緑の黒髪のようです
七月の七日。
二人の男女が、街の広場に立てられた立派な笹の木の前で、なにやらささやきあっている。
街は荒れ果てており、彼ら以外の人影は認められなかった。
カラス、ネコ、イヌ。
そのような、どの街でも居るであろう小動物でさえ、その姿を現すことをしなかった。
二人の様相を述べる。
男は長身短髪、女は短身長髪。歳は二十歳半ばほどであろう。
対照的な二人の間には、非常に親密な雰囲気が漂っていた。
恐らく、恋仲であるのだろう。
川 ゚ -゚) 「君はどんな願い事を書いたんだ」
( ・∀・) 「明日も来年もその先も、ずっと君といられるように願ったよ」
( ・∀・) 「君は?」
川 ゚ -゚) 「内緒だ」
緑の黒髪は、けんもほろろに男の言葉を流したように見えた。
しかし、わずかにその頬が紅潮したことから、内心喜んでいるということがうかがえる。
川 ゚ -゚) 「心配するな、私はこれからもずっと、君と一緒だ」
さらさらと、黒髪が揺れた。
どうやら私の見立ては当たったようで、女は少しうつむきながら、男にそう伝えた。
男もそれに笑顔で応える。
……二人とも感極まったのだろうか。その目にはうっすり、涙が浮かんでいた。
それから彼らは、その願い事を書いた紙を笹の木に結びつけた。
そして、仲睦まじく寄り添いながら、広場をあとにした。
二人の手は強く繋がれていた、何かを覚悟したかのように。
……残念ながら、その願いが叶うことは無いだろう。
なぜならば、地球はあと半日もしないうちに炎に包まれ、死の星と化すからだ。
あと六時間ほどで、地球に直撃する私が言うのだから間違いないだろう。
end