122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 02:17:58.48 ID:GoXRo1Ng0
(  д ) 『リヒト イル グラン …!』

言霊は悠久の時を越えても、尚その力を発揮した。
例えそれを行使する者の声がどれだけ暗く淀んでいようと、古く交わされた盟約は決して違うことはない。
苔の頼りない光が淡く照らすほの暗い冷たい石の広間に、魔力が嬉々と溢れ出す。

(  д ) 『我は汝が斧 永劫の忠誠を誓いし 主の眠りを守護する守人なり』

円盤の上に翳した手が、逡巡する。
少し震えながら、確かめるように手のひらを眺めた。一指し指に、小さな切り傷がまだ新しい。
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 02:19:32.13 ID:GoXRo1Ng0
(  д ) ブチィッ!

人差し指の傷の上から一息に噛み切る。躊躇いは憤りに変わる。
一つ、息をすると、身体の震えが静まった。滴り落ちて鮮血が円盤を濡らす。
いくら迷っても、彼に後戻りする道などない。
彼にしては冷静すぎる、怜悧な声が、最後の言葉を唱えた。

(  д ) 『血の盟約に答え その務めの終わりを告げる』

円盤から、一斉に青白い光の筋が噴き出し、石の床の魔法陣を描き出す。
魔力がさざ波のようなうねりを持って、幾重にも広がり始めた。

( ゚д゚ ) 「……悪いな」

誰にともなく、青年は呻く様に呟く。


巨大な古城が、悲鳴を上げ始めた――――。
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 02:21:05.18 ID:GoXRo1Ng0




( ^ω^)ゴッドイーターのようです!
第一章 『 La Belle au bois dormant 』


第三話 眠り姫の目覚め




128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 02:23:07.01 ID:GoXRo1Ng0
( ^ω^)「――――デレ……」

ξ‐凵])ξ …

そこに横たわる乙女は、見れば見るほど、夢の中の少女に似ていた。
ブーンのよく知る、たった一人の肉親である、妹に。

( ФωФ)「む、この娘の時はまだ止まっているのである」

( ;^ω^)「ど、どうしてデレが此処に、これはどういうことだお」

( ;^ω^)「何かの罠かお?いくらなんでもおかしいお、大体、300年も眠ってるはずが……」

( ФωФ)「何をごちゃごちゃ言ってるのである、もう喰っていいか?」

( #^ω^)「さっきから喰う喰ううっせー、このブタネコ!」

(#ФωФ)「口の利き方に気を着けるのである!この下等な溝鼠め!」

ヽ( #^ω^)ノ「なんだとー!」

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 02:24:40.11 ID:GoXRo1Ng0
Σ(;゙゚'ω゚')ノノ <グキッ「おお!?」

( ФωФ)「あ、コケた」

( ^ω)听)ξ ちゅっ★

ξ゚听)ξ パチリ

ξ゚听)ξ「……」

( ;^ω^)「……うわッ、酷い安易な展開」

我ながら作者もそう思った。

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 02:25:36.82 ID:GoXRo1Ng0
ξ゚听)ξ おうじさま?

ξ゚听)ξ またこれは幾度目かの夢なのかしら

ξ゚听)ξ えいえんとも思われた眠りの時

ξ゚听)ξ おうじさまが現れて

ξ゚听)ξ この私を悪夢からお救い下さる夢

ξ゚听)ξ ろうそくの火のように吹き消せば

ξ゚听)ξ すぐに消えてしまう夢なのかしら

( ^ω^)「!」

( ;ω;)ブワッ

( つ;ω;)つ 「デレ!おにーちゃんだよおおおおおおおお!」

ξ゚听)ξ「縦読み」

( つ;ω;)つ「へ?」

ξ#゚听)ξ「私のファーストキスを返せこのキモオタ野郎おおおおおおおお!!」

Σ( ゙゚ω゚)「ごふッ!?」
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 02:27:36.73 ID:GoXRo1Ng0
細く白いツンの脚がドレスの裾から肌蹴る。
次の瞬間ブーンの鳩尾にクリーンヒットした。
激痛と共に彼は確信した。人違いだ。こんな乱暴な女は断じてデレじゃない。
デレはこんなコミカルなクマのパンツとか履かない。

