七月七日、のようです
川 ゚ -゚)「ほら、早く」
暗闇に溶け込んでしまうような、紺色の浴衣を纏うクー。
それを地に、鮮やかな紫陽花が描かれている。
普段は浴衣なんて着ないクーが、今日のためだけに購入したものだ。
('A`)「そんなに急がなくても祭りは逃げないって」
近所の神社へと続くあぜ道。
蛙や鈴虫達の合唱に囲まれ、少し離れて歩く二人。
その合唱の中、かすかに聞こえる笛と太鼓の音。
川 ゚ -゚)「彦星と織姫が唯一逢うことを許される日じゃないか。少しでも早いほうがいい」
('A`)「お二人さんも大変だな。俺達はいつでも会えるんだからゆっくりでいいよ」
そんなドクオの声を無視し、再び歩き出すクー。
小さくため息をついてそれを追うドクオ。
頼りなく光る街頭を頼りに、神社へと向かう。
狭い境内には所狭しと露店が敷き詰められていた。
飲食店から射的、くじ引き、お面屋……金魚掬いにヨーヨー釣りもある。
(;'A`)「の、飲み物……」
川 ゚ -゚)「駄目。先にすることがあるんだ」
境内への長い階段で体力を使い果たしたドクオの手を掴み、半ば引きずるように奥へと進むクー。
川 ゚ -゚)「あった、ここだ」
不意に手を離され、倒れるドクオ。
('A`)「俺は物じゃ……ん?短冊か?」
目の前には大きな竹。笹の葉にはカラフルな短冊があちらこちらに吊るされている。
竹の前に簡易テーブルが設置されており、短冊とマジックペンが置いてある。
川 ゚ -゚)「願い事を書くぞ」
言うが早いか、短冊に何やら書き始めるクー。
('A`)「何書くんだ?」
川 ゚ -゚)「内緒だ。ほら、ドクオも早く書くんだ」
手で追い払うような仕草をし、こちらから見えない角度へ短冊を隠される。
もはや癖となっている小さなため息を吐き、短冊とペンを手に取った。
川 ゚ -゚)「綺麗だな」
('A`)「んだなー」
神社からの帰り道。空には天の川。
('A`)「しかし、一年に一度しか逢えないってのに対岸ってのも、また可愛そうな話だな」
天の川の対岸、一際目立つ二つの星を交互に見比べる。
川 ゚ -゚)「それでも、今日という日が特別だから、彦星も織姫も大切に過ごすんだろうな」
立ち止まり、クーが続ける。
川 ゚ -゚)「お互いを本当に愛してるから、想っているから、一年に一度だけでも、また来年を待てるんだろうな」
('A`)「ロマンチックだねえ」
露店で買ったチョコバナナを頬張る。
川 ゚ -゚)「ところでドクオ」
('A`)「ん?」
川 ゚ -゚)「短冊には何をお願いしたんだ?」
('A`)「お前だって教えてくれなかったじゃん」
少し拗ねてみる。
川 ゚ -゚)「ドクオと一緒にいられますように、だ」
あっさりと教えてくれた。
川 ゚ -゚)「さあ、言うんだ」
('A`)「ん?教えてくれたら教えるなんて約束してないぞ?」
川;゚ -゚)「卑怯者め!」
ヨーヨーを振り回しながら追いかけてくるクーを尻目に、あぜ道を走る。
捕まったら大変だ。短冊に書いた内容を教えるまで釈放してもらえそうにない。
恥ずかしくて言えるわけがないじゃないか。
“クーの彦星になれますように”なんて。