124 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:38:20 ID:VSwEoiVw0



第十話 迷走




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125 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:40:21 ID:VSwEoiVw0



0.依頼(夜)




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126 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:41:30 ID:VSwEoiVw0

「どうですか?情報収集は」

「芳しくないですね」

「……コルも無限ではないんですがね」

「あのクエストをやっていれば、そこまで困窮もしないのでは?」

「それはそうですが、何事も限度があります。それに、情報を漏らさず私達だけで独占するのも限度がありますから」

「何をおっしゃっているのやら。今まで通り、知られたら殺せばいいだけでしょう?」

「そうもいかない相手もいる。特に、うちのギルマスのお気に入りに知られたら、まだ殺せない」

「ああ。なるほど」

「……一人より複数の方が情報も集めやすいと言ったから、OKを出したんですがね」

「ワカってますよ。…だが、まだ使い道はあるので」

「食費ばかりがかかって仕方がない」

「利用できるものは利用するだけです。……必要ではなくなったら、切ります」

「情など持たない様に」

「もちろんです」

「どうだか」

「ふっ。子供には大人のことなど分からないものです」

「大人の方が、いろいろ縛られやすいけどね」

「道理も知らない子供が」

「媚びへつらうしかできない奴は子供以下だと思うけど」

「やめんか」

「…わかった」

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127 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:43:10 ID:VSwEoiVw0

「…そういえば、すこし面白い情報が」

「ん?」

「目当てのモノとは関係ありませんが、どうやら圏内で決闘ではない殺人が起きたとかどうとか」

「ほう」

「ホント?」

「真偽はこれからですが。もし事実であれば、面白くなりますね」

「……それはそうだね」

「それでは、その件に関した情報収集も含めて、もう少し様子を見ましょうか。
それに、こちらでも目当てのモノに関しての情報収集を始めましょう」

「了解。案を練るよ」

「それでは私も引き続き」

「宜しくお願いします」

「…しかし……」

「どうしました?」

「あなたがそんな喋り方をしているのは、やはり違和感がありますね」

「はっはっは。仕方ないですよ。この会話を聞いている者がいないとも限りませんからね。
例えば、あなたのように【聞き耳スキル】のレベルを上げている者が、すぐそばにいないとも限らない」

「ならば、メッセージでやり取りすればよいだけでは?」

「私は目の前にあることしか信用しないのでね。
報告はもちろん、目の前にいるあなたが嘘を言っているか本当を言っているかをその場で知りたいのですよ」

「……なるほど」

「ではまた」

「ええ。また」

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128 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:43:50 ID:VSwEoiVw0




1.依頼(昼)



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129 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:45:40 ID:VSwEoiVw0

西暦2024年4月某日

ギルドVIPホーム。
執務室としている自室の一室で、ショボンは書類整理をしていた。
目の前のソファーにはクーが座っており、こちらも同じように何枚かの書類とにらめっこをしている。

川 ゚ -゚)「ふぅ。毎月の事だが、この作業は苦手だ」

(´・ω・`)「僕も嫌いだけどね。そうも言ってられないから」

机の上から視線を外し、クーを見るショボン。
その顔には銀縁のスクエアタイプの眼鏡がかけられていた。

川 ゚ -゚)「今日のお気に入りはそれか?」

(´・ω・`)「?」

川 ゚ -゚)「眼鏡だよ。一昨日くらいまでは黒縁をかけていただろ」

(´・ω・`)「ああ。うん。モラが良いの作ってくれたから」

川 ゚ -゚)「……懐かしいな。お前は目が悪かったから」

(´・ω・`)「そうだね。初めてこの世界に来たとき眼鏡が無くて遠くまでよく見えることに驚いたよ」

川 ゚ -゚)「なんだそりゃ」

すっかり書類から目を離したクーが呆れたように呟き、ソファーの背凭れに身体を預ける。

(´・ω・`)「いやマジでマジで。
時々はコンタクトもしてたから眼鏡越しじゃない景色も見てたけど、やっぱり違うよ。
ちょっとだけ戻ったら手術受けようかと思ったくらい」

川 ゚ -゚)「…でも、今はかけているんだな」

(´・ω・`)「なんかね。小さいころからかけてたから、もうすでに体の一部だったんだなと。
戦闘用に作ってもらった命中補正のある眼鏡をかけて、思ったんだ。眼鏡をかけていたほうが、
妙に落ち着く感じがするんだよね」

川 ゚ -゚)「フレーズであったな。眼鏡は顔の一部ですとかなんとか」

(´・ω・`)「あったね」

視線を合わせて笑う二人。

(´・ω・`)「懐かしいな」

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130 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:46:34 ID:VSwEoiVw0

川 ゚ -゚)「同じくだ。……しかし、こっちは懐かしくないな。
まさかこっちの世界まで来てこんな金勘定をすることになるとは」

(´・ω・`)「頼りにしてますよ。会計さん」

川 ゚ -゚)「会長のおおせのままに」

再び吹き出す二人。
しばらく笑った後、クーの表情が真顔に戻る。

川 ゚ -゚)「で?結局この金勘定は何に使うんだ?今回はギルドの預金額だけじゃなく、全物件、
全レアアイテムの売却額まで計算するなんて、いつもやってる月締めの勘定とはレベルが違うだろ」

(´・ω・`)「そうだね。クーには話しておこうか。実は、そろそろ拠点を上に移すのも考えようかなと思っているんだよ」

川 ゚ -゚)「うえ?」

(´・ω・`)「うん。50層の主街区、『アルゲート』にね。この前視察に行ったらまだまだ建物残ってたし」

川 ゚ -゚)「……」

(´・ω・`)「あれ?反対?」

表情を曇らせたクーに対して怪訝な顔をするショボン。

川 ゚ -゚)「理由は?」

(´・ω・`)「理由?」

川 ゚ -゚)「まさか、攻略組に…」

(´・ω・`)「ないない。それはない」

川 ゚ -゚)「まあそれはそうだとは思ったが、だとすると何故だ?特にここでも問題ないだろう」

(´・ω・`)「基本的には、上が攻略されていけば『中層』と呼ばれるエリアも上に上がるから、
請け負ってる仕事の関係上、『中層』に拠点があった方が都合がいいでしょ」

川 ゚ -゚)「…それはそうだな」

(´・ω・`)「それに、もしかするとここじゃあ手狭になるかもしれないからね」

川 ゚ -゚)「ふーん……。なるほどな」

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131 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:47:55 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「とは言っても、まだ未定だよ。
真ん中の50層が中層エリアから外れることもないだろうから、
ホームの移動は最後になるだろうしね。だから慎重にいきたい。
それに、しぃがいるからバーボンハウスは三号店まで増やせるけど、ブーン以外は今のところから動かないかもだし」

川 ゚ -゚)「モナーとクックルは別として、ふさと兄弟は動かなさそうだな。モララーは…どうだろ」

(´・ω・`)「モララーが移動してくれなかったら、今のブーンの店の分が空いちゃうのがもったいない。
かといって今店持ちじゃないメンバーに接客業をできるスキルはもちろん特性のあるメンバーがね。
あてはあるにはあるけど、だからすぐにどうこうじゃないんだよ。
でも各種の打開策が見つかったときか、必要に迫られたときにすぐ動けるように準備をしておこうかと思って」

川 ゚ -゚)「そうだな。増員という点では彼女達の件もあるし……」

(´・ω・`)「そうそう」

川 ゚ -゚)「彼女たちに何かしらの店を任せることは出来ないか?」

(´・ω・`)「一応話はしてあるよ。レベルを上げておいてもらえたら、それもありだね」

川 ゚ -゚)「…うむ。まあ、とりあえず、今の説明で納得しておいてやろう」

(´・ω・`)「とりあえずもなにも、それ以外何もないんだけど」

川 ゚ -゚)「何か企んでいそうなんだよ、おまえは」

(´・ω・`)ショボーン

川 ゚ -゚)「それが私たちに対してマイナスに働かないのは信じているがな」

(´・ω・`)「……ありがと。……さて、では続きを宜しく」

川 ゚ -゚)「はいはい。だがしかしめんどくさいな。もう一人くらい欲しい。
そろそろモナーにも参加してもらうのが良いと思うがどうだ?」

(´・ω・`)「何度か打診しているんだけど、首を縦に振ってくれないんだよね。
自分には荷が重いとかなんとか言って」

川 ゚ -゚)「絶対めんどくさいだけだな」

(´・ω・`)「あと、牧場の世話があるからって」

川 ゚ -゚)「まったく」

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132 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:48:38 ID:VSwEoiVw0

憮然として腕を組むクー。
その表情を見て垂れた眉をさらに下げるショボン。

(´・ω・`)「折を見て、一度三人で話してみようよ。さて、続き続き」

川 ゚ -゚)「ん……。だがしかしなあショボン」

(´・ω・`)「今度は何」

再び机の上に視線を向けたショボンに対し、テーブルに広がっていた書類を片付けるクー。

川 ゚ -゚)「そろそろ時間だろ」

(´・ω・`)「え?あ……もう約束の時間か。……狙ったでしょ」

川 ゚ -゚)「なんのことかなー。あー細かい数字を見ていたら疲れたよ」

立ち上がり、大きく伸びをするクーを見てから自分の机の上も片付け始めるショボン。

(´・ω・`)「せっかくだから、依頼人に会っていきなよ」

川 ゚ -゚)「めんどくさい」

(´・ω・`)「ギルマスから、サブマスに命令です」

川 ゚ -゚)「はーい」

部屋の片づけが終わった時、来客を告げるチャイムが鳴った。




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133 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:50:42 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「初めまして。ギルドVIPでギルマスをやってます。ショボンと言います」

( ФωФ)「初めましてである。吾輩はロマネスク。ギルドANGLERのギルマスである。
ショボン殿のお噂はかねがね聞き及んでいるである」

(´・ω・`)「僕の噂ですか?」

( ФωФ)「ギルド『V.I.P.』のギルマスにしてバーボンハウスの名料理人、
アインクラッド最強最悪の投擲使い、先読みの軍師、銀時雨のショボン、七色の針使い、魔針の射手」

(;´・ω・`)「は、恥ずかしいんでもう止めてください。っていうか、聞いたことないんですけど。
『ぎんしぐれ』とか『七色の針使い』とか、なんですかそれ」

( ФωФ)「吾輩も噂で聞いただけだからよくは知らんが、『料理人』以外の二つ名を言う者は、
恐怖におびえているとか聞いていたのである。だからどのような恐ろしい方かと思いきや、
このような優しげな人と知って安心したである。なあ、ヒッキー」

(-_-)「……う、うん……。会うのがちょっと怖かった……です」
  _
( ゚∀゚)「だから言っただろ。ショボンはそんなやつじゃないって。とりあえず見た目は」

ギルドVIPホームの執務室。
先程までクーが書類を広げていたテーブルにはお茶が注がれたカップが四つ並んでいた。
執務机を背に、客を迎える側のソファーにショボンとクーが座り、その向かい側、
ドアを背にギルドANGLERの代表としてやってきたロマネスクとヒッキーが座っていた
。更に近い壁沿いにはジョルジュが立っており、その手にはカップが持たれていた。

(´・ω・`)「『とりあえず見た目』ってのは気になるところだけど、それよりも気になるのが一つ」
  _
( ゚∀゚)「ん?」

(´・ω・`)「今の二つ名、普段の君なら大笑いしてるよね。僕の隣に座って腹を抱えているクーみたいに」

川 ; -゚)「ひーひっひっひっひ。な、な、い、ろ、…ぎ、ん、し、ぐ、れ、…、ま、し、ん、の、い、しゅ……」

(´・ω・`)「…なにも泣くまで笑わなくてもいいのに……。まあいいや」

隣で涙を流しつつ静かに笑っているクーを見てからジョルジュに視線を戻すショボン。

(´・ω・`)「普段なら、ジョルジュもこれくらいで笑うでしょ。…なんで笑ってないの」
 _
(;゚∀゚)「え、あ、いや、ほら、おれは先にロマネスクのおっさんに聞いてたから」

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134 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:52:06 ID:VSwEoiVw0

( ФωФ)「え?吾輩とそんな話しをしたであるか?ちょっと緊張しているという話はした気がするが、
そのような具体的な呼び名まで言った覚えはないである」

(-_-)「多分してないと思う」
  _
(;゚∀゚)「ちょ、ふたりとも話を合わせてくれよ」

(#´・ω・`)「ふーん」
  _
(;゚∀゚)「あっ!」

(#´・ω・`)「……まさかと思うけど、ぼくのことをそんな風に広めているのがジョルジュなんてことは」
  _
(;゚∀゚)「お、おれじゃない。おれはそんなこと」

(#´・ω・`)「だよね。ネーミングセンスがジョルジュっぽくないから。
でも、だれが言い出したのかは知ってたりして?」
  _
(;゚∀゚)「いや、おれは知らないぞ」

(´・ω・`)「ふーん」
  _
(;゚∀゚)「な、なんだよ」

(´・ω・`)「……」
  _
(;゚∀゚)「……」

(´・ω・`)「まあいいや。その話はまた今度ゆっくりと」

視線を外され、ひとまず安堵の顔を見せるジョルジュ。
しかしすぐに流し目で睨まれ、肩をすくめた。

川 ゚ -;)「あー面白かった」

(´・ω・`)「まだ涙出てるよ」

川 ゚ -゚)「いかんいかん」

慌てて涙を拭くクーを視界の隅に感じながらロマネスクを見るショボン。

(´・ω・`)「失礼しました」

( ФωФ)「大丈夫である」

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135 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:53:09 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「それで今回の依頼ですが、『57層北部にある湖までの護衛』ということでよろしいのでしょうか」

( ФωФ)「そうである」

(´・ω・`)「失礼ですが、何故そんなところに」

( ФωФ)「吾輩達のギルド『ANGLER』は攻略やクエストをやるギルドではなく、
釣り好きの集まったギルドである」

(´・ω・`)「ああ…」

( ФωФ)「どこのギルドにも所属しない者の中でよく釣りで出会う者達が集まり、
ギルドを作ったのである。
便宜上吾輩がギルドマスターをしておるが、釣りに関すること以外は全て個人の判断に任せている、
いわばサークルのようなものなのである」

