願いを結ぶ星の夜のようです

lw´‐ _‐ノv「七夕という言葉は、棚機つ女、機を織る女から来ているのだよ」

(´・ω・`)「へえ、そうなんだ」

彼女は博識だが、油断していると時によくわからない冗談や、とんでもない嘘を混ぜる。
こちらもだいぶそれに慣れてきたせいか、何となくだがそれが本当かどうか、空気でわかるようになってきた。
今回のそれはどうやら本当のようだ。

lw´‐ _‐ノv「つまり、七夕は女性の祭りなのだ」

(´・ω・`)「牛飼い祭りがあれば男性の祭りになるのにね」

彦星、棚機つ女の相方は牽牛、牛を牽く職業だったはずだ。
牽牛星、いわゆる鷲座の首星アルタイル漢名だ。
その異称が彦星、または犬飼星や男星と呼ばれていたはず。

lw´‐ _‐ノv「牽牛のくせに犬飼星などと矛盾しておるな」

(´・ω・`)「鷲座だしね。まあ、兼業してたんじゃないのかな、犬飼いと牛飼い」

lw´‐ _‐ノv「牽牛だけに」

(´・ω・`)「ちょっと面白かった」

lw´‐ _‐ノv「そう言われると馬鹿にされてるような気がするのは何故だと思う?」

(´・ω・`)「勘がいいからじゃないかな?」

lw´‐ _‐ノv「ほほう」

飛んでくる座布団をかわしながら、窓の外をめる。
7月7日、晴れ。今日は絶好の七夕日和だ。

lw´‐ _‐ノv「祭りなら休みにしろとまでは言わんが、せめて出店ぐらい出て欲しいものだ」

(´・ω・`)「地域によっては夏祭りをやったりもするみたいだけどね」

残念ながらこの辺りの商店街は通常営業。
風情溢れる笛や太鼓の音もなければ、涼しげな浴衣の集団も見受けられない。

lw´‐ _‐ノv「というわけで、ささやかながら祭りの準備をしてきたわけだが」

(´・ω・`)「この大量の笹団子はそういう意味だったんだね」

そう大きくもないテーブルを占拠する笹の葉に包まれた白いお餅の山。
新潟にでも旅行に行ったのかと思ったら、七夕パーティー仕様だったらしい。

lw´‐ _‐ノv「風情溢れるだろ?」

(´・ω・`)「何日で食べ切れるかな?」

lw´‐ _‐ノv「祭りは短期決戦に限る」

つまりは今日中に食べ切れという事なのだろう。
流石に無茶すぎる提案なので、恐らく暇そうにしてると想像が付く友人達でも招く事にしよう。

lw´‐ _‐ノv「まあ、祭りは大人数で騒ぐ方が良いな」

そう言いつつも、彼女が少し残念そうだとわかるのは、それなりに長く付き合ってる僕の特権かもしれない。

(´・ω・`)「それじゃ、笹でも用意するかな」

lw´‐ _‐ノv「今からかね?」

日はまだ落ちていないし、この界隈を巡ればいくつか手に入れられそうな当てはある。

(´・ω・`)「ご馳走は君が用意してくれたからね」

祭りの会場は僕が整えるのが筋というものだろう。
僕は立ち上がり、彼女に座布団を手渡した。

lw´‐ _‐ノv「短冊も頼むよ」

(´・ω・`)「2つじゃ寂しいかもね」

僕と彼女の2つの願い。それだけだと飾り付けだと寂しいから、友人達にも書いてもらうか。

lw´‐ _‐ノv「大丈夫、願い事なら山ほどある」

僕は笹と短冊を手に入れ、部屋に戻り、彼女といっしょに願い事を書いた。
彼女は見るなと言ったけど、どうせ吊るす時か、吊るした後に見てしまうのだ。
いくつかこっそり覗いて見た。

どの短冊にも達筆な字で僕と彼女名前が並ぶ。

願い事は沢山でも、その中身はどれも似たようなものだった。
僕の1つの願いと、彼女の沢山の願いは同じもの。

lw´‐ _‐ノv「よし、吊るそう」

(´・ω・`)「高いとこは僕がやるよ……立てる前に結ぶべきだったかな?」

僕らは並んで短冊を結ぶ。2人並んで願いを結ぶ。
2人の願いを──

(´・ω・`)「星が願いを叶えてくれますように」

時々君はロマンティックだなと、彼女は少し照れたように笑った。

 − おしまい −

 

 

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