- 50
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:12:03.49 ID:GoXRo1Ng0
- どんなに美しい都でも、人が暮らすならば闇はある。
美しければ尚、影は濃い。
ユッセは実際、貧富の差の激しい都でもあった。
『工房区』と呼ばれるこの場所は、所謂貧民窟だ。
流れ者を蔑視する風習のある都で、唯一彼らを受け入れる吹き溜まり。
工房区と呼ばれるのは、過去、銀細工工房があったことに由来する。
――――なぁぁお。
打ち砕かれた民家の壁や、散乱する硝子の破片。
街灯も無い路地裏の闇に紛れて、一匹の黒猫が在る。
(゜д゜@「あらやだ。薄汚い猫だね、しっ、しっ!」
一人の年老いた娼婦が、通りがかりに彼を見つけた。
暗闇の中で、二つのお日様のような金色の眼だけが、ぱちぱちと瞬く。
- 51
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:13:00.03 ID:GoXRo1Ng0
- (゜д゜@「……あらやだ、お前、随分珍しくて、綺麗な眼をしてるじゃないかい?」
眼の下に深く刻まれた皺と隈が歪み、口端を上げて嗤う。
おぞましい考えが、孤独と貧しさに生きて来た老女の脳裏に浮かんだ。
(゜д゜@「ほうら、こっちにおいで、餌をあげるよ」
左手を差し出して、優しい声で猫を呼ぶ。
利き手はそっと懐の果物ナイフに触れさせた。
(゜д゜@「ひひひ、お前の眼玉は幾らで売れるかねぇ」
(゜д゜@「肉は食えるし、毛皮は小さくて使い物にならないけど」
(゜д゜@「さぁおいで、目玉を綺麗に繰り抜いて、急いで保存液に着けなくちゃあ」
優雅な歩みですり寄って来た黒猫の後首を、老女は瞬く間に掴んだ。
利き手に持ったナイフを振りあげて、猫の腹に突き立てる。
- 53
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:15:40.54 ID:GoXRo1Ng0
- (゜д゜@「?」
ふと、娼婦は違和感に眉を顰めた。
肉を刺した感触がしない。それどころか、血の一滴すら出ていない。
その生き物は呻くこともせず、悲鳴もあげなかった。
訝しげにまじまじと見つめると、彼もその美しい黄金色の眼で老女を見ている。
眼が合った途端、女は全身を冷たいものが通り過ぎていくのを感じた。
黒猫は嗤っていた。
真っ赤な口を開けてげらげら嗤う。女は益々怯えた。
怯えきった表情を見て、猫がまた嗤う。
怖くなって刺した。何度も刺した。けれど何も感じない。猫は嗤い続ける。
女はもう気が狂いそうだった。けたたましい嗤い声が止まった。
女は息をのんだ。
真っ赤な大きな口を開けると、無数の白い牙が羅列していた。
猫は女を呑んだ。
「助けて、許して、たすけて、ゆるして」
繰り返す女を頭から呑み込んでいった。
- 54
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:17:05.01 ID:GoXRo1Ng0
- ( ФωФ)「婆は不味いのである」
舌舐めずりをしながら猫が言った。
青白い三日月が見下ろす、夜の貧民窟。
第一章 『 La Behlle au bois dormant 』
第二話 呪われた古城へ
- 56
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:18:32.89 ID:GoXRo1Ng0
- ( *^ω^)「だ、だめだお!」
( *^ω^)「兄妹はそんなことしちゃ、あふん、おろろろろーん」
Σ( ^ω^)「はッ!?」
( ^ω^)「……知らない天井だ」
ブーンの為に用意された城の離れの客室。
久しぶりのふかふかのベッドで、何時になく素晴らしい夢を見た気がする。
愚息も元気だ。掛け布団を撥ね退けて、身体を起こす。
( ^ω^)「おはよう、マイ・サン」
脚の間の愚息に声をかける。
折角だから一発抜くことにした。