川 ゚ -゚)「それならばギルドにならず、フレンドリストだけでも」

( ФωФ)「釣り場の情報、難易度、釣竿や針、餌、すべての情報を管理してみんなで共有するには」

(´・ω・`)「ギルドの機能があった方が都合が良かったわけですね」

( ФωФ)「そうである、そうである。
それで、今までは下の層の湖や川での釣りを楽しんでいたのであるが、
少しずつ更に高難易度や違う魚を釣りたいと思い始めてきたのである」

(´・ω・`)「それで、57層ですか?皆さんのレベルを知らないので何とも言えませんが、
今の最上層とそれほど離れておりませんし、もし釣りに向かうとしても…」

( ФωФ)「もちろん全員で行くことは考えてないのである。よい釣り場だとしても、
ANGLERに所属している中でもレベルの高い者だけで行くことになると思うのである」

(´・ω・`)「そうですか……」

( ФωФ)「噂によると今までで一番うまい魚を釣ることが出来るそうであるから、
釣り師たちのやる気につながるのではないかと思うのである」

(´・ω・`)「やる気?」

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136 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:54:10 ID:VSwEoiVw0

( ФωФ)「…攻略組の方のおかげで50層越えをしたではあるが、
やはり下層でくすぶっている者の中にはこの世界に囚われたことによる悲壮感が漂っているのである。
それはしょうがないことではあるが、悲しいことなのである。
ギルドの中には日々の魚以外の食料を得ることが難しい者も数多くおり、
ギルドとして得たコルを分配することにより何とか人らしい生活を得ている者もおるのである」

(´・ω・`)「…」

川 ゚ -゚)「…」
  _
( ゚∀゚)「…」

( ФωФ)「吾輩やここにいるヒッキー。そして何人かはフィールドでモンスターを狩ることによって
レベルを上げてコルを得ているであるが、ほとんどの者は毎日釣りをして、魚を食べて飢えをしのぎ、
時には魚を売ってコルを得て、なんとか暮らしているのが現状なのである」

(-_-)「ぼくだって、ロマネスクさんに会わなかったら…今頃は」

( ФωФ)「今のヒッキーがいるのはヒッキー自身の努力の賜物なのである。
すこし話がそれてしまったであるが、つまり、上の層にある湖に行けばもっと楽しい釣りができる。
美味しい魚が食べられる。高く売ることが出来ると知れば、
生きるやる気や生き続ける気力が生まれるきっかけを作ることが
出来るのではないかと思ったのである。
……浅慮ではあるが、何がきっかけで生まれるかは分からないのである……」
  _
( ゚∀゚)「おっさん…」

(´・ω・`)「浅慮だなんて思いませんよ。人の心は不思議です。
何がきっかけになるかなんてわかりませんから。
僕も一人のこのゲームのプレイヤーとして、そしてこの世界に囚われた者の一人として、
それは分かるつもりです。
ですが同じギルマスとして納得しかねる部分もあります。
正直、いままで『戦闘』をしてこなかった者が、今更戦う気になるでしょうか?
また、戦う気になった時に、ギルドとしてサポートが出来るのですか?
失礼を承知で言わせていただきますが、そんなことは自殺行為に思えます」

( ФωФ)「そうなのである。そこが懸念点なのである。しかし、だからこそ、
吾輩は57層に行く必要があると考えるのである。情報を止めることは出来ないのである。
吾輩達が知らないうちに57層の湖の事を知って、
そこ行きたいと考えるメンバーがいないとは限らないのである。
ならば吾輩達がしっかりとした情報を管理し、メンバーに告知したほうが良いのである。
さすればそこに行きたいと考えた時に吾輩達に相談してくれると思うのである。
その時に吾輩たちに何が出来るのかは分からないであるが、
一緒に考えること、悩むことが出来るのである!」

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137 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:55:10 ID:VSwEoiVw0

熱く語るロマネスク。
ショボンの目をじっと見つめて語るその言葉に、ギルドに所属するメンバーを思う気持ちに、嘘は感じられない。

( ФωФ)「ショボン殿は、そうは思われぬか?」

(´・ω・`)「お考えは理解しました。色々な道の中で、それは正しい道の一つだと思います。
ですが、その場合情報屋などを使って情報を収集するのも手だと思いますが」

( ФωФ)「確かにそれも手である。だがそのような情報がいくらで買うことが出来るか…。
先ほどの話からもご理解いただけると思うが、
吾輩達のギルドにはあまりコルを持ってはおらぬのである。それに…」

(´・ω・`)「それに?」

( ФωФ)「これは吾輩の拘りになってしまうのであるが、吾輩は目の前にあるもの、
自分の目で見たものでないと本当に信用できないのである。どんなに信頼できる相手であっても、
聞き伝えではどこか疑ってしまうのである」

先程までの熱い口調とは違って少しだけ照れくさそうに喋るロマネスク。
隣のヒッキーは少し呆れたようにその様子を横目で見ている。

(´・ω・`)「なるほど。ですが…」
  _
( ゚∀゚)「おいおい、まだなんかあるのかよ」

川 ゚ -゚)「ジョルジュ、正式にギルドに来た依頼を受ける受けないはショボンに任せる。
これがうちのギルドのルールだ。そのショボンがまだ納得はしていない。それだけのことだ」
  _
( ゚∀゚)「それは分かってるけどよ」

川 ゚ -゚)「ならば黙っていろ」
  _
( ゚∀゚)「それにしたって」

立ち上がりかけたクーを制するショボンの手。

川 ゚ -゚)「ショボン」

クーに向かって優しく微笑み、そのあとジョルジュを悲しげに見る。

(´・ω・`)「ありがと、クー。ねえジョルジュ。僕はギルマスとしてメンバーの安全をまず一番に考える。
それが分かってもらえないのなら」
  _
( ゚∀゚)「悪かった。おまえのそれにおれは…おれ達は何度も救われている。
それは身に染みてわかってる。すまん。続けてくれ」

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138 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:56:16 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「分かってもらえて嬉しいよ」

ジョルジュに向かってニッコリと微笑んでから、表情を引き締めてロマネスクを見た。

( ФωФ)「メンバーに信頼されているのであるな」

(´・ω・`)「恐怖政治で統括しているだけですよ」

ニッコリと微笑んだショボンを見て、意味合いは違うが眉間にしわを寄せるクーとジョルジュ。

( ФωФ)「はっはっは。それは良い。吾輩も目指してみるのである」

(;-_-)「やめてよロマ」

( ФωФ)「はっはっは」

おびえたような顔をしたヒッキーの肩を叩きながら豪快に笑うロマネスク。
ショボン達とは違った形で、この二人はこの二人で信頼の絆を結んでいるように見えた。

( ФωФ)「さて、ショボン殿。他に聞きたいことがあるのではないか?」

(´・ω・`)「ええ。聞きたいことというか、確認なのですが、うちのギルドに依頼すると、
多分情報屋に支払う金額よりも高くなるけど大丈夫ですか?」

( ФωФ)「……え?」

(´・ω・`)「57層というにはうちのギルドにとっても簡単な層ではないので、
高レベルプレイヤーで護衛チームを作ります。
その危険手当もそれなりなお値段になりますし、使用したPOT、結晶に関しても実費を請求します。
更に成功報酬もありますし、途中で撤退するにしても着手金は別途かかります。
現在集まっている情報の提示をしていただいて、足りない情報に関してはこちらでも収集しますので、
それにかかった実費もそれなりな額になるでしょう。
ジョルジュの知り合いですから多少は割引しますが、
どう考えても情報屋から買う金額とは比べ物にならないかと…。
もちろん細かい計算をしないとですが、おそらくは桁の違う金額の請求になるかと」

(;ФωФ)「それはその…」

(;-_-)「ジョルジュさん」
  _
(;゚∀゚)「ショボン、ちょっと喋っていいか?」

(´・ω・`)「なに?」
  _
(;゚∀゚)「分割とか」

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139 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 22:59:34 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「着手金は作戦前に支払。申し訳ないけど緊急を要する依頼というわけじゃないしね。
そして多分それだけで情報屋に支払う金額と同じくらいの金額だよ。実費は作戦完了後に完全支払。
情報屋に支払う金額も出来ればその都度欲しいかな。まぁここら辺は臨機応変に。
成功報酬はまあジョルジュに免じて利子無しの分割でもいいけど、それでも……」
  _
(;゚∀゚)「うう…」

( ФωФ)「!魚はどうであるか!?」

(´・ω・`)「魚?」

( ФωФ)「湖にたどり着いたら魚を釣るである!その魚で」

(´・ω・`)「魚……ねぇ……」
  _
( ゚∀゚)「そうだな!それが良い!ほらショボン!この前食った魚あっただろ!
俺が初めて釣ってきた!店で出したいって言ってたやつ!
あれがあそこで釣れるんだよ!だから!」

(´・ω・`)「!ああ!あの魚!美味しかったよね。確かに。あれを出せたらお客さんも喜ぶよ」
  _
( ゚∀゚)「だよな!」

(´・ω・`)「あの魚って57層で釣れるんだ」
  _
( ゚∀゚)「そうそう!その湖で釣れる!
っていうか、今のところあそこでしか釣れないからあの湖に行くしかないんだ!」

(´・ω・`)「へーーーー。その湖でしか」
  _
( ゚∀゚)「そうそう!……あ…」

良い案が出たと嬉しそうだったジョルジュの顔が曇り、額に冷や汗が浮かぶ。
その様を厳しい目でショボンが見つめ、クーが呆れた様子で冷ややかに見つめる。
その状況をよくわからずに観察するロマネスクとヒッキー。

(´・ω・`)「57層、行ったんだ。釣りをしたんだ。ふーーーーーーん」
  _
(;゚∀゚)「え、あ、そ、その……」

(´・ω・`)「僕、許可した覚えないけどな。クー、聞いてる?」
  _
(;゚∀゚)「!クー!」

.

140 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:00:33 ID:VSwEoiVw0

すがる様な表情で両手を合わせてクーを見るジョルジュ。」

川 ゚ -゚)「いや、ない」
  _
(;゚∀゚)「クーーーーー」

(´・ω・`)「うちのギルド、基本的にソロ戦闘は禁止ってことはいくらなんでももう覚えてるよね。
ジョルとドクオには戦闘職としてレベル上げや狩りに関してはいくつか特権は認めてるけど、
それでもレベルに対して高層フロアの場合は僕かクーの許可を取る決まりも。
それを破って、しかも57層……。あれからまだ1年も経って無いっていうのにまたやったんだ……。
そっか……。……ねえ、ジョルジュ」
 _
(;゚∀゚)「は、はい」

(´・ω・`)「そんなに死にたいの?」

普段の、それこそ先ほど二つ名に関して見せたような怒りとは違う、
怒りと悲しみの混じったような心の底からの怒気をショボンから感じ、何も言えなくなるジョルジュ。
 _
(;゚∀゚)「い、いや、その、、、」

じっとジョルジュを見るショボンの瞳は何の感情もないようで、その表情と合わせても何の感情も汲み取ることは出来ない。
けれど発せられる空気は身をすくませるようだった

(´・ω・`)「そんなに死にたいのなら、もうこのギ」

川 ゚ -゚)「ショボン!」

張り詰めた空気を裂くクーの声。
普段からは騒動できない大きく鋭い声によって、全員が動きを止めた。

川 ゚ -゚)「人前だ、落ち着け」

ゆっくりと隣に座るクーの顔を見るショボン。
そして氷が解けるような速度で、そこに表情が戻った。

(´・ω・`)「……ありがとう、クー」

川 ゚ -゚)「ジョルジュ」
 _
(;゚∀゚)「あ、はい」

.

141 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:03:17 ID:VSwEoiVw0

川 ゚ -゚)「すぐに部屋に戻れ。そしてこちらから指示があるまで自室待機」
 _
(;゚∀゚)「え、あ、で、でも」

川 ゚ -゚)「でももくそもない。これは命令だ。ギルマスより先にサブマスである私が、まずは待機を命ずる。
この命令は、お前が破るか私が解かない限りはギルマスでも何もできない。
解ったな?分かったならすぐに実行しろ」
 _
(;゚∀゚)「!……わ、わかった」

慌てて部屋を出ようとするジョルジュ。

しかし扉を開けたところで立ち止まり、肩ごしにちらっと中を見る。
 _
( ∀)「……ごめん、ショボン。ありがとう、クー」

部屋を出るジョルジュ。
部屋には静けさだけが残り、居心地の悪さを四者が四様に覚える。

川 ゚ -゚)「お見苦しいところをお見せした」

それを破ったのはクーだった。
普段の落ち着いた口調に戻り、その口元には微笑すら浮かべている。

( ФωФ)「あ、いや、大丈夫である」

(;-_-)「う、うん……」

(´・ω・`)「すみませんでした」

立ち上がり、深々とお辞儀をするショボン。
慌ててロマネスクとヒッキーも立ち上がってショボンに座るよう促したが、
ショボンは黙って頭を下げており、二人を困惑させる。

川 ゚ -゚)「お茶が冷めてしまいまったな。ショボン、新しいのを淹れてくれないか」

(´・ω・`)「え?あ、うん」

一人落ち着いてテーブルの上のカップに口を運んだクーが声をかけ、殻になったカップをショボンに突き出す。
ショボンがそれを受け取り、新しいカップを四人分とティーポットをストレージから取り出しながら座った。

川 ゚ -゚)「お二人もどうぞ座ってください」

.
142 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:04:21 ID:VSwEoiVw0

( ФωФ)「わ、わかったのである」

(;-_-)「…」

クーに促されて座ると、新しいカップが目の前に置かれた。

川 ゚ -゚)「さて話を戻しますが、実際のところ57層の魚がそれほど美味しい魚だとしても、
一回の釣りで釣った量で報酬に足りるとは思えません。そうだろ?ショボン」

(´・ω・`)「うん。そうだね。今店から仕入れている魚の中で一番高い魚より高く買ったとしても、とてもじゃないけど…」

(;ФωФ)「そうであるか」

(;-_-)「…」

川 ゚ -゚)「ですが、それで諦められますか?」

(;ФωФ)「…」

(;-_-)「…」

(;ФωФ)「釣り好きな人間は、気持ちが昂ると多少の危険を気にせず向かってしまう可能性が高いと思うのである。
出来れば、……いや、吾輩は皆のためにも、諦めたくないである」

(-_-)「ロマ…」

(*ФωФ)「それに何より、吾輩が釣りたいのである」

(;-_-)「…ロマ」

(´・ω・`)「…そうは言われましても……」

川 ゚ -゚)「ショボン、57層だけでなく、今店で使っている魚、高いのも安いのもすべて、
それを供給してもらえるとしたら、どれくらいで足りそうだ?」

(´・ω・`)「!」

川 ゚ -゚)「それ以外の魚や海産物もな。もちろん手間賃くらいはプラスして。
あと、その湖に向かう道すがらで集めることの出来る鉱物や植物。
それに周辺でチャレンジできるお使いか調査・採取クエストを確認してみてくれ」

.

