酬がある方が良いかもしれない」

('A`)「現金な奴だな」

ξ゚听)ξ「うるさい」

川 ゚ -゚)「だが報酬は片手剣なんだよな?
ドクオとブーンは持っているわけだし、
ショボンは武器を変えるつもりか?」

(´・ω・`)「何があるかわからないからね。
予備はあったほうが良いと思うんだ。
それに、そんな強い剣なら欲しがる人も多いだろうから」

('A`;)「おいおい、商売をするつもりか?」

(´・ω・`)「お金はあるにこしたことはないよ。
もちろんそのために命を懸けるのは馬鹿げてるから、
ほどほどにやるだけだけどね。
それに、できれば色々なパターンを知りたいから」

( ^ω^)「お?何のパターンだお?」

(´・ω・`)「クエストのパターン、
会話のパターン、
状況のパターン。
選択肢いかんによってはレアなパターンに進むことがあるってわかったからね」

.

631 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 19:48:15 ID:jPuH2I2s0

にっこりとほほ笑んだショボン。

はじまりの街でのショボンと女主人の会話を思い出し、
四人はこわばった笑顔でその微笑みに返した。

川;゚ -゚)「では、今から行くか?」

(´・ω・`)「……夕方まであと二時間ちょっとくらい。
本格的な戦闘練習は明日からにして、
とりあえず今日は受けれるクエストを全部受けてくるくらいにしようか。
そうすれば村もひと回りできるだろうし」

視界の隅のデジタル時計を確認しつつ、
ショボンが提案する。

(´・ω・`)「どうかな?」

ξ゚听)ξ「いいんじゃない」

( ^ω^)「賛成だお」

('A`)「おれもいいと思う」

川 ゚ -゚)「私も異論はない……。
だが、いいのか?」

三人が賛成する中、
ひとりクーは口ごもり、
逆にショボンに問いかけた。

(´・ω・`)「どうかした?」

川 ゚ -゚)「その、シャキンさんに会わなくて」

クーの言葉に目を見張る三人。
ショボンも瞬間的に表情がこわばったが、
すぐに穏やかな笑みを取り戻した

(´・ω・`)「ああ、うん。そう……だね」

.

632 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 19:50:15 ID:jPuH2I2s0

表情は先ほどまでと変わらないが、
少しだけ低くなった声で呟き、
ドクオに視線を向けた。

('A`)「……さっきメッセージは入れたけど、
今少し先まで狩りに出ているらしい。
暗くなる前には戻る予定だっていうから、
それこそ二時間くらいあとじゃないかな」

川 ゚ -゚)「そうか……」

(´・ω・`)「ありがと。ドクオ」

('A`)「いや別に……。
あ、で、例の奴らの方なんだけどさ」

ξ゚听)ξ「βテスターの?」

('A`)「そうそう。
そいつらは一時間くらいで戻ってくるっていうから、
戻ってきたら会ってやってくれないか?」

(´・ω・`)「うん。わかった。
会う時は僕とドクオだけで」

ξ゚听)ξ「あら、私達も行くわよ」

川 ゚ -゚)「ああ。行かせてくれ」

(´・ω・`)「え?うん……」

ξ゚听)ξ「会わせたくないの?」

(´・ω・`)「いや、話がどんな内容かわからないからなんとなくさ。
どちらにせよドクオとブーンの顔は知られていて、
これからこの村で会うこともあるだろうから、
仲間ってのはすぐ分かるから顔を隠す必要はないんだけど」

ξ゚听)ξ「話は私達も聞きたいから」

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633 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 19:52:02 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「そうだね。
相手は女性みたいだし、
二人にもいてもらった方が良いかな」

( ^ω^)「女の子のプレイヤーどうし、
仲良くなれるといいおね」

ブーンの言葉を聞き、
ツンは軽くにらみ、
クーは呆れた顔をし、
ドクオは聞こえていないふりをして、
ショボンは苦笑いを浮かべた。




小さな村であるため設備を確認しつつ一周回るのにうはそれほど時間はかからなかった。
クエスト数もそれほど多くはなく、
全部のクエストを受注して地図に印をつけたころ、
やっと一時間が経過した。

川 ゚ -゚)「これで全部か?」

('A`)「そのはずだけど」

ショボンの顔を見るドクオ。

(´・ω・`)「うん。書庫の本に書いてあった数とは一致したよ。
ただページに空きがあったから、
隠しとかクエストをクリアすると出てくるような継続の物もあるかもね」

ξ゚听)ξ「そんなのもあるんだ」

( ^ω^)「狼を退治したら、その群れの長も倒してくれとか。
卵と小麦粉を届けたら、その卵と小麦粉で作ったケーキを他の人に届けてくれとか」

ξ゚听)ξ「自分で届けなさいよ」

.
634 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:05:32 ID:jPuH2I2s0

(;^ω^)「報酬がもらえなくなっちゃうお」

ξ゚听)ξ「楽な仕事でお金を稼ぐってことね」

川;゚ -゚)「ツン……」

('A`)「相変わらず見も蓋もないことをしれっと」

(´・ω・`)「間違ってもないけどね。
簡単なクエストを重ねてお金を稼いで装備を強くして、
できるだけ優位な状態で戦いに出るようにするわけだし」

川 ゚ -゚)「それはそうだが」

(´・ω・`)「受注回数制限があるクエストもあるみたいだけど、
ここやはじまりの街のお使い系は時間をおけば何度も出来るみたいだし、
初期装備の僕達にはいいクエストだよ」

ξ゚听)ξ「……何度も同じお使い……。いいかげ……」

呟きを耳にしてツンを見るブーンとクー。
その顔を見て、ツンは続きを口にするのはやめた。

('A`)「さて、そろそろ来る頃かな」

村の入り口の近く。
小さな広場にやってきた五人。

周囲を見回すドクオ。

( ^ω^)「メッセージは来てないのかお?」

('A`)「さっききて、もうすぐ村に着くって話だったんだけどよ」

ドクオが村の出入り口に視線を向け、
自然と四人もそちらを見た。

ξ゚听)ξ「女一人に男二人の三人組なのよね?」

.

635 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:07:26 ID:jPuH2I2s0

川 ゚ -゚)「……いないな」

(´・ω・`)「こないね」

( ^ω^)「影もないお」

('A`;)「お、おれはただあいつがそう言ってきたってことを告げただけで」

日は傾き始めており、五人の影は少しだけ長くなっていた。

四人の視線に耐え切れなくなったドクオが村の外をよく見ようと移動しようとした時、
背中から、つまり村の中心部の方から声が聞こえた。



「アルルッカバーくん!」



勢いよく振り返るドクオ。
つられて振り返った四人。

五人の視界に映る三人の人影。

背の高い男と、低い男。
二人の男に挟まれるように、
小柄な女性、いや少女が手を振っている。

('A`)「美影!おれはドクオだ!」

「なら私の事もちゃんと今の名前で呼んでよね。
ドクオくん!」

光の加減で顔が見えないが、
その声や口調から、笑顔でいることがうかがえた。

女の子らしい小走りで五人に近づく少女。
そして慌てて男二人がそのあとに続いて駆けて近寄った。

そして少女は迷わずショボンの前に立ち、
にっこりとほほ笑んだ。

.

636 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:11:04 ID:jPuH2I2s0




ミセ*゚ー゚)リ「こんにちは。ショボンさん。
元『MIKAGE(美影)』、今は『miSeri(ミセリ)』です。
よろしくね」




.

637 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:12:39 ID:jPuH2I2s0

握手を求めて右手を出したミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「……あれ?どこかで……」

(´・ω・`)「こ、こちらこそ」

その手を握ろうと右手を出そうとしたショボンの前に立ちふさがる二人の男。

( ∵)「おれがビコーズだ」

小柄な男がショボンの手を掴んで握手をし、

( ∴)「おれがゼアフォーだ」

大柄な男が横からショボンを上から見下ろす。

(´・ω・`)「こんにちは」

その二人の行動から逆に冷静さを取り戻したショボンが笑顔で握手をする。

男二人の背中にショボンとの対面を遮られたミセリは一瞬眉間に皺を寄せたが、
すぐに可愛らしく両頬を膨らませた。

ミセ*゚ー゚)リ「二人とも、ちゃんと挨拶させてくれなきゃだめだよ」

( ∵)「姫!なぜこんなやつらと!」

( ∴)「われら二人では姫を守るのに力不足とでもおっしゃるのですか!?」

少しだけ怒ったような口調に、
慌てて振り返る二人。
そして片膝をついてミセリの前に傅くと、
悲痛な声を上げた。

( ∵)「姫は我らが命に代えてお守りいたします!」

( ∴)「このような下賤の者達と親しくする必要などございません!」

声を荒げる二人を見て顔をこわばらせる五人。

.

638 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:14:15 ID:jPuH2I2s0

ミセリはビコーズとゼアフォーに微笑みを向けた。

ミセ*゚ー゚)リ「二人ともいつもありがとう。
二人のおかげで毎日が楽しいよ」

( ∵)「ならば姫!」

( ∴)「姫!」

ミセ*゚ー゚)リ「でもね、三人でもっと楽しくなるには他の人と仲良くなることも必要だと思うんだ。
まだ忍者になる方法も掴めてないし、
三人だけじゃ情報を集めるのも大変でしょ」

( ∵)「それは……」

( ∴)「ですが姫!」

ミセリが二人の前にしゃがみ、
二人の膝の上にのせている手をとる。

( ∵)「姫」

( ∴)「姫」

ミセ*゚ー゚)リ「二人ともありがとう。
この世界を生き抜くために、
頑張ろうね」

優しく微笑むミセリ。

その笑みは聖母の様で、
ビコーズとゼアフォーの心に暖かく染み渡った。

その一部始終を見ていた五人。
そのうちの四人はあからさまに唖然とた表情をしつつ、
程度は違えど心の中で『茶番劇』と同じような意味の言葉を思っていた。

しかし一人、ショボンだけはミセリを鋭い瞳で、
そしてどこか慈しむような優しさをもった光を帯びて、
見つめていた。

.

639 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:16:25 ID:jPuH2I2s0

( ∵)「わかりました。姫」

( ∴)「ですが、くれぐれも相手を信用しすぎぬようご注意ください!」

勢いよく立ち上がり、
ミセリの後ろに移動する二人。

二人の頬が赤く染まっていたが、
それを言葉にして指摘できる猛者は今ここにはいなかった。

ミセ*゚ー゚)リ「分かってくれてうれしいよ。
ありがとう。二人とも」

ゆっくりと立ち上がり、
二人に振り返るミセリ。

小首をかしげながら微笑みを向けると、
二人の顔はさらに赤くなった。

ξ゚听)ξ「……うざ」

川 ゚ -゚)「良くも悪くも『女』だな」

(;^ω^)「ちょっ。二人とも」

('A`)「でも、ああいうのが『女子力』って言うんじゃないか?」

ξ゚听)ξ「……むかつく」

( ^ω^)「まあまあ」

川 ゚ -゚)「ドクオは騙されないようにな」

('A`;)「そこまで女慣れしてないわけじゃないぞ」

ξ゚听)ξ「慣れてないから近寄らないだけでしょ」

('A`;)「うるせー」

(;^ω^)「三人とも聞こえちゃうお」

.

640 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:21:45 ID:jPuH2I2s0

五人だけに聞こえるように小さな声で呟いたツンとクー。
慌てるブーンとここぞとばかりに突っ込みを入れるドクオ。

ミセ*゚ー゚)リ「では改めて。
よろしくお願いします。
ショボンさん」

(´・ω・`)「こんにちは。
ミセリさん。
こちらによろしく出来る事があるかは分かりませんが、
まずはお話だけでも」

ミセ*゚ー゚)リ「お話だけでもさせていただけるなら光栄です」

お互いに柔らかく微笑んで挨拶し、
握手をする二人。

川 ゚ -゚)

ξ゚听)ξ

クーとツンはそれを少しだけ複雑な気分で見ていた。
しかし深い付き合いの二人は違う感想を抱いたようだった。

('A`)「しょうがないけど、警戒心バリバリだな。
ショボンの奴」

(;^ω^)「おー。
女の子相手にあれは……」

('A`)「仕方ないけどな。
充分怪しいし」

最後の声が聞こえていたのか、
ミセリがショボンと握手をしたままドクオを見る。

ミセ*゚ー゚)リ「ひどいなードクオくん。怪しいだなんて」

('A`)「実際怪しいだろうが。
っていうか、どこから聞こえてた?」

.

641 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:24:17 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「最後の『じゅうぶん怪しい』ってのだけだよ」

ショボンに向かってお辞儀をしながら握っていた手をほどくと、
ドクオの前に移動する。

身長はツンと同じくらいでドクオとそれほど変わらないのだが、
腰に手を当ててすこし前のめりになり、
上目遣いにドクオの顔を覗き込むミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「私のどこが怪しいのか、
聞かせてほしいな?
ドクオくん」

('A`*)「べ、別にどこが怪しいとかそういうことじゃなくてだな」

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあどうして怪しいとか言うのー?」

('A`*)「そ、それはその、言葉のあやというかその」

ミセ*゚ー゚)リ「えー。ドクオくんって確証もないのにそういうこと言っちゃう人なんだー」

('A`*)「な、なに言ってんだよ」

ξ゚听)ξ「きもっ」

川 ゚ -゚)「ひどいなこれは」

('A`)「!」

ドクオに聞かせるようにツンとクーは言葉を吐き捨てる。

それにより冷静さを取り戻したドクオは数歩後ずさり、
頭を振った。

('A`)「と、とにかく、ショボンに話があるんだろ?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。そうだよ」

('A`)「ならショボンと話せよ」

.

642 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:28:51 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「ドクオくんが変なこと言うから問い詰めただけなのに」

('A`)「さっさと話せ」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい」

ドクオに微笑みかけ、その斜め後ろにいたツンとクーにも笑顔で会釈し、
最後にブーンに微笑んでからショボンに向き直すミセリ。

ξ゚听)ξイイカゲンニシロヨアノオンナ

川 ゚ -゚)「ツン、顔が怖い」

(*^ω^)「おっおっお。
どうしたんだお?ツン」

ξ゚听)ξ「にやけてんじゃないわよ」

(;^ω^)「に、にやけてなんかいないお」

ミセ*゚ー゚)リ「ショボンさん、
少し込み入ったお話になるかもしれないんですが、
お時間は大丈夫ですか?」

(´・ω・`)「時間は構いませんが、
それは今ここで話せるような内容ですか?」

少しだけ周囲を気にするような仕草をするショボン。
ミセリもそれに倣って視線だけで周囲をうかがう。

日の傾きが顕著になってきた広場には、
日中の狩りから帰ってきたプレイヤーがちらほらと通り過ぎていた。

女性プレイヤーは珍しく、
更に三人もいるため多少人目を引いているのが分かる。

ミセ*゚ー゚)リ「そう……ですね。
出来れば他の人に聞かれない場所の方が良いかと思います。
ただこの村の宿屋の部屋は広くありませんから、
適当な空き家があればいいんですが」

.

643 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:30:29 ID:jPuH2I2s0

四人の頭には今自分たちが確保している農場の二階が浮かんだが、
ショボンが何も言わない為、口を開かなかった。

(´・ω・`)「それでは、まずは話す場所を確保するということで、
今日は一度解散」

「ミセリ!ビコーズ!ゼアフォー!」

ショボンが会話を終わらせようとした瞬間、
ショボンの後ろからミセリたち三人を呼ぶ声が聞こえた!

その声を聞き、更に自分たちに向かって手を振る男を見て露骨にいやそうな顔をする三人。

ドクオとブーンもその声の主を見る。
すると二人の顔には笑みが浮かんだ。

ツンとクーが五人の表情の違いに怪訝な顔をしつつ声のした方を見ると、
手を振りながら走ってくる一人の男と、
その後ろに二人の男が見えた。

川 ゚ -゚)「え?」

ξ゚听)ξ「あれ?」

ミセ*゚ー゚)リ「何でこんな時に……ん?」

走ってくる男の顔を見て、同じタイミングで気付く三人。

川 ゚ -゚)「……似てるな」

ξ゚听)ξ「似てるわね」

ミセ*゚ー゚)リ「そうか、さっきどっかで見たような顔だと思ったけど」

駆け寄ってきた男が、
ショボンに後ろから抱き着いた。

川 ゚ -゚)「うわっ」

.
645 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:33:56 ID:jPuH2I2s0

ξ゚听)ξ「おっ」

ミセ**゚ー゚)リ「あらっ」

(`・ω・´)「ショボン!
元気そうでなによりだ!
会いたかったぞ!」

(´ ω `)「にい……さん……」

シャキンの声を聞いてから少しうつむき気味に動くことが出来なかったショボンが、
シャキンにだけ聞こえる小さな声で呟いた。





.

646 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:37:45 ID:jPuH2I2s0

ドクオたち五人が借りている農場の二階の部屋に、
シャキンたち三人とミセリたち三人が入り、
合計十一人が集まっていた。

二人掛けソファーの片方にはミセリとドクオが座り、
ミセリの後ろにはビコーズとゼアフォーがSPのように威圧的に立っている。
ドクオがソファーの隅に座っているように見えるのは、
見間違いではないだろう。

テーブルをはさんで反対側のソファーにはミルナとデミタスが座っており、
ひじ掛けにシャキンが座っている。

そしてシャキンの座るひじ掛けの横に置かれた木の椅子に、
ショボンが座っていた。

互いに譲り譲られながらそれぞれがその場所に収まったのちに、
それぞれのパーティーを代表してショボン、シャキン、ミセリは、
自分たちの現状とあの日からの行動を話し合った。

もちろんショボンたち五人が『はじまりの街』で手にした恩恵は内緒のままだったが。

そして話している間、シャキンの手はずっとショボンの頭を撫でていた。

ショボンの後ろ側に、ブーンとツンとクーが壁沿いに立っているが、
その光景を見て三者三様の表情を見せている。

(´・ω・`)「とにかく、状況を整理しよう」

最初のうちは頭を撫でる手を邪険にあしらっていたが、
今は諦めたのかそのままにいしてた。

( ゚д゚ )「(整理?)」

(´・_ゝ・`)「(この状況を?)」

(´・ω・`)「兄……シャキン達三人は」

(`・ω・´)「なんだよ、『兄さん』で良いんだぞ?」

.

647 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:39:49 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「うるさい。
パーティー三人は、
始まりの街でミセリさん達三人がホルンカに行く事を知って、
接触したと。
そこで意気投合して」

ミセ*゚ー゚)リ「してないよー」

( ∵)「してない」

( ∴)「するわけがない」

(`・ω・´)「なんだよ、仲良く六人でこの村にやってきたっていうのに」

( ゚д゚ )「すまんな。三人共」

(´・_ゝ・`)「助かったよ」

ミセ*゚ー゚)リ「ミルナさんとデミタスさんは良いんですよ」

(`・ω・´)「え?おれはダメなの?」

( ∵)「あたりまえ」

( ∴)「改めて聞くことのできるその性格が羨ましい」

(*`・ω・´)「褒められると照れるな」

(#∵)

(#∴)

(´・ω・`)「付いてきた三人を無下に扱うのも憚られ、
安全に連れてきていただいたんですね。
ありがとうございます」

ミセ*゚ー゚)リ「いいえー。
お二人はご兄弟なんですか?」

.

648 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:41:46 ID:jPuH2I2s0

(*`・ω・´)「血よりも熱く堅い絆で結ばれた」

(´・ω・`)「他人です」

(`・ω・´)「二人……」

(´・ω・`)「他人の空似です」

(`・ω・´)「……です」

ミセ;*゚ー゚)リ「あ、た、他人なんですね」

(´・ω・`)「分かっていただけて幸いです」

(`・ω・´)「です……」

ミセ;*゚ー゚)リ「あはははは」

(;゚д゚ )「(さっきまで『兄さん』と呼んでいたその口で)」

(;´・_ゝ・`)「(何の躊躇もなく『他人』と言い切れるとは)」

(´・ω・`)「話を戻します」

ミセ;*゚ー゚)リ「はい」

(`・ω・´)「はーい」

(´・ω・`)「その過程でシャキンたち三人は、
ミセリさん、ビコーズさん、ゼアフォーさんの三人が、
βテスターであったことを知った」

(`・ω・´)「特に隠してはいなかったな」

(´・ω・`)「今まではそれでいいと思いますが……」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。
ショボン君の言う通りだと思う」

.

649 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:48:06 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「人の負の感情には、
警戒するに越したことはないです」

ミセ*゚ー゚)リ「私もそう思う。
これから気を付けるよ」

( ∵)「姫を危険に晒すわけにはいかない」

( ∴)「降りかかる火の粉は蹴散らすがな」

ミセ*゚ー゚)リ「二人とも、ありがと。
でも、二人もちゃんと気を付けてね」

( ∵)「はっ!」

( ∴)「かしこまりました」

(´・ω・`)「ミセリさん達とシャキンたちはホルンカに到着後別行動。
分かれた後にそれぞれドクオとブーンに出会い、
僕たちもホルンカに来る予定なのを知ったわけですね」

ミセ*゚ー゚)リ「もともとアルルっじゃない、
ドクオくんには連絡するつもりだったから。
連絡したらもうホルンカにいて、
更にアニールブレードのクエストまでクリアしてたなんてびっくりしたよ」

( ∴)「しかも二人分とは」

( ∵)「運がいいな」

('A`)「ああ。ほんとに運が良かった。
というか、多分おれ達が行く前に誰かがクリアしてたんだと思う。
一回目はかなり早く目当ての敵が出てきたから」

ξ゚听)ξ「どういうことよ」

ドクオの言葉に頷く元テスターの三人。
しかしそれ以外の七人は意味が通じなかったため疑問に思った瞬間、
それをツンが口にした。

.
651 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 20:59:25 ID:jPuH2I2s0

('A`)「ああ、えっと……」

ミセ*゚ー゚)リ「この世界では、
基本的にそのエリアに出現する敵の量と、
時間で出てくる敵の量は決まっています」

あたまを掻いて言葉に詰まったドクオを見て、
ミセリが助け舟を出した。

ミセ*゚ー゚)リ「アニールブレードのクエストでは、
少女の病気を治すのに必要な実を取に行くんですが、
それはある敵を倒さないとドロップしません。
あ、クエストのネタバレになるけど良いですよね?」

(´・ω・`)「はい」

(`・ω・´)「ああ。大丈夫だ」

ミセ*゚ー゚)リ「では続けますね。
敵は植物系の怪物で、名前は『リトルネペント』。
見た目はそうですね……。
大きさは人の背丈より高いです。
名前に『リトル』ってあるけど大きいです。
移動や攻撃は根や葉を動かすことでします。
基本的にはそれほど素早くはありません。
はじまりの街の周辺やホルンカに来るまでの道で出会う猪型や狼型と違って、
かなり怪物、モンスターの色合いが強くなります。
βの時は、そういった見た目で腰が引けてまともに戦えないでいた
プレイヤーもかなりの数いたみたいなので、
注意した方が良いです」

壁際に立つツンとクーを見てにっこりと微笑むミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「先ほども言いましたが、
クエストクリアに必要なアイテムは『リトルネペント』を倒さないとドロップしません。
しかもどの『リトルネペント』でも良いわけでもなく、
頭に花を咲かせた『リトルネペント』を倒さないと、
ドロップしません」

.

652 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:02:43 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「頭に花がついた怪物……」

ミセ*゚ー゚)リ「はい。
そして花付きのリトルネペントはあまり出てこないため、
出すためには目の前のリトルネペントを倒す必要があります」

川 ゚ -゚)「?」

ξ゚听)ξ「?」

( ^ω^)「?」

ミセ*゚ー゚)リ「例えばエリアに出てくる数が5匹であり、
現時点で花付きが居ないのならば、
その5匹を倒して新しくリトルネペントをポップさせなければ、
花付きを見つけること、倒すことが出来なくなるわけです」

川 ゚ -゚)「なるほど。そういうことか」

ξ゚听)ξ「でも、その5匹を倒したたら花付きが出てくるってわけでもないんでしょ」

ミセ*゚ー゚)リ「その通りです。
だからその場合はまたその5匹を倒して、
更に新しくポップさせます」

川 ゚ -゚)「出てくるまで繰り返すってことか」

ミセ*゚ー゚)リ「はい」

( ^ω^)「おー。なるほどだお」

ξ゚听)ξ「って、なんでクエストクリアしたあんたが説明聞いて納得してるのよ」

(;^ω^)「あの時は戦うことと強くなることに必死で、
そんなことを気にしていられなかったんだお」

ξ゚听)ξ「まったく」

.

653 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:06:38 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「花付きが出てくる確率は低いので、
ドクオくん達が行ってすぐ出会えたってことは、
誰かがその場所で先に倒しまくっていた可能性が高いってことです。
もちろん運が良かっただけかもしれませんけどね」

これで終わりとばかりにドクオに向かって微笑むミセリ。

('A`)「と、言うわけだ」

ドクオは笑顔は見ないようにして、
ミセリの言葉を引き継いだ。

(´・ω・`)「なるほどね。
その花付きが出るのはどれくらいの確率なのかな」

('A`)「出現率が固定か変動かって疑問もある」

(´・ω・`)「変動するなら厄介だね。
あまりにも出ないと心が折れそうだ」

(`・ω・´)「折れかかったぞ」

( ゚д゚ )「出なかったな」

(´・_ゝ・`)「何度、一回やめようと言ったか」

ミセ*゚ー゚)リ「私たちの時も出なかったですよ。ねっ」

( ∵)「思い出させないでくれ」

( ∴)「私の剣の為に、ありがとうございました。
この御恩は必ずやどこかで」

ミセ*゚ー゚)リ「はいはい」

心底疲れたように話すシャキン達三人。
それとは違ってどこか楽しそうに話すミセリ達三人。

少しだけ笑みが漏れ、
全員の表情が穏やかになる。

.

654 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:11:17 ID:jPuH2I2s0

( ゚д゚ )「ゲームなんだから裏ワザとかあってもよさそうだが」

(´・_ゝ・`)「そうだな。ワープポイントとかアイテムとか」

('A`)「裏ワザ……」

ミセ*゚ー゚)リ「ありますよ。お勧めはしませんけど」

ミルナとデミタスの雑談にドクオが表情を曇らせると、
ミセリはほがらかにほほ笑んだ。

( ゚д゚ )「あるのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「はい」

(`・ω・´)「お勧めしないっていうのは?」

ミセ*゚ー゚)リ「リトルネペントには、ノーマルと花付きの他に、
頭に実を付けた『実付き』というのもいるんです」

(´・ω・`)「実付き……」

(´・_ゝ・`)「そいつが?」

ミセ*゚ー゚)リ「強さは普通と一緒なんですけど、
その身を割ると臭いを振りまいて、
仲間のリトルネペントを呼び寄せるんですよ」

ξ゚听)ξ「へー」

川 ゚ -゚)「つまり、数多くの敵を呼び寄せることが出来る。
そうすればその中に花付きがいる可能性が高いってことか」

ミセ*゚ー゚)リ「そういうことです」

(;^ω^)「おー。それってドクオが言ってた……」

('A`)「ああ。そうだ」

ブーンとドクオが表情を曇らせる。

.
656 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:13:09 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「ただ良いことばかりじゃありません。
出てくるのは敵ですから、
私たちに襲い掛かってきます」

( ゚д゚ )!

(´・_ゝ・`)!

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)!

(`・ω・´)

(´・ω・`)

ミセ*゚ー゚)リ「この臭いで寄ってきたリトルネペントは、
エリア内の最大量や時間制限を飛び越えてやってきますし、
興奮しているのか動きも素早くなります。
つまり普段よりも手強い敵に囲まれてしまうわけです。
そして絶対花付きが出る確証もありません。
だからβの頃ならともかく、今やるのはお勧めしません」

( ゚д゚ )「に、逃げることはできないのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「できますよ。
ただそれなりに鍛えてからでないと難しいと思うので、
今のレベルでは……」

あいまいな笑顔で言葉を濁すミセリ。
そして、少しだけ声を小さくして独り言のように呟いた。

ミセ*゚ー゚)リ「そうか……。
もしかするとドクオくんが行く前に、
誰かが実付きを倒していたのかもしれないのか。
それで出現数が増えて確率的に遭遇できたのかも」

.

657 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:15:20 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「ゼアフォーさんもアニールブレードは持たれているんですよね?」

( ∴)「ああ。昨日一日がかりだった」

(`・ω・´)「おれも持ってるぞ!」

(´・_ゝ・`)「おれらも一日とちょっとくらいだったか」

( ゚д゚ )「暗くなりかけてたな」

( ∴)「それでも一日で出たならば、まだ良い方だと思う。
今は一日以上かかることもあるみたいだ」

(`・ω・´)「日頃の行いが良いからな!」

(´・ω・`)「そして僕たちもこの村に来て、
あの広場で落ち合ったというわけですね」

(*`・ω・´)「なんだよー。
反応なしかよー。
可愛い奴だなーほんとに」

(; ゚д゚ )「(うわ……)」
(;´・_ゝ・`)「(うわ……)」
ξ;゚听)ξ「(うわ……)」
川;゚ -゚)「(うわ……)」
ミセ;*゚ー゚)リ「(うわ……)」
(;∵)「(うわ……)」
(;∴)「(うわ……)」

さらに激しくショボンの頭を撫でるシャキンに、
同じ思いを抱く七人。

しかし二人、ドクオとブーンは違う思いを抱いていた。

(;^ω^)「(お?シャキンさん?)」

.

658 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:19:21 ID:jPuH2I2s0

('A`;)「(シャキンさんとショボンの関係は分かってるつもりだったけど、
ここまで……?)」

(;^ω^)「(ど、どくお……はどう思ってるのかお)」

('A`;)「(ブーンも違和感感じてるよな?多分)」

思わずお互いの顔を見る二人。

シャキンは視界の隅にるドクオの表情を見て、
心の中で柔らかく笑った。

(´・ω・`)「さてミセリさん」

ミセ;*゚ー゚)リ「は、はい!」

(´・ω・`)「何かお話があるとのことでしたが、
どういったご用件でしょうか」

ミセ;*゚―゚)リ「え?あ、は、う、うん」

当事者であるはずのショボンに全く平然と質問され、
すぐに返事ができないミセリ。

大きく深呼吸するミセリを、
ショボンとシャキンはそうとは見えないように観察していた。

ミセ*゚ー゚)リ「相談……なんだけど、
私達とパーティーを組まない?」

( ∵)「姫!」

( ∴)「姫!?」

身を乗り出してソファーに座るミセリの顔を覗き込む二人。
ミセリはそんな二人に可愛らしく微笑むと、
少しだけ困ったような顔をして話しかける。

ミセ*゚ー゚)リ「二人とも落ち着いて。
今からちゃんと話すから」

.
660 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:21:20 ID:jPuH2I2s0

文字にすれば語尾にハートや音符が付きそうな声と話し方。
それは二人の感情を削ぐことに成功した。

( ∵)「……分かった」

( ∴)「うむ……」

ミセ*゚ー゚)リ「えっと……。
正直に言うと、
最初はドクオくんだけを誘うつもりだったの」

二人がまた背後で仁王立ちに戻ったのを感じてから、
ミセリは話を戻して続けた。

(´・ω・`)「僕達のパーティーから引き抜くつもりだったと」

ミセ*゚ー゚)リ「言葉が悪いけど、
結果的にはそうなるのかな」

ショボンに微笑みかけるミセリ。

ショボンは視線だけで話の続きを促した。

ミセ*゚ー゚)リ「…… ……。
私達もβテスターでこの世界の事は分かってるつもりだけど、
ドクオくんの知識はそれを超えると思う。
それに戦闘能力も高いし、
効率の良いレベルの上げ方やスキル設定なんかも、
頼りになるって思ったから」

隣に座るドクオに微笑むミセリ。

ドクオは逆側を向いて見ないふりをした。

.

661 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:23:32 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「だから最初はドクオくんにだけ話すつもりだった。
あの日はさすがに動けなくて、
次の日のお昼前くらいにやっと冷静になれて、
それでフレンド登録してあったことを思い出して連絡したんだけど、
正直驚いたよ。
もうホルンカにいるっていうんだもん。
三人で話したらアニールブレードのクエストの事も思い出したから、
早速こっちに来てドクオくんに会っていろいろ話を聞いたってわけ。
向こうで準備しているときに変な人に付いてこられちゃったけどね」

(`・ω・´)「なんだ。おれ達に会う前に何かあったのか?」

( ゚д゚ )「おれ達が『変な人』なんだと思うぞ」

(`・ω・´)「え!?」

(´・_ゝ・`)「素で驚けるポジティブさが羨ましいよ。
って、褒めてはないからな」

(`・ω・´)「なんだ」

ミセ;*゚ー゚)リ「ははは」

(´・ω・`)「それで、なぜ引き抜きから僕達とのパーティーに変わったんですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「え?あ、うん。
ショボンくん、君がいるからだよ」

(´・ω・`)「僕ですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「全員気になるけど、
特にショボンくんが気になるかな」

川 ゚ -゚)

後ろでクーのこめかみがひくひくと動いたが、
それに気付いたのは隣に立つツンだけだった。

.

662 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:26:54 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「あの日の当日に冷静さを取り戻して、
自分たちにとって最善の道を選ぶ冷静さは、
賞賛に値すると思うけど?」

(´・ω・`)

ミセ*゚ー゚)リ「それにブーンくんも強いよね」

壁際に立つブーンに微笑みかけるミセリ。

(*^ω^)「おっ?」

ξ#゚听)ξ

(;^ω^)「おっ。そ、そんなことないお」

ツンのこめかみが動いて眉間に皺が寄ったのは、
ほぼ全員が気付いた。

ミセ*゚ー゚)リ「強いよー。
もうこの近辺の敵なら一人で倒せるでしょ?」

( ^ω^)「それは多分……」

ミセ*゚ー゚)リ「ドクオくんの指導があったとはいえ、
この短期間にそこまで強くなれてるんだから、
この世界で戦うセンスもあるんだと思うよ」

(*^ω^)「おー」

ξ#゚听)ξ

(;^ω^)「おー」

横を気にしながら喜びつつ冷や汗を流しているブーン。

そこにいた三人以外にも二人の関係性は一目瞭然といってもよかった。

ミセ*゚ー゚)リ「それに、女の子が二人もいたし」

.

663 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:39:39 ID:jPuH2I2s0

ξ#゚听)ξ「?」

川 ゚ -゚)「?」

ブーンから視線を外し、
ツンとクーを見るミセリ。

それに対し、
ツンは不快感をあからさまに表して、
クーは不快感を隠しているがそれでも少し不審げに、
自分たちを見るミセリの顔を見た。

ミセ*゚ー゚)リ「最初会った時は女の子だったけど、
ゲームの中では性別を自分で決められるから。
本当に女の子かわからないからさ。
さっき広場で見た時に実はちょっと驚いたの」

にっこりと微笑むミセリ。
その微笑みは今までドクオやショボン、
そしてブーンに見せていた笑顔と同じで、
女同士であるけれど少し胸がときめいた。

ミセ*゚ー゚)リ「そのうえ、ここまでやってきた」

ξ゚听)ξ?

川 ゚ -゚)?

少しだけ寂しそうに呟いたミセリ。
ツンの眉間のしわは取れ、
クーの瞳の剣呑さも多少和らいでいる。

ミセ*゚ー゚)リ「多分だけど、
ここに来た女は私が一人目だと思う。
もしかしたらいるかもしれないけど、
見てないから。
多分……ね」

.

664 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:41:36 ID:jPuH2I2s0

('A`)「おれ達も見てないな」

( ^ω^)「見てないお」

ドクオの言葉にうなずくブーン。

ミセ*゚ー゚)リ「きっとプレイヤーの人数自体、
男女比はかなり男の人に傾いていると思う。
それに男女関係なく、
ほとんどの人はまだはじまりの街にいるんだろうしね」

( ゚д゚ )「まあ、そうだろうな」

(´・_ゝ・`)「おれ達だって、
シャキンに出会っていなかったらまだあの街にいたと思う」

ミセ*゚ー゚)リ「今ここにいるのは、
基本元βテスターだと思う。
それは知識云々もそうだけど、
自分の身で怪物と戦うということを知っていないと、
街を出る決心ってなかなかつかないと思うから」

(`・ω・´)「向こうでは、
剣を振って動物を殺したりしないからな」

(´・ω・`)「またそういうことを言う」

(`・ω・´)「はっはっは」

(´・ω・`)「笑ってごまかさない」

ミセ*゚ー゚)リ「でも、二人はいる。
ドクオくんがいて、
ショボンくんがいて、
ブーンくんがいて、
例えまわりに守ってくれる人がいたとしても、
ここまで歩いてきたのは自分だと思うから、
ちょっと……ううん。すごく嬉しい」

.

665 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:43:49 ID:jPuH2I2s0

( ∵)「確かに驚いたな」

( ∴)「ああ。姫以外にも勇敢な女性がいるものだと」

( ∵)「もちろん一番美しく聡明で勇敢で艶やかなのは姫だが」

( ∴)「ビコーズ、それはさすがに二人に悪い。
姫と比べるなど、すっぽんに月を見習えと言っているようなものだ」

( ∵)「それもそうだな」

( ∵)「はっはっは」(∴ )

ξ#゚听)ξ

川#゚ -゚)

(;^ω^)「ふ、二人とも落ち着いて」

ξ#゚听)ξ「べーつーにー」

川#゚ -゚)「怒ってなどいない」

ξ#゚听)ξ「ねっ!」

川#゚ -゚)「うむ」

(;^ω^)「な、ならいいお」

(´・ω・`)「つまり、僕達とパーティーを組むことにより、
自分の陣営を強化しようと思ったということですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「陣営とかそんなのは考えていないよ?
ただ、力を合わせた方が、行動を共にした方が、
この世界で生き残る確率を高くできるんじゃないかなって思っただけ」

.

666 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:47:49 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「そうでしょうか。
ここに来るときにドクオと話しましたが、
この世界でレベルを上げるのはパーティーを組むよりも、
ソロで動いた方が効率がいいと。
ミセリさん達βテスターならそちらを選ぶんじゃないですか?
それこそレベルを上げれば生き残る確率を高くできるのではないかと思いますけど」

ミセ*゚ー゚)リ「レベルだけを考えたらそうかな。
でも、何があるかわからない以上、
ちからを合わせることは大事だと思う。
危険な状態になってしまった時に、フォローしあえるから」

そこで言葉で一呼吸おき、
後ろに立つ二人以外の顔を見回すミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「一つの失敗が命にかかわる、
些細なミスも許されない今のこの世界では」

真剣なミセリの表情に、そこにいたうちの六人は何も言えず、
それぞれに今まであった命の危険や恐怖を思い出していた。

(´・ω・`)「お話は分かりました」

ミセ*゚ー゚)リ「それじゃあパーティーを」

(´・ω・`)「ですが、システム的にパーティーの上限人数は6人のはずです。
同じパーティーを組むのは無理でしょう」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。それは分かってる。だから」

(´・ω・`)「『ギルド』ですね」

ミセ*゚ー゚)リ「そう」

.

667 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:56:07 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「誰がギルドマスターになり、
ギルドを仕切るおつもりですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「それは」

( ∵)「もちろん姫です」

( ∴)「もちろんです」

再び身を乗り出す二人。
今度も両サイドからミセリの顔を覗き込む。

ミセ*゚ー゚)リ「え、二人とも?
別に私はそんなこと」

( ∵)「我らは姫を守りし白と黒の風」

( ∴)「この剣は姫の為に振り、
この命は姫の為にある!」

( ∵)「姫以外の命令を聞くことなどできません!」

( ∴)「パーティーでもギルドでも!
我らに命じることが出来るのは姫のみ!」

( ∵)「我らが従うは姫のみ!」

( ∴)「姫!それをお忘れ無きように!」

ミセ*゚ー゚)リ「えっと……でも、ほら、ね」

( ∵)「姫!」

( ∴)「姫!」

ミセ;*゚ー゚)リ「……はーい」

積極的ではないが肯定したミセリの言葉にとりあえずは納得して姿勢を戻す二人。

.

668 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 21:57:52 ID:jPuH2I2s0

ミセリは少しだけ助けを求めるようにショボンを見た。

(´・ω・`)「決裂、ですね」

ミセ;*゚ー゚)リ「えっ!」

(´・ω・`)「ビコーズさんとゼアフォーさんが
ミセリさんにリーダーになってほしいように、
僕達は僕達で思うところ、
考えることがあります。
現時点でそれが重なることはないでしょう。
ですので……」

ミセ;*゚ー゚)リ「い、いやいやいやいやいや。
ちょっとまってちょっとまって。
結論そんな早く出さなくてもよいと思うんだけど」

(´・ω・`)「でしょうか」

ミセ;*゚ー゚)リ「そうそう。
ほら、まずは一度一緒に狩りとかいってみたりしちゃったりとか」

(´・ω・`)「しかし」

(`・ω・´)「いいな!
やっぱり一度行ってみないとな」

ミセ*゚ー゚)リ「ほらほら、彼もそう言って……」

(`・ω・´)「実は次の街に行く前に行ってみたいところがあってだな」

ミセ;*゚ー゚)リ「って、……いきなり出てきて何言ってくれちゃってんのこの人」

(`・ω・´)「良いだろショボン、みんなで行こうぜ」

(´・ω・`)「……まったく」

ミセ;*゚ー゚)リ「ちょ、二人とも?」

(`・ω・´)「いーこーうーぜー」

.

669 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 22:00:35 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「しょうがないな」

(`・ω・´)「よし!」

ミセ;*゚ー゚)リ「はあ!?」

(´・ω・`)「あ、でもこっちの戦闘練習が済んでからだよ。
だから早くても明後日、状況によっては更にその後だからね」

(`・ω・´)「分かってる分かってる。
おれ達はそっちも手伝うぞ」

(´・ω・`)「はいはい。ありがとう」

(`・ω・´)「遠慮すんなって。
おれたちの仲で」

(´・ω・`)「はいはい。ありがとう」

ミセ;*゚ー゚)リ「ちょいちょいちょいちょい。
何言っちゃってんのあんたたち」

(´・ω・`)?

(`・ω・´)?

ミセ;*゚ー゚)リ「なに二人してキョトンとした顔しちゃってるかな。
今誘ってたのは、わーたーし。
私。
わかってる?ねえ、わかってる?
わかってるわよね。わかってやってるわよね」

(´・ω・`)?

(`・ω・´)?

ミセ*゚ー゚)リ「だから不思議そうな顔をしてるんじゃないっつーの」

.

670 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 22:02:23 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)?

(`・ω・´)?

ミセ#*゚ー゚)リ「だーかーら。
似た顔して同じような表情してるんじゃないって言ってるの。
先に誘ったのはこっちだっていうのに
その目の前で別の奴と一緒に行く約束するなっていうの!
大体あんたたち、他人だって言ってたわよね。
だったらその設定をちゃんと貫きなさい!」

立ち上がり、
腰に手を置いてショボンとシャキンを指さすミセリ。

ミセ#*゚ー゚)リ「だいたいあんたたちはねー……」

そして自分を見る自分以外の者、
目の前の二人以外の視線に気付いて動きを止めた。

ミセ;*゚ー゚)リ「え……あ……あれ?」

('A`;)
(;^ω^)
ξ;゚听)ξ
川;゚ -゚)
(;゚д゚ )
(;´・_ゝ・`)
(;∵)
(;∴)

ミセ*゚ー゚)リ「あれー?
みんなどうしたのかな?」

小首をかしげながら微笑むミセリ。

八人はその笑顔にこわばった笑顔で返す。

.
672 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 22:04:03 ID:jPuH2I2s0

(;∵)「ひ、姫の言う通りだ!」

(;∴)「そ、そうだ!」

(;∵)「そうだそうだ!」

(;∴)「姫が正しい!」

ミセ;*゚ー゚)リ「二人ともありがとう」

(´・ω・`)「ミセリさん」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、は、はい!あ!
な、ななんな、なにかな?
ショボンくん」

(´・ω・`)「さっきまでのが素ってことでいいですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「え、な、何のことかな?
私はいつも私だよ?
へんなの、ショボンくん」

全員に笑顔を振りまいてから可愛らしくソファーに座りなおす。

(´・ω・`)「あと、」

ミセ*゚ー゚)リ「え?まだ何かあるの?」

(´・ω・`)「?いや、先ほどの件ですが」

ミセ*゚ー゚)リ「先ほどのって?」

(´・ω・`)?