コンコン ガチャ
( ゚д゚ )「食事の用意が――――」
( ^ω^)「あ」
( ゚д゚ )「あ…」
- 58
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:20:34.90 ID:GoXRo1Ng0
- ( ゚д゚ )
( ゚д゚ ) <プッ
Σ( ^ω^) ↓シュゥゥゥン
( ゚д゚ ) 「食事の用意ができやがりました」
( ;^ω^)「今行くから早く閉めろ」
( ゚д゚ ) 「いや、あの、それとさ…」
( ゚д゚ )
( ゚д゚ ) <プッ
( #^ω^)「早く閉めろお!! 」
気持ちのいい朝は台無しになったようだ。仕方なく着替えて移動する。
今朝は怒りで食欲が旺盛になっていたのか、軽く20人前は平らげた。
|::━◎┥「朝でもそんなに食べるのか」
- 61
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:21:17.29 ID:GoXRo1Ng0
- 王はすでに食事を終えていた。
が、矢張り胸やけが抑えられないのか、口元にシルクを宛がっている。
( ^ω^)「別に、もともと大食いなわけではないお」
最後のパンケーキを口に放り込んでから、王に答える。
ブーンの手にしたカップにミルクが注がれる。
|::━◎┥「ほう?とても元小食には見えないが」
( ^ω^)「食事を出してもらって感謝してるお」
ブーンはそれ以上、話すつもりはなかった。
ミルクを一気に呑みほして言った。
( ^ω^)「さて、地下に案内してもらうお」
- 64
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:23:50.58 ID:GoXRo1Ng0
- ――――謁見の間――――
円状の床を覆い尽くす魔法陣。
ドーム状のクリスタル天井から落ちる梁の影が、
さらなる複雑な文様を魔法陣に描き出す、およそ謁見の間らしからぬ空間。
( ^ω^)「……やはり、この真下かお」
|::━◎┥「その通りだ。おい、ミルナを呼べ」
( ゚д゚ ) 「もうここに控えております」
気配も感じさせず、広間の奥に青年は立っていた。
ユッセの紋章の入った銀の留め具でマントを留め、
腰には短剣と長剣をクロスさせ下げている。
そして、肩に一匹の黒猫を乗せていた。
ブーンはその姿を見るや、眉間にあからさまな皺を寄せる。
|::━◎┥「居たか。これは私の腹心の騎士、ミルナだ。
案内役として、同行してもらうぞ」
- 66
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:25:01.80 ID:GoXRo1Ng0
- ( ゚д゚ ) 「おっと、今朝は失礼したな」
騎士が歩み寄ると、黒猫が肩からするりと降りてブーンの足元へ向かう。
( ^ω^)「……ロマ」
( ゚д゚ ) 「その猫、やっぱお前の猫だったか。
朝からお前の部屋の扉を引っ掻き続けてたぞ」
( ^ω^)「それを言いかけてたのかお」
黒猫は慣れたように、ブーンの肩へひと飛びに乗った。
( ФωФ)「なぁーお」
|::━◎┥「……その猫も連れていくつもりかね?」
( ^ω^)「気にすんな」
少年の肩の上で毛づくろいをする猫を、王は呆れたように見る。
|::━◎┥「まあいいだろう。ではミルナよ、地下への扉を開け」
( ゚д゚ ) 「御意」
- 67
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:26:09.03 ID:GoXRo1Ng0
- ミルナは言うなり、ブーンと王に魔法陣の外側へ下がるように促す。
己は魔法陣の中心部、五芒星の上に立った。
( ^ω^)「彼が扉を開くのかお」
|::━◎┥「彼でなければこの結界は開けられん」
彼でなければ開けられない?
表情にこそ出さぬものの、いくつかの疑問符が脳裏をよぎる。
ミルナは騎士だと言う。果たして騎士がこんな大がかりな魔術を使うものか?