143 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:05:08 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「分かった。クーは」

川 ゚ -゚)「私は費用の概算を出す。まずはそれで計算してみよう」

( ФωФ)「あ、ルートと周辺のエリア地図と現在分かっている限りの敵出現マップは手に入れてあるのである」

(´・ω・`)「そうですか!ではまずはそれと僕の持つ情報を照らし重ね合わせて調整してみましょう」

ウインドウを出す三人。

( ФωФ)「ヒッキーは、レベルの高い何人かに同行するかどうかと、最近の釣果の確認をしてもらえるであるか」

(-_-)「うん。わかった」

ヒッキーもウインドウを出し、それぞれに作業を始めた。

ギルド『ANGLER』からの依頼を正式に受諾するのは、この二時間後だった。




.

144 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:06:04 ID:VSwEoiVw0




2.会議(私)



.

145 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:06:53 ID:VSwEoiVw0

自室にて鬱々としていたジョルジュの耳にノックの音が届いたのは、部屋に戻ってから三時間後だった。
  _
( ゚∀゚)「はい!」

ベッドに腰掛けて首を垂れていたジョルジュが顔を上げる。

川 ゚ -゚)「私だ」
  _
( ゚∀゚)「開いてる!」

その声に反応するかのようにドアが開き、クーが中に入ってくる。

その表情から心底自分を軽蔑しているのがよく分かり、心が痛くなるジョルジュ。

ξ゚听)ξ「私もいるわよ」

('A`)「おれもー」

そのクーの後ろから普段通りのツンとドクオが顔を出し、ジョルジュは少しほっとした。

ξ゚听)ξ「ほんとにバカよね」

('A`)「まったくだ」

ジョルジュの部屋は装飾がほとんどされていなく、すべての部屋の基本形であるベッドと
作り付けの机とセットの椅子が一つあるくらいだった。

ξ゚听)ξ「相変わらず何もない部屋よね」
  _
( ゚∀゚)「……この部屋にいるのは寝ているときぐらいで、戦闘しているか釣りしている時以外は誰かの所にいるから」

ジョルジュと人ひとり分くらい離れてベッドに腰掛けるドクオ。
クーは当たり前のように備え付けの椅子に座っている。

ξ゚听)ξ「少しは人が来た時のことも考えなさいよ」

ウインドウを出し、自分のストレージ画面を数回タップするツン。
すると部屋の中央に低めの丸いテーブルが現れ、その周りに座り心地のよさそうな一人掛けの
ソファーが三つ現れた。

.
146 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:07:47 ID:VSwEoiVw0

ξ゚听)ξ「昔私が使っていたやつ。もう使わないからあげる」
  _
( ゚∀゚)「……さんきゅ」

ξ゚听)ξ「テンション低いわね」

呆れたように呟きながら、自分の出したソファーに腰掛けるツン。

('A`;)「いや、クーからもらったメッセージを読んだ限りじゃ、低くて当然だと思うぞ」

ξ゚听)ξ「ジョルジュがショボンを怒らせるのなんて、いつもの事じゃない」

('A`)「いや、内容がさ」

ξ゚听)ξ「どんな内容でも、謝るのは変わらないんだから、落ち込むだけ時間の無駄よ。ね、クー」

川 ゚ -゚)「そうだな。猛省はしてもらわないといけないが」
  _
( ゚∀゚)「……すまん」

川 ゚ -゚)「とりあえず依頼は引き受けることにした。もう少し詰めないといけないが、まあ大丈夫だろう」
  _
( ゚∀゚)「そうか……」

('A`)「で、ジョルジュ。なんで一人で行ったんだ?おれかギコでも誘えばよかったのに。
ショボンに話さなかったのは、美味しい魚を渡して驚かせようとしたかなんかだろうけど、
それならクーに連絡入れれば良いし」

川 ゚ -゚)「そうだな。57層だからギコは微妙だが、ドクオなら問題ない」
  _
( ゚∀゚)「それは…その……」

川 ゚ -゚)?

ξ゚听)ξ?

('A`)?
  _
( ゚∀゚)「ドクオはハインと約束がある日で、ギコとしぃはそれぞれ牧場と店の手伝いで、
おれ以外は全員店とか用事があって。おれもクックルの所に行ったんだけど、
途中で仕事が終わっちまってさ」

.
147 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:08:53 ID:VSwEoiVw0

川 ゚ -゚)「クックルを誘えばいいだろ」
  _
( ゚∀゚)「クックルはクックルで新種の栽培とかで、スキルを使っていろいろやってた」

('A`)「ああ、あの日か…。言ってくれりゃあハインと一緒に行ってもよかったのに。
ハインと三人なら戦闘も楽になるし。」
  _
( ゚∀゚)「ハインに殺される」

川 ゚ -゚)「だな」

ξ゚听)ξ「それはそうね」

('A`)「え?そこ肯定するところ?」

ξ゚听)ξ「それよりドクオ、ハインと二人で何してたのよ」

('A`)「頼まれてレベル上げの手伝いだよ。ハインとなら50層くらいまでショボに連絡しなくても行けるからな」

ξ゚听)ξ「なんだつまらない」

川 ゚ -゚)「待てツン、この二人でレベル上げってことはそれなりに高層エリアだ。でも最前線ではない。
つまり周囲に人は少ない!」

ξ゚听)ξ「!それもそうね。……ドクオ、正直に答えなさい」

('A`)「な、何をだよ」

ξ゚听)ξ「ハインに襲われたでしょ」

('A`)「そんなわけあるか!」

川 ゚ -゚)「!襲ったのか!」

('A`)「襲うかボケ!」

ξ゚听)ξ「意気地のない男よね。ほんとに」

('A`)「あーもう、うるせえな」

ξ゚听)ξ「何よ、心配してあげてるのに」

川 ゚ -゚)「そうだぞ。ドクオ」

.
148 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:09:35 ID:VSwEoiVw0

('A`)「面白がっているだけだろ」

ξ゚听)ξ「否定はしない」

川 ゚ -゚)「同じく」

('A`)「……やだもうこいつら」
  _
( ゚∀゚)「…………」

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)!

('A`)!

三人で盛り上がっているのをじっと見ていたジョルジュに気付き、各自座りなおす。

('A`)「……まあとりあえず、謝るしかないんだし」

ξ゚听)ξ「そうね。それしかないわね」

川 ゚ -゚)「そうだな」
  _
( ゚∀゚)「許してくれるかな」

('A`)シラネ

ξ゚听)ξ「さあ」

川 ゚ -゚)「どうだろうな」
 _
(;゚∀゚)「え?」

すがるように三人を見たジョルジュに対し、三人は三様にさらっと返した。
 _
(;゚∀゚)「そ、そこはもっとこう」

('A`)「結局は、お前がどこまでちゃんと謝るかだろ」

ξ゚听)ξ「そうよねー。そしてそれをどこまでショボンが受け取ってくれるか」

('A`)「二回目っていうのが痛いよな」

.
149 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:10:16 ID:VSwEoiVw0

ξ゚听)ξ「死にそうにならなきゃ良いってわけでもないしね」

川 ゚ -゚)「もしその状態になってしまっていた時に、前回は駆けつけることが出来たが、
今回は駆けつけることが出来たかは分からないわけだし。
……ショボンはそれを考えてゾッとしただろうな」
 _
(;゚∀゚)「…………」

自分を励ましに来たのか落ち込ませに来たのか分からない仲間達の言葉に、
何も言えなくなってしまうジョルジュ。

すると、再び部屋がノックされた。

( ´∀`)「モナーもな」

川 ゚ -゚)「開いてるぞ」

( ´∀`)「おじゃまするもな」

▼・ェ・▼「キャン!」

ノックをしたモナーがドアを開けると、足元からビーグルが走って中に入り、
ジョルジュの膝に飛び乗った。
  _
( ゚∀゚)「ビーグル!」

勢いに負けてベッドに上半身を倒すジョルジュの腹の上にビーグルが乗る。
そしてジョルジュの顔をぺろぺろと舐めた
  _
( ゚∀゚)「ちょ!おまえ!」

( ´∀`)「ビーグル!それくらいにするもなよ」

( ・∀・)「ちぃっす」

( ´∀`)「入り口であったもな」

( ・∀・)「バカがまたバカやったんだって?」

ビーグルに続いて、しかしゆっくりと中に入ってくるモナー。
そしてその後ろからモララーが顔を出す。

.
150 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:11:07 ID:VSwEoiVw0

(;´∀`)「モララー、本当の事でももうちょっと言葉を濁すもなよ」

('A`)「……実はモナーも毒は吐くんだよな」

( ´∀`)「もな?」

ξ゚听)ξ「ま、座ったら」

ツンに促されてそれぞれにソファーに座る二人。

( ´∀`)「それにしても、ジョルジュも懲りないもなね」

( ・∀・)「ほんとだよ、一回死にかけてるのによくもまあ」
  _
(;゚∀゚)「もうなんとでも言ってくれ」

ビーグルを抱えて上半身を起こすジョルジュ。
胸の位置にあるビーグルの頭をぐりぐりと撫でると、一鳴きしてから膝から床に飛び降りた。

( ´∀`)「まあでも元気そうで安心したもな」

自分の足元にやってきたビーグルを抱き上げて膝の上に乗せるモナー。
ビーグルは安心したように身体を丸める。

川 ゚ -゚)「さっきまで酷かったがな」

( ・∀・)「本気で反省したことをショボンに分かってもらわないと、まずいんじゃないか?」
  _
(;゚∀゚)「うう……」

( ・∀・)「ギルマス権限で、いきなり除名とか出来るんだろ?ちょっと確認してみたらどうだ?」
  _
(;゚∀゚)「こ、怖いこと言うなよ」

( ´∀`)「そうもなよ。モララー。だいたいギルドのメンバーから外されたら、この部屋いられないはずもな」

('A`)「そうなのか?」

川 ゚ -゚)「どうだろうな。この建物は二階から上はショボンか私が許可した者以外は
ギルメン以外は入れないよう設定してあるが、現時点で入っている者を登録から外した場合、
どのようになるのか…」

.
151 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:11:53 ID:VSwEoiVw0

ξ゚听)ξ「ちょっと興味あるわよね」

('A`)「入らないよう設定って言っても、扉が開かないように設定してあるだけだからなぁ…。
あれってこのエリアにも入れないように設定してあるんだろうか」

全員がジョルジュを見る。
  _
( ゚∀゚)「え?」

( ・∀・)「ショボンに言って、ためしにジョルジュを」
  _
(;゚∀゚)「てめえモララーこのやろう!」

( ・∀・)「冗談だ冗談」

笑うモララーを恨めしげに見ながら「冗談にならねぇって」と呟くジョルジュ。

川 ゚ -゚)「兎にも角にも、誠心誠意謝るんだな」
  _
( ゚∀゚)「……許してくれるかな」

( ´∀`)「大丈夫もなよ。
ジョルジュが自分から抜けたいって言わない限り、ショボンはジョルジュを除名したりしないもな。
だから、ちゃんと謝れば許してくれるもな」

( ・∀・)「これに懲りて、二度とやらない様にするんだな」

ξ゚听)ξ「ほんとよ。あんたが落ち込んでるのは自業自得として、
ショボンが落ち込むと後に響くんだからちゃんとしてよね」
  _
( ゚∀゚)「え?」

( ・∀・)「……『え?』っておまえ、……え?分かってない?」

川 ゚ -゚)「分かってないようだな……」
  _
( ゚∀゚)「え?え?」

( ´∀`)「ブーンの姿が見えないってことは、ショボンの所に行ってるもな?」

.
152 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:12:38 ID:VSwEoiVw0

('A`)「ああ。とりあえずはあいつで落ち着かせてる。この後でモナー、行ってくれるか?」

( ´∀`)「わかったもな。ビーグルもいるから大丈夫もなよ。他の皆にも連絡はしてあるもな?」

川 ゚ -゚)「ああ。しぃとふさと兄弟は店が終わり次第来ると言っていた」

( ´∀`)「クックルとギコは農場にいたもな。心配してたから、後で追加連絡をしてあげてほしいもな」

川 ゚ -゚)「分かった」
  _
(;゚∀゚)「え?」

ξ゚听)ξ「このバカはほんとに……」

川 ゚ -゚)「はぁ…。いいかジョルジュ、ショボンはな……」

ひとり焦ったようにきょろきょろと周囲を伺うジョルジュ。
呆れたようにそれを見る5人だったが、説明するためにクーが口を開いた。





.
153 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:13:25 ID:VSwEoiVw0

執務室のソファーで、一人肩を落とし項垂れているショボン。

テーブルの上のカップには琥珀色のお茶が注がれているが、既に冷めている。

(´-ω-`)「はあ…」

大きくため息をついたときに、それを待っていたかのように目の前の扉がノックされた。

(´・ω・`)「はい」

( ^ω^)「ぼくだお」

(´・ω・`)「開いてるよ」

( ^ω^)「おつおつ」

にこやかに中に入ってくるブーン。
そして目の前のソファーに座る。

( ^ω^)「予想通り落ち込んでるみたいだおね」

(´・ω・`)「クー?」

( ^ω^)「クー」

(´-ω-`)「はあ…」

.

154 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:14:22 ID:VSwEoiVw0

( ^ω^)「おっおっお」

ため息をつきながら項垂れるショボンを見て、少しだけ楽しげに笑うブーン。

(´・ω・`)「笑い事じゃないよ、ほんとに」

( ^ω^)「ごめんだお。でもこういうショボンを見るのも久しぶりだなと思ったら、なんか嬉しくなったお」

(´・ω・`)「なにそれ」

( ^ω^)「よく気の付くギルマスさんだと有名なショボンにしては、僕が座ったのに飲み物出してこないし」

(´・ω・`)「まったく」

呆れたようにストレージを開くショボン。
そしてブーンの前に一つのカップを置く。

(´・ω・`)「はい」

( ^ω^)「ありがとうだお」

ブーンはそれを取り、口をつける。
ちょうど良い暖かさのそれは口の中に淡く広がり、柔らかい果実のような甘さと紅茶のような渋みを残す。

(´・ω・`)「で?何が嬉しいのさ」

( ^ω^)「ギルマスじゃないショボンを見られて、嬉しいんだお」

(´・ω・`)「ブーン」

( ^ω^)「ショボンは頑張りすぎだお。気持ちは分かるけど、もうちょっと肩の力を抜く時間を作らなきゃだめだお」

(´・ω・`)「……抜いてるよ」

( ^ω^)「ビーグルの事かお?」

驚いたように目を見開き、ほんの少しだけ険しい瞳でブーンを見る。

( ^ω^)「気付かれてないと思ったら大間違いだお。まあ最初に気付いたのはドクオだけど」

(´・ω・`)「そっか…」

.