ミセ;*゚ー゚)リ?

(`・ω・´)「一緒に戦ってみるってことだろ」

(´・ω・`)「うん」

.

673 ◆dKWWLKB7io:2015/12/31(木) 22:07:00 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「考え直してくれるの!?」

(´・ω・`)?

(`・ω・´)?

ミセ;*゚ー゚)リ「え、いやだから何でそんなキョトンとした顔を」

(´・ω・`)「ですので、シャキンに言われてとりあえず一緒に活動してみますかと」

ミセ*゚ー゚)リ「はあ?」

(`・ω・´)「みんなで行こうって言っただろ」

ミセ;*゚ー゚)リ「はあああああ?」

(´・ω・`)「とりあえず僕とそこの二人は
戦闘に慣れたいので明日はそちらメインになりますが、
明後日以降の日程で打ち合わせをしましょう」

ミセ*゚ー゚)リ

(´・ω・`)?

(`・ω・´)?

凍り付いた笑顔でショボンとシャキンを見るミセリ。

(´・ω・`)「どうしました?」

(`・ω・´)「どうした?」

ミセ##*゚ー゚)リ「あの話の流れでわかるかそんなもん!」

再び立ち上がってショボンとシャキンを睨みながら叫んだミセリ。

あまりの勢いに再び固まってしまう八人。

ショボンとシャキンは、そんなミセリを見て穏やかに笑っていた。



.
686 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 22:25:38 ID:wbqeuKXw0





7.迷路







.

687 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 22:28:34 ID:wbqeuKXw0

『ミセ#*゚ー゚)リ「そこの二人、
明日からビシバシ鍛えるからな」』





ショボンとシャキンを睨みつつ、
小声で二人しか聞こえないように呟いたミセリを含む三人を見送った後、
シャキン達三人とショボンは農家を出て宿屋に向かった。

部屋は一人部屋を三つ、念のため三日分借り、それぞれに部屋に向かう。
一時間後にホテルのロビーで落ち合うことを約束してそれぞれに部屋に入る。

ショボンはシャキンの後ろに続いて部屋に入った。

(`・ω・´)「おつかれさん」

農家を出る前に頭から離した手を再びショボンの頭にのせ、
髪の毛を掻きまわすかのように撫でるシャキン。

身長はシャキンの方が少し高い。
けれどショボンが俯いていたため、ちょうどよい高さに頭があった。

上目遣いにシャキンを見るショボン。

しかしそこに可愛げといったものは無く、
出てきた言葉は恨み節だった。

(´・ω・`)「すぐ連絡くれなかったくせして」

(`・ω・´)「そう怒るなって。
理由は分かってるだろ?」

(´・ω・`)「分かってるつもりだけど、
とりあえず連絡をくれるくらいはしてくれてもいいと思うんだ」

(`・ω・´)「おれもあの二人とパーティー組んだりして大変だったんだよ」

.
689 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 22:30:50 ID:wbqeuKXw0

(´・ω・`)「嘘だね」

(`・ω・´)「なんだよ嘘って」

(´・ω・`)「ちょっとしか喋ってないけど、
ミルナさんもデミタスさんもちゃんとした人っぽいし、
あの二人を丸め込んで落ち着かせることくらいかず兄にならわけないよ」

嬉しそうにショボンの顔を見るシャキン。

(´・ω・`)「……なに?どうかした?」

(`・ω・´)「いや、『かずにい』って呼んでくれたなと思ってさ」

(´・ω・`)「……シャキンにならわけないでしょ」

(`・ω・´)「なんだよー。『かず兄』って呼んでくれよー」

(´・ω・`)「うるさい」

頭を撫でる手を乱暴に外し、木製の丸椅子に腰かけるショボン。
顔は少し赤らめて怒ったような顔をしているが、
怒っているというよりも恥ずかしさの方が大きいようだ。

それを見て、笑顔でベッドに腰かけるシャキン。

(´・ω・`)「一時間しかないし、さっさと打ち合わせをするよ」

すねたように軌道修正を試みるショボン。

(`・ω・´)「そうだな。まずは情報の整理からしよう」

シャキンはそれに付き合ったが、
表情はまだニヤニヤと笑っていたためショボンは少しだけ睨んだ。




.
690 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 22:33:06 ID:wbqeuKXw0



(`・ω・´)「なるほどな。そんなクエストとアイテムがあるのか」

(´・ω・`)「やっぱり街はそんな感じだったんだね。
この村ではどうだった?」

それぞれに得た情報や感じたことを交換する二人。

いきいきとした表情で話すショボンを見てシャキンは笑顔で話すが、
時折悲しそうに少しだけ眉をひそめた。

それに気付かないショボン。

(´・ω・`)「レベルを上げるのが大変だとしても、
当分はパーティーで行動した方が良いだろうね」

(`・ω・´)「そうだな。
通常戦闘はもちろん、連携の練習もしないとだし、
ある程度はその方が良いだろう」

(´・ω・`)「ある程度?」

(`・ω・´)「何があるかわからんからな。
一人での戦い方も学ぶべきだろう」

(´・ω・`)「……そう……だね」

考えながら口を開くショボン。

(`・ω・´)「どうした?」

(´・ω・`)「うん……」

(`・ω・´)「ドクオやブーンは守られているだけの男じゃないだろ?」

(´・ω・`)「それは、わかってる」

(`・ω・´)「それなら良いけどな」

.

691 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 22:36:45 ID:wbqeuKXw0

ショボンの態度に眉を顰めるシャキンだったが、
何事もなかったように話題を流した。

(`・ω・´)「とりあえずは明日からの合同練習だな」

(´・ω・`)「うん」

あからさまにほっとした表情をするショボン。

(`・ω・´)「あの子がどんな風におれ達を鍛えてくれるのか楽しみだ」

(´・ω・`)「ドクオが、
パーティーでの戦いは彼女の方がうまいって言ってたけど、
どうだった?ここに来るまでの戦いは」

(`・ω・´)「そうだな。うまかったと思う。
というか、一緒にいた男二人より強く見えたな。
ゼアフォーはそれでも戦ってたけど、
ビコーズの方は掛け声ばかりでそれほど動いているように見えなかった。
ミセリとゼアフォーの指示に合わせて動いていたように見えた」

(´・ω・`)「そうなんだ」

(`・ω・´)「あそこも色々ありそうだな。
ミセリの『姫キャラ』というか『ぶりっ子キャラ』も含めて」

(´・ω・`)「アバターの時と違って、
少し無理しているように見えた」

(`・ω・´)「そうか。
それであんなことを」

(´・ω・`)「そっちだって分かってやってたんでしょ?」

(`・ω・´)「おれは面白そうだなって思っただけだ。
そしたらお前がのってきたから」

(´・ω・`)「またそうやって人のせいにするし」

.

692 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 22:39:53 ID:wbqeuKXw0

(`・ω・´)「別にお前のせいにしたわけじゃないぞ。
おれ一人じゃうまく誘導できなかっただろうとは思うがな」

(´・ω・`)「まったくもう」

口調では避難しているように聞こえるが、
ショボンの表情は穏やかで明るかった。

(`・ω・´)「素の方が面白いし良いキャラしてそうだと思うんだけどな」

(´・ω・`)「別人になって、
女の子らしい女の子をやってみたかったのかもね。
三人共β出身だから、
その頃からの設定というか、
互いの役割的なものがあったんだろうし」

(`・ω・´)「それが壊れたと」

(´・ω・`)「あの程度でぼろを出すようじゃ、
遅かれ早かれ破綻してたよ。
早く素を出せて良かったって感謝してほしいくらいだって」

(`・ω・´)「おれに対してはキャラ壊れてたしな」

(´・ω・`)「そういえば最初からそんな感じだったよね。
……ここに来るまでになにしたのさ」

(`・ω・´)「なんもしてないぞ」

(´・ω・`)「あとでミルナさんとデミタスさんに聞くよ」

(`・ω・´)「なんもしてないって」

(´・ω・`)「何もしてないなら聞いてもいいよね?」

(`・ω・´)「いやいや、してないから時間の無駄だから」

(´・ω・`)「……なにしたの?」

.

693 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 22:44:21 ID:wbqeuKXw0

(`・ω・´)「……三人で打ち合わせしてるのを後ろから盗み聞きしたり、
出てきたモンスターに対して三人が陣形を整えている隙に特攻かけて、
結局ミセリに助けられたり。
まあ最初から付いてきたのも少しは強引だったかな。
それくらいだ」

(´・ω・`)「……充分だと思う」

(`・ω・´)「そうか?」

(´・ω・`)「うん」

(`・ω・´)「ならしょうがないな」

(´・ω・`)「まったく」

呆れたように、
少し困った顔をするショボン。
しかしすぐに笑顔に戻った。

(`・ω・´)「なんだよ」

(´・ω・`)「なんでもない」

ニヤニヤと笑うショボンを見てシャキンは肩をすくめる。
そして表情を引き締めてから口を開いた。

(`・ω・´)「彼女がお前にコンタクトをとってきたのは、
そのためだろうしな」

(´・ω・`)「ん?」

(`・ω・´)「ミセリがお前たちと一緒に動きたいといった理由だよ」

(´・ω・`)「やっぱり、そう思う?」

(`・ω・´)「一目瞭然だろ。あれは」

(´・ω・`)「だよね」

.

694 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 22:45:30 ID:wbqeuKXw0

(`・ω・´)「ビコーズもゼアフォーも、
ミセリに依存している」

(´・ω・`)「うん。僕もそう思った。
一見姫を護る騎士を装ってはいたけど、
『彼女を守る』という使命感に縋って自我を保っているようにね」

(`・ω・´)「おそらくそれが正解だろう。
二人とも気付いていないだろうが」

(´・ω・`)「彼女は、それを嫌がっているのかな」

(`・ω・´)「自分が休まる場所がないかもしれないな。
共依存の関係には見えなかった」

(´・ω・`)「……うん」

(`・ω・´)「今のお前と、同じだ」

(´・ω・`)「そう……だね」

(`・ω・´)「分かってはいるんだな」

(´・ω・`)「……うん。
僕が巻き込んでしまったのに、
僕は今『みんなを守る』っていう事を支えにしている。
すぐ連絡をくれなかったのだって、
それが分かっていたからでしょ?」

(`・ω・´)「ああ」

(´・ω・`)「僕が、兄さんに甘えない為」

(`・ω・´)「半分正解、半分間違い」

(´・ω・`)「え?」

.

695 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 22:57:54 ID:wbqeuKXw0

(`・ω・´)「おれに甘えるのは問題ない。
ただ、おれに『だけ』甘えるのはダメだ。
おれ『だけ』を心の支えにするな。
依存するんじゃない。
自分で立って、
それから甘えていい奴全員に甘えろ」

(´・ω・`)「……」

(`・ω・´)「さっきも言ったが、
お前の友達はただ守られているだけのような奴らじゃないだろ?
彼らの為にも、あの子たちを頼る強さを持て。
甘えることのできる余裕を作れ」

(´・ω・`)「分かってはいる。
分かってはいるんだ。
分かってはいるんだよ!
でも……
でも……」

(`・ω・´)「でも?
なんだ?」

(´・ω・`)「僕が誘ったから、
みんなを命の危険に晒してしまったんだ。
その責任は、取らなきゃいけない。
皆を生きてかえす。
それは、絶対にしなきゃいけない……。
だから僕は……」

(`・ω・´)「責任の所在だけを考えるのはおれたちの悪い癖だ。
そのうえお前は身内には優しいのに、
自分には厳しすぎる」

(´・ω・`)「今は仕事じゃないし、
命がかかってる」

(`・ω・´)「でも、『責任』や『自分の行動の結果』にとらわれすぎて、
そこに携わっている人間の思いを忘れてるんじゃないのか?」

.
698 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:01:15 ID:wbqeuKXw0

(´・ω・`)「思い?」

(`・ω・´)「お前が一人で背負って苦しんでいる姿を見て、
何も思わないような奴らなのか?
ドクオとブーン、あの二人は。
あと、クーとツン。彼女たちは」

(´・ω・`)「それは……」

(`・ω・´)「おれには、違うように見えた。
ドクオとブーンはそういうやつらだって知っている。
彼女たちとは少ししか話せなかったが、
意志の強い瞳をしていた」

(´・ω・`)「……」

(`・ω・´)「すぐには無理だと思うけど、
もう一つ違う視線を持て。
今のお前は一つの思いに囚われすぎている」

(´・ω・`)「……うん」

(`・ω・´)「おれはいつでもいつまでも、
必ずお前の味方だ。
だから、もう少し勇気を持ってみろ」

(´・ω・`)「ありがとう……かず兄さん……。
でも、兄さんは誰に」

(`・ω・´)「ん?いろいろお前に甘えるつもりだけど?」

(´・ω・`)「へ?」

(`・ω・´)「ドクオにも甘えるし、
ブーンにも甘える。
ミルナやデミタスにだって甘える。
でも、あいつ等にも甘えてもらえるように、
甘えてもいい奴だって思ってもらえるように、
自分の位置を作るつもりだ」

.

699 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:02:57 ID:wbqeuKXw0

(´・ω・`)「兄さん……」

(`・ω・´)「お前はいろいろできる分だけ一人で背負いすぎる。
でも、お前以外の奴だって色々できるし、
モノによってはお前よりうまくできる奴だっている。
仕事と一緒だよ。
おまえは人の能力を見抜くのがおれよりうまいんだから、
こっちでもそれを活かせばいい」

(´・ω・`)「金儲けとは違うよ……」

(`・ω・´)「ああ、違う。
でも一緒だ」

(´・ω・`)「?」

(`・ω・´)「個人の得意を伸ばし、特異とする。
個人の苦手を集団で補い、悪手をなくす。
適材適所。
相互補完。
マシロがやってきた経営の基本は、
お前の得意技だろ?」

(´・ω・`)「仕事ではそうだけど……」

(`・ω・´)「一緒だよ。
同じように考えてみろ。
皆を守るために、
皆が生き残るために、
皆が笑顔で過ごせるように」

(´・ω・`)「!」

.

700 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:04:06 ID:wbqeuKXw0

(`・ω・´)「社員みんなに笑顔で働いてもらう。
マシロの経営者、幹部、役付きに徹底させる理念。
それはここでも同じじゃないのか?
みんなに笑顔で生活してもらう。
誰かの犠牲の上にそんな生活が出来たとして、
お前の友達はほんとに笑顔でいられるのか?」

(´・ω・`)「でも、命が……」

(`・ω・´)「戦うか戦わないかを決めるのは、
お前じゃない。
それに、お前が居なくなった時にどうするつもりだ」

(´・ω・`)「僕は、死なない。
皆を返すまでは決して……」

(`・ω・´)「テストタイプ」

(´・ω・`)「!
しって、るの……?」

(`・ω・´)「おじさんに聞いた。
ログインの前にお前たちの部屋を見に行った時にな。
テストタイプのナーヴギア。
プロトタイプ、汎用機と違って、
お前が使っているテストタイプにバッテリーは付いていない。
つまり、電源を切ればそれで接続は終わりだ」

シャキンの言葉に、
隠していた事実を知っていたという衝撃に、
言葉をなくすショボン。

ただじっとシャキンの顔を見る。

(`・ω・´)「だが、おそらくだが、
こちらの世界で死ねば、
バッテリーではなく配線から供給された電力で、
お前の脳味噌は沸騰させられる」

.

701 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:06:14 ID:wbqeuKXw0

静かな部屋に、シャキンの言葉だけが響く。

(`・ω・´)「今電源を切れば確実に助けることが出来る命が、
目の前にある。
しかもそれは、最愛の自分の子供だ。
お前の両親、大おじさんと千早おばさんは、
これからずっとその思いと戦うことになる。
でもあの二人なら、その思いにきっと勝つ。
お前がこっちで何を考えているか、
分かっているだろうからな。
お前の心を尊重して、電源を切るような真似はしないだろう。
でも、爺さんがそのことを知ったら……」

(´・ω・`)「……病室に乗り込んで、電源を引っこ抜くだろうね」

(`・ω・´)「ああ。
お前とおれ、二人だしな。
おれはともかく、お前はそうすれば助けられるわけだし」

沈黙。
じっとショボンを見るシャキン。
ショボンは俯き、膝の上で握ったこぶしをじっと見ていた。

数分の間、その状態が続いただろうか。
シャキンの表情が緩み、柔らかい瞳でショボンを見た。

(`・ω・´)「よく考えるといい。
時間があるのかないのかは分からないけれど、
ちゃんと考えて答えを出せばいい」

(´・ω・`)「兄さん……」

顔を上げたショボン。
その視線の先で、にやりとシャキンは笑った。

(`・ω・´)「さて、一時間たったな。
そろそろロビーに行くか」

.

702 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:08:16 ID:wbqeuKXw0

ショボンが視界の隅のデジタル時計を見ると、
予定の時間より10分すぎていた。

(´・ω・`)「う、うん」

慌てて立ち上がったショボンを座ったまま片手で制するシャキン。

(`・ω・´)「部屋に入る前に少し遅れるって連絡しておいた。
だから慌てなくていいぞ」

(´・ω・`)「……かなわないな」

(`・ω・´)「はっはっは」

ゆっくりと立ち上がり、両手を腰に当て、
胸を張って高らかに笑うシャキン。
ショボンは浮き出ていた涙をぬぐい、笑みを浮かべる。

(`・ω・´)「よし、じゃあ行くか」

扉へと向かうシャキン。
ドアに手をかけた時に、後ろからショボンが話しかけた。

(´・ω・`)「かず兄さん」

(`・ω・´)「ん?」

ノブに手をかけたまま振り返るシャキン。

(´・ω・`)「もしも、僕が先に消えてしまったら……」

(`・ω・´)「ああ。おれがお前の友達のそばにいるよ」

(´・ω・`)「……ありがとう」

(`・ω・´)「ただし」

.

703 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:09:58 ID:wbqeuKXw0

(´・ω・`)「ん?」

(`・ω・´)「突然消えてしまった場合だな。
無茶をしたり軽率な行動で死んでしまい消えた時は、知らん」

おどけた口調で軽々しく、
けれど真剣な瞳で告げるシャキン。

(`・ω・´)「だから、お前もちゃんと生きろよ」

そして重く呟くと、ショボンの返答を聞かずにドアを開けた。








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704 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:14:57 ID:wbqeuKXw0



ミセ*゚ー゚)リ「遅い!」

次の日、
ホルンカの村のそばの森。
クエストとは関係ない場所で、
11人は戦闘を重ねていた。

ミセ*゚ー゚)リ「待っている方はただ待つだけじゃなくて一緒に戦うの!
戦っている方は戦いながら次の手を考えて!
早めにタイミングを教えるのよ!」

朝から戦闘を開始し、休憩を挟んでそろそろ6時間が経とうとしているが、
ミセリの怒声はやむことを知らない。

ミセ#*゚ー゚)リ「遅い!もっと早く!」

(;∵)「は、はい!」

(;∴)「はい!」

叱られているのは、ビコーズとゼアフォーの二人。




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705 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:17:25 ID:wbqeuKXw0




その日の朝、広場に集まった十一人はミセリから今日のスケジュールを告げられた。

それは少し行った場所にある森の中の安全エリアを中心として、
戦闘訓練を行うということ。

そのエリアは東西南北に戦闘エリアを隣接しており、
3組が戦闘訓練を行うにはもってこいの場所だということだった。

そしてエリアまでの道はドクオとミセリが戦闘を行い、
それを見本、参考にするようにとミセリは告げた。

そして、その言葉に見合う見事な戦いぶりを見せ付けた。



森の中、
現れた熊型のモンスターと戦うミセリ。
何度も隙をついて懐に潜りこみ、
短刀を閃かせて熊のHPを削る。

(クマ)「ぐをおおおおおおおお!」

HPを半分まで削ると、熊が雄叫びをあげた。

再び懐に入ろうとするミセリ。
しかしクマが腕を振り、うまく入れなかった。

ミセリの後ろでドクオが片手剣を構える。

ミセ*゚ー゚)リ「そろそろ行くよ!」

('A`)「おう!」

バックステップで距離を置くと同時に光りはじめるミセリの持つ短刀。

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706 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:19:02 ID:wbqeuKXw0

そして次の瞬間、ミセリの体は熊の懐に潜りこんだ。
光る短刀熊の胸から肩にかけて攻撃を与える。

ミセリが繰り出したのは剣技による攻撃。

剣技の中には、武器の持つ攻撃力を高めるだけではなく、
自身の反応速度を上げる技も存在する。
更にミセリはβテスト時代の経験から、
助走と跳躍のタイミングを剣技の発動に合わせることによって熊の隙を突くことに成功した。

ミセ*゚ー゚)リ「スイッチ!」

(クマ)「ぐりゅああああああ!」

ミセリの声と、熊の叫びはほぼ同時。

威力の弱い短刀での攻撃ではあったが、
剣技による会心の一撃は熊を後ずさりさせ、
更にミセリは短刀の光が消える前に熊の体を蹴って後方上空に向かって跳躍し、
弧を描く途中で綺麗に一回転をして着地した。

片膝をつき、熊を見ながら剣技後の硬直を甘受するミセリ。

そしてドクオは、既に熊を攻撃していた。

ミセリの声とほぼ同時に動き出していたドクオは正面から通常攻撃を一度加えた後、
硬直を起こした熊を右から二回攻撃、
そのまま右を向いた熊の脇をすり抜けて後ろから一回攻撃。
自分を攻撃する者の姿を追って振り返りながら、熊は攻撃のための手を振り上げる。
ドクオはその手と熊の目線の間に移動して、更に一回攻撃を加え、バックステップで距離をとる。
熊の減ったHPが赤に色を変えた。

('A`)「決める!サポ頼む!」

ミセ*゚ー゚)リ「了解!」

後ろを見ずとも技後硬直が解けてこちらを見ているであろうミセリに指示を出し、
それとほぼ同時に駆けだすドクオ。

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707 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:25:43 ID:wbqeuKXw0

その先には、両手を上げて咆哮し、威嚇する熊。

怯むことなく繰り出したドクオの持つ光り輝く片手剣による攻撃は、
熊をポリゴンに変えた。

万が一今の一撃で倒せなかった時の為に短刀を構えていたミセリが構えを解いたのは、
ポリゴンのきらめきがすべて消え、
周辺に敵のポップが認められないのを確認した後だった。

全員が上げた感嘆の声がおさまった後に、
ミセリから注目する点を注意され、
奥へと進む一行。

目的の安全エリアに到着するまでにさらに四回ドクオとミセリは戦闘をこなした。





そしてエリアに着いた後、
まずは一度ずつ全員が戦ってみたのだが、
既に『彼等』は出来上がっていた。

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708 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:27:27 ID:wbqeuKXw0



ξ゚听)ξ「ブーン!」

( ^ω^)「だお!」

川 ゚ -゚)「ドクオ!」

('A`)「ん!」

(´・ω・`)「ツン!」

ξ゚听)ξ「任せなさい!」

( ^ω^)「クー!」

川 ゚ -゚)「心得た!」

('A`)「ショボ!」

(´・ω・`)「省略するな!」



ミセ*゚ー゚)リ「……え?」

ミセリは、リアルからの友人である五人の息がすぐさま合ったことは納得できた。



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709 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:28:50 ID:wbqeuKXw0



(`・ω・´)「行くぞ二人とも!」

( ゚д゚ )「おう!」

(´・_ゝ・`)「ああ!」

( ゚д゚ )「シャキン!」

(`・ω・´)「任せろ!」

(´・_ゝ・`)「次だ!」

(`・ω・´)「おりゃ!」

( ゚д゚ )「デミタース!」

(´・_ゝ・`)「変な伸ばし方するな!」

(´・_ゝ・`)「こっちミルナ!」

( ゚д゚ )「見なきゃ戦えないだろうが!」



ミセ*゚ー゚)リ「はあ?」

ミセリは、この三人は自分達とあの道をやってきて自分の戦いを見てきた経験があることと、
さらにシャキンの指示が的確であることを悔しながらも認めることにより、無理やり納得した。



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710 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:33:14 ID:wbqeuKXw0



ξ゚听)ξ「                     」
( ^ω^)「                     」
('A`)「     こっち(だ)!ミルナ!    」
(´・_ゝ・`)「                    」
(`・ω・´)「                    」
川 ゚ -゚)「                     」

(#゚д゚ )「ちゃんと『だ』を口にしろ!」

(´・ω・`)「すみません。うちのも一緒になって」

( ゚д゚ )「え?あ、ま、まあいいけどな。うん。
そこまで怒ってないから気にするな」

ξ゚听)ξ「                  」
( ^ω^)「                  」
('A`)「     こっちミルナ!    」
(´・_ゝ・`)「                」
(`・ω・´)「                」
川 ゚ -゚)「                」

(#゚д゚ )「その違いは分かるぞこのやろう!」





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711 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:37:59 ID:wbqeuKXw0

ミセ#*゚ー゚)リ

危なげはなく、
しかし見本になるかといえば口を濁すレベルの連携で一体の熊を倒した二人と共に、
モンスターの出ない安全エリアに戻っていたミセリ。

和気あいあいと戦闘準備を始めている八人を見て、
静かに怒りを湛えていた。

しかし戦闘そのものは真面目に行っており、
更に回数をこなすごとに精度を上げる連携に、
文句を言えないでいた。

そしてその鬱憤は、
成長しない連携しか行えない自分の仲間に向いてしまった。

だがそれは仕方のないことだろう。

βテスターであり、
本来ならばこの世界での戦闘に一日の長があるべきはずの二人が、
程度の低い連携しか行えていなかったのだから。

(;∴)「ひ、姫、どこが悪いのか教えていただけますか」

(;∵)「十分連携は取れていると思うのですが」

もちろん程度が低いといっても戦闘に問題があるわけではない。
無事に敵は倒しているし、危険な目にもあっていない。
しかし目の前で目に見えて成長する者達を見て、
何故かミセリは焦りに似た感情を覚えてしまっていた。

ミセ#*゚ー゚)リ「そんなこともわからないの!」

自分でも制御できない感情。
それをビコーズとゼアフォーの二人に分かれというのが酷な話であり、
二人は混乱していた。

更に言えば、今まで戦闘能力はあるものの『可愛く』自分たちに守られていたミセリの素の姿、
見た目からは思い描けない激しい叱咤に戸惑ってしまっていた。

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712 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:39:26 ID:wbqeuKXw0

ミセ*゚ー゚)リ「!!
ご、ごめんね二人とも。
でも、二人の方が強いのに彼らの方が
ちょっと連携が出来ているからっていい気になってるのが悲しくって」

二人の目に見えた戸惑いを見て我に返り、
ミセリは悲しそうな表情をつくって二人を見る。

( ∵)「姫」

( ∴)「姫」

(#∵)「あいつらめ……」

ミセ*゚ー゚)リ「で、でもね、仕方ないことだと思うの」

( ∵)「仕方ない?」

( ∴)「どういうことですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「だって、自分よりも強いはずの二人よりも、
優れているかもしれないところを見つけたんだもん。
気分よくいい気になっても仕方ないよ」

βテスト時代の美影、
そして昨日までのミセリのような可愛らしい仕草で二人を見るミセリ。

( ∵)「それもそうだ。
連携、スイッチのタイミングが、
我らの足元にも及ばぬ奴らが見出した光芒。
そこに縋っていい気になっても仕方ない」

( ∴)「ふむ……。
それは一理あるかもしれませんが……」

ミセリの言葉にまんざらでもない顔をする二人。
それを見てから、満面の笑顔で二人の手を握るミセリ。

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713 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:41:21 ID:wbqeuKXw0

(*∵)「ひ、姫」

(*∴)「姫」

二人の手を合わせて両手で包むように握るミセリ。
そして自分の胸元に引き寄せる。

ミセ*゚ー゚)リ「でもね、このままじゃいけないと思うんだ」

(*∵)「ひ、姫?」

(*∴)「姫!」

ミセ*゚ー゚)リ「だって、それは自分を過大評価するってことだと思うの。
モンスターとの戦いが命のやり取りであるこの世界で、
その思い上がりはきっと危険につながると思うから」

(*∵)「姫はなんて優しい」

(*∴)「それでこそ、我らが姫」

ミセリの手を挟んでいるが、
彼女の決して小さくない胸に手が当たっていることに、
心を半分持っていかれている二人は素直にミセリの言葉を受け止める。

ミセリは二人の手を、
胸に当てた二人の手を力強く一回握り、
二人の目を交互に見ながら手を放した。

(*∴)「姫!」

(*∵)「ひ、姫!」

そして両手を広げ、
飛びつくように二人に抱きついた。

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714 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:43:56 ID:wbqeuKXw0

ミセ*゚ー゚)リ「だから、がんばろ。
あいつらの見本になるくらい、
レベルの違いを見せつけて、
あいつらもついでに守ってあげて。
二人ならできるよ!」

(*∴)「姫!」

(*∵)「姫!」

(*∴)「姫!がんばります!」

(*∵)「お、おれも頑張る!」

身長差があるため、背の高いゼアフォーに合わせて抱きつくと、
ビコーズの顔にはミセリの胸が少し当たることになる。

それを意識してかしないでか、
更に強く二人に抱きつくミセリ。

もちろんゼアフォーにもその女性らしい体を押し付けることになり、
二人の顔は赤く染まっていた。

ミセ*゚ー゚)リ「うん!
がんばろうね!」

可愛らしく、跳ねるような甘い声で二人に話しかけるミセリ。

(*∴)「はい!」

(*∵)「はい!」

二人の元気な返答が、
エリアに響いた。






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715 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:46:12 ID:wbqeuKXw0



('A`)「ミセリ、二人には見えないと思って悪い顔してるなー」

(´・ω・`)「ああ。うん」

そんな二人を見る三つの影。

(´・_ゝ・`)「ま、三次の女なんてそんなもんだ」

(´・ω・`)「デミタスさん……」

エリアへ繋がる道で、
三人が木陰に隠れて三人を見ていた。

('A`)「デミタスさんは、
だからショタコンになったんですか?」

(´・_ゝ・`)「……大人はいろいろあるんだよ。
っていうか、おれのショタコンは二次限定だからな。
そこは間違えるなよ」

最初から盗み見をするつもりではなかったのだが、
ミセリ達を呼びに行こうとやってきた時に、
ちょうど見かけて思わず木陰に隠れてしまっていた。

それでも普段のミセリ、あるいはビコーズやゼアフォーも、
いつもの精神状態ならば気付いたのかもしれない。
けれど今は全く気付いていなかった。

因みに三人の会話は『聞き耳スキル』によってドクオが聞き、
下手なアフレコで二人に説明していた。

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716 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:48:22 ID:wbqeuKXw0

('A`)「ういーす」

(´・ω・`)「はーい」

(´・_ゝ・`)「分かってないよねお前ら」

(´・ω・`)「それにしても、彼女はなぜそこまで二人を」

(´・_ゝ・`)「うわ。流した。
流石シャキンの血縁」

('A`)「だよな。
忍者目指しているんなら、
しっかりとした連携が出来ているならいいと思うんだけどよ」

(´・_ゝ・`)「戦闘は出来ても、お子様ってことだな」

('A`)「え?」

(´・ω・`)「デミタスさんは分かるんですか?」

(´・_ゝ・`)「多分な」

事もなげに、やれやれと呟きながら二人の顔を見るデミタス。
ドクオとショボンは互いの顔を一度見た後に、
おそらくは自分達より年上であろう青年の顔をまじまじと見た。

(´・_ゝ・`)「彼女はおれ達よりも優位に立ちたいんだよ」

(´・ω・`)「え?」

('A`)「はあ」

(´・_ゝ・`)「おれ達は、まあドクオはβテスターだけど、
おれを含め他の奴らはこの世界の初心者だ。
通常なら、おれ達は彼女たちに教えを請い、
戦闘に対して保護を求めてもおかしくはない。
ツンやクーといった女の子もいるし」

('A`)「ふむ」

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717 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:51:37 ID:wbqeuKXw0

(´・ω・`)「それは……そうかもしれませんね」

(´・_ゝ・`)「ドクオ一人で四人の面倒を見るのは厳しいし、
いまやおれたち三人も加わってる。
でも、おれ達はそこまでこの世界に対して困っていない。
戦闘においても、まあまあ戦えている。
一見そんなことは出来なさそうな女の子二人も含めてな」

('A`)「確かに」

(´・ω・`)「はい」

(´・_ゝ・`)「おそらくだが、
彼女の中にあったプランが砕け散ったんだろうな」

('A`)「プラン?」

(´・_ゝ・`)「この世界を生き抜くためのプラン。
リアルに戻るまでの間、無事に生き抜くためのプラン。
流石におれ達やあの二人を奴隷のように扱うつもりはなかったと思うけど、
自分のそばにいて、頼れる人をつくるためのプランがさ」

('A`)「あの二人がいるじゃないですか」

(´・_ゝ・`)「ドクオはお子ちゃまだなー」

('A`)「ここでそれ?」

(´・_ゝ・`)「ショボンは分かってるみたいだぞ」

('A`)「え?」

ドクオが横にいるショボンを見ると、
彼はデミタスの顔を悲しげに見つめていた。

(´・_ゝ・`)「別に言っちゃまずいことじゃないだろ?」

(´・ω・`)「そう……ですね」

('A`)「?」

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718 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:53:15 ID:wbqeuKXw0

(´・_ゝ・`)「あの二人、ビコーズとゼアフォーは、
口ではミセリを守るとか言ってるし、
実際戦闘では彼女の前に立って戦おうとするけれど、
精神面では完全に彼女に依存している」

('A`)「!」

(´・_ゝ・`)「『姫を守る!』なんて使命を、
リアルの世界では使わない言葉を口にして、
自分で勝手にこの『ゲームの世界』に目的をつくって、
自分の置かれたこの現実をどこか架空のものとして、
心を、精神を保っているんだと思う」

('A`)「そんな……。
しょ、ショボンも同じ意見なのか?」

(´・ω・`)「……うん」

('A`)「そんな……。
み、ミセリは?」

(´・_ゝ・`)「彼女はその点に関しては冷静だよ。
二人が自分に依存していることも理解しているだろうし、
自分がその役目を放棄したら二人がどうなるかわからないから、
基本的には今の状態を維持している」

デミタスの言葉を聞いてから、
ショボンの顔を覗き見るドクオ。

ショボンはその視線を感じ、
無言で頷いた。

(´・_ゝ・`)「けれど、このままじゃ彼女は誰にも、
ビコーズとゼアフォー、どちらにも頼れない。
だからドクオ、お前にコンタクトをとったんだろうし、
更に頼りになりそうなショボンや、
この思いを理解してくれそうな女の子二人、
ツンやクーと『仲間』になりたいって思ったんだろう」

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719 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:54:42 ID:wbqeuKXw0

('A`)「ミセリ……。
それならそれで、もっと素直に……」

(´・_ゝ・`)「なれなかったんだろうな」

('A`)「なんで!?」

(´・_ゝ・`)「だってお前たち、
ほんとに仲良いだろ?
五人の仲間の中に飛び込むのって、
かなりきついぞ?」

('A`)「!」

デミタスの言葉に息をのむドクオ。
自分自身リアルの世界では社交的でないことを自覚している彼は、
今までそれに思い至らなかった自分に驚愕した。

('A`)「そう……ですね……」

(´・_ゝ・`)「……βテストで戦闘を続けていたプレイヤーなんて、
九割コアなプレイヤー。ゲーマーでヘビーユーザーだろ。
んで、まあ人見知りも多いよな。
そのうえこんな命のやり取りをするような世界で、
五人で固まってる、リアルからの友人達に飛び込むなんて、
なかなかしづらいだろ」

('A`)「……」

(´・ω・`)「……」

まじまじとデミタスの顔を見る二人。

その視線に気付き、デミタスは照れたように笑った。

(´・_ゝ・`)「ま、おれも昔は人のこと言えなかったから言えることだけどな。
それに、今の彼女の気持ちが少し分かる気もする。
そして、お前たちが分からなくても仕方ないってことも分かる」

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720 ◆dKWWLKB7io:2016/01/20(水) 23:56:46 ID:wbqeuKXw0

('A`)「?」

(´・ω・`)「 」

(´・_ゝ・`)「おれとミルナは、自分の精神を制御できなくて、
この世界の事が信じられなくて、
自分がこの世界に閉じ込められたことに心がついていけてなかった。
昨日話したけど、おれとミルナが喧嘩したのだって、
余裕がなかったからだと思う。
あそこでシャキンに会えなかったら、
おれ達のどちらか、もしくは二人とも、死んでいたかもしれない。
おれとミルナは、シャキンに救われたんだよ。
今も、シャキンと一緒に居たから、お前たちに会えたんだしな」

にやりと、
それこそ余裕を感じさせる笑みを見せるデミタス。

(´・_ゝ・`)「だから、だれにも頼れない思いとか、
それに気付かないで右往左往している思いとかが、
……今の彼女の思いなんてのが、
少しだけわかる気がする」

デミタスの思いを聞き、
何も言えなくなった二人。

特にドクオはあの日の事を、
あの教会でのことを思い出し、
あの時のショボンの言葉を思い返していた。

(´・_ゝ・`)「で、どうするんだ?ショボン」

(´・ω・`)「え?」

(´・_ゝ・`)「考えてはいるんだろ?」

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721 ◆dKWWLKB7io:2016/01/21(木) 00:00:37 ID:bdkr6AuI0

(´・ω・`)「……素は出せてもらえましたが、
今のままでは彼女は僕達に対して
素直に思いを口にしてはくれないと思います」

(´・_ゝ・`)「うん」

(´・ω・`)「彼ら二人の連携が僕らの連携よりも精度が高くなることが、
彼女が落ち着いて僕たちと向き合ってくれるきっかけになるのなら、
それを待つのも良いかと」

(´・_ゝ・`)「具体的には?」

(´・ω・`)「昨日の食事の時に話した『はじまりの街』でのクエストを、
明日やりに行きませんか?
帰りは夜になりますから、二日間ホルンカから離れることになります」

(´・_ゝ・`)「その間に、二人には頑張ってもらうと」

(´・ω・`)「はい。
クエストに関しては、
無事に三人が行うことが出来た後に、
彼女達にも教えることを考えています」

('A`)「……バグレベルだから、
すでに対処されてるかもしれないからな」

黙って二人の会話を聞きつつあの日の事を思い返していたドクオが口を開いた。

('A`)「とりあえずはデミタスさん、シャキンさん、ミルナさんでやってみて、
まだ可能だったら教えるって方向でいいと思う。
その後で修正が入るかもしれないけど、
そこら辺は運ってことで我慢してもらおう。
あのクエストは五人でも多すぎたくらいだから、
指示要員でショボンが部屋に入ることを考えると、
三人ずつ二回に分けた方が良いだろ」

(´・ω・`)「シャキンが居ればできると思うけどね」

(´・_ゝ・`)「後ろにいて指示を出してくれ」

(;´・ω・`)「は、はい。わかりました」

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722 ◆dKWWLKB7io:2016/01/21(木) 00:02:23 ID:bdkr6AuI0



三人が喋っている間に、ミセリ達三人は再度熊退治に隣のエリアに移動していた。

それに三人が気付き、慌ててミセリ達を探す。

戻る時間を考慮するとそろそろ村に向かう時間であったために三人はやってきていたのだが、
結局ミセリ達とともにホルンカに戻ったのは、
日が落ちる寸前、暗闇がホルンカを包む少し前だった。





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724 ◆dKWWLKB7io:2016/01/21(木) 00:08:38 ID:bdkr6AuI0



次の日の朝。
ミセリ達三人に見送られて八人ははじまりの街向かった。

無事に街にたどり着いた八人は、
ショボンの提案したやり方と順序でクエストをこなしていく。

その結果、五人程ではないが満足のいく結果を得ることが出来た。
三人のスキルスロットは二つずつ増え、
手にはスキルの熟練度を保存することができるアイテム、
《カレス・オーの水晶瓶》が二つずつ握られている。

その他のクエストもこなし、情報を整理した頃には夕闇が街を包んでいた。

予定通りその日ははじまりの街にとどまり、
次の日の朝安い道具屋でアイテムを購入した後、
ホルンカへと向かう。



予定通り。



ショボンも、シャキンも、ドクオも、
ホルンカへの道すがら、
八人誰もがそう思っていた。








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734 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 22:51:16 ID:E23G0H0I0





8.流星







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735 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 22:52:50 ID:E23G0H0I0

はじまりの街へと出発した八人を見送るミセリ達三人。

ミセ*゚ー゚)リ「なんか怪しいのよね。
戻ってきたら吐かせないと」

ショボンとシャキンの後姿を見ながら呟くミセリ。

( ∴)「姫、どうかしましたか?」

ミセ*゚ー゚)リ「え?あ、ううん。なんでもない」

右隣に立っているゼアフォーが顔を覗き込んでくる。
それに満面の笑顔で返した。

ミセ*゚ー゚)リ「さ、今日も頑張ろう!
明日戻ってきた時に、驚かせちゃおうね」

(*∴)「はい!頑張りましょう!」

頬を赤らめながら答えるゼアフォー。

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ、まずはまた昨日の場所にいこっか。
あんまり効率よくないから、今この村にいるような人達は行かないだろうし」

( ∴)「は」

( ∵)「姫!」

ゼアフォーが元気よく答えようとした声にかぶせるように、
左隣に立つビコーズがミセリを呼んだ。

ミセ*゚ー゚)リ「なになに?どうしたの?」

二歩前に歩き、
両手を腰に当てて踊るように半回転するミセリ。

緩いウエーブのかかった髪の毛が柔らかく揺れた。

ミセ*゚ー゚)リ「なに?」

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736 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 22:54:34 ID:E23G0H0I0

ビコーズの顔を見るミセリ。

可愛らしく微笑むことを忘れない。

( ∵)「きょ、今日はもっと先まで行ってみませんか?」

ミセ*゚ー゚)リ「先?先って?
でも、スイッチの精度も上げたいなって思うんだけど……」

( ∵)「先といってもそれほど先じゃなくて、
昨日のエリアの少し先の丘まで!」

ミセ*゚ー゚)リ「あそこの先?
あの先ってことは次の町とも外れて……」

( ∴)「!星見の丘!」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、あそこか!
懐かしいね。ほんとの名前なんだっけ」

( ∴)「丘には名前はなかったような」

ミセ*゚ー゚)リ「そうだったそうだった!
それで、勝手に名前付けたんだよね。
夜に行くとちょうど真上に二層の底にある何かが光ってて、
北極星みたいで。
そうそう、思い出した!
懐かしいなー」

( ∵)「いかがでしょう!」

ミセ*゚ー゚)リ「うーん。どうしよう。
行きたい気はするけど、スイッチの練習もしたいし。
それにお昼に行っても普通の丘だしなー」

( ∵)「夜はまだ危険です。
それに、βの時と変更がないかを見ておくのも良いかと」

ミセ*゚ー゚)リ「うーん。
でもなー」

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737 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 22:57:16 ID:E23G0H0I0

( ∴)「ビコーズ、今の我らにあそこまで行ける力が無いわけではないが、
危険は回避した方が良い」

ミセ*゚ー゚)リ「危険?
あ、そっか。あそこは角熊がでるのか」

( ∴)「はい。
基本は熊よりすこし強い程度ですが、
時折二匹一度に出てきます。
同時攻撃はしてこないと思いますが……」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。二匹出てきたことあった。
一人でも倒せたけど、ちょっと怖かったな」

( ∴)「はい」

( ∵)「ですが、我らなら戦えます!
本当なら熊一匹くらい、一人で倒せる実力があります!」

ミセ*゚ー゚)リ「それは分かってるけど、この先もあるし、
折角三人で動いているんだから、
スイッチも練習しないと」

( ∵)「それはそうですが……」

ミセリの言葉に納得しつつも不満を隠そうとしないビコーズ。

ミセリとゼアフォーはその様子を見て不思議に思いつつも、
互いの顔を見て言葉を交わさずにそれぞれ思案した。

( ∴)「ビコーズ、とりあえず昨日のエリアまで行こう。
もちろんスイッチの練習をしつつ。
姫、そこまでの道すがらスイッチの練習を行い、
その状況に応じて星見の丘に行くかどうかを決めるのはどうでしょう」

ミセ*゚ー゚)リ「そうだねー。
ここで悩んでても時間の無駄だし。
まずはあそこまでいこっか」

.