未だにブーンは他に術師らしきものに会っていない。
宮廷魔術師が聖地や禁域の管理に当たることはあっても、
騎士が直接管理するなど、聞いたことがない。
( ゚д゚ ) 「リヒト イル グラン」
五芒星の中で片膝立ちになり、刀剣を胸の前に翳して抜き放つ。
外側の円陣が淡く青色の光を帯びる。
- 69
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:27:29.50 ID:GoXRo1Ng0
- ( ゚д゚ ) 「古えよりの盟約に従い 汝が斧 ミルナ・リヒトが扉を叩く」
立ちあがり、刀剣を天井に翳す。
内側の文字が生きたように中央へ向かって光を帯びてゆく。
その光は中央の五芒星を介してミルナの身体を登り、剣先に収束する。
( ゚д゚ ) 「答えよ!!!! 」
持ち手を変えて一気に振り下ろされる光の剣。
甲高い音がして五芒星の中央に突き立てられた瞬間、
一斉に魔法陣から術式が光の雨となって立ち上る。
( ^ω^)(……これは……)
ブーンがミルナの一言一句を脳裏で反芻する。
その肩で、猫は欠伸をした。
|::━◎┥「……」
王はブーンの様子を眺め、兜の奥で眼を細めている。
- 70
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:28:30.68 ID:GoXRo1Ng0
- 地中で何かが蠢くような、地響きに近い音。
魔法陣が、ミルナの居る五芒星のみを残して、落ちてゆく。
地下へと続く、巨大な螺旋階段が姿を現した。
( ;^ω^)「思ってたより全然大がかりじゃーん」
一歩踏み出て、螺旋階段を覗き込む。
深く闇の底に続くかのようだ。
( ゚д゚ ) 「俺も最初みた時はそりゃあびっくr」
|::━◎┥「!、ミルナ」
ミルナが王に呼ばれて、ほんの僅かの間、動揺を顔に出した。
が、ブーンはその仕掛けに夢中で降りてゆく。
( ^ω^)「おほー!すごいおー!」
( ^ω^)「早く降りるおー!暗いお!怖いおー!フヒヒ」
- 71
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:29:25.34 ID:GoXRo1Ng0
- ( ゚д゚ ) 「……はしゃいでやがる」
|::━◎┥「……流石とでもいうべきか」
ハッとしたように、ミルナがおそるおそる後に続く。
( ゚д゚ ) 「お、おいマテ!何か仕掛けがあったらどうすんだ!」
( ^ω^)「んなもんないお」
(;゚д゚ ) 「なんでそんなのお前に分かるんだよ!」
( ^ω^)「てか本当にお前もくんの?」
( ゚д゚ ) 「あ、当たり前だろ!転送装置も動かせるのは俺なんだぞ!!11」
( ^ω^)「ビビってたくせにー」
( ФωФ)「なーうー。」
遠ざかってゆく二人(と一匹)を見下ろしながら、王は憂いに満ちた溜息を洩らす。
|::━◎┥「……」
- 74
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:32:39.47 ID:GoXRo1Ng0
( ゚д゚ ) 「……おい」
( ^ω^)「何だお?」
かびのような香りのする、真っ暗な階段を下りる足音が続く。
ブーンは慣れたようにどんどんと進んでいく。
( ゚д゚ ) 「お前、こんな暗闇で、見えてるのか?」
疑問。
灯りも無い、得体のしれない階段を。
ブーンは鼻歌すら歌いそうな様子で降りていく。
( ^ω^)「そこらへんをよく見るお」
( ゚д゚ ) 「ん?」
石壁、階段。ミルナは眼を凝らして眺める。
本当に僅かだが、ぼんやりとその輪郭が見えてきた。
( ゚д゚ ) 「……あれ?」
- 76
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:34:42.42 ID:GoXRo1Ng0
- ( ^ω^)「光苔だお。燃料も魔力も必要としない、天然の灯りが繁殖してるお」
( ゚д゚ ) 「お前、よくこんな頼りない光気付いたな」
( ^ω^)「暗闇に眼が慣れないと気付かないお」
あやすように言われて、ミルナはバツが悪そうに唇を尖らせた。
それもそうだ。自分よりも年下の少年に諭されているのだから、バツが悪い。
しばし沈黙。石段を降りる足音が続く。
( ゚д゚ ) 「うおッ!?」
( ^ω^)「どうしたお?」
突然奇声を上げたミルナに、ブーンが振り向く。
(;゚д゚ ) 「い、いま、足に何か……」
( ^ω^)「……」
ブーンが歩み寄って、ミルナの足元からひょいと黒く蠢く何かを摘みあげる。
- 78
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:36:05.62 ID:GoXRo1Ng0
- (;゚д゚ ) 「お、おい!だいじょう……」
( ^ω^)「……甲虫だお」
( ゚д゚ ) 「甲虫?」
( *^ω^)「ゴキたん」
( ゚д゚ )
( ^ω^)
( ^ω^)<プッ
( ФωФ)<プッ
Σ(#゚д゚ )
- 79
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:37:11.22 ID:GoXRo1Ng0
- ( #゚д゚ ) 「猫! お前、その猫も笑ったろ!