155 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:15:20 ID:VSwEoiVw0

( ^ω^)「安心していいお。多分気付いているのは僕ら四人だけだから。
他の皆はただ純粋にビーグルとじゃれているとしか思ってないお」

(´・ω・`)「言っておくけど」

( ^ω^)「ショボンがビーグルの事を大好きだってのはちゃんとわかってるお。
ただ、あそこまで、それこそアホみたいにビーグルとじゃれつくのは、
ギルマスとしての自分に疲れた時のリフレッシュと、そういう自分を周囲に見せるためだってことだおね」

(´・ω・`)「……全部お見通しか」

( ^ω^)「幼馴染をなめちゃだめだお」

(´・ω・`)ショボーン

( ^ω^)「そんな顔してもだめだお」

もともと垂れ気味の眉をさらに下げてブーンを見るショボン。

しばらく見つめあう二人だが、ブーンの言葉でショボンが噴き出し、それを見たブーンがまた嬉しそうに笑う。

( ^ω^)「ショボンは頑張りすぎだお。もっと頼ってくれればいいのに」

(´・ω・`)「これはぼくの性分だからね。なかなか」

( ^ω^)「昔からそうだからよく知ってるけど、それでも……だお」

(´・ω・`)「それに…」

( ^ω^)?

再び表情に影を落とすショボン。

(´・ω・`)「これは、……ぼくがやらなきゃいけないことだから」

( ^ω^)「まったく……。肩の力を抜かないと、それもできなくなるかもだお」

(´・ω・`)「うう…」

( ^ω^)「まあこの話はまた今度ゆっくりするとして、今は違うことでうじうじしているんじゃないかお」

(´・ω・`)!

( ^ω^)「だおねーーー」

.
156 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:16:24 ID:VSwEoiVw0

(;´・ω・`)「な、なんのことかな」

( ^ω^)「ジョルジュはショボンのことを嫌いになったりしないから、大丈夫だお」

(´・ω・`)!

顔を強張らせて固まってしまうショボン。
それをみて、肩をすくめやれやれと呟きながらカップに口をつけるブーン。

数分固まっていただろうか、ブーンが思わず「あれ?システム的に固まってる?」などと
思ってしまった頃に、やっと動き始めるショボン。

(´・ω・`)「大丈夫……かなあ……」

( ^ω^)「ジョルジュはちゃんと理由があって怒られたのに逆切れするような奴じゃないから大丈夫だお」

(´・ω・`)「それはそうだけど…」

( ^ω^)「なにが気になるんだお?」

(´・ω・`)「ギルド辞める?とか言っちゃったし」

( ^ω^)「クーから途中で止めたって聞いたお」

(´-ω-`)「クーが止めてくれたんだよ。思わず言ってしまうところだった」

大きなため息。
眉間にしわを寄せるブーン。

( ^ω^)「でも、言ってないお。
それにたとえ言っていたとしても、言われるようなことをやってしまったのはジョルジュだお」

(´・ω・`)「でもさ…」

( ^ω^)「ジョルジュはそれくらいわかってるお。自分が愚かなことをしてしまったことくらい。
そして、ちょっと過保護ではあるけどショボンが自分を心配して、しすぎて怒っているってことくらい」

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「だから、ジョルジュがショボンを嫌いになんてなってないお」

(´・ω・`)「そうか…なあ……」

( ^ω^)「……」

.

157 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:17:21 ID:VSwEoiVw0

じっとショボンの顔を見るブーン。
それを不思議そうに見るショボン。

(´・ω・`)「なにさ」

( ^ω^)「気になるのはそれだけじゃないみたいだおね」

(´・ω・`)「………」

( ^ω^)「………」

(´・ω・`)「そんなにぼくって分かりやすいかな。地味に落ち込むかも」

( ^ω^)「おっおっお。大丈夫だお。
種明かしすると、これも幼馴染マジックと三人からの入れ知恵だお。
多分気にしてるって言ってたんだお」

(´-ω-`)「マジか…」

( ^ω^)「ジョルジュがうちを辞めて、釣り好きギルドに行くとかありえないから大丈夫だお」

じろっとブーンを見るショボン。
その瞳を不思議そうに見つめ返すブーン。

(´・ω・`)「なんでそんなことがわかるのさ」

( ^ω^)「分かってないのはショボンくらいだお」

(´・ω・`)?

疑心に満ちたショボンの問いに笑顔で答えるブーン。

あまりに自信に満ちたその言葉に次の句を継げずにいるショボン。

( ^ω^)「だいたいショボンはジョルジュがなんで釣りをするか分かってるのかお?」

(´・ω・`)「釣りが好きだから」

( ^ω^)「おっおっお。やっぱり分かってないお」

(´・ω・`)???

面白そうに笑うブーンを問い詰めようと思った時に、扉がノックされた。

.

158 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:18:11 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「ぶ、は、はい!」

( ´∀`)「モナーもな」

( ^ω^)「開いてるお」

( ´∀`)「おじゃまするもなー」

扉を開けて中に入ってくるモナー。
その足元を駆け抜ける影。

(´・ω・`)!

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*´・ω・`)「ビーグルちゃん!」

座っているショボンの膝に乗り、胸に手をかけて顔をぺろぺろと舐めるビーグル。

(*´・ω・`)「ちょっ!ビーグルちゃん!」

ビーグルの行動にさすがに戸惑いながらも、嬉しさも隠しきれていないショボン。

( ^ω^)「おつかれさまだお」

( ´∀`)「おつかれさまもな」

席を立って横に移動するブーン。
モナーは礼を言いながらショボンの前のソファーに座った。

( ´∀`)「元気そうもなね」

( ^ω^)「さっきまで酷い落ち込みようだったお」

( ´∀`)「そうもなか」

(*´・ω・`)「ちょっブーン!変なこと言わない…ビーグルちゃん!そこは!」

ショボンの相手はビーグルに任せて情報を交換する二人。

( ^ω^)「あっちはどうだったお?」

( ´∀`)「あっちも酷く落ち込んでたらしいもな。モナーが着いた時には大分回復してたけど。
でもそんなに落ち込むなら最初からやらなきゃいいのに、ジョルジュはほんとにおバカさんもなね」

( ^ω^)「ほんとだおね。しかも二回目。ばれたらショボンにどれほど叱られるか想像できたはずだお」

.

159 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:19:02 ID:VSwEoiVw0

( ´∀`)「もなもな。それを忘れるくらいその魚をみんなに食べさせたかったもな。
それは嬉しいもなけど、やっぱりおバカさんもな」

( ^ω^)「だおね」

談笑する二人を横目で見つつ、ビーグルが繰り出す攻撃を甘んじて受けて至福の時を過ごすショボン。

( ´∀`)「さて……。ビーグル、そろそろこっちにくるもな」

▼・ェ・▼「きゃん!」

その声でぴょんとショボンの膝から飛び降り、モナーに駆け寄るビーグル。
そして足元で丸くなった。

( ´∀`)「おりこうさんもなね」

ビーグルの頭を撫でてやってから、ショボンをまっすぐに見るモナー。

( ´∀`)「ショボンはどうするもな」

(´・ω・`)「え?」

( ´∀`)「ジョルジュは本当に反省していたもな。
もちろんルールを破ったことはいけないこともなけど、ショボンはどうするもな?」

(´・ω・`)「……ルールを破った罰則はつけないと。でも…それ以上は…」

( ´∀`)「そうもなね。もう一度ちゃんと謝ってくれたら、それで良いと思うもな。
でも、ショボンも謝らないとダメもな」

(´・ω・`)「!?」

( ´∀`)「クーに途中で止められたとはいえ、言っちゃいけないことを言おうとしたもな。
それに関しては、ちゃんと謝らないといけないとモナは思うもな」

優しく微笑みながらショボンをまっすぐに見るモナー。

その優しくも厳しい瞳を見て、ショボンが息をのんだ。

(´・ω・`)「うん。ちゃんと謝るよ…」

( ´∀`)「それが良いと思うもな」

更に笑顔になるモナーを見て、頼りなさげに微笑むショボン。

.

160 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:19:49 ID:VSwEoiVw0

( ^ω^)「?ショボン?」

(´・ω・`)「モナーには、助けられてるなと思って」

( ´∀`)「モナにもな?」

(´・ω・`)「出会った時からだよ。殺さなくてもいい命を、あの時のぼくは怒りに任せて狩ろうとしていた。
それを止めてくれたのはモナーだから」

( ^ω^)「ショボン…」

( ´∀`)「あの時助けられたのはモナーもな」

(((´-ω-`)))「ううん」

瞳を閉じて首を横に振るショボン。
モナーとの出会いを思い出しているのであろう。

(´・ω・`)「あの時、そして今、助けられているのは僕の方だよ。
もちろんモナーだけじゃなく、ギルドの皆に、僕は助けられている。
そう……。それを、忘れちゃいけない。みんなを、守らなきゃいけないのに」

( ^ω^)「おっおっお。頑張るのはいいことだけど、頑張りすぎちゃだめだお」

( ´∀`)「みんながみんなを助けあって、支えあって、VIPをつくってるもな。モナーは、誰が欠けてもイヤもな」

それぞれの顔をみて、笑顔になる三人。

モナーの足元で丸くなっていたビーグルが顔を上げ、嬉しそうに一鳴きした。



.

161 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:20:51 ID:VSwEoiVw0




3.会議(公)




.

162 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:21:52 ID:VSwEoiVw0

三日後
ギルドホームの食堂兼会議室に集まったVIPの面々。

既に食事も澄まし、各人の目の前にはカップが置かれている。
そして彼らにしては珍しく、ほんの少しではあるが緊張感が漂っている。

(,,゚Д゚)「なんか空気が重いぞゴルァ」

ξ゚听)ξ「ホントよね。どうしたのよ皆」

( ´_ゝ`)「安定の空気クラッシャーがいるぞおい」

(´<_` )「天然って怖い」

( ´∀`)「こういう時はこの二人がいるのがありがたいもなね」

( ・∀・)「実は二人とも計算じゃないのか」

川 ゚ -゚)「ツンが計算でこれが出来る奴ならどんなに良いか…」

(*゚ー゚)「ギコ君もですよ」

('A`)「っていうかお前らも相当だと思うぞ」

( ゚∋゚)「ま、それがこのギルドの良さではあるな」

( ^ω^)「そうだおね」

次々に言葉を繋げていく面々。
そして全員がある一人を見ている。
  _
( ゚∀゚)「……なんだよ」

(´<_` )「いや」

( ´_ゝ`)「べーつーにー」

少しだけ和らいだ空気の中。
張り詰めさせていた張本人はジョルジュなのだが、彼は自分の顔をにやにやとみるメンバーの視線を
感じて更に居心地の悪い気分を味わっていた。

もちろんメンバー達が自分をばかにしているわけではないことくらいは分かっているが。

いや、ある意味ではバカにしているのだが、そこには嘲笑の意味合いは全くなく、
馬鹿なことをした自分がどう決着をつけるのか、面白い物が見られるかもしれないという期待と、
ほんの少しの心配が含まれているんじゃないかと感じていた。

.
163 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:22:52 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「遅くなってごめんね」

ミ,,゚Д゚彡「ごめんなさいだから」

ドアが開き、ショボンとフサギコが入ってくる。
三日前に罰則を言い渡された時以来、メッセージで反省文を送ったりして事務的に会話はしていたが、
久しぶりに見たショボンの顔に、思わず緊張するジョルジュ。

( ´_ゝ`)「遅いぞーーー」

(´・ω・`)「ごめんごめん。

ミ,,゚Д゚彡「ごめんなさいだから」
 _
(;゚∀゚)

こちらを見てニッコリと微笑んだフサギコを見て、少しだけホッとするジョルジュ。
謹慎の三日間の間、食事を運んだり暇つぶしにショボン以外の全員は部屋に何度か来てくれたので
久し振り感は無いのだが、であってからは二日と空けずに会っていたショボンと三日も顔を
合せなかったのは、やはり違和感を残してしまっている。

ジョルジュがそんなことをぼんやりと考えているうちにショボンとフサギコも席に座っていた。

(´・ω・`)「さて、みんなもう食事も済んでるとおもうから、早速本題に入ろうかな」

ショボンの凛とした声が部屋の隅々まで響き、全員の顔が引き締まる。

(´・ω・`)「まずは一つ」

全員の顔を一回ゆっくりと見回した後、ジョルジュで視線を止めた。

(´・ω・`)「ジョルジュ。言うことあるよね」
 _
(;゚∀゚)「あ、ああ」

何かあるとは思っていたが、一番最初に呼ばれるとは思わず慌てるジョルジュ。
しかしすぐに持ち直し、けれど慌てて立ち上がった。

ブーンやモナー、そしてツンとフサギコが心配そうにこちらを見ているのが分かる。
この部屋にいるときはモナーの足元で丸くなることの多いビーグルも珍しくモナーの膝に乗っていて、
なんとなく心配そうに見ていた。

.