738 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 22:59:14 ID:E23G0H0I0

( ∴)「ビコーズ、それで良いか?」

( ∵)「ああ!よし!行こう!」

ゼアフォーの提案に表情を明るくするビコーズ。

「頑張るぞ!」などと気合を入れながら剣を振るビコーズを見て、
ミセリとゼアフォーは苦笑いを浮かべた。





スイッチの練習をしつつ向かう森の中。
三人は昨日とは違う手ごたえを感じていた。

ミセ*゚ー゚)リ「(なんだろう。今日はすごく動きやすい感じ。
これならあいつらよりも……)」

三人は気付いていなかったが、
昨日までのほんの少しの遅さやタイミングの遅れは、
ビコーズが原因だった。

アバターの体から現実の自分の体のサイズに戻ったことによる手足の長さのずれ。
それはβテスト時代と同じ戦い方をしようとすると、
タイミングや微妙なずれを引き起こしていたのだった。

前まで一歩踏み込めば届いていた短剣が、
今は大きく一歩、あるいは二歩踏み込まなければ攻撃を与えられなくなっている。

空振りをするようなことはないが、その『ずれ』は確実に影響していた。

余談だが、それはドクオにも同じことが言えた。
しかし彼は最初の戦闘で、
後ろに親友を連れてはじまりの街からホルンカの村へ向かう
その最初の一歩で狼と戦った際にそれに気付き、
すぐさま修正をした。

.

739 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:01:20 ID:E23G0H0I0

βテスト時代は、大きな身体に片手剣と盾を持って戦っていた彼だったが、
今の体になってからは小柄な体を活かす戦い方に変えていたのだ。

そして彼は、その戦い方が自分に適していることを認識し、
この数日は何の戸惑いもなく戦闘を行っていた。

話をビコーズに、ミセリ達三人の戦闘に戻そう。

今日、ビコーズは昨日よりも少しだけ急いでいた。

前に、前に、という思いが、踏み出す一歩を早くし、
大きくし、時に二歩進み、その結果βテスト時代と同じ戦闘能力を得ていた。

( ∴)「(そうか……。
ビコーズは手足の長さが変わったのか。
今までなら少し早めのタイミングが、ちょうどよくなっている。
あとで教えてやらねばな)」

ゼアフォーは、ビコーズの復調の理由は分からずとも、原因に気付いた。

そしてビコーズの復調は、ゼアフォーの中にあった迷いを少しだけ取り除いた。

( ∴)「(おれも負けてはいられないな。
もっとがんばらないと)」

ゼアフォーの中の『迷い』。
それはこの世界に囚われた事でも、
モンスターとの戦いでHPが無くなったら自分が死んでしまう事でもない。
もちろん最初はそれもあった。
だが今は、それ以上の思いで心が埋められていた。

ミセリへの恋心。

アバターの頃よりも今の方が好きだった。
『姫』である彼女よりも、『ミセリ』である今の彼女の方が好きだった。
それは自分が置かれた現実からの逃避から生まれた恋かもしれない。
けれど彼は、その『恋心』によって今を生きていた。

.

740 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:04:48 ID:E23G0H0I0

そしてその恋心は彼の動きを狂わせた。
ミセリとのコンビネーションにおいて、
早く彼女を守りたい、できれば彼女を戦場に出したくない、
そんな心が彼の動きを狂わせ、タイミングをずらしていたのだ。

だが目の前でミセリと呼吸を合わせ始めたビコーズを見て、
自分も彼女とあんなふうに戦いたいと思っていた。






そして三人は、
昨日とは違う戦いを、
それはβテスト時代よりも高度な戦い方を身に付けることができた。






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741 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:07:28 ID:E23G0H0I0

( ∵)「姫!これならば!」

ミセ*゚ー゚)リ「うん!凄かった!
昨日とは全然違ったよ!」

( ∴)「互いの足りない部分を補い、
且つ長所を伸ばす戦い方が出来た気がします!」

( ∵)「おお!」

ミセ*゚ー゚)リ「うん!ほんと!
凄くよかった!全く負ける気がしなかったもん!」

昨日拠点とした、モンスターの出ない安全エリアにやってきた三人。
予定よりも早く付けたこともあり、
三人は少し興奮気味だった。


( ∵)「で、ではこの奥の」


ミセ*゚ー゚)リ「そうだね。
まだ時間も早いし、
行ってみちゃおっか」



( ∴)「そうですね。
三人共『隠蔽』を入れてますから、
熊型の敵ならいざとなれば隠れてやり過ごせるでしょう」



ミセ*゚ー゚)リ「だよね。
それに、一匹くらいならいけそうだし」




( ∴)「ええ。一匹なら大丈夫でしょう」

.

742 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:09:50 ID:E23G0H0I0



( ∵)「二匹でも行ける!」



ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズったらもう」




( ∴)「まずは一匹を倒してみてだ」




( ∵)「なんだよノリが悪い」



ミセ*゚ー゚)リ「でもゼアフォーも顔がにやけてるよ」



(*∴)「そ、そんなことは」




頬を赤くして口がにやけるのをおさえたゼアフォーを見て、
ミセリとビコーズが声を上げて笑う。
そしてゼアフォーも笑い出した。





.

743 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:14:15 ID:E23G0H0I0

最初に遭遇した角熊は、一匹だった。

ミセ*゚ー゚)リ「ゼアフォー!」

( ∴)「ビコーズ!」

( ∵)「おう!」

横から現れた角熊に対して一番近くにいたミセリが攻撃を与え、
続くゼアフォー、ビコーズと、剣技を盛り込んだ攻撃を与える。

ミセ*゚ー゚)リ!

( ∴)!

( ∵)!

その戦いは見事としか言いようがなかった。

通常攻撃と剣技を繰り出し、
呼吸のかみ合った攻撃の連鎖は角熊を翻弄し、
自分たちのHPを減らすことなく倒した。

その結果は三人の心を更に高揚させた。

ミセ*゚ー゚)リ「すごいよ二人とも!」

( ∴)「姫!ビコーズ!」

( ∵)「おおおおおおおおおお!」

一夜による成長。

実際は昔よりも少し連携がうまくなっただけなのだが、
前日の微妙な攻撃のズレと初心者に負けていると勝手に思い込んでいたため、
今の自分たちが『成長』したと思ってしまっていた。

そしてそれはさらに加速する。

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744 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:17:02 ID:E23G0H0I0

( ∵)「とりゃ!」

ミセ*゚ー゚)リ「とう!」

( ∴)「はっ!」

ビコーズの素早い短剣の振り。
ミセリの技巧を駆使した短刀の冴え。
ゼアフォーの堅実な片手剣の攻撃。

その三つが角熊を翻弄し、
確実にポリゴンへと変えていく。

合計四つのエリアで一匹ずつ角熊を倒した頃には、
『戦う事』が楽しくさえなっていた。





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745 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:18:46 ID:E23G0H0I0

ミセ*゚ー゚)リ「あるーひ」

( ∵)( ∴)「あるーひ」

ミセ*゚ー゚)リ「もりなの、なか!」

( ∵)( ∴)「もりの、なか!」

ミセ*゚ー゚)リ「つのぐまに」

( ∵)( ∴)「つのぐまに」

ミセ*゚ー゚)リ「であぁった!」

( ∵)( ∴)「でああった!」

ミセ*゚ー゚)リ「ほしみのおーかーへーのみちー」

( ∵)( ∴)「つのぐまに、であーあったー」

ミセ*゚ー゚)リ「つのぐまの!」

( ∵)( ∴)「つのぐまの!」

ミセ*゚ー゚)リ「ゆうことにゃ」

( ∵)「いうことにゃ!」

( ∴)「おひめさん」

( ∵)「おにげなさい!」

ミセ*゚ー゚)リ「いいおわるまえにー。
ソードスキルをおみまいしたー!」

ミセ*゚―゚)リ( ∵)( ∴)「ららららーらーらーらーらー。
ららららーらーらーらーらー」


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746 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:20:18 ID:E23G0H0I0



こんな替え歌をうたいながら森を歩くほどには、
気分が高揚していた。



.

747 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:22:56 ID:E23G0H0I0

それでも注意を怠っているわけではなく、
エリアの移動の際には周囲を確認しながら、
細心の注意を払って少しずつ前へと進んでいった。

ミセ*゚ー゚)リ「ストップ」

細い道を両脇に分かれ、
茂みの中を進んでいく三人。

前方をミセリとビコーズ、
後方をゼアフォーが見張っていた。

そして左に九十度曲がる道の手前で、
ミセリが停止を告げた。

( ∴)「敵ですか?」

( ∵)「ああ。二匹いる」

ミセ*゚ー゚)リ「二匹か……」

ミセリの視線の先にいる角熊。
そしてその後方15メートルほど先にも、角熊がいた。

ミセ*゚ー゚)リ「もう少し奥に行って『隠蔽』スキルを使えばやり過ごせるかな」

( ∵)「ひ、姫。やってみませんか?」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

( ∵)「一匹目と二匹目の間は15メートル以上あります。
前の角熊を今までの調子で攻撃すれば、
二匹目が接近する前に倒せるかと」

ミセ*゚ー゚)リ「んー」

( ∴)「計算上は出来そうだが」

.

748 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:24:36 ID:E23G0H0I0

( ∵)「それに、一匹目をやり過ごした後に二匹目に見つかった場合、
前後から挟み撃ちされる可能性があります」

( ∴)「……うむ……」

ミセ*゚ー゚)リ「それは一理あるかも」

( ∵)「では!」

( ∴)「一つ、気になる点が」

ミセ*゚ー゚)リ「なに?」

( ∴)「後ろの角熊の角、今までと色が違ってます」

( ∵)!!

ミセ*゚ー゚)リ「え?あ、ほんとだ。
今までのは熊の地肌?色だったけど、
あいつは赤いね」

( ∴)「はい。もしあれが今までよりも強い敵の印だったら……」

ミセ*゚ー゚)リ「ちょっと怖いね」

( ∵)「な、ならば、なおさら先の角熊を倒して、
一対三の状況にした方が良いのでは?」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

( ∴)「ビコーズ?」

( ∵)「先の角熊を速攻で倒し、
落ち着いて次の赤角熊と戦闘。
一対三ならば、形勢不利な時には逃げ出すことも出来るのでは」

ミセ*゚ー゚)リ「それはそうだけど……」

( ∴)「だが……」

.

749 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:27:55 ID:E23G0H0I0

( ∵)「強いにしろ、変わらないにしろ、
何かしらの情報を掴むことが出来れば、
あいつらに教えてやることもできます」

ミセ*゚ー゚)リ「……そう……か。
うん。そうだね。
でも、ちょっとでもまずいと思ったらすぐ撤退するからね」

( ∵)「はい!」

ミセ*゚ー゚)リ「ゼアフォーも良いかな?」

( ∴)「……はい。わかりました」

ミセリに問われ、少しだけ躊躇しつつも戦闘を受け入れたゼアフォー。

ミセ*゚ー゚)リ「それじゃあ、一匹目の角熊がこの角に入った瞬間、私が出……」

( ∵)「ひ、姫!」

ミセ*゚ー゚)リ「どうしたの?」

( ∵)「こ、今回の最初の一撃はおれにやらせてください」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

( ∵)「先ほどの戦闘で少し思いついたことがあったので、
それをやってみたいのです」

( ∴)「ビコーズ、それは次の戦闘に取っておけ。
今回の戦いは出来るだけ早く倒せねばならない以上、
あまり不確定要素を入れるわけにはいかないだろ?」

( ∵)「は、早くやらないと忘れてしまいそうなんだ!
タイミングの問題もあるから、思いついたときにやってしまいたい!」

( ∴)「だが、」

ミセ*゚ー゚)リ「勝算はあるんだよね?」

.

750 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:32:24 ID:E23G0H0I0

( ∴)「姫?」

( ∵)「はい!初撃に使えると思うので、
スイッチのタイミングを乱すこともないです!」

ミセ*゚ー゚)リ「分かった。じゃあやってみよう」

( ∴)「姫!?」

ミセ*゚ー゚)リ「もしビコーズが失敗したら、
私達でフォローしよう。
二人でちゃんと見られる方が、
フォローもしやすいだろうから。
それに、思いついたことを早く試したいのは私も一緒だし」

( ∵)「姫!」

( ∴)「姫……」

いたずらっ子のように笑ったミセリ。
ビコーズは満面の笑顔で返し、
ゼアフォーは呆れたように肩をすくめた。

ミセ*゚ー゚)リ「さ、来るよ。
頼んだからね。ビコーズ」

( ∵)「はい!」

茂みの中で武器を構えるビコーズ。
まっすぐに、強い瞳で角熊を見据えている。

ミセリとゼアフォーももちろん武器を構えて角熊を見ていたが、
二人とも視界の中にビコーズが入り、
何をするのか興味を持ちつつ見守っていた。

( ∵)!

気合を入れ、茂みを飛び出すビコーズ。

.

751 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:35:00 ID:E23G0H0I0

ミセ*゚ー゚)リ「!(ビコーズ!?)」

( ∴)「!(まだ早い!)」

茂みに隠れていた状態から戦うことのメリットは、
言うまでもなく奇襲である。

相手が自分に対して警戒していない状態、
自分を認識していない状態、
攻撃なり防御なり、何かしらの『構え』を相手がとる前に攻撃を与えること。

しかしビコーズの出たタイミングは微妙だった。

いや、明らかに早すぎと言ってもよかった。

事実、ビコーズが角熊に攻撃を繰り出せる範囲まで近付いたとき、
既に角熊はビコーズを認識し、威嚇していたのだから。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」

( ∴)「あのバカ!」

茂みから飛び出す二人。

対応を間違えなければ、ビコーズが倒されることはない。
多少の傷は負うと思うが、
それだけのレベル、HPと防御力は持っている。

だが今日はほとんど攻撃らしい攻撃を受けず、
しかも速攻で敵を倒してきた三人にとって、
いや、ミセリとゼアフォーにとって、
ビコーズが攻撃を与えられHPを削られ姿をただ見ていることはできなかったのだ。

しかし、二人の予想した未来は起きなかった。

ミセ*゚ー゚)リ「うそ……」

( ∴)「……ビコーズ」

.

752 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:38:01 ID:E23G0H0I0

角熊の振り上げた手が、ビコーズを狙って振り下ろされる。

しかしその手はビコーズに当たらなかった。

角熊の手が当たる前に、斜め上に跳躍したビコーズ。

そして木の幹を蹴り、更に斜め上へ、
角熊の頭上へと跳躍した。

( ∵)「はっ!」

そして体を捻りながら短剣を閃かせ、
角熊の後頭部を攻撃した。

ミセ*゚ー゚)リ「足りない跳躍力を、
木を蹴ることで、二段跳びすることでカバーするなんて」

( ∴)「タイミングが命。
早ければジャンプしたところを狙われてしまう。
相手が攻撃を繰り出した瞬間に跳躍することに意味があったんだ」

思わず解説者のようにビコーズの動きを説明する二人。

ミセ*゚ー゚)リ「で、でも、あんなこと出来るなんて」

( ∴)「β時代、角熊サイズの敵ならば、
レベルが上がってポイントを振れば、
通常のジャンプで頭を狙うことも可能でした。
私やゼアフォーは体のサイズからあまりそういったことはしませんでしたが、」

ミセ*゚ー゚)リ「私はよくやってた」

( ∴)「ええ。
ビコーズはそれをおぼえていて、
今の体のサイズならばその戦い方が向いていると思ったのかもしれません」

.

753 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:43:22 ID:E23G0H0I0

ミセ*゚ー゚)リ「私と同じ戦い方ってこと?」

( ∴)「そこまでは……。
ただ、今までの……β時代の戦い方ではなく、
今の体に適合した戦い方を探し始めているのかもしれないです」

ミセ*゚ー゚)リ「……負けて、いられないね」

( ∴)「はい」

二人が話している間も、ビコーズの戦いは続いていた。

角熊「ぐをおおおおおおお!」

後頭部を攻撃され、悲鳴を上げる角熊。

角熊の背中側に着地したビコーズは、
そのまま背中に攻撃を与える。

( ∵)!

気合を込めて、通常攻撃を四回。
角熊の背中に四本の線を引き、バックステップで距離をとる。

怒りに染まった角熊が後ろを向こうと体を反転。
そしてその動きを冷静に観察し、
回転に合わせて走り出す。

それは角熊が闇雲に振り回している手の死角を縫うような動きだった。

ミセ*゚ー゚)リ「(ドクオくんの動き……)」

そしてもう一度跳躍。

実際には死角を選んでの移動はできていなかったが、
角熊の予期していない行動をとることには成功した。

( ∵)!!

.

754 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:47:10 ID:E23G0H0I0

再び木の幹を蹴って角熊の頭上に跳躍する。

そして今度は角と頭の境目を狙うように短剣を一閃した。

角熊「ぎゅがぎゃあああああああああ!」

今までに聞いたことのないような雄叫びをあげる角熊。
その一撃で、HPは大幅に減った。

( ∵)「姫!」

ミセ*゚ー゚)リ「!う!うん!!」

着地する前にミセリを呼ぶビコーズ。

駆けだすミセリ。

ビコーズは視界の隅でそれを確認しつつ、
着地と同時に短剣を光らせた。

( ∵)「はっ!」

光る短剣を突き出して、
角熊の脇腹に向かって駆けるビコーズ。

剣技による二連撃は、
先の角に向けた攻撃以上にHPを削り、
角熊のHPバーを黄色に変えてさらに削った。

( ∵)「スイッチ!」
ミセ*゚ー゚)リ「スイッチ!」

角熊を攻撃して駆け抜けたビコーズ。
技後の硬直を起こした彼に向かって角熊が手を振り上げた時、
ミセリの通常攻撃が角熊を襲った。

角熊「ぎゅるうがぁるあぁあああああ!」

.
756 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:50:53 ID:E23G0H0I0

ミセリの短刀が深くその体を傷つけ、
雄叫びをあげて攻撃目標をビコーズからミセリに変える。

しかしそのときすでにミセリの体は位置を変え、
角熊の体を攻撃していた。

角熊「!!!」

怒りに任せ両手を振り回す角熊。
その手を避けて攻撃を繰り出すミセリ。

短刀が、輝きを放つ。

ミセ*゚ー゚)リ「スイッチ!」
( ∴)「はい!」

ゼアフォーが駆けだすのと、
ミセリの短刀が角熊を攻撃したのはほぼ同時。

ビコーズと同じ二連撃が角熊のHPを大きく削り、
HPバーを赤に変える。

攻撃の流れを殺さずに離脱したミセリを追って体を動かす角熊。
生まれた隙に、その無防備な身体に片手剣を、
アニールブレードを突き立てるゼアフォー。

絶叫をあげる角熊から離脱し、
先の二人のように武器を光らせるゼアフォー。

そして彼は、
自分を攻撃目標にした角熊に向かって剣技を放った。





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757 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:53:52 ID:E23G0H0I0



ポリゴンへと変わる角熊。
ビコーズの初撃から数分の間の激闘は、
レベルによる補正があるとはいえ、
彼らの戦闘能力の高さを物語っていた。

そしてその立役者であるビコーズが、
今回の戦いの隠れた目的であったその敵に向かって駆けだしたのも、
仕方ないことだった。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!?」

( ∴)「ビコーズ!?」

一匹目を倒したことを喜ぶ間もなく二匹目に向かって武器を構えた三人だったが、
何の打ち合わせもなく駆けだしたビコーズに驚き、
名を呼びながらその後を追った。

( ∵)「やらしてください!」

さらに加速するビコーズ。

( ∴)「ったく!調子に乗って」

ミセ*゚ー゚)リ「気を付けて!」

先ほどの先制攻撃。
それに気を良くしたビコーズが再びアレを狙っている。

二人はそんな風に思っていた。

更に、
『たとえ赤角熊が角熊よりも強くても、
三人の連携があれば、
そこまで危険ではない』

戦況をそんな風に判断していたとしても、
仕方のないことだった。

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758 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:56:24 ID:E23G0H0I0

βテスト時代、
各層にはモンスターの強さには上限があった。
もちろんフロアボスやエリアボス、
イベントボスに関してはその上限から大きく外れるが、
それでも目安があった。

更に言えばここはまだ一層。
はじまりの街から少し離れているとはいえ、
序盤も序盤のエリア。
そこまで強い敵は出てこないと考えていたとしても仕方がなかった。

そして、強さにおいては三人の推測は間違っていなかった。

そう、モンスターの『強さ』においては。

( ∵)「とりゃああああああっ!」

赤角熊が自分に突進してくるビコーズに気付き、
両手を上げて攻撃の予備動作に入る。

( ∵)「とうっ!」

先程と同じように赤角熊の横の樹に向かって跳躍するビコーズ。

( ∵)「はっ!」

そして樹を蹴ってさらに高く飛び上がる。

赤角熊「!」

ビコーズを目で追う赤角熊。
通常の角熊よりも動体視力が上がっているのか、
その動きに対応していた。

しかし動きの速さは変わらないようで、
攻撃には移れていない。

( ∵)「とうっ!」

.

759 ◆dKWWLKB7io:2016/02/13(土) 23:58:04 ID:E23G0H0I0

赤角熊の頭の上に到達したビコーズは、
笑顔でその赤い角めがけて短剣を振り下ろした。

赤角熊「     ――――!!!!!!」


声にならない雄叫びをあげる赤角熊。

そしてそのままポリゴンと化した。

ミセ;*゚ー゚)リ「ええっ!?」

(;∴)「え!?なんで!?」

( ∵)「よしっ!」

驚いて動きを止めてしまうミセリとゼアフォー。

攻撃を繰り出したビコーズは体勢を崩すことなく着地した後、
大きく腕を上げて喜びをあらわしている、

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!?」

( ∴)「今のは一体!?」

( ∵)「はっはっは」

どこか芝居染みた、けれど誇らしげに笑うビコーズに駆け寄る二人。

( ∵)『独自のルートで情報を仕入れたんで試したかったんだ。
『赤い角の熊は、最初の一撃を角に与えることが出来ればそれで倒せる。
しかもレア武器が手に入る』ってね」

ミセ*゚ー゚)リ「なにそれ……」

( ∴)「いったいどこでそんな」

( ∵)「ソースは教えられないけど、これからも仕入れてくるよ」

.

760 ◆dKWWLKB7io:2016/02/14(日) 00:00:40 ID:/PVHF5LI0

ニヤニヤ笑いながら、ウインドウを開くビコーズ。

( ∵)「さあって、どんなレアな武器が手に入ったのかなー。
……ん?『赤い角』?
アイテムで武器じゃないし、レア武器は確率なのかな」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」

( ∴)「ビコーズ、情報の出どころは詮索しないが、
得た情報はちゃんと共有してくれ。
特に戦闘に関しては……」

( ∵)「分かってるって。
今度からはちゃんと報告するよ。
今回は初めてのネタだから、まずはやってみたかっただけだよ。
うまくすれば姫にレア武器を献上できたからな」

ゼアフォーに向かって笑いながら謝罪した後、
ミセリに向かって真面目な顔で片膝をついてしゃがんだ。

( ∵)「申し訳ありません姫。
お心を乱した上、
レア武器を献上できませんでした」

ミセ*゚ー゚)リ「……もう」

芝居がかったセリフを吐き、ミセリを見上げるビコーズ。

その笑顔を見て、ミセリは呆れつつも笑顔で返した。




.

761 ◆dKWWLKB7io:2016/02/14(日) 00:02:38 ID:/PVHF5LI0






「逃げろ!」







.

762 ◆dKWWLKB7io:2016/02/14(日) 00:04:48 ID:/PVHF5LI0

独断先行ではあったが無事にモンスターを倒したことに変わりはないため、
ビコーズの謝罪で一息つこうとした三人に、
何者かの叫び声が届く。

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

( ∵)「え?」

( ∴)「ん?」

声に驚いた三人が周囲を見ると、
自分たちを囲むようにポリゴンが現れた。

それはモンスターが出現する時に見られる空間の歪み。

デジタルの世界でのみ起こる、現象。

咄嗟に武器を構える三人。

普通の状態ならば間違ってはいないその行動も、
今は愚行に分類される。

「逃げるんだ!」

なおも聞こえる叫び声。

だが三人は動かない。

いや、動けなかった。

モンスターの出現を示唆するその現象は、
自分たちを囲むように起きており、
まるで逃げる隙など無いように思えていた。

「突っ込むんだ!
まだ間に合う!」

謎の声にまず我に返ったのはゼアフォー。

.

763 ◆dKWWLKB7io:2016/02/14(日) 00:09:10 ID:/PVHF5LI0

( ∴)「姫!ビコーズ!」

ポリゴンの状態は、
出現を示唆するだけであり、
まだそこに存在しているわけではない。

この状態ならばすり抜けることが可能だとゼアフォーは瞬時に判断した。

ミセリの手を取り駆けだすゼアフォー。

名前を呼ばれて我に返った二人も走り出す。

ギリギリではあったがポリゴンの隙間を狙って飛び出すことに成功した。

( ∴)「!」

だがその目の前にもモンスター出現前のポリゴンがあり、
それはすぐにモンスターの形に変化した。

「立ち止まるな!」

謎の声の言葉は正しい。
立ち止まらずに駆け抜ければ、
今の時点では、その先に敵はいなかったから。

出現したばかりのモンスターはまだ三人を認識しておらず、
その横をすり抜けることも可能であったから。

しかしそれに気付く冷静さを三人は持ち合わせておらず、
武器を構えるのが精一杯だった。

ミセ*゚ー゚)リ「な、なんなの!?」

( ∴)「何かのトラップが発動したのか!?」

武器を構えて目の前の角熊に向かって駆けだす二人。

( ∵)「ひ、姫!ゼアフォー!」

.

764 ◆dKWWLKB7io:2016/02/14(日) 00:10:40 ID:/PVHF5LI0

振り向いたビコーズ。
先程まで自分達を囲んでいたポリゴンが実体化し、
自分達に向かって攻撃の唸り声をあげていた。

ビコーズは短剣を構えてはいるものの、
五体の角熊を前にその剣先と足は震えていた。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」

( ∴)「こいつを倒して先に進むぞ!」

( ∵)「ひ。ひいいいいいいいい!」

ゼアフォーが目の前の一体を攻撃し、
それにミセリが続く。

この一匹を倒して道をつくることに専念しようとしたのだが、
更にその後ろに二匹角熊が現れたことを確認し、
戦慄した。

ミセ*゚ー゚)リ「そんな……」

( ∴)「くっ」

「諦めるな!」

再び謎の声が聞こえた。

そしてその瞬間、影が横の森から飛び出す。

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

ミセリとゼアフォーの前に立つ角熊の後方に回り込んだ影は、
片手剣を振った。

( ∴)「え?」

角熊の体に引かれる何本もの線。
その数えきれない線が斬撃を示すものだと思う前に、
角熊はポリゴンと化した。

.

765 ◆dKWWLKB7io:2016/02/14(日) 00:14:24 ID:/PVHF5LI0

「道はおれが作る!
後ろのやつをこちらへ!
アルゴ!」

「キー坊も結局お人よしだネ。
ま、これはしょうがないけどサ」

二人の目の前で、黒髪の少年が片手剣を構えて立っている。
そしてその横に、どこからともなく現れた、
顔に髭のような模様を描いた少女が並んだ。

(少年)「アルゴは左を。
無理な攻撃はしなくていい」

(アルゴ)「はいヨ」

角熊に向かって駆けだす二人。

( ∴)「あの二人は」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」

いまだ何が起きているのか分かってはいない。
しかし前の二匹はあの二人に任せていいのだと咄嗟に判断したミセリが振り返った。
ゼアフォーもそれに続く。

(;∵)「ひ、ひ、ひ、ひ、ひ……」

引けた腰で短剣を振り回しているビコーズ。
目の前にいる五匹の角熊は、
ビコーズを見てはいるもののまだ攻撃を繰り出してはいないようだった。

しかし赤い瞳でうなり声をあげるその姿に、
恐怖を覚えるのはミセリとゼアフォーも同じだった。

ミセ*゚ー゚)リ「目が赤い」

( ∴)「怒っているのか?」

.

766 ◆dKWWLKB7io:2016/02/14(日) 00:19:37 ID:/PVHF5LI0

動かない体の代わりに思考のみが回転する。

なんとかビコーズのそばに移動するが、
自分から戦闘を始める勇気が三人には無かった。

角熊「――――――!!!!!!」

三人に一番近くに立った角熊の突然の咆哮。

それはただの『声』ではなく、
直撃を受けた者が状態異常を引き起こす『攻撃』だった。

ミセ*゚ー゚)リ!

( ∴)!

( ∵)!

視界の隅。
自分と仲間たちのHPを示す三本のバー。
その名前の横に、
雷のようなマークが点灯したことに気付く三人。

それは、状態異常の印。

身体の動きが止められた『麻痺』を示す印。

自分の身体が動かなくなったことを知った三人。

目の前の角熊が攻撃を繰り出すモーションを始めた。

ミセ*゚ー゚)リ「う……そ……」

( ∴)「まだ……一層だぞ……」

( ∵)「ひ、ひ。ひ、ひ、ひ。ひひひひひ……」

.

767 ◆dKWWLKB7io:2016/02/14(日) 00:21:57 ID:/PVHF5LI0

実はこの麻痺の効果時間は二秒に満たない。
剣技後の硬直よりも短い麻痺の効果だった。
しかし、βテスト時代にもっと上の層でだが、
同じような敵の咆哮で麻痺を起こしたことのある三人は、
記憶の中のそれと同じものだと錯覚し、
身体を動かすことを放棄してしまっていた。

そして角熊の攻撃が三人を襲う。

ミセ* ー )リ!!!!!

( ∵)!!!

( ∴)!!!!

横殴りされ、横の樹の根元に吹き飛ばされる三人。

ミセ* ー )リ「がっ!!」

( ∵)「ぎゃあっ!!!」

( ∴)「ぐっ!!」

その一撃で半分以上のHPが削られ、
三人のHPバーの色が黄色に変わった。

(少年)「おまえら!」

既に一匹を倒し、二匹目の相手をしていた少年と少女が、
ミセリ達三人が攻撃されたことに気付く。

(アルゴ)「こっちは大丈夫ダ!
あいつらを!」

(少年)「……無理はするなよ!」

少女はその素早い動きで角熊の動きを翻弄し、
時折小さな攻撃を与えることで注意を自分に向けさせ、
攻撃は少年に任せていた。

.

768 ◆dKWWLKB7io:2016/02/14(日) 00:26:50 ID:/PVHF5LI0

だが少年を送り出した後は表情を引き締めて、
敵のHPを削るための攻撃を繰り出していった。

(少年)「(間に合ってくれ)」

駆けだした少年の目の前で、
一匹の角熊が狙いを定めていた。

狙いは、一番手前に倒れているミセリ。

ミセ;* ー )リ「あ…あ…あ…」

普段は気丈な彼女も、
目の前に迫りくる死の恐怖で満足に動くとが出来ないでいた。

ミセ;* ー )リ「や……あ……いや……」

(少年)「立ち上がれ!
逃げろ!」

少年の声に立ち上がるという体の動きを思い出し、
懸命に腰をあげようとする。

しかしそのときすでに、角熊は片手を振り上げていた。

ミセ;* ー )リ「いやーーーー!!!!」

振り下ろされる熊の左手。

顔を覆うミセリ。

そのミセリの身体が、
突き飛ばされる。

ミセ;*゚ー゚)リ「え?」

それは角熊の攻撃ではなく、
力強いが優しい衝撃。

ミセリの身体が角熊の攻撃動線から外れ、
彼女を突き飛ばしたゼアフォーが、
その攻撃を受けていた。

.

769 ◆dKWWLKB7io:2016/02/14(日) 00:28:40 ID:/PVHF5LI0

ミセ;*゚ー゚)リ「ゼア……フォー……?」

( ∴)

彼女の瞳に映る、
彼の笑顔。

背中に角熊の攻撃を受け、
その衝撃があるはずなのに、
ミセリを見て優しく微笑んでいる。

ミセリの視界の隅。
一本のHPバーが赤くなり、
そして光をなくす。

ミセ;*゚ー゚)リ「え……?」

大きく目を見開き、
ただ目の前の状況を見た。

ミセ;*゚ー゚)リ「ゼア……フォー……」

.

770 ◆dKWWLKB7io:2016/02/14(日) 00:32:03 ID:/PVHF5LI0






( ∴)「……ミセリ……す」








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771 ◆dKWWLKB7io:2016/02/14(日) 00:33:35 ID:/PVHF5LI0

ミセリの目の前で、
ゼアフォーがポリゴンに変わった。

ミセ;* ー )リ「ゼ……ア……フォー……?」

彼女の名を呼びながら、
優しい笑顔で、
彼の形を成していたポリゴンが、
砕け散る。

ミセ;* ー )リ「          !!!!!!!!」

一瞬の間の後、
エリアにミセリの叫び声が響き渡った。






.
782 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 22:36:12 ID:oUtX2mf60







9.境界線








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783 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 22:37:55 ID:oUtX2mf60

その後の事を、ミセリはよく覚えていない。
気付いた時には、目的地だった安全エリアで、一人うずくまっていた。

おそらくはあの時の少年と少女が助けてくれたのだと思われるが、
どうやってあの場所から逃げたのか、
あの時の敵は全部倒したのか、
あれはいったい何だったのか。

彼女は何も覚えていなかった。

気付いた時には朝日がエリアを照らしていた。

かすかに残る記憶の中で、

「ありがとうございました」

と、少女に向かって頭を下げていたことだけを覚えていた。

日の光がエリアを照らした時、
視界の隅にビコーズがいるのが見えた。

彼もうずくまり、
膝を抱え、
そしてずっと何か呟いていた。

けれど声をかける事も出来ず、
ぼんやりとその姿を見ていた。

視界の隅にメッセージの到着を知らせる印が点滅しても、
開く気にはなれなかった。

ぼんやりと、
目の前の景色を、
ただ、
ただ、
眺めていた。





.

784 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 22:40:25 ID:oUtX2mf60

昼になる少し前に、ホルンカに八人がたどり着いた。
予定では昼に入り口近くの広場で落ち合う予定だったが、
ミセリ達三人がいなかったため、
一度農家の二階に戻っていた。

( ^ω^)「ただいまだおー」

ξ゚听)ξ「ただいまっと」

ソファーに腰かけるブーンとツン。

川 ゚ -゚)「ツン、行儀が悪いぞ」

ξ゚听)ξ「はいはい」

ソファーに身体を預けるツンと、
それをたしなめつつも同じ様に横に座るクー。
ここ数日で何度も見た光景に、
男性陣は苦笑した。

( ゚д゚ )「何も考えずに着いてきたが、
おれ達は宿屋に行かないのか?」

(`・ω・´)「おれもそう思ったんだけど」

(´・ω・`)「あ、実は話しておきたいことがあって」

(´・_ゝ・`)「話したい事?」

(´・ω・`)「実は」

シャキン達三人にソファーに座るよう促し、
ショボンが話しながら自分のウインドウを開く。

と、同時に三人の座るソファーの後ろでドクオが転んでいた。

(´・ω・`)「……ドクオ?」

( ^ω^)「お?どうしたんだお?」

.
786 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 22:43:51 ID:oUtX2mf60

('A`)「……いや、何でもない。
メッセージを打ちながら歩いてたら転んじまったよ」

頭を掻きながら立ち上がるドクオ。
苦笑いを浮かべつつウインドウを消す。

('A`)「ミセリにメッセージ打ってるから、
気にせず話を進めてくれ」

(´・ω・`)「うん」

( ^ω^)「ドクオもおっちょこちょいだおね」

('A`)「うるせー。
お前に言われたくねえっつーの」

ξ゚听)ξ「あら、ドクオは昔からおっちょこちょいでしょ」

('A`)「だからうっさいつーの。
ショボン、外で落ち着いてメッセージ送ってくるわ。
ついでにさっき話したアイテムも買ってくる」

(´・ω・`)「あ、うん。よろしく」

('A`)「んじゃ行ってくる」

部屋を出るドクオ。
階段を下り、
普段と変わらない足取りで農家を出る。

そして扉を閉めたと同時に駆けだした。

('A`)「嘘だろ……」

表情は硬く、強張っており、
その足取りはバランスが悪く、
ちゃんと走れていなかった。

('A`)「……ゼアフォー」

.

787 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 22:45:33 ID:oUtX2mf60

外へと向かって走ろうとするが足が思うように動かずつまずく。

('A`)「!」

土埃を巻き上げながら勢いよく転ぶドクオ。

('A`)「くっ……」

慌てて立ち上がろうとするが、
身体をうまく動かせなくて寝転んだままだった。

('A`)「はやく……」

泣きそうな顔をしたドクオの目の前に差し出される手。

('A`)「え?」

( ^ω^)

見上げた視線の先に、親友の笑顔があった。

('A`)「ブーン……なんで」

( ^ω^)「おっおっ」

ξ゚听)ξ「あんたが何か隠してるのなんか、バレバレなのよ」

その横には、自分を見下ろす幼馴染。
口調はきついが、その表情はどこか悲しげだった。

('A`)「ツン……」

.
789 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 22:46:50 ID:oUtX2mf60

(´・ω・`)「なにがあったの?」

その横にはもう一人の親友。

いつも下がっている眉が、
更に下がり悲しげに見える。

('A`)「ショボン……」

三人の顔をゆっくりと見回したドクオ。

呆然と三人を見ていた顔が徐々に悲しみに歪む。

('A`)「みんな……」

ドクオの手が、
ブーンの手を握った。





(`・ω・´)「ドクオが出て行ったあと三人が後を追ったのは驚いたが、
そういうことだったか」

少し離れた建物の陰で四人を見守っているシャキン。
その横にはクーがおり、後ろにミルナとデミタスが立っている。

呟いた後、横にいるクーをちらっと見る。

川 ゚ -゚)「私はドクオに対しては付き合いが浅い。
気付かなくても仕方がない」

その視線に気付いたのか、
冷静な声で呟くクー。
しかしその表情は悲しそうであり、悔しそうだった。

シャキンはその表情を見て、優しげにほほ笑んだ。



.

790 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 22:49:10 ID:oUtX2mf60

立ち上がったドクオ。
クーとシャキン達四人も駆け寄り、
ドクオを囲む。

('A`)「おれは、ミセリ達三人と『フレンド』になってるんだ」

右手を振り、ウインドウを出して操作をしているドクオを怪訝そうに見る7人。

ドクオは自分の『フレンドリスト』を画面に出した後、
自分以外にも自分のウインドウを見せることのできる『可視モード』にする操作をしようとするが、
動きが止まった。

そして自分を見る友人たちの顔をもう一度見てから、
操作をした。

('A`)「フレンドになれば、自分のウインドウの中に、
フレンドリストが自動的に作られる。
順番とかも自分で変えられるけど、
おれはまだ十人くらいだから何の操作もしていない」

ドクオのウインドウを覗き込むように全員が移動する。
その視線の先に自分達の名前を見つけた。

( ^ω^)「お?」

ドクオが画面を固定し、
ブーンが呟いた。
そして問いかける。

( ^ω^)「なんで『Therefore』だけ黒くなってるんだお?」

見知った名前が続く中、
『Therefore』が、
『ゼアフォー』の名前だけが、
他の名前に比べて黒くなっていた。

('A`)「……βテストの時は、
ログインをしていないプレイヤーの名前は、
こんな風に名前が暗くなっていたんだ」

.

791 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 22:53:30 ID:oUtX2mf60

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「ログイン」

(´・ω・`)「……していない時?」

ツンとショボンのつぶやきを聞き、
ドクオが振り向く。

('A`)「ああ」

川 ゚ -゚)「それは、つまり……、
アインクラッドに、
この世界に、いないという……事?」

('A`)「ああ」

ツンの横でクーが瞬きをしながら、
一言一言文節を区切って呟き、
ドクオが肯定した。

( ^ω^)「……お?」

(`・ω・´)「ん?」

( ゚д゚ )「ということは、
今ゼアフォーはログインしていない、
ということか。……ん?」

(´・_ゝ・`)「ゼアフォーがログアウト出来た」

('A`)「……ああ」

ミルナとデミタスが漏らした言葉を肯定するドクオ。

(`・ω・´)「それは、つまり……」

( ^ω^)「か、帰れたってこと……か……お?」

決定的な一言を避けるようなブーンの言葉。

しかしそれはむなしく友の耳に届いただけだった。

全員が沈黙する中、ショボンが口を開く、

.

792 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 22:57:07 ID:oUtX2mf60

(´・ω・`)「まずはミセリにメッセージを送ってみよう。
ドクオ、ビコーズにも送ってみて。
そのあと現在位置が分かるかどうかの確認を」

('A`)「あ、ああ。ビコーズだな。
ミセリへは頼む」

(´・ω・`)「うん。今送った。
ミセリは現在地もわかるね」

ショボンが自分のウインドウを可視化する。

ドクオ以外が覗き込んだそこには、
地図のような図に点滅する光があった。

(´・ω・`)「この光がミセリ。
今僕たちのいるのがここで、
このあたりが一昨日スイッチの練習をした場所」

画面を指さすショボン。

(´・_ゝ・`)「ふむ。昨日のところより先なんだな」

( ゚д゚ )「敵は一緒なのか?」

('A`)「昨日の熊の上位互換種で、
額に角を生やした『角熊』が出る」

川 ゚ -゚)「上位互換?」

('A`)「見た目は基本一緒だけど、
色が違ったりとか、角の有る無しや数が違うとかで、
微妙な変化がつけてある。
でも能力は格段に違う。そんな敵の事だ。
ただ『熊』と『角熊』の違いは多少攻撃力と防御力が上がっているくらいだった」

川 ゚ ?゚)「ってことは、強いのか」

.

793 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 22:59:55 ID:oUtX2mf60

('A`)「この前の熊に比べれば。
だけどな。
でも、今の俺じゃ一対一は避けたいレベルではある。
負けるとは思わないけど、安全に戦える敵ではない」

( ^ω^)「みんなと一緒ならどうだお?」

('A`)「スイッチが機能できていれば問題ないと思う。
でも、本当はまだ連れて行きたくはないな」

ξ゚听)ξ「でも、そんなこと言っている場合じゃないでしょ」

いつの間にか戦闘準備を整えているツン。

見るとドクオ以外は準備が出来ていた。

('A`)「お、おい」

(´・ω・`)「幸いなことにポーション類は買い漁ってある。
まずは前回の広場まで。
そこについてから、その先の事を考えよう。
それまでに三人からメッセージが届くかもしれないしね」

('A`)「ショボン……いいのか?」

(´・ω・`)「あそこまでなら行くのに問題ないでしょ。
それに、素直にこの街に残る人がいると思う?」

苦笑しながら話すショボン。
ドクオは自分の周りにいる人達を見回すと、
男は笑顔や親指を立てて参加を表明し、
女は彼を睨んで意思を示した。

('A`)「……いないな」

(´・ω・`)「でしょ。
さてみんな準備はできたね。
行こうか」

.

