- 56
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 15:44:14.86 ID:QTuosFNF0
- ζ(゚ー゚*ζ
この世界の海、というのは、やはり綺麗だ。
どれだけ年を重ねても、変わらない色。
他のところでは海の色が変色しているらしいが、まあそれはいいだろう。
車の戸が開く。
そこから元気よく出てくる少女。
それを慌てて追いかける家族。
ε=ζ(゚ー゚*ζ「ホントに元気ねあの子」
見ていて呆れるほどに、元気に砂浜を駆け回っている。
(*゚ー゚)「うわーい!」
水着を着て、水際を走り回る少女。
きっと、美しい女神様の私でさえ、あの子には叶わないだろうな。
/ ,' 3「これこれしぃ!あんまりはしゃぐと転ぶぞ!」
ジジイも、心なしか表情は晴れやかだ。
ζ(゚ー゚*ζ
私は、神という職に就いて初めて、愛、というものがいい香りに感じた。
- 61
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 15:53:24.76 ID:QTuosFNF0
- (*゚ー゚)「うみだー!ちべてー!」
「しぃちゃん!あんまり深いとこ入っちゃだめよ!」
/ ,' 3「ワシがついとる!安心せい!」
「はーい」
ζ(゚ー゚*ζ
あんなに楽しそうに。
この光景を見ていると、まるで母になったような気分。
こんなに人間を愛しいと思ったことはないだろう。
あの母親も、しぃ、という少女のことをこんな気持ちで見ていたのだろう。
だから、死を伝えなかった。
そう思うと、私のやったことは本当にいけないことだと悟る。
彼女が彼女の時間を終える前に、謝っておこう。
ドドドドドドドドドドドドドドドド
海の向こうから、不穏な影。
津波だ。
このままでは、この周辺一帯にいるものは死んでしまうだろう。
- 65
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 16:06:05.21 ID:QTuosFNF0
- そういえばさっき地震が起きたとかどうとか。
まあ、その程度のことは、私にかかれば大したことは無い。
この出来事は、神の決定ではない。
ζ(゚ー゚*ζ打ち消しちゃえ☆」
シュパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
/ ,' 3「タタリじゃあああああああああああああああああああああああああ」
一人悪ふざけしているジジイを発見。
ちなみに津波は打ち消せた。
というか、私の早とちり。
津波はかなり小さかった。
ζ(゚ー゚*ζ「恥ずかし・・・」
/ ,' 3。0(ざまあ見るのじゃ)
ζ(゚ー゚#ζキッ
/ ,' 3
全く、このジジイだけは理解しがたい。
でも、このときだけは許してやろう。
今の私は、優しい女神様なのだから。
- 66
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 16:08:43.57 ID:QTuosFNF0
- ζ(゚ー゚*ζ「貴方たちは、何も気にせず、その子に幸せを教えてあげなさい!」
ζ(゚ー゚*ζ「今日だけは私が守ってあげるから!!」
そう、言ってみる。
もちろん聞こえる人間はいない。
ただ、一部例外を除いては。
/ ,' 3「了解じゃ、神様」
さて、邪魔な神は遠くで見守るとしましょう。
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- 68
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 16:15:33.04 ID:QTuosFNF0
- もう、この子の一日は、終わる。
日も暮れた。現在は帰路についている。
しぃは、幸せそうに笑っている。
いままで皺しか見せなかったジジイも、笑顔だ。
母と父は、前の席で黙っている。
(*゚ー゚)「あのね」
おっと、最後の言葉か。
私は覗くのを止めよう。
(*゚ー゚)・・・・・・・!