164 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:23:55 ID:VSwEoiVw0

それを感じ、心を落ち着かせるジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「みんなすまん!おれはギルドのルールを破って、一人で57層の湖まで行ってしまった。
ルール上はまだソロ行動をしたらいけない場所だ。無事に戻ってこれたが、ルールを破ったのは事実だ!
……。ごめんなさい!!」

最後に叫ぶように謝り、同時に腰を九十度に曲げて頭を下げる。

(´・ω・`)「ルールを破っていたことが判明した時点で三日間の謹慎、その間は外に出ないで部屋にいて
反省文を書いたりして反省していた。……はず。まあ、部屋の中で何をしていたのかはみんなの方が
よく知ってると思うけど」

今度は素早くメンバーの顔を見る。

ジョルジュは『謹慎』していたわけだが、今回の罰則としてはよほどの用事が無ければ会うことは許されていない。
もちろんそれが建前であることは罰を下したショボン自身がよく分かっているのだが、
それでもやはり謹慎とはそういう事なのだということにしてある。
つまり、会いに行った、遊びに部屋まで行ったメンバーは建前上とは言えルールを破っているわけだ。

それを自覚しているため三人ほどは目をそらし、一人はよく分かっていないため不思議そうな顔をし、
残りのメンバーは分かったうえで笑顔を返した。

(´・ω・`)「まったくもう」

その口調は呆れているが、表情は柔らかい笑顔だった。
ショボンにとってギルドのメンバーのつながりが強いのは望むべきことなのだったから、当然と言えば当然だろう。

そう、その繋がりによって命がつながることがあることを、よく知っているから。

(´・ω・`)「それじゃあ今回のルール破りはこれで終了だね」

微笑みながらジョルジュを見るショボン。
そこにはあからさまにホッとした顔をしている仲間がいた。

(´・ω・`)「……ジョルジュ」
 _
(;゚∀゚)「お、おう」

.
165 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:25:04 ID:VSwEoiVw0

立ち上がるショボン。
そしてジョルジュに向かって、彼と同じように腰から九十度に曲げて頭を下げた。
モナーとクーとブーン以外が驚く。
 _
(;゚∀゚)「しょ、ショボン?」

(´・ω・`)「僕も怒りに任せて最低なことを言ってしまうところだった。ごめんなさい」
 _
(;゚∀゚)!

(´・ω・`)「クーが止めてくれたから最後までは言わないですんだけど、
それでもあれは許されることではない。だから、謝って済むことではないけれど」
 _
(;゚∀゚)「おれは言われて当然のことをしたんだ!だから謝ったりしないでくれ!頭を上げてくれ!」

(´・ω・`)「いや、それでもやはり」
 _
(;゚∀゚)「だめだだめだだめだだめだ!このことでおれに謝ったりしたらいけない!」

(´・ω・`)「もう謝っちゃったんだけど」
 _
(;゚∀゚)「おれはきいてない!だからノーカウント!」

(´・ω・`)「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな……」
 _
(;゚∀゚)「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー聞こえなーい」

(´・ω・`)「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな……」
 _
(;゚∀゚)「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー」

(´・ω・`)「……じゅげむじゅげむごこうのすりきれかいじゃりすぎょの…」
 _
(;゚∀゚)「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー聞こえなーい」

('A`)「二人とも…」

最初は神妙だったのだが徐々に変化していき、ショボンがふざけはじめたところで全員が疲れた顔をした。

(;´∀`)「ふたりとも、というかショボン、そろそろ終わるもな」

.

166 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:26:19 ID:VSwEoiVw0

川 ゚ -゚)b「さすがモナー。もうじき二人目のサブマスになるだけのことはある」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

(;´∀`)「モナは引き受けてないもな!ビーグルも喜んじゃダメもな!」

▼・ェ・▼「くぅーん」

(´<_` )「なんだこのカオスな状態は」

( ゚∋゚)「平常運転だな」

( ・∀・)「否定する気もないが否定できないのは良いことなのか?」

( ´_ゝ`)「いいんじゃね」

('A`)「おわらね…」

( ^ω^)「どくおが仕切れば」

('A`)「無理」

( ^ω^)「だおね」

(,,゚Д゚)「うわぁ」

(*゚ー゚)「ここ三日くらいは皆テンション低かったから、こういうのも楽しいね。ギコ君」

(,,゚Д゚)「お、オウだゴルァ」

ミ,,゚Д゚彡「ポジティブなのはいいことだから」

(´・ω・`)「あかまきがみあおまきがみきまきがみ、しんしんしゃんそんかしゅしんしゅんしゃんそんしょー」
 _
(;゚∀゚)「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー聞こえなーい」

ξ゚听)ξ「はい!そこまで!」

がやがやと騒ぎ始めたメンバーを諌める鶴の一声。

ツンである。

.

167 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:27:15 ID:VSwEoiVw0

ξ゚听)ξ「ショボンもジョルジュもバカなことやってないの!」
 _
(;゚∀゚)「お、おう」

(´・ω・`)ショボーン

ξ゚听)ξ「まったく。…ショボンは依頼の話もあるんでしょ。さっさと始める!」

(´・ω・`)「はーい」

ツンに叱られ、改めて椅子に腰かけるジョルジュとショボン。
それをにやにやとみていたメンバー達だったが、ショボンが全員の顔を見ながら表情を引き締めるのを見て、
それぞれに姿勢を正した。

(´・ω・`)「それでは、ギルドに来た依頼の話に入ります」

ウインドウを出すショボン。
するとメンバー達の視界にメッセージの着信を知らせるランプが点滅した。
それぞれに自分のウインドウを開く。

(´・ω・`)「概略は今送りましたが、説明します」


.

168 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:28:40 ID:VSwEoiVw0

まず一つ目の依頼。護衛です。
依頼主は釣りギルド「ANGLER」のギルマス『ロマネスク』さん。
依頼内容は、57層主街区より3エリア先にある湖までの護衛と、釣りをしている最中の周囲の哨戒。
お連れするのはロマネスクさんと同じギルドのヒッキーさん。
あともしかすると増えるかもしれないようですが、最大で4人までとしてあります。

依頼そのものは難しい物ではないですが、57層という高層階のため、護衛班と哨戒班に分かれて湖まで移動します。
護衛班はそのもの護衛を。
哨戒班は先行してルートの確認とモンスターの殲滅を行います。
到着後は合流して湖で昼食及び周辺の探索。
今回はギルドとしては未踏破エリアですので、周辺の鉱物・植物の採取も積極的に行う予定です。

二つ目の依頼は戦闘訓練とパーティー戦の練習。
中層プレイヤーのレベル底上げ依頼です。
依頼主はエギル氏。
指導パーティーは『びろわかっぽ』。
盾持ち片手剣、両手槍、斧の三人組の戦闘指導とパーティー戦の練習、レベル上げを手伝います。
斧持ちは三人の中では多少レベルが高いようなので、盾持ち片手剣と両手槍の二人をメインに指導してほしいとのことです。
理想は斧使いのレベルにまで二人を引き上げることですが、そこら辺は出来る限りで。
レベル上げを兼ねた最終探索フィールドは40層を予定しています。

三つ目は調査業務。
これは情報屋アルゴさん、追加で僕からのオーダーです。
ちょっと気になるクエストがあるので、クエスト攻略と周辺の調査をお願いします。
クエストは23層ですが、時間があれば少し高層の迷宮区の調査もお願いする予定です。


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169 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:29:31 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「以上、班分けはこれから発表しますが、それ以外で何か質問ありますか?」

('A`)「これは全部同じ日なのか?」

(´・ω・`)「うん。本当は護衛と調査は明日を指定されていたんだけど、今日明日明後日は、
うちのギルドは探索禁止日程だから。どうみても緊急ではないからずらしてもらった。
訓練はもともと明々後日を指定で依頼がきてたから、OKしちゃってて」

('A`)「了解」

(´・ω・`)「他はある?」

全員の顔を見るショボン。
何人かは難しい顔をしているが、特に質問は無いようなので素通りした。

(´・ω・`)「大丈夫かな。まあ自分の担当依頼が決まったところでまたあったら言ってね」

更にウインドウを操作するショボン。
新たなメッセージが全員に届く。

(´・ω・`)「じゃあ班を発表します」

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170 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:30:35 ID:VSwEoiVw0


護衛班
ショボン(リーダー)、兄者、弟者、ブーン、ツン、モララー

哨戒班
ドクオ(リーダー)、フサギコ、ハイン、デミタス、トソン

教育班
クー(リーダー)、ジョルジュ

調査班
クックル(リーダー)、モナー、ギコ、しぃ、ビーグル



(´・ω・`)「人数が足りなかったので、ハイン、デミタス、トソンに応援を頼みました。
  _
( ゚∀゚)「お、おい、ショボン!」

(´・ω・`)「班分けの意味と各人の役割を説明します」

川 ゚ -゚)「おちつけ、ジョルジュ」



.

171 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:31:28 ID:VSwEoiVw0

まずは護衛班。
今回はモンスターが現れた際に守りが出来る面子が必須なので、
兄者と弟者に普段よりも重装備でよろしく。
状況によっては撤退も考慮しないといけないので、その際に活路を見出すための
速攻とコンビネーションが出来るブーンとツン。
進行・撤退等の判断はぼくがします。
モララーは全員の補佐が万遍なくできるのと、あともう一つの任務である湖についてからの
周囲のアイテム狩りでスキルを活用してもらうからよろしく。
ブーン、兄者、弟者、それにツンもそれぞれの職業に特化した鑑定スキルを持っているから、
ここらへんも期待してるよ。

哨戒班は戦闘力と隠蔽スキルをメインで構成。
今回探索する57層のエリアは二足歩行の人型獣と目で周囲を確認する虫型がほとんどだから、
隠蔽スキルが効きやすいはずだけど、気を付けて。
あとドクオにはトラップの解除関係にもそのスキルをいかんなく発揮してもらうつもりです。
デミタスとハインも同じ理由。トソンは戦闘は四人に比べて少し劣るけど、最近は状況判断が
出来るようになってきているみたいなのでそれに期待しておねがしました。
あと彼女も鑑定スキルをそれなりに鍛えているそうなので、哨戒班が採取・採掘をした時の鑑定を
やってもらうつもりです。

教育班は教える武器の種類から。
うちのギルドで盾持ち片手剣を一番使え、かつ斧の使用にも出来るのがジョルジュだから、
まずジョルジュが決定。
あとは両手槍を使えて、ジョルジュの暴走をセーブしつつ冷静に分析・指導が出来るのは
クー以外適任が見当たらなかったのでこの二人で決定。
他の依頼のバランスから人数は二人だけど、もし教える時に周囲の警戒をするメンバーが必要なら、
NSかフリーのプレイヤーに連絡してみるので言って。

最後に調査班。
今回の調査はクックルが一人でリーダーをやってもらいます。
今までのように僕やクーの交代がない状態で、最初から最後まで指揮を執ってもらうのでがんばって。
ギコは最近練習してるスタイルを出来るだけ早くものにできるよう今回は積極的に使ってみるように。
しぃはそのギコをフォローしつつ、意識してレベル上げを。
モナーはビーグルと共に三人のフォローを。
低層階に近いしクエスト自体もそれほど難しくないようだけど、HPの残りには十分注意すること。
クエストの攻略やフラグ立て等はモナーと協力していいけど、フォーメーションの選定や戦闘時の指示、
POT強化など戦闘に関しては出来るだけクックルが一人で決めるように。

.
172 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:32:35 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「以上です。だれか異議がありますか?」

全員の視線がジョルジュに集中するが、彼は一回大きく肩をすくませてから、首を振った。
  _
( ゚∀゚)「正直に言えば護衛か哨戒班になりたいところだが、今の理由を聞いても駄々をこねるほどじゃない」

(´・ω・`)「分かってもらえて嬉しいよ」

ジョルジュの言葉に笑顔で答えてから、ゆっくりとみんなの顔を見直すショボン。

(´・ω・`)「さて、他の皆も大丈夫そうだね」

('A`)「ハインよりシャキンかミルナがいい」

(´・ω・`)「隠蔽スキルの高いメンバーにしたって言ったよね」

('A`)……ハイ

うつむいたドクオを気にすることなく頷くメンバー達。

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*´・ω・`)「ビーグルちゃんの一声も出たところで、今日のミーティングは終了としようか。
今日中に各班に細かい打ち合わせをするためのミーティング日程を送るので、班別で宜しく。
ではお疲れ様でした」

  _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ -゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ´∀`)( ゚∋゚)
( ・∀・)(,,゚Д゚)(*゚―゚)
  「おつかれさまでした!」
      ('A`)(´<_` )

思い思いに席を立ち、隣の部屋に移動していく面々。
おそらくはソファーやクッションに座って、ショボンやクーの淹れたお茶を飲みつつ、フサギコの作った
お菓子を食べながら夜遅くまで喋るのであろう。

(´・ω・`)「……本番は明々後日……保険も、用意しておかないと」

部屋の照明を消しつつ呟いたショボンの言葉が、がらんとした白い部屋に消えた。


.

173 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:33:20 ID:VSwEoiVw0



4.作戦(午前)




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174 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:35:12 ID:VSwEoiVw0

−教育班−


川 ゚ -゚)「失礼、パーティー『びろわかっぽ』の皆さんかな?」

30層主街区。時刻は朝の九時。
転移門前広場にいた三人組に、クーは声をかけた。

( ><)「は、はいなんです!」

クーが話しかける前からチラチラと見ていたビロードが、瞬間的に背筋を伸ばして直立不動の状態で返事をした。

(*‘ω‘ *)「落ち着くっぽ」

( <●><●>)「ビロードが緊張しているのは分かっています」

( ><)「き、緊張なんてしてないんです!す!」

(*‘ω‘ *)「ふう…」

( <●><●>)「やれやれです」

川 ゚ -゚)「久しぶりだな。三人とも。
パーティー名をつけていたから分からなかったが、なるほど。
三人の名前から『びろわかっぽ』なんだな」

仲良さそうに喋る三人を見て、同じく笑顔で語りかけるクー。

( ><)「!覚えていてくれたんですか!」

三人の顔が、花が咲いたように笑顔で輝く。

川 ゚ -゚)「何回か練習のお手伝いをさせてもらっているからな。
何度やっても盾で剣を受け流すのが下手なビロード君と」

(;><)「あ…」

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175 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:36:10 ID:VSwEoiVw0

川 ゚ -゚)「槍使いなのに何度言っても間合い以上に前に突っ込むぽっぽちゃん」

(*‘ω‘;*)「す、少しは改善したっぽ」

川 ゚ -゚)「最初は落ち着いているけど、終わりが見えた後に敵の数が増えると計算が狂って
テンパってしまうワカッテマス君」

(;<●><●>)「そ、そんなことは……あるのは…ワカッテマス…」

笑顔で自分の弱点を指摘するクーの言葉に、先ほどとは打って変わって表情を曇らせる三人。

川 ゚ -゚)「今日はレベル上げとパーティー戦の練習がメインと聞いているが、
この弱点が克服されていなければ、今回もここを重点的にやることになるな」

(;><)(;<●><●>)
「はーい」
       (*‘ω‘;*)

川 ゚ -゚)「おいジョルジュ!こっちだ!」

広場の入り口でキョロキョロと周りを見ているジョルジュに向かって手を上げるクー。
それに気付いたジョルジュが小走りにやってくる。

川 ゚ -゚)「買えたか?」
  _
( ゚∀゚)「ああ、売ってた売ってた。この周辺のダンジョンの地図は近くの街でしか売ってないからめんどくさいよな」

川 ゚ -゚)「ショボンなら一回通った道なら全部覚えているんだろうけどな」
 _
(;゚∀゚)「さすがにそれは……いや、ショボンならほんとに覚えてそうだな」

ウインドウを出し、クーに買ってきた地図を渡すジョルジュ。
それを確認してから、三人をジョルジュに紹介した。

川 ゚ -゚)「うん。大丈夫だ。さて、ここにいる彼らが今日探索を付き合うメンバーなのだが、
ジョルジュは三人に会うのは初めてか?」
  _
( ゚∀゚)「……。ああ、そうだな」

.