ξ#゚听)ξ「ちッ、胸糞悪い目覚めだぜ」

ナイトドレスの裾を直しながら、お姫様は忌々しげに毒づいた。

( #)ω`)「うう、デレ、デレ……」

ξ゚听)ξ「デレって誰よ? 私はツン。ツン・ヴィップ・デレ・テラワロス。
この城の王、ユッセ王の娘よ」

( ФωФ)(む、この娘……)

( ^ω^)「……テラワロス、って、随分昔に滅びた王族の名だお」

ξ゚听)ξ「滅びた?何を言ってるの?テラワロスは正統なユッセの継承者。
      大陸を最も多く統べる国の王族よ?そんな簡単に滅びるわけ……」

( ^ω^)「千年ほど前に滅びてるお」

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 02:29:56.68 ID:GoXRo1Ng0
ξ゚听)ξ「は?」

( ^ω^)「我々の歴史では、テラワロスは約千年も前に滅びた伝説の名だお」

ξ;゚听)ξ「でん…せつ?何を言ってるの?」

( ^ω^)「ユッセの王だとされる記述もないし、ユッセの都は今もユッセ王が治めてるお」

ξ;゚听)ξ「だから!ユッセ王は私のお父様よ!
       この城の主、ユッセ・ヴィップ・ド・テラワロス!」

( ;^ω^)「と、言われましても…」

ξ#゚听)ξ「もういいわ!兎に角、王女の寝室に無断で入ったこと、
お父様に言いつけてやるから!」

( ;^ω^)「え、ちょ、起きぬけでそんなあーた」

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 02:31:21.22 ID:GoXRo1Ng0
言うが早いか、お姫様は寝巻のまま、つかつかと勇み足で扉を出て行く。
ブーン達が入って来た搭の入り口ににまで辿り着いたところで、悲鳴が聞こえて来た。

( ;^ω^)「言わんこっちゃないお」

猫をひょいと肩に乗せてブーンが後を追う。
小さな入り口の前に、姫は茫然と立っていた。

ξ゚听)ξ「なに…」

ξ )ξ「そん…な…」

ぐにゃりと揺らめいて倒れるツンを、ブーンが後から抱き抱える。
余りのショックに気を失ってしまったようだ。

( ^ω^)「!」

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 03:18:46.69 ID:GoXRo1Ng0
ツン王女を抱きかかえたブーンが其処から見たもの。

広がりゆく廃墟の様相。
あの美しい城が、浸食されるように、みるみる荒廃した廃墟と化してゆく。

( ;^ω^)「これは…何が起きてるんだお?」

( ФωФ)「ふむ、どうやら小僧に一杯喰わされたようである。ここは危険であるぞ」

( ;^ω^)「ミルナを探すお!」

気絶したツンを抱えたまま、梯子を転げ落ちるように降りてゆく。
床に足が着いた瞬間に梯子が腐食して崩れ落ちた。

( ;^ω^)「くそ、ミルナ―ッ!どこだお!」

不意に、傍を歩いていた黒猫が耳をそばだてる。

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 03:20:48.86 ID:GoXRo1Ng0
( ФωФ)「地下か」

( ;^ω^)「何?」

( ФωФ)「地下に、あの小僧のと同じ魔力の反応が」

( ;^ω^)「まじかよッッッ!!!!1111」

黒猫に案内しろと叫ぶや走り出す。急がなければならなかった。
ミルナがもしも一人で転送してしまえば、もうブーン達に帰る手立てはない。
しかも、この城の急速に朽ちてゆく様子は、ただごとではない。
迷路のような巨城だったが、ブーンは一度通った道は全て覚えていた。
空間把握はこの稼業の基本中の基本だ。