今!!!!11」
( ^ω^)「猫に話は通じないお。恥ずかしいはくちだお」
( #゚д゚ ) 「猫ともども覚悟してろよ」
再び足音が暫し続く。
( ゚д゚ ) 「……なぁ」
( ^ω^)「今度は何だお」
( ゚д゚ ) 「この階段まだ続くの?」
( ^ω^)「おまwww仮にもお前が案内役だろうがwwww」
( ゚д゚ ) 「だってもう間に耐えられないんだけど」
( ^ω^)「知るかおwwww」
- 80
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:38:00.19 ID:GoXRo1Ng0
- ( ゚д゚ ) 「……大体さー、何でお前ゴッドイーターとかやってんの?差別されね?」
( ^ω^)「何だお、暇潰しかお」
( ゚д゚ ) 「うんまぁそうなんだけど」
( #^ω^)「自重すれ」
( ゚д゚ ) 「いいじゃねーか、減るもんじゃなし」
屈託ない騎士の様子に、肩を竦めて零す。
( ^ω^)「……取り戻す為だお」
( ゚д゚ ) 「何を?」
( ^ω^)「大切なものだお」
( ゚д゚ ) 「だから何を?」
( #^ω^)「教える義理はないお!」
- 81
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:39:15.79 ID:GoXRo1Ng0
- ブーンは、あまり年の近い同性に慣れていない。
無遠慮に聞いてくるミルナに、多少の苛立ちを隠せず、突っぱねた。
ミルナは眼を瞬いて、へぇ、と声に出して横に並ぶ。
どうやら逆に好奇心を誘ってしまったようだ。
ナァナァ、教えろよ >( ゚д゚ ) ( ;^ω^)。○(
メンドクサ )
( ゚д゚ ) 「おk、恋人だな!?」
( ;^ω^)「ち、違うお!」
( ゚д゚ ) 「おっ、ムキになる所があっやすぃー」
( ;^ω^)「い、妹だお」
案内役の同行は、墓や遺跡の調査の重要度に応じて珍しくない。
が、こんなに絡んでくるタイプは初めてだ。
実際、普通仕事相手のプライベートに踏み込むことは先ずしないのがマナーだ。
一つか二つは年上の筈のこの青年が、ブーンには随分幼く見える。
(;゚д゚ ) 「お前のいもうとぉ!?かわいくな・・・」
- 83
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:40:36.74 ID:GoXRo1Ng0
ブゥ*^ω^)ン <
お兄ちゃん。.:*:・'゜
\_________________/
ο
゚ ポワァン
(
゚д゚ )
(*゚д゚ ) 「いこともない」
( ;^ω^) ゾクゥッ!?