176 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:37:05 ID:VSwEoiVw0

(#><)「前に一回教わったんです!」

(*‘ω‘ #)「三人ともさんざん怒られたっぽ!」

(#<●><●>)「忘れられたのは分かってます」
 _
(;゚∀゚)「え?あれ?そうだっけ?」

川;゚ -゚)「はあ…」

三人の猛抗議に思わずたじろいでしまうジョルジュ。

それをみて深いため息を吐くクーだった。



.

177 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:38:31 ID:VSwEoiVw0

−調査班−


( ´∀`)「みんな揃ったみたいもなね」

23層。主街区転移門前広場。
朝早く人影もまばらな広場に、クックル、モナー、ビーグル、しぃ、ギコが円になって立っている。

(*゚ー゚)「朝早くからスタートできるクエストなんですね」

( ´∀`)「クエストのスタートは隣の村もな。今からのんびり行けば、ちょうど良いくらいもなよ」

(*゚ー゚)「そっか」

(,,゚Д゚)「のんびりでいいのかゴルァ」

( ´∀`)「今回は一つ一つの戦闘を着実にこなして、クエストのクリアと調査をするのが目的もな。
だから戦闘自体はゆっくりでいいもなよ。クエストもそれほど難しくないはずもなしね」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴルァ」

(*゚ー゚)「はい」

にこやかに話すモナー達三人。

その三人を見ながら、クックルは静かにため息をついた。
モナーの足元にいるビーグルが、心配そうに見上げる。

(*゚ー゚)「クックルさん?」

( ゚∋゚)「ああ、今日は宜しく頼む」

(,,゚Д゚)「大丈夫かゴルァ。元気なさそうだぞ」

( ゚∋゚)「元気というか…気が重いというか」

( ´∀`)「この層なら今のモナ達なら問題ないもな。緊張しすぎる方がダメもなよ」

( ゚∋゚)「…分かってはいるつもりだが」

あからさまに肩を落とすクックル。

自分より大きな男が自分より小さく感じ、しぃが困ったようにモナーとギコの顔を見るが、
二人とも気の利いたことは言えないようだった。

(*゚ー゚)「……私は、クックルさんの指揮好きですよ」

.
178 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:39:28 ID:VSwEoiVw0

呟いたしぃの言葉で、驚いたようにその顔を見るクックル。
モナーとギコもしぃの顔を見るのでしぃも挙動不審になりつつ三人の顔を見る。

穏やかに自分に微笑むモナーを見て、次の言葉を紡いだ。

(*゚ー゚)「も、もちろんショボンさんやクーさんの指揮が嫌いだってわけじゃないですけど。
クックルさんの指揮も好きです」

( ゚∋゚)「おれの指揮がか?」

(*゚ー゚)「はい」

心底驚いたように聞き返すクックルに、こちらも驚いたように返事を返すしぃ。

( ´∀`)「どんな感じで好きもな?」

(*゚ー゚)「そうですね……」

小首をかしげるしぃをじっと見つめる三人。

(*゚ー゚)「ショボンさんは、上空から私たちと敵を見て、的確に指示を出す感じなんです。
そこには無駄なものが一切なくて、100ある一人一人の力を100完全に出し切れる戦闘。
そんな感じなんです。
ふつう、やっぱり自分の持つ力を100完全に使う事なんで不可能だけど、
ショボンさんはそれを出し切らせてくれる感じで、自分がこんなに戦えるなんてって、
驚いてしまいます」

( ゚∋゚)「あ、ああ。そうだな。あいつの指揮はすごい」

(*゚ー゚)「クーさんは、斜め上から私たちを見ていて、指示を出す感じです。
敵の武器や種族に対して最適な人を向かわせて、フォローできる人を一歩後ろに置いて。
ショボンさんのような細かい指示というよりは、戦いやすい場所を準備してくれる感じです」

( ´∀`)「そうもなそうもな。クーはそんな感じもな」

(*゚ー゚)「クックルさんは、私たちと同じ目線で私たちを見ていてくれる感じです。
目の前に現れた敵に対して、まず自分で考える。
そのあと、間違っていたりもっと正しいやり方があると指示を出してくれるんです。
だから自分の実力と得手不得手を感じつつ、自分で考えて成長できる感じなんです。
私たちのことをよく見ていてくれるって安心感があって。だから好きです。」

.

179 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:41:47 ID:VSwEoiVw0

(,,゚Д゚)「おお、おれもそう感じるぞゴルァ。
ショボンやクーとは違う形の安心感がある感じだ」

( ゚∋゚)「二人とも……」

( ´∀`)「クックルがみんなの事をよく見ていて考えていてくれるから、
そんなふうに感じるもなね」

( ゚∋゚)「おれが…」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

(*゚ー゚)「ビーグルちゃんもそうだって言ってますよ」

( ´∀`)「もなもな」

(,,゚Д゚)「考えてる時間より、動いたほうが良いぞゴルァ」

ギコが言うと、三人とも驚いたように彼を見た。

(,,゚Д゚)「?ど、どうしたゴルァ」

( ´∀`)「ギコの言う通りもなね」

(*゚ー゚)「はい」

( ゚∋゚)「……ああ、そうだな」

.

180 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:42:38 ID:VSwEoiVw0

( ´∀`)「今日はゆっくりやるもな」

(,,゚Д゚)「がっつり戦うぞゴラァ」

(*゚ー゚)「もう、ギコ君たら」

( ゚∋゚)「………三人とも」

緊張したような。
けれど凛とした声で三人に呼びかけるクックル。

( ゚∋゚)「今日は宜しく頼む」

(*゚ー゚)「はい!こちらこそ宜しくお願いします!」

( ´∀`)「それはこっちのセリフもな。頼むもなよ」

(,,゚Д゚)「おぅだゴルァ!頼むぞゴルァ!」

クックルが突き出したこぶしに向かってそれぞれにこぶしを突き出す三人。

▼・ェ・▼「きゃん!!」

ぶつけられた四つのこぶしの上に飛び乗るビーグル。

( ゚∋゚)「ああすまん、ビーグルも宜しく頼むな」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

ビーグルの行動に笑いあう四人だった。


.

181 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:43:53 ID:VSwEoiVw0

−護衛班−


57層主街区。転移門前。

ショボンを中心に、左からブーン、ツン、兄者、弟者、モララーと円になって打ち合わせをしていた。
前線に近く油断できない場所であるため装備は自分の持つ中で最高クラスの物を設定しているが、
さすがにツンとショボンは目立たないような抑えた見た目の装備にしていた。

(´・ω・`)「こんな感じかな」

出していたウインドウを閉じ、自分を見ていた五人の顔を見るショボン。

(´・ω・`)「気になるところはある?」

( ´_ゝ`)「二列編隊、先頭俺らでブーンとツン、その後ろに依頼人たち三人、その後ろにモララーとショボン…だよな」

(´・ω・`)「うん。何か問題あるかな?」

( ´_ゝ`)「モララー楽じゃね?」

( ・∀・)「はぁ?」

( ´_ゝ`)「結局俺ら四人で戦闘するようなもんだろ?」

( ・∀・)「兄者おまえ」

(´・ω・`)「今回僕は情報の統制に専念するために、
戦闘時以外それこそ戦闘開始の数瞬前までウインドウを開いているつもりなんだ。
それでモララーには、僕がウインドウを開いている状態での目になってもらう。
通常進行時の僕の目の代わりはもちろん、
僕が指示を出せない状況になった際のバックアップもお願いしてる。
代わりに兄者がやってくれるなら隊列を考え直すけど…」

( ´_ゝ`)「よーし、お兄ちゃん先頭の守り頑張っちゃうぞ!」

ξ゚听)ξ「アホね」

( ^ω^)「アホだお」

( ・∀・)「アホだな」

(´<_` )「アホな兄貴ですまん」

.

182 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:45:29 ID:VSwEoiVw0

( ´_ゝ`)「だって今日の役割パーティーの盾だしー。盾持ち戦闘きらいだしー。
弟者だってー、嫌いなはずだしー」

(´<_` )「でもおれ練習してるぞ。盾と片手剣での戦闘」

( ´_ゝ`)「……え?」

(´<_` )「うちのギルドは守備重視が少ないというかいないからな。
護衛の依頼の時とかはおれとかジョル、あと兄者がやらないとまずいだろ。
今日は先行で哨戒班がいるからいつもの両手斧で行くけど。
そういえば、最近はギコも練習してるっぽいぞ、盾持ち片手剣」

じっと兄者の顔を見る弟者。

( ´_ゝ`)「……だっておれそんなの聞いてないもん」

ξ゚听)ξ「自分の役割をちゃんと考えなさいって事よ」

呆れたように言い放ったツンの言葉に頷く兄者以外の四人。

( ^ω^)「兄者と弟者は割り振りや使用武器を含めて分かりやすいパワータイプだから、
初撃の削りと最後の一撃には頼もしいけど、途中の削りの時は守りに回ってもらえると、
僕やツンが思い切り動けて助かるお」

(´<_` )「だな」

( ´_ゝ`)「…弟者がやってるなら、お兄ちゃんも頑張る」

ξ゚听)ξ「きも」

( ・∀・)「きもいな」

( ^ω^)「きもいおね」

(´・ω・`)「きもいのはデフォルトか…」

( ´_ゝ`)「ひとの決意をお前ら」

あからさまにふてくされた兄者を見て笑みをこぼすメンバー。

.

183 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:46:50 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「けど無理にやることは無いよ。
兄者が兄者らしく、みんながみんなの持ち味を活かして戦えるようにするのが、
指揮担当の仕事だからね。兄者の両手鎚は充分強いし守りも出来るし」

(*´_ゝ`)「ショボン…」

(´<_` )「ショボン、甘やかさなくていい。そして兄者きもい」

ξ゚听)ξ「ま、少しは周りを見ないとね。やっぱりきもいし」

( ´_ゝ`)「     」

(´・ω・`)「まあまあ、じゃあフォーメーションはそんな感じで。
状況に応じて指示は出すけど、基本的には原型保持の臨機応変。
つまりいつもの感じで、前線に近いけど緊張せずにいこう」

( ФωФ)「遅くなって済まんのである」

(-_-)「おはようございます」

ショボンの言葉に全員が頷いたとき、背後から声をかけられた。
今日の護衛の依頼主、ロマネスクである。
その横にはヒッキーがおり、背後には背の高い男がいた。

(´・ω・`)「おはようございます。時間通りですよ」

( ФωФ)「いやいや、色々と無理をお願いしているのはこちらゆえ、
本当は先に来て待っていたかったのである」

(-_-)「なのに…」

頭を下げるロマネスクと、冷たい視線で後ろにいる背の高い男を見るヒッキー。

(・∀ ・)「しかたないだろ」

ヒッキーに冷たい視線を投げつけられ、居心地が悪そうに頭を掻く男。
背の高さはクックルやモナーと同じくらいであろうか。
長い両手剣を背中に担いでいる。

(´・ω・`)「そちらが」

( ФωФ)「今日一緒に連れていく三人目である。マタンキ、挨拶をするであるよ」

(・∀ ・)「マタンキっす。よろしく頼むッす」

.
184 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:47:50 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「ショボンです。今日は宜しくお願いします」

前に出てきて頭を下げたマタンキに右手を差し出すショボン。
マタンキは嬉しそうにその手を握り、笑顔でぎゅっとつかんだ。

それを横で見ていたロマネスクがブーン達を見ながら一歩前に出る。

( ФωФ)「こちらこそである。皆さんも宜しく頼むのである。
吾輩はロマネスク。ギルドANGLERで、一応ギルマスをやっているのである。
そしてこちらがヒッキー」

ロマネスクに促されてお辞儀をするヒッキー。

それを笑顔で返し、ショボンが隣にいたモララーに目くばせする。

( ・∀・)「モララーだ」

( ^ω^)「ブーンだお。よろしくだお」

ξ゚听)ξ「ツンです。今日はよろしくお願いします。こちらの指示には従って下さい」

(´<_` )「テイだ。悪いが弟者と呼んで欲しい」

( ´_ゝ`)「おれのことは兄者と呼んでくれ」

(・∀ ・)「?」

( ФωФ)?

(´・ω・`)「あだ名のようなものなんですが、すでにそちらの方が仲間内には浸透しているので、
彼らを呼ぶときにはそちらでお願いします」

(-_-)「流石武具店の兄者さんと弟者さんですよね」

( ´_ゝ`)「あ、やっぱり腕がいいことで有名だった?」

(-_-)「え!?あ、は、はい、い、いや、…」

(・∀ ・)「!前に言ってた変な鍛冶屋がいるってあそこか!」

.

185 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:48:39 ID:VSwEoiVw0

(;ФωФ)「ちょ、おま」

(・∀ ・)「腕は良いけど売ってくれないことがあるって言ってたあそこだろ?
特に武器担当の方が変人だとか言ってたよな」

(;-_-)「ま、マタンキ」

ξ゚听)ξ「ま、噂通りよね」

慌てるロマネスクとヒッキーをよそに喋り続けるマタンキ。

言葉をなくした兄者の肩をブーンとモララーが両側から叩き、
弟者が困ったように自分の額に指を当てて首を振った。

(´・ω・`)「それでは今日のスケジュールと進行時のフォーメーションの打ち合わせをしましょう」

何事もなかったように進めるショボン。
それに驚きつつも、ロマネスクはもらったメッセージを開くために右手を振った。



.