(;;^ω^)「ハァッ……ハァッ…!」

娘一人を抱え、下へ下へと階段を走り抜ける。
広い敷地が、曲がり角が、とてつもなくもどかしいが、最早息継ぎさえ構っている場合ではない。
身が小さく機敏で小回りの利く猫のその後を、必死に追う。

( ФωФ)ピン ! 「その扉の奥である」

(;゙゚'ω゚')「だらっしゃああああああああッ!」
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 03:27:02.55 ID:GoXRo1Ng0
その勢いのまま扉に身体ごとスライディングして破壊し、滑り込んだ。
儀式用に造られた広間には、青白い光が―――魔力が、充満している。

(;゙゚'ω゚')「ハッ……ゼイゼイ…ハァッ、み、ミルナッ!」

( ゚д゚ ) 「……よぉ」

青白く光りを発する魔法陣の中央……ユッセ城の地下にもあった円盤の傍らに、
騎士の格好をした青年が立っていた。

( ゚д゚ )「来ちまったか…ご丁寧にそいつを連れて」

ミルナはブーンが抱えている少女を見るなり、双眸を見開いて強張らせた。
唇を噛む様子は、ひどくバツが悪そうだ。
ブーンはずり落ちそうなツンを抱えなおしながら、上がる息を押さえつけて青年を詰問する。

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 03:29:22.87 ID:GoXRo1Ng0
( ;^ω^)「ハァッ…ハァッ…ミルナ……何を、してるお?」

( ゚д゚ ) 「何って…、俺の使命を全うしてるんだよ」

電撃のように、パリパリと、ミルナが手を翳した円盤から稲妻が飛んでいる。
明らかに、前回の転送とは違う様相を呈していた。

( ゚д゚ ) 「俺は、この城を永遠に葬り去る為に来たんだ」

( ;^ω^)「最初から、そうする気だったお……」

( ゚д゚ ) 「そうだ」

( ゚д゚ ) 「そいつに、今更生きて城を出られたら困るんだ」

( ^ω^)「ユッセの正統な王位継承者だからかお」

(#゚д゚ ) 「現王以外に、ユッセに王はいないッ!」

ミルナの怒声が石室に響き渡る。
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 03:36:43.39 ID:GoXRo1Ng0
( ゚д゚ ) 「あんなに民の為に尽くす王以外に…!どこに王が居るというんだ!!」

( ゚д゚ ) 「あの美しい都を見たろ?あれを作りあげたのは誰だ?」

( ゚д゚ ) 「民を想い、国を想い、政治をしてきたのは誰だよ?」

( ゚д゚ ) 「千年、いや、たった一秒だって…そいつが都に何をしてやれた?」

( ゚д゚ ) 「血だけが…たかが血だけが王の血だってだけじゃねぇかッ!」

頭の上で轟音が鳴り響き始めた。パラパラと瓦礫が降り注いでくる。
千年の間、ただ眠り続け、守り続けられた古城が、悲鳴をあげている。
滅びの魔力の力は既に噴水を枯らし、庭園を死の庭にした。その波は次々に訪れ、
次々に美しき古城を蝕み続けている。

ξ‐凵])ξ「……」
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 03:43:06.95 ID:GoXRo1Ng0
( ^ω^)「……」

(;゚д゚ )「関係ないッ!」

ブーンの視線を振り解くように拳で空気を切り裂く。
担がれるままの乙女を睨み抜き、脅すような声色で語りかけた。

( ゚д゚ ) 「その女を其処に置いて来い。別にお前まで殺そうとは思わん」

( ゚д゚ ) 「お前には王家の事情を秘匿する盟約があるしな」

( ^ω^)「そうだお」

ミルナの声色に臆することなく、静かに息を吐いて、墓荒らしは青年を見据えた。

( ^ω^)「そして、『叡智は余すことなく押収する』、義務があるお」

( ゚д゚ ) 「……何?」

156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 03:45:11.49 ID:GoXRo1Ng0
( ^ω^)「このツン・ヴィップ・デレ・テラワロスは、滅びたテラワロス王家の生き残り。
      三百年の時を超えた、最早生きた歴史と叡智だお」

