( ^ω^)('A`)(´・ω・`)天の川汚染計画のようです
('A`)「こんにゃろ! こんにゃろ!! これでもか!!」
(´・ω・`)「……」
かつては肩を並べ理想の伴侶像を共に語り合った高校時代の友人は、やっぱり何も変わっていなかった。
( ^ω^)「……なにやってんだお」
土手から見下ろす僕にも気づかず、青白い顔に健康的な汗を流す、ドクオ。
彼は只管がむしゃらに、抜けるような青空に向かって串やら空き缶やらを投げ続けていた。
まるで、そうすれば死後に至るまで救われるとでも言わんばかりである。
('A`)「どうだてめぇら! あ!? まだまだこんなモンじゃ許さねえぞコラァ!!」
(´・ω・`)「……」
その横で黙々と動く、理知的な青年。
二年前と比べて随分と顔つきが大人びたショボンは、足元のビニール袋から手早くゴミを取り出し、ドクオへ手渡している。
その、何だかよく分からない流れ作業を彼らはたっぷり十五分ほど続けて、
(;'∀`)「おーう! 来たかブーン!!」
(´・ω・`)「おひさー」
ようやく水の引き始めた河川を背負って、僕に手を振った。
○
( ^ω^)「一体、なんだお?」
ずざざ、と急勾配なコンクリの坂道を下ると、ぬかるんだ泥が僕の靴を歓迎する。
勿論ながら今の言葉は、なにが楽しくて猛暑日の河川敷に男三人が集まらねばならんのだ、というニュアンスである。
('A`)「……おまえ、今日が、何日か、知ってるか?」
その言葉だけでピン、ときた。ショボンはともかく、ドクオが言うなら殊更である。
(´・ω・`)「七月七日。七夕。」
( ^ω^)「……まさか」
互いの愛に溺れ自らの仕事を放り出し、帝の怒りによってその仲を引き裂かれてしまった男と女。
年に一度、七月七日の天の川に橋が掛かり、彼らは僅かばかりの再会を慈しむ。
すなわち公然とチュッチュできる性の数時間かが始まろうとしているのだ。
('A`)「去年、一昨年は大雨だったからな。期せずして中止となったが、今年はそうもいかん。
このような快晴では、衆目の元で破廉恥な男女交際が晒されてしまうではないか!
清廉潔癖を人生訓に置く我々としては、それを未然に防ぐ事により治安の維持をだな――――」
(´・ω・`)「もう妬ましくて仕方ないから、邪魔してやろうぜ」
( ^ω^)「……それとあの行動の、何の関係があるんだお」
するとドクオは、よくぞ聞いてくれましたとばかりに不細工な顔を歪め(本人は笑ったつもりであろうが)、
('A`)「天の川汚染計画さ」
とだけ言った。
○
天の川がゴミで一杯になれば、その余りの悪臭に恋人同士の再会というふいんきではない。
(*゚ー゚)「こんな糞みたいな臭いのするロケーションを選ぶ彦星さんなんて、さいってーいっ!」
(,,;゚Д゚)「ちょ、ちょっと待ってくれよ織姫ちゃ、ぐへぇええっ!!」
という展開を期待して、ドクオは何処とも知れぬ天空の河川の水質汚濁を画策していたらしい。
○
('A`)「……おお」
(´・ω・`)「へえ」
( ^ω^)「おっお」
河原に三人寝転がって、視界全てに広がる星の清流を眺める。
「寄らば斬る」とばかりに殺気だっていたドクオも、この時ばかりは、その風光明媚に見惚れていた。
馬鹿みたいに放り投げて、重力によるしっぺ返しを十分に受けた僕らの顔は、所々青痣が付いている。
天の川に撒き散らす筈だった廃棄物は、今は再び元のゴミ袋の中で眠っている。
聞けばあれは二人が元々河原に打ち捨てられていたゴミを拾い集めたものらしい。
そういう話を聞いて、やはり、変わっていないなと僕は苦笑する。
('A`)「……今年は、しょうがねえ。負けを認めてやらあ」
(´・ω・`)「まるで、次回があるみたいな口ぶりだね」
( ^ω^)「あるお」
ドクオですら意外だったのか、二人の視線がぐるりと僕を射す。
( ^ω^)「また来年、ここで、三人で、こうするお」
星空を見ている僕には分からないが、確かに二人が頷いた、気がした。
今頃はチュッチュかセクロスか。彦星と織姫のインモラルな再会風景を妄想しつつ、僕は静かに、来年の快晴を祈った。