そこから更に数十数分後――――
( ^ω^)「どうやら着いたようだお」
( ゚д゚ ) 「うおっ、まぶしッ」
- 85
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:41:58.48 ID:GoXRo1Ng0
- アーチ状の出口から光苔の群生地が開ける。
腰までの高さの細長い土台の上に、円盤状の装置が乗っているが、
殆ど使われた形跡の無い其れは、ヒカリゴケに覆われてしまっていた。
( ^ω^)「どうやら本当に誰も通ったことがないらしいお」
円盤を調べながら、独り呟く。
( ゚д゚ ) 「たりめーだ、禁域だからな」
( ^ω^)「呪いの所為で?」
( ゚д゚ ) 「……」
あんなに饒舌だったというのに、途端に押し黙った。
この青年は、あの王の腹心の騎士と言う割に、王のような強かさは持ち合わせていないようだ。
何か、まだ隠しているのだろうが、口止めされていることがバレバレだ。
ミルナはどうにも、腹心の騎士というには違和感が拭えなかった。
嘘がなく純粋だというだけで、務まる稼業ではないことを、年下ながらにブーンはよく知っている。
- 87
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:44:55.04 ID:GoXRo1Ng0
- ( ^ω^)「まぁいいお、百聞は一見にしかずだお」
( ゚д゚ ) 「……転送装置を動かすぞ」
ミルナが円盤の上の苔を払い落とす。
( ゚д゚ ) 「えっと、……あった、これか」
( ゚д゚ ) 「リヒト イル グラン」
円盤に手を翳して、呪を唱えた。
( ゚д゚ ) 「……」
( ^ω^)「……」
( ゚д゚ ) 「あれ?」
円盤は沈黙したまま、何らかの作用が起きた様子もない。
ミルナは小首を傾げて円盤の下を覗いたり、自分の手のひらを振ったりしている。
無論、それでどうにかなるとも思えないが。
- 88
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:46:15.67 ID:GoXRo1Ng0
- ( ^ω^)「何にも起こらないお」
( ゚д゚ ) 「っかしーなー、円盤に右手を着いて、呪文を唱えて……」
( ^ω^)「何か忘れてないかお?」
( ゚д゚ ) 「王様に聞いた手順は間違ってねー筈なんだが」
( ФωФ)「血の証を立てろ、愚か者め」
( ゚д゚)「あ、そっか、指を切って手を着くんだったわりーわりーわすれt……」
( ゚д゚) <愚か者め?
(__つ
< ̄ ̄ ̄ ̄ ̄>
 ̄|| ̄
( ゚д゚ )
(__つ
< ̄ ̄ ̄ ̄ ̄>
 ̄|| ̄
- 90
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:47:30.88 ID:GoXRo1Ng0
- ( ;^ω^)「こっちみんなwwww早くやれ愚か者め」
( ゚д゚ ) 「へ? 今のお前?」
( ;^ω^)「そうだ愚か者め、いいから早くやれお愚か者めwwww」
( #^ω^)(クソ猫がぶち殺すお!!!!11)
( ФωФ)「なぁーお」
ミルナは訝しげながらも、掌に短剣で切り傷をつける。
( ゚д゚ ) 「リヒト イル グラン …!」
今度こそ、円盤に手を翳して、呪を唱えた!
ヒカリゴケとは比べ物にならない眩い光が、石室を覆う。
二人と一匹の姿は、光の中に呑みこまれていった。
( ^ω^)「シュゥゥゥウウウンwwwwww」
- 91
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:49:09.72 ID:GoXRo1Ng0
- 息を吸うと、空気の匂いが変わった。
カビくさい湿った香りから、森の、木々の香りがする。
そして、瘴気が漂っているのを肌で感じ取る。
二人と一匹は、漸く眼を開けた。
( ^ω^)「……これはすごいお」
( ゚д゚ ) 「で、でけぇ……!」
青空の下、巨大な白亜の城が、眼前に聳え立っていた。
城の規模はユッセ城の敷地二つ分を納めてまだ余るだろう。
深い森に囲まれた小高い丘の上に立ち、遠くユッセの都を見下ろしている。
幾つもの様式が取り入れられた優雅な姿は、芸術にも等しい。
( ゚д゚ ) 「ユッセ城があんなに小さく見えるぜ」
( ^ω^)「直進距離にしておよそ2日分はあるお」
( ゚д゚ ) 「うへー、そんなのを一瞬で来ちまったわけか」
( ^ω^)「さらに進化した魔物が徘徊していれば、森を抜けるのは不可能に近いお」
- 94
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:51:37.19 ID:GoXRo1Ng0
