( <●><●>)と催涙雨のようです。

どぷんなどとは鳴りませぬ
ざぶんなどとも鳴りませぬ
されどおここは川である
天に流れる天の川


あの川で落ちたら終わりなのじゃ
決して落ちても落としてもならぬぞ
故に増水時は渡してはならぬのだ…良いな??決して渡してはならぬぞ、ワカッテマスよ…


( <●><●>)催涙雨のようです


水などは実際には無い…しかしそこが川と称され、実際に人々を隔てている限りは、やはりそこを渡す舟は必要で同時に舟を漕ぐ者が必要であることも彼にはわかっていた。
雨ならばなおのこと、舟と腕の立つ船頭がいることも。


大雨の7月7日の夜、まだ若い船頭ワカッテマスは幼なじみである織姫の家の近くの岸まで舟を寄せていた…。



舟をやっとの思いで岸に繋ぎ幼なじみの元へ向かう。


少しばかり開いた戸の隙間から覗く彼女の目は赤く腫れていた。

( <●><●>)「掟破りなのはわかっています。」

突然の客に驚きうろたえる彼女の腕を掴み舟へと乗せる。

( <●><●>)「貴女が悲しんでいるのも、そしてどうしたいかもわかってます…いえ、わかっているつもりです。」

彼女の返事も聞かぬ間にワカッテマスは舟を出し、荒れて増水した川を上手く渡って行く。


幼い頃はよく3人で遊んだものだった。
彼女の美しさ、そして何より身分も隔てず接してくれる彼女の優しさに心を奪われた。

昔はこんな無茶をするのは自分ではなく“彼”の方であったのに、今こうしているのは彼女の選んだそんな“彼”に少しでも近づきたかったからだろうか??

否、そんなことではない。悲しんでいる幼なじみ達を救える立場なのが自分だけだからなのはわかっていた。

( <●><●>)「っ…!!もうすぐ着きますよっ…!!」

思った以上の荒具合に何度もバランスを崩しかけ、通常の数倍以上の時をかけて対岸に舟を着けた。


ありがとう、と微笑み、御礼を口にして走り出す彼女の後ろ姿を眺める自分。これで良かったのだと思った。



舟をしっかり岸に固定して、ここで二人の元に行ったら野暮だなと気付いた。


掟を破ってしまった、父はなんと言うだろうか第一声が馬鹿野郎なのはわかってはいるが。


しかし誰にも出来ない仕事をしたという達成感が今、確かにこの胸にある。



後ろから聞こえる二人の呼び声に自然と笑みがこぼれた。


 

 

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