186 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:49:27 ID:VSwEoiVw0

−哨戒班−


('A`)「全員集まったみたいだな」
从 ゚∀从「聞いてたのより多くないか?」

('A`)「フサのところに護衛の人数が一人増えたって連絡が来てた。
ANGLERの中では高レベルの一人で、名前はマタンキ。
見ればわかるけど、両手剣使いだ」
从 ゚∀从「なるほど」

57層転移門広場より少し離れた建物の最上階。
最上階と言ってもそれほど高い建物ではなく、彼らがいるのは5階の部屋だった。

アインクラッドにおいて、PCやNPCの持ち物ではない建造物は出入りが自由である。
ただし部屋に入っても鍵をかけることなどは出来ないし、
家具なども設置されていないことがほとんどであるため、
体を休めることには不向きであった。
結局自分のホームを持たないプレイヤーは宿屋などに泊まって体を休めている。

それでは利用価値は無いのかというとそういう事もなく、
扉を閉めれば原則的に声を外に漏らすことも無くなるため打ち合わせなどには使われている。

そして今彼らのように身を隠すために使用することもあった。

ミ,,゚Д゚彡「とりあえず予定通りみたいだから」

ウインドウを出していたフサギコがショボンからのメッセージを読む。
ロマネスクと打ち合わせをしつつ、情報を確認するふりをしながらフサギコにメッセージを打ったのであろう。

('A`)「それ、おれのところには来てないんだけど」
从 ゚∀从

ミ,,゚Д゚彡「多分今の状況が分かっているから」

('A`)……ソウデスカ
从 ゚∀从

.

187 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:50:35 ID:VSwEoiVw0

窓から外を、広場にいるショボン達を確認する三人。
しかし外からは見られないよう、窓のそばの壁に張り付き両側から広場全体を観察している。

('A`)
从 ゚∀从「で、なんでこんな風に外を見なけりゃいけないんだ?」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンからの指示だから」

('A`)
从 ゚∀从「ショボンからの指示?」

('A`)「ああ、出来るだけ護衛している三人に存在を気付かれない様にすることってな」
从 ゚∀从「なんだそりゃ」

ミ,,゚Д゚彡「なにか考えがあるから」

('A`)
从 ゚∀从「それはそうだろうが」

ハインが眉間にしわを寄せて渋い顔をすると、部屋のドアが開いた。

(´・_ゝ・`)「遅くなった」

(゚、゚トソン「すみません。遅くなりまして」

入ってきたのはデミタスとトソン。
これで哨戒班の5人が揃ったことになる。

(´・_ゝ・`)「ドクオ、パーティーに入れてくれ」

二人は窓には近寄らず、入ってきた扉のそばの壁に背を当てて座った。

('A`)「了解」
从 ゚∀从

ドクオがウインドウを操作するとデミタスの前にパーティー勧誘の画面が現れる。

.

188 名前:名も無きAAのようです:2014/02/25(火) 23:51:22 ID:VSwEoiVw0

(´・_ゝ・`)「はいよ」

('A`)「トソンも」
从 ゚∀从

(゚、゚トソン「はい。お願いします」

トソンの前にも現れ、デミタスと同じようにYESのボタンをクリックした。

(´・_ゝ・`)「これでドクオをリーダーにしたパーティーの結成だな。出発はまだか?」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンが一回道具屋に行くようにするって言ってたから。そしたら先行して出発だから」

(゚、゚トソン「それにしても、なぜ今回はこのようなシステムを取っているのでしょう」

('A`)
从 ゚∀从「だよな」

(´・_ゝ・`)「ふむ。確かに何か重い思惑がありそうなオーダーだが、行動自体はよい訓練だな」

(゚、゚トソン「訓練?」

(´・_ゝ・`)「5人パーティーで、常に隠蔽スキルを使って敵の目を欺きつつ進行。
更にエリアごとに戦闘と通過をこなしていく。
普段のギルドの戦闘からは、絶対にやらない行動だろう?」

(゚、゚トソン「それは…そうですが」

('A`)
从 ゚∀从「やらなきゃいけないわけでもないだろ?」

(´・_ゝ・`)「何事も経験さ。特にトソン」

(゚、゚トソン「はい」

(´・_ゝ・`)「今回はショボンから統制を頼まれているんだろ?」

(゚、゚トソン「統制と言っても戦闘ではなく、タイムスケジュールの管理と行程の指示だけですよ」

(´・_ゝ・`)「甘いな。行程管理、スケジュール管理ってことは戦闘によるエリア移動のタイミング、
つまりは全員の休憩時間、ヒットポイントの管理もしなきゃいけないってことだ」

.

189 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:52:36 ID:VSwEoiVw0

(゚、゚トソン「!」

(´・_ゝ・`)「頑張れ」

(゚、゚;トソン「む、無理ですよ私にそんなこと」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だから」

デミタスとトソンの会話に割り込むフサギコ。

トソンは慌てながらフサギコに反論する。
あからさまに狼狽しているが、声を荒げたりしないのは彼女の持つ資質であろう。

(゚、゚;トソン「む、無理ですって」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だから」

そんなトソンに対し、落ち着いて言葉を紡ぐフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「ショボンが任せられるって判断したんだから大丈夫だから」

その表情には揶揄や冷やかしは全く無く、逆にトソンに問いかけるように、
何を慌てているのか全く分からないといった顔だった。

(゚、゚;トソン「え…」

思わず絶句したトソンを見て、面白そうに声を出さずに笑うドクオ。

('A`)「諦めろトソン、ふさはショボン信者だ」
从 ゚∀从

(゚、゚;トソン「い、いや、そういう事ではなくてですね」

.

190 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:53:27 ID:VSwEoiVw0

('A`)
从 ゚∀从「ま、あいつが任せたんだから、トソンの出来る限りをやればいいさ」

(´・_ゝ・`)「そうだな。それでよい」

決して低レベルではないトソンだが、この5人の中では一番弱く経験も少ないことを自覚している。
それ故に、HPの管理などという大役を自分が行うことに狼狽えた。
しかし仲間達はそんなことは全く考えていないようで、笑顔で自分を見ていた。

(゚、゚トソン「……分かりました。どうなっても知りませんからね」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だから」

諦めたように肩を落としたトソンに対し、間髪入れずにフサギコが太鼓判を押す。

さらに肩を落としたトソンを見て、面白そうにドクオ達は笑った。




.

191 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:54:22 ID:VSwEoiVw0



('A`)「さて、動き始めたな」
从 ゚∀从

外を見ていたドクオが腰を浮かす。

ミ,,゚Д゚彡「完全に広場から出たら部屋の外に出るよう言われてるから」

しかしフサギコに制され、もう一度腰を下ろす。
そして自分の右肩に乗っている頭に声をかけた。

('A`)「おまえはそろそろ離れろ」
从 ゚∀从「部屋から出たら」

左にある窓から外を監視するドクオの右手に腕をからめて寄り添っていたハインが、
いやいやをするように首を振りつつその頭をドクオの肩に摺り寄せる。

('A`)「はぁ……」
从 ゚∀从

ミ,,゚Д゚彡「仲が良いのは良いことだから」

(´・_ゝ・`)「だな」

(゚、゚トソン「ですね」

('A`)
从*゚∀从

頬を赤らめたハインをみて、ドクオ以外が微笑んだ。




.

192 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:55:50 ID:VSwEoiVw0

−教育班−


川 ゚ -゚)「だいぶ改善されてはいるが、まだ弱点は残っているな」

待ち合わせをした30層から少し下がり、22層のフィールドダンジョンを攻略したクー達5人。
訓練を申し込んだ3人から見ても低層であったが、三人は疲れていた。

(;><)「そ、そうですか」

(*‘ω‘;*)「まだダメっぽ?」

座り込んでいる二人を見つつ、クーが言葉をつなげる。

川 ゚ -゚)「そこまで疲れているのが証拠だな。
前に確認した弱点を突かれるような指示を出してはいたが、
レベルに対してそこまで疲れるということはまだ克服できていないということだ」

(;><)「うぅ……こんなんじゃダメなんです」

川 ゚ -゚)「ビロード君は体が大きくは無いから、パワータイプの敵の攻撃を盾で受け止めてしまうと、
そのあとの動きが封じられたり遅くなってしまう。その分だけ余分な動きが増えているな」

(;><)「うぅ…」

川 ゚ -゚)「後ろにいる人を守るために完全に受け止めようとする気持ちは分かるが、
自分のパワー、実力、相手との差を見極めて臨機応変に対応しないと、
逆に後ろにいる仲間達を傷つけてしまうかもしれない…。
まずはそれを考えてみると良い。そうすれば、受け流しや避ける意味も見えてくる。」

体育座りをして顔を膝に埋めてしまったビロードの次に、ぽっぽの顔を見るクー。
ぽっぽの顔がこわばる。

川 ゚ -゚)「ぽっぽちゃんは…」

(*‘ω‘ *)「わ、分かってるっぽ。突っ込みすぎなのは!」

川 ゚ -゚)「……それの理由も自分で分かっている……だな」

(*‘ω‘ *)!

.

193 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:57:14 ID:VSwEoiVw0

クーに叱られる前に自分で自分の弱点を告げたぽっぽだったが、
それを超えるクーの洞察に声をなくし、何も言えなくなってしまった。

川 ゚ -゚)「……それ自体は悪いことではないと思う。私にも経験があることだ。
だが、それは強さとは対極にあることの一つだと思う」

(*‘ω‘ *)「!…対極っぽ?」

川 ゚ -゚)「ああ。ギルド、チーム、パーティーならば、信じることも強さだと私は思う」

(*‘ω‘ *)「信じる…っぽ…」

川 ゚ -゚)「すぐには難しいが、今まで一緒に戦ってきた君たちならば出来ることだと思うぞ」

顔を上げて不思議そうに二人を見ていたビロード。
それに気付かずにちらっと横を向いたぽっぽ

二人の視線が重なる。

(*‘ω‘ *)「な、何をこっちを見てるっぽ!」

( ><)「え?い。いや、二人が話しているのを」

(*‘ω‘ *)「女の子二人の会話を盗み聞きとか最低だっぽ!!」

(;><)「そ、そんな!だってこんな近くで話しているから」

(*‘ω‘ *)「ビロードを見損なったっぽ!」

(;><)「ぽっぽちゃん!」

立ち上がって赤くなった顔を隠すようにそっぽを向くぽっぽに対し、
慌てて立ち上がって頭を下げるビロード。

それを見て、呆れたように肩をすくめるクー。

その三人の後方に立つワカッテマス。
彼も肩を上下させて呼吸を整えながら、じっと見つめていた。

.
194 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:58:55 ID:VSwEoiVw0

その横にジョルジュが立つ。
  _
( ゚∀゚)「参加しないのか?」

( <●><●>)「今は二人で話したほうが良いのはワカッテマス」
  _
( ゚∀゚)「そうかねぇ」

( <●><●>)「……私の戦いぶりはどうでしたか?」
  _
( ゚∀゚)「今のレベルなら問題ないだろ。今回はイレギュラーなポップも無かったしな」

( <●><●>)「……」
  _
( ゚∀゚)「けど、なんでお前だけレベルが飛び出たかは分かった」

( <●><●>)「!?どういうことですか?」

突然声をかけられても表情一つ変えなかったワカッテマスだったが、
ジョルジュの一言で大きな目をさらに見開いて横を見た。
  _
( ゚∀゚)「お前もあの子と一緒だよ。
二人がちょっとでも危なくなったら割って入ってお前が敵を倒してきたんだろ」

( <●><●>)!
  _
( ゚∀゚)「図星みたいだな」

黙り込んで再び前を見たワカッテマスをみて、困ったように笑うジョルジュ。
  _
( ゚∀゚)「おまえはあの二人が本当に好きなんだな。それこそ、自分の身の安全を忘れるくらいに」

( <●><●>)「……私の行動が間違っているのはワカッテマス…」
  _
( ゚∀゚)「間違っちゃいないさ」

目を伏せつつ呟いたワカッテマスに、ジョルジュは軽く返す。
その軽さに思わず顔を上げて横を見るワカッテマス。
  _
( ゚∀゚)「間違っちゃいない。誰かを助けたいって気持ちは。その誰かが好きな相手ならなおさら」

.

195 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:00:56 ID:Qw/AbN2w0

( <●><●>)「……」
  _
( ゚∀゚)「ただ、その方法は色々あるってだけで」

( <●><●>)「?…色々?」
  _
( ゚∀゚)「戦いの場でその身を盾にする守り方もあれば、
自分の後ろを預けて相手の後ろを守るってのもある。
更に言えば、戦いはすべて任せて、それ以外のすべてを引き受けるってのもある」

( <●><●>)「????」
  _
( ゚∀゚)「なんてな、おれも、本当に分かってきたのは最近だから、ちゃんと説明なんてできねぇ」

自嘲気味に笑い、自分を見るワカッテマスを見るジョルジュ。
その強い視線に思わず目を逸らそうとしてしまったワカッテマスだったが、
なんとか踏みとどまってじっと見つめ返した。
  _
( ゚∀゚)「けどこれは言えるぞ。今の戦い方だと、万が一お前がいなくなったときあの二人はダメになる。
そしておまえが倒せない敵が出た時は、三人ともダメになる」

( <●><●>)「!」
  _
( ゚∀゚)「極論だけど、そういうこった。けど、お前だってそれくらいわかってただろ?」

( <●><●>)「……ハイ……ワカッテマス……」
  _
( ゚∀゚)「なら、大丈夫だ。あとは勇気だな。そして、その勇気を持つためにおれ達を利用すればいい」

にやっと笑ったジョルジュ。
ワカッテマスはその顔と発言に、顔全体で大きく驚きを見せた。

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196 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:02:07 ID:Qw/AbN2w0

−護衛班−


森を進む9人。

中央にロマネスク。
その前にヒッキーとマタンキ。
その前を兄者と弟者が先頭で歩いている。

ツンとブーンは地形に対して位置取りを変え、しんがりを務めるモララーとショボンと
声を掛け合いながら進んでいた。

( ФωФ)「みなさんはさすがの強さであるな」

(-_-)「うん。まったく危なげないよ」

(・∀ ・)「すげえっすよ!」

(´・ω・`)「そんなことはありませんよ」

開いたままのウインドウを操作しながらショボンがロマネスクたちと会話する。
状況と前方・後方の視界確認をモララーに任せ、通常歩行時は情報統制に専念していた。

ロマネスク達三人に対してはルートとポップする敵の予備知識の確認としての名目で。
実際はそれはもちろんのこと、哨戒班・教育班・調査班等との情報共有をしていた。

そして事前情報と哨戒班から入る情報により優位な状況で戦闘に入れるようコントロールしているが、
その戦いは決して楽ではなかった。

実際のところ、レベルだけをみればそれほど強敵は出てきていない。
だが高層の敵は強いソードスキルに加えてモンスター同士の連携も行われているように感じ、
各個撃破をするための位置取りやソードスキルによるモンスターの列の分断、
戦闘の振り分けなどを瞬時に行うショボンへの負担は小さくはなかった。