794 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:01:57 ID:oUtX2mf60

('A`)「お、おい」

(´・ω・`)「出来るだけ敵に会わないルートはもう組み立てた。
距離的には少し遠回りになるけど、
出来るだけ戦闘は避けるから直線ルートよりも早く着けると思う」

自分のこめかみを人差し指でつつきながら自信をもって告げるショボン。

('A`)「そ、そうか」

(´・ω・`)「……出来るだけ早く着きたいから、隊列を組んでいこう。
一番前をブーンとツン。
ツン、ブーンが暴走しないように抑えて」

ξ゚听)ξ「分かってる」

(;^ω^)「おー」

(´・ω・`)「二列目は僕を中心にクーとデミタスさん。
僕は敵の出現と道の指示で突然の戦闘には参加できないと思うから、
両翼をよろしく」

川 ゚ -゚)「わかった」

(´・_ゝ・`)「あ、ああ」

(´・ω・`)「三列目を、ドクオを中心にシャキンとミルナさん」

('A`)「お、おい!」

(´・ω・`)「今は戦える状態にないでしょ?
それに、出来れば広場からミセリ達のいる場所までに行く道順を考えておいてほしい。
そこから先は僕の頭の中にないからね」

('A`)「で、でも……」

( ゚д゚ )「なんだ。おれ達の護衛じゃ不安か?」

('A`)「いや、そういう事じゃなく!」

.
796 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:06:22 ID:oUtX2mf60

(`・ω・´)「ならおとなしく従え。
それでないと出発しないぞ?
このリーダーさんは」

『お前もわかってるだろ?』
と口に出さず、ドクオに笑いかけるシャキン。

ドクオは眉間に皺を寄せつつも頷いた。

(´・ω・`)「さあ出発しよう」

ショボンの言葉に全員が頷き、
村の出口に辿り着くころには自然と隊列を組んでいた。

(´・ω・`)「シャキン」

(`・ω・´)「ん?」

(´・ω・`)「うしろを、頼むね」

(`・ω・´)「ああ、わかってる」

意味ありげに笑ったシャキン。

ドクオとミルナが不思議そうにその顔を見た。





一つ目の目的地である安全エリアに辿り着いた時には、
ショボンの決めた隊列に少しだけ『疑念』を持っていたミルナとデミタスも、
その正しさに心の奥で感嘆していた。

(´・_ゝ・`)

( ゚д゚ )

.

797 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:07:33 ID:oUtX2mf60

先頭を走るブーンとツン。

後ろから見て右にいるブーンは左手に片手剣を持ち、
左にいるツンは右手に細剣を持つ。

エリア内に敵を見つけるや否や、
走るスピードを上げたブーンが敵の横を走り抜けながら一閃。

本来ならば敵の目標を自分に向けつつ敵に背中を見せる愚行だが、
続くツンが『自分を見ていない敵』に対して落ち着いて攻撃を与えるための布石だった。

そしてそのことに気付いており、
忌々しく思いつつもそこに強力な一撃を与えることが
最良であることを分かっているツンは、
容赦なく鋭い一撃を敵に与える。

通常はそのまま敵を前後から攻撃して退治する二人だが、
後方に敵がいる場合ブーンはそのまま次の敵に向かう。

そしてその後ろを追うツン。
もちろん一体目はまだ退治できていないが、
すでにそこにはクーが槍による攻撃を加えていた。

(´・ω・`)「デミタスさん!」
川 ゚ -゚)「デミタス!」

(´・_ゝ・`)「お、おう!」

最初こそショボンやクーの声で戦いに加わったデミタスだったが、
隊列での自分の位置と役割を理解した彼は、
三度目以降はクーと先を争うように戦いに参加した。

(´・ω・`)「うしろ!
来ます!」

突然後ろを向いて叫ぶショボン。

『うしろ!』で振り返って武器を構えたシャキンとドクオに対し、
ミルナは『来ます!』で慌てて振り返った。

.

798 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:08:45 ID:oUtX2mf60

最初の一匹が倒されると後方から出現する敵。

それは先日通った際にも起こった事象だが、
さすがにどのエリアで起こるかをミルナは覚えていなかった。

それはおそらく八人中二人を除く全員が同じであり、
覚えていないことを責められることではない。

もちろん覚えていないことによって死ぬ確率が高くなるのであれば
覚えておかなければいけないこと、
知らなければいけないことなのだが、
幸いなことにこのエリアで後方から出現する敵は即座に攻撃を仕掛けてくることはないため、
パーティーを組んでいる彼らにとってそれほど重要度が高くなかったのである。

(`・ω・´)「右手の動きに注意しろよ!」

戦闘態勢を整える前の熊に攻撃をするシャキン。

熊が攻撃の手を上げた時には四度切り裂き、
バックステップで距離をとった。

( ゚д゚ )「おう!」

『(`・ω・´)「真上に振り上げた手はそのまま下に向かって振り下ろされるが、
斜めに上げた手は袈裟懸けの時と、くの字型に曲げるときがある。
袈裟懸けだと思って懐に潜り込んだら攻撃されることがあるってことだな」』

先日の熊との戦いでシャキンが告げた注意事項。

その後に一見同じような動きの中の違いを説明されたミルナとデミタスは、
素直に驚き、改めてシャキンの凄さを感じていた。

そして今日のショボンの指示。

もともと感じてはいたことだが、
シャキンとショボンに知り合った自分達の運に二人とも感謝した。
更に惜しげもなくその恩恵を自分達に与える二人に対し、
自分も力になりたいと素直に思っていた。


.

799 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:12:10 ID:oUtX2mf60




一つ目の目的地である安全エリアに辿り着いたのは、
出発から一時間半経過した頃だった。

前回は二時間以上かかっていたことを考えると、
かなり順調に辿り着いたことになる。

(´・ω・`)「まずは一息つこう」

ウインドウを出したショボン。
ドクオとルートの確認をする。

そんな二人を囲むように休憩をする六人。

しかしシャキンが二人に、
ショボンに近付いた。

(`・ω・´)「ショボン、どうする?」

(´・ω・`)「そうだね……。
一回、話を聞こうか」

(`・ω・´)「了解」

('A`)?

(´・ω・`)「ドクオごめん、ちょっと待ってて」

にっこりとほほ笑んだショボンに対し、
不思議そうに頷くドクオ。

そして二人は何事かを話しながら輪から外れ、
今自分達がやってきた道に向かって歩いていく。

まるでそれは仲間たちに聞かれたくない内緒話をしているように見えた。

( ^ω^)「二人はどうしたんだお?」

.

800 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:13:58 ID:oUtX2mf60

('A`)「わからん」

ブーンとドクオの声がぎりぎり届く位置で、
突然二人は武器を構えた。

その先には木々しかなく、
敵は見えない。

川 ゚ -゚)!

ξ゚听)ξ!

( ゚д゚ )!

(´・_ゝ・`)!

驚きを見せる四人。
ブーンとドクオは既に走り出していた。

( ^ω^)「ショボン!シャキンさん!」

('A`)「おい!」

(´・ω・`)「何の御用ですか?
ずっと着いてきていましたけど」

(`・ω・´)「おれに一目ぼれしたか?」

仲間達の動きを気にせずに気に向かって語り掛ける二人。

まるでそれは擬人化した木に対して行っているように見るが、
二人の行動に信頼をしている六人は同じように武器を構えた。

(´・ω・`)「このまま戦いますか?」



「それはやめておくヨ」




.

801 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:14:57 ID:oUtX2mf60

ショボンの問いかけに返答する一つの声。

そして一本の大きな木の裏側から、
ゆっくりと人が現れた。

(女)「よく気付いたナ。
『看破』のスキルなんてのはまだないはずだけド」

それは鼠色のフードを被った小柄な女性だった。
両手を上にあげて手のひらを見せ、
武器を手にしていない、
敵意がないと意思表示していた。

(´・ω・`)「この世界、どうやって攻撃をされるかわかりませんよ。
武器以外の裏ワザがあったとしても驚きません」

(女)「……疑り深い男は嫌われるヨ」

口調はきつめだが、
表情は笑顔で答える女。

その頬に特徴的なペイントをしているが、
可愛らしい顔立ちをしていた。

('A`)「お、おまえ。もしかして」

その顔を見て、
ドクオは武器を下ろして数歩進んだ。

( ^ω^)!

ξ゚听)ξ!

(´・ω・`)!

ドクオが自ら進んで女性に近付いたことに驚く三人。

しかしその後のドクオの言葉に、
全員の頭に『?』が浮かぶ。

('A`)「もしかして、『鼠』か?」

.

802 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:16:32 ID:oUtX2mf60

(女)

特徴的なペイントとは、
髭のような三本の線。

確かに鼠色のフードとそのペイントから『鼠』という言葉を思い浮かべることはできるが、
とりあえず見た目は可愛らしい女性に向かって『鼠』と呼ぶのは如何なものだろうか。

そんなことをほぼ全員が考えた中、
女性の顔が少し曇ったのを感じた。

『そりゃそうだよね』

またしても七人の頭に同じような感想が浮かんだが、
言われた女性の返答は少しだけ斜め上だった。

(女)「私を知っているのかナ」

('A`)「おれは『アルルッカバー』だ」

βテスト時代の名前を告げるドクオ。

βテスターであったことを出来るだけ隠す予定だったことを知っている仲間たちは思わず息をのむ。

そして何故かフードの女性も驚いていた。

(女)「え!?」

('A`)「久しぶりだな。鼠」

(女)「え!?アルルなのカ!?」

('A`)「『アルル』って呼ぶな。
あと、今の名前は『ドクオ』だから」

ドクオの返答に笑い出す女。

(女)「その返答!
まだ最後に会ってからそれほど経ってないのに懐かしいヨ!
久し振りだナ!『アルル』!」

.

803 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:17:38 ID:oUtX2mf60

('A`)「『アルル』って呼ぶな!」

(女)「分かってるヨ。
アルルッカバーくん」

('A`)「笑いながら言われてもな。
あと、今の俺の名前は」

(女)「『ドクオ』だネ。
よし、覚えタ」

('A`)「まったく……。
……久し振りだな。ね」

(アルゴ)「アルゴだヨ」

('A`)「久しぶりだな。アルゴ」

(アルゴ)「……来てたんだネ」

('A`)「……お前もな」

あっけにとられた表情で二人を見守る七人。

アルゴがその視線に気付く。

(アルゴ)「ドクオ、彼らは……」

('A`)「おれのリアル友達だ。
全員βはやってないけど、
おれがそうだってことは知っている」

あからさまに顔をしかめるアルゴ。

('A`)「大丈夫だ。
こいつらはおれ達がβテスターだと知っても」

(アルゴ)「いや、アルルくんにリアル友達がいたことが衝撃なだけだヨ」

.

804 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:18:56 ID:oUtX2mf60

('A`)「そこかよ!
っていうかおれは」

(アルゴ)「アルルッカバー君で、
今はドクオなんだよナ」

笑顔を見せるアルゴに対し、
こんどはドクオが顔をしかめた。

(アルゴ)「確かにβテスターだって知られるのは避けたかったけど、
君らの方が下手なテスターより色々すごそうだ。
特にそこの二人がネ」

面白そうに、
けれど鋭い視線でシャキンとショボンを見るアルゴ。

(´・ω・`)「ドクオ、この方は?」

('A`)「ん、ああ。
名前は今聞いた通り『アルゴ』。
β時代の知り合いだよ」

ξ゚听)ξ「ほんとあんたこっちの世界では社交的だったのね」

('A`)「うるさい」

(アルゴ)「なんだ、リアルでの評価は一緒なんだネ」

川 ゚ -゚)「うむ。友達は多い方ではないな」

('A`)「なんとなくクーに言われるとへこむ」

ξ゚听)ξ「ほんとの事なのに」

('A`)「ツンに言われてもへこまない」

ξ゚听)ξ「よし、後で」

(´・ω・`)「三人共?」

.

805 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:23:13 ID:oUtX2mf60

('A`)「あ、うん」

ξ゚听)ξ「ほら、話を進めなさい」

川 ゚ -゚)「脱線しているぞ」

(;`・ω・´)
(; ゚д゚ )
(;´・_ゝ・`)

( ^ω^)「いつもの事ですお」

(´・ω・`)「それで、なぜあなたは僕達をつけていていたんですか?」

(アルゴ)「!
いや、たまたま先にここに来ていたところに君たちが……」

シャキンが剣を握りなおしたのを横目で見て、
大きくため息をつくアルゴ。

(アルゴ)「と言っても信じてもらえないネ。
……この先に出る角熊の攻撃に関して調べていることがあってネ。
昨日もここに来ていたんだけど、
ホルンカに一度戻って、
色々買い込んでまた向かおうとしたときに、
広場で騒いでいる君たちを見つけたってことサ」

(´・ω・`)「……僕達は急いでいます。
ですので今の内容でとりあえず納得しますが、
正直信じてはいません」

(アルゴ)「当然だと思うヨ。
でもこれが真実だから、
信じてもらえると嬉しいナ」

(´・ω・`)「角熊の攻撃とは?
今から僕達はそのエリアに向かう予定ですので、
β時代とは違う点があるようであれば教えていただけますか?」

.

806 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:25:16 ID:oUtX2mf60

(アルゴ)「ふむ……。
情報には対価が必要だと思うんだけどネ」

槍を構えるショボン。
その動きを見たシャキンがアルゴの背後に回って剣を構える。

(´・ω・`)「命と引き換えでは如何ですか?」

('A`;)「お、おいショボン!」

慌ててアルゴの前に立とうとするドクオを止めるブーン。

('A`)「ブーン!?」

アルゴに見えないように、ドクオに向かって微笑むブーン。

見ればミルナとデミタスは驚いているが、
ツンとクーも平然と見守っていた。

(アルゴ)「……本気かい?」

(´・ω・`)「僕達は今急いでいます。
あなたの情報が正しく、
これからの僕達の行動に有益であるならば、
出来る限りで返します。
ですが、嘘の情報で僕達が危険な目になったり、
最悪な結果になった場合は、
必ずあなたを殺します。
それを念頭において、
取引をしていただけますか」

クーとツンが武器を構える。
それを見て慌てて武器を構えるミルナとデミタス。

ブーンは少しだけ悲しげな顔でショボンを見た後に、
ドクオを止めるのとは逆の手で武器を構えた。

('A`)「ショボン……。
みんな……」

.

807 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:27:32 ID:oUtX2mf60

(アルゴ)「分かった。嘘はつかないヨ」

(´・ω・`)「それでは」

(アルゴ)「ただ、情報の前に一つ教えてほしい。
どこに向かっているんだ?
角熊のいるエリアに向かっているという事しかわかっていないんでネ」

(´・ω・`)「それは……」

アルゴをじっと見るショボン。
その視線を受け止め、さらにショボンを見るアルゴ。

(´・ω・`)「……人を、迎えに行くところです」

(アルゴ)「!もしかして、男女一人ずつの二人組……?」

(´・ω・`)「!……いえ、…………男二人、女一人の三人パーティーです」

(アルゴ)「……そう……だネ」

二人の会話を聞き、
表情をこわばらせる七人。

いつの間にか全員が武器を下ろしている。

(アルゴ)「目的地は、奥の安全エリア。
この層ギリギリの丘。だネ?」

(´・ω・`)「……はい」

(アルゴ)「案内するヨ。
実は私もそこに行くつもりだったんだヨ」

(´・ω・`)「!なぜですか?」

(アルゴ)「話すと長くなるし、
おそらくは聞きたくないことも含まれるけどいいかイ?」

(´・ω・`)「それは……」

.

808 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:30:49 ID:oUtX2mf60

(アルゴ)「先導する。
この人数じゃあ戦闘は避けられないから参加してもらうけど、
いいネ?」

ツンとクーを見るショボン。

その視線を受けて、黙って武器を構える二人。
ほかの皆も武器を構える。

(´・ω・`)「……はい。よろしくお願いします」

(アルゴ)「それじゃあ行こうカ」

歩き始めたアルゴの後ろを、
ここに来るまでと同じ隊列になって八人は続いた。




角熊との戦い方と注意点を途中でアルゴから聞き、
ブーンとツンとドクオの三人が先制攻撃、
クーとデミタスがそのフォロー、
シャキン、ミルナ、ショボンが後方と横を担当する形で戦闘をこなした。

そして二時間後。
奥の安全エリアにアルゴを含む九人はたどり着いた。

('A`)「ミセリ……」

安全エリアは、マップ上では第一層の端にある。
柵やオブジェクトがあるわけではなく、
崖に沿った長辺30メートル以上、
短辺20メートルほどの少し湾曲した正方形に近い長方形をしていた。

四方のうち一辺は崖。
崖の先には、青い空。
何もない空間。
上空には、第二層の端が見え、
今自分達がいる場所が、
『空に浮いている』という現実を突き付けられる。

.

809 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:32:28 ID:oUtX2mf60

その他の三辺は角熊の出るフィールドダンジョンに続く道と、
エリアを分ける森があった。

さらにエリアは中央が少し高くなっており、
一番高くなった場所には、
一本の太い樹が立っている。

('A`)「ミセリ……」

ドクオが名前を呼びながら、
その木の根元にうずくまるミセリに近付く。

他のメンバーは、
黙ってそれを見守っている。

('A`)「ミセリ……」

ただ名前を呼ぶことしかできないドクオ。

そして大樹の反対側、
ミセリの座る場所と正反対の場所にうずくまるビコーズを視界に入れた。

('A`)「ビコーズ……」

体を震わせるビコーズ。

そしてゆっくりと、
恐る恐るといった動きで顔だけ振り返る。

( ∵)「ドクオ……」

名前を呼んでも微動だにしないミセリはそのままに、
ビコーズに向かって足を進めるドクオ。

('A`)「ビコーズ、大丈夫か?」

( ∵)「おれは、悪くない。
おれは、悪くない。
おれは、悪くない。
おれは、…………」

.

810 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:34:06 ID:oUtX2mf60

ドクオを見ながら、
少し焦点のずれた瞳で、
呟き続けるビコーズ。

('A`;)「ビコーズ?」

( ∵)「おれは、悪くない」

('A`)「お、おい、どうした」

ビコーズに触れる距離に辿り着く前に立ち止まるドクオ。

縋りつくように自分を見る瞳、
けれど拒絶するようにうずくまるビコーズの姿に、
恐怖に似た感情を覚えてしまったからだった。

(アルゴ)「『赤角熊は、
一番最初に角に攻撃を与えれば、
一発で倒すことが出来る。
しかも、ランダムでレアアイテムや武器が手に入る』
ホルンカの裏通りで流れている噂話だヨ」

アルゴの声に、大きく体を震わせるビコーズ。

いつの間にか隣に立つアルゴに驚きつつも、
それ以上に語った内容に困惑するドクオ。

('A`)「なんだよ、それ」

(アルゴ)「だから、噂だヨ、『噂』」

('A`)「なんだよ……それ……」

口調は軽いが、無表情なアルゴ。
ドクオは言葉をなくし、その感情の読み取れない顔を見ながら立ち尽くした。

.

811 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:38:36 ID:oUtX2mf60

(´・ω・`)「本当は、先ほど教えていただいたように……」

(アルゴ)

('A`)

丘を登りながらショボンが声をかけると、
二人が振り向いた。

(´・ω・`)「赤角熊は最初の一撃を角に当てられると、
その一撃で倒される代わりに、仲間を呼ぶ。
しかも呼ばれた角熊の攻撃力は通常よりもアップしている」

(アルゴ)「代わりに防御力は弱くなっているけどネ」

ドクオとアルゴの間に立つショボン。

(´・ω・`)「その噂は、だれが流しているんですか?」

(アルゴ)「……」

(´・ω・`)「『βテスター』。ですか?」

(アルゴ)「……そう、噂されているヨ」

('A`)「なっ!
べ、β時代には赤角熊なんていなかったぞ!」

(アルゴ)「ああ。
情報を集めた限り、
βテスターだと思われるプレイヤーで『赤角熊』を知っていたやつはいなイ。
正式サービスで追加された敵だと思うけど、
もしかするとβ時代は出現条件が厳しくて誰も会わなかったか、
或いは知っているプレイヤーに会えていないだけなのカ」

(´・ω・`)「おそらく、正式サービスによる追加でしょう」

(アルゴ)「何故?
アンタはβテスターじゃないよナ?」

.

812 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:39:42 ID:oUtX2mf60

(´・ω・`)「ホルンカの街のそばで、似たようなトラップを持ったモンスターが出ますよね?」

(アルゴ)「『実付き』だネ」

(´・ω・`)「はい。
リトルネペントの『実付き』です。
βテストが基本システムや、
プレイヤーが実際に動いた時の
プログラムをテストするためのものであるのならば、
こんな近くに似たようなトラップを仕掛ける意味がありません」

(アルゴ)「……一理あるネ」

('A`)

(アルゴ)「だけど」

(´・ω・`)「また、リトルペネントの『実』も
赤角熊の『角』も頭の上にあるものですが、
基本の背の高さが違うため、
普通に戦っていても『実』には武器が届きますが、
赤角熊の『角』を攻撃するためには、
身長の高い人が柄の長い武器で意識的に狙わないと無理でしょう」

(アルゴ)「?」

(´・ω・`)「すべて推測ですが、
この先にクエストでこの赤角熊と戦わないといけない時が
来るのではないでしょうか」

(アルゴ)「!」

('A`)「!」

(´・ω・`)「新たに何体か湧いて出る
『攻撃力は強いけど防御力が弱くなっている敵』も、
この先に進んで『攻撃力と防御力が増しているプレイヤー』ならば、
倒すことが出来る適正範囲の敵なのかもしれません」

.

813 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:45:53 ID:oUtX2mf60

無表情に淡々と自分の推理を口にするショボン。

ドクオはその一つ一つを『可能性』として素直に受け止めて頭の中で昇華しているが、
アルゴは目を見開いて驚いていた。

(´・ω・`)「どうしました?」

自分の顔を凝視するアルゴに対し、
不思議そうに問いかけるショボン。

(アルゴ)「君はいったい……」

(´・ω・`)「すべて『推測』です。
可能性の一つでしかありません」

(アルゴ)「それはそうだ、いや、でモ」

ξ゚听)ξ「ねえ」

いつの間にか、下にいた六人も丘の上に登ってきていた。

(´・ω・`)「ツン」

ξ゚听)ξ「その噂ってまだ流れてるのよね?」

ドクオとショボンの間に立ったツンがアルゴに問いかける。

クーはミセリのそばにしゃがんで声をかけており、
ブーンはビコーズに話しかけていた。

(アルゴ)「ああ。さっきも喋っている奴がいたヨ」

ξ゚听)ξ「じゃあ、それを信じてここに来たのって他にもいるの?」

(´・ω・`)!

('A`)!

(アルゴ)「私が知っているだけでも四組。
その中の二組は角への攻撃を出来ずに諦めていたが、
残りの二組はその後見ていない」

.

814 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:47:23 ID:oUtX2mf60

(´・ω・`)!

('A`)!

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)「今回は助けるのが間に合ったんだな」

三人が衝撃を受けると、クーがツンの後ろにやってきていた。

ξ゚听)ξ「クー。あの子は?」

川 ゚ -゚)「だめだ。全く反応してくれない」

ξ゚听)ξ「そう……」

('A`)「そうだな。アルゴ、お前そんなに強いのか?」

(アルゴ)「え?あ。いや、その、まあ、ネ」

('A`)?

川 ゚ -゚)?

ξ゚听)ξ?

(´・ω・`)「どなたか助っ人がいたのではないですか?」

(アルゴ)「あー。うん。まあ、ナ」

(´・ω・`)「β時代からのお友達ですね。
よろしくお伝えください」

(アルゴ)「あ、ああ。うん。伝えておくヨ。
でも、この世界で危ない状態を見たら手助けするのはよくあることだから、
あんまり気にしなくていいサ」

(´・ω・`)「ですが、僕達をここに連れてきてくれたり、
動けなくなった二人を見守っていてくれるなんてことは、
なかなか出来る事ではないと思いまして」

.

815 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:51:55 ID:oUtX2mf60

(アルゴ)!

ショボンの言葉に再度驚きを見せるアルゴ。

ショボンは彼女のその表情を見て自分の推測が正しかったことを知り、
丘を囲む林の一角を見つめた。

すでにそこは先ほどからシャキンが視線を向けており、
アルゴはそのことにも気付いて驚きを強くした。

(アルゴ)「あ、いや、その、ナ」

そんなアルゴを気にすることなく、
木々に向かって深く一礼するショボン。

シャキンもショボンほどではないが頭を下げていた。

(アルゴ)

二人を交互に見るアルゴ。

(´・ω・`)「ありがとうございます。
よろしくお伝えください」

ショボンとシャキンが頭を上げるとほぼ同時に、
林の中で影が動いた。

(アルゴ)「君たちは……いったい?」

(´・ω・`)「ほんの少し、人からの視線に敏感なだけですよ。
後僕は、ほんの少しだけ人より目が良いので」

にっこりとほほ笑んだショボンを、
いぶかしげに見つめるアルゴ。

そんな二人を、というより戸惑っているアルゴを、
少しだけかわいそうに思って何人かは見つめていた。

.

816 ◆dKWWLKB7io:2016/03/24(木) 23:59:32 ID:oUtX2mf60

( ゚д゚ )(この二人はいろいろと規格外だからな)

(´・_ゝ・`)(この数日でだいぶ慣れたけど)

川 ゚ -゚)「しかしそうなると、早いところ噂を消さないと更に……」

微妙な空気を破り、ボソッと呟いたクー。

('A`)「そう……だな」

ξ゚听)ξ「でも、どうやって?」

(´・ω・`)「一度広まった噂を消すのは難しいよ」

川 ゚ -゚)「それはその通りだ。
しかも今回は、一撃で倒せるとかレアアイテムとか、
心をくすぐるキーワードも多い」

ξ゚听)ξ「ほんと、攻略本が欲しいわよ」

('A`)「壁新聞とか?」

ξ゚听)ξ「そういえばあんた昔やってたわよね。
自分で調べたゲームの裏ワザとかハウツーを新聞にして、
クラスの壁に貼ってたりするの」

('A`)「忘れてくれ」

川 ゚ -゚)「だが、ハウツー本や指南本があればいいな。
敵ごとの戦いにおける注意点をまとめてくれたような」

ξ゚听)ξ「地形とか、最短ルートとかも地図があるといいわね。
今回連れてきてくれたみたいな出来るだけ敵と会わないルートとかも」

('A`)「そういうのも自分で探すのが楽しみだけどな」

ξ゚听)ξ「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ」

('A`)「そうだけどよ」

.

817 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:03:32 ID:s/W4n4qI0

(アルゴ)「ハウツー本、攻略本……」

会話を黙って聞いていたアルゴがぶつぶつと呟く。

ショボンはそれを横目で見ながらビコーズに近付いた。

(´・ω・`)「ブーン」

(;^ω^)「ショボン」

(´・ω・`)「どう?」

(;^ω^)「だめだお」

ブーンの反対側、
ビコーズを間にしてしゃがむショボン。

(´・ω・`)「ビコーズさん」

( ∵)「おれは悪くない……。おれは悪くない……」

身体を細かく震わせながら呟き続けるビコーズ。

(´・ω・`)「ビコーズさん……」

(;^ω^)「さっきからいろいろ話しかけてるけど、
ずっとこんなかんじだお」

(´・ω・`)「……ブーンでもダメか」

( ^ω^)「お?」

(´・ω・`)「ううん。なんでもない」

立ち上がるショボン。
ブーンは最初その動きに合わせて頭を上げただけだったが、
ショボンに視線で促され、二人でミセリのそばに移動した。

(´・ω・`)「ミセリさん」

.

818 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:06:01 ID:s/W4n4qI0

二人はミセリの両側にしゃがんだ。

(´・ω・`)「ミセリさん」

二回名前を呼ぶと、伏せていた顔を上げてゆっくりとショボンを見た。

(´・ω・`)「ここは安全エリアですが休めません。
まずはホルンカまで戻りましょう」

ミセ*゚ー゚)リ

( ^ω^)「ミセリ……」

ブーンの優し気な声に釣られるように向きを変えるミセリ。

( ^ω^)「おっおっ。
一緒にホルンカへ戻るお」

柔和な笑みを浮かべたブーン。

その顔を見たミセリの目から、涙がこぼれ落ちた。

ミセ*;ー;)リ「ゼアフォーが、姫じゃなくて、ミセリって……呼んだの」

( ^ω^)「そうなのかお」

ミセ*;ー;)リ「それで、私の事が好きだって」

( ^ω^)「ゼアフォーはミセリの事がすきなんだお」

ミセ*;ー;)リ「私……全然知らなくて……。
姫って呼ばれるのも、ただのキャラ設定で……。
とりあえず女の子とゲームをするのが楽しいだけなんだろうって……。
思ってて……」

( ^ω^)「そうだったのかお……」

ミセ*;ー;)リ「こんな、ゲームの世界で、好きとか、言われても、
アバターだし、現実とは性格だって違うし。
こんなに、わたし、しゃべることなんて……」

.

819 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:09:23 ID:s/W4n4qI0

( ^ω^)「ゼアフォーは、
そんなのも全部ひっくるめて、
ミセリの事が好きなんだお」

ミセ*;ー;)リ「私なんか……」

( ^ω^)「ゼアフォーが好きな人の事を、
『なんか』なんて言っちゃだめだお」

ミセ* ー )リ!

( ^ω^)「ゼアフォーはかっこいいお。
好きな人を守ってるんだお。
だから、そんなかっこいいゼアフォーが好きになった人の事を、
『なんか』なんて言っちゃだめだお」

ミセ* ー )リ「ブーン……くん……」

( ^ω^)「ホルンカにかえるお」

ミセ* ー )リ「もう……少しだけ……。
今は星は見えないけど、ゼアフォーが、
ここで見る星が、好きだったから……」

( ^ω^)「そうだったのかお……」

再び俯いたミセリ。
ブーンがショボンの顔を見ると、ショボンは一度頷いた。

( ^ω^)「分かったお。
もう少しだけ、ここにいると良いお」

ミセ* ー )リ「ありがとう……」

ミセリが涙を流したまま顔を伏せる。

二人のした会話は決して大きな声ではなかったが、
そこにいる全員の耳に届いていた。

そう。彼にも。

.

820 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:10:53 ID:s/W4n4qI0

( ∵)「ふざけるな!」

ふらりと立ち上がったビコーズ。
そして両足で大地を踏みしめ、
こぶしを握って叫んだ。

( ∵)「ふざけるな!!」

その声は強く激しく、
けれど震えていた。

( ^ω^)「ビコーズ!?」

ビコーズがミセリの前に立った。

(´・ω・`)「ビコーズさん?」

( ∵)「ふざけるな!
あいつはずっとお前のことが好きだったんだ!」

ミセ*゚ー゚)リ!

顔を上げるミセリ。

その目の前には、怒りによって顔を赤くしたビコーズ。

( ∵)「ずっと、ずっと、ずっと!
βで会った時からずっと!
おれと二人で!お前が好きだったんだ!」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」

( ∵)「おれたち二人はゲーム初心者で、
名前のモチーフが似てて、
知り合ってから名前の事で盛り上がって!
はじまりの街から出ることが出来なかったけど!
話しているだけで楽しかった!
でもお前と会って、ゲームの進め方や戦い方を教えてもらって、
お前の事を二人で姫って言いだして!
守るって決めて!」

.

821 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:14:01 ID:s/W4n4qI0

苦しそうに言葉をつづけるビコーズ。
その激しさと悲しみと怒りで、
誰も近寄れない。

( ∵)「だから、だから、だから!
お前に誘われたから!
だから正式サービス後も始めたんだ!
誘われなかったらやらなかった……。
おれ達は……」

(´・ω・`)!

( ^ω^)!

('A`)!

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)!

(`・ω・´)!

ミセ*゚ー゚)リ「え、で、でも、二人とも、またここで会おうって……」

( ∵)「おまえにゲームの中でリアルの事を聞くのはマナー違反だって言われた!
おれ達がお前にまた会おうには、ここに来るしかなかった!
三人共βで止めるのならば他で会おうってことになったかもしれない。
でも、おれ達よりもゲームを楽しめるお前がこの世界に残るなら、
会うなら、おれ達はここに来るしかなかったんだ!」

肩を震わせ、涙でぐしゃぐしゃの顔で叫んだビコーズ。

その告白は、だれもが固唾を飲んで見つめる事しかできなかった。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……くん……」

( ∵)「……おれ達が、この世界に来たのは、お前のためだ」

ミセ*゚ー゚)リ!

.

822 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:15:03 ID:s/W4n4qI0

( ∵)「おれ達が、この世界に囚われたのは、お前のせいだ」

ミセ* ー )リ!

( ∵)「あいつがこんなことになったのはおまえのせい」

川   - )「ふざけるな!」 

駆けだしていたクーが、
ビコーズが言い終わる前にその胸ぐらを掴む。

(´・ω・`)「クー!」

ξ゚听)ξ「クー!」

(;^ω^)「クー!?」

川   - )「ここに来ると決めたのは好きな人のせいじゃ無い!
自分で決めたからだ!」

ξ゚听)ξ「クー」

川   - )「自分で決めたことを誰かのせいにするな!
経緯はどうであれ自分で決めた自分でナーヴギアをかぶったんだ!
自分の行いの責任は自分で取れ!
人のせいにするな!
しかも惚れた相手のせいにするなんて言語道断だ!」

ビコーズの胸元を掴んだまま激しく揺するクー。

その剣幕に誰も動けない中、
一人ツンは彼女に近付き、
その背中に優しく抱きついた。

ξ゚听)ξ「クー」

川   - )「ツン……」

強く抱きつき、その背中に頬を当てて彼女の名を呼んだ。

.

823 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:16:04 ID:s/W4n4qI0

ξ゚听)ξ「クー。落ち着いて」

川 ゚ -゚)「ツン……」

クーが動きを止める。
胸倉は掴んだままだが、
ビコーズも力をなくし立ち尽くしている。

ξ゚听)ξ「大丈夫みたいね」

手の力を緩めるツン。

ξ゚听)ξ「クーもその手、早く離した方が良いわよ。
クズに触ってると手が腐るから」

川 ゚ -゚)「そうだな……」

(;^ω^)(おー)

('A`;)(安定のツンだな)

(;゚д゚ )(ん?いまさらっとひどいことを)

(;´・_ゝ・`)(うわぁ……)

そっと身体を離したツンにあわせるように、
クーも手を離し、振り返った。

川 ゚ -゚)「ありがとう、ツン」

ξ゚听)ξ「パフパフ一回分貸しね」

川 ゚ -゚)「私は良いが、ツンが悲しくならないか?」

ξ゚听)ξ「うるさい」

軽口をたたきつつ、クーと位置を入れ替えるツン。

そして振り上げた右手を振りぬいた。

.

824 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:17:29 ID:s/W4n4qI0

(;^ω^)(お!)

('A`;)(うわっ)

(´・ω・`)(あっ)

(;`・ω・´)「おっ」

(;゚д゚ )(え?)

(;´・_ゝ・`)(いたい……)

(アルゴ)(あれくらいなら攻撃判定に入らない……と)

左頬を平手打ちされたビコーズがよろめいて座り込む。

そんな彼を、軽蔑した目で見降ろすツン。

ξ゚听)ξ「あんた、最低よ」

そして踵を返すと、クーの手を取ってミセリの前に立った。

ξ゚听)ξ「ミセリ、こんなのとのパーティーはさっさと解消して、
私達のパーティーに入りなさい」

ミセ*゚ー゚)リ「……え?」

ξ゚听)ξ「『え』じゃなくって、
パーティーは基本六人までいけるんでしょ」

ミセ*゚―゚)リ「あ、うん。そのはずだけど」

ξ゚听)ξ「ならいいじゃない」

ミセ*゚ー゚)リ「で、でも……」

ξ゚听)ξ「でももくそもないわよ」

ミセ*゚ー゚)リ「くそって……」

.

825 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:19:16 ID:s/W4n4qI0

ξ゚听)ξ「こんなのとパーティー組んでても良いことないわよ」

川 ゚ -゚)「それは私も同意見だ」

ミセ*゚ー゚)リ「で、でも……」

ξ゚听)ξ「あんたは私たち。
あいつはシャキンのところにでも入れて鍛えなおしてもらえばいいでしょ」

(`・ω・´)「え?そこでおれ登場?」

ξ゚听)ξ「良いわよね?」

(`・ω・´)「え、でも」

ξ゚听)ξ「い、い、わ、よ、ね?」

(`・ω・´)「はい」

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)

ξ゚听)ξ「これでよし」

満足げに周囲を見回すツン。
ほぼ全員が呆気にとられているのを確認しつつも、
得意げに笑うだけだ。

ξ゚听)ξ「さ、とりあえず戻るわよ。
鼠さん」

アルゴを見て、彼女に向かって数歩近付くツン。

突然のことに戸惑うアルゴ。

ξ゚听)ξ「?鼠さん?」

(アルゴ)「えっと……わたしのことかナ?」

ξ゚听)ξ「他に誰がいるのよ」

(アルゴ)「……『アルゴ』って名前があるんだけどネ」

.

826 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:20:43 ID:s/W4n4qI0

ξ゚听)ξ「じゃあアルゴ、帰り道の先導もよろしく」

(アルゴ)「……あいヨ」

('A`;)(ツンすげー)

ツンが話を進める中、
クーがミセリの前にしゃがんだ。

川 ゚ -゚)「ミセリ、立てるか?」

ミセ*゚ー゚)リ「……うん」

戸惑いながらも頷いたミセリに笑いかけ、
クーが立ち上がる。

そして差し出される右手。

ミセ*゚ー゚)リ!

川 ゚ -゚)

にっこりとほほ笑んだクーを見ながら、
ミセリがその手を取り、
ゆっくりと立ち上がった。

ショボンが、うずくまったままのビコーズに近付く。

(´・ω・`)「ビコーズさん……」

( ∵)「おれは悪くない……
おれは悪くない……
おれは悪くない……」

(´・ω・`)「ビコーズさん」

( ∵)「おれは悪くない……
おれは悪くない……
……悪いのは……」

ゆっくりと立ち上がるビコーズ。

その目は虚ろで『何も見ていない』ようで、
けれど視線の先はミセリに向いていた。

.

827 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:24:49 ID:s/W4n4qI0

そしてフラフラと歩きだす。

( ∵)「みせり……」

近寄るビコーズの前に立ちふさがるツンとクー。

だがミセリは二人をゆっくりと押して間を開け、
間に立った。

ξ゚听)ξ「ミセリ……」

川 ゚ -゚)「ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ「ふたりとも、ありがとう」

小さな声で二人感謝を告げてから、
一歩前に出るミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」

( ∵)「悪いのはおれじゃない……。
あの噂だ……。
あんな噂があったから……」

ξ゚听)ξ「あんたっ!」

前に出ようとしたツンの前に手を出すミセリ。

ξ゚听)ξ「ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ「ごめんね。
ずっと二人の思いに気付かなくて……。
私が誘ったから、こんな目に合わせてしまって……」

川 ゚ -゚)「ミセリ!」

ミセ*゚ー゚)リ「私が誘ったのは事実だよ。
また、この世界で会いたいって。
強要はしてなくても、誘ったのは事実」

川 ゚ -゚)「……ミセリ」

.

828 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:39:06 ID:s/W4n4qI0

ミセ*゚ー゚)リ「だから、ビコーズがもう戦いたくないなら、
私が戦って、ビコーズを守るから。
ビコーズははじまりの街で、助けが来るのを待っていてくれれば、
それまで私が支えるから」

ξ゚听)ξ「ミセリ!何言ってんのよ!」

川 ゚ -゚)「ミセリ!それは違う!」

ミセ*゚ー゚)リ

小さく首を振るミセリ。
ビコーズを見るその表情を見て、
二人は二の句をつなげることが出来なかった。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ」

(  )「姫……」

俯いたまま、
ビコーズがミセリの前に立つ。

(  )「姫は、ゼアフォーの事が、好きですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「……うん。好き。
恋じゃないかもしれないけど、大事な人」

(  )「……『ビコーズ』、の、ことは?」

ミセ*゚ー゚)リ「好きだよ。
大事な、友達だよ。
だから……え?」

ビコーズが、握手をするように手を差し出した。

(  )「ぼくも、二人が好きだ。
やっとできた友達。
ずっと、一緒に居たいと思ってる」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」

.

829 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:40:13 ID:s/W4n4qI0

差し出された手を、両手で握るミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「うん……」

(  )「だから……」

ミセリの手が、強く握られた。

( ∵)「一緒に行こう」

ミセ*゚ー゚)リ!

上げたビコーズの顔は笑顔だった。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ?」

ミセリが困惑しながら名前を呼び終わる前に、
腕を引っ張られて思わず足を動かす。

( ∵)「いこう!」

ビコーズの勢いに釣られてそのまま歩くミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ?どこに……!」

ビコーズの視線の先には、何もない空間。

ただ『空』があるだけ。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」

( ∵)「行こう姫!
ゼアフォーのところへ!」

ミセ*゚ー゚)リ「!」

空に向かって、
崖の先に向かって走り出そうとするビコーズ。

ミセリは必死にその場にとどまろうとし、
かつビコーズの手を強く握った。

( ∵)「姫!」

ミセ*゚ー゚)リ「だめ!ビコーズだめ!」

.

830 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:43:15 ID:s/W4n4qI0

(;^ω^)「だめだお!」

('A`)「ビコーズ!」

慌てて駆け寄ったブーンとドクオがビコーズの身体を押さえる。

しかしその動きを完全には止められない。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!
やめて!」

(;^ω^)「おちつけお!」

('A`;)「おい!やめろ!」

(;´・ω・`)「みんな!」

ξ;゚听)ξ「ブーン!」

川;゚ -゚)「おい!気を付けろ!」

ショボンをはじめとする全員が動き出そうとしたその時。

(`・ω・´)「とや!」

いつの間に背後に回ったシャキンが膝の後ろを蹴り、
ビコーズのバランスを崩した。

(;^ω^)「おっ」

('A`;)「うわっ」

ブーンとドクオも一緒にバランスを崩し身体を重ねるように倒れ、
結果的にビコーズを止めることに成功した。

.

831 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:45:17 ID:s/W4n4qI0

(;´・ω・`)「シャキン……危ないよ」

(`・ω・´)「ん?大丈夫大丈夫」

シャキンは口元に笑みを浮かべながら崖に向かう道を見ると、
ミルナとデミタスが姿勢を低くして、
万が一誰かが転がってきても止めることが出来るように準備していた。

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)「どや顔されても」

立ち上がりながらやってくる二人とシャキンに向かって悪態をつきつつも、
ホッとした笑顔を見せたショボン。

( ∵)「なんでだ!」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」

四つん這いになり、
下を向いたまま地面を叩くビコーズ。

ドクオとブーンはビコーズのそばに立ち、
ツンとクーはミセリのそばに寄っている。

ショボン達四人は、少し離れた場所に立っていた。

(  )「なんでだ!」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ?」

(  )「なぜおれが生きていて!
ゼアフォーが死んだんだ!」

ミセ* ー )リ!

.

832 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:46:31 ID:s/W4n4qI0

それは、だれもが分かっていて口にすることが出来なかったこと。

ゼアフォーの死。

(  )「何でおれが生きていて、
ゼアフォーが死んだんだ……。
死ぬのは、おれの方だろ……。
あんな噂を信じた、おれの方だろ…………」

涙声で叫びながら地面をたたくビコーズ。

(  )「なんであんな噂を信じまったんだ!
おれはバカだ!バカだ!バカなんだ!
だから死ぬのはおれなんだ!
なんで!なんで!なんで!」

ミセ* ー )リ「ビコーズ……」

(  )「だからせめて、
ゼアフォーが寂しくないように、
ミセリを連れて、
おれの顔なんか見たくないだろうけど、
でも、謝りたくて……」

ξ#゚听)ξ「あんた!」

川#゚ -゚)「貴様!」

ミセ*゚ー゚)リ「ふたりとも」

ミセリを支えるように寄り添っていたツンとクーがビコーズに怒声を浴びせようとするが、
ミセリに止められた。

ξ゚听)ξ「ミセリ、あんた」

川 ゚ -゚)「ここはしっかりと!」

ミセ*゚ー゚)リ「二人ともありがとう」

.
834 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:48:09 ID:s/W4n4qI0

にっこりとほほ笑んだミセリ。
その微笑みをみて、二人は何も言えなくなった。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ」

四つん這いのビコーズの前にしゃがむミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「私は、死ねない」

( ∵)!