(; ゚д゚ ) 「馬鹿なことを! 人間を押収するってのか!」

( ^ω^)「盟約に従うお・・・!」

( ゚д゚ ) 「くッ、それだけは出来んッ!」

崩壊の音が轟く中、ミルナが勢いよく剣を抜く。
青白い光を反射して、ブーンの抱えた姫に向かって振り下ろされた。

( ;^ω^)「ミルナ!もう時間がないお!脱出するお!」

ターンして横に身を翻す。剣戟が冷たい風と共に鼻先とすれ違う。

( ゚д゚ ) 「五月蠅い! その女だけは…出すわけにいかねーんだッ! 例え俺が死んでもなッ!!」

間髪入れずに繰りだす横薙ぎ。計ったように身を低く屈めて避ける。
ツンの金色の髪がひとふさ、宙を舞う。
159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 03:48:02.44 ID:GoXRo1Ng0
( ゚д゚ ) 「くそ! ちょこまかと!」

( ;^ω^)「やめるお! この子だって被害者だお、殺していいわけないお!」

( ゚д゚ ) 「そいつが居なけりゃ全部丸く収まるんだよ!」

( ;^ω^)「そんなの単なる人殺しだお!!」

(#゚д゚ ) 「黙れ黙れェェッ!!お前に何が分かるッ!」

赤ん坊大の瓦礫が真横に落ちてくるのを避けた先に、剣先が突っ込んでくる。
女とはいえ一人を背負いながら避け切ることは不可能と見るや、ツンを庇う形で肩を向けた。

(;゙゚ω゚)「ぐッ!」

肩に剣先が突き刺さる。真っ赤な液体が柄へと伝い降りてゆく。

(;゚д゚ ) 「お前・・・なんでそこまで・・!?」



( ; ω )「あ、」
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 04:15:49.55 ID:GoXRo1Ng0
( ;^ω^)「・・・主を手に掛けるとは墓守失格だおッッ!!」

(;゙゚д゚ ) 「―――なッ!?貴様何故それを」

一瞬のその隙を突いて、屈んだ体制から二人分の体重を乗せて間合いに踏み込む。

( д ) 「ぐッ!?」

鳩尾に重い蹴りを喰らい、ミルナは床に崩れ落ちた。

( ;^ω^)「やっぱりかお……」

姫を抱えなおして、意識を手放したミルナを引き摺り、円盤の前に立つ。
がらがらと崩れ落ちる音が、もう留まることはない。地下の揺れは酷くなっていくばかりだ。

( ФωФ)「くくく。どうするんだ?その小僧が起きないと機動出来んぞ」

166 名前:1レスは無理でした・・・:2010/11/08(月) 04:16:36.51 ID:GoXRo1Ng0
やたら嬉しそうに、酷く粘着質な声色で、黒猫が話しかけて来た。

( ФωФ)「最も、起きても機動してくれないだろうなー、ひひ」

気味の悪い笑いを、抑えきれないといった様子で赤い口をだらしなく広げる。
ブーンの足元に纏わりつき、垂れる血の匂いに舌舐めずりをした。

( ^ω^)「……ロマネスク」

名を呼ばれると、三日月のように金色の瞳を細めて、踊るように落ちて来た瓦礫を避ける。

( ФωФ)「なんだ?いひひ。吾輩の力を借りたいのか?脆弱な人間よ。ふっふふふ」

( ^ω^)「胸糞悪い猫野郎だお」

ブーンは、黒猫に向かって一歩を踏み出した――――


第四話に続く

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