もちろん全員ギルドのメンバーだけで戦っているのならばある程度の余裕を持つことが出来るのだが、
今回は『護衛』という依頼で動いている以上中央の三人に被害が出ない様に戦闘を行っていたため、
普段よりも何十倍も神経を使っていた。

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197 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:03:01 ID:Qw/AbN2w0

(・∀ ・)「でももうちょっとこっちに回してくれてもいいすっよ」

(-_-)「マタンキもたまには良いこと言うね。ショボンさん、そうしてください」

(・∀ ・)「たまにとかひどいっすよ」

( ФωФ)「そうである、そうである。一匹ずつなら吾輩達でも対処できるであるからな」

(´・ω・`)「そうですね…。
情報によると、この先のエリアで細かい敵が多く出るところがある様なんです。
迂回ルートを考えていたんですが結構な遠回りになるので突っ込んでみましょうか」

ξ゚听)ξ「ちょっ。ショボン、大丈夫なの」

( ^ω^)「遠回りの方が良くないかお?」

( ФωФ)「分かったのである。釣りをする時間は多いほうが良いであるしな」

(;-_-)「ロマネスクさん…」

(・∀ ・)「正直すぎてさすがっす」

(´・ω・`)「実は先ほどから何回かお三人に戦ってもらったのは、
戦闘を見させていただく意味もあったんです。
あの戦いぶりなら大丈夫ではないかと判断もしました」

( ФωФ)「なるほどである……。『稀代の戦術師』殿にそう言われると照れるであるな」

(;´・ω・`)「な!なんですかそれ!」

( ФωФ)「また風のうわさで聞いたのである」

ロマネスクが漏らした二つ名にまた慌てるショボン。

聞いていたギルメンの五人がくすくすと笑う。

(´・ω・`)「……五人とも、帰ったら個別ミーティングね」

五人の口から洩れるブーイング。

それを見て笑みをこぼす三人。

その笑いはいつしか周りに伝播し、一人憮然とした表情のショボンを気にせず、
笑顔で次のエリアに続く道を進んだ。

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198 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:04:08 ID:Qw/AbN2w0

−調査班−


( ゚∋゚)「しぃ右!ギコは続いてフォロー!」

狼男に向かってまっすぐに走るしぃ。

(*゚ー゚)「はい!」

(,,゚Д゚)「おう!」

自分に向かってくる敵に唸りながら曲刀を振り下ろす狼男。

しかしタイミングをずらした走法で近付いたしぃは危なげなくその刀をかわし、
狼男の武器を持たない半身側に駆け寄り、落ち着いてソードスキルを放った。

(*゚ー゚)「はぁ!」

高速の三連撃。

もともと短剣は一撃一撃のつながりが短く瞬時に複数回当てることが出来るのだが、
しぃの放つ連撃はもともと短剣を使っていたモララーが息をのむほどに成長していた。

狼男「ぎゃりゅあ!」

.

199 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:05:10 ID:Qw/AbN2w0

目に見えて減少する狼男のHPバー。

それを確認することも無く、そのまま前に跳ぶしぃ。
硬直した状態ではあったが最後の一撃を放ちながらの跳躍であったため、
勢いを殺さずに狼男の後ろに着地する。

狼男「ぐりゅうぅぅ」

奇妙なうめき声を上げながらしぃを追おうとする狼男。

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

狼男よりは聞き取れる雄叫びをあげながらギコの片手剣が狼男の背中を裂く。
のけ反った狼男の腰を分断するように、腰をひねりながら更に横に一閃する。

(,,゚Д゚)「今度はこっちだゴルァ!」

ギコの放った一撃はソードスキルではない。
だが、上げたレベルの分と兄者が作った片手剣の性能により、
その一撃一撃は低レベル時代の単発重攻撃技ほどの威力を持っていた。

そして無理な態勢での追撃は行わずバックステップで距離を取るギコ。

改めてギコを敵と認めて曲刀を向ける狼男。

その背中を切り刻むしぃの短刀。

迷いの無い六連撃は狼男のHPバーを黄色に変え、赤くなる手前まで減少させた。

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!!」

動きの止まった狼男に真横に振りぬかれるギコの片手剣。

片手剣水平四連撃

その技は狼男の身体に水色に光る四本の斬撃を刻み、その体をポリゴンへと変えた。

( ´∀`)「お見事もなね」

.
200 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:06:56 ID:Qw/AbN2w0

クックルのサポートとビーグルの放ったスキルによる攪乱はあったものの、
ほぼ一人で狼男を二体片付けたモナーがクックルに近寄る。

( ゚∋゚)「ああ。あの二人は強くなったな」

( ´∀`)「それももなけど、クックルの指示ももなよ」

( ゚∋゚)「……やめてくれ」

( ´∀`)「嘘や冗談じゃないもなよ。しぃも言ってたもなけど、クックルにはクックルの指揮があるもな」

( ゚∋゚)「……」

モナーとクックルが見守る中ギコとしぃはハイタッチをして勝利を喜び、
そして二人に向かって駆け寄ってきた。



( ´∀`)「ここで一度漏れが無いか確認するもな」

安全エリアまでたどり着いた四人は、中央付近の芝生の上に集まった。
今回四人がやっているクエストはいくつかの素材アイテムを集める必要があったため、
今までの行程での採取し忘れが無いかを確認するためだった。

もちろん、休憩の意味はあるが。

(*゚ー゚)「はい」

ウインドウを開いて自分が採取した素材を確認するしぃ。
ギコは採取は行っていないため、そばに立って周囲を警戒している。

( ゚∋゚)「クエストに必要な個数は俺が持つから、一回出して渡してくれ」

(*゚ー゚)「分かりました」

クックルとしぃがクエストに絡んだ確認をしている間に、
モナーはタイムスケジュールの確認とショボンから送られてくる情報の確認をする。

.

201 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:07:39 ID:Qw/AbN2w0

( ´∀`)「(今までならしぃの隣でウインドウを覗き込んでいたギコが、
今は誰に何かを言われたわけではなく自発的に周囲の警戒をしているもな。
モンスターが出ない安全エリアと言われているとはいえ何があるか分からないもなからね。
……本当に成長したもな)」

皆が座って打ち合わせをする中、一人立って周囲を伺っているギコを見てモナーは微笑んだ。

(,,゚Д゚)「この辺りは食べられる木の実とかは生って無いんだなゴルァ」

( ´∀`)「……感心して損したもな」

(,,゚Д゚)「?なんか言ったか?モナー」

( ´∀`)「何でもないもなよ」

つまらなそうに呟いたギコの言葉に、思わずため息を漏らしつつ呟いたモナー。
ギコの問いかけに首を振ってから、自分が開いたウインドウに目を向ける。

( ゚∋゚)「どうだ?モナー」

( ´∀`)「今のところ予定より良いペースもな。
戦闘回数・ポップ数は事前情報よりも多くなってるもなけど、時間は短縮できているもなからね」

(*゚ー゚)「事前情報との食い違いはどれくらいなんですか?」

( ´∀`)「ちょっとまつもな……。ギリギリ誤差範囲内もなね。でもこの先次第では分からないもな」

(,,゚Д゚)「前より増えてるってことか!?」

( ´∀`)「……そうもな。敵のレベルは変わってないもなけど、一度のポップ数と出現エリアの増加、
あとポップする時間が短くなっているかもしれないもな」

( ゚∋゚)「それは……」

( ´∀`)「とは言っても、今のモナ達には特に問題になる増加ではないもなよ。
まずは今日の調査を出来るだけ正確に行うことが重要もな。
難しいことはショボン達に任せておけば良いもなから」

(,,゚Д゚)「そうだなゴルァ」

(*゚ー゚)「ですね」

.

202 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:08:40 ID:Qw/AbN2w0

(;゚∋゚)「そういうもんでもないと思うがな。とにかく、一応今の時点でショボンに連絡しておいてくれ」

( ´∀`)「分かったもな。そういえばショボンからもメッセージが来ていたもなよ」

( ゚∋゚)「何かあったのか?」

( ´∀`)「まだ全文しっかり読んでないもなけど、各班の現状をまとめたみたいもな。
さっき一度こちらの状況を送っておいたもなから、そのまとめもなね。
特に問題は無いと思うもなけど、一応全部読んでおくもな」

( ゚∋゚)「頼む。こちらはクエストの確認をしておく」

( ´∀`)「宜しくもな」

(,,゚Д゚)「警戒は任せろだゴルァ」

( ´∀`)( ゚∋゚)(*゚ー゚)「(なんだ。食べ物探してただけじゃなかったんだ)」

(,,゚Д゚)??

自分が意気揚々と宣言すると、三人が何とも言えない瞳でこちらを見た。
不思議に思って三人の顔を見返すと、三人が三人とも慌てて視線を逸らした。

(*゚ー゚)「お、お願いねギコ君」

( ゚∋゚)「頼んだ」

( ´∀`)「よろしくもな」

(,,゚Д゚)「お、おうだゴルァ」

釈然としないがとりあえず警戒を続けるギコ。

クックルとしぃは芝生の上にマットを広げ、
その上に素材アイテムを並べてクエストのデータと照らし合わせていく。

( ´∀`)「(『……以上』もな…っと…。さて、ショボンからのメッセージを確認するもな)」

ショボンへの報告メッセージを送ったモナーは、届いていたショボンからのメッセージを開く。

.

203 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:10:05 ID:Qw/AbN2w0

( ´∀`)「(緊急メッセージ扱いにはされてなかったから確認しなかったもなけど、
やっぱり大丈夫そうもなね。モナ達の事と、クー達、ドクオ達のこと。みんな問題無いみたいもなね。
で、最後に護衛班の事もなけど…。護衛は結局三人になったもなか。………!!!!!)」

ショボンからのメッセージを読んでいたモナーが小さく音が出るように息をした。

( ゚∋゚)!?

(*゚ー゚)!?

(,,゚Д゚)!?

疑似呼吸しかしていないこの電子の世界において、そのような呼吸はかなり珍しく、
思わずモナーを見る三人。

三人の視界の先には、自分が見られていることにまったく気付いていないモナー。

彼は目を大きく見開いてウインドウを凝視している。
ページ移動をしていたのだろうか、人差し指を立てた手がかすかに震えているようにさえ見えた。

(,,゚Д゚)「も、モナー?何かあったのかゴルァ?」

クックルとしぃがその様子に驚いて何も言えないでいたが、ギコは率直に問いかけをした。

(;   )!

固まった表情のままギコを見るモナー。

( ´∀`)「な、何でもないもなよ。
ショボンからのメッセージに新しい家畜の情報があったから、思わず驚いてしまっただけもな」

しかしすぐにいつものモナーに戻り、にこやかにギコと話しはじめる。

(,,゚Д゚)「お、また新しい肉が食べられるのか?」

( ´∀`)「ギコはお肉が好きもなね。うまくいけばそうなるもなけど、まだ分からないもな」

.

204 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:11:07 ID:Qw/AbN2w0

(,,゚Д゚)「なんだ」

( ´∀`)「でも、新しい家畜が増えたら嬉しいもなね」

(,,゚Д゚)「この前の夕食に出た肉もうまかったぞゴルァ」

( ´∀`)「あれはどこにでもいるガルベカウもな。
ただ育成方法を変えてみたら、肉のレベルが高確率で高くなるようになったもなよ」

(,,゚Д゚)「そうなのか!」

( ´∀`)「育成も奥が深いもな」

(,,゚Д゚)「楽しみだぞゴルァ」

楽しげに会話をする二人を見て安心してアイテムに視線を戻すしぃ。

( ゚∋゚)「(……今は言えないこと……か。緊急でないなら、あとで聞けばいいか)」

(*゚ー゚)「クックルさん?」

( ゚∋゚)「ああ、すまん」

鋭い視線でモナーを見ていたクックルだったが、しぃの声に我に返りアイテムに視線を戻す。

( ´∀`)「(……今頃になってこの名前を目にするなんて……。
黒鉄宮の碑の名前は消されていなかったから、まだ生きていることは知っていたけれど……。
とりあえず、ショボンに連絡しないと。でも、なんて書けば……。
早く話しておくべきだった……。これは、おれのミスだ)」

ギコとの雑談を切り上げて、再びショボンへのメッセージを打ちはじめるモナー。

( ´∀`)「(あの日の事を、もっと詳しく話しておくべきだったんだ!)」

震えそうになる指を笑顔で抑え、メッセージを打つ。

( ´∀`)「(今のショボン達は、あの時のおれ達とは違う。だから、大丈夫だとは思うが…。
念のため、ドクオにも送った方が……。いや、でも……いたずらに……)」

打ち終えた頃、ようやく指の震えは完全に収まり、もう一度その短いメッセージを読む。
そして一呼吸した後に、しっかりと送信ボタンを押した。

.

205 名前: ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:11:54 ID:Qw/AbN2w0

( ゚∋゚)「モナー。こちらの確認は終わった。そっちはどうだ?」

( ´∀`)「こっちも大丈夫もなよ。時間はまだ大丈夫もなけど、余裕をもって出発するもな?」

( ゚∋゚)「そうだな。余裕はあったほうが良い」

(*゚ー゚)「はい」

(,,゚Д゚)「そうだなゴルァ」

立ち上がるクックルとしぃ。

ギコも含めて三人で装備とフォーメーションの確認をし始める。

( ´∀`)「(そう。余裕が大事…。
……今のモナ達には、余裕を持つだけの底力はあるもな……だから大丈夫もな!)」

立ち上がるモナー。

先程のメッセージが送信されたのを確認してから、ゆっくりとした動作でウインドウを閉じる。

( ´∀`)「準備はいいもなか?」

(*゚ー゚)「はい!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

( ゚∋゚)「よし、出発だ!」

手を上げて雄叫びをあげる四人。



モナーのメッセージをショボンとドクオが開くのは、その少し先だった。



第十話 終

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