顔を上げるビコーズ。

ミセ*゚ー゚)リ「ゼアフォーは、私を守ってくれた。
……命を懸けて、守ってくれた」

苦しそうに、けれど微笑んでビコーズに話すミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「だから、ね。
ゼアフォーが守ってくれた、
この命を、ね。
自分の手で、捨てる事なんか、できないの」

ξ゚听)ξ「ミセリ……」

川 ゚ -゚)「ミセリ……」

ミセ*;ー;)リ「ごめんね、ビコーズ。
でもね、きっとね、ゼアフォーはね、
ビコーズが……死ぬことも、望んでなんかね、ないと思うんだ」

ミセリの両眼からポロポロと涙がこぼれる。

ミセ*;ー;)リ「ごめんね。ビコーズ。
こんなところに連れてきちゃって。
わたし、……わたし……。
がんばるから。
がんばって、生きて、いつか帰れる日まで、がんばるから。
だから、ビコーズも、頑張って、生きて……ね……ビコーズ……」

.

835 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:49:41 ID:s/W4n4qI0

苦しそうに、泣きながら、けれど精一杯の微笑みを見せて、
右手をビコーズに差し出すミセリ。

( ∵)「ミセリ……」

だがビコーズは名を呼んだだけでその手は取らず、
ゆっくりと立ち上がった。

ミセ*;ー;)リ「ビコー……ズ」

( ∵)

立ち上がったビコーズと、
しゃがんだままのミセリ。

泣き続けるミセリと、
涙を流し果てたようなビコーズ。

ミセ*;ー;)リ「ビコー……ズ?」

ビコーズは、笑った。

表情としては、『笑み』
だがそこには嬉しさも喜びも楽しさも無く、
かといって怒りや苦しみを隠すための笑みでもない。

無感情な、
ただ、顔の筋肉を動かしただけのような、
虚ろな、
『笑い顔』

ミセ*;ー;)リ「ビコー……ズ?」

ミセリがビコーズの名を再度呼ぶと、
彼が口を開いた。

( ∵)「独りで、やってくれ。
おれは無理だ」

.

836 ◆dKWWLKB7io:2016/03/25(金) 00:50:44 ID:s/W4n4qI0

早口で呟いた後、
踵を返して走りだしたビコーズ。

そばにいたドクオとブーンに対応が出来ないほどの素早い動き。

もしもショボンとシャキンがそばに居れば、
その表情の怖さをリアルの世界で知っている二人がそばにいたのなら、
もしかしたら止められたかもしれない。

けれどそれはすべて可能性。

現実は、
笑いながら崖から空に向かって飛んだビコーズと、
その背中を見守ることしかできなかった十人。

も何も言えず、
ガラスの砕けるような音が、
ポリゴンが砕け散る音が、
耳に届くまで、
誰も、
動けなかった。

その音がする直前まで聞こえたビコーズの声を、
笑い声とするのか、
叫び声とするのか、
泣き声とするのかは、
十人それぞれの心の中だった。





.
887 ◆dKWWLKB7io:2016/05/08(日) 23:50:23 ID:iSJsU6I20





10.謀略と攻略





.

888 ◆dKWWLKB7io:2016/05/08(日) 23:51:33 ID:iSJsU6I20

ホルンカに辿り着いた10人。

気を失ったミセリを連れて帰ることが出来たのは、
ひとえにアルゴの知識だった。

(アルゴ)「これに彼女を入れれば、
引きずって連れ帰ることができると思う」

そう言いながら彼女がショボンに送ったのは、
アイテム名『寝袋』が2つだった。

どうやら次の町で手に入るアイテムらしく、
ドクオは一人納得していた。

その『寝袋』にミセリを入れ、
筋力パラメーターを比較的高くしていた
シャキン、ミルナ、デミタス、ドクオが三人ずつ交代で引き摺ってホルンカに戻ってきた。

辿り着いたのは本当にギリギリで、
ホルンカの門を通り過ぎて少し引き摺った時に、
耐久値が無くなった寝袋がポリゴンとなって砕け散った。

その砕け散る音が『あの時』の『あの音』に似ていて、
その音が響いた瞬間全員が横たわるミセリを確認し、
存在していることを視認したのちに胸をなでおろした。

2つ目の寝袋を使って農場の間借りしている部屋に辿り着いたときは、
全員が疲れ切っていた。

('A`)「あ……アルゴ……」

いつの間にか届いていたフレンド申請のメッセージを見つつ、
ドクオが部屋を見回す。

いつものリビングにいるのは男が五人だけだった。

(´・ω・`)「村の入り口で分かれたよ。
アルゴさんにはお礼をしないとだよね」

.

 

889 ◆dKWWLKB7io:2016/05/08(日) 23:52:37 ID:iSJsU6I20

既に彼女のフレンド登録を済ませたショボンが何事もなく告げる。

('A`)「気付いていたなら言えよ」

(´・ω・`)「アルゴさん、
声をかけられたくなさそうだったから」

(`・ω・´)「お、おれにもフレンド申請が来てる」

( ゚д゚ )「とりあえずは昔の知り合いと、
特殊な奴を押さえたってところか?」

(´・_ゝ・`)「だろうな」

(´・ω・`)「特殊って」

(`・ω・´)「はっはっは。
おれはともかくお前は当たってるな」

(´・ω・`)

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)

('A`)

四人の視線を受け止めつつも、
何もわからないふりをして小首をかしげるシャキン。

(´・ω・`)「かわいくないよ」

(´・_ゝ・`)「それが似合うのは二次の少年だけだ」

('A`)「せめて三次の少女も入れてください」

( ゚д゚ )「どちらにせよ変態だがな」

(´・_ゝ・`)「お前に言われたくない」

.

890 ◆dKWWLKB7io:2016/05/08(日) 23:53:47 ID:iSJsU6I20

今まで通りのような会話をつなげていく五人。
しかしその笑顔は、完璧に笑顔を見せているシャキン以外、
すこし強張っていた。

会話を続けていると、寝室のドアが開く。

('A`)「……どうだ?」

( ^ω^)「目を覚ます様子はないお」

('A`)「そっか……」

(´・_ゝ・`)「あの時からずっと気を失ったままか」

( ゚д゚ )「仲間が二人とも……だからな。
しかも、ビコーズは……」

口を閉ざし、それぞれにあの瞬間を思い出す。

(`・ω・´)「ツンとクーは?」

( ^ω^)「……元気、だお」

(`・ω・´)「無理矢理?」

( ^ω^)「……うん。
だから、僕が居たら休めないかと思って、
出てきたんだお」

(`・ω・´)「おつかれさん」

小さな声でねぎらいの言葉をかけるシャキンに、
黙って少しだけ首を横に振るブーン。

ドクオに促されてソファーに座ると、
ショボンが目の前にカップを置いた。

(´・ω・`)「まずは少し落ち着こう」

.

891 ◆dKWWLKB7io:2016/05/08(日) 23:54:55 ID:iSJsU6I20

( ^ω^)「……お」

見ればいつの間にか全員に行き渡っており、
ショボン自身もトレイを置いた後一つカップを持っていた。

(´・_ゝ・`)「おれ達がミセリを運ぶ要員だったから
後ろから戦闘を見てるだけなことが多かったけど、
彼女たち二人、少し危険だったな」

( ゚д゚ )「ショボンが槍を投げたり短剣や石を投げつけたのは驚いたけど、
あんなふうにモンスターの意識を自分に向けさせることが出来たんだな」

('A`)「ショボンがひきつけないと、
危険な場面がいくつかあった」

(`・ω・´)「……二人とも、
猪突猛進に突っ込んでいっていたからな。
空回りしていた」

( ^ω^)「ツンも、クーも、
ビコーズが死んだのは自分のせいだって思ってるんだお」

('A`)「はあ?」

(´・_ゝ・`)「あー。そっか」

( ゚д゚ )「少しきついことは言ってしまっていたから、
気にしているか……。
間違ったことは言っていなかったんだけどな」

('A`)「い、いや、でも」

(´・_ゝ・`)「ああ。ビコーズが死を選んだのは二人のせいじゃないってことは分かってる。
でもそれは、見ているおれ達が分かっているだけで、
二人は自分があんなことを言ったからって思ってるんじゃないか?」

( ^ω^)「……そうだと思うお」

('A`)「だ、だってあれくらいあいつらなら普通だし」

.

892 ◆dKWWLKB7io:2016/05/08(日) 23:56:35 ID:iSJsU6I20

( ゚д゚ )「クーが激昂した理由は分からないが、
言っていたことは間違っていない。
ツンが言ったことは多少行き過ぎだったが、
お前たち仲間内なら許容範囲だったんだろ。
ただ、今は通常の状態じゃない。
ビコーズは特に、あの時は、な。
そして、あいつはおれ達の事を『仲間』とは思っていなかったのかもしれない」

('A`)「そんな……」

(´・_ゝ・`)「殴ったのは少しいただけないが、
もし彼女がなにもせず、
あいつがあのままあんなことを言い続けていたら……。
おれが殴ってたかもしれん」

( ゚д゚ )「おれもだ。
というか、本来ならばおれ達が同性として、
おそらくは年上の男として、
あいつを正してやらなきゃいけなかったんだ」

(`・ω・´)「うむ。そうだな。
おれ達がやらなきゃいけなかった。
そばにいたんだから、ちゃんと諫めなければいけなかったんだ。
……二人には、嫌な役目をさせてしまった」

(;^ω^)「そ、そんなことはないお!」

(´・ω・`)「責任は、僕にある」

シャキン達三人が首を垂れるなか、
ずっと黙っていたショボンがぼそりと呟いた。

(`・ω・´)「おい?」

(´・ω・`)「僕がちゃんと話をして、説明して、
別行動をとらなければ。
一緒にはじまりの街に戻れば、
こんなことにはならなかった」

.

893 ◆dKWWLKB7io:2016/05/08(日) 23:57:42 ID:iSJsU6I20

( ゚д゚ )「おいおい」

(´・_ゝ・`)「そこまで遡らなくても」

('A`)「それにはそうするだけの理由があっただろ」

( ^ω^)「そうだお!
だからそんなこと!」

(´・ω・`)「理由は確かにあったよ。
でもそれは、どうしてもじゃない。
彼らのプライドなんて気にせず、
優位な情報を渡せばよかったんだ」

('A`)「ショボン……」

( ^ω^)「ショボン……」

(`・ω・´)「いい加減にしろ!」

立ち上がったシャキンが、
ショボンの頭に拳骨を落とす。

(´・ω・`)「に、兄さん!?」

(`・ω・´)「お前は何様のつもりだ!」

(´・ω・`)「え?」

シャキンの一喝。
それは拳骨と相まって雷と呼ぶにふさわしい衝撃となり、
ショボンは呆然とした。

そして呆然としたのはショボンだけではなく、
それを見ていた四人も目を丸くして見守っていた。

(`・ω・´)「確かにゼアフォーとビコーズの事は残念だし、
後悔もある。
特にビコーズの事は他にやり方もあったかもしれない。
けれど、それを自分のせいだなんていうのはおこがましい!
人の命を何だと思っているんだ!」

.

894 ◆dKWWLKB7io:2016/05/08(日) 23:59:08 ID:iSJsU6I20

(´・ω・`)「で、でも……」

(`・ω・´)「でももくそもあるか!
何でも自分のせいにして収めようとするな!
物事はそんなに簡単じゃない!
しかも命にかかわることなんだからな!」

(´・ω・`)「それは……」

(`・ω・´)「だいたいな、お前の今持っている情報、
はじまりの街でのことは、今は混乱しか招かない!」

(´・ω・`)!

(`・ω・´)「おれ達はいい。
ミルナもデミタスもある程度の恩恵を受けることが出来たし、
おれ達はお前たちと一緒に行動することを選べるからな。
だがミセリ達、そしてその後に続くプレイヤーが、
同じレベルの恩恵を受け取れるかどうか分からないだろうが!」

(´・ω・`)「そ、それは……」

(`・ω・´)「今お前が持っている情報はそういった部類の情報だ。
お前だってそれが分かっているから、
まずはおれ達で試したんだろう?」

(´・ω・`)「……うん」

(`・ω・´)「これ以上情報を広めることは禁止だ。
お前の命が狙われる。」

(´・ω・`)「でも!
手帳はともかくそれ以外のアイテムとスロットは!」

(`・ω・´)「使いこなせないアイテムは身を亡ぼす。
不平等なアイテムは、それをめぐって争いが起きる」

(´・ω・`)「でも……」

.

895 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:00:31 ID:E4SpJ5.o0

(`・ω・´)「情報を広めたいのなら、もっともっと考えろ」

(´・ω・`)!

(`・ω・´)「より良い方法を、均等な方法を、暴動が起きない方法を、
そして、自分と仲間たちが危機にさらされない方法を」

(´・ω・`)「それは……」

(`・ω・´)「それが出来ないのならば、諦めろ」

(´・ω・`)「兄さん……」

二人を見守る四人。

そのうちの二人、特にブーンとドクオは驚いていた。
ショボンとシャキン、二人をよく知っているつもりだったが、
こんな二人を見るのは初めてだったからだ

(´・_ゝ・`)「お前は思いつかないのか?」

(`・ω・´)「ん?」

不思議そうにシャキンに問いかけるデミタス。

(´・_ゝ・`)「いや、『ん?』じゃなくて、
シャキン、お前がその情報をうまく使いこなす、
広める方法は思いつかないのか?」

(`・ω・´)「そういうのはおれよりこいつの方がうまい」

(´・_ゝ・`)「は?」

( ゚д゚ )「はあ?」

デミタスと同じことを考えていたミルナも思わず声を漏らした。

(`・ω・´)「そういったことを考えるのは、
おれよりショボンの方が上手いし早いし確実だ。
ただこいつは自分が泥をかぶる方法を考えがちだから、
それは矯正してやらんといけないけどな」

.

896 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:01:40 ID:E4SpJ5.o0

(;´・_ゝ・`)「へー」

(; ゚д゚ )「ほー」

言葉の外で『おれは考えない』と断言したシャキン。
唖然とするデミタスとミルナ。

( ^ω^)「おっおっお」

('A`)「あー。うん」

そしてブーンとドクオは、
自分たちの知っているシャキンを見て少し落ち着いた。

(´・ω・`)「……誰も傷つけない、
情報の広めかた……」

そんな五人を意識しないでぼそぼそと呟いていたショボンだったが、
一階天井を見てから俯くと、大きくため息をついて正面をみた。

(´・ω・`)「思いつかないや」

(`・ω・´)「なら、考えるんだな」

(´・ω・`)「……うん」

辛そうに、けれど決意を込めた引き締めた表情で頷くショボン。

それを見た五人は、五人それぞれに思いを含んだ笑顔を見せた。

('A`)「……これから、どうする?」

ほんの少しだけゆったりとした空気が流れたが、
ドクオの問いかけに全員の表情が引き締まった。

(`・ω・´)「彼女が目を覚ますまでは、
ここを拠点にするのが一番だろう」

(´・ω・`)「うん」

.

897 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:03:50 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「なあ、もしかして彼女は今病院に運ばれているってことはないか?」

(´・_ゝ・`)「あ、なるほど」

( ^ω^)「お!それなら目を覚まさない理由もわかるお!」

('A`)「現実世界の身体が病院に運ばれるまでの間は接続が切られる。
その間の身体はシステムで保護されるけど、
時間が過ぎたら自動的にナーヴギアが……」

(´・ω・`)「この前送られてきたアナウンスだよね。
多分、違うと思う。
ここに連れてくる間に彼女の身体にはほんの少しだけどダメージがあったらしく、
HPが少しだけ減っていたんだ」

(´・_ゝ・`)「『システムで保護』されていなかったってことか」

(´・ω・`)「はい」

( ゚д゚ )「心を閉ざしている。
ということか。やはり」

(`・ω・´)「彼女はここで保護するとして、
その間のおれ達だな」

( ゚д゚ )「交代で出るか?
コルは稼がないとだし、
レベル上げもしたいし」

( ^ω^)「……だおね。
ミセリさん、ツンとクーにはここにいてもらって……でも……」

(´・ω・`)「ここには六人います。
女の子三人は少し不用心な気もするから一人残って、
五人でパーティーを組んで出るのが一番じゃないかと」

( ^ω^)「それが良いと思うお!」

( ゚д゚ )「そうだな。
ミセリもだが、二人も当分は外に行かない方が良いだろ」

.

898 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:06:22 ID:E4SpJ5.o0

ショボンの提案にうなずく五人。

その後明日からのスケジュールを決めていると夜も更けたため、
シャキン達三人は街の宿に一度引き上げた。

ミセリの目は、まだ開かれなかった。







夜。

視界の隅の時刻表示が23時を告げる頃、
リビングにはブーンがいた。

一つ目の寝室にはミセリとツンとクーがいる。
二つ目の寝室をブーンとドクオとショボンで使っているのだが、
念のため一人はリビングで休むことにした。
三人が三人共、自分がリビングで休むと主張したため、
話し合いの結果時間で交代することにして、
まずはブーンがリビングにいることになった。

ショボンに入れてもらったお茶を飲みつつ、
ショボンが作った、
彼の記憶の中のSAOの説明書を書き起こした本をペラペラと捲っていると、
一つ目の寝室のドアがゆっくりと開いた。

(  )「ブーン」

( ^ω^)「ツン……」

ブーンは二人掛けのソファーに腰かけていたが、
自分を呼んだツンの声に立ち上がる。

しかしツンがその横に移動して黙って座ったため、
また腰かけた。

.

899 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:07:28 ID:E4SpJ5.o0

( ^ω^)「ツン……」

ξ゚听)ξ「私が、殴ったから……。
ひどいことを言ったから、死んじゃった……」

前を見ながら。
隣にいるブーンを視界に入れず、
背筋を伸ばし、
何もない壁を見ながら、
呟いたツン。

( ^ω^)「!」

ξ゚听)ξ「私が、あんなことを……、
ビコーズに言ったから……」

( ^ω^)「違うお!
ツンが言ったから死んだわけじゃないお!」

ξ゚听)ξ「ブーン……。ありがと……」

( ^ω^)「あの時ビコーズはずっと呟いていたお!
『おれのせいじゃない』って。
けれど、ときどき、つらそうに、
『おれがいなければ』って、言っていて!
きっとビコーズは、僕達が来るより前から、きっと……」

ξ゚听)ξ「もし、ビコーズが最初からそうするつもりだったとしても、
私がしたのことが、きっと、引き金になっちゃったんだよ」

( ^ω^)「違うお!
ツンは悪くないお!」

ブーンは座ったまま腰を捻って隣に座るツンを見つめている。
しかしツンはブーンの顔は見ておらず、
ただじっと、目の前の壁を見続けている。

ξ゚听)ξ「だめだな……わたし。
自分の事しか考えられない」

.

900 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:08:27 ID:E4SpJ5.o0

( ^ω^)「ツン!あれはクーやショボンの事を!」

ξ゚听)ξ「辛そうなクーを見ていられなかった。
ショボンだって苦しくなると思った。
……あのまま言われていたら、ミセリだって……」

( ^ω^)「そうだお!」

ξ゚听)ξ「でもそれは、私が、辛そうな三人を見たくなかった。だけ。
自分の為に、クーを止めて、二度と同じようなことを言わないように、
ビコーズを止めたくて、あんなことをした。
私が、私の為に、したこと」

( ^ω^)「ツン……」

ξ;听)ξ「ひどいことをした、とは思う。
反省しているし、悔やんでる。
もっと、うまいやり方があったんじゃないかって、思ってる」

黙ってツンの肩を抱くブーン。
けれどツンは寄り添おうとはせず、
身体をこわばらせただけだった。

ξ;凵G)ξ「でも、
言った内容を間違っていたとは思わない。
違う伝え方があったし、
言わなくてよかったことかもしれないけど、
許せなかったから。
あれで、
怒って、
けんかして、
思ってること言いあって、
思い直して、
ごめんって言って、
また、
みんなで、
レベル上げとか、
戦闘とかを、
出来るって、
思った……のに……」

.

901 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:09:39 ID:E4SpJ5.o0

( ^ω^)「ツン……。
ちょっと言い方はきつかったけど、
ツンは、……悪くないお。
間違ってないお。
きっと、タイミングが悪かっただけだお……」

肩を抱く手を強め、
自分に引き寄せるブーン。

ツンは一瞬拒んだが、
すぐにその力に負けて体を寄り添った。

そしてブーンの肩に頭をのせる。

ξ;凵G)ξ「わたしは、ずるい……。
ブーンならそう言ってくれるってわかってて、
こんなこと言って、
甘えてる」

( ^ω^)「ツンは悪くないお」

ξ;凵F)ξ「わたしは、ずるい……。
でも、だから、全部、受け止めて、
でも、私は、生きる。
みんなと、生きて、みせる。
ビコーズの、事を、抱えて」

( ^ω^)「……ツンが抱えなきゃいけないことだとは思わないお。
でも、どうしても抱えてしまうなら、
僕も一緒に抱えるお」

ξ;凵F)ξ「ブーン……」

ツンの両目からポロポロと涙がこぼれ、
ブーンの肩を濡らす。

.

902 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:10:46 ID:E4SpJ5.o0

ξ;凵F)ξ「明日は、自分で立つから。
全部抱えて、ちゃんと立つから。
忘れない。
自分のしてしまったことは、忘れない。
でも、今日だけは、今だけは、
こうさせて……。
ブーン…………」

( ^ω^)「ツン……。
僕はずっと、ここにいるお」

二人の夜は更け、
時刻は12時を過ぎていった。




時は深夜2時を少し回っていた。。

二つあるベッドの上で、
彼女は瞼を開いた。

見慣れない、
けれど見たことのある天井を見た彼女は、
ゆっくりと顔を右に向けた。

隣のベッドには、一人少女が上に何もかけずに横たわっている。
視線をずらすと、窓際の簡素な木の机に、
同じく簡素な木の椅子に座った少女が、
枕にした両手に額をのせて寝息を立てていた。

すべてを自分なりに理解した少女は、
ほんの少しだけ、
二人を起こさないように身動ぎをした。





.

903 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:11:53 ID:E4SpJ5.o0


時計は4時を告げていた。

リビングに一人座っているドクオ。

テーブルの上にはカップと本が置かれている。

('A`)「いつの間にこんな説明書をつくっていたんだよ」

感心しつつ呆れた風にペラペラと捲り、
けれどすぐにソファーに横たわった。

少しだけ身体を抱えるように横になると、
ソファーに身体がすっぽりとおさまった。

('A`)「……ふぅ……」

身体を包まれるような心地よさに一息つくと、
背凭れの後ろのドアがゆっくりと開いた。

結果的にソファーに隠れるような体勢でいたドクオに気付くことなく、
開かれたドアから出た人影はがテーブルに近付いた。

川 ゚ -゚)「ドクオか」

('A`;)「うをっ!」

川 ゚ -゚)「こんなところで何をしているんだ?」

テーブルの横の水差しからカップに水を灌ぐクー。

('A`)「お、おはよう」

慌てて起き上がるドクオ。

川 ゚ -゚)「ん?ああ。そうか。もうそんな時間なんだな」

そのままドクオの正面のソファーに座る。

.
905 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:12:53 ID:E4SpJ5.o0

川 ゚ -゚)「私は喉が渇いて目が覚めただけだが、
ドクオは早いんだな。
もしかして、寝てないのか?」

('A`)「い、いや、そんなわけではないんだけど」

川 ゚ -゚)「ん?
……なるほどな」

ドクオの気まずそうな顔と、
テーブルに置かれたカップを見て表情を緩めるクー。

川 ゚ -゚)「交代で、この部屋の番をしていてくれたのか。
ありがとう」

('A`)「べ、別にお礼を言われるようなことは」

川 ゚ -゚)「いや、体を休める時間を減らして私達を守っていてくれたんだからな。
言わせてほしい」

('A`)「ああ……。うん」

川 ゚ -゚)「どうした?」

('A`)「あ、いや……」

川 ゚ -゚)「あんなことがあったのに、普通に見えるのが不思議か?」

('A`)「そ、そんなことは……」

徐々に声を小さくするドクオに、
悲しげな笑顔を見せるクー。

川 ゚ -゚)「……ビコーズにしてしまった事に、
後悔をしていないわけではない。
あの時は我を忘れてしまっていた。
ツンが止めてくれなかったら、
ツンがああやって彼を叩いていなかったら、
私がもっと酷いことを言って、してしまっていたかもしれない。
それくらい、感情に身を委ねてしまっていた」

.

906 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:14:48 ID:E4SpJ5.o0

('A`)「クー?」

川 ゚ -゚)「きっとツンは、私以上に苦しんでいる。
彼に対してひどいことを言ったことを、
叩いたことを悔やみ、悩み、
彼の死を抱えてしまっている」

目の前のテーブルに置いたカップ。
その中の水を一気に飲み干すクー。
そして立ち上がり、水差しに向かった。

川 ゚ -゚)「だから私は、泣いてなんかいられないんだ。
悔やむ暇があったら、次にあんなことをしないように考えなければいけない。
そして私の代わりに大きなものを抱えてしまったツンを支えたい」

水を注ぎ、一気に飲み干す。
そしてもう一度注ぐと、
ソファーに改めて座った。

川 ゚ -゚)「そしてミセリは、私はもちろん、ツンよりもつらいはずだ。
目の前で自分を守ってゼアフォーが、
そしてビコーズが……。
自分の周りで二人も消えてしまったんだ。
辛くない、わけがない。
だから私なんかが、悲劇のヒロインぶって、
泣いたり、苦しんだりしていたらいけないんだ」

水を注いだグラスに手を伸ばすクー。

しかし掴んだ瞬間にすぐ手を離し、
座りなおした。

川 ゚ -゚)「……もしも、ミセリが許してくれるなら、
私は彼女のそばにもいたいと思う。
何ができるというわけでもなくても、
そばに居れば何かできる時があるかもしれない」

('A`)「クー……」

.

907 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:16:35 ID:E4SpJ5.o0

ただずっとクーの独り言を聞いていたドクオだったが、
辛そうに口を開いた。

('A`)「クー。
おれの父さんが死んだのは、
小学生の時だったんだ」

川 ゚ -゚)?

('A`)「ショボンとはまだ知り合う前だったけど、
ブーンがいてくれて、
そのころはまだツンも家が近かったから、
そばにいてくれた」

川 ゚ -゚)「ドクオ?」

('A`)「おれさ、父さんが死んだとき、
最初、泣かなかったんだ。
なんか実感がなくってさ。
目の前で寝ている父さんがもう起きないってことも、
火葬場で焼かれて、もうその姿を見ることもないってなった時も、
涙は出なかった。
なんとなく、それでも、いつかまた会えるような気がしてたんだ
いや、いつかじゃなくて、明日にでも、
ただいまって言って帰ってきてくれるような気がしてた。
でもさ、なんか、少し経ったときに、急に分かったんだ。
もう会えないってことに。
母さんが頑張ってる姿とか、
学校に行ってまわりが腫れ物に触るみたいに接してきた時に。
急に、わかったんだ。
でもなんか日が経ちすぎてて、泣くことが出来なかった。
体の中が空っぽになって、
穴が出来て、
埋める事なんかできなくて、
それに母さんの手伝いしなきゃとか、
父さんが言ってたことをいろいろ思い出したりして」

川 ゚ -゚)

.

908 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:18:30 ID:E4SpJ5.o0

('A`)「空回りして、
なんとなく友達も少なくなって。
でもさ、隣にブーンがいてくれた。
ツンがこっちを見てた。
そしたらさ、ああ、こいつらの前では頑張らなくてもいいんだって、
弱音を言ってもいいんだって、
なんか、そんなことを思ったら、
おれ、泣いてた。
ブーンは黙って隣にいてくれて、
ツンも黙ってそばにいてくれた」

川 ゚ -゚)「ドクオ……」

('A`)「ごめん、何言ってんのかわからないよな」

川 ゚ -゚)「い、いや……」

('A`)「でさ、何が言いたいかっていうと、
クーもさ、一人じゃないと思うんだ。
確かにツンも責任とか感じているとおもうけど、
だからと言って、クーよりも私の方が辛いとか言うやつじゃないし。
だから、さ。
ここには、ブーンもいるし、ショボンだっている。
シャキンさんもいい人だし、
ミルナさんやデミタスさんだっていい人だと思う。
……頼りないけど、おれだっている」

川 ゚ -゚)「……ドクオ」

('A`)「辛かったり、
苦しかったりするときは、
言っていいと思うんだ。
むやみやたらには言えないけど、
せめて、おれ達にはさ。
ツンに言えないなら、
おれ達に」

川 ゚ -゚)「ドクオ……別にわたしは」

('A`)「だって、手が震えてる」

.

909 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:19:39 ID:E4SpJ5.o0

川 ゚ -゚)!

膝に置いていた手を後ろに隠すクー。

ドクオはそれを悲しげな眼で見てから、
口を開いた。

('A`)「苦しかったり、辛かったりするときは、
泣いた方が良いと、おれは思うんだ。
泣けば何が変わるわけじゃないし、
泣けない時もあるのは知ってる。
でも、泣きたいときは、泣いていいと思う。
辛いときや苦しいときは、そう言っていいんだと思う。
誰よりは辛くないとか、
誰々に悪いとかじゃなくて、
今、自分が、どう感じているかを、ちゃんと、分かるためにも」

川   )「ドクオ……だが……私は……」

俯くクー。
長い黒髪が顔を隠す

('A`)「おれはさ、多分だけどさ、
一番ビコーズの気持ちが分かってると思う。
同じβテスターで、
βテスト時代もそれほど強かったりしたわけじゃないし、
参加したボス戦はすぐ死んだし。
ただ、おれとビコーズの違いは、
βテストの後、もう一度この世界に来たいって、
戻ってきたいって本気で思ったのと、
リアルの世界に友達がいた事だと思う。
もしビコーズのような状態でこの世界に来てしまって、
自分のせいでやっとできた友達を死なせてしまったら、
自分を許せなくなる。
きっと、ビコーズは、ゼアフォーを死なせてしまった時点で……」

川   )「やめてくれ!
私がいけないんだ!
私が我を忘れてあんなことを言ってしまったから!
だからビコーズはあんなことを選んでしまったんだ!」

.

910 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:20:39 ID:E4SpJ5.o0

声を荒げるクー。
下を向いたままだが首を横に振り、
肩を震わせていた。

('A`)「そうおもうなら、それでもいいと思う。
でも、おれはそう思ってないし、
きっとあそこにいた全員が、そんな風には思ってない」

川   )「私の、わたしのせいで!」

クーの膝の上で握られた量のこぶし。
その上にぼたぼたとしずくが落ちるが、
ドクオは気付かないふりをした。

('A`)「クーがそう思うなら、
それも正解なんだと思う。
でもおれは、おれの思っていることが正しいと思うし、
そうやってクーに接する。
もちろんツンも悪くない。
ミセリだって、悪くない。
……ビコーズが、自分自身で、選んだんだと、
おれは思う。
うん……。そうだな。
きっと、何もなかったら、
おれもビコーズと同じ道を選んだ」

川   )「……?」

('A`)「現実の世界には、友達がいて、
母さんがいて、辛いこともあるけど、
楽しいこともある。
夢だってある。
もしそれが何もなくて、
別の世界を求めてこの世界に来て、
こんな状況になっていて、
自分のせいでやっとできた友達が死んでしまったら……。
ビコーズと同じことをするかもしれない」

川   )「!」。

.

911 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:21:50 ID:E4SpJ5.o0

('A`)「そうだな……。
おれが一番ビコーズの気持ちが分かったはずなのに。
おれが本気で考えていたら、
あいつが何をしでかすか分かったかもしれない。
それは近い立場のおれしか、分からなかったのに。
おれは、止めることが出来なかった。
あいつが死んだのは、おれのせいだな」

川 ゚ -゚)「ち!違う!そんなことはない!」

顔を上げるクー。
涙に濡れた瞳が、悲し気に歪んでいた。

('A`)「ショボンも悔やんでいた。
別行動をしなければって。
ブーンもきっと悔やんでる。
もっと早く動くことが出来たらって。
あの場にいた皆が悔やんでると、
おれは思う」

川 ゚ -゚)「ドクオ……」

('A`)「だから……その……。
一人で、抱え込まなくていいんじゃないかな。
みんなが、いるから」

川 ゚ -゚)「ドクオ……」

('A`)「なんか……ごめん。
もっとうまく、いろいろ言えたらいいのに」

川 ゚ -゚)「いや。
ありがとう。ドクオ。
ドクオは、やさしいな」

('A`)「べ、べべべべべべべべべべべべべえ別に優しくなんか」

顔を赤くして動揺するドクオ。

それを見たクーは、
ほんの少しだけ微笑んだ。

.

912 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:22:52 ID:E4SpJ5.o0




朝。
時計は8時を告げている。

簡単に食事を済ませた後、
今日の行動を決めるために
昨日と同じ位置に座っている六人。

(´・ω・`)「それじゃあ午前中の留守番はブーンで、
一回戻った後、午後はドクオってことで」

( ^ω^)「わかったお」

('A`)「りょうかいー」

(`・ω・´)「いいのか?」

( ^ω^)「レベル上げはまたできるけど、
ここにいるのは今が良いお」

( ゚д゚ )「おれ達がいるよりは、
彼女達も良いだろ」

('A`)「いや、別に二人の事を……」

(´・_ゝ・`)「わかってる。
でも、まだ知り合って間もないからな。
今は気心が知れた相手の方が良いだろってことだ」

(`・ω・´)「二人とも、彼女たちくらいの女には興味ないしな」

( ゚д゚ )「女は熟してからだ」

(´・_ゝ・`)「言っておくが、
二次の少年が至高の存在であるというだけで、
女に興味がないわけではないからな」

.

913 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:24:17 ID:E4SpJ5.o0

( ^ω^)「その発言だけで二人をそういう目で見たことがないのが分かるお」

(´・_ゝ・`)「それは正しい」

('A`)「何を話しているんだこの二人は」

(´・ω・`)「ほんとだね」

(`・ω・´)「お前はこういうネタには弱いよな」

(´・ω・`)「うるさいよ」

('A`)「そういえば下ネタは苦手だよな」

(´・ω・`)「ドクオまで」

( ゚д゚ )「ショボンにも苦手なものがあったのか。
それならばまずは熟女の良さを……」

(´・ω・`)「ミルナさん?」

(´・_ゝ・`)「まずは二次、少年の良さからだろう。常考」

(;´・ω・`)「デミタスさん!?」

( ^ω^)「おっおっお。
そういえば、去年もらったラブレターはどうしたんだお?」

(;´・ω・`)「ブーン!!」

(`・ω・´)「なに!?
聞いてないぞ!」

(;´・ω・`)「話す必要ないでしょ!」

('A`)「学校帰りに時々寄るお店の店員からもらってたあれな」

(;´・ω・`)「ドクオ!?」

.

914 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:25:33 ID:E4SpJ5.o0

(`・ω・´)「なんだ。うちの店以外にも寄るところがあるのか。
浮気だな」

( ^ω^)「そこのお店は夕方のケーキセットが安いんだお」

(`・ω・´)「スイーツかー。
やはり甘いものがないとだめか。
うちの店はパンケーキとアイスクリームくらいしかおいて無いからな」

('A`)「店の雰囲気も落ち着いてて、
自然と客も静かにしてていい感じで」

(`・ω・´)「それはいいな!」

ξ゚听)ξ「何の話をしているのよ」

川 ゚ -゚)「まったくだ」

( ^ω^)「ツン!クー!」

いつの間にか開いていた寝室のドア。

ツンとクーの二人が仁王立ちで六人を見ていた。

ξ゚听)ξ「ミセリの看病は交代にして、
私達も行くわよ」

川 ゚ -゚)「最初にブーンが留守番なら、
まずは私が先だな」

ξ゚听)ξ「なによそれ。
私が行くわよ」

川 ゚ -゚)「……それでもいいが?」

ξ゚听)ξ「なんかその間がムカつく」

現れた二人を見て、
その会話を聞いて呆気にとられる六人。

.

915 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:27:17 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「お、おい」

(´・_ゝ・`)「二人とも?」

川 ゚ -゚)「ん?」

ξ゚听)ξ「何?」

( ゚д゚ )「いや、その」

(´・_ゝ・`)「なんだ、その」

川 ゚ -゚)「どうした?」

ξ゚听)ξ「どうしたのよ」

( ゚д゚ )「あ、いや、その、あれだ」

(´・_ゝ・`)「うん、その、あれだ」

川 ゚ -゚)「?」

ξ゚听)ξ「?」

思わず心配を口にしてしまったミルナとデミタス。
しかし『普段通り』のように返すツンとクーを見て、
その次をつなげずにいた。

( ^ω^)「昨日の帰りみたいな戦い方をするなら、
連れていけないお」

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)!

ブーンの言葉はミルナとデミタスを助けただけではなく、
戦闘をする上での重大な懸念点だったため、
ツンとクーはもちろんのこと全員が息をのんだ。

.

916 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:28:47 ID:E4SpJ5.o0

( ^ω^)「あんな無謀な戦い方をしちゃ、ダメだお。
僕もまだうまく戦っているわけじゃないけど、
昨日は、見ていてい凄く怖かったお」

('A`)「そうだな」

(`・ω・´)「ああ。その通りだ」

川 ゚ -゚)「昨日は、すまなかった」

ξ゚听)ξ「クー」

頭を下げるクー。
そしてゆっくりと顔を上げる。

川 ゚ -゚)「私は、これからもっと冷静になろうと思う。
少なくとも、戦いの場では」

('A`)「クー」

ξ゚听)ξ「私も、ごめんなさい。
昨日は、周りが見えてなかった」

ツンも頭を下げ、すぐに顔を上げて六人を見た。

ξ゚听)ξ「だから、もうあんなことにならないように、
戦い方を知りたい。
どんな時でも、自然に動けるように、
身に付けたい」

( ^ω^)「ツン……」

(`・ω・´)「そこまで戦いに身を投じなくてもいいと思うが……」

二人の真剣な顔とその言葉にうなずくことしかできない面々であったが、
シャキンは軽く、けれど少し困惑しているような表情で口にした。

('A`)「え?」

.

917 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:29:56 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「シャキン?」

(`・ω・´)「いや、基本的には生きるための狩り、
生活のための戦いをするわけだから、
できる時にやればいいし、
調子が悪いときは休めばいい。
折角のチーム、パーティーなんだから」

( ゚д゚ )「あー。
まあ、そうだな」

ξ゚听)ξ「いやなの」

シャキンの言葉にうなずいたミルナ。
その言葉にかぶさるようにツンが言葉を吐き捨てる。

( ^ω^)「ツン?」

ξ゚听)ξ「それじゃ、いや。
生きるために戦う。
レベルを上げる。
お金を稼ぐために戦う。
もちろんそれが一番かもしれないけど、
でも、それだけじゃ、いやなの。
何かの時に、逃げるだけの女になりたくない。
ただ守られるだけじゃなくて、
守ることは出来なくても、
せめて、隣で戦えるようになりたい」

川 ゚ -゚)「私もそうだ。
危険な目に合わないのが理想だが、
何かあった時に、足手まといになりたくない。
守られるだけじゃなく、
ともに戦える者になりたい」

( ^ω^)「ツン……」

('A`)「クー」

.

918 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:31:11 ID:E4SpJ5.o0

(`・ω・´)「なるほどな」

( ゚д゚ )「ふむ……」

(´・_ゝ・`)「言いたいことは分かるが……」

自然と全員の視線がショボンに向かった。

(´・ω・`)「ん?どうしたの?」

(;^ω^)「え、あ、いや」

('A`;)「いや、今のを聞いてどう思ったのかとか」

(´・ω・`)「どうって言われても……」

不思議そうに首を傾げたショボン。

(´・ω・`)「僕のスタンスは変わらないよ。
『元の世界に戻るまで、
皆でこの世界を出来るだけ笑って過ごす』
その為になら、何でもする」

(;゚д゚ )「それはまた」

(;´・_ゝ・`)「なかなか難しそうだな」

二人の言葉に微笑むショボン。

(´・ω・`)「ここにいる皆が無事に生きて帰ることが、
僕のしたいことです。
その為に出来る事なら何でもするし、
皆のしたいことの為に力を貸す」

( ^ω^)「僕も頑張るお」

('A`)「もちろんだな」

ξ゚听)ξ「私も」

.

919 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:32:32 ID:E4SpJ5.o0

川 ゚ -゚)「自分のできるすべてを」

ショボンの言葉に追随する四人。

(´・ω・`)「……ありがとう。
だから、ツンとクーがそれを望むなら、
僕は出来る限り力を貸すよ」

ショボンは少しだけ躊躇した後に、
そのすべてを拭い去るように笑顔で四人に語り掛けた。

そして視線をシャキン達三人に向ける。

(`・ω・´)「おれはおれのやりたいようにやる。
その中にはお前たちと遊ぶってのも含まれる。
遊ぶためには、やるときはやらないとな」

にやりと口の端で笑った後に、
満面の笑みを浮かべるシャキン。

それをみて全員が苦笑いを浮かべた後、
ショボンの視線はミルナとデミタスに向かった。

( ゚д゚ )!?

(´・_ゝ・`)!?

(`・ω・´)「残念ながら、既にこいつの中ではお前たちも『みんな』に含まれるみたいだぞ」

(´・ω・`)「『残念ながら』?」

(;`・ω・´)「ほ、ほら、ミルナ、デミタス、どうするよ」

慌てたように二人を促すシャキンだったが、
ミルナとデミタスは輪をかけて慌てていた。
いや、戸惑っていた。

( ゚д゚ )「いや、いや、おれは、その」

(;´・_ゝ・`)「仲間とか、ほら、まだ数日だし」

.

920 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:34:09 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「僕達の事が嫌いですか?」

( ゚д゚ )「そんなことはないが、その」

(´・_ゝ・`)「おれ達まで守ってもらうとか……」

(´・ω・`)「本当は、ここにいる四人は圏内の安全な場所で、
ただじっとしていてほしかったんです。
でも、残念ながら四人共それをよしとはしない」

悲しそうに四人を見るショボン。
視線の先では四者四様の表情でその視線を受け止めていた。

小さくため息をつくショボンだったが、
すぐに表情を引き締めた。

(´・ω・`)「ただ、
もしかするとこの世界に『安全な場所』なんてないかもしれないと、
今回の事で思いました」

('A`)「圏内とか、モンスターの出ないエリアはあるだろ?」

(´・ω・`)「……所詮システムで決められたことならば、
いつそのシステムが書き換えられてもおかしくはないよ」

ショボンの言葉に全員が顔をこわばらせる。

(`・ω・´)「何故、そう思うんだ?」

(´・ω・`)「今回のトラップ。
滅多にないことだとしても、
今回のように力量が足りないプレイヤーが
間違ってやってしまうことがないとは言い切れない。
そんなイベントがあるなら、
システムが書き換わるイベントがあったとしても、
不思議じゃない」

(`・ω・´)「可能性は?」

.

921 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:35:51 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「現時点では、ゼロではないレベル」

(`・ω・´)「つまり、現時点ではないと思うってことか?」

(´・ω・`)「今のところはね」

(`・ω・´)「『今のところ』は?」

(´・ω・`)「……考えた。
天才、『茅場晶彦』になったつもりで、
色々考えたんだ。
彼の目的を、何をしたいのかを」

(`・ω・´)「……分かったのか?」

(´・ω・`)「どうだろう。
天才の考える事なんてわからないよ。
でも、頑張って想像した。
時間はあったから。
彼のインタビュー記事や、実際会った時の雰囲気を、思い出した。
僕の中の彼の情報を総動員して、考えた。
この、自分が作った世界に、意思を持ったプレイヤーを閉じ込めたら、
何をしてほしいかって考えた」

(`・ω・´)「……おい?」

(´・ω・`)「この世界を生きてほしい。
満喫してほしい。
ゲームの世界じゃなく、
現実の世界として、生きてほしい。
そしてそれと同時に、遊んでほしい。
戦って、攻略して、命のギリギリで、
上の層を目指してほしい……」

うっすらと笑みを浮かべ始めたショボン。
シャキンが立ち上がろうとした瞬間、

( ^ω^)「ショボン!」

.