- ( ゚д゚ ) 「……」
( ^ω^)「だからもちろん帰りも頼むお」
( ゚д゚)
( #^ω^)「おいこっちみろ」
(;゚д゚ ) 「落ち着け、冗談だ。ちゃんと城の中に帰りの転送装置があるはずだ」
( ^ω^)「まあどっちにしろ、王の言うとおり城の呪いが原因なら、城の中に進化した魔物がいる可能性もあるお」
(;゚д゚ ) 「mjd」
( ^ω^)「ぶっちゃけ、そんなに楽観出来ない状況だから」
( ゚д゚ ) 「お前の顔が緊張感無くしてるわけか」
( #^ω^)「黙れ小僧」
( ФωФ)「なぁう」
( ゚д゚ )ジー 「……」
( ;^ω^)「ちゃっちゃと城に入って調査して帰るお!!!!!1111」
- 96
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:53:40.80 ID:GoXRo1Ng0
- 二人と一匹は塀を超え、堀を超える。
直ぐに広い庭園に出た。その庭は素晴らしかった。
色とりどりの薔薇が丁寧に植えられ、白亜の城のある景観がさらに映えるよう計算されていた。
枝先の一本まで整えられた緑のアーチを潜りながら、噴水の横を通り過ぎる。
(;゚д゚ ) 「綺麗だな……」
呆気にとられているミルナを離れて、ブーンが噴水の傍へ寄る。
( ^ω^)「水が、震えてるお」
噴水から噴き出す水、地に落ちる筈の水飛沫。
だが、まるで一枚の写真のように宙に留まっているまま、ぶるぶると震えている。
( ^ω^)「ミルナ、この城はいつからあるんだお?」
(;゚д゚ ) 「ユッセの都がある前から建ってたって話だから、千年近くある筈だぜ?」
( ^ω^)「……恐らく呪いが掛けられた時の、当時のまんまなんだお」
( ゚д゚ ) 「誰にも見てもらえないのにな。…なんだか空しいな」
- 98
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:57:23.32 ID:GoXRo1Ng0
- そして、とうとう居館へと繋がる、大きな構えの野外階段の前に出た。
ブーンが再び立ち止まり、頭上、居館への豪奢な大扉に向かって伸びる幅広い階段を見上げる。
( ^ω^)「やっぱり、おかしいお」
( ゚д゚ ) 「だから何が?」
( ^ω^)「ブーン達は正門から入って、居館の前まで一気に来たお」
( ゚д゚ ) 「おう」
( ^ω^)「瘴気が薄いお」
( ゚д゚ ) 「だから?」
( ^ω^)「魔物も全然いないし」
( ゚д゚ ) 「で?」
( ^ω^)「ミルナ、都を襲った進化した魔物を見たお?」
- 99
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 00:59:17.72 ID:GoXRo1Ng0
- ( ゚д゚ ) 「・・・。ああ。街灯を襲った奴か?」
( ^ω^)「どんな姿をしてるんだお?」
( ゚д゚ ) 「俺はその時非番だったからな。ただ、霧のようなものを纏っていたとしか…」
( ^ω^)「ふむ…もし本当にそうなら、昼間は出ないのかお」
だが霧の魔物となれば厄介だ。物理攻撃が利かない可能性もある。
ブーンは己の中の釈然としない疑念を抱えたまま、
昼のうちに調査を急ぐにこしたことはないと、彼らは先を急ぐことする。
居館に入ると、先ず巨大な大広間に出た。
ブーンはランタンに火を灯す。城の内部は昼間でも薄暗い。
宮廷らしき広間には、この城の持ち主の権力が窺い知れる、高価な丁度品が並ぶ。
( ゚д゚ ) 「なんだか、豪華なものを見れば見るほど空しくなるぜ」
( ^ω^)「…もう少し奥に進んで見るお」
( ゚д゚ ) 「あ、おい……」
( д ) 「 ・・・・。」
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 01:01:11.11 ID:GoXRo1Ng0
- 居館を抜けて、主塔へと向かう。
主塔とは、本来その城の中で最も堅牢に造られる、防衛上の目的で作られる搭だ。
それがあるということは、この城は城攻めにも耐えうるよう、元々城砦として造られたものだったのだろう。
( ФωФ)「ふむ。元々城砦であったものが、後々に宮廷として造りかえられたようであるな」
( ;^ω^)「げッ、お前さっきから不用意に喋りすぎだお」
( ФωФ)「あの小僧はもう追ってきていないのである」
黒猫は耳の裏を後ろ脚で掻きながら、静かな壮年の声で答えた。
ブーンは元来た道を振り返る。確かにミルナは居ない。
( ;^ω^)「しまったお……」
( ФωФ)「不用意なのはお前である」