/ ,' 3・・・・・・。
「・・・・・・・・」
この子の、最後の会話。
愛した、愛された彼女との最後の会話。
神であろうと、踏み入ってよい領域ではない。
と、思うだろう。
私は彼女の最期の言葉だけ、聞き取ることができた。
それは、
- 70
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 16:21:08.02 ID:QTuosFNF0
- (*゚ー゚)「みんなありがとうね!ぼく、たのしかった!」
ごくありふれた、しかし最高に意味のある言葉だった。
(*-o-)
そして、彼女は眠りにつく。
終わりの、時だ。
(*゚ー゚)『かみさまかみさま!』
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの?お別れは済んだ?」
(*゚ー゚)『うん!たのしかったもん!ないちゃだめなんだよ!』
(*゚−゚)『ないちゃだめだけど』
(*;−;)『ぼくはつよいこなのに』
ζ(゚ー゚*ζ「貴女は本当に強い子よ。
だからこそ、泣きなさい。
泣かない子供なんて、いないんだから」
(*ぅー゚)「ううん。ぼくもうだいじょうぶ!」
ζ(゚ー゚*ζ「・・・・・・そう」
本当に、この子は強い。
神をもってしても、到底辿り着けることはないだろう。
- 71
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 16:28:56.63 ID:QTuosFNF0
- 思わず、私は彼女を抱きしめた。
ζ(゚ー゚*ζ「いいのよ?泣いても」
(*゚ー゚)「へいき!だってぼくは、ぱぱとままのこどもだったから!」
(*゚ー゚)「ぼくはおにいちゃんの、いもうとだったから!!」
(*ぅー;)「ぼくは!じぃじの、まごだったから!!」
ζ(゚ー゚*ζ「・・・・・・そう。がんばりなさい」
そして、貴女は、次の世界へと旅立つ。
ある者はホタルとなり、ある者はネコとなる。
ある者は男となり、ある者は女となる。
そしてある者は、神になり、現世の忘れ物を守っていく。
ζ(゚ー゚*ζ「貴女の強い意志は、次の世界を開く」
ζ(゚ー゚*ζ「その強い意志が本物なら、貴女は残された家族にまた会えるわ」
(*;ー;)「うん!ぼく、みんなとまたあいたい!」
ζ(゚ー゚*ζ「さあ、進みなさい。次の世界へ」
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- 72
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 16:31:31.94 ID:QTuosFNF0
- / ,' 3
拝啓、神様。
しぃが死んで、10年が経ちました。
ワシは、しぃの分まで元気でやっとります。
本当は、逆だったはずだがのう・・・・・・。
そっちで、しぃは元気でやっとりますか?
ワシらのことを、見守っていますか?
忙しくなければ、お返事ください。
敬具
荒巻 スカルチノフ
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- 74
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 16:36:49.86 ID:QTuosFNF0
- 拝啓 じぃじ
お手紙ありがとうございます。
頑張って生きていますか?
ぼくもがんばっています。
天上界にはね、いろんな神様がいるんですよ。
それで、ぼくは何故か神様に抜擢されちゃいました。
すごいでしょ!?ぼくが神様ですよ?
だから、僕はずっと、じぃじを、
パパを、ママを、おにいちゃんを、見ていますよ。
じぃじが悲しい顔をするとき、ぼくも悲しくなります。
みんながさびしそうにすると、ぼくも寂しくなります。
僕はずっと、貴方がたのそばにいます。
忘れないでね、じぃじ。
ぼくはじぃじのまごだよ!
荒巻 しぃ
(*゚ー゚)
/ ,' 3(*゚ー゚)ぼくはじぃじのまごだよ!のようですζ(゚ー゚*ζ FIN
- 75
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 16:38:33.72 ID:QTuosFNF0
『その後のビッチ神』
- 77
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 16:43:11.44 ID:QTuosFNF0
- 「あんたいい加減人間にちょっかいかけるのやめなさいよ!」
ζ(゚ー゚*ζ「うっさいなー。いいじゃない別に」
「ほんと性格悪いわねあんた!」
ζ(゚ー゚*ζ「私は悪い人間を成敗してるだけでしょ!?」
「はいはいそうね」
ζ(゚ー゚*ζ「やれやれ、あの時から10年経ったというのに、言われることは変わらないわね・・・」
『デレさーん!デレさーん!』
ζ(゚ー゚*ζ「はぁい!なーにー」
『ここはどうすればいいんですか!?』
ζ(゚ー゚*ζ「ああココはね、こうしてこうしてこうする」
『すごいですー!ありがとうございます。ぼく感激です!』
ζ(゚ー゚*ζ「あのさー。そろそろ僕、という一神称やめません?」
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ?しぃ」
(*゚ー゚)「仕方ないじゃないですかー!ぼくは物心ついたときからこうですよー」
ζ(゚ー゚*ζ「これから先長いんだから、せめて私以外の人と喋るときはやめなさい」
- 78
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 16:44:47.66 ID:QTuosFNF0
- (*゚ー゚)「はーい」
ζ(゚ー゚*ζ「あっ!またあほなことしてる奴発見!」
(*゚ー゚)「えぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「殲滅するわよ!ストレス解消に!」
(*゚ー゚)「了解です!」
改心したようで、改心していない、ビッチ神様でした。
┼ヽ
-|r‐、. レ |
d⌒) ./| _ノ
__ノ
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NHK
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