922 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:37:28 ID:E4SpJ5.o0

ブーンが名前を呼んだ。

(´・ω・`)「え、あ、うん。
ごめん、ちょっとぼっとした」

瞬きをして、
首を横に振るショボン。

そして話をつづけた。

(´・ω・`)「……だから、
もし、プレイヤーがはじまりの街に籠って外に出ようとしなかったら、
或いは、攻略をしようとせず第一層だけをだらだらと過ごしていたら……」

('A`)「街を戦闘エリアにしてしまうってことか?」

(´・ω・`)「可能性はあると思う」

ドクオの言葉に工程をするショボン。

その内容に、全員の顔に緊張が走った。

(´・ω・`)「ま、大丈夫だと思うけどね。
既にこうやってはじまりの街を出て先に進もうとしているプレイヤーがいるわけだし」

ξ゚听)ξ「でも、
システムを変えることが出来るあの男が何をしでかすかは、
分からないってことよね」

(´・ω・`)「……うん」

ξ゚听)ξ「ほんとムカつく。あの男」

川 ゚ -゚)「可能性はあると思うか?」

(´・ω・`)「さっきも言ったけど、ゼロではないレベルだよ。
茅場晶彦の目的がこの世界を楽しむことならば、
プレイヤーは生きていてくれないと意味がない。
この試みは、一回失敗したらもう次はないからね」

.

923 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:39:59 ID:E4SpJ5.o0

(´・_ゝ・`)「二度も三度もこんな事件が起きたら社会が崩壊するな」

(´・ω・`)「そうですね。
VR技術の普及がどうなってしまうか……」

(`・ω・´)「そんなことを今おれ達が気にしてもしょうがない」

シャキンが一回柏手を打ち、
視線を自分に集めた。

(`・ω・´)「つまり、今の状況なら『圏内』や『安全エリア』がちゃんと機能しているが、
茅場晶彦の機嫌を損ねたら、無くなる可能性がある。
その時に備えて、自分を鍛えて置く必要がある。
それを抜きしても、
この世界を生き抜くためには、
自分が戦えることが重要だ。
ってことでいいか?」

(´・ω・`)「……。
うん。僕は、そう思う」

(`・ω・´)「そのうえで、
どう考えているんだ?」

(´・ω・`)「?」

(`・ω・´)「一緒にこの世界にやってきた四人以外、
おれと、ミルナと、デミタスも守るって言ったお前の気持ちだよ」

(´・ω・`)「……。
全員が戦えるのなら、
戦える仲間なら、
多い方が良い」

シャキンとショボンを順に見ていた六人の視線が、
ショボンで止まった。

.

924 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:41:26 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「もちろん、
誰でもいいわけじゃない。
お人よしが良い。
この、今のこの世界で、
自分以外の誰かを気にすることのできる人が良い。
……仲間を、大事に思ってくれる人が良い。
自分の命を大事にしてくれる人が良い。
そして、
……僕達を、仲間だと思ってくれる人……」

( ^ω^)

('A`)

ξ゚听)ξ

川 ゚ -゚)

(`・ω・´)

自分を見る友人と、
兄と慕う血縁者を、
一人ずつ見つめ返すショボン。

そして、彼らを見た。

( ゚д゚ )!

(´・_ゝ・`)

(´・ω・`)「ミルナさん、
デミタスさん、
僕達の仲間になってもらえませんか?」

( ゚д゚ )「……んー」

(´・_ゝ・`)「?」

腕を組み、顔をしかめるミルナ。

.

925 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:43:00 ID:E4SpJ5.o0

(´・_ゝ・`)「ミルナ?」

( ゚д゚ )「なあデミタス、
おまえ、どう思う?」

横を向いたミルナ。
ショボンからは見えない口の端を、
ほんの少しだけ釣り上げて笑みを浮かべる。

(´・_ゝ・`)「……うむ。そうだなあ」

横を向いていたデミタスは、
同じようにショボンからは見えない顔半分で少しだけ呆れつつ、
けれど同じように口の端を上げた。

(´・_ゝ・`)「……うむ」

腕を組み、ショボンを見る二人。
その表情は険しい。

( ゚д゚ )「おれは君が言うようなお人よしではないからな。
デミタスはどうだ?」

(´・_ゝ・`)「そうだな。
おれもお人よしではない」

( ゚д゚ )「自分の命が大事だしな」

(´・_ゝ・`)「うむ。
その通りだ」

じっとショボンを見る二人。

ショボンの表情が、悲しみゆがむ。

( ゚д゚ )「ここに来たのも、
シャキンに救われたからで、
成り行きだしな」

.

926 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:45:19 ID:E4SpJ5.o0

(´・_ゝ・`)「ああ。
あの時シャキンに会わなかったら、
お前等に会うこともなかっただろう」

( ゚д゚ )「なりゆきで一緒に行動していただけだ」

(´・_ゝ・`)「なんとなくだな」

(´・ω・`)「……そう……ですか……」

( ゚д゚ )「ああ。
だから、悲しい」

(´・ω・`)「え?」

ミルナの言葉に一度は俯いたショボンだったが、
すぐに顔を上げた。

その視界に飛び込む、ミルナとデミタスの笑顔。

( ゚д゚ )「なりゆきで行動を共にしたとはいえ、
もう『仲間』のつもりだったんだがな」

(´・ω・`)!

(´・_ゝ・`)「みずくさいな。
確かにまだあって日数はそれほどだが、
濃厚な時間を過ごしたつもりだぞ」

(´・ω・`)「あ、で、でも」

( ゚д゚ )「どうせまたその頭でっかちな脳味噌で、
色々考えたんだろ?」

(´・ω・`)「それは……」

.

927 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:47:49 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「おれもデミタスも、お前を、
お前たちをすげえって思ってる。
仲間になれてうれしいよ。
守ってもらうとかいうのは冗談じゃないが、
ともに戦うというのなら、願ってもない」

(´・ω・`)「ミルナさん……」

(´・_ゝ・`)「お前たちは信用できるからな。
でも、おれ達を信用していいのか?」

(´・ω・`)「今まで一緒に居てそう思いました。
それに、シャキン兄さんに付き合える人ですから」

(´・_ゝ・`)「なるほど」

(`・ω・´)「え?」

シャキンに注がれる全員の視線。

( ゚д゚ )「そうだな。おれとデミタスはシャキンのお守りをしてやろう」

(`・ω・´)「え?」

(´・_ゝ・`)「突然変なことをしでかすからな。
ストッパーやお守りは必要だろ?」

( ゚д゚ )「すーぐ敵に突っ込んでくし」

(´・_ゝ・`)「なんでも触るし」

('A`)「あの宝箱がトラップだったら厳しかった」

ξ゚听)ξ「そういえば、
見るからに怪しいキノコを採取してたわよね」

( ゚д゚ )「金額見ないで買おうとするし」

(´・_ゝ・`)「持てる容量考えないで買い込もうとするし」

( ^ω^)「おっおっお。
結局みんなで分けたおね」

.

928 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:48:51 ID:E4SpJ5.o0

川 ゚ -゚)「しかも、
次の店の方が安かったな」

笑顔でワイワイと話し始める六人。

(`・ω・´)「……解せない」

(´・ω・`)「……ありがと、シャキン」

眉間に皺を寄せて眉をひそめたシャキンの顔は、
いつも以上にショボンによく似ていて、
笑いを誘った。



ひとしきり会話をすると、
自然にショボンに視線が集まり、
波が引くように部屋に静けさが訪れた。

(´・ω・`)「みんな、ありがとう」

笑顔で全員の顔を見るショボン。

それぞれがその笑顔に答える。

そしてショボンの視線は寝室への扉に向かった。

(´・ω・`)「僕は、君の事も仲間だと思ってる。
一緒に、この世界を生きてくれないかな?」

全員の視線が扉に向くと、
静かに扉が開いた。

ミセ*゚ー゚)リ「私は……君たちの仲間にふさわしくないよ」

ξ゚听)ξ「ミセリ!」
川 ゚ -゚)「ミセリ!」

.

929 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:50:58 ID:E4SpJ5.o0

扉を支えにしてフラフラとした足取りで出てくるミセリ。
ツンとクーは両側からその体を支え、
立ち上がったドクオとブーンの座っていたソファーにミセリを座らせた。

ξ゚听)ξ「ミセリ……」

川 ゚ -゚)「大丈夫なのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「ありがとう……。
うん。……大丈夫だよ」

ドクオとデミタスがショボンの顔を見た。

(´・ω・`)「結構最初の段階で、扉が開いたのが見えたから。
僕の気持ちを聞いてもらったんだ。
みんなも良いよね?」

ξ゚听)ξ「ええ」

川 ゚ -゚)「もちろんだ」

ツンとクーが声に出して答え、
他の五人は無言で頷いた。

ミセ*゚ー゚)リ「だめ……だよ……」

俯くミセリ。
日罪に置いた両手は強く握られ、
細かく震えている。

ミセ*゚ー゚)リ「私を守ろうとしてゼアフォーとビコーズが……。
私がいたから……。
私があの二人を誘ったから……」

ミセリの両手に涙が落ちる。

.

930 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:52:15 ID:E4SpJ5.o0

ミセ*゚ー゚)リ「私が行くって言わなかったら……。
もっと二人の思いを考えてたら、
たとえあんな嘘の情報を信じてしまっていても、
私が行くって言わなければ……。
あんな熊に二人が……」

肩を震わせ、涙をこぼし続けるミセリ。

(´・ω・`)「ミセリさん……。
いや、ミセリ。
僕は君が悪いとは思わない。
ミセリは、二人の為に頑張っていたと思うから。
ゼアフォーはともかくビコーズは戦いを怖がっていたように見えた。
でも、それじゃあこの世界で生きていくのは厳しいから、
ミセリは、三人で狩りに出て、
皆で生きていこうって言外で伝えていたと思う。
違うかな?」

ミセ*゚ー゚)リ「ショボン……くん」

顔を上げたミセリ。

涙に濡れた瞳に映るのは、自分に向かって優しげにほほ笑むショボンの顔。

それを見て、ミセリの顔がほんの少しだけ歪んだ。

(´・ω・`)「ミセリ、どうかな」

ミセ*゚ー゚)リ「すごいね……ショボンくんは……。
その通りだよ。
ビコーズは、
戦闘は得意じゃなかった。
アバターの時は良かったけど、
リアルと同じ体型になったら、ダメだったみたい。
でも、それじゃあこの世界では生き抜くことが難しいかもしれないと思った。
それに、彼も三人で動くことを選んだから……。
けど、違ったんだね。
それじゃあ、ダメだったんだ……」

.

931 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:55:27 ID:E4SpJ5.o0

歪んだ笑みを浮かべるミセリ。
瞳には涙が浮かんでいる。

ミセ*゚ー゚)リ「βテストで出会って、
またこの世界で出会いたいって言って。
噂で聞いた体術スキルを使った忍者プレイなんか楽しそうって話して……」

歪んだ笑顔を浮かべたまま涙をこぼす。

ミセ*゚ー゚)リ「それが全部、間違いだった。
私の独りよがりで、二人を……。
私なんかを守るために、二人があんな熊なんかに……」

ξ゚听)ξ「ミセリ……」

川 ゚ -゚)「ミセリ……」

両側からそれぞれにミセリの手に自分の手を重ねたツンとクー。

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

ξ゚听)ξ「『わたしなんか』なんて言わないで。
ミセリは、頑張ったと思う。
わたしには想像もつかないくらい、
戦っていたと思うから」

川 ゚ -゚)「今度は、私達も一緒に戦いたいんだ。
生きるために、
生き残って戻るために」

ミセリの手が更に強く握られる。

ξ;凵G)ξ「ミセリ……」

川 ; -;)「ミセリ……」

ミセ*゚ー゚)リ「二人とも……」

静かに涙を流す二人。

.

932 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 00:57:57 ID:E4SpJ5.o0

ゆっくりと首を動かして二人を見た後に、
ミセリは俯いた。

肩が細かく震えている。

(´・ω・`)「ミセリ」

ミセ   )リ「……なに?ショボンくん」

(´・ω・`)「今日一日、ゆっくり考えてもらえるかな?
僕達とともに戦うということを」

川 ; -;)「ミセリ!」

ξ;凵G)ξ「ミセリ!」

ミセ   )リ「……うん。わかった」

立ち上がるミセリ。

それに合わせてツンとクーも立ち上がるが、
ミセリが二人に向かって首を横に振ると、
ゆっくりと手を離した。

ミセ   )リ「部屋、貸してもらうね」

(´・ω・`)「うん」

俯いたまま寝室に移動するミセリ。

扉がしっかりと閉まったのを見てから、
ドクオが口を開いた。

('A`)「どういうことだ?」

( ゚д゚ )「二人が、
ゼアフォーとビコーズが、
ミセリを守って死んだ?」

.

933 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:00:05 ID:E4SpJ5.o0

(`・ω・´)「精神的に酷い衝撃があると、
記憶が混同することがあると聞いたことはあるが……」

横目でショボンを見るシャキン。

ブーンたち四人の視線もショボンに向かう。

(´・ω・`)「……いくら医者の息子だからって、
そこまで詳しくはないよ」

( ^ω^)「おー。でもおじさんは」

(´・ω・`)「専門は精神科じゃなくて、脳外科。
他にも色々手は出しているみたいだけど。
で、まあ、僕も事例は聞いたことがある。
辛い出来事を忘れてしまったり、
自分以外の人に起きたことだと記憶したり。
今の彼女が本当にその状況かどうかは分からないけど、
そう考えれば辻褄はあうと思う。
ただ……」

(´・_ゝ・`)「どうした?」

(´・ω・`)「いや、……うん。
なんでもない」

(`・ω・´)「ま、そこら辺の考えることはこいつに任せておけばいい。
調べる手段がない以上、調べようがないし、
知識を持っている可能性のあるこいつに考えさせておけばいいさ」

(´・ω・`)「なんかムカつくんだけど」

(`・ω・´)「はっはっは」

笑いながら、
ショボンの頭を右手でガシガシと撫でるシャキン。

それを見て六人の顔に少しだけ笑みが浮かんだ。

.

934 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:02:39 ID:E4SpJ5.o0

ξ゚听)ξ「……仲間になって、くれるかなぁ」
 
ソファーに座ったツンがぽつりと呟く。

( ^ω^)「きっと、なってくれるお」

斜め後ろに立ったブーンが肩に手を置いた。

( ^ω^)「大丈夫だお」

ξ゚听)ξ「……うん」

肩にのせられたその手に、そっと自分の手を重ねるツン。

('A`)「あつい、あつい。
それで、今日はどうする?」

ドクオの言葉で慌てて手を離す二人。

(´・_ゝ・`)「全員で行くか?」

(´・ω・`)「大丈夫だと思うけど、
ミセリを一人にするのは……」

( ゚д゚ )「うむ。そうだな」

川 ゚ -゚)「……すまない、私に残らせてもらえないか?
先程ということが変わって申し訳ないが」

ξ゚听)ξ「あ、私も!」

(´・ω・`)「クー。ツン」

(`・ω・´)「それが良いんじゃないか?ショボン」

(´・ω・`)「そう……だね。
一度お昼には戻るから」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ゚听)ξ「ええ」

二人が頷き、
残りの六人もそれぞれに言葉を交わしながら、
出発の準備を始めた。

.

935 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:04:39 ID:E4SpJ5.o0




その後、悩んでいたミセリをツンとクーが説得し、
彼ら九人は仲間として過ごし始めた。




最初は流されるままに戦闘や生活をしていたミセリであったが、
徐々に活動的になっていった。

ミセ*゚ー゚)リ「ブーンくん!一歩目をもう少し早く!
ツンちゃん!二歩後ろに!」

戦闘時の指示は、ある点においてドクオよりも優れていた。

ミセ*゚ー゚)リ「シャキン!出すぎ!
ミルナさんとデミタスさんはあと一歩ずつ左右に!」

それは連携。

ミセ*゚ー゚)リ「ショボンくん!後ろすぎ!
槍の長さを考えて!
クーちゃんも槍の長さを考えて移動!」

ソロとしての戦い方はドクオの方が優れていたが、
複数戦での連携に優れていた。

ミセ*゚ー゚)リ「ドクオくんはアルルッカバーくんの時と戦い方を変えたんだよね。
でもなんか、今の方が『ハマってる』感じがする」

決まった形ではなく、
どの相手でも連携が取れるように、
戦うことが出来るように練習を重ねていった。

ミセ*゚―゚)リ「ここのモンスターは、
相手の武器を落とさせるスキルを使ってくるから注意だよ」

知識もドクオに引けを取らず、
二人の記憶によって一層を進んだ。

.

936 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:06:44 ID:E4SpJ5.o0

ミセ*゚ー゚)リ「武器を落とされても慌てないで!
下を向いたら襲ってくる!
まずは一歩下がって相手の動きと武器を視界に入れるの!」

敵に合わせたその指示は的確で、
無理をしないその歩みは、
彼らの糧となり、
レベル以上の経験を与えた。





そしてゲームに閉じ込められてからひと月が過ぎた。

ミセ*゚ー゚)リ「!フロアボス戦!?もう!?」

('A`)「『もう』といっても一か月過ぎてるから、
βの時に比べたらかなり遅いけどな。」

ミセ*゚ー゚)リ「あの時と一緒にしないでよ」

('A`)「とりあえず参加者を募る集会をするみたいだ」

ミセ*゚ー゚)リ「……どう思う?」

('A`)「レベル的には、問題ないと思う」

(´・ω・`)「そうなの?」

('A`)「まあ。
参加しようって奴なら、
βテストの時に攻略した時よりはレベルは上がってるだろ」

( ^ω^)「βの時はドクオも参加したんだおね?」

.

937 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:08:10 ID:E4SpJ5.o0

('A`)「最初はな。
今よりレベルは低かったし、すぐ倒されたけど。
そして結局一層のボスを倒したときは、
パーティーに入れなかった。
だから二層の時にリベンジした」

ξ゚听)ξ「入れなかった?」

('A`)「ボス戦は最大参加人数が決まってるんだよ」

川 ゚ -゚)「人数無制限ならのんびり交代で戦えるのにな」

('A`;)「ゲームとしてはなかなかつまらないから。それ」

ミセ*゚ー゚)リ「そんなことどうでもいい!
……まだ早いよ。私は止めた方が良いと思う。
フロアごとのレベル上限なんてないはずだから、
もっと上げてからやれば良いのよ」

('A`)「……とりあえずその集会を見に行こうかと思うんだけど」

ミセ*゚ー゚)リ「まさかドクオくん、やるつもり?」

(´・ω・`)「ドクオ?」

(`・ω・´)「なんだ、βテストのリベンジ狙ってるのか?」

('A`)「い、いや、やらないけどさ。
どんな話し合いをするのか見に行こうかなって」

ミセ*゚ー゚)リ「反対」

(´・ω・`)「僕も」

('A`;)「え?べ、別に聞きに行くくらい」

ミセ*゚ー゚)リ「……私達はβテスターだよ。
今テスターがどんな風に言われてるか知ってるでしょ?」

.

938 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:09:23 ID:E4SpJ5.o0

('A`;)「知ってるよ。
流石におれもそれをばらしたりはしない」

(´・ω・`)「何かの拍子に聞かれたときに、
挙動不審になりそうだから反対。
リスクは避けるべきだよ」

ミセ*゚ー゚)リ「その通り」

(´・_ゝ・`)「あー。墓穴掘りそう」

( ゚д゚ )「想像できるな」

('A`;)「みんなして……。
でも、さ。気にならないか?」

(´・ω・`)「それは……」

ミセ*゚ー゚)リ「気にならないと言えばうそになるけど」

('A`;)「だろ?きになるよな?
でも聞き耳とか鍛えてないから、
そばに行けないと聞けないし」

(´・_ゝ・`)「聞き……」

( ゚д゚ )「……耳?」

(´・ω・`)「あっ」

(`・ω・´)「ふっふっふ。
おれの出番のようだな。
安心しろ、鍛えてあるから」

ミセ*゚ー゚)リ「え?持ってるの?聞き耳スキルを?え?」

ξ゚听)ξ「聞き耳スキルを……」

川 ゚ -゚)「鍛えてる?」

.

939 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:11:23 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「そういえばそうだったよね」

('A`)「おれも鍛えるかな……」

ξ゚听)ξ「え?」

川 ゚ -゚)「え?」

('A`)「え?」

川 ゚ -゚)「その聞き耳ってのは、
聞き耳スキルの事だよな?
人の会話を盗み聞きする」

('A`;)「そういわれると身も蓋もないというか」

川 ゚ -゚)「私たちには知らない使い方があるのかもしれないが……」

ξ゚听)ξ「ドクオが鍛えてるっていうとね……」

('A`;)「なんでだよ!」

(`・ω・´)「……(良かった。おれから話がそれた)」

ミセ*゚ー゚)リ

(`・ω・´)「ん?ミセリ、どうした?」

ミセ*゚ー゚)リ「別に。
鍛えてるんだーと思って」

(`・ω・´)「まあ、ちょろちょろと」

ミセ*゚ー゚)リ「ふーん」

(`・ω・´)「なんだよ」

ミセ*゚ー゚)リ「いや、シャキンはそういうのも覚えてるんだなって思って。
ま、これでドクオくんも参加しなくていいし。
ショボンくん、それならいいよね」

.

940 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:12:33 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「そうだね。
一応一人だと目立つかもだから、
三人か四人くらいで聞けるギリギリで打ち合わせをしているふりでもして」

( ゚д゚ )「近くにフリーの建物でもあればいいんだがな」

('A`)「それならおれもそのカモフラージュ役に」

ミセ*゚ー゚)リ「却下」

(´・ω・`)「不許可」

('A`)「……ハーイ」





集会が行われた直後に、第一層ボス戦は
行われた。
その最初の戦いでボスに勝利した知らせは、
全てのプレイヤーに喜びを与えた。

そして、
その戦いで一人死亡したことは、
大多数のプレイヤーに衝撃をもたらした。

更に、その戦いの場である言葉が生まれた。

('A`)「『ビーター』ね……」

第二層の最初の街で拠点となる部屋を借りた九人は、
一つの部屋に集まっていた。

ミセ*゚ー゚)リ「『ベータテスター』と『チーター』で『ビーター』か。
内容はともかく、うまいこと言うわね」

('A`)「感心している場合じゃないだろ」

.

941 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:13:56 ID:E4SpJ5.o0

ミセ*゚ー゚)リ「あら。私とドクオくんだって、
充分『ビーター』と呼ばれる立場にいると思うけど」

('A`)「だからだよ」

ミセ*゚ー゚)リ「今まで通り隠し通せばいいだけよ。
目立たず、ひっそりとね」

('A`)「……だな」

一つの書類を回し読みしている九人。
最初に読んだショボン、ドクオ、ミセリが会話の口火を切った。

(´・ω・`)「この『キリト』って人は、すごい人だね」

('A`)「ああ。話によればこいつともう一人の女の子で、
ほぼ二人でヒットポイントのラスト一本を削ったみたいだ」

ξ゚听)ξ「女の子?」

('A`)「ああ。しかもレイピア使いって話だよ。
名前は……『アスナ』だったかな。
あ、一応買った情報だから、他言は無用だぞ」

川 ゚ -゚)「買った?」

('A`)「アルゴから買った」

ξ゚听)ξ「アルゴって、あの……」

ミセ*゚ー゚)リ「情報屋のアルゴさん。
あの時、私を助けてくれた人だよ。
そして、店で無料配布している『攻略本』の製作者。
明言はしてないけど、おそらくは『βテスター』」

ξ゚听)ξ「βテスター……。
ビーター……」

.

942 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:14:55 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「βテスターへの風当たりは強いからな。
一部では、βテスターがテスト時の知識を利用して、
自分達だけが生き残るために私益を得ているなんて話まで流れてる」

川 ゚ -゚)「……ひどい話だ」

ミセ*゚ー゚)リ「私たちの知ってる情報なんて、
アルゴさんが配ってる攻略本と大差ないのに」

( ^ω^)「ショボンが前に言っていた通りになったおね」

(´・ω・`)「当たってほしくなかったけど」

(`・ω・´)「今のところβテスターであることを公言しているのは、
この『キリト』だけなのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「多分。
テスター同士では分かっている人たちもいると思うけど。
アルゴさんを含めて明言したのは彼だけだと思う」

(´・ω・`)「アルゴさんもβテスター絡みの情報は渋るしね」

( ^ω^)「お?何か買ったのかお?」

(´・ω・`)「うん。現時点で亡くなった方のうち、
βテスターだった人はどれくらいいるか」

ミセ*゚ー゚)リ「は?」

('A`;)「おまっ。そんなデータ買ったのか!?」

(´・ω・`)「うん」

(´・_ゝ・`)「だが、
βテスターかどうかだなんて、
分かるのか?」

.
944 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:16:34 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「もちろん推測も含まれてるみたいだけどね。
それを差し引いてもなかなかなの対価を渡すことになったよ。
ただ、僕がそれを聞いてから返答までの時間がかなり短かったから、
アルゴさんも気になって調べていたか、
前にも同じ内容を聞いた人がいたんじゃないのかな」

川 ゚ -゚)「結果はどうだったんだ?」

(´・ω・`)「……約、300人」

ミセ*゚ー゚)リ「……そう」

('A`)「そうか……」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「SAOのプレイヤーは最大1万人。
βテストのプレイヤーは1000人。
九割くらいが正式サービスに来たとして、900人。
そしてこの一か月で亡くなった人数は約2000人。
そのうちのβテスターが300人。
元βテスターは、現時点で約3割のプレイヤーが死んでいる。
その他のプレイヤーは2割程度、と、いうことか」

(´・ω・`)「βテスターで正式サービスを始めた人数は、
おそらく7〜800人程度だろうって話だよ」

川 ゚ -゚)「ではβテスターの死亡率は約4割。
その他のプレイヤーは変わらず2割……」

ξ゚听)ξ!

( ゚д゚ )!

(´・_ゝ・`)!

(; ^ω^)「お……」

( ゚д゚ )「4割……」

.

945 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:17:42 ID:E4SpJ5.o0

(´・_ゝ・`)「βテスターの方が死んでるってことか」

(`・ω・´)「正式からのプレイヤーも1700人死んでいる。
だが、率で考えるなら倍の差が出るのは問題だな」

( ^ω^)「どうしてそんな……」

(´・ω・`)「ミセリ、ドクオ、どう思う?」

('A`)「変更点、だろうな」

ミセ*゚ー゚)リ「私もそう思う」

(´・_ゝ・`)「変更点?」

('A`)「ああ」

ミセ*゚ー゚)リ「私達はβの時の知識がある分、
敵に会った時に『こうすれば勝てる』っていう行動をとる。
だから……」

(`・ω・´)「βテストの時よりも強くなっていたり、
行動パターンが違っていたりしたときに、
その『違い』に足をすくわれるってことか」

('A`)「うん。実際、そんなことが何度もあった」

ミセ*゚ー゚)リ「私とドクオくんの場合は複数で行動してたし、
皆がいるから無理はしない戦い方をしてたけど、
βテスターはソロや少数で行動してる人が多いだろうから……」

全員が口を開けず、
重苦しい空気が部屋を包んだ。

そんな中、
ほほ笑んだミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「ドクオくんの場合は体形が変わって戦い方も変えたから、
凄く慎重になってるしね」

.

946 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:18:52 ID:E4SpJ5.o0

('A`)「まあな。リーチとかも変わったし」

ミセ*゚ー゚)リ「初めて会った時は、ほんとにびっくりしたよ」

('A`)「うるさい」

ミセ*゚ー゚)リ「だってひと回り、
ううん、二回りくらい小さく……」

('A`)「そんなに違わねよ!」

ミセ*゚ー゚)リ「えー。
だってβの時には180くらいあったよね」

( ^ω^)「!思い出したお!
最初びっくりしたおね」

(´・ω・`)「初めて見た時はちょっとね。
ドクオはβの時にはどうやって戦ってたの?」

ミセ*゚ー゚)リ「盾持ち片手剣の、
オーソドックスだけど堅実なタイプ。
防御も出来るしもちろん攻撃も出来るし」

( ゚д゚ )「今とは全く違うんだな」

('A`)「まあ……うん……」

川 ゚ -゚)

ξ゚听)ξ「クー?」

川 ゚ -゚)「なんだ?」

ξ゚听)ξ「どうかした?」

川 ゚ -゚)「いや、別に」

ξ゚听)ξ「そう?ならいいけど」

.

947 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:21:24 ID:E4SpJ5.o0

(´・_ゝ・`)「なあショボン」

(´・ω・`)「はい?」

(´・_ゝ・`)「話を蒸し返すようだが、
何故そんなデータを買ったんだ?」

(´・ω・`)「アルゴさんがどれだけβテスターとつながりがあるかを知りたかったので」

('A`)!

ミセ*゚ー゚)リ!

(´・_ゝ・`)「なら、そう聞けばいいんじゃないか?」

(´・ω・`)「現時点でそんなデータを持っていたとしても、
流石に流さない、売らないと思ったので」

(´・_ゝ・`)「ま、そりゃそうか」

ξ゚听)ξ「でも、なんでそんなことを知りたかったのよ」

(´・ω・`)「なんとなく……が、ほとんどだけど、
あえて理由を付けるなら、アルゴさんの情報の正確さの根本を知りたいなって思って」

( ゚д゚ )「『情報の正確さの根本』?」

(´・ω・`)「ええ。
攻略本を始め、アルゴさんの情報に僕らは、
いや、プレイヤーたちはかなり頼ってるから。
一応その情報の集め方を知っておきたいなと思って」

ξ゚听)ξ「それでなんで?」

(`・ω・´)「……つまり、彼女の情報源がどこかを知りたかったと」

(´・ω・`)「うん」

川 ゚ -゚)「そうか。
彼女の情報源がβテスターたちじゃないかと思ったってことか」

クーの言葉に黙って頷いたショボン。

.

948 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:22:50 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「おそらく、彼女の作る攻略本の内容の多くは、
βテスターの人たちが仕入れた情報だと思う。
真偽の確認はアルゴさんがしているだろうけどね。
変更点がある以上、命がけで手にした情報もあったと思う。
それを惜しげもなく無料で提供してくれているんだから、
感謝しかないよ」

全員が神妙にうなずいた。

(´・ω・`)「ただ、今レベルが高い人たちのほとんどはβテスターだと思うよ。
一層の知識云々よりも、
『戦い方』
を知っているってことは、
スタートダッシュでかなり優位に働いたはずだから。
あと、ホルンカまでとその周辺はβと変更ないみたいだから、
あの頃ホルンカにいた人たちは、9割βテスターだと思う」

(`・ω・´)「というよりも、
あの頃あそこにいた奴らでβテスターじゃなかったのは、
ここにいる7人だけだろ」

(´・ω・`)「……その可能性は、高いと思う」

( ^ω^)「それでショボンはあの頃道ですれ違う人達の顔をじっと見てたのかお?」

(´・ω・`)!

('A`)!

ミセ*゚ー゚)リ!

(´・ω・`)「気付いてたんだ」

( ^ω^)「おっおっお。
普段より落ち着きがないなって思ったんだお」

(´・ω・`)「……うん。まあね。
出来るだけ顔を覚えて、
なるべく名前も見るようにしておいたよ」

.

949 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:23:55 ID:E4SpJ5.o0

ξ;゚听)ξ「あんたってほんとに……」

川;゚ -゚)「なんというかほんとに……」

(´・ω・`)「アルゴさんは情報と情報との交換にも応じてくれるから、
そこら辺の記憶も有意義に使わせてもらってるよ」

( ゚д゚ )「はー」

(´・_ゝ・`)「どうせシャキンも覚えてるんだろ?」

(`・ω・´)「おれは基本的に興味ないことは覚えないから」

ミセ*゚ー゚)リ「シャキンはそういうやつよね」

(`・ω・´)「はっはっは」

ミセ*゚ー゚)リ「言っておくけどほめてないから」

(`・ω・´)「眉毛下げるぞこのやろう」

ミセ*゚ー゚)リ「区別できなくなるからやめて」

(´・ω・`)

(´・ω・`)

ミセ*゚ー゚)リ「やめなさい」

川 ゚ -゚)「……フロアボスにも、変更点があったんだよな?」

('A`)「ああ。途中でボスが武器を持ち帰るんだけど、
その武器の種類が変わって、
更にその武器特有のスキルも使ってきたらしい」

.

950 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:24:57 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「その技で一人死亡。
更に一度は撤退も考えられたらしいな」

川 ゚ -゚)「そんな敗戦ムード一色の場を持ち直し、
最後にはとどめを刺したのが、
『キリト』というβテスターだったということか」

(´・_ゝ・`)「さっきショボンも言っていたが、
このキリトってのはホントにすごい奴だな」

ξ゚听)ξ「でもこのキリトって人が、
その『ビーター』って呼ばれてるのよね」

('A`)「……ああ」

川 ゚ -゚)「ビーターか……」

ξ゚听)ξ「ドクオ、あんたもその『ビーター』って呼ばれたりするわけ?」

('A`)「おれがβテスターだって知られたら、
可能性はある」

ξ゚听)ξ「そう……」

( ゚д゚ )「そもそも、なんでまたそんな言葉が……」

(´・ω・`)「そういったことも含めて、
このキリトって人は、
本当に凄い人だと思うよ」

( ゚д゚ )「?どういうことだ?」

.

951 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:26:03 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「今までβテスターは、
『βテスター』ってことで全員が一緒くたにされていました。
でも、『ビーター』って言葉が出来たおかげで、
『βテスター』の中に、ただβテストをプレイしただけの、
『ただのβテスター』と、
βテストをプレイしたことによって、
今この時点で情報を独占して、
他のプレイヤーよりも優位に生きている
『ビーター』の二種類に分けることが出来るようになったんです。
そして、一般プレイヤーにとって、
『ただのβテスター』は自分達とそれほど変わらないけれど、
この世界を自分達よりも優位に生きることのできている『ビーター』は、
憎悪の対象とすることが出来た」

( ゚д゚ )「憎悪の対象にすることが出来たって……」

ミセ*゚ー゚)リ「共通の敵が出来ると、
人って団結するから……」

ξ゚听)ξ「ミセリ?」

(`・ω・´)「つまり、このキリトって奴は、
憎悪の対象となったってことか?」

(´・ω・`)「うん。
しかも、自分で認めた。
おそらくだけど、『ただのβテスター』ではない自分を憎悪の対象にすることによって、
『ただのβテスター』に向けられる憎しみや妬みといった負の感情を、
自分に向けさせたんだと思う」

(;^ω^)「な、何でそんなことを!?」

(´・ω・`)「おそらくは、
『βテスター』を守るために」

ミセ*゚ー゚)リ!

('A`)!

(`・ω・´)「何故?」

.

952 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:27:48 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「心までは分からないよ。
でも、そう考えると彼の行動が理解できた。
もちろん全部僕の推測だけどね。
一度、会ってみたいな。
このキリトって人に」

川 ゚ -゚)「なあショボン、
そういったことをすべて公表すれば、
βテスターに対する迫害もなくなるんじゃないのか?」

( ^ω^)「おっ!そうだお!」

(´・_ゝ・`)「いや、無理だな」

( ゚д゚ )「ああ」

ミセ*゚ー゚)リ「ええ」

(;^ω^)「どうしてだお?」

( ゚д゚ )「公表したところで、
βテスターがβテスターを守るために情報操作していると思われるのが関の山だろう」

(´・_ゝ・`)「ああ。おれもそう思う。
この一か月で生まれて蔓延したβテスターへの不信感は、
結構根深いと思うぞ」

(;^ω^)「おー」

(`・ω・´)「身近にβテスターが居たり、
ある程度の恩恵を受けていたらそんなことは思わないだろうし、
落ち着いて考えればβテスターへの迫害など、
愚かなことだと分かりそうなもんなんだがな」

(´・_ゝ・`)「今のこの世界では、
冷静でいることが一番難しいってことか」

ミセ*゚ー゚)リ「みんな若いしね」

.

953 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:28:57 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「そうだな。
メインの年齢は20前後……いや、
下手したら17〜8くらいか」

(´・_ゝ・`)「若いなー」

ミセ*゚ー゚)リ「若いよねー」

(`・ω・´)「若いなー」

ξ゚听)ξ

川 ゚ -゚)

('A`)

( ^ω^)

(´・ω・`)

ミセ;*゚ー゚)リ「あ、えーと、……」

(´・ω・`)「話を戻すけど、
そういったことを全部ひっくるめてβテスターであることと、
ビーターという汚名をあえて背負ったこの『キリト』って人は、
凄いなって思ったわけだったんだけどね」

('A`)「『キリト』……か……」

ξ゚听)ξ「心当たりないの?
この世界では、っていうか、
ネト充なんだし顔広いでしょ?」

('A`;)「ネト充言うな」

( ^ω^)「βテストの時に知り合った人で心当りはないのかお?」

('A`)「ある……というか、多分あの人だろうな」

.

954 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:31:08 ID:E4SpJ5.o0

川 ゚ -゚)「知り合いなのか?」

('A`)「いや、一方的に知ってるだけ。
数回喋ったこととか一緒に狩りしたことがあるけど、
多分向こうは覚えてないだろうな。
ミセリ、覚えてないか?
ボス戦でLAボーナス取りまくってた片手剣士のこと」

ミセ*゚ー゚)リ「私はボス戦出たことなかったから。
噂には聞いたけど、顔とか特徴とかは知らない。
その彼なの?」

('A`)「強さとか、アルゴに聞いた限りは」

ミセ*゚ー゚)リ「ふーん」

ξ゚听)ξ「なにその『LAボーナス』って」

('A`)「うーんとー」

ミセ*゚ー゚)リ「『ラストアタックボーナス』。
この前倒したオオトカゲ覚えてる?」

ξ゚听)ξ「バートリアース、よね?」

ミセ*゚ー゚)リ「そうそう。
あいつを倒すと、ランダムに木の実とか鱗とかアイテムが手に入る」

川 ゚ -゚)「鱗は結構高く売れたな」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。
で、これをドロップって呼ぶのはもう知ってると思うけど、
このドロップは、バートリアースに攻撃を与えたプレイヤーに、
バートリアースを倒したときにランダムに手にすることが出来る。
クーちゃんには鱗、ツンちゃんには木の実、シャキンには何も無しって感じにね。
ただ、モンスターによっては必ずアイテムを落とす奴が居たりするんだけど、
大概それはモンスターにとどめを刺した奴に与えられるように設定されてたりするの」

.

955 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:32:21 ID:E4SpJ5.o0

ξ゚听)ξ「ラストアタック!
最後の攻撃ってことか!」

ミセ*゚ー゚)リ「そういうこと。
で、フロアボスとかエリアボスとかイベントモンスターなんかには、
そういうLAボーナスが設定されてることが多いし、
LAボーナスのアイテムはレアアイテムなことがほとんどなの。
しかもこのゲームではボスは一回しか出てこないから、
そのアイテムを手にすることが出来るのは一人だけかもしれない。
だから」

川 ゚ -゚)「ゲーマーはそれを狙ってると」

ミセ*゚ー゚)リ「その通り。
私はそういうのあんまり興味ないけど」

全員の視線がドクオに集まる。

('A`)

視線を逸らすドクオを見て、
全員が苦笑した。

(´・ω・`)「なるほどね。
そういうことなのか」

ξ゚听)ξ「あれ?ショボンも知らなかったの?」

(´・ω・`)「知識としてLAボーナスっていうのがあることは知ってたけど、
それを欲しがる理由とかはね。
それはほら、心情的なものだから」

川 ゚ -゚)「レアアイテム……か」

(`・ω・´)「βの時はどんなもんが手に入ったんだ?」

('A`)「んー。
まあ高い防御力やその他効果のある防具とか、
凄く強い武器とかそんな感じ」

.

956 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:33:55 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「どれくらいの『レア』なんだ?」

('A`)「え?」

( ゚д゚ )「いや、世界に一つしかないとか、
他のところでも手にすることが出来るレベルとか」

('A`)「あー。多分、基本的にはサーバーには一つしかないと思う。
でもその能力が『伝説級』かどうかっていうと、別問題かな。
おそらくボスのラストアタックで手に入る武器防具系は、
その層からプラス10層くらいの間使える装備だと思う。
あんまり強いアイテムはゲームバランスを狂わせるだろうし。
あ、でも、武器防具以外だとあるかもしれない。
特殊能力を持ったアイテムとか。
防具も、毒や麻痺を永続無効化アイテムとかならあるかも。
ほら、うちには一人既に『伝説級』アイテムを持ってるのがいるからさ。
可能性としてはそういうのもあるかも」

( ゚д゚ )「ん?あ、あー。そうだな。いるな」

全員の視線がショボンに向く。

ミセ*゚ー゚)リ「あー。なるほど。
あれは確かに『伝説級』アイテムかも。
っていいうか、『反則級』よね」

ミセリが苦笑気味に告げると、
ショボンの眉が更に下がった。




.

957 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:35:00 ID:E4SpJ5.o0




九人で戦いを続けて一か月。

九人で生活を始めて一か月。

ミーティングを重ね、
戦闘を重ね、
移動をし、
拠点を決め、
相談し、
戦い、
戻り、
そしてまた移動する。

その繰り返しが彼らを一つのパーティーにまとめていた。

けれど、
それぞれに、
それぞれの思いを、
重ねていた。






.

958 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:39:17 ID:E4SpJ5.o0

宿屋。
二層になると一部屋にベッドが三つある部屋もあり、
彼らは部屋を三つ借りていた。

ミセ*゚ー゚)リ「攻略ねぇ……」

ベッドの上に寝そべり、
一枚の紙を見ているミセリ。

川 ゚ -゚)「……攻略に参加したいのか?」

ミセリの寝転ぶベッドに腰かけるクー。

ミセ*゚ー゚)リ「しないよー。
クーちゃんは心配しすぎ」

川 ゚ -゚)「む……」

ξ゚听)ξ「途中で出てくる『フィールドボス』とかはもう倒したのよね」

ツンがクーの斜め前、
ミセリの頭近くに立つ。

ミセ*゚ー゚)リ「うん。倒したみたいだね。
これはその情報なんだけど……」

川 ゚ -゚)「どうかしたのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「……人がいっぱい集まると、
派閥とかできちゃうし、
やっぱり争いが起こるんだなって思って」

ξ゚听)ξ「何それ」

ミセ*゚ー゚)リ「うん……。はい、これ」

川 ゚ -゚)「ん?」

ミセリが差し出した紙を手に取るクー。
ツンがその横に座って覗き込んだ。

.

959 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:41:25 ID:E4SpJ5.o0

ミセ*゚ー゚)リ「一層でリーダーをしていた人が亡くなって、
攻略に参加した人の中で、
その人を中心に集まっていた人達が二組に分裂してるみたい。
もともとソロや小パーティーで参加していた人は、
そのままみたいだけど」

川 ゚ -゚)「『志を継いだのはおれ達だ』と、
互いに言い張っているわけか」

ξ゚听)ξ「ふーん」

川 ゚ -゚)「興味なさそうだな」

ξ゚听)ξ「まあいいんじゃない?
慣れあいでやるより競い合った方が」

川 ゚ -゚)「まあ、それはそうだな」

ミセ*゚ー゚)リ「自分を高めるだけならね。
でも、足を引っ張り合うようになったらおしまいだよ」

ξ゚听)ξ「それは……そうね」

川 ゚ -゚)「そうだな。
だが、ゲームをクリアするという目標があるのなら。
それに、生死がかかっているわけだし」

ミセ*゚ー゚)リ「そこまで変なことはしないって思ってるけどね。
いや、ううん。信じたい。かな……でも……」

川 ゚ -゚)「ミセリ……」

ξ゚听)ξ「ミセリ?」

起き上がるミセリ。
ベッドの上ではねるように正座した。

ミセ*゚ー゚)リ「ツンちゃん、クーちゃん、
二人ともできるようになった?」

.