ミルナが居なければ、帰ることが出来ない。
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 01:02:15.22 ID:GoXRo1Ng0
- 此処は兎に角主塔に昇り、上から騎士を探すことにした。
カンテラを腰に引っかけ、主塔への入り口である梯子を登る。
( ^ω^)「どう思うお?」
肩にしがみ付く黒猫に、ブーンは問いかけた。
( ФωФ)「瘴気は薄いが、呪いが掛けられていた形跡はある。噴水の水に気付いたな?」
( ^ω^)「震えていたお。呪いが解け始めているお」
( ФωФ)「時を止める類の呪いである。この城丸ごと掛けられていたようである」
( ^ω^)「時間軸に関係した呪いが、魔物の生態系に影響を及ぼしたのかお?」
( ФωФ)「あり得なくなくなくはない」
( ^ω^)「む、何だおその言い方」
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 01:03:50.52 ID:GoXRo1Ng0
- ( ФωФ)「そういう特異な現象が起きた場合、もっと強い痕を残すものである」
( ^ω^)「……進化した魔物はいないと?」
( ФωФ)「少なくともここにはな」
( ^ω^)「益々キナ臭くなってきたお」
( ФωФ)「そもそも、こんな大それた呪いが人の手で千年も掛け続けられたのが驚きである」
( ФωФ)「これは相当の人間の人生を犠牲にしているぞ」
( *ФωФ)「ジュルリ」
( ^ω^)「えげつない野郎だお、涎仕舞えお」
( *ФωФ)「時にあの小僧は実に美味そうなのである」
( ^ω^)「…ミルナが?」
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 01:05:16.03 ID:GoXRo1Ng0
- ( ФωФ)「―――! 搭から人と呪の気配がするのである」
黒猫がフーッ、と毛を逆立てる。
梯子を登り切ると共に勢いよく外壁を蹴って、
男一人漸く入れる程度の入り口に身体を滑り込ませた。
( ;^ω^)「うぇ、呪いの中枢はここだったようだお」
噎ぶような呪気に、全身に鳥肌が立つ。
腰から外したランタンを、暗闇に翳して様子を窺う。
短い階段が上に続いていて、その先に木の扉が見えた。
( ФωФ)「これももう残骸であるな」
解けかけた呪いだ、と黒猫は呟いて、ブーンの肩から降りた。
( ФωФ)「中の奴喰っていいか?」
( ^ω^)「だめだお」
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 01:07:08.43 ID:GoXRo1Ng0
- 黒猫の前を制して、階段を上る。
ドアノブに手を掛ける。が開かない。しかし鍵穴も見当たらない。
( ^ω^)「む、ここにも呪がかけられてるのかお」
( ФωФ)「ふむ、面倒だな。小僧の言葉でも使ってみたらどうだ?」
( ^ω^)「リヒト イル グラン―――っていぎゃっ!?」
唱えた途端、風船が弾け飛ぶような音がして、ブーンの掌に傷が着いた。
ドアノブが、ぱたぱたと滴る血で濡れる。
ガチャ
(; ^ω^)「い、痛いお、でも空いたお……」
( ФωФ)「血の確認なくて良かったな」
木の扉を開け放った先に、思いもよらない光景が飛び込んできた。
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 01:09:35.31 ID:GoXRo1Ng0
- 赤子をあやすようなオルゴールの音。桃色の魔法灯の光。
並んだクマやウサギの縫い包みたち。
可愛らしい内装の女の子の部屋。
( ;^ω^)「な、なんだおこれ!?」
呆気にとられていると、奥の窓辺にベッドがあるのに気付いた。
揺れる天蓋のシフォンの向こう、寝息を立てる人の気配がする。
( ;^ω^)「人食い王女でも閉じ込めてたのかお」
( ФωФ)「だったら喰っていいだろう、吾輩wktk」
おそるおそる近寄って、そっと天蓋をあげる。
( ^ω^)
( ФωФ)「?」
( ФωФ)「どうしたのである?」
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/08(月) 01:11:03.54 ID:GoXRo1Ng0
( ゚ω゚)「……デレ」
あの毎晩のように悪夢で見る、少女の姿がそこにあった。
ブーンの頭の中で、鈴のような声が木霊する。
『―――――おにいちゃん』
第三話へと続く
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