960 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:43:31 ID:E4SpJ5.o0

にっこりとほほ笑む。

川 ゚ -゚)「?」

ξ゚听)ξ「?」

ミセ*゚ー゚)リ「もー。忘れちゃった?」

頬を膨らませた。

ミセ*゚3゚)リ「ほえだよ、ほえ」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ゚听)ξ「はいはい」

川 ゚ 3゚)「これだな」

ξ゚3゚)ξ「これね」

ミセ*゚3゚)リ「ほうほう、ほれよほれ」

川 ゚ 3゚)「何を言っているかさっぱりわからないぞ」

ξ゚3゚)ξ「なんでミセリはちゃんと喋られなくなるのよ」

ミセ*゚3゚)リ「ばはね。ほれがほのはおのひんずいなのよ」

川 ゚ -゚)「だから何を言っているかさっぱりわからないと」

ξ゚3゚)ξ「『ばかね。これがこの顔の真髄なのよ』!でしょ!」

ミセ*゚3゚)リ「へいはい!」

ξ゚3゚)ξ「『正解』!」

川;゚ -゚)「何故分かった!?」

ミセ*゚3゚)リ「ほのはおが友情のあかし!」

.

961 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:44:55 ID:E4SpJ5.o0

川;゚ 3゚)「これが!?」

ξ゚3゚)ξ「これね!」

ミセ*゚3゚)リ「ほう!ほれが!」

三人の会話は、深夜まで続いた。

ミセ*゚3゚)リ「はだはだはまいはよーー!!
(βテスターとして、私は何ができるだろう。
皆の為に、なにをするべきだろう)」





(´・ω・`)「当分はね、大丈夫だと思うんだ。
今のところ彼等には共通の『敵』がいるから」

隣の部屋。
ショボン呟くと、
手渡された資料を読んでいたブーンとドクオが顔を上げた。

('A`)「敵?」

( ^ω^)「フロアボスの事かお?」

(´・ω・`)「いや、違う。
それは討伐対象ではあるけれど、
もっと身近にいるんだ」

不思議そうな顔をしたブーンと、
眉間に皺を寄せたドクオ。

('A`)「……キリト、いや『ビーター』だな?」

(´・ω・`)「うん」

(;^ω^)「お!それは味方じゃないのかお!?
同じゲームをプレイしている、仲間だお!」

.

962 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:46:21 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「そう……だね。
うん。そうなんだけどね。
そういう風に思えない人がいっぱいいるんだよ」

(;^ω^)「おー」

('A`)「それで?
『今のところ』ってのは?」

(´・ω・`)「彼の力は、ボス攻略にとって不可欠なものになると思う。
もちろん一緒に居るアスナさんもね」

('A`)「そうだろうな」

( ^ω^)「おー。それなのに……」

(´・ω・`)「それに気付けば、『敵』ではなくなる。
なんとかして『味方』にしたいだろうね」

(;^ω^)「お?もう味方じゃないのかお?」

(´・ω・`)「彼がプレイヤーを襲うような人にならないと願ってるよ。
ま、それはキリトさんの心を信じるとして、
この場合の『味方』っていうのは自分達の陣営に引き込みたいってこと」

( ^ω^)「陣営に引き込む?」

('A`)「……ギルドか」

(´・ω・`)「そう。
ドクオとミセリの情報によると、
3層からパーティーとは違ったもっと大きな組織、
『ギルド』を組むことが出来るようになる」

('A`)「それはそれで面倒臭い条件があるけどな。
ただ、ギルドを作るメリットはある」

.

963 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:47:33 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「ギルドを作れば、
ギルドを強固なものにするために強いプレイヤーは必要になる。
それに彼はβテスターだ。
βテスト時の情報を、アルゴさんの本が出る前に手にすることが出来る。
今回分裂した二組はおそらく別々にギルドを作る。
キリトさんの強さと情報は、
喉から手が出るほど欲しくなるんじゃないのかな」

('A`)「だけどよ。入るか?
ビーターとか呼ばれて」

(´・ω・`)「どうだろうね。
仲良いプレイヤーが居たりすれば可能性はあるんじゃないかな。
もしくは彼がギルドを作るか……。
うん。そうだね。それが一番かもしれない」

( ^ω^)「ギルドは僕達も作るんだおね?」

(´・ω・`)「うん。そのつもりだよ」

( ^ω^)「おっおっ。クエスト楽しみだお」

('A`)「ブーンはクエスト好きだよな」

( ^ω^)「目標があると楽しいおね」

('A`)「まったく」

(´・ω・`)「(ギルド……。組織……か)」






(´・_ゝ・`)「なるほどな」

二つ上の階の三人部屋にいる三人。
シャキンは備え付けの机で資料を読んでいた。

.

964 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:49:34 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「二大ギルドが出来ちまうってことか」

(`・ω・´)「ああ……」

(´・_ゝ・`)「足の引っ張り合いねぇ」

( ゚д゚ )「そこまでアホなことするか?」

(`・ω・´)「しなけりゃいいんだけどな」

(´・_ゝ・`)「ふむ……」

( ゚д゚ )「読む限りじゃ、やりそうではあるな。
しかし、こんな詳しい資料をよく作ってくれたな。
それこそ高かっただろうな。情報料」

(`・ω・´)「ドクオとミセリのβ時の記憶。
あとショボンの作ったマニュアルの内容。
それに例の部屋で手にするクエストの設定なんかを、
細かく切り売りしているみたいだ。
普通にコルで買うこともあるようだけど」

(´・_ゝ・`)「なるほどな」

( ゚д゚ )「……なあシャキン」

(`・ω・´)「ん?」

( ゚д゚ )「さっき、ギルドを強化するために、
二大ギルドが戦力や情報を取り入れるとか言ってたよな」

(`・ω・´)「ああ」

( ゚д゚ )「ショボンとかドクオとかミセリって、
やばいんじゃないか?」

(´・_ゝ・`)!

(`・ω・´)「スカウトは来るだろうな。
存在を知られれば」

.

965 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:51:09 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「ん?」

(`・ω・´)「おれ達の事を、攻略している奴らは知らない。
知っているのは情報屋くらいだろうな」

(´・_ゝ・`)「情報屋が知っているってことは、
知られる可能性があるってことだろ?」

(`・ω・´)「そこら辺はショボンが上手いこと取引しているだろ。
あと、当分の間この二つのギルドは『攻略』に力を入れるだろうから、
ボス戦に参加しようとしない人たちの情報を積極的に得ようとするのは考えにくい。
つまり、最前線で結果を出すような真似をしなければ目に止まることは無いだろうし、
存在を知られることもないだろうってことだ」

( ゚д゚ )「なるほどな」

(`・ω・´)「ただ、それ以外で目に止まってしまう可能性がないわけじゃない」

(´・_ゝ・`)「?どんなことだ?」

(`・ω・´)「……それに関して、相談がある」

(´・_ゝ・`)?

( ゚д゚ )?

(`・ω・´)「九人でぞろぞろ歩くのは目立つんだ」

( ゚д゚ )「ああ」

(´・_ゝ・`)「確かに」

(`・ω・´)「今のところ、おれ達以外で集団で動いているのはほとんどいない。
攻略の奴らですら、多くて6人くらいだ。
9人とか大人数で街間の移動やフィールドダンジョンを動いている奴らを見たことがない」

( ゚д゚ )「!それで最近二組か三組に分かれて動いているのか」

(`・ω・´)「ああ」

(´・_ゝ・`)「なるほどな」

( ゚д゚ )「それで?」

(`・ω・´)「ああ。まあそれ以外にも理由はあるんだが……」

.

966 ◆dKWWLKB7io:2016/05/09(月) 01:52:03 ID:E4SpJ5.o0





夜は更け、日付が変わる前に明日に向けて全員が眠りついた。

それぞれに、様々な思いを抱えながら。








.
980 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:23:11 ID:Hlo1vhxM0







11.旅立ち








.

981 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:24:52 ID:Hlo1vhxM0

第二層での彼らは、
アルゴからの依頼に翻弄された。



(´・ω・`)「『nezha』……。
確か中国神話神話に出てきた『ナタ』?……『ナタク』?だったような」

('A`)「どうした?」

(´・ω・`)「いや、アルゴさんから言葉の意味に覚えがないか問い合わせが来たんだけどさ。
ドクオ、これに覚えある?
確か封神演義読んだよね?」

('A`)「ん?ああ。えーと……なんだ?ネズハ?」

(´・ω・`)「いやいや。せめてナーザって読んでよ」

('A`)「ナーザ?」

(´・ω・`)「ナタクの方がわかるかな」

('A`)「ナタク!それなら知ってる。で?」

(´・ω・`)「……いやもういいや」

('A`;)「え?あ、いや、アルゴがどうしたって?」

(´・ω・`)「いや、この綴りに見覚えはないかって聞かれてさ」

('A`)「無料で答えてるのか?」

(´・ω・`)「コルはもらってないよ」

('A`)「?」

(´・ω・`)「情報と交換」

('A`;)「そうですか」

(´・ω・`)「なにその感じ」

('A`)「いや、考えてみりゃ、
情報屋のアルゴならショボンを手駒にしたいだろうなって思って」

(´・ω・`)「?」

('A`)「だっておまえ、歩く百科事典だし」
.

982 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:26:57 ID:Hlo1vhxM0




ミセ#*゚ー゚)リ「ちゃんと調査しないでボス戦やるとか馬鹿じゃないの!」

(`・ω・´)「そうなのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「クエスト時の会話とか報酬の内容なんかで、
ボスの特徴とか攻略とかのヒントをえられたりするのよ」

(`・ω・´)「ほー」

ミセ*゚ー゚)リ「ビーターとか呼ばれるくらいならそこらへんもちゃんと操作しろっていうのよ」

(`・ω・´)「ははは」

(;゚д゚ )「会話しながらツートップで突き進むし」

(´・_ゝ・`)「案外いいコンビだな」

ミセ#*゚ー゚)リ「さっさと行くわよ!次のエリアで採取すればいいはずだから!」

(`・ω・´)「はーい」
(;゚д゚ )「はい!」

(´・_ゝ・`)「ふむ」





ξ゚听)ξ「で、なんでこんなに急いでいるわけ?」

( ^ω^)「アルゴさんの仕入れた情報で、
どうやら今攻略してるボス戦に問題があるらしいんだお」

川 ゚ -゚)「それを確かめるためには、
いくつかのクエストをクリアしないといけないらしい。
で、このお使いもその一つってわけだ。
よし、この家だな。行ってくる」

.

983 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:28:04 ID:Hlo1vhxM0

( ^ω^)「お願いだお」

ξ゚听)ξ「ふーん」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「どうせならフィールド組が良かったな」

(;^ω^)「お使いも重要なクエストだお」

ξ゚听)ξ「それは分かるけどさ」

( ^ω^)「お?クー、早かったおね」

川 ゚ -゚)「無事に渡せたが、
追加を依頼された」

ξ゚听)ξ「追加?」

川 ゚ -゚)「ああ。隣の村までいかなければいけない」

ξ゚听)ξ「よっしゃ!フィールド!」

( ^ω^)「おー」

川 ゚ -゚)「ショボンに連絡するから待っていてくれ」




(´・ω・`)「……なるほど。
アルゴさん、二つクリアで、一つ追加です」

(アルゴ)「追加?」

(´・ω・`)「はい。お使いですけど前の村に行かないといけません。
そのままドクオに合流してもらって行ってもらいます」

(アルゴ)「大丈夫なのかイ?」

.

984 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:30:07 ID:Hlo1vhxM0

(´・ω・`)「はい。
あと、これが今までのデータです」

(アルゴ)「助かったよ」

(´・ω・`)「いえ。
僕達もフロアボスを倒してほしい気持ちは同じですから。
これくらいのお手伝いはさせていただきますよ」

(アルゴ)「……君たちは攻略には参加しないのかナ?」

(´・ω・`)「……はい。
あと、手伝う代わりの約束は守ってくださいね」

(アルゴ)「君たちの存在は他言無用だネ」

(´・ω・`)「はい。
よろしくお願いします」

(アルゴ)「これだけの統率力を持ったリーダーと、
攻略メンバーに並ぶレベルと経験を積んだパーティー。
売れる『情報』なんだけどナ」

(´・ω・`)「一度承知していただいた以上、
守ってください。
『情報屋』のアルゴさん」

(アルゴ)「もちろんだよ。
この仕事は信頼が一番だからネ」

(´・ω・`)「これからもよろしくお願いします」

(アルゴ)「こちらこそ、ヨロシク」



('A`)「ブーン達と合流か。『了解』っと。
えーとこっちだな」

.

985 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:32:28 ID:Hlo1vhxM0

ウインドウを閉じると走り出すドクオ。

('A`;)「……ショボンとアルゴの会話とか、
腹の探り合いだろうなー。
この手伝いの報酬も色々交渉してたし」

数分後仲間と合流するまで、
ドクオの冷や汗は流れていた。






第二層攻略戦は、
死者を出さずに勝利することが出来た。

その陰に彼らがいたことは、
アルゴしか知らないことだった。





.

986 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:35:46 ID:Hlo1vhxM0

(´・ω・`)「お疲れさまでした」

二層のボス戦が行われた次の日、
二層で定宿にしていた農家の一部屋に集まった九人。

九人集まれる部屋はそれほど多くないため、
とても重宝していた。

ξ゚听)ξ「ほんとよねー」

( ゚д゚ )「ちょっと大変だったな」

(´・_ゝ・`)「クエストは難しくなかったが、
個数と早くやらなきゃいけないってのがめんどくさかった」

ξ゚听)ξ「ほんとよ。攻略してるやつらも何を急いでいるんだか」

( ^ω^)「おっお。
でも集めた情報が役に立ったらしいから、
頑張ったかいがあったお」

( ゚д゚ )「そうだな。
それは誇ろう」

ξ゚听)ξ「でも私たちの事は内緒にしたんでしょ?
全部アルゴの手柄なのよね」

(´・ω・`)「まあね。
あまり目立ちたくないからそうしてもらった。
それに、これからそれを取引材料にできるし」

ξ゚听)ξ「ギルド強化のためのスカウト合戦か。
確かにそんなのに巻き込まれたくはないわね」

(`・ω・´)「あと、こんな細かい情報を手にすることが出来るのは、
そういったコネを作っているおかげだろ?」

(´・ω・`)「うん。そうだね」

.

987 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:37:44 ID:Hlo1vhxM0

シャキンの手から数枚の資料が、
ブーン、ミルナ、デミタス、ツンの順で渡された。

先に読んでいたミセリ、ドクオ、クーの表情はかなり険しい。

ミセ*゚ー゚)リ「ショボンくん、シャキン、
それ、どう思う?」

('A`)「……マジかよ」

川 ゚ -゚)「スキルやシステムを利用した、
武器の窃盗事件か……」

クーの言葉に顔を見合わせるブーン達未読者の四人。
慌ててそれぞれの手元の資料に視線を走らせた。

(´・ω・`)「よく考えた手口だよね。感心したよ」

('A`)「ショボン……」

(´・ω・`)「だって考え付かないよ?
システムを完全に理解してなきゃこんなの」

ミセ*゚ー゚)リ!

('A`)!

(`・ω・´)「今こんなのを考え付けるのは、
βテスターだけだろうな」

ミセ*゚ー゚)リ「そんな……」

(´・ω・`)「実行犯の彼をそそのかしたこの謎の人が、
かなりシステムを熟知しているのは疑う余地がないよ。
問題は、それを自分でやらないで、他人にやらせたことだね。
しかもかなりうまく誘導したみたいで、
名前はもちろんどんな奴だったかもしっかり覚えていないみたいだ」

川 ゚ -゚)「普通そんな怪しい奴に言われた犯罪を実行するか?」

.

988 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:39:07 ID:Hlo1vhxM0

(´・ω・`)「『フルダイブ不適合者』。
その実行犯になってしまった人は、
フルダイブ不適合らしいね。
距離感がうまくつかめないらしい」

川 ゚ -゚)「そんなことがあるんだな」

(´・ω・`)「所詮『既製品』だからね。
大多数の人にはフィットするけど、
中には合わない人がいる。
もちろん細かい微調整をすれば大丈夫なんだろうけど、
ナーブギアはそういう風にできてないから」

川 ゚ -゚)「だが、だからといって……」

(´・ω・`)「もちろん犯罪は許されることじゃない。
でも、システムに拒絶された自分なら、
代わりにシステムを利用してやるって思っても、
不思議じゃないかもしれない。
特に距離感がつかめないなんて、
この『剣で戦う世界』においては致命的だから」

川 ゚ -゚)「それはそうかもしれんが……」

(´・ω・`)「うん。何度も言うけど、
犯罪は許されることじゃない。
でも彼はちゃんと謝罪して、
その罪を認めて攻略メンバーを中心に色々と償いをするみたいだから、
まあ許しても良いんじゃないかな。
それに、やっぱり問題はその犯罪方法を教えた奴だと思う」

( ゚д゚ )「本当に分からないのか?
会話をしたんなら顔ぐらい見ていそうだが」

(´・ω・`)「分からないみたいです。
顔まで隠れるフードを着ていたみたいで」

(´・_ゝ・`)「そいつ、また新たな犯罪ネタを仕込んでくるかもしれんな」

.

989 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:40:19 ID:Hlo1vhxM0

(;^ω^)「やめてほしいお」

(`・ω・´)「ま、やるだろうな」

ミセ*゚ー゚)リ「やるでしょうね」

('A`;)「そんなに思いつくかな」

(;^ω^)「そんなに思いつかないでほしいお」

ブーンの呟きに同意する面々。
何人かは苦笑しつつも、
眉に皺を寄せたブーンを見た。

( ^ω^)「お!
でもこの『チャクラム』は明るいニュースだおね」

ξ゚听)ξ「明るいニュース?」

( ^ω^)「だって、戻ってくる投擲武器だお!」

ブーンの言葉に何人かが反応し、ショボンを見た。

(´・ω・`)「うん。そうだね。
ちょっと気になるかな。
でも投擲スキルだけで扱えるのかどうか」

川 ゚ -゚)「アルゴに聞かなかったのか?」

(´・ω・`)「聞いたんだけど、はぐらかされたんだよね。
優先順位は低いから追及はしなかったんだけど」

ミセ*゚ー゚)リ「はぐらかされたか……。
なんか使用するには他のスキルとか、
クエストの受注があるのかも」

( ゚д゚ )「特殊な武器だとそういう事もあるのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「そういう可能性もあるかもってこと。
エクストラスキルかもね」

.

990 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:41:19 ID:Hlo1vhxM0

('A`)「あー。かもな」

( ^ω^)「普通では覚えることのできないスキルの事だおね?」

ミセ*゚ー゚)リ「そんな感じそんな感じ。
覚えるのに条件があるスキルね。
今覚えている武器の熟練度が上がると覚えることが出来るとか、
クエストをクリアすると覚えることが出来るとか」

川 ゚ -゚)「それでは投擲スキルを上げていけば……」

ミセ*゚ー゚)リ「んー。可能性は低いかな」

('A`)「そうか?投擲武器だしその可能性もあると思うけど」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。ゼロではない。
でも、この彼がチャクラムを使うようになったのって最近みたいだから、
可能性は低いかなって」

(`・ω・´)「どういう事だ?」

ミセ*゚ー゚)リ「だって、『投擲』みたいな趣味スキル、
鍛えてるのショボンくんくらいだよ」

(`・ω・´)「ん?」

('A`)「ああ。まあそりゃそうだな」

ミセ*゚ー゚)リ「ドクオくんはわかったみたいね」

川 ゚ -゚)「どういうことだ?」

('A`)「いや、『投擲』って武器を投げるからさ、
結構な確率で武器が無くなったり当たった時に破壊されちゃうんだよ。
基本的には使い捨て。
だからいっぱい持ってないと意味がないけど、
容量はあるから無制限に持てるわけじゃない。
落ちてる小石とかを投げても熟練度は上がるはずだけど、
モンスターのHPを削るには武器の投擲じゃないと無理だろうし」

.

991 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:43:07 ID:Hlo1vhxM0

( ゚д゚ )「メインの武器としては役に立たないってことか」

('A`)「そういう事」

ξ゚听)ξ「どれだけ金があっても足りないと」

('A`;)「ま、まあそういうことだな」

川 ゚ -゚)「つまり、ほとんど全員が『投擲』スキルを鍛えていないと」

('A`)「あー。それはわかんないけど」

ミセ*゚ー゚)リ「ボス戦に参加するような人達の中にはいないでしょうね。
『投擲』スキルを鍛える時間があるなら、
他の武器を扱っている方がよっぽど建設的だもの」

(´・_ゝ・`)「ショボンは敵の出現ポイントをおれ達に教えるために小石とか投げてるもんな」

ξ゚听)ξ「それでショボンだけってことね」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。
日常的に使っているのはショボンくんくらいだと思う。
だから、鍛えてるのもね」

川 ゚ -゚)「?
しかし、ショボンもそんなに使ってはないだろう?
基本的には槍で戦っているわけだし」

ミセ*゚ー゚)リ「ショボンくん、
夜中に一人で石投げたりダーツやったりして練習してるから」

川 ゚ -゚)!

('A`)!

(`・ω・´)!

ミセリの言葉で全員がショボンを見た。

.

992 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:44:36 ID:Hlo1vhxM0

( ^ω^)「お、夜練習してるのかお?」

(´・ω・`)「たまにね。
練習しておかないといざという時使えないと思って」

川 ゚ -゚)「(知らなかった)」

('A`)「おまえちゃんと寝てるのか?
マニュアルとかも作ってたし」

(´・ω・`)「寝てるよー。
もともと睡眠時間少ない方だから、
遅寝早起きだけど」。

( ^ω^)「おー。ならいいけど……」

(´・ω・`)「大丈夫、大丈夫。
頑張ってるけど、無理はしてないよ」

('A`)「……その言葉、信じるからな」

(´・ω・`)「疑り深いなー」

ξ゚听)ξ「日頃の行いのせいよ」

(´・ω・`)ショボーン

ミセ*゚ー゚)リ「眉が垂れすぎ」

ミセリの言葉に六人が笑い、
いつの間にか違う話題へと移っていた。





ミセ*゚ー゚)リ「……それで、これからどうする?
三層に狩場を移す?」

.

993 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:45:49 ID:Hlo1vhxM0

一通りボス戦や二層のクエストの話が終わった後、
ミセリがぼそりと呟いた。

(´・ω・`)「いや、当分の間は二層を中心にしよう」

('A`)「え?」

(´・ω・`)「え?そこまで驚く?」

('A`)「いや、だって三層でギルドを作れるクエスト受注できるから」

(´・ω・`)「それは攻略の人たちが落ち着いてからだよ。
とりあえずは彼らがやりつくして、
アルゴさんの作る攻略本が充実してからにする」

('A`)「あー。そういうこと」

(´・ω・`)「そういうこと」

ξ゚听)ξ「別にクエストはやらなくても、
三層をメインにしても良いんじゃないの?」

(´・ω・`)「それも考えたんだけど、
実は二層の攻略が早すぎて、
全部埋まってないんだよね」

( ゚д゚ )「埋まってない?」

(´・_ゝ・`)「なにが?」

('A`)「!あの本か!?」

川 ゚ -゚)「一層の!」

ミセ*゚ー゚)リ「ああ!あの『卑怯級』アイテム!」

ミセリの発言に噴き出すツンとクー。

(´・ω・`)「何それ」

.

994 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:47:08 ID:Hlo1vhxM0

ξ゚听)ξ「いや、この前三人で話していた時に、
あの本とか宿屋が安くなる手帳とかは、
伝説級でも反則級でもなく、卑怯級だよねって話で盛り上がったのよ」

川 ゚ -゚)「私はそんなことないって言ったんだがな」

ミセ*゚ー゚)リ「ちょっとクーちゃん、
自分だけ逃げようったってそうはいかないよ!」

ξ゚听)ξ「そうよクー!
あんただって笑ってたじゃない」

川 ゚ -゚)「笑いはしたがちゃんと止めたぞ」

ミセ*゚ー゚)リ「うわっ。
きたよこの子。
どう思うツンちゃん」

ξ゚听)ξ「まさかここで裏切られるとは!」

ミセ*゚ー゚)リ「ひどいよねー」

川 ゚ -゚)「しらんぷりー」

三人が笑いながら話し始め、
呆然とそれを眺める男六人。

その視線に気付いたミセリが慌てて真面目な顔をした。

ミセ*゚ー゚)リ「なるほど、あのアイテムのクエストとか敵のデータが埋まってないわけね」

(`・ω・´)「なかなかひどいな」

ミセ*゚ー゚)リ「うるさいシャキン」

(´・ω・`)「ま、まあそういう事かな。
クエストをクリアすることによって発生するクエストもあるし、
ちゃんと整理もしたいと思って」

.

995 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:48:26 ID:Hlo1vhxM0

('A`)「駆け足だったし、一回落ち着いて二層を回るのもいいかもな」

( ^ω^)「おっお。わかったお」

ξ゚听)ξ「ま、良いんじゃない」

川 ゚ -゚)「うむ。無理に先に行かなくても良いしな。
門の有る街には誰かが到達すればいけるようになるから、
武器や防具を最新のものにすることはできるわけだし」

(´・ω・`)「そうだね。街には行こうか」

ξ゚听)ξ「これを機に、
私も裁縫スキル上げようかな」

( ^ω^)「僕も鑑定スキル色々試すお!」

川 ゚ -゚)「私もまずは基本のPOTの成功率を上げないとな」

('A`)「おれも聞き耳スキルを……」

ξ゚听)ξ「あんたホントに上げてるんだ」

('A`;)「も、もちろん隠蔽とか索敵もちゃんと頑張るぞ」

それぞれに目標を語りだす五人。

それを眺めている四人。

シャキンが目配せすると、ミルナとデミタスが頷いた。

(`・ω・´)「そこで発表がある」

そしてシャキンが良く通る声話し始めた。

('A`)「シャキンさん?」

(`・ω・´)「おれとミルナとデミタスは、
ここで一度別行動をとる」

.

996 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:49:43 ID:Hlo1vhxM0

('A`)「へ?」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「はあ?」

川 ゚ -゚)「どういう事だ?」

( ゚д゚ )「どういう事もない。一緒に行動するのはここまでだってことだ」

ξ#゚听)ξ「はあ?何言ってるわけ?」

(´・_ゝ・`)「ツンに怒られることじゃないぞ?」

ξ#゚听)ξ「別に怒ってないわよ!ムカついただけ!」

(´・_ゝ・`)「あまりかわらんな」

川 ゚ -゚)「私は怒ってるぞ」

( ゚д゚ )「冷静に見えるが……」

川 ゚ -゚)「抑えているからな。
理由を聞きたい。
ショボンもそうだろ?」

(´・ω・`)「え?あ?うん。そう……だね」

川 ゚ -゚)「ショボン?もしかして知っていたのか?」

(`・ω・´)「いや、話してないぞ」

(´・ω・`)「うん。聞いてない。
でも、なんとなく、そんなことを言いだすかなって思ってたから」

川 ゚ -゚)「ショボン?」

( ^ω^)「そ、それでどうしてなんだお?
僕達の事が嫌になったのかお?」

.

997 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:50:42 ID:Hlo1vhxM0

( ゚д゚ )「そんなわけないだろう」

(´・_ゝ・`)「ああ。お前たちといると楽しいからな」

( ^ω^)「それじゃあなんで……」

(`・ω・´)「おれ達にはおれ達で、
やりたいことがあるんだよ」

ξ゚听)ξ「一緒にやれば良いじゃない」

(`・ω・´)「大人には大人の事情がな」

ξ゚听)ξ「……なによそれ……」

川 ゚ -゚)「それで納得しろというのか?」

(`・ω・´)「別にしなくてもいいさ。
ただ、おれ達が別行動をとるのは決定している」

( ^ω^)「と、時々別行動をとるのじゃダメなのかお!?」

(`・ω・´)「いちいち集まったり分かれたり面倒臭いだろ」

ξ゚听)ξ「……面倒くさくてもいいじゃない」

( ゚д゚ )「ツン?」

ξ゚听)ξ「面倒くさくてもいいじゃない!
一緒に居て、やりたいことがあるときは別行動をする!
それでいいでしょ!」

(´・_ゝ・`)「ツン……」

川 ゚ -゚)「ショボン、ショボンはどう思うんだ?」

(´・ω・`)「……三人がそうしたいなら、
止めることはできないよ」

.

998 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:53:17 ID:Hlo1vhxM0

ξ゚听)ξ「ショボン!?」

川 ゚ -゚)「え」

(;^ω^)「ショボン!本気かお!?」

(´・ω・`)「三人が話し合って決めたことを止めることはできないよ。
それに、きっと今の情勢を考えて、
それが最良の行動だと思ってのことだと思うし」

ξ゚听)ξ「ドクオ!
あんたはどう思うわけ!」

('A`)「お、おれ?
おれは……。
一緒に居た方が、危険は減るかもしれない。
でも情報の共有が出来なくなるわけじゃないし、
ずっと会えなくなるわけでもないし。
三人が考えて出した結論なら、
仕方ないとは思う」

ξ゚听)ξ「いや」

ドクオが喋り終わらないうちに立ち上がったツン。

ξ゚听)ξ「私はいや」

そしてそのまま部屋を出ていく。

川 ゚ -゚)「ツン!」

クーが立ち上がる。

川 ゚ -゚)「……シャキン、ミルナ、デミタス。
出来れば、考え直してほしい」

そしてツンを追って部屋を出て行った。

ミセ*゚ー゚)リ「ツンちゃん……」

.

999 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:54:43 ID:Hlo1vhxM0

(`・ω・´)「うむ……」

(´・_ゝ・`)「ちょっと、はやまったか?」

( ゚д゚ )「そうかもしれないな」

閉じられたドアを見る三人。

( ^ω^)「どうしても、別行動をとるのかお?」

(´・_ゝ・`)「別に二度と会えないわけじゃないだろ」

( ^ω^)「おー。
それはそうだお。
でも……」

('A`)「……いくらアルゴが話さないとしても、
九人で動くパーティー。
更に結成時から九人いるギルド。
しかも九人共前線で動けるときたもんだ。
……目立つよな」

( ^ω^)!

('A`)「そういうことだとおもったけど?」

(`・ω・´)「ま、そうだな」

('A`)「で、ショボンもそれを考えていたわけだ」

(´・ω・`)「完全に別行動することは考えていなかったよ。
ギルドを二つ作るとかは考えたけど」

ミセ*゚ー゚)リ「すぐに三層に行かないのも目立たないためだよね」

(´・ω・`)「うん。
冷静に見て、僕達は強いと思う。
下手したら、攻略している人に引けを取らないくらいに」

.

1000 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 21:56:43 ID:Hlo1vhxM0

('A`)「なんやかんやとサクサク進んでいるしな」

(´・ω・`)「全員の努力に加えて、
ドクオとミセリの知識があるからね。
でも、そろそろ攻略の人たちの目が気になってきた」

( ^ω^)「三人は、それを考えてなのかお?」

(`・ω・´)「それも、考えた。
ただおれ達でちょっとやってみたいことがあるのも本当だぞ」

( ^ω^)「それは何なんだお?」

(`・ω・´)「大人の内緒だ」

(;^ω^)「おー。」

ミセ*゚ー゚)リ「ねえ、すぐ分かれるつもり?」

(`・ω・´)「いや、お前たちが二層を回るなら急ぐこともないだろ。
二層のクエスト回収は付き合わせてもらおうと思う」

ミセ*゚ー゚)リ「そう。良かった」

(`・ω・´)「何がだ?」

ミセ*゚ー゚)リ「だって、一気に四人もいなくなったら、
ツンちゃんとクーちゃんが寂しがるなって思って」

(`・ω・´)「ん?」

('A`)「四人?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。四人」







.

2 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:03:10 ID:Hlo1vhxM0

二日後の夜。

時計はまもなく次の日を告げる。

街灯はないがぼんやりと明るい街を、
ミセリは歩いていた。

ミセ*゚ー゚)リ「うーむ……」

苦虫を噛み潰したような顔をしつつ街の外れまで来たが、
ゆっくりと振り返った。

ミセ*゚ー゚)リ「えっと……。
隠れてるつもりはないよね?
ショボンくん」

暗闇の中から現れるショボン。
暗闇を利用した姿を隠せるギリギリの範囲と位置からではあったが、
横にある建物や障害物に隠れてはいなかった。

(´・ω・`)「うん。着いてきただけ。
僕は隠蔽とか鍛えてないし」

ミセ*゚ー゚)リ「だよねー」

笑顔だが少しイラついているミセリと、
無表情だがのんびりしているショボン。

ミセ*゚ー゚)リ「えっと、止めに来たんだよね?」

お互いの表情が見え、
無理なく会話のできる距離で立ち止まるショボン。

(´・ω・`)「止めても無駄でしょ?」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

(´・ω・`)「パラメーター的には僕より上のはずだし。
本気で走られたら追いつけないよ」

.

3 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:04:39 ID:Hlo1vhxM0

ミセ*゚ー゚)リ「まあ、ねぇ」

(´・ω・`)「ここで立ち止まったのは、
自分より弱い僕を外に連れ出さない為。
あとは、僕と少しは話をしようって思ったから」

ミセ#*゚ー゚)リ

(´・ω・`)「そんな怒らないでよ」

ミセ#*゚ー゚)リ「怒ってませんー」

(´・ω・`)「ならいいけど」

ミセ#*゚ー゚)リ「ほんとにこいつもあいつも……」

(´・ω・`)「ありがとう」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

(´・ω・`)「改めて、言わせてもらうよ。
ありがとう」

ミセ*゚ー゚)リ「……それを言うなら、私の方だよ」

(´・ω・`)「ビコーズの記憶が改ざんされているふり、
辛かったと思うから」

ミセ*゚ー゚)リ「私があの二人を巻き込んだんだから、
その償いは当然だよ。
二人には、背負わせなくていい重荷を持たせてしまった。
本当は私の事なんて忘れて、
ビコーズの事も、私のせいにしてくれればいいんだけど。
あの二人は、そんなことできる子達じゃないから」

暗闇のせいではなく、
ミセリの表情に影が落ちる。

.

4 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:07:26 ID:Hlo1vhxM0

ミセ*゚ー゚)リ「あのままだったら、
ビコーズと私、二人分の重荷を背負ったままだった。
こんなおかしな世界で、そんなものまで背負ったら、
苦しくて苦しくて、おかしくなっちゃうよ。
でも、更に私がおかしくなれば、
しかも私の中のビコーズの記憶が違っていれば、
私だけに、集中できる」

にっこりと微笑むミセリ。
その顔に媚びは無く、
心からの笑みだった。

ミセ*゚ー゚)リ「私を笑顔にするために、
笑顔を見せてくれる。
おかしくなった私を守るために、
笑顔を見せてくれる。
最初はぎこちなかったけどね」

その頃の笑顔を思い出したのか、
小さく噴き出す。

ミセ*゚ー゚)リ「最初は無理矢理でも、
笑顔はいつしか本当の笑顔を呼ぶ。
忘れることは出来なくても、
それ以上の思いがあれば、目標があれば、
ゆっくりと、鎮めることはできると思うから」

(´・ω・`)「ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ「それにね、それは私にも好都合だったの。
きっと一人では、耐えられなかった。
皆がいてくれたから、耐えることが出来た。
皆に私の知っていることを伝えるっていう大義名分が出来たから、
それまではって……、思った。
ツンちゃんとクーちゃんの心を守るっていう大義名分で、
私自身、ビコーズとゼアフォーの事を心の奥底に閉じ込めることが出来た。
……私はずるい。
だから、ショボンくんにありがとうなんて言われると、
逆に苦しくなっちゃう」

.

5 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:09:30 ID:Hlo1vhxM0

(´・ω・`)「ミセリ……」

ミセリが、静かにショボンを見つめた。

ミセ*゚ー゚)リ「ありがとう。ショボンくん」

(´・ω・`)「あの夜ミセリに協力を求められたとき、
本当は反対するべきだと思っていた。
ツンとクーの事だけを考えれば嬉しい申し出だったけど、
君の心がどうなるのか、不安だったから。
でも、この一か月をミセリも楽しむことが出来たのなら、
良かったよ。
嘘をつくのは、やっぱり心苦しいからね」

ミセ*゚ー゚)リ「はい。二つ嘘だよね」

(´・ω・`)「?」

ミセ*゚ー゚)リ「まず一つ目。
ショボンくんは、このことで私も笑顔になるって気付いてた。
ううん。笑顔になるように、色々と誘導をしてた」

(´・ω・`)

ミセ*゚ー゚)リ「そして二つ目。
ショボンくんは、嘘をつくことに躊躇しないし、心苦しくなったりはしないよ。
その嘘が、誰かのための『嘘』ならね。
ま、これは勘だけど」

(´・ω・`)「ミセリ……」

ミセ*゚ー゚)リ「そしてムカつくことに、
それはシャキンも一緒なのよね。
ね、シャキンにも話してあったんでしょ?」

(´・ω・`)「うん。よくわかったね」

.

6 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:10:51 ID:Hlo1vhxM0

ミセ*゚ー゚)リ「これも勘。
でも、そうだろうなって。
その方が、私の為って思いそうだなって」

(´・ω・`)

ミセ*゚ー゚)リ「お、当たったみたいだね。
私がショボンくんを巻き込んだことを気に病まないように、
わざともう一人くらい仲間にするかなって思ったの。
そしたらシャキンかなって」

(´・ω・`)「一つはずれ」

ミセ*゚ー゚)リ「あれ?何か違った?」

(´・ω・`)「シャキンの方から僕に言ってきたんだよ。
『ミセリ、ほんとはちゃんと覚えているんだろ』ってね。
だから僕も気にせず巻き込ませてもらった。
確かにミセリと話した後にシャキンも巻き込むことも考えたけど、
夜遅くだったから、次の日になって落ち着いてからって思ってた。
そうしたら向こうから聞いてきた。渡りに船だったよ」

ミセ*゚ー゚)リ「あの男。
やっぱり要注意人物ね。
あんなフラフラしてるくせして妙に鋭いし。
ショボンくんは腹黒いのが表に出ているからまだ良いとして、
一見ぼやぼやしてるっていうのが」

(´・ω・`)「腹黒いとか」

ミセ*゚ー゚)リ「ごめんごめん。
つい、思ってることを」

(´・ω・`)「ひどいな。
腹黒のミセリに言われるとへこむよ」

ミセ*゚ー゚)リ「お、言うねぇ」

互いにきつい視線を交わした後、
噴き出す二人。

.

7 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:12:02 ID:Hlo1vhxM0

ミセ*゚ー゚)リ「ショボンくんも私に言うようになったね」

(´・ω・`)「前にドクオが言っていたのが分かるよ。
僕達はよく似ているって」

ミセ*゚ー゚)リ「腹黒なところが?」

(´・ω・`)「うん。腹黒なところが」

再度噴き出す二人。

(´・ω・`)「でも、仲間にはなれない?」

ミセ*゚ー゚)リ「えー。私は仲間だと思ってたのに」

(´・ω・`)

ミセ*゚ー゚)リ「……ごめん。うそ。
あ、でも、みんなの事は好きだよ。
ただ、私はみんなのそばに居ちゃダメなだけ」

(´・ω・`)「何故そんなこと」

ミセ*゚ー゚)リ「私のそばにいた二人が、
二人とも死んだんだよ。
私がいたから、あの二人は……」

(´・ω・`)「まだそんなことを!」

ミセ*゚ー゚)リ「事実だよ!
……二人が死んだのは、事実。
そして私があの二人をこのゲームに呼んだのも、
私を守ったのも、
私が気付けなかったのも、
事実なの」

(´・ω・`)「ミセリ……」

.

8 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:13:29 ID:Hlo1vhxM0

ミセ*゚ー゚)リ「皆といて、本当に楽しかった。
本当はもっと早く分かれるつもりだったけど、
迷ってしまうくらい、楽しかった。
でも、それじゃあダメだって思ったの」

(´・ω・`)「これからどうするつもり?」

ミセ*゚ー゚)リ「昨日話したよね?
忍者になるって」

(´・ω・`)「本気だったんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。
三人で、なろうって、誓ったから。
それにね、βテスターとして、
この世界で私が誰かのために出来る事に
つながらないかなって、思ったの」

(´・ω・`)「ん?」

ミセ*゚ー゚)リ「ふふ。
これ以上は内緒。
なにか、出来たらいいなって、
思ったから。
そのために、
頑張ってみようかなって思ったの」

(´・ω・`)「ビーターさんや、
情報屋さんのことが切っ掛け?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん」

(´・ω・`)「何か考えていそうだなとは思ったけど……。
ドクオも、ちょっと挙動不審だし」

ミセ*゚ー゚)リ「ドクオくんもね。
考えていそうだね。
でも、みんなの事が大事だから、
悩んでると思う」

.
9 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:15:58 ID:Hlo1vhxM0

(´・ω・`)「ミセリは、
離れる決意につながったんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「そういうこと。
理解してくれてうれしいな」

(´・ω・`)「理解は、出来るよ。
でも、納得はできない。
一緒に居ても忍者にはなれる」

ミセ*゚ー゚)リ「忍者は孤独なのよ」

(´・ω・`)「ミセリ……」

ミセ*゚ー゚)リ「止めても無駄だよ?」

(´・ω・`)「……うん……。
でも、またいつか、パーティー組めるよね!
ギルドも作るから!
入ってくれるよね!」

ミセ*゚ー゚)リ「!ショボンくん……。
うん。そうだね。
私がちゃんとした忍者になれたら。
そして、誰かを、助けることが出来たら。
入れてもらおうかな」

(´・ω・`)「……その日を楽しみにしてる」

ミセ*゚ー゚)リ「でもさ、そうなる前に、この世界から出たいな」

(´・ω・`)「それは……そうだね」

ミセ*゚ー゚)リ「だよね」

笑いあう二人。

ミセ*゚ー゚)リ「さて……じゃあ行こうかな」

.

10 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:17:19 ID:Hlo1vhxM0

(´・ω・`)「あ、ちょっとまって」

ミセ*゚ー゚)リ「?まだ何かあるの?」

(´・ω・`)「いや、来たみたいだから」

ミセ*゚ー゚)リ「来たって……あ」

ショボンの後ろから走ってくる一つの影。

ξ#゚听)ξ「ミーセーリー!」

ミセ*゚ー゚)リ「ショボンくん!?」

(`・ω・´)「残念。あいつらを呼んだのはおれだ」

ミセ*゚ー゚)リ「シャキン!」

建物の影から現れるシャキン。

ミセ*゚ー゚)リ「ショボンくん?」

(´・ω・`)

一回シャキンを睨んでからショボンに視線を向けるミセリ。

その視線を受けてニッコリと笑顔を見せたショボン。

ミセ*゚ー゚)リ「はぁ……」

ミセリが溜息をつくとほぼ同時に、
ショボンの横にツンとクーが立った。
その後ろにはブーン達四人もいる。

ξ゚听)ξ「ミセリ!」

ミセ*゚ー゚)リ「ごめんツンちゃん!
でも昨日みたいに反対されるとなかなか離れられないかなって思って」

.

11 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:18:47 ID:Hlo1vhxM0

ξ゚听)ξ「もう反対なんてしないわよ……」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

川 ゚ -゚)「ミセリがやりたいことを止めるのは、
私達のわがままだ」

俯いたツンの代わりにクーが口を開く。

川 ゚ -゚)「もちろん心配だし、出来ればそばにいてほしい。
でも、この世界に来たのも自分自身の意思ならば、
この世界で何をするのかも、
自分の意志であるべきなんだ」

ξ゚听)ξ「だから……もう止めたりはしない。
でも……でも……!」

川 ゚ -゚)「離れたって、
一緒のパーティーに居なくたって、
私達は、仲間で、友達だ」

ミセ*゚ー゚)リ!

川 ゚ -゚)「私とツンは、
いや、ここにいる皆そう思っているはずだ。
だから、ミセリ、ちゃんと見送りたかったんだ。
旅立つミセリを」

ミセ*゚ー゚)リ「クーちゃん……」

クーを見つめるミセリ。
そしてそんなミセリにツンが抱きついた。

ミセ*゚ー゚)リ「つ、ツンちゃん!」

ξ゚听)ξ「離れたって、フレンドリストからは消えない!
メッセージだって送れるし、
街やフィールドダンジョンなら居場所だって分かる!
離れたって逃げられると思わないでよ!」

.

12 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:19:59 ID:Hlo1vhxM0

ミセ*゚ー゚)リ「に、逃げるって……」

ξ゚听)ξ「何かあったらすぐ連絡して!
すぐ行く!
私やクーじゃ解決出来なくても!
ブーンがショボンがドクオがシャキンがミルナがデミタスが!
絶対に誰かが力になるから!
ちゃんと連絡して!
っていうか何もなくても連絡して!
三日に一度はメッセージくれなきゃだめ!」

ミセ*゚ー゚)リ「ツンちゃん……」

ξ゚听)ξ「約束してくれなきゃこのまま離さないから!」

ミセ*゚ー゚)リ「反対しないんじゃなかったの?」

ξ゚听)ξ「反対してるわけじゃない!
約束してほしいだけ!」

ミセ*゚ー゚)リ「まったく……。
ありがとう。ツンちゃん。
クーちゃんも」

棒立ちだったミセリがツンの背に右手を回す。
そしてクーを見て左手を差し出した。

川 ゚ -゚)!

ミセ*゚ー゚)リ

ミセリの微笑みに誘われるかのようにゆっくりと近付き、
二人を抱きしめるようにクーが抱きついた。

ミセ*゚ー゚)リ「本当に。ありがと」

クーも抱きしめながら、ミセリが二人に囁いた。



.

13 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:21:23 ID:Hlo1vhxM0




街を出るミセリを見送った八人。

その姿が見えなくなると、
ショボンがゆっくりと後ろを向いた。

それを合図としたかのように、
全員が街の中心方面、
宿泊している宿屋に向かって歩き始めた。

(´・ω・`)「明日の出発はいつもより二時間くらい遅くしようか」

ショボンの提案を何かしらの反応で肯定する七人。

するとツンがショボンの横に来た。

ξ゚听)ξ「ショボン、……ありがとう」

(´・ω・`)「ちゃんと会っておかないと、
お互いに悲しいと思ったから」

ξ゚听)ξ「今日の事もそうだけど、
ミセリが本当はちゃんと覚えてるってことを、
教えてくれたこと。
あの時は気が動転してちゃんとありがとうって言えなかったから」

(´・ω・`)「……うん」

川 ゚ -゚)「私からも、礼を言わせてほしい。
ありがとう。ショボン」

(´・ω・`)「クー」

ショボンを挟んでツンとは反対側を歩くクー。

八人は、ショボンを中心にして固まって歩いていた。

.

14 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:22:17 ID:Hlo1vhxM0

( ^ω^)「また、一緒に探検出来るおね」

( ゚д゚ )「ああ。大丈夫さ」

(´・_ゝ・`)「そうだな。また一緒に遊べるさ」

('A`)「おれも、そう思う」

(`・ω・´)「忍者か……。
ここには職業ってないんだよな?ドクオ」

('A`)「うん。だからミセリはこれからエクストラスキルの『体術』を探すんだと思う」

(´・_ゝ・`)「体術?」

('A`)「うん。
ここは『ソード・アート』っていうだけあって、
剣や武器を使って戦っている。
『剣技(ソードスキル)』を駆使して。
でも、体術スキルを身に付ければ身体能力の補正が働いて、
尚且つ素手での攻撃も出来るっていう噂があったんだ。
βの時に。
噂では、アルゴがどうやってとれるかを知ってるって話なんだけど、
何故かその情報は売らないんだよな……あいつ」

( ゚д゚ )「ほー」

(´・ω・`)「だね。
僕も一回交渉したけどダメだった。
話しぶりからすると知っているのは確か見たいなんだけど」

(`・ω・´)「で、その体術を持っていると『忍者』なのか?」

('A`)「んー。まあそんな感じ。
後は短剣とか爪なんかを武器にして、
できれば投擲も鍛えてそんな恰好をすれば、
『忍者』かなって。
ミセリ達三人は、そんな遊びをしようって言ってた」

.

15 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:23:11 ID:Hlo1vhxM0

(`・ω・´)「なるほどな……んっ?」

ドクオの言葉にとりあえずの納得をしたシャキンだったが、
画面の端に現れたメッセージ到着の知らせを見てウインドウを開いた。

それとほぼ同時に次々にウインドウを開いていく。

(´・ω・`)「みんなどうしたの?」

立ち止まった七人を見て、
不思議そうに歩みを止めたショボン。

全員がそのメッセージを見て驚き、
ショボンを見た。

('A`#)「おい、ショボン」

(´・ω・`)「ん?」

ξ#゚听)ξ「いま、ミセリからメッセージが来たんだけど」

(´・ω・`)「え?そうなの?僕のところには来てないけど」

川#゚ -゚)「だろうな。この内容ならそうだろ」

(´・ω・`)「え?内容って?
っていうか、皆なんか怒ってる?」

(;^ω^)「ショボン、毎日ほとんど眠ってないってホントなのかお?」

(´・ω・`)!

ξ#゚听)ξ「その感じからして、本当みたいね」

(´・ω・`)「え、あ、いや」

( ゚д゚ )「前からおかしいとは思っていたんだ。
スキルの熟練度が早すぎるってな」

.

16 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:30:28 ID:Hlo1vhxM0

(´・_ゝ・`)「ああ。
槍はいつも戦闘時に使ってる程度だけど
投擲や調理なんかのレベルの上がり方がちょっと急だなと」

( ゚д゚ )「何か裏ワザかアイテムでもあるのかと思ったが……」

(´・ω・`)「ないですそんなもの!
もしあったらみんなにちゃんと教えます!」

( ゚д゚ )「うん。お前ならそうするだろうって思った。
最初は危険がないか自分で試すとしても、
試すだけなら結構時間は経ってるからな」

川#゚ -゚)「つまり、ミセリの言ってきた内容が真実だということだな」

(´・ω・`)「あ、その……」

ξ#゚听)ξ「ショボン!?」

('A`#)「ショボン?!」

(;^ω^)「ショボン……ちゃんと言ってほしいお」

(´・ω・`)「ブーン……みんな……」

泣きそうな表情のブーンを見て、
ショボンも同じ様に辛そうな顔をした。

そして自分を見つめる全員の顔を見て、
一度深呼吸をすると頷いた。

(´・ω・`)「……うん。眠れない」

('A`#)「ショボン!なぜそんな大事なことを!」

(´・ω・`)「多分、テストタイプのナーブギアを使っている弊害なんだと思う」

( ^ω^)!

.
17 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:32:04 ID:Hlo1vhxM0

(´・ω・`)「目をつぶって少しすると、
部屋に一人でいても『音』が聞こえてくるんだ」

川 ゚ -゚)「音?」

(´・ω・`)「うん。歩く音、喋る音、
周囲の本当なら届かないような『音』が、
耳に押し寄せてくる」

( ゚д゚ )「それは『聞き耳』スキルみたいなもんなのか?」

(´・ω・`)「おそらく違うと思います。
僕が聞けるのは『音』であって声じゃないので、
何をしゃべっているのかは全くわかりません。
純粋な、『音』です」

('A`)「つまり、うるさくって眠れないってことか」

(´・ω・`)「うん。目を開けているときは大丈夫なんだけどね。
おそらく目を閉じることによって耳の働きが良くなりすぎてしまうんじゃないのかな」

(´・_ゝ・`)「普段良い『目』を封じることによって、
『耳』の性能が上がってしまうってことか?」

(´・ω・`)「おそらくですが」

ξ゚听)ξ「じゃあんた、今まで全然寝てないの?」

(´・ω・`)「さすがにそんなことは無いよ。
最初は2・3日徹夜すると、
気を失うように2時間くらい眠ることが出来た」

川 ゚ ?゚)!

(;^ω^)「い、今はどうなんだお!?」

(´・ω・`)「最近は音に少し慣れてきたのと、
ちょっと力の使い方にも慣れてきたから、
一晩で2時間前後は眠れてるよ」

18 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:33:10 ID:Hlo1vhxM0

('A`)「おまえ……」

(´・_ゝ・`)「それで、起きてた時間にスキルを鍛えていたってことか」

(´・ω・`)「はい。
と言っても調理と投擲ぐらいですけどね。
部屋で練習出来て今有益なのはとりあえずこの二つかなと思ったので」

( ゚д゚ )「あの説明書もその時間を使って作っていたわけか」

(´・ω・`)「ええ。
スキル上げだけじゃなく、データの整理もはかどります」

(´・_ゝ・`)「で、シャキンは知っていたわけだな」

デミタスの言葉で、六人の視線が今度はシャキンに移る。

(`・ω・´)「まあな。
あ、でもショボンから相談されたりしたわけじゃないぞ。
スキルの上がり具合がおかしいから問い詰めたら、げろっただけだ」

( ゚д゚ )「ゲロとか汚い」

(`・ω・´)「うっさい」

('A`)「おれ……気付けなかった」

ξ゚听)ξ「私も……」

川 ゚ -゚)「私もだ……」

( ^ω^)「僕もだお……」

ショボンの近くに立つ四人がうなだれた。

.

19 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:34:39 ID:Hlo1vhxM0

(;´・ω・`)「さ、最初はそれなりに大変だったけど、
今考えるといろいろやることとか整理することがあったから
それはそれなりに良かったと思うんだ。
今はそれに慣れたからもう普通だし、
ちゃんと眠れてるし。
それにきっとこういう事になってなくても僕は起きて色々やってたと思うから、
そんなに気にしないで」

( ゚д゚ )!

(´・_ゝ・`)!

( ゚д゚ )「ショボンが……」

(´・_ゝ・`)「慌ててる!」

(`・ω・´)「お前らのそういう着眼点好きだなー」

(;´・ω・`)「ね、だからそんなに気にしなくていいから!」

('A`)ウツダシノウ

川 - )「私はいったい何を見てきたんだ……」

( ´ω`)「僕はダメダメだお……」

(;´・ω・`)「だ、だからね、みんな!」

ξ#゚听)ξ「うるさい!」

(;´・ω・`)「ツ、ツン!」

ξ#゚听)ξ「何を言おうが、
あんたが大事なことを黙っていたのは事実なのよ!」

(;´・ω・`)「大事なことって、それほどのことじゃ……」

ξ#゚听)ξ「大事な友達がちゃんと眠れないだなんて一大事でしょ!」

.

20 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:36:10 ID:Hlo1vhxM0

(´・ω・`)!

ξ#゚听)ξ「私が眠れないって言ったらどうする!?
ドクオが気持ち悪いって言ったらどうする!?
クーが苦しいって言ったらどうする!?
ブーンが足が痛いって言ったらどうする!?
シャキンが変なもの食べてお腹が痛いって言ったどうする!?
ミルナが目が痛いって言ったらどうする!?
デミタスが手が動きづらいって言ったらどうする!?」

(´・ω・`)「……心配で……なんとかしてそれを……」

ξ゚听)ξ「そしてそれをあんたに黙ってたことを知ったらどうする」

(´・ω・`)「……辛い」

ξ゚听)ξ「私たちの気持ちが少しは分かった?」

(´・ω・`)「……」

ξ#゚听)ξ「まだ『僕の事なんか』なんて思ってるんだったら本気で怒るからね」

(;´・ω・`)「!」

ξ゚听)ξ「あんたが私たちの事を大事に思ってくれているように、
私達はショボンが大事なのよ。
いい加減、ちゃんと認識しなさい」

(´・ω・`)「ツン……」

('A`)「おれ達じゃ頼りないかもしれないけどよ」

(;´・ω・`)「そんなことは!」

川 ゚ ?゚)「確かにナーヴギアからくる不調なら、
私達では役に立てることは無いだろう。
でも、何かしらのフォローはできるかもしれない。
……知らなければ、何もできないんだ」

(´・ω・`)「クー……」

.

21 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:37:10 ID:Hlo1vhxM0

( ^ω^)「考えていたことがあるお」

(´・ω・`)「ブーン?」

( ^ω^)「僕は、道具屋になるお」

('A`)「は?」

ξ゚听)ξ「え?」

( ^ω^)「ツンの作る服やクーの作る薬を売るのに、
良いと思ってたんだお
今鍛えている鑑定スキルも役立つお」

ξ゚听)ξ「あれ、本気だったの!?」

( ^ω^)「鑑定スキルを鍛えながら、
考えていたんだお。
そして、道具屋をしていれば、
色々アイテムを売る人が来ると思うんだお」

川 ゚ -゚)「そりゃあ……まあ」

( ^ω^)「今思ったんだお!
もしかしたら、『耳栓』とかあるかもしれないお!」

('A`)!

ξ゚听)ξ!

(´・ω・`)!

川 ゚ -゚)!

( ^ω^)「こんな風にみんなで考えれば、
もっといい案が見つかるかもしれないんだお!
だからショボン、抱え込むのはやめてほしいお。
話して、ほしいお……」

.

22 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:40:00 ID:Hlo1vhxM0

(´・ω・`)「ブーン……」

自分を見つめる視線に改めて気づき、
ゆっくりと仲間たちを見るショボン。

その視線は怒りを含んでいるものもあるが、
全員が優しくて、自分を思ってくれていることが分かるものだった。

(´・ω・`)「みんな……ごめん……。
そして、……ありがとう」

頭を大きく下げるショボン。

少しの間そのままでいると、
彼の足元に滴が零れ落ちた。








.

23 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:41:04 ID:Hlo1vhxM0



ミセ*゚ー゚)リ「そろそろ良いかな」

一人夜の街道を歩くミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「『し・か・え・し』、ハートっと。
改行して、
『理由は知らないけど、眠れてないことをちゃんと皆に話しなさいよ』っと。
こんな感じかな。
よし、ショボンくんに送信!」

少し大きめに呟きつつ、
ウインドウをタップする。

ミセ*゚ー゚)リ「みんな……大好きだよ」

ウインドウを閉じ、前を向くミセリ。

その表情は少し寂しげだが、
しっかりと前を見ていた。





.

24 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:41:48 ID:Hlo1vhxM0




次の日をミーティングに当てた八人は、
一度はじまりの街に戻り、
あの宿屋で状況の整理とこれからを話し合った。

そして彼らは、
次の日には全員で活動を再開した。



それから十日後、
シャキン達三人が五人と別れ、
独自に行動を始めた。

その別れに涙は無く、
全員が、少し寂しげではあったが、
笑顔だった。





.

25 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:42:48 ID:Hlo1vhxM0

( ^ω^)「またみんなで遊ぶことができるおね……」

ξ゚听)ξ「あたりまえでしょ」

川 ゚ -゚)「それまでは、五人で頑張ろう」

('A`)「そうだな……」

(´・ω・`)「みんな、相談があるんだ」

( ^ω^)「お?なんだお?」

ξ゚听)ξ「まだ何か隠しごと?」

(´・ω・`)「ちがうよ。相談」

川 ゚ -゚)「どんな内容だ?」

(´・ω・`)「ギルドを作るって話はしたよね」

('A`)「ああ。3層でできるクエストをやれば、
ギルドを作ることが出来るようになる」

ξ゚听)ξ「今の『パーティー』より良いのよね?」

(´・ω・`)「設定とかめんどくさいところもあるみたいだけど、
僕たち五人にとってはメリットの方が大きいと思う。
それに、個人で建物を購入すると個人でしか建物を管理できないけど、
ギルドで建物を買えばギルドのメンバーで建物の管理を出来るようになる」

( ^ω^)「お?どういうことだお?」

川 ゚ -゚)「ショボンが例の手帳を使って建物を買うと、
鍵を閉めたり模様替えしたり、
その『建物』に関する設定を決めることが出来るのはショボンだけだが、
ギルドとして購入すれば、ギルドのメンバーで設定を付けることが出来るってことか?」

(´・ω・`)「うん。そんな感じに考えてくれればいいよ」

.

26 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:43:45 ID:Hlo1vhxM0

( ^ω^)「アパートを買えば、
個室を持つこともできるってことかお?」

ξ゚听)ξ「なるほど。
個室のカギの設定もギルドのメンバーが
個別に設定できるようになるわけね」

(´・ω・`)「うん。
今だと宿屋のドアのかぎの設定は借りた人だけだし、
それでいてパーティーメンバーだと開けることが出来るとか、
ちょっと変な設定だからね」

('A`)「ギルドの『ホーム』を作りたいわけだな。
おれは賛成だ」

川 ゚ -゚)「反対するべき点は見当たらないな」

ξ゚听)ξ「そうね。いいんじゃない」

( ^ω^)「ミセリやシャキンたちも一緒に暮らせるような大きな家が良いおね!」

ξ゚听)ξ「ええ。絶対にみんなで」

(´・ω・`)「相談は、まだあるんだ」

('A`)「ん?」

(´・ω・`)「この前も話したけど、僕は、調理スキルを使って店をやりたいと思う」

川 ゚ -゚)「言っていたな」

(´・ω・`)「うん。ギルドとしてのお金を稼ぐこともできるし、
情報を集めるにも色々な人の集まる『店』は良いと思うんだ」

ξ゚听)ξ「聞こうと思ってたんだけど、
あんた、最初からそれを見越して調理スキルを?」

(´・ω・`)「さすがにそこまで見通せないよ」

.

27 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:46:22 ID:Hlo1vhxM0

ξ゚听)ξ「どうだか」

(´・ω・`)「ブーンが道具屋さんをしてくれるなら、
僕はレストランとかカフェで情報とお金を集めるのもありかなって思っただけだよ。
そしてホームで道具屋や店を開ければいいなって思ってるんだ」

ξ゚听)ξ「ま、いいんじゃない。
どうせならみんなでスキル鍛えて、誰でも店番を出来るように……」

川 ゚ -゚)「いや、ツンはやめておいた方が」

('A`)「そうだな。ツンはダメだ」

( ^ω^)「ツンは服を作るのを極めるといいと思うお!」

ξ#゚听)ξ「あんたたち!
この世界ではスキルさえ鍛えれば誰でも出来るんでしょ!」

川 ゚ -゚)「いや、それでもツンは止めておいた方が」

('A`)「おれもクーに賛成だ」

(;^ω^)「おっおっお。
やっぱり向き不向きはあると思うんだお」

ξ#゚听)ξ「むかつくわねー」

(;´・ω・`)「ま、まあ。
とりあえずこの前個人のスキルの方向性は決めたんだから、
それでいいんじゃないかな。
ツンは服飾。
ブーンは鑑定スキルで道具屋。
クーはPOT関係。
ドクオは戦闘系のソロプレイ可能なスキル」

ξ゚听)ξ「ドクオのは気に入らないけど」

.

28 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:47:46 ID:Hlo1vhxM0

('A`)「戦うのもそうだけど、
基本はみんなが進む道を先行して情報収集が出来るようなスキル設定ってことだよ。
素早く敵を見つけたり、敵に気付かれなかったりするようなスキルを鍛える」

ξ゚听)ξ「ま、よしにしてあげる」

('A`)「ありがとーよ」

川 ゚ -゚)「それで、相談とはこれで最後か?」

(´・ω・`)「いや、重要なのがもう一つ」

ξ゚听)ξ「なによ?」

(´・ω・`)「……ギルドには、
良い人が居たら勧誘したいと思ってる」

('A`)!

( ^ω^)!

ξ゚听)ξ「ちょっとびっくりした」

川 ゚ -゚)「あ、ああ……」

('A`)「おれ達を守るのに、人が必要ってことか?」

(´・ω・`)「さすがにそこまで考えてはいないよ。
この二か月で、色々考えたんだ」

( ^ω^)「色んなことがあったおね……」

.

29 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:49:00 ID:Hlo1vhxM0

(´・ω・`)「うん。
……。
もちろん、いまでも最初の気持ちは変わらない。
僕はみんなを絶対にリアルの世界に返す。
それは、変わらない。
でも、シャキンと合流して、
ミセリやミルナさんやデミタスさんに会って、
思ったんだ。
『みんな』で、帰りたいって」

( ^ω^)「ショボン……」

(´・ω・`)「果てしない夢だってのは分かってる。
自分に何かが出来るだなんて思うことが、、
おこがましいことだって事も分かってる。
でも、もう、優しい人たちが消えるところを、
見たくないって思ったんだ」

('A`)「ショボン……」

(´・ω・`)「もちろんこの世界にもクズはいると思う。
嘘のうわさを流すようなカスがいるのを、
僕達は知ってしまった」

川 ゚ -゚)「……ショボン」

(´・ω・`)「だから、そんなクズから、
一人でも助けることが出来ればって……」

ξ 凵@)ξ「いいんじゃない」

( ^ω^)「ツン……」

ξ 凵@)ξ「反対するようなことじゃないでしょ」

(´・ω・`)「ツン……」

川 ゚ -゚)「……良い奴が、良いな」

.

30 ◆dKWWLKB7io:2016/05/27(金) 22:50:07 ID:Hlo1vhxM0

('A`)「『お人よし』だな」

( ^ω^)「だおだお!
一緒に笑える人が良いおね!」

川 ゚ -゚)「仲間を、友達を大事に思えるような」

('A`)「自分の命と同じように、
まわりの命を大事にしてくれるような」

ξ゚听)ξ「……そう、ね。
そういう人が、良いな」

互いの顔を見る五人。

全員が、今は離れた四人を思いつつ、
そしてこれから出会える仲間たちを想像して、
穏やかな笑顔を見せていた。









.
41 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:11:27 ID:uWV/pv.A0





12.ギルド




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42 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:18:19 ID:uWV/pv.A0

おう、久しぶり。
どうした?こんなところで。


ん?
おれ?
前に話しただろ?ギルドに入った経緯は。


経緯は聞いたけど理由は聞いてない?
いや、あれが理由だと思うけど。


まあ、そうだな。
簡単に言えば、こいつらと友達になりたいって思えたからだな。

一緒に泣いてくれたツンとクー。
静かに激怒していたショボン。
一見クールというかやる気がなさそうだけど、
実は熱血なドクオ。
あと、ブーンは、そうだな。
変な意味じゃなく、一緒に居ると、気持ちいいな。
ゆったりできるというか。
ほんわかできるっていうか。


な、そう思うよな。

仲間仲間。

おれはさ、あんまり仲の良い友達っていなかったんだ。
遊び仲間はいっぱいいた。
勉強するよりツレと遊んでたし、
同期と飲みにいって愚痴言って、笑って……。
でも、悩みを相談できるようなツレっていなかったんだなって。
この世界で、一人でいて、思った。

.

43 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:19:20 ID:uWV/pv.A0


なんだよ、そんな顔するなよ。
で、ま、あの五人は、そういう友達になれるかもなって、思ったんだ。
もちろん今まで出会ってきたやつらの中にもそんな奴はいたかもしれない。
ただ、おれはそんな仲間はいらないって思ってたんだろうな。
一人で何でもできるって。
実際そうやってきたし。
けど、それじゃダメだったんだな。おれは。
きっと、ずっと、欲しかったんだ。
笑いあえるだけじゃなく、
互いの苦しみを思って、
泣ける友達や仲間が。

だからそんな顔するなって。
おれがそんなこと考えていたなんて意外だって?


はっはっは。
冗談冗談。
けどさ、正直なところ、嫌になったら抜ければいいって思ってた。



ん?今?
もちろんそんなこと考えてないぞ。
っていうか、結局一度も考えたことないな。
あ。
でも兄者と弟者が仲間になった時に一瞬大丈夫かと思ったけど。


聞いたか!だよな!
そう思うよな!
あれはホントに酷かった!


.

44 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:21:14 ID:uWV/pv.A0


笑った笑った。
こんな感じか。
おれがこのギルドにいる理由は。
ちょっと気恥ずかしいけど、ま、いいか。


最後に?
なんだ?


ラフコフのことか……。
ショボンの事、信じられないか?


そっか。
うん。いや、うん。
そうだな。
うん。

なんだよ。
泣いてなんかないって。


そうだな。
うん。
ショボンは、ショボンなんだよな。
で、それを支えるのがあの四人で、
おれ達だと思ってる。
あいつは、おれたち全員の命を、
自分の命や自分自身の色んなものを賭けて、
守ってた。
最初聞いたときは怒ったけど、
でも、考えてみるとあいつは、
いや、あいつらは最初に会った時から、
あんな感じだったんだ。

ん?
分からないか。
実はおれもよくわからない。

.

45 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:22:50 ID:uWV/pv.A0


怒るなって。


でもさ、別にそこはわからなくても良いって思う。
大事なのは、おれはあいつらが大切で、
そしてもちろんギルドの皆が大切で、
すごく大事だってことだと思うから。
それが分かってれば、
あとはその時その時の最善を尽くせば良いんじゃねえかな。



ん?どうした?
納得できない?


まあ、そうだな……。


でもそれは、自分で見つければいいんじゃないか?

だけど、たぶん分かってると思うぞ。
心の中では。








.

46 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:24:13 ID:uWV/pv.A0

いらっしゃい……と、どうした?



ギルドとあいつら……ねぇ。
おれと兄者とあいつらのことは話したよな。
それでもまだ聞きたいのか?


ふーん。
めんどくさいことを考えてるな。


怒るなって。


はいはい。
じゃあお詫びに話してやろう。
そうだな……一言でいえば、『恩人』になるんだろうな。
あの五人は。


ああ、恩人。
あいつらが居なかったら、
多分おれはもうこの世界に居なかっただろうから。
だから、『恩人』。
けれど、恩人だから仲間になったわけじゃない。
ギルドに入ったわけじゃないぞ。


.

47 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:25:36 ID:uWV/pv.A0

ああ。
もちろん恩を返したいとは思ったけど、
純粋にあいつらと一緒に居たいって思ったんだ。

いつも冷静に物事を判断するのに、
時々驚くほど情に流されるショボン。

好き勝手やっているようで、
実はかなりおれ達の事を考えているドクオ。

おれ達がバカなことをするとすぐ怒るけど、
おれ達がバカにされるようなときは烈火のごとく怒って、
そして泣きそうな顔でおれ達をかばうツン。

いやいや副長をやっているようで、
けれどギルドの事を一番に考え、
おれ達のために行動しているクー。

その中心で、にこやかに笑っているブーン。
普段は聞き役で笑ってばかりなのに、
議論や行動が停滞した時はあいつの一言で動き出すことがよくある。

そんなあいつらと、
一緒に居たいって思えたんだ。
だからあいつらの役に立つために鍛冶屋のスキルを覚えたりもした。
ま、鍛冶屋自体はおれの性格にもあってたから良かったけどな。



……そうか。
正直、いまこのギルドにいるのは
過去に色々あったやつばかりだからな。
そう思っても仕方がない。
あいつらに恩を感じているのは事実だし。
けどな、さっきも言ったけど、
それだけじゃないんだよ。
何よりあいつらがそんなのを望んでないのが分かるし、
多分それだけでギルドに入ったやつはいないんじゃないかな。

.

48 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:28:03 ID:uWV/pv.A0




そうか。
分かった。


兄者なら奥にいる。




ああ、またな。




.

49 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:29:06 ID:uWV/pv.A0

あ、来た。


さっき弟者と話しているのを見た。


なんか真面目な話をしてるっぽかったからな。
こっちには来なきゃいいなと思いつつドアを閉めた。


怒るなって。
で、ギルドとあいつらの事を聞きに来たんだろ?


そりゃま、想像つくさ。


あいつらね……。

笑顔で恐怖政治のギルマスのショボン。

凍て刺すような視線がキュートな副長クーちゃん。

結局ただのゲーマーな特攻隊長ドクオ。

顔は可愛いのに色々残念な伏兵ツン。

笑いながら走る切り札ブーン。

ってところか?


怒るなって。
真面目に言ってるぞ?


だから怒るなって。

.

50 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:30:22 ID:uWV/pv.A0

ショボンの恐怖政治は、
代わりにすべての責任を自分にするためのもんだ。
ラフコフの件で知ってるだろ?

クーはショボンが情に流された時も冷静に物事を判断して進めようとしている。
けどあいつも目の奥では優しくおれ達を見ているな。
どんなに頑張っても非情にはなれないだろうし、
それが自分でも分かっている。

ドクオは好きなようにやってるし、
ショボンに対しても好きなように言ったりしている。
それを見てると、結構好きかっても良いんだってのが分かるんだ。
ショボンから依頼されたり、
ギルドとして守ることも多いけど、
結局のところ自分の命を大事にしていれば良いだけだしな。
ショボンの近いところにいるあいつがそうやっていれば、
「やってもいいんだ」ってわかるってもんだ。


そうそう。
おれも好き勝手やらしてもらうしな。
って、あいかわらずだな。

ツンは……な……。
細剣使いのくせに無茶を言いやがる。
けど、それに見合った努力もしてるから、
力を貸してやりたいって思う。
……本当はもう戦いなんてしたくないんだろうな。
お前だってあいつと戦うのイヤだろ?


ああ。おれも嫌だ。

で、ブーンか……。
あいつは究極の天然だな。
人をやさしい気分にさせる、
天性のものをもってる。
あいつののほほんとした顔を見ていると、
人を憎んだり怒ったりってことが馬鹿らしく思えてくる。
そんなあいつがギルド最強ってのもおもしろいな。

.

51 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:32:47 ID:uWV/pv.A0


ん?いや、全員が本気で一対一で戦ったら、
多分あいつが一番強いぞ。


ああ。フサももちろん強い。
おれ達だって負けてはない。
けど、あいつのアレから逃げられるとは思えない。
だいたいフサは対人戦なら確かに強いけど、
モンスターとの戦いは普通に強いレベルだぞ。
あいつの持ち味は『剣技の種類をギリギリまで悟らせない』だから。
その点ブーンのアレはある意味完全に力押しだからな。
流石にフロアボスとかには無理だろうけど、
低層のイベントボスくらいなら一人で倒せるだろ。


なんだ、しらなかったのか。
でも、見たことはあるよな?


そうか。
限界ギリギリまでやってるのは見たことがないか。


そりゃ、あれをおれ達にやれるような非情な男じゃないからな。
ブーンは。
あれは本当に最後の手だ。
まあ連発されたらおれが倒れるけどよ。


……やっと笑ったな。





そうか。
行くか。
じゃ、またな。


.

52 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:35:01 ID:uWV/pv.A0


いらっしゃいだから!


あ、そうか……。
奥で、待っててほしいから……。




久し振りだから!
とりあえずこれとこれとこれを持っていくといいから!



話?



わかったから……。
ふさがみんなに会えたのは、奇跡だから。
あの時、あの瞬間、あの場所に居なかったら、
ショボンに会えなくて、そしたらきっとまだフサは一人で、
木の下で、果実が落ちるのを待っていたから……。

きっと、今も。

だから、皆には、感謝しかないから。

特にショボンは、あの時のふさにとって、
神様みたいだったから。


ホントだから。
最初声をかけられたときはまた騙されるんじゃないかって不安だったけど、
話して、聞いて、聞いてくれて、笑ってくれて、
そしたら、ふさも笑ってたから。

あの時のショボンの笑顔を、
ふさは忘れることは一生無いから……。

.

53 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:36:10 ID:uWV/pv.A0

でも、よく知って、一緒に戦うことが出来るようになったら、
それだけじゃないことを知ったから。

だから、ふさも、戦うことを選んだから。



ふさも、皆を守りたいって思えたから。

最初は怖かったから。
武器もうまく使えなくて、
戦い方も分からなくて、体に合わなくて……。
でも、刀を使った時に、分かったから。

ふさは、刀で皆を守るって。

そして、みんなのそばに居ようって。



みんな、仲間の為に自分を犠牲にするから。

だから、ふさはみんなを守るために、
誰かと戦える強さを、
出来れば一瞬で戦意を削ぐことのできる力を、
手に入れたくて頑張ってるから。

特にショボンはダメだから。

自分の事を、軽く扱いすぎるから。

クーもドクオもツンもブーンもいるから大丈夫だと思うけど、
ふさも、そのとき叱れるようになりたいって、
思ったから。



.

54 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:37:46 ID:uWV/pv.A0



そ、そんな良いもんじゃないから!

でも、ありがとう……だから……。

あと、夢があるから。
ふさもだれかを、
ふさのように苦しんでいる人を、
助けることが出来る強さを持ちたいって、
思ったから……。




え?もう?

じゃ、じゃああとこれとこれとあれとそれと……。



で、でも!



分かったから……。



じゃあ、また、だから。








.

55 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:40:16 ID:uWV/pv.A0

どうしたもな?


ギルドの事?
変なことを聞きに来たもなね。
ほら、まずは座るといいもな。
ショボンからもらったおいしいお茶を淹れるもなよ。




なるほどもなね……。
でも、モナーに聞いても仕方ないもなよ。
モナーは、モナーもなから。


そうもなね……。
正直モナーは、皆に初めて会った時、
皆に助けられたとき、このまま「モナーとして」死ぬのも良いかと思っていたもな。
それがここに逃げてきた自分に対する罰なのかと思ったもな。


違うもなよ。
ここに来てからは、
うん、色々あったけど、
死を選ぶほどではなかったもな。

でもビーグルと出会って一緒に過ごしているうちに、
リアルの世界に置いてきたものを、
やれることをやらなかったことを、
後悔し始めたもな。
そんな時、ビーグル目当ての奴らに襲われて、
でもまだ戦うことに覚悟が出来ていなかったから、
それならばこのまま……って思ってしまったもな。



.

56 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:43:18 ID:uWV/pv.A0



そんな顔してもリアルの事は話さないもなよ。



ここにいる間は、
仲間や友達の事だけを考えたいもなから。
リアルの事に思いを馳せても、
それはいまは『やりたくてもやれないこと』もな。
そんなことを考えて足を止めるより、
目の前の友達の為に、やれることをやることの方が大事もなから。



やれること?
モナーはがんばっているもなよ。
VIP牧場はモナーの誇りもな。



もちろん戦いも頑張っているもなよ。
何かあった時、みんなを助ける力になりたいもなからね。


.

57 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:46:44 ID:uWV/pv.A0

?また変なことを聞くもなね。

そうもなね。
まずショボンは、怖いもなね。
ショボンにとっての真実は、
『みんなの事が好き、大事』ってことだけみたいに見えるもな。
それ以外の事は、全部嘘みたいに見えることがあるもな。
だから、モナーはショボンを助けたいもなよ。
ショボンが自分の為に笑えるように、
力になりたいもな。

クーは綺麗もなね。
見た目もそうだけど、
その立ち振る舞いが綺麗もな。
自分の思いを出来るだけ抑えて、
皆の事を一番に考えようとしている姿が綺麗もな。

ドクオは面白いもな。
気にしていないようで、周りに気を配って、
好き勝手にやっているようで、
まわりの事を考えて行動しているもな。
ハインとの事もそうもなね。
本当はハインの事が好きで仕方ないのに、
一人の女の為じゃなく、周囲の皆の為に戦うために、
自分の思いを封印しているもな。
本当……おもしろいもなよ。

ツンは可愛いもなね。
ブーンに対する態度もそうもなけど、
こころのままに行動しようと努力しているところが微笑ましいもな。


え?
多分違うもなよ。
もちろん自分の意に沿わない事をしたり
話したりはしていないと思うもなけど、
思うがままに、我儘に、
勝手に行動したりはしていないもな。
彼女は、すごく不器用なんだと思うもな。
ブーンとは良い恋人同士だと思うもなよ。

.

58 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:47:53 ID:uWV/pv.A0

そしてブーンもなね。
ブーンは、不思議な人もな。
最初会った時は正直、
四人の後をついてきているだけの人かと思ったもな。
でも違うもなね。
ショボンとは別の角度で四人を、
いや、VIPを支え、守っているように思えるもな。

あの五人の、
そしてVIPの、
中心なのかもしれないもなね。

これでいいもな?



え?
もう行くもなか?


そうもなか……。



それじゃ、またもな。






.

59 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:49:52 ID:uWV/pv.A0





また……か。
一緒に戦う日は、近いような気がする。
それまでの、さよならだ。

だから、『またもな』。


ビーグルも、そう思うもなね。





.

60 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:51:17 ID:uWV/pv.A0

『こんにちは』


『話?』

『じゃあ、中でしようか』



『突然どうした?』


『なるほど』


『気にしなくていい』


『ショボンはすごい奴だと思う。
自分達ギルドをまとめるだけじゃなく、
中層プレイヤーの育成や強化なんて、
なかなか出来る事じゃない』

『クーもショボンを支えてすごいと思う。
このギルドをまとめて戦うなんて、
なかなか出来る事じゃない』


『いや、おれの指揮なんてまだまだだよ。
ショボンとクー、そして兄者とモナーがいれば、
おれの出る幕なんてないと思うんだけどな』


『そう言うなって。
兄者は普段はアレだけど、
いざとなればしっかりするぞ』


『信じられないのも仕方ないと思うけどな』

.

61 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:53:18 ID:uWV/pv.A0


『と、いうわけで、クーもすごい』

『ドクオも凄い。
あれだけ強くてしかもソロプレイヤー仕様のスキル構成にもかかわらず、
パーティーとしての戦いも淀みがない』

『ふつうレベルの違うやつらと戦う時は相手のレベル関係なしに戦うか、
おいしいところを低レベルに譲って自分がメインで戦うけど、
ドクオは仲間の足りない処だけを補うように戦うことが出来る』

『仲間の呼吸を読むことが上手いのかもしれない』

『そういえば、モララーもうまいな』



『え、いや、うん。ツンは』


『い、いや、そんなことは無い。
ただ、うん。そうだな。
ちょっと、苦手意識はあるかもしれない』


『ちがう!きらいじゃない!』


『その、怒られたら怖いなって思うだけだ』


『笑いたければ笑っていいぞ。
でも、ツンに怒られて平気か?』


『だろ?』


.

62 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:54:22 ID:uWV/pv.A0


『ツンは痛いところをつくことが上手いからな。
でも、それは多分天性の物じゃなくて、
おれ達の事をよく見てよく考えているからだと思う』

『すごいよ、彼女』

『さてブーンか。
ブーンも悩むな』


『いや、つんとはまた違う』


『つかみどころがないというか。
雲のようというか』

『ブーンが五人のカナメなのは疑う余地はないが、
表現しようとすると、言葉にできない』

『そう思わないか?』


『だろう?』

『良い奴だし、努力家だし、いつも笑顔だし』

『表す言葉はいくつもあるけれど、
それだけで済ませちゃいけないような気がする』

『ブーンも、すごいやつだよ』


『もういいのか?』


『そうか』

『またな。元気で。』




.

63 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 22:55:37 ID:uWV/pv.A0







またな。

かならず、また。

そして、また、話したい。





.

64 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 23:03:38 ID:uWV/pv.A0

いらっしゃ……お、おう。


話?


ああ。
わかった。
奥に行ってろ。




待たせたな。


いや、大丈夫だ。
で、話って?


あいつらの事?
なんでまた。
ま、いいけど。


ショボンか。
知り合った時はただの弁当屋だと思ってたのに、
まさかギルドマスターだとは思わなかった。


.

65 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 23:04:43 ID:uWV/pv.A0


んー。
いや、イメージが変わったわけじゃない、な。
ただ、ギルドマスターとしての一面をあとで知った、とういうところか。

おそらくだけど、あいつは『ショボン』という仮面、
自分で作り上げた『ショボンというイメージ』をもとに、
活動しているように見える。

ビーグルの事だって本当に好きだし可愛がっているだろうけど、
あれすら全て周囲からどう見えるかを計算しているように感じる。


驚いたか?
けどな、これはおれがそう思っているってだけで、
それが真実だとは限らないぞ。

それに、たとえ仮面だとしてもショボンが良い奴なのは変わらないし。
おれはあいつを信じてる。
友達だと思ってる。
その仮面すらひっくるめてな。

このギルドに入れてくれて、本当に感謝してる。
フサギコのこともだ。

ショボンの対極にいそうなのはブーンだな。
あいつは天然に見える。
天然で、純粋に、純潔な良い奴。

そばにいるだけでゆったりできるような、
不思議な奴。

とはいっても男だから、
色々あるっぽいけどな。


なんだよ。
それは内緒だ。


.

66 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 23:08:55 ID:uWV/pv.A0

次々、今度はドクオだな。

こいつはな。
最初は暗そうな、おどおどしたゲーム好きに見えた。
ふたを開けたらおかしなゲーム好きだった。
色々とオタクだし。

でも、頼れる奴だし、信用できる。
正直ハインとの事はちゃっちゃとくっつけって思ってるけど、
それだってあいつなりに色々考えているみたいだしな。

クーはなー。
じつはあいつが一番ギルドに囚われている感じだな。


ん?
気付いてないか?

あいつがギルドの用事絡み以外で外に出てるの見たことあるか?


無いだろ。
もちろん必要なものの買い出しなんかは行っているみたいだけど、
遊びや気晴らしで外に出るなんて、ほとんどないんじゃないか。

ツンが気にして誘って外に連れ出しているし、
ショボンも時折一緒に外出したりしているみたいだけど、
ショボンが自由に動けるように、
基本的にはギルド本部に詰めてる。

おれ達を信じてないってわけじゃなく、
おれ達に重荷を背負わせないために、
そしてショボンが背負うものを少しでも軽くするために、
そうしているんだろうな。

頭が下がるよ。



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67 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 23:10:50 ID:uWV/pv.A0

さて、ツンか……。

ツンはなー。
平気でキツイこと言うからな。
それがまた的を射ているから質が悪い。

でも、いつだっておれ達の事は考えているんだよな。
無茶ぶりだって、それ以上に自分が無理しているのがほとんどだ。
だから、こちらもやってやろうって気になる。

ただ、ま、もう少し言い方は優しくしてくれてもいいと思うけどな。



だろ?
そう思うよな!



そうか。
もう帰るか。


あ、いや、おい……。

あの時は、悪かった。
酷いことを言った。


それでも!
おれが酷いことを言ったのは間違いない。
すまなかった。



ああ、うん。
今の状況のことは、聞いてる。
でも、さ……。

.

68 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 23:12:21 ID:uWV/pv.A0

おれは、言葉で人が死ぬってことを、
心が死んでしまっているってことを知っているはずなのに、
酷いことを言ってしまった。
だから、謝りたかったんだ。
自己満足でしかないけど。


そう……か。


そういってもらえると、
ちょっと安心するよ。
ありがとう。


じゃ、また。


ああ。


また、ギルドで行動できるのを、楽しみにしてるよ。

あ、でも、その前に元の世界に帰れた方が良いのか。



そうだな!
ああ!
またな!





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69 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 23:13:24 ID:uWV/pv.A0







またな……。
二人とも……。









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70 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 23:14:35 ID:uWV/pv.A0

ごめんね、つきあわせちゃって。

気にするなゴルァ。

ふふ。ありがと。

それで、どうするんだ?

……。

やっぱり、許せないのか?

うん。やっぱり、こんなの、いやだ。

……。

こんなの、許せない。

そう……か。

ごめんね。つきあわせちゃって。

気にするな。ゴルァ。

でも。

おれは、おれの意志で、お前の気持ちに力を貸すって決めたんだ。

……。

だから、もう、気にするな。

……ありがとう。

けれど、きっと大変な道だ。

うん。

だから、頑張るぞ。しぃ。

うん。ギコくん。


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71 ◆dKWWLKB7io:2016/06/26(日) 23:15:34 ID:uWV/pv.A0






第二十話










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